説明

インタラクティブボード用の透過型スクリーン、インタラクティブボード、インタラクティブボードシステム

【課題】コントラストの高い映像を表示可能なインタラクティブボード用の透過型スクリーン、これを備えるインタラクティブボード、インタラクティブボードシステムを提供する。
【解決手段】インタラクティブボード50用のスクリーン10は、単位プリズム111が入射側の面に複数配列されたプリズム層11と、プリズム層11よりも出射側に設けられ、スクリーン10の平面性を維持する剛性を有する基板層13と、プリズム層11よりも出射側に設けられ、光を拡散する作用を有する光拡散層12と、光拡散層12よりも出射側に設けられ、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層である接合層15bとを備え、スクリーン10を構成する各層が空気及び隣接する層となす界面の総数をNとするとき、着色層である接合層15bは、その出射側の面15b−1がスクリーン10の厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタラクティブボード用の透過型スクリーン、インタラクティブボード、インタラクティブボードシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、会議や授業等の場面において、ボード上に描いた文字や図形を、そのままパーソナルコンピュータに入力したり、パーソナルコンピュータの画像情報をボード上に投影し、手書きされたボード上の文字や画像をパーソナルコンピュータ上に表示したりできるインタラクティブボードと呼ばれる電子黒板の利用が広まってきている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に示すインタラクティブボードでは、パーソナルコンピュータからの画像を、ボードの前面側、即ち、観察者側から投射している。そのため、ボードに手書きで文字等の情報を書き加える際に、投影画像が遮られるという問題や、ボードの前面に投影機を設置するための場所が必要となるという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献2に示すような、背面から投射された映像を表示可能な透過型スクリーンをボードとして用い、パーソナルコンピュータ等の表示部の画像を、光源装置を用いてボード(透過型スクリーン)の背面側から投射して表示するインタラクティブボード等も開発が進められている。また、特許文献3に示すように、透過型スクリーンを用いた対話型のリアプロジェクションテレビの開発も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3093288号公報
【特許文献2】特開2004−70188号公報
【特許文献3】特開2008−46177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インタラクティブボードは、会議や授業等において使用されるため、明室環境下であっても明瞭な映像を表示することが求められており、コントラストの向上は常々求められている。
特許文献1〜3には、このようなコントラスト向上に関する対策は開示されていない。
【0006】
本発明の課題は、コントラストが高く良好な映像を表示可能なインタラクティブボード用の透過型スクリーン、これを備えるインタラクティブボード、インタラクティブボードシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、複数の層が積層されて形成され、背面側から映像光を投射するインタラクティブボード用の透過型スクリーンであって、入射側に設けられ、光が入射する入射面(A1)と前記入射面から入射した光の少なくとも一部を全反射する全反射面(A2)とを備える単位プリズム(111)が入射側の面に複数配列されたプリズム層(11)と、前記プリズム層よりも出射側に設けられ、該透過型スクリーンの平面性を維持する剛性を有する基板層(13,23)と、前記プリズム層よりも出射側に設けられ、光を拡散する作用を有する光拡散層(12)と、前記光拡散層よりも出射側に設けられ、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層(15b,23,141)と、を備え、該透過型スクリーンにおいて、前記複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数をN(ただし、Nは2以上の整数)とするとき、前記着色層は、その出射側の面(15b−1,23−1,341−1)が該透過型スクリーンの厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられること、を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン(10,20,30)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、出射側に、少なくともハードコート機能を有する機能層(14,34)が設けられていること、を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン(10,20,30)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、該透過型スクリーンを構成する各層を一体に接合する少なくとも1つの接合層(15a〜15c)を備え、前記接合層のうち最も出射側に位置するもの(15b)は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層であること、を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン(20)である。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、前記基板層(23)は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層であること、を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン(20)である。
請求項5の発明は、請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、前記機能層(34)は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層(341)であること、を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン(30)である。
【0008】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーン(10,20,30)と、前記透過型スクリーンを支持する支持部材(51)と、を備えるインタラクティブボード(50)である。
請求項7の発明は、請求項6に記載のインタラクティブボード(50)と、前記インタラクティブボードの前記透過型スクリーン(10,20,30)の背面側から映像光を投射する光源部(60)と、前記インタラクティブボード用の透過型スクリーンの観察面への接触による入力を検出して検出信号を出力する検出部と、前記検出部からの検出信号に応じて、表示する映像に応じた映像光を前記光源部か投影させる制御部(61)と、を備えるインタラクティブボードシステムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明のインタラクティブボード用の透過型スクリーンは、複数の層が積層されて形成され、入射側に設けられ、入射面と全反射面とを備える単位プリズムが入射側の面に複数配列されたプリズム層と、プリズム層よりも出射側に設けられ、透過型スクリーンの平面性を維持する剛性を有する基板層と、プリズム層よりも出射側に設けられ、光を拡散する作用を有する光拡散層と、光拡散層よりも出射側に設けられ、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層とを備え、透過型スクリーンにおいて、複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数をN(ただし、Nは2以上の整数)とするとき、着色層は、その出射側の面が透過型スクリーンの厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられるものとした。
ここで、仮に、透過型スクリーンに着色層を設けない場合、出射側(観察面側)から入射した照明光等の外光の一部が、透過型スクリーンの内部に進んで各層の界面で反射して観察者側に到達したり、拡散層で後方散乱(バックスキャッタ)を生じて散乱光となって観察者側に到達したりして、映像のコントラストが低下する。
このような外光の反射光や散乱光は、反射した界面や拡散層よりも出射側(観察者側)にある層を少なくとも2回通過しているが、映像光は、透過型スクリーンを構成する層を入射側から出射側へ1回のみ通過している。
従って、本発明では、着色層を、光拡散層よりも出射側であり、かつ、透過型スクリーンにおいて、透過型スクリーンを構成する複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数をNとするとき、その出射側の面が該透過型スクリーンの厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けた。これにより、映像光は、着色層を1回通過するのに対し、着色層より光源側(入射側)の界面で反射した外光の反射光や散乱光は、着色層を少なくとも2回通過することになる。また、着色層に外光が到達するまでに透過する界面の数を低減できる。よって、外光の反射光や散乱光は、着色層により効果的に吸収されて光の減衰量が多くなり、外光による映像のコントラスト低下を極力低減し、高コントラストの良好な映像を表示できる。
【0010】
(2)インタラクティブボード用の透過型スクリーンは、出射側に、少なくともハードコート機能を有する機能層が設けられているので、透過型スクリーンの観察面(出射側表面)が傷つくことを極力抑えることができ、スクリーンの利便性や品位を向上させることができる。
【0011】
(3)インタラクティブボード用の透過型スクリーンは、透過型スクリーンを構成する各層を一体に接合する少なくとも1つの接合層を備え、その接合層のうち最も出射側に位置するものが、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層である。従って、出射側(観察面側)から入射した照明光等の外光を効果的に吸収でき、映像のコントラストを向上させることができる。また、接合層を形成する樹脂に顔料や染料等を含有させることにより、形成できるので、製造が容易である。
【0012】
(4)基板層は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層であるので、出射側(観察面側)から入射した照明光等の外光を効果的に吸収でき、映像のコントラストを向上させることができる。
【0013】
(5)機能層は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層であるので、出射側(観察面側)から入射した照明光等の外光を効果的に吸収でき、映像のコントラストを向上させることができる。
【0014】
(6)本発明のインタラクティブボード用の透過型スクリーンと、透過型スクリーンを支持する支持部材を備えるインタラクティブボードであるので、コントラストの高い映像表示が可能である。
【0015】
(7)本発明のインタラクティブボードと、このインタラクティブボードの透過型スクリーンの背面側から映像光を投射する光源部と、インタラクティブボード用の透過型スクリーンの観察面への接触による入力を検出して検出信号を出力する検出部と、検出部からの検出信号に応じて、表示する映像に応じた映像光を光源部から投影させる制御部とを備えるインタラクティブボードシステムであるので、コントラストの高い映像を表示でき、品質の高いインタラクティブボードシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のインタラクティブボード50及びインタラクティブボードシステムを示す図である。
【図2】第1実施形態のスクリーン10の層構成を説明する図である。
【図3】単位プリズム111の形状を説明する図である。
【図4】第1実施形態のスクリーン10及び比較例のスクリーン10Bに入射した外光を説明する図である。
【図5】第2実施形態のスクリーン20の層構成を示す図である。
【図6】第3実施形態のスクリーン30の層構成を示す図である。
【図7】スクリーンの変形形態の一例を示す図である。
【図8】スクリーンの変形形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のインタラクティブボード50及びインタラクティブボードシステムを示す図である。
インタラクティブボードシステムは、インタラクティブボード50と、投影機60と、パーソナルコンピュータ61と、インタラクティブボード50の観察面上に文字や図形等を描画可能な入力部62と、不図示の情報検出部とを備えている。
インタラクティブボード50は、支持部材51とインタラクティブボード用の透過型スクリーン(以下、理解を容易にするため、単にスクリーン又はボードという)10とを備えている。このインタラクティブボード50は、背面側から映像光を投射して観察面に映像を表示する形態である。
支持部材51は、スクリーン10の四辺を保持してその平面性を維持し、かつ、所定の高さにスクリーン10を支持する部材である。なお、支持部材51は、スクリーン10の高さを変えられるものとしてもよいし、変えられないものとしてもよい。また、支持部材51の床面との接地部分に車輪等を設けて、移動可能な形態としてもよい。
【0019】
スクリーン10は、映像を表示したり、タッチペン等の入力部62を用いて使用者Sが観察面上に文字等の情報を描画したりすることが可能なボードである。このスクリーン10は、透過型スクリーンであり、インタラクティブボード50の背面側に位置する投影機60からスクリーン10の背面に投影された映像光を透過し、その観察面に表示可能である。このスクリーン10の形状に関する詳細は、後述する。
投影機60は、スクリーン10(インタラクティブボード50)の背面側から映像光Lを投射する光源部である。本実施形態の投影機60は、プロジェクタであり、図1に示すように、スクリーン10の中央部より下側から斜め上へ向けて映像光を投影する形態のものである。
【0020】
入力部62は、スクリーン10の観察面にタッチするためのタッチペンやマーカー等の部材である。入力部62は、使用者Sの指であってもよい。
不図示の情報検出部は、入力部62によって描画された文字や図形等の情報を検出し、制御部へ伝送する機能を有している。この情報検出部は、例えば、スクリーン10の観察面側表面に設けられたタッチパネルや、スクリーン10の上部及び下部等に配置され、入力部62が接触した位置を検出する赤外線センサ等の位置センサ等を用いることができる。本実施形態の情報検出部は、位置センサを用いており、スクリーン10の観察面上の入力部62の座標位置を検出することにより、使用者Sが観察面上に描画した図形や文字等の情報を検出し、パーソナルコンピュータ等の制御部に検出した信号を出力する。
この情報検出部は、パーソナルコンピュータ等の制御部と有線又は無線によって通信可能であり、本実施形態の情報検出部は、パーソナルコンピュータ61とUSBケーブル等により接続され、通信可能となっている。
【0021】
パーソナルコンピュータ61は、スクリーン10に表示する情報を投影機60へ出力したり、情報検出部からの情報を取り込んでデータ化したり、取り込んだ情報を含む映像を出力したりする制御部と、スクリーン10に表示する画像情報や、各種のアプリケーションのプログラム等を記憶する記憶装置である不図示の記憶部とを備えている。制御部は、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成され、インタラクティブボードシステムを統括的に制御する部分である。この制御部は、情報検出部の検出信号に基づいて、入力部62が接触した観察面の座標位置を判定したり、入力部62で描画された文字や図形等を判別したりする。
本実施形態のパーソナルコンピュータ61は、USBケーブル等を用いて有線で情報検出部及び投影機60と接続され、通信可能となっているが、これに限らず、少なくとも一方と無線で通信可能な形態としてもよい。
なお、本実施形態ではパーソナルコンピュータ61を用いる例を示したが、少なくともインタラクティブボードシステムを統括的に制御可能な機能を有するものであれば、例えば、携帯電話等の携帯情報端末を用いてもよく、使用環境等に応じて適宜選択して用いてよい。
【0022】
本実施形態のインタラクティブボードシステムは、以上の構成により、パーソナルコンピュータ61が映像情報を投影機60に出力し、投影機60がインタラクティブボード50の背面へ映像光を投射し、インタラクティブボード50が観察面(スクリーン10の観察者側の面)に映像を表示する。また、情報検出部は、入力部62を用いて使用者Sによって接触された観察面の座標位置を検出し、パーソナルコンピュータ61が、座標位置を判定できる。この位置情報は、例えば、パーソナルコンピュータ61の画面の位置情報と、観察面の位置情報(座標情報)とが一致するように、使用者Sがインタラクティブボード50又はパーソナルコンピュータ61の調節部(図示せず)を操作して、予め調整している。
【0023】
これにより、使用者Sが入力部62を用いてスクリーン10の観察面上に描画した図形や文字等を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示することができる。また、例えば、パーソナルコンピュータ61の表示画面をインタラクティブボード50に表示し、使用者Sは、マウスで操作するように入力部62を操作してパーソナルコンピュータ61を操作することもできる。
さらに、スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりできる形態とすることもできる。
【0024】
図2は、第1実施形態のスクリーン10の層構成を説明する図である。図2では、スクリーン10を、使用状態における画面上下方向に平行であって、スクリーン10の厚み方向(スクリーン面に直交する方向)に平行な方向で切断した場合の断面の一部を拡大して示している。
ここで、スクリーン面とは、スクリーン10全体として見たときにおける、スクリーンの平面方向となる面を示すものであり、本明細書中及び特許請求の範囲において、同一の定義として用いている。
スクリーン10は、使用状態における光の入射側(背面側)から順に、プリズム層11、光拡散層12、基板層13、表面機能層14を有し、これらの層が積層されて形成されている。なお、図3に示すように、本実施形態のスクリーン10は、プリズム層11が光拡散層12の入射側に一体に形成されており、光拡散層12と基板層13、基板層13と表面機能層14とは、それぞれ接合層15a,15bを介して一体に接合されている。このスクリーン10は、投影機60から投影された映像光Lを結像して表示する。
【0025】
プリズム層11は、スクリーン10の最も入射側(背面側)に設けられており、入射側の面には、単位プリズム111が複数配列されている。このプリズム層11は、投影機60から投影された映像光を偏向し、垂直方向(画面上下方向)においてスクリーン10の正面方向へ略平行光として観察面側へ出射する光線制御作用を有している。
単位プリズム111は、光が入射する入射面A1と、入射面A1から入射した光の少なくとも一部を全反射する全反射面A2とを備えるプリズム形状である。
【0026】
図3は、単位プリズム111の形状を説明する図である。
プリズム層11は、前述の図2に示すように、入射側(背面側)の面に、単位プリズム111がシート面に沿って一方向(垂直方向)に複数配列されている。
単位プリズム111は、図3に示すように、入射側へ凸となる形状であり、光が入射する入射面A1と、入射面A1から入射した光の少なくとも一部を全反射する全反射面A2とを備えている。プリズム層11は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により形成される。
図3に示すように、下方に位置する投影機60から斜めに照射された映像光のうち入射面A1から単位プリズム111へ入射した光の少なくとも一部(光L1)は、入射面A1で屈折して全反射面A2側へ進み、全反射面A2で全反射し、垂直方向においてスクリーン面の法線方向に略平行光となって観察者側へ進む。
【0027】
本実施形態の単位プリズム111は、入射面A1と全反射面A2とによって形成される頂角α=38°であり、その配列ピッチP=50μmである。また、本実施形態のプリズム層11は、屈折率は、1.55のウレタンアクリレート系樹脂製である。
【0028】
光拡散層12は、光を拡散する作用を有する層であり、プリズム層11の出射側(観察面側)に配置されている。光拡散層12は、光透過性を有する樹脂に、拡散材が略均一に分散するように配合されたシート状の部材を用いることができる。
本実施形態の光拡散層12は、プリズム層11の出射側に一体に形成されており、その厚さが200μmであり、屈折率が1.55であるMBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂を基材とし、拡散材としてシリコン系ビーズ(屈折率1.41、粒径約2μm)とアクリル系ビーズ(屈折率1.53、粒径約8μm)とを用いており、拡散材は略均一に混錬されている。本実施形態の光拡散層12は、その基材に拡散材が配合される割合が約7.6重量%である。
【0029】
本実施形態の光拡散層12は、屈折率及び粒径が異なる2種類の拡散材(シリコン系ビーズ、アクリル系ビーズ)を含有している。この効果について以下に説明する。
シリコン系ビーズは、アクリル系ビーズに比べてその屈折率が小さく、光拡散層12を形成するMBS樹脂との屈折率差も大きい。従って、シリコン系ビーズは、少量で、光に対して高い拡散性を発揮することができる。
しかし、シリコン系ビーズのみを光拡散層12に拡散材として用いた場合には、シリコン系ビーズが少量であり、かつ、その粒径が小さいため、拡散材に当らず、拡散作用を受けずに出射する映像光が生じ、そのような光が観察者には輝線のように観察され、画質が低下する場合がある。
そこで、拡散材を含有する基材となる樹脂との屈折率差が小さく、その粒径もシリコン系ビーズに比べて大きいアクリル系ビーズを、シリコン系ビーズと組み合わせて用いることにより、上述のような輝線の原因となる光を拡散することができる。しかも、アクリル系ビーズは、その拡散作用が小さいので、所望する光拡散層12の拡散性に大きな影響を与えることなく、輝線を大幅に低減することができる。
【0030】
なお、光拡散層12は、その厚みを適宜選択でき、また、拡散材を含有する基材となる樹脂についてもMS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂等の他のアクリル系樹脂や、TAC(トリアセテートセルロース)やPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)樹脂等、適宜選択できる。また、拡散材は、ガラスビーズや、プラスチックビーズ等の無機又は有機の化合物の略透明な粒子を適宜選択できる。拡散材の粒径は、光の拡散が波長に依存しないように、1μm以上であることが好ましい。
【0031】
本実施形態の光拡散層12は、プリズム層11のベースとなる層である。プリズム層11及び光拡散層12は、例えば、プリズム層11の逆形状を有し、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂が塗布されて充填された成形型に対して、光拡散層12を積層して光拡散層12側から加圧し、紫外線を照射する等して樹脂を硬化させた後に、成形型から剥離する等して形成される。
【0032】
基板層13は、このスクリーン10の平面性を維持する基板となる層である。この基板層13は、スクリーン10を構成する他の層に比べて厚さが最も厚く、これにより、スクリーン10の平面性を維持するために充分な剛性を有している。従って、スクリーン10は、基板層13を備えることにより、剛直となり、その観察面に筆記された場合にも透過型スクリーンが撓んだり、変形したり、破損したりすることを防止できる。
本実施形態の基板層13は、屈折率1.52であり、厚さ6mmであり、光透過性を有する略平板状のガラス板を用いている。なお、基板層13としては、PC樹脂やMBS樹脂、MS樹脂等の樹脂製のシート状の部材を用いてもよい。また基板層13の厚さは、スクリーンの平面性維持の観点から、樹脂製のシート状の部材の場合で8〜10mmの範囲内、ガラス板の場合で4〜8mmの範囲内とすることが特に好ましいが、適宜自由に選択してよい。
【0033】
表面機能層14は、スクリーン10の最も観察面側に設けられ、このスクリーン10の観察面を傷等から保護する耐擦傷性と、防眩機能とを備える機能層であり、筆記しやすい平滑性も有している。
スクリーン10の観察面(前面)は、使用者Sがタッチペン等の入力部62によって文字等を筆記する面であるため、耐擦傷性が求められ、また、筆記等が滑らかに行えるように、ある程度の平滑性も求められる。その一方で、スクリーン10の観察面は、室内の照明光等の反射や映り込み等を低減し、画面の見易さを向上させる観点から、防眩機能を有していることが好ましい。
【0034】
本実施形態の表面機能層14は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を機能基材層141とし、その観察面側となる表面に、スチレン粒子(平均粒径7.5〜8.0μm、屈折率1.59)を含有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、多官能アクリルモノマーとビニルモノマーとを重合させたものにシリコン系レベリング剤を添加したもの)を膜厚7μm程度で塗布して硬化させ、防眩層142が形成されている。また、本実施形態の表面機能層14は、その表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が136nm、最大高さRz(JIS B0601−2001)が453nmであり、防眩機能を発揮するに十分な表面粗さを有しつつ、筆記性を妨げることはない。
【0035】
接合層15a,15bは、光拡散層12と基板層13、基板層13と表面機能層14とをそれぞれ接合するものである。
この接合層15a,15bは、紫外線硬化型のアクリル系樹脂や、圧力により粘着性が顕在化する感圧粘着型のアクリル系樹脂等を用いることができる。また、接合層15a,15bは、その厚みを10〜100μmの範囲内で適宜選択できる。
接合層15bは、暗色系の顔料や染料等を含有することにより着色された着色層である。この接合層15bは、光拡散層12及びプリズム層11よりも出射側に形成されている。また、着色層(接合層15b)は、スクリーン10を構成する各層が空気及び隣接する層となす界面の総数をN(ただし、Nは2以上の整数)とするとき、その出射側の面がスクリーン10の厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられている。
なお、ここでいう界面とは、スクリーンを構成する各層が隣接する層や空気となす面であり、界面の総数とは、そのスクリーン全体での界面の数である。
本実施形態では、スクリーン10の界面の総数は8であり、接合層15b(着色層)は、その出射側の面15b−1がスクリーン10の厚み方向において出射側から数えて3番目となる位置に設けられており、条件を満たしている。
【0036】
本実施形態の接合層15bは、アクリル樹脂製であり、その厚みが25μm、屈折率が1.49である。
また、本実施形態の接合層15bは、黒色の顔料を含有しており、着色されている。なお、接合層15bは、黒色以外の他の暗色系の顔料や染料を含有していてもよい。本実施形態の接合層15bのティント率は25%であるが、接合層15b(着色層)のティント率は、10〜50%の範囲内、より好ましくは10〜30%の範囲内で適宜選択してよい。ここで、ティント率とは、着色されていない状態の光の透過率を100%とし、着色された状態での光の透過率をB%とした場合、ティント率A%は、A=100−Bで表されるものである。
接合層15bは、着色層であるので、スクリーン10の観察面側から入射する照明光等の不要な外光を吸収できる。従って、本実施形態によれば、コントラストを向上させることができる。
【0037】
図4は、本実施形態のスクリーン10及び比較例のスクリーン10Bに入射した外光を説明する図である。図4(a)は、本実施形態のスクリーン10に入射した外光の様子を示し、図4(b)は、比較例のスクリーン10Bに入射した外光の様子を示している。
比較例のスクリーン10Bは、黒色顔料を有する着色層16を有し、スクリーン10を構成する複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数が9であり、着色層16の出射側の面16−1がスクリーン10Bの厚み方向において出射側から数えて6番目であり、9/2番目より大きい値となる位置に設けられている点以外は、本実施形態のスクリーン10と略同様の形態である。
この着色層16は、MBS樹脂製であり、本実施形態の接合層15bに含まれる黒色顔料と同じ黒色顔料を含有しており、また、そのティント率も本実施形態の接合層15bと同じく25%である。
【0038】
仮に、着色層16を設けないスクリーン(不図示。比較例のスクリーン10Bの着色層16を備えない形態に相当)とした場合には、観察面側(出射側)から入射した外光は、透過型スクリーンの各層の界面での外光の反射し、その反射光が観察者側に届く。また、光拡散層12に到達した外光が、光拡散層12の拡散材によって後方散乱(バックスキャッタ)を生じる。従って、着色層16を設けない透過型スクリーンとした場合には、上述のような外光の反射光や散乱光が観察者側に届き、映像のコントラストが著しく低下する。
次に、図4(b)に示すように、着色層16が、スクリーン10Bの厚み方向においてその出射側の面16−1が出射側から数えて界面の総数をNとするときN/2番目より大きい位置に設けられた比較例のスクリーン10Bでは、観察面側(出射側)から入射した外光G2は、スクリーン10Bの表面や各層の界面でその一部が反射しながら背面側(入射側)へ進み、着色層16で吸収される。着色層16を透過して光拡散層12に達した外光の一部は、後方散乱により生じた散乱光となるが、一部が着色層16で吸収、減衰される。しかし、着色層16に到達するまで各層の界面で外光G2の一部が反射しており、これらの外光の反射光は、着色層16で吸収されずに観察者側へ届き、コントラストの低下を招く。
【0039】
一方、図4(a)に示すように、本実施形態のスクリーン10では、スクリーン10を構成する複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数をNとするとき、接合層15b(着色層)は、その出射側の面15b−1が、スクリーン10の厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置であって、光拡散層12よりも出射側に形成されている。
本実施形態のスクリーン10に観察面側から入射した外光G1は、スクリーン10の表面で一部が反射するが、その大半が着色層である接合層15bで吸収され、減衰される。
また、着色層である接合層15bで吸収されず、接合層15bを透過してスクリーン10の内部に進み、接合層15bより入射側に位置する各層の界面(例えば、基板層13と接合層15aの界面)等で反射して観察者側に向かう外光G1の反射光や、光拡散層12に到達した外光G1の後方散乱による散乱光は、着色層である接合層15bに到達することにより、吸収される。
【0040】
さらに、そのような外光G1の反射光や散乱光が接合層15bを透過したとしても、着色層である接合層15bを少なくとも2回透過することとなるので、接合層15bによって効果的に吸収され、その光量が大幅に減衰される。
一方、映像光は、接合層15bも含めて透過型スクリーンを構成する各層を1回しか通過せず、着色層である接合層15bを透過した場合にも、その光の減衰量は小さく、観察者側に届く光量は、外光の反射光や散乱光に比べて大幅に大きい。
【0041】
従って、本実施形態のスクリーン10によれば、着色層(接合層15b)より光源側(映像光の入射側)で生じた外光の反射光や散乱光を、着色層(接合層15b)が効果的に吸収して減衰させることができ、外光G1による映像のコントラストの低下を極力低減することができ、コントラストの高い映像を表示することができる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、照明光等の外光によるコントラストの低下を低減し、コントラストが高く良好な映像を表示できる。
また、本実施形態によれば、接合層15bに顔料等を含有させて着色層としているので、層構成を増やすことがなく、映像光が各層の界面で一部が反射することによる光量の低下を抑え、明るい映像を表示でき、かつ、スクリーン10の薄型化及び軽量化を実現できる。
【0043】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のスクリーン20の層構成を示す図である。
第2実施形態のスクリーン20は、着色層に相当する層の位置が第1実施形態のスクリーン10とは異なる点以外は、第1実施形態のスクリーン10と略同様の形態である。従って、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態のスクリーン20は、前述の第1実施形態の支持部材51により支持され、インタラクティブボード50としてインタラクティブボードシステムに用いられる。
スクリーン20は、入射側(背面側)から、プリズム層11、光拡散層12、接合層15a、基板層23、接合層15c、表面機能層14を備え、これらの層が積層されて形成されている。
【0044】
基板層23は、スクリーン20の平面性を維持する剛性を有する板状の部材である。本実施形態の基板層23は、屈折率1.52、厚さ6mmのガラス板であり、黒色の顔料を含有し、着色されており、そのティント率は、25%である。
この基板層23は、上述のように、着色された着色層であり、スクリーン20を構成する各層が空気及び隣接する層となす界面の総数をNとするとき、その出射側の面がスクリーン20の厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置であって、光拡散層12よりも出射側となる位置に設けられている。本実施形態では、スクリーン20の界面の総数は8であり、基板層23は、その出射側の面23−1が出射側から数えて4番目となる位置に設けられている。
なお、基板層23は、樹脂製としてもよいし、染料を含有してもよいし、黒色以外の暗色系の顔料又は染料を含有していてもよい。また、基板層23(着色層)のティント率は、10〜50%の範囲内、より好ましくは10〜30%の範囲内で適宜選択してよい。
接合層15cは、前述の接合層15aと同様の層であり、基板層23と表面機能層14(機能基材層141)とを接合する層である。この接合層15cは、着色されていない。
【0045】
本実施形態とした場合にも、前述の第1実施形態と同様に、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
【0046】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のスクリーン30の層構成を示す図である。
第3実施形態のスクリーン30は、着色層に相当する層の位置が第1実施形態のスクリーン10とは異なる点以外は、第1実施形態のスクリーン10と略同様の形態である。従って、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第3実施形態のスクリーン30は、前述の第1実施形態の支持部材51により支持され、インタラクティブボード50としてインタラクティブボードシステムに用いられる。
スクリーン30は、入射側(背面側)から、プリズム層11、光拡散層12、接合層15a、基板層13、接合層15c、表面機能層34を備え、これらの層が積層されて形成されている。
【0047】
表面機能層34は、機能基材層341と防眩層142とを有している。
機能基材層341は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材であり、黒色顔料を含有しており、着色されている。即ち、機能基材層341は、着色層である。この機能基材層341(着色層)は、光拡散層12よりも出射側であって、スクリーン30を構成する各層が空気及び隣接する層となす界面の総数をNとするとき、その出射側の面341−1がスクリーン30の厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられている。
本実施形態では、スクリーン30の界面の総数は8であり、機能基材層341は、その出射側の面341−1が出射側から数えて2番目となる位置に設けられている。また、機能基材層341のティント率は、25%である。
なお、機能基材層341は、染料を含有してもよいし、黒色以外の暗色系の顔料又は染料を含有していてもよい。また、機能基材層341(着色層)のティント率は、10〜50%の範囲内、より好ましくは10〜30%の範囲内で適宜選択してよい。
【0048】
本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様に、高いコントラストを有し良好な向上効果を奏することができる。
特に、本実施形態によれば、着色層(機能基材層341)が第1実施形態及び第2実施形態に比べて出射側に配置されるので、第1実施形態及び第2実施形態に比べて外光吸収効果をさらに高め、コントラスト向上効果をより高めることができる。
【0049】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、単位プリズム111は、入射面A1と全反射面A2とを備える全反射プリズムであり、シート面に沿って画面上下方向(垂直方向)に配列される例を示したが、これに限らず、画面左右方向(水平方向)に配列してもよいし、以下に示すような形態としてもよい。
図7及び図8は、スクリーンの変形形態の一例を示す図である。
各実施形態において、プリズム層11は、単位プリズム111がシート面に沿って垂直方向に配列される例を示したが、例えば、図7(a)に示す変形形態のスクリーン40のように、単位プリズム111がシート面に沿って同心円状に配列されているプリズム層41としてもよい。単位プリズム111は、シート面の延長上に位置する点Oを中心として同心円状に配列されている。このとき、投影機60は、点Oを通りシート面に垂直な直線上に位置している。
【0050】
また、各実施形態において、単位プリズム111は、入射面A1と全反射面A2とからのみ形成される例を示したが、例えば、図7(b)に示す変形形態のプリズム層712の単位プリズム711のように、全反射プリズム形状711aと屈折フレネルレンズ形状711bとを有する、ハイブリッド型のプリズム形状としてもよい。
全反射プリズム形状711aは、入射面A1と全反射面A2とを備えており、各実施形態において示した単位プリズム111の形状の一部である。屈折フレネルレンズ形状711bは、この全反射プリズム形状711aの垂直方向下側に隣接し、入射面A1と対向し、光が入射する入射面である第3の面A3と、第3の面A3と凸形状をなす第4の面A4とを備えており、所謂、屈折フレネルレンズの形状の一部である。
この第3の面A3に入射した光L2は、界面(第3の面A3)で屈折し、画面上下方向においてスクリーン面の法線方向に略平行光となって観察面側へ進む。そのため、このようなハイブリッド型のプリズム形状とすることにより、略平行光となる映像光の光量を増やすことができ、映像の明るさを高めることができる。
【0051】
さらに、各実施形態において、プリズム層11は光拡散層12の入射側に一体に形成される例を示したが、これに限らず、図8に示すように、プリズム層81が、プリズム基材層813とプリズム部812とを有する形態としてもよい。
変形形態のスクリーン80は、プリズム層81が接合層15dにより光拡散層12の入射側の面に接合されている点以外は、前述の第1実施形態と略同様の形態である。プリズム層81は、プリズム基材層813とプリズム部812とを有する。
プリズム部812は、入射側の面に単位プリズム111が画面上下方向に複数配列されている。プリズム部812は、紫外線硬化型樹脂製であり、プリズム基材層813の入射側の面に一体に形成されている。このプリズム部812は、第1実施形態のプリズム層11を形成する紫外線硬化型樹脂と同様のものを用いて形成される。
プリズム基材層813は、プリズム部812を形成する基材となる層であり、PET樹脂製等のシート状の部材である。
このような形態としても、前述の第1実施形態と同様に、コントラストの高い良好な映像を表示できる。なお、第2実施形態及び第3実施形態においても、プリズム層81を備える形態としてもよい。
【0052】
(2)各実施形態において、単位プリズム111は、配列方向においてその形状が略一様である例を示したが、これに限らず、その形状が変化してもよい。例えば、単位プリズム111の配列方向において、スクリーン面と全反射面A2とがなす角度が配列方向の上側へ向かうにつれて大きくなるように変化してもよいし、ピッチが変化してもよい。
【0053】
(3)各実施形態において、少なくともハードコート機能を備える機能層として、表面機能層14がスクリーン10,20,30の最も出射側に位置する例を示したが、これに限らず、例えば、表面機能層14は、ハードコート機能に加えて、照明光の反射等を抑える反射防止機能、帯電防止層機能、紫外線吸収機能、防汚機能等を備える層としてもよい。
反射防止機能を有する場合は、照明光等の映りこみを防止し、さらにコントラストを向上させることができる。帯電防止機能を有する場合は、静電気を除去し、観察面上への埃等の付着を防止できる。紫外線吸収機能を有する場合は、外光に含まれる紫外線によるスクリーンの黄変を防止できる。防汚機能を有する場合は、スクリーンの表面に汚れが付着することを防止できる。
【0054】
なお、このような各種機能を有する層は1つでもよいし、複数設けてもよく、使用環境等に応じて適宜選択して組み合わせて用いてよい。また、1つの表面機能層がこれらの機能を併せ持つ形態としてもよい。
さらに、第1及び第2実施形態において、基板層13,23が十分な耐擦傷性を有するならば、ハードコート機能を有する表面機能層14を設けない形態としてもよいし、表面機能層14に替えてこれらの機能を有する層を設けてもよい。さらにまた、表面機能層14は、ハードコート機能のみを有するハードコート層としてもよく、これらの層に上述の各機能を有する層を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0055】
(4)各実施形態において、インタラクティブボード50は、スクリーン10,20,30を支持部材51によって支持したものであり、別体の投影機60によって映像光Lが背面側から投射される例を示したが、これに限らず、例えば、スクリーンと投影機とを不図示の筐体内に組み込んで一体としたリアプロジェクションテレビ型のインタラクティブボードとしてもよいし、壁面と所定の距離を離して固定されたインタラクティブボードとしてもよい。
リアプロジェクションテレビ型のインタラクティブボードとする場合、スクリーン10の背面側は筐体によって覆われ、暗室となるので、窓からの光や照明光等のような外光が、スクリーン10の背面から入射することを防止でき、コントラストの向上等を図ることができ、より明瞭な映像を表示できる。
また、壁面に所定の距離を有して固定されたインタラクティブボードとした場合、不図示のミラー部を壁面に配置し、映像光をミラーで反射してスクリーンの背面に投影する形態としてもよいし、ミラー部を備える投影機をスクリーン10の下方に配置し、映像光Lをミラー部で反射してスクリーン10の背面に投影してもよい。
このような構成とすることにより、壁面に固定されるので、背面側からスクリーン10に入射する不要な光を低減でき、コントラストの低下を低減できる。
【0056】
(5)各実施形態において、インタラクティブボード50及びパーソナルコンピュータ61が1台のみ使用されている例を示したが、これに限らず、例えば、複数のパーソナルコンピュータ61をインターネット等に接続した状態で複数のインタラクティブボード50を使用してもよい。このような形態とすれば、遠隔地であっても描画された情報を共有することができ、テレビ会議システム等との併用により、遠隔地同士の会議を効率的に行うことができる。
【0057】
(6)各実施形態において、インタラクティブボードシステムは、入力部62が接したスクリーンの観察面上の座標位置を検出してパーソナルコンピュータ61へ出力する例を示したが、これに限らず、例えば、インタラクティブボードとは別体であってパーソナルコンピュータ61に有線又は無線で接続される不図示の入力装置等に入力部62により使用者Sが筆記した文字等の情報をスクリーン上に投影する形態としてもよい。なお、このような別体の入力装置としては、タブレット等を用いることができる。
【0058】
(7)各実施形態において、投影機60は、スクリーン10,20,30の下方から映像光を投射する形態を示したが、これに限らず、投影機60を天井等に設置する等して、映像光をスクリーンの上方から投射する形態としてもよい。この場合、プリズム層11の形状は、各実施形態において示した形状とは画面上下方向において逆にした形態とすればよい。
【0059】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0060】
10,20,30 スクリーン
11 プリズム層
12 光拡散層
13,23 基板層
14,34 表面機能層
141,341 機能基材層
142 防眩層
15a〜15c 接合層
50 インタラクティブボード
51 支持部材
60 投影機
61 パーソナルコンピュータ
62 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層されて形成され、背面側から映像光を投射するインタラクティブボード用の透過型スクリーンであって、
入射側に設けられ、光が入射する入射面と前記入射面から入射した光の少なくとも一部を全反射する全反射面とを備える単位プリズムが入射側の面に複数配列されたプリズム層と、
前記プリズム層よりも出射側に設けられ、該透過型スクリーンの平面性を維持する剛性を有する基板層と、
前記プリズム層よりも出射側に設けられ、光を拡散する作用を有する光拡散層と、
前記光拡散層よりも出射側に設けられ、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む着色層と、
を備え、
該透過型スクリーンにおいて、前記複数の層が空気及び隣接する層となす界面の総数をN(ただし、Nは2以上の整数)とするとき、前記着色層は、その出射側の面が該透過型スクリーンの厚み方向において出射側から数えてN/2番目以下となる位置に設けられること、
を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、
出射側に、少なくともハードコート機能を有する機能層が設けられていること、
を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、
該透過型スクリーンを構成する各層を一体に接合する少なくとも1つの接合層を備え、
前記接合層のうち最も出射側に位置するものは、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層であること、
を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、
前記基板層は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層であること、
を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン。
【請求項5】
請求項2に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンにおいて、
前記機能層は、光を吸収する暗色系の染料又は顔料を含む前記着色層であること、
を特徴とするインタラクティブボード用の透過型スクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のインタラクティブボード用の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンを支持する支持部材と
を備えるインタラクティブボード。
【請求項7】
請求項6に記載のインタラクティブボードと、
前記インタラクティブボードの前記透過型スクリーンの背面側から映像光を投射する光源部と、
前記インタラクティブボード用の透過型スクリーンの観察面への接触による入力を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出部からの検出信号に応じて、表示する映像に応じた映像光を前記光源部か投影させる制御部と、
を備えるインタラクティブボードシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−181432(P2012−181432A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45272(P2011−45272)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】