説明

インク受容性基材

以下の段階:(i)第1および第2の硬化性組成物を、支持体に、第1の組成物が第2の組成物より支持体に近くなるように同時に施用し;(ii)第1および第2の組成物が互いの中に拡散するのを可能にして、支持体上に不均質硬化性コーティングをもたらし;そして、(iii)不均質コーティングを硬化して、支持体により近い方が支持体からより離れている方より低い多孔率を有するポリマー層を形成する、を含む、インク受容性基材の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷での使用に適した基材ならびにそれらを製造および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録または印刷システムでは、インク液滴をノズルから高速で基材に噴出させて、基材上に像を生じさせる。インク液滴または記録液体は、一般に、着色剤、例えば染料または顔料と、ノズルの目詰まりを防ぐための比較的多量の液体媒体を含む。液体媒体は典型的には有機溶媒を含むが、UV硬化性モノマー、水および有機溶媒または他の成分を主に含むこともできる。
【0003】
インクジェット印刷は、日中および夜間の両方にライトボックスで掲示するための広告を作成するのにますます用いられるようになっている。ライトボックスは、典型的には、駅、空港ラウンジ、ショッピングモールおよび公衆電話ボックスなど出入り自由の場所に掲示される。一部のライトボックスにはいくつかの広告の長いストリップが入っており、1本のローラーから他のローラーに広告が巻き付けられることにより、次々に広告が掲示される。
【0004】
強い明るさと微細な輪郭を達成するために、広告は、高い光透過率(より多くの光を背後、例えば電球または蛍光灯から通過させるため)および高い白色度(例えば、日中に反射光を活用するため)を必要とすることが多い。昼光条件下で白色をもたらすために用いられる白色顔料は光透過率を害し、その結果、夜間に広告に背後から光を当てたときに輝度を低下させる可能性があるので、これらの要件は相反することが多い。
【0005】
欧州出願公開EP−A−0156532号には、均質構造の多孔質層を含むインクジェット基材が記載されている。
国際特許公開2005/016655号には、支持体と、2つの別個の部分:緻密な上層および微孔質の副層を含むインク受容性層とを含む、インクジェット記録媒体が記載されている。
【0006】
国際特許公開2007/018425号には、スライドコーティング機を用いた、基材上への3つの硬化性組成物の同時コーティングが記載されている。3つの層はすべて非常によく似た高い水:有機溶媒比を有しており、これにより、3つの層のすべてで相分離が生じていたと考えられる。
【0007】
多くの印刷された基材の他の問題は、耐引っ掻き性に劣る点である。引っ掻きは、印刷された基材の外観を著しく傷つける可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州出願公開EP−A−0156532号
【特許文献2】国際特許公開2005/016655号
【特許文献3】国際特許公開2007/018425号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、良好な耐引っ掻き性を有しインクジェット印刷での使用に適した基材について述べるものである。基材の多くは良好な光透過率と輝度の有益な組合わせを有し、これにより、日中および夜間のライトボックス広告にとりわけ有用になっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の方法(実施例2)により調製したインク受容性基材の横断面のSEM写真を示す。
【図2】図2は、図1の底部の拡大図を示している。
【図3】図3は、本発明の方法(実施例4)により調製したインク受容性基材の横断面のSEM写真を示す。
【図4】図4は、図3の底部の拡大図を示している。
【図5】図5は、比較インク受容性基材(比較例1)の横断面のSEM写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の観点に従って、以下の段階:
(i)第1および第2の硬化性組成物を、支持体に、第1の組成物が第2の組成物より支持体に近くなるように同時に施用し;
(ii)第1および第2の組成物が互いの中に拡散するのを可能にして、支持体上に不均質硬化性コーティングをもたらし;そして
(iii)不均質コーティングを硬化して、支持体により近い方が支持体からより離れている方より低い多孔率を有するポリマー層を形成する、
を含む、インク受容性基材の調製方法を提供する。
【0012】
とりわけ良好な結果は、第1および第2の硬化性組成物を、第1の硬化性組成物の硬化から得られたポリマーが水性媒体に対し比較的可用性を示し、第2の硬化性組成物から得られたポリマーが比較的不溶性を示すように選ぶと、達成することができる。これら得られたポリマーの相対的溶解度を決定するためには、本発明の方法と同じ条件を用いるが、他方の硬化性組成物と接触させずに、該ポリマーを個々に(すなわち、他方の硬化性組成物から離して)調製することができる。このようにして、拡散のまったくない‘純粋な’第1または第2組成物から生じるポリマーの溶解度を評価する。
【0013】
段階(ii)において、第1および第2の組成物は互いの中に拡散して、あらゆる相分離を起こすことなく不均質硬化性コーティングをもたらすことが好ましい。段階(ii)から生じる不均質硬化性コーティングの不均質性は、その個々の成分の濃度がその深さに関し一様でないことに起因することが好ましい。他方、硬化段階(iii)中に相分離が起こることが好ましい。
【0014】
第1の硬化性組成物は、第2の硬化性組成物の非存在下で硬化したときに相分離しない硬化性組成物であることが好ましい。
第2の硬化性組成物は、第1の硬化性組成物の非存在下で硬化したときに相分離する硬化性組成物であることが好ましい。
【0015】
他方の硬化性組成物の非存在下で硬化したときに硬化性相が分離するか否かは、それを単独で支持体に施用して硬化し、相分離が起こるか否かを観察することにより、決定することができる。
【0016】
したがって、一態様において、第1および第2の硬化性組成物は、それぞれ独立して1以上の硬化性化合物と水性液体媒体を含み、該硬化性化合物は、ポリマーを第1および第2の組成物を個々に硬化することにより得たときに、第1の硬化性組成物から生じたポリマーの第1の組成物の液体媒体に対する溶解度が、第2の組成物の硬化から生じたポリマーの第2の組成物の液体媒体に対する溶解度より高くなるように選択する。溶解度の差は、以下に論じるようないくつかの方法で達成することができる。
【0017】
第1の組成物は支持体と接触していることが好ましい。
第1および第2の組成物の硬化に用いられる条件は、被験組成物のみを基材に施用し、したがって第1および第2の硬化性組成物の間にあらゆる拡散の可能性がない点を除き、本発明の方法で用いられる条件と同一である。
【0018】
硬化が終了すると、第1および第2の両硬化性組成物から生じたポリマーは、それぞれの液体媒体に溶解しない。しかしながら、第1の組成物からのポリマーの溶解度が第2の組成物からのポリマーに比べ比較的高いことは、後者のポリマー(第2の硬化性組成物に由来する)が硬化中に相分離する(例えば、乾燥後に多孔質になる曇ったまたは不透明の層が生じる)一方、前者のポリマー(第1の硬化性組成物に由来する)が硬化中に相分離しない(緻密で、しばしば透明な層をもたらす)ときに、見ることができる。形成したポリマーが両方の組成物で同じ場合、相対的溶解度の差は液体媒体の差に起因する。
【0019】
他の態様において、第1および第2の硬化性組成物は、それぞれ独立して、1以上の硬化性化合物と水性液体媒体を含み、第1の組成物の液体媒体に対する第1の組成物の硬化性化合物(1以上)の溶解度は、第2の組成物の液体媒体に対する第2の組成物の硬化性化合物(1以上)の溶解度より高い(好ましくは少なくとも2%高く、より好ましくは少なくとも5%高い)。硬化性組成物が1より多くの硬化性化合物を含む場合、ここで言及する溶解度は、硬化性化合物全体の溶解度である。一態様において、溶解度は、(例えば、混合物が脱混合(demix)/相分離し始めたときに)曇り点に達するために100cmの液体媒体に溶解することができる硬化性化合物(1以上)のグラム数である。
【0020】
第1および第2の組成物が互いの中に拡散する程度は、コーティングが不均質である程度を決定する。例えば、第1および第2の組成物が互いの中にわずかな程度しか拡散しない場合、硬化時のコーティングは、完全に第1の組成物である下側領域、第1および第2の組成物の混合物を含む混合領域、ならびに完全に第2の組成物である上側(しかし必ずしも最も上ではない)領域を含むことができる。他方、より大きな程度の拡散は、第1および第2の硬化性組成物の最初の配合を有する領域は存在せず、代わりに不均質層の深さの全体にわたり組成勾配(緩やかであってもよく、または緩やかとは言えなくてもよい)が存在する、不均質コーティングをもたらす。
【0021】
図1では、第2の硬化性組成物に由来する多孔質領域(1)、第1の組成物に由来する非孔質領域(3)、ならびに第1および第2の組成物が互いの中に部分的に拡散していることに由来する混合中間領域(2)を見ることができる(波線は、試料の横断面での切断により生じた)。領域(2)および(3)は、図2に示す拡大図でより詳細に見ることができる。
【0022】
図3および4は実施例4を示している。実施例4では、実質的に非孔質な領域はあまり明瞭ではないが、良好な耐引っ掻き性を得るにはなお十分である。
支持体と接触している表面におけるポリマーの多孔率は、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満である。
【0023】
支持体からもっとも離れた表面におけるポリマーの多孔率は、好ましくは15%を超え、より好ましくは20%を超える。
ポリマーの多孔率は走査型電子顕微鏡(“SEM”)により決定することができる。例えば、第1および第2の硬化性組成物を本法で用いられる条件下で別個に硬化し、それらの多孔率をSEMを用いて測定することができる。
【0024】
多孔率%は、所望の場合、当該硬化性組成物を支持体上にコーティングして硬化し(第1または第2の硬化性組成物のどちらであっても)、本法で用いられる条件下で該組成物を硬化し、得られた硬化ポリマーの乾燥厚さを測定し、以下の計算を実施することにより、算出することができる:
多孔率%=(DT/CA×100%)−100%
ここにおいて:
DTは、得られた硬化ポリマーのマイクロメートルでの乾燥厚さであり;そして
CAは、非揮発性化合物のグラム毎mでのコーティング量である。
硬化は、第2の領域に相分離を引き起こすが、第1の領域には引き起こさないことが好ましい。結果として、ポリマー層は一般に、支持体にもっとも近く液体に対し不浸透性を示す一側面(相分離しなかった第1の硬化性組成物に由来する)と、液体浸透性を示すもう一方の側面(相分離した組成物に由来する)を有する。
【0025】
所望の場合、1以上のさらなる硬化性組成物を、第2の硬化性組成物の上面上に、好ましくは第1および第2の組成物と同時に、施用してもよい。
不均質コーティング(第1および第2の硬化性組成物のみに由来するか、これらの組成物と上面上に層状に重ねられたさらなる硬化性組成物との組合わせに由来するかのどちらであっても)の湿潤厚さは、好ましくは300ミクロン未満、より好ましくは150ミクロン未満である。コーティング厚さが厚いほど深さ全体を硬化するのがより難しくなる可能性があり、例えば、照射により硬化したときに、光が非常に厚いコーティングの下側層(1以上)に到達しないかもしれず、硬化が不完全であるか存在しない可能性があるので、この優先傾向が生じる。
【0026】
硬化性組成物の支持体への同時施用は、任意の適した方法、例えば、カーテンコーティング、押し出しコーティング、スライドコーティング、またはスロットダイコーティングにより、実施することができる。
【0027】
急速に移動する支持体に液体を同時施用するために、高速コーティング機が市販されている。これらの機械により、15m/minより高速、例えば、20m/minを超えるかさらに高速のコーティング速度が可能になり、30m/minがかなり典型的であるが、より高速、例えば、60m/minより高速、120m/minより高速、または最高約400m/minさえ可能である。
【0028】
第1および第2の硬化性組成物を支持体に高速コーティング機を用いて施用する場合、それらはそれぞれ、好ましくは35℃で測定して4000mPas未満、より好ましくは35℃で測定して1〜1000mPasの粘度を有する。硬化性組成物の粘度は、35℃で測定して1〜500mPa.sであることがもっとも好ましい。スライドビーズコーティング(slide bead coating)などのコーティング法では、好ましい粘度は、35℃で測定して1〜100mPa.sである。より低い粘度により、組成物を支持体に迅速に施用することが可能になり、高速で移動する生産ライン上でインク受容性基材を大量生産することが可能になる。
【0029】
インク受容性基材は固定された支持体を用いてバッチ式で調製することができるが、本発明の利益を十分に得るためには、移動する支持体を用いて連続式でインク受容性基材を調製することが遙かに好ましい。支持体は、1本のスプールからもう一方へ連続的に動かされるロールの形にあることができ、または、支持体は、連続的に動かされるベルト上に載っていることができる。そのような技術を用いると、硬化性組成物を連続式で支持体に施用することができ、または、それらを大規模なバッチ式で施用することができる。
【0030】
したがって、好ましい方法では、硬化性組成物施用ステーションと、照射源と、インク受容性基材収集ステーションと、支持体を硬化性組成物施用ステーションから照射源およびインク受容性基材収集ステーションに移動させる手段とを含む製造ユニットにより、硬化性組成物を支持体に同時施用する。
【0031】
硬化性組成物施用ステーションは照射源に対し上流の位置に置くことができ、照射源はインク受容性基材収集ステーションに対し上流の位置に置くことができる。
硬化性組成物施用ステーションは、第1の硬化性組成物を支持体に施用する第1のスロットと、第2の硬化性組成物を支持体に施用する第2のスロットを含むことが好ましい。所望の場合、例えば、第2の硬化性組成物の上面上に1以上のさらなる硬化性組成物を施用するために、さらなるスロットが包含されていることもできる。
【0032】
硬化性組成物は、第1の硬化性組成物が支持体と接触している間、その後、またはより好ましくはその前に、互いに初めて接触させることができる。
硬化前に第1および第2の硬化性組成物が互いの中に部分的に拡散するのを可能にすることにより、得られるポリマーと支持体の間に強い付着が形成する。硬化により形成するポリマーは、典型的には、相分離が起こらなかった第1の領域に由来する比較的非孔質の領域と、相分離が起こった第2の領域に由来する比較的多孔質の領域とを含む。さらなる硬化性組成物を施用することもでき、一般にこれらは、硬化により相分離して、インクを受容することができるさらなる多孔質ポリマー層をもたらすように配合される。各硬化性層の組成は、所望のように変動させることができる。付着のさらなる強化は、H−橋(H-bridge)を形成することができる硬化性化合物を選択するか、架橋密度を増大させることにより、達成することができる。
【0033】
第1の組成物は、好ましくは5〜75g/m、より好ましくは7〜40g/m、特に10〜20g/mの量で、支持体に施用する。
第2の組成物は、好ましくは40〜295g/m、より好ましくは50〜200g/m、特に60〜150g/mの量で、支持体に施用する。
【0034】
多孔質領域と非孔質領域(または多孔率の低い領域)を有するポリマーを得るために、第1および第2の硬化性組成物は典型的には互いに異なっている。この差異は多くの方法で達成することができる。例えば、第1および第2の硬化性組成物に異なる硬化性化合物を用いることができる。相分離特性における差異、したがって、相分離が起こる領域と相分離が起こらない領域を達成するために、第1および第2の硬化性組成物に用いられる硬化性化合物の量は、各硬化性組成物中の硬化性化合物の識別点(identity)が同一であるか否かにかかわらず、異なっていることができる。第1および第2の硬化性組成物の相分離特性の差異は、硬化性化合物またはそれらの量が同じであるか異なっているかにかかわらず、異なる量および/または異なるタイプの有機溶媒を硬化性組成物に包含させることによっても達成することができる。第1の組成物に主としてまたは完全に由来する第1の領域における相分離は、硬化により生じる硬化ポリマーが高い可溶性を示すように組成物を配合することにより、防止することができる。例えば、第1の硬化性組成物中に、例えば第2の硬化性組成物より著しく多くの水混和性有機溶媒を包含させることができ、これにより、硬化時に第1の硬化性組成物は相分離せず、第2の硬化性組成物は相分離する。あるいは、または加えて、第1の硬化性組成物中に第2の硬化性組成物より強力な有機溶媒を包含させてもよい。
【0035】
組成物が互いの中に拡散している所に由来するインク受容性層の部分を以下混合領域と略し、該部分は、支持体からの距離が増大するにつれ多孔率が上昇する緩やかな多孔率の勾配を有することが好ましい。好ましい態様では、多孔率の勾配が十分に緩やかであるので、得られたインク受容性基材を貫く断面の走査型電子顕微鏡による検査は、第1の組成物に由来するインク受容性層の部分が第2の組成物に由来する部分と接触する所であり基材の表面に平行である別個の線接合部を示さない。
【0036】
硬化性組成物のそれぞれにおける硬化性化合物の識別点および比率は、相分離を容易にするか妨げるように調整することもでき、例えば、親水性モノマーは水性硬化性組成物からの相分離を妨げる一方、疎水性モノマーはそのような組成物における相分離を容易にする。
【0037】
ポリマーの多孔率における緩やかな変化は、良好な耐引っ掻き性を増進することが見いだされた。第1の硬化性組成物を支持体に施用した後、硬化し、続いて第2の硬化性組成物を施用した後硬化すると、非孔質から多孔質への非常にはっきりした転移が得られ、耐引っ掻き性は低いことが多かった。いずれかの理論にとらわれるつもりはないが、本発明の方法により達成することができる多孔率における緩やかな変化は、より広い領域にわたり、多孔質ポリマー層の引っ掻きにより生じうる剪断応力のより均等な分布を可能にすることができる。
【0038】
支持体により近い方が支持体からより離れている方より低い多孔率を有するポリマーを形成するのに好都合な方法は、第1の組成物により多くの水混和性有機溶媒を包含させることである。例えば、一態様において、第1の硬化性組成物は、組成物の全重量に対し、第2の硬化性組成物より少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%多くの有機溶媒を含むことができる(例えば、第2の硬化性組成物が14重量%の有機溶媒を含む場合、第1の硬化性組成物は全体で好ましくは少なくとも19重量%、より好ましくは少なくとも24重量%の有機溶媒(1以上)を含む)。他の態様において、第1の硬化性組成物における水に対する有機溶媒の重量比は、第2の硬化性組成物の場合に比べ好ましくは少なくとも10%高く、より好ましくは少なくとも20%高く、さらにより好ましくは少なくとも40%高い(例えば、第2の硬化性組成物の全有機溶媒(1以上)と水の比率が0.5:1である場合、第1の硬化性組成物は好ましくは少なくとも0.55:1、より好ましくは少なくとも0.6:1、特に0.7:1の比率を有する)。好ましい比率は、両組成物中の硬化性化合物のタイプと有機溶媒のタイプにある程度依存する。
【0039】
典型的には、曇り点から遠い透明溶液である第1の硬化性組成物と、曇り点に近い透明溶液である第2の硬化性組成物を選択する。
第1の硬化性組成物に比べ、好ましくはより多くの第2の硬化性組成物、より好ましくは重量で少なくとも2倍の量、特に重量で少なくとも3倍の量、さらに特に重量で4〜6倍の量の第2の硬化性組成物を、支持体に施用する。
【0040】
一態様において、第1の硬化性組成物における主要な水溶性硬化性化合物は、第2の硬化性組成物における主要な水溶性硬化性化合物より高い水溶性を有する。
第1および第2の硬化性組成物を支持体に施用すると、第1および第2の領域が形成することができ(必ずしも明白または明瞭にではないが)、硬化性化合物は硬化性組成物間を、例えば第2の硬化性組成物から第1の硬化性組成物へ、および/またはその逆に、拡散することができる。一般に、第1の硬化性組成物から第2の硬化性組成物への主要な水溶性硬化性化合物の拡散は、第2の領域における相分離を妨げない。これは、通常、第2の硬化性組成物に由来する溶解性のより低い化合物(1以上)が、転相反応を決定づけるためである。
【0041】
第1の硬化性組成物が第2の硬化性組成物より少ない有機溶媒を含む場合、第1の硬化性組成物がその曇り点から遠いものであっても、第2の硬化性組成物から第1の硬化性組成物への水溶性がより低い硬化性化合物の拡散は、第1の領域において転相を開始させる可能性がある。これは、溶解度のより低い化合物が反応において優位であるためである。一般に、後者の現象は、完成した層が多孔質になり、場合によってはインク受容性層の耐引っ掻き性に悪影響を及ぼすかもしれないので、好ましくない。
【0042】
第1または第2の組成物が、硬化中に相分離する領域を形成することができるか否かは、該方法で用いられる予定の条件下で組成物を孤立して硬化することにより、決定することができる。相分離が起きる場合、得られるポリマーは外見上不透明(例えば白色)であるが、相分離が起こらない場合、得られるポリマーは通常透明である。
【0043】
硬化性組成物中に用いることができる水混和性有機溶媒の例としては、以下を挙げることができる:C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびにオリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エメトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホラン。実際上の理由で、水溶性有機溶媒は好ましくは低い蒸発速度、すなわち低い蒸気圧、例えば、それぞれの場合で20℃で測定して10kPa未満、より好ましくは5kPa未満、さらにより好ましくは2kPa未満の蒸気圧を有する。好ましい水混和性有機溶媒はプロパン−2−オールおよびジアセトンアルコールである。
【0044】
所望の場合、例えば支持体の湿潤性および支持体へのポリマーの付着能力を改善するために、支持体をコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理などに付してもよい。
【0045】
好ましくは、インク受容性基材は、0.02〜1.2ミクロン、好ましくは0.05〜0.7ミクロンの平均表面細孔径を有する。“表面細孔”という用語は、インク受容性基材の表面上に見ることができる細孔をさす。“表面細孔径”とはこれらの細孔の直径をさす。非円形細孔の場合、細孔径は、非円形細孔と同じ表面積を有する円の直径と考えることができる。
【0046】
ポリマーの乾燥厚さは、好ましくは10〜300ミクロン、より好ましくは20〜150ミクロン、さらにより好ましくは30〜90ミクロンである。インク受容性基材が2層より多くの層を含む多層である場合、個々の層の厚さは、達成したい性質に応じて自由に選択することができる。
【0047】
硬化性組成物はそれぞれ、水、1以上の有機溶媒、1以上の硬化性化合物、および所望により1以上の光開始剤を含むことが好ましい。
好ましい硬化性化合物は、二官能性化合物および多官能性化合物であり、1以上の単官能性化合物が包含されていてもよい。
【0048】
適した二官能性化合物の例としては、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジアリルエーテル、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、プロパンジオールエトキシレートジアクリレート、ブタンジオールエトキシレートジアクリレート、ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−コ−プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、およびこれらの組合わせが挙げられる。
【0049】
適した多官能性化合物の例としては、グリセロールエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンエトキシレートテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールエトキシレートヘキサアクリレート、およびこれらの組合わせが挙げられる。
【0050】
適した単官能性化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、およびこれらの組合わせが挙げられる。
【0051】
硬化性組成物は、それぞれ独立して、少なくとも2個のアクリル基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。アクリル基は、反応性が高いため好ましい。
多くの硬化性化合物は事実上疎水性であり、透明溶液を得るためには高濃度の有機無極性溶媒を必要とする。大量の揮発性有機溶媒は、膜の乾燥段階中に生産区域に有害な状態をもたらしうるので好ましくないが、不揮発性溶媒は除去するのが難しく、したがって同様に好ましくない。いくつかの硬化性化合物は水希釈性で、水溶液を形成する。25℃において少なくとも2重量%の水が硬化性化合物と混和しうる場合、化合物を水希釈性とみなす。好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも10重量%の水が、本発明の硬化性化合物と混和することができる。
【0052】
第2の硬化性組成物における有機溶媒対水の重量比は、好ましくは2未満対1、より好ましくは1未満対1、さらにより好ましくは1未満対2である。第1の硬化性組成物における水に対する有機溶媒の重量比は、第2の硬化性組成物の場合より高いことができる。水との混和性が硬化性化合物を完全に溶解するのに不十分である場合、有機溶媒、とりわけ水混和性有機溶媒を包含させることが望ましい。
【0053】
一態様において、第2の硬化性組成物は有機溶媒を含有しない。インクを受容するのに適した好ましい多孔質マトリックスを得るために、例えば、第2の硬化性組成物として、10%のCN132、27.5%のCN435および62.5%を用いることができ、または21.5%のCN132、21.5%のCN435および57%の水、または60%のCN132および40%の水、または49.75%のCN132、49.75%の水および0.5%のドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを用いることができる。CN132およびCN435は、フランスのCray Valleyから入手可能な硬化性モノマーである。CN435(米国ではSR9035として入手可能)は、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0054】
好ましい有機溶媒は、第1の硬化性組成物について上記したものと同様である。
硬化性化合物の溶媒への溶解度は、転相が起こるか否かに影響を与える可能性があるもう一つのパラメーターである。
【0055】
硬化性組成物は透明溶液であることが好ましい。硬化性組成物に用いられる有機溶媒(1以上)は、選択した硬化性化合物(1以上)を完全に溶解するように選ぶことができる。透明溶液はより安定であり、一般に好ましい。しかしながら、わずかな濁りは通常不安定性の原因にならず、ほとんどの場合、とりわけ相分離するよう意図されている第2および任意のこれに続く硬化性組成物では、許容可能である。第2の領域で相分離を起こさせるための硬化では、第2の硬化性組成物から生じる成長ポリマーが第2の硬化性組成物に溶解しないことが好ましい。これにより、ある種の有機溶媒と組み合わせて選択することができる硬化性化合物に、一定の制限が加えられる。
【0056】
第1および第2の領域における相分離を促進または防止するための硬化性化合物と有機溶媒の適切な組合わせの選択を容易にすることができる考えうる方法は、例えば欧州出願公開EP−A−216622号(曇り点)および米国特許公報US−A−3823027号(Hansenシステム)に記載されている。硬化性化合物と得られるポリマーの溶解度の差を大きくする、したがって第2の領域および任意のこれに続いて施用される硬化性組成物における相分離を迅速にするためには、硬化性化合物の分子量(MW)は大きすぎないことが好ましいが、硬化性化合物のMWが大きくても、溶媒を慎重に選択することにより相分離を実現することができる。第2および任意のこれに続く硬化性組成物(モノマーまたはオリゴマーのどちらであっても)に用いられる任意の硬化性化合物のMWは、好ましくは10000ダルトン未満、より好ましくは5000ダルトン未満である。とりわけ良好な結果は、1000ダルトン未満のMWを有する硬化性化合物で得られる。
【0057】
水希釈性が例えば2〜50重量%である硬化性化合物に加え、他のタイプの硬化性モノマー、例えば、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン、またはエチレン的に不飽和な化合物、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリエン−ポリチオール、ビニルエーテル、ビニルアミド、ビニルアミン、アリルエーテル、アリルエステル、アリルアミン、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエンおよびスチレンが、硬化性組成物中に存在していてもよい。硬化性化合物は、1以上の(メタ)アクリレート化合物、例えば、アルキル−(メタ)アクリレート、ポリエステル−(メタ)アクリレート、ウレタン−(メタ)アクリレート、ポリエーテル−(メタ)アクリレート、エポキシ−(メタ)アクリレート、ポリブタジエン−(メタ)アクリレート、シリコーン−(メタ)アクリレート、メラミン−(メタ)アクリレート、ホスファゼン−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの組合わせなどであることが、それらの高い反応性に起因して好ましい。得られるインク受容性基材の特定の特性を改変するために、他のタイプの硬化性化合物が硬化性組成物に包含されていてもよい。
【0058】
所望の場合、インク受容性基材の最終的性質を所望の性質に合わせるために、硬化性組成物と処理条件の特定の組合わせを選択することができる。硬化により、硬化性化合物(1以上)は重合して徐々にポリマーを形成する。このプロセス中に、組成物中の成長ポリマーの溶解度は低下し、第2の領域(得られたポリマーが、第2の組成物中で比較的より低い溶解度を有する所)に相分離が生じる。しかしながら、第1の領域中のポリマーの部分(第2の領域中のポリマーの部分とは異なる組成を有することができる)は、第1の組成物に対し可溶性であり続け、第1の領域(第1の硬化性組成物に完全または主として由来する)では相分離は起こらない。
【0059】
乾燥により溶媒は除去され、第1の硬化性組成物に完全または主として由来する第1の(実質的に非孔質の)領域、第1および第2の硬化性組成物の混合物に由来する混合領域、および第2の硬化性組成物に完全または主として由来する上側(しかし必ずしも最も上ではない)領域を有するポリマーが、支持体上に残る。
【0060】
第1および第2の硬化性組成物が互いの中に拡散して不均質コーティングをもたらすことは、良好な耐引っ掻き性を有するインク受容性基材を得るのに重要であると考えられる。完全な拡散により、相分離する可能性もしない可能性もある均質コーティングが生じる。したがって、コーティングが不均質であるうちに、すなわち、拡散が完了する前に、硬化を開始することが重要である。拡散の程度および速度に影響を与えるパラメーターとしては、硬化性化合物のタイプおよび濃度、温度、各硬化性組成物の深さ、第1および第2の硬化性組成物の粘度、ならびに、硬化性組成物の支持体への施用と硬化との間の時間間隔が挙げられる。
【0061】
部分的拡散を達成するためには、一般に、硬化性組成物の支持体への施用と組成物の硬化との間の時間を制限すべきである。したがって、段階(iii)は、好ましくは段階(i)の30秒以内、より好ましくは15秒以内、さらにより好ましくは6秒以内、特に段階(i)の3秒以内に実施する。連続的プロセスでは、定常状態で、移動している支持体の異なる部分上で段階(i)、(ii)および(iii)を同時に実施し、段階(i)と段階(iii)の上記時間差は、第1および第2の硬化性組成物を支持体に施用するための手段と、不均質コーティングを硬化するための手段を離して間をあけることにより、達成することができる。
【0062】
第1および第2の硬化性組成物中の硬化性化合物の濃度は、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、特に少なくとも37.5重量%である。硬化性化合物の濃度の上限は、組成物がコーティングとして支持体に施用されるのに十分な低い粘度を維持する限り99.5重量%もの高さであることができるが、30重量%〜60重量%の濃度が好ましい。
【0063】
インク受容性基材が水性インクと一緒に用いるよう意図されている場合、第2の硬化性組成物は1以上の親水性硬化性化合物を含むことが好ましい。これは、該化合物が、基材が水性インクを迅速に吸収するのを促進することができるためである。他方、水性硬化性組成物からの相分離を達成するためには、疎水性ポリマーが望ましい。親水性と疎水性の両方に対するこれら一見矛盾した要求は、例えば、組成物に1以上の両親媒性硬化性化合物を包含させることにより達成することができる。両親媒性硬化性化合物は、親水性基および疎水性基の両方を有することができ、または、両親媒性基(例えば、(1,2−もしくは1,3−)プロピレンオキシド鎖または(1,2−、1,3−もしくは1,4−)ブチレンオキシド鎖)を有することができる。疎水性基の例としては、脂肪族および芳香族基、C3より長いアルキル鎖などが挙げられる。他のアプローチは、硬化性組成物中に、親水性硬化性化合物と疎水性硬化性化合物の組合わせを包含させることである。後者の方法により、得られるインク受容性基材の性質を、両タイプの硬化性化合物の比率を変動させることにより制御することが可能になる。
【0064】
親水性硬化性化合物としては、水溶性モノマーおよび親水性基を有するモノマー、例えば、ヒドロキシ、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウム、エチレンオキシド鎖などが挙げられる。
【0065】
両親媒性はさまざまな方法で得ることができる。両親媒性硬化性化合物は、例えば、極性基(例えば、ヒドロキシ、エーテル、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウムなど)を疎水性硬化性化合物の構造内に導入することにより、作成することができる。他方、親水性構造物から開始する場合、疎水性を例えばアルキルまたは芳香族基を導入することにより向上させることにより、両親媒性硬化性化合物を作成することができる。良好な結果は、第2の硬化性組成物中の少なくとも1つの硬化性化合物が限定的な水希釈性を有する場合に得られる。
【0066】
第2の硬化性組成物に用いられる硬化性化合物は、25℃の水と、好ましくは98/2〜50/50、より好ましくは96/4〜50/50、さらにより好ましくは90/10〜50/50の重量比で混和することができる。
多くの適した硬化性化合物は事実上両親媒性である。硬化性化合物の適切な濃度は、共溶媒、界面活性剤を加えるか、組成物のpHを調整するか、より高い水負荷において良好な溶解度を維持する硬化性化合物中で混合することにより、達成することができる。後者のモノマーと水の混和性の比率は、典型的には25℃で50重量%より大きい。25℃において2/98〜50/50の水/モノマーの重量比で水との混和性を示す硬化性化合物としては、アルキレングリコールジアクリレート(1以上)、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(好ましくはMW<500、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートなど)、エチレングリコールエポキシレートジメタクリレート、グリセロールジグリセロレートジアクリレート、プロピレングリコールグリセロレートジアクリレート、トリプロピレングリコールグリセロレートジアクリレート、オリゴ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、オリゴ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、オリゴ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、ポリ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、オリゴ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート、ポリ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシ化3〜10mol)、エトキシ化ビスフェノール−Aジアクリレート(エトキシ化3〜10mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−(エトキシエトキシ)エチルアクリレート、N,N’−(r[アルファ])エチレン−ビス(アクリルアミド)が挙げられる。CN129(エポキシアクリレート)、CN131B(単官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN133(三官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN9245(三官能性ウレタンアクリレート)、CN3755(アミノジアクリレート)、およびCN371(アミノジアクリレート)などの市販の硬化性化合物も適しており、これらはすべてフランスのCray Valleyからのものである。
【0067】
水との良好な混和性を有する(水/モノマーの重量比が25℃において50/50より大きい)適した(親水性)硬化性化合物としては、アルキレングリコールジアクリレート(1以上)、例えば、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(好ましくはMW>500)およびポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(好ましくはMW>500);エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(10molを超えるエトキシ化);(メタ)アクリル酸;メタ(アクリルアミド);2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート;3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート;2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート;2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド;3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド;2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート第四アンモニウム塩(塩化物または硫酸塩);2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート第四アンモニウム塩(塩化物または硫酸塩);2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド第四アンモニウム塩(塩化物または硫酸塩);および3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド第四アンモニウム塩(塩化物または硫酸塩)が挙げられる。
【0068】
好ましいアルキレングリコールジアクリレート(1以上)は、式(I)のものである:
【0069】
【化1】

【0070】
[式中:
各pは独立して1〜5であり;
nは少なくとも1であり;そして
各RおよびRは、独立して、H、メチルまたはエチルである]。
【0071】
nは、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8、特に2〜7である。
好ましいアルキレングリコール基は、式−((C2q)O)−[式中、qは2、3または4(好ましくは2)であり、rは1〜8である]のものである。したがって、好ましいアルキレングリコールジアクリレート(1以上)は、式HC=CHCO−O−((C2q)O)−COCH=CH[式中、qおよびrは先に定義したとおりである]のものである。
【0072】
適したアルキレングリコールジアクリレート(1以上)の例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコール基の平均数が8以下であるポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ジ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびアルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。これらのジアクリレートの混合物を用いることもできる。適したモノマーの商業的例は、例えば、エチレンジアクリレート(例えばベルギーのAcrosOrganicsから)、トリエチレングリコールジアクリレート(例えば中国のDayang Chemicals Co.から)、テトラエチレングリコールジアクリレート(例えば中国のLeputechから)、ポリエチレングリコール200ジアクリレート(例えばフランスのSartomerからのSR259);ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(例えば日本のKyoeisha Chemicalから)、ジプロピレングリコールジアクリレート(例えばフランスのSartomerからのSR508)、トリプロピレングリコールジアクリレート(例えば中国のDayang Chemicals Co.から)である。場合によっては、市販の製品は単一の純粋な化合物ではなく、アルキレングリコール基の数がさまざまである化合物の混合物である。そのような混合物も、本発明での使用に適している。
【0073】
水との混和性が低い(水/モノマーの重量比が25℃において2/98より小さい)適した(疎水性)硬化性化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート)、芳香族アクリレート(フェノールアクリレート、アルキルフェノールアクリレートなど)、脂肪族ジオール(ジ)(メタ)アクリレート(例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、スチレン誘導体、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ビニルアルキルエーテル、アルケン、ブタジエン、ノルボルネン、イソプレン、Cより長いアルキル鎖を有するポリエステルアクリレート、Cより長いアルキル鎖を有するポリウレタンアクリレート、およびCより長いアルキル鎖を有するポリアミドアクリレートが挙げられる。
【0074】
第2の組成物中の硬化性化合物の全重量に基づき、第2の硬化性組成物に用いられる硬化性化合物の好ましくは1〜100重量%、より好ましくは10〜80重量%、もっとも好ましくは40〜70重量%が、25℃において2/98〜50/50の水/硬化性化合物の比率で、水と混和することができる。
【0075】
第2の領域では相分離が起こることが望ましいが第1の領域では起こらないことが望ましいので、第1の硬化性組成物では、第2の硬化性組成物より混和性が高く混和性硬化性化合物の濃度が高いことがより好ましい。
【0076】
原理上は、任意の適した波長の(電磁)放射線、例えば、紫外線、可視光線または赤外線を用いて、不均質コーティングを硬化することができる。硬化性組成物の照射により重合反応を開始させるために、重合開始剤またはラジカル開始剤を包含させてもよい。ラジカル重合の利点は、速い反応速度および柔軟性である;化学重合では架橋剤を完全に混合することが必要であり、通常遙かに時間がかかる。開始剤は、好ましくは組成物を支持体に施用する前に、硬化性化合物(1以上)を含有する組成物中に混合することができる。コーティングを紫外線または可視光線により硬化する場合、光開始剤が通常必要である。適した光開始剤は、当技術分野で公知のもの、例えば、ラジカル型、カチオン型またはアニオン型の光開始剤である。
【0077】
ラジカル型Iの光開始剤の例は、国際公開2007/018425号の14頁23行〜15頁26行に記載されているとおりであり、これを本明細書中で参考として援用する。
ラジカル型IIの光開始剤の例は、国際公開2007/018425号の15頁27行〜16頁27行に記載されているとおりであり、これを本明細書中で参考として援用する。
【0078】
(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、およびポリ(メタ)アクリレート(これらは硬化性化合物である)に関しては、タイプIの光開始剤が好ましい。特に、アルファ−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、アルファ−アミノアルキルフェノン、アルファ−スルホニルアルキルフェノン、ならびにアシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが好ましい。
【0079】
硬化性化合物(1以上)に対する光開始剤の比率は、組成物中の硬化性化合物(1以上)の全重量に基づき、好ましくは0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%である。単一タイプの光開始剤を用いることができるが、いくつかの異なるタイプの組合わせを用いることもできる。
【0080】
硬化性化合物のいずれかがエポキシ、オキセタンもしくは他の開環性複素環式基またはビニルエーテル基を有する場合、カチオン性光開始剤がとりわけ適している。好ましいカチオン性光開始剤は、ヘキサフルオロアルシネートイオン、六フッ化アンチモン(V)−イオン、六フッ化リン−イオンおよびテトラフルオロホウ酸塩イオンのような非求核性アニオンの有機塩である。市販されている例としては、UVI−6974、UVI−6970、UVI−6990(Union Carbide Corp.により製造されている)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(Sartomer Corpにより製造されている)、Adekaoptomer SP−150、SP−151、SP−170、SP−171(Asahi Denka Kogyo Co.,Ltd.により製造されている)、Irgacure 261(Ciba Specialty Chemicals Corp.)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(Nippon Soda Co.,Ltd.)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103およびBBI−103(Midori Chemical Co.,Ltd.)が挙げられる。上記カチオン性光開始剤は、個別または2種以上の組合わせのいずれかで用いることができる。もっとも好ましいカチオン性光開始剤はトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、例えばUVI−6974(Union Carbideから)である。
【0081】
硬化に紫外線を用いる場合、UV光源はいくつかの波長において発光を有するものを選択することができる。UV光源と光開始剤(1以上)の組合わせは、十分な放射線が不均質コーティングを透過して光開始剤を活性化するように最適化することができる。典型例は、Fusion UV Systemsにより供給されている出力600ワット/インチ(240W/cm)を有するH−電球であり、これは、約220nm、255nm、300nm、310nm、365nm、405nm、435nm、550nmおよび580nmに発光極大を有する。あるいは、異なる発光スペクトルを有するV−電球およびD−電球である。
【0082】
速いコーティング速度で不均質コーティングを硬化するのに望ましい放射線量に達するように、段階(iii)は、1より多くのUVランプでの不均質硬化性コーティングの照射を含んでいてもよい。2以上のUVランプを用いる場合、ランプは、同等の線量のUV光を施すことができ、または異なる線量のUV光を施すことができる。例えば、第1のランプは、後続するランプより高いまたは低い線量を不均質硬化性コーティングに施すことができる。そのようなUVランプを1より多く用いる場合、ランプは、同一または異なる波長の光を発することができる。異なる波長の光の使用は、例えば、適した光開始剤と組み合わせて、一方のランプが良好な表面硬化を達成する波長の光を発し、他方のランプが良好な硬化深さを達成する波長の光を発するときに、良好な硬化特性を達成するのに有利であることができる。
【0083】
UV光源および光開始剤は、与えられたUV光の波長が光開始剤(1以上)の吸収に対応するように選択することが好ましい。光源と光開始剤の選択により最適な組合わせをもたらすことができる。多様なタイプの光開始剤を施用することにより、より厚い層を同じ強度の照射で効率的に硬化することが可能になる。
【0084】
どちらか一方または両方の硬化性組成物に光開始剤が包含されていない場合、硬化は、例えば50〜300keVの暴露を用いる電子ビーム暴露により、実施することができる。硬化は、プラズマまたはコロナ暴露により達成することもできる。
【0085】
硬化速度は、アミン相乗剤を硬化性組成物に包含させることにより上昇させることができる。適したアミン相乗剤は、例えば、遊離アルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン;芳香族アミン、例えば、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、ならびに、ポリアリルアミンおよびその誘導体のようなポリマーアミンである。エチレン的に不飽和なアミン(例えば、(メタ)アクリル化アミン)のような硬化性アミン相乗剤は、硬化によりポリマー中に組み込まれる能力を有するので、これらの使用によりもたらされる臭気がより少ないため好ましい。アミン相乗剤の量は、組成物中の硬化性化合物の全重量に基づき好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜3重量%である。
【0086】
所望の場合、湿潤剤として、または表面張力を調整するために、界面活性剤または界面活性剤の組合わせを一方または両方の硬化性組成物に包含させてもよい。放射線硬化性界面活性剤などの市販の界面活性剤を利用することができる。硬化性組成物での使用に適した界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの組合わせが挙げられる。
【0087】
好ましい界面活性剤は、国際公開2007/018425号の20頁15行〜22頁6行に記載されているとおりであり、これを本明細書中で参考として援用する。フッ素系界面活性剤、特にZonyl(登録商標)FSN(E.I.Du Pontにより生産されている)が、とりわけ好ましい。
【0088】
インク受容性基材は、少なくとも10%の光透過率を有することが好ましい。
インク受容性基材は、Scratching Intensity Tester Heidon 18により測定して少なくとも100gの耐引っ掻き性を有することが好ましい。
【0089】
支持体はゼラチンコーティングを含むことが好ましい。これにより、インク受容性基材の付着性および耐引っ掻き性はさらに向上する。あらゆるタイプのゼラチン、例えば、アルカリ処理ゼラチン(牛の骨または皮のゼラチン)、酸処理ゼラチン(豚の皮のゼラチン)、化学修飾ゼラチン、例えば、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、アルキル第四アンモニウムで修飾されたゼラチン、コハク化ゼラチン、アルキルコハク化ゼラチン、脂肪酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルで修飾されたゼラチン、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0090】
好ましい態様において、支持体はゼラチンコーティングを含み、第1の硬化性組成物は、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する硬化性化合物を含む。この組合わせは、とりわけ良好な耐引っ掻き性をもたらすことができる。
【0091】
所望の場合、白色度を向上させ、および/またはさらなる多孔性を付与するために、1以上の充填剤が組成物に包含されていてもよい。有機および無機粒子の両方を充填剤として用いることができる。有用な充填剤は、例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナまたはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン酸化アルミニウム(cation aluminium oxide)もしくはその水和物および擬ベーマイト)、表面処理したカチオンコロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、粘土、炭酸亜鉛、サテンホワイト、珪藻土、合成非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム、および合成雲母である。これらの無機充填剤のうち、多孔質合成シリカ、多孔質炭酸カルシウムおよび多孔質アルミナなどの多孔質無機充填剤が、とりわけ好ましい。有機充填剤の有用な例は、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、エラストマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル、ポリエステル−コポリマー、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリシリコーン、グアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、弾性スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂により示される。このような有機および無機充填剤を、単独または組み合わせて用いることができる。
【0092】
所望の場合、インクに含有される着色剤を固定するのを補助するために、1以上の媒染剤を、硬化性組成物の一方または両方、特に第2の硬化性組成物に包含させてもよい。インクジェット印刷機に用いられる着色剤は、典型的に、アニオン性基、例えば、カルボキシおよび/またはスルホ基を有する。したがって、第2の硬化性組成物は、カチオン性媒染剤を含有することが好ましい。
【0093】
好ましい媒染剤は有機または無機であることが好ましく、あるいは、有機および無機媒染剤の混合物を用いてもよい。
好ましい有機カチオン性媒染剤は硬化性であり、例えば、アミノまたは第四アンモニウム基および1以上の重合性基を含有する。そのような媒染剤の例としては、ビニル、(ジ)アリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリロイル基などの重合性基を1以上含む、アルキル−またはベンジルアンモニウム塩が挙げられる。
【0094】
好ましい無機媒染剤としては、多価水溶性金属塩および疎水性金属塩、特に、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物のほか、周期表のIHB族系列の金属の塩(塩または錯体)が挙げられる。
【0095】
硬化性組成物(1以上)に包含される媒染剤の量は、最終的なインク受容性基材に好ましくは0.01〜5g/m、より好ましくは0.1〜3g/mの濃度をもたらすように選択する。
【0096】
支持体は、透明または半透明材料であることが好ましい。適した支持体の例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、トリアセテートセルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。支持体として用いることができる他の材料は、ガラス、ポリアクリレートなどである。とりわけポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0097】
支持体の厚さは特に限定されないが、取り扱いやすさの観点から50〜200ミクロンが好都合である。
本発明の第2の観点は、本発明の第1の観点に従った方法により得られるインク受容性基材を提供する。
【0098】
本発明の第3の観点は、本発明の第2の観点に従ったインク受容性基材にインクを施用することを含む、基材上に像を形成するための方法を提供する。
本発明のインク受容性基材は、大型印刷機での使用にとりわけ適している。
【0099】
第3のプロセスでは水性インクを用いてもよいが、好ましいインクは、溶媒に基づくインク(エコソルベント(eco-solvent)インクを含む)、UV硬化性インク(特に非水性UV硬化性インク)および油に基づくインクである。適したUV硬化性インクおよび溶媒に基づくインクは、FUJIFILM Sericolから、例えばそれぞれ商品名UvijetTMおよびColor+TMで得ることができる。
【0100】
水性インクは、1以上の着色剤、水、および1以上の水混和性有機溶媒を含むことが好ましい。水混和性有機溶媒の例は上記のとおりである。適した着色剤は、顔料および染料、特に1以上のアニオン性基(例えばスルホおよび/またはカルボキシ基)を持つものである。
【0101】
インクは、インクジェット印刷機、特にサーマルまたは圧電式インクジェット印刷機を用いて基材に施用することが好ましい。
本発明の第4の観点は、本発明の第2の観点に従って印刷されたインク受容性基材を提供する。
【0102】
本発明の第5の観点は、窓を規定するフレーム、光源、および印刷されたインク受容性基材を含むライトボックスを提供し、ここにおいて、インク受容性基材は、本発明の第2の観点で定義されているとおりである。
【実施例】
【0103】
ここで、本発明を以下の限定的ではない実施例により例示する。実施例において、部および百分率はすべて、特記しない限り重量に基づく。
実施例では以下の略語を用いる:
【0104】
【表1】

【0105】
実施例では第1の硬化性組成物を以下に記載するように変動させ、または、比較例1ではこれを完全に削除した。
第2の硬化性組成物は以下の配合を有していた:
【0106】
【表2】

【0107】
第3の硬化性組成物は以下の配合を有していた:
【0108】
【表3】

【0109】
耐引っ掻き性は、日本のHeidon Coからの‘Scratching Intensity Tester Heidon 18’を用いて測定した。先端の直径が0.1mmであるステンレス鋼針を被験試料上に置き、徐々に増大させてさまざまな重量を針上にかけた。重量をかけた針を試料上に載せたまま、試料を10mm/secの速度で移動させた。耐引っ掻き性は、白色多孔質層が針により実質的に除去され、下にある透明支持体が見えるようになったときの重量であった。より小さな重量では、場合によっては多孔質層においてわずかな表面の引っ掻き傷が見られた。これらの実験において、良好な耐引っ掻き性は、>100gの値であると考えた。
実施例1〜17および比較例1〜2
実施例1〜17を、以下に記載する一般的方法を用いて支持体に硬化性組成物を施用することにより調製した。
【0110】
ある長さの支持体(コロナ放電により処理してあり、ゼラチンコーティングを有する、ベルギーのAgfaから得た透明PETフィルム)を、第1のスプール上に巻き付けた。支持体は30m/minの速度で第2のスプール上へ移動させた。第1および第2の硬化性組成物(後者は上記配合を有する)を、同時に、連続して、移動している支持体に施用した。これに加えて、第3の硬化性組成物(上記配合を有する)を、第1および第2の硬化性組成物と同時に支持体に施用した。3つの硬化性組成物はすべて、3つのスロットを用いるスライドビーズコーティング機を含む組成物施用ステーションにより施用した。第1のスロットにより第1の組成物を16g/mの(湿潤)量で支持体に施用し、第2のスロットにより第2の組成物を75g/mの(湿潤)量で支持体に施用し、第3の硬化性組成物を15g/mの(湿潤)量で最上層として施用した。
【0111】
コーティングした支持体を、スライドビーズコーターの1.2メートル(=2.4秒)下流に位置決めされた照射源(D−電球を取り付けたFusion UV SystemsからのLight Hammer LH6、67%の強度で作動)の下に通した後、乾燥領域に通した。その後、乾燥したインク受容性基材を、第2のスプールを含む収集ステーションに進ませた。
【0112】
実施例および比較例2に用いた第1の硬化性組成物は、以下の表1、2および3に示すとおりであった。表中、数字は各成分のグラムでの重量に関連している。C1(比較例1)では、第1の硬化性組成物を完全に削除し、第2の硬化性組成物を支持体に91g/mの(湿潤)量で施用した。C2(比較例2)では、第1、第2および第3の硬化性組成物を同時に施用する代わりに、第1の組成物を施用した後、硬化してから、第2および第3の硬化性組成物を同時に施用した(これらは両方とも相分離する)。
【0113】
実施例および比較例の引っ掻き重量(scratch weight)(g)での耐引っ掻き性を、表1、2および3の最下行に示す:
【0114】
【表4】

【0115】
注:C1では、第1の硬化性組成物を施用せず、代わりに、第2および第3の硬化性組成物のみを施用した(これらは両方とも相分離する)。C2では、第1の組成物は相分離しなかった。しかしながら、第1の組成物を第2の組成物と同時に施用しなかった−代わりに、第1の組成物を硬化した後、第2および第3の硬化性組成物を施用した(これらは両方とも相分離する)。
【0116】
第1の硬化性組成物からの妨害は生じたとしてもほんのわずかであったので、C1(図5)から第2の領域の多孔率を直接概算する(第3の硬化性組成物の組成は第2の硬化性組成物の組成とほぼ同一なので、それらの組合わせは、単一の第2の硬化性組成物が有するであろう多孔率と同じ多孔率をもたらしたと考える)。
【0117】
多孔率%は、以下のように算出する:
多孔率%=(DT/CA×100%)−100%
式中:
DTは、得られた硬化ポリマーのマイクロメートルでの乾燥厚さである;そして、
CAは、非揮発性化合物のグラム毎mでのコーティング量である。
【0118】
第2および第3の硬化性組成物における非揮発性化合物のコーティング量(CA)は、40.6g/mであった。
乾燥厚さ(DT)は55マイクロメートルであった。
【0119】
したがって、支持体からもっとも離れた表面におけるポリマーの多孔率は、((55/40.6×100%)−100%)=35%であった。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
実施例18
以下の点を除き、実施例1〜17の方法を繰り返した:(a)4つ(3つを施用するのではなく)の硬化性組成物を、スライドビーズコーターの4つのスロットを用いて、支持体に同時に施用した;および(b)2つの異なるUVランプを連続して用いて硬化を実施した;および(c)支持体を45m/minの速度で移動させた。
【0123】
第1の硬化性組成物(支持体にもっとも近い)は、以下の配合を有していた:
【0124】
【表7】

【0125】
次の(第2の)硬化性組成物は、以下の配合を有していた:
【0126】
【表8】

【0127】
次の(第3の)硬化性組成物は、以下の配合を有していた:
【0128】
【表9】

【0129】
もっとも上にある(第4の)硬化性組成物は、以下の配合を有していた:
【0130】
【表10】

【0131】
支持体に施用した4つの硬化性組成物の湿潤量は、それぞれ16g/m、36g/m、36g/mおよび15g/mであった。
第1のUVランプをスライドビーズコーターの3メートル下流に位置決めし、硬化性組成物を支持体に施用した後、該硬化性組成物に4秒間照射した。このUVランプは、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10で、D−電球を取り付け、100%の強度で作動させた。
【0132】
第2のUVランプはスライドビーズコーターの3.2メートル下流に位置決めし、硬化性組成物を支持体に施用した後、該硬化性組成物に4.3秒間照射した。この第2のUVランプは、Fusion UV SystemsからのLight Hammer LH10で、H−電球を取り付け、100%の強度で作動させた。その後、硬化した組成物を含むインク受容性基材を乾燥領域に移動させた。
【0133】
得られたインク受容性基材は、支持体への良好な付着性および良好な耐引っ掻き性(上記方法により測定して180g)を有するインク受容性層を含んでいた。
【符号の説明】
【0134】
1 第2の硬化性組成物に由来する多孔質領域
2 第1および第2の組成物が互いの中に部分的に拡散していることに由来する混合中間領域
3 第1の組成物に由来する非孔質領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階:
(i)第1および第2の硬化性組成物を、支持体に、第1の組成物が第2の組成物より支持体に近くなるように同時に施用し;
(ii)第1および第2の組成物が互いの中に拡散するのを可能にして、支持体上に不均質硬化性コーティングをもたらし;そして
(iii)不均質コーティングを硬化して、支持体により近い方が支持体からより離れている方より低い多孔率を有するポリマー層を形成する、
を含む、インク受容性基材の調製方法。
【請求項2】
第1の硬化性組成物が、第2の硬化性組成物の非存在下で硬化したときに相分離しない硬化性組成物であり、第2の硬化性組成物が、第1の硬化性組成物の非存在下で硬化したときに相分離する硬化性組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の硬化性組成物が、組成物の全重量に対し、第2の硬化性組成物より少なくとも5重量%多くの有機溶媒を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
第1の硬化性組成物における水に対する有機溶媒の比率が、第2の硬化性組成物の場合より少なくとも10重量%高い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の硬化性組成物が、その曇り点から遠い透明溶液であり、第2の組成物が、その曇り点に近い透明溶液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組成物が互いの中に拡散している所に由来するインク受容性層の部分を以下混合領域と略し、該部分が、支持体からの距離が増大するにつれ多孔率が上昇する緩やかな多孔率の勾配を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
多孔率の勾配が十分に緩やかであるので、得られたインク受容性基材を貫く断面の走査型電子顕微鏡による検査が、第1の組成物に由来するインク受容性層の部分が第2の組成物に由来する部分と接触する所であり基材の表面に平行である別個の線接合部を示さない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
支持体と接触している表面におけるポリマーの多孔率が15%未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
支持体からもっとも離れた表面におけるポリマーの多孔率が15%を超える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
インク受容性基材が、Scratching Intensity Tester Heidon 18により測定して少なくとも100gの耐引っ掻き性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1および第2の硬化性組成物が、それぞれ独立して、少なくとも2個のアクリル基を有する硬化性化合物を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1および/または第2の硬化性組成物が、式(I):
【化1】

[式中:
各pは独立して1〜5であり;
nは1〜12であり;そして
各RおよびRは、独立して、H、メチルまたはエチルである]
に従ったアルキレングリコールジアクリレートを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に従った方法により得られるインク受容性基材。
【請求項14】
インクジェット印刷機により請求項13で定義したとおりのインク受容性基材にインクを施用することを含む、基材上に像を形成するための方法。
【請求項15】
窓を規定するフレーム、光源、および印刷されたインク受容性基材を含むライトボックスであって、該インク受容性基材が、請求項13で定義したとおりのものである、前記ライトボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515245(P2011−515245A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500297(P2011−500297)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050251
【国際公開番号】WO2009/115837
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】