説明

インストルメントパネル構造

【課題】インストルメントパネルリインフォースメントでディスプレイを支持する構成を採った場合にも、ダクトの空調性能の悪化を抑制することができるインストルメントパネル構造を得る。
【解決手段】平面視でダクト部38、40同士が互いに交差し、ダクト部40はセンターレジスタ22に接続され、ダクト部38はセンターレジスタ24に接続されている。このため、例えば、ダクト部40内の空気は、車幅方向右側へ向かった後、車幅方向左側へ向かって流れ、センターレジスタ22から吹き出される。センターレジスタ22は、通常、当該センターレジスタ22の車幅方向左側に着座する乗員へ向かって吹き出されるものであるため、車幅方向左側へ向かって流れた空気をそのままセンターレジスタ22から吹き出させることができる。つまり、ダクト部38の出口側で空気の流れを変える必要がなく、空調性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車幅方向に延在された強度部材としてのピラーツーピラー部材(インストルメントパネルリインフォースメント)にブラケット(支持部材)が連結されており、当該ブラケットによって車載電子機器(ディスプレイ)が支持されたインストルメントパネル構造が開示されている。なお、この他にも特許文献2〜7にインストルメントパネル構造が開示されている。
【特許文献1】特許第4064673号公報
【特許文献2】特開2004−291744号公報
【特許文献3】特開2007−269231号公報
【特許文献4】特開平05−42854号公報
【特許文献5】特開平09−2104号公報
【特許文献6】特開平09−300945号公報
【特許文献7】特開2004−17837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ピラーツーピラー部材と車載電子機器との間にはエアダクトが配置されるため以下の課題が生じる。すなわち、ピラーツーピラー部材及び車載電子機器を連結するブラケットは、通常であれば、平面視でエアダクトと重なる位置に配置される。そうすると、ブラケットがエアダクトを貫通することになってしまうため、エアダクトには当該ブラケットとの干渉を避ける迂回部が設けられる。例えば、当該迂回部はエアダクトに車幅方向外側に突出する円弧形状として形成される場合があるが、この場合、レジスタからの空気の吹き出し方向を考慮すると空調性能が悪化する可能性がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、インストルメントパネルリインフォースメントでディスプレイを支持する構成を採った場合にも、ダクトの空調性能の悪化を抑制することができるインストルメントパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、インストルメントパネルの裏側に設けられ、車幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントと、前記インストルメントパネルの上面に配置されたディスプレイを支持し、前記インストルメントパネルリインフォースメントの車幅方向の中央部に配設された支持部材と、前記インストルメントパネルの裏側に設けられた空調装置と前記ディスプレイの下方に設けられた一対のレジスタとをそれぞれ繋ぐと共に、側面視で前記支持部材と交差し、かつ当該支持部材の車幅方向外側へ迂回すると共に前記レジスタ側で上下に重なり互いに交差する一対のダクト部と、を有している。
【0006】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、インストルメントパネルの裏側に、車幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントが設けられている。このインストルメントパネルリインフォースメントの車幅方向の中央部には、インストルメントパネルの上面に配置されたディスプレイを支持する支持部材が配設されている。また、インストルメントパネルの裏側には空調装置が設けられており、当該空調装置とインストルメントパネルの車幅方向の中央部に設けられた各レジスタとが各ダクト部によって繋がれている。これにより、空調装置から送り出された空気は、各ダクト部を通じて各レジスタから吹き出される。
【0007】
ここで、ディスプレイは支持部材を介してインストルメントパネルリインフォースメントによって支持されており、ダクト部はインストルメントパネルリインフォースメントとディスプレイとの間に配置されている。このため、支持部材とダクト部とは側面視で交差するように配置される。そして、ダクト部は支持部材の車幅方向外側へ迂回すると共にレジスタ側で上下に重なり互いに交差している。つまり、ダクト部内を流れる空気は、車幅方向外側へ向かった後、車幅方向内側へ向かって流れることとなる。
【0008】
一方、ダクト部同士が互いに交差することで、空調装置の車幅方向右側に設けられたダクト部は左レジスタに接続され、空調装置の車幅方向左側に設けられたダクト部は右レジスタに接続されることとなる。例えば、空調装置の車幅方向右側のダクト部において、空調装置から送り出された空気は、車幅方向右側へ向かった後、車幅方向左側へ向かい、左レジスタから吹き出される。左レジスタは、通常、当該左レジスタの車幅方向左側に着座する乗員へ向かって吹き出されるものであるため、車幅方向左側へ向かって流れる空気をそのまま当該左レジスタから吹き出させることができる。つまり、ダクト部の出口側で空気の流れを変える必要はなく、空調性能を向上させることができる。
【0009】
以上のように、2本のダクト部が支持部材を迂回すると共に互いに交差するように形成されることで、空調装置から送り出された空気を指向性を持って狙った方向(左レジスタは車幅方向左側に着座する乗員へ空気が吹き出し、右レジスタは車幅方向右側に着座する乗員へ空気が吹き出す)へ流すことができ、空調性能の低下を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記一対のダクト部における前記支持部材との干渉を避ける迂回部が蛇腹状に形成されている。
【0011】
支持部材との干渉を避けるダクト部の迂回部は、車幅方向外側へ突出する形状とされるが、ダクト部のレジスタ側ではダクト部同士が互いに交差する。このため、請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、当該迂回部において蛇腹状に形成することで、車幅方向外側への突出量を小さくすることができる。また、迂回部を別部品で形成し、直線状に形成されたダクト部と接合させ一体化させても良いが、迂回部を蛇腹状に形成することで、ダクト部を一体成形で形成することができる。
【0012】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1又は2記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記一対のダクト部が上下方向で重なり互いに交差した状態を維持する形状保持手段が当該ダクト部に設けられている。
【0013】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、ダクト部に形状保持手段が設けられており、一対のダクト部が上下方向で重なり互いに交差した状態が維持されるようになっている。これにより、ダクト部同士の交差状態が不用意に解除されることはなく、また、迂回部における車幅方向外側への拡がりを抑え、スペース性の悪化を抑えることができる。また、形状保持手段によって、ダクト部同士が交差する交差部の位置を決めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記形状保持手段が、一方のダクト部に形成された被係合部と、他方のダクト部に形成され、前記被係合部と係合する係合部と、を含んで構成されている。
【0015】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、一方のダクト部に被係合部が形成され、他方のダクト部には当該被係合部と係合する係合部が形成されている。一方のダクト部の被係合部に他方のダクト部の係合部が係合することで、ダクト部同士が交差された状態が維持されることとなる。このように、被係合部又は係合部をダクト部に形成することで、ダクト部同士が交差された状態を維持するための保持部材が不要となる。
【0016】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記被係合部が前記一方のダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第1絞り部であり、前記係合部が前記第1絞り部と係合すると共に前記他方のダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第2絞り部である。
【0017】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、一方のダクト部に当該ダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第1絞り部が形成されている。また、他方のダクト部には、この第1絞り部と係合すると共に、当該ダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第2絞り部が形成されている。この第2絞り部と第1絞り部とを係合させることでダクト部同士が交差された状態が維持される。そして、ダクト部に形成された絞り部同士を係合させることで、交差部の上下方向の高さを低くすることができる。
【0018】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記第1絞り部の幅寸法が前記一方のダクトの他の部分の幅寸法よりも広くなるように設定され、前記第2絞り部の幅寸法が前記他方のダクト部の他の部分の幅寸法よりも広くなるように設定されている。
【0019】
第1絞り部及び第2絞り部はダクト部の他の部分よりも高さが低く設定されている。このため、請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、第1絞り部及び第2絞り部の幅寸法をダクト部の他の部分の幅寸法よりも広くなるように設定している。これにより、一方のダクト部に形成された第1絞り部の断面積とそれ以外の他の部分の断面積、及び他方のダクト部に形成された第2絞り部の断面積とそれ以外の他の部分の断面積を略同一にしてダクト部内において流量差が生じないようにすることができる。
【0020】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜6の何れか1項に記載の発明に係るインストルメントパネル構造において、前記一対のダクト部は、前記空調装置に形成された1つの送出口と連通する1つの根元部から分岐して形成されている。
【0021】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、空調装置に形成された1つの送出口には1つの根元部が連通し、当該根元部から分岐して一対のダクト部が設けられている。つまり、各レジスタに対応して専用のダクト部が設けられることとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、請求項1に記載のインストルメントパネル構造によれば、空調性能の悪化を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項2に記載のインストルメントパネル構造によれば、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項3に記載のインストルメントパネル構造によれば、ダクト部同士が交差する交差部のスペース性の悪化を抑えると共に、当該交差部を位置決めすることができる、という優れた効果を有する。
【0025】
請求項4に記載のインストルメントパネル構造によれば、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項5に記載のインストルメントパネル構造によれば、ダクト部同士が交差する交差部の位置決めを行うと共に、当該交差部のスペース性の悪化を抑えることができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項6に記載のインストルメントパネル構造によれば、絞り部が設けられているにも拘わらず、ダクト部内の空気の流れをスムーズにして空調性能の悪化を抑えることができる、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項7に記載のインストルメントパネル構造によれば、ダクトの根元部周りのスペースを有効に活用することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたディスプレイやダクト等を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1のダクトにおいて、(A)はダクト部同士が上下で重なる前の状態を示す平面図であり、(B)はダクト部同士が上下で重なった状態を示す平面図である。
【図4】ダクト部の同士が上下で重なった交差部の断面図である。
【図5】(B)は図3(B)におけるダクト部内の空気の流れを説明するための平面図であり、(A)はその比較例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。
【0031】
(インストルメントパネルの構造)
図1には本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネル10の外観斜視図が示されており、図2には、図1の2−2線断面図が示されている。また、図3(A)、(B)には、ダクト34を示す平面図が示されており、(A)にはダクト部38、40同士が上下で重なる前の状態が示され、(B)にはダクト部38、40同士が上下で重なった状態が示されている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、車室前部に設けられるインストルメントパネル10は、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインストルメントパネルリインフォースメント(以下、「インパネリインフォース」という)14に取り付けられており、空調装置26等を車両上側から覆っている。なお、ここでは、インストルメントパネル10の車幅方向左側にコンビネーションメータ16が設けられており、車両11は左ハンドル仕様となっているが、右ハンドル仕様でも良い。
【0033】
このインストルメントパネル10の車幅方向両側には、サイドレジスタ18、20がそれぞれ設けられており、インストルメントパネル10の車幅方向中央部には、レジスタとしての一対のセンターレジスタ22、24が設けられている。そして、空調装置26には、当該空調装置26によって温度調整された空気を送出する送出口としてのセンターレジスタ用送出口28とデフロスタ用送出口30とが設けられている。
【0034】
デフロスタ用送出口30にはデフロスタ31と接続されるダクト32が取り付けられており、当該ダクト32を介してデフロスタ用送出口30とデフロスタ31とが連通している。また、サイドレジスタ18、20には、図示しないダクトが接続されており、当該ダクトが空調装置26に設けられた図示しないサイドレジスタ用送出口に取り付けられている。つまり、このダクトを介して当該サイドレジスタ用送出口とサイドレジスタ18、20とが連通している。
【0035】
一方、センターレジスタ用送出口28にはセンターレジスタ22、24と接続されるダクト34が取り付けられている。ダクト34には、1つの根元部36が設けられており、当該根元部36がセンターレジスタ用送出口28に取り付けられている。また、根元部36からは吹出口としてのダクト部38とダクト部40が分岐しており、ダクト部38がセンターレジスタ24に接続され、ダクト部40がセンターレジスタ22に接続されている。つまり、ダクト部38を介してセンターレジスタ用送出口28とセンターレジスタ24とが連通し、ダクト部40を介してセンターレジスタ用送出口28とセンターレジスタ22とが連通している(後述する)。
【0036】
ところで、インストルメントパネル10の表側10A(車室内側)には、インストルメントパネル10の上部に位置して車幅方向の中央部にディスプレイ12が設けられるようになっている。そして、当該ディスプレイ12には、例えばナビゲーション情報や車両情報などが表示されるようになっている。
【0037】
また、例えば、インストルメントパネル10の表側10Aの車幅方向の中央部に車幅方向に沿って略直方体状の台座58が設けられており、この台座58に当該ディスプレイ12が載置されるようになっている。そして、例えば、図示はしないが、支持部材48の取付部においてヒンジ機構を設け、当該ヒンジ機構によってディスプレイ12をチルトさせるようにしても良い。この場合、ディスプレイ12と台座58との間は、摺動抵抗が得られるようにしておき、摺動抵抗によってディスプレイ12が所定の位置で位置決めされるようにする。これにより、ディスプレイ12において、外光の反射の影響を受けない傾きに調整することができる。
【0038】
一方、ディスプレイ12の下方には、センターレジスタ22、24が設けられている。このセンターレジスタ22、24の下方には、空調装置26の温度や風量を設定したり、空気が送出されるレジスタを選択したりする操作スイッチ42が設けられた空調操作部43が設けられている。つまり、ディスプレイ12と空調操作部43の間にセンターレジスタ22、24が設けられている。また、空調操作部43の下方には、車幅方向の中央部に設けられたセンタークラスタ44にオーディオ装置46が設けられている。なお、空調操作部43の位置にオーディオ装置46が設けられても良い。
【0039】
また、図2に示されるように、ディスプレイ12の裏面の車幅方向の両側には、棒状(角でも丸でも良い)を成す一対の支持部材48、50(図3(B)参照)が、図示しないビスなどによって取り付けられている。つまり、ディスプレイ12はこの支持部材48、50によって支持されている。なお、図2では、支持部材48は図示されない。
【0040】
また、支持部材48、50はインパネリインフォース14に取り付けられているため、ディスプレイ12は当該支持部材48、50を介してインパネリインフォース14に支持されることとなる。一般的に、インパネリインフォース14は強度及び剛性の高い部材で形成されている。このため、当該インパネリインフォース14に取り付けられた支持部材48、50でディスプレイ12を支持することで、ディスプレイ12が大型化し質量が大きくなったとしても当該ディスプレイ12を十分に支持することができる。
【0041】
そして、インストルメントパネル10の裏側に延在されたインパネリインフォース14に取り付けられた支持部材48、50によってインストルメントパネル10の表側10Aに配置されたディスプレイ12が支持されるため、インストルメントパネル10には当該支持部材48、50が貫通する孔部54が形成されている。このため、インストルメントパネル10には、当該孔部54及び支持部材48、50を上方から覆うカバー部材56が設けられており、孔部54及び支持部材48、50が外部に露出しないようにしている。
【0042】
ここで、インパネリインフォース14とディスプレイ12との間には、ダクト34が配置されている。このため、例えば、図示はしないが図1に示すダクト部38がセンターレジスタ22に接続され、ダクト部40がセンターレジスタ24に接続されて、当該ダクト部38、40を直線状に配置するとなると、ダクト部38、40と支持部材48、50とがそれぞれ平面視において互いに重なることとなる。
【0043】
このため、本実施形態では、図5(B)に示されるように、ダクト部38、40におけるダクト34の根元部36側に、迂回部としての蛇腹部60、62がそれぞれ形成されている。蛇腹部60、62は伸縮可能であるため、支持部材48、50と干渉する位置では、当該蛇腹部60、62を湾曲させ、支持部材48、50との干渉を回避するようになっている。そして、ダクト部38、40の自由端側(センターレジスタ22、24側)では、ダクト部38、40同士が互いに交差されている。このようにダクト部38、40同士が互いに交差することによって、前述のように、ダクト部38がセンターレジスタ24に接続され、ダクト部40がセンターレジスタ22に接続される。
【0044】
また、図3(A)に示されるように、ダクト部38のダクト部40側の側壁からは、形状保持手段の一部を構成する締結片64が張り出しており、当該締結片64には締結孔64Aが形成されている。また、ダクト部40のダクト部38側の側壁からは、形状保持手段の一部を構成する締結片66が張り出しており、当該締結片66には締結孔66Aが形成されている。この締結孔64A、66Aには、例えば、図示はしないが支持部材48、50に連結されたブラケットとの間でピンを介して締結可能とする。そして、図3(B)に示されるように、ダクト部38とダクト部40を交差させた状態で、締結片64及び締結片66が当該ピンを介して締結されることで、ダクト部38とダクト部40とが交差された状態が維持される。なお、ダクト部38とダクト部40とでどちらが上に配置されても良い。
【0045】
さらに、交差部68において、図4に示されるように、ダクト部38には第1絞り部としての絞り部70が設けられ、ダクト部40には第2絞り部としての絞り部72が設けられている。絞り部72と絞り部70とは互いに係合可能となっており、絞り部72と絞り部70とが互いに係合された状態で、絞り部72の外形40Aと一方のダクト部38の他の部分の外形38Aとが略面一となるように設定されている。また、絞り部70の幅寸法W1は、ダクト部38の他の部分の幅寸法W2よりも広くなるように設定されている。このとき、ダクト部38の他の部分と絞り部70との間で生じる寸法差について、段差を形成することなく徐々に変化させるように形成される。なお、絞り部72も絞り部70と同様である。
【0046】
(インストルメントパネル構造の作用・効果)
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、インストルメントパネル10の車幅方向の中央部にディスプレイ12が配置され、インストルメントパネル10の裏側に延在されたインパネリインフォース14に当該ディスプレイ12を支持する支持部材48、50が固定されている。また、インストルメントパネル10の裏側には空調装置26が設けられており、当該空調装置26とインストルメントパネル10に設けられたセンターレジスタ22、24(なお、図2ではセンターレジスタ22(図1参照)は図示されない)とがダクト34によって繋がれている。これにより、空調装置26から送り出された空気は、当該ダクト34を通じてセンターレジスタ22、24から吹き出される。
【0047】
ここで、図2に示されるように、ダクト34はインパネリインフォース14とディスプレイ12との間に配置されている。ディスプレイ12は支持部材48、50(図3(B)参照)を介してインパネリインフォース14によって支持されているため、インパネリインフォース14とディスプレイ12の間には支持部材48、50が設けられることとなり、支持部材48、50とダクト34とは側面視で交差するように設定されている。また、図3(B)に示されるように、ダクト34のダクト部38、40には蛇腹部60、62がそれぞれ設けられており、支持部材48、50と干渉する位置において、当該蛇腹部60、62を湾曲させ、支持部材48、50との干渉を回避している。
【0048】
このようにダクト部38、40に蛇腹部60、62を設けることで、当該ダクト部38、40において容易に湾曲部を形成することができる。このため、支持部材48、50周りにおいて車幅方向外側への突出量を小さくすることができる。これにより、蛇腹部60、62の車幅方向外側への拡がりを抑え、スペース性の悪化を抑えることができる。
【0049】
また、ダクト34において、ダクト部38、40同士を互いに交差させた交差部68が設けられている。つまり、ダクト部38、40は支持部材48、50を迂回するため車幅方向外側へ向かった後、互いに交差するため車幅方向内側へ向かう形状とされる。このため、図5(B)に示されるように、ダクト部38、40内を流れる空気は、車幅方向外側へ向かった後、車幅方向内側へ向かって円弧状に流れる。なお、ダクト部38、40の蛇腹部60、62において車幅方向外側への拡がりが小さい場合、空調装置26から送り出された空気は根元部36を通過後、そのまま車幅方向内側へ向かって流れる場合もある。
【0050】
一般的に、図5(A)に示されるように、車幅方向右側に設けられたダクト部100は、車幅方向右側のセンターレジスタ24に接続され、車幅方向左側に設けられたダクト部104は、車幅方向左側のセンターレジスタ22に接続される。このため、例えば、ダクト部100内において、空調装置26(図2参照)から送り出された空気は、当該ダクト部100の形状に沿って、車幅方向右側へ向かった後、車幅方向左側へ向かって円弧状に流れるが、このダクト部100内の空気はセンターレジスタ24から吹き出されることとなる。センターレジスタ24は、通常、当該センターレジスタ24の車幅方向右側に着座する乗員へ向かって吹き出されるものであるため、センターレジスタ24から吹き出される空気は、車幅方向右側へ向かって吹き出される必要がある。したがって、センターレジスタ24から吹き出される空気は、少なくともその直前で(ダクト部100の出口側で)車幅方向右側へ向かって向きを変える必要があり、空調性能が良くない。
【0051】
これに対して、図5(B)に示されるように、ダクト部38、40同士が互いに交差することで、ダクト部40はセンターレジスタ22に接続され、ダクト部38はセンターレジスタ24に接続される。このため、例えば、ダクト部40において、空調装置26(図2参照)から送り出された空気は、車幅方向右側へ向かった後、車幅方向左側へ向かって円弧状に流れ、センターレジスタ22から吹き出される。センターレジスタ22は、通常、当該センターレジスタ22の車幅方向左側に着座する乗員へ向かって吹き出されるものであるため、車幅方向左側へ向かって流れる空気をそのままセンターレジスタ22から吹き出させることができる。つまり、ダクト部38の出口側で空気の流れを変える必要がなく、空調性能を向上させることができる。
【0052】
以上のように、2本のダクト部38、40が支持部材48、50を迂回すると共に互いに交差するように形成されることで、空調装置26から送り出された空気を指向性を持って狙った方向(センターレジスタ22は車幅方向左側に着座する乗員へ空気が吹き出すようにし、センターレジスタ24は車幅方向右側に着座する乗員へ空気が吹き出すようにする)へ流すことができ、空調性能の低下を抑制することができる。
【0053】
また、図3(A)に示されるように、ダクト部38、40にそれぞれ締結片64、66を設け、図3(B)に示されるように、ダクト部38、40同士を交差させた状態で、図示しないピンを介して締結片64、66同士を締結させる。これにより、ダクト部38とダクト部40とで交差された状態が維持されることとなる。
【0054】
したがって、ダクト部38、40同士の交差状態が不用意に解除されることはなく、また、蛇腹部60、62における車幅方向外側への拡がりを抑え、スペース性の悪化を抑えることができる。また、締結片64、66によって、ダクト部38、40同士が交差する交差部68の位置を決めることができる。このように、締結片64、66をダクト部38、40にそれぞれ形成することで、ダクト部38、40同士の状態を維持するための保持部材が不要となる。このため、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる。
【0055】
また、図4に示されるように、交差部68において、ダクト部38には絞り部70が設けられ、ダクト部40には絞り部72が設けられている。そして、絞り部72と絞り部70とが互いに係合可能となっている。このため、絞り部72と絞り部70とが互いに係合された状態で、ダクト部38、40同士が交差された状態が維持されるようにしても良い。この場合、交差部68の位置決めを行うと共に、ダクト部38、40同士が交差された状態が維持されるため、作業性が向上する。
【0056】
また、絞り部72と絞り部70とが互いに係合された状態で、絞り部72の外形40Aとダクト部38の他の部分の外形38Aとが略面一となるように設定されている。これによると、交差部68の上下方向の高さを低くすることができ、交差部68のスペース性をさらに向上させることができる。
【0057】
また、図3(B)に示されるように、絞り部70、72の幅寸法W1が、ダクト部38、40の他の部分の幅寸法W2よりも広く設定されている。これにより、絞り部70、72における断面積とダクト部38、40の他の部分における断面積を略同一にしてダクト部38、40内において流量差が生じないようにすることができる。これにより、絞り部70、72が設けられているにも拘わらず、ダクト部38、40内の空気の流れをスムーズにして空調性能の悪化を抑えることができる。
【0058】
さらに、ここでは、ダクト部38、40が、空調装置26(図2参照)に形成された1つの送出口28(図2参照)と連通する1つの根元部36から分岐して形成されている。このように、ダクト34の根元部36を1つにすることで、蛇腹部60及び蛇腹部62によって車幅方向外側へ拡がる車両幅方向の寸法よりもその幅を狭くすることができ、根元部36周りのスペースを有効に活用することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、支持部材48、50との干渉を回避するため、ダクト部38、40に迂回部としての蛇腹部60、62をそれぞれ設けている。例えば、図示はしないが、迂回部として別部品で形成し、直線状に形成されたダクト部と接合させ一体化させるようにしても良いが、本実施形態によれば、ダクト部38、40を一体成形で形成することができる。これによると、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる。
【0060】
(実施形態の補足)
(1)本実施形態では、形状保持手段として、例えば、図3(A)、(B)に示されるように、ダクト部38、40にそれぞれ締結片64、66を設け、図示しないピンを介して当該締結片64、66同士を締結させるようにしている。またこれ以外にも、形状保持手段として、図4に示されるように、ダクト部38、40にそれぞれ絞り部70、72を設け、互いに係合させるようにしている。しかし、ダクト部38とダクト部40とが交差された状態を維持させるという観点からすると、この形状保持手段は必ずしも必須の構成ではない。
【0061】
例えば、ダクト部40はセンターレジスタ22に接続され、ダクト部38はセンターレジスタ24に接続されるため、少なくともこれによってダクト部38とダクト部40とは交差された状態を維持することができる。勿論、形状保持手段は設けられていても良い。
但し、形状保持手段において、上記構成のうち少なくともどちらか一方が本実施形態に適用されても良い。スペース性を考慮すると、少なくとも交差部68においてダクト部38、40には絞り部70、72は形成された方が良いため、当該絞り部70、72を形状保持手段として利用した方が好ましい。なお、図示はしないが、例えば、ダクト部38、40に設けられた締結片自体が互いに係合可能な形状となるように形成されても良いのは勿論のことである。
【0062】
(2)また、本実施形態では、ダクト34において、空調装置26に接続される根元部36を1つとし、センターレジスタ22、24に対応させてダクト部38とダクト部40に分岐させるようにしたが、空調装置26の大きさや配置場所などによっては、根元部が2つであっても良い。つまり、センターレジスタ22、24毎にダクトが設けられていても良い。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10 インストルメントパネル(インストルメントパネル構造)
11 車両
12 ディスプレイ
14 インパネリインフォース(インストルメントパネルリインフォースメント)
14 空調装置
22 センターレジスタ(レジスタ)
24 センターレジスタ(レジスタ)
26 空調装置
28 センターレジスタ用送出口(送出口)
34 ダクト
36 根元部
38 ダクト部
40 ダクト部
48 支持部材
50 支持部材
60 蛇腹部(迂回部)
62 蛇腹部(迂回部)
64 締結片(形状保持手段)
66 締結片(形状保持手段)
70 絞り部(第1絞り部、被係合部)
72 絞り部(第2絞り部、係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの裏側に設けられ、車幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントと、
前記インストルメントパネルの上面に配置されたディスプレイを支持し、前記インストルメントパネルリインフォースメントの車幅方向の中央部に配設された支持部材と、
前記インストルメントパネルの裏側に設けられた空調装置と前記ディスプレイの下方に設けられた一対のレジスタとをそれぞれ繋ぐと共に、側面視で前記支持部材と交差し、かつ当該支持部材の車幅方向外側へ迂回すると共に前記レジスタ側で上下に重なり互いに交差する一対のダクト部と、
を有するインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記一対のダクト部における前記支持部材との干渉を避ける迂回部が蛇腹状に形成された請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記一対のダクト部が上下方向で重なり互いに交差した状態を維持する形状保持手段が当該ダクト部に設けられた請求項1又は2に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項4】
前記形状保持手段が、
一方のダクト部に形成された被係合部と、
他方のダクト部に形成され、前記被係合部と係合する係合部と、
を含んで構成された請求項3に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項5】
前記被係合部が前記一方のダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第1絞り部であり、前記係合部が前記第1絞り部と係合すると共に前記他方のダクト部の他の部分よりも高さが低く設定された第2絞り部である請求項4に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項6】
前記第1絞り部の幅寸法が前記一方のダクト部の他の部分の幅寸法よりも広くなるように設定され、前記第2絞り部の幅寸法が前記他方のダクト部の他の部分の幅寸法よりも広くなるように設定された請求項5に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項7】
前記一対のダクト部は、前記空調装置に形成された1つの送出口と連通する1つの根元部から分岐して形成された請求項1〜6の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28287(P2013−28287A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165954(P2011−165954)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】