説明

インク式印刷装置

【課題】印刷ヘッドの残留インクを完全にクリーニング可能な、簡単に形成されているクリーニング装置を提供する。
【解決手段】印刷ヘッド2を備える印刷バー1が、被印刷体3に沿って弧状に配置されており、クリーニング装置が印刷バー1毎に、保持手段8に固定されたクリーニング手段5を備えるクリーニング部材7を備え、クリーニング部材7を配置した回転軸9は駆動手段AMにより、クリーニング手段5が印刷バー1とクリーニング装置との間の相対運動時に印刷ヘッド2を払拭する第1の位置と、クリーニング手段5が印刷バー1とクリーニング装置との間の移動軌道外にある第2の位置との間でクリーニング部材7が旋回可能であるように回動可能であり、保持手段8は、印刷バー1の弧状の配置に適合されて、クリーニング手段5が第1の位置において前記相対運動時に印刷ヘッド2に当接するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク式印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々異なる材料、例えば紙からなる被印刷体、例えば個別のシート又はウェブ状の記録媒体を単色又は多色で印刷するために、インク式印刷装置が使用可能である。このようなインク式印刷装置の構造は、公知である(例えばEP0788882B1号参照)。例えばドロップオンデマンド(Drop−on Demand:DoD)原理に基づいて動作するインク式印刷装置は、印刷ユニットとして、インク通路を備えるノズルを備える単数又は複数の印刷ヘッドを有している。ノズルの作動素子(Aktivator)は、印刷装置制御部により制御されて、インク滴を被印刷体に向けて印加する。インク滴は、被印刷体に向けて変向され、被印刷体に印刷画像のための印刷点を被着する。作動素子は、インク滴をサーマル式に(バブルジェット)又はピエゾ式に発生させることが可能である。
【0003】
インク式印刷装置の印刷稼働率が低い場合、印刷プロセスの際、インク式印刷ヘッドのすべてのノズルが作動されているわけではない。多数のノズルは、停止時間(印刷休止)を有しており、結果として、これらのノズルのインク通路内のインクは流動しない。ノズル開口からの気化作用のために、インクの粘度が変化する恐れがある。このことは、インクがインク通路内でもはや最適に運動することができず、ノズルから流出することができないという結果に至る。極端な場合、インクはインク通路内で完全に乾燥して、インク通路を閉塞してしまう。その結果、このノズルによる印刷はもはや不可能である。
【0004】
ノズル内でのインクの乾燥は、所定のサイクルですべてのノズルから印刷されることにより回避可能である。このサイクルは、印刷稼働に応じて調節可能である。その際、個々の点を被印刷体の印刷されない領域に被着するか、又は印刷頁間に印刷点の線を印刷することができる。この方法は、印刷画像にとって障害となるとともに、不要なインク消費に至りかねない。
【0005】
この問題は、特にカラー印刷機において生じる。カラー印刷機の場合、例えば印刷ユニットとして、互いに固定の位置で、複数の印刷ヘッドを備える複数の印刷バーが配置されている。例えば、それぞれ5つの印刷ヘッドを備える複数の印刷バーが設けられている場合がある。それぞれの印刷バーは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの色のためのものである。例えば黒色印刷の場合、単数又は複数の色が使用されないという問題が生じる。この場合、使用されない印刷ヘッドを再び良好な機能状態とするために、複数のクリーニングサイクルが必要である。
【0006】
インクジェット印刷システムにおいて、1つの色の複数の印刷ヘッドは、1つの印刷バーに機械的に固定されていてよい。印刷運転中と、クリーニング及びメンテナンスのためとでは、印刷ヘッドのノズルの、被印刷体に対して相対的なそれぞれ異なる間隔が必要である。このために、印刷バー、ひいては印刷ヘッドは、鉛直方向に、被印刷体に対してそれぞれ異なる距離にある位置に可動でなければならない。これらの2つの位置は、高い精度で調節可能でなければならない:
‐印刷位置:被印刷体に対して平行な印刷ヘッドの位置決め。
‐クリーニング位置:印刷ヘッドのノズルのクリーニングのための位置。クリーニング時、例えばインクは、正圧又は負圧により印刷ヘッドのノズルを通して押し出されるか、又は吸い出される。続いて、このインクは、クリーニング手段としての単数又は複数のゴムリップにより払拭される(ワイピングとも呼ばれる)。このために、印刷バーが、クリーニング手段上を移動可能であるか、又はクリーニング手段が、印刷バー上を移動可能である。ゴムリップに対する印刷バーの正確な位置決めは、ゴムリップと印刷ヘッドのノズルとの間の一定の重なりを保証するために必要である。
【0007】
インク式印刷ヘッドをクリーニングするためのクリーニングリップ、例えばゴムリップを備えるクリーニング装置は、公知である。US2008/0106571A1号には、この種のクリーニング装置が記載されている。クリーニング装置は、例えばそれぞれ1つのクリーニングリップと、それぞれのクリーニングリップのための保持手段とからなる2つのクリーニング部材を有している。各々のクリーニング部材のためにハウジングが設けられている。各々のクリーニング部材は、2つの位置間で旋回可能である。第1の位置、すなわち印刷ヘッドのためのクリーニング位置で、クリーニング部材は、それぞれのハウジング外に旋回させられて、印刷ヘッドは、クリーニングリップ上を案内可能である。第2の位置で、クリーニング部材は、それぞれのハウジング内に旋回させられている。この第2の位置で、クリーニングリップはクリーニング可能である。このために、各々のハウジング内にはノズルが配置されている。ノズルは洗浄液を、対応するクリーニングリップに吹き付けて、クリーニングリップの残留インクをクリーニングする。さらに、各々のハウジング内には、クリーニングリップの位置に、クリーニングリップに対して垂直に第2のノズルが設けられている。第2のノズルは、クリーニングリップを乾燥させるために、空気をクリーニングリップに吹き付ける。続いて、クリーニング装置は、再び第1の位置へと旋回可能である。この旋回運動を実施可能とするために、クリーニング部材は、回転軸上に配置されている。回転軸は、クリーニング部材のハウジングを通して案内されている。
【0008】
EP1310367A1号には、インク式印刷ヘッドを払拭可能なクリーニングリップを備えるクリーニング装置が記載されている。このクリーニング装置は、対応するハウジング内に配置されている。クリーニング装置は、軸に支承されている。軸により、クリーニング装置は、印刷ヘッドをクリーニングすることができるように、ハウジング外に回動可能である。クリーニング装置がハウジング内に戻される際に、クリーニングリップは、クリーニングリップをクリーニングするために払拭器に沿って案内される。
【0009】
US2007/0200893A1号には、クリーニングリップを備える別のクリーニング装置が記載されている。このクリーニング装置は、ベルト上に固定されている。ベルトはクリーニング装置を、インク式印刷ヘッドを通過するように案内することができる。さらに、印刷ヘッドを保護するために保護キャップが設けられている。保護キャップは印刷ヘッドをカバーすることができる。クリーニング装置は、印刷ヘッドと保護キャップの縁部とがクリーニング可能であるように形成されている。
【0010】
EP1108546A1号は、クリーニングリップを備えるクリーニング装置を開示している。印刷ヘッドのクリーニングを容易にするために、クリーニングリップが印刷ヘッドを払拭する前に、洗浄液が印刷ヘッドに導かれる。次に、洗浄液は吸引され、その後、再使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP0788882B1号
【特許文献2】US2008/0106571A1号
【特許文献3】EP1310367A1号
【特許文献4】US2007/0200893A1号
【特許文献5】EP1108546A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、印刷バーを備えるインク式印刷装置のために、印刷バーの印刷ヘッドの残留インクを完全にクリーニング可能な、簡単に形成されているクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明の構成では、印刷ユニットが、少なくとも1つの印刷ヘッドを備える印刷バーを備え、該印刷バーが、弧状に案内される被印刷体に沿って弧状に配置されており、クリーニング装置が設けられており、該クリーニング装置が前記印刷バー毎に、保持手段に固定されたクリーニング手段を備えるクリーニング部材を備え、前記クリーニング部材が回転軸上に配置されており、該回転軸は駆動手段により、前記クリーニング部材が第1のクリーニング位置と第2のクリーニング位置との間で旋回可能であるように回動可能であり、前記第1のクリーニング位置において、前記クリーニング部材の前記クリーニング手段が、前記印刷バーと前記クリーニング装置との間の相対運動時に前記印刷バーの前記印刷ヘッドに沿って払拭し、前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段が前記印刷バーと前記クリーニング装置との間の移動軌道外に位置し、かつ前記印刷ユニットにおける前記印刷バーの弧状の配置に適合されて、前記クリーニング部材の前記保持手段は、前記クリーニング手段が前記第1のクリーニング位置において前記印刷バーと前記クリーニング装置との間の相対運動時に前記印刷ヘッドに当接するように形成されているようにした。
【0014】
好ましくは、前記保持手段が、山形プレートとして形成されており、該山形プレートの一方の側面に前記回転軸が配置されており、他方の側面の、弧状に形成された縁部に、前記クリーニング手段が固定されている。
【0015】
好ましくは、前記保持手段及び前記回転軸がハウジング内に配置されており、該ハウジングが一方の側面に開口を有しており、前記第1のクリーニング位置への前記クリーニング装置の回動時に前記クリーニング手段が前記開口から突出し、前記第2のクリーニング位置への回動後、前記クリーニング手段が前記ハウジング内に位置するようになっている。
【0016】
好ましくは、前記クリーニング装置の前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段に隣接して、第1のノズル部材が前記ハウジング内に配置されており、該第1のノズル部材が洗浄液を、45°±15°の角度で前記クリーニング手段に対して吹き付ける。
【0017】
好ましくは、前記クリーニング手段に隣接して、第2のノズル部材が前記ハウジング内に配置されており、該第2のノズル部材が空気を、45°±15°の角度で前記クリーニング手段に対して吹き付ける。
【0018】
好ましくは、前記第1のノズル部材と前記第2のノズル部材とが相前後して作動されるようになっている。
【0019】
好ましくは、前記クリーニング装置の前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段に隣接して、1つの共通のノズル部材が設けられており、該共通のノズル部材が交互に洗浄液源及び空気源に接続可能である。
【0020】
好ましくは、前記第2のノズル部材が一時的に前記第1のノズル部材の運転時間中に作動されるようになっている。
【0021】
好ましくは、前記回転軸のための駆動手段が設けられており、該駆動手段が、供給空気及び排出空気のための接続部を備える空気シリンダと、該空気シリンダ内で案内されるピストンとを有しており、該ピストンには、前記回転軸に連結されるレバーが、前記ピストンの運動が前記回転軸の回動に変換されるように支承されている。
【0022】
好ましくは、前記レバーにセンサプレートが連結されており、該センサプレートが、前記レバーの位置を測定するために2つのセンサと協働する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るインク式印刷装置では、印刷ヘッドを備える複数の印刷バーが1つの印刷ユニットを形成している。印刷バーは、印刷ユニット内において印刷位置とクリーニング位置との間で運動可能である。
【0024】
印刷ユニットの印刷バーは、例えばサドルを介して弧状に案内される被印刷体に沿って弧状に配置されているので、印刷バーの印刷ヘッドと被印刷体との間のそれぞれの間隔は、印刷位置において同じである。クリーニング装置が設けられており、このクリーニング装置は印刷バー毎に、保持手段に固定されたクリーニング手段、例えばクリーニングリップを備えるクリーニング部材を有している。クリーニング部材は、1つの共通の回転軸上に配置されており、回転軸は駆動手段により、クリーニング部材が第1の位置と第2の位置との間で旋回可能であるように動かされ、第1の位置においては、クリーニング部材のクリーニング手段が、印刷バーとクリーニング装置との間の相対運動時に印刷バーの印刷ヘッドに沿って払拭し(以下、第1のクリーニング位置という)、第2の位置においては、クリーニング装置が印刷バーとクリーニング装置との間の移動軌道外に位置し、クリーニング手段をクリーニング可能である(以下、第2のクリーニング位置という)。印刷ユニットにおける印刷バーの弧状の配置に適合されて、クリーニング部材の保持手段は、クリーニング手段が第1のクリーニング位置において印刷バーとクリーニング装置との間の相対運動時に印刷バーの印刷ヘッドに当接可能であるように形成されている。
【0025】
本発明の別の形態は、従属請求項に係る発明である。
【0026】
クリーニング部材が第2のクリーニング位置でハウジング内に旋回させられると、クリーニング手段は、インク式印刷装置のパーツの汚損なしにクリーニング可能である。このためにノズル部材をハウジング内に配置することができ、ノズル部材は、交互に又は同時に洗浄液及び/又は空気をクリーニング手段に向けて吹き付ける。
【0027】
これにより、本発明に係る装置は、以下の利点を有している:
‐クリーニング装置の形態は、印刷ユニットにおける印刷バーの配置に適合されており、結果として、クリーニング装置は、簡単に形成されており、例えば唯一の駆動手段によって旋回可能である。このために、駆動手段に連結され、すべてのクリーニング手段が固定されている回転軸が使用可能である。
‐ノズル部材を介したクリーニング手段の確実なクリーニングが達成される。
‐クリーニングがほぼ閉鎖されたハウジング内で行われるので、周囲はクリーニング手段のクリーニングの際保護されている。
‐洗浄液は、クリーニング手段の表面で渦動可能である。この場合、より迅速なクリーニングが達成される。
‐残留インクはクリーニング手段から完全に除去される。
‐結果として、より清浄なクリーニング手段に基づいて、印刷バーの印刷ヘッドのより効果的なクリーニングが達成される。
【0028】
以下に、図面に示した実施の形態を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】印刷ユニットの原理図である。
【図2】印刷バーを備える印刷ユニットをクリーニング位置で示す原理図である。
【図3】被印刷体に沿った印刷バーを備える印刷ユニットの原理図である。
【図4】駆動手段なしで示すクリーニング装置の原理図である。
【図5】ハウジングを備えるクリーニング装置を印刷ヘッドのためのクリーニング位置で示す原理図である。
【図6】ハウジングを備えるクリーニング装置をクリーニング手段のためのクリーニング位置で示す原理図である。
【図7】ノズル部材を示す図である。
【図8】クリーニング手段に対するノズル部材の配向を示す図である。
【図9】クリーニング手段に対するノズル部材の配向を示す第2図である。
【図10】クリーニング手段に対するノズル部材の配向を示す第3図である。
【図11】駆動手段を備えるクリーニング装置を印刷ヘッドのためのクリーニング位置で示す図である。
【図12】駆動手段を備えるクリーニング装置をクリーニング手段のためのクリーニング位置で示す図である。
【図13】クリーニング装置のための駆動手段の正面図である。
【図14】センサプレートなしのクリーニング装置のための駆動手段の斜視図である。
【図15】センサプレートありのクリーニング装置のための駆動手段の斜視図である。
【図16】開放されたハウジングを備えるクリーニング装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、一例として、それぞれ5つの印刷ヘッド2を備える4つの印刷バー1.1〜1.4を備える印刷ユニットDEを示している。各々の印刷バー1は、他の印刷バー1とは独立して運転可能である。各々の印刷バー1は、他の印刷バー1とは独立して印刷位置からクリーニング位置に、かつクリーニング位置から印刷位置に移動可能である。印刷位置では被印刷体3が印刷可能である。印刷ユニットDEは全体として、印刷ヘッド2の損傷なしにクリーニング位置に移動可能であり、印刷ヘッド2のクリーニングが可能である。
【0031】
図2は、被印刷体3の横に位置するパージステーション4において印刷バー1の印刷ヘッド2が、例えばインクによりパージされた後の、印刷ヘッド2のクリーニングを原理的に示している。印刷バー1は、クリーニング手段5、例えばクリーニングリップを備えるクリーニング装置を通される。クリーニング手段5は、印刷ヘッド2に沿って払拭することができるように、印刷ヘッド2に対応して位置している。印刷バー1の印刷ヘッド2をクリーニングすべきとき、クリーニング装置は、クリーニング手段5が印刷ヘッド2のノズル端部に沿って払拭することができ、ノズル端部において例えば残留インクを拭い去ることができるように、移動軌道(矢印PF1)内へと運動可能である。印刷ヘッド2をクリーニングするために、印刷バー1とクリーニング手段5との間の相対運動が実施される。クリーニング手段5が印刷バー1を通るように運動させられるか、又は印刷バー1がクリーニング手段5を通るように運動させられる。
【0032】
印刷装置、特にカラー印刷のための印刷装置において、複数の印刷バー1が、被印刷体3に沿って配置されている。被印刷体3は、印刷ステーションにおいて、例えばローラサドル(Rollensattel)6を介して案内可能である。図3は、この関係を原理的に示している。図3には、印刷バー1を備える印刷ユニットDEが示されている。印刷ユニットDEは、印刷位置に下降可能又は印刷位置から開離可能である(矢印PF2)。印刷位置において、印刷バー1は、被印刷体3に対して垂直にかつ等間隔に配置されている。印刷バー1は、被印刷体3の延在に合わせて弧状に、ローラサドル6の上方に被印刷体3に沿って配置されている。これにより、各々の印刷バー1は、異なる運動方向で被印刷体3から開離されるか、又は被印刷体3に接近されなければならない。
【0033】
以下の説明は、クリーニング装置に関する。クリーニング装置は、印刷バー1毎に、クリーニング手段5と、クリーニング手段5のための保持手段8とを備えるクリーニング部材7を有している(図4)。クリーニング手段5は、クリーニングリップ、例えばゴムリップとして実現されていてよい。クリーニングリップは、例えば保持手段8としての山形プレートあるいはアングルプレート(Winkelblech)に固定されている。クリーニング部材7が回転軸9に支承されている場合、クリーニング部材7は、印刷ヘッド2をクリーニング可能な第1のクリーニング位置(図5)と、クリーニング手段5をクリーニング可能な第2のクリーニング位置(図6)との間で旋回可能である。
【0034】
クリーニング手段5をクリーニングするために、クリーニング手段5に対して、クリーニングノズル10により洗浄液、例えば水を吹き付けることができる。このクリーニングの際に飛沫が発生して、印刷装置の他の部分に浸入する恐れがあるので、ハウジング11が設けられている。クリーニング部材7はハウジング11内に旋回可能である。ハウジング11は、側面12に開口13を有している。開口13を通して、クリーニング部材7、特にクリーニング手段5が、ハウジング11外に旋回可能である。このために、ハウジング11を通して案内された回転軸9が使用される。回転軸9が第1のクリーニング位置にあるとき(図5)、クリーニング部材7は、クリーニング部材7の上側の位置にあり、クリーニング手段5は、ハウジング11から突出している。回転軸9がクリーニング手段5のための第2のクリーニング位置にあるとき(図6)、クリーニング部材7は、クリーニング部材7の下側の位置にあり、ハウジング11内にある。第2のクリーニング位置において、クリーニング手段5をクリーニングすることができる。このために、ハウジング11内には、第1のノズル部材10が配置されている。第1のノズル部材10により、洗浄液、例えば水を、例えば45°±15°の角度でクリーニング手段5の端部領域に向かって吹き付けることが可能である(図8)。このクリーニングノズル10は、クリーニング手段5の幅に対応した幅Bを有するチャンバ14として形成されていてよく、その幅に沿って複数のクリーニングノズル15を有していてよい。チャンバ14の側面には、洗浄液のための接続部16が設けられている。ノズル部材10は、クリーニング手段5に対する洗浄液のビームの衝突点が数mmクリーニング手段5の払拭エッジ17の後方、例えば1〜2mm払拭エッジ17の後方に位置するように、クリーニング手段5に対して配置されている(図8)。これにより、製造に起因する変動の際にも、洗浄液のビームが常にクリーニング手段5に的中することが保証されている。
【0035】
さらに、クリーニング部材7が洗浄液による洗浄後可及的速やかに乾燥されると有利である。このために、空気をクリーニング手段5に吹き付けることが可能な第2のノズル部材18を、クリーニング部材7に隣接して、空気流が45°±15°の角度でクリーニング手段5に的中する(図8)ように配置するとよい。第2のノズル部材18は、第1のノズル部材10と同様に形成されていてよく、空気流のためのノズルを備えるチャンバを有していてよい。
【0036】
両ノズル部材10,18の機能は、1つの共通のノズル部材19に統合されてもよい(図9)。共通のノズル部材19は、図8と同様にクリーニング手段5に対して配置されてよく、45°±15°の角度で相前後して洗浄液、その後、空気流をクリーニング手段5に吹き付ける。このために、洗浄液源20及び空気源21が、弁22,23を介して相前後してノズル部材19に接続可能である。
【0037】
クリーニング機能のさらなる改善は、クリーニング手段5に対する洗浄液の吹き付け時に、図10に示すように、第2のノズル部材18を一時的に作動させると達成可能である。払拭エッジ17に衝突する空気圧により、洗浄液は渦動する。こうして、洗浄液は、クリーニング手段5の全幅にわたって分配される。残留インクは、完全に除去される。
【0038】
図3に示した印刷装置が、図3に示すように被印刷体3の周りに弧状に配置されている複数の印刷バー1を有している場合、複数のクリーニング部材7が1つの回転軸9上に配置されて、1つの駆動手段AMにより第1のクリーニング位置(図11)又は第2のクリーニング位置(図12)に旋回可能であると有利である。これにより、クリーニング装置の簡単な構造が達成される。
【0039】
解決しようとする課題を達成するために、個々のクリーニング部材7は、印刷バー1の形態及び被印刷体3に対する個々の印刷バー1の配置に適合されなければならない。このようなクリーニング装置の実現は、図13から看取可能である。クリーニング手段5は、印刷バー1の印刷ヘッドに対して平行に配向されているように、クリーニング手段5の保持手段8に固定されている。クリーニング手段5を備える回転軸9と印刷バー1との間の、被印刷体3に対する印刷バー1の弧状の配置に起因してそれぞれ異なる間隔は、クリーニング手段5のための保持手段8がそれぞれ、対応するクリーニング手段5が印刷ヘッドのためのクリーニング運転中印刷ヘッドに当接可能であるような長さを有していることにより補償可能である。クリーニング装置におけるクリーニング部材7のこのような形態により、クリーニング装置、及びクリーニング装置のための駆動手段AMの簡単な構造が達成される。
【0040】
駆動手段AMを備えるクリーニング装置の説明は、図13から看取可能である。クリーニング手段5のための保持手段8は、1つの保持プレートに統合されている。保持プレートは、弧状の縁部を有している。弧状の縁部には、クリーニング手段5が配置、例えばねじ固定されている。山形保持部材8は、ホルダ24(図11,12)により回転軸9に固定されている。回転軸9は、駆動手段AMにより回動可能である。駆動手段AMは、空気圧式の駆動装置として実現可能である。空気圧式の駆動装置では、空気シリンダ25内で、接続部26を介して供給される供給空気又は接続部27を介して排出される排出空気により、ピストン28が運動可能となっている。ピストン28の端部には、回転軸9に連結されたレバー29が支承されている。レバー29を介して、ピストン28の並進運動が、回転軸9の回転運動に変換される。
【0041】
図14は、駆動手段AM、回転軸9、及びクリーニング手段5を備える保持プレート8の部分斜視図である。ピストン28の端部には、レバー29の一端が支承されており、レバー29の他端には、回転軸9が支承されている。本実施の形態では、レバー29は、2つのピン30,31の間で案内されている。
【0042】
図15は、図14の変化態様を示している。この変化態様において、レバー29には、センサプレート32が連結されている。センサプレート32は、回転軸9の回動時、2つの終端位置を占めることができ、終端位置において、センサ33,34と協働する。
【0043】
クリーニング装置が印刷バー1のための第1のクリーニング位置にある、センサプレート32の第1の位置(図15)において、センサプレート32と第1のセンサ33との間に接触が生じ、第1のセンサ33は、印刷ヘッドのためのクリーニング位置を示す第1のセンサ信号を発する。クリーニング手段5を備える保持プレート8は、ハウジング11外に変位している(図11)。この状態は、図16にも示されている。図16は、ハウジング11の一部を示している。ハウジング11は、開口13を有しており、開口13から、クリーニング部材7のクリーニング手段5が突出している。
【0044】
センサプレート32の第2の位置において、センサプレート32は、第2のセンサ34と接触する。第2のセンサ34は、クリーニング装置がハウジング11内にあることを示すセンサ信号を発する。この状況は図12に示されている。第2の位置において、クリーニング手段5を第1のノズル部材10を介してクリーニングし、続いて第2のノズル部材18により乾燥させることができる。
【符号の説明】
【0045】
DE 印刷ユニット、 AM 駆動手段、 PF 矢印、 1 印刷バー、 2 印刷ヘッド、 3 被印刷体、 4 パージステーション、 5 クリーニング手段、クリーニングリップ、 6 ローラサドル、 7 クリーニング部材、 8 保持手段、 9 回転軸、 10 第1のノズル部材、 11 ハウジング、 12 ハウジング11の側面、 13 ハウジング11の開口、 14 ノズル部材10のチャンバ、 15 クリーニングノズル、 16 接続部、 17 払拭エッジ、 18 第2のノズル部材、 19 共通のノズル部材、 20 洗浄液源、 21 空気源、 22 弁、 23 弁、 24 山形保持部材のためのホルダ、 25 空気シリンダ、 26 供給空気用の接続部、 27 排出空気用の接続部、 28 ピストン、 29 レバー、 30 ピン、 31 ピン、 32 センサプレート、 33 センサ、 34 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク式印刷装置において、
印刷ユニット(DE)が、少なくとも1つの印刷ヘッド(2)を備える印刷バー(1)を備え、該印刷バー(1)が、弧状に案内される被印刷体(3)に沿って弧状に配置されており、
クリーニング装置が設けられており、該クリーニング装置が前記印刷バー(1)毎に、保持手段(8)に固定されたクリーニング手段(5)を備えるクリーニング部材(7)を備え、
前記クリーニング部材(7)が回転軸(9)上に配置されており、該回転軸(9)は駆動手段(AM)により、前記クリーニング部材(7)が第1のクリーニング位置と第2のクリーニング位置との間で旋回可能であるように回動可能であり、前記第1のクリーニング位置において、前記クリーニング部材(7)の前記クリーニング手段(5)が、前記印刷バー(1)と前記クリーニング装置との間の相対運動時に前記印刷バー(1)の前記印刷ヘッド(2)に沿って払拭し、前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段(5)が前記印刷バー(1)と前記クリーニング装置との間の移動軌道外に位置し、かつ
前記印刷ユニット(DE)における前記印刷バー(1)の弧状の配置に適合されて、前記クリーニング部材(7)の前記保持手段(8)は、前記クリーニング手段(5)が前記第1のクリーニング位置において前記印刷バー(1)と前記クリーニング装置との間の相対運動時に前記印刷ヘッド(2)に当接するように形成されている、
ことを特徴とするインク式印刷装置。
【請求項2】
前記保持手段(8)が、山形プレートとして形成されており、該山形プレートの一方の側面に前記回転軸(9)が配置されており、他方の側面の、弧状に形成された縁部に、前記クリーニング手段(5)が固定されている、請求項1記載のインク式印刷装置。
【請求項3】
前記保持手段(8)及び前記回転軸(9)がハウジング(11)内に配置されており、該ハウジング(11)が一方の側面に開口(13)を有しており、前記第1のクリーニング位置への前記クリーニング装置の回動時に前記クリーニング手段(5)が前記開口(13)から突出し、前記第2のクリーニング位置への回動後、前記クリーニング手段(5)が前記ハウジング内に位置するようになっている、請求項2記載のインク式印刷装置。
【請求項4】
前記クリーニング装置の前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段(5)に隣接して、第1のノズル部材(10)が前記ハウジング(11)内に配置されており、該第1のノズル部材(10)が洗浄液を、45°±15°の角度で前記クリーニング手段(5)に対して吹き付ける、請求項3記載のインク式印刷装置。
【請求項5】
前記クリーニング手段(5)に隣接して、第2のノズル部材(18)が前記ハウジング(11)内に配置されており、該第2のノズル部材(18)が空気を、45°±15°の角度で前記クリーニング手段(5)に対して吹き付ける、請求項4記載のインク式印刷装置。
【請求項6】
前記第1のノズル部材(10)と前記第2のノズル部材(18)とが相前後して作動されるようになっている、請求項5記載のインク式印刷装置。
【請求項7】
前記クリーニング装置の前記第2のクリーニング位置において、前記クリーニング手段(5)に隣接して、1つの共通のノズル部材(19)が設けられており、該共通のノズル部材(19)が交互に洗浄液源(20)及び空気源(21)に接続可能である、請求項4記載のインク式印刷装置。
【請求項8】
前記第2のノズル部材(18)が一時的に前記第1のノズル部材(10)の運転時間中に作動されるようになっている、請求項5記載のインク式印刷装置。
【請求項9】
前記回転軸(9)のための駆動手段(AM)が設けられており、該駆動手段(AM)が、
‐供給空気及び排出空気のための接続部を備える空気シリンダ(25)と、
‐該空気シリンダ(25)内で案内されるピストン(28)とを有しており、該ピストン(28)には、前記回転軸(9)に連結されるレバー(29)が、前記ピストン(28)の運動が前記回転軸(9)の回動に変換されるように支承されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のインク式印刷装置。
【請求項10】
前記レバー(29)にセンサプレート(32)が連結されており、該センサプレート(32)が、前記レバー(29)の位置を測定するために2つのセンサ(33,34)と協働する、請求項9記載のインク式印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−91512(P2012−91512A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235206(P2011−235206)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(397018925)オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (68)
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensallee 2, D−85586 Poing, Germany
【Fターム(参考)】