説明

インターフェロンβおよびIL−2Rアンタゴニストを用いて自己免疫疾患を治療する方法

【課題】多発性硬化症を含む自己免疫疾患を治療方法の提供。
【解決手段】インターフェロンβおよびインターロイキン-2レセプター(IR-2R)アンタゴニストを投与する工程を包含する自己免疫疾患を治療する方法。IL-2Rアンタゴニストは、α鎖のようなIL-2Rの1つまたは複数の鎖に特異的な抗IL-2Rモノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)である。インターフェロンβがインターフェロンβ1a又は/およびインターフェロンβ1bを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2002年6月28日に出願された、米国仮出願第60/393,021号(これはその全体が参照として本明細書に組み入れられる)の利益を主張する。
【0002】
分野
自己免疫疾患を治療するために有用な薬学的化合物および薬学的組成物が開示される。
【背景技術】
【0003】
背景
自己免疫疾患は、個体自身の組織に対する病理的な免疫反応から生じる症状である。免疫系がそれ以外に健常な組織を攻撃する自己免疫疾患の例には、多発性硬化症(MS)、自己免疫性ブドウ膜炎、重症筋無力症(MG)、乾癬、および慢性関節リウマチ(RA)が含まれる。
【0004】
多発性硬化症(MS)は、慢性の、神経学的な、自己免疫性の、脱髄性の疾患である。MSは、視力障害、片側失明(視神経炎)、平衡の喪失、協調運動不全、不明瞭言語、震え、しびれ、極度の疲労、知的機能の変化(例えば、記憶および集中力)、筋肉の脱力、感覚異常、および失明を引き起こし得る。多くの被験体が慢性進行性の障害を発症するが、長期間の臨床的安定性は悪化の期間を中断し得る。神経学的欠損は、永続的または消失性であり得る。米国においては、約250,000〜400,000人のMS患者が存在し、毎週新規に約200例が診断されている。全世界的には、MSは250万人の個体に影響を与え得る。なぜならば、これは米国の医師が新規な症例を報告する必要のある伝染性ではなく、かつ徴候は検出するのが困難である可能性があるため、疾患の発生は見積もられるのみであって、MSを有する実際の人の数ははるかに多い可能性があるためである。
【0005】
MSの病理学は中枢神経系に対して指向される異常な免疫応答によって特徴付けられる。特に、Tリンパ球は、脱髄を引き起こす中枢神経系のミエリン鞘に対して活性化される。脱髄プロセスにおいて、ミエリンは破壊され、プラークとして知られている硬くなった「硬化性」組織の瘢痕によって置換される。これらの損傷は、脳、視神経、および脊髄の全体にわたって、瘢痕を有する部位において見られる。脱髄は神経インパルスの伝導を妨害し、これは多発性硬化症の徴候を生じる。大部分の患者は脱髄の個体の期間から臨床的に回復し、再発性-弛張性多発性硬化症として知られている疾患の最も一般的な型の古典的な緩張および悪化の過程を生じる。
【0006】
Tリンパ球の活性化および増殖は、インターロイキン-2(IL-2)のようなオートクライン増殖因子の分泌、およびリンパ球の表面上でのそのレセプターの同時発現を伴う。休止Tリンパ球はIL-2Rを発現しないが、一旦適切な抗原によって活性化されると、その細胞はIL-2を分泌し、これは免疫系の細胞を刺激しかつIL-2Rの発現をアップレギュレートし、従って、リンパ球増殖を引き起こす。このアップレギュレーションは、多発性硬化症の免疫病因論に関与すると考えられている。
【0007】
MSを治療するためのいくつかの治療選択肢が存在する。神経学的な機能不全の急性の発作は、しばしば、メチルプレドニジロンのようなコルチコステロイドの短期間の投与で治療される。インターフェロンβは、米国においてMSの治療薬としてFDAによって認可され、代表的には、長期的な疾患の治療において慢性的に投与される。インターフェロンは、免疫の活性化および調節において役割を果たす主要なクラスのサイトカインである。インターフェロンβの推定のメカニズムには、Tリンパ球増殖の阻害;細胞接着を妨害することによる血液脳関門透過性および脳へのTリンパ球遊出の阻害;ならびに抗炎症性サイトカインのアップレギュレーションが含まれる。
【0008】
MSを治療する際の使用のために米国において認可されている2つの型のインターフェロンβは、インターフェロンβ 1aおよびインターフェロンβ 1bである。Betaseron(登録商標)として知られるインターフェロンβ 1bは1993年にMSのための治療薬として認可され、Berlex Laboratories, Inc.によって市販されている。Avonex(登録商標)として知られるインターフェロンβ 1aは、1996年に認可され、Biogen, Inc.によって市販されている。別のインターフェロンβ 1aは2002年に認可され、Rebif(登録商標)として知られており、Serono, Inc.によって市販されている。
【0009】
製造業者の処方情報に従って、Avonexは、2年間薬物を投与された被験体においてガドリニウム(Gd)増強された損傷の数を最大13%減少させ、かつ被験体の拡張障害状態スケール(Expanded Disability Status Scale (EDSS))スコアを約22%改善することが実証された。Samkoff、Hosp. Phys., 21〜7頁(2002)(非特許文献1)に従って、Rebifは、この薬物を摂取した患者において再発の割合を33%減少させることができる。医師用卓上参考書(Physicians' Desk Reference)(1996)(非特許文献2)に従って、Betaseronはこの薬物を摂取した被験体において悪化の割合を約31%減少させることが実証された。
【0010】
見てのとおり、これらの薬物のいずれもがMSを治療する際に高度に有効ではない。実際、かなりの数の個体が、インターフェロンβ治療に対して全く応答しないか、または長期にわたって応答に失敗する。従って、MSならびに他の自己免疫疾患のためのより有効な治療を開発する緊急の必要性が存在する。
【0011】
IL-2Rアンタゴニストは活性化されたTリンパ球上のIL-2Rに結合し、これはIL-2がリンパ球に結合することを阻害し、それによって活性化されたTリンパ球のIL-2依存性増殖を妨害する。そのようなIL-2Rアンタゴニストの1つは抗Tacとして知られており、これは、活性化Tリンパ球上のヒトIL-2Rのα鎖(Tac)に特異的な抗体である。ダクリズマブ(daclizumab)として一般的に知られている特定の抗Tac抗体は、組換えヒト化モノクローナル抗体である。米国特許第5,530,101号(特許文献1)は、ヒトインターロイキン-2レセプターに特異的に結合するヒト化免疫グロブリンを開示する。この特許は、SMART(登録商標)として知られる抗Tac医薬品を市販しているProtein Design Labsに与えられている。Roche Pharmaceuticalsもまた、Zenapax(登録商標)として知られる抗Tac医薬品を市販している。
【0012】
Zenapax(ダクリズマブ)は、同種異系移植拒絶を阻害するための免疫抑制剤として使用される。これは、MSを治療する際に有用であることは知られていない。ZenapaxはヒトT細胞リンパ増殖性ウイルス1型関連ミエロパシー/局所的痙性不全対麻痺(HAM/TSP)の治療において有効であることが示されてきた。Lehkyら、Ann. Neuro., 44:942〜947 (1998)(非特許文献3)。Zenapaxもまた、後部ブドウ膜炎の治療における免疫抑制剤として報告されている。Nussenblattら、Proc. Natl. Acad. Sci., 96:7462〜7466 (1999)(非特許文献4)。他の抗Tac剤には、バシリキシマブ(basiliximab)(Simulect(登録商標))、BT563(Baanら、Transplant. Proc., 33:224〜2246 (2001)(非特許文献5)を参照されたい)および7G8が含まれる。バシリキシマブは同種異系移植拒絶を妨害する際に(Kahanら、Transplantation, 67:276〜84 (1999)(非特許文献6))、および乾癬を治療する際に(OwenおよびHarrison、Clin. Exp. Dermatol, 25:195〜7 (2000)(非特許文献7))有益であると報告されている。Migβ-2は別のIL-2Rアンタゴニストであるが、これはヒトIL-2Rのβ鎖に特異的である。
【0013】
これらの先行する治療にも関わらず、MSのためのより有効な治療の探索が継続している。この疾患の進行または再発を遅らせ得るどのような治療も、神経学的な欠陥および障害を減少させることにより、この疾患を有する人に莫大に有益である。このような治療はまた、患者がMS誘導された彼らの神経学的障害のために必要とする看護の量を最小化することによって、健康管理のコストを減少させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,530,101号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Samkoff、Hosp. Phys., 21〜7頁(2002)
【非特許文献2】医師用卓上参考書(Physicians' Desk Reference)(1996)
【非特許文献3】Lehkyら、Ann. Neuro., 44:942〜947 (1998)
【非特許文献4】Nussenblattら、Proc. Natl. Acad. Sci., 96:7462〜7466 (1999)
【非特許文献5】Baanら、Transplant. Proc., 33:224〜2246 (2001)
【非特許文献6】Kahanら、Transplantation, 67:276〜84 (1999)
【非特許文献7】OwenおよびHarrison、Clin. Exp. Dermatol, 25:195〜7 (2000)
【発明の概要】
【0016】
概要
IL-2RアンタゴニストがMSを治療するために有効であることが今や発見された。特定の実施態様において、IL-2Rアンタゴニストは抗IL-2Rモノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)である。
【0017】
他の実施態様において、インターフェロンβの投与がIL-2Rのアンタゴニストの投与と併用された、自己免疫疾患を有する個体における有意な臨床的改善を提供する治療の方法が開示される。特定の実施態様において、IL-2Rアンタゴニストは、モノクローナル抗体のような抗体(例えば、ダクリズマブのような抗Tac)であり、そして自己免疫疾患は多発性硬化症である。
【0018】
抗Tacとインターフェロンβとを併用した投与が、Tリンパ球の阻害性レセプターである細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)のアップレギュレーションを引き起こすこともまた決定された。CTLA-4の発現はT細胞活性化をダウンレギュレートすることができ、自己免疫疾患においてこの作用が治療的であることを予測される。特に、可溶性アイソフォーム(sCTLA-4)と反対に膜貫通型CTLA-4アイソフォーム(mCTLA-4)はアップレギュレートされる。これは、インターフェロンβがmCTLA-4をダウンレギュレートすることおよびsCTLA-4をアップレギュレートすることが報告されているので、驚くべきことである。Giorelliら、J. Interferon Cytokine Res., 21:809〜12 (2001)。インターフェロンβおよび抗Tacの併用投与によって引き起こされたmCTLA-4のこの予測されなかったアップレギュレーションは、MSの併用治療の高度の成功の原因であり得る。
【0019】
従って、インターフェロンβおよびIL-2Rアンタゴニストの治療的有効量での併用投薬は、自己免疫疾患を治療する際に有用である。特に、この組み合わせは、MS、例えば、疾患の初期の発症、再発性-弛張性、または二次進行性MSを治療する際に有用である。これらの薬剤の組み合わせはまた、疾患の特定の徴候(例えば、視神経炎、感覚異常症、または疾患の急性のエピソード)を治療するために有用である。さらに、この組み合わせは、以前にインターフェロンβ治療単独では応答することに失敗した被験体を治療するために有用である。特定の組み合わせにおいて、IL-2Rアンタゴニストは抗Tac(例えば、ダクリズマブ)である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ダクリズマブおよびインターフェロンβを併用して用いて治療した被験体における磁気共鳴映像法(MRI)スキャンによって測定された、新規、全体、およびスーパートータル(supertotal)のコントラスト増強損傷の変化を示す3つのグラフである。これは、インターフェロンβ単独での治療の3ヶ月間のベースライン期間と、8人の被験体における併用治療後との間の差を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、図1におけるものと同じ被験体について、ベースライン期間と併用治療後との間の拡張障害状態スケール(Expanded Disability Status Scale (EDSS)(2A)およびスクリップ神経学的評定尺度(NRS)(2B)での実行によって測定されるような神経学的な実行の変化を示すグラフである。
【図3】図3Aおよび3Bは、図1におけるものと同じ被験体について、ベースライン期間と併用治療後との間の移動指標(3A)および20m歩行の時間(3B)の実行によって測定される神経学的な実行の変化を示すグラフである。
【図4】図4AおよびBは、図1におけるものと同じ被験体について、ベースライン期間と併用治療後との間の利き手(4A)および利き手でない手(4B)についての糸巻き穴試験の時間によって測定された神経学的実行の変化を示すグラフである。
【図5】図1からの7例の被験体について、ベースライン期間と併用治療後との間の、Tacエピトープを発現するCD4/CD25細胞およびCD8/CD25細胞の割合の変化を示す2つのグラフである。
【図6】図6Aおよび6Bは、図1におけるものと同じ被験体についてベースライン期間と併用治療後との間の、100細胞あたりのCD4 T細胞の有糸分裂の数(6A)および100細胞あたりのCD8 T細胞の有糸分裂の数(6B)の変化を示すグラフである。
【図7】図1におけるものと同じ被験体についてベースライン期間と併用治療後との間の、血液資料の蛍光活性化細胞ソーティングによって測定されるような、それらの表面上での細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)を発現するCD4 T細胞の数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
治療的に有効な用量のIL-2RアンタゴニストまたはインターフェロンβおよびIL-2Rアンタゴニストを併用して投与することによって自己免疫疾患を治療する方法が本明細書中で開示される。特定の実施態様において、治療される疾患は多発性硬化症である。治療される多発性硬化症が再発性-弛張性または疾患の二次進行性型である方法がさらに提供される。特定の実施態様において、IL-2Rアンタゴニストは、ヒトIL-2Rのα鎖に特異的であり、例えば、モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)である。
【0022】
多発性硬化症は、患者の80〜85%において再発性-弛張性の病気を提示する、時間的および空間的に汎発する中枢神経系の白質の障害として古典的に記載された自己免疫疾患である。診断は、脳および脊髄の磁気共鳴画像法(MRI)、体感覚性誘発電位の分析、および免疫グロブリンまたはオリゴクローナルバンドの増加量を検出するための脳脊髄液の分析によってなされ得る。MRIは特に高感度の診断ツールである。MSの存在または進行を示すMRIの異常には、T2強調画像および液体弱力化反転回復画像上での過剰に強烈な白質シグナル、活性損傷のガドリニウム増強、過剰に強烈な「ブラックホール」(グリオーシスを表す)、ならびにT1強調研究における脳萎縮症が含まれる。連続的なMRI研究は疾患の進行を示すために使用され得る。
【0023】
再発性弛張性の多発性硬化症は、明確に規定される、完全なまたは部分的な回復を伴う急性発作、および発作の間に疾患の進行が見られないことによって特徴付けられるMSの臨床経過である。
【0024】
二次進行性多発性硬化症は、最初は再発性-弛張性であり、次いで変動する割合で進行性となり、おそらく時折の再発および軽度の回復を伴うMSの臨床経過である。
【0025】
特定の実施態様において、提供されるこの方法は、インターフェロンβ治療単独に適切に応答することに失敗した被験体に実行される。インターフェロンβ治療単独に応答することの失敗は、いくつかの例において、18ヶ月の期間のインターフェロンβ治療における1回またはそれ以上の再燃、18ヶ月の治療にわたるEDSSに対する1点もしくはそれ以上の増加、または、インターフェロンβ治療の開始前に測定された6ヶ月間のベースライン期間にわたって確立された1ヶ月のコントラスト増強損傷のベースラインの平均の少なくとも2分の1に対する、脳MRIスキャン上のコントラスト増強損傷の持続もしくは再開を受けた被験体によって実証されている。これらの治療の失敗は非限定的である。当業者に公知である疾患の進行または活性の他の指標もまた、被験体がインターフェロンβ治療に応答することに失敗したか否かを決定するために使用され得る。
【0026】
インターフェロンβは、インターフェロンβ 1aおよびインターフェロンβ 1bを含む任意のβインターフェロンである。インターフェロンβは当業者に公知の手段を介して製造することができる。しかし、これはまた、いくつかの供給源からのものが米国において認可および市販されている。両方の型のインターフェロンβは米国においてMSを治療する際の使用のために認可されている。インターフェロンβ 1bは、Betaseron(Berlex Labs)の名称の下で利用可能である。インターフェロンβ 1aは、Avonex(Biogen)またはRebif(Serono)の名称の下で利用可能である。
【0027】
インターフェロンβ 1bは、165アミノ酸および約18,500ダルトンの分子量を有する高度に精製されたタンパク質である。製造業者によると、Betaseronは、ヒトインターフェロンβについての遺伝子を含む遺伝子操作されたプラスミドを有する大腸菌の株の微生物発酵によって製造される。未変性の遺伝子はヒト線維芽細胞から得られ、17位に見い出されるシステイン残基をセリンで置き換えるように変更された。インターフェロンβ 1bが多発性硬化症においてその作用を発揮するメカニズムは明確に理解されているわけではない。しかし、インターフェロンβ 1bの生物学的な応答-修飾特性が特定の細胞レセプターとのその相互作用を通して媒介されることは知られている。インターフェロンβ 1bのこれらのレセプターへの結合は、インターフェロンβ 1bの生物学的作用のメディエーターであると考えられている、多数のインターフェロン誘導性遺伝子産物(例えば、2',5'-オリゴアデニル酸シンテターゼ、プロテインキナーゼ、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)の発現を誘導する。
【0028】
インターフェロンβ 1aは、約22,500ダルトンの推定分子量を有する166アミノ酸の糖タンパク質である。製造業者によると、Avonexとして知られるインターフェロンβ 1aは、ヒトインターフェロンβ遺伝子がそこに導入された哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を利用して組換えDNA技術によって製造される。Avonexのアミノ酸配列は天然のヒトインターフェロンβのそれと同一である。2',5'-オリゴアデニル酸シンテターゼ、β2-ミクログロブリン、およびネオプテリンを含むインターフェロン誘導性遺伝子産物およびマーカーは、Avonexで治療した患者から収集した血液の血清および細胞画分において測定された。Rebifとして知られるインターフェロンβ 1aは、最近再発性-弛張性MSの治療のために認可された。AvonexとRebifとの間の主要な違いは、認可された投与の方法である-前者は筋肉内注射であり、後者は皮下注射である。
【0029】
特定の実施態様において、投与されるインターフェロンβは、AvonexまたはBetaseronのようなインターフェロンβ 1aまたはインターフェロンβ 1bである。代替的には、インターフェロンβはRebifである。他の実施態様において、インターフェロンβはインターフェロンβの組み合わせである。例えば、BetaseronおよびAvonexはカクテルとして一緒に投与されるか、または薬剤は投与スケジュールにおいて交互に使用される。
【0030】
IL-2Rアンタゴニストは、活性化されたTリンパ球上のIL-2Rに結合し、かつレセプターの活性を阻害する薬剤である。IL-2Rアンタゴニストには、ヒトIL-2Rのα鎖(またはTacサブユニット)に特異的に結合する薬剤(例えば、ダクリズマブ、バシリキシマブ、BT563、および7G8(集合的に抗Tacとして知られる))、またはヒトIL-2Rのβ鎖に結合するMigβ-2のような、他のサブユニットに結合する薬剤が含まれる。
【0031】
特定の実施態様において、IL-2Rアンタゴニストは抗Tacである。ある場合において、抗Tacはダクリズマブであり、これは、Roche PharmaceuticalsによってZenapaxとして、およびProtein Design LabによってSMARTとして市販されている。ダクリズマブは、組換えDNA技術によって製造された免疫抑制性のヒト化IgG1モノクローナル抗体である。これは、活性化リンパ球の表面上で発現されるヒト高アフィニティーインターロイキン-2(IL-2)レセプターのαサブユニット(p55α、CD25、またはTacサブユニット)に特異的に結合する。Roche Pharmaceuticalsによって配布されている製品情報に従うと、Zenapaxは、ヒト抗体配列(90%)およびマウス抗体配列(10%)の混合物である。ヒト配列は、ヒトIgG1のヒト定常ドメインおよびEuミエローマ抗体の可変フレームワーク領域に由来した。マウス配列は、マウス抗Tac抗体の相補性決定領域に由来した。DNA配列から推定された分子量は144キロダルトンである。
【0032】
他の実施態様において、抗Tacは、Novartis Pharma AGによってSimulect(登録商標)として市販されているバシリマックス(basilimax)である。Simulectは、組換えDNA技術によって製造されたキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体(IgG1k)であり、これは、活性化Tリンパ球の表面上のIL-2Rのα鎖に特異的に結合しかつそれをブロックする免疫抑制剤として機能する。製造業者の製品情報に従うと、これは、IL-2R(α)に選択的に結合するRFT5抗体をコードする、ヒト重鎖および軽鎖の定常領域遺伝子およびマウス重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子を含むプラスミドを発現するように遺伝子操作された、確立されたマウスミエローマ細胞株の発酵から得られる糖タンパク質である。アミノ酸配列に基づくと、このタンパク質の計算分子量は144キロダルトンである。
【0033】
ある例において、IL-2Rアンタゴニストは抗IL-2R薬剤の組み合わせである。例えば、ZenapaxおよびSimulectはカクテルとして一緒に投与されるか、またはこれらの薬剤は投与スケジュールにおいて交互に使用される。
【0034】
投与される各薬剤(IL-2Rアンタゴニストおよびインターフェロンβ)の用量は治療用量であり、これは治療的に有効である組み合わせを生じる用量であるか、またはこれは、単独で投与された場合にIL-2Rアンタゴニストを有効にする。広範な集団を通して有効であるように治療を最適化することは、適切な治療用量を決定するための、種々の因子の注意深い理解を伴って実行され得る。投与される各薬剤の用量は各被験体について異なることがあり、治療が進行するにつれて1人の被験体について経時的に変化し得る。用量は、投与の経路および治療のスケジュールに依存し得る。各薬剤の用量はまた、他の薬剤の用量における増加または減少に依存し得る。
【0035】
インターフェロンβがインターフェロン1b(Betaseron)である場合、製造業者によって推奨される投薬量は、隔日で皮下注射で0.25mgである。しかし、より多い用量またはより少ない用量が使用されることもあり、例えば、0.006mg〜2mgが使用され得る。インターフェロンβがインターフェロンβ 1aでありかつAvonexである場合、再発型の多発性硬化症の治療のための製造業者の推奨する投薬量は、1週間に1度、筋肉内注射で30μgである。しかし、より多い用量またはより少ない用量が使用されることもあり、例えば、15μg〜75μgが使用され得る。インターフェロンβ 1aがRebifである場合、製造業者の推奨する投薬量は、1週間に3回、皮下注射で44μgである。しかし、より多い用量またはより少ない用量が使用されることもある。さらに、その投薬量は治療の過程の間に変化しうる。例えば、Rebifが、最初の2週間に8.8μgの初期用量、次いで、次の2週間に22μg、そして次に、残りの治療期間に44μgを投与されることが示唆される。特定の実施態様において、Avonexは週あたり30μgの用量で投与され、またはBetaseronは隔日で0.25mgの用量で投与された。
【0036】
IL-2Rアンタゴニストがダクリズマブである場合、特定の例における投薬量は2週間毎に1mg/kgであり、または1ヶ月に1回であってもよい。しかし、より多い用量またはより少ない投薬量が使用されることもあり、例えば、この方法は、1mg/kg用量に応答しなかった被験体において、2mg/kgを使用して実行された。約0.5〜約8mg/kgのような、他のより多いかまたはより少ない投薬量もまた使用されることがある。5〜10μg/mLの血清レベルが、IL-2レセプターのTacサブユニットを飽和し活性化されたTリンパ球の応答を遮断するために必要であることが示唆されてきた。当業者は、この範囲内に血清レベルを維持するための投与治療計画を構築することが可能であるが、より多いかまたはより少ない血清レベルを生じる投与が使用されることがある。特定の実施態様において、Zenapaxは1mg/kgの投薬量で投与された。他の特定の実施態様において、Zenapaxは2mg/kgの投薬量で投与された。
【0037】
IL-2Rアンタゴニストが、Simulectとして知られるバシリマックスである場合、成体におけるIL-2R(α)への飽和結合は、血清レベルが0.2μg/mLを超える限り維持されることが製造業者によって報告されている。当業者は、この範囲内に血清レベルを維持するための投与治療計画を構築することが可能であるはずであるが、より多いかまたはより少ない血清レベルを生じる投与が使用されることもある。
【0038】
インターフェロンβは、多くの経路を介して投与してもよく、これには、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、局所投与、および病巣内投与が含まれる。インターフェロンβは、米国特許第6,361,769号に記載されているように、口腔粘膜的に投与されることさえあるうる。インターフェロンβ 1aは、筋肉内注射(例えば、Avonex)および皮下注射(例えば、Rebif)の両方について認可されている。インターフェロンβ 1bは、皮下注射についてのみ(Betaseron)認可されている。特定の実施態様において、インターフェロンβ 1a(Avonex)は筋肉内注射を介して投与される。他の実施態様において、インターフェロンβ 1b(Betaseron)は皮下注射を介して投与される。
【0039】
IL-2Rアンタゴニストはまた、いくつかの経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、または経口的)を介して投与され得る。特定の実施態様において、ダクリズマブは静脈内投与される。
【0040】
インターフェロンβの投与はまた、厳格なスケジュールまたは調整可能なスケジュールで実行され得る。例えば、インターフェロンβは1週間に1回、隔週で、または例えば、被験体中の濃度に基づいて調整可能なスケジュールで投与される。当業者は、特定の投与スケジュールが被験体および使用される投薬量に依存することを理解している。投与スケジュールはまた、個々の被験体または被験体の拒絶に依存する治療の過程の間の変化のために異なり得る。特定の実施態様において、インターフェロンβ 1aは隔週で投与される。
【0041】
IL-2Rアンタゴニストの投与もまた、厳格なスケジュールまたは調整可能なスケジュールであり得る。当業者は、投与スケジュールが投与される投薬量に影響を与えることを理解している。投薬スケジュールは異なる被験体について異なり得、個々の被験体について時間の経過とともに調整され得る。投薬スケジュールはまた、異なるIL-2Rアンタゴニストについて異なり得る。投薬スケジュールは、週に1度、隔週、または1ヶ月に1度であり得る。投薬はまた、より頻繁かまたはより頻繁でなくてもよい。1つの実施態様において、ダクリズマブは1ヶ月の間隔週で投与され、次いで1ヶ月に1回投与される。別の実施態様において、ダクリズマブは隔週で投与される。
【0042】
IL-2Rアンタゴニストおよびインターフェロンβの併用投与には、IL-2Rアンタゴニストを連続して伴ってインターフェロンβを投与すること(すなわち、最初に1種類の薬剤を用いて、次いで第2の薬剤を用いる治療)、または両方の薬剤を実質的に同時に投与すること(すなわち、投与を実行する際の重複)のいずれかを含む。連続的投与を用いて、被験体は、他の薬剤が投与されるときにいくらかの量の第1の薬剤が被験体中に残存する限り、異なる時間に薬剤に曝露される。同時に両方の薬剤を用いる治療は、同じ用量で(すなわち、物理的に混合される)、または同時に投与された別々の用量であり得る。特定の実施態様において、Avonexは筋肉内注射を介して毎週投与される。治療の最初の週に被験体はAvonex注射と同時にZenapaxの静脈内注入を受け、第2のZenapax注入はAvonex注射と同時に2週間後に投与される。その後、Zenapaxは1ヶ月に1度、毎週のAvonex注射と同時に投与される。別の実施態様において、Betaseronは皮下注射を介して隔日で投与されるのに対して、Zenapaxは1ヶ月の間隔週で投与され、次いで毎月投与され、Zenapax注入はBetaseron注射と同じ日である必要はない。
【0043】
併用投与はまた、他の薬剤を含む処方物または投薬治療計画におけるインターフェロンβまたはIL-2Rアンタゴニストの投与を含み得る。いずれの治療剤も、薬学的に受容可能な媒体(例えば、通常の生理食塩水、植物油、鉱油、PBSなど)中の処方物として調製され得る。治療的調製物には、生理学的に受容可能な液体、ゲル、または固体のキャリア、希釈剤、アジュバントおよび賦形剤が含まれ得る。添加物には、殺菌剤、等張性を維持する添加物(例えば、NaCl、マンニトール);および化学的安定性を維持する添加物(例えば、緩衝剤および保存剤)などが含まれ得る。非経口的な投与のために、薬剤は、薬学的に受容可能な非経口ビヒクルを伴う、溶液、懸濁物、乳化物、または凍結乾燥粉末として処方され得る。リポソームまたは非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油)もまた使用され得る。この処方物は当該分野において公知の技術によって滅菌される。特定の実施態様において、AvonexまたはBetaseronおよびZenapaxは、それらのそれぞれの製造業者によって供給されるように、またはそれらの製造業者によって指示されるように、処方物中で投与される。
【0044】
以下の非限定的な実施例は、IL-2Rアンタゴニストおよびインターフェロンβの併用投与が、自己免疫疾患である多発性硬化症に対して治療的効果を発揮することを実証する。
【実施例】
【0045】
実施例1
再発性-弛張性または二次進行性の多発性硬化症を有する被験体において、インターフェロンβおよびIL-2Rアンタゴニストの併用投与の効果を決定するために、臨床試験を実施した。
【0046】
包含基準
試験に含まれた被験体は、再発性-弛張性または二次進行性のいずれかの多発性硬化症を有すると診断され;16〜65歳の間であり;EDSSのスコアが2.5と6.5との間であり;登録前18ヶ月における1回またはそれ以上の再燃、18ヶ月の治療にわたるEDSSに対する1点もしくはそれ以上の増加、または、インターフェロンβ治療の開始前に測定された6ヶ月間のベースライン期間にわたる1ヶ月間のコントラスト増強損傷のベースラインの平均の少なくとも2分の1に対する、脳MRI上のコントラスト増強損傷の持続もしくは再開によって実証されるような、インターフェロンβ治療単独に応答することに失敗し;および最初の3回の併用治療前のMRIスキャンにおいて少なくとも3つのガドリニウム増強損傷を有さなくてはならない。
【0047】
除外基準
被験体は以下の場合に試験から除外された:一次進行性MSと診断された、前治療血液試験が異常であった;臨床的に有意に際だった疾患を同時に有すると診断された;モノクローナル抗体治療に対する禁忌が観察された;HIVポジティブであると決定された;試験の前26週間以内にグラトリラマーアセテートもしくはシクロホスファミドで治療された、または試験の前12週間以内に静脈内免疫グロブリン(IVIg)、アザチオプリン(AZA)、メトトレキセート(MTX)、シクロスポリン、シクロホスファミド(CTC)、クラドリビン、もしくはミトックスで治療された、または試験の前8週間以内にコルチコステロイドもしくは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)で治療された、またはMSのための任意の他の治験薬もしくは手順で治療された;十分な避妊を実践していなかった;または授乳中であった場合。
【0048】
治療の経過
8例の被験体を併用治療の試験に含めるよう選択した。各被験体について、インターフェロンβ(AvonexまたはBetaseron)を用いる治療のベースラインの3ヶ月間の期間を確立した。Avonexは、製造業者によって提供される処方情報において示されるように、1週間に1度、筋肉内に注射される30μgの用量で投与した。Betaseronは、製造業者によって提供される処方情報において示されるように、隔日で皮下に注射される0.25mgの用量で投与した。4回のMRIスキャンをベースライン期間の間に、コントラスト増強損傷のベースライン数を決定するために実行し、1回は期間の最初に、次いでベースライン期間の各月の終わりに、および4回目を併用治療の開始に一致させた。被験体をまた、EDSS、スクリップ神経学的評定尺度(Scripps Neurologic Rating Scale (NRS))、ならびに種々の移動試験および他の運動能力試験で評価した。
【0049】
併用治療を、3ヶ月間のベースラインが確立した後で開始した。インターフェロンβ治療を継続し、加えて、抗Tac(Zenapax)を5.5ヶ月間投与した。併用治療の最初の1ヶ月の間、Zenapaxを隔週で投与し、その後でZenapaxを1ヶ月に1回投与した。Zenapaxは、製造業者の処方情報において記載される様式で、1mg/kg体重の用量で静脈内投与した。1被験体は1mg/kg用量に応答を示さなかった後、隔週で2mg/kgの用量を受けた。MRIスキャンを併用治療の期間の間に実行して、コントラスト増強損傷の数の変化を決定した(治療の最初の6週間についての各2週間に1回、およびその後に全体で8回のMRIスキャンについて毎月)。同じスケジュールで、被験体をまた、EDSS、スクリップNRS、ならびに種々の移動試験および他の運動能力試験で評価した。
【0050】
結果
インターフェロンβおよびZenapaxの併用投与は、8被験体のうちの7例においてほぼ完全な疾患活性の停止および臨床的な改善をもたらした。図1において見られ得るように、8人の患者のうちの7例は、ベースライン期間と比較して、併用治療の下では、新規なコントラスト増強損傷と全体のコントラスト増強損傷の両方において、より少ないか、または少なくとも増加を有しないかのいずれかであった。図2Aを参照すると、8被験体のうちの4例はまた、併用治療の下では、ベースライン期間と比較してEDSSの改善を実証した。図2Bを参照すると、8被験体のうちの7例はスクリップNRSの改善を実証した。図3Aを参照すると、8被験体のうちの5例は移動指標上で移動の改善を実証した。図3Bを参照すると、8被験体のうちの5例は20m歩行時間において改善されたかまたは変化を有しなかったかのいずれかであった。図4Aを参照すると、すべての被験体は糸巻き穴試験(peg hole test)で彼らの利き手を用いて時間の改善を実証した。図4Bを参照すると、8被験体のうちの5例はまた、糸巻き穴試験で彼らの利き手でない手を用いて時間の改善を実証した。
【0051】
実施例2
この実施例は、併用治療後のTacエピトープの飽和およびベースライン期間と比較した場合のT細胞増殖の平行した減少を実証する。
【0052】
Tacエピトープの飽和はフローサイトメトリーによって研究した。図13を参照すると、インターフェロンβおよび1mg/kgのZenapaxの併用投与は、CD4/CD25およびCD8/CD25 T細胞上のTacエピトープの完全な飽和を生じた。
【0053】
活性化T細胞の増殖は、カルボキシフルオレセインスクンイニミジルエステル(CFSE)蛍光細胞標識によって測定し、フローサイトメトリーによってCFSE標識された細胞中の有糸分裂の数を評価した。図6Aを参照すると、8被験体のうちの6例が、CD4 T細胞の増殖の減少を実証した。図6Bを参照すると、すべての被験体が、ベースライン期間と比較してCD8 T細胞の増殖の減少を実証した。
【0054】
実施例3
この実施例は、インターフェロンβおよびIL-2Rアンタゴニストの併用投与によって生じるCTLA-4の予測されなかったアップレギュレーションを実証する。
【0055】
CTLA-4表面発現はCDLA-4に対する抗体およびフローサイトメトリーを利用することによって測定した。CTLA-4表面発現の各々の測定のために、最初に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)中の全血の5ミリリットル(ml)チューブを各被験体から得た。次いで、42mlの1×溶解溶液(4.2mlの10溶解溶液+37.8ml H2O)を、1リットルの蒸留水中に、89.9g NH4Cl、10.0g KHCO3、370.0mg EDTA四ナトリウム塩を溶解することによって調製した10×ストックから調製し;その溶液をpH 7.3に調製した。3mlの血液をピペットによって42mlの1×溶解溶液(50ml Falconチューブ中)に移した。この混合物を3〜5分間、室温に静置した。次いで、これを、室温で5分間、300×gで遠心分離した。上清を吸引し、ペレットを30mlの冷X-vivo培地中に再懸濁した。この再懸濁した混合物を、2〜8℃で5分間、300×gで遠心分離し、上清を吸引し、そしてペレットを、2.5mlのタンパク質富化したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(500mlの1×PBS中、10mgの胎仔ウシ血清(FCS))中に再懸濁した。この細胞懸濁物を、96ウェルプレート中で200μlのアリコートに分け、次いで、5分間、300×gで遠心分離した。上清を廃棄した。染色を、10マイクロリットル(μl)/ウェルの調製した抗CTLA-4抗体混合物を加えることによって実行した。次いで、プレートを暗容器中で、氷上で30分間インキュベートした。各ウェルを200μlの冷洗浄バッファーで洗浄し、穏やかに混合し、そして1000rpmで遠心分離した。上清を除去し、各ウェルをさらに2回、200μlの洗浄バッファーで洗浄した。最後の洗浄の後、ペレットを200μlの染色バッファー中に再懸濁し、蛍光活性化セルソーター(FACS)-Caliburによって分析した。少なくとも、リンパ球でゲートされた10000イベントおよび単球でゲートされた5000イベントが得られた。
【0056】
図7を参照すると、8被験体のうちの7例が、ベースライン期間と比較して、併用治療の間にCTLA-4の有意なアップレギュレーションを実証した。
【0057】
実施例4
この実施例は、インターフェロンβとの同時治療の非存在下での、IL-2Rアンタゴニストを用いる、MSを有する被験体の治療を例証する。
【0058】
実施例1の包含基準および除外基準に合致する被験体を治療のために選択した。各被験体について、ベースラインであるインターフェロンβを用いる3ヶ月の治療期間を確立させる。インターフェロンβを製造業者の処方情報において示されるように投与する。4回のMRIスキャンを、実施例1において記載されているスケジュールでこの期間の間に実行し、同様に他の診断試験も実施例1において示されるように実行する。
【0059】
組み合わされたインターフェロンβ/抗Tac治療を、ベースライン期間が確立した後に開始し、そして実施例1において記載されるように5.5ヶ月間実行する。診断試験もまた、実施例1において記載されるように実行する。
【0060】
次いで、インターフェロンβ治療を中断するが、1ヶ月に1度の抗Tac治療をさらなる22ヶ月間継続する。抗Tac単独治療の最初の10ヶ月の間、MRIスキャンおよび他の診断試験を毎月実施する。抗Tac単独治療の11〜22ヶ月の間、少なくとも3回のMRIスキャンを実行する。
【0061】
実施例5
この実施例は、インターフェロンβの同時治療の非存在下で、かつ以前のインターフェロンβによる治療、またはインターフェロンβを用いる治療に対する応答の失敗の必要のない、IL-2Rアンタゴニストを用いた、MSを有すると診断された被験体の治療を例証する。
【0062】
MSを有すると診断された被験体を治療のために選択する。被験体に1ヶ月の間、隔週で抗Tacダクリズマブを投与し、次いで毎月投与する。
【0063】
上記に記載した実施例は単に開示された方法の例を提供する。これらは、いかなる場合においても限定を意図するものではない。さらに、開示された方法の実施態様は本明細書中で詳細に記載されてきたが、本発明の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それらに対するバリエーションがなされ得ることが当業者によって理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患を有する被検体に、インターフェロンβおよびインターロイキン-2レセプターアンタゴニストを含む治療的に有効な組み合わせを投与する工程を包含する、自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項2】
治療的に有効な組み合わせが、少なくとも1種のインターフェロンβを含有する薬学的組成物および少なくとも1種のインターロイキン-2レセプターアンタゴニストを含有する薬学的組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
インターフェロンβがインターフェロンβ 1aを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
インターフェロンβがインターフェロンβ 1bを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
インターフェロンβがインターフェロンβ 1aおよびインターフェロンβ 1bの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが抗Tacである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
インターフェロンβが毎週投与され、インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが2週間の間隔週で投与され次いで毎月投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
インターフェロンβがBetaseronであり、インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが抗Tacである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
インターフェロンβが隔日で投与され、インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが2週間の間隔週で投与され次いで毎月投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
インターフェロンβがAvonexまたはRebifであり、インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが抗Tacである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが隔週で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
多発性硬化症が再発性-弛張性または二次進行性である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
インターフェロンβがインターフェロンβ 1a、インターフェロンβ 1b、またはこれらの組み合わせを含み、インターロイキン-2レセプターアンタゴニストが抗Tacである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
インターフェロンβ 1aがAvonexまたはRebifであり、インターフェロンβ 1bがBetaseronであり、かつ抗Tacがダクリズマブ(daclizumab)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
被験体が以前にインターフェロンβ単独を用いて治療され、インターフェロンβ単独を用いる治療に対する応答に失敗している、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
ダクリズマブが1〜2mg/kgの用量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ダクリズマブがZenapaxである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
インターフェロンβが皮下投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
以前にインターフェロンβ単独を用いて治療され、インターフェロンβ単独を用いる治療に対する応答に失敗している多発性硬化症を有する被験体に、治療的に有効な用量の抗Tacを投与する工程を包含する、多発性硬化症を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157378(P2011−157378A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82497(P2011−82497)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2004−517494(P2004−517494)の分割
【原出願日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年6月19日頒布の「Clinical Immunology,Volume 103,Number 3,June 2002」に発表
【出願人】(505004949)アメリカ合衆国 (7)
【Fターム(参考)】