説明

インスリン様成長因子結合タンパク質−3(IGFBP−3)による喘息のマウスモデルにおける気道反応性亢進および炎症の阻止

呼吸器の炎症および反応性亢進におけるIGFBP−3の生理学的役割は、現在は不明である。本発明は、野生型IGFBP−3およびIGFBP−3変異体であるGGG−IGFBP−3の両方が、気管支喘息のような閉塞性呼吸器障害に関連した組織の炎症および反応性亢進を抑制するという予想外の知見に基づいている。組換えIGFBP−3もしくはIGFBP−3変異体、またはIGFBP−3もしくはIGFBP−3変異体をコードするベクターを投与することによって、喘息を含めて、閉塞性呼吸器障害および気道反応性亢進に関連した様々な状態を治療する方法が、本明細書において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年2月10日に出願された米国特許仮出願第60/652,023号明細書および2005年7月13日に出願された米国特許仮出願第60/698,731号明細書に対して優先権を主張し、これらの両方とも、図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、呼吸器疾患の分野に関する。より具体的には、本発明は、気道の閉塞および/または炎症に関連した状態、ならびに気道反応性亢進に関連した状態の治療、予防、および診断に関する。
【背景技術】
【0003】
インスリン様成長因子(IGF)系は、体細胞の増殖においてだけでなく、癌、糖尿病、および栄養失調などの疾患においても重要な役割を果たしている(Rosenfeld 1986;Rotwein 1991)。IGF系は、IGFリガンド(IGF−IおよびIGF−II)、IGF受容体(IGFR−IおよびIGFR−II)、IGF結合タンパク質(IGFBP−1、IGFBP−2、IGFBP−3、IGFBP−4、IGFBP−5、およびIGFBP−6)、ならびに一連のIGFBPプロテアーゼから構成されている(Shimasaki 1991;Jones 1995;Edmondson 2003)。この系の各構成要素は、ホルモン、成長因子、発育状態、栄養、傷害、および疾患などの因子に応答した一時性かつ組織特異的な調節の影響を受ける(Edmondson 2003)。
【0004】
IGF−IおよびIGF−IIは、アミノ酸レベルで約60%相同であり、かつ、インスリンに対して有意な相同性を示す(Rinderknecht 1978a;Rinderknecht 1978b)。IGFは、パラクリン、オートクリン、および/または内分泌の様式で作用することによって、組織の増殖および分化を刺激することができる(Bach 1995;Marshman 2002)。IGFの分裂促進作用は、ヘテロ四量体の膜貫通チロシンキナーゼであるI型IGF受容体(IGFR−I)によって、主として媒介される(Nissley 1991;Schumacher 1991)。IGFR−Iは、IGF−IおよびIGF−IIの両方に高い親和力で結合し、かつ、インスリンには実質的により低い親和力で結合する(Marshman 2002)。
【0005】
IGFBPは、IGF−IおよびIGF−IIに高い親和力で結合するが、インスリンには結合しない。IGFBPは、IGFを輸送し、タンパク質分解による劣化から保護することによってそれらの半減期を延長し、かつIGFRとの相互作用に対するそれらの有効性を調節するために不可欠である(Baxter 1991;Le Roith 2001)。この様式で、それらは、IGF活性を増強または抑制することによって、増殖および分化に対するIGFの影響を調節する(Bach 1995)。IGFBPのN末端ドメインおよびC末端ドメインの両方とも、高度に保存されている。
【0006】
最近の研究により、IGFBPが、「IGF非依存性」作用と呼ばれる、IGFと相互作用する能力を超えた独特な内因性の生物活性を有することが実証された(Jones 1995;Oh 1998)。例えば、IGFBP−3は、細胞の増殖およびアポトーシスに対してIGF非依存性の影響を及ぼすことが示されている(Oh 1993;Longobardi 2003)。これらの生物学的影響が真にIGF非依存性であることを証明するために、IGFに対する結合親和力を有していないIGFBP−3変異体が作り出された。この変異体(GGG−IGFBP−3、G56G80G81、または単にGGG変異体と呼ばれる)は、IGFBP−3残基のIle56、Leu80、およびLeu81をGly56、Gly80、およびGly81に部位特異的に変異誘発することによって作製される(Buckway 2001;Longobardi 2003;Kim 2004)。この研究にもかかわらず、IGFBP−3のIGF非依存性作用の根底にある機序は、まだ解明されていない。
【0007】
気管支喘息は、気道の好酸球増加、粘液分泌過多を伴う杯細胞過形成、ならびに吸入されたアレルゲンおよび非特異的な刺激に対する反応性亢進を特徴とする、気道の慢性炎症性疾患である(Kay 1991)。好酸球応答は、喘息の重要な特徴であると思われる。気管支組織における好酸球の蓄積およびそれに続く活性化は、気管支喘息の病態生理学において重要な役割を果たしている(Frigas 1986)。最近の研究により、気道炎症が、気管支上皮細胞それら自体によって永続化されている可能性があることが示唆された。上皮細胞は、血小板活性化因子やプロスタグランジンなど多数の炎症メディエーターを産生することが示された(Holgate 2000)。気管支上皮細胞はまた、IL−1、IL−5、IL−6、IL−8、GM−CSF、TNF、MCP−1、およびRANTESなど多種多様の炎症誘発性サイトカインも産生する(Holgate 2000)。気管支喘息および他の気道炎症性疾患に罹患した被検体における気管支上皮細胞によるサイトカインおよび化学誘引物質の産生は、炎症細胞の局所的蓄積の一因となっていると思われる。
【0008】
IGF−Iは、ヒト気道上皮細胞によって産生される主要な線維芽細胞分裂促進因子として同定された(Cambrey 1995)。他の研究により、コルチコステロイドを吸入すると、気管支喘息におけるIGF−I発現が抑制されることによって基底膜の網状層(lamina reticularis)が減少することが実証された(Hoshino 1998)。IGF−I発現とコラーゲン肥厚および線維芽細胞数の両方との間で有意な相互関係が示されて、気管支喘息に関連した炎症プロセスにIGF−Iが関与している可能性があることが示唆された。IGFBPに関しては、IGFBPプロテアーゼのマトリックスメタロプロテイナーゼ−1(MMP−1)が、喘息の気道平滑筋細胞において増加していることが実証された(Rajah 1999)。さらに、いずれもMMP−1のタンパク質分解基質であるIGFBP−2およびIGFBP−3が、喘息の気道組織抽出物中で切断されていることが示された(Rajah 1999)。これらの研究は、喘息に関連した炎症プロセスにおいてIGF系が重要な役割を果たしていることを示す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(詳細な説明)
本発明の以下の説明は、本発明の様々な実施形態を例示するためのものであるにすぎない。したがって、考察される個々の修正は、本発明の範囲に対する制約として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な均等物、変更、および修正を実施できることが当業者には明らかになると考えられ、かつ、そのような均等な実施形態が本明細書に含まれるべきであることが理解される。
【0010】
略語
以下の略語が本明細書において使用される:Ad、アデノウイルス;BAL、気管支肺胞洗浄;COPD、慢性閉塞性肺疾患;ICAM−1、細胞間接着分子−1;IGF、インスリン様成長因子;IGFBP、インスリン様成長因子結合タンパク質;IGFR、インスリン様成長因子受容体;OVA、卵白アルブミン;SEM、平均値の標準誤差;VCAM−1、血管細胞接着分子−1。
【0011】
定義
本明細書において使用される「気道反応性亢進」という語句は、括約筋アゴニストに対する気道の感受性が正常な気道に比べて増大することを意味する。括約筋アゴニストは、ヒスタミン、メタコリン、クエン酸、アレルゲン、呼吸器ウイルス、または外来粒子などの直接的アゴニストでも、運動または冷気もしくは乾燥空気の吸入などの間接的アゴニストでもよい。
【0012】
本明細書において使用される「閉塞性呼吸器障害」という語句は、気道閉塞を伴う状態を意味する。この閉塞は、気道反応性亢進、呼吸器組織の炎症、呼吸器組織の肥厚、またはこれらの任意の組合せから発生することがある。一実施形態では、罹患した呼吸器組織は、下部呼吸器組織である。閉塞性呼吸器障害は、急性または慢性のいずれかであり得る。急性疾患には、アレルギー反応および一時的な喘息様の症状が含まれる。慢性疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が含まれ、例として、喘息、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、肺気腫、または気管支拡張症を挙げることができる。
【0013】
本明細書において使用される「下部呼吸器組織」という語句は、喉頭、気管、気管支、細気管支、および肺を含めて、下部呼吸器系中の任意の器官の組織を意味する。
【0014】
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、あるポリペプチドをコードする遺伝因子を、そのポリペプチドの発現をもたらすように作動可能に挿入することができる運搬体を意味する。ベクターの例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスの部類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)が含まれる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能なエレメント、およびレポーター遺伝子を含めて、発現を制御するための様々なエレメントを含んでよい。ベクターはまた、それだけには限らないが、ウイルス粒子、リポソーム、もしくはタンパク質被膜を含めて、細胞中への移行を助けるための様々な物質を含んでもよく、またはそれらに結合されてもよい。
【0015】
本明細書において使用される「治療有効量」という語句は、対象とする状態の予防もしくは治療、またはその状態に関連した症状の緩和など、被検体において所望の治療的効果をもたらす化合物の量である。正確な治療有効量は、所与の被検体における治療の有効性の面から最も効果的な結果をもたらすと考えられる、組成物の量である。この量は、それだけには限らないが、治療用化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、および生物学的利用能を含む)、被検体の生理学的状態(年齢、性別、疾患のタイプおよび段階、全体的な身体的状態、所与の投薬量に対する応答性、ならびに投薬法のタイプを含む)、製剤中の1種または複数種の製薬上許容される担体の性質、ならびに投与経路を含めて、様々な因子に応じて変動すると考えられる。臨床的技術および薬理学的技術の分野の熟練者なら、ごく普通の実験法によって、すなわち、ある化合物の投与に対する被検体の応答を観察し、かつ、それに応じて投薬量を調整することによって、治療有効量を決定することができると考えられる。さらなる手引きに関しては、Remington: 「製薬の科学および実践(The Science and Practice of Pharmacy)」第20版、Gennaro編、Williams&Wilkinsペンシルヴェニア州、2000、を参照されたい。
【0016】
ある状態もしくは障害に関して本明細書において使用される「治療する」という用語は、その状態もしくは障害を予防すること、その状態もしくは障害の発症もしくは発達速度を遅くさせること、その状態もしくは障害を発症するリスクを低減させること、その状態もしくは障害に関連した症状の発達を予防するか、もしくは遅延させること、その状態もしくは障害に関連した症状を軽減するか、もしくは終息させること、その状態もしくは障害の全面的もしくは部分的な軽減をもたらすこと、またはそれらの何らかの組合せを意味することができる。
【0017】
本明細書において使用される「製薬上許容される担体」という語句は、1つの組織、器官、または身体の一部分から、別の組織、器官、または身体の一部分に対象の化合物を運搬または輸送するのに関与する、製薬上許容される物質、組成物、またはビヒクルを意味する。例えば、担体は、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、もしくはカプセル化物質、またはそれらの何らかの組合せであり得る。担体の各構成要素は、製剤の他の成分と共存できなければならないという点で、「製薬上許容され」なければならない。これは、接触する可能性がある任意の組織または器官と接触して使用するのにも適切でなければならない。すなわち、これは、毒性、刺激性、アレルギー反応、免疫原性、またはその治療的利益を過剰に上回る他の任意の厄介な問題のリスクを有してはならない。
【0018】
本明細書において使用される「被検体」という用語は、任意の動物を意味するが、好ましくは哺乳動物、またはより好ましくはヒトを意味する。
【0019】
IGF系は、様々な細胞型の成長、増殖、および分化の調節に遍在的に関与している、複数の構成要素からなる分子ネットワークである。例えば、IGF−Iは、気管支喘息に関連した炎症プロセスに関与していると思われる。IGF−1活性は、IGFBPによって調節されている。6種のIGFBPは、C末端ドメインおよびN末端ドメインにおいて高レベルの保存を示すが、それらの発現パターンおよび特性は、幅広く変動する。6種のIGFBPのうちで、IGFBP−3が、血清中に最も大量に存在する。IGFBP−3は、ある種の状況においてIGF−1活性を調節することが公知であるが、呼吸器の炎症および反応性亢進におけるその病態生理学的役割は不明である。本発明は、野生型IGFBP−3およびGGG−IGFBP−3変異体の両方が、気管支喘息のような閉塞性呼吸器障害に関連した組織の炎症および反応性亢進の抑制物質であることを予想外に実証する。
【発明の効果】
【0020】
呼吸器炎症および気道反応性亢進に対するIGFBP−3の効果を判定するために、喘息のマウスモデルを使用した。これらの研究のために、3種のアデノウイルスベクターを作製した。第1のWT−AdIGFBP−3は、野生型IGFBP−3をコードするcDNAを含んだ。第2のm−AdIGFBP−3は、GGG−IGFBP−3変異体をコードするcDNAを含んだ。第3のAdLacZは、対照として使用した。
【0021】
OVAの腹腔内注射によって、マウスを感作した。初回感作後21日目に、アデノウイルスベクターをマウスに気管内投与し、かつ、21日目、22日目、および23日目に、OVAによる誘発をマウスに実施した。最終誘発後72時間目に、BALを実施し、かつ分析のために肺を切除した。WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3を投与されたマウスに由来するBAL液は、好酸球、リンパ球、好中球、および全細胞の数の有意な減少を示した。組換えIGFBP−3をマウスに投与した場合も、同様の結果が得られた。好酸球数の増加は、上皮損傷、基底膜の肥厚、ならびに、気管支平滑筋収縮および血漿滲出を引き起こして、気道壁の肥厚を結果として生じる能力を有する介在物質の放出を含めて、喘息の気道において認められる組織変化の多くに関連していると考えられている(O’Byrne 2003)。
【0022】
摘出された肺組織の組織学的研究により、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3で処置されたマウスが、細気管支周囲領域および血管周囲領域の両方において、著しくレベルの低下した炎症および炎症細胞の浸潤を示すことが明らかにされた。組織学的データにより、アデノウイルスベクターを投与されたマウスが、IGFBP−3の発現増加を示して、アデノウイルスベクターからの発現の有効性が確認されることも、立証された。
【0023】
肺組織のウェスタンブロット解析およびBAL液の酵素イムノアッセイにより、IL−4、IL−5、IL−13、TNF−α、IFN−1β、VCAM−1、ICAM−1、エオタキシン、およびRANTESの発現が、OVAによる誘発の後に増加すること、ならびにこの増加が、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって大きく減少することが明らかにされた。ウェスタンブロット解析により、内因性IGFBP−3のレベルは、OVAによる誘発の後に有意に低下するのに対し、内因性IGF−1のレベルは有意に上昇することも確認された。
【0024】
生きている無拘束マウスにおいて、メタコリン濃度の上昇に対応した様々な呼吸パラメーターを測定した。これらのパラメーターを用いてPenh値を算出し、かつ、基線のPenhの増加を利用して、メタコリンに対する気道反応性を評価した。試験された各メタコリン濃度におけるPenh値がより高いことによって実証されるように、OVAによる誘発を受けたマウスは、対照マウスと比較すると、気道反応性亢進を示した。OVAによる誘発を受けたマウスにWT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3を投与すると、気道反応性亢進が有意に低減し、これは、Penh値の有意な減少によって示された。組換えIGFBP−3をマウスに投与した場合も、同様の結果が得られた。
【0025】
これらの結果は、IGFBP−3が、気管支喘息のような閉塞性呼吸器障害に関連した呼吸器炎症および気道反応性亢進の強力な抑制物質であることを実証する。GGG−IGFBP−3変異体が、野生型タンパク質とほぼ同じ抑制効果を有することから、抑制が、単にIGF活性を妨害する能力ではなく、内因性IGFBP−3の抗炎症性活性の結果であることが実証される。本明細書において説明する結果により、IGFBP−3レベルの変化が、気管支喘息および他の閉塞性呼吸器障害の病因に関係があること、ならびに、IGFBP−3の回復(restoration)がこれらの障害を予防および抑止するのに役立つと思われることが示唆される。
【0026】
IGFBP−3レベルを調節して、呼吸器組織の炎症または気道反応性亢進に関連した閉塞性呼吸器障害に罹患しているか、またはそのリスクにさらされている被検体を治療することができる。被検体のIGFBP−3レベルは、外因性IGFBP−3ポリペプチドもしくはその類似体、またはIGFBP−3もしくはIGFBP−3類似体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを投与することによって、上昇させることができる。同様に、被検体のIGFBP−3レベルは、内因性IGFBP−3の発現を調節する1種または複数種の作用物質を投与することによっても調節することができる(例えば、米国特許第5,840,673号を参照されたい)。
【0027】
ポリペプチド、ベクター、または他の作用物質は、例えば、エアロゾル投与、腸内投与、経鼻投与、眼内投与、経口投与、非経口投与、または経皮投与を含めて、当技術分野において公知の任意の有効な経路を介して被検体に投与してよく、かつ、製薬上許容される担体と組み合わせて投与してよい。
【0028】
被検体のIGFBP−3発現のレベルを利用して、閉塞性呼吸器障害、またはそのような障害を発症する素因を診断することができる。発現は、被検体から得られた体液または組織試料において検出または測定することができ、かつ、公知の健常組織に由来する発現レベルと比較することができる。試験試料中のIGFBP−3発現の減少は、その被検体が、閉塞性呼吸器障害に罹患しているか、または発症するリスクがあることを示唆し得る。IGFBP−3発現は、閉塞性呼吸器障害に罹患しているか、またはそのリスクがあることが公知である被検体において、長期に渡って測定してよい。これにより、その被検体がその障害の進行を観察し、かつ差し迫った発作を予期することが可能になると思われる。また、IGFBP−3発現レベルの長期に渡る測定を利用して、治療戦略の有効性を観察するか、または、ある被検体のために治療手法をカスタマイズおよび調整することもできる。
【0029】
以下の実施例は、特許請求される本発明をより良く例示するために提供され、かつ、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の物質の名前が挙げられない限り、それは、例示のためにすぎず、かつ本発明を限定するためのものではない。当業者は、独創的な能力を行使せずに、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、等価な手段または反応物を開発することができる。本発明の範囲内になお留まりつつ、本明細書において説明する手順において多くの変形を作り出せることが理解されるであろう。このような変形が本発明の範囲内に含まれることは、発明者らの意向である。
【実施例】
【0030】
統計データ:
以下の実施例中のデータは、平均値±SEMとして表した。一元配置分散分析とそれに続くフィッシャーの検定によって、統計学的比較を実施した。対応のないスチューデントのt検定を用いて、有意な群間差を判定した。統計的有意性はP<0.05に設定した。
【0031】
(実施例1)WT−AdIGFBP−3ベクター、m−AdIGFBP−3ベクター、およびAdLacZベクターの作製:
3種のアデノウイルス(Ad)ベクターを作製した:IGFBP−3のcDNAを含むWT−AdIGFBP−3;GGG−IGFBP−3のcDNAを含むm−AdIGFBP−3;および対照として使用されたAdLacZ。AdEasyシステム(He 1998)(Quantum Biotechnologies, Montreal, Quebec, カナダ)を用いて、E1/E3が欠失した複製欠損性組換えAdを作製した。以前に説明されているようにして(Kwak 2003)、pcDNA3/野生型IGFBP−3に由来するNotI−XbaI制限断片、およびGGG−IGFBP−3変異体のcDNAに由来するSalI−SmaI/EcoRV制限断片を、KpnI−XhoIで消化したpシャトルCMVに連結した。AdLacZを作製するために、pcDNA3.1/LacZ(Invitrogen Corp., San Diego、カリフォルニア州、米国)に由来するSalI−NotI制限断片を、SalI−NotIで消化したpシャトルCMVに連結した。製造業者の取扱い説明書に従って、細菌(組換え欠損大腸菌株BJ5183)中でpAdEasyウイルスのバックボーンへの組換えを実施した。組換えを確認し、かつ、アデノウイルス組換えDNAを、はるかに多いDNA産生量をもたらす大腸菌の正常株(DH5α)に移入した。CMV−cDNA挿入物を含む組換えpAdEasyプラスミドをQIAGENカラム(QIAGEN Inc., Valencia, カリフォルニア州、米国)によって精製し、かつPacIで消化したDNA 5μgを使用して、リン酸カルシウム法(Promega Corp., Madison、ウィスコンシン州、米国)によってQBI−293A細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間前に150mm培養皿当たり細胞2×10個の濃度で細胞を播種した。アデノウイルスの増殖を示す、トランスフェクトされた細胞の溶解は、4日以内に起こった。増幅後、組換えAdクローンを含む溶解産物を150mm培養皿から調製し、かつCsCI勾配遠心分離によって精製した。回収したウイルスを等分し、かつ50mM NaCl、0.05%BSA、および25%グリセロールを含む5mM Tris(pH8.0)緩衝液中、−20℃で保存した。QBI−293A細胞に段階希釈液を感染させることによってウイルスの力価を測定し、かつ0.3%アガロース、10%FBS、および1×DMEMからなるオーバーレイの下でプラークを計数した。
【0032】
(実施例2)BAL液中の細胞数に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
8〜10週齢であり、かつマウスに特異的な病原体を有していないメスのC57BL/6マウスを、Korean Research Institute of Chemistry Technology(韓国化学技術研究所)(デジョン(大田)、韓国)から入手した。実験の間ずっと、層流式キャビネット中にこれらのマウスを収容し、かつ標準的な実験用固形飼料を自由に与えて飼育した。本研究において使用したすべての実験動物は、Chonbuk National University Medical School(全北大学校医学部)のInstitutional Animal Care and Use Committee(研究機関の動物管理使用委員会)によって承認されたガイドラインに従って処置した。
【0033】
1日目および14日目に、総体積200μlの、水酸化アルミニウム(Pierce Chemical Co., Rockford、イリノイ州、米国)1mg中に乳化させた卵白アルブミン(OVA)(Sigma-Aldrich, St. Louis, ミズーリ州、米国)20μgを腹腔内注射することによって、マウスを感作した。初回感作後、21日目、22日目、および23日目に、超音波ネブライザー(NE−U12;オムロン、東京、日本)を用いて、生理食塩水中3%(wt/vol)OVAのエアロゾルを1日当たり30分間マウスに投与した。対照のマウスにはOVAの代わりに生理食塩水を投与した。21日目(OVA気道投与の1時間前)および23日目(気道投与の3時間後)に、Adベクター(10ペスト形成単位(plague-forming units))を気管内投与した。対照マウスには生理食塩水を投与した。この投与プロトコールの概略図を図1に示す。このプロトコールにより、5種の実験群、すなわち、SAL+SAL、OVA+SAL、OVA+AdWT−IGFBP−3、OVA+m−AdIGFBP−3、およびOVA+AdLacZが得られた。
【0034】
最終の気道投与の72時間後に、各実験群から6匹のマウスに対して気管支肺胞洗浄(BAL)を実施した。洗浄の際、過量のナトリウムペントバルビトン(ペントバルビタールナトリウム、100mg/kg体重、腹腔内投与)を用いてこれらのマウスを屠殺した。胸腔を露出させて膨張できるようにし、その後、気管に注意深く挿管し、かつ結紮糸でカテーテルを固定した。予熱した0.9%NaCl溶液をゆっくりと肺に注入し、かつ回収した。BAL分取物をプールし、かつ4℃で保存した。次いで、各プールの一部分を遠心分離し、かつ使用するまで上清を−70℃で保存した。
【0035】
血球計数器を用いて全細胞数を計数した。サイトスピン(Shandon Scientific Ltd., Cheshire、英国)によって、BAL細胞の塗抹標本を調製した。細胞の差を検査するために、これらの塗抹標本をDiff-Quik溶液(Dade Diagnostics of Puerto Rico Inc., Aguada、プエルト・リコ)で染色した。無関係な盲検化された研究者2名が顕微鏡を用いてこれらの細胞を計数した。異なるランダムな4つの場所それぞれにおいて、約400個の細胞を計数した。研究者間の結果の差異は5%未満であった。2名の研究者から得られた値の平均値を各細胞数として使用した。
【0036】
BAL液中の全細胞、好酸球、リンパ球、および好中球の数は、OVAによる誘発後72時間目に有意に増加していた(図2、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けたBAL液中の各細胞型の数は、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3の投与によって有意に減少した(図2、「OVA+WT−IGFBP−3」および「OVA+m−IGFBP−3」)。AdLacZの投与は、細胞数に対して影響を与えなかった。
【0037】
(実施例3)OVAによって誘発された喘息の病理に対するWT−AdIGFBP−3およびm−IGFBP−3投与の効果:
実施例2において説明したBAL処置に続いて、マウスから肺を切除した。切除する前に、気管の周りの結紮糸を用いて、気管内から、固定液(0.8%ホルマリン、4%酢酸)で肺および気管を満たした。10%(v/v)中性緩衝ホルマリンで肺組織を固定した。標本を脱水し、かつパラフィンに包埋した。組織学的検査のために、Leicaモデル2165回転式ミクロトーム(Leica, Nussloch, ドイツ)上で固定した包埋組織の4μm切片を切断し、スライドガラス上に置き、脱パラフィンし、かつヘマトキシリン2およびエオシン−Y(Richard-Allan Scientific, Kalamazoo, ミシガン州)で順次染色した。
【0038】
組織学的検査により、OVAに曝露されたマウスにおける喘息の典型的な病理学的特徴が明らかになった。好酸球を含む多数の炎症細胞が、OVAによる誘発に応答して、細気管支の周囲に浸潤していた(図3、パネルA(SAL+SAL)およびパネルB(OVA+SAL)を比較されたい)。WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3を投与すると、OVAによる誘発を受けたマウスの細気管支周囲領域および血管周囲領域において、炎症細胞の浸潤が著しく低減した(図3、パネルC(OVA+WT−AdIGFBP−3)およびパネルD(OVA+m−AdIGFBP−3))。AdLacZの投与には、効果がなかった(図3E)。
【0039】
無関係な盲検化された研究者3名によって、各組織学的標本に炎症スコアを割り当てた。別の文献で説明されているように(Tournoy 2000)、気管支周囲および血管周囲の炎症の程度を0〜3の主観的尺度に基づいて評価した。検出可能な炎症が無い場合は値0を割り当て、炎症細胞を伴う袖口様白血球集合(cuffing)がところどころある場合は値1を割り当て、大半の気管支または血管が炎症細胞の薄層(1〜5個の細胞)で取り囲まれている場合は値2を割り当て、かつ、大半の気管支または血管が炎症細胞の厚い層(5個より多い細胞)で取り囲まれている場合は値3を割り当てた。
【0040】
気管支周囲、血管周囲、および肺全体の炎症スコアは、OVAによる誘発を受けた標本において有意に増加していた(図4、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。3箇所のスコアはすべて、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けた標本において有意に減少していた(図4、「OVA+WT−IGFBP−3」および「OVA+mIGFBP−3」)。これらの結果は、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3が、好酸球の流入を含めて、抗原に誘発された肺炎症を抑制することを示唆する。
【0041】
(実施例4)IL−4、IL−5、およびIL−13の発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
タンパク質抽出物を得るために、プロテアーゼ阻害剤の存在下で、肺組織をホモジナイズした。Bradford試薬(Bio-Rad)を用いてタンパク質濃度を測定した。試料(1レーン当たりタンパク質30μg)を12%SDS−PAGEゲル上に添加した。120Vで90分間電気泳動した後、分離されたタンパク質を、ウェットトランスファー法(250mA、90分)によってポリビニリデンジフルオリド膜(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway, ニュージャージー州)上に移した。非特異的な部位は、TBST緩衝液(25mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、0.1%Tween20)中5%脱脂粉乳で1時間ブロッキングし、その後、4℃で一晩、抗IL−4抗体(Serotec Ltd、Oxford、英国)、抗IL−5抗体、または抗IL−13抗体(R&D Systems,Inc. Minneapolis、ミネソタ州)とともに、ブロットをインキュベートした。抗ウサギホースラディッシュペルオキシダーゼ結合IgGを用いて、抗体結合を検出した。メンブレンをストリップし、かつ、抗アクチン抗体(Sigma Aldrich)で再ブロットして、各レーンにおけるタンパク質のロード量が等しいことを確認した。高感度ケミルミネッセンスシステムの試薬(Amersham Pharmacia Biotech)で処理した後、写真フィルムに露光させることによって、特異的抗体の結合を可視化した。
【0042】
ウェスタンブロット解析により、肺組織におけるIL−4、IL−5、およびIL−13サイトカインのレベルが、OVAによる誘発後に有意に上昇していることが明らかになった(図5、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けた組織中の各サイトカインのレベルは、WT−AdIGFBP−3またはAdIGFBP−3の投与によって著しく低下した(図5、「OVA+WT−AdIGFBP3」および「OVA+m−AdIGFBP3」)。
【0043】
製造業者のプロトコール(IL−4およびIL−5はEndogen,Inc., Woburn, マサチューセッツ州、米国から入手;IL−13は、R&D Systems,Inc., Minneapolis、ミネソタ州、米国から入手)に従って酵素イムノアッセイを実施して、BAL液の上清中のIL−4、IL−5、およびIL−13のレベルを定量した。IL−4、IL−5、およびIL−13アッセイの感度は、それぞれ5pg/ml、5pg/ml、および1.5pg/mlであった。
【0044】
酵素イムノアッセイは、ウェスタンブロット解析から得られた結果と一致していた。IL−4、IL−5、およびIL−13のレベルは、OVAによる誘発を受けた被検体(図6、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)に由来するBAL液中で上昇しており、かつ、この上昇は、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低減された(図6、「OVA+WT−IGFBP−3」および「OVA+m−IGFBP−3」を参照されたい)。
【0045】
(実施例5)TNF−αおよびIL−1βの発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
肺組織におけるTNF−αおよびIL−1βの発現レベルを、実施例4で説明したように、ウェスタンブロット法によって測定した。両方のタンパク質のレベルが、OVAによる誘発後72時間目に有意に上昇していた(図7A、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けた組織中の両タンパク質のレベルは、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低下した(図7A、「OVA+WT−AdIGFBP−3」および「OVA+m−AdIGFBP−3」)。
【0046】
BAL液中のTNF−αおよびIL−1βの発現レベルを、実施例4で説明したように、酵素イムノアッセイによって測定した。ウェスタンブロット解析の結果と一致して、TNF−αおよびIL−1βの発現は、OVAによる誘発後に増加しており(図7B、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」)、かつ、この増加は、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低減された(図7B、「OVA+WT−IGFBP−3」および「OVA+m−IGFBP−3」)。
【0047】
(実施例6)VCAM−1およびICAM−1の発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
肺組織における血管細胞接着分子−1(VCAM−1)および細胞間接着分子−1(ICAM−1)の発現レベルを、実施例4で説明したようにウェスタンブロット法によって測定し、かつ、デンシトメトリー解析によって定量した。両方のタンパク質のレベルが、OVAによる誘発後72時間目に有意に上昇していた(図8Aおよび8B、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けた組織中の両タンパク質のレベルは、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低下した(図8Aおよび8B、「OVA+WT−AdIGFBP−3」および「OVA+m−AdIGFBP−3」)。
【0048】
(実施例7)エオタキシンおよびRANTESの発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
肺組織におけるエオタキシンおよびRANTESの発現レベルを、実施例4で説明したように、ウェスタンブロット法によって測定した。両方のタンパク質のレベルが、OVAによる誘発後72時間目に有意に上昇していた(図9A、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けた組織中の両タンパク質のレベルは、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低下した(図9A、「OVA+WT−AdIGFBP3」および「OVA+m−AdIGFBP3」)。
【0049】
BAL液中のエオタキシンおよびRANTESの発現レベルを、実施例4で説明したように、酵素イムノアッセイによって測定した。ウェスタンブロット解析の結果と一致して、エオタキシンおよびRANTESの発現は、OVAによる誘発後に増加しており(図9B、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」)、かつ、この増加は、WT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3の投与によって有意に低減された(図9B、「OVA+WT−IGFBP−3」および「OVA+m−IGFBP−3」)。
【0050】
(実施例8)気道反応性亢進に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果:
以前に説明されているようにして(Lee 2002)、最終誘発後3日目に、無拘束かつ意識のある状態で、マウスの気道反応性を測定した。バロメトリックプレチスモグラフィーのチャンバー(All Medicus Co., Seoul,韓国)にマウスを入れ、かつ、3分間、基線の指示値を記録し、平均した。同時に、濃度を段階的に上げた(2.5〜50mg/ml)エアロゾル化したメタコリンを、3分間、メインチャンバーの入口から噴霧した。各噴霧の後、3分間、指示値を記録し、平均した。肺抵抗(製造業者のプロトコールに従って、(呼気時間/休止時間−1)×(最大呼気流量/最大吸気流量)として算出されるPenh)は、最大吸気の箱圧力信号に対する最大呼気の箱圧力信号の比率の関数であり、かつ、呼気のタイミングの関数である、無次元の値である。基線のPenhの増加率を用いて、段階的に上げたメタコリン濃度での気道反応性を評価した。基線のPenh(生理食塩水の投与後)を100%として表した。
【0051】
基線Penhに対するパーセントの用量反応曲線は、OVAによる誘発を受けたマウスにおいて左に移動し(図10、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)、これにより、OVAによる誘発後の気道反応性亢進が示唆された。濃度を段階的に上げたメタコリンを投与すると、OVAによる誘発を受けたマウスおよび対照マウスの両方において、基線Penhに対するパーセントが増加し、OVAによる誘発を受けたマウスの方が、試験した各メタコリン濃度で、対照マウスより高い、基線Penhに対するパーセントを示した(図10、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。OVAによる誘発を受けたマウスにWT−AdIGFBP−3またはm−AdIGFBP−3を投与すると、基線Penhに対するパーセントの用量反応曲線は、未処置のOVAによる誘発を受けたマウスに比べて右に移動した(図10、「OVA+SAL」、「OVA+WT−IGFBP−3」、および「OVA+m−IGFBP−3」を比較されたい)。
【0052】
(実施例9)正常な肺組織およびOVAによる誘発を受けた肺組織におけるIGFBP−3発現:
IGFBP−3抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, カリフォルニア州)を用いて、実施例4で説明したように、肺タンパク質抽出物に対してウェスタンブロット解析を実施した。内因性IGFBP−3の発現は、正常な肺組織と比べて、OVAによる誘発を受けた肺組織において有意に減少していた(図11a、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。IGFBP−3レベルは、OVAによる誘発後、時間とともに減少したが、対照細胞においては有意な変化を示さなかった(図11b、様々な時点の「(OVA)IGFBP−3」および「(生理食塩水)IGFBP−3」を比較されたい)。AdIGFBP−3を投与されたマウスにおいてIGFBP−3の発現の増加が観察されて、アデノウイルス遺伝子導入技術が確認された(図11a、「OVA+IGFBP−3」)。
【0053】
(実施例10)正常な肺組織およびOVAによる誘発を受けた肺組織におけるIGF−1発現:
BAL液中のIGF−1の発現レベルを、実施例4で説明したように、酵素イムノアッセイによって測定した。IGF−1のレベルは、OVAによる誘発後1時間目、6時間目、24時間目、48時間目、および72時間目に有意に上昇していた(図12A、「PRE」を「1時間目」、「6時間目」、「24時間目」、「48時間目」、および「72時間目」と比較されたい)。生理食塩水の吸入後には、IGF−1レベルの有意な変化は観察されなかった。
【0054】
(実施例11)肺組織および気管上皮細胞における免疫反応性IGFBP−3の所在:
肺組織におけるIGFBP−3の所在を組織学的解析によって観察した。IGFBP−3は、対照マウスの細気管支の周囲の上皮層に局在していたが、OVAによる誘発を受けたマウスにおいては消失した(図13、AおよびBを比較されたい)。WT−AdIGFBP−3を気管内投与すると、OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織におけるIGFBP−3発現が回復したのに対し、AdLacZを投与しても効果はなかった(図13、CおよびDを比較されたい)。
【0055】
気管上皮細胞におけるIGFBP−3の所在を組織学的解析によって観察した。マウス気管上皮細胞を無菌状態下で単離した。気管分岐部の近位側の気管を切除し、かつ付着した脂肪組織を除去した。気管を縦方向に切開し、3つの部分に切断し、かつ0.1%プロテアーゼを含むDMEM中で、4℃で一晩インキュベートした。組織を消化した後、酵素を不活性化するために、FBS(最終濃度10%)を媒体に添加した。未消化の組織断片を除去し、かつ、500rpm、5分間の遠心分離によって、気管上皮細胞を回収した。これらの細胞を、液内培養用のコラーゲンでコーティングされた35mmシャーレ上に播種した。10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびアンホテリシンBを含む増殖培地DMEM/F−12(Sigma-Aldrich)に、インスリン、トランスフェリン、ヒドロコルチゾン、ホスホエタノールアミン、コレラ毒素、エタノールアミン、ウシ脳下垂体抽出物、およびBSAを添加した。細胞が接着するまで、37℃、5%COの加湿インキュベーター中で細胞を維持した。
【0056】
IGFBP−3は対照マウスの気管上皮細胞に局在していたが、OVAによる誘発を受けたマウスにおいては著しく減少していた(図13、EおよびFを比較されたい)。WT−AdIGFBP−3を気管内投与すると、OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織におけるIGFBP−3発現が回復したのに対し、AdLacZを投与しても効果はなかった(図13、GおよびHを比較されたい)。
【0057】
(実施例12)BAL液中の細胞数に対する組換えIGFBP−3投与の効果:
1日目および14日目に、総体積200μlの、水酸化アルミニウム1mg中に乳化させたOVA20μgを腹腔内注射することによって、マウスを感作した。初回感作後、21日目、22日目、および23日目に、超音波ネブライザー(NE−U12)を用いて、生理食塩水中3%(wt/vol)OVAのエアロゾルを1日当たり30分間マウスに投与した。対照のマウスにはOVAの代わりに生理食塩水を投与した。21日目(OVA気道投与の1時間前)および23日目(気道投与の3時間後)に、組換えIGFBP−3を投与した。対照マウスには生理食塩水を投与した。このプロトコールにより、4種の実験群、すなわち、SAL+SAL、OVA+SAL、OVA+IGFBP−3 1μg、およびOVA+IGFBP3 10μgが得られた。
【0058】
実施例2で説明したように、最終の気道投与の72時間後に、各実験群から10匹のマウスに対してBALを実施した。無関係な盲検化された研究者2名が顕微鏡を用いてBAL塗抹標本を検査した。2名の研究者から得られた値の平均値を各細胞数として使用した。
【0059】
BAL液中の全細胞、好酸球、リンパ球、および好中球の数は、OVAによる誘発後72時間目に有意に増加していた(図14、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)。組換えIGFBP−3 1μgの投与により、全細胞、リンパ球、好中球、および好酸球は減少した(図14、「OVA+IGFBP−3 1μg」)。組換えIGFBP−3 10μgの投与により、これらの各細胞型はさらに大幅に減少し、かつ、マクロファージの数も減少した(図14、「OVA+IGFBP3 10μg」)。
【0060】
(実施例13)気道反応性亢進に対する組換えIGFBP−3の効果:
実施例8で説明したように、最終誘発後3日目に、実施例12から得られるマウスにおいて、気道反応性を測定した。基線Penhに対するパーセントの用量反応曲線は、OVAによる誘発を受けたマウスにおいて左に移動し(図15、「SAL+SAL」および「OVA+SAL」を比較されたい)、これにより、OVAによる誘発後の気道の反応性亢進が示唆された。さらに、メタコリン濃度の上昇に対応した、基線Penhに対するパーセントの増加は、OVAによる誘発を受けたマウスにおいてより大きかった。基線Penhに対するパーセントの用量反応曲線が右に移動することによって示されるように、組換えIGFBP−3の投与により、気道反応性亢進は軽減された(図15、「OVA+SAL」、「OVA+IGFBP−3 1μg」、および「OVA+IGFBP3 10μg」を比較されたい)。
【0061】
上述したように、前述の内容は、本発明の様々な実施形態を例示するためのものであるにすぎない。上記の個々の修正は、本発明の範囲に対する制約として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な均等物、変更、および修正を実施できることが当業者には明らかになると考えられ、かつ、そのような均等な実施形態が本明細書に含まれるべきであることが理解される。
【0062】
(参考文献)
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【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実験プロトコールの概略図である。水酸化アルミニウム1mg中に乳化させたOVAを腹腔内注射することによって、1日目および14日目にマウスを感作した。初回感作後21日目、22日目、および23日目に、超音波ネブライザーを用いて、生理食塩水中3%(w/v)OVAのエアロゾル(または対照としての生理食塩水)を30分間マウスに投与した。Adベクターを用いた処置の場合、処置される各動物に2回、すなわち、21日目(初回のOVA気道投与の1時間前)に1回目、および23日目(最終のOVA気道投与の3時間後)に2回目を気管内投与した。
【図2】OVAによる誘発を受けたマウスにおけるBAL液中の全細胞構成要素および差次的な細胞構成要素に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。最終誘発後72時間目に、対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−IGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−IGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)に由来するBAL液の各細胞構成要素の数を計数した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図3】OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織における病理学的変化に対する、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した代表的な肺切片。標本採取は、最終誘発後72時間目に実施した。A.対照マウス(SAL+SAL)。B.OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)。C.WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)。D.m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)。E.AdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)。バーは、50μmのスケールを示す。
【図4】気管支周囲および血管周囲の肺炎症に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−IGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−IGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、気管支周囲、血管周囲、および全体の肺炎症を測定した。全体の肺炎症は、気管支周囲および血管周囲の炎症スコアの平均として定義した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図5】OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織におけるIL−4、IL−5、およびIL−13タンパク質発現に対する、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、ウェスタンブロットによって、サイトカインIL−4、IL−5、およびIL−13の発現を測定した。6回の独立した実験における結果は同様であった。
【図6】OVAによる誘発を受けたマウスのBAL液におけるIL−4、1L−5、およびIL−13のレベルに対する、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−IGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−IGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、イムノアッセイによって、IL−4、IL−5、およびIL−13のレベルを測定した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図7】OVAによる誘発を受けたマウスにおけるTNF−αおよびIL−1βタンパク質発現に対する、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。A.OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織におけるTNF−αおよびIL−1βタンパク質発現を、ウェスタンブロット法によって測定した。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、発現を測定した。6回の独立した実験における結果は同様であった。B.OVAによる誘発を受けたマウスのBAL液におけるTNF−αおよびIL−1βタンパク質発現を、酵素イムノアッセイによって測定した。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、発現を測定した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図8】VCAM−1およびICAM−1タンパク質発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。A.VCAM−1およびICAM−1タンパク質発現を、OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織において、ウェスタンブロット法によって測定した。対照マウス(SAL+SAL)、生理食塩水を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、発現を測定した。6回の独立した実験における結果は同様であった。B.ウェスタンブロットの結果を、アクチンに対するVCAM−1またはICAM−1の相対比に基づくデンシトメトリー解析によって定量した。SAL+SALマウスにおけるVCAM−1またはICAM−1の相対比を任意に1として示す。データは、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図9】エオタキシンおよびRANTESタンパク質の発現に対するWT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。A.OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織におけるエオタキシンおよびRANTESタンパク質発現を、ウェスタンブロット法によって測定した。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、発現を測定した。6回の独立した実験における結果は同様であった。B.OVAによる誘発を受けたマウスのBAL液におけるエオタキシンおよびRANTESタンパク質発現を、酵素イムノアッセイによって測定した。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−AdIGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−AdIGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、発現を測定した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図10】OVAによる誘発を受けたマウスにおける気道反応性に対する、WT−AdIGFBP−3およびm−AdIGFBP−3投与の効果を示す図である。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+WT−IGFBP−3)、m−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+m−IGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)において、最終誘発後72時間目に、気道反応性を測定した。エアロゾル投与されたメタコリンに対する気道反応性を、意識のある無拘束マウスにおいて測定した。マウスに生理食塩水を噴霧投与し、次いで、1回に3分間、用量を段階的に上げた(2.5〜50mg/ml)メタコリンを噴霧投与した。各噴霧の後、3分間、呼吸パラメーターの指示値を記録し、その間にPenh値を決定した。データは、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図11】OVAによる誘発後の肺組織におけるIGFBP−3発現を示す図である。A.対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+IGFBP−3)、およびAdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+AdLacZ)におけるIGFBP−3発現をウェスタンブロットによって測定した。6回の独立した実験における結果は同様であった。B.誘発後の様々な時点に、OVAによる誘発を受けたマウス((OVA)IGFBP−3)および対照マウス((生理食塩水)IGFBP−3)におけるIGFBP−3発現をウェスタンブロットによって測定した。10回の独立した実験における結果は同様であった。
【図12】OVAによる誘発後のBAL液におけるIGF−1発現を示す図である。OVAによる誘発を受けたマウスのBAL液におけるIGF−1タンパク質発現を、酵素イムノアッセイによって測定した。対照マウス(SAL)およびOVAによる誘発を受けたマウス(OVA)における発現を、誘発の前(PRE)、ならびに最終誘発後1時間目、6時間目、24時間目、および48時間目、72時間目に測定した。棒は、6回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、Preに対してP<0.05であることを表す。アッセイの感度は3.5pg/mlであった。
【図13】肺組織および気管上皮細胞におけるIGFBP−3タンパク質の免疫組織化学的解析を示す図である。濃褐色は、IGFBP−3陽性細胞を示す。バーは、50μmのスケールを示す。A.対照マウスの肺組織。B.OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織。C.WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織。D.AdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウスの肺組織。E.対照マウスの気管上皮細胞。F.OVAによる誘発を受けたマウスの気管上皮細胞。G.WT−AdIGFBP−3を投与された、OVAによる誘発を受けたマウスの気管上皮細胞。H.AdLacZを投与された、OVAによる誘発を受けたマウスの気管上皮細胞。
【図14】OVAによる誘発を受けたマウスにおけるBAL液中の全細胞構成要素および差次的な細胞構成要素に対する組換えIGFBP−3投与の効果を示す図である。最終誘発後72時間目に、対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、組換えIGFBP−3 1μgを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+IGFBP3 1μg)、および組換えIGFBP−3 10μgを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+IGFBP3 10μg)に由来するBAL液の各細胞構成要素の数を計数した。棒は、10回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。
【図15】OVAによる誘発を受けたマウスにおける気道反応性に対する組換えIGFBP−3投与の効果を示す図である。対照マウス(SAL+SAL)、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+SAL)、組換えIGFBP−3 1μgを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+IGFBP3 1μg)、および組換えIGFBP−3 10μgを投与された、OVAによる誘発を受けたマウス(OVA+IGFBP3 10μg)において、最終誘発後72時間目に、気道反応性を測定した。エアロゾル投与されたメタコリンに対する気道反応性を、意識のある無拘束マウスにおいて測定した。マウスに生理食塩水を噴霧投与し、次いで、1回に3分間、用量を段階的に上げた(2.5〜50mg/ml)メタコリンを噴霧投与した。各噴霧の後、3分間、呼吸パラメーターの指示値を記録し、その間にPenh値を決定した。データは、10回の独立した実験の平均値±SEMを表す。#は、SAL+SALに対してP<0.05であることを表し、は、OVA+SALに対してP<0.05であることを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGFBP−3またはその類似体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを投与するステップを含む、被検体の気道反応性亢進に関連した状態を治療する方法。
【請求項2】
前記類似体がGGG−IGFBP−3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベクターがアデノウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記状態が喘息である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
内因性IGFBP−3の産生を増大させる1種または複数種の作用物質を投与するステップを含む、被検体の気道反応性亢進に関連した状態を治療する方法。
【請求項6】
外因性IGFBP−3ポリペプチドまたはその類似体を投与するステップを含む、被検体の気道反応性亢進に関連した状態を治療する方法。
【請求項7】
前記類似体がGGG−IGFBP−3である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
IGFBP−3またはその類似体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを投与するステップを含む、閉塞性呼吸器障害を治療する方法。
【請求項9】
前記類似体がGGG−IGFBP−3である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベクターがアデノウイルスである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記状態が喘息である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
IGFBP−3またはその類似体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを投与するステップを含む、下部呼吸器組織の炎症を軽減する方法。
【請求項13】
前記類似体がGGG−IGFBP−3である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターがアデノウイルスである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記状態が喘息である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
正常な被検体のIGFBP−3の発現レベルと比較して、ある被検体のIGFBP−3の発現レベルを検出するステップを含む、気道反応性亢進に関連した状態を有するかまたは気道反応性亢進に関連した状態の素因を有する被検体を、診断する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−530081(P2008−530081A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554680(P2007−554680)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001125
【国際公開番号】WO2006/085226
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(508143764)バイオキュア ファーマ エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOCURE PHARMA, LLC
【Fターム(参考)】