説明

インターロイキン−13受容体α1の抗体アンタゴニスト

ヒトインターロイキン-13受容体α1の抗体アンタゴニストを開示する。この抗体分子はIL-13Rα1媒介活性の阻害に有用なので、hIL-13Rα1活性と関係がある状態の治療で使うために望ましいアンタゴニストを提供する。本発明は、前記抗体分子をコードする核酸、前記抗体分子を含むベクター、宿主細胞、及び組成物をも開示する。IL-13Rα1媒介活性を阻害又はアンタゴナイズするための前記抗体分子の使用方法をも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔緒言〕
この出願は、2006年10月19日提出の米国仮特許出願第60/852,748号の優先権の利益を主張する。この仮特許出願全体の内容を参照によって本明細書に引用したものとする。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
ヒトの研究と実験動物モデルのデータは、Th2誘導サイトカインをアトピー性喘息に寄与するとして、最も中心的役割を果たすインターロイキン-4(IL-4)及びインターロイキン-13(IL-13;例えば、Minty et al., 1993 Nature 362:248-250;McKenzie et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3735-3739;受入番号:U31120及びL13029(ヒト)及びNM_001032929(アカゲザル(Macaca mulatta))参照)と強く関係づける。これらの2つのサイトカインは有意な構造類似を有し、かつ特定の受容体成分を共有する。IL-4及びIL-13が共有する受容体は、IL-4とIL-13の両方に結合する二重IL-4R/IL-13受容体(又はII型受容体)である。この受容体はIL-4Rα鎖(例えば、Idzerda et al., 1990 J. Exp. Med. 171:861-873参照)及びIL-13Rα1鎖(例えば、Hilton et al., 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:497-501;Aman et al., 1996 J. Biol. Chem. 271:29265-29270;Miloux et al., 1997 FEBS Lett. 401:163-166;受入番号U62858及びCAA70508(ヒト)及びAAP78901(カニクイザル(Macaca fascicularis))参照)で構成される。この二重IL-4R/IL-13R受容体は、造血細胞及び非造血細胞(肺上皮細胞及び平滑筋細胞を含む)上に発現される。さらに、IL-4とIL-13は両方ともそれぞれ他方を除外してそれらを認識する1つの受容体を有する。例えば、IL-4Rα鎖及び共通のγ鎖(「γc」)で構成されるI型IL-4受容体(IL-4R)は特異的にIL-4と結合する。I型IL-4Rは排他的に造血起源の細胞上に発現される。IL-13に特異的な受容体、IL-13Rα2は、高い親和性でIL-13と結合するが、外見上シグナルを伝達しない。むしろ、この受容体はおとりとして作用して、IL-13に対する応答を減弱する。
IL-13とIL-4は多くの機能を果たし、両方ともアレルギー表現型、例えばB細胞内でIgEに切り替わるイソ型類に関係するいくつかの機能、例えば肥満細胞や好酸球の活性化、上皮細胞上の血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の上方制御、並びにエオタキシン、胸腺及び活性化制御ケモカイン(thymus and activation-regulated chemokine)(TARC)、及びマクロファージ誘導ケモカイン(MDC)等のケモカインの産生を制御する。
しかし、IL-4とIL-13は、それらの受容体複合の差異のためin vitro及びin vivoで多くの異なる機能を有する。例えば、IL-13の隔離はマウス喘息モデルにおいて気道の反応性亢進を防止し、かつ粘膜産生を減らすが、IL-4はそうでないことが分かっている。このIL-13と喘息反応の関係は、他の研究によってさらに支持された;例えば、Hershey et al., 2003 J. Allergy Clin. Immunol. 111(4):677-690;Grunig et al., 1998 Science 282(5397):2261-2263;Mattes et al., 2001 J. Immunol. 167(3):1683-1692;及びFulkerson et al., 2006 Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 35(3)337-346を参照されたい。例えば、肺へのIL-13の送達は、マウスの喘息様表現型全体を誘導するのに十分であることが分かっている。処理動物は、気道の反応性亢進、好酸球に富む細胞炎症、粘膜の過剰産生を伴う杯状細胞の過形成、及び上皮下線維形成を発生する;例えば、Wills-Karp et al., 1998 Science 282(5397): 2258-2261;Reiman et al., 2006 Infect. Immun. 74(3): 1471-1479;及びKaviratne et al., 2004 J. Immunol. 173(6):4020-4029を参照されたい。さらに、IL-13の発現は、ヒト喘息患者の肺内で上昇することが報告された。さらに、数グループがIL-13遺伝子の多形とアレルギー形質及び喘息症状の高い危険との関連性を報告した。これらの多形のいくつかはIL-13の高発現と関係があることが示された;例えば、Huang et al., 1995 J. Immunol. 155(5)2688-2694;Naseer et al., 1997 Am. J. Respir. Crit. Care Med. 155(3):845-851;Vladich et al., 2005 J. Clin. Invest. 115(3):747-754;Chen et al., 2004 J. Allergy Clin. Immunol. 114(3):553-560;及びVercelli et al., 2002 Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol. 2(5):389-393を参照されたい。
IL-13は、限定するものではないが、種々の呼吸器及びアレルギー媒介障害、線維症、強皮症、炎症性腸疾患及び特定の癌といった種々の他の状態とも関連している;例えば、Wynn, T.A., 2003 Annu. Rev. Immunol. 21:425-456;Terabe et al., 2000 Nat. Immunol. 1(6):515-520;Fuss et al., 2004 J. Clin. Invest. 113(10):1490-1497;Simms et al., 2002 Curr. Opin. Rheumatol. 14(6):717-722;及びHasegawa et al., 1997 J. Rheumatol. 24(2):328-332を参照されたい。
【0003】
従って、IL-13のアンタゴニストは、IL-13関連障害の治療の開発で使うための非常に魅力的な分子であろう。有効な抗体アンタゴニストは、IL-13のIL-13Rへの結合を妨害するだろう。IL-13Rα1に対して有効な抗体アンタゴニストもIL-13の結合を妨げ、かつIL-4RαとIL-13Rα1のヘテロ二量体化を防止し得る。該抗体は、II型受容体を介したIL-13とIL-4の両者のシグナル伝達を阻止しながら、I型受容体を介したIL-4のシグナル伝達を使わない。I型受容体を介したシグナル伝達は、免疫応答の誘導期(その間にTh2細胞が分化する)に必須である。T細胞はIL-13Rα1を発現しないので、該II型受容体はTh2分化に何ら役割を果たさない。従って、IL-13Rα1抗体は全体的なTh1/Th2バランスに影響しないはずである。II型IL-4/IL-13受容体を介したシグナル伝達は、アレルギー性炎症が確立される、免疫応答のエフェクター段階中に重要である。従って、このII型受容体の遮断は、喘息及び他のIL-13R媒介状態の多くの症状に有益な作用を及ぼすはずなので、有効な疾患緩和薬であろう。
IL-13Rα1に対する抗体(モノクロナールとポリクロナールの両方)は技術的に開示されている;例えば、WO 97/15663、WO 03/80675;WO 03/46009;WO 06/072564;Gauchat et al., 1998 Eur. J. Immunol. 28:4286-4298;Gauchat et al., 2000 Eur. J. Immunol. 30:3157-3164;Clement et al., 1997 Cytokine 9(11):959 (Meeting Abstract);Ogata et al., 1998 J. Biol. Chem. 273:9864-9871;Graber et al., 1998 Eur. J. Immunol. 28:4286-4298;C. Vermot-Desroches et al., 2000 Tissue Antigens 5(Supp. 1):52-53 (Meeting Abstract);Poudrier et al., 2000 Eur. J. Immunol. 30:3157-3164;Akaiwa et al., 2001 Cytokine 13:75-84;Cancino-Diaz et al., 2002 J. Invest. Dermatol. 119:1114-1120;及びKrause et al., 2006 Mol. Immunol. 43:1799-1807を参照されたい。
アレルギー性及び喘息性応答と関連する活性並びにIL-13Rα1の発現/機能性の上昇に少なくとも部分的に起因している他の種々の状態に影響し得る有効な生物学的活性を有する抗体が要望されている。さらに、ヒトにおける免疫原性が低いIL-13Rα1に親和性のある抗体分子に対する要望がある。従って、IL-13Rα1の活性及びIL-13Rα1が種々の治療状態で果たす、対応する役割を阻害又はアンタゴナイズする、治療を基礎にしたIL-13Rα1のヒト抗体アンタゴニストを製造することが非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、IL-13Rα1、特にヒトIL-13Rα1の抗体アンタゴニストに関する。開示する抗体分子は、選択的にIL-13Rα1、特にヒトIL-13Rα1を認識し、hIL-13Rα1のチップ結合細胞外ドメインに対する表面プラズモン共鳴アッセイ、例えばBIACORETM(Upsala, Sweden)又はその適宜の等価物で決定した場合、ヒトIL-13Rα1に対して20nM未満、好ましくは10nM未満、さらに好ましくは5nM未満のKDの結合性を示す。これに従う抗体分子はIL-13Rα1媒介活性の阻害に有効なので、限定するものではないが、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食道好酸球増加症、強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、線維症、炎症性腸疾患(特に潰瘍性結腸炎)、アナフィラキシー、及び癌(特に、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、及び腎癌)といったIL-13Rα1媒介活性と関係がある状態、並びに一般的なTh2媒介障害/状態の治療で重要である。IL-13Rα1特異性抗体は、IL-13Rα1の検出及び定量化で種々の診断目的のための有用性をも有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの特定局面では、本発明は、IL-13Rα1を介して作用する、IL-13をアンタゴナイズする単離された抗体2B6、4A10、6C11、及び8B4を提供する。前記抗体は、NHDF細胞内でIL-13誘導エオタキシン放出を阻害するのに有効であることが判明した。2B6、6C11及び8B4をさらに試験して、IL-13誘導STAT6リン酸化の阻害では2B6、6C11及び8B4、並びに全血又は抹消血単核細胞(PBMC)内にけるIL-13誘導TARC放出の阻害では8B4が有効なことが判った。従って、本発明は、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、及びPTA-6934(8B4)として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生される抗体を包含する。さらに、本発明は単離された抗体であって、(a)前記抗体の重鎖可変部が、(i)それぞれ配列番号2、3及び4;(ii)それぞれ配列番号14、15及び16;又は(iii)それぞれ配列番号22、15及び23に示されるCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み;かつ(b)前記抗体の軽鎖可変部が、(i)それぞれ配列番号6、7及び8;又は(ii)それぞれ配列番号18、19及び20に示されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、単離された抗体を包含する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、(a)配列番号1、配列番号9、配列番号13、若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列;若しくはそれと少なくとも90%相同の配列を有する重鎖可変部;又は(b)配列番号5若しくは配列番号17に示されるアミノ酸配列;若しくはそれと少なくとも90%相同の配列;又は(c)(a)と(b)の組合せを包含する。
【0006】
本発明は、hIL-13Rα1に対する結合について、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、及びPTA-6934(8B4)の抗体;又は本明細書で4A10として述べる抗体と競合する抗体をも包含する。本発明の特定の実施形態は、2B6、4A10、6C11、及び8B4、並びにその等価体(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられる)又は相同体の重鎖及び/又は軽鎖可変部を含んでなる抗体を包含する。特定実施形態は、本明細書で開示するCDRドメイン又は本明細書で開示する重鎖及び/又は軽鎖CDRドメインのセット、又はその等価体(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられる)を有する単離された抗体分子を包含する。
当業者には明らかなように、hIL-13Rα1に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを種々のフレームワークに挿入することができる。例えば、抗原結合性に基づいて以前に選択された抗体ループを提示するために使用し得る種々の骨格を論じている米国特許第6,818,418号及び該特許に含まれる参考文献を参照されたい。さらに、VL及びVHをコードする遺伝子を、組換え法を用いて、例えば、VL及びVHを、VL及びVH領域が一対になって一価分子を形成しているか、そうでなければ単鎖Fvs(ScFVs)として既知の単一タンパク質鎖として生じさせ得る合成リンカーを用いてつなげることができる。例えば、Bird et al., 1988 Science 242: 423-426、及びHuston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい。
【0007】
別の局面では、開示抗体分子をコードする核酸を提供する。本発明は、可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸をも提供し、その成分、特にそれぞれの開示CDR3領域を選択する。別の局面では、本発明は、前記核酸を含むベクターを提供する。別の局面では、本発明は、開示抗体分子及びその成分をコードする核酸を内部に持つ単離された細胞を提供する。別の局面では、本発明は本発明のポリペプチド、又はベクターを含んでなる単離された細胞を提供する。 別の局面では、本発明は、選択的にIL-13Rα1(抗体、抗原結合フラグメント、誘導体、キメラ分子、前記いずれかと別のポリペプチドとの融合、又は前記いずれかを組み入れた代替構造/組成を含めて)と結合する本発明の抗体分子の製造方法であって、重鎖及び/又は軽鎖(製造する抗体分子によって決まる)をコードする核酸を内部に持つ細胞を、前記重鎖及び/又は軽鎖の発現及び/又は抗体分子への構築を可能にする条件下でインキュベートする工程、及び前記細胞から前記抗体分子を単離する工程を含む方法を提供する。当業者は、標準的な組換えDNA技術を用いて、本明細書で開示する抗体を同様に得ることができる。
別の局面では、本発明は、IL-13Rα1の活性又は機能(シグナル伝達、その他)をアンタゴナイズする方法であって、IL-13Rα1を発現する細胞を本明細書で開示する抗体分子と、前記抗体分子がIL-13Rα1に結合できるようにする条件下で接触させる工程を含む方法を提供する。本発明の特有の実施形態は、細胞がヒト細胞である、該方法を含む。この方法に従う抗体分子は、IL-13Rα1媒介活性の阻害に有効である。本発明の抗体分子は、正常なヒト皮膚線維芽細胞(以後、NHDF細胞)からのエオタキシンの放出を効率的に阻害し、NHDF細胞内におけるIL-13刺激STAT6リン酸化を効率的に阻害し、及び/又は全血(ヒト/アカゲザル)内におけるTARC(CCL17)のIL-13刺激放出を効率的に阻害することが分かった。
【0008】
別の局面では、IL-13Rα1の活性と関係がある状態(又は特定対象にとってIL-13Rα1の機能性が有益でないと考えられる状態)を示す対象においてIL-13Rα1の活性をアンタゴナイズする方法であって、前記対象に治療的に有効な量の本発明の抗体分子を投与する工程を含む方法を提供する。選択実施形態では、前記状態は、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食道好酸球増加症、乾癬、乾癬性関節炎、線維症、強皮症、炎症性腸疾患(特に潰瘍性結腸炎)、アナフィラキシー、及び癌(特に、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、及び腎癌)、並びに一般的なTh2媒介障害/状態でよい。別の局面では、本発明は、本発明の抗体分子(又は本明細書で開示するIL-13Rα1特異性抗原結合タンパク質を有する代替抗原結合構造若しくはタンパク質)と、医薬的に許容しうる担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、緩衝剤、又は治療個体に望ましい量の抗体分子の投与を容易にするためにデザインされた代替物とを含んでなる医薬組成物又は他の組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】pFab3dの遺伝子地図を示す。
【図2】IgG1(配列番号75)、IgG2(配列番号76)、IgG4(配列番号77)及びIgG2m4(配列番号78)イソ型のFcドメインの配列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、IL-13Rα1、特にヒトIL-13Rα1の抗体アンタゴニストに関する。開示抗体分子は、選択的にIL-13Rα1を認識し、かつ特異的にIL-13Rα1に結合する。用語「選択的」又は「特異的」の使用は、開示抗体分子がIL-13Rα1以外に有意な結合を示さないという事実を指す。開示抗体分子は、hIL-13Rα1のチップ結合細胞外ドメインに対する表面プラズモン共鳴アッセイ、例えばBIACORETM(PHARMACIA AB Corporation, Upsala, Sweden)又はその適宜の等価物で決定した場合、20nM未満、好ましくは10nM未満、さらに好ましくは5nM未満のKDでヒトIL-13Rα1に結合する。KDは、Kd(特定の抗体-抗原相互作用の解離速度)対Ka(特定の抗体-抗原相互作用の会合速度)の比、つまりKd/Ka(モル濃度(M)で表される)から得られる解離定数を指す。技術的によく確立された方法を用いてKD値を決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を利用する方法、例えばBIACORETM(PHARMACIA AB Corporation)システムのようなバイオセンサーシステムを利用する方法である。
【0011】
本明細書で述べる抗体は、本明細書で言及するIL-13Rα1の機能、又はIL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズするのに有効である。本明細書で使用する「IL-13Rα1媒介」活性/作用という言葉は、IL-13Rα1の機能を必要とするか、又はIL-13Rα1の機能によって激化若しくは増強されるいずれの活性/作用をも意味する。開示抗体分子は、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液若しくはPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示すことが分かった。本発明の特有の実施形態は、NHDF細胞からのIL-13Rα1媒介エオタキシン放出を20nM以下、さらに好ましくは10nM以下、なおさらに好ましくは5nM以下のIC50でアンタゴナイズする抗体分子を提供する。本発明の特有の実施形態は、NHDF細胞内におけるIL-13Rα1媒介STAT6リン酸化をアンタゴナイズする抗体分子を提供する。本発明の特有の実施形態は、全血又はPBMC内におけるIL-13Rα1媒介TARC(CCL17)放出をアンタゴナイズする抗体分子を提供する。いずれの特定抗体による拮抗作用の程度も、コントロールと統計的に比較したIC50値として、或いはIL-13Rα1機能に対する負の効果、又はIL-13Rα1機能の阻害を評価するために技術的に利用できるいずれの代替方法(すなわち、IL-13Rα1機能の拮抗作用を評価できるいずれの方法)によっても定量的に測定することができる。
【0012】
本明細書で述べる「抗体分子」又は「抗体」は、hIL-13Rα1への選択的結合性を有する免疫グロブリン誘導構造を指し、限定するものではないが、全長抗体若しくは全抗体、抗原結合フラグメント(抗体構造から物理的又は概念的に誘導されるフラグメント)、前記いずれかの誘導体、キメラ分子、前記いずれかの別のポリペプチドとの融合、又はIL-13Rα1に選択的に結合する/IL-13Rα1の機能を阻害するという目的のために前記いずれかを組み入れたいずれかの代替構造/組成が挙げられる。「全」抗体又は「全長」抗体は、ジスルフィド結合で相互に結合した2つの重鎖(H)と2つの軽鎖(L)を有するタンパク質を意味し、以下を包含する:(1)重鎖に関して、可変部(本明細書では「VH」と略記する)と、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常部;及び(2)軽鎖に関して、軽鎖可変部(本明細書では「VL」と略記する)と、1つのドメイン、CLを含む軽鎖定常部。本明細書で使用する「単離」という表現は、それが開示抗体、核酸などに関係する場合、それらを自然界に見られるものと区別させる性質を表す。この差異は、例えば、開示抗体、核酸などが自然界に見られる純度と異なる純度のものであるか、或いは自然界に見られる構造と異なる構造又は異なる構造の形態部分のものであり得る。自然界に見られない構造には、例えば、組換えヒト免疫グロブリン構造が含まれ、限定するものではないが、最適化CDRを有する組換えヒト免疫グロブリン構造が挙げられる。自然界に見られない構造の他の例は、実質的に他の細胞物質がない抗体分子又は核酸である。単離された抗体は通常、異なる抗原特異性を有する他の抗体(IL-13Rα1以外)が無い。
【0013】
抗体フラグメント、さらに詳細には、抗原結合フラグメントは、IL-13Rα1、特にヒトIL-13Rα1(hIL-13Rα1)への選択的結合性を与える抗体可変部又はそのセグメント(1以上の開示CDR3ドメイン、重鎖及び/又は軽鎖を含む)を有する分子である。該抗体可変部を含む抗体フラグメントとして、限定するものではないが、以下の抗体分子が挙げられる:Fab、F(ab')2、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体分子(該抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能部分、例えば限定ではないが、別のペプチド若しくはタンパク質(例えば、抗体)、又は受容体リガンドに連結している、本明細書で開示するIL-13Rα1特異性抗体又は抗原結合フラグメントを含む抗体分子)、二重特異性単鎖Fvダイマー、単離CDR3、ミニボディー、「scAb」、dAbフラグメント、ディアボディー、トリアボディー、テトラボディー、並びに限定するものではないが、フィブロネクチンIII型ポリペプチド(例えば、米国特許第6,703,199号及びWO 02/32925及びWO 00/34784参照)又はチトクロームB(例えば、Nygren et al., 1997 Curr. Opinion Struct. Biol. 7:463-469参照)といった、タンパク質骨格に基づいた人工抗体。抗体の部分又は結合フラグメントは天然でよく、或いは部分的又は全体的に合成されたものでよい。このような抗体の部分は当業者に周知の種々の手段で調製される。手段としては、パパイン若しくはペプシン消化などの常法が挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
本発明は、1つの特定局面では、IL-13Rα1を介してIL-13機能性を効率的にアンタゴナイズする単離された抗体2B6、4A10、6C11、及び8B4を提供する。前記抗体は、NHDF細胞内でIL-13誘導エオタキシン放出を阻害するのに有効であることが判明した。2B6、6C11及び8B4をさらに試験して、IL-13誘導STAT6リン酸化の阻害には2B6、6C11及び8B4が有効であり;かつ全血又は抹消血単核細胞(PBMC)内におけるIL-13誘導TARC放出の阻害には8B4が有効であることが判った。従って、本発明は、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、及びPTA-6934(8B4)として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生される抗体を包含する。また、本発明はhIL-13Rα1への結合についてATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、及びPTA-6934(8B4)の抗体;又は本明細書で4A10として述べる抗体と競合する抗体をも包含する。本発明のさらなる実施形態は、hIL-13Rα1への結合について、本明細書で開示する抗体と競合する抗体分子である。本発明の特有の実施形態は、IL-13のhIL-13Rα1への結合を阻害する単離された抗体分子である。
本発明の特定の実施形態は、2B6、4A10、6C11、若しくは8B4の重鎖及び/又は軽鎖可変部配列、並びにその等価配列(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられる)又は相同配列を含む抗体分子を包含する。特定の実施形態は、本明細書で開示するCDRドメイン或いは本明細書で開示する重鎖及び/又は軽鎖CDRドメインのセット、或いはその等価物(1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられる)を含む単離された抗体分子である。本明細書における用語「ドメイン」又は「領域」の使用は、単に、問題の配列又はセグメントが存在するであろう、或いは、現に存在している、抗体分子のそれぞれの部分を表す。
特有の実施形態では、本発明は、下記配列:配列番号1、配列番号9、配列番号13及び配列番号21、並びに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列、及びその相同配列から成る群より選択される配列を有する重鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。開示抗体は、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す。特有の実施形態では、本発明は、開示抗体分子の相同体であって、開示抗体分子と少なくとも90%相同であるとして特徴づけられ、かつ上記機能特性の少なくとも1つを示す、相同体を提供する。提供される特有の抗体は、hIL-13Rα1への結合について、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、若しくはPTA-6934(8B4)として寄託されたハイブリドーマ細胞系;又は本明細書で4A10として言及する抗体によって産生される抗体と競合するだろう。
下表1は、特に本発明によって包含される分子の一般化された概要を提供する。
【0015】
表1





【0016】
特有の実施形態では、本発明は、下記配列:配列番号5及び配列番号17、並びに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列、及びその相同配列から成る群より選択される配列を有する軽鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。開示抗体は、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す。特有の実施形態では、本発明は、開示抗体分子の相同体であって、開示抗体分子と少なくとも90%相同であるとして特徴づけられ、かつ上記機能特性の少なくとも1つを示す、相同体を提供する。提供される特有の抗体は、hIL-13Rα1への結合について、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、若しくはPTA-6934(8B4)として寄託されたハイブリドーマ細胞系;又は本明細書で4A10として言及する抗体によって産生される抗体と競合するだろう。
特有の実施形態では、本発明は、(i)それぞれ配列番号1及び配列番号5;(ii)それぞれ配列番号13及び配列番号17;又は(iii)それぞれ配列番号21及び配列番号17で示される;或いは1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列を有する軽鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。特有の実施形態は、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す前記抗体である。
【0017】
特定の実施形態では、本発明は、配列番号4、配列番号12、配列番号16及び配列番号23;並びにその保存的修飾から成る群より選択される可変重鎖CDR3配列を含み、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す単離されたIL-13Rα1抗体分子を提供する。特有の実施形態は、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列が、(i)それぞれ配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4;(ii)それぞれ配列番号10、配列番号11及び/又は配列番号12;(iii)それぞれ配列番号14、配列番号15及び/又は配列番号16;又は(iv)それぞれ配列番号22、配列番号15及び/又は配列番号23として示され;或いはCDR配列の1つ以上のいずれかに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列である重鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。
特定の実施形態では、本発明は、配列番号8又は配列番号20;及びその保存的修飾から成る群より選択される可変軽鎖CDR3配列を含み、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す単離されたIL-13Rα1抗体分子を提供する。特有の実施形態は、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列が、(i)それぞれ配列番号6、配列番号7及び/又は配列番号8;又は(ii)それぞれ配列番号18、配列番号19及び/又は配列番号20として示され;或いはCDR配列の1つ以上のいずれかに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列である軽鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、(i)それぞれ配列番号4及び配列番号8;(ii)それぞれ配列番号16及び配列番号20;又は(iii)それぞれ配列番号23及び配列番号20に示される重鎖可変部CDR3配列及び軽鎖可変部CDR3配列を含み;或いはCDR3配列の1つ以上のいずれかに前記配列の保存的修飾を含み、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す単離されたIL-13Rα1抗体分子を提供する。
特有の実施形態は、(i)それぞれ配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7及び配列番号8;(ii)それぞれ配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19及び配列番号20;又は(iii)それぞれ配列番号22、配列番号15、配列番号23、配列番号18、配列番号19及び配列番号20に示される重鎖可変部CDR1、CDR2、及びCDR3配列並びに軽鎖可変部CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み;かつCDR配列の1つ以上のいずれかに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列を含む、単離されたIL-13Rα1抗体分子を提供する。
【0019】
当業者には明らかなように、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基を、類似又はより良い(意図した目的のため)機能的及び/又は化学的特性を与えるアミノ酸残基と置き換える置換である。例えば、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換える置換であることが多い。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは技術的に定義されている。これらのファミリーとして、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、スシテイン、トリプトファン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このような修飾は、該アミノ酸配列を含有する抗体の結合性又は機能性阻害特性を有意に減らし、又は変えないが、該特性を改良し得る。置換を行う目的は重要でなく、決して限定するものではないが、分子の構造、分子の電荷若しくは疎水性、又は分子のサイズをより良く維持又は増強できる残基と置き換えることが挙げられる。例えば、あまり望ましくない残基を同じ極性又は電荷の残基と簡単に置換することを所望し得る。技術上周知の標準的方法、例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発によって、該修飾を導入できる。当業者が保存的アミノ酸置換を達成する1つの特有手段は、例えば、MacLennan et al., 1998 Acta Physiol. Scand. Suppl. 643:55-67、及びSasaki et al., 1998 Adv. Biophys. 35:1-24で議論されているようなアラニンスキャニング突然変異誘発である。そして、変化した抗体分子を、技術的に利用できるか又は本明細書で述べる機能分析を利用して、保持されたか又はより良い機能について調べる。該アミノ酸変化のない分子と同じかそれより良いレベルで選択的にhIL-13Rα1に結合し、かつIL-13Rα1の機能性をアンタゴナイズする能力を保持する、1以上の該保存的アミノ酸置換を有する抗体分子を本明細書では開示抗体の「機能等価物」と称し、本発明の特有の実施形態を形成する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、IL-13Rα1の機能(IL-13Rα1媒介活性)をアンタゴナイズし、かつ当業者によって容易に利用かつ理解される表面プラズモン共鳴技術、例えば、限定するものではないが、BIACORETM(Upsala, Sweden)及びKINEXA(登録商標)(Sapidyne Instruments, Boise, ID)又はその適切な等価物によって決定した場合、250pM未満、好ましくは100pM未満である、hIL-13Rα1との平衡解離定数(KD)を示す単離された抗体分子を提供する。特有の実施形態では、単離された抗体分子は上記KD並びに以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液又はPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の1つを示す。
特有の実施形態では、本発明は、下記配列:配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58及び配列番号64;並びに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列、及びその相同配列から成る群より選択される配列を有する軽鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。特定の実施形態では、(i)配列番号13及び配列番号21から成る群より選択される配列を含む重鎖可変部と、(ii)配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58及び配列番号64;並びに1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列、及びその相同配列から成る群より選択される配列を含む軽鎖可変部とを有する単離された抗体分子が提供される。
【0021】
特有の実施形態では、本発明は、上記KDを示し、IL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズし、かつ配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号63から成る群;又は保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列より選択される相補性決定領域3(CDR3)ドメインを有する軽鎖可変部を含む、単離された抗体分子を提供する。この特有の実施形態は、配列番号20の位置1、2、4及び5に保存的アミノ酸置換を有する。特定実施形態では、(i)配列番号16及び配列番号23から成る群より選択されるCDR3ドメインを有する重鎖可変部と、(ii)配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号63;1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価配列、及びその相同配列から成る群より選択されるCDR3ドメインを有する軽鎖可変部とを含む単離された抗体分子が提供される。
特有の実施形態は、(i)それぞれ配列番号22、配列番号15及び配列番号23を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する重鎖可変部;並びに(ii)下記配列:(a)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号24;(b)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号25;(c)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号26;(d)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号27;(e)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号28;(f)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号29;並びに(g)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号63;から成る群より選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する軽鎖可変部;又はCDR配列のいずれか1つ以上に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価物を含む、単離された抗体分子を提供する。
特有の実施形態は、(i)それぞれ配列番号14、配列番号15及び配列番号16を含むCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する重鎖可変部;並びに(ii)下記配列:(a)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号24;(b)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号25;(c)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号26;(d)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号27;(e)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号28;(f)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号29;並びに(g)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号63;から成る群より選択されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する軽鎖可変部;又はCDR配列のいずれか1つ以上に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するとして特徴づけられるその等価物を含む、単離された抗体分子を提供する。
【0022】
別の局面では、本発明は、開示抗体の対応するアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有する重鎖及び/又は軽鎖可変部を含む抗体分子であって、該抗体分子が20nM未満の、ヒトインターロイキン13受容体α1(hIL-13Rα1)との平衡解離定数(KD)を示し、かつhIL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズする、抗体分子を提供する。特有の実施形態は、それぞれ開示重鎖及び/又は軽鎖可変部と少なくとも90%相同である重鎖及び/又は軽鎖可変部を含み、以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液若しくはPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを示す、抗体分子である。本発明の他の実施形態は、それぞれ開示重鎖及び/又は軽鎖可変部と少なくとも90%相同である重鎖及び/又は軽鎖可変部を含み、hIL-13Rα1への結合について、ATCC寄託番号PTA-6932(2B6)、PTA-6930(6C11)、及びPTA-6934(8B4)として寄託されたハイブリドーマ細胞系;又は本明細書で4A10として言及する抗体によって産生される抗体と競合する抗体分子である。可変部における「少なくとも90%相同」とは、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%の相同配列を包含する。
本明細書で述べる特有の抗体分子のアミノ酸配列と相同のアミノ酸配列を有する抗体は、通常、そのIL-13Rα1に対する特異性を変えることなく、該抗体の1つ以上の特性を改良するために製造される。このような配列を得る1つの方法は、当業者が利用できる唯一の方法ではないが、本明細書で開示する重鎖及び/又は軽鎖可変部をコードする配列を部位特異的又はランダム突然変異誘発で変異させ、この変異した可変部を含む抗体分子を発現させ、かつこのコードされた抗体分子を、本明細書で開示する機能分析を利用して保持された機能について試験することである。
本明細書で使用する場合、2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、2つの配列間の同一性パーセントに等しい。2つの配列間の同一性パーセントは、これら2つの配列が共有する同一位置の数の関数であり(すなわち、相同性パーセント=(同一位置の数/位置の総数)×100)、ギャップの数と、各ギャップの長さを考慮する(これら2つの配列の最適アラインメントのため導入する必要がある)。当業者に公知の方法を用いて、配列の比較及び配列間の同一性パーセントの決定を行い、かつ数学アルゴリズムを利用して完成することができる。例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れたMeyersとMillerのアルゴリズム(1988 Comput. Appl. Biosci. 4:11-17)を利用して、アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定することができる。さらに、Accelrysからオンラインで入手可能なGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを利用し、そのデフォルトパラメーターを用いてアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定することができる。
【0023】
一実施形態では、本発明は、下記配列:配列番号1、配列番号9、配列番号13及び配列番号21から成る群より選択される配列と少なくとも90%相同である重鎖可変部配列を含む単離された抗体分子を提供する。別の実施形態では、本発明は、下記配列:配列番号5、配列番号17、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58及び配列番号64から成る群より選択される配列と少なくとも90%相同である軽鎖可変部配列を含む単離された抗体分子を提供する。特有の実施形態では、本発明は、(i)それぞれ配列番号1及び5;(ii)それぞれ配列番号13及び17;並びに(iii)それぞれ配列番号21及び17と少なくとも90%相同である重鎖及び軽鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。
当業者が、本明細書で開示するVH配列及び/又はVL配列との高い(すなわち、90%以上の)相同性を有するVH及び/又はVL配列を有する抗体を得ることができる一方法は、配列番号1、9、13及び21及び/又は配列番号5、17、53、54、55、56、57、58及び64をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的又はランダム突然変異誘発)後、変化したコード化抗体を、本明細書で述べる機能分析を利用して、保持された機能について試験することによる。例えば、重鎖及び軽鎖可変部CDR1、CDR2及びCDR3配列のセットを比較し、実施例で述べる8B4由来の最適化抗体はそれぞれ8B4と少なくとも90%相同である。或いは、他の抗体単離アプローチを介して相同抗体を得ることができる。例えば、6C11の重鎖可変部CDRのセットは、8B4の当該重鎖可変部CDRと少なくとも90%相同である。重鎖可変部全体にわたる相同性はずっと高い。
【0024】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書で開示する抗体のCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットと相同であるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットを有する重鎖及び/又は軽鎖可変部を含む単離された抗体分子であって、該抗体が、本発明の抗-hIL-13Rα1抗体の所望の機能特性を保持する、単離された抗体分子を提供する。例えば、本発明は、下記セット:(i)それぞれ配列番号2、3及び4;(ii)それぞれ配列番号10、11及び12;(iii)それぞれ配列番号14、15及び16;並びに(iv)それぞれ配列番号22、15及び23から成る群より選択されるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットと少なくとも90%相同であるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットを有する重鎖可変部を含む単離された抗体分子を提供する。特有の実施形態では、本発明は、それぞれ配列番号2、3、4、6、7及び8である重鎖CDR1、2及び3配列と軽鎖CDR1、2及び3配列のセットと少なくとも90%相同である重鎖CDR1、2及び3配列と軽鎖CDR1、2及び3配列のセットを含む単離された抗体分子を提供する。別の実施形態では、本発明は、(a)下記配列:(i)それぞれ配列番号14、配列番号15及び配列番号16並びに(ii)それぞれ配列番号22、配列番号15及び配列番号23から成る群より選択されるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットと少なくとも90%相同であるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットを有する重鎖可変部と、(b)下記配列:(i)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号20;(ii)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号24;(b)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号25;(c)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号26;(d)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号27;(e)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号28;(f)それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号29;並びに(g)配列番号18、配列番号19及び配列番号63から成る群より選択されるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットと少なくとも90%相同であるCDR1、CDR2及びCDR3配列のセットを有する軽鎖可変部とを含む単離された抗体分子を提供する。
【0025】
本発明の特有の抗体は、IL-13のhIL-13Rα1への結合を阻害する。本発明の特有の抗体は、本明細書で開示する抗体、特に2B6、4A10、6C11、及び/又は8B4のいずれとも、hIL-13Rα1への結合について競合する。このような競合する抗体は、標準的なIL-13Rα1結合アッセイにおいて、本明細書で開示する2B6、4A10、6C11、8B4、又はその誘導体と交差競合する(例えば、統計的有意な様式で、IL-13のhIL-13Rα1への結合を競合的に阻害する)それら抗体の能力に基づいて同定される。試験抗体が、2B6、4A10、6C11、及び/又は8B4又は誘導体の、ヒトIL-13Rα1への結合を阻害する能力は、試験抗体が、ヒトIL-13Rα1への結合について当該抗体と競合し得ることを実証する。このような抗体は、非限定理論によれば、それが競合する抗体と同一又は関連する(例えば、構造的に類似又は空間的近位の)、ヒトIL-13Rα1上のエピトープに結合し得る。次に、2B6、4A10、6C11、8B4又はその開示誘導体と結合について競合する抗体を以下の機能特性:(i)NHDF細胞内におけるIL-13誘導エオタキシン放出の阻害;(ii)NHDF細胞内におけるIL-13誘導STAT6リン酸化の阻害;又は(iii)血液若しくはPBMC内におけるTARCのIL-13刺激放出の阻害;の少なくとも1つを有することについて評価することができる。特有の実施形態では、抗体はヒト抗体である。
【0026】
モノクロナール抗体及び他の抗体の、元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ抗体を生じさせるための操作は、当業者の十分に範囲内である。例えば、組換えDNA技術の方法を用いてこの操作を実施することができる。該方法は、ある抗体の免疫グロブリン可変部、又は1つ以上のCDRをコードするDNAを、必要に応じて、異なる免疫グロブリンの可変部、定常部、又は定常部とフレームワーク部に導入することを含み得る。このような分子が本発明の重要な局面を形成する。開示配列がその中に挿入されるか或いは、別の方法では、開示配列がその必須部分を形成する、特有の免疫グロブリンとして、限定するものではないが、本発明の特定の実施形態を形成する以下の抗体が挙げられる:Fab(可変軽鎖(VL)、可変重鎖(VH)、定常軽鎖(CL)及び定常重鎖1(CH1)ドメインを有する一価フラグメント)、F(ab')2(ジスルフィドブリッジによって、或いはヒンジ部のところで連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント)、Fd(VH及びCH1ドメイン)、Fv(VL及びVHドメイン)、scFv(VLとVHがリンカー、例えばペプチドリンカーで連結されている単鎖Fv、例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426, Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)、二重特異性抗体分子(該抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能部分、例えば限定ではないが、別のペプチド若しくはタンパク質(例えば抗体)、又は受容体リガンドに連結している、本明細書で開示するIL-13Rα1特異性抗体又は抗原結合フラグメントを含む抗体分子)、二重特異性単鎖Fvダイマー(例えば、PCT/US92/09965参照)、単離CDR3、ミニボディー(約80kDaの二価ダイマーに自己組織化する単鎖-CH3融合物)、「scAb」(VH及びVL、並びにCL又はCH1のどちらかを含有する抗体フラグメント)、dAbフラグメント(VHドメイン、例えば、Ward et al., 1989 Nature 341:544-546、及びMcCafferty et al., 1990 Nature 348:552-554参照;又はVLドメイン;Holt et al., 2003 Trends in Biotechnology 21:484-489)、ディアボディー(例えば、Holliger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448及びWO 94/13804参照)、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー(CH3に連結したscFv;例えば、Hu et al., 1996 Cancer Res. 56:3055-3061参照)、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgA、IgE又はそのいずれかの誘導体、並びに限定するものではないが、フィブロネクチンIII型ポリペプチド抗体(例えば、米国特許第6,703,199号及びWO 02/32925参照)又はチトクロームB(例えば、Koide et al., 1998 J. Molec. Biol. 284:1141-1151、及びNygren et al., 1997 Current Opinion in Structural Biology 7:463-469参照)といった、タンパク質骨格に基づいた人工抗体。限定するものではないが、Fv、scFv、及びディアボディー分子といった特定抗体分子は、ラインVH及びVLドメインにジスルフィドブリッジを組み入れることによって安定化され得る。例えばReiter et al., 1996 Nature Biotech. 14:1239-1245を参照されたい。通常の技術(例えば、Holliger & Winter, 1993 Current Opinion Biotechnol. 4:446-449参照、その特有の方法として化学的な生産、又はハイブリッドハイブリドーマ由来が挙げられる)及び他の技術を用いて二重特異性抗体を製造することができる。他の技術として、限定するものではないが、BITETM技術(異なる特異性の抗原結合領域をペプチドリンカーで分子プロセシング)及びノブ・イントゥー・ホール(knob-into-hole)操作(例えば、Ridgeway et al., 1996 Protein Eng. 9:616-621参照)が挙げられる。当業者には明らかなように、大腸菌内で二重特異性二ディアボディーを産生させて、これらの分子、及び他の抗体分子を、適切なライブラリーのファージディスプレイを利用して選択することができる(例えば、WO 94/13804参照)。
【0027】
問題のCDRを中に挿入される可変ドメインは、いずれの生殖細胞系列又は再編成されたヒト可変ドメインからも得られる。可変ドメインを合成的に生産することもできる。組換えDNA技術を利用してそれぞれの可変ドメインにDCR領域を導入できる。これを達成できる1つの手段はMarks et al., 1992 Bio/Technology 10:779-783に記載されている。限定するものではないが、ファージディスプレイ(例えば、WO 92/01047、Kay et al., 1996 Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual, San Diego: Academic Press参照)、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、及びリボソームディスプレイ(例えば、Lowe & Jermutus, 2004 Curr. Pharm. Biotech. 517-527参照)といった適切な技術を利用して発現及び選択を達成できる。特有の実施形態は、生殖細胞系列フレームワーク部内のCDRを提供する。ここで特有の実施形態は、VH-33(JH2)中への、それぞれ配列番号2、3、及び4の重鎖CDR1、2及び/又は3を提供し;そのさらなる実施形態は、Vk1-L4(Jk2)内で提供されるそれぞれ配列番号6、7及び8の軽鎖CDR1、2及び/又は3をさらに含む。ここで特有の実施形態は、VH-30.3(JH6)中への、それぞれ配列番号10、11、及び12の重鎖CDR1、2及び/又は3を提供する。ここで特有の実施形態は、VH3-23(JH2)中への、それぞれ配列番号14、15、及び16の重鎖CDR1、2及び/又は3を提供し;そのさらなる実施形態は、Vk6-A26(Jk2)内で提供されるそれぞれ配列番号18、19及び20の軽鎖CDR1、2及び/又は3をさらに含む。ここで特有の実施形態は、VH3-23(JH2)中への、それぞれ配列番号22、15、及び23の重鎖CDR1、2及び/又は3を提供し;そのさらなる実施形態はVk6-A26(Jk2)内で提供されるそれぞれ配列番号18、19及び20の軽鎖CDR1、2及び/又は3をさらに含む。ここで特定の実施形態は、VH3-23(JH2)中への、(i)それぞれ配列番号22、15、及び23、又は(ii)それぞれ配列番号14、15、及び16のいずれかの重鎖CDR1、2及び/又は3を提供し;そのさらなる実施形態は、Vk6-A26(Jk2)内で提供される、配列番号18の軽鎖CDR1、配列番号19のCDR2及び/又は下記配列:配列番号24、25、26、27、28、29及び63から成る群よりそれぞれ選択されるはCDR3をさらに含む。特有の実施形態では、可変重鎖ドメインが可変軽鎖ドメインと一対になって抗原結合部位を与える。或いは、独立領域(例えば、可変重鎖ドメインのみ)を用いて抗原と結合し得る。同様に、専門家は、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVH(おそらく別の遺伝子でコード化されているが)を組換え法を利用して、VL及びVH領域が一対になって一価分子(scFvs)を形成する単一のタンパク質鎖として生じさせ得る合成リンカーで連結することができる。
【0028】
本発明は、ヒト、ヒト化、脱免疫化(deimmunized)、キメラ及び霊長類化(primatized)抗体分子を包含する。本発明は、ベニアリング(veneering)のプロセスによって産生される抗体をも包含する;例えば、Mark et al., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology, vol. 113: The pharmacology of monoclonal Antibodies, Springer-Verlag, pp. 105-134及び米国特許第6,797,492号を参照されたい。開示抗体分子と関連する「ヒト」は、特にヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変部及び/又は定常部を有する抗体を意味し、前記配列は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされない特定のアミノ酸置換又はアミノ酸残基を有するように修飾/変更されていてもよいが、そうである必要はない。限定するものではないが、ランダム又は部位特異的in vitro突然変異誘発、又はin vivo体細胞突然変異といった方法によってこのような変異を導入することができる。文献で議論されている突然変異法の具体例は、Gram et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580; Barbas et al., 1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3809-3813、及びSchier et al., 1996 J. Mol. Biol. 263:551-567で開示されている。これらは単なる特定例であり、利用可能な方法がこれらのみということではない。科学文献には、当業者が利用可能、かつ当業者に広く認められている多数の突然変異法がある。開示抗体分子に関して「ヒト化」は、特に、マウス等の別の哺乳動物種由来のCDR配列がヒトのフレームワーク配列上に移植されている抗体分子を指す。開示抗体分子に関して「霊長類化」は、非霊長類のCDR配列が、霊長類のフレームワーク配列中に挿入されている抗体分子を指す。例えば、WO 93/02108及びWO 99/55369を参照されたい。
【0029】
本発明の特有の抗体はモノクロナール抗体であり、かつ特定の実施形態では、下記抗体形式の1つのモノクロナール抗体である:IgD、IgA、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はこれらいずれかの誘導体。「その誘導体」という表現は、とりわけ、(i)可変部の1つ又は両方(すなわち、VH及び/又はVL)のフレームワーク又はCDR領域が修飾されている抗体及び抗体分子、(ii)重鎖及び/又は軽鎖の定常部が操作されている抗体及び抗体分子、並びに(iii)通常、免疫グロブリン分子の一部でない、追加の化学成分を含有する(例えば、ペグ化)抗体及び抗体分子を包含する。
可変部の操作は、1つ以上のVH及び/又はVL CDR領域内でよい。部位特異的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発を行って突然変異を誘発し、本明細書で述べるものを含め、利用可能なin vitro又はin vivoアッセイを利用して、問題の抗体機能特性に及ぼす効果を評価することができる。
本発明の抗体は、問題の抗体の1つ以上の特性を改善するためVH及び/又はVL内のフレームワーク残基に修飾を加えた当該抗体をも包含する。典型的に、このようなフレームワークの修飾を行って、抗体の免疫原性を低減する。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列の配列に「逆突然変異(backmutate)」させることである。さらに詳細には、体細胞突然変異を受けた抗体が、該抗体が由来する生殖細胞系列の配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。抗体フレームワーク配列を、該抗体が由来する生殖細胞系列の配列と比較することによって、該残基を同定することができる。このような「逆突然変異」した抗体も本発明に包含されるものとする。別のタイプのフレームワークの修飾は、フレームワーク領域内の1つ以上の残基、又は1つ以上のCDR内の残基でさえを突然変異させて、T細胞エピトープを除去し、ひいては該抗体の潜在的な免疫原性を低減することを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許公開第20030153043号に詳述されている。
【0030】
フレームワーク又はCDR領域内で行う修飾に加え、或いはそれに代えて、本発明の抗体を操作して、Fc領域(存在する場合)内に修飾を含めて、典型的に該抗体の1つ以上の機能特性、例えば血清中の寿命、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞の細胞毒性を変えることができる。
一実施形態では、CH1のヒンジ部を修飾して、該ヒンジ部内のシステイン残基の数を変え、例えば、増減させて、例えば、軽鎖及び重鎖の構築を促進し、或いは該抗体の安定性を増減させる。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに開示されている。
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ部を突然変異させて、該抗体の生物学的半減期を短縮する。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳述されている。
別の実施形態では、抗体を修飾して、その生物学的半減期を増やす。例えば、以下の1つ以上の突然変異を誘導することができる:Wardによる米国特許第6,277,375号に記載されているようなThr252Leu、Thr254Ser、Thr256Phe。或いは、生物学的半減期を増やすため、Prestaらによる米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載されているように、抗体をCH1又はCL領域内で変化させて、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルヴェージ(salvage)受容体結合エピトープを含むことができる。
さらに他の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換して該抗体のエフェクター機能を変えることによって、Fc領域を変化させる。例えば、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号を参照されたい。
別の例では、アミノ酸残基329、331及び322から選択される1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えて該抗体のC1q結合性を変え、及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を低減若しくは撤廃することができる。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳述されている。
別の例では、アミノ酸位置231及び239内の1つ以上のアミノ酸残基を修飾することによって、該抗体の、補体を固定する能力を変える。このアプローチは、BodmerらによるWO94/29351でさらに開示されている。
さらに別の例では、Fc領域を修飾して、該抗体の、抗体依存性細胞の細胞毒性(ADCC)を媒介する能力を高め、及び/又は1つ以上のアミノ酸を修飾することによって、Fcγ受容体に対する該抗体の親和性を高める;例えばPrestaによるWO00/42072を参照されたい。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIII及びFcRnのための、ヒトIgG1上の結合部位をマッピングし、結合性が改良された変異体が開示されている(Shields et al, J. Biol. Chem. 276:6591-6604, 2001参照)。
【0031】
種々の抗体イソ型を含め、「ハイブリッド」又は「コンビナトリアル」IgG型を生成して、所望のエフェクター機能性に焦点を合わせるという概念が一般的に開示されている;例えば、Tao et al., 1991 J. Exp. Med. 173:1025-1028を参照されたい。本発明の特有の実施形態は、Fc領域に特有の遺伝子操作がある抗体分子を包含する。この操作の結果、抗体の該部分上のFcγR受容体又はC1qへの結合性が低減することが分かった。従って、本発明は、抗体依存性細胞の細胞毒性(ADCC)、補体媒介細胞毒性(CMC)を引き起こさず(又は低度に引き起こし)、或いは免疫複合体を形成しないで、通常の薬物動態学的(PK)特性を保持する、本明細書に記載の抗体を包含する。本発明の特有の実施形態は、本発明で定義する通りの抗体分子を提供し、この抗体分子は、その免疫グロブリン構造の一部として、配列番号79に示される配列を含む。図2は、配列番号79に示される配列を含むIgG2m4の配列(米国特許公開第US20070148167(A1)号の記載通り)とIgG1、IgG2、及びIgG4のアミノ酸配列との比較を示す。
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、アグリコシル化(aglycoslated)抗体を調製できる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。例えば、グリコシル化を変えて、抗原に対する該抗体の親和性を高めることができる。例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を変えることによって、該炭水化物修飾を達成することができる。例えば、可変部フレームワークの1つ以上のグリコシル化部位の除去となる1つ以上のアミノ酸置換を行うことによって、当該部位でのグリコシル化を排除することができる。このようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号にさらに詳述されている。
さらに、或いはこれとは別に、グリコシル化の型を変えた抗体、例えばフコシル残基の量が少ない低フコシル化抗体又は二分(bisecting)GlcNac構造が多い抗体を調製することができる。このような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが実証された。例えば、グリコシル化機構が変化した宿主細胞内で抗体を発現させることによって、このような炭水化物修飾を達成することができる。グリコシル化機構が変化した細胞は技術的に開示されており、宿主細胞として用いて、本発明の組換え抗体を発現させることによって、グリコシル化が変化した抗体を生じさせることができる。
【0032】
特有の抗体分子は検出可能標識を保有することがあり、或いは毒素(例えば、細胞毒)、放射性同位体、放射性核種、リポソーム、標的成分、バイオセンサー、カチオン性末端、又は酵素(例えば、ペプチジル結合若しくはリンカーによって)に抱合され得る。このような抗体分子組成物が本発明のさらなる局面を形成する。
別の局面では、開示抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。核酸は細胞全体、細胞ライセート、又は部分的に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、例えば、標準的な方法(限定するものではないが、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動法及び他の技術上周知の適切な方法が挙げられる)を用いて、他の細胞成分又は他の混入物、例えば、他細胞の核酸又はタンパク質から精製された場合、「単離」又は「実質的に純粋に」されている。核酸は、DNA(cDNAを含め)及び/又はRNAを包含し得る。標準的な分子生物学的方法を用いて本発明の核酸を得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、ヒト免疫グロブリンを保有するトランスジェニックマウスから調製したハイブリドーマ)によって発現される抗体については、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング法によって、該ハイブリドーマによって生成される抗体の軽鎖と重鎖をコードするcDNAを得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ法を用いて)から得られる抗体については、該抗体をコードする核酸を該ライブラリーから回収することができる。
【0033】
本発明は、開示する可変重鎖及び/又は軽鎖をコードする単離された核酸を包含し、かつその成分、特に、開示するそれぞれのCDR3領域を選択する。その特有の実施形態では、CDRは抗体のフレームワーク領域内で提供される。特有の実施形態は、生殖細胞系列のフレームワーク領域中にCDRをコードする単離された核酸を提供する。可変部をコードする単離された核酸は、いずれの所望の抗体分子形式内でも提供され、限定するものではないが、下記形式が挙げられる:F(ab')2、Fab、Fv、scFv、二重特異性抗体分子(該抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能部分、例えば限定ではないが、別のペプチド若しくはタンパク質(例えば抗体)、又は受容体リガンドに連結している、本明細書で開示するIL-13Rα1特異性抗体又は抗原結合フラグメントを含む抗体分子)、二重特異性単鎖Fvダイマー、dAbフラグメント、ディアボディー、トリアボディー又はテトラボディー、ミニボディー、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgA、IgE又はそのいずれかの誘導体。
特有の実施形態は、下記配列:配列番号30、配列番号38、配列番号42及び配列番号50から成る群より選択される核酸配列を有する重鎖可変部を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特有の実施形態は、下記配列:(i)それぞれ配列番号31、配列番号32及び/又は配列番号33;(ii)それぞれ配列番号39、配列番号40及び/又は配列番号41;(iii)それぞれ配列番号39、配列番号40及び/又は配列番号83;(iv)それぞれ配列番号43、配列番号44及び/又は配列番号45;(v)それぞれ配列番号43、配列番号44及び/又は配列番号84;並びに(vi)それぞれ配列番号51、配列番号44及び/又は配列番号52;から成る群より選択される核酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。
特有の実施形態は、下記配列:配列番号34、配列番号46、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72及び配列番号74から成る群より選択される核酸配列を有する軽鎖可変部を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。本発明の特有の実施形態は、下記配列:(i)それぞれ配列番号35、配列番号36及び/又は配列番号37;(ii)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号49;(iii)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号65;(iv)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号67;(v)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号69;(vi)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号71;(vii)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号73;から成る群より選択される核酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3配列を含む抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。
本発明の特有の実施形態は、Fc領域が遺伝子操作された(結果として抗体の該部分上のFcγR受容体又はC1qへの結合が減った)抗体分子をコードする核酸を包含する。本発明の1つの特有の実施形態は、配列番号80に示される配列を有する単離された核酸である。特有の実施形態では、適切な発現ベクター内で合成及び構築されたオリゴヌクレオチドから生成された核酸からの発現によって合成抗体分子を生じさせ得る;例えばKnappick et al., 2000 J. Mol. Biol. 296:57-86、及びKrebs et al., 2001 J. Immunol. Methods 254:67-84を参照されたい。
また、本明細書で述べるヌクレオチド配列と少なくとも約90%同一、好ましくは少なくとも約95%同一であるヌクレオチド配列を含み、かつヌクレオチド配列が本発明の抗体をコードする核酸も本発明に包含される。同一性を決定するための配列比較法は当業者に周知であり、以前に述べた当該方法が挙げられる。「少なくとも約90%同一」との言及は、少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一を包含する。
【0034】
本発明はさらに、本明細書で開示する核酸の補体(例えば、(i)配列番号30、配列番号38、配列番号42又は配列番号50のVHヌクレオチド配列;(ii)下記配列:(a)それぞれ配列番号31、配列番号32及び/又は配列番号33;(b)それぞれ配列番号39、配列番号40及び/又は配列番号41;(c)それぞれ配列番号39、配列番号40及び/又は配列番号83;(d)それぞれ配列番号43、配列番号44及び/又は配列番号45;(e)それぞれ配列番号43、配列番号44及び/又は配列番号84;又は(f)それぞれ配列番号51、配列番号44及び/又は配列番号52から成る群より選択される重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3ヌクレオチド配列;(iii)配列番号34、配列番号46、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72又は配列番号74のVLヌクレオチド配列;(iv)下記配列:(a)それぞれ配列番号35、配列番号36及び/又は配列番号37;(b)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号49;(c)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号65;(d)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号67;(e)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号69;(f)それぞれ配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号71;又は(g)配列番号47、配列番号48及び/又は配列番号73から成る群より選択される軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3ヌクレオチド配列;及び(v)開示抗体分子をコードする本明細書で述べる通りの核酸配列を含む核酸の補体)に特定のハイブリダイゼーション条件下(特異的にhIL-13Rα1に結合し、かつIL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズする抗体分子を核酸がコードする)でハイブリダイズする核酸を提供する。核酸をハイブリダイズさせる方法は技術上周知であり;例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 6.3.1-6.3.6, 1989を参照されたい。本明細書で定義する場合、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%w/v SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)、約50%v/vのホルムアミドのハイブリダイゼーション緩衝液、6×SSCを含有する予洗浄液、及び55℃のハイブリダイゼーション温度(又は他の同様のハイブリダイゼーション溶液、例えば約50%v/vのホルムアミドを含有する溶液と42℃のハイブリダイゼーション温度)、及び0.5×SSC、0.1%w/v SDS中60℃の洗浄条件を使用し得る。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、45℃で6×SSC後、0.1×SSC、0.2% SDS中68℃で1回以上の洗浄でよい。さらに、当業者は、ハイブリダイゼーション条件及び/又は洗浄条件を操作して、相互に少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98、又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、一般的に相互にハイブリダイズされたままであるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増減することができる。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本パラメーター及び適切な条件を工夫するための指針は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., chapters 9 and 11, 1989 and Ausubel et al. (eds), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4, 1995によって述べられており、当業者は、例えば、DNAの長さ及び/又は塩基組成に基づいて容易に決定することができる。
【0035】
本発明は、本明細書で開示する軽鎖及び/又は重鎖可変部をコードする核酸配列(例えば、下記配列:配列番号30、配列番号38、配列番号42、配列番号50、配列番号34、配列番号46、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72及び配列番号74から成る群より選択される)の補体に、中程度のストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列によって少なくとも部分的にコードされる軽鎖及び/又は重鎖可変部を含む単離された抗体を提供する。別の実施形態では、本明細書で開示する軽鎖及び/又は重鎖可変部を有する核酸配列の補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によって少なくとも部分的にコードされる軽鎖及び/又は重鎖可変部を含む単離された抗体を包含する。
別の局面では、本発明は、前記核酸を含むベクターを提供する。本発明のベクターとして、限定するものではないが、意図した用途に適したレベルで所望の抗体分子の発現に好適なプラスミド及び他の発現構成物(例えば、必要に応じて、ファージ又はファージミド)が挙げられる;例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual: 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。多くのクローニング目的のため、DNAベクターを使用し得る。典型的ベクターとして、プラスミド、改変ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体、及びエピソーム又は組込みDNAの他の形態が挙げられる。個々の遺伝子導入、組換えヒト抗体の生成、又は他の用途に適切なベクターを決定することは、十分に当業者の理解範囲内である。特有の実施形態では、組換え遺伝子に加え、ベクターは、宿主内における自己複製の複製起点、適切な制御配列、例えばプロモーター、終止配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択可能マーカー、限定数の有用な制限酵素部位、必要に応じて他の配列及び高いコピー数の可能性をも含み得る。抗体及び抗体フラグメントの生産用の発現ベクターの例は技術上周知であり;例えばPersic et al., 1997 Gene 187:9-18; Boel et al., 2000 J. Immunol. Methods 239:153-166、及びLiang et al., 2001 J. Immunol. Methods 247:119-130を参照されたい。所望により、技術上周知の方法を利用して、抗体をコードする核酸を宿主の染色体中に組み込むことができる;例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 1999、及びMarks et al., WO 95/17516を参照されたい。エピソームに保持され或いは人工染色体中に組み込まれたプラスミド上で核酸を発現させることもできる;例えば、Csonka et al., 2000 J. Cell Science 113:3207-3216; Vanderbyl et al., 2002 Molecular Therapy 5:10を参照されたい。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入することができ、或いはさらに典型的には、両遺伝子を同一の発現ベクターに挿入する。標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント又はベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合の平滑末端ライゲーション)で抗体遺伝子を発現ベクターに挿入する。本明細書で述べる抗体の軽鎖及び重鎖可変部を用いて、それらを所望イソ型の重鎖定常部と軽鎖定常部を既にコードしている発現ベクターに挿入することによって(該VHセグメントがベクター内のCHセグメントに動作可能に連結され、かつ該VLセグメントがベクター内のCLセグメントに動作可能に連結されるように)、いずれの抗体イソ型の全長抗体遺伝子をも作製することができる。さらに或いはこれとは別に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子をベクターに挿入してクローンを発生させ得る(シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレーム連結されるように)。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)でよい。当業者が利用可能ないずれの方法を利用しても宿主細胞に核酸を導入することができる;例えば、Morrison, 1985 Science, 229:1202を参照されたい。問題の核酸分子を発現ベクターに挿入してサブクローニングし、該ベクターを含有する宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする方法、並びにそれぞれの発現ベクターを宿主細胞に導入する工程、及び該宿主細胞を適切な条件下で培養する工程を含んでなる実質的に純粋なタンパク質を生じさせる方法は周知である。そのように生成された抗体は、常法により宿主から収集される。核酸を問題の細胞に導入するのに適した方法は、使用する細胞型によって決まる。一般的な方法として、限定するものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気泳動、リポソーム媒介トランスフェクション及び問題の細胞系に適したウイルス(例えば、レトロウイルス、ワクシニア、バキュロウイルス、又はバクテリオファージ)を利用するトランスフェクションが挙げられる。
【0036】
別の局面では、本発明は、開示抗体分子及びその成分(記載通り)をコードする核酸を含む単離された細胞を提供する。抗体分子の組換え生成のため種々の異なる細胞系を使用でき、限定するものではないが、原核生物(例えば、大腸菌、バチルス、及びストレプトマイセス)由来及び真核生物(例えば、酵母菌、バキュロウイルス、及び哺乳動物)由来のものが挙げられる;例えば、Breitling et al., Recombinant antibodies, John Wiley & Sons, Inc. and Spektrum Akademischer Verlag, 1999を参照されたい。本明細書で開示する核酸又は抗体分子を含んでなる植物細胞(トランスジェニック植物を含む)、及び動物細胞(トランスジェニック動物(ヒト以外)を含む)も本発明の一部と考えられる。限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来のもの、限定するものではないが、例えばDHFR選択可能マーカー(例えばKaufman and Sharp, 1982 Mol. Biol. 159:601-621に記載されているように)と共に使用されるDHFR-CHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されている)、NS0骨髄腫細胞(WO 87/04462、WO 89/01036、及びEP 338,841に記載のGS発現系を使用し得る)、COS細胞、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胎児腎臓細胞、ヒト胎児網膜細胞、並びに本明細書で開示する核酸又は抗体分子を含む他の細胞系といった適切な哺乳動物細胞系が発明のさらなる実施形態を形成する。本発明の特有の実施形態は大腸菌(例えば、Pluckthun, 1991 Bio/Technology 9:545-551参照)、又は酵母、例えばピキア(Pichia)、及びその組換え誘導体(例えば、Li et al., 2006 Nat. Biotechnol. 24:210-215参照)を利用し得る。本発明のさらなる特有の実施形態は、抗体分子の生成のために真核生物を利用し得る;Chadd & Chamow, 2001 Current Opinion in Biotechnology 12:188-194, Andersen & Krummen, 2002 Current Opinion in Biotechnology 13:117, Larrick & Thomas, 2001 Current Opinion in Biotechnology 12:411-418を参照されたい。本発明の特有の実施形態は、正確な翻訳後修飾で抗体分子を生成可能な哺乳動物細胞を利用できる。翻訳後修飾として、限定するものではないが、ジスルフィド結合形成及びグリコシル化が挙げられる。別のタイプの翻訳後修飾はシグナルペプチド切断である。ここで特有の実施形態は適切なグリコシル化を有する;例えば、Yoo et al., 2002 J. Immunol. Methods 261:1-20を参照されたい。天然に存在する抗体は、重鎖に結合した少なくとも1つのN連結炭水化物を含む(同書)。異なるタイプの哺乳動物宿主細胞を使用して効率的な翻訳後修飾を与え得る。このような宿主細胞の例として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、C6、PC12、及び骨髄腫細胞が挙げられ;例えば、Yoo et al., 2002 J. Immunol. Methods 261:1-20、及びPersic et al., 1997 Gene 187:9-18を参照されたい。
別の局面では、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含んでなる単離された細胞を提供する。
【0037】
別の局面では、本発明は、本発明の抗体分子の製造方法であって、ヒトIL-13Rα1に対して特異性を有する重鎖及び/又は軽鎖(所望抗体分子によって要求される)をコードする核酸を内部に持つ細胞を、前記重鎖及び/又は軽鎖の、抗体分子中への発現と構築を可能にする条件下でインキュベートする工程、及び前記抗体分子を該細胞から単離する工程を含む方法を提供する。所望の重鎖及び/又は軽鎖配列を作製するための一例は、まず生殖細胞系列の重鎖及び/又は軽鎖可変部の配列をPCRを利用して増幅(及び修飾)することである。ヒトの重鎖及び/又は軽鎖可変部の生殖細胞系列の配列は、当業者にとって容易に入手可能である。例えば、「Vbase」ヒト生殖細胞系列配列データベース、及びKabat, E.A. et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242;Tomlinson, I.M. et al., 1992 “The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol. 227:776-798;及びCox, J.P.L. et al., 1994 “A Directory of Human Germ-line Vκ Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol. 24:827-836を参照されたい。生殖細胞系列配列の突然変異誘発は、標準的方法、例えば、PCR媒介突然変異誘発(突然変異は、PCRプライマーに組み込まれる)、又は部位特異的突然変異誘発を用いて行われる。全長抗体が望ましい場合、ヒト重鎖定常部遺伝子用配列を利用できる;例えば、Kabat. E.A. et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい。これらの領域を含むフラグメントは、例えば、標準的PCR増幅を利用して得られる。或いは、当業者は、既に重鎖及び/又は軽鎖定常部をコードしているベクターを利用することができる。
元の抗体の特異性を保持する他の抗体分子を組換えによって生じさせるために利用可能な方法が存在する。この特有の例では、免疫グロブリン可変部又はCDRをコードするDNAが、別の抗体分子の定常部、又は定常部とフレームワーク部中に組み込まれる;例えば、EP-184,187、GB 2188638、及びEP-239400、並びに当該分野の科学文献を参照されたい。キメラ抗体を含め、抗体分子のクローニング及び発現については文献に記載されている;例えば、EP 0120694及びEP 0125023、並びに当該分野の他の科学文献を参照されたい。
【0038】
本発明のさらなる抗体を産生させてから、本明細書で同定される特徴について既知の技術を利用してスクリーニングすることができる。モノクロナール抗体の調製の基本技術は文献に記載されている。例えば、Kohler and Milstein (1975, Nature 256:495-497)を参照されたい。完全なヒトモノクロナール抗体は利用可能な方法で生成される。これらの方法として、決して限定するものではないが、遺伝子操作されたマウス系統の使用が挙げられる。このマウス系統は免疫系を有し、この免疫系によって該マウス抗体遺伝子が不活化され、順次、機能的ヒト抗体遺伝子のレパートリーで置き換えられているが、該マウス免疫系の他の成分は変化しないままである。このような遺伝子操作されたマウスは、自然のin vivo免疫応答及び親和性成熟プロセス(高い親和性の全ヒトモノクロナール抗体をもたらす)を可能にする。この技術は当該分野で周知であり、限定するものではないが、米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;第5,770,249号(GenPharm Internationalに帰属し、かつ「UltraMab Human Antibody Development System」の保護下でMedarexを通じて入手可能);並びに米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号及び関連ファミリーメンバー(XENOMOUSE(登録商標)技術を開示するAbgenixに帰属する)といった種々の出版物に完全に詳述されている。また、Kellerman and Green, 2002 Curr. Opinion in Biotechnology 13:593-597、及びKontermann & Stefan, 2001 Antibody Engineering, Springer Laboratory Manualsのレビューも参照されたい。
これとは別に、本発明の抗原結合フラグメントのライブラリーをIL-13Rα1と接触させて、抗原との1pM〜200pMのKDを示すこと、及び選択したIL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズする能力を実証することができる。濃縮技術を用いてライブラリーから抗体フラグメントを選択するための方法を専門家は利用可能である。この濃縮技術として、限定するものではないが、ファージディスプレイ(例えば、米国特許第5,565,332号;第5,733,743号;第5,871,907号;第5,872,215号;第5,885,793号;第5,962,255号;第6,140,471号;第6,225,447号;第6,291,650号;第6,492,160号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号;第6,593,081号並びに他の米国ファミリーメンバー及び/又は1992年5月24日提出のGB 9206318の優先権に頼る出願で開示されるCambridge Antibody Technology(CAT)の技術参照;またVaughn et al., 1996, Nature Biotechnology 14:309-314参照)、リボソームディスプレイ(例えば、Hanes and Pluckthun, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. 94:4937-4942参照)、細菌ディスプレイ(例えば、Georgiou, et al., 1997 Nature Biotechnology 15:29-34参照)及び/又は酵母ディスプレイ(例えば、Kieke, et al., 1997 Protein Engineering 10:1303-1310参照)が挙げられる。例えば、その表面上に発現かつ提示された抗原結合フラグメントをコードする核酸を有する、バクテリオファージ粒子の表面上にライブラリーを提示させることができる。次に、所望レベルの活性を示すバクテリオファージ粒子から核酸を単離して、この核酸を抗体分子の開発で使用することができる。本発明の個々の重鎖又は軽鎖クローンを用いて、それぞれ、それと相互作用して、重鎖と軽鎖を組合せた分子を形成できる相補性重鎖又は軽鎖をスクリーニングすることもできる;例えば、WO 92/01047を参照されたい。ファージディスプレイは文献に記載されており;例えば、Kontermann & Stefan(上記)、及びWO 92/01047を参照されたい。
当業者に利用可能な方法でモノクロナール抗体(MAbs)を精製することができる。種々の血清学的又は免疫学的アッセイで関連腹水、ハイブリドーマ培養液、又は問題の試験サンプルの抗体力価を決定できる。このアッセイとして、限定するものではないが、沈殿、受身凝集、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法及び放射性免疫測定(RIA)法が挙げられる。
【0039】
別の局面では、本発明は、IL-13Rα1をアンタゴナイズする方法であって、IL-13Rα1を発現する細胞を本明細書で開示する抗体分子と、前記抗体分子がIL-13Rα1に結合できる条件下で接触させる工程を含む方法を提供する。本発明の特有の実施形態は、前記細胞がヒト細胞である、該方法を包含する。
別の局面では、本発明は、IL-13Rα1の活性に関係がある状態を示す対象のIL-13Rα1の活性をアンタゴナイズする方法であって、前記対象に、治療的に有効な量の本発明の抗体分子を投与する工程を含む方法を提供する。本明細書では、「アンタゴナイズする」とは、標的の1つ以上の機能(結合、シグナル伝達など)に反対し、対抗し、又は該機能を削減する作用を意味する。技術上周知な方法及び本明細書で開示する方法により、IL-13Rα1の機能特性の1つ以上の阻害又は拮抗作用を容易に決定することができる。さらに、このような阻害又は拮抗作用は、その抗体の非存在下で見られる活性、又は例えば、無関係な特異性のコントロール抗体が存在するときに見られる活性と関係する特定の活性の低減を実現すべきであることが分かるだろう。好ましくは、本発明の抗体分子は、IL-13媒介IL-13Rα1機能性を、測定パラメーターが少なくとも10%低減、さらに好ましくは測定パラメーターが少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、及び95%低減する点までアンタゴナイズする。このようなIL-13Rα1機能性の阻害/拮抗作用は、受容体機能性が、対象に負の影響を与える特定の表現型、疾患、障害又は状態に少なくとも部分的に寄与する場合に特に有効である。IL-13Rα1媒介疾患、障害又は状態の治療用薬物の製造で開示抗体分子を使用する方法をも想定される。
本明細書で開示する抗体分子を特定の個体(ヒト又は霊長類)の治療又は診断法で使用することができる。本治療方法は、実際は予防的又は治療的であり得る。別の局面では、本発明は、本発明の抗体分子と、医薬的に許容しうる担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、緩衝剤、又は治療個体への所望の形式と量での抗体分子の投与を容易にするように設計された代替物とを含んでなる医薬的に許容しうる組成物を提供する。本発明の治療方法は、治療的(又は予防的に)有効な量の本発明の抗体分子を個体に投与する工程を含む。「治療的に有効な」又は「予防的に有効な」量とは、所望時間の間、所望の治療的/予防的効果を果たすために意図した投与量で必要な量を意味する。例えば、所望効果は、治療状態に関係がある少なくとも1つの症状の改善でよい。これらの量は、当業者に明らかなように、種々の因子によって変わる。このような因子として、限定するものではないが、疾患状態、個体の年齢、性別及び体重、並びに抗体分子の、該個体内で所望効果を引き出す能力が挙げられる。その応答は、in vitroアッセイ、in vivo非ヒト動物研究で証明され、かつ/又は臨床治験でさらに支持される。技術上周知の多くのいずれの戦略によっても本発明の抗体を基礎にした医薬組成物を調合し得る。例えば、McGoff and Scher, 2000 Solution Formulation of Proteins/Peptides, In: McNally, E.J., ed. Protein Formulation and Delivery. New York, NY: Marcel Dekker; pp. 139-158; Akers & Defilippis, 2000, Peptides and Proteins as Parenteral Solutions. In: Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins. Philadelphia, PA: Taylor and Francis; pp. 145-177; Akers et al., 2002, Pharm. Biotechnol. 14:47-127を参照されたい。患者投与に適した医薬的に許容しうる組成物は、生物学的活性を保持しながら、許容しうる温度範囲内で貯蔵中に最大の安定性をも助長する製剤中に有効量の抗体分子を含むだろう。
抗体を基礎にした医薬的に許容しうる組成物は、液体又は固体形態でよい。液体又は固体製剤のいずれの製造法をも利用できる。このような方法は、当業者の能力の十分範囲内である。いずれの利用可能な方法によっても固体製剤を製造でき、該方法として、限定するものではないが、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は超臨界液体技術が挙げられる。経口投与用の固体製剤は、処方量及び処方期間内で患者が抗体分子にアクセスしやすくするいずれの形態でもよい。経口製剤は、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、又は散剤といった多くの固体製剤の形態をとり得る。固体製剤を凍結乾燥し、単回投与又は連続投与のいずれかの投与前に溶液にし得る。通常、生物学的に適切なpH範囲内で抗体組成物を調製すべきであり、緩衝させて、貯蔵中、適切なpH範囲を維持することができる。液体及び固体製剤はともに一般的に長期間安定性を保持するため低温(例えば、2〜8℃)で貯蔵する必要がある。製剤化された抗体組成物、特に液体製剤は、貯蔵中のタンパク質分解を防止又は最小限にするため静菌剤を含有し得る。静菌剤として、限定するものではないが、有効濃度(例えば、≦1%w/v)のベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン、及び/又はプロピルパラベンが挙げられる。患者によっては静菌剤が禁忌であり得る。従って、該成分を含有するか含有しない溶液で凍結乾燥製剤を再構成させ得る。追加成分を緩衝液又は固形抗体製剤に添加してよい。追加成分として、限定するものではないが、凍害防御物質としての糖(限定するものではないが、ポリヒドロキシ炭化水素、例えばソルビトール、マンニトール、グリセロール、及びズルシトール及び/又は二糖、例えばスクロース、ラクトース、マルトース、又はトレハロースが挙げられる)並びに、場合によっては、適切な塩(限定するものではないが、NaCl、KCl、又はLiClが挙げられる)が挙げられる。該抗体製剤、特に長期貯蔵のためスレート化(slated)した液体製剤は、有効範囲の全モル浸透圧濃度に依存して、例えば、2〜8℃又はそれより高い温度での長期安定性を助長しながら、該製剤を非経口注射で利用できるようにする。必要に応じ、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を含めてよい。製剤は、二価カチオン(限定するものではないが、MgCl2、CaCl2、及びMnCl2が挙げられる);及び/又は非イオン性界面活性剤(限定するものではないが、Polysorbate-80(TWEEN 80TM, Polysorbate-60(TWEEN 60TM), Polysorbate-40(TWEEN 40TM)、及びPolysorbate-20(TWEEN 20TMが挙げられる)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(限定するものではないが、BRIJ 58TM、BRIJ 35TMが挙げられる)、並びに他のもの、例えばTRITON X-100TM、TRITON X-114TM、NP40TM、Span 85及びPLURONIC(登録商標)シリーズの非イオン性界面活性剤(例えば、PLURONIC(登録商標)121)を含んでよい。このような成分のいずれの組合せも本発明の特有の実施形態を形成する。
【0040】
液体形態の医薬組成物は、液状担体、例えば、水、石油、動物油、植物油、鉱油、又は合成油を含み得る。液体形態は、生理食塩水、デキストロース又は他のサッカリド溶液又はグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールをも含み得る。
医薬組成物は、適切なpH、浸透圧、及び安定性で熱源のない非経口的に許容しうる水溶液の形態でよい。等張ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム液、リンゲル液、又は乳酸リンゲル液で希釈後、投与のため医薬組成物を調製し得る。
抗体治療薬の投与は当業者の十分理解範囲内であり(例えば、Lederman et al., 1991 Int. J. Cancer 47:659-664; Bagshawe et al., 1991 Antibody, Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922参照)、多くの因子に基づいて変化する。このような因子として、限定するものではないが、利用する抗体分子、治療する患者、患者の状態、治療する部位、投与経路、及び望まれる治療が挙げられる。通常スキルの医師又は獣医は、有効な量の抗体を容易に決定かつ処方することができる。用量範囲は、約0.01〜100mg/kg、さらに一般的に0.05〜25mg/kg(宿主の体重)でよい。例えば、用量は、0.3mg/kg(体重)、1mg/kg(体重)、3mg/kg(体重)、5mg/kg(体重)若しくは10mg/kg(体重)又は1〜10mg/kgの範囲内でよい。説明目的のため、かつ限定でなく、特有の実施形態では、5mg〜2.0gの用量を利用して、抗体分子を全身に送達することができる。毒性なしで効力を生じさせる範囲内の抗体濃度を達成するのに最適な精度は、標的部位に対する該薬物の有効性のキネティクスに基づいた投与計画を必要とする。これは、抗体分子の分布、平衡、及び排出という考慮事項を含む。本明細書で述べる抗体を単独で適切な用量にて使用し得る。或いは他の薬剤の同時投与又は逐次投与が望ましいこともある。本発明の抗体分子用の治療投与計画を代替治療計画と共に提供することができるだろう。治療できる個体(対象)として、霊長類、ヒト及び非ヒトが挙げられ、商業上若しくは家庭内の獣医学上重要ないずれの非ヒト哺乳動物又は脊椎動物も含まれる。
【0041】
技術上認められているいずれの投与経路でも抗体分子を個体に単独で又は該個体の治療を助けるように設計された他の薬剤と共に投与することができる。投与経路として、限定するものではないが、注射による投与(特有の実施形態として、静脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射が挙げられる)、吸入による投与、鼻腔内、又は局所投与が挙げられる。限定するものではないが、治療の所望の物理化学的性質といった、当業者が認めるいくつかの考慮すべき事柄に基づいて投与経路を決定すべきである。毎日、毎週、二週間ごと、又は月ベースで治療を行ってよく、或いは、所望の治療が達成かつ維持されるように、規定回数で個体に適量の抗体分子を送達するいずれの他の投与計画でもよい。単回用量で、又は別の時間に複数用量で製剤を投与し得る。
特定の実施形態では、治療する状態は、下記状態:喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、食道好酸球増加症、乾癬、乾癬性関節炎、線維症、強皮症、炎症性腸疾患(特に潰瘍性結腸炎)、アナフィラキシー、及び癌(特に、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、及び腎癌)、並びに一般的なTh2媒介障害/状態から成る群より選択される。従って、IL-13Rα1媒介状態、例えば上述した状態の治療用薬物の製造における抗体分子の使用は、本発明の重要な実施形態を形成する。
本発明は、遺伝子療法の目的のための開示抗-hIL-13Rα1抗体分子の投与をさらに提供する。この方法では、本発明の抗体分子をコードする核酸で対象の細胞を形質転換させるだろう。そして、該核酸を含む対象は自己発生的に抗体分子を産生するだろう。以前に、Alvarez, et al, Clinical Cancer Research 6:3081-3087, 2000は、遺伝子療法アプローチを利用して単鎖の抗-ErbB2抗体を対象に導入した。本発明の抗-hIL-13Rα1抗体をコードする核酸の対象への導入のため、Alvarezらが開示した方法を容易に適合させ得る。
本発明のいずれのポリペプチド又は抗体分子をコードする核酸も対象に導入することができる。特有の実施形態では、抗体分子はヒトの単鎖抗体である。
技術上周知のいずれの手段を用いても対象の細胞に核酸を導入することができる。特有の実施形態では、核酸をウイルスベクターの一部として導入する。ベクターが由来し得る特有のウイルスの例として、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、アルファウイルス、インフルエンザウイルス、及び所望の細胞親和性を有する他の組換えウイルスが挙げられる。
種々の会社がウイルスベクターを商業的に製造しており、決して限定するものではないが、AVIGEN, Inc. (Alameda, CA;AAVベクター)、Cell Genesys (Foster City, CA;レトロウィルス、アデノウイルス、AAVベクター、及びレンチウイルスベクター)、CLONTECH (レトロウイルス及びバキュロウイルスベクター)、Genovo, Inc. (Sharon Hill, PA;アデノウイルス及びAAVベクター)、GENVEC (アデノウイルスベクター)、IntroGene (Leiden, Netherlands;アデノウイルスベクター)、Molecular Medicine (レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、及びヘルペスウイルスベクター)、Norgen (アデノウイルスベクター)、Oxford BioMedica (Oxford, United Kingdom;レンチウイルスベクター)、及びTransgene (Strasbourg, France;アデノウイルス、ワクシニア、レトロウイルス、及びレンチウイルスベクター)が挙げられる。
【0042】
ウイルスベクターを構築及び使用する方法は技術上周知である(例えば、Miller, et al, BioTechniques 7:980-990, 1992参照)。特有の実施形態では、ウイルスベクターは複製欠陥があり、すなわち、それらは自発的に複製できないので、標的細胞内で感染しない。複製欠陥ウイルスは最小ウイルスでよく、すなわち、それはそのゲノムをキャプシド形成してウイルス粒子を生成するために必要な該ゲノムの配列だけを保持する。全体的又はほとんど全体的にウイルス遺伝子を欠いている欠陥ウイルスをも同様に使用し得る。欠陥ウイルスベクターを使用すると、該ベクターが他の細胞を感染させ得る心配なしで、特異的局部内の細胞に投与できる。従って、特有組織を特異的に標的にすることができる。
弱毒化又は欠陥DNAウイルス配列を含むベクターの例として、限定するものではないが、欠陥ヘルペスウイルスベクターが挙げられる(Kanno et al, Cancer Gen. Ther. 6:147-154, 1999;Kaplitt et al, J. Neurosci. Meth. 71:125-132, 1997及びKaplitt et al, J. Neuro Onc. 19:137-147, 1994参照)。
アデノウイルスは、修飾して種々の細胞型に本発明の核酸を効率的に送達できる真核生物DNAウイルスである。弱毒化アデノウイルスベクター、例えば、Strafford-Perricaudet et al, J. Clin. Invest. 90:626-630, 1992に記載されているベクターが望ましい場合もある。種々の複製欠陥アデノウイルス及び最小アデノウイルスベクターが開示されている(WO94/26914、WO94/28938、WO94/28152、WO94/12649、WO95/02697及びWO96/22378)。当業者に既知のいずれの方法によっても本発明の複製欠陥組換えアデノウイルスを調製することができる(Levrero et al, Gene 101:195, 1991; EP 185573; Graham, EMBO J. 3:2917, 1984; Graham et al, J. Gen. Virol. 36:59, 1977)。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、それらが感染する細胞のゲノム中に、安定した部位特異的様式で組み込める比較的小さいサイズのDNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、細胞の成長、形態又は分化に如何なる作用をも及ぼすことなく、広範な細胞を感染させることができ、かつヒト病原には関係ないようである。遺伝子をin vitro及びin vivo伝達するためのAAV由来ベクターの使用が開示されている(Daly, et al, Gene Ther. 8:1343-1346, 2001, Larson et al, Adv. Exp. Med. Bio. 489:45-57, 2001;WO 91/18088及びWO 93/09239;米国特許第4,797,368号及び第5,139,941号及びEP 488528B1参照)。
【0043】
別の実施形態では、例えば、米国特許第5,399,346号、第4,650,764号、第4,980,289号、及び第5,124,263号;Mann et al, Cell 33:153, 1983;Markowitz et al, J. Virol., 62:1120, 1988;EP453242及びEP178220に記載されているように、レトロウイルスベクターに遺伝子を導入することができる。レトロウイルスは、多様な細胞を感染させる組込みウイルスである。
脳、網膜、筋肉、肝臓及び血液といったいくつかの組織タイプにおける、本発明の抗体分子をコードする核酸の直接送達及び持続発現用薬剤としてレンチウイルスベクターを使用することができる。このベクターは、これらの組織内で分裂及び非分裂細胞に効率的に形質導入を生じさせ、かつ抗体分子の長期発現を維持することができる。精査のため、Zufferey et al, J. Virol. 72:9873-80, 1998及びKafri et al, Curr. Opin. Mol. Ther. 3:316-326, 2001を参照されたい。レンチウイルスパッケージング細胞系は入手可能であり、技術上周知である。それらは遺伝子療法用の高力価レンチウイルスベクターの生成を促進する。例はテトラサイクリン誘導性VSV-G偽型レンチウイルスパッケージング細胞系であり、少なくとも3〜4日間で106IU/mlを超える力価でウイルス粒子を生成できる(Kafri et al, J. Virol. 73:576-584, 1999参照)。誘導性細胞系によって生成されたベクターを、効率的に非分裂細胞にin vitro及びin vivo形質導入を生じさせるために必要なように濃縮することができる。
【0044】
シンドビスウイルスはアルファウイルス属のメンバーであり、1953年に始まる世界の種々の場所での発見以来、広範に研究されてきた。アルファウイルス、特にシンドビスウイルスに基づく遺伝子形質導入はin vitroで良く研究されている(Straus et al, Microbiol. Rev., 58:491-562, 1994;Bredenbeek et al, J. Virol., 67:6439-6446, 1993;Ijima et al, Int. J. Cancer 80:110-118, 1999及びSawai et al, Biochim. Biophyr. Res. Comm. 248:315-323, 1998参照)。発現構成物の迅速操作、感染粒子の高力価系統の産生、非分裂細胞の感染、及び高レベルの発現といったアルファウイルスベクターの多くの特性のため、アルファウイルスベクターは、開発されている他のウイルス由来ベクター系の望ましい代替物となる(上記Strauss et al, 1994)。遺伝子療法のためのシンドビスウイルスの使用は開示されている(Wahlfors et al, Gene. Ther. 7:472-480, 2000及びLundstrom, J. Recep. Sig. Transduct. Res. 19(1-4):673-686, 1999)。
別の実施形態では、リポフェクションによるか又は他のトランスフェクション促進物質(ペプチド、ポリマー等)を用いてベクターを細胞に導入することができる。合成カチオン性脂質を用いて、マーカーをコードする遺伝子のin vivo及びin vitroトランスフェクション用のリポソームを調製できる(Feigner et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7417, 1987及びWang et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7851-7855, 1987)。核酸の伝達に有用な脂質化合物及び組成物はPCT公開第WO95/18863号及び第WO96/17823号、並びに米国特許第5,459,127号に開示されている。
裸のDNAプラスミドとしてベクターをin vivo導入することもできる。遺伝子療法用の裸のDNAベクターを技術上周知の方法、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞に導入することができる(例えば、Wilson, et al, J. Biol. Chem. 267:963-967, 1992;Williams et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-2730, 1991参照)。受容体媒介DNA送達アプローチを使用することもできる(Wu et al, J. Biol. Chem. 263:14621-14624, 1988)。米国特許第5,580,859号及び第5,589,466号は哺乳動物内におけるトランスフェクション促進物質のない外因性DNA配列の送達を開示している。最近、電気転移(electrotransfer)と称する、比較的低い電位の高効率in vivo DNA転移法が開示された(Vilquin et al, Gene Ther. 8:1097, 2001;Payen et al, Exp. Hematol. 29:295-300, 2001;Mir, Bioelectrochemistry 53:1-10, 2001;PCT公開第WO99/01157号、第WO99/01158号及び第WO99/01175号)。
該遺伝子療法アプローチに好適かつ本発明の抗-hIL-13Rα1抗体分子をコードする核酸を含む医薬組成物は、本発明の範囲に包含される。
【0045】
別の局面では、本発明の抗体分子を利用して、問題のサンプル内のIL-13Rα1を同定、単離、定量又はアンタゴナイズする方法を提供する。技術上周知の免疫化学アッセイ、例えばウェストブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降法、又は他の免疫化学アッセイ(例えば、Immunological Techniques Laboratory Manual, ed. Goers, J. 1993, Academic Press)の研究ツール又は種々の精製プロトコルとして抗体分子を利用することができる。抗体分子は、該抗体分子と関係がある活性の迅速な同定又は測定を容易にするための標識を有し得る。当業者は、上記プロトコルで有用な種々のタイプの検出可能標識(例えば、酵素、色素、或いは容易に検出できるか又は容易に検出できる何らかの活性/結果を生じさせる他の適切な分子)に精通している。
本発明のさらなる局面は、本明細書で開示する抗体分子又は医薬組成物及び使用説明書を含んでなるキットである。キットは、典型的に該キットの中身の意図した用途を示す標識を含むが、必要なわけではない。用語「標識」は、キット上に供給されるか又はキットと共に供給され、或いは別の方法でキットに随伴するいずれの記載資料、又は記録資料をも包含する。
下記非限定実施例によって、本発明をさらに詳述する。
【実施例1】
【0046】
(ヒトIL-13Rα1細胞外領域に基づいた組換えタンパク質の生成と精製)
本明細書で開示するプロトコルを利用して、安定してトランスフェクトされた(IL-13Rα1.ECRをコードするpEFBOS-S-FLAG(登録商標)ベクター)CHO細胞クローンによる馴化培養基から、ヒトIL-13Rα1の大部分の細胞外領域(配列番号81のアミノ酸数3〜317)を包含するN末端FLAG(登録商標)標識融合タンパク質を精製した。精製されたhIL-13Rα1.ECRタンパク質(配列番号82)を濃縮し、引き続きリン酸緩衝食塩水(PBS)、0.02%v/v TWEENTM20中で脱塩後、ろ過滅菌した。典型的回収量は、馴化培地1リットル当たり0.4mgのタンパク質だった。必要になるまでタンパク質を-80℃で貯蔵した。
【0047】
方法:ヒトIL-13Rα1の細胞外領域(ECR)をコードするcDNAをIL-3シグナル配列及びFLAG(登録商標)標識融合で組み込むpEFBOS-S-FLAG(登録商標)発現ベクターを、標準的手順を利用して、安定発現のためCHO細胞にトランスフェクトした。次に、CHO由来の馴化培地を10kDaのカットオフ膜を用いて限外ろ過で10倍濃縮した。濃縮培地をM2(抗-FLAG(登録商標))親和性クロマトグラフィーカラムに適用し、FLAG(登録商標)ペプチドで100μg/mlの濃度にて溶出した。溶出液を凍結乾燥で濃縮してから、カラム(2.6cm×40cm)に詰めたGF50 SEPHAROSETM樹脂用いて緩衝液をトリス(pH 8.0)に交換した。次に、緩衝液の交換されたフラクションをMONOTM Q 5/5カラムでアニオン交換クロマトグラフィーに供した。IL-13Rα1のタンパク質分解フラグメントが強く保持され、かつ全長 IL-13Rα1から分離され、より低い塩濃度で溶出された。プールしたフラクションとろ過滅菌した最終生成物をSDS-PAGE及びウェスタンブロット分析で評価した。次に、UV吸光度(ここで、1吸光度単位は約1mg/ml)を利用してサンプルを定量化した。
【実施例2】
【0048】
(ヒト抗-ヒトIL-13Rα1モノクロナール抗体を産生するハイブリドーマ細胞系の作製)
トランスジェニックマウスの免疫化:HCo7、HCo12及びHCo7xHCo12系統(HUMABTMマウス, Medarex, USA)由来トランスジェニックマウスを実施例1のhIL-13Rα1.ECRで免疫化した。最初の免疫化では、20〜50μgのhIL-13Rα1.ECRを完全フロイントアジュバント(CFA)内で乳化させて腹腔内(i.p.)経路で投与した。最低2回及び最高3回の引き続く腹腔内免疫化では、20〜50μgのhIL-13Rα1.ECRを不完全フロイントアジュバント(IFA)内で乳化させた。IFA内のhIL-13Rα1.ECRで第2及び第3の免疫化後、血清をサンプリングし(後眼窩神経叢)、本明細書で述べる通りにELISAでhIL-13Rα1.ECRに対するヒト抗体についてアッセイした。高応答マウス(血清力価が一般的に>1:3200)をハイブリドーマ作製用に選択した。場合によっては、この時点でハイブリドーマ作製に動物を使用せず、PBS中20〜50μgのhIL-13Rα1.ECRでさらに腹腔内免疫化した。3匹の動物から血清を再びELISAでhIL-13Rα1.ECRに対するヒト抗体についてアッセイし、高応答マウスをハイブリドーマ作製に使用した。ハイブリドーマ作製用に選択したマウスを脾臓細胞融合の3〜4日前に20-50μgのhIL-13Rα1.ECRで静脈内注射にて追加免疫した。
【0049】
抗原特異性ELISA:以下のように標準ELISA形式を利用して、プレート結合hIL-13Rα1.ECRに結合できるmAbについてマウス血清又はハイブリドーマ培養上清液(SNF)を評価した。平底96-ウェルMAXISORPTMプレート(NUNC, Invitro Technologies, #439454)を、PBSで希釈した2.5μg/mlのhIL-13Rα1.ECRを含有する50μlの溶液で一晩4℃で被覆した。プレートをPBSで2回洗浄後、PBS中2%w/vの脱脂乳(遮断緩衝液、200μl/ウェル)で1時間37℃で遮断してから、0.1%v/vのTWEENTM20を含有するPBS(洗浄緩衝液)でさらに2回洗浄した。1ウェル当たり5μlの試験ハイブリドーマSNF又はマウス血清を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。結合したヒトmAbを、1%w/vの脱脂粉乳と0.1%v/vのTWEENTM20を含有するPBSで1:1000希釈した抗-ヒトIgG HRP抱合二次試薬を用いて検出した。5μl/ウェルの抗-ヒトIgG HRP抱合二次試薬をプレートに室温で1時間加えた。次に、プレートを3回洗浄し、TMB基質で発現させて450nmでODを解読した。
【0050】
ハイブリドーマ作製:選択した高応答マウスを犠牲にして脾臓と関連リンパ節を収集した。標準手順に従い(Antibodies: A Laboratory Manual: Harlow and Lane. Cold Spring Harbor Laboratory Press)、脾臓及びリンパ節細胞と融合相手SP2/Oとの融合後、ハイブリドーマのHAT(ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン)(GIBCO-BRL, #21060-017)選択を行った。つまり、37℃までの水浴と37℃までの熱ブロックで遠心管を室温に調整した。ポリエチレングリコール(PEG)を37℃に温めた。融合が完了した後の細胞を培養するため培地を調製した。培地は、ハイブリドーマ無血清培地(HSFM)(GIBCO-BRL, #12045-084)と5%の超低IgG FBS(FBS)(GIBCO-BRL, #16250-078)、2mMのGLUTAMAX(登録商標)-1(GIBCO-BRL, #35050-061)、50U/50μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO-BRL, #15070-063)及び1×HATだった。培地を37℃に温めた。SP2/O細胞を収集し、生菌計数を行った。細胞は健康で、活発に分割し、対数期だった。生存能力は95%超えだった。融合前にSP2/OをHSFM/5%の超低IgG FBS内で培養し、融合前日に1:2又は1:3に分割した。融合の日、動物を犠牲にし、即座に脾臓(及び必要な場合リンパ節)を切除して、氷上の滅菌培地(ダルベッコ変性イーグル培地(GIBCO-BRL, #11995-073)又はDME)に入れた。脾臓から単一細胞懸濁液を調製し、DMEで2回洗浄し(7分間1800rpm)、2回目の洗浄液を温めた。SP2/O細胞を温DMEで3回洗浄して(1500rpm、7分)、血清の全痕跡量を除去した。1つのマウス脾臓についてSP2/O細胞(108)を用い、2回の別の融合を行った。SP2/O細胞と脾臓細胞を同じ管内に一緒にプールし、2100rpm(400g)で5分間遠心分離した。全てのDMEを除去し、結合ペレットだけを残した。DMEを37℃の熱ブロック内に置いた。1mlの温PEGを細胞ペレットに、該ペレットを穏やかに撹拌しながらピペットで1分間かけて滴加した。さらに1分撹拌を穏やかに続けた。1mlの温DMEを、撹拌しながら1分かけて滴加した。さらに1mlのDMEを1分で加えた。次に、20mlのDMEをゆっくり撹拌しながら5分にわたって加えた。これを5分間1500rpmで遠心分離した。全ての上清を除去し、細胞を上記培地に穏やかに再懸濁させた。1つのマウス脾臓を5つの微量定量プレートにHAT培地内0.2ml/ウェルで蒔いた。3〜4日毎に各ウェルから約0.1mlを除去し、かつ新鮮なHAT培地で置き換えることによってプレートを養った。日7〜10にハイブリドーマの成長についてウェルを点検した(日常スクリーニング、融合後10〜14日)。少なくとも2〜3日間培地が変化しなかったことを前もって確認するため、各ウェルから約100μlの上清を除去した。陽性のものを1ml又は2mlのウェルに移してから徐々に6-ウェルプレートに拡張した。この段階ではハイブリドーマはクローンでなかった。HAT培地内で14日後、ハイブリドーマをHT(GIBCO-BRL, #11067-030)(HSFM, 5%の超低IgGFBS, 10ng/ml rhIL-6(R&D Systems, #206-IL-050)及びHT)内で約2週間以上、次にHTなしで培養した。
【0051】
ハイブリドーマの培養:最初及び引き続く確認ELISAスクリーニングで陽性と出るハイブリドーマを限界希釈でクロー化した。単コロニーを含有する限界希釈ウェルをELISAでスクリーニングし、陽性ウェルを増殖用に選択した。100%のウェルが検査で陽性と出るまで限界希釈クローニングのさらなるラウンドを行った。
抗体精製用上清液(SNF)作製のため、ハイブリドーマをT175cm2フラスコ(FALCON, #3028)又はローラーボトル(900cm2)(CORNING, #430849)中で増殖させた。ハイブリドーマSNFの作製に用いた培地は、5%の超低IgG FBS、2mMのグルタミン及び50U/50μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンで補充したHSFMだった。ハイブリドーマを増殖させてコンフルエンスにし、90%を超える細胞が死亡後約5〜10日に遠心分離で収集した。STERICUPTMろ過装置(MILLIPORE, #SCGPU11RE)(0.45μm)を用いて全ての馴化培地をろ過後、mAb精製した。
精製mAbの作製:例えば、以下の試薬を用いて、標準的なタンパク質A親和性クロマトグラフィーを基礎とした戦略でSNFからモノクロナール抗体を精製した。HPLC:AKTA探索装置(AMERSHAM Biosciences, Sweden);カラム:タンパク質A(HITRAPTM-1ml, AMERSHAM Biosciences, Sweden);緩衝液A:PBS, 0.02% TWEENTM20;緩衝液B:0.1Mのグリシン pH 2.8;緩衝液C:2Mのトリス(pH 8.0)。
5容量の緩衝液Aで洗浄してカラムを調製した。馴化培地を専用カラム上に装填した。100容量の緩衝液Aで洗浄し、20ml(10×2ml)の緩衝液Bで溶出した。0.2mlの緩衝液を含有する管に回収した。緩衝液Aでカラムを洗浄して4℃で保存した。10Kカットオフ透析膜で脱塩してPBS、0.02% TWEENTM20に入れた。COOMASSIE(登録商標)ブルー染色を用いてSDS-PAGEでmAb純度を実証した。
1.34mg/mlの抗体に等価である1.0吸光度単位の免疫グロブリン吸光係数を用いて280nmにおける分光光度分析によって抗体を定量化した。
【実施例3】
【0052】
(抗-ヒトIl-13Rα1モノクロナール抗体2B6、4A10、6C11及び8B4の分析)
BIACOREを基礎とした研究:製造業者の説明書に従い、所定の固定化値、例えば1000RUにて標準的なNHS/EDC化学を利用して実施例1のヒトIL-13Rα1.ECR(40μg/ml、20mMの酢酸ナトリウム中、pH 4.2)をセンサーチップ(CM5, Biosensor, Sweden)に固定化した。hIL-13Rα1.ECR固定化後の残存活性エステルをエタノールアミン(1.0M)(pH 8.0)を用いてクエンチした。
固定化hIL-13Rα1.ECRへの抗体の結合の分析(1.4nM〜150nMの濃度範囲、2倍希釈)を二通り行った。生成されたセンサーグラムを二価リガンド結合モデルに適合させて同時に会合速度(ka)と解離速度(kd)を導き、かつセンサーグラムを用いて結合親和性を決定した(KD, Biaevaluationソフトウェア, BIACORETM, Sweden)。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)エオタキシンアッセイ:NHDF細胞をCambrex(#CC-2509)から購入し、提供された添加剤で補充したFGM培地(Cambrex CC3132)(以下、完全培地と称する)内で培養した。1週間に1回細胞を1:3又は1:5に継代し、使用前にIL-13に対する応答性についてモニターした。IL-13Rα1抗体に対する拮抗活性を評価するため20ng/mlのPMA(SIGMA P8139)と20μg/mlのポリミキシン(SIGMA #P4932)を含む完全培地中2×106/mlで細胞を再懸濁させ、96ウェル平底プレート(COSTAR #3595)に1×105細胞/ウェルで蒔いた。抗体滴定を細胞に加え、5%のCO2インキュベーター内30分間37℃でインキュベートした。組換えアカゲザルIL-13を10ng/mlの最終濃度で加え、プレートを5%のCO2インキュベーター内で一晩37℃にてインキュベートした。上清を除去し、以下のようにイムノアッセイでエオタキシン含量についてアッセイした。IMMULON(登録商標)-4プレート(DYNATECH #3855)をPBS(INVITROGEN, #14190-144)中の2μg/mlの抗-ヒトエオタキシン抗体(PHARMINGEN #555035)で一晩4℃で被覆した。プレートを遮断緩衝液で1時間室温にて遮断し、洗浄緩衝液で3回洗浄した。NHDF細胞からの上清を組換えヒトエオタキシン標準物質(R&D Systems, #320-EO)と共にプレートに加えた。サンプルを2時間室温で捕獲し、洗浄し、ビオチン化抗-ヒトエオタキシン検出抗体(PHARMINGEN, #555060)を200ng/mlで1時間室温にて加えた。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-ユウロピウム(Wallac, #1244-360)を100ng/mlの濃度で20分間室温で加えた。最終洗浄工程を行い、増強溶液(Wallac, #1244-105)を1時間室温で加えた。VICTOR(PERKIN-ELMER)プレートリーダーで時間遅延蛍光によってプレートを解読した。
結果:NHDFアッセイでIL-13Rα1媒介活性をアンタゴナイズする能力について抗体を調べた。ELISAアッセイで完全に良い結合を有するとして及びNHDアッセイでIL-13のアンタゴニストとして選択された抗体は2B6、4A10、6C11及び8B4だった。チップ結合hIL-13Rα1細胞外ドメインへの結合をBIACORETM分析で評価した。これらの各アッセイの結果を下表2に示す。
【0053】
表2

【0054】
抗体2B6、4A10、6C11及び8B4をコードするハイブリドーマ細胞系から単離したmRNAから可変重鎖及び軽鎖配列をクローン化した。6C11と8B4は同じ軽鎖可変部配列を有し、かつ重鎖可変部配列には3個のアミノ酸の相違しかなかった。
2B6、6C11及び8B4を発現するハイブリドーマを以下のようにATCCに寄託した:PTA-6932の下に2B6;PTA-6930の下に6C11;及びPTA-6934の下に8B4。
2B6、4A10、6C11及び8B4のCDR領域はVHCDR1を除き、カバット(Kabat)システム(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH公開番号91:3242, 1991)を用いて描写される。VHCDR1は、配列と構造の両定義(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917, 1987)、すなわちVH残基26〜35を包含するように拡張される。
【実施例4】
【0055】
(機能研究−STAT6リン酸化)
NHDF IL-13-誘導STAT6リン酸化アッセイ:NHDF細胞をCambrex(#CC-2509)から購入し、提供された添加剤で補充したFGM培地(Cambrex CC3132)内で培養した。96-ウェルV-底ポリエチレンPCRプレート(#1442-9596, USA scientific)内RPMI培地(#22400-071, INVITROGEN)内50μlの容量で2e6/mlにてNHDF細胞を蒔いた。抗-IL13R抗体を25μl容量で加えて4℃で30分インキュベートした。組換えアカゲザルIL-13を100ng/mlの最終濃度で加えた。PCR機内でプレートを20分間37℃に加温し、即座に、等容量の2×溶解緩衝液(100μl)を加えた。イムノアッセイでpSTAT6を測定した。IMMULON(登録商標)-4プレート(#3855, DYNATECH)を抗-ヒトホスホSTAT6(621995, BD Transduction Labs)でPBS中10μg/mlにて(#14290-144, INVITROGEN)(50μl/ウェル)一晩4℃で被覆した。遮断緩衝液(200μl/ウェル)を室温で1時間添加した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。5μl/ウェルのライセートを加えて室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。室温で1時間加えた遮断緩衝液(60μl/ウェル)中2μg/mlのビオチン抗-STAT6(621141, BD Transduction Labs 抱合20:1モル比)で検出が可能だった。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ストレプトアビジン-ユウロピウム(#1244-360, Wallac)(100μl/ウェル)を100ng/mlでユウロピウム緩衝液に室温で20分間添加した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。増強溶液(#12244-105, Wallac)(150μl/ウェル)を室温で1時間加え、VICTOR(PERKIN-ELMER)リーダーで時間遅延蛍光によってプレートを解読した。
結果:2B6のEC50を7.0μg/mlと決定した。8B4のEC50は平均して約2.9μg/mlだった。6C11のEC50を3.8μg/mlと決定した。
【実施例5】
【0056】
(機能研究−Tarc放出)
胸腺及び活性化-制御ケモカイン(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)(TARC)放出アッセイ(イヌ、アカゲザル又はヒト):ヘパリン化VACUTAINERTM管(VT6480, VWR)に血液を収集した。PBMCをLymphocyte Separation Media(ICN, 50494X)上で単離した。PBMC又は全血を96ウェル平底プレート(#2595, COSTAR)に蒔いた。抗体を加えてプレートを室温で30分間インキュベートした。組換えアカゲザルIL-13を10ng/mlの最終濃度で加え、加湿チャンバー内でCO2と共に37℃で24〜72時間プレートをインキュベートした。上清又は血漿を収集した(24時間ほどの早さでTARCを検出できるが、レベルは上昇し続ける)。TARCをイムノアッセイで測定した。IMMULON(登録商標)-4プレート(#3855, DYNATECH)を抗-ヒトTARC(R&D #AF364)でPBS中2μg/mlで被覆した(#14290-144, INVITROGEN)(50μl/ウェル)。プレートを4℃で一晩インキュベートした。遮断緩衝液(200μl/ウェル)を加えて室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。血漿又は上清を50μl/ウェル加え、室温で2時間インキュベートした(血漿希釈1:2)。2倍希釈した20ng/mlの組換えヒトTARCで始まる標準曲線が含まれた。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ビオチン抗-ヒトTARC(RDI, #RDI-TarcabrP1 ビオチンに抱合20:1モル比)を用いて遮断緩衝液(60μl/ウェル)中250ng/mlで室温にて1時間検出を行った。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ストレプトアビジン-ユウロピウム(#1244-360, Wallac)を100μl/ウェル、ユウロピウム緩衝液中100ng/mlで室温にて20分間加えた。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。増強溶液(#12244-105, Wallac)150μl/ウェルを加えて室温で1時間インキュベートした。時間遅延蛍光をVICTOR(PERKIN-ELMER)リーダーで解読した。
結果:8B4は、平均して約2.6μg/mlのIC50をもたらした。6C11は、2.50μg/mlのIC50をもたらした。
【実施例6】
【0057】
(8b4の最適化)
Fabファージ-ディスプレイベクター、pFab3d(図1)内で軽鎖構成物内の入れ物(stuffer)としてXhoI/ApaI部位でクローン化された真菌Glarea lozoyensisのPKS3遺伝子座由来の1929bpのXhoI/ApaIフラグメントを用いて8B4の可変重鎖及び可変軽鎖配列をクローン化してから、該可変重鎖及び軽鎖CDR3配列内でランダムに変異させた(各ライブラリーは108超えの機能多様性を有する)。結果として生じた変異体を、標準的なファージディスプレイプロトコルを用いて(例えば、Phage Display: A Laboratory Manual, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)、溶液中のビオチン化したヒト及び霊長類(アカゲザル及びカニクイザル(cynomologous monkey))IL-13Rα1に対してパニングした。ヒト及び霊長類の配列は文献に開示されている;例えば、受入番号:U62858、CAA70508、及びAAP78901を参照されたい。引き続く各ラウンドのパニングで標的の濃度を下げることによって(例えば、10nM、1nM、0.1nM、及び0.01nM)、パニングのストリンジェンシーを効率的に高めることによって、引き続くラウンドごとにどんどん高くなる親和性のためファージを濃縮した。ファージELISAを一次アッセイとして用いて、ファージ結合組換えFabの、ストレプトアビジンプレート上に固定化したビオチン化IL-13Rα1を認識する能力を決定した(例えば、上記のPhage Display: A Laboratory Manual参照)。二次スクリーニングツールとして、Myc-捕獲ELISA及び解離アッセイ(後述する一般プロトコル)を使用した。BIACORETM表面プラズモン共鳴及び/又はKINEXATM動態排除(kinetic exclusion)アッセイを行って、同定された抗体の結合キネティクスを特徴づけた。公開された製造業者のプロトコル及び常法で決定された結合キネティクスに準拠してこれらのアッセイを行った。哺乳動物細胞における発現、産生及び特徴づけのためサブクラIgG4の全長抗体に特異的抗体を変換させた(本明細書で述べる一般プロトコル)。
【0058】
Myc捕獲及び解離アッセイ:2つのアッセイを並行して行う。最初に(I)、ペリプレップ(periprep)から捕獲した抗体の量を測定した。これは、データが十分かつ等価な量の抗体を有するウェルのみから収集されたことを保証した。第二に(II)、プレート結合抗体由来のIL-13受容体の解離を測定した。
アッセイ(I):IMMULON(登録商標)-4プレート(DYNATECH #3855)をポリクロナール抗-ヒトκ抗体(Immunology Consultants Lab #GKBF-80A-K116)、PBS(#14290-144, INVITROGEN)中5μg/ml、50μl/ウェルを4℃で一晩インキュベートした。遮断緩衝液(200μl/ウェル)を加えてプレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。純粋ペリプレップを加え(50μl/ウェル)、室温で2時間放置した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。5μg/mlのヒトγグロブリン(Pierce #31879)を遮断緩衝液に加えて4℃で一晩放置してインキュベートした。朝と午後にプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、始めから終わりまで37℃でインキュベートしながら150μl/ウェルの遮断緩衝液を添加した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。結合した抗体を、遮断緩衝液(60μl/ウェル)中1μg/mlでビオチン抗-Myc(Upstate #16-212)を用いて1時間室温で検出した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ストレプトアビジン-ユウロピウム(Wallac, #1244-360)(100μl/ウェル、ユウロピウム緩衝液中100ng/mlで)を20分間室温で添加した。最終工程(3回)を行い、増強溶液(Wallac, #1244-105)、150μl/ウェルを1時間室温で添加した。VICTOR (PERKIN-ELMER)プレートリーダーで時間遅延蛍光によってプレートを解読した。
【0059】
アッセイ(II):IMMULON(登録商標)-4プレート(DYNATECH, #3855)をポリクロナール抗-ヒトκ抗体(Immunology Consultants Lab #GKBF-80A-K116)(PBS(#14290-144, INVITROGEN)(50μl/ウェル)中5μg/ml)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。遮断緩衝液(200μl/ウェル)を加えてプレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。純粋なペリプレップを加え(50μl/ウェル)、室温で2時間放置した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。6μl/mlの400ng/mlのFLAG(登録商標)-標識ヒトIL-13受容体を遮断緩衝液中50μg/mlのヒトγグロブリン(Pierce #31879)と共に加え、そのまま4℃で一晩インキュベートした。朝と午後にプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、始めから最後まで37℃でインキュベートしながら150μl/ウェルの遮断緩衝液を添加した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。室温で1時間遮断緩衝液(60μl/ウェル)中1μg/mlでビオチン抗-FLAG(登録商標)(IBI, #3081/6H2411)を用いて残存IL-13受容体を検出した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ストレプトアビジン-ユウロピウム(Wallac, #1244-360)(100μl/ウェル、ユウロピウム緩衝液中100ng/mlで)を室温で20分間加えた。最終洗浄工程(3回)を行い、増強溶液(Wallac, #1244-105)、150μl/ウェルを室温で1時間加えた。Victor(Perkin-Elmer)プレートリーダーで時間遅延蛍光によってプレートを解読した。
【0060】
全長IgGの変換:抗-IL-13Rα1モノクロナール抗体を、哺乳動物細胞内における発現及び産生のためのサブクラスIgG4の全抗体に変換させた。対応するFabベクターから前記モノクロナール抗体の可変部をPCR増幅し、該抗体配列の前にリーダー配列を用いてLONZA pCON抗体発現ベクター内でインフレームをクローン化した。このベクターでは、軽鎖及び重鎖用の全ての定常部のゲノムDNA配列が既に該ベクター内で操作された。発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターで操縦され、次いでSV40ポリアデニル化シグナルで操縦される。プラスミドは、プラスミド複製用細菌配列とアンピシリン選択マーカーを有し、かつ軽鎖用プラスミド、pCONKAPPAは、哺乳動物細胞内における選択マーカーとしてグルタミンシンセターゼ用のGS遺伝子を有する。可変部のインフレーム融合は、全抗体のより正確な発現を可能にする。意図的に、マウスの軽鎖及び重鎖由来のリーダー配列を抗体オープンリーディングフレームの前に含めた。ATG開始コドンの周囲にコンセンサスコザック配列(イタリック体のみ)をも含めてタンパク質発現レベルを高めた。順方向及び逆方向プライマーをPCR増幅用に設計した:軽鎖可変部順方向プライマー:5'-ATC GAA GCT TGC CGC CAC CAT GAG TGT GCC CAC TCA GGT CCT GGG GTT GCT GCT GCT GTG GCT TAC AGA TGC CAG ATG TGA AAT TGT GCT GAC TCA GTC T-3'(配列番号59)及び逆方向プライマー:5'-CCA CCG TAC GTT TGA TTT CCA C-3'(配列番号60);重鎖可変部順方向プライマー:5'-GCA CTG AAG CTT GCC GCC ACC ATG GAA TGG AGC TGG GTC TTT CTC TTC TTC CTG TCA GTA ACT ACA GGT GTC CAC TCC GAG GTG CAG GTG TTG GAG TCT-3'(配列番号61)及び逆方向プライマー:5'-AGA CCG ATG GGC CCT TGG TGG AGG CT-3'(配列番号62)。順方向プライマーのリーダー配列は太字かつ下線が付され、クローニング部位(軽鎖及び重鎖の両方の順方向プライマー中のHindIII、軽鎖の逆方向プライマー中のBsiwI、及び重鎖の逆方向プライマー中のApaI)は下線が付され、かつイタリック体で示される。
これらのプライマー対を利用し、8B4可変部配列を運ぶFabを用いて20サイクルで可変部をPCR増幅した。PCR産物を軽鎖用のHindIIIとBsiWI及び重鎖用のHindIIIとApaIで消化した。酵素消化されたPCRフラグメントをLonzaのベクター(軽鎖用のpCONKAPPA及び重鎖用のpCONGAMMA4)中でクローン化した。NotI及びSalIで消化されたpCONGAMMA4ベクターからのそれぞれの重鎖の発現カセット全体を、同一酵素で消化された対応する軽鎖ベクター中に挿入した。軽鎖と重鎖の両方のオープンリーディングフレーム全体をDNAシークエンシングで検証した。
抗体の発現、精製及び特徴づけ:結合した軽鎖及び重鎖プラスミドDNA又は対応する軽鎖及び重鎖プラスミドDNAの1:1比の混合物を293由来細胞系にトランスフェクトした。pCONベクターでは、INVITROGENからの293 FREESTYLETMサスペンション細胞系をそのトランスフェクション試薬と共に使用した。200mlの293 FREESTYLETM細胞では、トランスフェクションのため100μgの重鎖及び軽鎖の各プラスミドDNAと300μlのトランスフェクション試薬を用いた。トランスフェクトされた細胞を37℃/5%のCO2で7〜8日間インキュベート後、収集した。培地を収集し、ろ過し、低速MILLIPORE CENTRICONTM遠心分離(濃縮器, MilliPore)を利用して濃縮した。
結果:選択抗体についてKINEXA(登録商標)分析を行った。IgG4として特異的な全長抗体のデータを表3に示す。
【0061】
表3

【0062】
Fab形式の種々の抗体についてBIACORETM分析によって、チップ結合hIL-13Rα1細胞外ドメインへの結合を評価した。この分析の結果を表4に示す。
【0063】
表4

【0064】
このデータは、行った種々のスクリーニング及び分析を通じた同定、hIL-13Rα1に対して有意に親和性が増強した抗体を示す。
【実施例7】
【0065】
(機能研究−最適抗体のエオタキシン放出)
実施例3の方法により、8B4-IGg4のIC50及びIL-13での刺激によるNHDF細胞からのエオタキシン放出を阻害するための8B4由来の最適化抗体8B4-78MのIC50は、それぞれ約1μg/ml及び約0.1μg/mlだった。さらに、8B4-74C、8B4-36、8B4-82、及び8B4021CのIC50値は、それぞれ0.10μg/ml、0.17μg/ml、1.31μg/ml、及び0.75μg/mlだった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン13受容体α1に結合する単離された抗体であって、
(a)前記抗体の重鎖可変部が、以下:
(i)それぞれ配列番号2、3及び4;
(ii)それぞれ配列番号14、15及び16;又は
(iii)それぞれ配列番号22、15及び23
に示されるCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を含み;かつ
(b)前記抗体の軽鎖可変部が、以下:
(i)それぞれ配列番号6、7及び8;又は
(ii)それぞれ配列番号18、19及び20
に示されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、
前記抗体が、NHDF細胞からのインターロイキン13誘導ヒトインターロイキン13受容体α1媒介エオタキシン放出をアンタゴナイズする、単離された抗体。
【請求項2】
配列番号79に示される重鎖定常部をさらに含む、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項3】
請求項2記載の抗体及び医薬的に許容しうる担体を含んでなる組成物。
【請求項4】
ヒトインターロイキン13受容体α1に結合する単離された抗体であって、
(a)配列番号1、配列番号9、配列番号13、若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は該配列と少なくとも90%相同の配列を有する重鎖可変部;
(b)配列番号5若しくは配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は該配列と少なくとも90%相同の配列を有する軽鎖可変部;又は
(c)(a)と(b)の組合せ
を含んでなり、
前記抗体が、NHDF細胞からのインターロイキン13誘導ヒトインターロイキン13受容体α1媒介エオタキシン放出をアンタゴナイズする、単離された抗体。
【請求項5】
ATCC寄託番号PTA-6933として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生される、請求項4記載の単離された抗体。
【請求項6】
ATCC寄託番号PTA-6930として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生される、請求項記載4の単離された抗体。
【請求項7】
ATCC寄託番号PTA-6934として寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生される、請求項4記載の単離された抗体。
【請求項8】
配列番号79に示される重鎖定常部をさらに含む、請求項4記載の単離された抗体。
【請求項9】
前記重鎖可変部及び軽鎖可変部のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号1及び配列番号5に示される、請求項8記載の単離された抗体。
【請求項10】
前記重鎖可変部及び軽鎖可変部のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号13及び配列番号17に示される、請求項8記載の単離された抗体。
【請求項11】
前記重鎖可変部及び軽鎖可変部のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号21及び配列番号17に示される、請求項8記載の単離された抗体。
【請求項12】
請求項8記載の抗体及び医薬的に許容しうる担体を含んでなる組成物。
【請求項13】
インターロイキン13受容体α1媒介活性によって起こるか又は悪化する状態を改善する方法であって、治療が必要な対象に、有効量の請求項2記載の組成物を投与することによって、前記インターロイキン13受容体α1媒介活性によって起こるか又は悪化する状態を改善する方法。
【請求項14】
前記状態が、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、食道好酸球増加症、強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、線維症、炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、アナフィラキシー、又は癌である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記癌が、ホジキンリンパ腫、神経膠腫、又は腎癌である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項4記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項17】
請求項16記載の核酸を含んでなるベクター。
【請求項18】
請求項17記載のベクターを含んでなる単離された宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−507366(P2010−507366A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533554(P2009−533554)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081889
【国際公開番号】WO2008/049098
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509110644)メルク アンド カンパニー インコーポレイテッド (3)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【Fターム(参考)】