説明

インターフェロンアルファ担体プロドラッグ

本発明は、インターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを含む医薬組成物であって、そのプロドラッグが遊離インターフェロンアルファを放出することができ、生理学的条件下でのその放出半減期が少なくとも4日間である医薬組成物に関する。本発明はさらに、前記医薬組成物のためのプロドラッグ、及びインターフェロンアルファ治療から利益を得ることができるC型肝炎などの状態を治療、制御、遅延又は予防するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを含む医薬組成物、及びインターフェロンアルファ治療により利益を得ることができるC型肝炎などの状態を治療、制御、遅延又は予防するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、50年以上前Isaacs and Lindenmannによって1957年に最初に記載されており、そこで、彼らは、熱不活性化インフルエンザウイルスをニワトリ胚細胞でインキュベートすると、同種又は異種のウイルスの感染に対して耐性を誘発する因子が放出されることを発見した。精製及び単離が不首尾であったため、科学界ではこの妨害因子について懐疑的なままであった。インターフェロンの多面的特性が完全に認められるようになったのは、インターフェロン分子のクローニングが可能になった1980年からである。
【0003】
インターフェロンは現在、免疫反応の中心的なメディエータと考えられており、それは、三つの主要生物学的活性、すなわち:抗ウイルス活性、抗増殖活性及び免疫調節活性に起因すると考えられている。
【0004】
インターフェロンの分類は、配列、染色体位置及び受容体特異性をもとにする。インターフェロンアルファ(インターフェロン-α)及びインターフェロン・ベータ(インターフェロン-β)は最も主要なI型インターフェロンであり、二つのサブユニットIFNAR-1及びIFNAR-2からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。コンセンサスインターフェロン、インターフェロンalfacon-1もやはり、インターフェロンのI型のグループに含まれる。
【0005】
1980年代前半に、放射性標識インターフェロンを用いた実験により、I型インターフェロン及びII型インターフェロンと区別される特異的な高親和性細胞表面受容体が存在するという結論がもたらされた。
【0006】
インターフェロンアルファは上記二量体受容体と結合する。インターフェロンアルファの産生は、ウイルスから二本鎖RNA(dsRNA)への曝露によって誘発される。その複製のある時点で、ほとんどのウイルスは、続いて免疫反応を媒介するインターフェロンアルファの強力な誘導因子であるdsRNAを産生する。免疫反応の本質は完全には理解されていないが、インターフェロンアルファは細胞のレベルで抗ウイルス状態を誘発し、それによっていくつかの抗ウイルスタンパクの誘発を介してウイルスの複製が損なわれることが分かっている。
【0007】
ウイルス感染に伴う症状は、志願者へのインターフェロンアルファの投与によって複製することができる。したがって、インターフェロンアルファ治療に伴うインフルエンザ様の副作用は、ウイルス感染症に伴うインフルエンザ様の症状がやはり内因性インターフェロンアルファ産生によって引き起こされるのと類似した性質のものであると考えられている。
【0008】
インターフェロンアルファは、C型肝炎を治療するために広く使用されている。主要な目的は、慢性C型肝炎感染症に伴う合併症を減らすためである。これは主にウイルスを根絶させることによって達成される。したがって、治療の反応は、C型肝炎RNA試験の結果として測定することができる。目的は、治療の6カ月後、血清中にC型肝炎RNAが検出されないことと定義される持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成することである。
【0009】
インターフェロンアルファ単剤治療は最近まで、慢性C型肝炎のための唯一の治療選択肢であった。C型肝炎治療において三つのインターフェロンアルファ化合物、すなわち、インターフェロン-α2a、インターフェロン-α2b、及びInfergen(登録商標)として市販されているインターフェロン-α2bと88%の相同性を有する166のアミノ酸配列からなる組み換え型の非天然由来I型インターフェロンが使用される。
【0010】
単剤治療用インターフェロンアルファとして使用する場合、最初に、患者の50〜60%においてC型肝炎RNAレベルを低下させるが、持続的ウイルス陰性化は患者の10〜20%においてしか達成されない。残りの患者は再発し、活発なC型肝炎の症状を発現する。この治療の低い成功レベルのため、インターフェロンアルファ治療法はリバビリンと併用される。リバビリンは、ある範囲のウイルスに対して抗ウイルス活性を示すヌクレオシド類似体様化合物である。インターフェロンアルファで観察される相乗効果は明確に理解されていないが、いくつかの臨床試験によって、インターフェロンアルファ単剤治療に対する、インターフェロンアルファとリバビリンの併用療法の優位性が示されている。
【0011】
インターフェロンアルファは患者において急速に排除され、これによってその抗ウイルス効果は低下する。インターフェロンアルファの排除には、タンパク質分解、腎クリアランス及び受容体媒介クリアランスを含むいくつかの機構が関係している。このため、インターフェロンアルファは、持続的な抗ウイルス応答を達成するために、患者への頻回投与を必要とする。非接合型インターフェロンアルファは週3回投与されるが、それでも、これは、治療を通しての完全なインターフェロンのカバー度を確実にするものではない。複製及び耐性変異株の出現を防止するために重要なのは持続的な抗ウイルス圧力である。さらに、短い血漿半減期は大きなトラフ・ピーク比をもたらす。これは、インターフェロンアルファ治療に一般に伴うインフルエンザ様の症状などの副作用の増大が、高い血漿濃度で顕著であると解釈される。
【0012】
持続的な抗ウイル圧力を発揮するより効果的なインターフェロンアルファ治療法を開発するために、PEG化したタイプのインターフェロンアルファが開発されており、C型肝炎治療用に承認されている。すなわちPegasys及びPEGIntronである。インターフェロンアルファタンパク質とのポリエチレングリコール(PEG)部分の恒久的な接合は、血漿半減期の大幅な延長を可能にし、週1回の投与が可能になる。インターフェロンアルファのPEG化は、糸球体ろ過、タンパク質分解及び受容体媒介クリアランスを減少させることによって、血漿半減期を長くする。さらに、PEG化は、トラフ・ピーク比の大幅な変動によって引き起こされる有害事象を低減することができる(P.Caliceti、Digestive and Liver Disease 36 Suppl. 3(2004年)、S334〜S339頁)。
【0013】
このPEG化技術の主な欠点は、PEG接合タンパク質の生物活性が低いことである。分岐40kDa PEGとのインターフェロン-α2aの接合の場合、非接合タンパク質の生物活性の7%しか保持されない。このため、PEG-インターフェロン-α2a接合体をより高い用量で投与することが必要となる(P.Bailonら、Bioconjugate Chem. 2001年、12巻、195〜202頁)。さらに、大きなPEG分子との結合は、接合体を主に血液容量に対して制限し、したがって、接合体がすべての標的組織に浸透するのが阻止され、少ない分配容量しか得られないことになる。したがって、血漿外のウイルスリザーバは標的とされず、これは、C型肝炎感染症の持続性と再燃において役割を果たすようである。
【0014】
C型肝炎は、末梢血単核細胞(PBMC)、腎細胞、甲状腺細胞及び胃細胞などの様々な肝臓外部位に感染することが知られており、証拠によれば、これらはウイルスのための複製区画を示し得ると示唆されている。したがって、これらの肝臓外ウイルスプールにおいて治療対応濃度に達することは、肝細胞のウイルス学的再発及び再感染を防止するのに重要なようである。現在、恒久的にPEG化されたインターフェロンアルファ接合体の分布の容積が小さいことは、これらの化合物がそうした区画に到達していないことを強く示唆しており、これは、これらの化合物を用いて治療した後に観察された相対的に高いウイルス再発率を多分にもたらすようである。
【0015】
これらの問題を解決するために様々なアプローチが試みられている。市販されているPeg-インターフェロンの一つであるPEGIntronは、Pegasysより大きい分布容積を有する。これは一部、より小さいPEG部分(12kDa対40kDa)と、不安定でありインビボで遊離インターフェロン-α2bを放出するHIS34での部分PEG化とに起因する。PEGIntronの分布容積は、非接合インターフェロン-α2bのそれより約30%小さい(P.Caliceti、Digestive and Liver Disease 36 Suppl. 3(2004年)、S334〜S339頁)。IDEAL臨床試験からの最初の結果は、Pegasysと比較してPEGIntronのより大きな分布容積が実際、より低い再発率につながることを示唆している(企業ウェブサイト、http://www.schering-plough.com)。
【0016】
PEGIntron(登録商標)の約40〜58時間という半減期はPegasysのそれ(半減期160時間)より著しく短く、週1回投与したとき、大きなトラフ・ピーク比と準最適抗ウイルス圧力をもたらす。
【0017】
PEG分子のようなポリマー担体をインターフェロンに付加させると、注射部位反応の問題が生じてくる。PEG化インターフェロン-α及びリバビリンを標準的用量投与すると、Pegasysについて最大で患者の58%において注射部位反応が認められる。PEGIntronについては、その発生率は36%である(Russo and Fried、Gastroenterology 2003年;124巻:1711〜1719頁)。非接合インターフェロン-α2bを投与すると、C型肝炎患者の5%だけに注射部位反応が認められる(Intron A処方情報)。これにもとづくと、注射部位反応の発生率は、PEG化インターフェロン-αの残留活性と滞留時間の両方に影響されるようである。非接合インターフェロン-αは完全なインターフェロン活性を有するが、皮下組織により容易に吸収され、そのため組織反応はほとんど起こらない。PEG化インターフェロン-αについては、PegasysはPEGIntronより活性が小さいが(非接合インターフェロン-α活性の7%対37%)、Pegasysの吸収は著しく遅い。Pegasysの吸収半減期対PEGIntronの吸収半減期はそれぞれ50時間と4.6時間であり(Foster、Aliment Pharmacol Ther 2004年;20巻:825〜830頁)、インターフェロン-α活性に対するより高い組織暴露をもたらし、したがって、より高い注射部位反応のリスクをもたらす。
【0018】
担体結合プロドラッグとしてのインターフェロンアルファを投与すると、注射部位反応の発生率を低下させることができる。上記したように、PEG化はインターフェロンの活性を著しく低下させる。さらに、インターフェロン接合体の活性は、PEG分子の結合部位によっても支配される。Foserら(Foserら、Protein Expression and Purification 30(2003年)78〜87頁)に記載されているように、インターフェロン-α2aの9つの異なるリシンでのPEG化によって、異なる活性を有する9つの位置異性体がもたらされている。単離された異性体は、Lys(31)、Lys(134)、Lys(70)、Lys(83)、Lys(121)、Lys(131)、Lys(49)、Lys(112)及びLys(164)でPEG化されていた。Lys(23)、Lys(133)及びN末端PEGについては、PEG化は認められていない。これは多分これらの位置での立体障害によるものである。
【0019】
恒久的PEG化に関する問題のいくつかは、担体結合プロドラッグをもたらす過渡的リンカーを介して、PEG分子又は別のポリマー担体をタンパク薬物に結合させることによって対処することができる。この可逆的アプローチによって、プロドラッグから、完全に活性な遊離薬物を血液循環系に放出することができる。
【0020】
そうした可逆的アプローチのための担体結合プロドラッグ及び過渡的リンカー系は、例えばWO-A2004/089280、WO-A2005/099768又は米国特許第B6,504,005号に概略記載されている(H.Tsuberyら、J.Biol.Chem.2004年、279巻(37号)、38118〜38124頁も参照されたい)。
【0021】
一般に、担体結合プロドラッグは、薬物と担体を連結する開裂可能な官能基の存在を必要とする。脂肪族アミド又はカルバメート結合などの薬物提供アミノ基を含む官能基は一般に、加水分解に対して非常に安定であり、アミド結合の開裂速度は、プロドラッグ系における治療的有用性のためには遅すぎる。そうした安定結合が担体結合プロドラッグにおいて用いられる場合、官能基の開裂は、生体内変化を伴わない治療上有用なタイムフレームにおいて不可能である。これらの場合、そのリンカーは、対応する内因性酵素によって基質として認識される構造モチーフを示すことができる。そうした場合、官能性結合の開裂は酵素を含む複合体を含む。そうした生体内変化依存性担体結合プロドラッグの例では、内因性プロテアーゼによって認識され、酵素的に開裂するペプチドリンカーが用いられる。
【0022】
酵素レベルは個体間で大幅に異なる可能性があり、これは酵素的開裂によるプロドラッグ活性化の生物学的変動をもたらす。酵素レベルは投与の部位によっても変わってくる。例えば、皮下注射の場合、身体の特定の部分は、他より予測可能な治療効果が得られることが知られている。そうした高いレベルの患者間変動は望ましくない。さらに、そうした酵素依存性担体結合プロドラッグについての薬物動態学的特性のインビボ-インビトロの相関性を確立することが困難である。放出プロファイルの信頼性のあるインビボ-インビトロの相関最適化が存在しないと、面倒な作業になってくる。
【0023】
患者間及び注射部位でのばらつきを回避するために、開裂への追加的な酵素関与を必要とすることなく、治療的に有用なタイムフレームにおいて開裂動力学を示す担体結合プロドラッグを用いることが望ましい。特に高分子量担体(ポリマー担体)、特に分岐したポリマー担体については、立体的込み合いのため、連結官能基へのアクセスは酵素に対して制限され得る。
【0024】
生体内変化依存性リンカーは、注射の部位(皮下又は筋肉内組織)及び血流において異なる開裂速度を示す可能性がある。これは、インビトロ及びインビボの相関性を損なうので望ましくない特徴であり、放出の長期化、作用の遅発及び低いインビトロ-インビボ相関性と関係づけることができる。
【0025】
したがって、自己開裂性を示す担体結合プロドラッグを発明する必要性がある。
【0026】
アミド又はカルバメートなどの自己開裂可能な基に不安定性を導入するために、例えば、官能性の自己開裂可能基の近傍における隣接基として作用するように、構造的な化学成分を担体中に取り込む必要がある。プロドラッグのアミド結合の開裂性に対する制御を行うそうした自己開裂誘発性化学構造は、自己開裂誘発基と称される。自己開裂誘発基は、担体と生物学的に活性な部分を連結する所与の官能基の開裂速度に対して強く影響を及ぼすことができる。
【0027】
少なくとも一つの2-スルホ-9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMS)基とインターフェロンアルファを有する担体フリー系は、欧州特許第B1337270号(Y.Shechterら、PNAS 2001年、98巻(3号)、1212〜1217頁も参照されたい)に記載されている。
【0028】
インターフェロン-α2の送達のために、Peleg-Shulmanら、J.Med.Chem.2004年、47巻、4897〜4904頁は、40kDa PEGとインターフェロン-α2の間に可逆的2-スルホ-9-フルオレニルメトキシカルボニルリンカーを組み込むことによる可逆的PEG化の適用を開発している。彼らは、pH8.5、37℃で約3日間の半減期を有するインターフェロン-α2の持続放出を実証している。可逆的PEG化インターフェロンの最終的な半減期は、i.v.注射により得られたデータから約30時間と推定された。pH及び温度だけでなく血漿求核性によっても強く影響を受けるので、このグループによって記載されている可逆的リンカーの加水分解は著しく生体内変化依存性である。これは、血漿と皮下組織とでインターフェロン放出速度が変わることを意味している。皮下組織からのPEG化インターフェロン接合体の吸収が遅いことにより、この接合体は、活性インターフェロンの遊離が主に血漿中で起こるので、作用の開始が遅いことを特徴とする。
【0029】
持続放出への別のアプローチは、インターフェロンのポリマー製剤(formulation)によって提供される。このアプローチは、インターフェロンアルファの持続放出用にBiolex社及びOctoPlus社によって用いられており、WO-A2006/085747に記載されているように、これはそこからインターフェロンが連続的に放出されるポリ(エーテル-エステル)ミクロスフェアで処方される。しかし、ポリマー担体としてのそうした粒子の使用は非常に小さい薬物と担体との重量比をもたらす。すなわち、その製剤は、薬物よりずっと多い量の担体材料(例えば、ポリマー)を含む。しかし、これらのタイプの薬物でよく見られるように、そうした製剤は、L.DeLeedeら、Journal of Interferon & Cytokine Research 2008年、28巻、113〜122頁に示されているような薬物動態学的データから明らかなようなバースト放出を特徴とする。ここで、薬物動態学的プロファイルは二つのピークを示し、その第1のピークは最初のバーストによるものであり、第2のピークは製剤からの放出によるものである。この最初のバーストは多分、インターフェロン治療に通常遭遇するインフルエンザ様の副作用を増大させることになる。さらに、こうしたタイプの薬物は、注射の部位から長時間完全な活性で活性薬物を放出するので、持続的組織暴露インターフェロン-αがもたらされ、患者は多分、既存の治療で見られるのと同じような注射部位反応に苦しむことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】WO-A2004/089280、
【特許文献2】WO-A2005/099768
【特許文献3】米国特許第B6,504,005号
【特許文献4】欧州特許第B1337270号
【特許文献5】WO-A2006/085747
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Digestive and Liver Disease 36 Suppl. 3(2004年)、S334〜S339頁
【非特許文献2】Bioconjugate Chem. 2001年、12巻、195〜202頁
【非特許文献3】Gastroenterology 2003年;124巻:1711〜1719頁
【非特許文献4】Aliment Pharmacol Ther 2004年;20巻:825〜830頁
【非特許文献5】Protein Expression and Purification 30(2003年)78〜87頁
【非特許文献6】J.Biol.Chem.2004年、279巻(37号)、38118〜38124頁
【非特許文献7】PNAS 2001年、98巻(3号)、1212〜1217頁
【非特許文献8】J.Med.Chem.2004年、47巻、4897〜4904頁
【非特許文献9】Journal of Interferon & Cytokine Research 2008年、28巻、113〜122頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
現在の技術に伴う問題を克服するために、新規な医薬組成物及びプロドラッグの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
そのため、本発明の目的は、放出動力学に関して、また選択的に、薬物ロード、低い副作用及び注射部位反応、体内分布、ウイルス再発率などに関して有利な特性を有するそうした医薬組成物及びプロドラッグを提供することである。したがって、本発明は、インターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを含む医薬組成物であって、そのプロドラッグが遊離インターフェロンアルファを放出することができ、生理学的条件下でのその放出半減期が少なくとも4日である医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の他の態様は、上で定義したようなインターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】SDS-PAGEによる結果を示す。
【図2】サイズ排除クロマトグラフィーによる結果を示す。
【図3】2'5'-OASによって合成された2-5Aの量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
「医薬組成物」は、一つ若しくは複数の活性成分、及び一つ若しくは複数の不活性成分、並びに二つ以上の任意の成分の組合せ、錯体形成又は凝集、或いは成分の一つ若しくは複数の解離、或いは成分の一つ若しくは複数の他のタイプの反応又は相互作用により直接又は間接に得られる任意の生成物を意味する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明のプロドラッグと一つ又は複数の薬学的に許容される不活性成分を混合して得られる任意の組成物を包含する。
【0037】
「不活性成分」という用語は、それと一緒に治療薬が投与される賦形剤、アジュバント、添加剤又は媒体を指す。そうした薬学的に許容される不活性成分は、水、或いは、これらに限定されないが、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来のもの含む油などの滅菌した液体であってよい。水は組成物の好ましい構成成分である。生理食塩水及び水性デキストロースは、医薬組成物を静脈内で投与する場合に好ましい成分である。生理食塩水、水性デキストロース及びグリセロール液剤は、注入可能な液剤のための組成物の液体部分として用いられることが好ましい。適切な医薬添加剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。望むなら、組成物は少量の湿潤剤、乳化剤又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、粉剤、持続放出製剤などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの慣用的な結合剤を含む坐剤として製剤化することができる。適切な医薬組成物の例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martinに記載されている。そうした組成物は、治療有効量の治療薬を(好ましくは純粋な形態で)、患者への適切な投与のための形態を提供する適切な量の他の成分と一緒に含むことになる。製剤は、投与方法に適合すべきである。
【0038】
本発明の医薬組成物は、活性成分として一つ又は複数の追加の化合物を含むことができる。その活性成分は一つ又は複数の異なる医薬組成物(医薬組成物の組合せ)中に含まれてよい。したがって、本発明の医薬組成物は、一つ又は複数の医薬組成物を用いる単剤療法又は併用療法に有用であり得る。
【0039】
「乾燥組成物」という用語は、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を、容器中に乾燥形態で提供することを意味する。乾燥するための適切な方法は噴霧乾燥及び凍結乾燥(フリーズドライ)である。そうしたポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの乾燥組成物は、最大で10%、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満(カールフィッシャー法で測定して)の残留水分含量を有する。好ましい乾燥方法は凍結乾燥法である。「凍結乾燥組成物」という用語は、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を最初凍結させ、次いで減圧によって水分を低下させることを意味する。この用語は、組成物を最終容器中に充てんする前の製造工程において行われる追加の乾燥ステップを排除するものではない。
【0040】
「液体組成物」において、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグは、それが、任意選択で緩衝剤を含む水などの適切な溶媒に溶解した形態で提供される。
【0041】
「凍結乾燥」(フリーズドライ)は脱水(dehydration)工程であり、これは、組成物を凍結させ、次いで周囲圧力を低下させ、任意選択で、熱を加えて組成物中の凍結水を固相から直接ガスへと昇華させることを特徴とする。通常昇華した水は凝華によって収集される。
【0042】
「再構成」は、それを必要とする患者に組成物を投与する前に液体を加えることによって、溶液又は懸濁液などの乾燥前の組成物状態を回復することを意味する。その液体は一つ又は複数の添加剤を含むことができる。
【0043】
「再構成溶液」は、それを必要とする患者に投与する前に、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの乾燥組成物を再構成するために使用する液体を指す。
【0044】
「容器」は、その中にポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を収容し、そこに貯蔵することができる任意のレセプタクルを意味する。
【0045】
「バッファー」すなわち「緩衝剤」は、pHを所望の範囲に保持する化合物を指す。生理学的に許容される緩衝剤は、例えばリン酸ナトリウム、コハク酸塩、ヒスチジン、重炭酸塩、クエン酸及び酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クロリド、ピルビン酸塩である。Mg(OH)2又はZnCO3などの制酸剤を使用することもできる。緩衝能力は、pH安定性に最も敏感な条件に適合するように調節することができる。
【0046】
「添加剤」は、治療剤と一緒に投与される化合物、例えば緩衝剤、等張性調整剤、保存剤、安定剤、抗吸着剤、酸化防止剤又は他の助剤を指す。しかし、いくつかの場合、一つの添加剤は2重又は3重の機能をもつことができる。
【0047】
「リオプロテクタント」は、関係するタンパク質と一緒にした場合、一般に乾燥の際、特に凍結乾燥、続く貯蔵の際のタンパク質の化学的及び/又は物理的不安定性を大幅に防止又は低減する分子である。リオプロテクタントの例には、スクロース又はトレハロースなどの糖類;グルタミン酸モノナトリウム又はヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどの離液性塩;三価又はそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールなどのポリオール;エチレングリコール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;pluronics;ヒドロキシアルキルデンプン、例えばヒドロキシエチルデンプン(HES)及びその組合せが含まれる。
【0048】
「界面活性剤」は液体の表面張力を低下させる湿潤剤を指す。
【0049】
「等張性調整剤」は、注射デポーでの浸透圧差に起因する細胞損傷によりもたらされ得る痛みを最少化する化合物を指す。
【0050】
「安定剤」という用語は、ヒドロゲルプロドラッグを安定化させるために用いられる化合物を指す。安定化は、タンパク質安定化力を強化させる、変性状態を不安定化させる、又はタンパク質に添加剤を直接結合させることによって達成される。
【0051】
「抗吸着剤」は、組成物の容器の内面をコーティングする又は競争的に吸着させるのに使用される主にイオン性若しくは非イオン性の界面活性剤又は他のタンパク質若しくは可溶性ポリマーを指す。選択される添加剤の濃度及び種類は回避すべき作用に依存するが、一般に、CMC値のすぐ上で界面において界面活性剤の単分子層が形成される。
【0052】
「酸化防止剤」は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、エクトイン、グルタチオン、メチオニン、モノチオグリセロール、モリン、ポリエチレンイミン(PEI)、没食子酸プロピル、ビタミンE、キレート剤、例えばクエン酸、EDTA、ヘキサホスフェート、チオグリコール酸などを指す。
【0053】
「抗菌剤」は、細菌、真菌、酵母、原生動物などの微生物を死滅させる又はその成長を阻害する且つ/又はウイルスを死滅させる化学物質を指す。
【0054】
「容器を密封する」という用語は、気密性となるような仕方で容器を封じ、その内外間でのガスの交換を起こさせないようにし、且つ内容物を無菌の状態に保持することを意味する。
【0055】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、皮下投与、筋肉内投与又は静脈注射用の組成物である。これらは、本明細書で説明する関連障害/疾患の治療のための好ましい投与経路の例である。
【0056】
本発明の医薬組成物は、活性成分としてインターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを含む。
【0057】
「プロドラッグ」という用語は、IUPACによって与えられている定義にしたがって、その薬理効果を示す前にインビボで転換を受ける任意の化合物を意味する。したがって、プロドラッグは、親分子における望ましくない特性を変える又は排除するためにインビボで過渡的な形で用いられる特殊な非毒性保護基を含む薬物と見なすことができる。
【0058】
「担体結合プロドラッグ」という用語は、改善された物理化学的又は薬物動態学的特性をもたらし、通常加水分解による開裂によってインビボで取り外すことができる過渡的担体基との所与の活性物質の一時的結合を含むプロドラッグを意味する。
【0059】
「薬物」、「生物学的に活性な分子」、「生物学的に活性な部分」、「生物学的に活性な薬剤」、「活性薬剤」などの用語は、これらに限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、植物、動物及びヒトを含む生物有機体の任意の物理的又は生化学的特性に影響を及ぼすことができる任意の物質を意味する。特に、本明細書で用いるように、生物学的に活性な分子は、ヒト又は他の動物における疾患を診断、治癒、緩和、治療又は予防するか、或いはヒト又は動物の肉体的又は精神的健康を増進させることを目的とした任意の物質を含む。
【0060】
本明細書で用いるインターフェロンアルファの「治療有効量」は、所与の疾患及びその合併症の臨床症状を治癒させる、緩和させる又は部分的に停止させるのに十分な量を意味する。これを実現するのに十分な量を「治療有効量」と定義する。それぞれの目的のために有効な量は、その疾患又は障害の重症度並びに対象の体重及び全身状態に依存することになる。適切な用量の決定は、値のマトリクスを構築し、マトリクス中の異なる点で試験をすることによって、慣行的実験を用いて実施することができることを理解されよう。これはすべて訓練を受けた医師の通常の技術の範囲内である。本発明の範囲内において、治療有効量は、長期間、例えば1週間又はそれ以上、好ましくは1〜4週間治療効果を達成することを目的とした用量に関する。
【0061】
本発明による「ポリマー担体」という用語は、好ましくは、ポリアルコキシポリマー(これは好ましい、特にポリエチレングリコール)、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアミド及びポリエステル並びに対応するブロックコポリマーからなる群から選択されるポリマーを意味する。
【0062】
本発明による「インターフェロンアルファ」又は「インターフェロンα」という用語は、アルファ-インターフェロン(IFN-アルファすなわちIFN-α)の部類に属する化合物を意味する。アルファ-インターフェロンは、類似した分子量及び官能性を有するいくつかの天然及び改変タンパク質を含む。白血球は、ヒトにおけるこれらのタンパク質の主要な由来の一つである。IFN-αの少なくとも23の異なる天然のサブタイプ及びいくつかの改変版が知られており、そのいくつかは医薬品として入手可能である。IFN-αグループの現在最も重要なメンバーはIFN-α-2a及びIFN-α-2bの組み換え型変異体である。治療において使用される他の組み換え型IFN-αはIFNalfacon-1である。
【0063】
「遊離インターフェロンアルファ」という用語は、本発明のプロドラッグにおいて担体との結合が開裂した後に放出される上記定義のインターフェロンアルファを意味する。
【0064】
「生理学的条件下での放出半減期」という用語は、それを経過すると少なくとも80%ヒト血漿を含む水性緩衝液中、約7.4のpH(pH6.8〜pH7.8)、約37℃(35℃〜40℃)の温度で、好ましくはpH=7.4及び37℃で担体結合プロドラッグの50%が加水分解される時間を意味する。
【0065】
「水溶性ポリマー担体結合プロドラッグ」という用語は、pH7.4及び37℃で緩衝液中に溶解するポリマー担体結合プロドラッグを意味する。一般に、水溶性プロドラッグは、ろ過後に同じ溶液で透過する人間の目に可視の波長の光の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも95%を透過させるものである。重量ベースでは、ヒトへの投与のために用いられる濃度での水溶性プロドラッグは、水に少なくとも約35(重量)%、さらに好ましくは少なくとも約50(重量)%、さらに好ましくは少なくとも約70(重量)%、さらに好ましくは少なくとも約85(重量)%、さらに好ましくは少なくとも約95(重量)%可溶性であるか、又は水に完全に可溶性であることが好ましい。
【0066】
本発明の医薬組成物の放出半減期は、少なくとも4日間、好ましくは少なくとも5日間、例えば少なくとも4日間、5日間、6日間、1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、1ヵ月又はさらに最大で100日間である。好ましくは、本発明の医薬組成物の放出半減期は、少なくとも96時間、120時間、より好ましくは少なくとも180時間、より好ましくは少なくとも240時間、より好ましくは少なくとも300時間である。また、好ましくは、本発明の医薬組成物の放出半減期は、120〜520時間、より好ましくは180時間〜460時間、より好ましくは240時間〜400時間、より好ましくは300時間〜360時間である。
【0067】
好ましくは、ポリマー担体の分子量は、40kDa〜200kDaの範囲、より好ましくは40kDa〜120kDaの範囲、より好ましくは60kDa〜120kDaの範囲、より好ましくは60kDa〜100kDaの範囲である。好ましくは、ポリマー担体は分岐状である。
【0068】
インターフェロンアルファは、遊離インターフェロンアルファの放出が自己開裂可能な官能基又はリンカーの自己開裂によって行われるように、ポリマー担体と一時的に結合していることが好ましい。自己開裂可能な官能基は、インターフェロンアルファの第一級アミノ基と一緒にカルバメート又はアミド基を形成していることが好ましい。
【0069】
そうした水溶性ポリマー担体結合プロドラッグ系では、測定される活性は、二つからの寄与、すなわち一つは放出された遊離薬物実体、一つはまだ開裂していないプロドラッグからの寄与を得ることになる。担体結合プロドラッグの活性を、放出された遊離薬物と区別するために、本明細書では「残留活性」という用語を、プロドラッグ分子に起因し得る測定された担体結合プロドラッグ活性の一部として理解する。残留活性の程度を評価するためには、同じ担体がプロドラッグと恒久的リンカー接合体の両方に用いられている場合それらが残留活性の評価を可能にするので、恒久的リンカー接合体は、担体結合プロドラッグの治療的有用性の研究のために有用である。
【0070】
本発明の医薬組成物では、インターフェロンアルファはポリマー担体と共有結合している。より好ましくは、インターフェロンアルファの第一級アミノ官能基を用いる。さらにより好ましくは、インターフェロンはリシン側鎖又はN末端を介して接合される。ポリマー担体は、二つ、三つ又は四つの結合のような一つ又は複数の結合を介して共有結合していてよい。好ましくは、一つ又は二つだけの結合が存在する。より好ましくは一つの結合が存在する。ポリマー担体は、インターフェロンアルファと結合している二つ以上のポリマーによって形成することができる。前記ポリマーは相互に連結されていない。この場合、ポリマー担体の分子量は、二つ以上のポリマーの分子量の合計で表される。好ましくは、ポリマー担体が二つ以上のポリマーによって形成される場合、二つだけのポリマーがポリマー担体を形成することが好ましい。
【0071】
したがって、本明細書では「自己開裂」という用語は、pH7.4、37℃の水性緩衝液中での過渡的リンカーと薬物分子インターフェロンアルファの間の律速的開裂と理解される。自己開裂は酵素の存在を必要としない。この自己開裂は、担体結合プロドラッグの一部である自己開裂誘発基によって制御される。自己開裂誘発基はそのままで存在することができ、また、マスキングした形態で存在することもできる。後者の場合、自己開裂機構が開始できるようになる前にアンマスキングが必要である。本明細書では「過渡的結合」又は「過渡的リンカー」という用語は、プロドラッグ中のポリマー担体とインターフェロンアルファの間の結合の不安定性を説明するものと理解される。そうした過渡的結合では、インターフェロンアルファは、最大で100日間の放出半減期を有する対応プロドラッグから自己開裂される。
【0072】
これに対して、「恒久的リンカー」という用語は、少なくとも100日間の加水分解半減期を有する担体結合接合体を指す。「恒久的リンカー」という用語は、好ましくは脂肪族アミド又は脂肪族カルバメートの形成によるインターフェロンアルファ供与第一級アミノ基とのポリマー担体結合接合体を指す。そうした恒久的リンカーを使用する場合、得られるポリマー担体結合接合体は加水分解に対して通常非常に安定であり、アミド又はカルバメート結合の開裂速度は、プロドラッグとしての治療への適用を可能にするものではない。
【0073】
本発明の自己開裂性ポリマー担体結合プロドラッグは、強いインビトロ-インビボ相関性を示すことを特徴とすることが好ましい。インビトロでの担体結合プロドラッグの開裂速度は、pH7.4、37℃のタンパク質フリー緩衝液中の担体結合プロドラッグの試料中の遊離薬物の濃度を経時的に測定することによって得ることができる。例えば、担体結合プロドラッグを、pH7.4の水性緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、135mM NaCl、3mM EDTA)に溶解し、37℃でインキュベートすることができる。試料を、時間間隔をおいて取り、Superdex200カラムで215nmでのUV検出を用いて、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析することができる。放出された薬物に対応するピークを積分し、インキュベーション時間に対してプロットできる。曲線当てはめソフトウェアを適用して一次開裂速度及び対応するインビトロでの放出半減期を決定することができる。したがって、「インビトロでの放出半減期」は、それを経過するとpH7.4、37℃のタンパク質フリー緩衝液中で担体結合プロドラッグの50%が開裂される時間である。
【0074】
インビトロ及びインビボでのプロドラッグ開裂速度の相関性を得るために、ヒトの身体に投与した後、インターフェロンアルファの初期割合の50%がインターフェロンプロドラッグから放出される時間を測定することが望ましい。残念ながら、血液循環系からの担体結合プロドラッグのクリアランス速度も考慮に入れなければならないので、そうした測定は実施するのが容易でない。
【0075】
したがって、生理学的条件下での担体結合プロドラッグ開裂を測定することが好ましい。「生理学的条件」は、ヒトの体内における注射部位及び血流中でのpH及び温度条件と同じ又は類似したインビトロ又はインビボでの条件を意味する。より具体的には、「生理学的条件」は、約7.4のpH(pH6.8〜pH7.8)及び約37℃(35℃〜40℃)の温度、好ましくはpH=7.4及び37℃で少なくとも80%のヒト血漿を含む溶液を指す。
【0076】
例えば、担体結合プロドラッグを、pH7.4の4/1(v/v)ヒト血漿/50mMリン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、0.22μmフィルターでろ過し、37℃でインキュベートすることができる。試料を、時間間隔をおいて取り、ELISA(例えば、アルファインターフェロンの場合、VeriKine(商標)Human IFN- Alpha Serum Sample ELISA、PBL Interferonsource、USAを用いることができる)により分析することができる。本発明によるIFNのポリマー担体結合プロドラッグは、同じ濃度で遊離IFNと比較して、ELISAにおいて低いシグナルを示す。これは、ELISAで用いられる抗体に対する接合担体ポリマーによるIFNの遮へいに起因している。放出された遊離IFNは、ELISAシグナルの経時的な増大及び非接合IFNを用いた較正曲線をもとにして決定し、放出された遊離IFNの量をインキュベーション時間に対してプロットとすることができる。曲線当てはめソフトウェアを適用して一次開裂速度及び対応する放出半減期を判定することができる。
【0077】
これに対応して、生理学的条件下での自己開裂速度を用いて、インビボでのポリマー担体結合プロドラッグの開裂速度を推定して、インビトロ-インビボ相関性を得ることができる。上記に概略を示したように、できるだけ近接している、すなわち同じか又はほとんど同じ加水分解速度がインビトロ及び生理学的条件下で観察されるインビトロ-インビボ相関性が得られることが望ましい。ポリマー担体結合プロドラッグが自己開裂特性を示すために、生理学的条件下での放出半減期はインビトロでの放出半減期の50%未満でなくてもよい。
【0078】
対応するポリマー担体結合プロドラッグから放出された遊離インターフェロンは、改変されない、痕跡を残さない仕方、すなわち担体も、またリンカー部分若しくは断片又はその残基も開裂後にインターフェロンと結合したままで存在しない仕方で放出されることも好ましい。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物における本発明のプロドラッグは次の式(AA)
IFN-NH-La-S0 (AA)
で表される。式中、
IFN-NHはインターフェロンアルファ残基を表し;
Laは、自己開裂誘発基Gaによって自己開裂可能な官能基を表し;
S0は自己開裂誘発基Gaを含む分岐状ポリマー鎖を表し、
IFN-NHをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも40kDa、最大で200kDaであり、より好ましくは少なくとも40kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDa;より好ましくは少なくとも60kDa、最大で100kDaである。
【0080】
好ましくは、S0は、少なくとも第1の分岐構造BS1を含む少なくとも5kDaの分子量を有するポリマー鎖であり、その少なくとも第1の分岐構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を有し、IFN-NHをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも40kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で100kDaであり、S0、BS1、S1の少なくとも一つは自己開裂誘発基Gaをさらに含む。
【0081】
好ましくは、分岐構造BS1は、少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2をさらに含むか、又はS0、S1の少なくとも一つは少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2を含む少なくとも第2の分岐構造BS2を含み、IFN-NHをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも40kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で100kDaであり、S0、BS1、BS2、S1、S2の少なくとも一つは自己開裂誘発基Gaをさらに含む。
【0082】
好ましくは、分岐構造BS1、BS2の少なくとも一つは、少なくとも4kDaの分子量を有する第4のポリマー鎖S3を含むか、又はS0、S1、S2の一つは、少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第4のポリマー鎖S3を含む第3の分岐構造BS3を含み、IFN-NHをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも40kDa、最大で120kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDa、さらにより好ましくは少なくとも60kDa、最大で100kDaであり、S0、BS1、BS2、BS3、S1、S2、S3の少なくとも一つは自己開裂誘発基Gaをさらに含む。
【0083】
好ましい実施形態において、ポリマー担体内の分岐場所の位置、第1の又は唯一の分岐構造BS1が臨界距離を規定する。この臨界距離は、連結された原子で測って、S0とLaの結合部位と、分岐位置(BS1)との間の最短距離である。臨界距離の長さは残留活性に対して影響を及ぼす。臨界距離は好ましくは50未満、より好ましくは20未満、最も好ましくは10未満である。
【0084】
少なくとも二つの結合と担体を有する本発明のプロドラッグのために、プロドラッグは次の式(AB)
IFN-(NH-L-S0)n (AB)
で表されることが好ましい。
【0085】
式中、nは2、3又は4(好ましくはn=2)であり;
IFN(-NH)nはインターフェロンアルファ残基を表し;
各Lは、独立に恒久的官能基Lpであるか;又は自己開裂誘発基Gaによって自己開裂可能な官能基Laであり;
各S0は独立に、少なくとも5kDaの分子量を有するポリマー鎖であり、S0は、少なくとも第1の分岐構造BS1を含むことによって任意選択で分岐しており、その少なくとも第1の分岐構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含み、S0、BS1、S1の少なくとも一つは自己開裂誘発基Gaをさらに含み、IFN(-NH)nをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも20kDa、最大で400kDa、好ましくは少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDaである。
【0086】
任意選択で、二つ、三つ又はそれ以上、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ又は八つのポリマー鎖が本発明のプロドラッグ中に存在する。しかし、それぞれのポリマー鎖はさらに少なくとも4kDaの分子量を有する。ポリマー鎖の総数は最大で400kDa(IFN(-NH)nをもたない)であるプロドラッグの総重量によって限定され、IFN-NHをもたないプロドラッグの分子量は、少なくとも20kDa、最大で400kDa、好ましくは少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDaである。
【0087】
したがって本発明の好ましい実施形態は、分岐構造BS1、BS2の少なくとも一つが少なくとも4kDaの分子量を有するさらなる第4のポリマー鎖S3を含むか、又はS0、S1、S2の一つが少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第4のポリマー鎖S3を含む第3の分岐構造BS3を含む組成物に関し、IFN(-NH)nをもたないプロドラッグの分子量は少なくとも20kDa、最大で400kDa、好ましくは少なくとも40kDa、最大で200kDa、より好ましくは少なくとも60kDa、最大で120kDaである。
【0088】
Laの自己開裂に必要である自己開裂誘発基Gaは、分岐構造又はポリマー鎖の一つに含まれる。任意選択で、分岐構造の一つは基Gaとして働き、その結果分岐構造はGa(前記基を含むのではなく)からなる。これもやはり「含む(comprising)」という用語に包含される。
【0089】
プロドラッグ(AA)の調製によって通常プロドラッグの混合物が得られ、そこでは、IFNのいくつかの第一級アミノ基は担体と結合して異なるモノ結合、異なるビ結合、異なるトリ結合等のプロドラッグをもたらす。対応するモノ結合、ビス結合又はトリス結合プロドラッグは、カラムクロマトグラフィーなどの当業界で公知の標準的方法で分離することができる。
【0090】
モノ結合担体プロドラッグにおいて、二つ以上のポリマー鎖S0、S1、S2、S3は「ポリマー部分」を含み、これは、ランダムに分布していても、ブロック状で分布していてもまた交互に分布していてもよい一つ若しくは複数の繰り返し単位を特徴とする。さらに、二つ以上のポリマー鎖S0、S1、S2、S3は末端基を示す。この末端基は一般に水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、分岐状であっても非分岐状であってもよく、例えばメチル基であり、特にポリ(エチレン)グリコール(PEG)ベースのポリマー鎖についてはいわゆるmPEGが得られる。
【0091】
二つ以上のポリマー鎖S0、S1、S2、S3のうちのポリマー部分は、繰り返し単位に由来し、ポリマー鎖S0、S1、S2、S3等とは見なされない4kDa未満の分子量を有する鎖をもたらす鎖状置換基をさらにもつことができる。好ましくは、二つ以上のポリマー鎖S0、S1、S2、S3は4kDa未満の分子量の置換基を担持する。
【0092】
二つ以上のポリマー鎖S0、S1及びS2、S3は一般にそれぞれ相互連結部分を含む。Gaは、相互連結部分の少なくとも一つの中に存在する。S0以外のポリマー鎖については、相互連結部分は、例えばS1のポリマー部分をBS1と連結させ、S2のポリマー部分をBS2と連結させる構造要素である。S0については、相互連結部分はLaをBS1と連結させる構造要素である。
【0093】
相互連結部分は、分岐状又は非分岐状であり、-O-、-S-、N(R)、C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)、一つ若しくは複数の炭素環又は複素環からなる群から選択されるヘテロ原子又は官能基により任意選択で介在されているか又はそれが末端となっているC1〜50アルキル鎖からなっていてよい。ここで、Rは、水素、或いは上記原子又は基の一つ若しくは複数により任意選択で介在されているか又はそれが末端となっているC1〜20アルキル鎖であり、これはさらに末端原子として水素を有しており;炭素環はフェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキルであり;複素環は4〜7員ヘテロシクリル又は9〜11員ヘテロビシクリルである。
【0094】
「C3〜10シクロアルキル」又は「C3〜10シクロアルキル環」は、少なくとも部分的に飽和している炭素-炭素二重結合を有していてよい3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル鎖、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルを意味する。シクロアルキル炭素の各水素は置換基で置き換えられていてよい。「C3〜10シクロアルキル」又は「C3〜10シクロアルキル環」という用語は、ノルボナン又はノルボネンのような橋かけ型二環式化合物も含む。
【0095】
「4〜7員ヘテロシクリル」又は「4〜7員複素環」は、最大数までの二重結合を含むことができる4、5、6又は7個の環原子を有する環(完全に飽和している、部分的に飽和している、又は飽和していない芳香環又は非芳香環)を意味し、少なくとも1個の環原子から最大で4個の環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、上記環は、炭素又は窒素原子を介して分子の残りの部分と結合している。4〜7員複素環の例は、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピン又はホモピペラジンである。
【0096】
「9〜11員ヘテロビシクリル」又は「9〜11員ヘテロ二環」は9〜11個の環原子を有する二つの環からなる複素環系を意味し、少なくとも一つの環原子は両方の環によって共有されており、それは最大数までの二重結合(完全に若しくは部分的に飽和しているか又は飽和していない芳香環又は非芳香環)を含むことができ、少なくとも1個の環原子から最大で6個の環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、上記環は、炭素又は窒素原子を介して分子の残りの部分と結合している。9〜11員ヘテロ二環の例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリン又はプテリジンである。9〜11員ヘテロ二環という用語は、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカンのような二つの環からなるスピロ構造、又は8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタンのような橋かけ型複素環も含む。
【0097】
炭素環、複素環及びヘテロ二環は、-O-、-S-、N(R)、C(O)、C(O)N(R)、N(R)C(O)からなる群から選択されるヘテロ原子又は官能基により任意選択で介在されているか又はそれが末端となっているC1〜20アルキルで置換されていてよく、Rは、水素、或いは、上記原子又は基の一つ若しくは複数により任意選択で介在されているか又はそれが末端となっているC1〜10アルキル鎖であり、これはさらに末端原子として水素を有している。
【0098】
二つ若しくは三つ又はそれ以上の鎖S0、S1、S2のポリマー部分は、その鎖の大部分、好ましくは各鎖の分子量の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも97.5%を形成する。したがって、その鎖のベースはポリマー部分で表される。
【0099】
好ましくは、その二つ以上の鎖S0、S1、S2は独立に、ポリアルコキシポリマー(これは好ましい、特にポリ(エチレン)グリコールが好ましい)、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン及びその誘導体ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアミド及びポリエステル及び対応するブロックコポリマーからなる群から選択されるポリマーをベースとする。
【0100】
好ましくは、その二つ以上の鎖S0、S1、S2は同じポリマーをベースとする。好ましくは、その二つ以上の鎖S0、S1、S2はポリアルコキシポリマーをベースとする。さらにより好ましくはその二つ以上の鎖S0、S1、S2はポリエチレングリコールをベースとする。
【0101】
それに応じて、同じことは他の鎖S3、S4、S5等にも当てはまる(存在する場合)。
【0102】
鎖S0は分岐構造BS1を含む。したがってS1はS0と結合している。S2の結合のために、分岐構造BS1を用いることができ、また、S0又はS1の一部であってよいさらなる分岐構造BS2が存在する。したがって、他の鎖が存在する場合、さらなる分岐構造が存在してよい。例えば、鎖S3が存在する場合、それはBS1、BS2又は分岐構造BS3と結合していてよい。存在する場合、分岐構造BS3はS0、S1又はSの一部であってよい。
【0103】
一般に、鎖の分岐を可能にする任意の化学的実体を用いることができる。好ましくは、その分岐構造は、少なくとも3重の置換炭素環、少なくとも3重の置換複素環、3級炭素原子、4級炭素原子及び3級窒素原子からなる群から独立に選択される。この炭素環及び複素環という用語は上記定義の通りである。
【0104】
当業界の刊行物において、自己開裂誘発基は、その構造を担体と区別するためにリンカーと称されることがある。それでも、これらの構造の特徴を明確に区別することは困難なことが多い。したがって、本発明の意味の範囲内で、開裂誘発基Gaを、少なくともS0、S1、BS1を含む担体Sの一部であると考える。Gaの化学的性質のばらつきは、対応するプロドラッグの自己開裂特性の特性を操作するのを大いに可能にする。
【0105】
関連する放出プロファイルを示す適切な過渡的リンカー構造はWO-A2005/099768に記載されている。他の過渡的リンカー構造は、例えばWO-A2005/034909、WO-A2005/099768、WO-A2006/003014及びWO-A2006/136586に全般的に/広範に記載されている。
【0106】
他の過渡的リンカー構造は、例えばWO-A99/30727に広範に記載されている。
【0107】
特に、自己開裂が可能である適切な過渡的リンカー構造は、S0の中に取り込むために選択することができる。本明細書で選択されるリンカー構造を以下詳細に説明する。
【0108】
理想的には、本発明のプロドラッグは、現在のインターフェロンアルファ接合体又は製剤より優れた以下の特徴及び/又は利点、すなわち;そのプロドラッグを良好な収率で容易に合成することができ、精製して均一な組成物を提供することができ、インビトロ及びインビボなどでの自己開裂後に活性を示し、改変されていないインターフェロンアルファ及び従来説明されている接合体より優れた薬力学的効果を有するということの一つ若しくは複数を有する。
【0109】
プロドラッグ結合の開裂性に対する制御を発揮する自己開裂誘発性化学構造は自己開裂誘発基(式(AA)のLaの定義によるGa)と称される。自己開裂誘発基は、所与の官能基Laの開裂速度に対して強い影響を及ばすことができる。
【0110】
好ましいLaはC(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択され、これは、インターフェロンアルファの第一級アミノ基と一緒にカルバメート又はアミド基を形成する。
【0111】
したがって、Laが、IFNの第一級アミノ基と一緒にカルバメート又はアミド基を形成して式(AA1)又は(AA2)
IFN-NH-C(O)O-S0 (AA1)、
IFN-NH-C(O)-S0 (AA2)
をもたらすC(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択される本発明の組成物が好ましい。
【0112】
以下の節において、自己開裂誘発基Gaとして機能することができる様々な構成成分を挙げることとする。
【0113】
基Gaは自己開裂誘発基を表す。Gaはそのままで存在しても、またカスケード型自己開裂誘発基(これは追加的な加水分解又は酵素的開裂ステップによって、脱マスキングされて有効となる)として存在してもよい。Gaがそのまま存在する場合、それはLaの律速的開裂を支配する。
【0114】
好ましくは、Gaの転換は、1,4-又は1,6-脱離などのS0内での分子内転位を誘発することができる。この転位はLaをずっと不安定にし、それによってその開裂が誘発される。Gaの転換は、カスケード機構における律速段階である。過渡的結合の開裂速度は、与えられた治療シナリオにおける薬物分子についての所望放出速度と同じであることが理想的である。脱離をもとにしたカスケード系において、Laの開裂は、Gaの転換によってその不安定性が誘発されるのと実質的に同時であることが望ましい。さらに、上記で論じた主に酵素的開裂に伴う欠点を避けるために、律速開裂動態が、追加的な酵素的寄与を必要とすることなく、治療的に有用なタイムフレームで進行することが望ましい。
【0115】
R.B.Greenwald、A.Pendri、C.D.Conover、H.Zhao、Y.H.Choe、A.Martinez、K.Shum、S.Guan、J.Med.Chem.、1999年、42巻、3657〜3667頁及びPCT特許出願WO-A99/30727は、1,4-又は1,6-ベンジル脱離をもとにしてアミノ含有小分子化合物のポリ(エチレングリコール)プロドラッグを合成するための方法を記載している。このアプローチでは、薬物分子のアミノ基を、カルバメート基を介してPEG化ベンジル部分と結合させる。ポリ(エチレングリコール)を、エステル、カーボネート、カルバメート又はアミド結合で、ベンジル基と結合させる。薬物分子からのPEGの放出は、自己加水分解と酵素的開裂の組合せによって起こる。このアプローチでは、放出誘発マスキング基の開裂に、古典的で迅速な1,4-又は1,6-ベンジル脱離が後続する。このリンカー系は、タンパク質の放出可能なポリ(エチレングリコール)接合体のためにも用いられていた(S.Lee、R.B.Greenwaldら、Bioconj.Chem.2001年、12巻(2号)、163〜169頁)。PEG化がリシン残基のε-アミノ基上で起こったときにその活性を失うので、リゾチームはモデルタンパク質として用いられた。様々な量のPEGリンカーがタンパク質と接合された。PEG接合体からの遊離タンパク質の再生が、ラット血漿又は非生理学的高pH緩衝液中で行われている。F.M.H.DeGrootら(WO-A2002/083180及びWO-A2004/043493)及びD.Shabatら(WO-A2004/019993)も参照されたい。
【0116】
したがって、Laはカルバメート官能基であり、前記基の開裂は、S0の1,4-又は1,6ベンジル脱離を介してGaのヒドロキシル又はアミノ基によって誘発される。ここで、Gaは、律速的転換を受けるエステル、カーボネート、カルバメート又はアミド結合を含む。実際、Gaは加水分解で切断させることができる。
【0117】
したがって、Laがインターフェロンアルファのアミノ基と一緒にカルバメート官能基を形成し、前記基の開裂が、S0の1,4-又は1,6ベンジル脱離を介してGaのヒドロキシル又はアミノ基によって誘発され、Gaが律速的転換を受けるエステル、カーボネート、カルバメート又はアミド結合を含む本発明の組成物が好ましい。
【0118】
Gaは、上記前駆体を表す構造的組合せを含むGaの成分によって可能になるカスケード開裂系を含むことができる。Gaの前駆体は、アミド、エステル又はカルバメートなどの追加の過渡的結合を含むことができる。前駆体の一時的結合(例えば、カルバメート)の加水分解に対する安定性又は感受性は自己加水分解特性によって支配されるか又は酵素の活性を必要とする可能性がある。
【0119】
より具体的には、S0について特定のスペーサー部分を有する好ましい基La及びGaを以下で説明する。
【0120】
WO-A2005/099768による好ましい構造は、一般式(I)及び(II):
【化1】

【0121】
(式中、
TはIFN-NHを表し;Xはスペーサー部分を表し;Y1及びY2はそれぞれ独立にO、S又はNR6を表し;Y3はO又はSを表し;Y4はO、NR6又は-C(R7)(R8)を表し;R3は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル基、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニル基或いはカルボキシアミドアルキル基からなる群から選択される部分を表し;R4は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ又はヘテロアリールオキシ、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択される部分を表し;R7及びR8はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニル基、カルボキシアミドアルキル基、シアノ基及びハロゲンからなる群から選択され;R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル、アリール、置換アリール及び置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される基を表し;R1はS0の残り部分を表し;Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状ヘテロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される基を表し;Nuは求核試薬を表し;nはゼロ又は正の整数を表し;Arは多置換芳香族炭化水素又は多置換芳香族複素環を表す)
から選択される。
【0122】
本発明の意味の範囲内において、基LaはY3-C(Y5)NH-(IFNのアミノ基と一緒に)で表され、GaはNu-W-Y4-C(Y1)Y2で表され、Ar(R4)n-C(R3)XR1はS0を表し、これは好ましくはさらに少なくともBS1及びS1を含む。
【0123】
代替の実施形態では、S1はArを介して結合しているか、又はR3を表す。次いで、XR1で置換されたY3と隣接する炭素原子は分岐構造BS1を表し、S1はGaを含むArで終端となっている。この実施形態では、S0とS1の用語は互いに交換できることは明らかである。
【0124】
好ましくは、式(AA)又は(AA1)において、S0は式(AAA1)からなる。
【化2】

【0125】
式中、
Gaは上記と同様の意味を有し;
S00はCH2又はC(O)であり;
S0Aは、50個未満、より好ましくは20個未満、最も好ましくは10個未満の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、これは、任意選択で置換された複素環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される一つ又は複数の基、環又はヘテロ原子により任意選択で介在されているか又はそれで終端となっており、
BS1、BS2、BS3はN及びCHからなる群から独立に選択される。
【0126】
S0B、S1Aは独立に1〜25個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、これは、任意選択で置換された複素環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される一つ若しくは複数の基、環又はヘテロ原子により任意選択で介在されているか又はそれで終端となっており;
S0C、S1Bは(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3であり、各nは独立に90〜2500の整数であり、各n1は独立に1〜25の整数であり、n2は0又は1であり、
S2、S3は独立に水素又は(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3であり、各nは独立に90〜2500の整数であり、各n1は独立に1〜25の整数であり、n2は0又は1であり、
R2、R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルからなる群から独立に選択される。
【0127】
本発明による用語S2、S3の一般的意味とは異なり、式(AAA1)のS2、S3は水素であってよい。したがって、S2、S3のどちらも水素でないか(二重分岐担体をもたらす)、S2、S3のうちの一つが水素であるか(三重分岐担体をもたらす)、又はそのどちらも水素であってよい(四重分岐担体をもたらす)。したがって、式(AAA1)のS2、S3の定義について特に、これらの用語が必ずしもポリマー鎖を表すものではない。したがって、BS2及びBS3は必ずしも分岐位置を表さない。
【0128】
複素環という用語は上記で定義したような複素環を意味する。任意選択の置換基は、例えばオキソ(=O)(その環は少なくとも部分的に飽和している)、1〜6個の炭素原子を有する分岐状若しくは非分岐状アルキル鎖又はハロゲンである。好ましい置換複素環はスクシンイミドである。
【0129】
好ましくは、式(AAA1)のGaはOC(O)-Rであり、Rは以下に示すような式(I)の部分構造であり、R1、R4、R5及びnは以下に定義する通りである。
【0130】
したがって、GaがOC(O)-Rであり、Rが式(I)
【化3】

【0131】
の部分構造であることが好ましい。
【0132】
式中、R1、R4、R5は水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルからなる群から独立に選択され、nは1又は2である。
【0133】
さらに好ましい一般的芳香族構造を以下に挙げる。
【化4】

【0134】
式中、
NH-IFNは過渡的リンカーと結合したインターフェロンアルファ残基を表し;
R1、R2、R3、R4及びR5は水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチルから独立に選択され、
CARは過渡的リンカーと結合したポリマー担体残基を表し、
n=1又は2であり、
XはC1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択される。
【0135】
「C1〜C12ヘテロアルキル」という用語は、上記で定義したようなヘテロ原子、官能基、炭素環又は複素環により任意選択で介在された1〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。
【0136】
好ましい実施形態では、式(A)において、Laはインターフェロンアルファと結合したカルバメート基で表され、Gaは芳香族酸素基で表され、式Iに示すように、カルボニルがそれと結合しており、置換基がカルボニルと結合している。
【0137】
より好ましい構造は一般式Iで与えられ、これは上記の一般的芳香族リンカー構造の中の構造(A)の一部である:
【化5】

【0138】
ここで、式(I)の好ましい例は以下のもの:
【化6】

【0139】
を含む。
【0140】
上記した一般的芳香族リンカー構造の中の構造(A)の一部である式(II)のより好ましい芳香族構造は:
【化7】

【0141】
であり、式(II)の好ましい例は以下のもの:
【化8】

【0142】
を含む。
【0143】
他の好ましい実施形態はWO-A2006/136586に記載されている。したがって、以下の構造が好ましい。
【化9】

【0144】
式中、
TはNH-IFNであり;
XはR13-Y1などのスペーサー部分であり;
Y1は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合又は自由電子対を含む任意のヘテロ原子であるか又は存在せず;
R13は、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択され;
R2及びR3は、水素、アシル基又はヒドロキシル基に対する保護基から独立に選択され;
R4〜R12は、水素、X-R1、置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル又はヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアミドから独立に選択され;
R1は、少なくともS1及びBS1を含むS0の残り部分である。
【0145】
この実施形態では、Laはアミド基であり、Gaは、OR2/OR3を担持するN-分岐構造を包含する。
【化10】

【0146】
式中、Rは水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され;XはC1〜C8アルキル又はC1〜C12ヘテロアルキルから選択され、CARはポリマー担体残基である。
【0147】
また、好ましい実施形態及びより好ましい実施形態では、CARは好ましくは少なくともS1、BS1を含むS0の残りの部分を意味する。
【0148】
他のさらに好ましい実施形態では、好ましい構造は担体結合プロドラッグD-Lで与えられる。
【0149】
式中、-DはNH-IFNであり;
-Lは式(I)
【化11】

【0150】
で表される非生物学的に活性なリンカー部分-L1であり、
点線はアミド結合を形成することによるIFNのアミノ基との結合を表し;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1はC又はS(O)であり;
X2はC(R7,R7a)又はC(R7,R7a)-C(R8,R8a)であり;
X3はO、S又はN-CNであり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aはH及びC1〜4アルキルからなる群から独立に選択され;
任意選択で、対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aの一つ又は複数は化学結合を形成しており;
任意選択で、対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aの一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒にC3〜7シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクリルを形成しており;
任意選択で、対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R4/R6、R7/R8、R2/R3の一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒に環Aを形成しており;
任意選択で、R3/R3aはそれらが結合している窒素原子と一緒に4〜7員複素環を形成しており;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4〜7員ヘテロシクリル及び9〜11員ヘテロビシクリルからなる群から選択され;
L1は一つの基L2-Zで置換されており、任意選択でさらに置換されており、但し、式(I)の星印の付いた水素は置換基で置き換えられておらず;
L2は単一化学結合又はスペーサーであり;
Zは少なくともS1、BS1を含むS0の残りの部分である。
【0151】
この実施形態では、Laはアミド基で表され、GaはN(H*)X1(O)で表され、その鎖はNの置換基を含むNと連結している。
【0152】
この種のプロドラッグは欧州特許出願第08150973.9号に記載されている。
【0153】
したがって、La-S0が式(AAA2)で表される本発明の組成物が好ましい。
【化12】

【0154】
式中、点線は、LaとIFNの第一級アミノ基がアミド結合を形成するようなアミノ基との結合を表し;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1はC又はS(O)であり;
X2は、C(R7,R7a)又はC(R7,R7a)-C(R8,R8a)であり;
X3は、O、S又はN-CNであり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aはH及びC1〜4アルキルからなる群から独立に選択され;
任意選択で、対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aの一つ又は複数は化学結合を形成しており;
任意選択で、対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aの一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒にC3〜7シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクリルを形成しており;
任意選択で、対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R4/R6、R7/R8、R2/R3の一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒に環Aを形成しており;
任意選択で、R3/R3aはそれらが結合している窒素原子と一緒に4〜7員複素環を形成しており;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4〜7員ヘテロシクリル及び9〜11員ヘテロビシクリルからなる群から選択され;
S0は一つの基L2-Zで置換されており、任意選択でさらに置換されており、但し、式(I)の星印の付いた水素は置換基で置き換えられておらず;
L2は単一化学結合又はスペーサーであり;
Zは式(AAA2a)
【化13】

【0155】
であり、
式中、S00、S0A、S0B、S0C、S1A、S1B、S2、S3、BS1、BS2及びBS3は上記式(AAA1)について示したのと同様の意味を有する。
【0156】
「アルキル」は直鎖状又は分岐状炭素鎖を意味する。アルキル炭素の各水素は置換基で置き換えられていてよい。
【0157】
「C1〜4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖、例えば、分子の末端で存在する場合:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルtert-ブチルを意味し、また、分子の二つの部分がアルキル基によって結合している場合、例えば-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-C(CH3)2-を意味する。C1〜4アルキル炭素の各水素は置換基で置き換えられていてよい。
【0158】
「C1〜6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル鎖、例えば分子の末端で存在する場合: C1〜4アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルを意味し、また、分子の二つの部分がアルキル基によって結合している場合、例えば-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-C(CH3)2-を意味する。C1〜6アルキル炭素の各水素は置換基で置き換えられていてよい。
【0159】
したがって、「C1〜18アルキル」は1〜18個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、「C8〜18アルキル」は8〜18個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。したがって、「C1〜50アルキル」は1〜50個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。
【0160】
「C2〜50アルケニル」は、2〜50個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状アルケニル鎖、例えば分子の末端で存在する場合:-CH=CH2、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、-CH=CH-CH2-CH3、-CH=CH-CH=CH2を意味し、また、分子の二つの部分がアルケニル基によって結合している場合、例えば-CH=CH-を意味する。C2〜50アルケニル炭素の各水素は、さらに指定するような置換基で置き換えられていてよい。したがって、「アルケニル」という用語は、少なくとも一つの炭素炭素二重結合を有する炭素鎖に関する。任意選択で、一つ又は複数の三重結合が存在してよい。
【0161】
「C2〜50アルキニル」は、2〜50個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状アルキニル鎖、例えば分子の末端で存在する場合:-C≡CH、-CH2-C≡CH、CH2-CH2-C≡CH、CH2-C≡C-CH3を意味し、また、分子の二つの部分がアルキニル基によって結合している場合、例えば-C≡C-を意味する。C2〜50アルキニル炭素の各水素は、さらに指定するような置換基で置き換えられていてよい。したがって、「アルキニル」という用語は、少なくとも一つの炭素炭素三重結合を有する炭素鎖に関する。任意選択で、一つ又は複数の二重結合が存在してよい。
【0162】
「C3〜7シクロアルキル」又は「C3〜7シクロアルキル環」は、少なくとも部分的に飽和している炭素-炭素二重結合を有していてよい3〜7個の炭素原子を有する環状アルキル鎖、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルを意味する。シクロアルキル炭素の各水素は、置換基で置き換えられていてよい。「C3〜7シクロアルキル」又は「C3〜7シクロアルキル環」という用語は、ノルボナン又はノルボネンのような橋かけ型二環も含む。したがって、「C3〜5シクロアルキル」は3〜5個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。
【0163】
したがって、「C3〜10シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル、例えばC3〜7シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルを意味する。「C3〜10シクロアルキル」という用語は、少なくとも部分的に飽和しているカルボ単環及びカルボ二環も含む。
【0164】
「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。一般に、ハロゲンはフルオロ又はクロロであることが好ましい。
【0165】
「4〜7員ヘテロシクリル」又は「4〜7員複素環」は、最大数までの二重結合を含むことができる4、5、6又は7個の環原子を有する環(完全に飽和している、部分的に飽和している、又は飽和していない芳香環又は非芳香環)を意味し、少なくとも1〜4個の環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、その環は、炭素又は窒素原子を介して分子の残りの部分と結合している。4〜7員複素環の例は、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピン又はホモピペラジンである。
【0166】
「9〜11員ヘテロビシクリル」又は「9〜11員ヘテロ二環」は、9〜11個の環原子を有する二つの環からなる複素環系を意味し、少なくとも一つの環原子は両方の環により共有されており、それは最大数までの二重結合を含むことができ(完全に飽和している、部分的に飽和している、又は飽和していない芳香環又は非芳香環)、少なくとも1〜6個の環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素及び窒素(=N(O)-を含む)からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられており、その環は、炭素又は窒素原子を介して分子の残りの部分と結合している。9〜11員ヘテロ二環の例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリン又はプテリジンである。9〜11員ヘテロ二環という用語は、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカンのような二つの環からなるスピロ構造又は8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタンのような橋かけ型複素環も含む。
【0167】
好ましくは、X3はOである。好ましくは、XはN(R4)であり、X1はCであり、X3はOである。好ましくは、X2はC(R7R7a)である。
【0168】
好ましくは、La-S0は、
【化14】



【0169】
からなる群から選択される。
【0170】
式中、RはH又はC1〜4アルキルであり;YはNH、O又はSであり;R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、X、X1、X2は上記に示したのと同様の意味を有する。
【0171】
さらに好ましくは、La-S0は、
【化15】





【0172】
からなる群から選択される。
【0173】
式中、Rは上記に示したのと同様の意味を有する。
【0174】
少なくとも一つ(最大で四つ)の水素は基L2-Zで置き換えられている。二つ以上の基L2-Zが存在する場合、各L2及び各Zは独立に選択することができる。一つの基L2-Zだけが存在することが好ましい。
【0175】
一般に、S0は、上記式において星印が付けられている水素の置換から離れた任意の位置で、L2-Zで置換されていてよい。好ましくは、R、R1〜R8によって直接与えられるか、或いはC1〜4アルキル又はR及びR1〜R8の定義によって与えられる他の基及び環の水素として与えられる水素の一つ〜四つは、L2-Zで置き換えられている。
【0176】
さらに、S0は任意選択でさらに置換されていてよい。一般に、開裂の原理が影響を受けない限り、任意の置換基を用いることができる。
【0177】
好ましくは、一つ又は複数の他の任意選択の置換基は、ハロゲン、CN、COOR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)2R9a、N(R9)S(O) R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、OC(O)N(R9R9a)、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルからなる群から独立に選択され、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは同じであるか、又は異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される一つ又は複数の基により任意選択で介在されており;
R9、R9a、R9bは、H、T及びC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルからなる群から独立に選択され、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは同じであるか、又は異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており、
C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される一つ又は複数の基により任意選択で介在されており;
Tは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4〜7員ヘテロシクリル又は9〜11員ヘテロビシクリルからなる群から選択され、Tは同じであるか、又は異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており;
R10は、ハロゲン、CN、オキソ(=O)、COOR12、OR12、C(O)R12、C(O)N(R12R12a)、S(O)2N(R12R12a)、S(O)N(R12R12a)、S(O)2R12、S(O)R12、N(R12)S(O)2N(R12aR12b)、SR12、N(R12R12a)、NO2、OC(O)R12、N(R12)C(O)R12a、N(R12)S(O)2R12a、N(R12)S(O) R12a、N(R12)C(O)OR12a、N(R12)C(O)N(R12aR12b)、OC(O)N(R12R12a)又はC1〜6アルキルであり、C1〜6アルキルは同じであるか、又は異なっている一つ又は複数のハロゲンで任意選択で置換されており;
R11、R11a、R12、R12a、R12bは、H又はC1〜6アルキルからなる群から独立に選択され、C1〜6アルキルは同じであるか、又は異なっている一つ又は複数のハロゲンで任意選択で置換されている。
【0178】
「介在される(interrupted)」という用語は、ある基が二つの炭素間に挿入されるか、炭素と水素との炭素鎖の末端にそれがあることを意味する。
【0179】
L2は単一化学結合又はスペーサーである。L2がスペーサーである場合、それは一つ又は複数の上記定義の任意選択の置換基として定義されることが好ましい。但し、L2はZで置換されているものとする。
【0180】
したがって、L2が単一化学結合以外である場合、L2-Zは、COOR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R9R9a)、S(O)2N(R9R9a)、S(O)N(R9R9a)、S(O)2R9、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9aR9b)、SR9、N(R9R9a)、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)2R9a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9aR9b)、OC(O)N(R9R9a)、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルであり、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは同じであるか、異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは、-T-、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される一つ又は複数の基によって任意選択で介在されており;
R9、R9a、R9bは、H、Z、T及びC1〜50アルキル、C2〜50アルケニル又はC2〜50アルキニルからなる群から独立に選択され、T、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは同じであるか、異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており、C1〜50アルキル、C2〜50アルケニル及びC2〜50アルキニルは、T、-C(O)O-、-O-、-C(O)-、-C(O)N(R11)-、-S(O)2N(R11)-、-S(O)N(R11)-、-S(O)2-、-S(O)-、-N(R11)S(O)2N(R11a)-、-S-、-N(R11)-、-OC(O)R11、-N(R11)C(O)-、-N(R11)S(O)2-、-N(R11)S(O)-、-N(R11)C(O)O-、-N(R11)C(O)N(R11a)-及び-OC(O)N(R11R11a)からなる群から選択される一つ又は複数の基により任意選択で介在されており;
Tは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4〜7員ヘテロシクリル又は9〜11員ヘテロビシクリルからなる群から選択され、それは同じであるか、異なっている一つ又は複数のR10で任意選択で置換されており;
R10は、Z、ハロゲン、CN、オキソ(=O)、COOR12、OR12、C(O)R12、C(O)N(R12R12a)、S(O)2N(R12R12a)、S(O)N(R12R12a)、S(O)2R12、S(O)R12、N(R12)S(O)2N(R12aR12b)、SR12、N(R12R12a)、NO2、OC(O) R12、N(R12)C(O)R12a、N(R12)S(O)2R12a、N(R12)S(O)R12a、N(R12)C(O)OR12a、N(R12)C(O)N(R12aR12b)、OC(O)N(R12R12a)又はC1〜6アルキルであり、C1〜6アルキルは同じであるか、異なっている一つ又は複数のハロゲンで任意選択で置換されており;
R11、R11a、R12、R12a、R12bは、H、Z又はC1〜6アルキルからなる群から独立に選択され、C1〜6アルキルは同じであるか、異なっている一つ又は複数のハロゲンで任意選択で置換されており;
但し、R9、R9a、R9b、R10、R11、R11a、R12、R12a、R12bの一つはZである。
【0181】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、インビトロでの抗ウイルスアッセイにおいて5%未満の残留活性を有するプロドラッグを含む。より好ましくは、接合体のインビトロでの抗ウイルス残留活性は3%未満であり、さらにより好ましくは接合体のインビトロでの抗ウイルス残留活性は1%未満である。インビトロでの抗ウイルス残留活性は、実施例6に示すようにして測定することができる。
【0182】
本発明の他の態様は、本明細書で定義する水溶性ポリマー担体結合プロドラッグである。
【0183】
本発明による医薬組成物及びプロドラッグは、インターフェロンアルファがやはり使用される技術分野において有用である。
【0184】
インターフェロンで治療できる状態の例には、これらに限定されないが、細胞増殖障害、特に癌(例えば、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、基底細胞癌及び悪性黒色腫、卵巣癌、皮膚T細胞性リンパ腫)及びウイルス感染症が含まれる。これに限定されないが、インターフェロンによる治療は、インターフェロン感受性ウイルスの複製の阻害から利益を得る状態を治療するのに用いることができる。本発明によって治療できるウイルス感染症には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の非A/非B型肝炎、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペス、ヒトヘルペスウイルス6型(HHVL6)、乳頭腫、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルス1型及び2型(HTLV-1/-2)、ヒトロタウイルス、狂犬病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含むレトロウイルス、脳炎及び呼吸器ウイルス感染症が含まれる。
【0185】
したがって、本発明の他の態様は、インターフェロンアルファ治療から利益を得ることができる状態を治療、制御、遅延又は予防する方法において使用するための本発明の医薬組成物又は本発明のプロドラッグである。好ましい状態は上記に挙げたものである。
【0186】
したがって、本発明の他の態様は、インターフェロンアルファ治療から利益を得ることができる状態の治療を必要とする哺乳類患者において、治療、制御、遅延又は予防する方法であって、前記患者に治療有効量の本発明のいずれかの医薬組成物又は本発明のプロドラッグを投与することを含む方法である。好ましい状態は上記に挙げたものである。
【0187】
ウイルスに感染した患者の治療は、恒久的にPEG化されたインターフェロンアルファの薬物接合体と比較して、低いウイルス再発率をもたらすことが好ましい。再発率は、標準的な分析試験で測定して、治療期間の最後の時点で検出不能なHCV-RNAを有する患者と、治療後6ヵ月で検出可能なHCV-RNAを有する患者との割合と定義される。
【0188】
その投与が、恒久的にPEG化されたインターフェロンアルファより増大した分布容積をもたらすことが好ましい。分布容積は、血漿において測定される濃度が得られるように、投与された全薬物をその中に希釈しなければならない流体の理論的容積と定義される。
【0189】
インターフェロンアルファのポリマー担体結合プロドラッグの組成物は、液体組成物又は乾燥組成物として提供することができる。
【0190】
乾燥組成物の場合、適切な乾燥方法は、例えば噴霧乾燥及び凍結乾燥(フリーズドライ)である。好ましくは、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの医薬組成物は凍結乾燥によって乾燥される。
【0191】
好ましくは、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグは、液体組成物であっても乾燥組成物であっても、1回の施用において、治療有効量のインターフェロンを1週間又はそれ以上で提供するような組成物で十分に適用される。ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの1回の施用は、1〜4週間十分であることがより好ましい。
【0192】
本発明によるポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの医薬組成物は、乾燥若しくは液体の形態であってもまた他の形態であっても、一つ若しくは複数の添加剤を含む。
【0193】
非経口組成物で使用する添加剤は、緩衝剤、等張性調整剤、保存剤、安定剤、抗吸着剤、酸化防止剤、増粘剤(viscosifier)/粘度増強剤(viscosity enhancing agent)又は他の助剤として分類することができる。いくつかの場合、これらの成分は二重又は三重の機能を有することができる。一つ又は複数の添加剤は以下のものからなる群から選択される:
(i)緩衝剤:リン酸ナトリウム、重炭酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩及び酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クロリド、ピルビン酸塩などのpHを所望の範囲に保持するための生理学的に許容される緩衝剤。Mg(OH)2又はZnCO3などの制酸剤も使用することができる。緩衝能力は、pH安定性に最も感度の高い条件に適合するように調節することができる。
【0194】
(ii)等張性調整剤:注射デポーでの浸透圧差に起因する細胞損傷によりもたらされる恐れのある痛みを最少化するため。グリセリンや塩化ナトリウムがその例である。効果的な濃度は、血清についての285〜315mOsmol/kgの想定浸透圧重量モル濃度を用いた浸透圧法によって測定することができる。
【0195】
(iii)保存剤及び/又は抗菌剤:多用量非経口製剤(preparations)は、注射の際に患者が感染するリスクを最少にするのに十分な濃度での保存剤の添加を必要とし、対応する法的な要求事項は確立されている。典型的な保存剤には、m-クレゾール、フェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、クロロクレゾール及び塩化ベンザルコニウムが含まれる。
【0196】
(iv)安定剤:安定化は、タンパク質安定化力の強化、変性状態の不安定化、又はタンパク質への添加剤の直接結合によって達成される。安定剤は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リシン、プロリンなどのアミノ酸、グルコース、スクロース、トレハロースなどの糖類、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどのポリオール、リン酸カリウム、硫酸ナトリウムなどの塩、EDTA、六リン酸塩などのキレート剤、二価金属イオン(亜鉛、カルシウム等)などの配位子、他の塩又はフェノール誘導体などの有機分子であってよい。さらに、オリゴマー又はポリマー、例えばシクロデキストリン、デキストラン、デンドリマー、PEG若しくはPVP又はプロタミン若しくはHSAを用いることができる。
【0197】
(v)抗吸着剤:主にイオン性若しくは非イオン性界面活性剤又は他のタンパク質若しくは可溶性ポリマーが、組成物の容器の内面をコーティングする又は競争的に吸着させるのに使用される。例えば、ポロキサマー(Pluronic F-68)、PEGドデシルエーテル(Brij35)、ポリソルベート20及び80、デキストラン、ポリエチレングリコール、PEG-ポリヒスチジン、BSA及びHSA並びにゼラチンである。選択される添加剤の濃度及び種類は、回避すべき作用によるが、一般に、CMC値のすぐ上で、界面において界面活性剤の単分子層が形成される。
【0198】
(vi)Lyo-及び/又は凍結保護物質:凍結乾燥又は噴霧乾燥の際、添加剤は、水素結合切断及び水の除去によって引き起こされる不安定化作用に対抗することができる。このために、糖類及びポリオールを用いることができるが、界面活性剤、アミノ酸、非水溶媒及び他のペプチドについても相当する好ましい効果が認められる。トレハロースは、水分による凝集を減少させるのに特に効果的であり、また、タンパク質疎水基が水に暴露されて引き起こされる可能性のある熱安定性も改善される。また、マンニトールやスクロースもlyo/凍結保護物質単独として又は互いに組み合わせて用いられる。ここで、マンニトール:スクロースの比が大きいと、凍結乾燥されたケーキの物理的安定性が向上することが知られている。マンニトールもトレハロースと組み合わせることができる。トレハロースもソルビトールと組み合わせることができる。或いは、ソルビトールは単独の保護物質として用いられる。デンプン又はデンプン誘導体も使用することができる。
【0199】
(vii)酸化防止剤:抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、エクトイン、メチオニン、グルタチオン、モノチオグリセロール、モリン、ポリエチレンイミン(PEI)、没食子酸プロピル、ビタミンE、キレート剤、例えばクエン酸、EDTA、六リン酸塩、チオグリコール酸、
(viii)増粘剤すなわち粘度増強剤:バイアルやシリンジ中で粒子が沈降するのを遅延させる。粒子の混合及び再懸濁を容易にし、その懸濁液をより簡単に注射できる(すなわち、シリンジプランジャーに対して小さい力で)ようにするために用いられる。適切な増粘剤すなわち粘度増強剤は、例えば、カルボマー増粘剤、例えばCarbopol940、Carbopol Ultrez10、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)又はジエチルアミノエチルセルロース(DEAE又はDEAE-C)、コロイド状ケイ酸マグネシウム(Veegum)又はケイ酸ナトリウム、ヒドロキシアパタイトゲル、リン酸三カルシウムゲル、キサンタン、カラギーナン、例えばサチアゴムUTC30、脂肪族ポリ(ヒドロキシ酸)、例えばポリ(D,L-又はL-乳酸)(PLA)及びポリ(グリコール酸)(PGA)及びそのコポリマー(PLGA)、D,L-ラクチド、グリコリド及びカプロラクトンのターポリマー、ポロキサマー、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)(例えば、Pluronic(登録商標))のトリブロックを作製するための親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックと疎水性ポリ(オキシプロピレン)ブロック、ポリエーテルエステルコポリマー、例えばポリエチレングリコールテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートコポリマー、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、デキストラン又はその誘導体、デキストランとPEGの組合せ、ポリジメチルシロキサン、コラーゲン、キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)及び誘導体、ポリアルキルイミド、ポリ(アクリルアミド-コ-ジアリルジメチルアンモニウム(DADMA))、ポリビニルピロリドン(PVP)、グリコサミノグリカン(GAG)、例えばデルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン、疎水性A-ブロック、例えばポリラクチド(PLA)又はポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)と親水性B-ブロック、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はポリビニルピロリドンとからなるABAトリブロック又はABブロックコポリマーである。そうしたブロックコポリマー並びに上記ポロキサマーは、逆熱ゲル化挙動を示す(室温で流体状態であって
投与を容易にし、注射後の体温でのゾル−ゲル転移温度超でゲル状態である)。
【0200】
(ix)展着剤又は拡散剤:結合組織の細胞間隙において見られる、これらに限定されないが、ヒアルロン酸、多糖などの間質腔中の細胞外マトリクスの成分の加水分解によって結合組織の浸透性を改変する。これらに限定されないが、ヒアルロニダーゼなどの展着剤は細胞外マトリクスの粘度を一時的に低下させ、注入された薬物の拡散を促進する。
【0201】
(x)他の助剤:例えば湿潤剤、粘度調整剤、抗生物質、ヒアルロニダーゼ。塩酸及び水酸化ナトリウムなどの酸及び塩基は、製造の際のpH調整に必要な助剤である。
【0202】
乾燥組成物は、一つ又は複数の保存剤及び/又は抗菌剤を含むことが好ましい。
【0203】
本発明の一つの実施形態では、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの乾燥若しくは液体形態又は他の形態の組成物は、単回用量として提供される。これは、提供される容器が1回の医薬用量を含むことを意味する。
【0204】
本発明の他の態様では、乾燥若しくは液体形態又は他の形態の組成物は、多回用量組成物として提供される。これは、提供される容器が2回以上の医薬用量を含むことを意味する。ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグのそうした多回用量組成物は、それを必要とする異なる患者のために使用しても、また、1人の患者での使用を目的とし、1回目の用量を投与した後、残りの用量を必要となるまで保存するようにしてもよい。
【0205】
本発明の他の態様では、乾燥若しくは液体形態又は他の形態の組成物は容器中に収められる。
【0206】
液体組成物用の適切な容器は、例えばシリンジ、バイアル、密栓付きバイアル、アンプル及びカートリッジである。特に、本発明による液体組成物はシリンジで提供される。
【0207】
乾燥組成物用の適切な容器は、例えばシリンジ、二重チャンバー型シリンジ、バイアル、密栓付きバイアル、アンプル及びカートリッジである。特に、本発明による乾燥組成物は、二重チャンバー型シリンジの第1のチャンバーに提供され、再構成溶液は二重チャンバー型シリンジの第2のチャンバーに提供される。
【0208】
乾燥組成物ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを、それを必要とする患者に投与する前に、その乾燥組成物を再構成させる。再構成は、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの乾燥組成物がその中に収容されているバイアル、シリンジ、二重チャンバー型シリンジ、アンプル及びカートリッジなどの容器中で行うことができる。再構成は、所定量の再構成溶液を乾燥組成物に加えることによって実施する。再構成溶液は、水又は緩衝液などの滅菌した液体であり、これは添加物、例えば保存剤及び/又は抗菌剤、例えばベンジルアルコール及びクレゾールをさらに含むことができる。好ましくは、再構成溶液は滅菌水である。
【0209】
本発明の他の態様は、再構成するか又は液体のポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を投与する方法に関する。ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物は、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内及び腹腔内を含む注射又は注入という方法で投与することができる。ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグプロドラッグは皮下で投与することが好ましい。
【0210】
他の態様は、治療有効量のポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ、及び任意選択の一つ又は複数の薬学的に許容される添加剤を含む再構成組成物を調製する方法であって、そのインターフェロンアルファが過渡的にポリマー担体と結合しており、本発明の乾燥組成物を再構成溶液と接触させるステップを含む方法である。
【0211】
他の態様は、治療有効量のポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ、及び任意選択の一つ又は複数の薬学的に許容される添加剤を含む再構成組成物であって、そのインターフェロンアルファが上記したようにポリマー担体と過渡的に結合している再構成組成物である。
【0212】
本発明の他の態様は、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの液体組成物の製造方法である。一実施形態では、そうした液体組成物を、
(i)ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを一つ又は複数の添加剤と混合し、
(ii)単回又は多回用量に相当する量を適切な容器中に移送し、
(iii)容器を密封する
ことによって作製する。
【0213】
適切な容器は、シリンジ、バイアル、密栓付きバイアル、アンプル及びカートリッジである。
【0214】
本発明の他の態様は、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの乾燥組成物を製造する方法である。一実施形態では、そうした乾燥組成物は、
(i)ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを一つ又は複数の添加剤と混合し、
(ii)単回又は多回用量に相当する量を適切な容器中に移送し、
(iii)前記容器中の組成物を乾燥させ、
(iv)容器を密封する
ことによって作製する。
【0215】
適切な容器は、シリンジ、二重チャンバー型シリンジ、バイアル、密栓付きバイアル、アンプル及びカートリッジである。
【0216】
他の態様は、本発明による乾燥組成物のためのパーツからなるキットである。投与装置が単なる皮下用シリンジである場合、そのキットは、シリンジ、針並びにシリンジを用いて使用するための乾燥ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を含む容器及び再構成溶液を含む第2の容器を含むことができる。より好ましい実施形態では、その注入器具は単なる皮下用シリンジ以外のものであり、その場合、再構成されたポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを含む別々の容器は、容器中の液体組成物が使用の際に注入器具の出口と流体で連結されるように注入器具とかみ合う形で適合されている。投与装置の例には、これらに限定されないが、皮下用シリンジ及びペン型注入装置が含まれる。特に好ましい注入器具はペン型注入装置である。その場合、容器はカートリッジ、好ましくは使い捨てカートリッジである。
【0217】
乾燥組成物用の好ましいパーツからなるキットは、針と、本発明による組成物及び任意選択でさらに再構成溶液を含む容器を含み、その容器は針を用いて使用するように適合されている。好ましくは、容器は二重チャンバー型シリンジである。
【0218】
他の態様は、本発明による液体組成物のためのパーツからなるキットである。投与装置が単なる皮下用シリンジである場合、そのキットは、液体組成物を含む容器及びその容器で使用するための針を含むことができる。
【0219】
他の態様では、本発明は、上記で説明したようなペン型注入装置で使用するための、ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの組成物を液体若しくは乾燥形態か又は他の形態で含むカートリッジを提供する。このカートリッジは、単回用量又は多回用量のポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを含むことができる。
【0220】
本発明の他の態様は、医薬品として使用するための本発明のプロドラッグ又は本発明の医薬組成物である。
【0221】
本発明の他の態様は、上記で説明したようなインターフェロンアルファで治療することができる疾患又は障害を治療又は予防する方法において使用するための本発明のプロドラッグ又は本発明の医薬組成物である。
【0222】
本発明の他の態様は、本発明のポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグと一つ又は複数の他の生物学的に活性な部分の併用である。そうした他の生物学的に活性な部分は、その遊離形態でも、またプロドラッグの形態でも用いることができる。
【0223】
担体結合インターフェロンアルファプロドラッグをC型肝炎ウイルス(HCV)の治療のために使用する場合、抗HCV活性を有する任意の化合物は、そうした併用プロドラッグ、併用組成物又は併用治療に適し得る。そうした化合物は、HCVメタロプロテアーゼ、HCVセリンプロテアーゼ、HCVポリメラーゼ、HCVヘリカーゼ、HCVNS4Bタンパク質、HCVエントリー、HCVアセンブリー、HCVイグレス、HCVNS5Aタンパク質、IMPDH及びヌクレオシド類似体からなる群から選択できる標的の機能を阻害するのに効果的である。
【0224】
より具体的には、適切な生物学的に活性な部分は以下の群から選択することができる:
(i)ヌクレオシド代謝拮抗物質:例えば、リバビリン及びビラミジンを含む広範な抗ウイルス性化合物。
【0225】
(ii)小分子抗ウイルス剤:例えばNS5Bポリメラーゼ阻害剤及びNS3プロテアーゼなどのHCVプロテアーゼ及びポリメラーゼ阻害剤。臨床開発中の化合物の例は、例えばテラプレビル、ボセプレビル、GS9190、TMC-435350、R7227/ITMN-191、BI201335、BMS-790052及びR-7128である。
【0226】
(iii)免疫調節剤:例えばSCV-07、Civacir、アリニア、Zadaxin、Bavituximab、IPHI101及びCYT107、
(iv)治療用ワクチン:例えばIC-41、GI-5005及びChronVac-C、
(v)宿主酵素阻害剤:例えばセルゴシビル、Debio-025及びNIM811。
【0227】
担体結合インターフェロンアルファプロドラッグは腫瘍学的適応症の治療に用いることができる。一実施形態では、その組成物は、これらに限定されないが、アロプリノールナトリウム、クラドリビン、シタラビン、ダカルバジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、フロクスウリジン、フルオロウラシル、イホスファミド、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、塩酸ミトザントロン、酢酸オクトレオチド、パミドロン酸二ナトリウム、チオテパ、ビノレルビン、ブレオマイシン、ダカルバジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、アクチノマイシンDなどの一つ又は複数の追加の抗癌性化合物を任意選択で含むことができ、且つ/又は以下のもの、すなわち:外科処置、放射線療法、ホルモン療法、特定の阻害剤、抗体、抗体断片、ワクチン、小分子薬物、他のサイトカイン、生体分子又はアンチセンス、又は遺伝子治療のいずれかと併用することができる。
【0228】
担体結合インターフェロンアルファプロドラッグで治療される腫瘍学的適応症には:急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳癌、気管支腺腫/気管支カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖障害、結腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、眼球内黒色腫、眼癌、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣、妊娠性絨毛性腫瘍、グリオーマ、成人グリオーマ、小児脳幹グリオーマ、小児大脳星細胞腫、小児視経路及び視床下部ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性)ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視経路グリオーマ、小児の眼球内黒色腫、島細胞癌(膵臓内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞、口唇癌及び口腔癌(oral cavity cancer)、肝臓癌、肺癌、非小細胞、肺癌、小細胞、リンパ腫、AIDS関連マクログロブリン血症、ヴァルデンストレーム、骨の悪性線維性組織球/骨肉腫、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌(mouth cancer)に伴う、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/血漿細胞腫瘍、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄腫、鼻腔癌及び副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、口唇癌及び口腔咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体部腫瘍、血漿細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂及び尿管移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、カポジ肉腫、軟組織、肉腫、子宮、皮膚癌(非黒色腫)、小腸癌、睾丸癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍並びにI型インターフェロンで治療することができる他の任意の腫瘍学的適応症を含むことができる。
【0229】
しかし、本発明による担体結合インターフェロンアルファプロドラッグの使用はHCV及び腫瘍に限定されず、本発明は、インターフェロンアルファで治療できる任意の疾患又は障害の治療又は予防も包含することを理解されたい。
【0230】
また、一つ又は複数の他の生物学的に活性な部分の任意の併用も本発明に包含されることを理解されたい。
【0231】
実施例
方法
自動フラッシュクロマトグラフィー
自動フラッシュクロマトグラフィーはBiotage「Isolera one」精製装置を用いて実施した。生成物は254及び280nmで検出し、収集した。
【0232】
分析用及び分取用RP-HPLC
RP-HPLC/ESI-MS分析は、2695サンプルマネージャー、2487デュアル吸光度検出器、及び5μm Reprosil Pur300Å ODS-3カラム(75×1.5mm)(Dr.Maisch、Ammerbuch、Germany;流量:350μl/分、典型的な勾配:水、0.05%TFA中に10〜90%MeCN、5分にわたって)を備えたZQ4000ESI装置からなるWatersの装置で実施し、必要な場合、スペクトルを、WatersソフトウェアMaxEntを用いて解析した。
【0233】
HPLC分析は、Agilent1200、Agilent Technologies(G1379B脱ガス装置、G1312A二元ポンプ、G1329Aサーモスタット付きオートサンプラー、G1316Aカラムオーブン、waters Acquity BEH300 C18カラム(1.7μm;2.1×50mm)を備えたG1365D多波長検出器を含む)を用いて実施した。
【0234】
RP-UPLC/ESI-MSは、C18RPカラム(2.1X50mm、300Å、1.7μm、流量:0.25mL/分(最大背圧270バール)を備えたThermo LTQ Orbitrap Discovery高分解能/高確度質量分析計と連結したAcquity PDA検出器を有するWaters Acquity UPLCからなるWaters/Thermo装置を用いて実施した;溶媒A:UP-H20、0.025%TFA、溶媒B:100%MeCN。
【0235】
分取用RP-HPLCについては、以下のカラム(Reprosil Pur 300Å ODS-3)を備えたWaters600コントローラー及び2487デュアル吸光度検出器を使用した。
【0236】
A):100×20mm、10mL/分の流量、典型的な勾配:水、0.1%TFA中に10〜90%MeCNで11分にわたって、又は
B):100×40mm(10μm粒子)、40mL/分の流量、典型的な勾配:水、0.1%TFA中に10〜90%MeCNで11分にわたって。
【0237】
陽イオン交換クロマトグラフィー
陽イオン交換クロマトグラフィーによる接合体の精製を、Macrocap SPカラム(6ml)を備えたAKTAエクスプローラーシステム(GE Healthcare)又はAmersham Bioscience AKTAベーシックシステムを用いて実施した。20mM酢酸塩緩衝液、pH4(緩衝液A)中のそれぞれの接合体を(緩衝液A)中で前平衡しておいたカラムにかけた。カラムを、3カラム容積の緩衝液Aで洗浄して未反応PEG試薬を全て除去した。接合体を、0〜25%緩衝液B(20mM酢酸ナトリウム、1M NaCl pH4.5)の勾配を用いて20CVで溶出させ、続いて25〜80%緩衝液Bを用いて3CVで溶出させた。溶離液を、280及び215nmで検出してモニターした。
【0238】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Superdex200 10/300カラム(Amersham Bioscience/GE Healthcare)又はSepharose 6カラムを備えたAmersham Bioscience AEKTAベーシックシステム又はAKTAエクスプローラーシステム(GE Healthcare)、及び移動相として15mMリン酸ナトリウム、135mM NaCl、pH7.4を用いて実施した。カラムの流量はどちらも0.75ml/分であった。溶出したインターフェロン及びポリマー-インターフェロン接合体を215及び280nmで検出した。
【0239】
緩衝剤交換
緩衝剤交換を、HiPrep26/10脱塩カラム又はHiTrap脱塩カラムを備えたAmersham Bioscience AEKTAベーシックシステム又はAKTAエクスプローラーシステム(GE Healthcare)を用いて実施した。
【0240】
PEG-リンカー-IFN接合体の濃縮
濃縮は、再生セルロース膜(MWCO:10.000〜100.000)を備えたAMIOCON攪拌式限外ろ過セル(モデル8003又はモデル8010)を用いて実施した。
【0241】
pfp活性化mPEG-リンカー試薬の活性の判定
規定量のpfp活性化mPEG-リンカー試薬(3〜5mg)を100μlのH2Oに溶解した。10μlの0.5M NaOHを加え、反応混合物を40℃で60分間反応させた。1.5μlのTFAを加え、この混合物の10%をRP-HPLC分析により分析した。クロマトグラムを260及び280nmで記録した。ペンタフルオロフェノールに相当するピークを積分した。測定値を、RP-HPLC分析により規定量のpfpを分析し、260及び280nmで記録したクロマトグラムを積分して作成した適切な較正曲線と比較した。
【0242】
SDS-PAGE分析
PEG-インターフェロン接合体を、NuPAGEトリス-アセテートSDS泳動用緩衝液を含むNuPAGE(登録商標)Novexトリス-アセテートゲル(1.0mm厚、12レーン)、又はNuPAGE MOPS SDS泳動用緩衝液を含むNuPAGE(登録商標)Novexビス-トリスゲル(1.0mm厚、12レーン)、HiMark(商標)染色済高分子量タンパク質標準品及びSimply Blue(商標)SafeStain(Invitrogen)を用いて分析した。各レーンに0.2〜0.6μgを加え、供給者の手順にしたがって電気泳動を実施し、続いて染色を実施した。
【実施例1】
【0243】
恒久的リンカー試薬11a及び過渡的リンカー試薬11bの合成
化合物5の合成
【化16】

【0244】
1の合成:
【化17】

【0245】
窒素雰囲気下で、トリフェニルメタンチオール(11.90g、43.08mmol)をDMSO(40ml)に懸濁させた。DBU(7.41ml、49.55mmol)を徐々に加え、混合物を室温で5分間攪拌した。固体6-ブロモヘキシルフタルイミド(13.32g、42.94mmol)を数回に分けて加え、混合物を約15分間反応させた。茶色の粘性溶液をEtOAc(700ml)と0.1M HCl(200ml)に分配させた。水相をEtOAc(3×50ml)で抽出し、一緒にした有機画分を飽和NaHCO3(80ml)及びブライン(80ml)で洗浄し、MgSO4で脱水(dried)、ろ過し濃縮した。粗製黄色油状物をn-ヘプタン/EtOAc8:1(約250〜300ml)から再結晶させた。
【0246】
収量13.3g(26.4mmol、62%)、白色固体として。
【0247】
2の合成:
【化18】

【0248】
6-(S-トリチル-)メルカプトヘキシルフタルイミド(14.27g、28.2mmol)をEtOH(250ml)に懸濁させた。ヒドラジン水和物(3.45ml、70.5mmol)を加え、混合物を2時間加熱還流させた。反応混合物は透明になり、続いて白色沈殿物が生成した。混合物をろ過し、沈殿物を冷EtOHで洗浄し、ろ液を真空下で濃縮した。残留油状物にCHCl3(180ml)を加え、得られた懸濁液を室温で1.5時間攪拌した。混合物をろ過し、沈殿物を冷CHCl3で洗浄し、ろ液をH2O(60ml)及びブライン(60ml)で抽出し、MgSO4で脱水、ろ過し濃縮して粗製アミンを得た。これは次の転換工程のために十分高純度であった。
【0249】
2:収量10.1g(26.87mmol、95%クルード)。
【0250】
MS[M+H]+=367.21g/mol(MW+H計算値=367.30g/mol)。
【0251】
3はNeoMPS(France)から購入した。
【0252】
4の合成:
【化19】

【0253】
窒素雰囲気下で、トリチルメルカプトヘキサン酸3(8.46g、21.66mmol)をトルエン(40ml)に溶解し、溶液を60℃に加熱した。カルボニルジイミダゾール(3.87g、23.87mmol)を数回に分けて加え、溶液を60℃で15分間攪拌した。アミン2(8.15g、21.07mmol)をトルエン(20ml)中の溶液として加え、混合物を60℃で2時間攪拌した。室温に冷却した後、溶液をEtOAc(200ml)と0.1M HCl(100ml)に分配させた。水相をEtOAc(3×30ml)で抽出し、有機画分を飽和NaHCO3(75ml)及びブライン(75ml)で洗浄し、MgSO4で脱水、ろ過し濃縮した。粗生成物をセライト(celite)に吸着させ、フラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc2:1(v/v)〜1:1(v/v))で精製した。
【0254】
4:収量13.8g(18.5mmol、85%)、淡黄色泡状物として。
【0255】
Rf=0.5(n-ヘプタン/EtOAc1:1)。
【0256】
MS[M+H]+=748.36(MW+H計算値=748.28g/mol)。
【0257】
5の合成:
窒素下でアミド4(4.82g、6.44mmol)をTHF(25ml)に溶解し、ボラン-THF錯体(25ml、25mmol)の1M溶液を5分間かけて加えた。反応混合物を室温で21時間攪拌し、次いでTLC分析[n-ヘプタン/EtOAc1:1、Rf(アミン-ボラン中間体)=0.60]により出発原料が完全に消費されていることが示された。0℃に冷却した後、過剰のボランをMeOH(約4ml)でクエンチした。N,N'-ジメチルエチレンジアミン(4.2ml、38.64mmol)を加え、混合物を2.5時間還流させた。室温に冷却した後、溶媒を真空下で除去し、残留物を100mlのEtOAcに溶解した。溶液を60mlのH2Oで洗浄した。水相をEtOAc(4×30ml)で抽出し、一緒にした有機画分をブライン(60ml)で洗浄し、Na2SO4で脱水、ろ過し濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(300mlシリカ、CH2Cl2/MeOH 19:1(v/v)+0.1%NEt3)で精製した。生成物5を黄色油状物として得た。
【0258】
5:収量3.71g(5.048mmol、78%)。
【0259】
MS[M+H]+=734.38(MW+H計算値=734.28g/mol)。
【化20】

【0260】
6はRieke Metals、USAから入手した。
【0261】
7の合成
AlCl3(9.0mg、68mmol)を1,2-ジクロロエタン(50ml)中の6(5.0g、23mmol)に加えた。反応混合物を85℃で7時間攪拌した。反応期間中に高粘度の茶色沈殿物が生成した。これを細かく砕いた(3回)。最終的な暗褐色混合物を室温に冷却した。氷冷した1N HCl(50ml)を加え、有機相を、沈殿物が完全に溶解するまで(>400ml)EtOAcで希釈した。相を分離させ、水相をEtOAc(4×50ml)で抽出した。一緒にした有機画分をNa2SO4で脱水、ろ過し真空下で濃縮し明るい赤色の固体を得た。これをさらに精製することなく、次のステップで使用した。
【0262】
7:収量4g(19.1mmol、98%)。
【0263】
MS[M+H]+=209.1g/mol(MW+H計算値=209.1g/mol)。
【0264】
8の合成:
CH2Cl2(98ml)中の7(4.66g、22.4mmol)の室温での溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(5.78g、28.0mmol)、HOSu(3.06g、26.6mmol)及びコリジン(10.93ml、84mmol)を加えた。90分後、反応混合物をアミン5の中へ直接ろ過して入れ(沈殿したジシクロヘキシル尿素を除去するために)、DIPEA(9.75ml、56.0mmol)を加えた。混合物を室温で1.5時間攪拌し、続いてEtOAc(400ml)で希釈した。溶液を0.1M HCl(200mL)で洗浄し、水相をEtOAc(3×50ml)で抽出した。一緒にした有機画分を飽和NaHCO3(100ml)及びブライン(100ml)で洗浄し、MgSO4で脱水、ろ過し濃縮した。粗製物質をセライトに吸着させ、シリカを用いた自動フラッシュクロマトグラフィー(SNAP100gカートリッジ、流量40ml/分、溶媒A:n-ヘプタン、溶媒B:EtOAc;勾配:10%B(6CV)、40%B(3.9CV)、60%B(3.5CV))で3回に分けて精製した。
【0265】
8:収量7.58g(8.20mmol、59%)。
【0266】
MS[M+H]+=924.46g/mol(MW+H計算値=924.44g/mol)。
【化21】

【0267】
9aの合成
固相合成によるN,N'-ジエチル、N-イソブチル-エチレンジアミンの合成
N,N'-ジエチル-エチレンジアミン(0.745ml、5.2mmol)をCH2Cl2(7ml)に溶解し、TCP樹脂(1g、1.3mmol/g、Novabiochem)に加えた。反応混合物を緩やかに45分間振とうさせ、続いてMeOH(1ml)を加えた。さらに15分後、樹脂をCH2Cl2(2ml)で10回洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0268】
N,N'-ジエチル-エチレンジアミン(1g)と結合したTCP樹脂をDMF(2ml)で3回洗浄し、DMF(5ml)中の塩化イソブチリル(0.544ml、5.2mmol)及びピリジン(1.23ml、15.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間振とうさせた。樹脂をDMF(2ml)及びCH2Cl2(2ml)で10回洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0269】
N-エチル-N-[2-(エチルアミノ)エチル]-イソブチルアミドと結合した樹脂をアルゴン雰囲気下でTHF(8ml)に溶解した。LiAlH4(5.2ml、THF中に1M)を室温で加えた。反応混合物を45℃で2時間攪拌した。反応が完了したら、樹脂をTHF(5ml)で2回洗浄し、次いでTHFに懸濁させ、飽和ロッシェル溶液で洗浄した。この樹脂をDMF及びCH2Cl2で10回洗浄した後、減圧下で乾燥した。
【0270】
N,N'-ジエチル-N-イソブチル-エチレンジアミンと結合した樹脂をHFIP/CH2Cl2溶液(30%、10ml)に10分間懸濁させた。この手順を2回繰り返した。一緒にした有機溶液から溶媒を減圧下で除去した。残留物を、HClを含むCH2Cl2溶液(ジオキサン中に0.1ml HCl、2ml CH2Cl2中に4M)に移し、溶媒を再度除去した。得られたN,N'-ジエチル-N-イソブチル-エチレンジアミン(208mg、1mmol、77%が1.3mmol樹脂に相当する)を、さらに精製することなく、THF/CH2Cl2(1:1、1ml)中でさらなる使用のために用いた。
【0271】
8(1当量、1.00g、1.08mmol)をアルゴン雰囲気下で無水THF(10ml)に溶解し、p-ニトロフェニルクロロホーメート(0.55g、2.70mmol、2.5当量)及びDIPEA(0.77ml、4.32mmol、4当量)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次いで1ml AcOHでクエンチした。溶媒を除去し、残留物を、自動フラッシュクロマトグラフィー(カートリッジ;SNAP50g、溶媒A:ヘプタン、溶媒B:EtOAc、10〜54%B、13CVで)を用いて精製した。
【0272】
p-ニトロフェニルカーボネート:収量0.812g(0.745mmol、69%)
MS[M+Na] +=1111.43g/mol(MW+Na計算値=1111.43g/mol)。
【0273】
p-ニトロフェニルカーボネート(0.376g、0.345mmol)を窒素雰囲気下でTHFに溶解し、N,N'-ジエチル-N-イソブチル-エチレンジアミン(0.18g、0.86mmol、2.5当量)及びDIPEA(0.246ml、1.38mmol、4当量)を加えた。反応混合物を室温で30分間攪拌し、次いで1ml AcOHでクエンチした。溶媒を除去し、残留物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥した。
【0274】
9a:収量158mg(0.14mmol、41%)。
【0275】
MS[M+H]+=1123.61g/mol(MW計算値=1122.64g/mol)。
【0276】
9bを、N,N'-ジエチル、N-イソブチル-エチレンジアミンの代わりにジエチルアミンを用いたこと以外は上記と同様にして合成した。p-ニトロフェニルカーボネートは精製せずインサイチュで使用して9bを得た。
【0277】
9b:収量755mg(0.44mmol、76%)。
【0278】
MS[M+H]+=1023.46g/mol(MW計算値=1022.51g/mol)。
【0279】
10aの合成
THF/MeOH 2:1(12ml)中の9a*HCl(0.302g、0.27mmol)の室温での溶液に、NaHCO3飽和水溶液を3滴加えてpHを5.0に調節した。NaBH4(0.104g、2.77mmol)を少量に分けて加え、混合物を室温で10分間攪拌した。HOAc(0.63ml)を加えた後、反応混合物を25ml CH2Cl2と水(25ml)及びブライン(25ml)に分配させた。水相をCH2Cl2(4×50ml)で抽出し、一緒にした有機画分をMgSO4で脱水し、ろ過し濃縮した。粗製物質を、シリカを用いた自動フラッシュクロマトグラフィー(SNAP50gカートリッジ、流量40ml/分、溶媒A:EtOAc、溶媒B:CH2Cl2中に0.02%EtNMe2、溶媒C:MeOH中に0.02%EtNMe2;勾配100%A(7.6CV)、A(1.0CV)中に0〜100%B、100%B(1.0CV)、B(2.6CV)中に5%C、B(2.4CV)中に11%C、B(6.3CV)中に17%C)により精製した。
【0280】
10a:収量0.14g(0.124mmol、46%)、白色固体として。
【0281】
MS[M+H]+=1124.55(MW計算値=1123.51g/mol)。
【0282】
10bを、9aの代わりに9bを用いたこと以外は上記と同様にして合成し、自動フラッシュクロマトグラフィー装置を用いて精製した。
【0283】
10b:収量0.534g(5.2mmol、71%)。
【0284】
MS[M+H]+=1025.52g/mol(MW+H計算値=1024.6g/mol)
11aの合成
ベンジルアルコール10a(140mg、0.136mmol)を無水MeCN(10ml)に溶解し、溶媒を真空下室温で蒸発させた。窒素雰囲気下で、残留物を無水MeCN(10mL)に再溶解し、ビス-ペンタフルオロフェニル-カーボネート(2.5当量、134mg、0.34mmol)、DMAP(2mg、16μmol)及びDIPEA(5当量、120μl、0.68mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、-18℃に冷却し、AcOH(0.1ml)で酸性化させた。溶媒を減圧下で除去し、11aをRP-HPLCで精製し、0〜5℃で凍結乾燥した。
【0285】
11a:収量94mg(52%)
MS[M+H]+=1334.61g/mol(MW+H計算値=1334.70g/mol)
11bを、10aの代わりに10bを用いたこと以外は上記と同様にして合成した。
【0286】
11b:収量391mg(0.31mmol、61%)。
【0287】
MS[M+H]+=1234.45g/mol(MW+H計算値=1234.50g/mol)。
【実施例2】
【0288】
恒久的及び過渡的PEG-リンカー試薬13a及び13bの合成
【化22】

【0289】
カーボネート11a(20mg、15μmol)を、アルゴン雰囲気下、N2浴中で冷却した。AcOH(9μl)及びHFIP(470μl)を加え、反応混合物をすべての固体が溶解するまで室温で攪拌した。次いで、反応混合物を再度冷却し、TES(9μl)を加え、完全に脱色するまで溶液を0℃で攪拌した。反応混合物を1.5ml MeCN/H2O(9:1、0.05%TFA)で希釈し、RP-HPLCで精製した。
【0290】
12a:収量5.2mg(6μmol、42%)
MS[M+H]+=851.10g/mol(MW+H計算値=851.07g/mol)。
【0291】
それに応じて12bを11b(60mg、49μmol)から調製した。
【0292】
12b:収量8mg(10.6μmol、22%)。
【0293】
MS[M+H]+=751.28g/mol(MW+H計算値=751.30g/mol)。
【0294】
mPEG2x20kDa-マレイミド(NOF、Japan)(521mg、12.7μmol)を、6mL3/1(v/v)MeCN/H2O +0.1%TFA中の5.2mg(6μmol)12aに加えた。297μlの0.5Mリン酸緩衝液pH7.4を加え、混合物を室温で10分間反応させた。1.5μl(13μmol)メルカプトエタノールを加え、TFAを加えて反応混合物をpH4〜5に酸性化させた。13aをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥した。
【0295】
13a:収量319mg(pfp-カーボネート活性83%)。
【0296】
13bを、mPEG2x20kDa-マレイミド12a(1.65g、41μmol)の代わりに12b(8mg、15.6μmol)を用いたこと以外は13aと同様にして合成した。
【0297】
13b:収量933mg(pfp-カーボネート活性71%)。
【実施例3】
【0298】
4-アーム分岐80kDa mPEG-ペンタフルオロフェニルカーボネート誘導体13bを用いた、恒久的カルバメート結合mPEG-IFN-2aモノ接合体14の合成
【化23】

【0299】
IFN-2aを、50mMホウ酸ナトリウムpH9(或いはホウ酸ナトリウムpH8.5又はホウ酸ナトリウムpH8を用いることができる)と緩衝剤交換して4℃に冷却した。IFN-2aの濃度は約5mg/mlであった。IFN-2aの量に対して5倍モル過剰の恒久的4-アーム分岐80kDa mPEG-リンカー試薬13bを氷浴上で水に溶解して20%(w/v)試薬溶液を得た。試薬溶液をIFN-2a溶液に加え、緩やかに混合した。反応混合物を4℃で6時間インキュベートし、pH7で100mMヒドロキシルアミン中に室温で2時間インキュベートすることによってクエンチした。恒久的mPEG-リンカー-IFN-2aモノ接合体14を、pH4で陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製し、SDS-PAGE(図1を参照されたい)及びサイズ排除クロマトグラフィー(図2を参照されたい)で分析した。
【実施例4】
【0300】
4-アーム分岐80kDa mPEG-ペンタフルオロフェニルカーボネート誘導体13bを用いた、恒久的カルバメート結合mPEG-IFN-2bモノ接合体15の合成
【化24】

【0301】
恒久的カルバメート結合mPEG-IFN-2bモノ接合体15を、IFN-2b及び4-アーム分岐80kDa mPEG-ペンタフルオロフェニルカーボネート誘導体13bを用いて、実施例3にしたがって合成した。
【実施例5】
【0302】
4-アーム分岐80kDa mPEG-ペンタフルオロフェニルカーボネート誘導体13aを用いた、ポリマー担体結合プロドラッグ16の合成
【化25】

【0303】
過渡的カルバメート結合mPEG-IFN-2aモノ接合体16を、IFN-2a及び4-アーム分岐80kDa mPEG-ペンタフルオロフェニルカーボネート誘導体13aを用いて、実施例3にしたがって合成した。
【実施例6】
【0304】
インターフェロンのインビトロでの抗ウイルス活性、及び恒久的PEGインターフェロン接合体のインビトロでの抗ウイルス残留活性を測定するためのアッセイ
インターフェロン-2a、インターフェロン-2b及び対応する開裂不可能なPEG-インターフェロン接合体の抗ウイルス効力を、ヨーロッパ薬局方にしたがった細胞に基づくインビトロでのアッセイで判定した。この細胞に基づく抗ウイルスアッセイによって、国際単位で校正された相対的効力が判定される。このアッセイのベースは、インターフェロンが、細胞がウイルスに感染するのを防止するのにその細胞に対して示す阻害効果である。ウイルスの細胞変性作用を検出し定量化するために、細胞増殖及び細胞の生存率を定量化する比色分析アッセイを用いる。このアッセイでは、テトラゾリウム塩WST-1を、生きた細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼによって代謝させ、色の変化をもたらす。アッセイを、ヒトHep-2C細胞、及び接種細胞の抗ウイルス状態に対する攻撃ウイルスとしての細胞変性脳心筋炎ウイルス(EMCV)を用いて実施した。
【0305】
接合体14及び15の抗ウイルス効力は、それぞれ非接合インターフェロン-2a及びインターフェロン-2bの1%未満であると判定された。
【実施例7】
【0306】
TranCon PEGインターフェロン接合体の過渡的リンカーのインビトロでの自己開裂速度を測定するためのアッセイ
緩衝液中でのインビトロでの担体結合プロドラッグ開裂半減期の測定
PEG-リンカー-IFNプロドラッグ16のインビトロでのリンカー開裂速度の測定のため、化合物をpH 7.4の緩衝液(例えば、20mMリン酸ナトリウム、135mM NaCl、3mM EDTA)に溶解し、溶液を0.22μmフィルターでろ過し、37℃でインキュベートした。試料を、時間間隔をおいて取り、Superdex200カラムを用いてサイズ排除クロマトグラフィーにより215nmで分析した。放出IFNに相当するピークを積分し、インキュベーション時間に対してプロットする。曲線当てはめソフトウェアを適用して一次開裂速度を測定する。放出半減期は14日間と測定された。
【0307】
80%ヒト血漿における生理学的条件下でのポリマー担体結合プロドラッグ開裂半減期の測定
80%ヒト血漿におけるPEG-リンカー-IFNプロドラッグ16のインビトロでのリンカー開裂速度を測定するため、化合物をpH7.4の4/1(v/v)ヒト血漿/50mMリン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、溶液を0.22μmフィルターでろ過し、37℃でインキュベートした。試料を、時間間隔をおいて取り、ELISA(例えば、VeriKine(商標)ヒトIFN-アルファ血清サンプルELISA、PBL interferonsource、USA)で分析した。ELISAを用いたこのリンカー開裂測定は、同じ濃度での遊離IFNと比較して、PEG-リンカー-IFN接合体が、ELISAにおいてより低いシグナルを示すという事実をもとにしている。これは、ELISAで用いられる抗体に対する接合PEG部分によるIFNの遮へいに起因している。放出されたIFNは、ELISAシグナルの経時的な増大及び非接合IFNを用いた較正曲線をもとにして決定し、放出された遊離IFNの量を、インキュベーション時間に対してプロットした。曲線当てはめソフトウェアを適用して一次開裂速度を決定した。放出半減期は約12日間と測定された。
【実施例8】
【0308】
カニクイザルでの薬力学的分析
動物試験をMPI Research、Inc.(Mattawan/MI、USA)で実施した。
【0309】
12匹のメスのカニクイザル(約3.0kg±0.3kg)をストックコロニーから移し、試験に就かせ、三つの処置グループに割り当てた(4匹の動物/グループ)。投薬する前にこの動物を終夜絶食させ、血液試料採取の最初の3時間を通して餌を与えなかった。合計絶食時間は24時間を超えなかった。
【0310】
PEGIntron(Schering-Plough)を、グループ1の動物に0.2mg/kgの用量レベルで単回皮下(SC)投与によって投与した。PEG化インターフェロンアルファ16を、グループ2及び3の動物に、それぞれ0.5mg/kg及び1.0mg/kgの用量レベルで単回皮下(SC)投与によって投与した。これらの用量を、各動物の背中の肩甲部の皮膚と組織の下位層との間にボーラス注入して投与した。
【0311】
血液試料(約1.0ml)を、様々な時点(薬物投与前約85分、並びに薬物投与後1、3、6、12、24、36、48、72、96、120、144、168、192、216、240、264、288、312、336、360、384、408、432、456、480、528、576、624及び672時間)で大腿動脈/静脈から採取し、室温で保存した。試料を、抗凝固剤を含まない管に取り込んだ。試料を少なくとも30分間凝固させ、次いで氷上に置いた。各間隔での試料採取が完了したら、試料を冷蔵条件下で遠心分離にかけた。得られた血清を一定分量(それぞれ約75μl)で六つに分け、分析するときまで冷凍保存した。
【0312】
2',5'-オリゴアデニル酸シンセターゼ(2'5'-OAS)活性の測定を、ALPCO Diagnostics(Salem、New Hampshire、USA)、カタログ番号01-I-AP75により提供されたEiken(Tokyo、Japan)2-5Aラジオイムノアッセイキットに基づいて実施した。
【0313】
50μlの試料血清を、50μlのポリ(I)ポリ(C)アガロースゲル溶液(カタログ番号R62301872)と混ぜ、ボルテックス攪拌により強力に混合し、次いで室温で10分間インキュベートした。1mlのワーキング緩衝液(カタログ番号R6201701+50μlメルカプトエタノール)を加えた後、試料に1分間ボルテックスをかけ、室温で10分間、2000rpmで遠心分離にかけた。次いで500μlのATP溶液(カタログ番号R6201841+25mlワーキング緩衝液/バイアル)を加え、試料に30秒間ボルテックスをかけ、37℃で3時間インキュベートした。この混合物に100μlの125I標識付き2-5A溶液(カタログ番号R6021201+5.4ml超純水/バイアル)を加え、これを37℃で1時間インキュベートし、5℃で30分間、3200rpmで遠心分離にかけた。上澄みを取り除いた後、管をCobraIIガンマカウンター(Packard)中に置き、2分間の計数時間で測定した。2'5'-OASによって合成された2-5Aの量を、キットの標準品から得られた標準的曲線から計算した。結果を図3に示す。
【0314】
略語:
2'5'-OAS 2',5'-オリゴアデニル酸シンセターゼ
AcOH 酢酸
ATP アデノシン三リン酸
CDI カルボニルジイミダゾール
CV カラム容積
DBU 1,3-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP ジメチルアミノ-ピリジン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
eq 化学量論的当量
HFIP ヘキサフルオロソプロパノール
HOSu N-ヒドロキシスクシンイミド
LCMS 質量分析連結型液体クロマトグラフィー
MeCN アセトニトリル
MS 質量スペクトル
MW 分子量
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
Rf 保持係数
RT 室温
SC 皮下
tR 保持時間
TES トリエチルシラン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Trt トリチル
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを含む医薬組成物であって、前記プロドラッグが遊離インターフェロンアルファを放出することができ、放出半減期が生理学的条件下で少なくとも4日間である医薬組成物。
【請求項2】
前記放出半減期が少なくとも5日間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマー担体の分子量が、40kDa〜200kDaの範囲内にある、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー担体が、40kDa〜120kDaの範囲内にある、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記インターフェロンアルファが前記ポリマー担体と過渡的に結合しており、その結果、遊離インターフェロンアルファの前記放出が自己開裂可能な官能基又はリンカーの自己開裂を介して行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記自己開裂可能な官能基が、インターフェロンアルファの第一級アミノ基と一緒にカルバメート又はアミド基を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記プロドラッグが式(AA)
IFN-NH-La-S0 (AA)
で表され、
式中、IFN-NHはインターフェロンアルファ残基を表し;
Laは、自己開裂誘発基Gaによって自己開裂可能な官能基を表し;
S0は、前記自己開裂誘発基Gaを含む分岐状ポリマー鎖であり、
IFN-NHをもたない前記プロドラッグの分子量が少なくとも40kDa、最大で200kDaである、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
S0が、少なくとも5kDaの分子量を有し、少なくとも第1の分岐構造BS1を含むポリマー鎖であり、前記少なくとも第1の分岐構造BS1が少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含み、IFN-NHをもたない前記プロドラッグの分子量が少なくとも40kDa、最大で200kDaであり、S0、BS1、S1の少なくとも一つが前記自己開裂誘発基Gaをさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記分岐構造BS1が、少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第3のポリマー鎖S2をさらに含むか、又はS0、S1の少なくとも一つが、少なくとも4kDaの分子量を有する前記少なくとも第3のポリマー鎖S2を含む少なくとも第2の分岐構造BS2を含み、IFN-NHをもたない前記プロドラッグの分子量が少なくとも40kDa、最大で200kDaであり、S0、BS1、BS2、S1、S2の少なくとも一つが前記自己開裂誘発基Gaをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
IFN-NH残基をもたない前記プロドラッグの分子量が、少なくとも40kDa、最大で120kDaである、請求項7〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
Laが、IFNの第一級アミノ基と一緒にカルバメート又はアミド基を形成して式(AA1)又は(AA2)、
IFN-NH-C(O)O-S0 (AA1)、
IFN-NH-C(O)-S0 (AA2)
を形成する、C(O)-O-及びC(O)-からなる群から選択される、請求項7〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
Laが、インターフェロンアルファの前記アミノ基と一緒にカルバメート官能基を形成し、前記基の開裂がS0の1,4-又は1,6ベンジル脱離を介してGaのヒドロキシル又はアミノ基によって誘発され、Gaが律速的転換を受けるエステル、カーボネート、カルバメート又はアミド結合を含む、請求項7〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記分岐構造BS1、BS2の少なくとも一つが少なくとも4kDaの分子量を有するさらなる第4のポリマー鎖S3を含むか、又はS0、S1、S2の一つが少なくとも4kDaの分子量を有する前記少なくとも第4のポリマー鎖S3を含む第3の分岐構造BS3を含み、S0、BS1、BS2、BS3、S1、S2、S3の少なくとも一つが前記自己開裂誘発基Gaをさらに含む、請求項9〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記二つ以上の鎖S0、S1、S2、S3が、独立して、ポリアルコキシポリマー、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリオキサゾリン、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオルガノホスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリシアノアクリレート、ポリアミド及びポリエステル及び対応するブロックコポリマーからなる群から選択されるポリマーをベースにしている、請求項9〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも二つ以上の鎖S0、S1、S2、S3が、ポリアルコキシポリマーをベースにしている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
連結した原子で測って、S0のLaへの結合部位と、前記第1の分岐構造BS1との間の最短距離が50原子未満である、請求項7〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記最短距離が20原子未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
S0が式(AAA1)
【化1】

(式中、
Gaは請求項7に記載の意味を有しており;
S00はCH2又はC(O)であり;
S0Aは、置換されていてもよい複素環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される一つ若しくは複数の基、環又はヘテロ原子により介在されているか又はそれが末端となっていてもよい40個未満の炭素原子を有するアルキレン鎖であり;
BS1、BS2、BS3はN及びCHからなる群から独立に選択され;
S0B、S1Aは独立に、置換されていてもよい複素環、O、S、C(O)及びNHからなる群から選択される一つ若しくは複数の基、環又はヘテロ原子により介在されているか又はそれが末端となっていてもよい1〜25個の炭素原子を有するアルキレン鎖であり;
S0C、S1Bは(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3であり、各nは独立に90〜2500の整数であり、各n1は独立に1〜25の整数であり、n2は0又は1であり;
S2、S3は独立に水素又は(C(O))n2(CH2)n1(OCH2CH2)nOCH3であり、各nは独立に90〜2500の整数であり、各n1は独立に1〜25の整数であり、n2は0又は1であり;
R2、R3は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルからなる群から独立に選択される)
からなる、請求項7〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
GaがOC(O)-Rであり、Rが式(I)
【化2】

(式中、R1、R4、R5は水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルからなる群から独立に選択され、nは1又は2である)
の部分構造である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
La-S0が式(AAA2)
【化3】

(式中、
点線は、LaとIFNの前記第一級アミノ基がアミド結合を形成するような前記アミノ基との結合を表し;
Xは、C(R4R4a)、N(R4)、O、C(R4R4a)-C(R5R5a)、C(R5R5a)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-N(R6)、N(R6)-C(R4R4a)、C(R4R4a)-O又はO-C(R4R4a)であり;
X1はC又はS(O)であり;
X2はC(R7,R7a)又はC(R7,R7a)-C(R8,R8a)であり;
X3はO、S又はN-CNであり;
R1、R1a、R2、R2a、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R7、R7a、R8、R8aはH及びC1〜4アルキルからなる群から独立に選択され;
対R1a/R4a、R1a/R5a、R4a/R5a、R7a/R8aの一つ又は複数は化学結合を形成していてもよく;
対R1/R1a、R2/R2a、R4/R4a、R5/R5a、R7/R7a、R8/R8aの一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒にC3〜7シクロアルキル又は4〜7員ヘテロシクリルを形成していてもよく;
対R1/R4、R1/R5、R1/R6、R4/R5、R4/R6、R7/R8、R2/R3の一つ又は複数はそれらが結合している原子と一緒に環Aを形成していてもよく;
R3/R3aはそれらが結合している窒素原子と一緒に4〜7員複素環を形成していてもよく;
Aは、フェニル、ナフチル、インデニル、インダニル、テトラリニル、C3〜10シクロアルキル、4〜7員ヘテロシクリル及び9〜11員ヘテロビシクリルからなる群から選択され;
S0は一つの基L2-Zで置換されており、さらに置換されていてもよいが、但し、式(I)の星印の付いた水素は置換基で置き換えられず;
L2は単一化学結合又はスペーサーであり;
Zは式(AAA2a)
【化4】

からなり、
式中、S00、S0A、S0B、S0C、S1A、S1B、S2、S3、BS1、BS2及びBS3は請求項18に記載の式(AAA1)について示したのと同様の意味を有する)
で表される、請求項7〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記プロドラッグが式(AB)
IFN-(NH-L-S0)n (AB)、
(式中、
nは2、3又は4であり;
IFN(-NH)nはインターフェロンアルファ残基を表し;
各Lは独立に、恒久的官能基Lp、又は自己開裂誘発基Gaによって自己開裂可能な官能基Laであり;
各S0は独立に少なくとも5kDaの分子量を有するポリマー鎖であり、S0は少なくとも第1の分岐構造BS1を含むことによって分岐していてもよく、前記少なくとも第1の分岐構造BS1は少なくとも4kDaの分子量を有する少なくとも第2のポリマー鎖S1を含み、S0、BS1、S1の少なくとも一つは前記自己開裂誘発基Gaをさらに含み、IFN-NHをもたない前記プロドラッグの分子量は少なくとも20kDa、最大で400kDaである)
で表される、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
nが2である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記プロドラッグが、インビトロでの抗ウイルスアッセイで5%未満の残留活性を有する、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載のインターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグ。
【請求項25】
インターフェロンアルファ治療から利益を得ることができる状態を治療、制御、遅延又は予防する方法において使用するための、請求項1〜23のいずれかに記載の医薬組成物又は請求項24に記載のインターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグ。
【請求項26】
インターフェロンアルファ治療から利益を得ることができる状態の治療を必要とする哺乳類患者において、治療、制御、遅延又は予防するための方法であって、前記患者に治療有効量の請求項1〜23のいずれかに記載の医薬組成物又は請求項24に記載のインターフェロンアルファの水溶性ポリマー担体結合プロドラッグを投与することを含む方法。
【請求項27】
前記患者がウイルスに感染しており、前記ウイルスに感染した患者の治療が、恒久的に結合したPEG化インターフェロンアルファ接合体と比較して低いウイルス再発率をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が、恒久的に結合したPEG化インターフェロンアルファ接合体より大きい分布容積をもたらす、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が乾燥している、請求項1〜23又は25のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物が凍結乾燥により乾燥された、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記医薬組成物が液体である、請求項1〜23又は25のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグが、1回の施用で治療有効量のインターフェロンアルファが1週間以上提供されるように、組成物中に十分に用いられている、請求項1〜23、25、29〜31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
単回用量組成物である、請求項1〜23、25、29〜32のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項34】
多回用量組成物である、請求項1〜23、25、29〜32のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項35】
請求項1〜23、25、29〜34に記載の医薬組成物を含む容器。
【請求項36】
二重チャンバー型シリンジである、請求項29又は30に記載の医薬組成物を含む容器。
【請求項37】
請求項29又は30に記載の乾燥組成物から再構成組成物を調製する方法であって、再構成溶液を加えることによって前記乾燥医薬組成物を再構成するステップを含む方法。
【請求項38】
(i)前記ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを一つ又は複数の添加剤と混合するステップと、
(ii)単回又は多回用量に相当する量を適切な容器中に移送するステップと、
(iii)前記容器を密封するステップと
を含む、請求項31〜34のいずれかに記載の液体組成物を調製する方法。
【請求項39】
(i) 前記ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグを一つ又は複数の添加剤と混合するステップと、
(ii)単回又は多回用量に相当する量を適切な容器中に移送するステップと、
(iii)前記容器中の組成物を乾燥させるステップと、
(iv)前記容器を密封するステップと
を含む、請求項29又は30に記載の乾燥組成物を調製する方法。
【請求項40】
針及び前記針を用いて使用するための容器を含むパーツからなるキットであって、前記容器が請求項31に記載の液体組成物を含むキット。
【請求項41】
シリンジ、針、前記シリンジを用いて使用するための請求項29又は30に記載の乾燥ポリマー担体結合インターフェロンアルファプロドラッグ組成物を含む第1の容器、及び再構成溶液を含む第2の容器を含むパーツからなるキット。
【請求項42】
前記第1及び第2の容器が二重チャンバー型シリンジを形成しており、前記二重チャンバー型シリンジの二つのチャンバーのうちの一つが前記乾燥医薬組成物を含み、前記二重チャンバー型シリンジの第2のチャンバーが前記再構成溶液を含む、請求項41に記載のパーツからなるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−519666(P2012−519666A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552445(P2011−552445)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052745
【国際公開番号】WO2010/100220
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510209133)アセンディス ファーマ エーエス (6)
【Fターム(参考)】