説明

インクセット、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれらを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイス

【課題】本発明は、耐薬品性、色再現性などに優れたカラーフィルタを製造することができるインクジェット用インクセット、このようなインクジェット用インクセットにより得られるカラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、ならびに画像表示デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】有機溶剤可溶性染料と、重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、含有される重合性モノマーが所定のオクタノール/水分配係数ClogPを示すインクジェット用インクを含むインクジェット用インクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。一方で、カラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっている。特に、コスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備える。このカラーフィルタを備える液晶ディスプレイにおいては、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0003】
近年、このカラーフィルタの製造方法として、インクジェット法で着色インクを吹き付けして着色層(色画素)を形成する方法が提案されている(特許文献1)。インクジェット法は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。インクジェット法は、インクジェットヘッドを順次移動させることにより、大面積のカラーフィルタを高生産性で製造でき、低騒音で操作性がよいという利点をもつ。
【0004】
カラーフィルタに要求される色性能(色相、コントラスト)は年々高まっており、それに伴いカラーフィルタの色画素を構成する色材の特性制御の必要性はより高まっている。色画素を形成するインクジェット用インクの色材として染料を使用した場合、概して、吐出安定性も高く、インク粘度の増加などに伴うノズル目詰まりがあった場合でも、ワイピングやパージにより容易にインク吐出状態が回復することが期待される。
【0005】
一方で、インクジェット用インクを構成する成分としては、染料以外に、重合性モノマーなどが通常使用される。その場合、カラーフィルタの製造時の重合性モノマー硬化の際に、染料と重合性モノマーとの組み合わせによっては染料の凝集や相分離などが起こり、結果として、色相の劣化や著しいコントラストの低下を招くことがあった。
また、インクジェット用インクとしては、上記のようなカラーフィルタとしての光学的特性を満足するのみならず、インクジェット用インクとしての高吐出安定性や、得られるカラーフィルタの耐薬品性など諸要件を同時に満足することが必要であった。特に、多色(例えば、赤、青、緑の3色)を有するカラーフィルタを作製するためには、すべての色画素を構成するインクジェット用インクが上記要件を満たす必要がある。
さらに、表示画像のさらなる高画質化のためには、カラーフィルタが広い色再現域を有することが必要とされ、各色の画素部が優れた光学特性を持つのみならず、それら各色間での光学特性のバランスを制御することが重要となる。
従来技術においては、上記のような課題を同時に満足することは困難であり、更なる改良が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−146215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な色相を呈し、耐熱性、耐薬品性に優れた色画素を形成することができ、さらに広い色再現域を有するカラーフィルタを製造することができる、吐出安定性に優れたインクジェット用インクセット、このようなインクジェット用インクセットにより得られる光学特性、耐光性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、所定の染料と所定のオクタノール/水分配係数を有する重合性モノマーを使用することにより、上記課題が解決されることを見出した。つまり、本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<10>の構成により解決されることを見出した。
【0009】
<1> 一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、後述する式(X)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(R))が2以上12以下であるインクジェット用インク(R)と、
一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料、および一般式(2)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、後述する式(Y)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(G))が0以上9以下であるインクジェット用インク(G)と、
一般式(3)で表される染料、一般式(4)で表される染料、一般式(5)で表される染料、および一般式(6)で表される染料からなる群より選ばれる1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、後述する式(Z)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(B))が−2以上7以下であるインクジェット用インク(B)とを含むインクジェット用インクセット。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1−a)中、R30は、水素原子または置換基を表す。R31は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。X30は、−OM基、または−N(R32)(R33)を表し、Mは、水素原子、アルキル基、または、電荷を中和する為に必要な金属原子若しくは有機塩基対を表し、R32およびR33は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。A30は、アリール基、または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(1−b)中、R34は水素原子または置換基を表す。R35は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Z30およびZ31は、それぞれ独立に、−C(R36)=または−N=を表し、R36は水素原子または置換基を表す。A31は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(1−c)中、R37、R38、R39およびR40は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。Z32、Z33およびZ34は、それぞれ独立に、−C(R41)=または−N=を表す。R41は、水素原子または置換基を表す。A32は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(一般式(1−d)中、R42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R43およびR44は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。A33は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【0018】
【化5】

【0019】
(一般式(1−e)中、R45、R46、およびR47は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
【0020】
【化6】

【0021】
(一般式(1−f)中、R48およびR49は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R50は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R51は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。Z35、Z36、Z37、およびZ38は、それぞれ独立に、−C(R52)=または−N=を表し、R52は水素原子または置換基を表す。)
【0022】
【化7】

【0023】
(一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。w、x、yおよびzは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。ただし、w,x、yおよびzの総和(w+x+y+z)は0ではない。Z〜Zは、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子から選ばれる原子群で、結合している2個の炭素原子と共に構成される5員環または6員環を形成する原子群を表す。Mは金属原子、または金属酸化物を表す。)
【0024】
【化8】

【0025】
(一般式(3)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lは、脂肪族または芳香族の連結基を表す。Zは2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZは同一であっても異なっていてもよい。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物または2価の金属塩化物を表す。mはそれぞれ独立に1または2を表し、nはそれぞれ独立に0または1を表す。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。r、r、r及びrはそれぞれ独立に0または1を表し、r+r+r+r≧1を満たす。)
【0026】
【化9】

【0027】
(一般式(4)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)
【0028】
【化10】

【0029】
(一般式(5)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表す。XとXは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【0030】
【化11】

【0031】
(一般式(6)中、ZaおよびZbは、それぞれ独立に、−N=または−C(R)=を表す。R〜RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、および/またはRとRとが互いに結合して、それぞれ独立に、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。)
<2> 上記ClogP(R)、上記ClogP(G)、上記ClogP(B)が以下式(A)の関係を満たす、<1>に記載のインクジェット用インクセット。
式(A):ClogP(R)>ClogP(G)>ClogP(B)
<3> 上記インクジェット用インク(R)、上記インクジェット用インク(G)および上記インクジェット用インク(B)の粘度が25℃において30mPa・s以下である、<1>または<2>に記載のインクジェット用インクセット。
<4> 上記インクジェット用インク(R)、上記インクジェット用インク(G)および上記インクジェット用インク(B)の表面張力が25℃において20〜40mN/mである、<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
<5> 上記インクジェット用インク(R)、上記インクジェット用インク(G)および上記インクジェット用インク(B)が、さらに界面活性剤を含む、<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
<6> 上記インクジェット用インク(R)、上記インクジェット用インク(G)および上記インクジェット用インク(B)が、さらに多官能チオール化合物を含む、<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
<7> 基板上に形成された隔壁により区画された凹部にインクジェット法により<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを用いて液滴を付与して、カラーフィルタの色画素を形成する画素形成工程を有するカラーフィルタの製造方法。
<8> <7>に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
<9> <8>に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
<10> <8>に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、良好な色相を呈し、耐熱性、耐薬品性に優れた色画素を形成することができ、さらに広い色再現域を有するカラーフィルタを製造することができる、吐出安定性に優れたインクジェット用インクセット、このようなインクジェット用インクセットにより得られる光学特性、耐光性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)〜(f)は、それぞれ本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
【図3】粒子状物質が観察される場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【図4】相分離構造が観察される場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【図5】粒子状物質および相分離構造が観察されない場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るインクジェット用インクセット、このインクジェット用インクセットを用いたカラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスについて詳細に説明する。
【0035】
<インクジェット用インクセット>
まず、本発明のインクジェット用インクセットを構成する各インクジェット用インクの構成成分、およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット用インクセットは少なくとも以下の3つのインクジェット用インクを備える。
インクジェット用インク(R):一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも一種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、式(X)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(R))が2以上12以下である
インクジェット用インク(G):一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料、および一般式(2)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも一種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、式(Y)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(G))が0以上9以下である
インクジェット用インク(B):一般式(3)で表される染料、一般式(4)で表される染料、一般式(5)で表される染料、および一般式(6)で表される染料からなる群より選ばれる1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも一種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、式(Z)で表される上記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(B))が−2以上7以下である
【0036】
【数1】

【0037】
(上記式(X)、(Y)、および(Z)中、Wiは各インクジェット用インクに含まれるi番目のモノマーの全モノマーに対する質量分率を表し、Piは各インクジェット用インクに含まれるi番目のモノマーのClogP値を表し、iは1〜nの整数を表す。)
まず、上記各インクジェット用インクに含まれる有機溶剤可溶性染料、重合性モノマー、有機溶剤について詳述する。
【0038】
<有機溶剤可溶性染料>
<一般式(1−a)〜一般式(1−f)で表される染料>
一般式(1−a)〜一般式(1−f)で表される染料(アゾ系染料、アゾメチン系染料、メチン系染料、キノフタロン系染料など)は、可視光部の最大吸収波長が400〜500nm、好ましくは420〜480nmであり、イエロー色調用のインクとして好適である。なお、一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料の互変異性体も好適に使用される。
【0039】
以下の一般式(1−a)〜一般式(1−f)、一般式(2)〜一般式(6)の各基の説明において「置換基」とは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、
【0040】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル、下記構造式(i)で表される基)、
【0041】
【化12】

【0042】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、
【0043】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)、またはこれらを組み合わせた基を表す。
【0044】
これら置換基が更に置換可能な基である場合には、さらに上記で説明した置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
<一般式(1−a)>
以下に、一般式(1−a)で表される染料について説明する。
【0046】
【化13】

【0047】
一般式(1−a)中、R30は水素原子、または置換基を表す。これらの置換基は、さらに該置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合は、それら置換基は同一でも異なっていてもよい。
また、後述する一般式(1−b)〜一般式(1−j)中で説明される各基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基など)は、上記「置換基」に列挙された各基と同義であり、好ましい態様も同じである。また、これらの各基は、さらに上記「置換基」で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合は、それら置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0048】
一般式(1−a)中、R31は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。なかでも、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、アリール基、ヘテロ環基がより好ましく、特に、含窒素へテロ環基、電子求引性基が置換したアリール基が好ましい。電子求引性基としては、ハメットの置換基定数σpが0.20以上のものが好ましく、例えば、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、ハロゲン化アルキル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、ハロゲン原子などが挙げられる。ハメットの置換基定数については、例えば、J. A. Dean編、「Lange's Handbook of Chemistry 」第12版、1979年(Mc Graw-Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しく述べられている。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σp値により限定したり、説明したりするが、これは上記に成書で見出せる文献既知の値が有る置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合に、その範囲内に含まれるであろう置換基をも含むものである。
【0049】
一般式(1−a)中、X30は、−OM基、または−N(R32)(R33)を表す。Mは、水素原子、アルキル基、または、電荷を中和する為に必要な金属原子若しくは有機塩基対を表し、R32およびR33は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Mで表される金属原子としては、金属カチオン種、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛などが挙げられる。また、Mで表される有機塩基対としては、有機カチオン種、例えば、4級アンモニウム、グアニジニウムカチオン、トリアルキルアンモニウムなどが挙げられる。一般式(1−a)中、X30はヒドロキシル基、または無置換のアミノ基が好ましく、中でも無置換のアミノ基が好ましい。
【0050】
一般式(1−a)中、A30は、アリール基、または芳香族ヘテロ環基を表す。中でも、5員もしくは6員の含窒素へテロ環基、または電子求引性基が置換したアリール基が好ましい。好ましい電子求引性基は、ハメットの置換基定数σpが0.20以上のものが挙げられる。A30で表される芳香族へテロ環基は、上述した置換基に列挙されたヘテロ環基のうち芳香族性のものを意味する。
【0051】
<一般式(1−b)>
以下に、一般式(1−b)で表される染料について説明する。
【0052】
【化14】

【0053】
一般式(1−b)中、R34は、水素原子または置換基を表す。
一般式(1−b)中、R35は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表し、水素原子が好ましい。
一般式(1−b)中、Z30およびZ31は、それぞれ独立に、−C(R36)=または−N=を表し、R36は水素原子または置換基を表す。
一般式(1−b)中、A31は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。A31で表される各基は、上記一般式(1−a)中のA30で表される各基と同義であり、好ましい態様も同じである。
【0054】
<一般式(1−c)>
以下に、一般式(1−c)で表される染料について説明する。
【0055】
【化15】

【0056】
一般式(1−c)中、R37、R38、R39およびR40は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表し、なかでも、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、特に、アルキル基、アリール基、アシル基が好ましい。
【0057】
一般式(1−c)中、Z32、Z33、およびZ34は、それぞれ独立に、−C(R41)=または−N=を表し、なかでもZ32、Z33、Z34のうちの少なくとも1つが−N=であることが好ましい。R41は、水素原子または置換基を表す。
【0058】
一般式(1−c)中、A32は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。A32で表される各基は、上記一般式(1−a)中のA30で表される各基と同義であり、好ましい態様も同じである。
【0059】
<一般式(1−d)>
以下に、一般式(1−d)で表される染料について説明する。
【0060】
【化16】

【0061】
一般式(1−d)中、R42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、なかでもアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基が好ましい。
一般式(1−d)中、R43およびR44は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、なかでもR43は電子求引性の置換基であることが好ましい。
一般式(1−d)中、A33は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。A33で表される各基は、上記一般式(1−a)中のA30で表される各基と同義であり、好ましい態様も同じである。
【0062】
<一般式(1−e)>
以下に、一般式(1−e)で表される染料について説明する。
【0063】
【化17】

【0064】
一般式(1−e)中、R45、R46、およびR47は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(1−e)中、aおよびbは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。aが2以上の場合、R46で表される基は同一であっても、異なっていてもよい。bが2以上の場合、R47で表される基は同一であっても、異なっていてもよい。
【0065】
<一般式(1−f)>
以下に、一般式(1−f)で表される染料について説明する。
【0066】
【化18】

【0067】
一般式(1−f)中、R48およびR49は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。
一般式(1−f)中、R50は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基を表し、中でも水素原子が好ましい。
一般式(1−f)中、R51は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表し、なかでも水素原子が好ましい。
一般式(1−f)中、Z35、Z36、Z37、およびZ38は、それぞれ独立に、−C(R52)=または−N=を表し、R52は水素原子または置換基を表す。
【0068】
一般式(1−a)〜一般式(1−f)の中で、好ましくは、一般式(1−a)〜一般式(1−d)中のA30〜A33が、それぞれ独立に、以下一般式(イ)〜一般式(ホ)である染料、一般式(1−e)で表される染料、および一般式(1−f)で表される染料である。
【0069】
【化19】

【0070】
一般式(イ)中、R53およびR54は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアシル基を表す。
【0071】
【化20】

【0072】
一般式(ロ)および一般式(ハ)中、R55は、水素原子または置換基を表す。
一般式(ロ)および一般式(ハ)中、R56は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。
一般式(ロ)および一般式(ハ)中、Z39は、−C(R57)=または−N=を表し、R57は、水素原子または置換基を表す。
【0073】
【化21】

【0074】
一般式(ニ)および一般式(ホ)中、R58は水素原子または置換基を表す。X31は、酸素原子または硫黄原子を表す。
一般式(イ)〜一般式(ホ)における*は、一般式(1−a)〜一般式(1−d)における窒素原子と結合する位置を表す。
【0075】
一般式(イ)〜一般式(ホ)において説明した各基は、さらに上記一般式(1−a)のR30で表される置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0076】
さらに好ましくは、一般式(1−c)中のA32が一般式(ロ)〜一般式(ホ)で表される染料、一般式(1−d)中のA33が一般式(イ)で表される染料、一般式(1−e)中のR45が水素原子で、R46が水素原子または置換基で、R47がアルコキシカルボニル基またはカルバモイル基で表される染料、一般式(1−f)中のR50が水素原子で、R51が水素原子またはアルキル基で、Z35およびZ36のいずれか一方が−N=で、他方が−C(R52)=で、Z37およびZ38のいずれか一方が−N=で、他方が−C(R52)=で、R52が水素原子または置換基で表される染料が挙げられる。
【0077】
さらに好ましくは、一般式(1−c)中のZ33が−C(R41)=で、R41が水素原子または置換基で、Z32およびZ34の少なくとも一方は−N=で、A32が一般式(ロ)〜一般式(ホ)のいずれかで表される染料、一般式(1−d)中のR42がアルキル基またはアリール基で、R43がシアノ基で、R44がアルキル基またはアリール基で、A33が一般式(イ)で表される染料、一般式(1−e)中のR45が水素原子で、R46がアルキル基で、aが0または1で表される染料、一般式(1−f)中のR50が水素原子で、R51が水素原子またはアルキル基で、Z35およびZ36のいずれか一方は−N=で、他方は−C(R52)=で、Z37およびZ38のいずれか一方は−N=で、他方は−C(R52)=で、R52は水素原子または置換基で、R48およびR49は、それぞれ独立に、3級アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基で表される染料が挙げられる。
【0078】
さらに好ましくは、下記一般式(1−g)〜一般式(1−j)で表される染料が挙げられる。
【0079】
【化22】

【0080】
一般式(1−g)中、R60、R61、R62、およびR63は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただし、R60とR61とが同時に水素原子であることはなく、R62とR63とが同時に水素原子であることはない。R64は、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。R65は、水素原子または置換基を表す。R67は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R68は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。R69は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。
【0081】
【化23】

【0082】
一般式(1−h)中、R70、R71、R72、R73、R74、およびR75は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただし、R70とR71とが同時に水素原子であることはなく、R72とR73とが同時に水素原子であることはなく、さらに、R74とR75とが同時に水素原子であることはない。R76は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R77は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。R78は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。
【0083】
【化24】

【0084】
一般式(1−i)および一般式(1−j)中、R79およびR80は、それぞれ独立に、三級アルキル基を表す。R81およびR82は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R83は、水素原子、またはアルキル基を表す。
【0085】
一般式(1−a)〜一般式(1−f)で表される染料の具体例を以下に示すが、本発明はこれらによって限定されない。なお、他の具体例としては、特願2007−303611号明細書の段落番号[0208]〜[0217]に記載される染料が挙げられる。
【0086】
【化25】

【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
【化28】

【0090】
【化29】

【0091】
【化30】

【0092】
【化31】

【0093】
上記一般式(1−a)および(1−b)で表される染料は、特開平6−301179号公報の段落番号[0104]〜[0117]に記載の方法を参照して合成することができる。上記一般式(1−c)で表される染料は、特開2007−31616号公報の段落番号[0050]〜[0069]、および特開2007−39478号公報の段落番号[0049]〜[0063]に記載の方法を参照して合成することができる。上記一般式(1−d)で表される染料は、特開2006−124634号公報の段落番号[0175]〜[0199]に記載の方法を参照して合成することができる。上記一般式(1−e)で表される染料は、特開平6−9891号公報の段落番号[0015]〜[0034]に記載の方法を参照して合成することができる。上記一般式(1−f)で表される染料は、特開2005−250420号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の方法を参照して合成することができる。
【0094】
<一般式(2)>
以下に、一般式(2)で表される染料について説明する。
【0095】
【化32】

【0096】
一般式(2)および後述する一般式(2−1)の各基の説明において「置換基」は、上述した「置換基」と同義である。これらの置換基は、さらに該置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合は、それら置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0097】
一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R〜Rで表される各基は、上記で説明した置換基を有していてもよく、2以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。R〜Rは、好ましくはアルキル基、またはアリール基である。R〜Rで表される各基は、上述した「置換基」で列挙された各基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0098】
一般式(2)中のR〜Rの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。以下のなかでも、a−20、a−23、a−26、a−27、b−8、b−9、b−13、b−20、b−21、b−25、b−26などが好ましい。
【0099】
【化33】

【0100】
【化34】

【0101】
【化35】

【0102】
一般式(2)中、w、x、y、およびzは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。w、x、y、およびzの総和(w+x+y+z)は0ではなく、好ましくは4、3、または2であり、さらに好ましくは3または4である。
【0103】
一般式(2)中、Z〜Zは、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子から選ばれる原子群で、結合している2個の炭素原子と共に構成される5員環または6員環を形成する原子群を表す。5員環または6員環は、芳香族または非芳香族のどちらでもよい。結合している2個の炭素原子と共に構成される5員環または6員環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、またはピリジン環である。形成される5員環または6員環には、さらにベンゼン環などの環が縮合していてもよい。形成される5員環または6員環は、上記で説明した置換基を有していてもよく、2以上の置換基を有する場合は、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0104】
一般式(2)中のMは、金属原子または金属酸化物を表す。金属原子としては、Al、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、およびFeなどが挙げられる。金属酸化物としては、TiO、VOなどが挙げられる。金属水酸化物としては、AlOHなどが挙げられる。好ましくは、Cu、Ni、Co、Znである。
【0105】
上述の一般式(2)で表される染料のうち、好ましくは一般式(2−1)で表される染料である。
【0106】
【化36】

【0107】
一般式(2−1)中、R、R、R、R、w、x、y、x、およびMは、上述の一般式(2)中のそれらの定義と同一である。
【0108】
一般式(2−1)中、R〜Rは、それぞれ独立に置換基を表す。この置換基の定義は、上記で説明した置換基の定義と同一である。R〜Rで表される置換基が、更に置換可能な基である場合には、上記の置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0109】
一般式(2−1)中、m、n、p、およびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。ただし、mとwとの和(m+w)、nとxとの和(n+x)、pとyとの和(p+y)、qとzとの和(q+z)が、それぞれ4以下である。
【0110】
一般式(2−1)で表される構造式は、好ましくはRがアルキル基またはアリール基で、MがCu,Co,Zn,またはV=Oで、m、n、p、qがすべて0である。より好ましくは、Rがアルキル基またはアリール基で、MがCu,Co,Zn,またはV=Oで、w、x、y、zのうち2つが1で、他の2つは0で、m、n、p、qがすべて0である。さらに好ましくは、Rがアルキル基またはアリール基で、MがCu,Co,Zn,またはV=Oで、w、x、y、zのうち3つ以上が1で、他の1つは0で、m、n、p、qがすべて0である。最も好ましくは、Rがアルキル基またはアリール基で、MがCuで、w、x、y、zのうち3つ以上が1で、他の1つは0で、m、n、p、qがすべて0である。
【0111】
以下に一般式(2)で表される染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、他の具体例としては、例えば、特願2007−303611号明細書の段落番号[0041]〜[0043]に記載される染料が挙げられる。
【0112】
【化37】

【0113】
【化38】

【0114】
上述した一般式(2)および(2−1)で表される染料は、特開2006−047497号公報の段落番号[0060]〜[0066]、または特開2006−047752号公報の段落番号[0055]〜[0065]に記載の方法を参照して合成することができる。
【0115】
<一般式(3)>
以下に、一般式(3)で表される染料について説明する。
【0116】
【化39】

【0117】
一般式(3)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Rで表される置換基は、上記した一般式(1)の「置換基」と同じ定義であり、好ましい態様も同じである。
なお、各基は、それぞれさらに上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0118】
本発明の効果の点で、Rは、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基など)、シアノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルフアモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、アリールカルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、アリールスルホニルスルファモイル基、イミド基、スルホ基、またはこれらを組み合わせた基である場合が好ましく、脂肪族基、カルボキシ基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルフアモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、スルホ基、またはこれらを組み合わせた基である場合が更に好ましく、カルボキシ基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールスルホニル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、脂肪族スルホニル基、またはこれらを組み合わせた基である場合が最も好ましい。
【0119】
一般式(3)中、Lはそれぞれ独立に脂肪族または芳香族の連結基を表し、それぞれのLは同一でも異なってもよい。Lで表される脂肪族の連結基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜20の脂肪族基が好ましく、総炭素数1〜15の脂肪族基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
Lで表される芳香族の連結基としては無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、総炭素数6〜16の芳香族基がより好ましい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、最も好ましいのはフェニレン基である。
なお、n=0の場合は、RとS(硫黄原子)とが直接結合する。
【0120】
一般式(3)中、Zは2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表わし、4つのZは同一でも異なっていてもよい。形成される6員環は、アリール環またはヘテロ環のいずれであってもよく、縮環していてもよく、縮環した環が更に置換基を有していてもよい。6員環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環等が挙げられ、ベンゼン環である態様が好適である。
【0121】
一般式(3)において、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物を表す。該Mとしては、例えば、VO、TiO、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeCl、Si(OH)、H等が挙げられ、VO、Zn、Mn、Cu、Ni、Coである態様が好適である。本発明の効果の点でMはVO、Mn、Co、Ni、Cu、ZnまたはMgである場合が好ましく、VO、Co、CuまたはZnである場合が更に好ましく、Cuである場合が最も好ましい。
【0122】
一般式(3)において、mはそれぞれ独立に1または2を表し、mは2である場合が好ましい。nはそれぞれ独立に0または1を表し、nは1である場合が好ましい。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、1〜3である場合が好ましく、1である場合がより好ましい。
【0123】
本発明においては、分子中の複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のR中、少なくとも1つのRは、−OY、−COOY、−SOY、−CON(Y)CO−、CON(Y)SO−又は−SON(Y)CO−を有することが好ましい。これにより、得られる色画素の耐薬品性や光学特性がより向上する。
上記−OY、−COOY、−SOY、−CON(Y)CO−、CON(Y)SO−又は−SON(Y)CO−は、一般式(3)において、連結基Lに結合していてもよく、連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合していてもよい。連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合している場合、Rは−OYであることが好ましく、−S(=O)−と共にテトラアザポルフィリン環に直接結合する−SOYを構成する(m=2)ことが好ましい。
【0124】
Yは水素原子、金属原子または共役酸を表す。Yで表される金属原子はLi、Na、K、Mg、Caが挙げられ、好ましいのはLi、Na、Kである。Yで表される共役酸を形成する塩基としては、3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン)、グアニジン類(例えば、グアニジン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン)、ピリジン類(例えば、ピリジン、2-メチルピリジン)等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
【0125】
、r、r及びrはそれぞれ独立に0または1を表し、r+r+r+rは1以上であり、r+r+r+rが2〜4であることが好ましい。また、r、r、r及びrは各々1であることもまた好ましい。
【0126】
以下、上記「−S(O)m−(L)n−(R)p」で表される基の例を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。なお、以下の例の中では、好ましくはT−87、T−89、T−94、T−95、T−96、T−97、T−98、T−125、T−126、T−127、T−128、T−129、T−140、T−141が挙げられる。
【0127】
【化40】

【0128】
【化41】

【0129】
なお、上記一般式(3)で表されるテトラアザポルフィリン系色素は、例えば、特開2006−58787号公報、特開2006−124379号公報、特開2006−124679号公報等に記載の方法で合成することができる。
【0130】
以下に一般式(3)で表される染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの染料は、公知の方法で合成することができる。
【0131】
【化42】

【0132】
【化43】

【0133】
<一般式(4)>
以下に、一般式(4)で表される染料について説明する。
【0134】
【化44】

【0135】
一般式(4)中、R11〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基は、上述した置換基と同義であり、好ましい態様も同じである。
上記のR11〜R16の置換基が更に置換可能な基である場合には、該置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0136】
一般式(4)中のR11とR12、R12とR13、R14とR15、および/またはR15とR16とは、各々独立に互いに結合して5員、6員、もしくは7員の飽和環、または不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な基である場合には、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0137】
一般式(4)中のR17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R17のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基は、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で説明したハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基とそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同様である。R17のアルキル基、アリール基、およびヘテロ環基が、更に置換可能な基である場合には、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0138】
一般式(4)において好ましくは、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはホスフィノイルアミノ基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはホスフィノイルアミノ基を表し、R17は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0139】
<一般式(5)>
本発明に使用される染料の好ましい例の一つとして、一般式(5)で表される染料が挙げられる。
【0140】
【化45】

【0141】
(一般式(5)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表す。XとXは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【0142】
一般式(5)中のR11〜R17は、一般式(4)中のR11〜R17と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0143】
一般式(5)中のMaは、金属原子または金属化合物を表す。金属原子または金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子または金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、および製造適性等の観点から、Fe、Zn、Co、V=O、またはCuが好ましく、Znが最も好ましい。
【0144】
一般式(5)中のXは、金属原子Maに結合可能な基であればいずれであってもよく、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、カルボン酸類(例えば、酢酸)等、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物が挙げられる。
【0145】
一般式(5)におけるXは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表し、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等が挙げられる。または、該基を有する化合物(例えば、水、アルコール類、カルボン酸類(酢酸))がMaに結合していてもよい。
【0146】
一般式(5)におけるXとXとが互いに結合して、Maとともに5員、6員、または7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、および7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子、および/または硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0147】
<一般式(5−1)>
一般式(5)で表される染料の他の実施形態として、一般式(5−1)で表される染料が挙げられる。
【0148】
【化46】

【0149】
(一般式(5−1)中、R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Yは、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表す。R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。R18とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R19とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。XはMaと結合可能な基を表し、aは0、1または2を表す。)
【0150】
一般式(5−1)中のR12〜R15、およびR17は、それぞれ一般式(5)中のR12〜R15、およびR17とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(5−1)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(5)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0151】
一般式(5−1)中、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、t−オクチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ)、またはヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール、3−アミノピラゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン)を表す。
【0152】
一般式(5−1)中、R18およびR19で表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、およびヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0153】
一般式(5−1)中、Xは、NR、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa、酸素原子、または硫黄原子を表す。RとRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)を表す。
RとRaで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基は、更に、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0154】
一般式(5−1)中、Yは、NRc、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表す。Rcは、上記XのRと同義である。
【0155】
一般式(5−1)中、R18とYとが互いに結合して、R18、Y、および炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、または7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0156】
一般式(5−1)中、R19とYとが互いに結合して、R19、Y、および炭素原子と共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、上記のR18とYおよび炭素原子で形成される環から、1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0157】
一般式(5−1)中、R18とY、およびR19とYが結合して形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な環である場合には、上記一般式(4)中のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0158】
一般式(5−1)中、XはMaと結合可能な基を表し、一般式(5)におけるXと同様な基が挙げられる。aは0、1、または2を表す。
【0159】
一般式(5−1)で表される染料の好ましい態様としては、R12〜R15、R17、およびMaはそれぞれ、一般式(4)で表される染料の説明で記載した好ましい態様であり、XはNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、又は酸素原子であり、XはNRa(Raは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基)、又は酸素原子であり、YはNRc(Rcは水素原子、又はアルキル基)、窒素原子、又は炭素原子であり、Yは窒素原子、又は炭素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、又はR18とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、又はR19とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0又は1を表す。
【0160】
一般式(5−1)で表される染料の更に好ましい態様としては、R12〜R15、R17、Maはそれぞれ、一般式(4)で表される染料の説明で記載した特に好ましい態様であり、XおよびXは、酸素原子であり、YはNHであり、Yは窒素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、又はR18とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、又はR19とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0又は1を表す。
【0161】
<一般式(5−2)>
一般式(5)で表される染料の他の実施形態として、一般式(5−2)で表される染料が挙げられる。
【0162】
【化47】

【0163】
(一般式(5−2)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。)
【0164】
一般式(5−2)中のR11〜R17は、それぞれ一般式(5)中のR11〜R17と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(5−2)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(5)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0165】
次に、一般式(5)、一般式(5−1)、および一般式(5−2)で表される染料の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、他の具体例として、特願2008−149467号明細書の段落番号[0058]〜[0074]に記載の染料などが挙げられる。
【0166】
【化48】

【0167】
【化49】

【0168】
上記染料は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号、同2002−155052号、特許第3614586号、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)等に記載の方法で合成することができる。
【0169】
<一般式(6)>
以下に、一般式(6)で表される染料について説明する。
【0170】
【化50】

【0171】
一般式(6)中、R〜RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R〜RおよびRで表される置換基は、上述した置換基と同義であり、好ましい態様も同じである。
〜RおよびRで表される置換基が更に置換可能な基である場合には、該置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0172】
一般式(6)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、アニリノ基が好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましい。さらに好ましくは、アルキル基であり、最も好ましくは、三級アルキル基である。
【0173】
一般式(6)中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルホンアミド基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
【0174】
一般式(6)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、好ましくはアルキル基である。また、RおよびRで表される各基は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0175】
一般式(6)中、RとR、RとR、RとR、RとR、および/またはRとRとは互いに結合して、それぞれ独立に、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。5員環、6員環、または7員環としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ジヒドロピロール、テトラヒドロピリジンなどが挙げられる。該各環は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0176】
一般式(6)中、ZaおよびZbは、それぞれ独立に、=N−または=C(R)−を表し、Rは水素原子または置換基を表す。Rで表される好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である。Rで表される置換基は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0177】
一般式(6)中、Zaが=N−で、Zbが=C(R)−であることが好ましく、更に好ましくは、Zaが=N−で、Zbが=C(R)−で、Rがアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。
【0178】
一般式(6)で表される染料のうち、下記一般式(6−1)で表される染料が好ましい。
【0179】
【化51】

【0180】
一般式(6−1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、または置換基を表す。R〜Rで表される置換基は、上記一般式(6)中のR〜RおよびRで表される置換基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0181】
一般式(6−1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。また、Rで表される各基は、さらに上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0182】
一般式(6−1)中、R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R〜R14で表される置換基は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0183】
一般式(6−1)中、ZaおよびZbは、それぞれ独立に、=N−または=C(R)−を表し、Rは水素原子または置換基を表す。Rで表される好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である。Rで表される置換基は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0184】
一般式(6−1)中、RとR、RとR、RとR、および/またはRとR14とは互いに結合して、それぞれ独立に、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。5員環、6員環、または7員環としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ジヒドロピロール、テトラヒドロピリジンなどが挙げられる。該各環は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0185】
一般式(6)で表される染料のうち、下記一般式(6−2)で表される染料がさらに好ましい。
【0186】
【化52】

【0187】
一般式(6−2)中、R〜R、R、R〜R14は、上記一般式(6−1)中のR〜R、R、R〜R14とそれぞれ同義であり、これらの好ましい態様もそれぞれ同様である。
【0188】
一般式(6−2)中、R15は、水素原子または置換基を表す。R15で表される好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である。R15で表される置換基は、上述した置換基で置換されていてもよく、2以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0189】
一般式(6−2)で表される染料の好ましい範囲は、以下の通りである。一般式(6−2)中のRが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルバモイルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基、ホスホニル基、またはホスフィノイルアミノ基であり、R、RおよびRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、スルホ基、ホスホニル基、またはホスフィノイルアミノ基であり、Rがアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R〜R14が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基であり、R15が、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である化合物が好ましい。
【0190】
さらに、一般式(6−2)中のRが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基であり、R、RおよびRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基であり、Rがアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、R〜R14が、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基であり、R15が、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である化合物がより好ましい。
【0191】
またさらに、一般式(6−2)中のRがアルキル基であり、R、RおよびRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボンアミド基、ウレイド基、またはアルコキシカルボニルアミノ基であり、Rがアルキル基であり、R〜R14が、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基であり、R15がアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基である化合物がより好ましい。
【0192】
またさらに、一般式(6−2)中のRが三級アルキル基(好ましくは炭素数4〜16、より好ましくは炭素数4〜8の三級アルキル基である。例えば、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、1−アダマンチル、エチルシクロヘキシル)であり、R、RおよびRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子である。)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル)、またはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基である。例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ)であり、Rがアルキル基(好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、オクチル、2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル)であり、RおよびR10がアルキル基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、最も好ましくはメチル)であり、R11〜R13が水素原子であり、R14がアルキル基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、最も好ましくはメチル)であり、R15がアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である化合物が最も好ましい。
【0193】
以下に、上記一般式(6)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0194】
【化53】

【0195】
上述した染料は、各インクジェット用インクに少なくとも1つ含まれていればよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、得られる色画素が優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、インクジェット用インク(R)においては、一般式(1−a)で表される染料、一般式(1−c)で表される染料、一般式(1−d)で表される染料、および一般式(1−e)で表される染料からなる群から選択される2種以上の染料を組み合わせて使用することが好ましい。
より好ましくは、一般式(1−a)で表される染料と一般式(1−d)で表される染料との併用、一般式(1−a)で表される染料と一般式(1−e)で表される染料との併用、一般式(1−c)で表される染料と一般式(1−d)で表される染料との併用、一般式(1−c)で表される染料と一般式(1−e)で表される染料との併用が挙げられる。
【0196】
得られる色画素が優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、インクジェット用インク(G)においては、一般式(1−b)で表される染料、一般式(1−c)、一般式(1−f)で表される染料、および一般式(2)で表される染料からなる群から選択される2種以上の染料を組み合わせて使用することが好ましい。
より好ましくは、一般式(1−b)で表される染料と一般式(2)で表される染料との併用、一般式(1−c)で表される染料と一般式(2)で表される染料との併用、一般式(1−f)で表される染料と一般式(2)で表される染料との併用が挙げられる。
【0197】
得られる色画素が優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、インクジェット用インク(B)においては、一般式(3)で表される染料、一般式(5)で表される染料、および一般式(6)で表される染料からなる群から選択される2種以上の染料を組み合わせて使用することが好ましい。
より好ましくは、一般式(3)で表される染料と一般式(5)で表される染料との併用、一般式(3)で表される染料と一般式(6)で表される染料との併用が挙げられる。
【0198】
なお、2種の染料(染料A、染料B)を使用する場合は、得られる色画素が優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、その質量比(染料A/染料B)は0.1〜10が好ましく、0.25〜4がより好ましい。
【0199】
インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B)中の上述した染料の総含有量は、インク全量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、カラーフィルタとして必要な光学濃度を達成するために、膜厚が厚くなる。そのためブラックマトリクスも厚くする必要があり、ブラックマトリクス形成が困難になるので好ましくない。含有量が多すぎる場合、インク粘度が高くなり吐出が困難になる、また溶媒へ溶解しにくくなるので好ましくない。
【0200】
<重合性モノマー>
本発明のインクジェット用インクセットに使用されるインクジェット用インクは、重合性モノマーを含む。重合性モノマーの添加により、インク液滴と基板との密着性が向上する。併せて、上述した染料のインク中での分散均一性の向上や、耐候性・耐熱性などの堅牢性の向上が期待できる。特に、本発明においては、所定のClogP(ClogP(R)、ClogP(G)、ClogP(B))を示す重合性モノマー類を使用することにより、形成される色画素中の染料の分散性などを制御し、さらに各色画素間の光学性能のバランスを制御して、所望の特性(色再現性、透明性など)を有するカラーフィルタを得ることができる。
【0201】
一種または複数種の重合性モノマーが含まれるインクジェット用インク(R)では、各重合性モノマーのオクタノール/水分配係数(ClogP)と、各重合性モノマーの重合性モノマー全量に対する質量分率Wとの積の総和(ΣClogP)より求められる平均値(ClogP(R))が2以上12以下である。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、ClogP(R)が2.5〜10が好ましく、2.7〜9.0がより好ましい。上記範囲外であると、得られる色画素の外観特性や耐薬品性などが劣化する。ClogP(R)の詳細な説明は後述する。
なお、インクジェット用インク(R)で使用される各重合性モノマーのClogPは、その平均値が上記範囲であれば特に限定されない。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、含有される少なくとも1種の重合性モノマーのClogPが、2以上12以下であることが好ましく、2.5〜10がより好ましく、2.7〜9.0がさらに好ましい。なかでも、含有されるすべての重合性モノマーが上記範囲であることが好ましい。
【0202】
好ましいモノマーの具体例としては、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0203】
また、一種または複数種の重合性モノマーが含まれるインクジェット用インク(G)では、各重合性モノマーのオクタノール/水分配係数(ClogP)と、各重合性モノマーの重合性モノマー全量に対する質量分率Wとの積の総和(ΣClogP)より求められる平均値(ClogP(G))が0以上9以下である。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、ClogP(G)が1〜8が好ましく、1.5〜6.5がより好ましい。上記範囲外であると、得られる色画素の外観特性や耐薬品性などが劣化する。ClogP(G)の詳細な説明は後述する。
なお、インクジェット用インク(G)で使用される各重合性モノマーのClogPは、その平均値が上記範囲であれば特に限定されない。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、含有される少なくとも1種の重合性モノマーのClogPが、0以上9以下であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜6.5がさらに好ましい。なかでも、含有されるすべての重合性モノマーが上記範囲であることが好ましい。
【0204】
好ましいモノマーの具体例としては、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0205】
さらに、一種または複数種の重合性モノマーが含まれるインクジェット用インク(B)では、各重合性モノマーのオクタノール/水分配係数(ClogP)と、各重合性モノマーの重合性モノマー全量に対する質量分率Wとの積の総和(ΣClogP)より求められる平均値(ClogP(B))が−2以上7以下である。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、ClogP(B)が−1.5〜6.5が好ましく、−1〜4.5がより好ましい。上記範囲外であると、得られる色画素の外観特性や耐薬品性などが劣化する。ClogP(B)の詳細な説明は後述する。
なお、インクジェット用インク(B)で使用される各重合性モノマーのClogPは、その平均値が上記範囲であれば特に限定されない。なかでも、得られる色画素の耐薬品性、及び透明性(透過率)がより優れる点から、含有される少なくとも1種の重合性モノマーのClogPが、−2以上7以下であることが好ましく、−1.5〜6.5がより好ましく、−1〜4.5がさらに好ましい。なかでも、含有されるすべての重合性モノマーが上記範囲であることが好ましい。
【0206】
好ましいモノマーの具体例としては、ECH変性グリセロールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、グリセロールジメタクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0207】
なお、得られるカラーフィルタの色再現域がより広がり、また生産時の歩留まりが向上し、生産性の向上が期待される点より、ClogP(R)、ClogP(G)およびClogP(B)が、以下の式(A)を満足することが好ましい。特に、以下の式の関係を満たすことにより、各インク中での上述した染料と重合性モノマーとの相溶性が優れ、さらに形成される各色画素間の光学的関係も良好なものとなり、色再現性などがより向上する。なお、ClogP(R)、ClogP(G)、ClogP(B)それぞれの間の差は以下の関係を満たせば特に限定されないが、色再現性などの点から7以下が好ましい。
式(A):ClogP(R)>ClogP(G)>ClogP(B)
【0208】
logP値は、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、オクタノール相と水相との間での化学物質の分配の程度を表す指標であり、下記計算式1のように定義される。
【0209】
【数2】

【0210】
上記計算式1より、logPの値が高くなるほど、その化学物質は疎水性が高いことを意味し、logPの値が低くなるほど、その化学物質は親水性が高いことを意味する。例えば、logPの値が0以下の化学物質は、オクタノール相よりも水相に溶解し易く、また、logPの値が1の化学物質は、水相への溶解性に較べてオクタノール相に対して10倍の溶解性を持つといえる。
一般に、logPは、n−オクタノールと水を用いて実測により求めることもできるが、本発明においては、具体的に、logP値推算プログラムを使用して分配係数(ClogP値)(計算値)を求めることができる。
【0211】
logPの推算値であるClogP値についても若干説明する。本明細書におけるClogPは、米国Pomona大学のC.Hansch,A.LeoらのMedchemプロジェクトによって開発されたlogP値推算プログラム:ClogPtalk(厳密にはDaylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたCLOGPプログラム)を使用している。このプログラムは「Hansch−Leoのフラグメント法」に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計することによりlogP値を推算している。logP値の推算手法には、置換基パラメータによる方法、Atom Fragment法、Rekkerのフラグメント法など他にも様々な方法があり、各種プログラムも開発・市販されている。適用する化合物の系統により実測値との相関性が左右されるが、概して精度が良くしかも短時間に計算できるため、CLOGPは現在のところ世界で最も広く使われているプログラムと考えられている。
【0212】
上記ClogPの質量平均値であるClogP(R)、ClogP(G)、ClogP(B)は、以下の式(X)〜(Z)より求めることができる。なお、Σは合計を表す。式(X)〜(Z)より得られる値は、各インクジェット用インクに含まれる重合性モノマーの親水性および疎水性の程度を示す。
【0213】
【数3】

【0214】
式(X)中、Wiはインクジェット用インク(R)中のi番目の重合性モノマー質量の重合性モノマー全量に対する質量比(i番目の重合性モノマー質量/全重合性モノマー質量)(質量分率)、Piはインクジェット用インク(R)中のi番目の重合性モノマーのClogP値を表す。iは1〜nの整数を表す。
式(Y)および式(Z)でも同様に、WiおよびPiは、それぞれインクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B)中におけるi番目の重合性モノマーの質量分率およびClogP値を表す。
つまり、各重合性モノマーのClogP値に、該重合性モノマーの全重合性モノマー中における質量分率を乗じて得た値を求め、それらを足した総和である。
なお、式(X)〜式(Z)中において、nは各インクジェット用インクに含有される重合性モノマーの数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。例えば、2種の重合性モノマーを使用する場合はn=2となり、3種の重合性モノマーを使用する場合はn=3となる。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
【0215】
より具体的には、1種の重合性モノマーのみを使用する場合は、n=1となり、使用される重合性モノマーのClogP値がClogP(R)(ClogP(G)、ClogP(B)においても同様)に該当する。
また、重合性モノマーを2種併用する場合(モノマーA:ClogP(A)、モノマーB:ClogP(B))、ClogP(R)(ClogP(G)、ClogP(B)においても同様)は、以下の式より求めることができる。
ClogP(R)={ClogP(A)×(モノマーAの質量/全モノマー質量)}+{ClogP(B)×(モノマーBの質量/全モノマー質量)}
さらに、重合性モノマーを3種併用する場合(モノマーA:ClogP(A)、モノマーB:ClogP(B)、モノマーC:ClogP(C))、以下の式より求めることができる。
ClogP(R)={ClogP(A)×(モノマーAの質量/全モノマー質量)}+{ClogP(B)×(モノマーBの質量/全モノマー質量)}+{ClogP(C)×(モノマーCの質量/全モノマー質量)}
【0216】
なお、2種類以上の重合性モノマーを使用する場合、モノマー同士の相溶性がより優れ、得られる色画素の性能(透明性など)がより向上する点で、重合性モノマー間のClogPの差は8以内が好ましく、6以内がより好ましい。
【0217】
重合性モノマーとしては、具体的には、ラジカル重合性モノマー、カチオン重合性モノマーなどが挙げられ、各種置換基のバリエーションが多く、入手が容易な点で、(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ系モノマー、およびオキセタニル系モノマーから選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0218】
重合性モノマーとしては、重合性基を2つ以上有するモノマー(以下、「2官能以上のモノマー」ともいう)が好ましい。重合性モノマーとしては、活性エネルギー線および/または熱により重合反応可能であれば特に限定されるものではないが、膜の強度や耐薬品性などの点から、重合性基を3つ以上有するモノマー(以下、「3官能以上のモノマー」ともいう)がより好ましい。
なかでも、得られる色画素の堅牢性および耐熱性がより優れる点で、重合性基を3〜12つ有するモノマーが好ましい。なかでも、重合性基の数は、4〜8つが好ましい。上記範囲内であれば、色画素の耐久性、モノマーの入手性、合成時の難度の点で好ましい。
【0219】
上述した重合性基の種類としては、特に制限はないが、上記の通り、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2001−350012号公報の段落番号[0061]〜[0065]に記載のエポキシ基含有モノマー、特開2002−371216号公報の段落番号[0016]に記載のアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマー、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2003−341217号公報の段落番号[0021]〜[0084]および特開2004−91556号公報の段落番号[0022]〜[0058]などに記載のオキセタニル基含有モノマー、並びに、シーエムシー出版「反応性モノマーの市場展望」に記載のモノマーなどが挙げられる。
【0220】
また、(メタ)アクリル系モノマーであるアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、などの単官能のアクリレートまたはメタアクリレートや、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートなどのアクリレートまたはメタクリレートや、グリセリンやトリメチロールエタンなどの多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化して得られるトリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能のアクリレートやメタアクリレート、およびこれらの混合物を挙げることができる。また、日本接着協会誌 Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものなどが挙げられる。単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマー、オリゴマーを適宜組み合わせて粘度を調整することが好ましい。単官能モノマーや2官能モノマーを併用すると、インクの粘度が低下し、ノズル詰まりを防止できる効果が得られると共に、膜の強度が補われる。また、基板との密着を付与するために、25℃での粘度が700mPa・s以上の高粘度の多官能モノマーやウレタンアクリレートなどの高極性モノマー、オリゴマーなどを少量併用しても構わない。
【0221】
また、重合性基の数や密度以外の観点で、水素結合による耐久性向上が期待できる点で、水酸基含有ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。具体例としては、EO変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジアクリル化イソシアヌレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ECH変性フタル酸ジアクリレート、ECH変性プロピレングリコールジアクリレート、グリセロール−1,3−ジグリセロレートジアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ECH変性エチレングリコールジメタクリレート、ECH変性フェノキシジメタクリレート、PO変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートなどが挙げられる。市販品名としてはRCC13−365、カヤラッドR−167、アロニックスM−215、デナコールアクリレートDA−722、デナコールアクリレートDA−721、デナコールアクリレートDA−911、デナコールアクリレートDA−920、デナコールアクリレートDA−931、デナコールアクリレートDA−314、アロニックスM−305、ライトアクリレートPE−3A、SR−399E、アロニックスM−400、ライトエステルG−201P、デナコールアクリレートDM−811、デナコールアクリレートDM−851、デナコールアクリレートDM−832、エポキシエステル3002Mなどが挙げられる。
【0222】
インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B)中の上述した重合性モノマーの総含有量は、インク全量に対して、5〜40質量%が好ましく、8〜25質量%がより好ましい。モノマーの使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなったり、透明導電膜を付与する際にクラックやレチキュレーションが発生しにくくなったり、配向膜を設ける際の耐溶剤性が向上したり、電圧保持率を低下させない等の効果が得られる。
【0223】
<有機溶剤>
本発明のインクジェット用インクセットに使用されるインクジェット用インクは、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、各成分の溶解性を満足すれば特に限定されない。
有機溶剤の具体例としては、水や、エステル類、例えば、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなど;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなど;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなど;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチルなど;エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなど;ケトン類、例えば、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなど;芳香族炭化水素類、例えば、キシレンなど;ジシクロヘキシルメチルアミンなどの有機溶剤、などが好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を併用して使用しても構わない。
【0224】
インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B)中の有機溶剤の含有量は、インク全量に対して、30〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると1画素内に打滴されるインク量が保たれ、画素内でのインクの濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、インク中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶媒以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりのインク必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法でインクを付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
【0225】
本発明で用いられる有機溶剤の沸点は、130〜280℃が好ましい。沸点が低すぎると、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない。沸点が高すぎると、プリベークによる溶媒除去の点で好ましくない。なお、有機溶剤の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall 社)などの物性値表により知ることができる。
【0226】
有機溶剤の好ましい使用形態の一つとして、沸点が160℃以上の有機溶剤を、有機溶剤全量中の10質量%以上含むことが好ましい。なかでも、沸点が160〜250℃の有機溶剤が好ましく、180〜240℃がより好ましい。沸点が上記所定範囲の有機溶剤の含有量は、使用される有機溶剤全量中、10質量%以上が好ましく、20〜100質量%が好ましく、25〜75質量%がより好ましい。所定の沸点を有する有機溶剤を上記範囲内で含有すると、インクの乾燥を制御でき、吐出安定性が付与できる点、吐出後のインクのレベリング性向上の点で好ましい。一方、沸点の低い有機溶剤を含む場合は、インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇や固形分の析出等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。また、インクが基板面に着弾し、基板面上を濡れ拡がる場合も、濡れ拡がりの縁の部分において溶媒が蒸発することでインクの粘度上昇が起こり、ピニング(PINNING)という現象により、濡れ拡がりが抑えられる場合がある。
なお、沸点が160℃以上の有機溶剤としては、例えば、2−ヘプタノール、シクロヘキサノール、2−フルアルデヒド、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−メチルシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミド、2−(メトキシメトキシ)エタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−ヘプタノール、N,N−エチルホルムアミド、2−オクタノール、テトラヒドロフリルアルコール、N−メチルホルムアミド、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、2,3−ブタンジオール、グリセリンモノアセテート、2−エチル−1−ヘキサノール、1,2−プロパンジオール、ジメチルスルホキシド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、1,2−ブタンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1−オクタノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン、ベンジルアルコール、N−メチルアセトアミド、1,3−ブタンジオール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ホルムアミド、1−ノナノール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、α−テルピネオール、アセトアミド、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−デカノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、2−ブテン−1,4−ジオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,5−ペンタンジオール、1−ウンデカノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0227】
<重合開始剤>
本発明のインクジェット用インクセットに使用されるインクジェット用インクは、重合性モノマーおよびバインダー樹脂の重合反応を促進する目的で、重合開始剤(例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤)を含有していてもよい。重合開始剤は、インクジェット用インクに用いる重合性モノマーおよびバインダーの種類、重合経路にあわせて選択することができる。重合開始剤としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の段落番号[0086]〜[0117]に記載される重合開始剤を用いてもよい。
なかでも、オキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類、α―ヒドロキシアルキルケトン類、ロフィンダイマー類、およびトリハロメチルトリアジン類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0228】
重合開始剤の含有量は、インク全量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。また、上記化合物は1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0229】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクセットに使用されるインクジェット用インクは、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、インクジェット吐出安定性、着弾時のレベリング性の点で好ましい。
界面活性剤の例として、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤、有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルのベタイン類が挙げられる。アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリール硫酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アルキルリン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸系高分子のアンモニウム塩などが挙げられる。有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルアミンアセテート等が挙げられる。その他、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
【0230】
インクジェット用インク(インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B))中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インクジェット用インク全量に対して、5質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねること無く、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0231】
<多官能チオール化合物>
本発明のインクジェット用インクセットに使用されるインクジェット用インクは、複数のチオール基を有する多官能チオール化合物を含有していてもよい。所定の官能数の多官能チオール化合物を使用することにより、堅牢性および耐熱性に優れると共に、レベリング性に優れた色画素を形成することができる。さらには、このチオール化合物を使用することにより、インク自体の膜強度を低下させずに、インクの粘度を低く保つことができ、吐出安定性にも優れたインクが得られる。
【0232】
上記多官能チオール化合物は、分子内にチオール基を3〜6個有していることが好ましい。チオール基の数が3個より少ないと、得られる画素の耐熱性、耐薬品性に劣る。また、チオール基の数が6個より多いと、合成が非常に困難であり、かつ、使用するチオール化合物の粘度が高すぎて、インクの吐出安定性が劣る。
多官能チオール化合物の分子量は、特に制限されないが、インクの吐出安定性の観点から、200〜1200が好ましく、400〜1000がより好ましい。
【0233】
多官能チオール化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多官能チオール化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)が好ましい。
【0234】
インクジェット用インク(インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B))中の多官能チオール化合物の含有量は、インク全量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、2〜12質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、色画素の堅牢性や耐熱性に関する効果が十分に得られないので好ましくない。含有量が多すぎる場合、表面形状など、画素の膜質が悪化する事があり好ましくない。
【0235】
上述のインクジェット用インクは、必要に応じて、他の添加剤(例えば、硬化剤、熱潜在性触媒、バインダー樹脂など)を含有していてもよい。
【0236】
<インクジェット用インクの製造方法>
インクジェット用インクの製造には、公知のインクジェット用インクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶媒中に染料を溶解させた後、インクジェット用インクに必要な各成分(例えば、重合性モノマー、重合開始剤)を溶解させてインクジェット用インクを調製することができる。
【0237】
<インクジェット用インクの物性値>
インクジェット用インク(インクジェット用インク(R)、インクジェット用インク(G)、インクジェット用インク(B))の物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出観点から、25℃において2〜30mPa・sであることが好ましく、2〜20mPa・sがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となるが、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発しやすくなり、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、装置の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。
【0238】
なお、粘度は、25℃にインクジェット用インクを保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L))を用いることにより測定される値である。
【0239】
また、インクジェット用インクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性の向上、および吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。インクジェット用インクの温度を所定精度で一定に保持するためには、インク温度検出手段と、インク加熱または冷却手段と、検出されたインク温度に応じて加熱または冷却を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
【0240】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0241】
また、インクジェットインクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインクジェットインクの液物性を所定の範囲に保持することが好ましい。このためには、基板および/または基板の近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは、基板を支持する台の熱容量を大きくするなどにより、温度変化の影響を低減することも有効である。
【0242】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、図面に示す好適実施形態を参照して、本発明のインクジェット用インクセットを用いたカラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタは、本発明のインクジェット用インクセットを用いてインクジェット法により形成された色画素を備えることを特徴とするものであり、すなわち、本発明のインクジェット用インクセットを用いてインクジェット法により製造されたことを特徴とするものである。また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、本発明のインクジェット用インクセットをインクジェット法により付与して画素を形成する工程(以下、「画素形成工程」という)を有することを特徴とする。好ましくは、画素形成工程は、基板上の隔壁により区画された凹部にインクジェット法により液滴としてインクを付与する描画工程と、さらに、描画された少なくとも1色の画素(凹部内のインク)を活性エネルギー線の照射により硬化して色画素を形成する照射工程や、所望の色相の画素(凹部内のインク)の全てを形成した後に熱により硬化して色画素を形成する加熱工程を含む硬化工程を有し、必要に応じてベーク処理などの他の工程を設けて構成することができる。
【0243】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートであり、図2(a)〜(f)は、本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
図1および図2(a)〜(f)に示すように、本発明のカラーフィルタ10の製造方法は、基板12にブラックマトリックス(BM)となる隔壁(バンク)14を形成する隔壁形成工程S102(図2(b)参照)と、隔壁14に撥液性(撥インク性)を付与する撥液処理工程S104と、隣接する隔壁14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インクセットを構成するインクジェット用インク18(以後、単にインクジェット用インク18とも称する)をインクジェット法により付与して色画素20を形成する画素形成工程S106(図2(c)〜(e)参照)と、形成された色画素20を保護する保護膜22を形成してカラーフィルタ10を製造する保護膜形成工程S108(図2(f)参照)とを有する。
【0244】
また、画素形成工程S106は、上述したように、隔壁14間の凹部16にインク18をインクジェット法により液滴として吐出して付与する描画工程S110(図2(c)参照)と、凹部16に付与されたインク18を乾燥させてインク18内の溶剤を除去してインク残部18aとする予備処理工程S112(図2(d)参照)と、基板12上の凹部16内のインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aを加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させ、色画素20を形成する硬化工程S114(図2(e)参照)とを有する。
なお、隔壁14は、画素形成工程S106の前の隔壁形成工程S102において、予め基板12上に形成されたものであり、隔壁14の隔壁形成工程S102およびその形成方法の詳細については後述し、まず始めに、画素形成工程S106について説明する。
【0245】
<画素形成工程>
図2(c)〜(e)に示すように、画素形成工程S106では、描画工程S110において、隔壁(色離隔壁)14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18の液滴をインクジェット法で付与して、硬化工程S114で付与されたインク18を硬化して画素20を形成する。この画素20は、カラーフィルタ10を構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの色画素となるものである。
本発明のインクジェット用インクセットを用いることにより、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の色画素を有するカラーフィルタ10を製造することができる。なお、カラーフィルタの基板12としては、特に限定されず、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板を用いることができる。
【0246】
描画工程S110において用いられるインクジェット方式としては、特に限定されず、帯電したインクジェット用インクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクジェット用インクを噴射する方法、インクジェット用インクを加熱してその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の、各種の方法を採用できる。
使用されるインクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができ、オンデマンド型の種々の方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましく、特に、オンデマンド型のピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列としても千鳥格子状に配置としてもよい。
さらに、ヘッドは、インクの温度が管理できるように温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は、5〜25mPa・sとなるように射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるようにインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。ノズルの形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、矩形等の形状に制限されるものではない。ノズル径は、10〜100μmの範囲であることが好ましい。なお、ノズルの開口部自身は必ずしも真円とは限らないが、その場合、ノズル径は該開口部の面積と同等の円で表したときの径とする。
【0247】
本発明のインクジェット用インクセットを用いて製造されるカラーフィルタとしては、インクジェット用インク(R)より形成される赤色(R)の色画素、インクジェット用インク(G)より形成される緑色(G)の色画素、インクジェット用インク(B)より形成される青色(B)の色画素を有する3色のカラーフィルタや、さらに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色画素を有する4〜6色の色画素を有するカラーフィルタなどが挙げられる。なお、単色のカラーフィルタを製造してもよい。
【0248】
本発明のインクジェット用インクセットとともに、カラーフィルタを形成するためのそれぞれの着色用インクとして、公知のものも使用することができる。例えば、マゼンタ色調インクの場合は、カップリング成分(以降、カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールまたはヘテリルアゾ染料;例えば、カプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)などを含んだインクを挙げることができる。
【0249】
イエロー色調用インクとしては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のような複素環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0250】
シアン色調用染料としては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのような複素環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0251】
カラーフィルタパターンの形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0252】
本発明においては、図2(c)に示すように、描画工程S110において基板12上の凹部16にインク18の液滴を付与してインク18の層を形成した後、図2(d)に示すように、予備処理工程S112でインク18内に含まれる有機溶剤を乾燥して除去してインク残部18aとした後に、図2(e)に示すように、このインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程(以下、第1の硬化工程ともいう)および/またはインク残部を加熱する加熱工程(以下、第2の硬化工程ともいう)からなる硬化工程S114によりインク残部18aを重合して画素20を形成してもよい。また、インク残部の熱重合が開始する温度をT℃としたときに、予備処理工程S112において、T℃未満の温度で予備加熱(以下、予備加熱工程ともいう)を行ってインク18内に含まれる有機溶剤を強制的に乾燥させて除去してインク残部18aとした後に、インク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aをT℃以上の温度で加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させて、画素20を形成してもよい。
【0253】
<第1の硬化工程>
描画工程S110で形成された少なくとも1色の画素形成のための凹部16内のインク残部(以下、未硬化画素インクという)18aに活性エネルギー線を照射して硬化する工程(第1の硬化工程)を設けることができる。第1の硬化工程では、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)を含む各色のインクを硬化させることにより、硬化した画素20を形成することができる。硬化は、1色の未硬化画素インク18aを形成するごとに行ってもよいし、複数色または全色の未硬化画素インク18aを形成した後に行うようにしてもよい。
【0254】
第1の硬化工程において、1色または複数色毎に凹部16内のインク、すなわち未硬化画素インク18aを硬化させる場合、硬化させる順序は、特に制限的ではなく、どのような順序でも良い。
また、R,G,Bなどのインクの硬化は、インクの持つ感光波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発するエネルギー源を用いて重合硬化を促進する露光処理を施すことにより行うことができる。
【0255】
エネルギー源としては、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、電子線、X線、分子線、またはイオンビームなど、既述の重合開始剤が感応するものを適宜選択して用いることができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性光線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行うことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0256】
活性エネルギー線の照射時間としては、モノマーと重合開始剤との組合せに応じて適宜設定することができるが、例えば、1〜30秒とすることができる。
【0257】
<第2の硬化工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)など所望の色相の未硬化画素インク18aを、熱により硬化する工程(第2の硬化工程)を設けることができる。上記のように、第1の硬化工程を設けると共に第2の硬化工程を設けることによって、カラーフィルタ10の製造効率と表示特性とを両立させことができる。また、第2の硬化工程のみで硬化させてもよい。
【0258】
本第2の硬化工程では、隔壁および所望の色相からなる未硬化画素インクを形成し、第1の硬化工程を行った後に、さらに加熱処理(いわゆるベーク処理)を行って、熱による硬化を施すことができる。すなわち、隔壁および光照射により光重合した画素が形成されている基板を、電気炉、乾燥器などに入れて加熱する、あるいは赤外線ランプを照射して加熱することができる。
【0259】
このときの加熱温度および加熱時間は、インクジェット用インクの組成や画素の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、および紫外線吸光度を確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0260】
また、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法では、活性エネルギー線の露光および/または熱処理による画素形成用凹部(未硬化画素)内のインクの重合を行う前に、予備処理工程S112として、予備加熱工程を設けても良い。予備加熱工程における加熱温度は特に制限は無いが、未硬化画素インクの熱重合が開始する温度をT℃とした場合に、T℃未満であり、未硬化画素インクの重合が起きない温度が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。本予備加熱工程を入れることで、インクジェット法により付与されたインク中の有機溶剤の蒸発が促進され、カラーフィルタを効率的に作製することができる上に、インク残部の粘度が熱により低下するため、より高い流動性が得られ、高い平坦性の画素を有するカラーフィルタを得ることが可能になる。
【0261】
上記予備加熱工程は、本発明のごときインク残部が流動性を有するインクであれば、画素内が熱によって重合するインクのみならず、光によって重合するインクにおいても有効である。光によって重合するインクの場合、上述のインクが熱重合を開始する温度Tは、熱によって光重合開始剤などが分解して重合反応が開始する温度または、モノマー自体が熱によって分解し、重合反応が開始する温度を意味する。予備加熱工程の時間は特に制限が無いが、1〜5分間行うことが好ましい。
【0262】
温度Tは、以下のようにして求めることができる。インクを加熱し、加熱によりインクの重合が開始し、インクのゲル化などが観察される温度をTとする。より具体的には、加熱前のインク粘度に対して、加熱後のインク粘度の上昇が5mPa・s以上の場合の加熱温度をTとする。
【0263】
本発明のインクを用いたカラーフィルタの製造方法においては、描画工程S110から予備加熱工程(S112)および第1の硬化工程と第2の硬化工程とからなる硬化工程(S114)までの画素形成工程S106を、24時間以内で行う事が好ましく、12時間以内で行う事がより好ましく、6時間以内に行う事がさらに好ましい。描画工程S110から、最終の硬化工程(第2の硬化工程)S114までの画素の形成を24時間以内で行うことにより、画素の面状を向上させることができる。
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、画素形成工程S106、すなわち描画工程S110から予備加熱工程(S112)、第1の硬化工程および第2の硬化工程(S114)までを、1色毎に行っても良いし、複数色毎に行っても良いし、または描画工程S110で全色について描画を行い、予備加熱工程(S112)による予備加熱、硬化工程S114による硬化を全色について行っても良い。また、画素形成工程S106を1色または複数色毎に行う場合、形成する画素の色の順序は、特に制限的ではなく、どのような色の順序でも良い。
【0264】
<隔壁形成工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法では、上述した画素形成工程S106において、図2(c)〜(e)に示すように、基板12上に形成された隔壁14により囲まれた凹部16に、インクジェット法により本発明のインクジェット用インク18の液滴を付与して画素20が形成される。
この隔壁14は、特に制限的ではなく、公知の隔壁を用いることができ、どの様なものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。
そのため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102において、図2(b)に示すように、図2(a)に示す基板12上に、このようなブラックマトリクスの機能を持つ遮光性のある隔壁14を形成する。
【0265】
なお、この隔壁14は、公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材を用い、同様の公知の方法により作製することができる。例えば、特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]や、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクス(いわゆる樹脂ブラックマトリックス)や、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020] や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。また、隔壁14は、ブラックマトリクス機能と隔壁機能とを別々に持つ層からなる2層構造であっても良い。例えば、特開2004−361491号公報の段落番号[0054]〜[0057]や、特開2004−295039号公報の段落番号[0067]〜[0069]や、特開2006−86128号公報の段落番号[0068]〜[0069]、[0103]、[0109]〜[0110]に記載の金属遮光膜とその上に形成された樹脂製、好ましくは、撥液性の樹脂製の隔壁(バンク)層とからなる2層構造であっても良い。
本発明法では、上述した公知の作製方法の中でも、コスト削減の観点から感光性樹脂転写材料を用いることが好ましい。感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも遮光性を有する樹脂層を設けたものであり、基板に圧着して、遮光性を有する樹脂層を基板に転写することができる。
【0266】
感光性樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている感光性樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層(本発明において「感光性樹脂層」とは光照射により硬化しうる樹脂をいい、それが遮光性を有するときには「遮光性を有する樹脂層」ともいい、目的の色に着色されているときには「着色樹脂層」ともいう。)/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、保護フィルムや、転写材料の作製方法については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066] や特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]に記載のものが好適なものとして挙げられる。
【0267】
また、このような隔壁14は、インクジェット用インクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。
このため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102の後、撥液処理工程S104において、図2(b)に示す基板12上の隔壁14に、撥液処理、すなわち撥インク処理を施す。
なお、このような撥インク処理としては、例えば、特開2007−187884号公報の段落番号[0086]〜[0087]に記載された撥インク処理方法、具体的には、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
【0268】
これらの他、本発明法に適用可能な撥インク処理方法として、特開2004−361491号公報の段落番号[0058]に記載された撥インク処理方法(例えば、特開平9−203803号公報、特開平9−230129号公報および特開平9−230127号公報参照)や、特開2006−86128号公報の段落番号[0074]〜[0075]、[0111]〜[0118]、[0130]に記載された撥インク処理方法などを挙げることができる。
なお、上述した例では、基板12上の隔壁14に撥インク処理を施しているが、本発明はこれに限定されず、同時に基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
なお、隔壁14が撥インク性を備えている場合には、撥液処理工程S104は不要であるが、その場合においても、基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
【0269】
図2(e)に示すように、基板12上に隔壁14および画素20を形成して、カラーフィルタ10を作製した後には、耐性向上の目的で、図2(f)に示すように、画素20および隔壁14の全面を覆うように保護層としてオーバーコート層22を形成することができる。オーバーコート層22は、R,G,Bなどの画素20および隔壁14を保護すると共に表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは設けないことが好ましい。オーバーコート層22は、樹脂(OC剤)を用いて構成することができ、樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性で優れており、インクジェット用インクの樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としており、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
【0270】
本発明のカラーフィルタは、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
【0271】
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、電子ペーパや有機EL素子デバイスなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示デバイスにも適用可能である。
【0272】
以上、本発明のインクジェット用インクセット、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスついて、種々の実施形態や実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例や実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【実施例】
【0273】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0274】
(隔壁形成用の濃色組成物の調製)
濃色組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、さらに攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得られた。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0275】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0276】
【化54】

【0277】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0278】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0279】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0280】
【化55】

【0281】
【表1】

【0282】
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃で3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色組成物層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmで隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0283】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cmにて基板の濃色組成物層K1が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃で50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0284】
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0285】
<インクジェット用インク(R)(赤色(R)用インク)>
下記の成分を表2に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して赤色用インク液(R−1〜R−6、R比較−1〜R比較−3)を調製した。
【0286】
なお、赤色(R)用インク、後述する緑色(G)用インク、青色(B)用インクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。
なお、後述するモノマーのClogP値はClogPtalk(Daylight CIS社製)を使用した計算値である。また、表2〜表4中の各実施例のClogP(R)、ClogP(G)およびClogP(B)は、式(X)〜式(Z)に基づいたClogP値の平均値である。
(有機溶剤)
・シクロヘキサノン(和光純薬社製)
・ベンジルアルコール(和光純薬社製)
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬社製)
(ラジカル重合性モノマー:[ ]はClogP値)
・グリセロール−1,3−ジグリセロレートジアクリレート[−0.989]
(Aldrich製)
・デナコールアクリレートDA−314[−0.74](ナガセケムテックス社製)
:ECH変性グリセロールトリアクリレート
・SR−399E[1.531](サートマー社製)
:ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート
・PETA[2.783](新中村化学社製(NKエステルA−TMMT))
:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・M−310[3.807](東亞合成社製(アロニックスM−310))
:PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
・D−310[4.788](日本化薬社製(KAYARAD D−310))
:アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・AD−TMP[4.85](新中村化学社製(NKエステルAD−TMP)
:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
・DPCA−20[5.204](日本化薬社製(KAYARAD DPCA−20))
:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・D−330[8.86](日本化薬社製(KAYARAD D−330))
:アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
・DPCA−120[9.96](日本化薬社製(KAYARAD DPCA−120)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(界面活性剤)
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・F781−F(大日本インキ化学工業製(メガファックF781F))
(多官能チオール化合物)
・DPMP(和光純薬社製):ペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
(重合開始剤)
・IRGACURE 819(チバスペシャルティケミカルス社製)
・IRGACURE OXE 02(チバスペシャルティケミカルス社製)
【0287】
赤色(R)用インクの染料としては、以下の染料を使用した。
・特定染料M−1(上記一般式(1−a)で表される染料に該当)
・特定染料M−2(上記一般式(1−c)で表される染料に該当)
・特定染料Y−1(上記一般式(1−d)で表される染料に該当)
・特定染料Y−2(上記一般式(1−e)で表される染料に該当)
【0288】
【化56】

【0289】
【表2】

【0290】
<インクジェット用インク(G)(緑色(G)用インク)>
下記の成分を表3に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して緑色用インク液(G−1〜G−6、G比較−1〜G比較−3)を調製した。
【0291】
緑色(G)用インクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。有機溶剤、モノマー、界面活性剤、多官能チオール、重合開始剤は、上記赤色(R)用インクの調製に使用した各材料と同じ材料を使用した。
染料としては、以下の染料を使用した。
・特定染料C−1(上記一般式(2)で表される染料に該当)
・特定染料C−2(上記一般式(2)で表される染料に該当)
・特定染料Y−3(上記一般式(1−c)で表される染料に該当)
・特定染料Y−4(上記一般式(1−f)で表される染料に該当)
・特定染料Y−5(上記一般式(1−b)で表される染料に該当)
【0292】
【化57】

【0293】
【表3】

【0294】
<インクジェット用インク(B)(青色(B)用インク)>
下記の成分を表4に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液(B−1〜B−6、B比較−1〜B比較−3)を調製した。
【0295】
青色(B)用インクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。有機溶剤、モノマー、界面活性剤、多官能チオール、重合開始剤は、上記赤色(R)用インクの調製に使用した各材料と同じ材料を使用した。
染料としては、以下の染料を使用した。
・特定染料C−3(上記一般式(3)で表される染料に該当)
・特定染料C−4(上記一般式(3)で表される染料に該当)
・特定染料M−3(上記一般式(6)で表される染料に該当)
・特定染料M−4(上記一般式(5)で表される染料に該当)
・特定染料M−5(上記一般式(5)で表される染料に該当)
【0296】
【化58】

【0297】
【化59】

【0298】
【表4】

【0299】
<粘度、表面張力の測定>
上記で調製されたインクの粘度、および表面張力を測定した。
インク粘度は、得られたインクを25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で測定した。結果を表5〜7に示す。
(測定条件)
・使用ロータ:1° 34’×R24
・測定時間 :2分間
・測定温度 :25℃
【0300】
表面張力は、得られたインクを25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて測定した。結果を表5〜7に示す。
【0301】
【表5】

【0302】
【表6】

【0303】
【表7】

【0304】
上記のように各色のインクジェット用インクにおいて、良好なインク粘度および表面張力を示した。
【0305】
<評価用カラーフィルタの作製方法(その1)>
本発明のインクジェット用インクセットを構成する上記インクジェット用インクを用いて、以下のようにして、各色のインクに対応する着色板を作製した。
まず、インクジェット用インクセットを構成する赤色(R)インクを、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、吐出を行い、その後、100℃オーブン中で2分間加熱を行った。
次に、220℃のオーブン中で30分間静置することにより、単色のカラーフィルタを作製した。なお、得られた色画素の膜厚は2.0μmであった。
上述の緑色用インク、青色用インクについても同様の方法で、単色のカラーフィルタを作製した。
【0306】
<外観検査>
上記で作製した各色の単色カラーフィルタを、倍率100倍の光学顕微鏡で観察した。視野内に大きさ1μm以上の粒子状物質が観察された場合、または相分離構造が観察された場合は、不合格(×)とし、視野内に粒子状物質および相分離構造が観察されない場合を合格(○)とした。例として、図3に粒子状物質がある場合、図4に相分離構造がある場合、図5に合格の場合の観察図を示す。結果を以下の表8〜10に示す。
【0307】
<耐薬品性評価>
上記で作製した各色の単色カラーフィルタを、評価を行う薬品(N−メチルピロリドン、2−プロパノール、5%硫酸水溶液、5%水酸化ナトリウム水溶液)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEabが3未満を◎とした。ΔEabが3以上7未満を○とした。ΔEabが7以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表8〜10に示す。
なお、ΔEabは、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0308】
なお、表8において、「R−1〜R−6」は、それぞれR−1〜R−6に記載のインクを使用して、上述の方法により作製されたカラーフィルタの評価結果を示す。表9および表10においても、同様に所定のインクを用いて作製されたカラーフィルタの評価結果を示す。
【0309】
【表8】

【0310】
【表9】

【0311】
【表10】

【0312】
上記表8〜10に示されるように、本発明のインクジェット用インクセットを構成するインクジェット用インクを用いると、優れた外観特性と耐薬品性を示す色画素が形成されることが分かった。
一方、R比較−1〜R比較−3などの比較例においては、得られた色画素中に粒子状物質や相分離構造が観察され、実用上問題があった。また、耐薬品性においても、所定の溶媒に対してΔEabが大きく、実用上問題があった。
【0313】
<評価用カラーフィルタの作製方法(その2)>
次に、上述のR−1、G−1、B−1からなるインクジェット用インクセットを用いて、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、Dimatix社製インクジェットヘッド(SE−128、ヘッド温度28℃)を搭載した富士フイルム製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、それぞれのインクを所定の位置に着弾させ、所望の濃度になるまでインクの吐出を行い、100℃にてホットプレートで2分乾燥させた。
次に、三永電機製作所製UVE−251S(光源:EL−100)を用いて、500mJ/cmの光量を照射して、インクを硬化させた。さらに220℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させ、R、G、Bのパターンからなるカラーフィルタを作製した。なお、形成された各色の膜厚は、2.0μmであった。他のR−2〜R−6、G−2〜G−6、B−2〜B−6のそれぞれのインクを用いたインクジェット用インクセットについても、以下の表11のような組み合わせにて、カラーフィルタを作製した。
【0314】
上記で得られた3色の色画素を有するカラーフィルタを用いて、以下のように外観検査、耐薬品性評価を行った。
【0315】
<外観検査>
得られたカラーフィルタの各色画素の中で、1色でも視野内に大きさ1μm以上の粒子状物質が観察された場合、または相分離構造が観察された場合を、不合格(×)とする。全ての色画素内において上記粒子状物質、または相分離構造が観察されない場合を、合格(○)とする。結果を表11にまとめて示す。
【0316】
<耐薬品性評価>
上述した単色カラーフィルタの耐薬品性評価をもとにして、以下の4段階の基準に従い評価した。実用上、Dでないことが望ましい。結果を表11にまとめて示す。
A:カラーフィルタを構成する3色の各色画素のそれぞれの上記耐薬品性評価において、◎が3つ以上あり、×がない場合
B:カラーフィルタを構成する3色の各色画素のそれぞれの上記耐薬品性評価において、◎が2つ以上あり、×がない場合
C:カラーフィルタを構成する3色の各色画素のそれぞれの上記耐薬品性評価において、◎が1つ以上あり、×がない場合
D:カラーフィルタを構成する3色の各色画素のいずかれの上記耐薬品性評価において、×がある場合
【0317】
<色再現範囲>
得られたカラーフィルタを用いて、暗室で、標準C光源を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)により、透過スペクトルを測定し、xy表示系による色度(R(xy)、G(xy)、B(xy))を求め、NTSC比を算出し、以下の4段階の基準に従い、評価した。NTSC比が高いほど、色再現範囲が広いと言える。結果を表11にまとめて示す。実用上A、Bであることが好ましく、Aであることがより好ましい。
A:NTSC比が72%以上。
B:NTSC比が68以上72%未満。
C:NTSC比が68%未満。
D:光漏れ等により、画素毎にばらつきが大きく測定に意味が無い。
【0318】
<透過率>
得られたカラーフィルタを用いて、暗室で、標準C光源(輝度:10000cd/m)を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、各色の着色部についての分光スペクトル中のピーク波長の透過率を測定した。得られた透過率について、各色の平均を求め、以下の4段階の基準に従い評価した。結果を表11にまとめて示す。実用上A、Bであることが好ましく、Aであることがより好ましい。
A:3色のそれぞれの透過率の平均が、78%以上。
B:3色のそれぞれの透過率の平均が、75%以上、78%未満。
C:3色のそれぞれの透過率の平均が、70%以上、75%未満。
D:3色のそれぞれの透過率の平均が、70%未満または、光漏れにより、測定意味をなさない。
【0319】
【表11】

【0320】
上記のように本発明のインクジェット用インクセットを用いて得られたカラーフィルタは、外観特性に優れると共に、耐薬品性、色再現範囲、透過率においても優れた性能を示した。特に、上述した式(A)の関係を満たすものは、より優れた色再現範囲を示した。また、使用される各インクジェット用インクが好適なClogPの範囲にある場合は、透過率がより優れるものとなった。
一方、比較例においては、外観特性、耐薬品性、色再現範囲、透過率のいずれの項目においても実施例と比較して劣る結果となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、以下の式(X)で表される前記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(R))が2以上12以下であるインクジェット用インク(R)と、
一般式(1−a)で表される染料〜一般式(1−f)で表される染料、および一般式(2)で表される染料からなる群より選ばれる少なくとも1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、以下の式(Y)で表される前記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(G))が0以上9以下であるインクジェット用インク(G)と、
一般式(3)で表される染料、一般式(4)で表される染料、一般式(5)で表される染料、および一般式(6)で表される染料からなる群より選ばれる1つの有機溶剤可溶性染料と、少なくとも1種の重合性モノマーと、有機溶剤とを含み、以下の式(Z)で表される前記重合性モノマーのオクタノール/水分配係数の平均値(ClogP(B))が−2以上7以下であるインクジェット用インク(B)とを含むインクジェット用インクセット。
【数1】

(上記式(X)、(Y)、および(Z)中、Wiは各インクジェット用インクに含まれるi番目の重合性モノマーの重合性モノマー全量に対する質量分率を表し、Piは各インクジェット用インクに含まれるi番目の重合性モノマーのClogP値を表し、iは1〜nの整数を表す。)
【化1】

(一般式(1−a)中、R30は、水素原子または置換基を表す。R31は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。X30は、−OM基、または−N(R32)(R33)を表し、Mは、水素原子、アルキル基、または、電荷を中和する為に必要な金属原子若しくは有機塩基対を表し、R32およびR33は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。A30は、アリール基、または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【化2】

(一般式(1−b)中、R34は水素原子または置換基を表す。R35は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Z30およびZ31は、それぞれ独立に、−C(R36)=または−N=を表し、R36は水素原子または置換基を表す。A31は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【化3】

(一般式(1−c)中、R37、R38、R39およびR40は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。Z32、Z33およびZ34は、それぞれ独立に、−C(R41)=または−N=を表す。R41は、水素原子または置換基を表す。A32は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【化4】

(一般式(1−d)中、R42は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R43およびR44は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。A33は、アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。)
【化5】

(一般式(1−e)中、R45、R46、およびR47は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
【化6】

(一般式(1−f)中、R48およびR49は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R50は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R51は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。Z35、Z36、Z37、およびZ38は、それぞれ独立に、−C(R52)=または−N=を表し、R52は水素原子または置換基を表す。)
【化7】

(一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。w、x、y、およびzは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。ただし、w,x、y、およびzの総和(w+x+y+z)は0ではない。Z〜Zは、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子から選ばれる原子群で、結合している2個の炭素原子と共に構成される5員環または6員環を形成する原子群を表す。Mは金属原子、または金属酸化物を表す。)
【化8】

(一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Lは、それぞれ独立に、脂肪族または芳香族の連結基を表す。Zは2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZは同一であっても異なっていてもよい。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物または2価の金属塩化物を表す。mはそれぞれ独立に1または2を表し、nはそれぞれ独立に0または1を表す。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。r、r、r及びrはそれぞれ独立に0または1を表し、r+r+r+r≧1を満たす。)
【化9】

(一般式(4)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。)
【化10】

(一般式(5)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表す。XとXは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【化11】

(一般式(6)中、ZaおよびZbは、それぞれ独立に、−N=または−C(R)=を表す。R〜RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、および/またはRとRとが互いに結合して、それぞれ独立に、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記ClogP(R)、前記ClogP(G)、前記ClogP(B)が以下式(A)の関係を満たす、請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
式(A):ClogP(R)>ClogP(G)>ClogP(B)
【請求項3】
前記インクジェット用インク(R)、前記インクジェット用インク(G)および前記インクジェット用インク(B)の粘度が25℃において30mPa・s以下である、請求項1または2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項4】
前記インクジェット用インク(R)、前記インクジェット用インク(G)および前記インクジェット用インク(B)の表面張力が25℃において20〜40mN/mである、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
【請求項5】
前記インクジェット用インク(R)、前記インクジェット用インク(G)および前記インクジェット用インク(B)が、さらに界面活性剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
【請求項6】
前記インクジェット用インク(R)、前記インクジェット用インク(G)および前記インクジェット用インク(B)が、さらに多官能チオール化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
【請求項7】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部にインクジェット法により請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを用いて液滴を付与して、カラーフィルタの色画素を形成する画素形成工程を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
【請求項10】
請求項8に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−12256(P2011−12256A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128007(P2010−128007)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】