説明

インクリボンおよびこれを備えたカートリッジ

【課題】ユーザにクリーニング専用のカートリッジ装着等の特別な作業を強いることなく、印刷ヘッドを簡単にクリーニングすることができるインクリボンおよびこれを備えたカートリッジを提供する。
【解決手段】記録媒体に接する表面にインク層22を形成したインクリボン20であって、繰出し方向51の前端部裏面および繰出し方向の後端部24裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッド11をクリーニングするためのクリーニング層23を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマル方式の印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を有するインクリボンおよびこれを備えたカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタの印字ヘッドのクリーニングを行うには、一般にアルコール等のクリーニング液をしみ込ませた綿棒等を用いて清掃していた。この作業は、手間のかかる細かい作業であり、ユーザにとって負担となっていた。そこで、テープ状の清掃部材を備える清掃専用のクリーニングカートリッジが提案されている(特許文献1、2参照)。清掃専用のクリーニングカートリッジを使用する場合、印字ヘッドの清掃作業が容易であるだけでなく、クリーニングテープと印字ヘッドとの接触圧を安定化させることができ、清掃効果を向上させることができる。
また、印字ヘッドのみならず、プラテンローラも同時に清掃することができるクリーニング用カセットが提案されている(特許文献3)。この場合、クリーニングテープの搬送速度とプラテンローラの表面線速度とを調節することにより、印字ヘッドだけでなくプラテンローラにもクリーニングテープが摺接し、印字ヘッドとプラテンローラとを同時に清掃することができる。
このような、従来のクリーニングテープでは、繰出しリールおよび巻取りリールに巻回し、専用カートリッジに搭載して提供される。
【特許文献1】特開平5−155105号公報
【特許文献2】特開平6−320838号公報
【特許文献3】特開平10−76738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように従来技術では、印字動作等により付着した印字ヘッド(印刷ヘッド)の汚れは、専用カートリッジを用いて清掃を行うため、一旦プリンタの駆動を停止させた後に、リボンカートリッジを取り出し、改めて専用カートリッジを装着する入替え作業を行わなければならなかった。このような清掃作業は、ユーザにとって煩雑であって手間となっており、取扱い性を悪化させるという問題があった。
【0004】
本発明は、ユーザに特別な作業を強いることなく、印刷ヘッドを簡単にクリーニングすることができるインクリボンおよびこれを備えたカートリッジを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインクリボンは、記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、繰出し方向の前端部裏面および繰出し方向の後端部裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を形成したことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のインクリボンは、記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、繰出し方向の前端部および繰出し方向の後端部裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を有するクリーニングテープを連設したことを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明のインクリボンは、記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、繰出し方向の前端部および繰出し方向の後端部裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を有するクリーニングテープを貼着したことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、印字動作開始前または印字動作終了後に、いわゆる空送りを行うことにより、インクリボン前端部または後端部に設けられたクリーニング層によって印刷ヘッドをクリーニングすることができる。これによって、印字装置の機構を利用して印刷ヘッドのクリーニングをすることができるため綿棒等の使用やクリーニング専用のカートリッジ装着等特別な作業が不要で、ユーザの負担が軽減し、取扱い性を向上させることができる。
【0009】
この場合、クリーニング層は、研磨粒子を付着させたものであることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、インクリボンの端部に設けられたクリーニング層が印刷ヘッドと摺接し、その研磨作用によりクリーニングが行われる。このため、アルコール等の溶剤を使用することなく、印刷ヘッドをクリーニングすることができる。
【0011】
本発明のカートリッジは、上述のインクリボンを備え、カートリッジケースに収容したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、印刷に際して、一旦装着したカートリッジを交換することなく、プリンタの機構を利用して印刷ヘッドのクリーニングを自動で行うことができる。特に、カートリッジは、最終的に使い捨てとなることが多く、クリーニング材の廃棄処理を簡単に行うことができる。
【0013】
この場合、印刷テープをさらに収容することが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、記録媒体である印刷テープとインクリボンとを共に収容したカートリッジを印刷装置に装着することによって、印刷テープの有無を検出してテープ開始前または終了後にインクリボンを空送りしてクリーニングすることができ、印刷テープの交換の際に自動的に印刷ヘッドをクリーニングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るインクリボンおよびこれを備えるカートリッジについて説明する。本発明のインクリボンは、これを備えるカートリッジを介してテープ印刷装置に装着されるものである。そこで、先ず、テープ印刷装置について簡単に説明する。
【0016】
図1は、開蓋状態のテープ印刷装置1の外観斜視図である。図1に示すように、テープ印刷装置1は、上下2分割の装置ケース2により外殻が形成され、装置ケース2の前部上面には各種入力キー3aを備えたキーボード3が配置されると共に、後部上面には開閉蓋4が配設されている。開閉蓋4の内側には、右半部にディスプレイ5が配設されると共に、左半部にテープカートリッジCを装着するためのカートリッジ装着部6とが窪入形成されており、テープカートリッジCは開閉蓋4を開放した状態でカートリッジ装着部6に着脱される。
【0017】
装置ケース2の左側部には、カートリッジ装着部6と装置外部とを連通するテープ排出口7が形成され、このテープ排出口7には、送り出した印刷テープTを切断するためのハサミ形式のテープカッタ(図示省略)が臨んでいる。そして、テープ排出口7から印刷済みの印刷テープTが送り出される際に、印刷テープTがテープカッタにより切断される。
【0018】
一方、カートリッジ装着部6には、ヘッドカバー9に覆われた発熱素子を有する印刷ヘッド11と、印刷ヘッド11に対峙するプラテン駆動軸15と、後述するインクリボン20の巻取り駆動軸13と、テープコア14の位置決め突起12とを備えている。また、図示しないが、カートリッジ装着部6の下側には、プラテン駆動軸15および巻取り駆動軸13を回転させるテープ送り機構が内蔵される。
【0019】
次に、本実施形態に係るインクリボン20およびこれを備えるテープカートリッジCについて詳細に説明する。
図2に示すように、テープカートリッジCは、上ケース31と下ケース32とから成るカートリッジケース30内に、記録媒体である印刷テープTおよびインクリボン20をそれぞれロール状に収容すると共に、上記の印刷ヘッド11に対応するプラテンローラ34を収容したものである。また、カートリッジケース30内には、印刷テープTを巻回したテープコア14と、インクリボン20を巻回したリボン繰出しコア36と、使用後のインクリボン20を巻き取る巻取りコア37とが回転自在に収容されている。
【0020】
一方、カートリッジケース30には、プラテンローラ34の近傍に位置して、カートリッジケース30を上下に貫通する略方形の貫通開口43が形成されており、テープカートリッジCをカートリッジ装着部6に装着すると、この貫通開口43に装置側から印刷ヘッド11が臨んでプラテンローラ34およびインクリボン20の巻取りコア37にそれぞれプラテン駆動軸15および巻取り駆動軸13が係合する。すなわち、プラテンローラ34および巻取りコア37は、駆動軸コアとして機能し、テープコア14および繰出しコア36は、従動コアとして機能する。
【0021】
テープコア14から繰り出された印刷テープTは、テープガイドピン38に案内されてプラテンローラ34に至り、この部分で印刷されてからカートリッジケース30の側面に形成したテープ送出口39から送り出される。一方、繰出しコア36から繰り出されたインクリボン20は、第1リボンピン41および第2リボンピン42に案内され、プラテンローラ34に至る。ここでインクリボン20は、印刷テープTに重なって印刷に供され、さらに上記の貫通開口43を形成する開口壁44を周回し、巻取りコア37に巻き取られる。この場合、駆動側のプラテンローラ34および巻取りコア37は同期して回転するため、印刷テープTおよびインクリボン20は同時に走行し、また印刷テープTに走行しながら印刷が行われる。そして、印刷テープTの印刷済み部分が、切断されてテープ排出口7から外部に排出され、ラベルとして使用される。
【0022】
次に、第1実施形態に係るインクリボン20について詳細に説明する。図3に示すように、インクリボン20は、ポリエステル等からなる長尺な基材テープ21と、印刷テープTに接する側である表面に形成された着色剤を有するインク層22と、裏面の後端部24、すなわち繰出し方向51の後端部裏面に形成されたクリーニング機能を有するクリーニング層23と、から構成されている。基材テープ21は、一般的なインクリボンの基材テープ21として用いられているものであれば、特に限定はなく、例えばポリアミド繊維やポリエステル繊維等の合成繊維を製織してなる。一方、インク層22は、一般にインク材料として用いられているものであれば、特に限定はなく、顔料および染料を併用して配合しても、顔料あるいは染料を単独で配合しても構わない。
【0023】
クリーニング層23は研磨粒子を付着させたものであり、基材テープ21の繰出し方向51の後端部裏面に積層されている。基材テープ21の後端部24においては、印刷テープTと略同長となるようにインク層22が積層されており、このインク層22が終了したあたりから終端にかけてクリーニング層23が積層されている。したがって、インクリボン20(同時に印刷テープTも)を使い終わった直後から、印刷ヘッド11の表面にクリーニング層23が摺接することになる。なお、クリーニング層23は、基材テープ21の前端部に設けるようにしてもよいし、前端部および後端部24の両方に形成してもよい。
【0024】
次に、第2実施形態に係るインクリボン20について詳細に説明する。図4に示すように、この実施形態に係るインクリボン20は、クリーニング層23を有するクリーニングテープ50を、インクリボン20の後端部24に連設したものである。この場合、クリーニング層23を有するクリーニングテープ50は、インクリボン20表面に形成されているインク層22に対して、基材テープ21を介してインクリボン20裏面に連設されている。具体的には、クリーニングテープ50の後端部裏面に接着代を設定し、この接着代に短尺のクリーニングテープ50の接着代を接着することで、インクリボン20にクリーニングテープ50が連設されている。この場合、クリーニング層23を有するクリーニングテープ50は、例えば適宜の厚さの不織布や、ガラス研磨用等に用いられる合成繊維性の織布又は編布を薄地にしたものをそのままテープ状にして、インクリボン20と同幅にしたものを用いてもよい。なお、本実施形態では、クリーニング層23がインクリボン20の後端部24に連設されているが、インクリボン20の前端部に連設されていてもよい。また、可能であれば、インクリボン20にクリーニングテープ50を、段差無く連設することが好ましい。
【0025】
次に、第3実施形態に係るインクリボン20について詳細に説明する。図5に示すように、この実施形態に係るインクリボン20は、クリーニング層23を有するクリーニングテープ50をインクリボン20の後端部24に貼着したものである。この場合、クリーニング層23を有するクリーニングテープ50は、第2実施形態におけるクリーニングテープ50と同様である。さらに、本実施形態では、クリーニング層23がインクリボン20の後端部24に貼着されているが、クリーニング層23はインクリボン20前端部に貼着されていてもよい。
【0026】
ここで、本発明の実施形態に係るインクリボン20を備えたテープカートリッジCによる、印刷ヘッド11のクリーニング動作について説明する。
図1に示すように、テープ印刷装置1にテープカートリッジCを装着すると、貫通開口43に印刷ヘッド11が挿入され、この印刷ヘッド11は、インクリボン20および印刷テープTを介してプラテンローラ34と対向する。このとき、印刷ヘッド11はインクリボン20と接触し、プラテンローラ34は、印刷テープTと接触する。
【0027】
このテープ印刷装置1では、印刷キーを押して印刷が開始されると、プラテンローラ34により、印刷テープTおよびインクリボン20が重なって併走するように送られる。この状態で、これに接触している印刷ヘッド11を印刷データに基づいて駆動させることで、印刷テープTに印刷が行われる。一方、図示しないが、このテープ印刷装置1には、テープエンドを検出するセンサが設けられている。すなわち、印刷テープTを使い終わると、センサがテープエンドを検出し、ディスプレイ5上には、その旨およびクリーニングが実施可能である旨(操作方法も含む)、報知が行われる。なお、ディスプレイ5上でなく、音声や振動等で報知してもよい。これによって、テープエンドであることおよび印刷ヘッド11のクリーニングが可能であることをユーザに喚起するようになっている。
【0028】
この状態で、インクリボン20のインク層22の終端が略印刷ヘッド11の位置に達し、同時にクリーニング層23の前端が略印刷ヘッド11の位置に達している。ここで、ユーザがマニュアル操作によりインクリボン20の空送りを行うと、インクリボン20のみが印刷ヘッド11およびプラテンローラ34の間に搬送される。この動作により、インクリボン20の後端部24に形成されているクリーニング層23は、印刷ヘッド11に摺接しながら巻取りコア37に巻き取られていく。このとき、印刷ヘッド11のヘッド面が払拭されて異物が除去されるとともに、研磨作用によって印刷ヘッド11が磨かれる。クリーニングを行いながら、クリーニング層23は、巻取りコア37に巻き取られる。
【0029】
このように、本発明のインクリボン20およびこれを収容するテープカートリッジCによれば、インクリボン20の後端部24において、インク層22に続いてクリーニング層23を設けることにより、インクリボン20終了時にそのまま続けてプリンタの機構を利用して印刷ヘッド11のクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係るテープ印刷装置の開蓋状態における外観斜視図である。
【図2】実施形態に係るテープカートリッジの平面図である。
【図3】第1実施形態に係るインクリボン後端部の断面図である。
【図4】第2実施形態に係るインクリボン後端部の断面図である。
【図5】第3実施形態に係るインクリボン後端部の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…テープ印刷装置 4…開閉蓋 5…ディスプレイ 6…カートリッジ装着部 13…巻取り駆動軸 15…プラテン駆動軸 34…プラテンローラ 36…繰出しコア 37…巻取りコア T…印刷テープ C…テープカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、
繰出し方向の前端部裏面および繰出し方向の後端部裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を形成したことを特徴とするインクリボン。
【請求項2】
記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、
繰出し方向の前端部および繰出し方向の後端部の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を有するクリーニングテープを連設したことを特徴とするインクリボン。
【請求項3】
記録媒体に接する表面にインク層を形成したインクリボンであって、
繰出し方向の前端部および繰出し方向の後端部裏面の少なくとも一方に、印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニング層を有するクリーニングテープを貼着したことを特徴とするインクリボン。
【請求項4】
前記クリーニング層には、研磨粒子を付着させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクリボン。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のインクリボンを、カートリッジケースに収容したことを特徴とするカートリッジ。
【請求項6】
前記カートリッジケースに印刷テープをさらに収容したことを特徴とする請求項5に記載のカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−83106(P2010−83106A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257583(P2008−257583)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】