説明

インク収納容器

【課題】プリンタに装着されたインク収納容器の装着確認検知の際、プリンタの検知部で誤動作を生じにくいインク収納容器を提供する。
【解決手段】インクを収納するためのインク収納部と、インクを供給するインク供給口と、プリンタへの装着を検知するための装着被検知部を備えたインク収納容器であって、前記装着被検知部14は、前記プリンタへの装着において、前記プリンタから受ける信号の到達を実質的に遅延させる遅延部材15を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ(インク記録ヘッドへ、インクを供給するためのホルダ、あるいはキャリッジ等のインク収納容器装着部単体も、この「プリンタ」の表現に含まれるものとする)が備える検知部に対して、相対する被検知部を備えたインク収納容器に関する。詳しくは、インクジェット方式に従って記録を行なう記録ヘッドにインクを供給するインク収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタにインク収納容器が装着されたことを、プリンタが判別する手段として、インク収納容器に装着検知機構が設けられているものがある。この種のものは、メモリチップを持つタイプと、インク収納容器を光学的に検知させるタイプ、あるいはこれらの複合タイプなどさまざまである。このうちプリンタ側の光学検知(発光部からの光の透過、或いは非透過でインク収納容器が装着されたと判断する方法を含む)を可能にするために、インク収納容器に被検知部を設けるものがある。
【0003】
特許文献1は、インクカートリッジにブリッジ部と切欠きを設け、インクカートリッジ装着時において、プリンタ側に備える光センサの領域にこの前記ブリッジ部と前記切欠きを進入させることで、光の遮蔽と通過の信号レベルを検知して、インクカートリッジの装着と種類を判定する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2は、インクカートリッジにカバーと検知窓を設け、インクカートリッジ装着時において、プリンタ側に備える光センサの領域にこの前記カバーと前記検知窓を進入させることで光の遮蔽と通過の信号レベルを検知し、更にリミットスイッチをプリンタ側に設けてインクカートリッジの傾斜部が挿入されたことを検知し、その2つの検知によって、インクカートリッジの装着と異常の有無を判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−246999号公報
【特許文献2】特開2008−290386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に開示されたこれら装着確認の被検知部である前記ブリッジ部や前記カバーの構成を概略化して述べると、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返す装着確認の被検知部を必要とする構成であるため、以下のような問題が発生する。
【0007】
まず、装着確認の被検知部の部材が小さい(面積が狭い)ため、被検知部としての機能を果たすことができないおそれがある。例えば、ユーザがプリンタにインクカートリッジを素早く装着した場合、被検知部である前記ブリッジ部や前記カバー部材が上述のように小さい(面積が狭い)ため、プリンタ側の検知部で検知することができず、インクカートリッジの装着確認ができないといった問題が発生する。上記特許文献1、2ではインクカートリッジを素早く装着した場合に対しても対応ができると開示されているが、そもそもこれらのように、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認の被検知部を要する構成では、インクカートリッジの装着確認を精度よく行うことはできず、根本的にこれらの問題解決を図ることはできない。
【0008】
また、これら上述の問題を解決するために、前記ブリッジ部や前記カバーなどの被検知部の部材を大きく(面積を広く)して、プリンタ側の検知部で検知しやすくする構成を採用すると、インクカートリッジの被検知部の大型化に伴い、例えば、インクカートリッジ自体が大きくなってしまい、それに伴ってプリンタの大型化につながってしまう。
あるいは、インクカートリッジ自体の大型化を防ぐため、インク液を収納するインク収納部をその分狭く設計変更すると、印字量の減少を引き起こしてしまうといった新たな問題が発生してしまう。
【0009】
本発明の目的は、プリンタにインク収納容器を装着したことを検知する装着被検知部分を備えるインク収納容器について、誤検知を防止することを課題とし、インク収納容器のプリンタへの装着が確実に認識できるインク収納容器を提供することを目的とする。特に、本発明は、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認の被検知部を要しない構成であるため、例えばユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、インク収納容器をプリンタに装着したことを精度よく認識することができる、即ち、装着確認の誤検知を防止することができるインク収納容器を提供することにある。また、インク収納容器の被検知部を大型化することなくコンパクトな形状でプリンタへの装着確認が確実に認識できるインク収納容器を提供することにある。上記目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の第1の発明は、インクを収納するためのインク収納部と、インクを供給するインク供給口と、プリンタへの装着を検知するための装着被検知部を備えたインク収納容器であって、前記装着被検知部は、前記プリンタへの装着において、前記プリンタから受ける信号の到達を実質的に遅延させる遅延部材を備えたことを特徴とするインク収納容器に関する。
【0011】
本発明の第2の発明は、前記プリンタから受ける信号は光であって、前記遅延部材は、前記光の進行方向を変更させることを特徴とする第1の発明に記載のインク収納容器に関する。
【0012】
本発明の第3の発明は、前記装着被検知部は、プリズムであることを特徴とする第1の発明乃至第2の発明に記載のインク収納容器に関する。
【0013】
本発明の第4の発明は、前記装着被検知部は、前記プリンタから受ける信号を受信する部材と、前記プリンタから受けた信号を前記プリンタへ送信する部材を有し、前記受信する部材を前記送信する部材よりも大きくすることを特徴とする第1の発明乃至第3の発明に記載のインク収納容器に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の発明は、インクを収納するためのインク収納部と、インクを供給するインク供給口と、プリンタへの装着を検知するための装着被検知部を備えたインク収納容器であって、前記装着被検知部は、前記プリンタへの装着において、前記プリンタから受ける信号の到達を実質的に遅延させる遅延部材を備えたことを特徴とする構成としているので、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認の被検知部を構成する必要がなく、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、インク収納容器の装着確認が誤検知されることがないという優れた効果を奏する。また更なる効果として、インク収納容器の被検知部を大型化することなくコンパクトな形状でプリンタへの装着確認が精度よく検知できるという優れた効果を奏する。
【0015】
本発明の第2の発明は、前記プリンタから受ける信号は光であって、前記遅延部材は、前記光の進行方向を変更させることを特徴とする構成としているので、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認被検知部を構成する必要がなく、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、インク収納容器の装着確認が誤検知されることがないという優れた効果を奏する。また更なる効果として、インク収納容器の被検知部を大型化することなくコンパクトな形状でプリンタへの装着確認が精度よく検知できるという優れた効果を奏する。
【0016】
本発明の第3の発明は、前記装着被検知部は、プリズムであることを特徴とする構成としているので、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認の被検知部を構成する必要がなく、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、インク収納容器の装着確認が誤検知されることがないという優れた効果を奏する。また更なる効果として、インク収納容器の被検知部を大型化することなくコンパクトな形状でプリンタへの装着確認が精度よく検知できるという優れた効果を奏する。
【0017】
本発明の第4の発明は、前記装着被検知部は、前記プリンタから受ける信号を受信する部材と、前記プリンタから受けた信号を前記プリンタへ送信する部材を有し、前記受信する部材を前記送信する部材よりも大きくすることを特徴とする構成としているので、信号を遮断し、且つ信号の通路を形成することを繰り返すような装着確認の被検知部を構成する必要がなく、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、インク収納容器の装着確認が誤検知されることがないという優れた効果を奏する。具体的には、光束の状態で照射されている信号をより受信しやすくすることになり、インク収納容器の装着確認の検知にあたって、精度よく検知することができ、ユーザの装着、脱着の速度に左右されずに誤検知を防止することができる。また更なる効果として、インク収納容器の被検知部を大型化することなくコンパクトな形状でプリンタへの装着確認が精度よく検知できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のインク収納容器の一例である、インク収納容器の側面模式図である。インク収納容器の装着被検知部を拡大した模式図である。
【図2】本発明のインク収納容器の一例である、インク収納容器の正面模式図である。
【図3】本発明のインク収納容器の一例である、インク収納容器の装着被検知部を拡大した上面模式図である。
【図4】本発明のインク収納容器の一例である、インク収納容器の装着被検知部周辺を拡大した斜視模式図である。
【図5】本発明のインク収納容器の他の一例である、インク収納容器の装着被検知部の斜視模式図及び、プリンタ側受光部22の光の閾値と時間の関係を示す図である。
【図6】本発明のインク収納容器の一例である、インク収納容器の被検知突出部周辺を拡大した斜視模式図である。
【図7】本発明のインク収納容器の他の一例である、インク収納容器の装着被検知部の斜視模式図である。
【図8】従来技術を示すインク収納容器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のインク収納容器の実施形態について説明するが、本発明はこの事例に限られるものではない。本発明の装着被検知部として対応できるものであれば、プリンタ側から発信される信号は一定の速度であれば光学的、電気的、音波的なものいずれでもよく、またそれらを組み合わせたものでもよい。
【0020】
本発明の実施例として、本発明の装着被検知部としての装着被検知部14を備えるインク収納容器1を図1、図2に従って説明する。
【0021】
インク収納容器1は、正面6、背面7、上面8、底面9、左側面10、右側面11を有する概ね直方体状で、インクを収納するインク収納部2と、上面8に、インク収納容器内部と通じる穴である図示しない大気連通口、正面6の下方に正面6に対して垂直に突起して筒状に形成されたインク供給口3が設けられている。
【0022】
また、正面6であって、インク供給口3の上方にインク収納部2の一部を正面6側に突起させて形成され、光学被検知部分として構成される被検知突出部4からなる。
【0023】
被検知突出部4は、インク収納容器1の正面6を構成する壁面から垂直に突出して形成される。被検知突出部4は、正面6側から見たとき、被検知突出部4の上部に二つの斜面が交差する三角形の両斜面に挟まれた形状、いわゆるプリズム部12が形成される。
【0024】
そして、被検知突出部4は、インク収納容器正面6側に密接した部分にインク残量を光学的に検知するためのインク残量被検知部13と、インク収納容器正面6側から離れた側において、インク収納容器の装着を光学的に検知するための装着被検知部14とで構成される。
【0025】
被検知突出部4は光透過性の材質で形成され、被検知突出部4を構成するインク残量検知部13についてはインク収納部2と連通しており、インク収納部2にインクが存在するときには被検知突出部4は満液となるよう構成されている。また、インク収納部2にインクがなくなったときにはインク残量検知部13は空になるよう構成されている。一方、被検知突出部4を構成する装着被検知部14は、内部も全て光透過性の材質で形成されており、インク残量検知部13と装着被検知部14の内部とは仕切られた形に構成されているため、インク収納部2と装着被検知部14は連通していない。
【0026】
ここで、図示しないプリンタに備えるインク収納容器ホルダには、インク収納容器ホルダの底面方向から上方に垂直に延び、インク収納容器1の載置を案内するための図示しないガイド部が、1つのインク収納容器1に対して2本設けられている。そのガイド部の間にインク収納容器1を載置することで、インク収納容器ホルダにインク収納容器1が正しい位置に装着されるように構成されている。
【0027】
更に、上述したガイド部の上端部分には、プリンタへのインク収納容器1の装着確認及び、インク残量を光学的に検知するための光学検知部分が設けられている。そして、この光学検知部分を構成する発光部21がガイド部の一方の上端に、受光部22がガイド部の他方の上端に設けられており、図2に示すように受光部21と発光部22を結ぶ水平直線状に、インク収納容器1に備えた被検知突出部4のプリズム部12を配置するよう構成させている。この発光部21から発光された光が、被検知突出部4のプリズム部12に照射され、その光がプリズム部12を透過し受光部22に到達したか検知することで、プリンタへのインク収納容器の装着検知及び、インク残量検知の2つの検知を行う。
【0028】
次に、一般的なプリンタへのインク収納容器の装着を光学的に検知する方法を説明する。
【0029】
まず、インク収納容器が未装着であるプリンタの電源をONにすると、プリンタ側の光学検知部分である発光部から光を受光部に向けて常に照射している。この時点で、発光部と受光部間には光を遮るものがないため、受光部側に光が到達して受光している状態である。
【0030】
次に、プリンタにインク収納容器を装着する。この装着の際、発光部と受光部間の光を遮り、受光部に光が所定時間到達しないよう、一時的に光を遮蔽する光遮蔽部材をインク収納容器に構成させ、その後、光遮蔽部材を通過して再度、光の通路を形成するように構成させることで、プリンタにインク収納容器が装着されたかを光学的に検知する。このようにしてプリンタにインク収納容器の装着を検知しているのが一般的な方法である。
【0031】
次に、本発明の装着被検知部14の具体的な構成について図3、図4に従って説明する。
【0032】
図3はインク収納容器1に備える被検知突出部4を上面方向から拡大して示したものである。被検知突出部4は上述したように、インク収納容器正面6に接する方向にインク残量被検知部13(図3の上方側)と、インク収納容器正面6から離れた方向に装着被検知部14(図3の下方側)から構成されている。
【0033】
ここで、被検知突出部4は、A面とC面二つの斜面が交差する三角形の両斜面に挟まれた形状のプリズム部12を構成している。更に、インク収納容器正面6と対向する位置でプリズム部12のA面とC面の側面である前面(B面)を、プリズム部12内に透過した光が全反射する角度に傾斜させて配置するように構成されている。
【0034】
具体的にB面の構成を説明すると、被検知突出部4は図3に示すようにインク収納容器正面6から垂直に延びる直角の頂点イ、頂点ロと、対向する頂点ハ、頂点ニにて構成される。そして、それら頂点を結ぶ辺イニは辺ロハよりも長い辺になるよう構成されているため、辺イニと辺ロハを結ぶ辺ハニは必然的に傾斜する。その結果、辺ハニを成分とするB面も傾斜するよう構成されている。
【0035】
次に、図3、図4に従って、プリンタ側の発光部21から光を装着被検知部14に光を照射した場合の光路を説明する。なお、当然ながら照射する光の進行速度は常に一定である。
【0036】
まず、発光部21から照射された光は装着被検知部14のプリズム部12を構成するA面上のaに照射され、プリズム部12内に透過する。そしてプリズム部12の側面を構成する傾斜したB面上まで透過した光が進むことで、B面上のbに光が照射される。
【0037】
ここで、B面は照射された光が全反射を起こすような角度に傾斜して構成されているため、bに照射された光は全反射を起こし、その光はプリズム部12を構成するC面上のcに照射される。そして、cに照射された光はC面を透過して、最終的に受光部22に光が到達する。結果として装着被検知部14の光路はa→b→cという形で進行する。
【0038】
上述の構成による装着被検知部14を採用すると、光の光路はB面がA面及びC面に対して垂直に配置されたプリズムよりも、B面が傾斜しているプリズムとする構成でb→c間分、光路が変更され、この光路の距離分、受光部22に光が到達する時間が実質的に遅延する。
【0039】
結果として、このようにして光の光路変更による遅延の効果は、受光部22に光が所定時間分到達しないよう、一時的に光を遮蔽する光遮蔽部材と、その後、光遮蔽部材を通過して再度、光の通路を形成するように構成させるよりも、プリンタへのインク収納容器1の装着確認を精度よく検知することができるという優れた効果を奏する。例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器1を素早く装着した場合であっても、本構成であればインク収納容器1の装着確認の誤検知をすることなく、精度よく検知することができる。
【0040】
なお、光の速度は一定で、かつ光路の変更による距離も同じであるため、受光部22に到達する遅延時間は常に一定である。よって、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器1を素早く装着した場合でも、インク収納容器1の装着確認の検知にあたっては何ら影響がない。
【0041】
そして、この光が遅延して到達する時間を、例えばプリンタ側の図示しない記憶部に予め記憶させ、その遅延時間分、受光部22に光が到達しなかった場合に、インク収納容器1が装着されたと判定するように構成することで、例えば、ユーザがインク収納容器1を素早く装着してしまった場合でも、本構成であればインク収納容器1の装着確認の誤検知をすることなく、精度よく検知することができる。
【0042】
なお、B面の設置にあたり、頂点ニの角度を光が全反射する40°以下となるよう適宜設定すれば、その範囲内で全反射されるb→c間の光の進行距離も変わるため、遅延時間もその角度に応じて適宜変更することが可能となる。
【0043】
次に、他の実施形態の一例として、プリンタへのインク収納容器の装着を光学的に検知する構成を、図5を用いて説明する。
【0044】
図5(A)は、装着被検知部14を構成するプリズム部12において、プリンタ側の発光部21側に配置されるA面に、インク残量被検知部13側から対向するC面の頂点ハまでの辺の長さ分、遮光部材で覆った一例を示したものである。
【0045】
ここで、プリンタ側の発光部21側に配置されるA面の光の透過面積は、受光部22側に配置されるC面の透過面積よりも大きな(広い)構成とさせており、この遮光部材でA面を、対向するC面の頂点ハの長さまで覆った場合でも、その透過面積の関係はA面がC面よりも大きくなるように構成されている。
【0046】
このように、A面の透過面積をC面よりも大きな(広い)構成とすることで、例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器1を素早く装着した場合でも、プリンタ側の発光部21からの信号を広い範囲で検知することができる。具体的には、光束の状態で照射されている信号をより受信しやすくすることになり、インク収納容器1の装着確認の検知にあたって、精度よく検知することができ、ユーザの装着、脱着の速度に左右されずに誤検知を防止することができる。
【0047】
また、図5(A)で図示するように、プリンタ側の発光部21側に配置されるA面の一部、本実施例では対向するC面の頂点ハの長さまで光を遮光部材で遮光する構成とすることで、例えば、発光部21からの光が光束の状態でA面全体を照射する場合に、A面からC面に光が直接到達してしまうことを防ぐことが可能となる。この構成により、光をA面から確実にB面に到達させ、B面により光の進行方向が変更されてC面に実質的に遅延して到達するようになる。なお、この遮光部材による遮光の面積は、A面の光の透過面積がC面の透過面積よりも大きく(広く)なるよう構成されていれば、適宜設定可能である。
【0048】
図5(B)は、プリンタへのインク収納容器1の装着における、プリンタ側受光部22の光の閾値と時間の関係を示したものである。プリンタ側受光部22ではインク収納容器1の装着において、光が所定の時間、閾値以下になったと認識すると、インク収納容器1が装着されたと判定するようプリンタ側の記憶部で設定されている。
【0049】
ここで、図5(A)に示す光路のように、bからcに光の進行方向を変更することで、cに到達する光が実質的に遅延する。また、インク収納容器1の装着時間に関わらずこの遅延の時間は一定である。結果として、プリンタ側受光部22では、図5(B)のbc間のように、その間の光が所定の時間、認識しないことを検知することで、プリンタ側の記憶部ではインク収納容器1が装着されたと判断することができる。
【0050】
図6は、装着被検知部14を有するインク収納容器1の被検知突出部4周辺を拡大した一例を示したものある。このように、装着被検知部14は被検知突出部4の一部を構成するのみであるため、インク収納容器1の被検知部の部材を大きく(面積を広く)して、プリンタ側の検知部で検知しやすくする構成を採用することなく、コンパクトな形状でプリンタへのインク収納容器1の装着確認を精度よく検知することができる。
【0051】
更に、図6で示すように、被検知突出部4は装着被検知部14のみならず、インク残量被検知部13も備えた構成としているため、プリンタ側に別途、インク残量検知用の受光部、発光部を備える必要なく、インク収納容器1のプリンタへの装着確認とインク残量検知をコンパクトな形状で兼ね備えることができる。
【0052】
なお、本実施例では、プリンタ側からの光学的な信号を装着被検知部14のプリズム部12で屈折することにより光路を変更して、信号の到達を実質的に遅延させているが、本発明ではこの構成のみに限られるものではない。
【0053】
例えば、装着被検知部に反射部材で構成された導光路を設けて全反射を繰り返すことで光学的な信号を遅延させてもよい。反射部材はコアとクラッドとからなる構造でも、金属などで形成した反射部材を採用しても良い。更に、装着被検知部として光ファイバを適用し、光ファイバの長さを適宜設定することで光学的な信号を遅延させる構成とすることができる。
【0054】
また、本実施例は、プリンタ側からの光学的な信号を遅延させる遅延部材を設けて述べているが、本発明は遅延させることが可能な種々の信号に適用可能である。例えば、プリンタ側から電気的信号を発信するように構成されたものである場合、インク収納容器の被検知部で受けた電気的信号を、インク収納容器に遅延制御回路を備えることで、その遅延制御回路により信号を所定時間遅延させてプリンタ側に返すよう構成することでも対応が可能である。
【0055】
次に、図7で他の実施形態であるインク収納容器の装着被検知部の斜視模式図を示す。この装着被検知部では、本来、発光部からの信号はeを透過し、そのまま直線状の光路Fを通るはずである。しかし、本実施形態ではこの信号の光路上に偏光面である遅延部材15を設けているため、信号はこの偏光面により反射して光路Gに変更される。その結果、光路Gに変更された距離分、信号は実質的に遅延して受光部に到達する。この光路が変更された距離分、遅延して受光部に到達する構成は、プリンタへのインク収納容器の装着確認を精度よく検知することができるという優れた効果を奏する。例えば、ユーザがプリンタにインク収納容器を素早く装着した場合であっても、本構成であればインク収納容器の装着確認の誤検知をすることなく、精度よく検知することができる。
【0056】
図8は、従来の検知部を有するインクカートリッジを示す図である。この図7で示される装着被検知部はプリズムを有しない構成であって、インクカートリッジに遮光部に該当するブリッジ部(図中の符号189)と光を透過する切欠き(図中の符号187)を設け、インクカートリッジが装着される過程において、光がブリッジ部と切欠きを通過する際に、受光部に光が所定時間分到達しないよう、一時的にブリッジ部で光を遮蔽し、その後、ブリッジ部を通過して再度、切欠きで光を受光部に到達するように構成させることで装着確認の検知を行うインクカートリッジである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のインク収納容器は、装着確認を行う装着被検知部を備える種々のインク収納容器に適用することができ、装着被検知部分として対応できるものであれば、プリンタ側から発信される信号は一定の速度であれば光学的、電気的、音波的なものいずれも可能であり、またそれらを組み合わせたものも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 インク収納容器
2 インク収納部
3 インク供給口
4 被検知突出部
5 インク充填孔
6 正面
7 背面
8 上面
9 底面
10 左側面
11 右側面
12 プリズム部
13 インク残量被検知部
14 装着被検知部
15 遅延部材
21 発光部
22 受光部





































【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収納するためのインク収納部と、インクを供給するインク供給口と、プリンタへの装着を検知するための装着被検知部を備えたインク収納容器であって、
前記装着被検知部は、前記プリンタへの装着において、前記プリンタから受ける信号の到達を実質的に遅延させる遅延部材を備えたことを特徴とするインク収納容器。
【請求項2】
前記プリンタから受ける信号は光であって、
前記遅延部材は、前記光の進行方向を変更することを特徴とする請求項1記載のインク収納容器。
【請求項3】
前記装着被検知部は、プリズムであることを特徴とする請求項1乃至2記載のインク収納容器。
【請求項4】
前記装着被検知部は、前記プリンタから受ける信号を受信する部材と、前記プリンタから受けた信号を前記プリンタへ送信する部材を有し、前記受信する部材を前記送信する部材よりも大きくすることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のインク収納容器。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121180(P2012−121180A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272042(P2010−272042)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】