説明

インク容器

【課題】容器内部のインクの濃度を確実に均一化することができるインク容器とする。
【解決手段】インク容器10において、インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクIが封入され、容器容量が0.3L以上10L以下であり、容器容量に対する容器内部の空隙Kの割率が10%より高く50%以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク容器に係り、特にはインクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクが封入されたインク容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙やプラスチック薄板、布地等の記録媒体に対して、記録ヘッドからインクを吐出して所定の画像を記録するインクジェットプリンタが提案され、実用化されている。
また、インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給するインクが封入されたインク容器も種々のものが提案され、実用化されている。
【0003】
ところで、インクジェットプリンタ用のインクには大きく分けて2種類ある。すなわち、色材が溶剤に溶解している均一系インクと呼ばれるインクと、色材が溶剤に分散している分散系インクと呼ばれるインクである。ここで、色材である顔料を水系の溶媒に分散した顔料分散系インクは、耐光性、耐滲み性などの画像保存性に優れている。しかし、顔料分散系インクは長時間放置した場合に顔料粒子が沈降してしまうため、例えばインクを封入したインク容器が製造された後にユーザに届けられるまでの輸送時に、容器内のインクが不均一になってしまうことがある。そして、そのままの状態のインクを記録ヘッドから吐出させると、初期に吐出したインクは濃い色となり、後に吐出したインクは薄い色となってしまう、というようにインクの吐出時期によってインクの濃度が変わってしまう不具合が生じることとなる。また、初期に吐出される濃い色のインクによって記録ヘッドのノズルが詰まり易くなる場合もある。
【0004】
そこで、従来、インク内の顔料成分を撹拌して沈降を防いだり、一度沈降してしまった顔料成分を再撹拌したりする手段を備えたインクジェットプリンタやインク容器が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−157093号公報
【特許文献2】特開2001−322297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したような撹拌手段を備えた従来のインク容器やインクジェットプリンタであっても、インクが充分に撹拌されず、インクの濃度を充分に均一化できない場合が生じていた。このため、吐出時期によってインクの濃度が変わってしまう、いわゆる濃度むらが生じる不具合が解消されない場合があった。また、ノズルが詰まり易くなる問題も解消されない場合が生じていた。
【0006】
ここで、本発明者は、従来、インク容器にインクがほぼ満杯に封入されていることに着目し、インク容器に対して所定の割合で空隙を設けることで、容器内部のインクが撹拌され易くなり、インクの濃度が充分に均一化されることを見出した。
【0007】
そこで、本発明の課題は、容器内部のインクの濃度を確実に均一化することができるインク容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インク容器において、
インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクが封入され、
容器容量が0.3L以上10L以下であり、
容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高く50%以下となっていることを特徴としている。
【0009】
このように請求項1に記載の発明によれば、インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクが封入され、容器容量が0.3L以上10L以下であるインク容器において、容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高くなっているため、インク容器の内部でインクが動き易くなる。これにより、容器内部のインクが撹拌され易くなり、インク内の顔料粒子が沈降し易い性質を有する顔料分散系インクであっても、インクの濃度を確実に均一化することができる。
また、容器容量に対する容器内部の空隙率が50%以下となっているため、必要以上に空隙を設けないようになっている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインク容器において、
前記空隙率が25%以上50%以下となっていることを特徴としている。
【0011】
このように請求項2に記載の発明によれば、空隙率が25%以上50%以下となっているため、より確実に容器内部のインクを撹拌することができ、インクの濃度をより確実に均一化することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインク容器において、
前記顔料分散系インクに含まれる顔料の比重が2.0以上であることを特徴としている。
【0013】
このように請求項3に記載の発明によれば、顔料分散系インクに含まれる顔料の比重が2.0以上であるため、特にインク内の顔料粒子が沈降し易い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク容器において、
前記顔料分散系インクの25℃における粘度が10mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴としている。
【0015】
このように請求項4に記載の発明によれば、顔料分散系インクの25℃における粘度が10mPa・s以上50mPa・s以下であるため、インクの粘度が高く、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク容器において、
前記顔料分散系インクが活性エネルギー線硬化性を有するインクであることを特徴としている。
【0017】
このように請求項5に記載の発明によれば、顔料分散系インクが活性エネルギー線硬化性を有するインクであるため、インクの粘度が高くなる傾向があり、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインク容器において、
前記顔料分散系インクがカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクであることを特徴としている。
【0019】
このように請求項6に記載の発明によれば、顔料分散系インクがカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクであるため、特にインクの粘度が高くなる傾向があり、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインク容器において、
容器の材質が、水透過性のない金属類、ガラス類及び40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下であるプラスチック素材のうちの少なくとも1種類で構成されていることを特徴としている。
【0021】
ここで、カチオン重合系インクでは、インク中の水が重合禁止剤として働いているため、水が蒸発して含水率が低下してしまうと重合が促進することとなる。そのため、インクの保存性が悪くなったりインクが増粘し易くなるという問題が生じる。インクの増粘に起因した記録画像の低下を防止するためには、特にカチオン重合系インクではインク中の水を蒸発させずに含水率を一定以上に保つ工夫が必要となる。
【0022】
このように請求項7に記載の発明によれば、容器の材質が、水透過性のない金属類、ガラス類及び40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下であるプラスチック素材のうちの少なくとも1種類で構成されているため、インク容器内に封入されたカチオン重合系インクから水が蒸発して含水率が低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1〜6に記載の発明によれば、容器内部のインクが撹拌され易くなり、インクの濃度を確実に均一化することができるため、インクの吐出時期によってインクの濃度が変わってしまう、いわゆる濃度むらを生じさせないようにすることができ、その結果、高画質の画像を形成することができる。
また、必要以上に濃い色のインクを記録ヘッドから吐出することがなくなるため、記録ヘッドのノズルが詰まることを防止することができる。
さらに、必要以上に空隙を設けないようになっているため、インクが空気に触れることにより保存性が悪化することを防止することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、インク容器内に封入されたカチオン重合系インクから水が蒸発して含水率が低下することを防止することができるため、インクが増粘し難くなり、インクの保存性を良好にして、記録画像の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明に係るインク容器の実施形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
【0026】
図1は、本実施形態のインク容器10の概略を示したものである。
本実施形態のインク容器10は、インクジェットプリンタで画像記録を行うために記録ヘッドに供給されるインクIが封入されたものであり、図1に示すように、レトルト食品包装に用いられる容器と同様の正面視略長方形状の容器で構成されている。
また、撹拌作業を行った際にインクIが充分に撹拌されるように、容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高くなるように空隙Kを設けてインクIが封入されている。さらに、インク容器内の空隙K、すなわち空気の量が多過ぎると、インクIが空気に触れる割合が高くなり、インクIの保存性が悪化するため、容器容量に対する容器内部の空隙率が多くとも50%以下となるように設定されており、必要以上に空隙Kを設けないようになっている。またさらに、より確実にインクが撹拌されるように、前記容器容量に対する容器内部の空隙率は、25%以上50%以下となっていることが好ましい。
なお、インク容器が小さ過ぎると撹拌作業を行ってもインクが撹拌され難いため、インク容器10の容器容量は0.3L以上と設定されており、また、インク容器が大き過ぎると容器が重くなり撹拌作業を行うことが困難になるため、インク容器10の容器容量は10L以下と設定されている。
また、インク容器10の形状としては、前記したものに限らず、例えば洗剤詰め替え容器に用いられる形状、テトラポット形状、キュービテナー形状(正方形に近い形状)、ボトル形状、ピロー形状等、種々の形状で良い。
【0027】
インク容器の材質としては、インクを密封することができる材質であるならばどのような素材を使用してもよく、ガラス類、金属類及びプラスチック製などの容器を挙げることができる。このうち、耐久性、衝撃耐性、軽量性、搬送容易性及びコストの観点から、特にプラスチック製容器が好ましい。
前記プラスチック製容器のプラスチック素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、2軸延伸ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)などを挙げることができる。
【0028】
また、本実施形態のインク容器10は、後述するように、インク中にカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクを封入している。そして、前記カチオン重合化合物の含水率が2.0質量%以上に保持されるように形成されている。そのため、本実施形態のインク容器10は、実質的に水透過性のない金属類、ガラス類及び40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下であるプラスチック素材から選ばれる少なくとも1種類の材質で構成されている。
具体例としては、透湿度の低いプラスチックよりなるシート、これらシートにアルミニウム等の金属箔をラミネートしてなるシート、アルミニウム等の金属を蒸着してなるシート、これらのシートを他のプラスチック素材に貼り合わせてなる積層シート等を単独で用いて容器を形成したものや、複数のシートを組合わせて用いて容器を形成したものが挙げられる。
また、例えば、「機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)」に記載されているような複数のプラスチック素材で構成される複合材料であっても良い。また、無機物蒸着層を介して上方又は片側に透明なフレキシブルシートを積層することや、少なくとも一方の最内層が熱可塑性樹脂で形成されていることも挙げられる。
【0029】
このように低い透湿度を得る観点から、プラスチック素材として、オレフィン系材料及び含フッ素プラスチック材料等の透湿度が低い素材を用いることが好ましい。
このような素材としては、例えば、ビニリデンクロライドポリマー、ナイロン11、ナイロン12、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドや、前記したポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0030】
前記無機物蒸着膜としては、薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されているような無機膜が挙げられる。
例えば、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、Al23等が用いられる。
【0031】
これら複数のプラスチックシートを貼り合わせてなる多層構成のプラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/ポリエチレンの3層構成、延伸ポリプロピレン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/ポリエチレンの3層構成、未延伸ポリプロピレン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/ポリエチレンの3層構成、ナイロン/アルミニウム箔/ポリエチレンの3層構成、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔/ポリエチレンの3層構成、セロファン/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンの4層構成、アルミニウム箔/紙/ポリエチレンの3層構成、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンの4層構成、ナイロン/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンの4層構成、紙/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンの4層構成、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレンの4層構成、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンの4層構成、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔/ポリエチレン/低密度ポリエチレンの4層構成、ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/ポリプロピレンの2層構成、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム箔/ポリプロピレンの3槽構成、紙/アルミニウム箔/ポリエチレンの3層構成等を挙げることができる。
【0032】
さらに、特に好ましくは、ポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン被覆ナイロン/ポリエチレン/エチルビニルアセテート・ポリエチレン縮合物の4層構成、ポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン被覆ナイロン/ポリエチレンの3層構成、エチルビニルアセテート・ポリエチレン縮合物/ポリエチレン/アルミニウム蒸着ナイロン/ポリエチレン/エチルビニルアセテート・ポリエチレン縮合物の5層構成、アルミニウム蒸着ナイロン/ナイロン/ポリエチレン/エチルビニルアセテート・ポリエチレン縮合物の4層構成、延伸ポリプロピレン/ポリ塩化ビニリデン被覆ナイロン/ポリエチレンの3層構成、ポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン被覆ナイロン/ポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン被覆ナイロン/ポリエチレンの5層構成、延伸ポリプロピレン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/低密度ポリエチレンの3層構成、延伸ポリプロピレン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/未延伸ポリプロピレンの3層構成、ポリエチレンテレフタレート/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/低密度ポリエチレンの3層構成、延伸ナイロン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/低密度ポリエチレンの3層構成、未延伸ナイロン/ポリビニルアルコール・エチレン共重合体/低密度ポリエチレンの3層構成等を挙げることができる。
【0033】
前記した各材料より適宜の材料を選択することにより、40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下である所望の透湿度を有するインク容器を得ることができる。また、インク容器としては、単一の形態でのみ構成されていても良いが、必要に応じて、例えば、ボトルタイプの容器にカチオン重合性化合物を収納した後、その外側を多層構成のプラスチックシートからなる防湿シートでさらにシールした形態であっても良い。
【0034】
低透湿度の容器に収納した際のカチオン重合性化合物の含水率を0.2質量%以上に調整する方法としては、特に制限はないが、カチオン重合性化合物を調製する際に、所定の水を添加する方法、または、カチオン重合性化合物を保存容器に収納する際、その環境の湿度条件を制御する方法が好ましい。
【0035】
次に、本実施形態に用いられる「インク」について説明する。
本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する紫外線硬化性インクであり、主成分として、重合性化合物(公知の重合性化合物を含む。)、光開始剤及び色材を少なくとも含むものである。また、本実施形態のインクに含まれる顔料には、比重が2.0以上になるものもある。特に、白色顔料では、比重が4.2程度になることもある。
【0036】
前記紫外線硬化性インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるけれども、その両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。ここで、ラジカル重合系インクに比べてカチオン重合系インクは、紫外線に対する感度が高く且つ酸素による重合反応の阻害が少ないためインクの硬化に必要な照度を低減できる。このようなことから本実施形態ではインクとしてカチオン重合系の紫外線硬化性インクを用いている。
なお、紫外線硬化性インクに含まれるモノマー、開始剤等及びそれらの組成は、特開2004−131588号公報に記載されるもの及び組成とするのが好ましい。
【0037】
また本発明の紫外線硬化性インクは、25℃における粘度が10mPa・s以上50mPa・s以下であることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、再現性、硬化性の観点で好ましい。
【0038】
また、本発明においては、記録媒体に透明な材質を適用する場合、記録媒体での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、前述した吐出安定性、記録媒体のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0039】
本発明に係る色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材が使用できるが、耐候性の点から顔料が好ましい。本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0040】
C.I.Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、74、81、83、87、95、109、138、
C.I.Pigment Orange−16、36、38、
C.I.Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、122、144、146、185、
C.I.Pigment Violet−19、23、
C.I.Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、27、29、60、
C.I.Pigment Green−7、36、
C.I.Pigment White−6、18、21、
C.I.Pigment Black−7、
【0041】
前述の顔料を分散させるための分散媒体は、本発明では有機溶剤または重合性化合物を適用可能である。ここで、本発明に適用されるインクは、吐出口から吐出され、記録媒体に着弾した直後に硬化するため、分散媒体として有機溶剤を多く含有すると、この溶剤が硬化したインク内部に残留し、記録媒体の劣化や臭気といった問題を生ずる。そのため、本発明に適用されるインクは、有機溶剤を含有しないか、有機溶剤の含有量を低く抑え、重合性化合物を分散溶媒の主成分とすることが好ましい。また、前記重合性化合物としては、周知のモノマーの中で最も粘性の低いモノマーを選択することが分散適性上さらに好ましい。
【0042】
また、顔料の分散媒体への分散を効果的に行うため、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、例えばAVECIA社のSolsperseシリーズの高分子分散剤が適用可能である。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は溶剤又は重合性化合物で行うが、本発明で用いられる紫外線硬化性インクは、インク着弾直後に反応・硬化させられるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤ではなく重合性化合物、その中でも、最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0043】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとなるようにして行うことが好ましい。顔料粒子の平均粒径が0.5μmを超える場合、インクの透過性が低くなり、記録媒体に形成される画像の画質を低下させるという問題が生じる。また、顔料粒子の平均粒径が0.08μmを下回ると、インクの調合に係る経費が増大するという問題が生じる。
【0044】
また、顔料粒子の最大粒径は0.3〜10μmとすることが好ましく、0.3〜3μmとすることがさらに好ましい。顔料粒子の最大粒径が10μmを超える場合、インクが吐出口で詰まりやすくなるという問題が生じる。一方、顔料粒子の最大粒径が0.3μmを下回る場合には、インクの調合に係る経費が増大するという問題が生じる。
【0045】
インクを調合する時の顔料、分散剤、分散媒体の選定や、分散条件及びろ過条件の設定は、顔料粒子の平均粒径及び最大粒径が前述の範囲となることを条件として適宜決される。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化の感度を維持することができる。
【0046】
また、本発明に係るインクにおいて、色材濃度はインク全体に対して1〜10質量%であることが好ましい。色材濃度が1質量%を下回る場合には、インクが記録媒体上で効果的に発色せず、形成された画像が不明瞭になるという問題が生じる。一方、色材濃度が10質量%を超える場合には、記録媒体上でインクが速やかに硬化せず、画像の強度や画質を低下させるという問題が生じる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の具体的な実施例を挙げ、これらを用いて本発明における顔料粒子の撹拌効果を証明する。
【0048】
《インクの調製》
表1及び表2に記載の構成からなる各インクを、下記の方法に従って調製した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
なお、表1の白色インク1及び黒色インク1のインク粘度は19〜22mPa・sであり、表2の白色インク2及び黒色インク2のインク粘度は28〜32mPa・sである。
また、表1及び表2に記載の各略称の詳細は、以下の通りである。
色材1:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)、比重:3.9g/cm3
色材2:C.I.pigment Black−7、比重:1.8g/cm3
LDO:ATOFINA社製
UVR−6110:ダウ・ケミカル社製
OXT−101:東亞合成社製
OXT−212:東亞合成社製
OXT−221:東亞合成社製
UVI6992:ダウ・ケミカル社製 プロピオンカーボネート50%液
UVI6974:ダウ・ケミカル社製 プロピオンカーボネート50%液
*1:トリイソプロパノールアミン
PB822:味の素ファインテクノ社製
【0052】
まず、表1、表2の各表に記載された、分散剤(PB822 味の素ファインテクノ社製)と各光重合性化合物を、各表に記載された分量だけステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。
次いで、この溶液に、各表に記載された分量の色材を添加後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。
次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光酸発生剤、増感剤、相溶剤、塩基性化合物、界面活性剤等の各種添加剤を各表に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、各インクを調製した。
【0053】
そして、作成した各インクをLDPE(低密度ポリエチレン)製の容器容量2Lの容器に収納し、同材質の蓋で密栓して、試料を作製した。また、容器はレトルトパックタイプとキュービテナータイプの2種類を用意し、それぞれの容器に付き、空隙率が10%、20%、30%、40%、50%の5つの試料を作製した。
なお、各試料で用いたLDPEの透湿性は、JIS Z 0208に規定される方法により測定した結果、厚さ25μmにおいて19g/m2・24hr(40℃・90%RH)であった。
【0054】
《評価》
インクを各空隙率で容器に充填後、自放1ヶ月静置後、手で1回/秒間隔で30秒間撹拌後、1分間静置した。インクを取り出し、所定の透明フィルムに塗布し、透過率を測定した。測定は、分光光度計U−3200(日立製作所社製)により行った。
なお、透明フィルムに対するインクの塗布膜厚は、空隙率50%のインク撹拌後の透過率が、65%±5%になるように調整し、透過率を評価した。
【0055】
その結果、表3及び表4に記載したように、レトルトパックタイプ、キュービテナータイプのそれぞれに封入した白インク1、黒インク1、白インク2、黒インク2のいずれのインクも、空隙率が20%〜50%の場合にはインクの透過率はほとんど変わらず、空隙率が10%の場合にインクの透過率が高くなるという結果が得られた。
透過率が高くなるということは、顔料成分が均一に撹拌されておらず、上澄み部分の濃度の薄い状態のインクが塗布されたことを示す。すなわち、容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高く50%以下であると、容器内のインクが撹拌され易くなり、インクの濃度が充分に均一化されるが、容器容量に対する容器内部の空隙率が10%以下であると、容器内のインクが撹拌され難くなり、インクの濃度が充分に均一化されないことがわかった。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
以上のように、本実施形態のインク容器によれば、インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクが封入され、容器容量が0.3L以上10L以下であるインク容器において、容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高くなっているため、インク容器の内部でインクが動き易くなる。これにより、容器内部のインクが撹拌され易くなり、インク内の顔料粒子が沈降し易い性質を有する顔料分散系インクであっても、インクの濃度を確実に均一化することができる。
また、容器容量に対する容器内部の空隙率が50%以下となっているため、必要以上に空隙を設けないようになっている。
【0059】
さらに、本実施形態では、空隙率が25%以上50%以下となっているため、より確実に容器内部のインクを撹拌することができ、インクの濃度をより確実に均一化することができる。
【0060】
また、本実施形態では、顔料分散系インクに含まれる顔料の比重が2.0以上であるため、特にインク内の顔料粒子が沈降し易い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、顔料分散系インクの25℃における粘度が10mPa・s以上50mPa・s以下であるため、インクの粘度が高く、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0062】
またさらに、本実施形態では、顔料分散系インクが活性エネルギー線硬化性を有するインクであるため、インクの粘度が高くなる傾向があり、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0063】
また、本実施形態では、顔料分散系インクがカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクであるため、特にインクの粘度が高くなる傾向があり、一旦沈降したインク内の顔料粒子が再撹拌し難い性質を有しているが、このようなインクであっても確実にインクを撹拌することができ、インクの濃度を均一化することができる。
【0064】
これらのことから、インクの吐出時期によってインクの濃度が変わってしまう、いわゆる濃度むらを生じさせないようにすることができ、その結果、高画質の画像を形成することができる。
また、必要以上に濃い色のインクを記録ヘッドから吐出することがなくなるため、記録ヘッドのノズルが詰まることを防止することができる。
さらに、インクが空気に触れることにより保存性が悪化することを防止することができる。
【0065】
また、本実施形態では、容器の材質が、水透過性のない金属類、ガラス類及び40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下であるプラスチック素材のうちの少なくとも1種類で構成されているため、インク容器内に封入されたカチオン重合系インクから水が蒸発して含水率が低下することを防止することができる。
これにより、インクが増粘し難くなり、インクの保存性を良好にして、記録画像の低下を防止することができる。
【0066】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、前記実施形態では、容器に封入されるインクとして紫外線硬化性インクを用いていたが、インクとしては紫外線硬化性に限られるものではなく、可視光線や電子線等の他の活性エネルギー線による活性エネルギー線硬化性を有するインクであっても良い。また、活性エネルギー線硬化性を有しないインクであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態におけるインク容器の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 インク容器
I インク
K 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給する顔料分散系インクが封入され、
容器容量が0.3L以上10L以下であり、
容器容量に対する容器内部の空隙率が10%より高く50%以下となっていることを特徴とするインク容器。
【請求項2】
前記空隙率が25%以上50%以下となっていることを特徴とする請求項1に記載のインク容器。
【請求項3】
前記顔料分散系インクに含まれる顔料の比重が2.0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク容器。
【請求項4】
前記顔料分散系インクの25℃における粘度が10mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク容器。
【請求項5】
前記顔料分散系インクが活性エネルギー線硬化性を有するインクであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク容器。
【請求項6】
前記顔料分散系インクがカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクであることを特徴とする請求項5に記載のインク容器。
【請求項7】
容器の材質が、水透過性のない金属類、ガラス類及び40℃、90%RH、常圧下で、25μmの厚さにおける透湿度が20g/m2・24hr以下であるプラスチック素材のうちの少なくとも1種類で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のインク容器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−7685(P2006−7685A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190773(P2004−190773)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】