説明

インク組成物及びそれを用いた記録装置

【課題】 透明インクでは無色透明であり、白色インクでは高い白色度を有し、かつ光硬化性に優れたインク組成物及びそれを用いた記録装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯に重なり合う部分がある事を特徴とする。好ましい態様においては、光重合開始剤の吸収波長が300nm以上にあり且つ蛍光増白剤の発光波長が400nm〜600nmの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物及びそれを用いた記録装置に関し、詳細には光を照射する事で容易に硬化し、高精細な画像を形成する事が可能なインク組成物及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録方法、その中でもインクジェット記録方法はインク組成物の小滴を何らかの手段で飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う記録方法である。このインクジェット記録方法は、高解像度且つ高品位な画像を高速で印刷できるという特徴を有しており、様々な技術分野で用いられるようになってきている。このインクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、水を主成分に用い、これに着色成分や各種水溶性の添加剤を組み合わせた水性インクが主流である。
【0003】
一方、水性インクは紙や布等の水分を吸収し易い記録媒体には適しているが、水分を吸収し難い金属、ゴム、皮革、プラスチック等の素材、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン等の板材やフィルム、各種成型品等には記録する事が困難であった。
【0004】
そのような要求に対して、水分ではなく有機溶剤を主成分に用いた溶剤型インクジェットインク又は油性インクジェットインクが使用されるが、乾燥性に劣る事、材質によっては素材を溶解してしまう事、人体への有害性、環境負荷等の問題から、使用が限定されてしまうものであった。
【0005】
これらの問題点を解決し、記録を行う方法として、紫外線硬化インクジェットインクが開示されている。
【0006】
(例えば特許文献1参照)
しかしながら、紫外線硬化による方法も、各種の様々な特性を要求される記録媒体に記録を行う方法としては万能ではなかった。
【0007】
特に透明インクにて無色透明な性質を要求される場合や白色のインクにて高い白色度を要求される場合に紫外線硬化インクを設計する際には、紫外線照射によって黄色に着色し易い紫外線硬化インクを改良する試みが為されてきた。
【0008】
また、記録媒体の黄変を抑制し、白色度を向上する目的で蛍光増白剤が塗工層に添加される例は数多く見られる。
【0009】
(例えば特許文献2参照)
同様の効果を得る為に、インク組成物中へ蛍光増白剤を添加する事も開示されている。 (例えば特許文献3参照)
また、紫外線による記録媒体や画像の黄変、劣化を防ぐ為に紫外線吸収剤の一つとして、蛍光増白剤を用いる例が挙げられている。
【0010】
(例えば特許文献4、5参照)
【特許文献1】米国特許第5623001号明細書
【特許文献2】特開平7−68920号公報
【特許文献3】特開2004−2616号公報
【特許文献4】特開2003−221529号公報
【特許文献5】特開2004−175875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、蛍光増白剤は波長200nm〜400nmの紫外線領域の光を吸収し、400nm〜600nmの可視領域の蛍光を発する物質である為、波長200nm〜400nmの紫外線領域を吸収する光重合開始剤と併用して用いた場合には、光重合開始剤と蛍光増白剤の光吸収が競合し、紫外線硬化インクの硬化性を低下させてしまう事が避けられなかった。
【0012】
そこで本発明では上記従来技術の欠点を克服し、硬化性に優れたインク組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用する事によって、上記目的が達成され、本発明を成すに至った。
【0014】
即ち本発明は、以下の通りである。
【0015】
(1)少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯に重なり合う部分がある事を特徴とするインク組成物
(2)前記光重合開始剤の吸収波長が300nm以上にあり且つ前記蛍光増白剤の発光波長が400nm〜600nmの範囲にある(1)記載のインク組成物
(3)前記蛍光増白剤の吸収波長が200nm〜400nmの範囲であり、発光波長が400nm〜600nmの範囲にある(2)記載のインク組成物
(4)前記光重合開始剤の吸収波長が300nm〜450nmの範囲にある(3)記載のインク組成物
(5)上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源より放射される光が350nm〜450nmの波長範囲の光を含む記録装置
(6)上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源が半導体素子である(5)記載の記録装置
(7)上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源がLEDである(6)記載の記録装置
(8)上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源が発光波長の異なる複数種のLEDを複数個組み合わせたものである(7)記載の記録装置
本発明のインク組成物は、少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯が重なり合うようにする事により、優れた硬化性を実現する事ができた。
【0016】
詳細には、本発明のインク組成物は光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯が重なり合うようにする事により、インク組成物中に光重合開始剤と蛍光増白剤の双方が含有されたとしても、蛍光増白剤に紫外線が吸収され、放出された蛍光もまた光重合開始剤に吸収され硬化反応に寄与できる為に、硬化性が低下せず、向上するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
【0018】
本発明のインク組成物に含有される光重合開始剤は、300nm以上の波長に吸収があり、これらの波長の光を吸収し、ラジカルを生成してモノマーの重合反応を開始させるものである。
【0019】
本発明において用いられる光重合開始剤は、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシケトン類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアミノケトン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)〕、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン類が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独もしくは2種類以上を任意の割合で混合して使用する事ができる。
【0020】
また、Irgacure 127,184,500,651,754,2959,907,1700,1800,1850,1870,369,379,1300,819,OXE01、Darocur 1173、TPO,4265、ITX(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、Kayacure DETX−S(日本化薬株式会社製)の商品名で入手可能な光重合開始剤も使用する事ができる。
【0021】
本発明において用いられる光重合開始剤は、300nm〜400nmの領域に加えて、400nm〜450nmの波長域にも吸収を有するIrgacure 819、369,379,1800,1850,1870を単独又は複数組み合わせて使用するのが好適である。
【0022】
インク組成物中に含有される光重合開始剤は、0.1重量%から15重量%が好ましく、更に好ましくは0.5重量%から10重量%である。含有量が少ない場合には、重合速度が低くなり硬化性が低下する。多すぎる場合には、硬化した際の分子量が低下し、硬化物の耐久性が低下する。
【0023】
本発明において用いられる蛍光増白剤は、例えばピレン誘導体、クマリン誘導体、オキサゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、ピラリゾン誘導体、ベンジジン誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
【0024】
また、Hostalux KCB、KVC、KS、KS−N、KS−C、KSB、KSB−2、KCU、KM−N、NSM、SNR、NR、N2R−200、Leukopur EGM(Clariant GmbH製)、UVITEX OB、OB−C、OB−P(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、Kayalight B、OS、OSN(日本化薬株式会社製)、Hakkol P、OB(昭和化学工業株式会社製)、Whitefluor B、PSN、HCS、PHR、PCS(住化カラー株式会社製)、NIKKAFLUOR RP、2R、SB、KB、EFS、OB、SC 200、MC(株式会社日本化学工業所製)の商品名で入手可能な光重合開始剤も使用する事ができる。
【0025】
本発明において用いられる蛍光増白剤は、200nm〜400nmの波長域に吸収を有し、400nm〜500nmの蛍光を発するKayalight OS、Hostalux KCBを単独又は複数組み合わせて使用するのが好適である。
【0026】
インク組成物中に含有される蛍光増白剤は、0.001重量%から5.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.01重量%から0.5重量%である。含有量が少ない場合には、効果が得られ難い。また過剰量を添加すると、硬化後の透明性・耐久性等の特性に悪影響の出る場合がある。
【0027】
本発明に用いられる重合性化合物としては、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーの何れも用いる事が出来るが、毒性やP.I.I.値(初期皮膚刺激性)の低いものを用いるのが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる単官能モノマーは、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる二官能モノマーは、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられる多官能モノマーはトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO変性プロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート、グリセリンEO変性トリアクリレート、グリセリンPO変性トリアクリレート等が挙げられる。
【0031】
それらの中でも、特に好ましくは、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンEO、PO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO、PO変性トリアクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタムである。
【0032】
また、本発明のインク組成物には、重合可能な化合物として、前述のモノマーの他にオリゴマー、プレポリマー、樹脂エマルジョンを含有しても良い。本発明のインク組成物に使用できるオリゴマーやプレポリマーとは、モノマーがある程度重合し、約2〜20程度の繰り返し単位を構成した分子である。これらオリゴマー、プレポリマーは重合性官能基を1〜複数個有しているので、モノマー等と共重合反応を起こして硬化させることが出来る。また本発明に使用できる樹脂エマルジョンは、ポリマー微粒子が溶媒に分散し安定化されたもので、その表面に重合性官能基を有するものである。これも表面に重合性官能基を1〜複数個有しているので、モノマー等と共重合反応を起こして硬化させることが出来る。
【0033】
本発明に用いられる重合促進剤としては、従来用いられるアミン化合物に加え、表面に重合性官能基や表面にアミノ基を有する微粒子を含有しても良い。アミン化合物及び表面にアミノ基を有する微粒子は周辺雰囲気に存在する酸素によるラジカル重合の阻害作用を抑制する事により、重合反応を促進する効果が有り、表面に重合性官能基を有する微粒子の重合促進機構としては、明確ではないが、光を吸収し、光重合開始剤の開裂により生成したラジカルが、微粒子表面にトラップされ安定化し、微粒子表面に存在する重合性官能基や吸着されている重合性化合物と容易に重合反応を開始できるようになる為に、重合反応を促進するものと推測される。
【0034】
表面にアミノ基又は重合性官能基を有する微粒子とは、特に限定されないが、その調製方法は化学反応によりアミンまたは重合性官能基を微粒子表面に導入することにより得られ、一例を挙げれば、化学反応により重合性官能基を微粒子表面に導入することにより得られ、具体的にはテトラエトキシシラン(TEOS)やテトラメトキシシラン(TMOS)のテトラアルコキシシラン類のゾル−ゲル反応によって、水酸基を表面に多数有するシリカ微粒子を作製し、該水酸基とアミノ基や重合性官能基を有する化合物、例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルアミノ基やアクリロイル、メタクリロイル基を有するカップリング剤との反応により重合性官能基をシリカ微粒子表面に導入する方法が挙げられる。
【0035】
重合性官能基を有するカップリング剤としては、KBM−5103(信越化学工業株式会社製)、アミノ基を有するカップリング剤としては3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(アルドリッチ社製)等の商品名で入手可能なカップリング剤も使用する事ができる。
【0036】
また、本発明に用いる微粒子は、本発明の作用効果を奏するものであれば、特に限定されないが、一般的に体質顔料と称されるもので、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化カルシウム等の無機化合物が例示され、特にシリカ、アルミナ等の透明なものが好適に使用できる。
【0037】
本発明のインク組成物に用いられるアミン化合物としては、特に限定されないが、アミノベンゾエート誘導体が好ましい、これは酸素による重合阻害を軽減するである。
【0038】
アミノベンゾエート誘導体は、350nm以上の波長域に吸収を持たないものであり、このようなアミノベンゾエート誘導体の例としては、特に限定されないが、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート等が挙げられる。
【0039】
Darocure EHA、EDB(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等の商品名で入手可能なアミン化合物を使用する事ができる。
【0040】
本発明のインク組成物は色材も含んでいてもよい。
【0041】
本発明のインク組成物に含まれる色材は、染料、顔料のいずれであってもよいが、印刷物の画像耐久性の面から顔料の方が有利である。
【0042】
本発明で使用される染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料など通常インクジェット記録に使用されるような各種染料を使用することができる。
【0043】
本発明で使用される顔料としては、特別な制限なしに無機顔料、有機顔料を使用することができる。
【0044】
無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、これらの顔料は、分散剤または界面活性剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインク組成物に添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。なお、この顔料分散液に含まれる分散剤および界面活性剤がインク組成物の分散剤および界面活性剤としても機能することは当業者に明らかであろう。
【0046】
インク組成物における色材の添加量は、0.1〜25重量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量%程度の範囲である。
本発明のインク組成物はバインダー樹脂を含んでいても良い。これはインク組成物が硬化した後も、色材が分離、脱落することを防ぐ目的で添加される。本発明の作用効果を奏するものであれば、特に限定されない。本発明に用いられるバインダー樹脂は、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリビニルホルマール、ポリアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリシロキサンまたはこれらの共重合体が挙げられる。
【0047】
本発明のインク組成物は、更に任意の成分として、界面活性剤、濡れ性改良剤、増感色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、重合禁止剤、無機酸化物コロイド、湿潤剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤等を添加しても良い。
【0048】
また、本発明のインク組成物は、粘度低減や密着性向上の為に用いられる、重合性を持たず、揮発性を有するような有機溶剤類を含まない、無溶剤型のインク組成物であることが更に好ましい。
【0049】
本発明のインク組成物は、公知慣用の全ての画像記録・印刷方法に適用できる。例えば、インクジェット法、オフセット法、グラビア法、感熱転写法などの画像記録・印刷刷方法を適用できる。特に、本発明のインク組成物はインクジェット記録に適している。
【0050】
本発明のインク組成物を用いるインクジェット記録方法にあっては、インク組成物を記録媒体付着させた後に、紫外線を照射する。
【0051】
紫外線の照射量は、基板または記録媒体等の上に付着させたインク組成物量、厚さにより異なり、厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものであるが、例えば、10mJ/cm以上、10,000mJ/cm以下であり、また好ましくは50mJ/cm以上、6,000mJ/cm以下の範囲で行う。かかる程度の範囲内における紫外線照射量であれば、十分硬化反応を行うことができる。
【0052】
また、照射する紫外光は、安全性、環境に対する面から、オゾンの発生しない350nm以上の長波長域の紫外線を使用する事が好ましい。また、照射する紫外線光は、連続したスペクトルを有するものではなく、発光ピーク幅の狭いものが好ましい。この発光ピークの波長域としては350〜420nmの範囲が好ましい。
【0053】
紫外線照射手段としては、特に限定されないが、エネルギー消費、小型化、ランプ寿命、記録媒体に対するダメージの点から紫外線LEDや紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子が好ましい。紫外線LEDを用いる場合は、例えば、発光ピーク波長が365nm、380nm、395nm、400nmのLEDを組み合わせることが特に好ましい。紫外線LEDや紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子は、従来紫外線光源として用いられてきたメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプとは異なり発熱量が少ない為、今まで使用する事が出来なかった、加熱により変形してしまうような記録媒体や熱で分解、変性してしまう色材や各種添加剤も使用する事も可能となる。
【0054】
また、本発明のインク組成物を用いた記録方法では、紫外線光照射前、同時またはその後に加熱してもよい。加熱は、記録媒体に熱源を接触させて加熱する方法、遠赤外線、近赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど記録媒体に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。
【0055】
<実施例>
以下、本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
1.透明インク組成物1の製法
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、N−ビニルホルムアミド(以下NVF、商品名ビームセット770 荒川化学工業株式会社製)73.0g、トリプロピレングリコールジアクリレート(以下TPGDA、商品名アロニックスM−220 東亞合成株式会社製)17.5g、グリセリンEO変性トリアクリレート(以下A−Gly−3E、新中村化学株式会社製)7.5gを秤取り、Irgacure 819 0.8g Irgacure 369 0.2g、Darocur 0.95g(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌した後、Kayalight OS 0.05gを添加し更に2時間攪拌する事で透明インク組成物1を調製した。
【0057】
NVF 73.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 0.8重量%
Irgacure 369 0.2重量%
Darocur EHA 0.95重量%
Kayalight OS 0.05重量%
【実施例2】
【0058】
2.シアンインク組成物1の製法
下記の組成からなるシアンインク組成物1を調製した。調製は下記の要領で行った。色材である顔料とイソプロピルアルコール(以下IPA)を混合して、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))と共に2時間分散を行った。その後、ガラスビーズを分離し、15重量%のIPA顔料分散液Aを得た。
【0059】
300mL丸底フラスコにビームセット770 85.0g、IPA顔料分散液A 100gを加え、ロータリーエバポレーターを用いてIPAを留去し、ピグメントブルー15:3を15重量%含む顔料分散液Bを得た。
【0060】
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、ビームセット770 51.0g、アロニックスM−220 17.5g、A−Gly−3E 7.5gを秤取り、Irgacure 819 2.4g、Irgacure 369 0.6g、Darocur EHA 0.9gを添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌した後、Kayalight 0.1gを添加し更に2時間攪拌し、各成分を十分に溶解混合した後に、顔料分散液B 20.0gを加え、更に1時間攪拌混合する事で下記組成からなるシアンインク組成物1を調製した。
【0061】
NVF 68.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 2.4重量%
Irgacure 369 0.6重量%
Darocur EHA 0.9重量%
C.I. ピグメントブルー 15:3 3.0重量%
Kayalight OS 0.1重量%
【実施例3】
【0062】
3.ホワイトインク組成物1の製法
二酸化チタン微粒子の製法
チタン含有鉱石を硫酸で溶かして硫酸チタン溶液を得る。この硫酸チタン溶液を加水分解して得た含水酸化チタンに、TiOの100重量部に対してリン酸アンモニウムを0.50重量部、硫酸カリウムを0.30重量部、硫酸アルミニウムを0.30重量部添加し、含水酸化チタンを生成物温度が1020℃になるまで実験室用回転マッフル炉内で加熱した。生成した二酸化チタン微粒子を室温に冷却し、透過型電子顕微鏡写真で観測したところ、平均一次粒子径が0.13μmであるアナターゼ型であることが判った。この表面処理された二酸化チタン微粒子1500gとイソプロピルアルコール1000gを混合し、サンドミル(安川製作所製)でジルコニウムビーズ(1.0mm)をスラリーの1.5倍量を充填し、2時間分散させた後、ビーズを取り除きインクジェット用白色インクに用いる二酸化チタン微粒子の60重量%IPA分散液Cを得た。
【0063】
300mL丸底フラスコにビームセット770 140重量部、IPA分散液C 100重量部を加えロータリーエバポレーターを用いてIPAを留去し、二酸化チタン微粒子を30重量%含む顔料分散液Dを得た。
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、ビームセット770 51.0g、アロニックスM−220 17.5g、A−Gly−3E 7.5gを秤取り、Irgacure 819 2.4g、Irgacure 369 0.6g、Darocur EHA 0.9gを添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌した後、Kayalight 0.1gを添加し更に2時間攪拌し、各成分を十分に溶解混合した後に、顔料分散液D 20.0gを加え、更に1時間攪拌混合する事でホワイトインク組成物1を調製した。
【0064】
NVF 65.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 2.4重量%
Irgacure 369 0.6重量%
Darocur EHA 0.9重量%
Kayalight OS 0.1重量%
二酸化チタン微粒子 6.0重量%
【実施例4】
【0065】
4.ホワイトインク組成物2の製法
Kayalight OSをHostalux KCBに変えた以外は、実施例3の方法と同様にして、下記組成のホワイトインク組成物2を作成した。
【0066】
NVF 65.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 2.4重量%
Irgacure 369 0.6重量%
Darocur EHA 0.9重量%
Hostalux KCB 0.1重量%
二酸化チタン微粒子 6.0重量%
(比較例1)
5.透明インク組成物2の製法
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、N−ビニルホルムアミド 73.0g、トリプロピレングリコールジアクリレート 17.5g、グリセリンEO変性トリアクリレート7.5gを秤取り、Irgacure 184 1.0g、Darocur 1.0gを添加し、マグネティックスターラーで2時間攪拌する事で透明インク組成物2を調製した。なお、IPA溶液(1重量%濃度)中でのIrgacure 184は、365nmにおいて0.81の吸光度を有するが、400nm以上の領域には吸収が認められないものである。
【0067】
NVF 73.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 184 1.0重量%
Darocur EHA 1.0重量%
(比較例2)
6.透明インク組成物3の製法
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、N−ビニルホルムアミド 73.0g、トリプロピレングリコールジアクリレート 17.5g、グリセリンEO変性トリアクリレート7.5gを秤取り、Irgacure 184 1.0g、Darocur 0.95gを添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌した後、Kayalight OS0.05gを添加し更に2時間攪拌する事で透明インク組成物3を調製した。
【0068】
NVF 73.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 184 1.0重量%
Darocur EHA 0.95重量%
Kayalight OS 0.05重量%
(比較例3)
7.透明インク組成物4の製法
容量100mLの遮光性サンプル瓶に、N−ビニルホルムアミド 73.0g、トリプロピレングリコールジアクリレート 17.5g、グリセリンEO変性トリアクリレート7.5gを秤取り、Irgacure 184 0.8g、Irgacure 369 0.2g、Darocur 1.0gを添加し、マグネティックスターラーで2時間攪拌する事で透明インク組成物4を調製した。
【0069】
NVF 73.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 184 0.8重量%
Irgacure 369 0.2重量%
Darocur EHA 1.0重量%
(比較例4)
8.シアンインク組成物2の製法
実施例2のシアンインク組成物1の光重合開始剤をIrgacure 184に変更した以外は同様にシアンインク組成物2を以下の組成で調製した。
【0070】
NVF 68.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 184 3.0重量%
Darocur EHA 0.9重量%
C.I. ピグメントブルー 15:3 3.0重量%
Kayalight OS 0.1重量%
(比較例5)
9.シアンインク組成物3の製法
実施例2のシアンインク組成物1から蛍光増白剤を除き、Darocur EHAの添加量を1.0重量%にした以外は同様にシアンインク組成物3を以下の組成で調製した。
【0071】
NVF 68.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 2.4重量%
Irgacure 369 0.6重量%
Darocur EHA 1.0重量%
C.I. ピグメントブルー 15:3 3.0重量%
(比較例6)
10.ホワイトインク組成物3の製法
実施例4のホワイトインク組成物2の光重合開始剤をIrgacure 184に変更した以外は同様にホワイトインク組成物3を以下の組成で調製した。
【0072】
NVF 65.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 184 3.0重量%
Darocur EHA 0.9重量%
Hostalux KCB 0.1重量%
二酸化チタン微粒子 6.0重量%
(比較例7)
11.ホワイトインク組成物4
実施例4のホワイトインク組成物2から蛍光増白剤を除き、Darocur EHAの添加量を1.0重量%にした以外は同様にホワイトインク組成物4を以下の組成で調製した。
【0073】
NVF 65.0重量%
TPGDA 17.5重量%
A−Gly−3E 7.5重量%
Irgacure 819 2.4重量%
Irgacure 369 0.6重量%
Darocur EHA 1.0重量%
二酸化チタン微粒子 6.0重量%
12.硬化試験1
上記の各インク組成物をガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線LED(i−LED、日亜化学工業株式会社製)、波長域390nm〜405nmの紫外線LED(SANDER社製)を組み合わせ、紫外線照射強度22mW/cm、照射時間3秒、積算照射光量66mJ/cmの硬化条件にて処理を行った後、以下の硬化性の目視及び触診による評価を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
評価指標
A:特に問題なく、完全に硬化する。
【0075】
B:紫外線照射により硬化するが、硬化不十分
C:一部だけが硬化する。
【0076】
D:全く硬化しない。
【0077】
【表1】

13.硬化試験2
上記の各インク組成物をガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線LED(i−LED、日亜化学工業株式会社製)、波長域390nm〜405nmの紫外線LED(SANDER社製)を組み合わせ、紫外線照射強度22mW/cm、照射時間30秒、積算照射光量660mJ/cmの硬化条件にて処理を行った後、以下の硬化性の目視及び触診による評価を実施した。結果を表2に示す。なお、評価指標は硬化試験1と同一である。
【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合性化合物、光重合開始剤、重合促進剤、蛍光増白剤を含有し、光重合開始剤の吸収波長帯と蛍光増白剤の発光波長帯に重なり合う部分がある事を特徴とするインク組成物。
【請求項2】
前記光重合開始剤の吸収波長が300nm以上にあり且つ前記蛍光増白剤の発光波長が400nm〜600nmの範囲にある請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記蛍光増白剤の吸収波長が200nm〜400nmの範囲であり、発光波長が400nm〜600nmの範囲にある請求項2記載のインク組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤の吸収波長が300nm〜450nmの範囲にある請求項3記載のインク組成物。
【請求項5】
上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源より放射される光が350nm〜450nmの波長範囲の光を含む記録装置。
【請求項6】
上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源が半導体素子である請求項5記載の記録装置。
【請求項7】
上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源がLEDである請求項6記載の記録装置。
【請求項8】
上記インク組成物の光硬化反応に使用する光源が発光波長の異なる複数種のLEDを複数個組み合わせたものである請求項7記載の記録装置。

【公開番号】特開2006−274025(P2006−274025A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94830(P2005−94830)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】