説明

インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】硬化性に優れ、耐摩擦性に優れた画像が得られるインク組成物を提供すること。さらに、前記インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(a)光酸発生剤と、(b)重合性化合物と、(c)増感剤と、を含有し、前記(a)光酸発生剤として、(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物と、(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤と、を含有することを特徴とするインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高くかつ廃材が出るなどの問題がある。一方インクジェット方式は、安価な装置で、かつ必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインク組成物、特にインクジェット記録用インク(放射線硬化型インクジェット記録用インク)は、十分に高い感度及び高画質の提供が求められている。高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不十分硬化に基づく低分子物質の発生の防止等、多くの利益が生じる。
【0004】
紫外線光による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつある。特に、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が光重合開始剤として一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の硬化の感応度が低いので画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像の場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光の光源のエネルギー放射量を増大しなければならないためにそれに伴う多大な発熱の放射を考慮する必要があった。
【0005】
下記特許文献1には(a)電子吸引性基を置換基として有するアリール骨格を1つ以上有するトリアリールスルホニウム塩重合開始剤と、(b)重合性化合物と、(c)増感色素と、(d)着色剤を含有することを特徴とするインク組成物が記載され、また、下記特許文献2には(a)ジアリールヨードニウム塩構造を有し、かつ、電子吸引性基を有するアリール骨格を1つ以上有する重合開始剤と、(b)重合性化合物と、(c)増感色素と、を含有することを特徴とするインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−241435号公報
【特許文献2】特開2006−321917号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bruce M. Monroe et al., Chemical Reviews, Vol. 93, p. 435-448(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硬化性に優れ、耐摩擦性に優れた画像が得られるインク組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の<1>及び<7>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<6>とともに以下に記載する。
<1> (a)光酸発生剤と、(b)重合性化合物と、(c)増感剤と、を含有し、前記(a)光酸発生剤として、(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物と、(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤と、を含有することを特徴とするインク組成物、
<2> 前記(a−2)光酸発生剤がトリアリールスルホニウム塩化合物である、<1>に記載のインク組成物、
<3> 前記(a−2)光酸発生剤が電子吸引性基を置換基として有するアリール骨格を1つ以上有するトリアリールスルホニウム塩化合物であり、アリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.46以上である、<2>に記載のインク組成物、
<4> 前記(c)増感剤が、315nm以上450nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が1,000以上である、<1>〜<3>いずれか1つに記載のインク組成物、
<5> 前記(c)増感剤がアントラセン誘導体である、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインク組成物、
<6> 前記(b)重合性化合物がエポキシ化合物を含有し、かつ、前記(b)重合性化合物が含有するエポキシ化合物の総量が、前記(b)重合性化合物が含有するオキセタン化合物の総量よりも多い、<1>〜<5>いずれか1つに記載のインク組成物、
<7> (a)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、を含み、前記インク組成物が<1>〜<6>いずれか1つに記載のインク組成物であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化性に優れ、耐摩擦性に優れた画像が得られるインク組成物を提供することができた。さらに、前記インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)インク組成物
本発明のインク組成物(本発明において、「インク組成物」を単に「インク」ともいう。)は、(a)光酸発生剤と、(b)重合性化合物と、(c)増感剤と、を含有し、前記(a)光酸発生剤として、(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物と、(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤と、を含有することを特徴とする。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インク組成物として好適に使用することができる。
また、本発明のインク組成物は、上記の成分の他に、必要に応じて、着色剤、分散剤、界面活性剤等を含有することができる。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り、「A以上B以下」を表す。すなわち、端点であるA及びBを含む数値範囲を表す。
【0012】
本発明において、インク組成物は、活性放射線の照射により硬化可能である。
本発明でいう「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させ得るエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明のインク組成物は、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物であることが好ましい。
以下、インク組成物を構成するそれぞれの成分について詳述する。
【0013】
(a)光酸発生剤
本発明のインク組成物は、(a)光酸発生剤を含有し、(a)光酸発生剤として、(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物(以下、(a−1)光酸発生剤ともいう。)と、(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤(以下、(a−2)光酸発生剤ともいう。)と、を含有する。
なお、光酸発生剤として、少なくとも(a−1)光酸発生剤及び(a−2)光酸発生剤をそれぞれ1種ずつ使用していればよく、複数の種類を併用してもよい。また、(a−1)光酸発生剤、及び、(a−2)光酸発生剤以外の光酸発生剤を併用してもよい。
本発明において、315nm以上400nm以下の波長領域において、モル吸光係数が100以上である光酸発生剤((a−1)光酸発生剤)と、モル吸光係数が100未満である光酸発生剤((a−2)光酸発生剤)とを併用することによって、インク組成物は様々な光源に対して硬化性に優れ、特に、超高圧水銀灯による硬化性に優れる。また、(a−1)光酸発生剤及び(a−2)光酸発生剤が特定の構造を有することにより、さらに硬化性に優れるインク組成物が得られる。
【0014】
(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物
本発明のインク組成物は、(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物((a−1)光酸発生剤)を含有する。
【0015】
(a−1)光酸発生剤は、315nm以上400nm以下のいずれかの波長において、モル吸光係数が100以上である。前記モル吸光係数が100未満であると、インク組成物が十分な硬化性を得ることができない。
上記モル吸光係数は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。
【0016】
なお、モル吸光係数(ε)は下記式(1)で与えられる。
ε=D/(c・d)
ここで、Dは溶液の吸光度を表し、cは溶質のモル濃度(モル/l)、dは溶液層の厚さ(光路長)(cm)を表す。
なお、本発明において、モル吸光係数は25℃にて測定した値である。また、モル吸光係数は濃度1.0×10-4〜1.0×10-5mol/lで測定した値である。
【0017】
(a−1)は、下記式(1)で表されることが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
式(1)中、R101、R102及びR103はそれぞれ独立に、電子供与性の一価の基を表し、Xは対イオン(対アニオン)を表す。
101、R102及びR103のうちの任意の2つが結合して環構造を形成していてもよく、また、R101、R102及びR103のいずれかが、さらに他のトリアリールスルホニウム骨格の置換基を構成し、全体として2価以上のスルホニウム塩であってもよい。
【0020】
Xは対アニオンを表し、対アニオンとしては特に限定されないが、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、BF4-が好ましい。
【0021】
以下に式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
(a−1)光酸発生剤は、上市されており、具体的には、SP−150((株)ADEKA製)、escure1187(Lamberti社製)、SP−152((株)ADEKA製)、escure1188(Lamberti社製)、SP−170((株)ADEKA製)、SP−172((株)ADEKA製)、TAS3(住友精化(株)製)、TAS6(住友精化(株)製)が例示できる。
【0027】
(a−1)光酸発生剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
【化6】

【0029】
上記(a−1)光酸発生剤の合成方法としては特に限定されず、公知の方法を使用することができるが、具体的には、トリアリールスルホニウム塩構造を有する化合物は、例えば、J. Amer. Chem. Soc. Vol.112(16)、1990年;pp.6004−6015、J. Org. Chem. 1988年;pp.5571−5573、WO02/081439A1パンフレット、あるいは欧州特許(EP) 第1113005号明細書等に記載の方法により容易に合成することが可能である。
【0030】
(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤
本発明のインク組成物は、(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤((a−2)光酸発生剤)を含有する。
(a−2)光酸発生剤の315nm以上400nmの波長におけるモル吸光係数が100以上であると、インク組成物の十分な硬化性を得ることができない。
315nm以上400nmの波長領域において、モル吸光係数は50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
【0031】
(a−2)光酸発生剤は、280nm以上315nm未満の波長領域に吸収を有することが好ましく、該波長領域のいずれかの波長におけるモル吸光係数は100以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。前記波長領域のいずれかの波長におけるモル吸光係数の上限は特に限定されないが、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0032】
(a−2)光酸発生剤は、315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満であれば特に限定されず、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等から適宜選択することができる。
【0033】
具体的には、例えば、S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387 (1974)、T. S. Bal et al, Polymer, 21, 423 (1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140,140号等に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468(1984)、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307(1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31 (1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150,848号、特開平2−296,514号等に記載のヨードニウム塩、
【0034】
J. V. Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al, J. Org. Chem., 43, 3055 (1978)、W. R. Watt et al, J. PolymerSci., Polymer Chem. Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer Bull., 14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromorecules, 14(5), 1141(1981)、J. V. Crivello et al, J. PolymerSci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877 (1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0035】
J. V. Crivello et al, Macromorecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. PolymerSci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)等に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K. Meier et al, J. Rad. Curing, 13(4), 26 (1986)、T. P. Gill et al, Inorg. Chem., 19, 3007 (1980)、D. Astruc, Acc. Chem. Res., 19(12), 377 (1896)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0036】
S. Hayase et al, J. Polymer Sci., 25, 753 (1987)、E. Reichmanis et al, J. Pholymer Sci., Polymer Chem. Ed., 23, 1 (1985)、Q. Q. Zhu et al, J. Photochem., 36, 85, 39, 317 (1987)、B. Amit et al, Tetrahedron Lett., (24) 2205 (1973)、D. H. R. Barton et al, J. Chem Soc., 3571 (1965)、P. M. Collins et al, J. Chem. SoC., Perkin I, 1695 (1975)、M. Rudinstein et al, Tetrahedron Lett., (17), 1445 (1975)、J. W. Walker et al, J. Am. Chem. Soc., 110, 7170 (1988)、S. C. Busman et al, J. Imaging Technol., 11(4), 191 (1985)、H. M. Houlihan et al, Macormolecules, 21, 2001 (1988)、P. M. Collins et al, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 532 (1972)、S. Hayase et al, Macromolecules, 18, 1799 (1985)、E. Reichmanis et al, J. Electrochem. Soc., Solid State Sci. Technol., 130(6)、F. M. Houlihan et al, Macromolcules, 21, 2001 (1988)、 欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
【0037】
M. TUNOOKA et al, Polymer Preprints Japan, 35(8)、G. Berner et al, J. Rad. Curing,1 3(4)、W. J. Mijs et al, Coating Technol., 55 (697), 45 (1983), Akzo、H. Adachi et al, Polymer Preprints, Japan, 37 (3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774 号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544 号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0038】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、M. E. Woodhouse et al, J. Am. Chem. Soc., 104, 5586 (1982)、S. P. Pappas et al, J. Imaging Sci., 30(5), 218(1986)、S. Kondo et al, Makromol. Chem., Rapid Commun., 9, 625 (1988)、Y. Yamada et al, Makromol. Chem., 152, 153, 163 (1972)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed., 17, 3845 (1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0039】
さらにV. N. R. Pillai, Synthesis, (1), 1 (1980)、A. Abad et al, Tetrahedron Lett., (47) 4555 (1971)、D. H. R. Barton et al, J. Chem. Soc., (C), 329 (1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0040】
これらの中でも、(a−2)光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましい。トリアリールスルホニウム塩化合物は、安定性に優れるので好ましい。
(a−2)光酸発生剤は、電子吸引性基を置換基として有するアリール骨格を1つ以上有するトリアリールスルホニウム塩化合物であることがより好ましく、トリアリールスルホニウム塩構造を有し、かつ、アリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.46以上の重合開始剤であることが特に好ましい。
【0041】
トリアリールスルホニウム塩構造を有する化合物は、例えば、J. Amer. Chem. Soc. 第112巻(16)、1990年;pp.6004−6015、J. Org. Chem. 1988年;pp.5571−5573、WO02/081439A1パンフレット、あるいは欧州特許(EP)第1113005号明細書等に記載の方法により容易に合成することが可能である。
【0042】
−アリール骨格に結合する置換基−
(a−2)光酸発生剤は、電子吸引性基を置換基として有するアリール骨格を1つ以上有することが好ましい。ここで、電子吸引性基とは、ハメット値(Hammet置換基定数σ)が0より大きい置換基を意味する。本発明においては、高感度化の観点から、特定重合開始剤中のアリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.18以上であることが好ましく、0.46以上がより好ましく、0.60以上がさらに好ましい。
また、ハメット値は、トリアリールスルホニウム塩構造を有するカチオンの電子吸引性の程度を表すものであり、高感度化の観点からは特に上限値はないが、反応性と安定性との観点からは、0.46以上4.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.50以上、3.5以下であり、特に好ましくは0.60以上3.0以下の範囲である。
なお、本発明におけるハメット値は、稲本直樹 編、化学セミナー10ハメット則−構造と反応性−(1983年、丸善(株)発行)に記載の数値を用いている。
【0043】
アリール骨格に導入する電子吸引性基としては、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、エステル基、スルホキシド基、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
これらの置換基のハメット値を以下に示す。トリフルオロメチル基(−CF3、m:0.43、p:0.54)、ハロゲン原子〔例えば、−F(m:0.34、p:0.06)、−Cl(m:0.37、p:0.23)、−Br(m:0.39、p:0.23)、−I(m:0.35、p:0.18)〕、エステル基(例えば、−COCH3、o:0.37、p:0.45)、スルホキシド基(例えば、−SOCH3、m:0.52、p:0.45)、シアノ基(−CN、m:0.56、p:0.66)、アミド基(例えば、−NHCOCH3、m:0.21、p:0.00)、カルボキシ基(−COOH、m:0.37、p:0.45)、カルボニル基(−CHO、m:0.36、p:(043))等が挙げられる。かっこ内は、その置換基のアリール骨格における導入位置と、そのハメット値を表し、(m:0.50)とは、当該置換基がメタ位に導入された時のハメット値が0.50であることを示す。
これらの置換基の中でも、熱安定性向上、又は、重合性化合物への溶解性向上の観点から、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の非イオン性の置換基が好ましく、溶解性向上の観点からは、−F、−CF3、−Cl、−Brが好ましく、中でも、反応性の観点から−Clが好ましい。
【0044】
これらの置換基は、トリアリールスルホニウム塩構造の3つのアリール骨格のいずれか一つに導入されていてもよく、2以上のアリール骨格に導入されていてもよい。また、3つのアリール骨格のそれぞれに導入される置換基は、1つでも複数でもよい。本発明においては、これらのアリール骨格に導入された置換基のハメット値の総和が0.18以上が好ましく、0.46以上がより好ましい。導入される置換基の数は、任意である。例えば、トリアリールスルホニウム塩構造のアリール骨格のうち1ヶ所に特にハメット値の大きい(例えば、ハメット値が単独で0.46以上)置換基を1つだけ導入していてもよい。また、例えば、複数の置換基が導入されそれぞれのハメット値の合計が0.46以上ものを導入してもよい。
上記のように、置換基のハメット値は導入される位置によって異なるため、ハメット値の総和は、置換基の種類、導入位置、導入数により確定されることになる。
なお、ハメット側は、通常、m位、p位で表されるが、本発明においては、電子吸引性の指標として、o位での置換基効果はp位と同値として計算する。好ましい置換位置としては、合成上の観点からm位、p位が好ましく、p位が最も好ましい。
【0045】
本発明における(a−2)光酸発生剤としては、ハロゲン原子により3置換以上されているトリアリールスルホニウム塩化合物であること好ましく、各アリール骨格がハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基を置換基として有するスルホニウム塩化合物であることがより好ましく、各アリール骨格がハロゲン原子により置換されているスルホニウム塩化合物であることがさらに好ましく、クロロ基により3置換されているスルホニウム塩化合物であることが最も好ましい。
具体的には、3つのアリール骨格のそれぞれにハロゲン原子、最も好ましくは、−Clが導入されたトリアリールスルホニウム塩構造を有するものが好ましく、−Clがp位に置換されているものがより好ましい。
【0046】
(a−2)光酸発生剤のカウンターアニオンは安定性の面から、スルホン酸アニオン、ベンゾイルギ酸アニオン、PF6-、SbF6-、BF4-、ClO4-,カルボン酸アニオン、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、ボレートアニオン、ハロゲンアニオン、ポリマー型スルホン酸アニオン、ポリマー型カルボン酸アニオンが挙げられるが、反応性及び安定性の面から、スルホン酸アニオン又はそのポリマー体、ベンゾイルギ酸アニオン又はそのポリマー体が好ましく、最も好ましくは、スルホン酸アニオン又はそのポリマー体である。
【0047】
本発明に係る(a−2)光酸発生剤は、トリアリールスルホニウム塩構造を有し、そのアリール骨格に特定の条件で置換基が導入されていることが好ましく、低分子量化合物でもよく、また、ポリマー型アニオンに、その対カチオンとして複数のトリアリールスルホニウム塩構造を有するものであってもよい。
対アニオンの中でもB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、BF4-が好ましい。
以下に、本発明における(a−2)光酸発生剤の好ましい具体例〔例示化合物(A−1)〜(O−3)、(P−1)〜(P−17)、(Q−1)〜(U−24)〕を挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、例示化合物(P−1)〜(P−17)はポリマー型アニオンを有する化合物の例である。
【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
【化26】

【0069】
【化27】

【0070】
【化28】

【0071】
【化29】

【0072】
【化30】

【0073】
【化31】

【0074】
【化32】

【0075】
【化33】

【0076】
【化34】

【0077】
【化35】

【0078】
【化36】

【0079】
【化37】

【0080】
【化38】

【0081】
【化39】

【0082】
本発明に係る(a−2)光酸発生剤は、公知の方法により合成可能であり、特開2006−241435号公報に記載の方法を参照することができる。
【0083】
本発明のインク組成物において、(a−1)光酸発生剤及び(a−2)光酸発生剤は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、(a−1)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。また、(a−2)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1.0〜10重量%である。(a−1)光酸発生剤及び(a−2)光酸発生剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性及び溶解性に優れるので好ましい。
なお、(a−1)光酸発生剤及び/又は(a−2)光酸発生剤として、2種以上を併用する場合には、合計して上記の含有量とすることが好ましい。
【0084】
また、本発明のインク組成物における(a−1)光酸発生剤と(a−2)光酸発生剤との含有比(重量比、(a−1):(a−2))は、100:1〜1:100であることが好ましく、30:1〜1:50であることがより好ましく、10:1〜1:30であることがさらに好ましい。
【0085】
また、(a−2)光酸発生剤は、後述する(c)増感剤に対して、(a−2)光酸発生剤:(c)増感剤の重量比で200:1〜1:200の量で含まれることが好ましく、50:1〜1:50がより好ましく、20:1〜1:5がさらに好ましい。
(a−2)光酸発生剤と(c)増感剤との含有比が上記範囲内であると、硬化性及び溶解性に優れるインク組成物が得られるので好ましい。
【0086】
(b)重合性化合物
本発明のインク組成物は、(b)重合性化合物を含有する。
本発明のインク組成物は、(b)重合性化合物として少なくともカチオン重合性化合物を含有することが好ましく、必要に応じて、ラジカル重合性化合物を含有していてもよい。カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物が知られており、例えば、400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物として、特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に記載される重合性化合物が挙げられる。また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物が挙げられる。
【0087】
(b−1)カチオン重合性化合物
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、後述する光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0088】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、芳香族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0089】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0090】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0091】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0092】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0093】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0094】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0095】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0096】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用し得るオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0097】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0098】
【化40】

【0099】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0100】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0101】
【化41】

【0102】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0103】
【化42】

【0104】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)製)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0105】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0106】
【化43】

【0107】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるものと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0108】
【化44】

【0109】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0110】
また、本発明に好適に使用し得るオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0111】
【化45】

【0112】
式(5)において、Ra8は前記式におけるものと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0113】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用し得る。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0114】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、インク組成物の硬化性の観点から、カチオン重合性化合物としては、少なくともエポキシ化合物を含有することが好ましく、エポキシ化合物とオキセタン化合物とを併用することがさらに好ましい。また、インク組成物中のエポキシ化合物の総含有量(重量)は、オキセタン化合物の総含有量(重量)よりも多いことが好ましい。
【0115】
本発明に用いることができるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1つ以上有する化合物であれば、特に制限はなく、単官能エポキシ化合物であっても、多官能エポキシ化合物であってもよい。本発明のインク組成物は、エポキシ化合物として、多官能エポキシ化合物を少なくとも含有することが好ましく、2官能エポキシ化合物を少なくとも含有することがより好ましい。また、本発明に用いることができるエポキシ化合物としては、インクジェット記録用インク組成物の粘度と密着性の観点から、3官能以上のエポキシ化合物の重量が2官能エポキシ化合物及び単官能エポキシ化合物と同量か、それ以下の量で含まれることが好ましく、さらに3官能以上のエポキシ化合物の重量が2官能エポキシ化合物及び単官能エポキシ化合物よりも少ないほうがさらに好ましい。
また、本発明に用いることができるエポキシ化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0116】
本発明に用いることができるオキセタン化合物としては、オキセタニル基を1つ以上有する化合物であれば、特に制限はなく、単官能オキセタン化合物であっても、多官能オキセタン化合物であってもよい。
本発明のインク組成物は、オキセタン化合物として、多官能オキセタン化合物を少なくとも含有することが好ましく、2官能オキセタン化合物を少なくとも含有することがより好ましい。
また、本発明に用いることができるオキセタン化合物としては、インクジェット記録用インク組成物の粘度と粘着性の観点から、単官能オキセタン化合物及び2官能オキセタン化合物、又は、2官能オキセタン化合物を使用することが好ましく、2官能オキセタン化合物を使用することがより好ましい。
また、本発明に用いることができるオキセタン化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0117】
なお、エポキシ化合物及びオキセタン化合物に、さらにビニルエーテル化合物を併用することも好ましく、この場合、ビニルエーテル化合物の含有量は、カチオン重合性化合物全体の1〜80重量%であることが好ましく、3〜60重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることがさらに好ましい。
【0118】
インク組成物中のカチオン重合性化合物の含量は、組成物の全固形分に対し、10〜95重量%が好ましく適当であり、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%の範囲である。
【0119】
本発明に用いることのできる(b)重合性化合物の含量は、インク組成物の全固形分に対し、好ましくは1〜97重量%、より好ましくは30〜95重量%である。
【0120】
(c)増感剤
本発明のインク組成物は(c)増感剤を含有する。
本発明に係る(c)増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、かつ、300nm以上450nm以下の波長領域に吸収波長を有するものが好ましい。315〜450nmの波長領域に吸収波長を有することがより好ましく、315〜400nmに吸収波長を有することがさらに好ましい。
(c)増感剤は、315〜450nmのいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であることが好ましく、モル吸光係数が1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。なお、前記モル吸光係数の上限は特に限定されないが、100,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。
【0121】
(c)増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)などが挙げられる。
【0122】
本発明における増感剤としては、下記式(vi)〜(x)及び(xiv)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0123】
【化46】

【0124】
式(vi)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表す。L1は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51及びR52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0125】
式(vii)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立にアリール基を表し、L2による結合を介して連結している。L2は−O−又は−S−を表す。Wは式(vi)に示したものと同義である。
【0126】
式(viii)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。L3は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、それぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表す。
【0127】
式(ix)中、A3及びA4は、それぞれ独立に、−S−、−NR62−、又は−NR63−を表し、R62及びR63は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表す。L4及びL5は、それぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表す。R60及びR61は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R60とR61は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0128】
式(x)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表す。A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R67とR64、及びR65とR67は、それぞれ互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0129】
【化47】

【0130】
式(xiv)中、R68、及び、R69それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R70、及び、R71は、それぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表しnは0〜4の整数を表す。nが2以上のときR70、R71はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0131】
これらの中でも、増感剤が式(xiv)で表されるアントラセン誘導体であることが好ましい。増感剤としてアントラセン誘導体を使用することにより、硬化性に優れるインク組成物が得られるので好ましい。
【0132】
式(vi)〜(x)及び(xiv)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す(C−1)〜(C−28)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化48】

【0134】
【化49】

【0135】
【化50】

【0136】
【化51】

【0137】
本発明のインク組成物における(c)増感剤の含有量は、インクの着色性の観点から、インク組成物の全固形分に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
(c)増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、(c)増感剤と前記(a−2)光酸発生剤とのインク組成物中における含有比としては、重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、重量比で、(a−2)/(c)=100〜0.5が好ましく、(a−2)/(c)=50〜1がより好ましく、(a−2)/(c)=10〜1.5がさらに好ましい。
【0138】
本発明のインク組成物には、前記(a)乃至(c)の各必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
【0139】
(d)着色剤
本発明に用いることのできる(d)着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しないことが好ましい。これは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
【0140】
(d−1)顔料
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状有機化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの等)も挙げられる。なお、前記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年、朝倉書店発行)、橋本勲著「有機顔料ハンドブック」(2006年、カラーオフィス発行)、W. Herbst, K. Hunger編「Industrial Organic Pigments」(1992年、Wiley−VHC発行)、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載のものが挙げられる。
【0141】
前記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
前記黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、10、65、73、74、75、97、98、111、116、130、167、205等のモノアゾ顔料、61、62、100、168、169、183、191、206、209、212等のモノアゾレーキ顔料、12、13、14、16、17、55、63、77、81、83、106、124、126、127、152、155、170、172、174、176、214、219等のジスアゾ顔料、24、99、108、193、199等のアントラキノン顔料、60等のモノアゾピラゾロン顔料、93、95、128、166等の縮合アゾ顔料、109、110、139、173、185等のイソインドリン顔料、120、151、154、175、180、181、194等のベンズイミダゾロン顔料、117、129、150、153等のアゾメチン金属錯体顔料、138等のキノフタロン顔料、213等のキノキサリン顔料が好ましい。
【0142】
前記赤色又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド 193等のモノアゾレーキ顔料、38等のジスアゾ顔料、2、5、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、22、23、31、32、112、114、146、147、150、170、184、187、188、210、213、238、245、253、256、258、266、268、269等のナフトールAS顔料、3、4、6等のβ−ナフトール顔料、49、53、68等β−ナフトールレーキ顔料、237、239、247等のナフトールASレーキ顔料、41等のピラゾロン顔料、48、52、57、58、63、64:1、200等のBONAレーキ顔料、81:1、169、172等のキサンテンレーキ顔料、88、181、279等のチオインジゴ顔料、123、149、178、179、190、224等のペリレン顔料、144、166、214、220、221、242、262等の縮合アゾ顔料、168、177、182、226、263等のアントラキノン顔料、83等のアントラキノンレーキ顔料、171、175、176、185、208等のベンズイミダゾロン顔料、122、202(C.I.ピグメントバイオレット 19との混合物を含む)、207、209等のキナクリドン顔料、254、255、264、270、272等のジケトピロロピロール顔料、257、271等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
【0143】
前記青色又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー 25、26等のナフトールAS顔料、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、75、79等のフタロシアニン顔料、1、24:1、56、61、62等の染付けレーキ顔料、60等のアントラキノン系顔料、63等のインジゴ顔料、80等のジオキサジン顔料が好ましい。
前記緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン 1、4等の染付けレーキ顔料、7、36等のフタロシアニン顔料、8等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
前記橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ 1等のモノアゾ顔料、2、3、5等のβ−ナフトール顔料、4、24、38、74等のナフトールAS顔料、13、34等のピラゾロン顔料、36、60、62、64、72等のベンズイミダゾロン顔料、15、16等のジスアゾ顔料、17、46等のβ−ナフトールレーキ顔料、19等のナフタレンスルホン酸レーキ顔料、43等のペリノン顔料、48、49等のキナクリドン顔料、51等のアントラキノン系顔料、61等のイソインドリノン顔料、66等のイソインドリン系顔料、68等のアゾメチン金属錯体顔料、71、73、81等のジケトピロロピロール顔料が好ましい。
【0144】
前記褐色顔料としては、C.I.ピグメントブラウン 5等のBONAレーキ顔料、23、41、42等の縮合アゾ顔料、25、32等のベンズイミダゾロン顔料が好ましい。
前記紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット 1、2、3、27等の染付けレーキ顔料、13、17、25、50等のナフトールAS顔料、5:1等のアントラキノンレーキ顔料、19等のキナクリドン顔料、23、37等のジオキサジン顔料、29等のペリレン顔料、32等のベンズイミダゾロン顔料、38等のチオインジゴ顔料が好ましい。
前記黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック 1等のインダジン顔料、7であるカーボンブラック、10であるグラファイト、11であるマグネタイト、20等のアントラキノン顔料、31、32等のペリレン顔料が好ましい。
前記白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 4である酸化亜鉛、6である酸化チタン、7である硫化亜鉛、12である酸化ジルコニウム(ジルコニウムホワイト)、18である炭酸カルシウム、19である酸化アルミニウム・酸化ケイ素(カオリンクレー)、21又は22である硫酸バリウム、23である水酸化アルミニウム(アルミナホワイト)、27である酸化ケイ素、28であるケイ酸カルシウムが好ましい。
白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
【0145】
顔料粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。平均粒径が上記の範囲であると、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化速度を維持することができる。
【0146】
(d−2)油溶性染料
以下に、本発明に用いることのできる油溶性染料について説明する。
本発明に用いることのできる油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、油溶性染料とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも油溶性色素が好ましい。
【0147】
本発明においては、油溶性染料は1種単独で用いてもよく、また、数種類を混合して用いてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の水溶性染料、分散染料、顔料等の着色材が含有されていてもよい。
【0148】
本発明に用いることのできる前記油溶性染料のうち、イエロー染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料;等が挙げられ、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0149】
本発明に用いることのできる前記油溶性染料のうち、マゼンタ染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料;例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料;等を挙げることができる。
【0150】
本発明に用いることのできる前記油溶性染料のうち、シアン染料としては、任意のものを使用することができる。例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料;等を挙げることができる。
【0151】
前記の各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合の対カチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0152】
以下に限定されるものではないが、好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック 3,7,27,29及び34;C.I.ソルベント・イエロー 14,16,19,29,30,56,82,93及び162;C.I.ソルベント・レッド 1,3,8,18,24,27,43,49,51,72,73,109,122,132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー 2,11,25,35,38,67及び70;C.I.ソルベント・グリーン 3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ 2;等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB 、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 308、Vali Fast Blue 2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、NeopenYellow 075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等である。
【0153】
また、本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。その好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99、100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0154】
特に好ましい油溶性染料としては、下記式(1)又は(2)で表されるアゾ又はアゾメチン染料を挙げることができる。下記式(2)で表される染料は、写真材料において酸化によりカプラー及び現像主薬から生成する染料として知られている。
【0155】
【化52】

【0156】
前記式(1)及び(2)において、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
【0157】
前記式(1)及び(2)において、特に、R2は上記置換基のうち、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基又はスルホンアミド基であることが好ましい。
【0158】
なお、本発明において、脂肪族基はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基及び置換アラルキル基を意味する。前記脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることがさらに好ましい。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分はフェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例には、R1〜R4の説明で挙げた置換基を挙げることができる。置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例は、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0159】
また、本発明において、芳香族基はアリール基及び置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例には、R1〜R4の説明で挙げた置換基を挙げることができる。
【0160】
前記式(1)及び(2)において、Aは−NR56又はヒドロキシ基を表し、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。Aは−NR56であることが好ましい。R5とR6とは互いに結合して環を形成していてもよい。R5及びR6はそれぞれ、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基であるのがより好ましく、水素原子、炭素原子数が1〜18のアルキル基又は炭素原子数が1〜18の置換アルキル基であることが最も好ましい。
【0161】
前記式(1)及び(2)において、B1は=C(R3)−又は=N−を表し、B2は−C(R4)=又は−N=を表す。B1及びB2が同時に−N=にならない場合が好ましく、B1が=C(R3)−で、かつ、B2が−C(R4)=となる場合がさらに好ましい。R1とR5、R3とR6及びR1とR2のいずれかが、互いに結合して芳香族環又は複素環を形成していてもよい。
【0162】
前記式(1)において、Yは不飽和複素環基を表す。Yとしては、5員又は6員環の不飽和複素環が好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
前記不飽和複素環としては、例えば、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ピリミジン環、ピリジン環、及びキノリン環等が好ましい。また、前記不飽和複素環基は、前記R1〜R4で挙げた置換基を有していてもよい。
【0163】
前記式(2)において、Xはカラー写真カプラーの残基を表す。前記カラー写真カプラーの残基としては以下に挙げるものが好ましい。
イエローカプラー:米国特許3,933,501号、同4,022,620号、同4,326,024号、同4,401,752号、同4,248,961号、特公昭58−10739号、英国特許1,425,020号、同1,476,760号、米国特許3,973,968号、同4,314,023号、同4,511,649号、欧州特許249,473A号、同502,424A号の式(I),(II)で表されるカプラー、同513,496A号の式(1),(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28)、同568,037A号のクレーム1の式(I)で表されるカプラー、米国特許5,066,576号のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー、特開平4−274425号公報の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー、欧州特許498,381A1号の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35)、同447,969A1号の4頁の式(Y)で表されるカプラー(特に、Y−1(17頁),Y−54(41頁))、米国特許4,476,219号のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17、19(カラム17)、II−24(カラム19))。
【0164】
マゼンタカプラー:米国特許4,310,619号、同4,351,897号、欧州特許73,636号、米国特許3,061,432号、同3,725,067号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24220(1984年6月)、同No.24230(1984年6月)、特開昭60−33552号、同60−43659号、同61−72238号、同60−35730号、同55−118034号、同60−185951号、米国特許4,500,630号、同4,540,654号、同4,556,630号、国際公開WO88/04795号、特開平3−39737号(L−57(11頁右下)、L−68(12頁右下)、L−77(13頁右下))、欧州特許456,257号の〔A−4〕−63(134頁),〔A−4〕−73,−75(139頁)、同486,965号のM−4,−6(26頁),M−7(27頁)、同571,959A号のM−45(19頁)、特開平5−204106号公報のM−1(6頁)、同4−362631号公報の段落0237のM−22、米国特許3,061,432号、同3,725,067号。
【0165】
シアンカプラー:米国特許4,052,212号、同4,146,396号、同4,228,233号、同4,296,200号、欧州特許73,636号、特開平4−204843号公報のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号公報の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー。
【0166】
その他、特開昭62−215272号公報(91頁)、特開平2−33144号公報(3頁,30頁)、EP 355,660A(4頁,5頁,45頁,47頁)記載のカプラーも有用である。
【0167】
前記式(1)で表される油溶性染料のうち、マゼンタ染料としては下記式(3)で表される染料が特に好ましく用いられる。
【0168】
【化53】

【0169】
前記式(3)において、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z1はσp値が0.30以上1.0以下の電子吸引性基であるのが好ましい。好ましい具体的な置換基については後述する電子吸引性置換基を挙げることができるが、中でも、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜12のカルバモイル基及び炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
【0170】
前記式(3)において、Z2は水素原子、脂肪族基又は芳香族基を表す。
前記式(3)において、R1〜R6は、前記式(1)の各々と同義である。
【0171】
前記式(3)において、Qは水素原子、脂肪族基、芳香族基又は複素環基を表す。中でも、Qは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。その中でも特に芳香族基又は複素環基が好ましい。前記5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子又は炭素原子が挙げられる。そのような環構造の具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、オキサン環、スルホラン環及びチアン環等が挙げられ、これらの環がさらに置換基を有する場合、該置換基としては、前記式(1)の置換基R1〜R4で例示した基が挙げられる。
【0172】
なお、前記式(3)で表される化合物の好ましい構造については、特開2001−335714号明細書に記載されている。
【0173】
前記式(2)で表される染料のうち、マゼンタ染料としては下記式(4)で表される染料が特に好ましく用いられる。
【0174】
【化54】

【0175】
前記式(4)において、Gは水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、ウレイド基、ウレタン基、アシル基、アミド基又はスルホンアミド基を表す。
【0176】
前記式(4)において、R1、R2、A、B1及びB2は、前記式(2)の各々と同義であり、それらの好ましい範囲も同じである。
【0177】
前記式(4)において、Lは脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、ウレイド基、ウレタン基、アシル基、アミド基及びスルホンアミド基の少なくとも1つで置換されていてもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する原子群を表し、この複素環はさらに別の環と縮合環を形成していてもよい。
【0178】
前記式(4)で表される化合物において、Aは−NR56が好ましく、Lは5員の含窒素複素環を形成するのが好ましく、5員の含窒素複素環の例にはイミダゾール環、トリアゾール環及びテロラゾール環が含まれる。
【0179】
以下に、前記式(1)及び前記式(2)で表される染料のうち、マゼンタ染料の例示化合物(M−0〜6、a−21〜25)を示すが、これらは、本発明を詳しく説明するためのものであって、これらにより本発明は限定されるものではない。
また、本発明において、M−0、M−4、M−6、a−21を好ましく用いることができ、M4、M6、a−21を特に好ましく用いることができる。
【0180】
【化55】

【0181】
【化56】

【0182】
【化57】

【0183】
【表1】

【0184】
その他、本発明に使用可能な着色剤の化合物例としては、特開2001−240763号公報、同2001−181549号公報、特開2001−335714号公報に記載されているが、これらに限定されるものではない。
【0185】
前記式(3)で表される化合物は、例えば特開2001−335714号公報、特開昭55−161856号公報に記載された方法を参考にして合成することができる。また、前記式(4)で表される化合物は、例えば特開平4−126772号及び特公平7−94180号等の各公報、並びに特開2001−240763号公報に記載された方法を参考にして合成することができる。
【0186】
前記式(2)で表される染料のうち、シアン染料としては、下記式(5)で表されるピロロトリアゾールアゾメチン染料が特に好ましく用いられる。
【0187】
【化58】

【0188】
前記式(5)において、A、R1、R2、B1及びB2は、前記式(2)の各々と同義であり、それらの好ましい範囲も同じである。
【0189】
前記式(5)において、Z3及びZ4はそれぞれ独立に、前記式(4)におけるGと同義である。また、Z3とZ4は互いに結合して、環構造を形成してもよい。Z3がハメット置換基定数σp値0.30以上の電子吸引性基であるものは、吸収がシャープであり、より好ましい。さらに、Z3はハメット置換基定数σp値0.45以上の電子吸引性基であるのがより好ましく、ハメット置換基定数σp値0.60以上の電子吸引性基が最も好ましい。そして、Z3及びZ4のハメット置換基定数σp値の和が0.70以上のものはシアン色として優れた色相を呈し、さらに好ましい。
【0190】
前記式(5)において、Mは前記式(5)中の5員環に縮合した1,2,4−トリアゾール環を形成する原子団であって、5員環との縮合部の2つの原子B3及びB4は、いずれか一方が窒素原子で、他方が炭素原子である。
【0191】
なお、前記式(5)で表される化合物は、シアン染料として用いるのが好ましいが、置換基の変更でマゼンタ染料として用いることもできる。
【0192】
前記式(1)〜(5)の中には、ベンゼン誘導体ではないものも含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくハメット置換基定数σp値を使用する。本発明において、σp値をこのような意味で使用する。
【0193】
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)を挙げることができる。
【0194】
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、及び複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル)を挙げることができる。σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0195】
また、本発明において、下記式(A−I)で表される油溶性染料を好ましく用いることができる。
【0196】
【化59】

【0197】
式(A−I)中:X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、−CONR12、−CO21及びスルホ基から選択される基を表す。ここで、Zは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。ただしR1、R2の両方が水素原子であることはない。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表す。a1〜a4、b1〜b4は、X1〜X4、Y1〜Y4の数を表し、それぞれ独立に、0〜4の整数である。ただし、a1〜a4の総和は2以上である。
【0198】
前記式(A−I)で表される油溶性染料のうち、下記式(A−II)で表される油溶性染料が特に好ましく使用できる。
【0199】
【化60】

【0200】
式(A−II)中:X11〜X14、Y11〜Y18及びMは、式(A−I)の中のX1〜X4、Y1〜Y4、Mとそれぞれ同義である。a11〜a14は、それぞれ独立に、1又は2の整数を表す。
【0201】
前記式(A−II)の具体例として、例示化合物(AII−17)〜(AII−23)を示すが、これは、本発明を詳しく説明するためのものであって、これらにより本発明は限定されるものではない。
【0202】
【化61】

【0203】
本発明では、酸化電位が1.0V(SCE)よりも貴である油溶性染料を用いることが好ましい。酸化電位は貴であるほど好ましく、酸化電位が1.1V(SCE)よりも貴であるものがより好ましく、1.2V(SCE)より貴であるものが最も好ましい。
【0204】
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP. Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年, Interscience Publishers社刊)やA. J. Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0205】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-4〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
なお、上記の測定溶媒とフタロシアニン化合物試料の濃度範囲では、非会合状態の酸化電位が測定される。
【0206】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表し、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。
酸化電位が低い染料を使用すると、染料による重合阻害が大きく、硬化性が低下する。酸化電位が貴である染料を使用した場合には、重合阻害がほとんど無い。
【0207】
本発明に用いることができる着色剤は、本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に添加された後、適度に当該インク内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
また、着色剤の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることであり、高分子分散剤としては、例えば、Zeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。本発明において、これらの分散剤及び分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。
着色剤は、本発明のインク組成物に直接添加してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加してもよい。本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化並びに残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物に添加することが好ましい。さらに使用する重合性化合物としては、最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0208】
本発明に用いることができる着色剤は、インク組成物中固形分換算で1〜10重量%用いることが好ましく、2〜8重量%がより好ましい。
本発明において、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは、0.015〜0.3μmである。また、着色剤の最大粒径は、好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.3〜3μmである。このような最大粒径となるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0209】
(共増感剤)
本発明のインク組成物には、感度の一層向上、あるいは、酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
【0210】
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0211】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0212】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.01〜10重量%程度である。
【0213】
(重合禁止剤)
本発明のインク組成物には、保存性を高める観点から、重合禁止剤を添加することができる。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録に適用した場合、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが望ましいことから、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、特に制限はなく、公知の重合禁止剤や、塩基性化合物等を用いることができる。
このような重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
重合禁止剤は、本発明のインク組成物の全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
【0214】
(紫外線吸収剤)
本発明のインク組成物には、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を添加することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.01〜10重量%程度である。
【0215】
(酸化防止剤)
本発明のインク組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.01〜10重量%程度である。
【0216】
(褪色防止剤)
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.01〜10重量%程度である。
【0217】
(導電性塩類)
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0218】
(溶剤)
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0〜5重量%が好ましく、より好ましくは0〜3重量%の範囲である。
【0219】
(高分子化合物)
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0220】
(界面活性剤)
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0221】
この他にも、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0222】
(インク物性)
本発明においては、吐出性を考慮し、インク組成物の25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・sであることがより好ましく、7〜35mPa・sであることがさらに好ましい。
また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク組成物の液滴着弾時におけるインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0223】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
【0224】
(2)インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用として好適に使用される。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0225】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a)及び(b)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインク組成物を使用して得られた印刷物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
前記吐出は、圧電素子の変形によりインク組成物を吐出するインクジェットヘッドを用いて行われることが好ましい。
また、前記吐出は、1〜10plの液滴量、かつ1,200×1,200〜4,800×4,800dpiで行われることが好ましい。
【0226】
本発明のインクジェット記録方法における(a)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0227】
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成することができる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは1〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは300×300〜4,800×4,800dpi、より好ましくは1,200×1,200〜4,800×4,800dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インクジェットヘッドとして、圧電素子の変形によりインク組成物を吐出するインクジェットヘッド、いわゆる、ピエゾ型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
【0228】
上述したように、本発明のインク組成物のように放射線硬化型インク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、又は、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0229】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0230】
次に、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、酸やカチオンなどの開始種を発生し、その開始種の機能にカチオン重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0231】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、315〜400nmであることがさらに好ましい。
【0232】
また、本発明のインク組成物の、カチオン重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0233】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。本発明のインク組成物は、特に、活性放射線源として超高圧水銀灯を使用した場合に優れた硬化性を示す。
また、現在環境保護の観点から水銀フリー化が望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
本発明において、また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることも可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0234】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.05〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0235】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0236】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【実施例】
【0237】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0238】
本実施例で使用した化合物を以下に記載する。
<光酸発生剤>
・SP−150((株)ADEKA製、315nmにおけるモル吸光係数:8,800)
・esacure1187(Lamberti社製、315nmにおけるモル吸光係数:4,000)
・CPI−100P(サンアプロ(株)製、315nmにおけるモル吸光係数:1,300)
・下記光酸発生剤A(315〜400nmにおけるモル吸光係数の最大値:0)
・IR−250(チバ・ジャパン(株)製、IRGACURE 250、315nmにおけるモル吸光係数:400)
【0239】
【化62】

【0240】
【化63】

【0241】
【化64】

【0242】
【化65】

【0243】
<重合性化合物>
・OXT−221(東亞合成(株)製、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン)
・セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製、1,2:8,9ジエポキシリモネン)
【0244】
【化66】

【0245】
<増感剤>
・DBA(川崎化成(株)製、ジブトキシアントラセン、350nmにおけるモル吸光係数:3,000)
・ITX(シェル化学(株)製、FIRSTCURE ITX(イソプロピルチオキサントン(2及び4−アイソマー混合体)、350nmにおけるモル吸光係数:2,300)
【0246】
<顔料>
・シアン顔料A:C.I.Pigment Blue 15:3(PB15:3、IRGALITE BLUE GLO;チバ・ジャパン(株)製)
・マゼンタ顔料A:キナクリドン(CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・ジャパン(株)製)
・イエロー顔料A:C.I.Pigment Yellow 185(PY185、Palitol Yellow D1155;BASF社製)
・ブラック顔料A:カーボンブラック(SPECIAL BLACK 250;デグサ社製)
・ホワイト顔料A:二酸化チタン(CR60−2;石原産業(株)製)
【0247】
<分散剤>
・高分子分散剤A:BYK168(ビックケミー社製)
・高分子分散剤B:ソルスパース36000(ノベオン社製)
・分散助剤A:ソルスパース22000(ノベオン社製)
【0248】
(顔料ミルベースの調製)
<シアンミルベースの調製>
上記シアン顔料 25重量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 60重量部
高分子分散剤A:BYK168 15重量部
<マゼンタミルベースの調製>
上記マゼンタ顔料 25重量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 60重量部
高分子分散剤A:BYK168 15重量部
<ブラックミルベースの調製>
上記ブラック顔料 25重量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 60重量部
高分子分散剤A:BYK168 15重量部
<イエローミルベースの調製>
上記イエロー顔料 25重量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 58.5重量部
高分子分散剤A:BYK168 15重量部
分散助剤A:ソルスパース22000(ノベオン社製) 1.5重量部
<ホワイトミルベースの調製>
上記ホワイト顔料 60重量部
OXT−221(オキセタン化合物、東亞合成(株)製) 35重量部
高分子分散剤B:ソルスパース36000(ノベオン社製) 5重量部
【0249】
以上の成分を撹拌し、各色ミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを使用し、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0250】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
下記表1に示す組成で調製した粗製の各色インクを、それぞれ絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、各色インク組成物とした。
【0251】
上記のようにして調製したインク組成物を使用して、以下の評価を行った。
(インクジェット記録方法)
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録実験装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に45℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。紫外線ランプには、一般的にプロジェクター用途等に使用される超高圧水銀ランプ:SHP270W(フェニックス電機(株)製)を用いた。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。被記録媒体として、エムロン カレンダーシート(白)(森野化工(株)製)を用いた。
【0252】
<硬化感度(硬化性)評価>
上記インクジェット記録方法に従い、平均膜厚が12μmのベタ画像の描画を行い、紫外線照射後の画像面において、触診により、画像のべとつきの程度を評価した。また、硬化感度は以下の基準で評価した。
−評価基準−
〇:画像にべとつきなし。
△:画像がややべとついている。
×:未硬化のインクが手に転写するほど固まっていない。
【0253】
<耐擦過性評価>
軟質塩化ビニルシートを消しゴム(ホシヤ製、K−50 Plastic Eraser Keep)で擦り、消しゴムへの転写を評価した。評価基準は下記のとおりである。
−評価基準−
○:転写が無い
△:一部転写あり
×:転写がある
【0254】
<保存安定性評価>
調製したインク組成物の25℃における粘度を測定後、60℃にて1ヶ月保存し、保存後の25℃における粘度を測定した。保存安定性の評価基準は下記のとおりである。
−評価基準−
○:保存前後における粘度変化が2倍未満である。
×:保存前後における粘度変化が2倍以上である。
評価結果を以下の表に示す。
【0255】
【表2】

【0256】
なお、光酸発生剤としてCPI−100Pを使用した場合には、反応時にベンゼンが発生した。該ベンゼンは非硬化成分であり、また、発がん性が報告されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光酸発生剤と、
(b)重合性化合物と、
(c)増感剤と、を含有し、
前記(a)光酸発生剤として、
(a−1)315nm以上400nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が100以上であり、アリール骨格の全てに置換基を有するトリアリールスルホニウム塩化合物と、
(a−2)315nm以上400nm以下の波長におけるモル吸光係数が100未満である光酸発生剤と、を含有することを特徴とする
インク組成物。
【請求項2】
前記(a−2)光酸発生剤がトリアリールスルホニウム塩化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記(a−2)光酸発生剤が電子吸引性基を置換基として有するアリール骨格を1つ以上有するトリアリールスルホニウム塩化合物であり、アリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.46以上である、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記(c)増感剤が、315nm以上450nm以下のいずれかの波長におけるモル吸光係数が1,000以上である、請求項1〜3いずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項5】
前記(c)増感剤がアントラセン誘導体である、請求項1〜4いずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項6】
前記(b)重合性化合物がエポキシ化合物を含有し、かつ、前記(b)重合性化合物が含有するエポキシ化合物の総量が、前記(b)重合性化合物が含有するオキセタン化合物の総量よりも多い、請求項1〜5いずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項7】
(a)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び、
(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、
を含み、
前記インク組成物が請求項1〜6いずれか1つに記載のインク組成物であることを特徴とする
インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−74197(P2011−74197A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226668(P2009−226668)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】