説明

インクリボン制御方法

【課題】
従来は、インクリボンの走行状態を検出可能とするインクリボンセンサにより、インクリボン走行の正常または異常を監視し、異常時は所定時間の印字制限し、所定時間を越えても解消しない場合には印字処理を中止するインクリボン制御方法であったため、印字中止時には、実行印字速度が低下するという欠点をかかえていた。
【解決手段】
プリンタ内部温度を検出可能とする温度センサによりプリンタ内部温度を監視して、温度T℃以上時は印字を中止、若しくは印字負荷を軽減させることによりインクリボンを正常に戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボン制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インパクト方式ドットプリンタの印字機構部は、一般的に図2に示す構成となっている。以下、図2を参照して説明する。ドット印字を行う印字ハンマ202を桁方向に所定間隔で多数個搭載したものがハンマ機構部201である。ハンマ機構部201は図示しない往復移動用機構部であるシャトル機構部によって桁方向に往復移動する。ハンマ機構部201の前面にはインクを含浸したテープ状のインクリボン208が走行するように配設されている。インクリボン208は、左右のリボンガイド207とリボン走行状態検出用のリボンセンサ209及びリボンカセット211によって定められた経路上を走行する。この走行は図示しないモータ等によって回転駆動する一対のリボンドライブローラ210によって行われる。一対のリボンドライブローラ210によって巻取られたインクリボン208はリボンカセット211の内部に規則正しく折たたまれ、その反対側からインクリボン208の表裏反転用のメビウス機構206と適正張力付加用のブレーキ機構205を介して引き出される。印字ハンマ202の印字力を支持するプラテン203はハンマ機構部201から所定ギャップ隔てて印字用紙204を介して配設してある。印字は各印字ハンマ202の駆動によるドットライン単位の印字と、図示しない紙送り手段による印字用紙204のドットライン単位の紙送りとによってドットマトリックスによって表現される。これらのことは図示しない印字制御部によって制御されている。
【0003】
以上説明したプリンタでは、上記のようにインクリボン208にて印字を行っているため、インクリボン208に走行異常が発生する場合がある。インクリボン208の主な走行異常には、インクリボン208の走行位置ずれと、走行停止(大幅な速度低下を含む)がある。インクリボン208の走行停止は、厚い印字用紙204を使用してハンマ機構部201とプラテン203との間隔が狭くセットされた場合や、プリンタ内部温度によりハンマ機構部201とプラテン203との間隔が狭くなる場合などの時に、ここでの走行抵抗が過大となりリボンドライブローラ210によって巻取れなくなる場合、又はリボンカセット211の内部でジャムが発生する場合等のときに起きる。
【0004】
次に、図3を用いて従来のインクリボンの制御方法を説明する。
【0005】
通常印字中(301)には、印字制御部においてインクリボン208の走行状態が正常か異常かをリボンセンサ209の出力信号によって常時判断(302)している。正常であるなら、そのまま印字を継続(307)する。異常の場合、印字負荷を軽減させてインクリボン208の走行位置を正常範囲に戻すために印字デューティを低くした低デューティ印字処理(303)に移行して、リボンセンサ209はインクリボン208の走行状態の監視(304)を行う。
【0006】
その結果、インクリボン208の走行状態が正常に復帰した場合は、低デューティ印字処理(303)とインクリボン208の走行状態の監視(304)を続けて、正常状態が規定時間t30(約5秒程度)経過(305)まで継続した場合、低デューティ印字処理(303)から通常印字(307)に移行する。
【0007】
なお、規定時間t30経過(305)まで低デューティ印字処理(303)を継続するのは、リボンセンサ209の検出方法およびインクリボン208の走行状態や走行位置によっては、インクリボン208が元の位置に戻りきれていない場合があるため、戻るための時間を確保するためである。
【0008】
しかし、インクリボン208の走行状態の監視(304)にて、インクリボン208の走行状態が異常のままの場合、および正常状態から規定時間t31経過前にまた異常状態になった場合は、そのまま、低デューティ印字処理(303)とインクリボン208の走行状態の監視(304)を続けて、規定時間t31(約10秒程度)経過(306)しても正常状態に復帰しない場合は、インクリボン208の走行位置ずれではない別の異常現象、例えばインクリボンの走行停止等が考えられるので、印字処理を中止(308)してインクリボン208の走行障害を示すインクリボン走行障害処理(309)に移行する。
【0009】
【特許文献1】特開平8−90884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来のインクリボン制御方法では、インクリボンの走行状態を検出可能とするインクリボンセンサにより、インクリボン走行の正常または異常を監視し、異常時は所定時間の印字制限し、所定時間を越えても解消しない場合には印字処理を中止するインクリボン制御方法であった。そのため、印字中止時には、実行印字速度が低下するという欠点をかかえていた。
【0011】
本発明は、インクリボン走行異常による印字中止時間を短縮して実行印字速度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、プリンタ内部温度を検出可能とする温度センサによりプリンタ内部温度を監視して、温度T℃以上時は印字を中止、若しくは印字負荷を軽減させることによりインクリボンを正常に戻すことによって解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常温時は実行印刷速度を低下することなく印刷を行い、高温・高湿環境下のときのみ走行負荷を減らして印刷が可能となるため、プリンタを停止させず広い環境下での使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
プリンタを停止させず広い環境下での使用を可能とする目的を、プリンタ内部温度を検出可能とする温度センサによりプリンタ内部温度を監視して、温度条件により印字制限を行うことにより実現した。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明のインクリボン制御方法を示したものである。
通常印字中(101)には、印字制御部においてインクリボン208の走行状態が正常か異常かをリボンセンサ209の出力信号によって常時判断(102)している。正常であるなら、そのまま印字を継続(116)する。異常の場合は、プリンタ内部温度センサ212によりプリンタ内部温度を監視する。(103)
この時、プリンタ内部温度が規定温度T(35℃程度)未満である場合(103)は、リボンセンサ209がインクリボン208の走行位置ずれを検出している場合と、厚い印字用紙204を使用してハンマ機構部201とプラテン203との間隔を狭くセットされた場合等に起こる走行停止(大幅な速度低下)を検出している場合が考えられる。そのため、印字負荷を軽減させてインクリボン208の走行を正常に戻すために印字デューティを低くした低デューティA印字処理(108)に移行して、リボンセンサ209はインクリボン208の走行状態の監視(109)を行う。
【0016】
その結果、インクリボン208の走行状態が正常に復帰した場合は、低デューティA印字処理(108)とインクリボン208の走行状態の監視(109)を続けて、正常状態が規定時間t10(約5秒程度)経過(111)まで継続した場合、低デューティA印字処理(108)から通常印字(116)に移行する。
【0017】
なお、規定時間t10経過(111)まで低デューティ印字処理A(108)を継続するのは、リボンセンサ209の検出方法およびインクリボン208の走行状態や走行位置によっては、インクリボン208が元の位置に戻りきれていない場合があるため、戻るための時間を確保するためである。
【0018】
しかし、インクリボン208の走行状態の監視(109)にて、インクリボン208の走行状態が異常のままの場合、および正常状態から規定時間t10経過前にまた異常状態になった場合は、そのまま、低デューティA印字処理(108)とインクリボン208の走行状態の監視(109)を続けて、規定時間t13(約10秒程度)経過(110)しても正常状態に復帰しない場合は、さらに印字負荷を軽減させてインクリボン208の走行を正常に戻すために、低デューティA印字処理(108)よりも印字デューティをさらに低くした低デューティB印字処理(112)に移行して、インクリボン208の走行状態の監視(113)を行う。
【0019】
その結果、インクリボン208の走行状態が正常に復帰した場合は、低デューティB印字処理(112)とインクリボン208の走行状態の監視(113)を続けて、正常状態が規定時間t14(約5秒程度)経過(111)まで継続した場合、低デューティB印字処理(112)から低デューティA印字処理(108)に移行する。
【0020】
なお、規定時間t14経過(111)まで低デューティB印字処理(108)を継続するのは、リボンセンサ209の検出方法およびインクリボン208の走行状態や走行位置によっては、インクリボン208が元の位置に戻りきれていない場合があるため、戻るための時間を確保するためである。
【0021】
しかし、インクリボン208の走行状態の監視(113)にて、インクリボン208の走行状態が異常のままの場合、および正常状態から規定時間t14経過前にまた異常状態になった場合は、そのまま、低デューティB印字処理(112)とインクリボン208の走行状態の監視(113)を続けて、規定時間t15(約10秒程度)経過(114)しても正常状態に復帰しない場合は、印字処理を中止しインクリボン208の走行のみ(104)を行う。104以降の処理については後述する。
【0022】
一方、プリンタ内部温度が規定温度T(35℃程度)以上である場合(103)は、プリンタ内部温度によりハンマ機構部201とプラテン203との間隔が狭くなる場合等に起こる走行停止(大幅な速度低下)が考えられる。そのため、印字負荷を軽減させてインクリボン208の走行を正常に戻すために、印字処理を中止しインクリボン208の走行のみ(104)に移行して、リボンセンサ209の出力信号によりインクリボン208の走行状態の監視(105)を行う。
【0023】
その結果、インクリボン208の走行状態が正常に復帰した場合は、インクリボン208の走行のみ(104)とインクリボン208の走行状態の監視(115)を続けて、正常状態が規定時間t12(約5秒程度)経過(107)まで継続した場合、インクリボン208の走行のみ(104)から低デューティA印字処理(108)に移行する。
【0024】
なお、規定時間t12経過(111)までインクリボン208の走行のみ(104)を継続するのは、リボンセンサ209の検出方法およびインクリボン208の走行状態や走行位置によっては、インクリボン208が元の位置に戻りきれていない場合があるため、戻るための時間を確保するためである。
【0025】
しかし、インクリボン208の走行状態の監視(105)にて、インクリボン208の走行状態が異常のままの場合、および正常状態から規定時間t12経過前にまた異常状態になった場合は、そのまま、インクリボン208の走行のみ(104)とインクリボン208の走行状態の監視(105)を続けて、規定時間t11(約10秒程度)経過(114)しても正常状態に復帰しない場合は、インクリボン208の走行障害を示すインクリボン走行障害処理(117)に移行する。この場合は、オペレータまたは保守員の介入を待つことになる。
【0026】
前述の印字デューティを低くした低デューティA印字処理(108)および低デューティB印字処理(112)を行う方法としては、ハンマ機構部201の1移動分の印字を複数回に分割して印字する方法がある。又は、設定している印字デューティの制限値を1/2、1/3、1/4などに低くして処理する方法等もある。これらの方法は、従来から高印字デューティの印字データを低印字デューティの状態にして印字処理する場合に実施していた方法であるから、この方法を活用することで容易に対応できることになる。また、低デューティA印字処理(108)と、低デューティB印字処理(112)を記載しているが、さらに印字デューティを低くした印字処理を1個または複数個を用意した制御を行うことも可能であることは自明である。
【0027】
なお、本実施例では規定温度Tを35℃程度、規定時間t10を5秒程度、規定時間t12を10秒程度、規定時間t12を5秒程度、規定時間t13を10秒程度、規定時間t14を5秒程度、規定時間t15を10秒程度としたが、規定温度および各規定時間は印字装置の特性にあわせて決定する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】インクリボン制御方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】印字機構部の主要部を示す平面図である。
【図3】従来のインクリボン制御方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0029】
201 ハンマ機構部
202 印字ハンマ
203 プラテン
204 印字用紙、
205 ブレーキ機構
206 メビウス機構
207 リボンガイド
208 インクリボン、
209 リボンセンサ
210 リボンドライブローラ
211 リボンカセット
212 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の印字ハンマを搭載したハンマ機構部と、該ハンマ機構部に対向する前記印字ハンマの印字力を支持するためのプラテンと、ハンマ機構部とプラテンの間を走行するテープ上のインクリボンと、該インクリボンの走行状態を検出可能とするインクリボンセンサと、プリンタ内部温度を検出可能とする温度センサと、印字制御手段とを有する印字装置において、インクリボンセンサによるインクリボン走行状態検出と、温度センサによるプリンタ内部温度とからインクリボン走行状態を判断して、印字処理とインクリボン走行障害処理を決定することを特徴とするインクリボン制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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