説明

インク組成物

【課題】 金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、インクの低粘度化、印字均一性、定着性の全てを満足できるインク組成物を提供する。
【解決手段】 金属箔片と定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有する。該金属箔片は、平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下、粒度分布における最大粒子径が12μm以下であることが好ましい。また、該金属箔片が、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属または金属化合物層とが順次積層された構造からなる顔料原体の該金属または金属化合物層と該剥離用樹脂層の界面を境界として該シート状基材より剥離し粉砕したものであることが好ましい。該金属層は真空蒸着法で作製されたものであることが好ましい。また、該剥離および粉砕が、該顔料原体の液中での超音波処理によりなされたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物に関する。より詳しくは、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、インクの低粘度化、印字均一性、定着性の全てを満足できるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上で金属光沢を再現する為には、アルミニウム、金、銀、黄銅等の金属または合金からなる顔料、パール顔料からなる印刷インキや接着剤や熱融着による転写箔が用いられてきた。
また、近年のインクジェット印刷技術の発達によって、インクジェット印刷でも金属光沢を有する印刷物を得たいと言う要望が高まっている。
例えば、特許文献1には、インクジェット用インクによって得られる画像に金属光沢光輝性装飾等を付与するため金属蒸着層と樹脂層を有する積層体の破片を含有するインクジェットインクが、特許文献2〜5には、種々のメタリック顔料を用いたインクジェットインクが、それぞれ開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−343436号公報
【特許文献2】特開2004−307616号公報
【特許文献3】特開2004−307617号公報
【特許文献4】特開2005−68251号公報
【特許文献5】特開2005−68252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のインクジェットインクでは、インクの低粘度化、印字均一性、定着性の全てを満足できなかった。
そこで、本発明の目的は前記従来の技術の問題点を解消し、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、インクの低粘度化、印字均一性、定着性の全てを満足できるインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、インク組成物中に含有させる定着樹脂としてセルロースアセテートブチレート(以下、CABとも称する)を用いたことにより、インクジェット印刷に適するように粘度を低く抑え、且つ記録媒体への定着性が良好であることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記構成により達成される。
(1)金属箔片と、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有するインク組成物。
(2)前記金属箔片が、平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下、粒度分布における最大粒子径が12μm以下である前記(1)のインク組成物。
(3)前記金属箔片が、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属または金属化合物層とが順次積層された構造からなる顔料原体の該金属または金属化合物層と該剥離用樹脂層の界面を境界として該シート状基材より剥離し粉砕したものである前記(1)または(2)のインク組成物。
(4)前記金属層が真空蒸着法で作製されたものである前記(3)のインク組成物。
(5)前記剥離および粉砕が、前記顔料原体の液中での超音波処理によりなされた前記(3)のインク組成物。
(6)定着樹脂としてさらにポリビニルブチラールを含有する前記(1)〜(5)のいずれかのインク組成物。
(7)20℃での粘度が8mPa・S以下である前記(1)〜(6)のいずれかのインク組成物。
【0007】
本発明のインク組成物は、金属箔片と、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有することにより、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、かつ、インクの低粘度化、印字均一性、定着性の全てを満足することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
本発明のインク組成物は、金属箔片と、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有するものである。
本発明のインク組成物に用いられる金属箔片(以下、メタリック顔料とも称する)のサイズとしては、特に限定されないが、平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下、粒度分布における最大粒子径が12μm以下であることが好ましい。
金属箔片が、上記の平均粒径および粒度分布に関与する因子を有することにより、金属光沢を有する印刷物の作成が可能であり、ノズル径が30μm以下のインクジェットノズルを用いたプリンタでも安定な印刷が可能となる。
なお、金属光沢を得るためには、従来型のアルミニウム顔料では10μm以上の平均粒子径が必要である。
【0009】
また、本発明のインク組成物に用いられる金属箔片は、粒度分布における最大粒子径が10μm以下であることが好ましい。特に、直径20μmのインクジェットノズルを用いる場合には、粒度分布における最大粒子径を10μm以下にする必要がある。また、直径20μmのインクジェットノズルを用いて安定な印字を行う場合には、粒度分布の平均粒子径を4.0μm以下にする必要がある。
【0010】
また、本発明のインク組成物に用いられる金属箔片としては、限定されないが、例えば、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造からなる複合化顔料原体の前記金属又は金属化合物層と前記剥離用樹脂層の界面を境界として前記シート状基材より剥離し粉砕したものが挙げられる。
【0011】
該金属箔片を製造するための複合化顔料原体の金属又は金属化合物層に用いられる金属又は金属化合物は、金属光沢を有する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等が使用され、これらの単体金属、金属化合物又はこれらの合金およびそれら混合物の少なくとも一種が使用される。
前記金属又は金属化合物層は、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法による形成が好ましい。これらの金属又は金属化合物層の厚さは、特に限定されないが、30〜100nmの範囲が好ましい。30nm未満では反射性、光輝性に劣り、金属顔料としての性能が低くなり、100nmを超えると見かけ比重が増加し、メタリック顔料の分散安定性が低下する。金属又は金属化合物層の不必要な増大は、粒子の重量増加を招くだけであり、これより厚い膜厚であっても、反射性、光輝性はあまり変化しない。
【0012】
該メタリック顔料を製造するための複合化顔料原体における剥離用樹脂層は、前記金属又は金属化合物層のアンダーコート層であるが、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体又は変性ナイロン樹脂が好ましい。
上記樹脂の一種または二種以上の混合物の溶液を塗布し、乾燥等を施して層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
【0013】
剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等により形成される。塗布・乾燥後、必要であれば、カレンダー処理により、表面の平滑化を行う。
剥離用樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層との界面で剥離し易いものとなってしまう。
【0014】
該メタリック顔料を製造するための複合化顔料原体におけるシート状基材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフイルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、トリアセテートフイルム、ポリイミドフイルム等の離型性フイルムが挙げられる。
好ましいシート状基材としては、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である。
これらのシート状基材の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、工程等で取り扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
【0015】
また、前記金属又は金属化合物層は、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に限定されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。
上記シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜形成する方法等が挙げられる。
【0016】
保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフイルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、トリアセテートフイルム、ポリイミドフイルム等が挙げられる。
上記樹脂一種または二種以上の混合物の水溶液を塗布し、乾燥等を施した層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
上記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、上記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0017】
上記保護層の厚さは、特に限定されないが、50〜150nmの範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなり過ぎるため粉砕・分散が困難となり、また金属又は金属化合物層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0018】
また、前記「保護層」と「金属又は金属化合物層」との間に色材層を有していてもよい。
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本発明に使用するメタリック顔料の金属光沢、光輝性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に限定されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでも良い。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。 この場合、色材層に用いられる“顔料”とは一般的な顔料化学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味し、本発明の“複合化顔料”等の、積層構造に加工されたものとは異なるものである。
【0019】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等を使用することができる。
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であってもインク組成物中にて不溶であればいずれも使用できる。
【0020】
ブラック顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、三菱化学製の#2300、#900、HCF88、#33、#40、#45、#52、MA7、MA8、MA100、#2200B等、コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等、キャボット社製のRegal 400R、同330R、同660R、Mogul L、同700、Monarch 800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等、デグッサ社製のColor Black FW1、同FW2V、同FW18、同FW200、Color Black S150,同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同140U、Specisal Black 6、同5、同4A、同4等を挙げることができ、これらの1種又は2種の混合物として用いてもよい。
【0021】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128及び138からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
マゼンタ及びライトマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド、5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、15:1、112、122、123、168、184、202、209及びC.I.ピグメントヴァイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I,ピグメントレッド122、202、209及びC.I.ピグメントヴァイオレット19からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0022】
シアン及びライトシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60及びC.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントブルー15:3、15:4及び60からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
ホワイトインクに使用される顔料として、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、白土、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、白色中空樹脂エマルジョン等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
また、各色の顔料はその色調を調整する為に、互いに混合して用いる事も可能である。例えば、赤みのブラックの色調を青みに変える目的で、ピグメントブラック7とピグメントブルー15:3を混合する事も可能である。
【0023】
本実施形態によれば、本実施形態に利用される顔料は、その平均粒径が10〜500nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜300nm程度のものである。また、本発明に利用される顔料の配合量は、濃淡インク組成物等のインク組成物の種類に応じて適宜決定されてよいが、インク組成物中、1.5〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0024】
この色材層の形成方法としては、特に限定されないが、コーティングにより形成することが好ましい。
また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体等が好ましい。この場合、色材層は、顔料と色材分散用樹脂と必要に応じてその他の添加剤等を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作成されることが好ましい。
なお、該メタリック顔料を製造するための複合化顔料原体の製造において、上記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
【0025】
該メタリック顔料を製造するための複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数の金属又は金属化合物層からなる積層構造の全体の厚み、即ち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、金属又は金属化合物層−剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層・・・剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も、光輝性に優れており好ましいものである。
また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
該メタリック顔料は、前記複合化顔料原体の金属又は金属化合物層を、剥離用樹脂層を境界として前記シート状基材より剥離し、粉砕し微細化して得ることができる。
剥離処理法としては、特に限定されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法、また液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い、剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
上記のようにして得られるメタリック顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、溶剤中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また該メタリック顔料を用いたインク組成物においては、前記剥離用樹脂層由来の樹脂は紙等の記録媒体に対する接着性を付与する機能も担う。
【0027】
本発明のインク組成物は、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレート(CAB)を含有するものである。本発明のインク組成物におけるCABの含有量としては、特に限定されないが、0.1〜25質量%が好ましく、より好ましくは
0.5〜10質量%である。
また、本発明のインク組成物は、さらに、CAB以外の定着樹脂(バインダー樹脂とも称する)を含んでいても良い。
CAB以外のバインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂、ポリビニルブチラール等を用いることができ、その中でもポリビニルブチラールが好ましい。
【0028】
本発明のインク組成物は、上記金属箔片と定着樹脂とを、適切な液媒に分散・含有させたものである。
本発明のインク組成物に用いられる液媒は、水系のものであっても有機系のものであってもよい。
【0029】
有機系の液媒としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はフッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチル等)、又はエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)等を用いることができる。
その他、好ましい有機溶媒として、国際公開第2002/055619号パンフレットに記載されているような、常温常圧下で液体のジエチレングリコール化合物と常温常圧下で液体のジプロピレングリコール化合物との混合物等を挙げることができる。
【0030】
有機系液媒を用いる場合は、他に、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン誘導体を含むことができる。前記のポリオキシエチレン誘導体としてアセチレングリコール系界面活性剤を用いることができる。その具体例としてはサーフイノール104、82、465、485、又はTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能)、オルフインSTG、オルフインE1010(いずれも日信化学社製の商品名)を挙げることができる。
【0031】
また、前記のポリオキシエチレン誘導体として、その他の市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、ニッサンノニオンA−10R,A−13R(日本油脂株式会社)、フローレンTG−740W,D−90(共栄社化学株式会社)、エマルゲンA−90,A−60(花王株式会社)、又はノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社)を挙げることができる。
加えて、非イオン性の界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤を添加することができる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を挙げることができる。
【0032】
有機系液媒を用いる場合は、本発明のインク組成物において、非イオン系界面活性剤の含有量は、適宜選択することができるが、インク組成物中の顔料の含有量に対して、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜3.0重量%である。
有機系液媒を用いる場合は、本発明のインク組成物は、その他に、通常のインク組成物に含まれているその他の添加剤を含むことができる。こうした添加剤としては、例えば、安定剤(例えば、酸化防止剤、又は紫外線吸収剤)を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、BHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)又はBHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)を用いることができ、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両性、又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0033】
本発明のインク組成物にはグリコールエーテルが含有されていてもよい。
本発明のインク組成物に含有されるグリコールエーテルとは、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、そして2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルがあり、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。
例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
本発明のインク組成物の粘度は、特に限定されないが例えば、(温度20℃における粘度)10mPa・s以下が好ましく、より好ましくは8mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下である。
【0035】
本発明のインク組成物は、公知の慣用方法によって調製することができる。例えば、最初に、メタリック顔料、分散剤、及び前記液媒を混合した後、ボールミル、ビーズミル、超音波、又はジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、バインダー樹脂、前記液媒、及びその他の添加剤(例えば、分散助剤や粘度調整剤)を撹拌下に加えて顔料インク組成物を得ることができる。
その他、複合化顔料原体を、一旦液媒中で超音波処理して複合化顔料分散液とした後、必要なインク用液媒と混合しても良く、また、複合化顔料原体を直接インク用液媒中で超音波処理してそのままインク組成物とすることもできる。
【0036】
本発明のインク組成物の物性は特に限定されるものではないが、例えば、その表面張力は好ましくは20〜50mN/mである。表面張力が20mN/m未満になると、インク組成物がインクジェット記録用プリンタヘッドの表面に濡れ広がるか、又は滲み出してしまい、インク滴の吐出が困難になることがあり、表面張力が50mN/mを越えると、記録媒体の表面において濡れ広がらず、良好な印刷ができないことがある。
本発明に係るインク組成物においては、メタリック顔料としては、インク組成物全体の2重量%(wt%)以下であることが、より安定な印刷結果を得ることができるため、好ましい。
【0037】
本発明のインク組成物は、各種インクジェット記録方式に適用することができる。すなわち、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電界制御方式、ピエゾ素子の駆動圧力を利用してインクを吐出させるドロップ・オン・デマンド方式(又は圧力パルス方式)、さらには高熱によって気泡を形成し、成長させることによって生じる圧力を利用してインクを吐出させるバブル又はサーマルジェット方式等の各種インクジェット記録方式に適用することができる。
【0038】
また、本発明のインク組成物を用いるインクジェット記録方法では、ノズル径が30μm以下のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。
また、本発明のメタリック顔料の平均粒子径とインクジェットヘッドのノズル径との比(平均粒子径/ノズル径)が0.15以下であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
1.アルミニウム顔料分散液1の製造
(1)膜厚100μmのPETフイルム上に、下記組成の樹脂層塗工液1をスピンコート法によって均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜層を作成した。
【0040】
(樹脂層塗工液1)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレツクBL−10、
積水化学工業(株)製) 3.0重量%
グリセリン 2.0重量%
IPA(イソプロピルアルコール) 95.0重量%
【0041】
(2)下記の装置を用いて、上記の樹脂層上に、膜厚70nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
装置:(株)真空デバイス、VE−1010形真空蒸着装置
【0042】
(3)上記方法にて形成した樹脂層とアルミニウム蒸着層の積層体を有するPETフイルムを、ジエチレングリコールジエチルエーテル中で、超音波分散機((株)アズワン製、超音波洗浄機 VS−150)を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、分散処理積算時間24時間の条件にて、アルミニウムからなる金属薄片顔料(アルミニウム顔料またはメタリック顔料とも称する)1の分散液を作製した。得られたメタリック顔料1の分散液(メタリック顔料分散液1とも称する)の顔料の平均粒子径と粒度分布は、(株)セイシン企業製 LMS−30の装置を用いて測定した。この場合の50%平均粒子径は2.81μm、最大粒子径8.39μmであった。
また、分散処理後、ロータリーエバポレータを用いて顔料分散液1を濃縮し、熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 EXSTAR6000 TG/DTA)を用いて顔料濃度を求めてから、ジエチレングリコールジエチルエーテルを添加し、顔料分散液1の顔料濃度が5wt%になるように調整した。
【0043】
2.アルミニウム顔料分散液2の製造
樹脂層塗工液1を下記の樹脂層塗工液2に代えた以外は、上記アルミニウム顔料分散液2の製造と同じ操作を行い、金属薄片顔料(アルミニウム顔料またはメタリック顔料とも称する)2の分散液(メタリック顔料分散液2とも称する)を作製した。
【0044】
(樹脂層塗工液2)
セルロースアセテートブチレート(関東化学株式会社製、 10 重量%
平均分子量16,000、ブチル化度50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 90 重量%
【0045】
3.各インク組成物(実施例1〜3、比較例1〜4の調製
上記のメタリック分散液1および2を用いて下記各組成になるようにインク組成物の調製を行った。
具体的には、溶媒及び添加剤を混合かつ溶解し、インク溶媒とした後に、顔料分散液1および2をそれぞれインク溶媒中へ添加して、更に常温で30分間混合攪拌し、該混合攪拌後、10μmのステンレスメッシュフィルターを用いてろ過を行い、インクジェット用顔料インク組成物とした。インク組成物の粘度ηは、フィジカ社製 MCR−300を用いて測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0046】
メタリックインク組成物1(実施例1)
メタリック顔料1 1.0重量%(以下wt%)
セルロースアセテートブチレート 4.0 wt%
(関東化学株式会社製、平均分子量16,000、
ブチル化度50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0047】
メタリックインク組成物2(実施例2)
メタリック顔料2 1.0 wt%
セルロースアセテートブチレート 4.0 wt%
(関東化学株式会社製、平均分子量16,000、
ブチル化度50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0048】
メタリックインク組成物4(比較例1)
メタリック顔料1 1.0 wt%
スチレン−アクリル酸共重合体・アンモニア塩 4.0 wt%
(平均分子量10,000)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0049】
メタリックインク組成物5(比較例2)
メタリック顔料1 1.0 wt%
ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 4.0 wt%
エスレックBL−10)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0050】
メタリックインク組成物3(実施例3)
メタリック顔料1 1.0 wt%
セルロースアセテートブチレート 5.5 wt%
(関東化学株式会社製、平均分子量16,000、
ブチル化度50〜54%)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0051】
メタリックインク組成物6(比較例3)
メタリック顔料2 1.0 wt%
ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 4.0 wt%
エスレックBL−10)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0052】
メタリックインク組成物7(比較例4)
メタリック顔料2 1.0 wt%
ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 3.0 wt%
エスレックBL−10)
ジエチレングリコールジエチルエーテル 40 wt%
(日本乳化剤株式会社製)
BYK−UV3500 0.2 wt%
(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 残量
(日本乳化剤株式会社製)
【0053】
上記の各インク組成物を、セイコーエプソン株式会社製EM−930C(ノズル径:Φ25μm)を用いて、同社製写真用紙<光沢>(型番KA450PSK)上に印刷(ベタ)を行った。いずれも、金属光沢を有する印刷面が得られることを確認した。
また、印刷画像の印字均一性および定着性についても下記指標にて評価した。評価結果を、下記の表1に示す。
【0054】
(印字均一性)
A:目視検査にて均一な印刷面である。
B:目視検査にて、部分的にスジが観察される。
C:目視検査にて、全体的にスジが観察され、不均一な印刷面である。
【0055】
(定着性)
A:指で擦った場合に印刷部の剥離は発生しない。
B:指で擦った場合に印刷部に剥離が発生する。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、実施例1〜3のインク組成物は、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有することにより、比較例のものに比べて粘度が低くそのため印字均一性が良好で、また定着性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔片と、定着樹脂としてセルロースアセテートブチレートとを含有するインク組成物。
【請求項2】
前記金属箔片が、平均厚み30〜100nm、かつ50%平均粒子径が1.0μm以上4.0μm以下、粒度分布における最大粒子径が12μm以下である請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記金属箔片が、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属または金属化合物層とが順次積層された構造からなる顔料原体の該金属または金属化合物層と該剥離用樹脂層の界面を境界として該シート状基材より剥離し粉砕したものである請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項4】
前記金属層が真空蒸着法で作製されたものである請求項3記載のインク組成物。
【請求項5】
前記剥離および粉砕が、前記顔料原体の液中での超音波処理によりなされた請求項3記載のインク組成物。
【請求項6】
定着樹脂としてさらにポリビニルブチラールを含有する請求項1〜5のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項7】
20℃での粘度が8mPa・S以下である請求項1〜6のいずれかに記載のインク組成物。

【公開番号】特開2007−169451(P2007−169451A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368864(P2005−368864)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】