説明

インク組成物、インクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法

【課題】水性インクにおいて、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(Y)で表される少なくとも1種の染料を、水性媒体中に含有し、さらに金属キレート剤を少なくとも1種含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
一般式(Y):


一般式(Y)において、Mは各々独立して水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンを表し、少なくとも1つのMがKイオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるインク組成物、並びにインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの普及に伴いインクジェットプリンターがオフィスだけでなく家庭で紙、フィルム、布等に印字するために広く利用されている。インクジェット記録方法には、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。これらのインクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。これらのインクのうち、製造、取り扱い性・臭気・安全性等の点から水性インクが主流となっている。
【0003】
これらのインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性が高いこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、空気、オゾン、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
【0004】
画像保存性の中でも特に、画像の耐光性を向上させるために、従来から数多くの提案がなされている。例えば、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクの中でも特に画像の耐光性が低いイエローインクにおいて、画像の耐光性を向上させることができ、かつ発色性に優れた画像を形成することができる色材が提案されている(特許文献1参照)。また、画像の堅牢性に優れる一般式(Y)で表される染料と、該色材とは異なる構造の群Aより選択される化合物を併用したインクにより、画像の耐光性を向上させ、色調に優れた画像を形成し、かつインク供給経路の目詰まり防止や保存安定性を向上させることに関する提案がある(特許文献2参照)。
既にインクジェット用として様々な染料や顔料が提案され、実際に使用されているが、未だに全ての要求を満足する着色剤は、発見されていないのが現状である。カラーインデックス(C.I.)番号が付与されているような、従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット記録用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは難しい。これまでの研究により、インクジェット記録用インクの性能の改善が行われてきている。特許文献1には、特定のピラゾリルアゾ色素により、インクジェット記録用インクに要求される良好な色相と堅牢性の高さを両立できることが開示されている。また、特許文献3及び4にも特定のピラゾリルアゾ色素が記載されている。
【0005】
しかし、本発明者らの検討の結果、上記で挙げたような特許文献に記載された技術を
用いたとしても、以下の課題があることがわかった。
光学濃度が高い記録画像を形成させた場合、乾燥するにつれて染料の結晶が受像材料表面に析出して、記録画像が光を反射して金属光沢を放つという、いわゆるブロンズ現象が生じるという問題があった。ブロンズ現象の発生によって光を反射するので、記録画像の光学濃度が低下してしまうばかりでなく、記録画像の色相も所望のものとは大きく異なってしまうため、ブロンズ現象を抑制することはインクジェットインクに要求される性能として重要なものの一つである。受像紙表面のブロンズ光沢を防ぐためには、染料の浸透性を向上させることが有効であり、そのためには、例えばインク中の界面活性剤の量を増やし、インクの受像紙への浸透性を向上させる手法が挙げられる。しかしながら、界面活性剤の増量は、滲みや耐水性などの悪化が見られる。すなわち、インクの諸性能を悪化させずに、インクの浸透性を向上させる添加剤が望まれていた。
【0006】
ところで、従来から金属キレート剤をインクに含有させて、インクの吐出安定性を向上させることが提案されている(例えば特許文献5)。しかしながら、上記従来技術は、浸透性向上効果に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−083903号公報
【特許文献2】特開2009−293016号公報
【特許文献3】特開2005−264085号公報
【特許文献4】特開2006−57062号公報
【特許文献5】特許3844341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、下記構成のインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法によって達成される。
〔1〕
下記一般式(Y)で表される少なくとも一種の染料を、水性媒体中に含有するインクであって、金属キレート剤を少なくとも一種含有するインク組成物。一般式(Y):
【化1】

一般式(Y)において、Mは各々独立して水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンを表し、少なくとも1つのMがKイオンである。
さらに、下記群Aより選択される化合物を含有し、該群Aより選択される化合物のインク組成中における含有量(質量%)が、前記一般式(Y)で表される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.001以上1.0以下である〔1〕に記載のインク組成物。
【化2】

(群A中、Mはそれぞれ独立に水素原子またはカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、KイオンまたはNHイオンを表す。)
〔3〕
前記群Aより選択される化合物が、1、2,3及び8から選ばれる少なくとも1種である〔2〕に記載のインク組成物。
〔4〕
前記一般式(Y)で表される化合物において、Mの主成分がKイオンであり、群Aより選択される化合物において、Mの主成分がKイオンである〔2〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔5〕
前記一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物におけるMが全てKイオンである〔2〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔6〕
前記一般式(Y)で表される化合物の含有量が、インク組成物全質量を基準として、0.1〜20質量%である〔2〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔7〕
前記群Aより選択される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)が、前記一般式(Y)で表される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.001以上0.2以下である〔2〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔8〕
前記群Aより選択される化合物のインク組成物中における含有量が、インク組成物全質量に対して0.01質量%〜1.1質量%である〔2〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔9〕
前記金属キレート剤がEDTA−4ナトリウム、ピコリン酸ナトリウム、キノリン酸ナトリウム、1,10―フェナントロリン、8−ヒドロキシキノリン又は3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウムである〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のインク組成物。
〔10〕
前記金属キレート剤の含有量が、インク組成物の全質量に対して1〜2質量%である〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のインク組成物。
〔11〕
〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する、インクジェット記録用インク。
〔12〕
〔11〕に記載のインクジェット記録用インクを用いる、インクジェット記録方法。
〔13〕
支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法であって、インク滴が〔11〕に記載のインクジェット記録用インクからなる、インクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク、並びに、該インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインク組成物において使用する染料は、一般式(Y)で表される少なくとも一種の染料を、水性媒体中に溶解してなり、更に金属キレート剤を少なくとも一種含有するインク組成物である。
一般式(Y):
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(Y)中、Mはそれぞれ独立に水素原子またはカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、KイオンまたはNHイオンを表す。
インク組成物が、一般式(Y)で表される染料を含有し、更に少なくとも一種の金属キレート剤を含有することにより、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることが可能なインク組成物が提供される。この理由は定かではないが、一般式(Y)で表される水溶性染料と少なくとも一種の金属キレート剤がインク組成物に含有されることにより、多へテロ系で分子量の大きい本願染料のインク中の多価金属イオンによる凝集等が抑制されるためと推定される。またカルシウムやマグネシウムなどの2価金属イオンが受像紙媒体中に存在すると、本願記載の染料は、受像紙中でいわゆるレーキ顔料を形成し、不溶化・凝集する為、受像紙内部への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるようになる。
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク組成物及びそれを用いたインク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。一般式(Y)で表される化合物は本発明のインク組成物に有用である。また、以下の記載において、一般式(Y)で表される化合物は「一般式(Y)の化合物」と省略して記載することがある。また、群Aから選択される少なくとも1種の化合物は、「群Aの化合物」と省略して記載することがある。
【0014】
〔一般式(Y)で表される化合物〕
本発明のインク組成物において使用する染料は、一般式(Y)で表される。以下に、一般式(Y)で表される化合物について説明する。一般式(Y)で表される化合物は水溶性アゾ染料(イエロー)である。また、一般式(Y)で表される化合物を「アゾ染料」と表記する場合がある。
一般式(Y):
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(Y)において、Mは各々独立して水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、Kイオン又はNHイオンを表す。
【0017】
Mは、水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンを表す。Mは、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンが好ましく、Naイオン又はKイオンがより好ましく、Kイオンが最も好ましい。
一般式(Y)で表される染料において、少なくとも1つのMがKイオンであることが好ましく、Mの主成分であるカウンターカチオンがKイオンであることが好ましく、全てのMがKイオンであることが好ましい。
【0018】
一般式(Y)で表される染料は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク中に含まれる一般式(Y)で表される染料が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、その中でも特に90〜100%のMがKイオンであることが好ましい。Kイオン以外のMとしては、Naイオン、NHイオンが好ましく、Naイオンがより好ましい。
【0019】
また、混合塩ではなく、インク中に含まれる全ての一般式(Y)で表される染料のMがKイオンであることも好ましい。全てのMがKイオンであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−COM)が解離して−COとMにイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
上記一般式(Y)の化合物の中でも特に、下記式(Y−1)の化合物を使用することが好ましい。
式(Y−1):
【0020】
【化4】

【0021】
一般式(Y)で表される染料は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば特開2004−083903の[0066]及び[0067]の記載の方法と同様に合成することができる。
【0022】
〔群A〕
本発明のインク組成物は、一般式(Y)で表される染料として使用する上記で説明した前記一般式(Y)の化合物に加えて、インク組成物の貯蔵安定性、インクの着色性、印画物の画像堅牢性に優れるという特徴を有する群Aより選択される化合物を含有することが好ましい。本発明では、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物の中でも、特に群Aにおける化合物1、2、3、5、6又は8から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、1、2、3、6又は8から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、1、2、3又は8から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0023】
群Aから選択される少なくとも1種の化合物は、単独でも、又は複数を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、1と2と3と5と6と8とを組み合わせて使用することが好ましく、1と2と3と6と8とを組み合わせて使用することがより好ましく、1と2と3と8を組み合わせて使用することが更に好ましい。
【0024】
また、下記群Aから選択される少なくとも1種の化合物は、前記一般式(Y)の化合物と組み合わせて用いることで相乗効果が発揮され、以下のような効果を得ることができる。すなわち、これらの色材を含有させることで、保存安定性に優れ、吐出精度に優れ、プリンタヘッドの放置回復性の確保に優れ、更には光沢のある画像形成のできるインク組成物を提供することができる。
【0025】
【化5】

【0026】
群Aから選択される少なくとも1種の化合物におけるMは、水素原子、Liイオン、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンを表し、Naイオン、Kイオン、NHイオン、が好ましく、更にNaイオン、Kイオンが好ましく、Kイオンがより好ましい。群Aから選択される少なくとも1種の化合物において、カウンターカチオンMの主成分がKイオンであることが好ましく、全てのMがKイオンであることがより好ましい。
【0027】
群Aから選択される少なくとも1種の化合物は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク組成物中に含まれる群Aから選択される化合物が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、更に好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%のMがKイオンであることが好ましい。Kイオン以外のMとしては、Naイオン、NHイオンが好ましく、Naイオンがより好ましい。
【0028】
また、混合塩ではなく、インク組成物中に含まれる全ての群Aから選択される化合物のMがKであることが特に好ましい。全てのMがKイオンであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−COM)が解離して−COとMにイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
群Aから選択される化合物は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば特開2004−083903公報中に記載のジアゾ成分及びカップリング成分を変更、種々組み合わせることで一般式(Y)又と同様に合成することができる。
【0029】
本発明においては、一般式(Y)で表される化合物において、カウンターカチオンMの主成分がKイオンであり、群Aより選択される化合物においても、カウンターカチオンMの主成分がKイオンであることが好ましい。ここで、カウンターカチオンMの主成分とは、全カウンターカチオンM中、80%以上を占めるイオン、好ましくは90%以上を占めるイオンを意味する。
一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物のイオン性親水性基のカウンターカチオンMの主成分がKイオンであれば、着色剤組成物又はインク溶液中の溶解性が高くなり、塩の形成・析出を抑制しインク組成物又はインク溶液の貯蔵安定性を大幅に向上することができるためである。
また、一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物におけるMが全てKイオンであることがより好ましい。これによりインク組成物又はインク溶液の貯蔵安定性を大幅に向上することができるためである。
本発明においては、一般式(Y)で表される化合物において、Mの主成分がKイオンであり、群Aより選択される化合物において、Mの主成分がKイオンであることが特に好ましく、一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物におけるMが全てKイオンであることが最も好ましい。
【0030】
〔色材の検証方法〕
本発明で用いる色材がインク組成物及びインク中に含まれているか否かの検証には、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての最大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
【0031】
液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)の分析条件は、以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体(インク)を測定用サンプルとした。そして、下記の条件で液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)での分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及び、Mass実測値ピークを測定した。
【0032】
<液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)測定条件>
・装置:Agilent1100
・カラム:YMC AM−312 内径 6.0 mm× 長さ 150 mm(ワイエムシー社製)
・溶離液:A液 超純水+0.1%酢酸、0.2%トリエチルアミン
B液 メタノール+0.1%酢酸、0.2%トリエチルアミン
・移動相及びグラジエント条件:(表1(表1中 B.Conc.は、B液の濃度を表す。))
【0033】
【表1】

【0034】
また、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたm/zをposi、negaそれぞれに対して測定する。
・装置:Applied BiosystemsTM QSTAR pulseri(ライフテクノロジー社製)
・イオン化法:ESI(posi)
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出法:TOF−MS
・検出範囲:120〜1500
【0035】
上記の方法及び条件下で、それぞれの色材の代表例として、化合物(Y−1)、群A中の化合物1〜8(M=K)について測定を行った。その結果、得られた保持時間、Mass実測値{M/Z(posi)}を表2に示した。インク組成物及びインクについて、上記と同様の方法及び条件下で測定を行って、表2に示す値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当すると判断できる。
なお、Mは例えば、イオンクロマトグラフによる測定により検証することができる。
イオンクロマトグラフ測定条件:
装置:パーソナルイオンアナライザPIA−1000(島津製作所製)
カラム:カチオン分析用セミミクロカラムShim−pack IC−C3(S)(内径2mm × 長さ100mm
移動相:2.5 mMシュウ酸水溶液
カラム温度:35℃
流速:0.2mL/分
【0036】
【表2】

【0037】
(インク組成物)〔色材の含有量〕
本発明の着色組成物は、インク原料として、着色剤を高い濃度で含む濃厚水溶液とすることができる。濃厚水溶液の着色剤濃度は15質量%以下、好ましくは12質量%以下であることが染料の経時安定性、取り扱いの容易さ(粘度)の点で好ましく、染料の経時安定性の向上や輸送コストの抑制の観点から、8質量%以上の濃度であることが好ましい。
また、本発明の着色組成物は、インクジェット用インクとすることもできる。インクジェット用インクの着色剤濃度はインク粘度や、印画物の濃度の点で、1〜12質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、3〜6質量%が特に好ましい。
インク組成物中の第1の色材[一般式(Y)で表される化合物]の含有量は、インク組成物全量に対し、好ましくは、0.1〜20質量%であり、より好ましくは、0.5〜15質量%であり、更に好ましくは1〜10質量%である。当該染料を使用することで、得られた画像のにじみや色移りを抑制することができ、また良好な色調を有する品質とすることができる。更に、一般的なアゾ染料に比して、光、熱、空気、水、薬品等に対する堅牢性にすぐれるため、インク及び記録画像の保存安定性に寄与する。
また、着色組成物中の群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量(質量%)は、着色組成物全質量を基準として、0.001質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上1.1質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
なお、この場合の群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量は、他の色材との関連において、下記のようにすることが、より好ましい。群Aから選択される少なくとも1種の化合物のいずれかを単独で用いる場合はその含有量が、また、これらから選ばれる2種以上を併用する場合はその合計含有量が、それぞれ上記の範囲を満足するように構成することが好ましい。一般式(Y)の化合物及び/又は群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量を上記範囲とすることで、画像の耐光性と色調を満足させるだけではなく、保存安定性や記録耐久性といった、着色組成物を用いたインクの信頼性の点も満足させることが可能となる。
【0039】
群A中の化合物1は、インク組成物全質量を基準として、0.001〜1.0質量%含まれることが好ましく、0.01〜1.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物2は、インク組成物全質量を基準として、0.003〜3.0質量%含まれることが好ましく、0.1〜3.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物3は、インク組成物全質量を基準として、0.001〜1.0質量%含まれることが好ましく、0.01〜1.0質量%含まれることがより好ましい。
群A中の化合物4は、インク組成物全質量を基準として、0.00〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物5は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物6は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物7は、インク組成物全質量を基準として、0.0〜0.5質量%含まれることが好ましい。
群A中の化合物8は、インク組成物全質量を基準として、0.002〜2.0質量%含まれることが好ましく、0.05〜2.0質量%含まれることがより好ましい。
本発明のインク組成物(本発明のインクともいう)においては、着色組成物全質量を基準とした、群Aより選択される化合物の含有量(質量%)は、一般式(Y)で表される染料の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(群Aより選択される化合物/一般式(Y)で表される染料)=0.001以上1.0以下であることが好ましい。
【0040】
本発明においては更に、群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量(質量%)は、一般式(Y)の化合物の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(群Aから選択される少なくとも1種の化合物/一般式(Y)の化合物)=0.001以上0.3以下であることが好ましい。色材の含有量の質量比率を上記範囲となるように構成することで、一般式(Y)の化合物が有する溶解性・耐光性と群Aから選択される少なくとも1種の化合物が有する溶解性・耐光性との組み合わせから予測される性能をはるかに上回る高いレベルの耐光性を有する画像を形成することができる。また、より好ましい色調の画像を得ることができる。群Aから選択される少なくとも1種の化合物の含有量(質量%)は、一般式(Y)の化合物の含有量(質量%)に対して、質量比率で、(第2の色材/一般式(Y)の化合物)=0.001以上0.2以下であることがより好ましく、0.01以上0.2以下であることが更に好ましく、0.02以上0.12以下であることがより更に好ましい。色材の含有量の質量比率をこの範囲とすることで、上記の含有量の質量比率においても特に高いレベルの耐光性を有する画像を形成することができる。更には特に好ましい色調の画像を得ることができ、加えて、インクとしての信頼性も十分に満足することが可能となる。
【0041】
質量比率が0.001以上であると、インク溶液の保存安定性が向上し、1.0以下であれば、インク組成物の水溶液安定性に優れる。色材の含有量の質量比率を上記範囲となるように構成することで、一般式(Y)で表される染料が有する溶解性・画像堅牢性と、群Aより選択される化合物が有する溶解性・画像堅牢性との組み合わせから予測される性能を上回る高いレベルのインク液貯蔵安定性・印画物の画像堅牢性を達成することができる。また、好ましい色調の画像が得られ、インクとしての信頼性も満足できる。
【0042】
一般式(Y)で表される染料と群Aより選択される化合物とを特定の質量比率で用いることで、相乗効果が発揮され、予測を上回るインクの貯蔵安定性付与と印画物の画像堅牢化を両立できる理由を本発明者らは以下のように推測している。一般式(Y)で表される染料は、もともと水性媒体に対する溶解性が低い傾向があるため、これらの化合物を含有するインク組成物を用いたインクを記録媒体に付与すると、その直後から速やかに色材の会合や凝集が起こる。会合や凝集は、画像を形成している記録媒体上の色材の堅牢性を向上させる傾向がある。しかし、その一方で、過度の会合や凝集は、水溶液及びインク溶液への溶解性を低下させる場合がある。これに対し、一般式(Y)で表される染料と群Aより選択される化合物とを共存させることで、記録媒体上で、一般式(Y)で表される染料が耐光性に関して最適な会合や凝集の状態を形成し、これにより、画像の耐光性が向上したものと考えられる。
【0043】
また、一般式(Y)で表される染料と群Aより選択される化合物とを特定の質量比率で用いることで、相乗効果が発揮され、インク組成物を用いたインクの信頼性が達成される理由を本発明者らは以下のように推測している。上記で述べた通り、インク中には、インクカートリッジやインク供給経路を構成する部材から溶出したと考えられる不純物が混入し、インク供給経路の目詰まりやインク供給特性の低下、インク保存安定性の低下の原因となる場合がある。本発明者らは検討の結果、一般式(Y)で表される染料構造に類似の群Aより選択される化合物をインク中に共存させることにより、インクの着色力を低下させること無く、一般式(Y)で表される染料の結晶化抑制を付与することができ、インクの貯蔵安定性を大幅に向上させることができたと考えている。つまり、色材として一般式(Y)で表される染料のみを使用することでは達成が困難であったインクの信頼性に関して、群Aより選択される化合物を併用することにより、予想を上回る効果が得られ、十分な信頼性を達成することができるのである。
また、インク組成物中の第1の色材と、第2の色材との含有量の合計(質量%)が、インク組成物全質量を基準として、1.00質量%以上22.00質量%以下であることが好ましく、特に3.00質量%以上18.0質量%以下であることが好ましい。含有量の合計が1.00質量%以上であれば、耐光性及び発色性が十分に得られ、含有量の合計が22.00質量%以下であれば、インク中に不溶物の析出等が無くインクジェット吐出特性に優れる。
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録用インクの原液を水等により希釈して調製することができる。一般式(Y)で表される染料のインクジェット記録用インク原液中への添加量は、広い範囲で使用可能であるが、インクジェット記録用インク原液全量に対し、好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは、5〜15質量%である。
第2の色材のインクジェット記録用インク原液中への添加量は、広い範囲で使用可能であるが、インクジェット記録用インク原液全量に対し、好ましくは0.01質量%以上1.2質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上0.3質量%以下である。また本発明のインクジェット記録用インクには、本発明のインク組成物が含有していてもよい後述の成分を同様に含ませることができる。
【0044】
本発明に用いられる上記イエロー染料は、優れたオゾンガスに対する強制褪色速度定数を有する。オゾンガスに対する強制褪色速度定数の測定は、当該インクのみを反射型受像媒体に印画して得られた画像の該インクの主分光吸収領域の色であってステータスAのフィルターを通して測定した反射濃度が0.90〜1.10の濃度の着色領域を初期濃度点として選択し、この初期濃度を開始濃度(=100%)とする。この画像を5mg/Lのオゾン濃度を常時維持するオゾン褪色試験機を用いて褪色させ、その濃度が初期濃度の80%となるまでの時間を測定し、この時間の逆数[hour−1]を求め、褪色濃度と時間関係が一次反応の速度式に従うとの仮定のもとに、褪色反応速度定数とする。したがって、求められる褪色速度定数は当該インクによって印画された着色領域の褪色速度定数であるが、本明細書では、この値をインクの褪色速度定数として用いる。
【0045】
試験用の印画パッチは、JISコード2223の黒四角記号を印字したパッチ、マクベスチャートの階段状カラーパッチ、そのほか測定面積が得られる任意の階段濃度パッチを用いることができる。
【0046】
測定用に印画される反射画像(階段状カラーパッチ)の反射濃度は、国際規格ISO5−4(反射濃度の幾何条件)を満たした濃度計によりステータスAフィルターを透した測定光で求められた濃度である。
【0047】
オゾンガスに対する強制褪色速度定数測定用の試験チャンバーには、内部のオゾンガス濃度を定常的に5mg/Lに維持可能のオゾン発生装置(例えば乾燥空気に交流電圧を印可する高圧放電方式)が設けられ、曝気温度は25℃に調節される。
【0048】
なお、この強制褪色速度定数は、光化学スモッグ、自動車排気、家具の塗装面や絨毯などからの有機蒸気、明室の額縁内の発生ガスなどの環境中の酸化性雰囲気による酸化の受け易さの指標であって、オゾンガスによってこれらの酸化性雰囲気を代表させた指標である。
【0049】
なお、本発明のインク組成物がインクジェット記録用インクのイエローインクである場合、イエローインクとして好ましい色調とは、以下の二つのことを意味する。すなわち、イエローインクのみを用いて形成した画像が赤味や緑味を帯びていないことを意味する。更に、これに加えて、イエローインクを用いて形成する2次色の画像、つまりレッドやグリーンの画像を形成する際に、レッド及びグリーンの色再現範囲をいずれも大きく損失することがない色調を有することを意味する。
【0050】
本発明のインク組成物(好ましくはインクジェット記録用インク)には、前記一般式(Y)で表される水溶性アゾ染料とともにフルカラーの画像を得る目的で、あるいは色調を整えるために他の染料を併用してもよい。併用することが出来る染料の例としては以下を挙げることが出来る。
【0051】
(インクジェット記録用インク)
次に本発明の着色組成物を用いたインクジェット記録用インクについて説明する。
インクジェット記録用インク(以下単に「インク」と称する場合がある)は、親油性媒体や水性媒体中に本発明の一般式(Y)の化合物及び群Aの化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いたインクである。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、酸化防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0052】
乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
【0053】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0054】
浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0055】
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0056】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0057】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0058】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸または燐酸などの無機酸、酢酸または安息香酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、塩化アンモニウムなどのハロゲン化物、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩、酢酸アンモニウムや安息香酸ナトリウムなどの有機酸塩、トリブチルアミンやトリエタノールアミンなどの各種有機アミンを使用することができる。特に、インクジェット用インクの吐出安定性及び保存安定性の観点から、緩衝作用を有するpH調整剤が好ましく、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、を用いることが好ましく、炭酸水素カリウム、炭酸カリウムがより好ましい。緩衝作用を持つpH調整剤の使用によりインクジェット用インク液のpHの経時変動を抑制することができ、インク液のpH下降によるインク液の粘度上昇に起因するインクの吐出不良や、pH上昇による染料の経時分解等の不具合を回避することができる。
pH調整剤の添加により得られるインクのpHは、pH6〜10とするのが好ましく、pH7〜10とするのがより好ましい。インク液のpHをこの範囲とすることで、インクの保存安定性が良好となる。
また、このpH調整剤は、インクジェット用のみならず、本発明のインク組成物にpHの経時変動を抑制する目的で好適に使用される。
【0059】
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、また本発明のインクジェット記録用インクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0060】
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0061】
上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特願2000−87539号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0062】
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0063】
本発明のインク100質量部中は、本発明の一般式(Y)の化合物及び群Aの化合物を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましい。また、本発明のインクジェット用インクには、本発明の化合物とともに、他の色素を併用してもよい。2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0064】
本発明のインクは、粘度が40cp以下であるのが好ましい。また、その表面張力は20mN/m以上70mN/m以下であるのが好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによって、調整できる。
【0065】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0066】
適用できるイエロー染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0067】
適用できるマゼンタ染料としては、任意のものを使用することが出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
【0068】
適用できるシアン染料としては、任意のものを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることができる。
【0069】
前記の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0070】
更に本発明のインクには、顔料も併用し得る。
本技術に用いられる顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W.Herbst,K.Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments(VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。具体的には、有機顔料ではアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレーキ顔料(酸性又は塩基性染料のレーキ顔料)、アジン顔料等があり、無機顔料では、黄色顔料のC.I.PigmentYellow34,37,42,53など、赤系顔料のC.I.Pigment Red 101,108など、青系顔料のC.I.Pigment Blue 27,29,17:1など、黒系顔料のC.I.Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC.I.Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。
【0071】
画像形成用に好ましい色調を持つ顔料としては、青ないしシアン顔料ではフタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC.I.Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C.I.Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC.I.Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
【0072】
赤ないし紫色の顔料では、アゾ顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Red 3、同5、同11、同22、同38、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同144、同146、同184)など、中でも好ましいものはC.I.Pigment Red 57:1、同146、同184)、キナクリドン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、C.I.Pigment Violet 19、同42、なかでも好ましいものはC.I.Pigment Red 122)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料(好ましい例としてはキサンテン系のC.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、ジオキサジン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 23、同37)、ジケトピロロピロール系顔料(例えばC.I.Pigment Red 254)、ペリレン顔料(例えばC.I.Pigment Violet 29)、アントラキノン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33)、チオインジゴ系(例えばC.I.Pigment Red 38、同88)が好ましく用いられる。
【0073】
黄色顔料としては、アゾ顔料(好ましい例としてはモノアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 1,3,74,98、ジスアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 12,13,14,16,17,83、総合アゾ系のC.I.Pigment Yellow 93,94,95,128,155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 120,151,154,156,180など、なかでも好ましいものはベンジジン系化合物を原料に使用しなもの)、イソインドリン・イソインドリノン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 109,110,137,139など)、キノフタロン顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 138など)、フラパントロン顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 24など)が好ましく用いられる。
【0074】
黒顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。この他、オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange 13,16など)や緑顔料(C.I.Pigment Green 7など)を使用してもよい。
【0075】
本技術に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であっても良いし、表面処理を施された顔料でも良い。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート、ジアゾニウム塩から生じるラジカルなど)を顔料表面に結合させる方法などが考えられ、次の文献や特許に記載されている。
(1) 金属石鹸の性質と応用(幸書房)
(2) 印刷インキ印刷(CMC出版 1984)
(3) 最新顔料応用技術(CMC出版 1986)
(4) 米国特許5,554,739号、同5,571,311号
(5) 特開平9−151342号、同10−140065号、同10−292143号、同11−166145号
特に、上記(4)の米国特許に記載されたジアゾニウム塩をカーボンブラックに作用させて調製された自己分散性顔料や、上記(5)の日本特許に記載された方法で調製されたカプセル化顔料は、インク中に余分な分散剤を使用することなく分散安定性が得られるため特に有効である。
【0076】
本発明においては、顔料は更に分散剤を用いて分散されていてもよい。分散剤は、用いる顔料に合わせて公知の種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤を用いることが出来る。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。また、分散剤を使用する際に分散剤の顔料への吸着を促進するためにシナジストと呼ばれる顔料誘導体を添加してもよい。
本技術に使用できる顔料の粒径は、分散後で0.01〜10μの範囲であることが好ましく、0.05〜1μであることが更に好ましい。顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
【0077】
〔金属キレート剤〕
次に、金属キレート剤について説明する。
本発明のインクは、更に金属キレート剤を含有するという特徴を有する。金属キレート剤とは金属イオンと結合した分子の中に2個以上のドナー原子を持つ金属イオン錯体を形成可能な化合物を指す。
本発明では、インク中に金属キレート剤を含有させることにより、多へテロ系で分子量の大きい本願染料のインク中の多価金属イオンによる凝集等を抑制するため、インクの受像紙への浸透性が向上し、印画物のブロンズ光沢を抑えることが可能になる。
このような化合物としては種々の化合物が知られている。
たとえば脂肪族若しくは芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸以上のポリカルボン酸、オキシカルボン酸、ケトカルボン酸、チオカルボン酸、芳香族アルデヒド、アミン系化合物、ジアミン化合物、ポリアミン化合物、アミノポリカルボン酸、ニトリロトリ酢酸誘導体、エチレンジアミンポリカルボン酸、アミノ酸、ヘテロ環カルボン酸、ヘテロ環類、ピリミジン類、ヌクレオシド類、プリン塩基類、β−ジケトン類、オキシン類等を挙げることができる。この中でも特にエチレンジアミンポリカルボン酸類若しくは窒素原子のローンペアがドナーとして作用可能なキレート剤が好ましい。
【0078】
このような例としては、特に限定されないが、ピリジン−2−カルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸、N−メチルイミノジ酢酸、N,N′−エチレンジアミンジ酢酸(EDDA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸−N,N′−ジプロピオン酸(EDPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸(EDTP)、1,2−プロピレンジアミンテトラ酢酸(PDTA)、トリメチレンジアミンテトラ酢酸(TMTA)、テトラメチレンジアミンテトラ酢酸、ペンタメチレンジアミンテトラ酢酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ酢酸、オクタメチレンジアミンテトラ酢酸、1,2−シクロペンタンジアミンテトラ酢酸、trans−シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸(CDTA)、1,3,5−トリアミノシクロヘキサンヘキサ酢酸(CTHA)、エチルエーテルジアミンテトラ酢酸〔2,2−オキシビス(エチルイミノジ酢酸)〕(E−EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDTA)、トリメチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、キノリン−2−カルボン酸、キノリン−8−カルボン酸、8−ヒドロキシキノリン、1,10−フェナントロリン、2−メチル−1,10−フェナントロリン(70)、5−メチル−1,10−フェナントロリン、EDTA−4ナトリウム、ピコリン酸ナトリウム、キノリン酸ナトリウム、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム等が挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる金属キレート剤としては、EDTA−4ナトリウム、ピコリン酸ナトリウム、キノリン酸ナトリウム、1,10―フェナントロリン、8−ヒドロキシキノリン、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウムが好ましい。上記金属キレート剤を使用することにより、多へテロ系で分子量の大きい本願染料のインク中の多価金属イオンによる凝集等を抑制するため、インクの受像紙への浸透性が向上し、印画物のブロンズ光沢を抑えることが可能になる。またカルシウムやマグネシウムなどの2価金属イオンが受像紙媒体中に存在すると、本願記載の染料は、受像紙中でいわゆるレーキ顔料を形成し、不溶化・凝集する為、受像紙内部への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができるようになる。
【0080】
また、本発明のインク組成物において、前記一般式(Y)で表される化合物の含有量に対する金属キレート剤の含有量の比(金属キレート剤の含有量(mol)/前記一般式(Y)で表される化合物の含有量(mol))は0.5〜1であることが好ましい。
【0081】
また、本発明のインク組成物において、金属キレート剤の含有量が、インク組成物の全質量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましく、1〜2質量%であることが更に好ましい。金属キレート剤の含有量が少なすぎるとインクの浸透性を十分に向上させることができず、印画物のブロンズが完全に抑制することができないことがあり、また多すぎるとインク粘度が向上して、印画(インクヘッドからの打滴)に弊害をきたすためである。
【0082】
〔界面活性剤〕
次に、本発明のインク組成物(好ましくはインクジェット記録用インク)が含有し得る界面活性剤について説明する。
本発明で使用される界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アルコールのエステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、高級アルコールのリン酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤、脂肪族アミン塩類、4級アンモニウム塩類等のカチオン界面活性剤、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール及びそのエチレンオキサイド付加物等のノニオン界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型等の両性界面活性剤、フッ素系、シリコン系化合物等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を用いることができる。
【0083】
本発明のインク組成物に界面活性剤を含有させ、表面張力等のインクの液物性を調整することで、インクの吐出安定性を向上させ、画像の耐水性の向上や印字したインクの滲みの防止などに優れた効果を持たせることができる。また、上記の界面活性剤は2種類以上併用してもよい。
本発明で用いるインク組成物は、界面活性剤を0.005質量%〜5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%含有する。インク組成物中の界面活性剤の含有量が0.005〜5質量%の範囲にあると、吐出安定性の低下、混色時の滲みの発生、ひげ発生などの印字品質の低下が起こらず、吐出時、ノズル表面へのインクの付着等による印字不良を抑えることができる。
【0084】
本発明のインクジェット記録用インクは、水性媒体中に前記染料を溶解させ、更に界面活性剤を特定量添加し、必要に応じてその他の添加剤を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。本発明における「水性媒体」とは、水又は水と少量の水混和性有機溶剤との混合物に、必要に応じて湿潤剤、安定剤、防腐剤等の添加剤を添加したものを意味する。
【0085】
本発明のインク液を調液する際には、水溶性インクの場合、まず水に溶解することが好ましい。そのあと、各種溶剤や添加物を添加し、溶解、混合して均一なインク液とする。
このときの溶解方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。中でも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、当該分野では公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
【0086】
水性のインクジェット用インクの調製方法については、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開2002−020657号、特開2002−060663号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0087】
本発明のインクは、下記一般式(Y)で表される少なくとも1種の水溶性染料を、水性媒体中に溶解してなり、更に少なくとも一種の金属キレート剤を含有してなるものである。
水性媒体中には、水混和性有機溶剤を含有してもよく、水性媒体中に含まれる水混和性有機溶剤は、使用される染料の25℃における溶解度が10(g/100g溶剤)以下のものが好ましい。ここで溶解度とは溶剤100g中にある一定の温度で溶解可能な溶質の質量を表し、単位は「g/100g溶剤である。
本発明の染料はその構造によって溶解性に多少変動があるが、本発明のインクは、染料種によってその溶解度が10(g/100g溶剤)以下となるような水混和性有機溶剤を適宜選択することが好ましい。
本発明の染料の25℃における溶解度は、好ましくは8(g/100g溶剤)以下であり、より好ましくは5(g/100g溶剤)以下である。また、該水混和性有機溶剤は、少なくとも1種がアルコール及び/又はその誘導体含む2種以上からなる混合物であることが好ましい。水混和性有機溶剤の添加量は1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%である。この値とすることで、インクの安定性、吐出安定性、乾燥性が良好となる傾向にある。
【0088】
前記水混和性有機溶剤の例は、以下のものが挙げられる。下記の中から本発明に適切な水混和性有機溶剤を選ぶことができる。
アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、
【0089】
エチレングリコールジアセテート、エチレングルコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミンン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、エチレン尿素(2−イミダゾリジノン)1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン、ジアセトンアルコール)。なお、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0090】
本発明で併用する前記他の染料が油溶性染料の場合は、該油溶性染料を高沸点有機溶媒中に溶解させ、水性媒体中に乳化分散させることによって調製することができる。
用いられる高沸点有機溶媒の沸点は150℃以上であるが、好ましくは170℃以上である。
高沸点有機溶媒は油溶性染料に対して質量比で0.01〜3.0倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用できる。これらの高沸点有機溶媒は単独で使用しても、数種の混合で使用してもよい。
【0091】
本発明では油溶性性染料や高沸点有機溶媒は、水性媒体中に乳化分散して用いられる。乳化分散の際、乳化性の観点から場合によっては低沸点有機溶媒を用いることができる。低沸点有機溶媒としては、常圧で沸点約30℃以上150℃以下の有機溶媒である。
【0092】
乳化分散は、高沸点有機溶媒と場合によっては低沸点有機溶媒の混合溶媒に染料を溶かした油相を、水を主体とした水相中に分散し、油相の微小油滴を作るために行われる。この際、水相、油相のいずれか又は両方に、後述する界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
乳化法としては水相中に油相を添加する方法が一般的であるが、油相中に水相を滴下して行く、いわゆる転相乳化法も好ましく用いることができる。
【0093】
更に本発明において、ポリマー微粒子分散物を用いることもできる。これらの詳細については特開2002−264490号公報に記載されている。
本発明では分散剤、分散安定剤として上述のカチオン、アニオン、ノニオン系の各種界面活性剤、消泡剤としてフッソ系、やシリコーン系化合物等も必要に応じて使用することができる。
【0094】
本発明のインクは公知の被記録材、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成するのに用いることができる。
【0095】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フイルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
【0096】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポリマーラテックスを受像材料に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても、後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も受像紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。具体的には、特願2000−363090号、同2000−315231号、同2000−354380号、同2000−343944号、同2000−268952号、同2000−299465号、同2000−297365号等の各明細書に記載された方法を好ましく用いることができる。
【0097】
以下に本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。記録紙及び記録フィルムおける支持体はLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等をからなり、必要に応じて従来の公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚み10〜250μm、坪量は10〜250g/mが望ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコート層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフイルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け色素(例、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0098】
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料がよく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機白色顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料がよく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法(気相法)によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。これらの顔料は2種以上を併用しても良い。
【0099】
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、耐オゾン性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0100】
インク受容層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される
【0101】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0102】
耐光性向上剤、耐ガス性向上剤としては、フェノール化合物、ヒンダードフェノール化合物、チオエーテル化合物、チオ尿素化合物、チオシアン酸化合物、アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、TEMPO化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、アミジン化合物、ビニル基含有化合物、エステル化合物、アミド化合物、エーテル化合物、アルコール化合物、スルフィン酸化合物、糖類、水溶性還元性化合物、有機酸、無機酸、ヒドロキシ基含有有機酸、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、ヘテロ環化合物、水溶性金属塩、有機金属化合物、金属錯体等が挙げられる。
これらの具体的な化合物例としては、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特開2000−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特公平4−34512号、特開平11−170686号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2000−94829号、特表平8−512258号、特開平11−321090号等に記載のものが挙げられる。
【0103】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。
界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。
【0104】
硬膜剤としては特開平1−161236号公報の222頁、特開平9−263036号、特開平10−119423号、特開2001−310547号、に記載されている材料等を用いることが出来る。
【0105】
その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0106】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性結着剤、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0107】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0108】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバック層に添加しても、カールを防止できる。
【0109】
本発明のインクは、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。
インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
好ましい被記録材と記録方式の組み合わせは、支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法である。
【0110】
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料及び屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。
【0111】
ディスプレイ画像用材料としては、ポスター、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、商業宣伝用チラシ、包装紙、ラッピング材料、紙袋、ビニール袋、パッケージ材料、看板、交通機関(自動車、バス、電車など)の側面に描画や添付した画像、ロゴ入りの洋服、等各種の物を指す。本発明の染料をディスプレイ画像の形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0112】
室内装飾材料としては、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、照明器具の部材、家具の部材、床や天井のデザイン部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0113】
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像ののみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0114】
以上のような用途において、パターンが形成されるメディアとしては、紙、繊維、布(不織布も含む)、プラスチック、金属、セラミックス等種々の物を挙げることができる。染色形態としては、媒染、捺染、若しくは反応性基を導入した反応性染料の形で色素を固定化することもできる。この中で、好ましくは媒染形態で染色されることが好ましい。
【実施例】
【0115】
(合成例)
以下、実施例に本発明の染料混合物の合成法を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0116】
本発明の式(Y−1)で表される染料は、例えば下記合成ル−トから誘導することができる。以下の実施例において、λmaxは吸収極大波長であり、εmaxは吸収極大波長におけるモル吸光係数を意味する。また、単に%と記載しているものは質量%を表す。
【0117】
【化6】

【0118】
(合成例1)
DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)450mLと1,2−ジクロロエタン24.75g中に、室温で化合物(a)(2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール(和光純薬工業(株)製/カタログ番号019−11125))76.5gを加え、炭酸カリウム79.5gを添加後に70℃まで昇温して同温度で30分間撹拌した。引き続き、80℃の温水375mLを上記反応液中に10分間かけて滴下し、内温25℃まで冷却した。析出した結晶をろ別し、イオン交換水250mL、引き続きメタノール150mLで洗浄後70℃にて一晩乾燥して化合物(b)65.1gを得た。
【0119】
(合成例2)
アミノイソフタル酸((和光純薬工業(株)製/カタログ番号322−26175))(A)181.2gをイオン交換水1000mlに懸濁後、濃塩酸257mLを添加し、氷浴で5℃に保った。そこへ亜硝酸ナトリウム69.7gの水溶液116mlを滴下した(反応液A)。亜硫酸ナトリウム378.1gの水溶液1300mlを内温25℃で攪拌し、そこへ上記反応液Aを注入した。この状態で30分攪拌した後、内温を30℃まで加熱して、60分攪拌した。この反応液に塩酸500mLを添加し、すぐに内温50℃まで昇温した(反応液B)。この状態で90分攪拌した後に、ピバロイルアセトニトリル(東京化成(株)製/カタログ番号P1112)125.2gとイソプロパノール100mLを上記反応液Bに添加後、内温を93℃まで昇温し、240分間攪拌した。室温まで冷却後、析出した結晶(C)を吸引濾過し、結晶をイオン交換水1500mL、続いてイソプロパノール1000mLで洗浄後乾燥した。単離収率223.5g。収率73.7%。
【0120】
(合成例3)
メタンスルホン酸100mL、酢酸120mL、プロピオン酸180mL中に、室温で化合物(b)29.2gを添加し、内温を45℃まで昇温して均一溶液にした後に内温0℃まで冷却した。引き続き、NaNO14.7gとイオン交換水27mLの溶液を上記均一溶液中に内温0〜10℃を保ちながら滴下し、内温5℃で15分間撹拌して、ジアゾニウム塩を調製した。合成例2で作成したカプラー成分(C)60.6g、メタノール600mL、エチレングリコール600mLから予め作成した溶液に、内温0〜10℃を保つ速度で上記ジアゾニウム塩溶液を滴下した。引き続き、内温25℃で30分間撹拌した。析出した結晶をろ過し、メタノール250mLで洗浄後、粗結晶を650mLの水に分散し、その後内温80℃で30分間撹拌後室温まで冷却し、ろ過、水300mLで洗浄後、60℃で一晩乾燥して、64.47gの色素(D)を得た。
【0121】
(合成例4)
予め調製したKOH(錠剤)16.5gとイオン交換水414.9mLの溶液中に、内温20〜30℃で上記合成例3で作成した色素(D)46.1gを添加して溶解した。
引き続き、酢酸カリウム40.0gとメタノール200mLの溶液を上記色素水溶液中に内温25℃で滴下し、引き続き同温で10分間撹拌した。その後、IPA(イソプロパノール)2488mLを滴下して造塩し、同温度で30分間撹拌後にろ過、IPA(イソプロパノール)500mLで洗浄、70℃で一晩乾燥して、44gの式(Y−1)で表される水溶性染料の粗結晶を得た。
【0122】
(合成例5)
イオン交換水78.3mLに式(Y−1)で表される水溶性染料の粗結晶8.7gを室温で溶解後、0.1N塩酸を用いて水溶液のpH値を8.5に調整し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過後、ろ液中にIPA(イソプロパノール)391.5mLを内温25℃で滴下した。析出した結晶をろ過、IPA(イソプロパノール)100mLで洗浄後、80℃で一晩乾燥して、7.8gの式(Y−1)で表される水溶性染料の精結晶を得た。{λmax:428nm(HO)、εmax:4.20×10
【0123】
(合成例6)
合成例4のKOHをNaOHに、酢酸カリウムを酢酸ナトリウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.7gの水溶性染料(Y−2:一般式(Y)中のM=Na)の精結晶を得た。
【0124】
(合成例7)
合成例4のKOHをLiOHに、酢酸カリウムを酢酸リチウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.4gの水溶性染料(Y−3:一般式(Y)中のM=Li)の精結晶を得た。
【0125】
(合成例8)
合成例4のKOHをNHOHに、酢酸カリウムを酢酸アンモニウムに変更した以外は、合成例4及び合成例5と同様の操作を行い、7.3gの水溶性染料(Y−4:一般式(Y)中のM=NH)の精結晶を得た。
【0126】
〔インク原液1〜8、101〜103の調製〕
合成例5で調製した式(Y−1)で表される染料化合物(一般式(Y)で表される染料化合物(M=Kイオン))100gを超純水900gに室温で攪拌しながら溶解後、EDTA−4ナトリウム(金属キレート剤)を固形分として30gを添加してこれらを完全に混合溶解した。引き続き、平均孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて不溶物のろ過を行い、インク原液1を得た。
金属キレート剤の種類と添加量を、下記表1に示すように変更した以外は、インク原液1の調整と同様にして、インク原液2〜8を作製した。
この際に、比較用のインク原液として、金属キレート剤を含有しない以外はインク原液1の調製と同様にしてインク液101を作製した。またインクへの添加物を下記表3に示すように変更した以外はインク原液1の調製と同様にしてインク液102及び103をそれぞれ作製した。
【0127】
【表3】

【0128】
〔インク原液A1〜A6、B1〜B3、C1〜C6、D1〜D3、E1〜E3の調製〕
合成例5〜8で得られた一般式(Y)の化合物である化合物(Y−1)〜(Y−4)及び群Aの化合物1(M=Kイオン)/2(M=Kイオン)/3(M=Kイオン)/8(M=Kイオン)=1/3/1/2(質量比)を下記表4に示した質量比率で含む混合物100gを超純水900gに室温で攪拌しながら溶解後、EDTA−4ナトリウム(金属キレート剤)を固形分として30gを添加してこれらを完全に混合溶解した。引き続き、平均孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて不溶物のろ過を行い、インク原液A1を得た。
一般式(Y)の化合物及び群Aの化合物の種類と添加量と、添加剤及び金属キレート剤の種類を、下記表4〜6に示すように変更した以外は、インク原液A1の調製と同様にして、インク原液A2〜A6、B1〜B3、C1〜C6、D1〜D3、E1〜E3を作製した。なお、添加剤の添加量は金属キレート剤の添加量と同量とした。
この際に、比較用のインク原液として、金属キレート剤を含有しない以外はインク原液A1の調製と同様にしてインク原液A101を作製した。またインクへの添加物を下記表4に示すように変更した以外はインク原液A1の調製と同様にしてインク原液A102及びA103をそれぞれ作製した。
比較用のインク原液として、一般式(Y)の化合物と群Aの化合物の質量比率を表6に示したように変更した以外はインク原液A1の調製と同様にしてインク原液A104及びA105を作製した。
染料を変更する場合は、染料の添加量がインク原液A1に対して等モルとなるように使用した。
【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
また、群Aの化合物として下記表7に示した複数種の組み合わせを用いた以外は上記インク原液A1の調製と同様にしてインク原液F1〜F7を調製した。
【0133】
【表7】

【0134】
〔実施例1〕
〔インク液1の調製〕
上記で得られたインク原液1を500g用い、以下に記載の成分に超純水を加え1000gとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間攪拌溶解した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧ろ過しインク液1を調製した。
グリセリン 90g
ジエチレングリコール 100g
2−ピロリドン 60g
エチレン尿素 50g
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤) 10g
【0135】
〔実施例2〜8〕
〔インク液2〜8の調製〕
インク原液を下記表8に示すようにインク原液2〜8に変更した以外はインク液1と同様にしてインク液2〜8をそれぞれ作製した。
【0136】
【表8】

【0137】
〔比較例101〜103〕
〔インク液101〜103の調製〕
比較用のインク液として、インク原液を下記表9に示すようにインク原液101〜103に変更した以外はインク液1と同様にしてインク液101〜103を作製した。
【0138】
【表9】

【0139】
〔実施例9〕
〔インク液a1の調製〕
上記で得られたインク原液A1を500g用い、以下に記載の成分に超純水を加え1000gとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間攪拌溶解した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧ろ過しインク液a1をそれぞれ調製した。
グリセリン 90g
ジエチレングリコール 100g
2−ピロリドン 60g
エチレン尿素 50g
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤) 10g
【0140】
〔実施例10〜36〕
〔インク液a2〜a6、b1〜b3、c1〜c6、d1〜d3、e1〜e3、f1〜f7の調製〕
インク液a1の調製において、インク原液A1をインク原液A2〜A6、B1〜B3、C1〜C6、D1〜D3、E1〜E3、F1〜F7に変更する以外は同様にして、インク液a2〜a6、b1〜b3、c1〜c6、d1〜d3、e1〜e3、f1〜f7をそれぞれ調製した。
【0141】
〔比較例104〜108〕
〔インク液101r〜105rの調製〕
インク液a1の調製において、インク原液A1をインク原液A101〜A105に変更する以外は同様にして、比較例であるインク液101r〜105rをそれぞれ調製した。
【0142】
〔実施例37〕
〔インク液a1−2の調製〕
インク原液A1を400g用い、以下に記載の成分に超純水を加え1000gとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間攪拌溶解した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧ろ過しインク液a1−2をそれぞれ調製した。
グリセリン 90g
ジエチレングリコール 100g
2−ピロリドン 60g
エチレン尿素 50g
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤) 10g
【0143】
〔実施例38〜64〕
〔インク液a2−2〜a6−2、b1−2〜b3−2、c1−2〜c6−2、d1−2〜d3−2、e1−2〜e3−2、f1−2〜f7−2の調製〕
インク液a1−2の調製において、インク原液A1をインク原液A2〜A6、B1〜B3、C1〜C6、D1〜D3、E1〜E3、F1〜F7に変更する以外は同様にして、インク液a2−2〜a6−2、b1−2〜b3−2、c1−2〜c6−2、d1−2〜d3−2、e1−2〜e3−2、f1−2〜f7−2をそれぞれ調製した。
【0144】
〔比較例109〜113〕
〔インク液101r−2〜105r−2の調製〕
インク液a1−2の調製において、インク原液A1をインク原液A101〜A105に変更する以外は同様にして、比較例であるインク液101r−2〜105r−2をそれぞれ調製した。
【0145】
<受像紙への浸透性評価>
インクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 PIXUS ip4100)を用いて、専用紙A(4024DP紙 ゼロックス社製)及び専用紙B(BNBS紙 日本ビジネスサプライ社製)の2種にインクジェット記録を行った。
当該フィルムに対し印字した画像について、下記の基準に従い浸透性の評価を行った。
○:殆ど浸透しない
△:僅かに浸透する
×:明らかにインクが裏面側に浸透する
【0146】
<ブロンズ評価>
インクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 PIXUS ip4100)を用いて、専用フィルムA(キャノン社製 フォト光沢フィルム HG201)、専用フィルムB(PICTORICO社製 PICTORICO PRO Glossy Film PPF−A4)の2種にインクジェット記録を行った。なお、試験に用いた専用フィルムA及び専用フィルムBは、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する記録媒体である。
当該フィルム上に、10℃80%RHの環境下で、黄色ベタ画像を印刷し、同条件下で1晩放置後、目視によりブロンズ(プリント表面の金属光沢)の評価を以下の基準で行った。
○:ブロンズ光沢は全く見られない。
△:僅かながらブロンズ光沢が見られる。
×:明らかにブロンズ光沢が認められる。
【0147】
以上で得られた結果を表10〜13に示す。
【0148】
【表10】

【0149】
【表11】

【0150】
【表12】

【0151】
【表13】

【0152】
表10〜13に示される結果より、本発明のインクをインクジェット記録に用いた場合、比較例に比べ、受像紙への浸透性に優れ、印画物のブロンズ光沢を抑えることができることが分かる。
なお、本発明において使用する受像紙をEPSON社製PM写真用紙、キャノン社製 PR101に変更した場合でも上記結果と同様の効果が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(Y)で表される少なくとも一種の染料を、水性媒体中に含有するインクであって、金属キレート剤を少なくとも一種含有するインク組成物。
一般式(Y):
【化1】

一般式(Y)において、Mは各々独立して水素原子又はカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、Kイオン、又はNHイオンを表し、少なくとも1つのMがKイオンである。
【請求項2】
さらに、下記群Aより選択される化合物を含有し、該群Aより選択される化合物のインク組成中における含有量(質量%)が、前記一般式(Y)で表される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.001以上1.0以下である請求項1に記載のインク組成物。
【化2】

(群A中、Mはそれぞれ独立に水素原子またはカチオンを表し、Mがカチオンを表す場合はLiイオン、Naイオン、KイオンまたはNHイオンを表す。)
【請求項3】
前記群Aより選択される化合物が、1、2,3及び8から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記一般式(Y)で表される化合物において、Mの主成分がKイオンであり、群Aより選択される化合物において、Mの主成分がKイオンである請求項2〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記一般式(Y)で表される化合物及び群Aより選択される化合物におけるMが全てKイオンである請求項2〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記一般式(Y)で表される化合物の含有量が、インク組成物全質量を基準として、0.1〜20質量%である請求項2〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記群Aより選択される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)が、前記一般式(Y)で表される化合物のインク組成物中における含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.001以上0.2以下である請求項2〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記群Aより選択される化合物のインク組成物中における含有量が、インク組成物全質量に対して0.01質量%〜1.1質量%である請求項2〜7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記金属キレート剤がEDTA−4ナトリウム、ピコリン酸ナトリウム、キノリン酸ナトリウム、1,10―フェナントロリン、8−ヒドロキシキノリン又は3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウムである請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記金属キレート剤の含有量が、インク組成物の全質量に対して1〜2質量%である請求項1〜9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する、インクジェット記録用インク。
【請求項12】
請求項11に記載のインクジェット記録用インクを用いる、インクジェット記録方法。
【請求項13】
支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法であって、インク滴が請求項11に記載のインクジェット記録用インクからなる、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−149219(P2012−149219A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142331(P2011−142331)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】