説明

インク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キット

【課題】単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業性を向上する。
【解決手段】インク充填用治具600は、供給口部122に挿通可能な充填用ノズル部材703を有する充填器700がセットされる保持部601と、揺動部材121を供給口部122に供給位置に固定する固定部602とを備え、保持部601は、カートリッジケース101の開口部111に嵌め込むボス部603を有し、内部に充填器700の容器本体701前面に設けられた円筒部702を嵌め込む位置決め穴604が設けられ、固定部602は、アーム部605を介して保持部601に固定され、カートリッジケース101の揺動部材121を押す押圧部203が通る開口部113を介してケース内部に入り込み、揺動部材121の上部の被押圧部127とカートリッジケース101との内壁面との間に挟まることで揺動部材121を供給位置に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること、すなわち、液体吐出装置)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0005】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、例えば記録ヘッドを搭載したキャリッジ上に、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクとも称される。)を搭載し、メインのインクカートリッジ(メインタンクとも称される)を画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という。)側に着脱自在に装着し、サブタンクに装置本体側のインクカートリッジからインクを補充供給するようにしたものが知られている。
【0006】
インクカートリッジとしては、例えば、供給口部とインク充填口部を有する保持部材を袋本体に融着などで固定したインク収容袋を、分割されたカートリッジ筐体に収納し、保持部材をカートリッジ筐体の保持手段にて保持したものが知られている(特許文献1、2)。また、ヘッド一体型インクカートリッジとして、インク吐出ノズルを含むインク吐出部と、温度に応じて吐出ノズルをキャッピングしたり、開放したりするシャッタ部材を備えて、シャッタ部材をインク吐出部からの吐出方向と直交する方向にスライドさせることで、インク吐出部を開閉するようにしたものが知られている(特許文献3)。
【0007】
また、インクカートリッジから装置本体に対するインク供給の方式としては、装置本体から中空針をインクカートリッジの供給口部に挿通(刺通)して吸引する方式(特許文献1参照)、インクカートリッジ内を変形可能なインク袋とこのインク袋を収納する気体袋(外袋)の二重袋として、気体袋内に気体を注入することでインク袋を押し潰してインク袋からインクを供給する方式(特許文献4、5)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3919734号公報
【特許文献2】特開平6−06−328718号公報
【特許文献3】特開平6−06−328718号公報
【特許文献4】特開2004−306505号公報
【特許文献5】特開2003−220710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように装置本体に対してインクカートリッジを着脱自在に装着する画像形成装置においては、インクカートリッジが使用済みになると、ユーザによってインクカートリッジの交換が行われる。この場合、使用済みインクカートリッジの供給口部から装置本体側の供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材、中空針)が抜かれるときに供給口部にインクが付着することがあり、当該供給口部のインクで手やその他の部材が汚れないように取り扱う必要がある。
【0010】
一方、新規のインクカートリッジを包装部材から取り出して装置本体に装着するとき、ユーザがインクカートリッジの供給口部に触れることなどで供給口部に異物や脂が付着するおそれがあり、このまま装置本体に装着されると、インク供給経路内に異物や脂などが侵入して、滴吐出不良を生じされることになる。
【0011】
このように、従来のインクカートリッジにあっては、特に、使用済みインクカートリッジの交換作業における取り扱いが面倒であり、滴吐出不良を生じるおそれがあるという課題がある。
【0012】
また、インクカートリッジが未装着のままインク吐出動作が行われると、インク供給経路内に空気か混入して吐出不良が発生することから、通常はインクカートリッジの装着の有無を検出して、インクカートリッジ未装着の場合には記録動作を停止することが行われている。
【0013】
そこで、カートリッジケース内に収納されたインク収容手段は、画像形成装置本体側の供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)がカートリッジケースの開口部を介して挿通される供給口部が、供給用ノズル部材を挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動可能に保持され、画像形成装置本体に挿入するときに供給口部を供給位置に移動させ、画像形成装置本体から抜き出すときに供給口部を遮蔽位置に移動させる移動手段を備えている構成とすることで、インクカートリッジの取り扱い性を向上し、また滴吐出不良を生じさせるおそれを低減することができる。
【0014】
このような構成のインクカートリッジを使用する場合、単体ではインク収容手段の供給口部が外部から遮蔽された遮蔽位置にあるので、インク収容手段にインクを充填することが難しくなる。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインク充填用治具は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するときに使用するインク充填用治具であって、
前記移動手段を前記供給口部に前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定する固定部と、
前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段がセットされる保持部と、を備えている
構成とした。
【0017】
ここで、前記固定部は、前記カートリッジケース外に突出する部分を前記カートリッジケースに対して固定する構成とできる。
【0018】
また、前記インクカートリッジは、前記インク収容手段を内部に密閉状態で収納し、前記インク収容手段との間の空間に気体が注入される気体収納手段と、前記気体収納手段に前記画像形成装置本体側から気体を注入する注入ノズル部材と連結可能に設けられたノズル連結部とを有し、
前記固定部は、前記ノズル連結部を前記注入ノズル部材が連結される位置に固定する構成とした。
【0019】
この場合、前記固定部は、前記気体収納手段と前記カートリッジケース外とを連通する気体連通路を有している構成とできる。
【0020】
本発明に係るインク充填装置は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填装置であって、
本発明に係るインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に弾性部材を介して進退可能に保持され、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、を備えている
構成とした。
【0021】
本発明に係るインク充填方法は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填方法であって、
本発明に係るインク充填用治具を用いて、
前記移動手段を前記供給口部に前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、
充填手段の充填用ノズル部材を前記供給口部に挿通して充填を行う
構成とした。
【0022】
本発明に係るインク充填キットは、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填キットであって、
本発明に係るインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に保持可能であって、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、
前記インク充填用治具と前記充填手段を収納した収納手段と、を備えている
構成とした。
【0023】
ここで、前記収納手段には充填用インクが収納されている構成とできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るインク充填用治具によれば、インクカートリッジの供給口部を供給位置と遮蔽位置との間で移動させる移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定する固定部と、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段がセットされる保持部とを備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着したときに供給口部が移動手段を介して供給位置に移動し、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができるようになり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0025】
本発明に係るインク充填装置によれば、本発明に係るインク充填用治具と、充填手段とを備えている構成としたので、インク充填用治具をインクカートリッジに装着し、移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、充填手段の充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0026】
本発明に係るインク充填方法によれば、本発明に係るインク充填用治具を用いて、移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、充填手段の充填用ノズル部材を供給口部に挿通して充填を行う構成としたので、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0027】
本発明に係るインク充填キットによれば、本発明に係るインク充填用治具と、インク充填用治具に保持可能であって、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、インク充填用治具と充填手段を収納した収納手段とを備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着して供給口部を供給位置に移動させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】画像形成装置の一例を示す外観斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概要を示す側面模式的説明図である。
【図3】同じく要部平面説明図である。
【図4】同装置にインク供給系の模式的説明図である。
【図5】本発明に係るインク充填用治具を使用してインクを充填するインクカートリッジの一例を示す外観斜視説明図である。
【図6】同インクカートリッジのカートリッジケースを取り外した状態の斜視説明図である。
【図7】同インクカートリッジの正面説明図である。
【図8】同インクカートリッジの内部正面説明図である。
【図9】同インクカートリッジの側断面説明図である。
【図10】装置本体側のインクカートリッジ用スロットの斜視説明図である。
【図11】同スロットの側断面説明図である。
【図12】同スロットの開口を説明する正面説明図である。
【図13】図11のA−A線に沿う断面説明図及び空気注入用ポンプとのインターロックの説明に供する説明図である。
【図14】図11のB−B線に沿う断面説明図である。
【図15】同インクカートリッジをスロットに装着する過程の説明に供する説明図である。
【図16】同じく図15に続く過程の説明に供する説明図である。
【図17】同じく装着が完了した状態の説明に供する説明図である。
【図18】本発明に係るインク充填用治具の第1実施形態を示す正面説明図である。
【図19】同じく側半断面説明図である。
【図20】同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図である。
【図21】本発明に係るインク充填用治具の第2実施形態の断面説明図である。
【図22】同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図である。
【図23】本発明に係るインク充填装置の他の実施形態の説明に供する斜視説明図である。
【図24】本発明に係るインク充填キットの一例の模式的斜視説明図である。
【図25】本発明に係るインク充填キットの他の例の模式的斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジを備える画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の外観斜視説明図、図2は同記録装置の印字機構部の平面説明図、図3はキャリッジ及び維持回復機構部分の斜視説明図である。
【0030】
このインクジェット記録装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、記録装置本体1の内部には、図示しない両側板にガイドロッド3及びガイドレール4が掛け渡され、これらのガイドロッド3及びガイドレール4にキャリッジ5が主走査方向に摺動可能に保持されている。なお、ガイドレール4とはキャリッジ5の後部に回転可能に支持された副ガイドローラ6が当接する構成としている。
【0031】
そして、キャリッジ3を移動走査する主走査機構は、主走査方向の一方側に配置される駆動モータ11と、駆動モータ11によって回転駆動される駆動プーリ12と、主走査方向他方側に配置された従動プーリ13と、駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛け回されたタイミングベルト(ベルト部材)14とを備えている。なお、従動プーリ13はテンションスプリングによって外方(駆動プーリ12に対して離れる方向)にテンションが架けられている。
【0032】
ここで、駆動プーリ12と従動プーリ13は、インク滴吐出方向に沿う方向にプーリ軸方向が位置する配置としている。そして、これらの駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛け回されたベルト部材14は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト固定部に一部分が固定保持されていることで、主走査方向と直交する方向におけるキャリッジ5の一方側に配置されている。
【0033】
また、キャリッジ5には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドからなる10個のバッファタンク(サブタンク)付き記録ヘッド20a〜20j(区別しないときは「記録ヘッド20」という。)が図示しないヘッドベースに配置されている。ここで、記録ヘッド20a、20bと記録ヘッド20c、20dは用紙搬送方向に位置をずらして千鳥状配置として、例えばブラックのインク滴を吐出するヘッドとして使用する。また、記録ヘッド20e〜20gと記録ヘッド20h〜20jは用紙搬送方向に位置をずらして千鳥状配置とし、例えば記録ヘッド20e、20hはシアンのインク滴を、記録ヘッド20f、20iはマゼンタのインク滴を、記録ヘッド20g、20jはイエローのインク滴をそれぞれ吐出するヘッドとして使用することで、2つのヘッド分の用紙送り方向の領域を同じ主走査で印字できるようにしている。
【0034】
一方、キャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、用紙10が図示しない紙送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する方向(副走査方向)にプラテン部材で案内されて間欠的に搬送される。プラテン部材は、キャリッジ5の主走査領域に沿って少なくとも記録領域で記録ヘッド20に対向して配設されている。
【0035】
また、主走査領域のうちの一方の端部側領域には記録ヘッド20の維持回復を行う維持回復機構8が配置されている。維持回復機構8は、記録ヘッド20a〜20jの各ノズル面を封止(キャッピング)するキャップ30、図示しないノズル面を払拭するワイパ部材などを備えている。
【0036】
また、一方の主走査領域外には、図1に示すように、記録ヘッド20に供給する各色のインクを収容した本発明に係るインクカートリッジ(メインタンク)100が着脱自在に装着されている。
【0037】
このインクジェット記録装置では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、用紙10を間欠的に副走査方向に送りながら、記録ヘッド20を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、用紙10上に所要の画像が形成される。
【0038】
次に、このインクジェット記録装置におけるインク供給系の概要について図4の模式的説明図を参照して説明する。
液滴を吐出する液体吐出ヘッドからなるヘッド部21及びヘッド部21にインクを供給するバッファタンク(サブタンク)22を備える記録ヘッド20と、記録ヘッド20に供給するインクを収容するメインタンクである交換可能なインクカートリッジ100とを備え、記録ヘッド20のインク消費に応じてインクカートリッジ100から供給チューブ24を介してバッファタンク22にインクが補充供給される。
【0039】
インクカートリッジ100は、カートリッジケース101内に、インク300を収容するインク収容手段として内袋部であるインク袋102と、このインク袋102を内部に密閉状態で収納し、インク袋102の外側との空間内に気体(ここでは空気とする)が導入(注入)されることでインク袋102を加圧してインク袋102内のインク300をインクカートリッジ100外に供給する外袋部である空気袋103とからなる二重袋104を備え、空気袋103内に画像形成装置本体側の空気供給用ポンプ25によって空気を注入してインク袋102を加圧することでインク300が記録ヘッド20側に供給される。なお、供給チューブ24とインク袋102との接続は供給用ノズル部材である中空針400によって、空気供給用ポンプ25と空気袋103との接続は注入ノズル500によって着脱自在に行われる。
【0040】
次に、本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジ100の詳細について図5ないし図9を参照して説明する。なお、図5は同インクカートリッジの外観斜視説明図、図6は同インクカートリッジのカートリッジケースを取り外した状態の斜視説明図、図7は同インクカートリッジの正面説明図、図8は同インクカートリッジの内部正面説明図、図9は同インクカートリッジの側断面説明図である。
このインクカートリッジ100は、上述したように、カートリッジケース101内に、インクを収容するインク袋102と空気袋103からなる二重袋104を収納したものである。
【0041】
カートリッジケース101の前面側(インクカートリッジの前面側とは、インクカートリッジの着脱方向で装置本体1に挿入するときに前面となる側の意味であり、前面の反対側を背面という。)に、中空針400が通る開口部111と、注入ノズル500が通る開口部112とが形成されている。
【0042】
インク袋102は、例えば可撓性フィルム部材からなる密閉された袋状部材である。インク袋102の材質としては、可撓性を有するフィルム部材であることが好ましい。この場合、1種の樹脂組成からなるフィルム部材でも、複数種の樹脂組成からなる層構造を有するフィルム部材でも良い。また表面、あるいは中間層に金属薄膜層を有する構造でも良い。樹脂組成として良好なものは、オレフィン系の樹脂組成のもので、特にインクとの接液性からポリエチレン系のフィルムが良好である。また、金属薄膜層としては、フィルムの透湿性を抑え、あるいはフィルムの剛性を持たせるものが好ましく、例えば、特にはアルミニウム薄膜が好ましい。
【0043】
そして、二重袋104の前面側には、移動手段である揺動部材121が融着などで取付けられている。この揺動部材121の一端部側には、インク袋102内のインクを装置本体1側に供給するため、中空針400が挿通される中空針挿入部材である供給口部122がインク袋102に連結されて設けられ、供給口部122内に供給流路122aが形成されるとともに、中空針400が刺通される弾性部材122bが取付けられている。また、揺動部材121の他端部側、即ち、供給口部121と反対側には、インク袋102と空気袋103との間の空間に空気を注するため、注入ノズル500に連結されるノズル連結部123が設けられている。なお、二重袋104の図9で斜線を施した部分は溶着部分である。
【0044】
さらに、揺動部材121にはインク袋102内にインクを充填するときに使用したインク注入部125(充填後溶着などで封止されている)が設けられ、揺動部材121はこのインク注入部125がカートリッジケース101側の支持軸受115、115によって揺動自在に支持されている。この揺動部材121の回転中心に沿う方向は中空針400の被挿入方向とは略同じになる。これにより、中空針400がある程度の奥行きで挿入されてもその挿入前後で挿入方向から見ての寸法の変化がなく、寸法ばらつきを抑制することが容易である。よって、供給口部122の弾性部材122bを中空針400で繰り返し刺突しても穴がささくれることを低減できる。
【0045】
この揺動部材121には、供給口部122側には被押圧部127が一体的に設けられ、ノズル連結部125側には作動手段となる突起部128が一体的に設けられて、供給口部122側端部とカートリッジケース101内壁面との間に介装された弾性部材129により、被押圧部127がカートリッジケース101の開口部113から突出し、突起部128がカートリッジケース101の開口部114から内部に収納された状態になる位置に付勢されている。
【0046】
ここで、揺動部材121の被押圧部127は、インクカートリッジ100を装置本体1側に装着するときに、後述するように、装置本体1側の押圧部によってカートリッジケース101内に向けて、つまり、図8に示す仮想線図示の位置から矢印方向に実線図示の位置まで押圧され、これにより揺動部材121が同矢印方向に揺動移動される。また、揺動部材121の被押圧部127が装置本体1の押圧部によって押圧されていないときには、上述したように、揺動部材121は弾性部材129による付勢力によって図8の仮想線図示の位置に移動保持されている。
【0047】
このように、揺動部材121が揺動することにより、供給口部122はカートリッジケース101の中空針用の開口部111に対向する供給位置と、カートリッジケース101の一部で形成されている遮蔽部116(図5)に対向して外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動する。また、ノズル連結部125もカートリッジケース101の注入ノズル用の開口部112に対向する注入位置(連結位置)と、カートリッジケース101の一部で形成されている遮蔽部117(図7)に対向して外部から遮蔽される遮蔽位置(非連結位置)との間で移動する。
【0048】
したがって、インクカートリッジ101を装置本体1に装着していないときには、供給口部122は遮蔽位置にあるので、使用済み或いは使用途中のインクカートリッジ1を装置本体1から取り出したときに供給口部122に触れることが防止されてインクカートリッジの取り扱い性が向上し、また、供給口部122の油脂などが触れて滴吐出不良を生じさせるおそれも低減する。
【0049】
また、揺動部材121が供給口部122を遮蔽位置から供給位置へ移動させる動作に連動して、揺動部材121の供給口部122と反対側端部に設けた作動手段である突起部128がカートリッジケース101から突出する作動位置に移動する。これにより、装置本体1側のインク供給動作に寄与する手段を作動させるので、装置本体1側でインク供給動作が可能になり、インクカートリッジ100が未装着のままインク供給動作が行われて空気がインク供給経路に侵入し、滴吐出不良が発生することを防止できる。
【0050】
この場合、揺動部材121の揺動中心に対して供給口部122と突起部128とが反対側に配置されていることで、供給口部122と突起部128とが同じ側に配置されている場合に比べて、小さな揺動角度で所要の位置まで供給口部122及び突起部128を移動させることができ、インク袋102に対する揺動部材121による捻れ負荷を低減することができ、インク袋102や空気袋103と揺動部材121との連結部分(ここでは融着部分)の耐久性を向上することができ、またインクカートリッジの幅を狭くすることができる。
【0051】
また、カートリッジケース101の外面側には、移動手段(揺動部材121)の作動不良によって突起部128が開口部114から突出した状態で装着されたことを検出する装置本体1側の後述する位置検出部材を逃がすための逃がし溝118がインクカートリッジ100の装着方向に沿って形成されている。
【0052】
なお、カートリッジケース101の上部には収容したインクの色に対応する色識別用リブ119と、固定用ロック爪部120aが付いた弾性変形可能な取っ手120が設けられている。
【0053】
次に、装置本体1側のインクカートリッジ用スロットについて図10ないし図14を参照して説明する。なお、図10は同スロットの斜視説明図、図11は同スロットの側断面説明図、図12は同スロットの開口を説明する正面説明図、図13は図11のA−A線に沿う断面説明図、図14は図11のB−B線に沿う断面説明図である。
装置本体1側のインクカートリッジ用スロット200は、インクカートリッジ100が挿入される開口201を有している。この開口201の奥側面には、インク供給用チューブ24が接続された中空針400と、空気供給用ポンプ25に接続されたチューブ26が接続された注入ノズル500がそれぞれ配設されている。
【0054】
また、開口201の奥側面には、インクカートリッジ100が装着されるときに、被押圧部127に当接してインクカートリッジ100の挿入動作によって被押圧部127をカートリッジケース101内部側に押圧する押圧部となるトリガー部(リブ)203が設けられている。
【0055】
また、開口201の一側壁面には、インクカートリッジ100が挿入されるときにインクカートリッジ100の被押圧部127を逃げる逃がし溝206及び逃がし溝118の外周のリブを逃げる逃がし溝207がカートリッジ着脱方向に沿って形成されている。この逃がし溝207の途中には、突起部128がカートリッジケース101から突出した状態で挿入されるときに、突起部128に当接する位置検出部材(突起)209が設けられている。
【0056】
さらに、図10及び図13に示すように、開口部201の逃がし溝207の終端部付近には、インクカートリッジ100の作動手段としての突起部128によって外側に向けて押されるインターロック用接点211が設けられるとともに、このインターロック用接点211の外側に接点211が外方に押されたときに接触する接点212が配設されている。
【0057】
ここで、空気供給用ポンプ25の駆動制御について図13で説明すると、インターロック用接点211と接点212とが非接触であるときには、制御部300は空気供給用ポンプ25を駆動しないので、インクカートリッジ100に空気が注入されることがなく、インクカートリッジ100からインクが供給されることもない。これに対して、インターロック用接点211と接点212とが接触すると、制御部300はドライバ301及びポンプ駆動部302を介して空気供給用ポンプ25を所要のタイミングで駆動することができるようになり、インクカートリッジ100に空気を注入して、インクカートリッジ100から装置本体1側にインクを供給することができるようになる。
【0058】
つまり、この実施形態では、インターロック用接点211がインク供給動作に寄与する手段となっており、このインターロック用接点211が作動手段としての突起部127で作動されることによって、電気信号によりインク供給装置(具体的には空気供給用ポンプ25)の駆動禁止状態が解除されて、インク供給動作が可能となる。この場合、ここではメカニカルな接触型接点でインターロックを構成しているが、非接触でインターロックを構成することもできる。例えば、インクカートリッジ100側に作動手段としてのマグネットを配置し、ホール素子などで検知したときにインク供給動作を可能とするようにすることもできる。
【0059】
なお、スロット200の上部にはインクカートリッジ100の色毎に挿入方向と直交する方向の位置が異なる色識別用リブ120に対応する凹部231が形成されている。
【0060】
このように構成したインクカートリッジ100を装置本体1のスロット200に装着するときの動作について図15ないし図17を参照して説明する。
まず、図15(a)に示すように、インクカートリッジ100をスロット200に装着する前の状態では、インターロック用接点211は接点212と接触していないので、制御部300による空気供給用ポンプ25の駆動が禁止されている。
【0061】
次いで、図15(b)に示すように、インクカートリッジ100がスロット200に挿入されて、インクカートリッジ100の突起部128がスロット200の位置検出部材209の箇所を通過するとき、インクカートリッジ100の状態が正常であれば突起部128はカートリッジケース101内に収納された状態であるので、突起部128が位置検出部材209と干渉することなく、インクカートリッジ100をそのままスロット200の奥側に挿入することができる。これに対して、インクカートリッジ100側の移動手段である揺動部材121が正常に機能しておらず、突起部128がカートリッジケース101外に突出しているときには、位置検出部材209と干渉して、それ以上のインクカートリッジ100の挿入ができなくなる。
【0062】
つまり、移動手段が正常に機能していて、インクカートリッジ単品状態で供給口部(中空針被挿入部)が遮蔽位置にあるときには、装置本体に装着される途中で装置本体側の位置検出部材に突き当たることなく装着が完遂され、移動手段の故障などにより、インクカートリッジ単品状態で供給口部(中空針被挿入部)が遮蔽位置にないときには、装置本体に装着される途中で装置本体側の位置検出部材に突き当たって装着が阻害される。
【0063】
このようにして、移動手段の動作に連動して装置本体側のインク供給動作の禁止を解除する(インク供給動作に寄与する手段を作動させる)とき、移動手段が異常状態にあって、中空針被挿入部(供給口部)が単品状態で露出している可能性のあるインクカートリッジの装着を未然に防ぎ、その結果、異物付着の供給口部に起因するインクの吐出不良などを防止することができる。
【0064】
そして、図16(a)に示すように、インクカートリッジ100がスロット200の奥側近傍まで挿入されると、リブ(押圧部)203がインクカートリッジ100の揺動部材121の被押圧部127に接触して、インクカートリッジ100の挿入によって被押圧部127をカートリッジケース101内に向けて押圧する。これにより、揺動部材121が揺動して、インクカートリッジ100の供給口部122は遮蔽位置から中空針用開口部111に対向する供給位置に移動し、また、ノズル連結部123も遮蔽位置からノズル連結用開口部112に対向する連結位置に移動する。さらに、作動手段である突起部128も開口部114からカートリッジケース101の外側に突出する。
【0065】
この段階では、中空針400及び空気注入用ノズル部材500は、いずれもインクカートリッジ100内に挿入されていない状態である。インクカートリッジ100の供給口部122、ノズル連結部123が供給位置、連結位置への移動を完了する前に、中空針400及び空気注入用ノズル部材500がインクカートリッジ100内に挿入されると破損するおそれがあるためである。つまり、リブ203のカートリッジ挿入方向の長さは、中空針400及び空気注入用ノズル部材500がインクカートリッジ100内に挿入される前に供給口部122、ノズル連結部123が供給位置、連結位置への移動を完了させ、その状態を保持したままインクカートリッジ100が更に挿入される長さに設定されている。
【0066】
また、この段階では、作動手段である突起部128がカートリッジケース101外に突出してもインターロック用接点211と接触していない状態にある。インターロック用接点211がこの段階で接点212に接触すると、中空針400が挿入されないまま、空気注入用ポンプ24の駆動が可能になり、インク供給動作が行われると空気が侵入するおそれがある。そこで、上述したように、給口部122、ノズル連結部123が供給位置、連結位置への移動を完了させ、中空針400及び空気注入用ノズル部材500が供給口部122、ノズル連結部123と連結されるまで、インターロックの解除が行われないようにしている。
【0067】
次いで、図16(b)に示すように、インクカートリッジ100が更に挿入されると、先ず、中空針400及び空気注入用ノズル部材500が供給口部122、ノズル連結部123とそれぞれ連結される。この時点では、作動手段である突起部128がインターロック用接点211と多少押すが、接点211は接点212と接触していない状態にある。
【0068】
その後、図17に示すように、インクカートリッジ100がスロット200の奥側まで完全に挿入されると、作動手段である突起部128がインターロック用接点211を接点212に接触するまで移動させて、これにより、空気注入用ポンプ25の駆動が可能になり、インク供給動作を行うことができるようになる。
【0069】
このように、上記インクカートリッジによれば、供給口部を、中空針が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、移動手段に連動して、インクカートリッジが装置本体側に装着されたときに装置本体側のインク供給動作に寄与する手段を作動させる作動手段とを備えているので、インクカートリッジの取り扱い性が向上し、滴吐出不良を生じさせるおそれも低減するとともに、簡単な構成で装置本体側でのインクカートリッジの未装着によるインク供給動作を停止させることができるようになる。
【0070】
一方、このインクカートリッジを備える画像形成装置は、インクカートリッジの作動手段でインク供給動作が可能とされる手段を備えているので、滴吐出不良のおそれが低減するとともに、簡単な構成でインクカートリッジの未装着によるインク供給動作を停止することができる。
【0071】
次に、本発明に係るインク充填用治具の第1実施形態について図18ないし図20を参照して説明する。なお、図18は同実施形態の治具の正面説明図、図19は同じく側半断面説明図、図20は同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図である。
【0072】
このインク充填用治具600は、インクカートリッジ10のカートリッジケース103の開口部111に装着され、供給口部122に挿通可能な充填用ノズル部材703を有する充填手段としての充填器700がセットされる治具本体部でもある保持部601と、移動手段である揺動部材121を供給口部122に供給用ノズル部材である中空針400を挿通可能の供給位置に固定する固定部(固定部材)602とを備えている。
【0073】
保持部601は、カートリッジケース101の開口部111に嵌め込むボス部603を有し、内部に充填器700の容器本体701前面に設けられた円筒部702を嵌め込む位置決め穴604が設けられている。
【0074】
固定部602は、アーム部605を介して保持部601に固定され、カートリッジケース101の揺動部材121を押す押圧部203が通る開口部113を介してケース内部に入り込み、揺動部材121の上部の被押圧部127とカートリッジケース101との内壁面との間に挟まることで揺動部材121を供給位置に固定する。
【0075】
充填手段としての充填器700は、上述したように、容器本体701と、この容器本体701と一体の円筒部702と、中空針からなる充填用ノズル部材703とを備えるいわゆるシリンジと同様な構成のものである。
【0076】
上述したインク充填用治具600と充填器700によって本発明に係るインク充填装置が構成される。なお、充填手段としての充填器700として、ここでは注射器状のもの(シリンジ)を使用しているが、図示しないインクタンクにチューブなどを介してノズル部材703が連結され、インク送液ポンプによってインクタンクから充填用ノズル部材703にインクを送液するような装置を用いることもできる。
【0077】
このように構成したインク充填用治具600と充填器700を使用してインクカートリッジ10のインク袋102にインクを充填する本発明に係るインク充填方法について説明する。
まず、図20に示すように、インク充填用治具600はインクカートリッジ10のカートリッジケース101の開口部111に合わせて保持部601のボス部603を嵌め込むことで、治具600はカートリッジケース101に装着される。このとき、固定部602がカートリッジケース101内部のばね129の付勢力に抗して回動部材121を回動させながら、回動部材121の被押圧部127とカートリッジケース3の内壁面との間にはまり込み、揺動部材121を供給口部122に供給用ノズル部材を挿通可能な供給位置に固定する。このとき、固定部602はばね129の付勢力を受けるので被押圧部127とカートリッジケース3の内壁面との間に挟まって固定される。
【0078】
そこで、充填器700の円筒部702を治具600の保持部601の位置決め穴604内に挿入することで、充填用ノズル部材703が供給口部122に刺し込まれて所定の位置で止まる。その後、充填器700を操作又は作動してインクを送り込むことによって、インクカートリッジ10のインク袋102内にインクを充填することができる。
【0079】
このように、インク充填治具は、インクカートリッジの供給口部を供給位置と遮蔽位置との間で移動させる移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定する固定部と、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段がセットされる保持部とを備えている構成とすることで、インクカートリッジに治具を装着したときに供給口部が移動手段を介して供給位置に移動し、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができるようになり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0080】
また、インク充填装置は、上述したインク充填用治具と、充填手段とを備えている構成とすることで、インク充填用治具をインクカートリッジに装着し、移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、充填手段の充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0081】
また、インク充填方法は、上述したインク充填用治具を用いて、移動手段を供給口部に供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、充填手段の充填用ノズル部材を供給口部に挿通して充填を行う構成とすることで、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0082】
次に、本発明に係るインク充填用治具の第2実施形態について図21及び図22を参照して説明する。なお、図21は同実施形態の治具の断面説明図、図22は同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図である。
【0083】
このインク充填用治具610は、供給口部122に挿通可能な充填用ノズル部材703を有する充填手段としての充填器700がセットされる保持部を兼ねる治具本体部611と、移動手段である揺動部材121を供給口部122に供給用ノズル部材である中空針400を挿通可能の供給位置に固定する固定部(固定部材)602とを備えている。
【0084】
治具本体部611は、カートリッジケース101の開口部111に嵌め込むボス部613を有し、内部に充填器700の容器本体701前面に設けられた円筒部702を嵌め込む位置決め穴614が設けられている。
【0085】
固定部612は、治具本体部611に一体に設けられ、カートリッジケース101の揺動部材121のノズル連結部123に挿入可能な外周形状を有している。この固定部612の根元側にはカートリッジケース101の開口部112に嵌め込む円筒状段部(ボス部)615が形成されている。この固定部612が揺動部材121のノズル連結部123に挿入されることで揺動部材121が供給位置に固定される。
【0086】
また、治具本体部611には固定部612、円筒状段部615及び治具本体部611を貫通する気体(空気)連通路616が形成されている。この気体連通路616は、インク充填時にインク袋102が膨張することに伴って空気袋103内の空気を逃がすものであり、これにより充填時に空気袋103内の空気圧は大気圧と同じになり、充填動作を阻害することがなくなる。
【0087】
このインク充填用治具610を使用してインク充填を行うときには、治具本体部611のボス部613をカートリッジケース101の開口部111に嵌め込み、円筒状段部615をカートリッジケース101の開口部111に嵌め込み、固定部612を揺動部材121のノズル連結部123に挿入して、揺動部材121を供給位置に固定した状態にする。この場合、揺動部材121はばね129で遮蔽位置側に付勢されているので、手動で被押圧部127を内側に押して揺動部材121のノズル連結部123が開口部112に対向する位置まで移動させた後、固定部612を揺動部材121のノズル連結部123に挿入する。
【0088】
そこで、充填器700の円筒部702を治具610の位置決め穴614内に挿入することで、充填用ノズル部材703が供給口部122に刺し込まれて所定の位置で止まる。その後、充填器700を操作又は作動してインクを送り込むことによって、インクカートリッジ10のインク袋102内にインクを充填することができる。
【0089】
次に、本発明に係るインク充填装置の他の実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は同実施形態の説明に供する斜視説明図である。
このインク充填装置620は、例えば前述した第1実施形態のインク充填用治具600と充填器700とをばねなどの弾性部材621を介して保持することで一体化したものである。なお、インク充填用治具600には弾性部材621の一端部が外嵌されるボス部606が設けられている。
【0090】
ここで、先端部に設けたインク充填用冶具600によってインクカートリッジ10の供給口部122を供給位置に移動させるまで、充填器700が冶具600に近づけないようにしている。つまり、インクカートリッジ10に向けて押される冶具600は、固定部602によって揺動部材121をばね129に抗しながら回動させるので、このときに発生する抵抗力、即ち弾性部材621を圧縮させる方向の力はばね129を圧縮させるのに必要な力より大きくなるよう設定されている。
【0091】
このように構成することで、治具600による揺動部材121の供給位置への回動が確実に終了した後に充填器700の挿通動作を行うことができ、揺動部材121の回動途中で充填器700のノズル部材703が刺し込まれる事態を防止できる。
【0092】
次に、本発明に係るインク充填キットの一例について図24を参照して説明する。なお、図24は同キットの模式的斜視説明図である。
このインク充填キット630は、前述したインク充填治具610、充填器600及び充填用インクを収容したインク容器631を収納手段である収納袋632内に収納したものである。なお、充填器700のノズル部材703の先端部にはカバー633が装着されている。また、収納手段は袋状部材に限らず、単なる容器でもよい。
【0093】
このインク充填キット630を使用したインク充填方法は、前記インク充填用治具の第2実施形態で説明したと同様である。
【0094】
このように、このインク充填キットによれば、本発明に係るインク充填用治具と、インク充填用治具に保持可能であって、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、インク充填用治具と充填手段を収納した収納手段とを備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着して供給口部を供給位置に移動させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0095】
次に、本発明に係るインク充填キットの他の例について図25を参照して説明する。なお、図25は同キットの模式的斜視説明図である。
このインク充填キット640は、前述したインク充填装置620のインク充填用治具600と弾性部材621を一体化した部分と、充填器700と、4色の充填用インクを収容したインク容器641y、641m、641c、641kを収納手段である収納容器642に収納したものである。
【0096】
このインク充填キット640を使用してインク充填を行うときには、充填器700を弾性部材621に嵌め込んで一体化して使用する。なお、インク充填キット640を使用したインク充填方法は、前記インク充填用治具の第1実施形態で説明したと同様である。
【0097】
なお、上記実施形態においては、インクカートリッジが加圧式(インク袋を外側から加圧することでインク供給が行われる方式)である例で説明しているが、吸引式(インク袋から中空針で吸引されることでインク供給が行われる方式)のものにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 装置本体
5 キャリッジ
20a〜20f 記録ヘッド
24 供給チューブ
25 空気供給用ポンプ
100 インクカートリッジ
101 カートリッジケース
102 インク袋
103 空気袋
104 二重袋
121 揺動部材(移動手段)
122 供給口部
123 ノズル連結部
127 被押圧部
128 突起部(作動手段)
200 スロット
203 押圧部(トリガー部、リブ)
211 インターロック用接点
300 制御部
400 中空針(供給用ノズル部材)
500 空気注入用ノズル部材
600、610 インク充填用治具
700 充填器
703 充填用ノズル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するときに使用するインク充填用治具であって、
前記移動手段を前記供給口部に前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定する固定部と、
前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段がセットされる保持部と、を備えている
ことを特徴とするインク充填用治具。
【請求項2】
前記固定部は、前記カートリッジケース外に突出する部分を前記カートリッジケースに対して固定することを特徴とする請求項1に記載のインク充填用治具。
【請求項3】
前記インクカートリッジは、前記インク収容手段を内部に密閉状態で収納し、前記インク収容手段との間の空間に気体が注入される気体収納手段と、前記気体収納手段に前記画像形成装置本体側から気体を注入する注入ノズル部材と連結可能に設けられたノズル連結部とを有し、
前記固定部は、前記ノズル連結部を前記注入ノズル部材が連結される位置に固定することを特徴とする請求項1に記載のインク充填用治具。
【請求項4】
前記固定部は、前記気体収納手段と前記カートリッジケース外とを連通する気体連通路を有していることを特徴とする請求項3に記載のインク充填用治具。
【請求項5】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填装置であって、
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に弾性部材を介して進退可能に保持され、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、を備えている
ことを特徴とするインク充填装置。
【請求項6】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填方法であって、
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のインク充填用治具を用いて、
前記移動手段を前記供給口部に前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置に固定し、
充填手段の充填用ノズル部材を前記供給口部に挿通して充填を行う
ことを特徴とするインク充填方法。
【請求項7】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填キットであって、
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に保持可能であって、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、
前記インク充填用治具と前記充填手段を収納した収納手段と、を備えている
ことを特徴とするインク充填キット。
【請求項8】
前記収納手段には充填用インクが収納されていることを特徴とする請求項7に記載のインク充填キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate