説明

インターロイキン−6とインターロイキン−6受容体との複合体に特異的な抗体

IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない結合性メンバー、特に抗体分子である。該結合性メンバーは、IL-6:IL-6Ra複合体ではなくIL-6またはIL-6Raと結合する結合性メンバーと比較して、IL-6の有益な作用ではなくIL-6の病理学的作用の阻害に関して高い特異性を有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-6の生物学的効果を阻害する、結合性メンバー、特に抗体分子に関する。該結合性メンバーは、IL-6と関連している疾患の治療に有用であり、該疾患には、炎症性疾患および腫瘍が含まれる。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン6(IL-6)は、種々の細胞タイプによって産生される26kDaの多面的な炎症性サイトカインであり、該細胞タイプには、刺激された線維芽細胞、単球および内皮細胞が含まれ、それらはin vivoでIL-6の主要な供給源となる。T細胞、B細胞、マクロファージ、ケラチノサイト、骨芽細胞およびいくつかの他の細胞等の細胞は刺激されるとIL-6を産生することができる。IL-6はまた、腫瘍セルラインおよび腫瘍細胞、例えば肺癌、前立腺癌、骨髄腫、副腎腫および心臓粘液腫由来の細胞から発現される(Kishimoto, T., Blood 74:1-10 (1989) およびSmith P.C. et al. Cytokine and Growth factor Reviews 12:33-40 (2001))。非炎症条件下では、脂肪組織からIL-6が分泌される(Wallenius et al., Nat. Med. 8:75 (2002))。
【0003】
IL-6発現の調節はそれを産生している細胞タイプに依存する。多発性骨髄腫細胞では、IL-6は正のフィードパックループ(細胞の増殖を刺激するとともにIL-6をさらに産生させる)で作用するようである(Kawano et al. Nature 332:83 (1988) およびVan Zaanen et al. J. Clin Invest. 98:1441-1448 (1996))。他の細胞タイプでは、IL-6は細胞の増殖および活性化を阻害するようであり、いくつかの炎症性サイトカインに対する負の調節因子として作用するかもしれない。
【0004】
細胞のシグナル伝達を開始させるために、IL-6は、膜貫通受容体、IL-6受容体アルファ(IL-6Rα、IL-6Ra、IL-6R、gp80またはCD126とも称される)に低親和性で結合し、複合体「IL-6:IL-6Ra」を形成する。この複合体はgp130シグナル受容体と結合する。すなわちIL-6Rαおよびgp130は一緒になって高親和性IL-6結合部位を形成し、各2コピーのIL-6、IL-6Raおよびgp130から構成される六量体の形成を導く(Somers, W., et al 1997. 1.9 EMBO J. 16:989-997)。IL-6Raの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインはシグナル伝達に必要とされない。IL-6Raは可溶性分泌型(sIL-6RまたはsIL-6Ra)としても存在するからである。可溶性受容体はIL-6Raメッセージのディファレンシャルスプライシングまたはタンパク質分解による分断によって生成される。sIL-6RはIL-6とのリガンド・レセプター複合体「IL-6:sIL-6Ra」を形成可能である。この複合体は細胞上のgp130と結合することができ、それによって該細胞がIL-6Raを発現しない場合でさえgp130陽性細胞での細胞のシグナル伝達を開始させる。ゆえに、sIL-6RはIL-6に応答性の細胞のレパートリーを広げる能力を有し、IL-6媒介性炎症において重要な役割を果たすと考えられる(Jones, S. A et al. 2001. FASEB J. 15:43-58)。
【0005】
ヒトIL-6リガンドの結晶構造は解明されている(Somers et al. EMBO J. (1997) 16:989-997)。ヒトIL-6Raの細胞外ドメインの結晶構造(Varghese et al. Proc Nat Acad Sci (2002) 99:15959-15964)、およびIL-6/IL-6R/gp130複合体の六量体構造(Boulanger et al Science 300:2101-2104 (2003))も解明されている。これらの構造は、突然変異誘発研究と組み合わされて、種々の受容体構成要素との複合体中のIL-6の機能的活性に関与するIL-6表面上の3つの部位を同定した。部位1の残基はIL-6とIL-6Raの間の相互作用に関与する。部位2の残基はIL-6とgp130サイトカイン結合ドメインの間の相互作用に関与する。IL-6の部位3中の残基は、六量体の複合体中の第二のgp130のIg様ドメインとの相互作用に関与する。六量体のIL-6/IL-6R/gp130複合体中でIL-6がIL-6の第二分子と相互作用するIL-6上の第四の部位も同定されている(Menziani et al (1997) Proteins: Structure Function and Genetics 29, 528)。
【0006】
ヒトIL-6Raの細胞外ドメインに関して同様の研究が行われている。この細胞外領域はD1(P26-V112)、D2(P113-Q215)、D3(P216-M311)の3つのドメインを有する。IgドメインであるD1はリガンド認識およびシグナル開始に必要でないことが示されているが、該ドメインは受容体内在化およびタンパク質安定性にかかわる。ドメインD2およびD3はフィブロネクチンIII型ドメインであり、サイトカイン結合ドメインを形成する。構造研究によって、この細胞外ドメイン上の3つの「クラスター」部位が同定されており(Varghese et al. Proc Nat Acad Sci (2002) 99:15959-15964)、クラスター1の残基は主にIL-6リガンド結合に関与する。クラスター2の残基はIL-6Ra二量体化インターフェースの部分を形成する。これらの残基はIL-6R二量体の形成を妨害し、IL-6結合ではなくIL-6シグナル伝達に対して重大な影響を及ぼす。IL-6Ra上のクラスター3の残基はgp130とのIL-6/IL6R複合体の形成に関与し、六量体のIL-6/IL-6Ra/gp130複合体を形成する。
【0007】
いくつかの抗IL-6リガンドモノクローナル抗体が単離されている。マッピング研究が実施され、上記のようにヒトIL-6表面の異なる結合部位にこれらが結合することを示している(Brakenhoff et al. J. Immunol. (1990) 145:561-568, Wijdenes et al. Mol Immunol. (1991) 28:1183-1191, Brakenhoff et al. (1994) JBC 269:86, Kalai et al. (1996) Eur J Biochem 238 714-723, Kalai et al. (1997) Blood 89:1319-1333)。
【0008】
また、いくつかの抗IL-6Raモノクローナル抗体が作製されていて、IL-6Ra上のそれらの結合部位がマップされている(Hirata et al. (1989) J. Immunol 143:2900-2906, Kalai et al. (1996) Eur J Biochem 238 714-723, Kalai et al. (1997) Blood 89:1319-1333, Kalai et al. (1997) Eur J. Biochem 249:690-700)。
【0009】
IL-6は、インターロイキン-11(IL-11)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、オンコスタチンM(OsM)、白血病抑制因子(LIF)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、およびカルジオトロフィン1(CT-1)が含まれるサイトカインファミリーに属する。このファミリーの各メンバーはそれら自身の特異的受容体アルファサブユニットを有し、共通の受容体サブユニットgp130と複合体を形成する。gp130遺伝子をターゲティング破壊すると胚致死となる(Ernst, M. and B. J. Jenkins. 2004. Trends Genet. 20:23-32 およびYoshida, K. et al 1996. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:407-411)。IL-6ファミリーのすべてのメンバーは肝細胞からの急性期タンパク質の発現を誘発することができる。
【0010】
IL-6シグナル伝達は、JAKファミリーキナーゼによるチロシンリン酸化、およびその後の2つの主要な細胞内シグナル伝達カスケードであるSHP2/ERK MAPKおよびSTAT1/3経路の活性化を伴い、NF-IL-6およびAP-1を介する遺伝子発現を生じる(Ernst, M. & B. J. Jenkins. 2004. Trends Genet. 20:23-32, およびHeinrich, P. C. et al. 2003. Biochem.J. 374:1-20)。
【0011】
IL-6は広範囲の生物学的機能を示し、それには造血、急性期応答の誘発、T細胞活性化、抗体分泌の刺激、感染に対する宿主防御、骨髄腫細胞および破骨細胞活性化が含まれる(Choy, E. 2004. Rheum.Dis.Clin.North Am. 30:405-415 およびJones SA et al. FASEB J 15:43-58 (2001))。IL-6の効果についてのレビューに関しては、Kishimoto Arthritis Research & Therapy 2006 8:Supp 2/S2を参照のこと。IL-6はT細胞によって生成されるB細胞分化因子として最初に同定された(Hirano T et al. Nature (1986) 324:73-76)が、その後、多数の細胞タイプの強力なアクチベーターおよび増殖促進因子として同定されている。それはB細胞の最終的成熟を誘導して抗体産生細胞にし、かつT細胞活性化および増殖に必須の補助因子である。研究では、IL-6が自己反応性Tリンパ球の活性化ならびに細胞傷害性T細胞の増殖および分化に関与することが示されている。IL-6は補因子として造血にかかわり、造血幹細胞の活性化および分化を生じさせることが示されている。急性期応答に対するIL-6の影響も十分に報告されている(レビューに関してはMoshage J Pathol. (1997) 181:257-266を参照のこと)。IL-6は種々の急性期タンパク質、例えばフィブリノーゲン、アルファ抗キモトリプシン、血清アミロイドAおよびC反応性タンパク質をヒト肝細胞から誘導する。急性期タンパク質は免疫応答および炎症を制御し、組織再構築に影響を及ぼす。IL-6の血清中レベルは、種々の病理においてC反応性タンパク質の血清中レベルと良く相関する。それはIL-6が急性期応答の原因的役割を果たすことを示唆する。IL-6は骨芽細胞によって生産されることも示されていて、破骨細胞活性化および骨吸収に関与するようである(Guillen, C. et al. 2004. Calcif.Tissue Int. 75:153-159, Tamura, T., et al . 1993. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11924-11928, Udagawa, N et al.. 1995. J.Exp.Med. 182:1461-1468)。逆説的に、IL-6が炎症性サイトカインとして役割を有するだけでなく、特定の状況および細胞タイプにおいて、他の炎症性サイトカインの効果を弱め、炎症の低減をもたらしうることが示唆されている。
【0012】
IL-6は種々の生物学的効果を有するため、IL-6の増加は種々の疾患徴候に重要なサイトカインとしてかかわることが示されている。循環IL-6のレベルは、関節リウマチ、キャッスルマン病、若年性特発性関節炎およびクローン病等の疾患において増加することが示されている(Nishimoto N, and Kishimoto T., Curr Op in Pharmaclogy (2004) 4:386-391)。このため、IL-6はこれらの炎症性徴候での病理の駆動にかかわることが示されている。さらにまた、種々の腫瘍タイプはIL-6によって刺激されることが示されていて、該腫瘍タイプには、黒色腫、腎細胞癌、カポジ肉腫、卵巣癌、リンパ腫および白血病、多発性骨髄腫、および前立腺癌が含まれる(Keller E.T. et al. Front Biosci;1:340-57 (1996))。さらにIL-6の循環レベルの増加がいくつかの癌で報告されている。いくつかの癌徴候では、IL-6レベルの増加が該疾患の予後指標として使用されている。
【0013】
疾患でのIL-6の役割に起因して、種々のマウスおよびキメラ抗ヒトIL-6モノクローナル抗体が治療薬候補として開発されている。
【0014】
US5856135は、マウスモノクローナル抗体「SK2」由来のIL-6に対する再構築ヒト抗体を報告している。
【0015】
JP-10-66582は、IL-6に対するキメラ抗体を報告している。該抗体はIL-6のヘリックスD領域(部位1)を認識すると示唆している。
【0016】
WO2004/020633(EP1536012)は、ファージディスプレイ技術を使用して単離されたIL-6に対するヒトscFv抗体分子を記載している。該scFvは13 nMの親和性を有すると報告されている。
【0017】
マウス抗IL-6抗体である、エルシリモマブ(elsilimomab)(B-E8としても知られる)は、多発性骨髄腫(Bataille et al. Blood (1995) 86:685-691, Lu et al. Blood (1995) 68:3123-3131)、腎細胞癌(Blay et al. Int J. Cancer 1997, 424-430)および関節リウマチ(Wendling et al. J. Rheumatol. (1993). 20:259-262)を有する患者を治療するために使用されていて、特定の診断マーカーの改善が3つの疾患全てでそれらを有する治療された患者において観察された。BE-8は、免疫芽球性または多形性大細胞リンパ腫を有するHIV陽性患者を治療するためにも使用されていて(Emilie et al. Blood 1994, 84:2472-2479)、患者のおよそ50%で全身症状(すなわち発熱、発汗、悪液質)が軽減し、リンパ腫の自発成長が抑制される。
【0018】
しかし、elsilimomabに対するヒト抗マウス抗体(HAMA)の産生に起因するこの抗体の急速なクリアランスおよびアナフィラキシー性反応の可能性のせいで、診療所でのその使用は制限されている(Brochier J et al. Int. J. of Immunopharm. 1995, 17:41-48)。
【0019】
一般に、マウスモノクローナル抗体の臨床使用は制限される。そのような抗体はHAMAを誘導することが多いからである。マウス免疫グロブリンのFc部分に対するHAMAが生成されることがよくあり、それは抗IL-6 mAbの急速なクリアランスおよびアナフィラキシー性反応の可能性を生じさせる(Brochier J et al. Int. J. of Immunopharm. 1995, 17:41-48)。また、ヒトでのマウス抗体の薬物動態はヒト抗体と異なり、半減期が短く、クリアランスの割合が高いことが知られている。
【0020】
ヒトでのマウス抗体の免疫原性を低減するため、マウス可変領域とヒト定常領域とを有するキメラ抗体が構築されている。キメラヒト・マウス抗IL-6抗体cCLB8(CNTO 328として知られる)は多発性骨髄腫を有する患者を治療するために使用されていて(van Zaanen et al. J. Clin Invest 1996, 98:1441-1448 およびvan Zaanen et al. Brit. Journal. Haematology 1998, 102:783)、大多数の患者で疾患安定化が観察されている。
【0021】
しかし、キメラ抗体はマウスMAbより低免疫原性ではあるが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が報告されている(Bell and Kamm, (2000) Aliment. Phamacol. Ther. 14, 501-514)。
【0022】
癌および炎症性疾患でのIL-6シグナル伝達を阻害する正の効果はまた、ヒト化抗IL-6Ra抗体トシリズマブ(Tocilizumab)(hPM-1、MRAおよびActemraとしても知られる)の使用によってさらに脚光を浴びている。これはマウス抗IL6Ra抗体PM-1のヒト化型である。この抗体での患者の治療はいくつかの疾患において有効であることが証明されていて、該疾患には、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、クローン病、骨髄増殖性疾患、キャッスルマン病および全身性エリテマトーデスが含まれる(Mihara et al. Expert Opinion on Biological Therapy. 2005 5:683-90)。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない単離された結合性メンバーを提供する。IL-6およびsIL-6Raによって形成された複合体(IL-6:sIL-6Ra)と結合するがIL-6またはsIL-6Ra単独と結合しない結合性メンバーが本明細書中で記載される。ゆえに、本発明の結合性メンバーは、IL-6Ra、例えばsIL-6Raと複合体を形成していないIL-6と結合しない。IL-6RaがIL-6と複合体を形成しない限り、本発明の結合性メンバーはIL-6Ra、例えばsIL-6Raとも結合しない。
【0024】
発明者らは、IL-6およびIL-6Raによって形成された複合体と結合できるがIL-6単独ともIL-6Ra単独とも結合できない結合性メンバーが、IL-6:IL-6Ra複合体ではなくIL-6および/またはIL-6Raと結合する結合性メンバーと比較して大きな利点を提供できることを認識した。実施例1に記載のように、発明者らは、リガンドと受容体(ここではIL-6とIL-6Ra)の間で形成された複合体に対する結合性メンバーを選択する新規方法を発明した。該方法では、該結合性メンバーはリガンド単独(ここではIL-6)とも受容体単独(ここではIL-6Ra)とも(すなわちリガンドおよび受容体が互いに結合していない場合には)結合しない。かくして発明者らはIL-6:IL-6Raと特異的に結合する抗体を初めて単離した。本明細書中の他の箇所で記載されるように、この複合体はin vivoでIL-6がその効果を発揮する機構に相当する。この複合体の結合および阻害(例えばgp130に対する複合体結合の阻害)はIL-6の生物学的活性を直接阻害する機構であり、IL-6またはその受容体単独のターゲティングよりも特異的な様式で阻害を達成する可能性を提供する。本発明の結合性メンバーは、例えば治療処置および診断分野において多数の有用な用途を有し、先行技術より優れた新規かつ固有の利点を提供する。その理由は、すべての既知の抗体はIL-6:IL-6Ra複合体ではなくIL-6またはIL-6Raと結合するからである。
【0025】
IL-6シグナル伝達の機構に基づき、IL-6が活性であるためには、IL-6Ra(可溶性または膜結合型)と複合体を形成する必要がある。IL-6の循環レベルは、疾患でのsIL-6Raの循環レベルよりかなり低い(Desgeorges et al. J. Rheumatol (1997) 24:1510; Yokota et al. Arth & Rheum (2005) 52:818)。IL-6はIL-6Rとナノモル濃度の親和性で結合するため、IL-6:IL-6R複合体の濃度は遊離IL-6および遊離IL-6Raの濃度のおよそ10分の1である。したがって、IL-6:IL-6Ra複合体、例えばIL-6:sIL-6Raをターゲティングする結合性メンバーは、かなり少ない量の中和標的しか有さず、ゆえに潜在的に、それを阻害するためには少ない結合性メンバー、すなわち低用量しか必要とされない。
【0026】
これは、患者への各投与量のために製造される薬物の量が少ない点において大きな利点を有する。また、抗IL-6治療薬の用量が少なければ、低用量によって皮下注射ならびに静脈内(i.v.)注射が容易になる点において大きな利点がある。皮下投与は投与量あたりに必要される抗体の量によって制限されることが当業者に周知である。これは、皮膚の一部位に注射できる容量によって皮下注射が制限されるせいである。1.2 ml以下の皮下注射容量が典型的に利用される。50 mg/mlより高濃度で皮下注射用に抗体を製剤化することはますます困難であるため、この経路を介する100 mgを超える用量は、通常、複数回の注射を必要とし、患者にとってより不快である。
【0027】
したがって、低用量の抗IL-6:IL-6Ra治療は、高用量を必要とする抗IL-6リガンドまたは抗IL-6Ra治療より優れた大きな利点を有する。
【0028】
また、低用量の抗IL-6:IL-6Ra治療薬があれば、かなり高濃度の全身性の遊離(複合体を形成していない)IL-6およびsIL-6Raと比較して、IL-6Raと複合体を形成しているすべての活性なIL-6を阻害するために、低い「負荷」用量の結合性メンバーしか必要とされない。
【0029】
可溶性IL-6Ra、およびIL-6:sIL-6Raは個体の体循環に存在することがあり、IL-6関連疾患を有する個体中に高レベルで存在することもある。IL-6の多数の病理学的効果、すなわち疾患でのその関与は可溶性IL-6:IL-6Ra複合体によって媒介されると考えられる。しかし、IL-6はまた、in vivoで、例えば感染に対する身体の応答を媒介する際に、有益な生物学的効果を有する。IL-6効果のうちの特定の有益な効果は、sIL-6Raを介してというよりも膜貫通IL-6Raとの結合を介して媒介される。IL-6:sIL-6Ra複合体は体循環において形成され、一方、膜貫通IL-6:IL-6Ra複合体は細胞表面で形成されかつ細胞内に急速に内在化されるため、本発明の結合性メンバーによる結合には膜貫通複合体よりもIL-6:sIL-6Raがより利用されうる。したがって、本発明の結合性メンバーは、IL-6の有益な効果よりはむしろIL-6の病理学的効果の阻害に関して、IL-6:IL-6Ra複合体ではなくIL-6またはIL-6Raと結合する結合性メンバーと比較して高い特異性を有する。
【0030】
任意の好適な方法を使用して、結合性メンバーがIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)、IL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)と結合するかどうかを決定することができる。結合性メンバーの結合を決定および定量する方法は当技術分野において公知であり、その例は本明細書中に詳細に記載されている。「材料および方法」セクションを参照のこと。実施例に記載の方法は、抗体分子を用いる使用に関して例示されているが、任意の結合性メンバーを用いる使用に適合させることができる。好適な方法は、(i)IL-6単独(IL-6Raと複合体を形成していない)、(ii)IL-6Ra単独、例えばsIL-6Ra(IL-6と複合体を形成していない)、および(iii)IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Ra、に対する結合性メンバーの結合を定量するステップを含む。本明細書中の他の箇所で記載されるように、アッセイにおいてIL-6:IL-6Raを代表するためにハイパー(hyper)IL-6を使用してよい。ゆえに、本発明の結合性メンバーはハイパーIL-6と結合するが、IL-6またはIL-6Ra単独とは結合しない。本明細書中で例示されるように、方法は、抗体分子の特異性を測定するELISAを含んでよい。実施例では、結合レベルをユーロピウムカウントとして測定したが、任意の好適なレポーター系または検出可能な標識を用いてよい。さらに、方法は、(iv)コントロール抗原(該コントロール抗原は結合性メンバーが結合しない抗原、すなわちネガティブコントロールである)に対する結合を定量するステップを含んでよい。結合性メンバーは、IL-6に対する結合レベルがコントロール抗原に対する結合レベルの少なくとも2.5倍であれば、IL-6と結合すると考えられる。結合性メンバーは、IL-6Rに対する結合レベルがコントロール抗原に対する結合レベルの少なくとも2.5倍であれば、IL-6Rと結合すると考えられる。結合性メンバーは、IL-6:IL-6Raに対する結合レベルがコントロール抗原に対する結合レベルの少なくとも2.5倍であれば、IL-6:IL-6Raと結合すると考えられる。
【0031】
結合性メンバーに関して定量された場合の(i)および(ii)に対する結合と比較された(iii)に対する結合レベルは、IL-6およびIL-6Ra単独と比較されたIL-6:IL-6Ra複合体に関する結合性メンバーの特異性の程度を示す。例えば、IL-6:IL-6Raに対する結合レベルは、IL-6およびIL-6Raそれぞれに対する結合レベルの少なくとも2.5倍である。該結合レベルは、少なくとも5、10、15、20、25、30、45、50、55、60、65、70、75、80、80、85、または少なくとも90倍高い。
【0032】
以下でより詳細に記載されるように、本発明の結合性メンバーは高い効力でIL-6:IL-6Raを中和することが示されている。中和とは、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)の生物学的活性の阻害を意味する。本発明の結合性メンバーはIL-6:IL-6Raの1種以上の活性を中和することができる。阻害対象の生物学的活性は典型的にはgp130に対するIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)の結合である。本発明にしたがって、gp130に対するIL-6:IL-6Raの結合を阻害することができる。
【0033】
生物学的活性の阻害は部分的または完全であってよい。結合性メンバーは、IL-6:IL-6Raの生物学的活性を、該結合性メンバーの不存在下での活性の100%、または少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%阻害する。
【0034】
結合性メンバーの中和効力を測定することができる。特に記載しない限り、効力は通常IC50値としてnM単位で表記される。機能的アッセイでは、IC50は、生物学的応答をその最大応答の50%低下させる結合性メンバーの濃度である。リガンド結合研究では、IC50は、受容体結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。ゆえに、gp130に対するIL-6:IL-6Ra複合体結合の阻害を測定するアッセイでは、IC50は、gp130に対する結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。IC50は、最大生物学的応答の%を結合性メンバー濃度の対数の関数としてプロットし、かつPrism(GraphPad)等のソフトウェアプログラムを使用してシグモイド関数をデータにフィッティングし、IC50値を得ることによって算出することができる。効力は、当業者に公知のおよび/または本明細書中に記載のもしくは本明細書中で言及される1種以上のアッセイを使用して決定または測定することができる。
【0035】
本明細書中に記載のアッセイでの結合性メンバーによるIL-6:IL-6Ra活性の中和は、該結合性メンバーがIL-6:IL-6Raと結合し、それを中和することを示す。結合性メンバーとIL-6:IL-6Raとの結合を測定するために使用できる他の方法には、ELISA、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、アフィニティークロマトグラフィーおよび生化学アッセイが含まれる。
【0036】
本発明の結合性メンバーはgp130に対するIL-6:IL-6Ra複合体の結合を阻害する。gp130に対するIL-6:IL-6Ra結合の阻害は、実施例の材料および方法セクションに記載のように、組換えヒトgp130 Fcに対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6結合の阻害に関するアッセイ、例えばHTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイで測定することができる。本明細書中に記載のHTRFアッセイのIC50値は終濃度1 nMの複合体および1 nMのgp130に関する値である。本明細書中の実施例に示されるように、本発明の結合性メンバーは、終濃度1 nMのIL-6:IL-6Ra複合体および終濃度1 nMのgp130を用いるHTRFアッセイにおいて多くとも700 nMの中和効力またはIC50を有し、例えば多くとも30、25、20、15、10、5、1.5、1、0.8または0.7 nMである(例えば表2を参照のこと)。
【0037】
本発明の結合性メンバーは抗体分子、例えばヒト抗体分子を含んでよい。該結合性メンバーは通常、抗体VHおよび/またはVLドメインを含む。結合性メンバーのVHおよびVLドメインもまた、本発明の一部分として提供される。各VHおよびVLドメインには、相補性決定領域(「CDR」)およびフレームワーク領域(「FR」)が含まれる。VHドメインはHCDRセットを含み、VLドメインはLCDRセットを含む。抗体分子は、VH CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VHドメインを含んでよい。それは、あるいはまたはさらに、VL CDR1、CDR2およびCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VLドメインを含んでよい。本発明の抗体VHおよびVLドメインならびにCDRの例は、本開示内容の一部を構成する添付の配列表に列挙されている通りである。
【0038】
本明細書中で開示されるすべてのVHおよびVL配列、CDR配列、CDRセットおよびHCDRセットおよびLCDRセットは、本発明の態様および実施形態である。本明細書中に記載のように、「CDRセット」はCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ゆえに、HCDRセットとは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を表し、LCDRセットとは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を表す。特に記載しない限り、「CDRセット」には、HCDRおよびLCDRが含まれる。典型的には、本発明の結合性メンバーはモノクローナル抗体である。
【0039】
本発明の結合性メンバーは、さらに以下で考察されるように、非抗体タンパク質骨格中に含まれる1つ以上のCDR、例えばCDRセットによって通常提供される、非抗体分子内の抗原結合部位を含んでよい。
【0040】
実施例でより詳細に記載されるように、発明者らは、抗体1〜5と番号付けされた5種の抗体分子を単離した。抗体1〜5のそれぞれの配列は添付の配列表に記載される。配列表では、各抗体に関して、以下の配列:VHドメインをコードするヌクレオチド配列;VHドメインのアミノ酸配列;VH CDR1アミノ酸配列、VH CDR2アミノ酸配列;VH CDR3アミノ酸配列;VLドメインをコードするヌクレオチド配列;VLドメインのアミノ酸配列;VL CDR1アミノ酸配列;VL CDR2アミノ酸配列;およびVL CDR3アミノ酸配列が、それぞれ、順番に示される。
【0041】
本発明の結合性メンバーは、本明細書中に記載の1つ以上のCDR、例えばCDR3を含んでよく、場合によりさらにCDR1およびCDR2を含んでCDRセットを構成してよい。該CDRまたはCDRセットは、抗体1〜5のいずれかのCDRまたはCDRセットであるか、または本明細書中に記載のその変異体であってよい。
【0042】
本発明は、抗体1〜5のいずれかのHCDR1、HCDR2および/もしくはHCDR3ならびに/または抗体1〜5のいずれかのLCDR1、LCDR2および/もしくはLCDR3、例えば抗体1〜5のいずれかのCDRセットを含む結合性メンバーを提供する。
【0043】
結合性メンバーは前記抗体の1つのVH CDRセットを含んでよい。場合により、それは、前記抗体の1つのVL CDRセットを含んでもよく、該VL CDRはVH CDRと同一または異なる抗体由来であってよい。
【0044】
抗体1〜5のいずれかのHCDRセットを含むVHドメイン、および/または抗体1〜5のいずれかのLCDRセットを含むVLドメインもまた、本発明によって提供される。
【0045】
典型的に、VHドメインをVLドメインと対にして抗体抗原結合部位を提供するが、さらに以下で考察されるように、VHまたはVLドメイン単独を使用して抗原と結合させることができる。抗体1のVHドメインを抗体1のVLドメインと対にして、抗体1のVHおよびVLドメインをともに含む抗体抗原結合部位を形成させることができる。本明細書中で開示される他のVHおよびVLドメインに関して、類似の実施形態が提供される。他の実施形態では、抗体1のVHを該抗体のVL以外のVLドメインと対にする。軽鎖の混合(promiscuity)は当技術分野において十分に確立されている。同様に、本明細書中で開示される他のVHおよびVLドメインに関して、類似の実施形態が本発明によって提供される。
【0046】
ゆえに、抗体1〜5のいずれかのVHを抗体1〜5のいずれかのVLと組み合わせてよい。
【0047】
結合性メンバーは、開示されているHおよび/またはL CDRセット内に1つ以上のアミノ酸突然変異を有する抗体1〜5のいずれかのHおよび/またはL CDRセットを含んでよい。該突然変異はアミノ酸置換、欠失または挿入であってよい。ゆえに、例えば、開示されているHおよび/またはL CDRセット内に1つ以上のアミノ酸置換が存在してもよい。例えば、Hおよび/またはL CDRセット内に12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2つまでの突然変異、例えば置換が存在しうる。例えば、HCDR3中に6、5、4、3または2つまでの突然変異、例えば置換が存在し、かつ/またはLCDR3中に6、5、4、3、または2つまでの突然変異、例えば置換が存在しうる。
【0048】
結合性メンバーは、抗体フレームワーク内に1つ以上のCDR、例えばCDRセットを有する抗体分子を含んでよい。例えば、抗体の1つ以上のCDRまたはCDRセットをフレームワーク(例えばヒトフレームワーク)内に移植して抗体分子を得ることができる。該フレームワーク領域はヒト生殖細胞系列遺伝子セグメント配列のフレームワーク領域であってよい。ゆえに、該フレームワークを生殖細胞系列化し、それによりフレームワーク内の1個以上の残基を、最も類似するヒト生殖細胞系列フレームワーク中の等価な位置の残基に適合するよう変化させてよい。本発明の結合性メンバーは、ヒト生殖細胞系列フレームワーク中のHCDRセットを含むVHドメインを有する、単離されたヒト抗体分子であってよい。通常、結合性メンバーはまた、例えばヒト生殖細胞系列フレームワーク中の、LCDRセットを含むVLドメインを有する。
【0049】
生殖細胞系列化VLドメインは、バーニア(Vernier)残基の位置で生殖細胞系列化してもしなくてもよいが、通常はそうしない。
【0050】
抗体1、2、3、4、および5のそれぞれのVLドメインのヌクレオチドおよびアミノ酸配列中に示される3'のggtコドン、および対応するグリシン残基を、これらの抗体の発現されたscFvおよびIgG配列中に含めた。該C末端グリシン残基は、配列番号7の残基109、配列番号17の残基114、配列番号27および47の残基112および配列番号37の残基113である。カバット(Kabat)ナンバリングを使用すると、これらの位置はカバット残基108に相当する。この残基およびそのコーディングトリプレットggtの起源を以下で説明する。
【0051】
該IgGの軽鎖を発現するために、VLドメインをコードする第一エキソン、CLドメインをコードする第二エキソン、および第一エキソンと第二エキソンを分離するイントロンを含む抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を用意した。通常条件下で、該イントロンは細胞のmRNAプロセシング機構によってスプライシング除去され、第一エキソンの3'末端と第二エキソンの5'末端が連結される。そこで、該ヌクレオチド配列を有するDNAをRNAとして発現させて、第一および第二エキソンをスプライシングして一緒にした。スプライシングされたRNAの翻訳によってVLドメインおよびCLドメインを含むポリペプチドが得られる。スプライシング後、C末端グリシン(カバット残基108に相当)はVLドメインフレームワーク4配列の最後の塩基(g)およびCLドメインの最初の2塩基(gt)によってコードされる。カバット残基108のグリシン残基は該抗体分子のVLドメインのC末端残基であるとみなされうる。
【0052】
本発明の結合性メンバーは、(i)IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raと結合し、かつ(ii)本明細書中に開示されている結合性メンバー、VHおよび/またはVLドメイン、CDR、例えばHCDR3、および/またはCDRセットを含む任意の結合性メンバーと、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する結合に関して競合する結合性メンバーであってよい。
【0053】
結合性メンバー間の競合は、例えばELISAを使用して、かつ/またはタグが付いていない1種以上の他の結合性メンバーの存在下で検出できる特定のレポーター分子を1結合性メンバーにタグ付けすることによって、in vitroで容易にアッセイすることができ、同一エピトープまたは重複するエピトープに結合する結合性メンバーの同定が可能になる。そのような方法は当業者に自明であり、本明細書中にさらに詳細に記載される。ゆえに、本発明の別の態様は、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する結合に関して、抗体分子、例えば特に抗体1〜5のいずれかのVHおよび/またはVLドメイン、CDR、例えばHCDR3またはCDRセットを含む抗体分子と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む結合性メンバーを提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、本発明の結合性メンバー、VHドメインおよび/またはVLドメインをコードする配列を含む単離された核酸、および本発明の結合性メンバー、VHドメインおよび/またはVLドメインの製造方法であって、該結合性メンバー、VHドメインおよび/またはVLドメインの生成を生じさせる条件下で該核酸を発現させるステップ、およびそれを回収するステップを含む方法を提供する。
【0055】
本発明の別の態様は、本明細書中で開示されるVH CDRまたはVL CDR配列をコードする、通常は単離されている、核酸を提供する。
【0056】
別の態様は、本発明の核酸を含有するかまたは本発明の核酸で形質転換されている宿主細胞を提供する。
【0057】
本発明の別の態様は、本発明の結合性メンバーを含有する組成物、およびIL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Ra複合体と結合し、それを阻害し、かつ/または中和する方法でのその使用を提供する。該方法には、治療法によってヒトまたは動物体を治療する方法が含まれる。
【0058】
本発明の結合性メンバーは、本明細書中の他の箇所で詳細に記載されるように、IL-6と関連している疾患の治療に有用である。
【0059】
本発明の結合性メンバーは、ヒトまたは動物体の(例えばヒト患者の)疾患または障害の治療または診断方法、例えば治療(予防処置を含んでよい)方法であって、本発明の結合性メンバーの有効量を該患者に投与するステップを含む方法において使用することができる。本発明にしたがって治療可能な状態には、本明細書中の他の箇所で詳細に考察されるように、IL-6が役割を果たす任意の状態が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の前記態様および他の態様を以下にさらに詳細に記載する。
【0061】
用語
ここで、本明細書中で使用される「および/または」は、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的開示として解釈され、他方を含んでも含まなくてもよいものとすることを指摘すると都合がよい。例えば「Aおよび/またはB」は、ちょうど本明細書中にそれぞれが個別に記載されているように、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的開示であると解釈されるものとする。
【0062】
IL-6およびIL-6受容体
IL-6とはインターロイキン6である。
【0063】
ヒトIL-6の全長アミノ酸配列は配列番号51である。この配列はin vivoで切断されてN末端リーダーペプチドが除去される。IL-6の成熟配列は配列番号59である。該成熟配列はin vivo循環IL-6であり、それは本明細書中に記載の治療およびin vivo診断用途の標的抗原である。したがって、本明細書中で言及されるIL-6は通常、文脈上特に指定されない限り、成熟ヒトIL-6である。
【0064】
IL-6受容体a、IL-6Raは、インターロイキン6の受容体である。IL-6RaはIL-6Rα、IL-6Ra、IL-6RおよびCD126としても知られる。IL-6Raはin vivoで膜貫通型および可溶性型で存在する。IL-6Raに対する言及は、文脈上特に指定されない限り、膜貫通IL-6Raおよび/または可溶性IL-6Raである。
【0065】
ヒト可溶性IL-6Ra(sIL-6R、sIL-6Ra)のアミノ酸配列は配列番号51である。ヒト膜貫通IL-6Raのアミノ酸配列は配列番号57である。
【0066】
IL-6はIL-6Raと結合して複合体IL-6:IL-6Raを形成する。IL-6:IL-6Raは本明細書中で「抗原」と称されることもある。該複合体は可溶性(sIL-6Raの場合)または膜結合型(膜貫通IL-6Raの場合)であってよい。IL-6Raが可溶性型である場合、複合体はIL-6:sIL-6Raと示される。IL-6:IL-6Raへの言及には、文脈上特に指定されない限り、膜貫通または可溶性IL-6Raと複合体を形成したIL-6が含まれる。
【0067】
本明細書中に記載される本発明の態様はsIL-6RaおよびIL-6:sIL-Raに関して実施例で詳細に説明される。IL-6:sIL-6Raは、例えばin vivo適用の、目的の標的抗原である。その理由は、この複合体が体循環において本発明の結合性メンバーによって結合されるからである。しかし、本発明の結合性メンバーは、さらにまたは代わりに、IL-6と膜貫通IL-6Raによって形成された複合体を結合してもよい。該複合体もまた、in vivo適用の目的の標的抗原である。
【0068】
ハイパーIL-6はIL-6がリンカーペプチドを介してsIL-6Raに共有結合によって連結されている融合タンパク質である。実施例で使用されるハイパーIL-6の配列は配列番号55である。
【0069】
IL-6、IL-6Ra(例えばsIL-6Ra)およびハイパーIL-6は、例えば本明細書中に記載のアッセイで使用するための検出可能な標識、例えばHIS FLAGにコンジュゲートさせることができる。例えば、HIS FLAG配列にコンジュゲートさせたIL-6、IL-6Ra(例えばsIL-6Ra)またはハイパーIL-6を含む融合タンパク質を使用してよい。HIS FLAGタグ付きヒトIL-6の配列は配列番号52である。HIS FLAGタグ付きヒトsIL-6Raの配列は配列番号53である。HIS FLAGタグ付きハイパーIL-6の配列は配列番号56である。
【0070】
gp130
gp130はIL-6:IL-6Ra複合体の受容体である。gp130のクローニングおよび特徴付けはHibi et al, Cell 63:1149-1157 1990に報告されている。ヒトgp130の配列は配列番号58である。
【0071】
結合性メンバー
この用語は、互いに結合する分子ペアの1メンバーを説明する。該結合ペアのメンバーは天然由来であってもよく、全体的または部分的に合成によって生成してもよい。該分子ペアの1メンバーはその表面上の領域または空洞を有し、該領域または空洞が、分子ペアの他方のメンバーの特定の空間的および極性構成と結合し、したがってそれに相補的である。結合ペアのタイプの例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質である。本発明は抗原-抗体タイプの反応に関係している。
【0072】
結合性メンバーは通常、抗原結合部位を有する分子を含む。例えば、結合性メンバーは抗体分子または、抗原結合部位を含む非抗体タンパク質である。
【0073】
抗原結合部位は、非抗体タンパク質骨格(scaffold)上、例えばフィブロネクチンまたはシトクロムB等上でのCDRの配置を用いて[1, 2, 3]、または所望の標的に対する結合特異性を付与するようタンパク質骨格内ループのアミノ酸残基をランダマイズするかもしくは突然変異させることによって提供してよい。タンパク質中の新規結合部位を加工操作するための骨格はNygren et al. [3]によって詳細にレビューされている。擬似抗体(antibody mimics)のためのタンパク質骨格はWO/0034784(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に開示されている。該文献で、その発明者らは、少なくとも1つのランダマイズされたループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(擬似抗体)を報告している。1つ以上のCDR、例えばHCDRセットを移植するために好適な骨格は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーによって提供することができる。該骨格はヒトまたは非ヒトタンパク質であってよい。非抗体タンパク質骨格の利点は、それが、少なくともいくつかの抗体分子より小さくかつ/または製造が容易な骨格分子中に抗原結合部位を提供することである。結合性メンバーのサイズが小さいと、有用な生理学的特性、例えば細胞に入る能力、組織に深く浸透する能力または他の構造内の標的に到達する能力、または標的抗原のタンパク質空洞内に結合する能力がもたらされる。非抗体タンパク質骨格中の抗原結合部位の使用はWess, 2004 [4]にレビューされている。安定な主鎖および1つ以上の可変ループを有し、該ループまたは複数のループのアミノ酸配列が、標的抗原と結合する抗原結合部位を創出するよう特異的にまたはランダムに突然変異させられているタンパク質が典型的である。そのようなタンパク質には、S. aureus由来のタンパク質AのIgG結合ドメイン、トランスフェリン、テトラネクチン(tetranectin)、フィブロネクチン(例えば第10フィブロネクチンIII型ドメイン)、リポカリン(lipocalins)ならびにガンマクリスタリン(gamma-crystalline)および他のAffilinTM骨格(Scil Proteins)が含まれる。他のアプローチの例には、分子内ジスルフィド結合を有するサイクロチド-小タンパク質に基づく合成「ミクロボディ(Microbodies)」、Microproteins(VersabodiesTM, Amunix)およびアンキリン反復タンパク質(DARPins, Molecular Partners)が含まれる。
【0074】
抗体配列および/または抗原結合部位に加えて、本発明の結合性メンバーは、例えば折り畳まれたドメイン等のペプチドまたはポリペプチドを形成するかまたは抗原に結合する能力に加えて別の機能的特徴を分子に付与する他のアミノ酸を含んでよい。本発明の結合性メンバーは検出可能な標識を保持してよく、毒素またはターゲティング部分または酵素に(例えばペプチジル結合またはリンカーを介して)コンジュゲートしてもよい。例えば、結合性メンバーは触媒部位(例えば酵素ドメイン中の触媒部位)ならびに抗原結合部位を含んでよく、該抗原結合部位は抗原と結合し、ゆえに触媒部位を抗原に標的化する。該触媒部位は例えば切断によって抗原の生物学的機能を阻害する。
【0075】
上記のように、CDRを非抗体骨格によって担持させることができるが、本発明のCDRまたはCDRセットを担持するための構造は、概して、抗体重鎖もしくは軽鎖配列またはその重要部分である。その場合、CDRまたはCDRセットは、再配置された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRセットに相当する位置に位置する。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabat, et al., 1987 [5]、およびその改訂版を参照することによって決定することができる。このデータベースに問い合わせるために、いくつかの学術的および商業的オンラインリソースが利用可能である。例えば、参考文献[6]および関連オンラインリソース(現在のウェブアドレスhttp://www.bioinf.org.uk/abs/simkab.html)を参照のこと。
【0076】
CDR領域またはCDRとは、Kabat et al. 1991 [7]、および改訂版によって定義される免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域を示すものとする。抗体は典型的に3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含有する。用語「CDRまたは複数のCDR」は、場合により、認識対象の抗原またはエピトープに対する抗体の親和性による結合を担うアミノ酸残基の大部分を含有する前記領域の1つまたは前記領域の数個、さらにはその全体を示すために本明細書中で使用される。
【0077】
6つの短いCDR配列のうち、重鎖の第3のCDR(HCDR3)は高いサイズ可変性(それを生じさせる遺伝子の配置機構に本質的に起因する大きな多様性)を有する。それは短ければ2アミノ酸でありうるが、既知の最長サイズは26である。CDRの長さは、具体的な基礎となるフレームワークによって収容できる長さにしたがって変動してもよい。機能上、HCDR3は抗体の特異性の決定に部分的に役割を果たす[参考文献8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15]。
【0078】
抗体分子
この用語は、天然であるかまたは部分的もしくは完全に合成によって生成されるかにかかわらず、免疫グロブリンを説明する。この用語はまた、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質を含む。ここで、本発明は天然の形態での抗体に関するものではなく、すなわちそれらはその天然環境中に存在しないが、それらは天然供給源から単離可能であったか、または精製によって取得可能であったか、または遺伝子組換え、もしくは化学合成によって取得可能であったものであり、かつ後に記載されるようにそれらは非天然アミノ酸を含有できることが理解されなければならない。抗体抗原結合部位を含む抗体断片には、非限定的に、Fab、Fab'、Fab'-SH、scFv、Fv、dAbおよびFd等の分子が含まれる。1つ以上の抗体抗原結合部位を含む種々の他の抗体分子が作製されていて、それには、例えばFab2、Fab3、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)およびミニボディー(minibodies)が含まれる。抗体分子およびそれらの構築および使用のための方法は[16]に記載されている。
【0079】
モノクローナルおよび他の抗体を使用し、かつ組換えDNA技術の技術を使用して標的抗原と結合する他の抗体またはキメラ分子を製造することが可能である。そのような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域、またはCDRをコードするDNAを異なる免疫グロブリンの定常領域、または定常領域プラスフレームワーク領域に導入することを必要とするかもしれない。例えばEP-A-184187、GB 2188638AまたはEP-A-239400、および大多数の以後の文献を参照のこと。ハイブリドーマまたは、抗体を産生する他の細胞を遺伝子突然変異または他の変化に供してもよく、それらは、産生される抗体の結合特異性を変化させてもさせなくてもよい。
【0080】
抗体は様々な方法で改変できるので、用語「抗体分子」は、必要な特異性を示す抗体抗原結合部位を有し、かつ/または抗原と結合する、任意の結合性メンバーまたは物質を含むと解釈されるべきであろう。ゆえに、この用語は抗体の断片および誘導体を含み、それには、天然であるか完全または部分的に合成されたものであるかにかからわず、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドが含まれる。したがって、別のポリペプチド(例えば別の種由来または別の抗体クラスまたはサブクラスに属するポリペプチド)に融合された抗体抗原結合部位または等価物を含むキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP-A-0120694およびEP-A-0125023、および大多数の以後の文献に記載されている。
【0081】
抗体工学分野で利用可能なさらなる技術によってヒト抗体およびヒト化抗体を単離することが可能になる。例えば、ヒトハイブリドーマはKontermann & Dubel [17]によって記載されるように作製することができる。結合性メンバーの作製のための別の既存技術であるファージディスプレイは、多数の刊行物で詳細に記載されている。該刊行物は、例えばKontermann & Dubel [17]およびWO92/01047(さらに以下で考察される)、および米国特許US5969108、US5565332、US5733743、US5858657、US5871907、US5872215、US5885793、US5962255、US6140471、US6172197、US6225447、US6291650、US6492160、US6521404である。
【0082】
マウス抗体遺伝子が不活性化され、かつヒト抗体遺伝子で機能的に置換されつつ、マウス免疫系のインタクトの他の構成要素を残しているトランスジェニックマウスを、ヒト抗体の単離に使用することができる[18]。ヒト化抗体は、当技術分野において公知の技術を使用して生成することができ、該技術は、例えばWO91/09967、US 5,585,089、EP592106、US 565,332およびWO93/17105に開示されている技術等である。さらに、WO2004/006955は、非ヒト抗体の可変領域のCDR配列の標準的CDR構造タイプを、ヒト抗体配列、例えば生殖細胞系抗体遺伝子セグメント、のライブラリーから得られる対応するCDRの標準的CDR構造タイプと比較することによる、ヒト抗体遺伝子由来の可変領域フレームワーク配列の選択に基づいて、抗体をヒト化するための方法を記載している。非ヒトCDRと類似の標準的CDR構造タイプを有するヒト抗体可変領域は、ヒトフレームワーク配列の選択元のメンバーヒト抗体配列のサブセットを構成する。該サブセットメンバーをヒトおよび非ヒトCDR配列間のアミノ酸類似性に基づいてさらに分類してよい。WO2004/006955の方法では、選択したサブセットメンバーヒトフレームワークを使用して、ヒトCDR配列を非ヒトCDR対応物で機能的に置換するキメラ抗体を構築するためのフレームワーク配列を提供するために最高位にランキングされたヒト配列を選択し、それによって、非ヒト抗体とヒト抗体との間のフレームワーク配列を比較する必要なく、高親和性でかつ低免疫原性のヒト化抗体を提供する。該方法によって作製されたキメラ抗体もまた開示される。
【0083】
合成抗体分子は、例えばKnappik et al. [19]またはKrebs et al. [20]によって記載されるように、合成されかつ好適な発現ベクター内に組み立てられたオリゴヌクレオチドを用いて作製された遺伝子から発現させることによって作製してよい。
【0084】
全抗体の断片は抗原と結合する機能を達成できることが示されている。結合性断片の例は(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)dAb断片[21, 22, 23](VHまたはVLドメインからなる);(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab')2断片(2つの連結されたFab断片を含む二価断片)(vii)一本鎖Fv分子(scFv)(VHドメインとVLドメインが、2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結されている)[24, 25];(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)および(ix)遺伝子融合によって構築された「ダイアボディ」、多価または多重特異性断片(WO94/13804; [26])である。VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋を組み込むことによってFv、scFvまたはダイアボディ分子を安定化してもよい[27]。CH3ドメインに連結されたscFvを含むミニボディを作製してもよい[28]。結合性断片の他の例はFab'およびFab'-SHである。Fab'は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に少数の残基が付加されていることによってFab断片と異なり、抗体ヒンジ領域由来の1個以上のシステインを含む。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(群)が遊離のチオール基を保持するFab'断片である。
【0085】
Qui et al. [29]は、フレームワーク領域によって連結されている2つのCDRしか含有しない抗体分子を報告した。VHまたはVLドメイン由来のCDR3は、他のドメインのCDR1またはCDR2ループに連結された。選択CDR1またはCDR2のC末端とCDR3のN末端がFR領域を介して連結された。Qui et al.は最少の疎水性部分しか有さないFR領域を選択した。試験抗体の最良の組み合わせは、VH FR2によってVH CDR3に連結されたVL CDR1であることが見出された(VHCDR1-VHFR2-VLCDR3)。約3 kDaの分子量であるこれらの抗体分子は、完全免疫グロブリン(約150 kDa)またはscFv(約28 kDa)と比較して改善された組織浸透性の点で利点を提供する。
【0086】
本発明の抗体断片は、酵素、例えばペプシンまたはパパインによる消化等の方法および/または化学的還元によるジスルフィド架橋の切断によって抗体分子1〜5のいずれかから出発して取得することができる。
【0087】
別の様式では、本発明に含まれる抗体断片は、やはり当業者に周知の遺伝子組換え技術または例えばApplied Biosystems等の企業によって供給されるような自動ペプチドシンセサイザーを用いるペプチド合成、または核酸合成および発現によって取得することができる。
【0088】
本発明の機能的抗体断片には、化学修飾、特にペグ化、またはリポソームへの取り込みによって半減期が長くされた任意の機能的断片が含まれる。
【0089】
dAb(ドメイン抗体)は抗体の単量体の抗原結合性小断片であり、すなわち抗体重鎖または軽鎖の可変領域である[23]。VH dAbはラクダ科動物(例えばラクダ、ラマ)に天然に存在し、ラクダ科動物を標的抗原で免疫化し、抗原特異的B細胞を単離し、個々のB細胞からdAb遺伝子を直接クローニングすることによって生成することができる。dAbはまた、細胞培養で生成可能である。その小さいサイズ、良好な溶解度および温度安定性によって、それらは特に生理学的に有用であり、かつ選択および親和性成熟に好適である。ラクダ科動物のVH dAbは「nanobodiesTM」の名称で治療用途に開発中である。本発明の結合性メンバーは、実質的に本明細書中に記載されているVHもしくはVLドメイン、または実質的に本明細書中に記載されているCDRセットを含むVHもしくはVLドメインを含むdAbであってよい。
【0090】
二重特異性または二機能性抗体は、2つの異なる可変領域が同一分子中で組み合わされている第二世代のモノクローナル抗体を構成する[30]。その有用性は、新規エフェクター機能を補充するかまたは腫瘍細胞表面のいくつかの分子を標的にするその能力から、診断分野および治療分野でともに実証されている。二重特異性抗体が使用される場合、これらは慣用の二重特異性抗体であってよい。該二重特異性抗体は種々の方法で製造することができ[31]、例えば化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから製造するか、または上述の二重特異性抗体断片のいずれかであってよい。これらの抗体は、化学的方法[32, 33]または身体的方法(somatic methods)[34, 35]によって取得することができるが、同様かつ優先的に、ヘテロ二量体化を強制することが可能で、ゆえに目的の抗体の精製プロセスを容易にする遺伝子工学技術によって取得することができる[36]。二重特異性抗体の例には、BiTETM技術の二重特異性抗体が含まれる。該抗体では、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインを使用し、かつ短いフレキシブルペプチドを介して直接連結することができる。これは短い単一ポリペプチド鎖上で2つの抗体を組み合わせる。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインのみを使用して、Fc領域を用いずに構築することができ、潜在的に抗イディオタイプ反応の影響を低減することができる。
【0091】
二重特異性抗体は、完全IgGとして、二重特異性Fab'2として、Fab'PEGとして、ダイアボディとして、または二重特異性scFvとして構築することができる。さらに、当技術分野において公知の慣用の方法を使用して2つの二重特異性抗体を連結し、四価抗体を形成させることができる。
【0092】
二重特異性完全抗体とは対照的に二重特異性ダイアボディが特に有用であることもある。その理由は、容易に構築することができ、かつE.coliで発現させることができるからである。適切な結合特異性のダイアボディ(および多数の他のポリペプチド、例えば抗体断片)は、ファージディスプレイ(WO94/13804)を使用してライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが一定に保たれて、例えばIL-6:IL-6Raに対する特異性を有する場合、他方のアームが変動するライブラリーを作製することができ、適切な特異性の抗体を選択することができる。Ridgeway et al., 1996 [37]に記載されるような代替の操作方法によって二重特異性完全抗体を作製してもよい。
【0093】
当技術分野においてIL-6:IL-6Raに対する抗体を取得するための種々の方法が利用可能である。
【0094】
抗体は特にヒト、マウス、キメラまたはヒト化起源のモノクローナル抗体であってよく、それは当業者に周知の標準的方法にしたがって取得することができる。
【0095】
一般に、特にマウス起源のモノクローナル抗体またはその機能的断片の製造では、特にマニュアル「Antibodies」[38]に記載の技術またはKoehlerおよびMilstein [39]に記載のハイブリドーマからの製造技術を参照することが可能である。
【0096】
モノクローナル抗体は、例えばハイパーIL-6、または該モノクローナル抗体によって認識されるエピトープを含有するその断片の1つを使用して、例えばIL-6:IL-6Raに対して免疫化された動物細胞から取得することができる。それらを含む好適な断片およびペプチドまたはポリペプチドは本明細書中に記載されている。それを使用して、動物を免疫し、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する抗体を作製することができる。該IL-6:sIL-6Ra、またはその断片の1つは、特に、ハイパーIL-6またはその断片をコードするDNA配列に含有される核酸配列から出発する遺伝子組換えによって、IL-6:sIL-6Raおよび/またはその断片のペプチド配列に含まれるアミノ酸配列から出発するペプチド合成によって、通常の作業方法にしたがって製造することができる。
【0097】
モノクローナル抗体は、例えば、アフィニティーカラムで精製することができ、該カラムには、IL-6:sIL-6Ra、またはハイパーIL-6、または該モノクローナル抗体によって認識されるエピトープを含有するその断片の1つが事前に固定されている。さらに具体的には、モノクローナル抗体の精製は、プロテインAおよび/またはGでのクロマトグラフィーを行い、その後、残留するタンパク質混入物ならびにDNAおよびLPS自体を排除するためのイオン交換クロマトグラフィーを行うかまたは行わずに、その後、二量体または他の多量体の存在に起因する潜在的凝集物を排除するためのセファロースゲルでの排除クロマトグラフィーを行うかまたは行わずに達成することができる。一実施形態では、これらの全技術を同時にまたは連続して使用することができる。
【0098】
抗原結合部位
この用語は、標的抗原の全体または部分と結合し、かつそれと相補的な分子の部分を説明する。抗体分子では、それは抗体抗原結合部位と称され、標的抗原の全体または部分と結合し、かつそれと相補的な抗体の部分を含む。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定部分にしか結合せず、該部分はエピトープと称される。抗体抗原結合部位は1つ以上の抗体可変ドメインによって提供されるかもしれない。抗体抗原結合部位は抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含んでよい。
【0099】
単離されている
この用語は、本発明の結合性メンバー、または該結合性メンバーをコードする核酸が、概して本発明に基づいている状態を表す。ゆえに、本発明の結合性メンバー、VHおよび/またはVLドメイン、およびコード核酸分子およびベクターは、実質的に純粋または均質な形態で、例えばその天然環境から単離および/または精製されている状態、または核酸の場合、必要な機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の起源の核酸または遺伝子を含まないかまたは実質的に含まない状態で提供することができる。単離されたメンバーおよび単離された核酸は、それらに天然に付随している物質、例えばその天然環境、または該製造がin vitroもしくはin vivoで実施される組換えDNA技術に基づく場合には、それらが製造される環境(例えば細胞培養)中で、それらとともに見出される他のポリペプチドまたは核酸を含まないかまたは実質的に含まない。メンバーおよび核酸は希釈剤またはアジュバントとともに製剤化することができ、依然として事実上単離されている。例えば、該メンバーは、イムノアッセイで使用するためのマイクロタイタープレートをコーティングするために使用されるならば、通常ゼラチンまたは他の担体と混合され、診断または治療で使用される場合、製薬的に許容される担体または希釈剤と混合される。結合性メンバーは、天然にまたは異種真核細胞(例えばCHOまたはNS0(ECACC 85110503)細胞)の系によってグリコシル化されているか、または(例えば原核細胞での発現によって生成される場合)非グリコシル化状態であってよい。
【0100】
抗IL-6:IL-6Ra(例えば抗IL-6:sIL-6Ra)抗体分子を含む不均一調製物もまた、本発明の部分を構成する。例えば、そのような調製物は、完全長重鎖および、C末端リシンを欠いている重鎖を有し、種々の程度のグリコシル化を有し、かつ/または誘導体化アミノ酸、例えばピログルタミン酸残基を形成するN末端グルタミン酸の環化を有する抗体の混合物であってよい。
【0101】
本明細書中で使用されるフレーズ「実質的に記載されている」とは、本明細書中に記載の結合性メンバーのVHまたはVLドメインの関連CDRの特徴(群)が、本明細書中に配列が記載されている指定領域と同一であるかまたは非常に類似していることを表す。本明細書中に記載のように、1つ以上の可変ドメインの指定領域(群)に関するフレーズ「非常に類似」は、1〜約5、例えば1〜4、例えば1〜3、または1もしくは2、または3もしくは4個のアミノ酸置換をCDRおよび/またはVHまたはVLドメイン中で施してよいことを考慮する。
【0102】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明の結合性メンバーはIL-6および/またはIL-6Ra、例えばsIL-6Raの生物学的活性をモジュレートし、かつ中和することができる。本発明の結合性メンバーは、その中和効力をさらに改善するために効力の最適化に付することができる。一般に、効力の最適化は、選択された結合性メンバーの配列(通常は抗体の可変ドメイン配列)を突然変異させて、結合性メンバーのライブラリーを作製することを含み、そして該ライブラリーを効力に関してアッセイし、より強力な結合性メンバーを選択する。こうして選択された「効力最適化」結合性メンバーは、ライブラリーの作製元であった結合性メンバーより高い効力を有する傾向がある。
【0103】
しかし、最適化を行わずに高い効力の結合性メンバーを取得してもよい。本明細書中で実証されるように、初期スクリーニング、例えば生化学的中和アッセイから直接、高い効力の結合性メンバーを取得することができる。
【0104】
「効力最適化」結合性メンバーとは、IL-6および/またはIL-6Ra、例えばsIL-6Raの特定の活性または下流の機能の中和効力が最適化されている結合性メンバーを表す。アッセイおよび効力は本明細書中の他の箇所でより詳細に記載されている。
【0105】
効力最適化および非最適化結合性メンバーならびに選択された結合性メンバーから効力を最適化するための方法は本発明の態様である。本発明はゆえに、当業者が、高い効力を有する結合性メンバーを作製することを可能にする。
【0106】
本明細書中に記載のように、抗体1は、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fcと結合するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の阻害に関して700 nM未満の中和効力(IC50)を有した。ゆえに、抗体1 CDRセットを含む結合性メンバーはこのアッセイにおいて700 nM未満のIC50を示す。抗体1 CDRセット内に1個以上の置換、欠失または挿入を有する抗体1の変異体は抗体1と同一の効力であるかまたは抗体1より強力である。
【0107】
本明細書中に記載のように、抗体2は、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fcと結合するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の阻害に関して1.5 nM未満の中和効力(IC50)を有した。ゆえに、抗体2 CDRセットを含む結合性メンバーはこのアッセイにおいて1.5 nM未満のIC50を示す。抗体2 CDRセット内に1個以上の置換、欠失または挿入を有する抗体2の変異体は抗体2と同一の効力であるかまたは抗体2より強力である。
【0108】
本明細書中に記載のように、抗体3は、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fcと結合するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の阻害に関して25 nM未満の中和効力(IC50)を有した。ゆえに、抗体3 CDRセットを含む結合性メンバーはこのアッセイにおいて25 nM未満のIC50を示す。抗体3 CDRセット内に1個以上の置換、欠失または挿入を有する抗体3の変異体は抗体3と同一の効力であるかまたは抗体3より強力である。
【0109】
本明細書中に記載のように、抗体4は、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fcと結合するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の阻害に関して30 nM未満の中和効力(IC50)を有した。ゆえに、抗体4 CDRセットを含む結合性メンバーはこのアッセイにおいて30 nM未満のIC50を示す。抗体4 CDRセット内に1個以上の置換、欠失または挿入を有する抗体4の変異体は抗体4と同一の効力であるかまたは抗体4より強力である。
【0110】
本明細書中に記載のように、抗体5は、HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fcと結合するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の阻害に関して0.8 nM未満の中和効力(IC50)を有した。ゆえに、抗体5 CDRセットを含む結合性メンバーはこのアッセイにおいて0.8 nM未満のIC50を示す。抗体5 CDRセット内に1個以上の置換、欠失または挿入を有する抗体5の変異体は抗体5と同一の効力であるかまたは抗体5より強力である。
【0111】
別の態様では、本発明は、抗原と結合可能な1種以上の結合性メンバーの取得方法であって、本発明の結合性メンバーのライブラリーと該抗原を接触させるステップ、および該抗原と結合可能なライブラリーの1種以上の結合性メンバーを選択するステップを含む方法を提供する。
【0112】
該ライブラリーは、粒子または分子複合体、例えば複製可能遺伝的パッケージ、例えば酵母粒子、細菌粒子またはバクテリオファージ(例えばT7)粒子、ウイルス、細胞または共有結合性、リボソーム性または他のin vitroディスプレイ系上で提示することができ、各粒子または分子複合体は、その表面に提示される抗体VH可変ドメイン、およびさらに、場合により、存在する場合には提示されるVLドメイン、をコードする核酸を含有する。ファージディスプレイは、WO92/01047および例えば米国特許US5969108、US5565332、US5733743、US5858657、US5871907、US5872215、US5885793、US5962255、US6140471、US6172197、US6225447、US6291650、US6492160およびUS6521404に記載されている。該各文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0113】
抗原と結合可能でかつバクテリオファージまたは他のライブラリー粒子もしくは分子複合体上に提示される結合性メンバーの選択後に、該選択した結合性メンバーを提示するバクテリオファージまたは他の粒子もしくは分子複合体から核酸を採取することができる。該選択した結合性メンバーを提示するバクテリオファージまたは他の粒子もしくは分子複合体から採取された核酸の配列を有する核酸からの発現によって、以後の結合性メンバーまたは抗体VHもしくはVL可変ドメインの製造に該核酸を使用することができる。
【0114】
該選択した結合性メンバーの抗体VH可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体VH可変ドメインは、そのようなVHドメインを含む結合性メンバーと同様に、単離された形態で提供してよい。
【0115】
本発明の別の態様は、概して、複数の結合性メンバーからの結合性メンバーの単離または選択に関し、ここで該選択または単離した結合性メンバーは第一の要素および第二の要素によって形成された複合体と結合するが、該第一または第二の要素単独とは結合しない。
【0116】
複数の結合性メンバーは、上記のように、結合性メンバーのライブラリーであってよい。結合性メンバーは本明細書中の他の箇所でより詳細に定義され、記載されている。好都合には、ライブラリーにおいて一般的であるように、複数の結合性メンバー中の各結合性メンバーはそれをコードする遺伝情報と関連付けられ、したがって結合性メンバーを選択されれば該遺伝情報の回収が可能になる。
【0117】
一態様では、本発明は、複数の結合性メンバーから結合性メンバーを選択する方法(該結合性メンバーは第一の要素および第二の要素によって形成された複合体と結合するが、該第一または第二の要素単独とは結合しない)であって、以下のステップ:
(i) 結合性メンバーが第一の要素と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを第一の要素に曝露するステップ;
(ii) 結合性メンバーが第一の要素および第二の要素によって形成される複合体と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを該複合体に曝露するステップ;
(iii) 第二の要素が付着する固体支持体上に該複合体を単離するステップ;および
(iv) 複合体に結合した1種以上の結合性メンバーを回収するステップ
を含む方法である。
【0118】
ゆえに、該方法は、複数の結合性メンバーから、該複合体と結合する結合性メンバー集団を選択する。
【0119】
該方法は、場合により、例えば以下のステップ:
(v) 1種以上の回収済み結合性メンバーをコードする遺伝情報を増幅するステップ;および
(vi) 遺伝情報を発現させて複数の結合性メンバーを得るステップ
によって1種以上の回収済み結合性メンバーを増幅して、複数の結合性メンバーを得るステップをさらに含んでよい。
【0120】
該方法は、後の選択ラウンドのために、上記ステップ(i)〜(iv)を反復するステップを含んでよい。後の選択ラウンドでは、該複合体と結合する結合性メンバー集団からさらに選択することができ、非特異的結合性メンバーまたは、該第一または第二の要素単独と結合する結合性メンバーに対抗してネガティブ選択してよい。
【0121】
有益には、後の選択ラウンドにおいて、該複合体が支持体に付着している向き(すなわち第一の要素を介して付着しているか第二の要素を介して付着しているか)を入れ替えることができる。ゆえに、本方法は、場合により、以下のステップ:
(vii) 結合性メンバーが第二の要素と結合するできるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを第二の要素に曝露するステップ;
(viii) 結合性メンバーが第一の要素および第二の要素によって形成される複合体と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを該複合体に曝露するステップ;
(ix) 第一の要素が付着する固体支持体上に複合体を単離するステップ;および
(x) 複合体に結合した1種以上の結合性メンバーを回収するステップ
をさらに含む。
【0122】
次いで、上記ステップ(i)〜(vi)を反復して複数回の選択ラウンドを実施してよく、該ラウンドでは、支持体に付着させている要素を入れ替える。ゆえに、該方法は、第一の要素が支持体に付着している第一選択ラウンド、および第二の要素が支持体に付着している第二選択ラウンド、次いで第一の要素が支持体に付着している第三選択ラウンド、等のラウンドを、所望の選択ラウンド数が完了するまでの後のラウンドに関して含んでよく、ゆえに支持体上で複合体が単離される向きが入れ替わる。複合体を支持体に結合させる向きがこのように入れ替わると、該複合体と結合するが第一または第二の要素単独とは結合しない結合性メンバーの特異的選択に役立つ。入れ替えることによって、第一または第二の要素単独と結合する結合性メンバーに対抗する選択が特に容易になる。
【0123】
要素が付着する支持体は例えばビーズであってよい。好都合には、常磁性ビーズを使用してよい。該ビーズは容易に溶液から回収可能である。
【0124】
支持体に付着する要素は直接的または間接的に付着されうる。例えば、支持体は、要素と結合する結合性メンバーを含むか、またはそれによってコーティングしてよい。あるいは、要素にタグを付けてよく、すなわち要素を、支持体に付着させるためにペプチド等のタグに共有結合によって付着させてよい。その場合、支持体は該タグと結合する結合性メンバーを含むかまたはそれによってコーティングされている。例えば、ポリペプチドを異種ペプチドタグ、例えばFLAGタグに連結してよく、該タグと結合する抗体分子または他の結合性メンバー、例えば抗FLAG抗体を用いて固体支持体に付着させてよい。該タグと結合する結合性メンバーは、好都合には、ストレプトアビジン:ビオチン複合体を用いて支持体上にコーティングしてよい。例えばビオチン化結合性メンバーをストレプトアビジンコーティング支持体、例えばストレプトアビジンコーティングビーズに付着させてよい。
【0125】
好都合には、各選択ラウンドにおいて、支持体への付着のために一方の要素をタグに連結するが、他方の要素は該タグに連結しない(該他方の要素にタグを付けないか、または異なるタグに連結する)。ゆえに、第一選択ラウンドでは、支持体への付着のために第二の要素をタグに連結するが、第一の要素は該タグに連結せず、第二選択ラウンドでは、第一の要素を該タグに連結するが、第二の要素はそうしない。交互の選択ラウンドで支持体への第一および第二の要素の付着に同一タグを使用すると、好都合に、同一タイプの支持体を各ラウンドで使用することが可能になる。
【0126】
第一および/または第二の要素および複合体は、通常、溶液状態で提供される。しかし、いくつかの場合では、第一および/または第二の要素は表面上に存在し、例えばそれらを細胞表面で提示して、複合体が該表面上で形成されるようにしてよく、そして該方法は溶液中の複数の結合性メンバーを、細胞表面に第一および/または第二の要素を発現している細胞に曝露するステップを含んでよい。細胞を使用する方法は、例えば第一および第二の要素の一方または両方が膜貫通タンパク質、または膜結合タンパク質である場合に好適である。しかし、代替法は、そのようなタンパク質の可溶性部分を使用することであり、例えば細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの部分を該方法において使用して、溶液状態でのポリペプチドの提供を可能にしてもよい。
【0127】
複合体は、第一の要素を第二の要素に曝露して、該第一および第二の要素が結合して複合体を形成するようにすることによって形成させてよい。各選択ラウンドでは、支持体に付着させる対象でない要素は通常、支持体に付着させるべき要素を超える濃度、例えば少なくとも2倍モル過剰で提供される。これにより、支持体に付着させるべき実質的にすべての要素が複合体の形態で存在し、支持体で回収されるべき複合体形成していない要素の量が最小になり、それによって、複合体形成していない形態の要素と結合する結合性メンバーの好ましくない回収が最小になることが保証される。代替法は、あらかじめ形成された複合体、例えば第一および第二の要素が共有結合によって互いに結合している複合体に結合性メンバーを曝露することである。例えば、第一および第二の要素がポリペプチドである場合、第一の要素および第二の要素を含む融合タンパク質(例えば第一および第二の要素はペプチドタグを介して連結されている)を使用してよい。しかし、第一の要素を第二の要素に曝露することによって複合体を形成させることには利点がある。その理由は、これによって、in vivoの状況が代表され、かつ、複合体中の共有結合による連結が非生理学的である場合に、複合体中の第一および第二の要素の共有結合による連結によって生じるコンフォメーションまたはエピトープ形成の異常が回避されるからである。
【0128】
ステップ(i)およびステップ(ii)は逐次で(ステップ(i)に次いで(ii))または同時に実施してよい。例えば、結合性メンバーを第一の要素に曝露し、次いで第二の要素に曝露するか、または第一および第二の要素に同時に曝露してよく、その場合、第一の要素は第二の要素を超える濃度、例えば少なくとも2倍モル過剰であり、かつ第一および第二の要素は複合体を形成する。
【0129】
ステップ(ii)の前にステップ(i)を実施する利点は、結合性メンバーが複合体に曝露される前に第一の要素に曝露され、したがって第一の要素単独と結合する結合性メンバーを最初のステップで結合でき、これらの結合性メンバーがステップ(ii)で複合体と結合する確率が下がることである。この状況は、第一および第二の要素が交換されていることを除き、ステップ(viii)および(iv)でも同様である。
【0130】
支持体への第二の要素の付着は、ステップ(ii)の前、またはステップ(ii)またはステップ(iii)中に行うことができる。例えば、ステップ(iii)は、第二の要素と結合している(例えば第二の要素に付着しているタグと結合している)支持体に複合体を曝露するステップを含んでよい。この状況は、支持体への第一の要素の付着に関して、ステップ(ix)および(x)でも同様である。
【0131】
単離された複合体を洗浄して未結合の結合性メンバーを除去してよく、ゆえに支持体で、複合体と結合している結合性メンバーを複数の結合性メンバーから回収することができる。
【0132】
方法は、選択した結合性メンバーが複合体と結合するが第一または第二の要素単独とは結合しないことを確認するため、および/または、所望の特性、例えば複合体に対する高い特異性を有する結合性メンバーをさらに選択するために、追加のアッセイ(例えばELISA(選択した結合性メンバーが抗体分子である場合))をさらに含んでよい。
【0133】
一例では、本発明は、複数の結合性メンバーから結合性メンバーを選択する方法(該結合性メンバーは第一の要素および第二の要素によって形成された複合体と結合するが、該第一または第二の要素単独とは結合しない)であって、以下のステップ:
第一および第二の要素を用意するステップ(一方の要素は固体支持体への付着のためのタグに連結され(「タグが付いている要素」)、もう一方はタグに連結されていない(「タグが付いていない要素」));
(i) 結合性メンバーがタグが付いていない要素と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーをタグが付いていない要素に曝露するステップ;
(ii) 結合性メンバーが複合体と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーおよびタグが付いていない要素をタグが付いている要素に曝露するステップ(タグが付いていない要素は、タグが付いている要素の濃度の少なくとも2倍の濃度であり、したがってタグが付いている要素がタグが付いていない要素と複合体を形成するようになっていて、それによって複数の結合性メンバーが複合体に曝露される);
(iii) タグが付いている要素が付着している固体支持体で複合体を単離するステップ;および
(iv) 複合体に結合している1種以上の結合性メンバーを回収するステップ
を含む方法である。
【0134】
該方法は、場合により、以下のステップ:
(v) 1種以上の回収済み結合性メンバーをコードする遺伝情報を増幅するステップ;および
(vii) 遺伝情報を発現させて複数の結合性メンバーを得るステップ
をさらに含んでよい。
【0135】
そして該方法は、1回以上の後の選択ラウンドのために、ステップ(i)〜(iv)を反復するステップをさらに含んでよい。有益には、後のラウンドにおいて複合体が支持体に付着する向きを入れ替える。ゆえに、ラウンド1で第一の要素にタグが付けられる場合、ラウンド2では第二の要素にタグが付けられ、次いでラウンド3では第一の要素にタグが付けられる、等のように続く。上記のように、交互の選択ラウンドにおいて第一および第二の要素に関して同一タグを使用すると、好都合に、同一タイプの支持体、すなわち該タグと結合する結合性メンバーを含むかまたはそれによってコーティングされている支持体を各ラウンドで使用することが可能になる。しかし、場合により、第一および第二の要素の両者にタグを付けて、交互の選択ラウンドで異なるタイプの支持体を使用して複合体を単離してよい。ゆえに、「タグが付いていない要素」を場合によりタグに連結してよいが、ただし、それはタグが付いている要素に連結されているタグと同一のタグではないことを条件とする。
【0136】
該第一および第二の要素は典型的に有機分子であり、通常は生物学的分子であり、それらは結合して複合体を形成する。その例には、リガンドと受容体によって形成されるリガンド:受容体複合体、酵素と該酵素の基質によって形成される酵素:基質複合体;および抗体分子と該抗体分子が結合する対象の抗原によって形成される抗体:抗原複合体が含まれる。該第一および/または第二の要素はポリペプチドであってよく、ゆえに該方法は、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドによって形成された複合体と結合するが、該第一または第二のポリペプチド単独とは結合しない結合性メンバーを選択するステップを含んでよい。
【0137】
該第一および第二の要素は同一であっても異なっていてもよい。典型的に該第一および第二の要素は異なり、例えば異なる有機分子または生物学的分子、例えば異なるポリペプチドである。ゆえに、該方法は、2つの異なる要素が結合している複合体、例えばヘテロダイマーである複合体と結合する結合性メンバーを選択するステップを含んでよい。
【0138】
該第一および第二の要素が複合体を形成すると、本発明の結合性メンバーが結合するエピトープが形成される。例えば、該エピトープは、第一の要素の部分および第二の要素の部分を含み、例えば、第一のポリペプチド由来の1個以上のアミノ酸および第二のポリペプチド由来の1個以上のアミノ酸を含む。あるいは、該エピトープは一方の要素上のみに存在してよく、該要素が他方の要素と複合体を形成した場合にのみ、複合体を形成した場合の該要素中のコンフォメーション変化の結果として、存在または露出する。
【0139】
本発明の方法では、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)と結合する能力をさらに試験してよく、さらに、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raとの結合に関して、結合性メンバー、例えば抗体分子1〜5(例えばscFv形態および/またはIgG形態、例えばIgG1)と競合する能力を測定してよい。本明細書中の他の箇所でさらに考察されるように、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)を中和する能力を試験してもよい。
【0140】
本発明の結合性メンバーは、抗体1〜5、例えばscFvまたはIgG1の1つの親和性で、またはさらに良好な親和性で、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raと結合することができる。
【0141】
本発明の結合性メンバーは、抗体1〜5、例えばscFvまたはIgG1の1つの効力で、またはさらに良好な効力で、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)の生物学的活性を中和することができる。
【0142】
異なる結合性メンバーの結合親和性および中和効力を適切な条件下で比較することができる。
【0143】
本発明のVHおよびVLドメインおよびCDRの変異体(アミノ酸配列が本明細書中に記載されているもの、および本発明の結合性メンバー中で用いることができるものを含む)は、配列を改変または突然変異させ、かつ所望の特性を有する抗原結合性メンバーをスクリーニングする方法を用いて取得することができる。所望の特性の例には、非限定的に以下の特性が含まれる。
【0144】
− 抗原に特異的な既知の抗体と比較して高い、抗原に対する結合親和性
− 抗原活性が既知である場合は、抗原に特異的な既知の抗体と比較して高い、抗原活性の中和性
− 特定モル比での、抗原に対する既知の抗体またはリガンドとの、所定の競合能力
− 複合体を免疫沈降させる能力
− 指定エピトープと結合する能力
− 線形エピトープ、例えば、本明細書中に記載のペプチド結合スキャン(例えば線形および/または拘束コンフォメーションでスクリーニングされたペプチドを使用する)を使用して同定されるペプチド配列
− 不連続残基によって形成される立体構造エピトープ
− IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)または下流の分子の新規生物学的活性をモジュレートする能力。
【0145】
そのような方法もまた、本明細書中で提供される。
【0146】
本明細書中で開示される抗体分子の変異体を製造し、本発明において使用してよい。多変量データ解析技術を構造/特性−活性関係に対して適用する場合の計算化学の手引き[40]にしたがって、周知の数学的手法、例えば統計回帰、パターン認識および分類[41, 42, 43, 44, 45, 46]を使用して抗体の定量的活性−特性関係を導き出すことができる。抗体の特性は、抗体配列、機能的および3次元構造の経験的および理論的モデル(例えば、接触候補残基の分析または計算上の物理化学的特性)から導き出すことができ、これらの特性は単一でおよび組み合わせて考慮することができる。
【0147】
VHドメインおよびVLドメインからなる抗体抗原結合部位は、典型的に、6つのポリペプチドループによって形成される。該ループの3つは軽鎖可変ドメイン(VL)由来であり、3つは重鎖可変ドメイン(VH)由来である。既知の原子構造の抗体についての分析により、抗体結合部位の配列と3次元構造との間の関係が解明されている[47, 48]。これらの関連性は、VHドメイン中の第三領域(ループ)を除いて、結合部位ループが少数の主鎖コンフォメーション:標準構造のうちの1つを有することを意味する。特定ループ中で形成される標準構造は、そのサイズおよび、ループおよびフレームワークの両領域中の重要部位での特定残基の存在によって決定されることが示されている[47, 48]。
【0148】
配列−構造関係についてのこの研究は、そのCDRループの3次元構造の維持に重要な、ゆえに結合特異性を維持する、配列が既知で3次元構造が未知の抗体中の残基を予測するために使用することができる。これらの予測は、先の最適化実験からの出力と該予測を比較することによって確認することができる。構造的アプローチでは、任意の無料で利用可能なパッケージまたは市販パッケージ、例えばWAM [50]を使用して、抗体分子のモデルを作製することができる[49]。そしてタンパク質視覚化および解析ソフトウェアパッケージ、例えばInsight II(Accelrys, Inc.)またはDeep View [51]を使用して、CDR中の各位置での置換候補を評価してよい。この情報を使用して、活性に関して最小または有益な影響を有する可能性が高い置換を施してよい。
【0149】
CDR、抗体VHまたはVLドメインおよび結合性メンバーのアミノ酸配列内で置換を施すために必要とされる技術は概して当技術分野において利用可能である。活性に関して最小または有益な影響を有すると予測されるかされない置換を施して変異体配列を作製し、IL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)と結合し、かつ/またはそれらを中和する能力および/または任意の他の所望の特性に関して試験してよい。
【0150】
本明細書中で配列が具体的に開示されている任意のVHおよびVLドメインの可変ドメインアミノ酸配列変異体を、考察されるように、本発明にしたがって用いてよい。
【0151】
本発明のVLドメインの変異体、およびそれらを含む結合性メンバーまたは抗体分子には、カバット残基108位にグリシンが存在しない(例えばカバット残基108位が異なる残基であるかまたは欠失している)VLドメインが含まれる。例えば、定常ドメインを欠いている抗体分子、例えばscFv等の抗体分子は、本明細書中に記載のVLドメイン配列またはその変異体を有するVLドメインであって、カバット残基108位のグリシンがグリシン以外のアミノ酸残基であるかまたは欠失しているVLドメインを含んでよい。
【0152】
本発明の別の態様は、添付の配列表に示される抗体1〜5のいずれかのVHドメインと、少なくとも60、70、80、85、90、95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するVHドメインを含み、かつ/または、添付の配列表に示される抗体1〜5のいずれかのVLドメインと、少なくとも60、70、80、85、90、95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するVLドメインを含む抗体分子である。2つのアミノ酸配列の%同一性を算出するために使用できるアルゴリズムには、例えばBLAST [52]、FASTA [53]、またはSmith-Watermanアルゴリズム[54](例えばデフォルトパラメータを用いる)が含まれる。
【0153】
具体的な変異体は、1つ以上のアミノ酸配列改変(アミノ酸残基の付加、欠失、置換および/または挿入)を含んでよい。
【0154】
1つ以上のフレームワーク領域および/または1つ以上のCDRにおいて改変を施してよい。該改変は、通常、機能喪失を生じさせず、したがって、そのように改変されたアミノ酸配列を含む結合性メンバーはIL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)と結合しかつ/またはそれらを中和する能力を保持する。それは、例えば本明細書中に記載のアッセイにおいて測定された場合に、改変が施されていない結合性メンバーと同一の定量的結合および/または中和能力を保持する。そのように改変されたアミノ酸配列を含む結合性メンバーは、IL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)と結合しかつ/またはそれらを中和する能力の改善を示すかもしれない。
【0155】
改変は、1個以上のアミノ酸残基を、天然に存在しないかまたは非標準アミノ酸で置換すること、1個以上のアミノ酸残基を修飾して、天然に存在しないかまたは非標準型にすること、または1個以上の天然に存在しないかまたは非標準アミノ酸を配列内に挿入することを含んでよい。本発明の配列中の改変の数および位置の例は本明細書中の他の箇所で記載されている。天然に存在するアミノ酸には、20種の「標準」L-アミノ酸が含まれ、その標準一文字コードによってG、A、V、L、I、M、P、F、W、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D、Eとして同定される。非標準アミノ酸には、ポリペプチド主鎖に組み込むことができるかまたは既存のアミノ酸残基の修飾から生じる任意の他の残基が含まれる。非標準アミノ酸は天然に存在しても天然に存在しなくてもよい。いくつかの天然に存在する非標準アミノ酸が当技術分野において公知であり、例えば4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリシン、3-メチルヒスチジン、N-アセチルセリン、等である[55]。N-アルファ位置で誘導体化されているアミノ酸残基はアミノ酸配列のN末端にしか位置しない。本発明では通常、アミノ酸はL-アミノ酸であるが、D-アミノ酸であってもよい。したがって、改変は、L-アミノ酸を修飾してD-アミノ酸にするか、またはL-アミノ酸をD-アミノ酸で置換することを含む。メチル化、アセチル化および/またはリン酸化型のアミノ酸もまた既知であり、本発明のアミノ酸は該修飾の対象である。
【0156】
本発明の抗体ドメインおよび結合性メンバー中のアミノ酸配列は上記の非天然または非標準アミノ酸を含んでよい。非標準アミノ酸(例えばD-アミノ酸)は、合成中に、またはアミノ酸配列の合成後に「元の」標準アミノ酸の修飾または置換によってアミノ酸配列に組み込んでよい。
【0157】
非標準および/または天然に存在しないアミノ酸の使用により、構造的および機能的多様性が高まり、ゆえに本発明の結合性メンバーにおける所望のIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)結合および中和特性を達成するための潜在能力を高めることができる。さらに、D-アミノ酸および類似体は、動物、例えばヒトへの投与後のL-アミノ酸を有するポリペプチドのin vivo分解のせいで、標準L-アミノ酸と比較して異なる薬物動態学的プロファイルを有することが示されている。このことは、いくつかのin vivo適用では、D-アミノ酸が有益であることを意味する。
【0158】
本発明のCDR由来配列を保持する新規VHまたはVL領域は、可変ドメイン全体内の突然変異を生じさせる1つ以上の選択VHおよび/またはVL遺伝子のランダム突然変異誘発を使用して作製することができる。そのような技術はGram et al. [56]によって報告されている。彼らは誤りがちなPCR(error-prone PCR)を使用した。いくつかの実施形態では、可変ドメイン全体またはCDRセット内で1つまたは2つのアミノ酸置換を施す。
【0159】
使用してよい別の方法はVHまたはVL遺伝子のCDR領域に対する直接突然変異誘発である。そのような技術はBarbas et al. [57]およびSchier et al. [58]によって開示されている。
【0160】
すべての上記技術は、当技術分野においてそのような技術として公知であり、当業者は、該技術を使用し、当技術分野の所定の方法論を使用して本発明の結合性メンバーを得ることができる。
【0161】
本発明の別の態様は、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに関する抗体抗原結合部位を取得するための方法であって、本明細書中に記載のVHドメインのアミノ酸配列中の1個以上のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入を用いて、該VHドメインのアミノ酸配列変異体であるVHドメインを提供するステップ、場合により、そのように提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組み合わせるステップ、およびVHドメインまたはVH/VLの組み合わせまたは複数の組み合わせを試験して、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに関する結合性メンバーまたは抗体抗原結合部位(場合により1種以上の所望の特性、例えばIL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)活性を中和する能力を有する)を同定するステップを含む方法を提供する。該VLドメインは本明細書中に実質的に記載されるアミノ酸配列を有してよい。本明細書中で開示されるVLドメインの1つ以上の配列変異体を1つ以上のVHドメインと組み合わせる類似の方法を用いてもよい。
【0162】
上記のように、本明細書中に実質的に記載されるCDRアミノ酸配列は、ヒト抗体可変ドメインまたはその本質的部分中のCDRとして保持される。本明細書中に実質的に記載されるHCDR3配列は本発明の実施形態であり、これらの各配列はヒト重鎖可変ドメインまたはその本質的部分中のHCDR3として保持される。
【0163】
本発明で用いられる可変ドメインは、任意の生殖細胞または再配置(rearranged)ヒト可変ドメインから取得するかまたはそれに由来するか、または既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列または実際の配列に基づく合成可変ドメインであってよい。可変ドメインは非ヒト抗体に由来するものであってよい。組換えDNA技術を使用して、CDR(例えばCDR3)を欠いている可変ドメインのレパートリーに本発明のCDR配列(例えばCDR3)を導入することができる。例えば、Marks et al. [59]は、抗体可変ドメインのレパートリーを製造する方法であって、該可変ドメイン領域の5'末端に対するかまたはそれに隣接するコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第三フレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーとともに使用して、CDR3を欠いているVH可変ドメインのレパートリーを得る方法を報告している。Marks et al. は、このレパートリーを特定の抗体のCDR3とどのように組み合わせるかをさらに報告している。類似の技術を使用して、本発明のCDR3由来配列を、CDR3を欠いているVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルし、シャッフル済み完全VHまたはVLドメインを同族(cognate)VLまたはVHドメインと組み合わせて本発明の結合性メンバーを得ることができる。そして該レパートリーを好適な宿主系、例えばWO92/01047(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)、または後の多数の文献のいずれか(Kay, Winter & McCafferty [60]が含まれる)のファージディスプレイ系で提示して、好適な結合性メンバーが選択されるようにすることができる。レパートリーは、104の個別のメンバー以上、例えば少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109または少なくとも1010メンバーまたはそれ以上のいずれかから構成される。他の好適な宿主系には、非限定的に、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイおよび共有結合ディスプレイが含まれる。
【0164】
IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに関する結合性メンバーの製造方法であって、以下のステップ:
(a) 置換対象のCDR3を含むかまたはCDR3コード領域を欠いているVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供するステップ;
(b) 該レパートリーを、VH CDR3に関して本明細書中に実質的に記載されるアミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせて、該ドナー核酸がレパートリー中のCDR3領域に挿入されるようにし、VHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを得るステップ;
(c) 該生成物レパートリーの核酸を発現させるステップ;
(d) IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに関する結合性メンバーを選択するステップ;および
(e) 該結合性メンバーまたはそれをコードする核酸を回収するステップ
を含む方法を提供する。
【0165】
やはり、置換対象のCDR3を含むかまたはCDR3コード領域を欠いているVLドメインをコードする核酸のレパートリーと本発明のVL CDR3を組み合わせる類似の方法を用いてもよい。
【0166】
同様に、1つ以上の、またはすべての3つのCDRを、VHまたはVLドメインのレパートリーに移植し、そしてIL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに関する結合性メンバーまたは複数の結合性メンバーに関してスクリーニングしてよい。
【0167】
例えば、1つ以上の抗体1〜5 HCDR1、HCDR2およびHCDR3または抗体1〜5 HCDRセットを用いてよく、かつ/または1つ以上の抗体1〜5 LCDR1、LCDR2およびLCDR3または抗体1〜5 LCDRセットを用いてよい。
【0168】
同様に、本明細書中で開示される他のVHおよびVLドメイン、CDRセットおよびHCDRセットおよび/またはLCDRセットを用いてよい。
【0169】
免疫グロブリン可変ドメインの本質的部分は少なくとも3つのCDR領域をそれらの間のフレームワーク領域とともに含む。該部分は第一および第四フレームワーク領域の一方または両方の少なくとも約50%を含んでもよく、該50%は第一フレームワーク領域のC末端の50%であり、第四フレームワーク領域のN末端の50%である。可変ドメインの本質的部分のN末端またはC末端の追加の残基は、天然に存在する可変ドメイン領域に通常付随しない残基であってよい。例えば、本発明の結合性メンバーの構築を組換えDNA技術によって行って、クローニングまたは他の操作ステップを容易にするために導入されるリンカーによってコードされるNまたはC末端残基を導入してよい。他の操作ステップには、本発明の可変ドメインを別のタンパク質配列に付着させるためのリンカーの導入が含まれ、該タンパク質配列には、本明細書中の他の箇所でさらに詳細に考察される抗体定常領域、他の可変ドメイン(例えばダイアボディを製造する場合)または検出可能/機能的標識が含まれる。
【0170】
本発明のいくつかの態様では、結合性メンバーはVHおよびVLドメインペアを含むが、VHまたはVLドメイン配列のいずれかに基づく単一の結合ドメインは本発明の別の態様を構成する。単一の免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインは特異的様式で標的抗原と結合可能であることが知られている。例えば、上記dAbについての考察を参照のこと。
【0171】
いずれの単一結合ドメインの場合でも、これらのドメインを使用して、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raと結合することができる2ドメイン結合性メンバーを形成可能な相補的ドメインに関してスクリーニングすることができる。
【0172】
これは、WO92/01047(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる)で開示されるいわゆる階層的二重コンビナトリアルアプローチ(hierarchical dual combinatorial approach)を使用するファージディスプレイスクリーニング法によって達成することができる。該方法では、HまたはL鎖クローンを含有する個々のコロニーを使用して、他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全ライブラリーを感染させ、得られた2鎖結合性メンバーを該参考文献に記載のようなファージディスプレイ技術にしたがって選択する。この技術もMarks et al, 同書[59]に開示されている。
【0173】
本発明の結合性メンバーは、抗体定常領域またはその部分、例えばヒト抗体定常領域またはその部分をさらに含んでよい。例えば、VLドメインをそのC末端で、ヒトCκまたはCλ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに連結させてよい。同様に、VHドメインに基づく結合性メンバーをそのC末端で、任意の抗体アイソタイプ、例えばIgG、IgA、IgEおよびIgMならびに任意のアイソタイプサブクラス、特にIgG1およびIgG4由来の免疫グロブリン重鎖の全体または部分(例えばCH1ドメイン)に連結させてよい。IgG1は、そのエフェクター機能および製造の容易さのおかげで有益である。これらの特性を有しかつ可変領域を安定化する任意の合成または他の定常領域変異体もまた、本発明において有用である。
【0174】
本発明の結合性メンバーは検出可能または機能的標識で標識することができる。ゆえに、検出可能および/または定量可能なシグナルを得るために、結合性メンバーまたは抗体分子をイムノコンジュゲートの形態で存在させることができる。イムノコンジュゲートは検出可能または機能的標識とコンジュゲートされた本発明の抗体分子を含んでよい。標識は、シグナルを生じさせるかまたはシグナルの発生を誘発できる任意の分子であってよく、それには、非限定的に、蛍光剤、放射性標識、酵素、化学発光剤(chemiluminescers)または光増感剤が含まれる。ゆえに、蛍光または発光、放射能、酵素活性または吸光度を検出することによって結合を検出および/または測定することができる。
【0175】
好適な標識には、限定的ではなく例示的に、以下のものが含まれる。
【0176】
- 酵素、例えばアルカリホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)、アルファ-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼおよびペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ;
- 色素;
- 蛍光標識または蛍光剤、例えばフルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、ローダミン化合物および誘導体、GFP(GFPは「緑色蛍光タンパク質」を表す)、ダンシル、ウンベリフェロン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド(o-phthaldehyde)、およびフルオレサミン;フルオロフォア、例えばランタニドクリプタートおよびキレート、例えばユーロピウム等(Perkin ElmerおよびCis Biointernational),
- 化学発光標識または化学発光剤、例えばイソルミノール、ルミノールおよびジオキセタン;
- 生物発光標識、例えばルシフェラーゼおよびルシフェリン;
- 増感剤;
- 補酵素;
- 酵素基質;
- 放射性標識、例えば非限定的に臭素77、炭素14、コバルト57、フッ素8、ガリウム67、ガリウム68、水素3(トリチウム)、インジウム111、インジウム113m、ヨウ素123m、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素131、ヨウ素133、水銀107、水銀203、リン32、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、スカンジウム47、セレン75、イオウ35、テクネチウム99、テクネチウム99m、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、イットリウム199および本明細書中に記載の他の放射性標識;
- 粒子、例えばラテックスまたは炭素粒子:金属ゾル;微結晶;リポソーム;細胞、等(色素、触媒または他の検出可能な基でさらに標識してよい);
- ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxygenin)または5-ブロモデオキシウリジン等の分子;
- 毒素成分、例えばシュードモナス外毒素(PEまたはその細胞傷害性断片もしくは突然変異体)、ジフテリア(Diptheria)毒素またはその細胞傷害性断片もしくは突然変異体、ボツリヌス毒素A、B、C、D、EまたはF、リシンまたはその細胞傷害性断片、例えばリシンA、アブリンまたはその細胞傷害性断片、サポリン(saporin)またはその細胞傷害性断片、ポークウィード(pokeweed)抗ウイルス毒素またはその細胞傷害性断片およびブリョジン(bryodin)1またはその細胞傷害性断片の群から選択される毒素部分。
【0177】
好適な酵素および補酵素はLitman, et al., US4275149, およびBoguslaski, et al., US4318980に開示されている。該各文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。好適な蛍光剤および化学発光剤はLitman、et al., US4275149に開示されている。該文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。標識には、特別な同起源の検出可能部分、例えば標識アビジンまたはストレプトアビジンとの結合を介して検出できる化学的部分、例えばビオチンがさらに含まれる。検出可能な標識は、当技術分野において公知の慣用化学を使用して本発明の抗体に結合させてよい。
【0178】
イムノコンジュゲートまたはその機能的断片は当業者に公知の方法によって製造することができる。それらは、直接または、スペーサー基もしくは連結基、例えばポリアルデヒド、例えばグルタルアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレン-トリアミン五酢酸(DPTA)の仲介によって、または治療用コンジュゲートに関して上に記載されるようなカップリング剤の存在下で、酵素または蛍光標識にカップリングすることができる。フルオレセインタイプの標識を含有するコンジュゲートはイソチオシアン酸と反応させることによって製造することができる。
【0179】
直接または上記キレート剤、例えばEDTA、DTPAを介して治療用放射性同位体を抗体にカップリングするための既存の当業者に公知の方法を、診断で使用できる放射性元素に関して使用することができる。同様に、クロラミンT法[61]によるナトリウム125での標識化、またはCrockford et al., (US4424200(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる))の技術によるかもしくはHnatowich(US4479930(参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる))によって記載されるようにDTPAを介して結合させるテクネチウム99mでの標識化を実施することが可能である。
【0180】
標識が、外部手段、例えば視覚的試験、電磁放射線、熱、および化学試薬によって検出可能なシグナルを生成できる多数の方法が存在する。本発明の抗体と結合する別の結合性メンバー、または支持体に標識を結合させることもできる。
【0181】
標識は、シグナルを直接生成することができ、したがってシグナルの生成に追加の成分は必要とされない。多数の有機分子、例えば蛍光剤は紫外光および可視光を吸収することができ、光吸収はこれらの分子にエネルギーを移し、それらを励起エネルギー状態に高める。この吸収エネルギーは第二の波長での光の放出によって消散する。この第二の波長での発光もまた、標識アクセプター分子にエネルギーを移し、その結果得られるエネルギーは、光の放出、例えば蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってアクセプター分子から消散する。シグナルを直接生成する他の標識には、放射性同位体および色素が含まれる。
【0182】
あるいは、標識は、シグナルを生成するために他の成分を必要とすることがあり、そして該シグナル生成系は測定可能なシグナルを生成するために必要とされるすべての成分を含み、それには、基質、補酵素、エンハンサー、追加の酵素、酵素産物と反応する物質、触媒、アクチベーター、補助因子、インヒビター、スカベンジャー、金属イオン、およびシグナル生成物質の結合に必要とされる特定の結合物質が含まれる。好適なシグナル生成系についての詳細な考察はUllman, et al. US5185243に見出せる。該文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0183】
本発明は、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する、本明細書中で提供される結合性メンバーの結合を生じさせるかまたは可能にするステップを含む方法を提供する。上記のように、そのような結合はin vivoで例えば結合性メンバー、または結合性メンバーをコードする核酸の投与後に生じるか、またはそれはin vitroで例えばELISA、ウエスタンブロッティング、免疫細胞化学、免疫沈降、アフィニティークロマトグラフィー、および生化学的または細胞に基づくアッセイ、例えばTF-1増殖アッセイにおいて生じる。
【0184】
本発明はまた、本発明の結合性メンバーを例えばバイオセンサー系で用いることによって抗原レベルを直接測定することを提供する。例えば、本発明は、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する結合の検出および/または測定方法であって、(i)該結合性メンバーをIL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに曝露するステップおよび(ii)IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する該結合性メンバーの結合を検出するステップ(結合は本明細書中に記載の任意の方法または検出可能な標識を使用して検出される)を含む方法を含む。この方法、および本明細書中に記載の任意の他の結合検出方法は、方法を実施する者が、例えば検出可能な標識を視覚的に観察することによって直接解釈することができる。あるいは、この方法、または本明細書中に記載の任意の他の結合検出方法では、オートラジオグラフ、写真、コンピュータプリントアウト、フローサイトメトリーレポート、グラフ、チャート、結果を含有する試験管または容器またはウェル、または本方法の結果についての任意の他の視覚的または物理的表現の形式でレポートを得ることができる。
【0185】
IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する結合性メンバーの結合の量を測定することができる。定量化は、診断上重要な、試験サンプル中の抗原の量に関するものであってよい。IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Ra結合に関するスクリーニングおよび/またはその定量化は、例えば本明細書中で言及される疾患または障害および/または、異常なIL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)発現および/または活性が関与する任意の他の疾患または障害に関する患者のスクリーニングにおいて有用である。IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)のレベルをサンプル中のIL-6レベルの基準として使用することができる。
【0186】
多くの疾患がIL-6レベルの増加と関連している。IL-6レベルは、本明細書中の他の箇所で記載されるように、種々の疾患、例えばIL-6レベルの増加と関連している癌、および炎症性および/または自己免疫疾患に関する有用な診断および/または予後診断の指標である。
【0187】
本発明の診断または予後診断方法は、(i)被験体から組織または液体サンプルを取得するステップ、(ii)該組織または液体サンプルを1種以上の本発明の結合性メンバーに曝露するステップ;および(iii)コントロールサンプルと比較して、結合済みIL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raを検出するステップ(コントロールと比較された場合のIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)結合の量の増加は、IL-6および/またはIL-6Ra(例えばsIL-6Ra)の異常なレベルの発現または活性を示す)を含んでよい。検査対象の組織または液体サンプルには、血液、血清、尿、生検材料、腫瘍、または異常なIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)レベルを含有すると疑われる任意の組織が含まれる。異常なIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)レベルまたは活性に関して陽性であると検査された被験体はさらに、本明細書中で後に開示される治療方法によって恩恵を受ける。
【0188】
当業者は、本明細書中で開示される方法を考慮して、その好みおよび一般的知識にしたがって、抗原に対する結合性メンバーの結合を測定する好適な様式を選択することができる。
【0189】
サンプル中の結合性メンバーの反応性を任意の適切な手段によって測定することができる。ラジオイムノアッセイ(RIA)は一候補である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)と混合し、結合性メンバーと結合させる。結合済み抗原を未結合抗原から物理的に分離し、結合性メンバーと結合している放射性抗原の量を測定する。試験サンプル中に多くの抗原が存在するほど、少ない放射性抗原しか結合性メンバーと結合しない。レポーター分子に連結された抗原または類似体を使用して、非放射性抗原での競合結合アッセイを使用してもよい。該レポーター分子は、スペクトルによって分離される吸収または発光特性を有する蛍光色素、リン光体またはレーザー色素であってよい。好適な蛍光色素には、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリンおよびテキサスレッド、およびランタニドキレートまたはクリプタートが含まれる。好適な発色色素には、ジアミノベンジジンが含まれる。
【0190】
他のレポーターには、高分子コロイド粒子または微粒子材料、例えば有色、磁気または常磁性のラテックスビーズ、および視覚的に観察されるか、電子的に検出されるか、または別の方法で記録される対象の検出可能なシグナルを直接または間接的に生じさせることができる生物学的または化学的に活性な物質が含まれる。これらの分子は、例えば、発色させるかまたは変色させるかまたは電気的特性の変化を生じさせる反応を触媒する酵素であってよい。それらは、エネルギー状態間の電子遷移が特徴的スペクトル吸収または発光を生じさせるよう分子的に励起可能であってよい。それらには、バイオセンサーとともに使用される化学物質が含まれる。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出系を用いてよい。
【0191】
個々の結合性メンバー・レポーターコンジュゲートによって生成されるシグナルを使用して、サンプル(正常および試験サンプル)中の該当する結合性メンバーの結合についての定量可能な絶対的または相対的データを導き出すことができる。
【0192】
また、本発明の任意の態様または実施形態に記載の結合性メンバーを含むキットが本発明の態様として提供される。該キットでは、例えば以下でさらに記載されるように、結合性メンバーを標識して、サンプル中のその反応性の測定を可能にしてよい。さらに、結合性メンバーを固体支持体に付着させても付着させなくてもよい。キットの構成要素は概して滅菌されていて、密封バイアルまたは他の容器に含まれる。結合性メンバーが有用である診断解析または他の方法においてキットを用いることができる。キットは、方法、例えば本発明の方法での構成要素の使用に関する指示書を含有してよい。そのような方法を支援するかまたはその実施を可能にするための付属材料を本発明のキットに含ませてよい。該付属材料には、第一の結合性メンバーと結合する第二の異なる結合性メンバーが含まれ、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、放射性同位体または酵素)にコンジュゲートされる。抗体に基づくキットは、免疫沈降を実施するためのビーズを含んでもよい。キットの各構成要素は概してそれ自身に好適な容器に含まれる。ゆえに、これらのキットは概して各結合性メンバーに好適な個別の容器を含む。さらに、該キットは、アッセイを実施するための指示書および該アッセイの実施から得られたデータを解釈および解析するための方法を含んでよい。
【0193】
本発明はまた、競合アッセイにおいて抗原レベルを測定するための上記結合性メンバーの使用、すなわち、本発明によって提供される結合性メンバーを競合アッセイで用いることによってサンプル中の抗原レベルを測定する方法を提供する。これは、結合済み抗原を未結合抗原から物理的に分離することが必要とされない場合であってよい。レポーター分子を結合性メンバーに連結し、結合時に物理的または光学的変化が生じるようにすることが一候補である。該レポーター分子は、直接または間接的に、検出可能なシグナルを生成してよく、該シグナルは定量可能であってよい。レポーター分子は、直接または間接的に、共有結合によって、例えばペプチド結合を介してまたは非共有結合によって連結してよい。ペプチド結合を介する連結は、抗体およびレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組換え発現の結果であってよい。
【0194】
種々の態様および実施形態では、本発明は、本明細書中で定義される任意の結合性メンバー、例えばIgG1形態の、例えば抗体1〜5のいずれかを含む、IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raに対する結合に関して競合する結合性メンバーにまでおよぶ。結合性メンバー間の競合は、例えばタグが付いていない他方の結合性メンバー(群)の存在下で検出できる特定のレポーター分子を一方の結合性メンバーにタグ付けすることによって、in vitroで容易にアッセイすることができ、同一エピトープまたはオーバーラップエピトープと結合する結合性メンバーの同定が可能になる。競合は、例えばELISAを使用して測定することができる。該ELISAでは、IL-6:sIL-6Raをプレートに固定し、タグが付いているかまたは標識されている第一の結合性メンバーを、タグが付いていないかまたは標識されていない1つ以上の他の結合性メンバーとともに該プレートに加える。本明細書中の他の箇所で記載されるように、ハイパーIL-6を使用して、ELISA等のアッセイでIL-6:IL-6Raおよび/またはIL-6:sIL-6Raを代表してよい。タグが付いている結合性メンバーと競合する、タグが付いていない結合性メンバーの存在は、タグが付いている結合性メンバーによって放出されるシグナルの低下によって観察される。
【0195】
例えば、本発明は、IL-6:IL-6Ra結合化合物(例えばIL-6:sIL-6Ra結合化合物)を同定する方法であって、(i)IL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raを支持体に固定するステップ、(ii)該固定済みIL-6:IL-6Ra、例えばIL-6:sIL-6Raを、タグが付いているかまたは標識されている少なくとも1つの本発明の結合性メンバーおよびタグが付いていないかまたは標識されていない1つ以上の試験結合化合物と、同時にまたは段階的様式で接触させるステップ、および(iii)タグが付いている結合性メンバーからの結合タグ量の低下を観察することによって、新規IL-6:IL-6Ra結合化合物、例えばIL-6:sIL-6Ra結合化合物を同定するステップを含む方法を含む。マルチウェルまたはアレイ形式を使用して、そのような方法をハイスループット様式で実施することができる。そのようなアッセイを溶液中で実施してもよい。例えばU.S. 5,814,468を参照のこと。該文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。上記のように、結合の検出は、該方法の実施者が直接、例えば検出可能な標識またはその存在の減少を視覚的に観察することによって解釈することができる。あるいは、本発明の結合方法は、オートラジオグラフ、写真、コンピュータプリントアウト、フローサイトメトリーレポート、グラフ、チャート、結果を含有する試験管または容器またはウェル、または本方法の結果についての任意の他の視覚的または物理的表現の形式でレポートを生成することができる。
【0196】
エピトープマッピングにおいて競合アッセイを使用することもできる。ある例では、エピトープマッピングを使用して、場合により最適化された中和および/またはモジュレーション特性を有する、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)に関する結合性メンバーが結合するエピトープを同定することができる。そのようなエピトープは線形または立体構造エピトープでありうる。立体構造エピトープは、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)の少なくとも2つの異なる断片を含むことができ、該断片は複合体中で互いに接近して位置して立体構造エピトープを形成し、それがIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)のインヒビター、例えばIL-6:IL-6Ra結合性メンバー(例えばIL-6:sIL-6Ra結合性メンバー)によって認識される。競合試験では、抗原のペプチド断片、特に、目的のエピトープを含むかまたは本質的にそれから構成されるペプチドを用いてよい。エピトープ配列に加えて両端に1個以上のアミノ酸を有するペプチドを使用してよい。本発明の結合性メンバーは、抗原に対するその結合が、上記配列を有するかまたは含むペプチドによって阻害されるようにしてよい。
【0197】
本発明はさらに、本発明の結合性メンバーをコードする、単離された核酸を提供する。核酸はDNAおよび/またはRNAを含んでよい。一方で、本発明は、上で定義される本発明のCDRまたはCDRセットまたはVHドメインまたはVLドメインまたは抗体抗原結合部位または抗体分子、例えばscFvまたはIgG1をコードする核酸を提供する。
【0198】
本発明はまた、少なくとも1つの上記ポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物を提供する。
【0199】
本発明はまた、1つ以上の上記構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。提供される任意のCDRまたはCDRセットまたはVHドメインまたはVLドメインまたは抗体抗原結合部位または抗体分子、例えばscFvまたはIgG1をコードする核酸は、それ自体が本発明の態様を構成し、そのコード対象の産物の製造方法であって、そのコード核酸からの発現ステップを含む方法と同様である。該核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって、好都合に発現を達成することができる。発現による生成後、VHまたはVLドメイン、または結合性メンバーを、任意の好適な技術を使用して単離しかつ/または精製し、次いで必要に応じて使用することができる。
【0200】
本発明の核酸はDNAまたはRNAを含んでよく、完全にまたは部分的に合成核酸であってよい。本明細書中に記載のヌクレオチド配列への言及は、文脈上特に要求されない限り、指定配列を有するDNA分子を包含し、かつ、Tの代わりにUが用いられる指定配列を有するRNA分子を包含する。
【0201】
さらに別の態様は、抗体VH可変ドメインの製造方法であって、コード核酸からの発現を生じさせるステップを含む方法を提供する。そのような方法は、該抗体VH可変ドメインの製造条件下で宿主細胞を培養するステップを含んでよい。
【0202】
VL可変ドメインおよび、VHおよび/またはVLドメインを含む結合性メンバーを製造するための類似の方法は本発明の別の態様として提供される。
【0203】
製造方法は、生成物を単離および/または精製するステップを含んでよい。製造方法は、生成物を製剤化して、少なくとも1種の追加の成分、例えば製薬的に許容される賦形剤を含む組成物とするステップを含んでよい。
【0204】
種々の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング系および発現系が周知である。好適な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、植物細胞、糸状菌、酵母およびバキュロウイルス系およびトランスジェニック植物および動物が含まれる。原核細胞での抗体および抗体断片の発現は当技術分野において確立されている。レビューに関しては、例えばPlueckthun [62]を参照のこと。一般的な細菌宿主はE. coliである。
【0205】
培養中の真核細胞での発現もまた、結合性メンバーを製造するための選択肢として当業者に利用可能である[63, 64, 65]。当技術分野において、異種ポリペプチドの発現に利用可能な哺乳類セルラインには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス黒色腫細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胚性腎細胞、ヒト胚性網膜細胞および多数の他の細胞が含まれる。
【0206】
適切な調節配列、例えばプロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を必要に応じて含有する好適なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、例えばファージミド、またはウイルス、例えば「ファージ」であってよい[66]。核酸を操作するための多数の公知技術およびプロトコル、例えば核酸構築物の製造における、突然変異誘発、シークエンシング、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、およびタンパク質の分析は、Ausubel et al. [67]に詳細に記載されている。
【0207】
本発明の別の態様は、本明細書中で開示されている核酸を含有する宿主細胞を提供する。そのような宿主細胞はin vitroであってよく、培養中であってよい。そのような宿主細胞はin vivoであってよい。宿主細胞がin vivoに存在すれば、本発明の結合性メンバーを「イントラボディー」または細胞内抗体として細胞内で発現することが可能になる。イントラボディーは遺伝子治療に使用することができる。
【0208】
さらに別の態様は、本発明の核酸を宿主細胞内に導入するステップを含む方法を提供する。該導入では、任意の利用可能な技術を用いてよい。真核細胞では、好適な技術には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクションおよびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えばワクシニアまたは、昆虫細胞では、バキュロウイルスを使用する形質導入が含まれる。宿主細胞、特に真核細胞での核酸の導入では、ウイルスまたはプラスミドに基づく系を使用することができる。プラスミド系はエピソームとして維持するか、または宿主細胞内または人工染色体内に組み込むことができる。組込みは、単一または複数の遺伝子座で1コピー以上をランダムにまたはターゲティングして組み込むことによって行うことができる。細菌細胞に好適な技術には、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使用するトランスフェクションが含まれる。
【0209】
導入後に、例えば該遺伝子の発現条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を生じさせるかまたは可能にしてよい。発現産物の精製は、当業者に公知の方法によって達成してよい。
【0210】
本発明の核酸は宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込むことができる。標準的技術にしたがって、ゲノムとの組換えを促進する配列を含ませることによって組込みを促進することができる。
【0211】
本発明はまた、上記結合性メンバーまたはポリペプチドを発現するために、発現系で上記構築物を使用するステップを含む方法を提供する。
【0212】
本明細書中の他の箇所で考察されるように、種々の疾患でのIL-6の関与に関する証拠が存在する。したがって、IL-6と関連している疾患の診断または治療方法において本発明の結合性メンバーを使用することができる。そのような疾患は、例えば、炎症性および/または自己免疫性疾患、例えば関節リウマチ、骨関節炎、悪液質、慢性閉塞性肺疾患、若年性特発性関節炎、喘息、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、クローン病またはアテローム性動脈硬化症である。本発明の結合性メンバーを使用して、腫瘍および/または癌等の疾患を治療することもできる。
【0213】
ゆえに、少なくとも1つの本発明の結合性メンバーを使用して、患者、動物、器官、組織または細胞の少なくとも1種のIL-6関連疾患をモジュレートまたは治療してよく、該疾患には、非限定的に、以下の疾患が含まれる。
【0214】
(1) (呼吸管)閉塞性気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD);喘息、例えば気管支、アレルギー性、内因性、外因性および塵埃喘息、特に慢性または難治性喘息(例えば遅発型喘息および気道応答性亢進);気管支炎;急性、アレルギー性、萎縮性鼻炎および慢性鼻炎、例えば乾酪性鼻炎(rhinitis caseosa)、肥大性鼻炎、化膿性鼻炎(rhinitis purulenta)、乾性鼻炎(rhinitis sicca)および薬物性鼻炎(rhinitis medicamentosa);膜性鼻炎、例えばクループ性、線維素性および偽膜性鼻炎および腺病性鼻炎;季節性鼻炎、例えば神経性鼻炎(枯草熱)および血管運動性鼻炎、副鼻腔炎、特発性肺線維症(IPF);サルコイドーシス、農夫肺および関連疾患、成人呼吸促迫症候群、過敏性肺炎、肺線維症および特発性間質性肺炎。
【0215】
(2) (骨および関節)関節リウマチ、若年性慢性関節炎、全身発症若年性関節炎、血清反応陰性脊椎関節症(例えば強直性脊椎炎、乾癬性関節炎およびライター病)、ベーチェット病、シェーグレン(Siogren)症候群および全身性硬化症、痛風、骨粗鬆症および骨関節炎。
【0216】
(3) (皮膚)乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および他の湿疹性(eczmatous)皮膚疾患、アレルギー性接触皮膚炎、脂漏性(seborrhoetic)皮膚炎、扁平苔癬、強皮症、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水泡症、じんま疹、皮膚脈管炎(angiodermas)、脈管炎(vasculitides)、紅斑、皮膚好酸球増加症、ブドウ膜炎、円形脱毛症、アレルギー性結膜炎および春季結膜炎(vernalvemal conjunctivitis)。
【0217】
(4) (消化管)胃潰瘍、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎(eosinopilic gastro-enteritis)、肥満細胞症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、抗リン脂質症候群))、腸から遠隔の影響を有する食物関連アレルギー、例えば片頭痛、鼻炎および湿疹。
【0218】
(5) (他の組織および全身性疾患)悪液質、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、局所または円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、キャッスルマン病、ハシモト甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、B型インスリン抵抗性糖尿病、鎌形赤血球貧血、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、腎炎症候群、好酸球増加症筋膜炎、ハイパーIgE症候群、全身性血管炎/ウェグナー肉芽腫症、睾丸炎/精管切除回復術、らい腫らい、アルコール誘発肝炎、セザリー症候群および特発性血小板減少症紫斑病;術後接着、ネフローゼ、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少性発熱、急性膵炎、尿性敗血症、グレーブス病、レイノー病、抗体媒介細胞傷害性、III型過敏性反応、POEMS症候群(多発神経障害、臓器巨大症、内分泌疾患、単クローン性免疫グロブリン血症、および皮膚変化症候群)、混合結合組織病、特発性アジソン病、糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、MI(心臓切開)後症候群、IV型過敏症、細胞内生物に起因する肉芽腫、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、アルファ-I-アンチトリプシン欠乏症、糖尿病網膜症、ハシモト甲状腺炎、視床下部・下垂体・副腎軸評価、甲状腺炎、脳脊髄炎、新生児慢性肺疾患、家族性食血細胞リンパ組織球増多症、脱毛症、放射線療法(例えば、非限定的に、無力症、貧血、悪液質、等が含まれる)、慢性サリチル酸中毒、睡眠時無呼吸、肥満症、心不全、および髄膜炎菌性敗血症。
【0219】
(6) (同種移植拒絶)例えば腎臓、心臓、肝臓、肺、膵臓、骨髄、骨、小腸、皮膚、軟骨および角膜の移植後の急性および慢性拒絶;および慢性移植片対宿主病。
【0220】
(7) (悪性疾患)白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性白血病、T細胞、B細胞、またはFAB ALL、慢性(chromic)骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、脊髄形成異常(myelodyplastic)症候群(MDS)、任意のリンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、任意の悪性リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、腎細胞癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵癌、上咽頭癌、悪性組織球増殖症、悪性腫瘍の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、癌関連骨吸収、癌関連骨痛;癌転移の抑制;癌悪液質の改善。
【0221】
(8) 嚢胞性線維症、ストローク、心臓、脳、末梢肢(peripheral limbs)および他の器官の再潅流傷害。
【0222】
(9) やけど創傷、外傷/出血、電離放射線曝露、慢性皮膚潰瘍。
【0223】
(10) 生殖疾患(例えば排卵、月経および着床の障害、早期陣痛、子癇前症、子宮内膜症)。
【0224】
(11) (感染)急性または慢性細菌感染、急性および慢性寄生または感染プロセス、例えば細菌、ウイルスおよび真菌感染、HIV感染/HIV神経疾患、髄膜炎、肝炎(A、BまたはC、または他のウイルス性肝炎等)、敗血性関節炎、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、大腸菌(e. coli)0157:h7、溶血性尿毒症症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、マラリア、デング出血熱、レーシュマニア症、ライ病、中毒性ショック症候群、連鎖球菌性筋炎、ガス壊疸、結核菌(mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ(mycobacterium avium intracellulare)、カリニ肺炎、骨盤内炎症性疾患、睾丸炎/エピディディミティス(epidydimitis)、レジオネラ、ライム病、インフルエンザa、エプスタイン・バーウイルス、生命関連赤血球貧食症候群(vital-associated hemaphagocytic syndrome)、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎、等。
【0225】
したがって、本発明は、IL-6関連疾患の治療方法であって、それを必要としている患者に1種以上の本発明の結合性メンバーの有効量を、単独でまたは、当技術分野において公知もしくは本明細書中に記載の別の適切な薬物と併用療法で投与するステップを含む方法を提供する。
【0226】
特定の疾患にIL-6が関与する証拠は本明細書中の他の箇所で概説されている。それに加えて、本明細書中に記載のデータは、本発明の結合性メンバーを使用してそのような疾患を治療(該疾患の予防処置およびその重症度の低減が含まれる)することができることをさらに示す。したがって、本発明は、本明細書中に記載の任意の疾患の少なくとも1つの症状を治療するかまたはその重症度を低減する方法であって、それを必要としている患者に1種以上の本発明の結合性メンバーの有効量を、単独でまたは、当技術分野において公知もしくは本明細書中に記載の別の適切な薬物と併用療法で投与して、上記疾患のいずれかの少なくとも1つの症状の重症度が低減されるようにするステップを含む方法を提供する。
【0227】
ゆえに、本発明の結合性メンバーは、IL-6、例えばIL-6発現および/または活性、特に異常な発現/活性が関与する疾患または障害の治療における治療物質として有用である。治療方法は、本発明の結合性メンバーの有効量を、それを必要としている患者に投与して、IL-6の異常な発現および/または活性を低下させるステップを含んでよい。治療方法は、(i)例えば上記診断方法を使用して、異常なIL-6レベルまたは活性を示す患者を同定するステップ、および(ii)本発明の結合性メンバーの有効量を患者に投与して、IL-6、IL-6Raおよび/またはIL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)の異常な発現および/または活性を低下させるステップを含んでよい。本発明に基づく有効量は、治療される特定の疾患または障害の少なくとも1つの症状の重症度を低下または減少させるためにIL-6の異常な発現および/または活性を低下させる量であり、必ずしも該疾患または障害を治癒させる量ではない。
【0228】
本発明はまた、IL-6の少なくとも1つの作用にアンタゴナイズ(拮抗阻害)する方法であって、1種以上の本発明の結合性メンバーの有効量と接触させるかまたはそれを投与して、該IL-6の少なくとも1つの作用に対しアンタゴナイズするようにするステップを含む方法を提供する。本発明の方法によってアンタゴナイズすることができるIL-6の作用には、IL-6:IL-6Ra(例えばIL-6:sIL-6Ra)とその受容体gp130の結合、およびこの結合の結果として生じる任意の下流の効果が含まれる。
【0229】
したがって、本発明の別の態様は、提供される結合性メンバーを投与するステップを含む治療方法、そのような結合性メンバーを含む医薬組成物、および例えば結合性メンバーを製薬的に許容される賦形剤とともに製剤化するステップを含む薬物または医薬組成物の製造方法における、投与用薬物の製造でのそのような結合性メンバーの使用を提供する。製薬的に許容される賦形剤は、医薬組成物に入るが二次反応を引き起こさず、かつ、例えば活性化合物(群)の投与を容易にし、身体内でのその寿命および/または効力を増加させ、溶液中のその溶解度を高め、またはその保存を改善する化合物または化合物の組み合わせであってよい。これらの製薬的に許容されるビヒクルは周知であり、選択される活性化合物(群)の性質および投与様式に応じて、当業者は該ビヒクルを適合させる。
【0230】
本発明の結合性メンバーは、通常、該結合性メンバーに加えて少なくとも1種の成分を含む医薬組成物の形態で投与される。ゆえに、本発明に基づく、本発明にしたがって使用するための医薬組成物は、活性成分に加えて、当業者に周知の製薬的に許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤または他の材料を含んでよい。そのような材料は無毒で、活性成分の効力を妨げないべきであろう。担体または他の材料の厳密な性質は投与経路に依存し、該経路は、以下で考察されるように、経口、吸入、気管内、局所、膀胱内(intra-vesicular)であるかまたは注射による経路であってよい。
【0231】
経口投与用の医薬組成物、例えば単一ドメイン抗体分子(例えば「nanobodiesTM」)等もまた、本発明において想定される。そのような経口製剤は、錠剤、カプセル、粉末、液体または半固体の剤形であってよい。錠剤は、固体担体、例えばゼラチンまたはアジュバントを含んでよい。液体医薬組成物は、概して、液体担体、例えば水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含ませることができる。
【0232】
静脈内注射、または罹患部位での注射では、活性成分は、パイロジェンを含まず、好適なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容される水性溶液の剤形である。該当する当業者は、例えば等張性ビヒクル、例えば塩化ナトリウム液、リンガー液、乳酸加リンガー液を使用して、好適な溶液を調製することが十分に可能である。保存剤、安定剤、バッファー、酸化防止剤および/または他の添加物を必要に応じて用いることができる。それには、バッファー、例えばリン酸、クエン酸および他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3'-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;単糖、二糖および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0233】
本発明の結合性メンバーは、分子の物理化学的特性および送達経路に応じて、液体、半固体または固体剤形で製剤化してよい。製剤には、賦形剤、または賦形剤の組み合わせ、例えば:糖、アミノ酸および界面活性剤を含ませてよい。液体製剤には、広範囲の抗体濃度およびpHを含ませてよい。固体製剤は、例えば、凍結乾燥、スプレー乾燥、または超臨界流体技術による乾燥によって製造することができる。結合性メンバーの製剤は、意図される送達経路に依存する。例えば、肺送達用製剤は、吸入時に肺に深く浸透することを保証する物性を有する粒子からなり;局所製剤(例えば瘢痕、例えば真皮瘢痕治療用の局所製剤)には、薬物が作用点に留まる期間を延長する粘性調節剤を含ませてよい。結合性メンバーは、該結合性メンバーを急速な放出から保護する担体とともに製造してよく、例えば制御放出製剤であり、それには、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系が含まれる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤を調製するための多数の方法が当業者に公知である[68]。
【0234】
治療は、経口で(例えば単一ドメイン抗体分子(例えば「nanobodiesTM」)のように)、注射によって(例えば皮下、関節内、静脈内、腹膜内、動脈内または筋肉内注射によって)、吸入によって、気管内、膀胱内経路(膀胱内への点滴注入)によって、または局所的に(例えば眼内、鼻内、経直腸、創傷内、皮膚上)施してよい。該治療は、パルス注入によって、特に少ない用量の結合性メンバーを投与してよい。投与経路は、治療の物理化学的特性によって、疾患に関する特別な配慮によって、または効力を最適化するかもしくは副作用を最小にする必要性によって、決定することができる。特定の一投与経路は静脈内経路である。本発明の医薬組成物を投与する別の経路は皮下経路である。治療は診療所での使用に制限されないことが想定される。したがって、ニードルフリーデバイスを使用する皮下注射も有益である。
【0235】
組成物は、単独でまたは他の治療と組み合わせて、治療対象の症状に応じて同時にもしくは連続して投与することができる。
【0236】
本発明の結合性メンバーは、追加の治療構成要素と組み合わせた併用療法の部分として使用することができる。併用治療、特に本発明の結合性メンバーと1種以上の他の薬物の併用を使用して、大きな相乗効果を得ることができる。本発明の結合性メンバーは、本明細書中で列挙されている1種以上の症状の治療のために、別の治療物質または物質群と同時にまたは連続してまたは混合調製物として投与してよい。
【0237】
本発明の結合性メンバーは、細胞傷害性物質の治療効力を高めることができる化学増感剤として使用することができ、ゆえに1種以上の細胞傷害性物質と組み合わせて、同時にまたは連続して投与するために提供することができる。結合性メンバーは、放射線の効力を向上させる放射線増感剤として使用することもでき、ゆえに放射線と組み合わせて、同時にまたは連続して投与するために提供することができる。
【0238】
本発明の結合性メンバーは、1種以上の以下の物質と組み合わせてまたはそれらとともに提供することができる。
【0239】
- サイトカインまたはサイトカイン機能のアゴニストもしくはアンタゴニスト(例えばサイトカインシグナル伝達経路に作用する物質、例えばSOCS系のモジュレーター)、例えばアルファ-、ベータ-および/またはガンマ-インターフェロン;インシュリン様成長因子I型(IGF-1)、その受容体および関連結合タンパク質;インターロイキン(IL)、例えば1種以上のIL-1〜33、および/またはインターロイキンアンタゴニストまたはインヒビター、例えばアナキンラ(anakinra);インターロイキンファミリーメンバーの受容体のインヒビターまたはそのような受容体の特定サブユニットのインヒビター、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)インヒビター、例えば抗TNFモノクローナル抗体(例えばインフリキシマブ、アダリムマブ(adalimumab)および/またはCDP-870)および/またはTNF受容体アンタゴニスト、例えば免疫グロブリン分子(例えばエタネルセプト(etanercept))および/または低分子量物質、例えばペントキシフィリン(pentoxyfylline)。
【0240】
- B細胞のモジュレーター、例えばBリンパ球を標的にするモノクローナル抗体(例えばCD20(リツキシマブ)またはMRA-aILl6R)またはTリンパ球を標的にするもの(例えばCTLA4-Ig、HuMax Il-15またはアバタセプト(Abatacept))。
【0241】
- 破骨細胞活性を阻害するモジュレーター、例えばRANKLに対する抗体。
【0242】
- ケモカインまたはケモカイン受容体機能のモジュレーター、例えばCCR1、CCR2、CCR2A、CCR2B、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10およびCCR11(C-Cファミリー);CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4およびCXCR5およびCXCR6(C-X-Cファミリー)およびCX3CR1(C-X3-Cファミリー)のアンタゴニスト。
【0243】
- マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、すなわち1種以上のストロメライシン、コラゲナーゼおよびゼラチナーゼならびにアグレカナーゼ(aggrecanase)、特にコラゲナーゼ-1(MMP-1)、コラゲナーゼ-2(MMP-8)、コラゲナーゼ-3(MMP-13)、ストロメライシン-1(MMP-3)、ストロメライシン-2(MMP-10)および/またはストロメライシン-3(MMP-11)および/またはMMP-9および/またはMMP-12のインヒビター、例えばドキシサイクリン等の物質。
【0244】
- ロイコトリエン生合成インヒビター、5-リポキシゲナーゼ(5-LO)インヒビターまたは5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト、例えばジレウトン(zileuton);ABT-761;フェンレウトン(fenleuton);テポキサリン(tepoxalin);Abbott-79175;Abbott-85761;N-(5-置換)-チオフェン-2-アルキルスルホンアミド;2,6-ジ-tert-ブチルフェノールヒドラゾン;メトキシテトラヒドロピラン、例えばZeneca ZD-2138;化合物SB-210661;ピリジニル置換2-シアノナフタレン化合物、例えばL-739,010;2-シアノキノリン化合物、例えばL-746,530;インドールおよび/またはキノリン化合物、例えばMK-591、MK-886および/またはBAY x 1005;
- フェノチアジン-3-1、例えばL-651,392;アミジノ化合物、例えばCGS-25019c;ベンゾキサラミン(benzoxalamines)、例えばオンタゾラスト(ontazolast);ベンゼンカルボキシミドアミド(benzenecarboximidamides)、例えばBIIL 284/260;および化合物、例えばザフィルルカスト(zafirlukast)、アブルカスト(ablukast)、モンテルカスト(montelukast)、プランルカスト(pranlukast)、ベルルカスト(verlukast)(MK-679)、RG-12525、Ro-245913、イラルカスト(iralukast)(CGP 45715A)およびBAY x 7195からなる群から選択されるロイコトリエン(LT)B4、LTC4、LTD4、およびLTE4の受容体アンタゴニスト。
【0245】
- ホスホジエステラーゼ(PDE)インヒビター、例えばメチルキサンタニン(methylxanthanine)、例えばテオフィリンおよび/またはアミノフィリン;および/または選択的PDEアイソザイム阻害剤、例えばPDE4インヒビターおよび/またはアイソフォームPDE4Dのインヒビターおよび/またはPDE5のインヒビター。
【0246】
- ヒスタミン1型受容体アンタゴニスト、例えばセチリジン(cetirizine)、ロラタジン(loratadine)、デスロラタジン(desloratadine)、フェキソフェナジン、アクリバスチン(acrivastine)、テルフェナジン、アステミゾール、アゼラスチン、レボカバスチン(levocabastine)、クロルフェニラミン、プロメタジン、シクリジン、および/またはミゾラスチン(mizolastine)(概して経口で、局所的にまたは非経口で投与される)。
【0247】
- プロトンポンプインヒビター(例えばオメプラゾール)または胃保護性ヒスタミン2型受容体アンタゴニスト。
【0248】
- ヒスタミン4型受容体のアンタゴニスト。
【0249】
- アルファ-1/アルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト血管収縮性交感神経様作用薬、例えばプロピルヘキセドリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、エフェドリン、シュードエフェドリン、塩酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸キシロメタゾリン、塩酸トラマゾリンおよび塩酸エチルノルエピネフリン。
【0250】
- 抗コリン作動薬、例えばムスカリン受容体(M1、M2、およびM3)アンタゴニスト、例えばアトロピン、ヒヨスチン、グリコピロレート、イプラトロピウムブロミド、チオトロピウムブロミド(tiotropium bromide)、オキシトロピウムブロミド、ピレンゼピンおよびテレンゼピン(telenzepine)。
【0251】
- ベータ-アドレナリン受容体アゴニスト(ベータ受容体サブタイプ1-4を含む)、例えばイソプレナリン、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、テルブタリン、オルシプレナリン、ビトルテロールメシレートおよび/またはピルブテロール、例えばそのキラルエナンチオマー。
【0252】
- クロモン、例えばクロモグリク酸ナトリウムおよび/またはネドクロミルナトリウム。
【0253】
- 糖質コルチコイド、例えばフルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)、シクレソニド(ciclesonide)、および/またはフランカルボン酸モメタゾン(mometasone furoate)。
【0254】
- 核ホルモン受容体、例えばPPARをモジュレートする物質。
【0255】
- 免疫グロブリン(Ig)またはIg調製物またはIg機能をモジュレートするアンタゴニストもしくは抗体、例えば抗IgE(例えばオマリズマブ(omalizumab))。
【0256】
- 他の全身または局所適用の抗炎症剤、例えばサリドマイドまたはその誘導体、レチノイド、ジトラノール(dithranol)および/またはカルシポトリオール(calcipotriol)。
【0257】
- アミノサリチル酸およびスルファピリジンの組み合わせ、例えばスルファサラジン、メサラジン、バルサラジド(balsalazide)、およびオルサラジン(olsalazine);および免疫調節剤、例えばチオプリン(thiopurines);およびコルチコステロイド、例えばブデソニド。
【0258】
- 抗菌剤、例えばペニシリン誘導体、テトラサイクリン、マクロライド、ベータ-ラクタム、フルオロキノロン、メトロニダゾールおよび/または吸入アミノグリコシド;および/または抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、ファムシクロビル(famciclovir)、バラシクロビル(valaciclovir)、ガンシクロビル、シドフォビル(cidofovir);アマンタジン、リマンタジン;リバビリン;ザナマビル(zanamavir)および/またはオセルタマビル(oseltamavir);プロテアーゼインヒビター、例えばインジナビル、ネルフィナビル、リトナビルおよび/またはサキナビル;ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えばジダノシン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン;非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えばネビラピン、エファビレンツ。
【0259】
- 心血管作動薬、例えばカルシウムチャネルブロッカー、ベータ-アドレナリン受容体ブロッカー、アンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、アンギオテンシン-2受容体アンタゴニスト;脂質低下剤、例えばスタチンおよび/またはフィブラート(fibrate);血液細胞形態のモジュレーター、例えばペントキシフィリン(pentoxyfylline);血栓溶解剤および/または抗凝血剤、例えば血小板凝集インヒビター。
【0260】
- CNS作動薬、例えば抗うつ剤(例えばセルトラリン)、抗パーキンソン薬(例えばデプレニル、L-ドーパ、ロピニロール(ropinirole)、プラミペキソール;MAOBインヒビター、例えばセレギン(selegine)およびラサギリン(rasagiline);comPインヒビター、例えばタスマル(tasmar);A-2インヒビター、ドーパミン再摂取インヒビター、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニストおよび/またはニューロン一酸化窒素シンターゼのインヒビター)および抗アルツハイマー薬、例えばドネペジル、リバスティグミン、タクリン、COX-2インヒビター、プロペントフィリンまたはメトリホナート。
【0261】
- 急性および慢性痛を治療するための物質、例えば中枢または末梢作用鎮痛剤、例えばオピオイド類似体または誘導体、カルバマゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、アミトリプチリン(amitryptiline)または他の抗うつ剤、パラセタモール、または非ステロイド性抗炎症剤。
【0262】
- 非経口または局所適用(吸入を含む)局所麻酔剤、例えばリグノカインまたはその類似体。
【0263】
- 抗骨粗鬆症剤、例えばホルモン剤、例えばラロキシフェン、またはビホスホナート、例えばアレンドロナート(alendronate)。
【0264】
- (i)トリプターゼインヒビター;(ii)血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;(iii)インターロイキン変換酵素(ICE)インヒビター;(iv)IMPDHインヒビター;(v)接着分子インヒビター、例えばVLA-4アンタゴニスト;(vi)カテプシン;(vii)キナーゼインヒビター、例えばチロシンキナーゼのインヒビター(例えばBtk、Itk、Jak3 MAP インヒビターの例にはゲフィチニブ、メシル酸イマチニブが含まれる)、セリン/スレオニンキナーゼ(例えばMAPキナーゼ、例えばp38、JNK、プロテインキナーゼA、BおよびCおよびIKKのインヒビター)、または細胞周期調節に関与するキナーゼ(例えばサイクリン依存性キナーゼ);(viii)グルコース-6リン酸デヒドロゲナーゼインヒビター;(ix)キニン-B.sub1. -および/またはB.sub2. -受容体アンタゴニスト;(x)抗痛風剤、例えばコルヒチン;(xi)キサンチンオキシダーゼインヒビター、例えばアロプリノール;(xii)尿酸排泄剤、例えばプロベネシド、スルフィンピラゾン、および/またはベンズブロマロン;(xiii)成長ホルモン分泌促進剤;(xiv)トランスフォーミング成長因子(TGFβ);(xv)血小板由来成長因子(PDGF);(xvi)線維芽細胞成長因子、例えば塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF);(xvii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);(xviii)カプサイシンクリーム;(xix)タキキニンNK.sub1.および/またはNK.sub3.受容体アンタゴニスト、例えばNKP-608C、SB-233412(タルネタント(talnetant))および/またはD-4418;(xx)エラスターゼインヒビター、例えばUT-77および/またはZD-0892;(xxi)TNF-アルファ変換酵素インヒビター(TACE);(xxii)誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)インヒビターまたは(xxiii)TH2細胞上で発現される化学誘引物質受容体相同分子(例えばCRTH2アンタゴニスト);(xxiv)P38のインヒビター(xxv)トール(Toll)様受容体(TLR)の機能をモジュレートする物質および(xxvi)プリン受容体の活性をモジュレートする物質、例えばP2X7;(xxvii)転写因子活性
化、例えばNFkB、API、および/またはSTATSのインヒビター。
【0265】
インヒビターは特異的であるか、または混合インヒビター、例えば上述の2種以上の分子(例えば受容体)または分子クラスを標的にするインヒビターであってよい。
【0266】
結合性メンバーはまた、化学療法剤または別のチロシンキナーゼインヒビターとともに、同時投与でまたはイムノコンジュゲートの形態で使用することができる。該抗体の断片はまた、組換え機構または生化学的カップリングおよび次いで上記抗体の特異性を、IL-6が関連している活性に関与する他の分子を認識可能な他の抗体の特異性と結び付けることによって取得される二重特異性抗体において使用することができる。
【0267】
炎症性疾患の治療では、本発明の結合性メンバーを、1種以上の物質、例えば局所適用であるか全身適用であるかにかかわらず非ステロイド性抗炎症剤(以後NSAID)、例えば非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-1/COX-2インヒビター、例えばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェン、フェナマート、例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アザプロパゾン、ピラゾロン、例えばフェニルブタゾン、サリチラート、例えばアスピリン);選択的COX-2インヒビター(例えばメロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルマロコキシブ(lumarocoxib)、パレコキシブ(parecoxib)およびエトリコキシブ(etoricoxib));シクロオキシゲナーゼ阻害性一酸化窒素ドナー(CINOD);グルココルチコステロイド(局所、経口、筋肉内、静脈内または関節内経路による投与のいずれでもよい);メトトレキセート、レフルノミド(leflunomide);ヒドロキシクロロキン、d-ペニシラミン、オーラノフィンまたは他の非経口もしくは経口金製剤;鎮痛剤;ジアセレイン(diacerein);関節内治療薬、例えばヒアルロン酸誘導体;および栄養補助食品、例えばグルコサミンと組み合わせてよい。
【0268】
本発明の結合性メンバーは癌を治療するための既存の治療物質と組み合わせて使用することもできる。組み合わせて使用するために好適な物質には、以下の物質が含まれる。
【0269】
(i)内科的腫瘍学において使用される抗増殖性/抗悪性腫瘍薬およびその組み合わせ、例えばGleevec(メシル酸イマチニブ)、アルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロランブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば葉酸拮抗剤、例えばフルオロピリミジン、例えば5-フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビンおよびパクリタキセル);抗腫瘍性抗生物質(例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害剤(例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンおよびタキソイド(taxoids)、例えばタキソールおよびタキソテール);およびトポイソメラーゼインヒビター(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカンおよびカンプトセシン);
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲン受容体下方制御因子(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン剤(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロレリン(leuprorelin)およびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼインヒビター(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール(vorazole)およびエキセメスタン)および5α-レダクターゼインヒビター、例えばフィナステリド;
(iii)癌細胞侵襲を阻害する物質(例えばメタロプロテイナーゼインヒビター、例えばマリマスタット(marimastat)およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能のインヒビター);
(iv)成長因子機能のインヒビター、例えば成長因子抗体、成長因子受容体抗体(例えば抗erbb2抗体トラスツズマブおよび抗erbb1抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、チロシンキナーゼインヒビターおよびセリン/スレオニンキナーゼインヒビター、例えば上皮細胞成長因子ファミリーのインヒビター(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼインヒビター、例えばN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ(erlotinib)、OSI-774)および6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(CI 1033))、例えば血小板由来成長因子ファミリーのインヒビターおよび例えば肝細胞成長因子ファミリーのインヒビター;
(v)血管新生阻害剤、例えば血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(bevacizumab)、国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354(各文献はその全体が本明細書中に組み入れられる)に開示されている化合物等の化合物および他の機構で働く化合物(例えばリノミド(linomide)、インテグリンαvβ3機能のインヒビターおよびアンギオスタチン);
(vi)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチン(combretastatin)A4および国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434およびWO 02/08213(各文献はその全体が本明細書中に組み入れられる)に開示されている化合物;
(vii)アンチセンス治療薬、例えば上で列挙される標的に対するアンチセンス治療薬、例えばISIS 2503、抗rasアンチセンス;
(viii)遺伝子治療アプローチ、例えば異常遺伝子、例えば異常p53または異常BRCA1またはBRCA2を置換するアプローチ、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ治療(gene directed enzyme pro-drug therapy)アプローチ、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロレダクターゼ酵素を使用するアプローチおよび化学療法または放射線療法に対する患者の耐容性を高めるアプローチ、例えば多剤耐性遺伝子治療;および
(ix)免疫療法アプローチ、例えば患者腫瘍細胞の免疫原性を高めるex vivoおよびin vivoアプローチ、例えばサイトカイン、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子のトランスフェクション、T細胞不応答を低下させるアプローチ、トランスフェクトされた免疫細胞、例えばサイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞を使用するアプローチ、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍セルラインを使用するアプローチおよび抗イディオタイプ抗体を使用するアプローチ。
【0270】
本発明の結合性メンバーおよび1種以上の上記追加薬用成分を医薬品の製造に使用してよい。該医薬品は個体に対する単独または複合投与用であってよく、したがって結合性メンバーおよび追加の成分を複合調製物または単独調製物として含んでよい。単独調製物を使用して、別々かつ連続した投与または同時投与を容易にし、異なる経路、例えば経口および非経口投与による成分の投与を可能にすることができる。
【0271】
本発明にしたがって提供される組成物を哺乳類に投与することができる。通常、投与は「治療有効量」で行われる。これは患者に利益を示すために十分な量である。そのような利益は少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってよい。実際の投与量、および投与の割合および時間経過は、治療対象物の性質および重症度、治療対象の具体的な哺乳類、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、組成物の送達部位、結合性メンバーのタイプ、投与方法、投与計画および医師に公知の他の要因に依存する。治療の処方、例えば用量等の決定は一般の開業医および他の医学博士の責任の範囲内であり、症状の重症度および/または治療対象の疾患の進行度に依存する。抗体の適切な用量は当技術分野において周知である[69, 70]。投与される医薬品のタイプに応じて本明細書中またはPhysician's Desk Reference(2003)に記載の具体的用量を使用してよい。本発明の結合性メンバーの治療有効量または好適な用量は、そのin vitro活性と動物モデルにおけるin vivo活性を比較することによって決定することができる。マウスおよび他の試験動物での有効量をヒトに対して外挿するための方法が公知である。厳密な用量はいくつかの要因に依存し、該要因には、抗体が診断用であるか、予防用であるか、または治療用であるか、治療対象の領域のサイズおよび位置、抗体の厳密な性質(例えば完全抗体、断片またはダイアボディ)および抗体に結合されている任意の検出可能な標識または他の分子の性質が含まれる。典型的な抗体用量は、全身適用では100μg〜1 gの範囲であり、局所適用では1μg〜1 mgの範囲である。最初に高負荷量を投与し、次いで1回以上の低用量を投与してよい。典型的に、抗体は完全抗体であり、例えばIgG1アイソタイプである。これは成体患者の一回治療に関する用量であり、子供および乳児に関して比例的に調節してよく、また、分子量に比例して他の抗体形態に関して調節してよい。治療は、医師の裁量で、毎日、週2回、毎週または毎月の間隔で反復してよい。治療は、皮下投与では2〜4週毎であってよく、静脈内投与では4〜8週毎であってよい。治療は定期的であってよく、投与間の期間は約2週間以上、例えば約3週間以上、約4週間以上、または約月一回である。治療は、外科手術前および/または後に施してよく、かつ/または外科治療の解剖部位に直接投与または適用してよい。
【0272】
実施例
【実施例1】
【0273】
ナイーブファージディスプレイライブラリーからのヒトIL-6/sIL-6R複合体に対する抗体の単離
選択は、FLAGタグ付き複合体を使用し、ビオチン化抗FLAGモノクローナル抗体で処理されたストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズを使用して捕捉することで溶液中で実行した。IL-6/sIL-6R複合体の形成は、2つのタンパク質(リガンドまたは受容体)の一方のみをFLAGでタグ付けして行った。したがって、形成されたすべての複合体は抗FLAGコーティング常磁性ビーズ上に同一方向で捕捉される。複合体を形成させるために、タグが付いている材料には2倍過剰のタグが付いていないタンパク質を常に加えて、選択中に存在する、複合体を形成していないタグ付きタンパク質の量が最小になるようにした。続いてその後の選択ラウンドは、同一のFLAGタグ付きタンパク質をずっと使用するか、またはタグ付け対象のタンパク質を入れ替えることで複合体がビーズ上に捕捉される向きを入れ替えることによって、完了した。ストレプトアビジンまたは抗FLAGモノクローナル抗体に特異的なファージ抗体が単離される可能性を最小にするために、まず、そのようなファージを除去するよう処理済みビーズに対してライブラリーを選択解除した後に、複合体を加えた。リンカーを介して共有結合によって連結されたIL-6/sIL-6R(ハイパーIL-6)に対するgp130の結合を伴う生化学アッセイを使用して、IL-6/sIL-6R複合体と結合しかつそのgp130との結合を阻害できるScFvを選択生成物から同定した。そしてこれらの中和性scFvをファージELISAによって試験して、IL-6/sIL-6R複合体に対する特異性を決定した。特異性を決定するために、ビオチン化抗FLAGモノクローナル抗体で処理されたストレプトアビジンコーティングプレート上に固定化された以下のFLAGタグ付き試薬:IL-6、sIL-6R、FLAGタグ付きリガンドおよびタグが付いていない受容体からなるIL-6/sIL-6R複合体、タグが付いていないリガンドおよびFLAGタグ付き受容体からなるIL-6/sIL-6R複合体、ハイパーIL-6、および抗FLAG抗体処理済みプレート単独に対して、サンプルを試験した。複合体特異的クローンを、ハイパーIL-6および両方の形態の複合体と結合するが、リガンドまたは受容体単独とは結合しないクローンとして定義した。複合体特異的クローンをIgGに再構築し、gp130-ハイパーIL-6生化学アッセイにおいて再評価した。個々の成分ではなく複合体に対する特異性を、ELISAおよび可溶性結合アッセイにおいてさらに確認した。
【実施例2】
【0274】
ハイパーIL-6/gp130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイ(粗製ペリプラズム調製物)
選択生成物を、ハイパーIL-6/gp130 Fc結合HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイにおいて、組換えヒトgp130 Fc(R&D systems 671-GP)に対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6(Hyper IL-6)(社内でHEK-EBNA発現させたもの)の結合の阻害についてスクリーニングした。詳細な方法は材料および方法セクションに記載されている。
【実施例3】
【0275】
ハイパーIL-6/GP130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイ(精製scFv調製物)
粗製調製物として有意な阻害効果を示したScFvをシークエンシングし、精製調製物として製造した。これらのサンプルを、HTRF(登録商標)アッセイにおいて組換えヒトgp130 Fcに対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の結合の阻害について試験した。scFv濃度の滴定を使用して、該アッセイでのIC50値によって測定されるクローン効力を確認した。詳細な方法は材料および方法セクションに記載されている。
【0276】
ハイパーIL-6/GP130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイにおける精製scFv滴定の効力を、対応するIgGデータとともに表2に記載する。
【実施例4】
【0277】
複合体特異的scFvを同定するファージELISAスクリーニング
材料および方法セクションに記載されるようにしてファージELISAスクリーニングを実施した。複合体特異的クローンに対するELISAを表1に示す。
【表1】

【実施例5】
【0278】
scFvからIgG1への再構築
VHおよびVLドメインを、それぞれ全抗体重鎖および軽鎖を発現するベクターにサブクローニングすることによってクローンをscFvからIgG形態に変換した。VHドメインを、哺乳類細胞でIgG重鎖全体を発現するためのヒト重鎖定常ドメインおよび調節要素を含有するベクター(pEU15.1)中にクローニングした。同様に、哺乳類細胞でIgG軽鎖全体を発現するためのヒト軽鎖(ラムダ)定常ドメインおよび調節要素を発現するためのベクター(pEU4.4)にVLドメインをクローニングした。重鎖および軽鎖発現用のベクターは参考文献[71]に最初に報告された。Cambridge Antibody Technologyベクターは単にOriP要素を導入することによって加工されている。IgGを得るために、重鎖および軽鎖IgG発現ベクターをEBNA-HEK293哺乳類細胞中にトランスフェクトした。IgGを発現させ、培地に分泌させた。産物をプールし、精製前にろ過した。プロテインAクロマトグラフィーを使用してIgGを精製した。培養上清をセラミックプロテインA(BioSepra)の適切なサイズのカラムに添加し、50 mM Tris-HCl pH 8.0、250 mM NaClで洗浄した。0.1 Mクエン酸ナトリウム(pH 3.0)を使用して結合IgGをカラムから溶出させ、Tris-HCl(pH 9.0)を加えて中和した。溶出された物質を、Nap10カラム(Amersham, #17-0854-02)を使用してPBSにバッファー交換し、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を使用して分光光度法によってIgGの濃度を決定した[72]。精製済みIgGを、SEC-HPLCおよびSDS-PAGEを使用して凝集または分解に関して分析した。
【実施例6】
【0279】
ハイパーIL-6/ビオチン化GP130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイ
粗製ペリプラズムscFvのスクリーニングから同定された陽性クローン由来の精製IgG、および精製scFvをHTRF(登録商標)アッセイにおいてビオチン化組換えヒトgp130 Fcに対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6結合の結合阻害について試験した。このアッセイは精製scFV(実施例3)に対してと同様に、但し以下の改変を加えて実施した。6nMビオチン化ヒト組換えgp130 Fc(10μl/ウェル)を使用して、終濃度1nMのgp130Fcを得た。結合の検出には、クリプタートで標識された2.598 nM 抗flag IgGおよび10.8 nMまたは12 nMのストレプトアビジンXLent!(CIS Bio International 611SAXLB)の複合HTRF(登録商標)試薬(10μl/ウェル)を使用した。
【0280】
無関係の抗原に対するIgGおよび抗IL-6モノクローナル抗体(R&D systems MAB206)をすべてのアッセイにコントロールとして含めた。デルタF%、特異的結合%およびIC50値を以前に記載されたようにして算出した。複合体特異的クローンに対するIC50値を表2に記載する。
【表2】

【実施例7】
【0281】
HTRF(登録商標)可溶性アッセイを使用する抗複合体IgGの特異性試験
粗製ペリプラズムscFvのスクリーニングから同定された陽性クローン由来の精製IgG、および精製scFvをHTRF(登録商標)アッセイにおいてFLAG HISタグ付きハイパーIL-6、FLAG HIS IL-6およびFLAG HIS sIL-6Rに対する結合について試験した。
【0282】
粗製ペリプラズムscFvのスクリーニングから同定された陽性クローンのIgGの結合に関するデータの例を示す。表3に示されるデータは、1 nMのIgG濃度(最終アッセイ濃度)および20 nMのHIS FLAGタンパク質(最終アッセイ濃度)でのデルタF%として表される。
【表3】

【実施例8】
【0283】
ELISAによる抗複合体IgGの特異性試験
材料および方法セクションに記載のように、ELISAを使用して複合体に対する特異的結合に関してIgGを試験した。
【表4】

【0284】
材料および方法
重要試薬
- IL-6はR&D Systems製であった(206-IL/CF)
- 可溶性IL-6受容体(sIL-6R)はPeprotech製であった(200-06R)
- HIS FLAG IL-6はAstraZeneca製であった(E.coli由来)
- HIS FLAG sIL-6RはCambridge Antibody Technologyの社内で製造した(HEK-EBNA由来)
- ハイパーIL-6(リンカーを介して共有結合によって連結されたIL-6およびsIL-R)はAstraZeneca製であった(HEK-EBNA由来)
- 組換えgp130-FcはR&D systems製であった(671-GP)。該gp130-Fcは、ポリペプチドリンカーを介してヒトIgG1のカルボキシ末端の6×ヒスチジンタグ付きFc領域と融合させたヒトgp130配列の細胞外ドメインをコードするDNA配列(Hibi et al; Cell 63:1149-1157)から製造した。該キメラタンパク質はマウス骨髄腫セルラインNS0で発現させた。
【0285】
ナイーブファージディスプレイライブラリーからのヒトIL-6/sIL-6R複合体に対する抗体の単離
繊維状ファージM13に基づくファージミドベクターにクローニングされたナイーブヒト一本鎖Fv(scFv)ファージディスプレイライブラリーを選択に用いた[73, 74]。各選択では、500μlのストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Dynal M280, 602.10)を磁石上に捕捉し、次いでダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH 7.4中の50μg/mlビオチン化抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma F9291)500μl中に再懸濁して1時間かけてビーズをコーティングした。ビーズを0.05%Tween 20含有PBS(PBST)で3回洗浄し、次いでPBS中の3%(w/v)脱脂粉乳(Premier Brands)(MPBS)500μl中で1時間インキュベートして、非特異的結合部位をブロックした。
【0286】
約1x1012個のファージ粒子を含有する50μlライブラリーアリコートを400μlに希釈し、それを用いて150μlのブロッキングした溶液から回収された抗FLAGコーティングビーズを再懸濁した。次いでローテーター上で1時間、ファージをビーズと共にインキュベートした。さらに、選択手順のいくつかについて、複合体の形成に使用される10倍過剰の、タグが付いていないタンパク質に対する選択解除を、処理済み常磁性ビーズに対する選択解除ステップと併せて組み入れた。次いでビーズを磁石上に捕捉することによって取り出した。100μl容量の5倍濃縮複合体原液(500 nM FLAGタグ付きタンパク質および1μMのタグが付いていないタンパク質)を選択解除済みライブラリーに加え、2時間インキュベートした。FLAGタグ付き複合体に結合しているファージを、ローテーターで15分間、残りの350μlの処理済み常磁性ビーズと共にインキュベートすることによって捕捉した。0.9 mL PBST中で5回ビーズを洗浄して、未結合ファージ粒子を除去した。次いで結合ファージを、0.1 Mリン酸ナトリウム、pH 7.0中の10μg/mLトリプシン500μl中で37℃で30分間インキュベートすることによってビーズから溶離させた。溶離ファージによるE. coli TG-1細胞の感染および後の選択ラウンドのためのファージレスキューは、トリプシン切断可能ヘルパーファージ[76]を使用して、本質的にはMarks et al 1991 [75]に記載されるようにして行った。
【0287】
ハイパーIL-6/gp130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイ(粗製ペリプラズム調製物)
組換えヒトgp130 Fc(R&D systems 671-GP)に対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6(社内でHEK-EBNA発現されたもの)結合の阻害についてのハイパーIL-6/gp130 Fc結合HTRF(登録商標)(ホモジニアス時間分解蛍光)アッセイ
50 mM MOPSバッファーpH 7.4、0.5 mM EDTAおよび0.5 Mソルビトール中で調製された未希釈の粗製scFv含有ペリプラズム抽出物としての選択生成物をスクリーニングした。10μlの粗製scFvサンプルをブラック384ウェルオプティプレート(Perkin Elmer 6007279)アッセイプレートに加えた。その後、4 nM gp130 Fc(10μl/ウェル)、4 nMハイパーIL-6(10μl/ウェル)および複合HTRF試薬である、クリプタートで標識されている1.732 nM抗flag IgG(CIS Bio International 61FG2KLB)およびXL665で標識されている20 nM抗ヒトFc抗体(CIS Bio International 61HFCXLA)を加えた。すべての希釈は0.4 Mフッ化カリウムおよび0.1%BSAを含有するPBS(アッセイバッファー)中で実施した。プレートを室温で3時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620 nmおよび665 nm発光波長の時間分解蛍光を読み取った。式1および式2に記載のようにデルタF%および特異的結合%を算出することによってデータを解析した。
【数1】

【数2】

【0288】
ハイパーIL-6/GP130 Fc結合HTRF(登録商標)アッセイ(精製scFv調製物)
組換えヒトgp130 Fcに対するFLAG HISタグ付きハイパーIL-6の結合の阻害についてのHTRF(登録商標)アッセイ
15μlの精製scFvを30μlアッセイバッファーに移し、96ウェルプレート(Greiner 650201)中でピペッティングして混合することによって精製scFvを1:3希釈した。希釈を連続的にさらに9回、重複して実行した。終濃度0.5nMを得るための3 nM GP130 Fc(10μl/ウェル)、終濃度1nMを得るための6 nMハイパーIL-6(10μl/ウェル)および複合HTRF試薬である、クリプタートで標識されている2.598 nM 抗flag IgGおよびXL665で標識されている30 nM抗ヒトFc抗体(10μl/ウェル)を96ウェルプレート中の30μlの精製scFv滴定に加えた。次いで40μlをブラック384ウェルオプティプレートに移した。すべての希釈はアッセイバッファー中で実施した。ポジティブコントロールとして、結合の阻害のために、ヒトIL-6リガンド/可溶性IL-6レセプター複合体、(500 nM IL-6および500 nM sIL-6R)をすべてのアッセイに含めた。
【0289】
プレートを室温で3時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダーを使用して発光波長620 nmおよび665 nmの時間分解蛍光を読み取った。式1および式2に記載のようにデルタF%および特異的結合%を算出することによってデータを解析した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して4パラメータロジスティック方程式(式3)を使用するカーブフィッティングによってIC50値を決定した。
【0290】
式3:
Y=ボトム + (トップ-ボトム)/(1+10^((LogEC50-X)*ヒルスロープ))
Xは濃度の対数である。Yは特異的結合である。
Yはボトムで出発し、トップまでS字形に上昇する。
【0291】
複合体特異的scFvを同定するファージELISAスクリーニング
400μl容量中の個々の培養物からのファージ製造は本質的にMarks et al 1991 [75]に記載のようにして行った。400μl MPBSを加えることによってファージ一晩培養物をブロッキングし、1時間インキュベートした。培養物をSorval RT6000D卓上遠心分離機で3000 rpmで10分間回転させた。そして上清を試験のために取り出した。
【0292】
十分な数のストレプトアビジンコーティングイムノアッセイプレート(Abgene AB1226)を50μl/ウェルのPBS中の1μg/mLビオチン化抗FLAGモノクローナル抗体で処理し、一晩(約16時間)4℃でインキュベートした。そしてイムノアッセイプレートをPBSTで3回洗浄した。300μl MPBSを加えることによって全ウェルをブロッキングし、1時間インキュベートした。各プレートをすでに記載したようにして洗浄した後、50μl/ウェルの以下の試験試薬のうち1つで処理した:0.5μg/ml HIS FLAG IL-6、1μg/ml HIS FLAGタグ付きsIL-6R、HIS FLAG IL-6(0.5μg/ml)およびsIL-6R(1μg/ml)からなる1.5μg/ml IL-6複合体、HIS FLAG sIL-6R(1μg/ml)およびIL-6(0.5μg/ml)からなる1.5μg/ml IL-6複合体、1.5μg/mlハイパーIL-6、またはMPBS。10分間試薬とともにプレインキュベートすることによって複合体を形成させた後、プレートに加えた。そしてプレートを1時間インキュベートした。追加の洗浄ステップ後、別々の処理を施された各プレートに50μlの各ブロッキング済み培養上清を加え、1時間インキュベートした。プレートを再洗浄した後、MPBS中に5000倍に希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗M13(Amersham 27-9421-01)50μlを全ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。最終洗浄ステップ後、50μlの3,3,5,5,-テトラメチルベンジジン(Sigma T0440)を全ウェルに加え、約3分間インキュベートした。そして50μl 0.5 M H2SO4を加えることによって全ウェル中の反応を停止させ、EnVisionプレートリーダーを使用して450 nmでの光学密度を決定した。
【0293】
HTRF(登録商標)可溶性アッセイを使用した抗複合体IgGの特異性試験
FLAG HISハイパーIL-6、FLAG HIS IL-6およびFLAG HIS sIL-6Rの滴定を使用して、IgGがこれらの各タンパク質に結合するかどうかを確認した。滴定はアッセイバッファー(1:3希釈)中で160 nMから実施した。無関係のFLAG HISリガンドおよびFLAG HIS受容体をコントロールとして含めた。
【0294】
5μlの各滴定を384ウェル少量アッセイプレート(Costar 3676)に移した。そして4 nMの社内作製IgGを加え(5μl/ウェル)、次いでXL665で標識された3.2 nMの抗flag IgG(CIS Bio 61FG2XLB)およびユーロピウムクリプタートで標識された60nM抗ヒトFc抗体(CIS Bio 61HFCKLB)(5μl/ウェル)を加えた。すべての希釈はアッセイバッファー中で実施した。
【0295】
そしてアッセイプレートを1000 rpmで室温で1分間遠心分離し、室温で3時間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダーを使用して発光波長620 nmおよび665 nmの時間分解蛍光を読み取った。
【0296】
以前に記載されるように各サンプルについてデルタF%値を算出することによってデータを解析した。
【0297】
ELISAによる抗複合体IgGの特異性試験
試験対象の各抗体について、96ウェルイムノアッセイプレート(Nunc Maxisorp)を50μl/ウェルのPBS中の2μg/ml抗ヒトFcモノクローナル抗体(Jackson Immunoresearch 109-005-098)で一晩(約16時間)4℃でコーティングした。PBSTを使用してイムノアッセイプレートを3回洗浄した後、300μl/ウェルのMPBSを加えることによって室温で1時間ブロッキングした。第二洗浄ステップ後、PBS中の2μg/mlの抗複合体抗体を50μl/ウェルでプレートに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、すでに記載したようにして再洗浄した。FLAGタグ付き試薬(IL-6、sIL-6R、ハイパー複合体)をMPBS中で50 nMに希釈した。50 nMのFLAGタグ付き成分およびタグが付いていない2倍モル過剰の成分を使用して複合体を生成した。各試薬の4倍連続希釈物を調製して、イムノアッセイプレートの重複するウェルに50μl/ウェルで加えた。また、50 nMの無関係のタンパク質(本事例では、his FLAGタグ付きマウスGMCSF-R)またはMPBSのみを含有するコントロールウェルを調製した。そしてイムノアッセイプレートを室温で1時間インキュベートした。追加の洗浄ステップ後、MPBS中で1μg/mlに希釈されたビオチン化抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma)を全ウェルに50μl/ウェルで加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、以前と同様にプレートを再洗浄した。ユーロピウム標識ストレプトアビジン(Perkin Elmer 1244-360)をDelfiaアッセイバッファー(Perkin Elmer 4002-0010)中に100 ng/mlに希釈し、50μl/ウェルで全ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。そして、0.05 M Tris緩衝生理食塩水(NaCl - 0.138 M, KCl - 0.0027 M)Tween 20(0.05%)、pH 8.0(25℃)からなるDelfia洗浄バッファー中でイムノアッセイプレートを7回洗浄した。そして50μl容量のDelfia増強溶液(Perkin Elmer 4001-0010)を全ウェルに加えた。プレートを10分間インキュベートした後、EnVisionプレートリーダーを使用して620nmでの時間分解蛍光を測定した。
【0298】
配列
本発明の結合性メンバーの配列を配列表に示す。配列表の配列番号は以下のように対応する。PRT = アミノ酸配列
【表5】


【0299】
参考文献
本明細書中のいずれかの箇所で引用されるすべての参考文献は、上のいずれかで引用されているものを含めて、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書中に組み入れられる。
【0300】
1 Haan & Maggos (2004) BioCentury, 12(5): A1-A6
2 Koide et al. (1998) Journal of Molecular Biology, 284: 1141-1151.
3 Nygren et al. (1997) Current Opinion in Structural Biology, 7: 463-469
4 Wess, L. In: BioCentury, The Bernstein Report on BioBusiness, 12(42), A1-A7, 2004
5 Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest. 4th Edition. US Department of Health and Human Services. 1987
6 Martin, A.C.R. Accessing the Kabat Antibody Sequence Database by Computer PROTEINS: Structure, Function and Genetics, 25 (1996), 130-133
7 Kabat, E.A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Edition. US Department of Health and Human Services, Public Service, NIH, Washington
8 Segal et al., PNAS, 71:4298-4302, 1974
9 Amit et al., Science, 233:747-753, 1986
10 Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901-917, 1987
11 Chothia et al., Nature, 342:877- 883, 1989
12 Caton et al., J. Immunol., 144:1965-1968, 1990
13 Sharon et al., PNAS, 87:4814-4817, 1990
14 Sharon et al., J. Immunol., 144:4863-4869, 1990
15 Kabat et al., J. Immunol., 147:1709-1719, 1991
16 Holliger & Hudson, Nature Biotechnology 23(9):1126-1136 2005
17 Kontermann, R & Dubel, S, Antibody Engineering, Springer-Verlag New York, LLC; 2001, ISBN: 3540413545
18 Mendez, M. et al. (1997) Nature Genet, 15(2): 146-156
19 Knappik et al. J. Mol. Biol. (2000) 296, 57-86
20 Krebs et al. Journal of Immunological Methods 254 2001 67-84
21 Ward, E.S. et al., Nature 341, 544-546 (1989)
22 McCafferty et al (1990) Nature, 348, 552-554
23 Holt et al (2003) Trends in Biotechnology 21, 484-490
24 Bird et al, Science, 242, 423-426, 1988
25 Huston et al, PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988
26 Holliger, P. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448, 1993
27 Reiter, Y. et al, Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996
28 Hu, S. et al, Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996
29 Qui et al., Nat. Biotechnol. 25:921-929 2007
30 Holliger and Bohlen 1999 Cancer and metastasis rev. 18: 411-419
31 Holliger, P. and Winter G. Current Opinion Biotechnol 4, 446-449 1993
32 Glennie M J et al., 1987 J. Immunol. 139, 2367-2375
33 Repp R. et al., 1995 J. Hemat. 377-382
34 Staerz U. D. and Bevan M. J. 1986 PNAS 83
35 Suresh M. R. et al., 1986 Method Enzymol. 121: 210-228
36 Merchand et al., 1998 Nature Biotech. 16:677-681
37 Ridgeway, J. B. B. et al, Protein Eng., 9, 616-621, 1996
38 Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor N.Y., pp. 726, 1988
39 Koehler and Milstein, Nature, 256:495-497, 1975
40 Wold, et al. Multivariate data analysis in chemistry. Chemometrics -Mathematics and Statistics in Chemistry (Ed.: B. Kowalski), D. Reidel Publishing Company, Dordrecht, Holland, 1984 (ISBN 90-277-1846-6)
41 Norman et al. Applied Regression Analysis. Wiley-Interscience; 3rd edition (April 1998) ISBN: 0471170828
42 Kandel, Abraham & Backer, Eric. Computer-Assisted Reasoning in Cluster Analysis. Prentice Hall PTR, (May 11, 1995), ISBN: 0133418847
43 Krzanowski, Wojtek. Principles of Multivariate Analysis: A User’s Perspective (Oxford Statistical Science Series, No 22 (Paper)). Oxford University Press; (December 2000), ISBN: 0198507089
44 Witten, Ian H. & Frank, Eibe. Data Mining: Practical Machine Learning Tools and Techniques with Java Implementations. Morgan Kaufmann; (October 11, 1999), ISBN: 1558605525
45 Denison David G. T. (Editor), Christopher C. Holmes, Bani K. Mallick, Adrian F. M. Smith. Bayesian Methods for Nonlinear Classification and Regression (Wiley Series in Probability and Statistics). John Wiley & Sons; (July 2002), ISBN: 0471490369
46 Ghose, Arup K. & Viswanadhan, Vellarkad N.. Combinatorial Library Design and Evaluation Principles, Software, Tools, and Applications in Drug Discovery. ISBN: 0-8247-0487-8
47 Chothia C. et al. Journal Molecular Biology (1992) 227, 799-817
48 Al-Lazikani, et al. Journal Molecular Biology (1997) 273(4), 927-948
49 Chothia, et al. Science, 223,755-758 (1986)
50 Whitelegg, N.R.u. and Rees, A.R (2000). Prot. Eng., 12, 815-824
51 Guex, N. and Peitsch, M.C. Electrophoresis (1997) 18, 2714-2723
52 Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 405-410
53 Pearson and Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448
54 Smith and Waterman (1981) J. Mol Biol. 147: 195-197
55 Voet & Voet, Biochemistry, 2nd Edition, (Wiley) 1995.
56 Gram et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89:3576-3580
57 Barbas et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 91:3809-3813
58 Schier et al., 1996, J. Mol. Biol. 263:551-567
59 Marks et al Bio/Technology, 1992, 10:779-783
60 Kay, B.K., Winter, J., and McCafferty, J. (1996) Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual, San Diego: Academic Press
61 Hunter W. M. and Greenwood F. C. (1962) Nature 194:495
62 Plueckthun, A. Bio/Technology 9: 545-551 (1991)
63 Chadd HE and Chamow SM (2001) Current Opinion in Biotechnology 12: 188-194
64 Andersen DC and Krummen L (2002) Current Opinion in Biotechnology 13: 117
65 Larrick JW and Thomas DW (2001) Current Opinion in Biotechnology 12:411-418
66 Sambrook and Russell, Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press
67 Ausubel et al. eds., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 4th edition 1999
68 Robinson, J. R. ed., Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Marcel Dekker, Inc., New York, 1978
69 Ledermann J.A. et al. (1991) Int. J. Cancer 47: 659-664
70 Bagshawe K.D. et al. (1991) Antibody, Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4: 915-922
71 Persic, L., et al. (1997) Gene 187, 9-18.
72 Mach et al Anal. Biochem. 200(1): 20-26, 1992
73 Vaughan, T. J., et al. (1996). Nature Biotechnology 14, 309-314.
74 Hutchings, C. Generation of Naive Human Antibody Libraries, in Antibody Engineering, R. Kontermann and S. Dubel, Editors. 2001, Springer Laboratory Manuals, Berlin. p. 93
75 Marks, J. D., et al. (1991). Journal of Molecular Biology 222, 581-597.
76 Kristensen, P., Winter G. (1998). Folding and Design 3 (5), 321-328.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない、単離された結合性メンバー。
【請求項2】
gp130に対するIL-6:IL-6Ra複合体の結合を阻害する、請求項1に記載の結合性メンバー。
【請求項3】
終濃度1 nMの複合体および終濃度1 nMのgp130を用いた場合のgp130に対するIL-6:IL-6Ra複合体の結合の阻害に関するホモジニアス時間分解蛍光アッセイにおいて700 nM以下のIC50を有する、請求項2に記載の結合性メンバー。
【請求項4】
IC50が30 nM以下である、請求項3に記載の結合性メンバー。
【請求項5】
IC50が25 nM以下である、請求項4に記載の結合性メンバー。
【請求項6】
IC50が1.5 nM以下である、請求項5に記載の結合性メンバー。
【請求項7】
IC50が0.8 nM以下である、請求項6に記載の結合性メンバー。
【請求項8】
抗体1 CDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3
[ここで
HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を有し;
HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を有し;
HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を有し;
LCDR1は配列番号8のアミノ酸配列を有し;
LCDR2は配列番号9のアミノ酸配列を有し;および
LCDR3は配列番号10のアミノ酸配列を有する、と定義される]
を含むか、または
1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する該抗体1 CDRセットを含む、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバー。
【請求項9】
抗体2 CDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3
[ここで
HCDR1は配列番号13のアミノ酸配列を有し;
HCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を有し;
HCDR3は配列番号15のアミノ酸配列を有し;
LCDR1は配列番号18のアミノ酸配列を有し;
LCDR2は配列番号19のアミノ酸配列を有し;および
LCDR3は配列番号20のアミノ酸配列を有する、と定義される]
を含むか、または
1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する該抗体2 CDRセットを含む、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバー。
【請求項10】
抗体3 CDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3
[ここで
HCDR1は配列番号23のアミノ酸配列を有し;
HCDR2は配列番号24のアミノ酸配列を有し;
HCDR3は配列番号25のアミノ酸配列を有し;
LCDR1は配列番号28のアミノ酸配列を有し;
LCDR2は配列番号29のアミノ酸配列を有し;および
LCDR3は配列番号30のアミノ酸配列を有する、と定義される]
を含むか、または
1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する該抗体3 CDRセットを含む、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバー。
【請求項11】
抗体4 CDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3
[ここで
HCDR1は配列番号33のアミノ酸配列を有し;
HCDR2は配列番号34のアミノ酸配列を有し;
HCDR3は配列番号35のアミノ酸配列を有し;
LCDR1は配列番号38のアミノ酸配列を有し;
LCDR2は配列番号39のアミノ酸配列を有し;および
LCDR3は配列番号40のアミノ酸配列を有する、と定義される]
を含むか、または
1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する該抗体4 CDRセットを含む、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバー。
【請求項12】
抗体5 CDRセット:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3
[ここで
HCDR1は配列番号43のアミノ酸配列を有し;
HCDR2は配列番号44のアミノ酸配列を有し;
HCDR3は配列番号45のアミノ酸配列を有し;
LCDR1は配列番号48のアミノ酸配列を有し;
LCDR2は配列番号49のアミノ酸配列を有し;および
LCDR3は配列番号50のアミノ酸配列を有する、と定義される]
を含むか、または
1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する抗体5 CDRセットを含む、
請求項1〜7のいずれかに記載の単離された結合性メンバー。
【請求項13】
抗体VHドメインおよび抗体VLドメインを含む抗体分子を含み、ここで該抗体分子は該CDRセットを含み、VHドメインはHCDR1、HCDR2、HCDR3およびフレームワークを含み、かつVLドメインはLCDR1、LCDR2、LCDR3およびフレームワークを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の結合性メンバー。
【請求項14】
抗体分子がscFvである、請求項13に記載の結合性メンバー。
【請求項15】
抗体分子が抗体定常領域を含む、請求項13に記載の結合性メンバー。
【請求項16】
抗体分子がIgG1である、請求項13に記載の結合性メンバー。
【請求項17】
抗体分子が、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32または配列番号42のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の結合性メンバー。
【請求項18】
抗体分子がヒト生殖細胞系列遺伝子セグメント配列のフレームワーク領域を含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の結合性メンバー。
【請求項19】
抗体分子が、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37または配列番号47のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項13〜17のいずれか1項に記載の結合性メンバー。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか1項に記載の抗体分子の単離されたVHドメイン。
【請求項21】
請求項13〜19のいずれか1項に記載の抗体分子の単離されたVLドメイン。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバーおよび製薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項23】
外科手術または療法によるヒトまたは動物体の治療方法において使用するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバーを含む組成物。
【請求項24】
IL-6と関連した疾患の治療に使用するための、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
IL-6と関連した疾患を治療するための医薬を製造するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の単離された結合性メンバーの使用。
【請求項26】
疾患が、炎症性疾患および/または自己免疫疾患、腫瘍および/または癌、リンパ球増殖性疾患、同種移植拒絶、悪液質、骨粗鬆症、脳損傷、脳浮腫、うつ病、うっ血性心不全または骨痛である、請求項24に記載の組成物または請求項25に記載の使用。
【請求項27】
個体におけるIL-6と関連した疾患を治療する方法であって、請求項1〜19のいずれか1項に記載の結合性メンバーを個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
該疾患が、炎症性疾患および/または自己免疫疾患、腫瘍および/または癌、リンパ球増殖性疾患、同種移植拒絶、悪液質、骨粗鬆症、脳損傷、脳浮腫、うつ病、うっ血性心不全または骨痛である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の、結合性メンバー、または結合性メンバーの単離されたVHまたはVLドメイン、をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸でin vitroで形質転換された宿主細胞。
【請求項31】
結合性メンバーまたは抗体VHもしくはVLドメインを製造する方法であって、結合性メンバーまたは抗体VHもしくはVLドメインの製造のための条件下で請求項30に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、方法。
【請求項32】
結合性メンバー、VHドメインまたはVLドメインを単離および/または精製するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
結合性メンバー、VHドメインまたはVLドメインを製剤化して少なくとも1種の追加の成分を含む組成物とするステップをさらに含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない抗体抗原結合ドメインを作製するための方法であって、以下のステップ:
HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む親VHドメインのアミノ酸配列中の1個以上のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入によって、親VHドメインのアミノ酸配列変異体であるVHドメインを提供し、ここで親VHドメインのHCDR1、HCDR2およびHCDR3は抗体1〜5のいずれかのHCDRセットであり、さらに場合により、そのように提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組み合わせて、1つ以上のVH/VLの組み合わせを提供するステップ;および
親VHドメインのアミノ酸配列変異体である該VHドメインまたはVH/VLの組み合わせもしくは複数の該組み合わせを試験して、IL-6:IL-6Raに対する抗体抗原結合ドメインであってIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しないドメインを同定するステップ、
を含む、方法。
【請求項35】
親VHドメインが請求項20に記載のVHドメインである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該1つ以上のVLドメインを、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む親VLドメインのアミノ酸配列中への1個以上のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入によって提供し、ここで該親VLドメインLCDR1、LCDR2およびLCDR3は抗体1〜5のいずれかのVL CDRセットであり、各々が親VLドメインのアミノ酸配列変異体である1つ以上のVLドメインを作製する、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
親VLドメインが請求項21に記載のVLドメインである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
親VHドメインのアミノ酸配列変異体である該VHドメインが、CDR突然変異誘発によって提供する、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
IgG、scFvまたはFab抗体分子の構成要素として抗体抗原結合ドメインを作製するステップをさらに含む、請求項34〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない結合性メンバーを製造するための方法であって、以下のステップ:
VHドメインをコードする出発核酸または各々がVHドメインをコードする出発核酸レパートリーを提供し、ここでVHドメインまたは複数のVHドメインは、置換対象のHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3を含むか、またはHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3コード領域を欠いている、ステップ;
該出発核酸または出発核酸レパートリーを、抗体1〜5のいずれかのHCDR1、HCDR2、および/またはHCDR3をコードするかまたは抗体1〜5のいずれかのHCDR1、HCDR2、および/またはHCDR3のアミノ酸配列の突然変異によって生成されたドナー核酸または複数のドナー核酸と組み合わせて、該ドナー核酸または複数のドナー核酸が出発核酸または出発核酸レパートリーのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域に挿入されるようにして、VHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供するステップ;
該生成物レパートリーの核酸を発現させて、生成物VHドメインを作製するステップ;
場合により、該生成物VHドメインを1つ以上のVLドメインと組み合わせるステップ;
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない結合性メンバーを選択し、ここで該結合性メンバーは生成物VHドメインおよび場合によりVLドメインを含む、ステップ;および
該結合性メンバーまたはそれをコードする核酸を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項41】
ドナー核酸が該HCDR1および/またはHCDR2の突然変異によって生成される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ドナー核酸がHCDR3の突然変異によって生成される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ドナー核酸を核酸のランダム突然変異によって提供するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
回収された結合性メンバー内に含まれる生成物VHドメインを抗体定常領域に連結させるステップをさらに含む、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
生成物VHドメインおよびVLドメインを含むIgG、scFvまたはFab抗体分子を提供するステップを含む、請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
IL-6:IL-6Raと結合するがIL-6またはIL-6Ra単独IL-6のいずれとも結合しない抗体抗原結合ドメインまたは結合性メンバーを、IL-6:IL-6Raを中和する能力について試験するステップをさらに含む、請求項34〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
IL-6:IL-6Ra複合体と結合しかつそれを中和するがIL-6またはIL-6Ra単独のいずれとも結合しない抗体分子を含む結合性メンバーを得る、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
抗体分子がscFvである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
抗体分子がIgGである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
抗体分子組成物を製造する方法であって、請求項34〜49のいずれか1項に記載の方法を用いて抗体分子を得るステップ、および抗体分子を製剤化して少なくとも1種の追加の成分を含む組成物とするステップを含む、方法。
【請求項51】
複数の結合性メンバーから結合性メンバーを選択する方法であって、該結合性メンバーは第一の要素および第二の要素によって形成された複合体と結合するが第一または第二の要素単独とは結合せず、該方法は以下のステップ:
(i) 結合性メンバーが第一の要素と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを第一の要素に曝露するステップ;
(ii) 結合性メンバーが第一の要素および第二の要素によって形成される複合体と結合できるようになる条件下で、複数の結合性メンバーを該複合体に曝露するステップ;
(iii) 第二の要素が付着する固体支持体上に該複合体を単離するステップ;および
(iv) 複合体に結合した1種以上の結合性メンバーを回収するステップ
を含む、方法。
【請求項52】
該複合体がIL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合する抗体であって、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32および配列番号42からなる群から選択されるVHドメインHCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項54】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合する抗体であって、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37および配列番号47からなる群から選択されるVLドメインLCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項55】
IL-6およびIL-6Raによって形成されたIL-6:IL-6Ra複合体と結合する抗体であって、VHドメインがHCDR3を含み、かつVLドメインがLCDR3を含み、重鎖CDR3が配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32および配列番号42のいずれか1つから選択され、かつ軽鎖CDR3が配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37および配列番号47のいずれか1つから選択される、抗体。

【公表番号】特表2010−510796(P2010−510796A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538776(P2009−538776)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004534
【国際公開番号】WO2008/065384
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【出願人】(506042265)メディミューン リミテッド (11)
【Fターム(参考)】