説明

インサート成形による射出成形品およびその製造方法

【課題】連続生産工程によりガラス転移点近傍以上の高温に加熱しても加熱時および加熱処理後の伸縮が小さく耐熱性も兼ね備えたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムをインサート成形用に用いた時、皺の発生、反りのない成形品を提供する。
【解決手段】加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)〜(3)を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを、射出成形金型内に装着し、熱可塑性樹脂を射出して成形する、インサート成形により得られた射出成形品。0.3≦STD/SMD≦3…(1)。−5.0≦STD≦−0.2…(2)。−5.0≦SMD≦−0.2…(3)。[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寸法安定性に優れたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを用いて、インサート成形により得られた射出成形品およびその製造方法に関する。さらに詳しくは高温時に低伸縮性である寸法安定性に優れたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを用いたインサート成形により得られた射出成形品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は安価で軽量かつ透明性、成形性、光学特性、耐熱性加工性、機械的強度に優れている等の特長を生かして種々の分野で幅広く使用されかつポリカーボネート樹脂フィルムとしても使用されており該フィルムに印刷や熱成形、真空成形、インサート成形、金属蒸着、スパッタリング等に幅広く利用されているが近年、印刷や熱成形等の加工技術の進歩に伴い生産速度が速く、かつ加工条件も厳しくなっている。
【0003】
従来、ポリカーボネート樹脂フィルムは印刷等の銘板用途では該ポリカーボネート樹脂のガラス転移点以下での加熱伸縮率は問題にされないでいたが、熱成形やインサート成形等の如く高温の樹脂と接触する用途では一時的に該ポリカーボネート樹脂フィルムがガラス転移点近傍以上の高温に加熱されるため約−35%〜+15%の伸縮が生じまた押出方向と巾方向で伸縮率が異なるので該ポリカーボネート樹脂フィルムが歪んで波打ちやたるみによる皺又は成形品に反りが生じるなどして成形後の製品外観が著しく損なわれて歩留まりが大幅に低下するという問題が発生していた。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂成形物を均質化する方法としては熱処理する方法が一般的に知られている。即ち、従来の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂フィルムを枚葉に切断しガラス転移点以上の温度で熱処理することで加熱伸縮率の小さい該フィルムを得ることは既に知られているがこの方法はフィルム製造装置以外に大掛かりな熱処理設備が必要である点とバッチ式になる為生産性が低く経済性にも難があり工業的に有用とはいえなかった。
【0005】
それに伴って、二次成形時の再加熱によっても熱収縮が少なく、成形品の寸法精度を向上させるポリカーボネートシートの製造方法についても提案がなされている。例えば、特許文献1には複数個の鏡面冷却ロール(ポリシングロール)において各ロールの温度制御および該ロール間へ導入する際シートを加熱する方法が提案されている。しかしながら、この方法ではロール温度が高くシートがロールに取られるなどシーティングの制御が難しく冷却したシートを再度高温加熱するため経済的に難があり、またこの方法で得られたシートは板厚が0.1〜0.5mmの場合加熱伸縮率が大きいため、熱成形やインサート成形等に使用する場合収縮分を見込んで材料シートを切断することさらに最終的に目的寸法が得られるようにしても、収縮分が一定しないために製品の歩留まりが悪いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−344417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、連続生産工程によりガラス転移点近傍以上の高温に加熱しても加熱時および加熱処理後の伸縮が小さく耐熱性も兼ね備えたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムをインサート成形用に用いた時、皺の発生、反りのない成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の技術を解決すべく鋭意検討した結果ポリカーボネート樹脂を溶融してフィルム状に押出し複数個の冷却ロールを使用して該フィルムを製造する際に、冷却時の温度及び引取による延伸で二次成形時に収縮が起こることに着目し、溶融ポリカーボネート樹脂を冷却ロールの第1ロールと中央の第2ロールの間に供給しながら当該2本のロールで圧延または中央の第2ロールに密着させてから他端の第3ロールの間隙を通過させてから引き取るロールの回転速度と温度をある範囲に制御すれば、上記課題を達成し得ることを見出し、更に検討を重ねた結果本発明に到達した。
【0009】
本発明は、加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)〜(3)を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを、射出成形金型内に装着し、熱可塑性樹脂を射出して成形する、インサート成形により得られた射出成形品に係るものである。
0.3≦STD/SMD≦3 …(1)
−5.0≦STD≦−0.2 …(2)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(3)
[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
【0010】
本発明は、ポリカーボネート樹脂フィルムの厚みが0.1〜0.5mmである上記射出成形品にも係わる。
本発明は、熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である上記射出成形品にも係わる。
【0011】
また、本発明は、インサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを、射出成形金型内に装着し、熱可塑性樹脂を射出して成形する、インサート成形により射出成形品を製造する方法において、該インサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムとして、加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)〜(3)を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを用いることを特徴とする、射出成形品の製造方法に係るものである。
0.3≦STD/SMD≦3 …(1)
−5.0≦STD≦−0.2 …(2)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(3)
[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
【0012】
本発明は、ポリカーボネート樹脂フィルムの厚みが0.1〜0.5mmである上記射出成形品の製造方法にも係わる。
本発明は、熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である上記射出成形品の製造方法にも係わる。
【発明の効果】
【0013】
本発明で使用される寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムは、フィルムの縦・横の加熱伸縮率とその比を特定範囲にすること、即ち、適度な加熱伸縮率をもつことで、成形中に発生した収縮応力によりフィルムを緊張状態に保持することができ、縦・横の加熱伸縮率の比をほぼバランス状態に特定することで、応力の偏りが起こらず、均一な応力がフィルムにかかるので適度で均一な応力の発生により、インサート成形時のフィルム皺の発生を抑止できるので、インサートフィルムとして好適に用いられ、インサート成形による射出成形品に極めて有用であり、その工業的効果は格別のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のフィルム製造装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用されるインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムは、加熱温度が160℃での巾方向の加熱伸縮率(%)STDと押出方向の加熱伸縮率(%)SMDの比が下記式(1)を満足するものである。
0.3≦STD/SMD≦3 …(1)
【0016】
このSTD/SMDの比が上記比を満足することは、インサート成形時に縦・横の加熱伸縮率の比がほぼバランス状態に保たれ、収縮応力の偏りが起こらず、均一な応力がフィルムにかかる。それ故、インサート成形時のフィルム皺の発生を抑止でき、インサート成形品の外観が良好になる。一方、この範囲を逸脱すると収縮応力に偏りができ、得られるフィルムの押出方向または巾方向のうち一方で縮みがさらに他方向は伸びが発生する等の伸縮バランスが崩れ、インサート成形品の外観が不良(皺の発生)になる。このSTD/SMDの比は0.4〜2が好ましく、0.5〜1.1がより好ましい。
【0017】
また、STDとSMDは各々下記式(2)または(3)を満足するものである。
−5.0≦STD≦−0.2 …(2)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(3)
【0018】
TDとSMDが適度な加熱伸縮率をもつことで、インサート成形中に発生した収縮応力がフィルムを適度な緊張状態に保持することができる。この加熱伸縮率が−5.0%より小さくなると収縮が大きく、外観不良が発生する。また−0.2%を越えると、加熱によりフィルムが伸びるため、外観不良が発生し実用に供し難くなり、本発明の課題が達成されない。
【0019】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られるものである。二価フェノールの代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0020】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0021】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。更に、ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて添加剤例えば多価アルコールと脂肪酸のエステルまたは部分エステル等の離型剤、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル等の紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、増白剤、難燃剤等を配合しても良い。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0023】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂フィルムを製造するには、Tダイから押出した溶融ポリカーボネート樹脂を、挟持加圧若しくは片面タッチ方式の複数個の鏡面冷却ロールで冷却してフィルムに成形する。その厚さは0.05〜0.5mmのポリカーボネート樹脂フィルムに対して使用される。この際使用する装置としては特別な装置である必要はなく、製膜、フィルムまたはシートの製造に使用される装置が任意に採用される。本発明を図により説明する。図1は本発明の方法を実施するに適したフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。図中の1はTダイス、2は第1冷却ロール、3は第2冷却ロール、4は第3冷却ロール、5は一対の引取ロールであり、第1〜第3冷却ロールはいずれもその表面は鏡面仕上げになっており、その内部には熱媒体が循環し、温度を制御できるようになっている。
【0024】
まず溶融ポリカーボネート樹脂をTダイス1からシート状に押出すこの際の溶融押出しには格別の条件を必要とせず、通常のポリカーボネート樹脂のシートの溶融押出し条件が任意に採用される。次いで押出されたシート状物は、そのままの状態で第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に供給しながら当該2本のロールで圧延または中央の第2冷却ロール3に密着させてから他端の第3ロール4に受け継がれた後、一対の引取ロール5によって引取られる。
【0025】
この際、第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度を1.001〜1.015倍にすることが必要である。第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度を1.001倍より小さくすると冷却が緩やかに進行するが速度が遅いため良好なシーティングができなくなり、1.015倍より大きくすると引取速度が速くなるのでシーティングは良好になるが該ポリカーボネート樹脂フィルムは押出方向に延伸作用が働くため、二次成形時押出方向の加熱伸縮が大きくなり、巾方向の加熱伸縮とバランスが崩れ実用に供し難くなるためである。
【0026】
さらに、前記第1冷却ロール2の温度は130〜145℃、第2冷却ロール3の温度は135〜150℃、第3冷却ロール4の温度は145〜155℃に設定する必要がある。ポリカーボネート樹脂は260〜280℃で押出されるのに対して、各冷却ロール2〜4の温度がそれぞれ130℃、135℃、145℃未満では冷却が速すぎて熱収縮が大きくなり、また各冷却ロールの温度が145℃を超えると十分に冷却されないため冷却ロールに取られてシーティングできない。なお、これら第1〜3冷却ロール2〜4の温度制御は、従来のロール温度制御手段により容易に行える。
【0027】
本発明で使用される上記ポリカーボネート樹脂フィルムは、インサート成形する際に、金型内にインサートするフィルムとして好適に使用することができる。かかるフィルムは、通常、少なくとも片面を表面加工して使用される。この表面加工としては、例えばハードコート加工、防曇加工、帯電防止加工、無反射加工、プライマー加工、印刷、スタンピング、蒸着、スパッタリング等があげられ、加工層は単一であっても複層であってもよい。蒸着、スパッタリング以外のこれらの層の厚さは一般に0.1〜20μmである。片面を加工されたフィルムの場合は加工された面(両面加工の場合は所望の面)を金型表面側にし、フィルムをセッティングする。次いで熱可塑性樹脂を射出して成形する。
【0028】
かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0029】
更に本発明の上記ポリカーボネート樹脂フィルムは、特に成形用のポリカーボネート樹脂をインサート成形する際に、金型内にインサートするフィルムとして好適に使用することができる。ポリカーボネート樹脂は通常280℃以上の成形温度で射出成形されることから、金型内にインサートするフィルムにおいても高度な耐熱性が要求され、上記寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂フィルムは高温時の加熱伸縮率も小さく好ましく採用され、また、該フィルムの厚みは0.1〜0.5mmの範囲が好ましく、特に0.2〜0.4mmの範囲であることが好ましい。
【0030】
本発明で製造されるポリカーボネート樹脂フィルムは、その特性を生かして電気部品、建材部品、自動車部品等に広く利用され、具体的には各種窓材即ち一般家屋、体育館、野球ドーム、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品、また各種側壁板(スカイドーム、トップライト、アーケード、マンションの腰板、道路側壁板)、各種銘板、写真カバー、水槽用ポリカーボネート樹脂積層板、プロジェクションテレビやプラズマディスプレイの前面板やフレンネルレンズ用途等に有用である。特に、片面をハードコート加工されたフィルムの場合は、車両(建設機械、自動車、バス、新幹線、電車車両等)等の窓材のグレージング製品用途に有用である。また、表面を印刷したフィルムの場合は、銘板用途に好適である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例をあげて本発明をさらに説明する。なお、実施例中の評価は下記に示す方法で従った。
(1)加熱伸縮率
JIS K 6735の加熱伸縮率試験法を準用し、160℃×40分の加熱条件で行った。
(2)インサート成形後の外観
実施例で得られたインサート成形後の成形品の外観に変化が無い場合を○、インサートフィルムが歪んで波打ちやたるみによる皺又は成形品に反りが生じる等外観が損なわれる場合を×で表示した。
【0032】
[実施例1〜3及び比較例1]
図1に示す装置を設けた押出機によりポリカーボネート樹脂フィルムを製造した。図中1は幅1250mmのTダイス、2,3及び4は直径300mmの第1〜第3冷却ロール、5は引取ロールである。
ビスフェノールAとホスゲンから溶液法により製造した粘度平均分子量24、500のポリカーボネート樹脂を図1に示した製造装置によりスクリュー径120mmのTダイリップの付いた押出機にて温度約280℃で押出し、幅1000mmで連続的に押出し、第2冷却ロールに対する第3冷却ロールの速度比、第1〜第3冷却ロールのそれぞれの温度を表1記載の通りに設定して冷却させながらポリカーボネート樹脂フィルムを成形し、引取ロールにより引取りフィルムを得た。得られたフィルムに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとホスゲンとを通常の界面重縮合反応させて得られたポリカーボネート樹脂(比粘度0.895、Tg175℃)30部、染料としてPlast Red 8370(有本化学工業製)15部、溶剤としてジオキサン130部を混合した印刷用インキで印刷した。この印刷フィルムを射出成形金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225 帝人化成製)を用いて310℃の成形温度でインサート成形し、銘板を得た。得られたフィルムの物性値、インサート成形後の成形品の外観を評価し、表1にその結果を示した。
【0033】
【表1】

【0034】
[実施例4]
実施例3において、印刷されたフィルムの代わりに、8μm厚さのハードコート層を有するフィルムを用いた以外は、実施例3と同様に行い、自動車用窓を成形した。この窓ガラスは、耐擦過性もよく光線透過率も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のインサート成形による射出成形品は、窓材のグレージング製品用途や銘板用途として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 Tダイス
2 第1冷却ロール
3 第2冷却ロール
4 第3ロール
5 一対の引取ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)〜(3)を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを、射出成形金型内に装着し、熱可塑性樹脂を射出して成形する、インサート成形により得られた射出成形品。
0.3≦STD/SMD≦3 …(1)
−5.0≦STD≦−0.2 …(2)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(3)
[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂フィルムの厚みが0.1〜0.5mmである請求項1記載の射出成形品。
【請求項3】
熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項1記載の射出成形品。
【請求項4】
インサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを、射出成形金型内に装着し、熱可塑性樹脂を射出して成形する、インサート成形により射出成形品を製造する方法において、該インサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムとして、加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)〜(3)を満足するインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムを用いることを特徴とする、射出成形品の製造方法。
0.3≦STD/SMD≦3 …(1)
−5.0≦STD≦−0.2 …(2)
−5.0≦SMD≦−0.2 …(3)
[式中、STDは巾方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂フィルムの厚みが0.1〜0.5mmである請求項4記載の射出成形品の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項4記載の射出成形品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−79324(P2011−79324A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261296(P2010−261296)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願平11−328581の分割
【原出願日】平成11年11月18日(1999.11.18)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】