説明

インターホンシステム

【課題】集合玄関機における受話音の音量を調整するための作業が容易であり、また、部外者に勝手に音量調整されることがないインターホンシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】集合住宅の各住戸に設置されている住宅情報盤と、集合玄関に設置され、マイクとスピーカとを具備する通話手段を備えている集合玄関機と、上記集合玄関機と上記住宅情報盤とのインターホン通話を制御する制御装置とによって構成されているインターホンシステムにおいて、操作手段と、上記スピーカが出力する音声の音量を制御する可変増幅手段と、上記インターホン通話時に上記操作手段を介して入力された入力信号に応じて、上記可変増幅手段の増幅率を調整する増幅率調整回路とを上記集合玄関機が有することを特徴とするインターホンシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅に、インターホンシステムが設置されている。このインターホンシステムは、各住戸に設置されている住宅情報盤と、管理室に設置されている管理室親機と、集合玄関に設置されている集合玄関機とによって構成され、各機器間では、インターホン通話を行うことができる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記インターホンシステムにおいて、集合玄関に訪問者が来て、ある住戸を呼び出す場合、まず集合玄関機で、所望の住戸番号を指定し、呼出ボタンを押す。これによって、上記所望の住戸番号の住宅情報盤が呼び出され、この呼び出された住宅情報盤側で居住者が通話ボタンを押すと、上記訪問者と居住者との間で、インターホン通話を行うことができる。
【0004】
ところで、集合玄関機でインターホン通話する場合、訪問者の状況または集合玄関機周囲の環境に応じて、インターホン通話における通話音量を増減調整できるようにすることが望ましい。つまり、訪問者の聴力が低下し、または集合玄関機の周囲に雑音源があれば、その程度に応じて、通話音量を大きくしなければ、インターホン通話の際、居住者の声が訪問者に聞こえ難い。逆に、訪問者の耳がよく、しかも、集合玄関機周囲に雑音源がなければ、通話音量を大きくする必要がない。
【0005】
このために、従来例では、集合玄関機に内蔵されている通話回路内の送話アンプ回路に可変抵抗器を設け、この可変抵抗器の抵抗値を、ドライバー等の工具を使用して調整することによって、集合玄関機のスピーカから発生する音量を増減調整する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−185625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来例において、集合玄関機の内部に設けられている通話回路の可変抵抗器の抵抗値を調整するには、集合玄関機の外装パネルを取り外す必要がある。
【0008】
しかし、上記従来例では、集合玄関機のスピーカから発生する音量を増減調整するには、集合玄関機の外装パネルを取り外し、音量を調整した後に、上記外装パネルを取り付ける必要があり、音量調整するための作業が煩雑であるという問題がある。
【0009】
上記従来例において、音量調整するための作業を容易にするには、音量調節用の可変抵抗器の抵抗値を調節する調整つまみの一部または全部を、上記外装パネルの外に露出するように設計することが考えられる。
【0010】
しかし、このように、音量調節用の可変抵抗器の調整つまみの一部または全部を、上記外装パネルの外に露出させると、誰でも音量を調節することができるので、部外者が勝手に音量調整し、大き過ぎる音量に変更されたり、逆に、聴き取り難い程度に小さな音量に変更されることがあるという問題がある。つまり、実情に即しない音量に調整されることがあるという問題がある。
【0011】
また、他の従来例として、集合玄関機の周囲の音をマイクでひろって、その雑音レベルを判断して送話アンプの調整を行う集合玄関機もあるが、この場合は、利用者の個々の聴力に対応していないという問題がある。
【0012】
本発明は、集合玄関機における受話音の音量を調整するための作業が容易であり、また、部外者に勝手に音量調整されることがないインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、集合住宅の各住戸に設置されている住宅情報盤と、集合玄関に設置され、マイクとスピーカとを具備する通話手段を備えている集合玄関機と、上記集合玄関機と上記住宅情報盤とのインターホン通話を制御する制御装置とによって構成されているインターホンシステムにおいて、操作手段と、上記スピーカが出力する音声の音量を制御する可変増幅手段と、上記インターホン通話時に上記操作手段を介して入力された入力信号に応じて、上記可変増幅手段の増幅率を調整する増幅率調整回路とを上記集合玄関機が有することを特徴とするインターホンシステムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集合玄関機における受話音の音量を調整するための作業が容易であり、また、部外者に勝手に音量調整されることがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1であるインターホンシステム100を示すブロック図である。
【図2】集合玄関機10の構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1の動作を示すフローチャートである。
【図4】集合玄関機10における表示部12の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1であるインターホンシステム100を示すブロック図である。
【0018】
インターホンシステム100は、集合住宅の各住戸に設置されている住宅情報盤と、集合玄関に設置され、マイクとスピーカとを具備する通話手段を備えている集合玄関機と、集合玄関機と上記住宅情報盤とのインターホン通話を制御する制御装置とによって構成されているインターホンシステムである。
【0019】
つまり、インターホンシステム100は、住戸内に設けられている住宅情報盤JB101、…、JB303、…と、集合玄関に設けられている集合玄関機10と、上記住宅情報盤と集合玄関機10との間におけるインターホン通話を制御する制御装置20と、管理室親機30とを有する。なお、管理室親機30は、管理室に設けられ、住宅情報盤JB101、…、JB303、…と基本的には同様な機能を有し、制御装置20に接続されている。
【0020】
これらの機器は、制御信号線Lcと音声信号線Laとを介して接続され、必要に応じて映像信号線にも接続される。
【0021】
101号室の住戸用として、住宅情報盤JB101が設けられ、303号室の住戸用として、住宅情報盤JB303が設けられている。また、住宅情報盤JB101に、玄関子機C101が接続され、住宅情報盤JB303に、玄関子機C303が接続されている。
【0022】
図2は、集合玄関機10の構成を示すブロック図である。
【0023】
集合玄関機10は、制御手段11と、表示手段12と、操作手段13と、送受信手段14と、通話手段15と、マイク16と、可変増幅器17と、スピーカ18と、増幅率調整回路19とを有する。
【0024】
制御手段11は、MPU(マイクロプロセッサ)等から構成され、集合玄関機10の全体を制御する。
【0025】
表示手段12は、インターホン通話開始前に呼出住戸に対応する住戸番号を表示し、また、インターホン通話開始後に、通話音量のレベルを表示するように、表示を切り換える。
【0026】
操作手段13は、住戸番号を入力するテンキーと、呼出ボタンとを有する。送受信手段14は、制御信号を送受信する。通話手段15は、音声信号を送受信する。マイク16は、集合玄関機10の周囲の音声を入力する。
【0027】
可変増幅手段17(可変増幅回路)は、たとえば電子ボリューム等から構成され、スピーカ18が出力する音声の音量を制御する増幅回路の一例であり、制御手段11または増幅率調整回路19からの電気的な信号によって、制御される。スピーカ18は、音声を出力する装置である。
【0028】
なお、上記電子ボリュームは、マイコン(制御部)からの信号によって、電気的に音量を制御する手段である。また、上記電子ボリュームの代わりに、複数の抵抗を備えた回路において、電気的にその抵抗を切り換えることによって、音量を調整する回路を使用するようにしてもよい。
【0029】
増幅率調整回路19は、インターホン通話時に、操作された操作手段13のテンキーに基づいて、可変増幅手段17の増幅率を調整する回路である。この増幅率は、テンキーの「1」から「9」までの数値に対応し、インターホン通話時に操作されるテンキーの数値の大きさに応じて、その増幅率を増減させる。
【0030】
次に、上記実施例の動作について説明する。
【0031】
図3は、実施例1の動作を示すフローチャートである。
【0032】
S1で、訪問先住戸を呼び出す。つまり、集合玄関機10から操作手段13のテンキーを使用して、たとえば703号室の住戸番号「703」を指定する。
【0033】
図4は、集合玄関機10における表示手段12の表示例を示す図であり、図4(1)は、表示手段12が住戸番号を表示している例を示す図である。
【0034】
集合玄関機10の表示手段12には、図4(1)に示すように、その呼出住戸である住戸番号「703」が表示される。この後に、S2で、操作手段13に設けられている呼出ボタンを押すと、「703」号室の住宅情報盤に送受信手段14から呼出信号が出力される。
【0035】
そして、S3で、住宅情報盤側で通話ボタンが操作されると、S4で、その住宅情報盤と集合玄関機10との間で、音声用の通話信号線Laを介してインターホン通話ができるように、制御装置20が制御する。
【0036】
図4(2)は、表示手段12が、通話音量を表示している例を示す図である。
【0037】
「703」号室の住宅情報盤と集合玄関機10との間で、音声用の通話信号線Laを介してインターホン通話ができるようになると、制御手段11は、集合玄関機10の表示手段12を、図4(2)に示すように、通話音量「5」を表示するように切り換える。
【0038】
つまり、表示手段12における表示が、住戸番号の表示「703」から、通話音量のレベル表示「5」に切り換えられる。なお、通話開始時の通話音量レベルは、中間レベルである「5」に設定されている。
【0039】
ところで、表示部12の上部には、表示部12が現在何を表示しているかを示す機能表示部12Cがあり、S5で「呼出住戸を指定」から「通話音量を設定可」に切換表示され、受話音量を設定できる旨が表示される。この表示を見て、訪問者は、受話音量を設定できることを認識できる。
【0040】
このように、インターホンの通話開始前と開始後とで、1つの表示手段12に住戸番号と音量レベルとが切換表示されるので、表示手段12を2つ設ける必要がなく、また、訪問者にとっては、現在の音量レベルを確実に認識することができる。
【0041】
通話が開始された後に、S6で、訪問者は、表示手段12に表示されている音量を確認し、操作手段13のテンキーを操作することによって、音量レベル、つまりスピーカ18から出力される受話の音量を調整することができる。スピーカ18からの音声は、テンキーの「1」〜「9」に応じて9段階に調整可能であり、S7で、通話中に押されたテンキーの値に応じて、可変増幅手段17の増幅率が調整される。そして、S8で、通話が終了すれば、終了となる。
【0042】
上記のように、テンキーを操作すれば、スピーカ18が出力する音声の音量を調整できるので、個人差や集合玄関の環境に応じて、スピーカ18からの音声が小さいものであっても大きな音にして聞き取り易くすることができる。訪問者は、スピーカ18から出力される音声が小さい場合には、「5」よりも大きい数字、たとえば「7」をテンキーで指定する。これによって、増幅率調整回路19が、スピーカ18に接続された可変増幅手段17の増幅率(ゲイン)を、テンキーの数値「7」に応じて上げ、音量を大きくする。これによって、訪問者は、インターホン通話中に最適な音量に調整することができる。
【0043】
上記実施例では、インターホン通話時に操作手段12を介して入力された入力信号に応じて、音量調節が行われるので、部外者が勝手に音量調整するという弊害がない。
【0044】
そして、上記訪問者による通話が終了すると、音量が「5」になるように、増幅率調整回路19は、その増幅率を元の状態に戻す。つまり、増幅率調整回路19は、その通話中のみに、その増幅率を変化させ、音量調節が行われ、訪問者による次の通話が開始されると、音量調整がリセットされ、初期の通話音量である音量「5」から通話が開始される。
【0045】
なお、操作手段13は、住戸番号を入力するテンキーの例である。増幅率調整回路19は、インターホン通話時に、操作されたテンキーに基づいて、可変増幅手段の増幅率を調整する回路の例である。また、集合玄関機10は、インターホン通話開始前に呼出住戸に対応する住戸番号を表示する表示手段を有する。表示手段12は、インターホン通話開始後に、住戸番号の表示に代えて、通話音量のレベルを表示する手段の例である。
【0046】
なお、実施例では、テンキーの全てのキーを使用することによって、受話の音量を変化させるようにしたが、任意のキーを2つだけ使用するようにしてもよい。たとえば、テンキーの「5」を中心とした、上下のキー「8」とキー「2」とだけを使用して、音量の大きさを調整するようにしてもよい。
【0047】
この場合、キー「2」が現在の音量を小さくする方向に制御するキーであり、キー「8」が現在の音量を大きくする方向に制御するキーとなる。キー「2」とキー「8」のスイッチ部分には、その存在を認識しやすくするための手段として、音量を設定できる状態になっているときに点滅するLEDなどを設けるようにしてもよい。
【0048】
また、受話音量だけでなく、送話音量も調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100…インターホンシステム、10…集合玄関機、11…制御手段、
12…表示手段、13…操作手段、15…通話手段、17…可変増幅手段、
18…スピーカ、19…増幅率調整回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の各住戸に設置されている住宅情報盤と、集合玄関に設置され、マイクとスピーカとを具備する通話手段を備えている集合玄関機と、上記集合玄関機と上記住宅情報盤とのインターホン通話を制御する制御装置とによって構成されているインターホンシステムにおいて、
操作手段と;
上記スピーカが出力する音声の音量を制御する可変増幅手段と;
上記インターホン通話時に上記操作手段を介して入力された入力信号に応じて、上記可変増幅手段の増幅率を調整する増幅率調整回路と;
を上記集合玄関機が有することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
請求項1において、
上記操作手段は、住戸番号を入力するテンキーであり、
上記増幅率調整回路は、上記インターホン通話時に、操作された上記テンキーに基づいて、上記可変増幅手段の増幅率を調整する回路であることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項3】
請求項2において、
上記集合玄関機は、インターホン通話開始前に呼出住戸に対応する住戸番号を表示する表示手段を有し、上記表示手段は、インターホン通話開始後に、住戸番号の表示に代えて、通話音量のレベルを表示する手段であることを特徴とするインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239222(P2010−239222A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82403(P2009−82403)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】