インターロイキン1受容体に対する抗体及びその使用
ヒトIL−1Rに結合し、そしてIL−1RへのヒトIL−1の結合を阻害する抗体であって、該抗体がハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得ることができるか、又はキメラの、ヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗体変異体又は該抗体のフラグメントであって、MRC5(ATCC CCL171)のようなヒト繊維芽細胞においてIL−1が媒介するIl−8及びIL−6の分泌について35pM以下のIC50を示すものは、炎症疾患の処置について有利な特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン1受容体(IL−1R)に対する抗体、その製造方法、前記抗体を含む薬学的組成物、及びその使用に関する。
【0002】
炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン1(IL−1アルファ及びIL−1ベータ)により活性化されるシグナル伝達経路は、IL−1が炎症疾患で奏し、そしてリウマチ様関節炎と関連する炎症や関節の破壊に関与する重要な役割により、多くの注目の焦点となってきた。
【0003】
多数のタンパク質が、転写因子核内因子カッパB(NF−カッパB)、そしてp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)といったストレス活性化タンパク質キナーゼのポスト受容体活性化に関与することが記載されている。インターロイキン1受容体(IL−1R、Swiss Prot.P14778、CD121a)は、このシグナル伝達のメンバーであり、自然免疫応答及び炎症応答のクリティカルな決定因子である。リウマチ様関節炎への処置アプローチは、一つにはこの症状の重症度の認識が高まった結果として、そして一つにはこの症状の免疫病原性におけるサイトカイン類の重要な役割を理解する中での相当の進歩により、近年、大きく進化した変化を受けてきた。主要な焦点は、TNFα及びIL−1をターゲットとする原理に基づく。最近、刊行された研究では、TNFαをターゲットとするいくつかの生物試薬の使用が、リウマチ様疾患の症候及び徴候における改善を持続し、そしてさらにTNFα遮断が構造的損傷から関節を保護することを確認している。アナキンラは、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)であり、IL−1に媒介される作用を遮断する。
【0004】
米国特許第6,511,665号は、ヒトIL−1受容体に特異的に結合し、そしてIL−1受容体へのIL−1の結合を遮断するモノクローナル抗体をクレームする。
【0005】
本発明の目的は、リウマチ様関節炎のような炎症疾患の治療にとって有益な手段であるIL−1Rに対する新規抗体を提供することである。
【0006】
発明の要約
(MRC−5細胞のようなヒト胚性肺繊維芽細胞における)IL−8の分泌を媒介するIL−1の阻害について、35pM以下のIC−50値を示すIL−1Rに対する抗体が存在することが、驚くべきことに見いだされた。
【0007】
本発明に従う抗体は、天然の、そして変性したIL−1Rについて、IL−1Rにエピトープ特異性を有し、そしてIL−1RへのIL−1の結合、及びそれに続くシグナル伝達(核内因子カッパB(NF−カッパB)の活性化を阻害する。抗体は、IL−1Rの可溶性ドメインへ、そのグリコシル化型で結合し、そして300pM、好ましくは200pM以下(KD)の親和性を示す。抗体は、脱グリコシル化したIL−1Rへの結合については、親和性が有意に減少することを示す。
【0008】
本発明に従う抗体は、IL−1RへのIL−1の結合をin vitro及びin vivoで阻害し、それによりIL−1、IL−1受容体及びIL−1Racp(インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質;Q9NPH3)からなる三元複合体の形成を阻害する。
【0009】
本発明は、ヒトIL−1Rに結合し、そしてヒトIL−1のIL−1Rへの結合を阻害する抗体であって、該抗体は好ましくはハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得られるか、又はキメラであり、ヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗体変異体又は抗体のフラグメントであり、ヒトの繊維芽細胞MRC5(ATCC CCL 171)においてIL−1が媒介するIL−8の分泌を阻害するために35pM以下のIC50値を示すことを特徴とする、抗体を含む。
【0010】
本発明に従う抗体は、好ましくはエフェクター機能(ADCC及びCDC)を示さず、従ってIgG4アイソタイプのものである。特に好ましくは、セリン228のプロリンへの突然変異である(Angal, S.ら、Mol.Immunol.30 (1993年) 105〜108)。あるいは、前記抗体はIgG1アイソタイプのものであり、そして好ましくはCH1とCH2との間の約aa220〜240でのヒンジ領域及び/又はCH2とCH3との間の約aa330の第2インタードメイン領域内で改変し、(番号付けはKabatに従い、例えばJohnson, G.及びWu, T.T.、Nucleic Acids Res.28 (2000年) 214〜218を参照のこと)、エフェクター機能を避ける。IgGクラスのスウィッチングは、抗体の定常の重鎖と軽鎖を、所望とするクラス、例えばIgG1又はIgG4の抗体の重鎖と軽鎖で交換することにより、容易に実施することができる。このような方法は、当該技術分野で周知である。
【0011】
本発明に従う抗体は、抗炎症治療を必要とする患者にとって利点を示す。本発明に従う抗体は、そのような疾患を患った、特にはリウマチ様関節炎を患った患者にとって、利益をもたらす新規で独創的な特性を有する。本発明に従う抗体は、前記特性を特徴とする。
【0012】
さらに好ましくは、抗体はラット起源のものであり、そしてKabatに従うラット抗体の抗体配列フレームを含む。好ましくは、Kabat配列において、アミノ酸10(セリン)がVL鎖から欠失し(DEL10)、及び/又はVH鎖のアミノ酸26(グリシン)がグルタミン酸(G26E)へ変更されている。好ましくは、抗体はT細胞エピトープを、WO98/08097に記載された方法を用いて枯渇している。
【0013】
さらに好ましくは、IL−1Rアンタゴニスト(Arend W.P.、J.Clin.Invest.88 (1991年) 1445〜1451)は、本発明に従う固定化抗体へのIL−1R(10nM)への結合を、100μM(IL−1Rアンタゴニスト)までの濃度で阻害せず、すなわちIL−1Rへの本発明に従う抗体の結合は、IL−1Rアンタゴニストにより阻害されない。
【0014】
定常領域は、好ましくはKabat, E.(以下を参照のこと)に従うヒトIgG1又はヒトIgG4定常領域である。好ましい定常領域を、図14、15及び16に示す。
【0015】
本発明はまた、抗体をコードする核酸も含む。コードされるポリペプチドは、以下に定義するそれぞれの他の抗体鎖:
CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)を含む抗体重鎖、CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)を含む抗体軽鎖
と共にアセンブルすることができる。CDRの番号付け及び定義は、シグナル配列を含み、Kabat, E.に従う(例えば、Johnson, G.及びWu, T.T.、Nucleic Acids Res.28(2000年)214〜218)。
【0016】
好ましくは、核酸は配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)であるポリペプチドをコードする。
【0017】
抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、そしてさらにキメラ抗体(ヒト定常鎖)、ヒト化抗体であり、そして特に好ましくはT細胞エピトープを欠く抗体である。
【0018】
抗体は、ヒトIL−1Rへ、抗体と競合して、配列番号1〜2の可変鎖を特徴として結合する。
【0019】
抗体は、さらに300pM以下、好ましくは200pM(KD)以下、そしてより好ましくは約70〜200pMの親和性を特徴とする。
【0020】
従って、本発明はまた、本発明に従うIL−1R抗体の重鎖のCDR1、CDR2、CDR3及び軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3からなる前記グループから選択されるポリペプチド及びコード核酸を含む。
【0021】
さらに本発明は、本発明に従うこのようなアンタゴニストのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0022】
本発明に従う好ましいハイブリドーマ細胞系である、ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約により、2003年7月10日に、ドイツ国、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、受託番号DSM ACC2601で、寄託した。
【0023】
前記細胞系から得られる抗体は、本発明の好ましい実施態様である。また、好ましくは図7〜10及び14〜16に示す可変領域及び定常領域から組み合わせることができ、そしてヒトの繊維芽細胞MRC5(ATCC CCL 171)においてIL−1が媒介するIL−8の分泌阻害のために、35pM以下のIC50値を示す全ての抗体である。これらの配列は、抗体2D8の配列を改変することにより得られた配列の例であり、IC50及び/又はエピトープを特徴とする抗体2D8の優れた特性を維持しつつ改良した抗体を得ることができる。このような抗体では、図7及び8からの(T細胞エピトープを欠く)、又は図9及び10(ヒト化した)からの、軽鎖及び重鎖を、図14及び図15又は図16からの定常領域と組み合わせる。特に好ましくは、抗体DEI5/7、DEI4/7、DEI2/4、DEI5/4、DEI4/5、DEI5/5、HUM2/2、HUM2/3、DEI1/8、DEI2/8、DEI2/9、DEI4/9、DEI5/8及びDEI5/9である。
【0024】
本発明はさらに、本発明に従う改良特性を有するIL−1Rに対する抗体の同定及び/又は製造の方法を提供する。本方法では、抗体2D8のポリペプチド配列を、アミノ酸の突然変異、欠失又は付加により改変して、ヒトへの投与の際の抗体の免疫原性を下げる。一般に、約50個までのアミノ酸を可変重鎖及び軽鎖において改変して、免疫原性を下げる。この改変は、2D8のポリペプチド配列とKabatが提供するヒト抗体の配列との比較、及び/又は可変鎖におけるT細胞エピトープの同定及び除去により、実施する。このような改変の例を、図7〜10に示す。有用な抗体は、これらの図のフレーム化したアミノ酸における1以上の変化により産生することができる。好ましくは、約20〜50個のアミノ酸を、可変鎖のフレーム化した領域において改変する。
【0025】
従って本発明は、本発明に従う抗体の製造方法であって、抗体2D8の可変領域の配列において、図7〜10に示す、それぞれフレーム化したアミノ酸に、1個以上のアミノ酸を突然変異、欠失又は付加し、発現ベクターを該改変した抗体の可変領域、及び好ましくは図14〜16に示すような、追加のヒト定常領域を、連続した読み枠でコードする核酸を含んで製造し、発現を宿主細胞内で実施し、そして組換えにより産生した抗体の軽鎖及び重鎖を集めて本発明に従う抗体にすることを特徴とする、製造方法を提供する。
【0026】
本発明はさらに、そのような抗体をコードする核酸、該核酸を含む発現ベクター、及びそのような抗体の組換え体を産生するための、そのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0027】
本発明はさらに、そのような抗体の組換え体の製造方法を提供する。
【0028】
本発明はさらに、リウマチ様関節炎を有すると診断された(そしてそれ故に、そのような治療を必要とする)患者に、本発明に従うIL−1Rに対する拮抗性抗体の有効量を投与することを含むリウマチ様関節炎及び/又は骨関節炎の処置方法を提供する。抗体は、好ましくは薬学的組成物において投与する。
【0029】
本発明はさらに、リウマチ様関節炎の処置及び本発明に従う薬学的組成物の製造のための、本発明に従う抗体の使用を含む。さらに本発明は、本発明に従う薬学的組成物の製造方法を含む。
【0030】
本発明はさらに、本発明に従う抗体を、薬学的有効量で、場合により抗体製剤に有用な薬学的目的のための緩衝液及び/又はさらに賦形剤と共に含有する薬学的組成物を含む。
【0031】
本発明はさらに、薬学的に許容しうる担体においてそのような抗体を含む薬学的組成物を提供する。ある実施態様では、薬学的組成物は製造品又はキットに含めることができる。
【0032】
本発明はさらに、本発明に従う核酸を含み、該核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞において発現することができるベクターを含む。
【0033】
本発明はさらに、本発明に従うベクターを含む原核宿主細胞又は真核宿主細胞を含む。
【0034】
本発明はさらに、本発明に従う組換えのヒト抗体の製造方法であって、本発明に従う核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞で発現すること、及び該抗体を該細胞から回収することを特徴とする製造方法を含む。本発明はさらに、そのような組換え方法により得ることができる抗体を含む。
【0035】
本発明の詳細な記載
用語「抗体」とは、抗体の種々の形態を包含し、全抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、T細胞エピトープを欠く抗体、そしてさらには本発明に従う特徴的な特性を保つ限りに、遺伝学的に操作した抗体が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
「抗体フラグメント」とは、全長抗体の部分、一般には少なくともその抗原結合部分又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、二重特異性抗体、一本鎖抗体分子、免疫毒素、及び抗体フラグメントから形成される多選択性抗体が挙げられる。さらに、抗体フラグメントは、VH鎖の特徴、すなわちVL鎖とアセンブルすることができるか、又はIL−1Rへ結合するVL鎖の特徴、すなわち機能的抗原結合ポケットへVH鎖とアセンブルすることができ、そしてそれによりIL−1RへのIL−1の結合を阻害する特性を提供する一本鎖ポリペプチドを含む。
【0037】
本明細書中に用いる用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一のアミノ酸組成物の抗体分子調製物をいう。用語「キメラの抗体」とは、ラットに由来する可変領域、すなわち結合領域及び異なる起源又は種に由来する少なくとも定常領域の部分を、通常は組換えDNA技術により調製して含むモノクローナル抗体をいう。ラットの可変領域及びヒトの定常領域を含むキメラの抗体が、特に好ましい。そのようなラット/ヒトのキメラの抗体は、ラットの免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント及びヒトの免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む免疫グロブリン遺伝子の発現産物である。本発明が包含する「キメラの抗体」の他の形態は、そのクラス又はサブクラスがオリジナルの抗体のものから改変又は変更したものである。そのような「キメラの」抗体にも、「クラス転換した抗体」として言及する。キメラの抗体を産生する方法としては、現在当該技術分野で周知である、慣用の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術が挙げられる。例えば、Morrison, S.L.ら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 81(1984年)6851〜6855;米国特許第5,202,238号及び第5,204,244号を参照のこと。
【0038】
用語「ヒト化抗体」とは、そのフレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)を改変して、親の免疫グロブリンのものに比較して異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含む抗体をいう。好ましい実施態様では、ラットのCDRをヒトの抗体のフレームワーク領域に移植して、「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann, L.ら、Nature 332(1988年)323〜327; 及びNeuberger, M.S.ら、Nature 314(1985年)268〜270を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ及び二機能性抗体についての前記した抗原を認識する配列を表わすものに相当する。本発明に従うヒト化抗体の例を、図9及び10に示す。
【0039】
用語「T細胞エピトープを欠く抗体」とは、ヒトT細胞エピトープ(MHCクラスII分子に結合する能力を有するタンパク質内のペプチド配列)を除去することにより改変して、免疫原性を除去又は減少した抗体をいう。この方法により、ペプチドのアミノ酸側鎖間の相互作用及びMHCクラスII結合溝を有する特異的結合ポケットを同定する。同定した免疫原性領域を突然変異させて、免疫原性を排除する。このような方法は、一般に、例えばWO98/52976に記載されている。有用で、そして本発明に従うT細胞エピトープを欠く抗体の可変領域の例を、図7及び8に示す。
【0040】
本明細書中に用いる「結合」とは、約300pM以下、好ましくは約200pM以下(KD)、そしてより好ましくは約70〜200pMの親和性でのIL−1Rへの抗体結合をいう。
【0041】
本明細書中で用いる用語「核酸分子」とは、DNA分子及びRNA分子を含むと意図する。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖でよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0042】
本明細書中で用いる「可変領域」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))とは、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の対のそれぞれをさす。可変の軽鎖及び重鎖のドメインは、同一の一般的構造を有し、そして各ドメインは、その配列が広く保存され、3個の「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDRs)により連結された4個のフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採用し、そしてCDRsはβシート構造を連結するループを形成しているであろう。各鎖におけるCDRsは、フレームワーク領域によりその三次元構造で維持され、そして他の鎖のCDRsと共に抗原結合部位を形成する。抗体重鎖及び軽鎖のCDR3領域は、本発明に従う抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を奏し、そしてそれ故に本発明のさらなる目的を提供する。
【0043】
本明細書中で用いる場合の用語「高頻度可変領域」又は「抗体の抗原結合部位」とは、抗原結合に応答しうる抗体のアミノ酸残基をいう。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDRs」のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書で定義した高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメインの領域である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖はN末端からC末端まで、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は抗原結合に最も寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabatらの標準的な定義付けであるSequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベテスダ(1991年)及び/又は「高頻度可変ループ」を形成するそれらの残基に従って、決定する。
【0044】
本明細書中に用いる用語「IL−1Rへの結合」とは、in vitroのELISAアッセイにおける、好ましくはビオチン化ヒトIL−1R及びストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートを用いた結合アッセイにおける、IL−1Rへの抗体の結合親和性を意味する。IL−1Rへの結合親和性は、Biacoreアッセイ(Biacore AB、スウェーデン国ウプサラ)により調べることもできる。結合の親和性は、用語Kon(抗体/抗原複合体からの抗体の会合についての速度定数)、Koff(解離定数)及びKD(Kon/Koff)により定義する。本発明に従う抗体は、300pM以下、好ましくは200pM以下、そしてより好ましくは70〜200pMのKDを示し、IL−1Rへの結合を阻害し、そして好ましくはIL−1Rへ、IL−1と同様に同位置で結合する。
【0045】
用語「IL−1R発現細胞」とは、IL−1受容体を発現しているそのような細胞をいう。そのような細胞とは、例えばMRC5細胞のような、ヒト繊維芽細胞である。
【0046】
本発明に従う抗体は、抗体2D8と同じIL−1Rのエピトープへの結合を示し、結合の立体障害によりIL−1Rへの結合において阻害される。結合阻害は、固定化IL−1R及び抗体2D8を用いた競合アッセイにより検出することができる。50%以上のシグナル減少は、抗体が抗体2D8と競合することを示す。
【0047】
用語「エピトープ」とは、抗体へ特異的に結合することができるタンパク質決定因子を意味する。エピトープは、通常、例えばアミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面配置からなり、そして通常は特異的な3次元構造の特徴も、特異的な電荷の特徴も有する。コンフォメーション及び非コンフォメーションのエピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒存在下で失われる点で、区別される。本発明に従う抗体が特異的に結合するIL−1Rのエピトープは、本発明に従う抗体により、天然の、そして変性したIL−1Rの両者について認識される。本発明に従う抗体は、脱グリコシル化IL−1Rへの結合より、少なくとも約50倍、好ましくは少なくとも100倍強く(N−グリコシダーゼFでの処理後、ウェスタンブロットにより測定)、ヒトIL−1R(グリコシル化、可溶性細胞外ドメイン)へ結合する。従って、本発明に従う抗体は脱グリコシル化IL−1Rへの結合について親和性が有意に減少することを示す
【0048】
本発明に従う抗体には、さらに前記本発明に従う抗体の特徴に影響せず又はそれを変化させない、「保存的配列改変」、ヌクレオチド及びアミノ酸配列改変を有するそのような抗体が挙げられる。改変は、当該技術分野で既知の標準的技術、例えば部位特異的変異誘発及びPCR仲介変異誘発により導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸で置き換える置換が挙げられる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で明確にされている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このように、ヒトの抗IL−1R抗体において予見した非必須アミノ酸残基を、好ましくは同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基と置換することができる。
【0049】
アミノ酸置換は、Riechmann, L.ら、Nature 332(1988年)323〜327及びQueen, C.ら、Proc. Natl.Acad.Sci.USA86 (1989年) 10029〜10033に記載されるような分子モデリングに基づく変異誘発により、実施するとよい。
【0050】
本発明に従う抗体は、好ましくは少なくとも約5日、好ましくは8〜15日のin vivo(カニクイザル又はヒト)の血清半減期を示す。
【0051】
本発明に従う抗体は、好ましくは組換え手段により産生する。このような方法は当該技術分野で周知であり、そして原核細胞及び真核細胞におけるタンパク質発現、続く抗体ポリペプチドの単離及び通常の薬学的に許容しうる純度への精製を含む。タンパク質発現のためには、軽鎖及び重鎖又はそれらのフラグメントをコードする核酸を標準的方法により発現ベクターへ挿入する。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母又はE.coli細胞のような、適当な原核宿主細胞又は真核宿主細胞で実施し、そして抗体を細胞(溶解後の上清又は細胞)から回収する。
【0052】
抗体の組換え体産生は、当該技術分野において周知であり、そして例えば、Makrides, S.C.、Protein Expr.Purif.17(1999年) 183〜202; Geisse, S.ら、Protein Expr.Purif.8(1996年) 271〜282; Kaufman, R.J.、Mol.Biotechnol.16(2000年) 151〜161; Werner, R.G.、Drug Res.48(1998年)870〜880の概説の項目に記載されている。
【0053】
抗体は、全細胞、細胞溶解、又は部分的に精製した又はその後の純粋な形態において、存在するとよい。他の細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質を除去するために、標準的技術、例えばアルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び他の当該技術分野における周知の技術により、精製を実施する。Ausubel, F.ら編集、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987年) を参照のこと。
【0054】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M.ら、Cytotechnology 32(2000年)109〜123; 及びBarnes, L.M.ら、Biotech.Bioeng.73(2001年) 261〜270に記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y.ら、Nucl.Acids.Res.30(2002年) E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989年) 3833〜3837; Carter, P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992年) 4285〜4289; 及びNorderhaug、L.ら、J.Immunol.Methods 204(1997年) 77〜87に記載されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.-J.及びChristensen, K.、によりCytotechnology 30(1999年)71〜83に、そしてSchlaeger, E.-J.によりImmunol.Methods 194(1996年)191〜199に記載されている
【0055】
原核細胞に適したコントロール配列としては、例えばプロモーター、場合によりオペレーター配列、そしてリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが既知である。
【0056】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれた場合に、「作動可能に連結して」いる。例えば、ポリペプチドの分泌に加わるプレタンパク質として発現させる場合は、プレ配列又は分泌リーダーについてのDNAをポリペプチドについてのDNAに作動可能に連結し;配列の転写に影響させる場合は、プロモーター又はエンハンサーをコード配列に作動可能に連結し;あるいは翻訳を促進するように配置する場合は、リボソーム結合部位をコード配列に作動可能に連結する。一般的に、「作動可能に連結した」とは、連結しているDNA配列が近接し、そして分泌リーダーの場合には、近接して、かつ読み枠内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接していなくともよい。連結は、都合のよい制限部位での連結により達成する。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを、慣用のプラクティスに従って用いる。
【0057】
モノクローナル抗体を、適当に培養培地から、慣用の免疫グロブリン精製手順、例えばタンパク質Aセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーにより、分離する。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、慣用の手順を用いて、容易に単離し、そして配列決定する。ハイブリドーマ細胞を、そのようなDNA及びRNAの元として役目を果たさせることができる。一旦単離して、DNAを発現ベクターに挿入し、それを次に宿主細胞、例えばHEK293細胞、CHO細胞又はミエローマ細胞といった、他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞へトランスフェクションして、宿主細胞における組換えモノクローナル抗体の合成を得るとよい。
【0058】
ヒトのIL−1R抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチドの変更を抗体DNAヘ導入することにより、又はペプチド合成により調製する。しかし、そのような改変は、非常に限られた範囲内でのみ、例えば前記のように実施することができる。例えば、改変は前記の抗体の特徴、例えばIgGアイソタイプ及びエピトープ結合を変えずに、組換え体産生の収率、タンパク質の安定性を改善し、あるいは精製を容易にすることができる。
【0059】
抗IL−1R抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しないシステイン残基であれば、一般的にはセリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善し、そして異常な架橋を妨げてもよい。反対に、システイン結合を抗体に加えて、その安定性を改善してもよい(特に、抗体がFvフラグメントのような抗体フラグメンであれば)。
【0060】
抗体のアミノ酸変異体の別タイプでは、抗体のオリジナルのグリコシル化パターンが変わる。変わるとは、抗体に見られる1個以上の炭水化物部分が欠失すること、及び/又は抗体に存在しない1個以上のグリコシル化部位が付加することを意味する。抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結している。N連結とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への付着をいう。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンであって、Xがプロリン以外のアミノ酸であるものは、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素的付着のための認識配列である。このように、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在が、可能なグリコシル化部位を創る。グリコシル化部位の抗体への付加は、1個以上の前記トリペプチド配列(N連結グリコシル化部位のため)を含むようにアミノ酸配列を変えることにより、都合のよく達成する。
【0061】
抗IL−1R抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で既知の種々の方法により調製する。これらの方法としては、天然起源(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)からの単離、又はヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗IL−1R抗体の予め調製した変異体若しくは非変異体バージョンのオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発及びカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
共有的改変の別のタイプとしては、化学的又は酵素的にグリコシドを抗体へカップリングすることが挙げられる。これらの手順は、N連結又はO連結グリコシル化についてのグリコシル化能を有する宿主細胞での抗体の産生を要しないという点で、有利である。用いたカップリング機序により、糖を(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのもののような遊離のスルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンのもののような遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン又はトリプトファンのもののような芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミド基に付着させるとよい。これらの方法は、WO87/05330及びAplin, J.D.及びWriston, J.C.Jr.、CRC Crit.Rev.Biochem.4 (1981年) 259〜306に記載されている。
【0063】
抗体に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化には、抗体の、化合物であるトリフルオロメタンスルホン酸又は等価の化合物への暴露を要する。この処理により、抗体は無傷のままに、連結している糖(Nアセチルグルコサミン又はNアセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖を開裂する結果となる。化学的脱グリコシル化は、Sojahr, H.T.及びBahl, O.P.、Arch.Biochem.Biophys.259(1987年)52〜57により、そしてEdge, A.S.ら、Anal.Biochem.118(1981年)131〜137により、記載されている。抗体の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakura, N.R.及びBahl.O.P.、Meth.Enzymol.138(1987年)350〜359に記載されたように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼの使用により達成できる。
【0064】
抗体の共有的改変の別タイプには、抗体を種々の非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンのうちの1つへ、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に説明されているように、連結することを含む。
【0065】
本発明は、好ましくはIL−1Rに結合するポリペプチドをコードする核酸フラグメントを含み、該ポリペプチドはIL−1のIL−1Rへの結合を阻害し、配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)から選択される。
【0066】
再構築した重鎖及び軽鎖の可変領域を、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3’非翻訳、ポリアデニル化及び転写終結の配列と組合せて、発現ベクター構築物を形成する。重鎖及び軽鎖の発現構築物は、単一ベクターへ、共トランスフェクションして、逐次的にトランスフェクションするか、又は別々にトランスフェクションして宿主細胞へ組合わせることができ、それを次に融合して、両鎖を発現する単一の宿主細胞を形成する。
【0067】
従って、本発明は本発明に従う組換えのヒト抗体の製造方法であって、配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)、並びにヒトの軽鎖定常領域(CL)をコードする核酸を、原核宿主細胞又は真核宿主細胞で発現させ、そして該抗体を該細胞から回収することを特徴とする製造方法を提供する。
【0068】
本発明はさらに、IL−1Rのin vitroでの診断のための、好ましくは試料のIL−1Rと本発明に従う抗体との間の結合を決定する免疫学的アッセイによる、本発明に従う抗体の使用を含む。
【0069】
別の観点では、本発明は本発明の1個の又は組合せでのモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を含有する、薬学的に許容しうる担体と共に製剤化した組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0070】
本明細書中に用いる「薬学的に許容しうる担体」としては、生理適合しうるいかなる、そして全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与に適する(例えば、注射又は点滴による)。
【0071】
「薬学的に許容しうる塩」とは、抗体の所望とする生物学的活性を維持し、そして望ましくない毒性効果を与えない塩をいう(例えば、Berge, S.M.ら、J.Pharm.Sci.66(1977年)1〜19を参照のこと)。そのような塩を、本発明に含む。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩のような非毒性無機塩由来のものが挙げられる。
【0072】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知の種々の方法により投与することができる。当該技術分野の技術者により認められるように、投与経路及び/又は様式は、所望とする結果によって異なる。
【0073】
本発明の組成物を、特定の投与経路により投与するためには、化合物を、又は共投与する化合物を、その不活性化を防ぐ材料で被覆する必要があるかもしれない。例えば、化合物を患者へ適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤において、投与するとよい。薬学的に許容しうる希釈剤としては、食塩水及び水性緩衝液が挙げられる。
【0074】
薬学的に許容しうる担体としては、無菌の注射可能な溶液又は分散液の即席調剤用の、無菌水溶液又は分散液並びに無菌粉が挙げられる。薬学的活性物質のためのそのような媒及び剤の使用は、当該技術分野で既知である。
【0075】
本明細書中で用いる表現「非経口投与」及び「非経口的に投与する」とは、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味するが、限定はなく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角質下、関節腔内、関節下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び点滴が挙げられる。
【0076】
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような賦形剤を含有してもよい。微生物の存在予防を、滅菌手順又は無菌の製造条件、並びに種々の抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含有せしめることの両者により、確実にするとよい。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを、組成物中に含有せしめることも望ましいであろう。さらに注射可能な剤形の吸収遷延は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる剤を含有せしめることにより、実現させるとよい。
【0077】
選択した投与経路に関わらず、本発明の化合物は、適切な水和物形及び/又は本発明の薬学的組成物において用いるとよく、薬学的に許容しうる剤形に、当該技術分野の技術者に既知の慣用の方法により製剤化する。
【0078】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投与レベルは、特に患者、組成物及び投与様式について、患者に毒性とならずに、所望とする治療の応答を得るために有効である活性成分を得るように、変えるとよい。選択した投与レベルは、採用した本発明の特別な組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、採用した特別な化合物の投与経路、投与時間、排泄率といった種々の薬物動態因子、治療期間、他の医薬、採用した特別な組成物との組合せで用いた化合物及び/又は材料、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、一般的な健康及び以前の薬歴などに依存するが、このような因子は医薬の分野で周知である。
【0079】
組成物は、組成物がシリンジにより送達可能である程度に、無菌かつ液体でなければならない。水だけでなく、担体は等張の緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコー及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの適切な混合物であればよい。
【0080】
適当な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により維持するとよい。多くの場合、組成物における等張剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含有せしめることにより実現できる。
【0081】
前記のように、活性化合物を適切に保護すると、化合物を、例えば不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体と共に経口投与するとよい。
【0082】
本発明に従う抗体を、リウマチ様関節炎を患った、そしてそのような治療を必要とする患者の処置に用いることができる。従って、本発明はリウマチ様関節炎を患った患者の処置方法を含む。
【0083】
本発明はさらに、本発明に従う抗体の有効量を薬学的に許容しうる担体と共に含む薬学的組成物の製造方法、及びそのような方法のための本発明に従う抗体の使用を提供する。
【0084】
以下の実施例、参考文献及び配列表を、本発明の理解を助けるために提供するが、その真の意図は付した特許請求の範囲を説明するものである。本発明の精神を逸脱することなく、説明した手順において、改変することができると解される。
【0085】
配列の記載
配列番号1は、ラット2D8の重鎖の可変領域;ラット起源のaa1〜19シグナル配列、20〜134可変領域、135〜139末端フラグメントである。
配列番号2は、ラット2D8の軽鎖の可変領域;ラット起源のaa1〜20シグナル配列、21〜129可変領域、130〜138末端フラグメントである。
配列番号3は、2D8キメラH鎖(ラット/ヒト)(IgG1)のアミノ酸配列である。
配列番号4は、2D8キメラH鎖(ラット/ヒト)(IgG4)のアミノ酸配列である。
配列番号5は、2D8キメラL鎖(ラット/ヒト)のアミノ酸配列である。
配列番号6は、HURVHのアミノ酸配列である(図7及び図9)。
配列番号7は、HURDIVHv1のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号8は、HURDIVHv2のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号9は、HURDIVHv3のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号10は、HURDIVHv4のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号11は、HURDIVHv5のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号12は、HURDIVHv6のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号13は、HURVKのアミノ酸配列である(図8及び図10)。
配列番号14は、HURDIVKv4のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号15は、HURDIVKv5のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号16は、HURDIVKv7のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号17は、HURDIVKv8のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号18は、HURDIVKv9のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号19は、HURDIVKv10のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号20は、HUR HuVHv1のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号21は、HUR HuVHv2のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号22は、HUR HuVHv3のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号23は、AAB67785−1のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号24は、HUR HuVKv1のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号25は、HUR HuVKv2のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号26は、HUR HuVKv3のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号27は、CAD43025のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号28は、IL−1Rのアミノ酸配列である(図11)。
配列番号29は、軽鎖の定常領域の配列である(図14)。
配列番号30は、重鎖IgG4の配列である(図15)。
配列番号31は、IgG1の定常領域の配列である(図16)。
配列番号32は、DEI5/8の重鎖の配列である(図17)。
配列番号33は、DEI5/8の軽鎖の配列である(図17)。
【0086】
実施例
実施例1
h−IL−1Rに対するラットモノクローナル抗体の産生
ハイブリドーマの培養
産生したラットモノクローナル抗体を、RPMI 1640及び血清なしの10%Hyclone培地中(Bio Whittaker)、37℃及び5%CO2で、培養した。
免疫化手順及びハイブリドーマ発生
5匹のSprague Dawleyラットを、SF9昆虫細胞で産生させた組換えのヒトIL−1Rで、免疫化した。最初の免疫化(100μgタンパク質)は、完全なフロイントのアジュバントで腹腔内に実施した。全ての他の免疫化は、不完全なフロイントのアジュバントで実施した。モノクローナル抗体は、ラットの脾細胞とNSO細胞を融合させて、産生した。
【0087】
実施例2
IL−1R特異的ELISA
免疫化したマウス血清中の抗IL−1Rタイター又は培養上清中の抗体を、抗原特異的ELISAにより決定した。PBSBSA(PBS/1%BSA)中0.125μg/mlの濃度の可溶性ビオチン化h−IL−1Rを、1時間室温で、シェーカー上で、96ウェルプレート(スプレプトアビジンで予備被覆)に被覆した。その後、ウェルをPBSBSAを用いて、30分間室温でブロックした。血清を1/100にPBSBSAで予備希釈し、そして1/6400まで連続希釈した。上清を、PBSBSA中1/100〜1/10000までの範囲で計算して、希釈した。希釈した血清又は上清をウェルに加え、そして2時間室温で、シェーカー上でインキュベートした。Pre−tap血清又は培養培地を、陰性コントロールとして用いた。125ng/mlのラット抗ヒトIL−1R抗体(クローン2D8)を、陽性コントロールとして用いた。続いて、プレートをPBS/0.05% Tween20で3回洗浄し、そして西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)複合ウサギ抗ラットIgG(Bethyl Laboratories Inc.)と共にインキュベートし、PBSBSAにおいて、1時間室温のシェーカー上で希釈した。ウェルをPBS/0.05% Tween20で4回洗浄し、そしてアッセイを新鮮に調製したTM Blue(登録商標)(Intergen Company)溶液を用いて、15〜20分間室温の暗室中、シェーカー上で発色させた。吸収を、370nmで参照波長として492nmを用いて測定した。場合により、各ウェルへ20μlの1M H2SO4を添加して色素反応を止めることができるが、この場合は測定を、450nmで参照波長として690nmを用いて実施した。結果を、図1に示す。
【0088】
実施例3
抗hIL−1R抗体の結合特性の決定
決定は、BIACORE(登録商標)3000で、CM5チップを用いて実施した。カップリングは、アミンカップリングとして実施した。用いた緩衝液は、PBST(PBS+0.05%Tween)、pH7.4、25℃であった。
a)抗hIL−1R抗体のIL−1Rへの親和性の決定
親和性測定のため、抗Fcγ抗体(ウサギ抗ヒト)を、IL−1Rに対する抗体提示のため、チップ表面上へカップリングさせた。抗IL−1R抗体を、抗Fcγ抗体に結合させ、そして組換えヒトIL−1R細胞外ドメインを溶液中種々の濃度で加えた。会合は60秒のIL−1Rインジェクションにより測定し、解離は3分間緩衝液でチップ表面を洗浄することにより測定した。抗体についての親和性定数KD(Kon/Koff)は、
抗体2D8 100pM
キメラ2D8(IgG1) 93pM
キメラ2D8(IgG4) 105pM
であった。
全抗体の全測定についてのデータ範囲は70〜120pMであり、従って3個の抗体の親和性は同じ範囲である。
【0089】
b)IL−1Rへの、抗hIL−1R抗体のリガンドIL−1の結合との競合
これらの測定については、a)と同じ方法を用いた。hIL−1Rを抗hIL−1R抗体の2D8に結合させると、もはやhIL−1は受容体へ結合しなかった。この抗体は、受容体上でhIL−1の結合部位をブロックする(図3)。
【0090】
c)三元複合体構築物hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの、抗hIL−1R2D8抗体による阻害
三元複合体の検出については、ポリクローナルの抗IgG抗体を、融合タンパク質Fc/hIL−1R AcP(SwissProt Q9NPH3;R&D Systems)の提示のため、チップ表面へカップリングさせた。hIL−1/hIL−1R複合体の溶液中での固定化hIL−1R AcPへの結合を検出した。hIL−1Rとインキュベートすると、抗hIL−1R2D8抗体はこの三元複合体hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの形成を阻害した(図4)。
【0091】
実施例4
a)MRC−5細胞におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害
ヒト繊維芽細胞におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害を、細胞バイオアッセイで決定した。ヒトの胚性肺繊維芽細胞MRC−5をh−ILβで刺激し、そしてIL−8の産生を一工程のELISAで決定した。抗h−IL−1R抗体の添加による刺激の阻害は、抗体のブロッキング機能を立証する。
バイオアッセイは、以下のアッセイ手順に従って行なった。:
1日目に、MRC5細胞をウェル当たり2.5×103細胞個の密度で、100μlの培養培地(10%PBS)に播き、そして24時間インキュベータ中でインキュベートした。
2日目に、培養培地を除去し、そして試料を50μlアッセイ培地(1%FBS)(精製抗体を試験する場合)又はハイブリドーマ培地SF(ハイブリドーマ上清を試験する場合)に加えた。ハイブリドーマ上清の最適希釈は、1:1000と1:1,000,000の間であった。インキュベーションは、30分間インキュベーター内で実施した。続いてh−1R−1β、50μl/ウェル(2×濃縮!)を、アッセイ培地(1%FBS、又はハイブリドーマ上清を試験する場合は2%FBS)において、1%の最終FBS濃度まで加えた。さらにインキュベーションを37℃で7時間実施し、そして上清(80μl)を別の96ウェルプレートへ移した。
【0092】
b)h−IL−8−ELISA
アッセイ(Miller, M.D.及びKrangel, M.S.、評論Rev.Immunol.12(1992年)17〜46)を、製造者のプロトコール(R&D Systems、米国)に従って、未希釈の上清(血液及び脳脊髄液試料についてのプロトコール)を用いて実施した。刺激の最大(抗体を用いないコントロール)は、およそ750pg/mlのIL−8であった。抗体によるIL−8分泌の阻害についてのIC50を図5に示す。
抗体2D8 7.2pM(1.08ng/ml)
キメラ2D8(IgG1) 4.7pM(0.71ng/ml)
キメラ2D8(IgG4) 5.1pM(0.77ng/ml)
本発明に従う抗体を用いた全実験の範囲は、4.0〜35.0pMであった。
2D8の、IL−1Rに対する市販で入手可能な抗体との、このMRC−5バイオアッセイにおける比較を、表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
図7〜10のアミノ酸配列に基づき、ヒト化及びT細胞抗原枯渇抗体のパネルを変異誘発により構築し、そしてh−IL−8−ELISAによりIC50について調べる。結果を、抗体2D8(1.0)に関して、表2に示す。
用いた略記の説明:
HUM:図9及び図10の配列の組合せ
DEI:図7及び図8の配列の組合せ
HUM2/2:配列HURHuVHv2及びHURHuVKv2の組合せ
DEI1/8:配列HURDIVHv1及びHURDIVKv8の組合せ
【0095】
【表2】
【0096】
c)ELISAによる免疫活性の決定
2D8抗体と比較した抗体の相対的な免疫活性を、ELISAにより決定した。可溶性ビオチン化ヒトIL−1Rを、室温で1時間96ウェルプレート(ストレプトアビジンで予備被覆した)に被覆した。BSAでブロッキング後、抗体を希釈し、そしてウェルに加えて、室温で2時間インキュベーションした。プレートを3回洗浄し、そして西洋わさびペルオキシダーゼ(POD)複合ウサギ抗ラットIgGと共に室温で1時間インキュベーションした。さらに洗浄後、結合した抗体量を、TM−Blue(登録商標)を添加して370nでの吸収を測定することにより決定した。
結果を、表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例5
ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害
抗体2D8の、ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生を阻害するブロッキング能を評価するために、バイオアッセイを実施した。ヘパリン(19U/ml)を用いて採取したヒト血液を10ng/mlのh−IL1βを用いて刺激し、そしてIL−8の産生を一工程のELISAで決定した。抗h−IL−1R抗体の添加による刺激の阻害は、ヒトのex vivoアッセイにおける抗体のブロッキング機能を証明する。IL−1と共に抗体の存在下又は欠損下においてインキュベーションを37℃で16時間実施し、1:5希釈した試料をIL−8存在について製造者のプロトコール(R&D Systems、米国)に従って試験した以外は、実施例4の記載に従って、バイオアッセイを実施した。ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生は、100ng/mlの2D8抗体の濃度で〜50%阻害した(図6を参照のこと)。
【0099】
実施例6
抗体の組換え体産生
マウス可変領域に連結したヒト定常領域からなるキメラの抗体を発現するためのベクターを、構築した。2つのキメラの重鎖の発現ベクターを、発現ベクターpSVgptにおいてヒトIgG1及びヒトIgG4定常領域に連結した抗IL1RラットVHからなるように構築した。キメラの軽鎖のベクターは、発現ベクターpSVhygにおいてヒトCカッパに連結した抗IL−1RラットVKからなるように、構築した。リーダーシグナルペプチド、リーダーイントロン及びマウスの免疫グロブリンプロモーターを含む5フランキング配列、並びにスプライス部位及びイントロン配列を含む3フランキング配列を、キメラの発現ベクターへ導入した。重鎖及び軽鎖の発現ベクターを、NS0細胞(ECACC No85110503、マウスミエローマを産生する非免疫グロブリン)へ、エレクトロポレーションにより共トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞クローンを、ヒトIgGについてのELISAによりヒト抗体の産生のためスクリーニングした。
【0100】
実施例7
IL−1Rの脱グリコシル化
形質転換したSF9昆虫細胞の上清から精製した組換えの可溶性ヒトタイプ1IL−1受容体(IL−1R)(アミノ酸配列については、図11を参照のこと)5μgを、3mUのノイラミニダーゼ(N)(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ国;No.269611)、0.3UのN−グリコシダーゼF(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ国;No.1347101)と、それぞれ37℃で17時間インキュベーションした。遠心分離後、試料をSDS−PAGEにより分析した。
SDS−PAGE分析(図12)により、IL−1R(レーン1)の分子量がN−グリコシダーゼF(レーン3)とのインキュベーションでは約9kDa減少した一方で、ノイラミニダーゼ(レーン2)及びO−グリコシダーゼ(レーン4)とのインキュベーションでは分子量の有意な変化は観察されないことを実証した。ノイラミニダーゼとN−グリコシダーゼFとの組み合わせ(レーン5)、O−グリコシダーゼとN−グリコシダーゼFとの組み合わせ(レーン6)、又は全3つの組み合わせ(レーン8)は、炭水化物側鎖のさらなる開裂という結果にはならなかった。ノイラミニダーゼ及びO−グリコシダーゼの組み合わせでは、炭水化物側鎖を除去しなかった(レーン7)。
データは、IL−1Rが1つ以上の可能性のあるN−グリコシル化部位でグリコシル化し、そしてN連結グリコシル化がN−グリコシダーゼFとのインキュベーションにより完全に除去されうることを実証する。O連結グリコシル化は、検出しなかった。
2D8抗体についてのウェスタンブロットのデータを、図13に示す(レーンは、図12にならう)。
【0101】
実施例8
エピトープの決定
抗原分子上の抗体の結合領域(エピトープ)を、ブロッティング及びpepscan分析により決定した。
ブロッティング分析については、天然の又は変性した組換えの、可溶性ヒトIL−1R(rshIL−1R)試料をメンブレンに直接スポットし、抗hIL1R抗体とインキュベーションし、そして抗FCガンマ−POD抗体を用いて化学発光検出により検出した。さらに、rshIL−1RをN−グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化して、グリコシル化及び脱グリコシル化した両rshIL−1RをSDS−PAGE上で変性条件を下げて分離した。タンパク質をPVDF膜上でブロットし、抗hIL−1R抗体と共にインキュベーションし、そして抗FCγ−POD抗体を用いて化学発光検出により検出した。
ドットブロット分析では、本発明に従う抗体が特異的にrshIL−1Rへ、自然の又は変性条件下で結合することを示した。最後に、ウェスタンブロット分析では、本発明に従う抗体はグリコシル化rshIL1R(天然又は変性)のみを認識することを示した。脱グリコシル化したhIL1Rは、ウェスタンブロット分析では検出されなかった。他のグリコシル化タンパク質(例えば、エリスロポエチン、カルボキシペプチダーゼY)は、本発明に従う抗体により認識せず、グリコシル化rshIL−1Rの認識の特異性が高い。
さらに、rshIL−1Rの細胞外ドメインを表すビオチン化ペプチド(20個のアミノ酸)を、抗IL−1R/rshIL−1R pepcan分析での使用のために合成した。ペプチドは10個のアミノ酸が重なり、そして不活性なN末端ビオチン化スペーサーを含む。ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンを被覆したマイクロタイタープレートへカップリングさせ、抗hIL1R抗体とインキュベーションし、そして抗FCγ抗体を用いて検出した。結合したペプチドは認識されるIL−1Rの配列エピトープを表す。
【0102】
実施例9
IL−1Rアンタゴニストの存在下での、IL−1Rへの2D8及びDEI5/8の結合
IL−1Rとの抗IL−1R抗体のタンパク質タンパク質相互作用を、表面プラスモン共鳴によりBiacore 3000 Systemを用いて分析した。会合速度は、2分間の注入により決定し;解離速度は3分間の洗浄工程により測定した。陰性コントロールのデータを系の内因性ベースラインドリフトの補正及びノイズシグナル減少のためにオリジナルの曲線から引いた。抗体及びチップ表面に固体化したIL−1Rを用いた2つのアッセイ形式を、本研究で用いる。
a)抗IL−1R抗体2D8を、チップ表面上(CM5)にアミンカップリングにより共有的に固定する。IL−1Rを10nMの濃度で、大量トランスファー条件下で注入して、阻害研究での参照として働く最大のシグナルを決定した。IL−1R(10nM)結合の阻害を、IL−1Rアンタゴニスト、IL−ベータ又はDEI5/8の濃度を増大して(0.78〜100nM)IL−1Rをプレインキュベーション(HBS−P緩衝液中で少なくとも20分間室温で)することにより、測定する。続いて、試料をフローセルへ注入し、そして固定化2D8抗体との相互作用を決定する。
b)IL−1ベータを、チップ表面上(CM5)にアミンカップリングにより共有的に固定する。IL−1Rを10nMの濃度で、大量トランスファー条件下で注入して、参照値としてはたらく最大シグナルを決定した。rshIL−1R(10nM)結合の阻害を、IL−1Rアンタゴニスト、rshIL−1ベータ又はDEI5/8の濃度を増大して(0.78〜100nM)IL−1Rをプレインキュベーションすることにより、測定する。続いて、試料をフローセルに注入し、そして固定化rhIL−1ベータとの相互作用を決定する。
IL−1Rアンタゴニストは、第一のアッセイでは、100μMの濃度でIL−1R結合の阻害を示さない。IL−1ベータは8nMで、DEI5/8は2nMで、最大半量の阻害(IC50)を示す。第二のアッセイでは、IL−1Rアンタゴニストは4nMの、DEI5/8は2nMの、そして2D8は2nMの阻害活性(IC50)を示す。
IL−1Rアンタゴニストは2D8へのIL−1Rの結合を、100μMまでの濃度では阻害せず、2D8及びIL−1Rアンタゴニストは競合する様式でIL−1Rへ結合しないと結論する。2D8は結合に際してIL−1Rの直接のコンフォメーションの変化を導く。このIL−1Rのコンフォメーションの変化は、もはやIL−1Rアンタゴニストの受容体への結合を許さない。受容体への結合において、IL−1Rアンタゴニストに対し、2D8及びDEI5/8はアロステリック阻害を示す。IL−1ベータは2D8へのIL−1Rの結合を阻害し、IL−1ベータ及び2D8のIL−1Rへの競合的結合を示唆する。
【0103】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、2D8抗体についてのELISA結合アッセイである。
【図2】図2は、2D8抗体のIL−1Rへの親和性の決定である。
【図3】図3は、IL−1Rへの、2D8抗体のリガンドIL−1の結合との競合である。
【図4】図4は、2D8抗体による三元複合体構築物hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの阻害である。上の線:hIL−1R AcpへのhIL−1/hIL−1Rの結合下の線:抗体2D8の添加
【図5A】図5Aは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図5B】図5Bは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図5C】図5Cは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図6】図6は、ヒトの血液におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図7】図7は、T細胞エピトープを欠く重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図8】図8は、T細胞エピトープを欠く軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図9】図9は、ヒト化した重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図10】図10は、ヒト化した軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図11】図11は、IL−1Rのアミノ酸配列である。ボールドのN:可能なグリコシル化部位
【図12】図12は、グリコシル化IL−1Rの、グリコシダーゼでの処理後のSDS PAGEである。
【図13】図13は、グリコシル化及び脱グリコシル化IL−1Rとの2D8のウェスタンブロットである。
【図14】図14は、軽鎖の定常領域である。
【図15】図15は、重鎖の定常領域である(IgG4)。
【図16】図16は、重鎖の定常領域である(IgG1)。
【図17】図17は、DEI5/8の重鎖及び軽鎖である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン1受容体(IL−1R)に対する抗体、その製造方法、前記抗体を含む薬学的組成物、及びその使用に関する。
【0002】
炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン1(IL−1アルファ及びIL−1ベータ)により活性化されるシグナル伝達経路は、IL−1が炎症疾患で奏し、そしてリウマチ様関節炎と関連する炎症や関節の破壊に関与する重要な役割により、多くの注目の焦点となってきた。
【0003】
多数のタンパク質が、転写因子核内因子カッパB(NF−カッパB)、そしてp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)といったストレス活性化タンパク質キナーゼのポスト受容体活性化に関与することが記載されている。インターロイキン1受容体(IL−1R、Swiss Prot.P14778、CD121a)は、このシグナル伝達のメンバーであり、自然免疫応答及び炎症応答のクリティカルな決定因子である。リウマチ様関節炎への処置アプローチは、一つにはこの症状の重症度の認識が高まった結果として、そして一つにはこの症状の免疫病原性におけるサイトカイン類の重要な役割を理解する中での相当の進歩により、近年、大きく進化した変化を受けてきた。主要な焦点は、TNFα及びIL−1をターゲットとする原理に基づく。最近、刊行された研究では、TNFαをターゲットとするいくつかの生物試薬の使用が、リウマチ様疾患の症候及び徴候における改善を持続し、そしてさらにTNFα遮断が構造的損傷から関節を保護することを確認している。アナキンラは、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)であり、IL−1に媒介される作用を遮断する。
【0004】
米国特許第6,511,665号は、ヒトIL−1受容体に特異的に結合し、そしてIL−1受容体へのIL−1の結合を遮断するモノクローナル抗体をクレームする。
【0005】
本発明の目的は、リウマチ様関節炎のような炎症疾患の治療にとって有益な手段であるIL−1Rに対する新規抗体を提供することである。
【0006】
発明の要約
(MRC−5細胞のようなヒト胚性肺繊維芽細胞における)IL−8の分泌を媒介するIL−1の阻害について、35pM以下のIC−50値を示すIL−1Rに対する抗体が存在することが、驚くべきことに見いだされた。
【0007】
本発明に従う抗体は、天然の、そして変性したIL−1Rについて、IL−1Rにエピトープ特異性を有し、そしてIL−1RへのIL−1の結合、及びそれに続くシグナル伝達(核内因子カッパB(NF−カッパB)の活性化を阻害する。抗体は、IL−1Rの可溶性ドメインへ、そのグリコシル化型で結合し、そして300pM、好ましくは200pM以下(KD)の親和性を示す。抗体は、脱グリコシル化したIL−1Rへの結合については、親和性が有意に減少することを示す。
【0008】
本発明に従う抗体は、IL−1RへのIL−1の結合をin vitro及びin vivoで阻害し、それによりIL−1、IL−1受容体及びIL−1Racp(インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質;Q9NPH3)からなる三元複合体の形成を阻害する。
【0009】
本発明は、ヒトIL−1Rに結合し、そしてヒトIL−1のIL−1Rへの結合を阻害する抗体であって、該抗体は好ましくはハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得られるか、又はキメラであり、ヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗体変異体又は抗体のフラグメントであり、ヒトの繊維芽細胞MRC5(ATCC CCL 171)においてIL−1が媒介するIL−8の分泌を阻害するために35pM以下のIC50値を示すことを特徴とする、抗体を含む。
【0010】
本発明に従う抗体は、好ましくはエフェクター機能(ADCC及びCDC)を示さず、従ってIgG4アイソタイプのものである。特に好ましくは、セリン228のプロリンへの突然変異である(Angal, S.ら、Mol.Immunol.30 (1993年) 105〜108)。あるいは、前記抗体はIgG1アイソタイプのものであり、そして好ましくはCH1とCH2との間の約aa220〜240でのヒンジ領域及び/又はCH2とCH3との間の約aa330の第2インタードメイン領域内で改変し、(番号付けはKabatに従い、例えばJohnson, G.及びWu, T.T.、Nucleic Acids Res.28 (2000年) 214〜218を参照のこと)、エフェクター機能を避ける。IgGクラスのスウィッチングは、抗体の定常の重鎖と軽鎖を、所望とするクラス、例えばIgG1又はIgG4の抗体の重鎖と軽鎖で交換することにより、容易に実施することができる。このような方法は、当該技術分野で周知である。
【0011】
本発明に従う抗体は、抗炎症治療を必要とする患者にとって利点を示す。本発明に従う抗体は、そのような疾患を患った、特にはリウマチ様関節炎を患った患者にとって、利益をもたらす新規で独創的な特性を有する。本発明に従う抗体は、前記特性を特徴とする。
【0012】
さらに好ましくは、抗体はラット起源のものであり、そしてKabatに従うラット抗体の抗体配列フレームを含む。好ましくは、Kabat配列において、アミノ酸10(セリン)がVL鎖から欠失し(DEL10)、及び/又はVH鎖のアミノ酸26(グリシン)がグルタミン酸(G26E)へ変更されている。好ましくは、抗体はT細胞エピトープを、WO98/08097に記載された方法を用いて枯渇している。
【0013】
さらに好ましくは、IL−1Rアンタゴニスト(Arend W.P.、J.Clin.Invest.88 (1991年) 1445〜1451)は、本発明に従う固定化抗体へのIL−1R(10nM)への結合を、100μM(IL−1Rアンタゴニスト)までの濃度で阻害せず、すなわちIL−1Rへの本発明に従う抗体の結合は、IL−1Rアンタゴニストにより阻害されない。
【0014】
定常領域は、好ましくはKabat, E.(以下を参照のこと)に従うヒトIgG1又はヒトIgG4定常領域である。好ましい定常領域を、図14、15及び16に示す。
【0015】
本発明はまた、抗体をコードする核酸も含む。コードされるポリペプチドは、以下に定義するそれぞれの他の抗体鎖:
CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)を含む抗体重鎖、CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)を含む抗体軽鎖
と共にアセンブルすることができる。CDRの番号付け及び定義は、シグナル配列を含み、Kabat, E.に従う(例えば、Johnson, G.及びWu, T.T.、Nucleic Acids Res.28(2000年)214〜218)。
【0016】
好ましくは、核酸は配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)であるポリペプチドをコードする。
【0017】
抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、そしてさらにキメラ抗体(ヒト定常鎖)、ヒト化抗体であり、そして特に好ましくはT細胞エピトープを欠く抗体である。
【0018】
抗体は、ヒトIL−1Rへ、抗体と競合して、配列番号1〜2の可変鎖を特徴として結合する。
【0019】
抗体は、さらに300pM以下、好ましくは200pM(KD)以下、そしてより好ましくは約70〜200pMの親和性を特徴とする。
【0020】
従って、本発明はまた、本発明に従うIL−1R抗体の重鎖のCDR1、CDR2、CDR3及び軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3からなる前記グループから選択されるポリペプチド及びコード核酸を含む。
【0021】
さらに本発明は、本発明に従うこのようなアンタゴニストのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0022】
本発明に従う好ましいハイブリドーマ細胞系である、ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約により、2003年7月10日に、ドイツ国、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、受託番号DSM ACC2601で、寄託した。
【0023】
前記細胞系から得られる抗体は、本発明の好ましい実施態様である。また、好ましくは図7〜10及び14〜16に示す可変領域及び定常領域から組み合わせることができ、そしてヒトの繊維芽細胞MRC5(ATCC CCL 171)においてIL−1が媒介するIL−8の分泌阻害のために、35pM以下のIC50値を示す全ての抗体である。これらの配列は、抗体2D8の配列を改変することにより得られた配列の例であり、IC50及び/又はエピトープを特徴とする抗体2D8の優れた特性を維持しつつ改良した抗体を得ることができる。このような抗体では、図7及び8からの(T細胞エピトープを欠く)、又は図9及び10(ヒト化した)からの、軽鎖及び重鎖を、図14及び図15又は図16からの定常領域と組み合わせる。特に好ましくは、抗体DEI5/7、DEI4/7、DEI2/4、DEI5/4、DEI4/5、DEI5/5、HUM2/2、HUM2/3、DEI1/8、DEI2/8、DEI2/9、DEI4/9、DEI5/8及びDEI5/9である。
【0024】
本発明はさらに、本発明に従う改良特性を有するIL−1Rに対する抗体の同定及び/又は製造の方法を提供する。本方法では、抗体2D8のポリペプチド配列を、アミノ酸の突然変異、欠失又は付加により改変して、ヒトへの投与の際の抗体の免疫原性を下げる。一般に、約50個までのアミノ酸を可変重鎖及び軽鎖において改変して、免疫原性を下げる。この改変は、2D8のポリペプチド配列とKabatが提供するヒト抗体の配列との比較、及び/又は可変鎖におけるT細胞エピトープの同定及び除去により、実施する。このような改変の例を、図7〜10に示す。有用な抗体は、これらの図のフレーム化したアミノ酸における1以上の変化により産生することができる。好ましくは、約20〜50個のアミノ酸を、可変鎖のフレーム化した領域において改変する。
【0025】
従って本発明は、本発明に従う抗体の製造方法であって、抗体2D8の可変領域の配列において、図7〜10に示す、それぞれフレーム化したアミノ酸に、1個以上のアミノ酸を突然変異、欠失又は付加し、発現ベクターを該改変した抗体の可変領域、及び好ましくは図14〜16に示すような、追加のヒト定常領域を、連続した読み枠でコードする核酸を含んで製造し、発現を宿主細胞内で実施し、そして組換えにより産生した抗体の軽鎖及び重鎖を集めて本発明に従う抗体にすることを特徴とする、製造方法を提供する。
【0026】
本発明はさらに、そのような抗体をコードする核酸、該核酸を含む発現ベクター、及びそのような抗体の組換え体を産生するための、そのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0027】
本発明はさらに、そのような抗体の組換え体の製造方法を提供する。
【0028】
本発明はさらに、リウマチ様関節炎を有すると診断された(そしてそれ故に、そのような治療を必要とする)患者に、本発明に従うIL−1Rに対する拮抗性抗体の有効量を投与することを含むリウマチ様関節炎及び/又は骨関節炎の処置方法を提供する。抗体は、好ましくは薬学的組成物において投与する。
【0029】
本発明はさらに、リウマチ様関節炎の処置及び本発明に従う薬学的組成物の製造のための、本発明に従う抗体の使用を含む。さらに本発明は、本発明に従う薬学的組成物の製造方法を含む。
【0030】
本発明はさらに、本発明に従う抗体を、薬学的有効量で、場合により抗体製剤に有用な薬学的目的のための緩衝液及び/又はさらに賦形剤と共に含有する薬学的組成物を含む。
【0031】
本発明はさらに、薬学的に許容しうる担体においてそのような抗体を含む薬学的組成物を提供する。ある実施態様では、薬学的組成物は製造品又はキットに含めることができる。
【0032】
本発明はさらに、本発明に従う核酸を含み、該核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞において発現することができるベクターを含む。
【0033】
本発明はさらに、本発明に従うベクターを含む原核宿主細胞又は真核宿主細胞を含む。
【0034】
本発明はさらに、本発明に従う組換えのヒト抗体の製造方法であって、本発明に従う核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞で発現すること、及び該抗体を該細胞から回収することを特徴とする製造方法を含む。本発明はさらに、そのような組換え方法により得ることができる抗体を含む。
【0035】
本発明の詳細な記載
用語「抗体」とは、抗体の種々の形態を包含し、全抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、T細胞エピトープを欠く抗体、そしてさらには本発明に従う特徴的な特性を保つ限りに、遺伝学的に操作した抗体が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
「抗体フラグメント」とは、全長抗体の部分、一般には少なくともその抗原結合部分又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、二重特異性抗体、一本鎖抗体分子、免疫毒素、及び抗体フラグメントから形成される多選択性抗体が挙げられる。さらに、抗体フラグメントは、VH鎖の特徴、すなわちVL鎖とアセンブルすることができるか、又はIL−1Rへ結合するVL鎖の特徴、すなわち機能的抗原結合ポケットへVH鎖とアセンブルすることができ、そしてそれによりIL−1RへのIL−1の結合を阻害する特性を提供する一本鎖ポリペプチドを含む。
【0037】
本明細書中に用いる用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一のアミノ酸組成物の抗体分子調製物をいう。用語「キメラの抗体」とは、ラットに由来する可変領域、すなわち結合領域及び異なる起源又は種に由来する少なくとも定常領域の部分を、通常は組換えDNA技術により調製して含むモノクローナル抗体をいう。ラットの可変領域及びヒトの定常領域を含むキメラの抗体が、特に好ましい。そのようなラット/ヒトのキメラの抗体は、ラットの免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント及びヒトの免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む免疫グロブリン遺伝子の発現産物である。本発明が包含する「キメラの抗体」の他の形態は、そのクラス又はサブクラスがオリジナルの抗体のものから改変又は変更したものである。そのような「キメラの」抗体にも、「クラス転換した抗体」として言及する。キメラの抗体を産生する方法としては、現在当該技術分野で周知である、慣用の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術が挙げられる。例えば、Morrison, S.L.ら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 81(1984年)6851〜6855;米国特許第5,202,238号及び第5,204,244号を参照のこと。
【0038】
用語「ヒト化抗体」とは、そのフレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)を改変して、親の免疫グロブリンのものに比較して異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含む抗体をいう。好ましい実施態様では、ラットのCDRをヒトの抗体のフレームワーク領域に移植して、「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann, L.ら、Nature 332(1988年)323〜327; 及びNeuberger, M.S.ら、Nature 314(1985年)268〜270を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ及び二機能性抗体についての前記した抗原を認識する配列を表わすものに相当する。本発明に従うヒト化抗体の例を、図9及び10に示す。
【0039】
用語「T細胞エピトープを欠く抗体」とは、ヒトT細胞エピトープ(MHCクラスII分子に結合する能力を有するタンパク質内のペプチド配列)を除去することにより改変して、免疫原性を除去又は減少した抗体をいう。この方法により、ペプチドのアミノ酸側鎖間の相互作用及びMHCクラスII結合溝を有する特異的結合ポケットを同定する。同定した免疫原性領域を突然変異させて、免疫原性を排除する。このような方法は、一般に、例えばWO98/52976に記載されている。有用で、そして本発明に従うT細胞エピトープを欠く抗体の可変領域の例を、図7及び8に示す。
【0040】
本明細書中に用いる「結合」とは、約300pM以下、好ましくは約200pM以下(KD)、そしてより好ましくは約70〜200pMの親和性でのIL−1Rへの抗体結合をいう。
【0041】
本明細書中で用いる用語「核酸分子」とは、DNA分子及びRNA分子を含むと意図する。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖でよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0042】
本明細書中で用いる「可変領域」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))とは、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の対のそれぞれをさす。可変の軽鎖及び重鎖のドメインは、同一の一般的構造を有し、そして各ドメインは、その配列が広く保存され、3個の「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDRs)により連結された4個のフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採用し、そしてCDRsはβシート構造を連結するループを形成しているであろう。各鎖におけるCDRsは、フレームワーク領域によりその三次元構造で維持され、そして他の鎖のCDRsと共に抗原結合部位を形成する。抗体重鎖及び軽鎖のCDR3領域は、本発明に従う抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を奏し、そしてそれ故に本発明のさらなる目的を提供する。
【0043】
本明細書中で用いる場合の用語「高頻度可変領域」又は「抗体の抗原結合部位」とは、抗原結合に応答しうる抗体のアミノ酸残基をいう。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDRs」のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書で定義した高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメインの領域である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖はN末端からC末端まで、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は抗原結合に最も寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabatらの標準的な定義付けであるSequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベテスダ(1991年)及び/又は「高頻度可変ループ」を形成するそれらの残基に従って、決定する。
【0044】
本明細書中に用いる用語「IL−1Rへの結合」とは、in vitroのELISAアッセイにおける、好ましくはビオチン化ヒトIL−1R及びストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートを用いた結合アッセイにおける、IL−1Rへの抗体の結合親和性を意味する。IL−1Rへの結合親和性は、Biacoreアッセイ(Biacore AB、スウェーデン国ウプサラ)により調べることもできる。結合の親和性は、用語Kon(抗体/抗原複合体からの抗体の会合についての速度定数)、Koff(解離定数)及びKD(Kon/Koff)により定義する。本発明に従う抗体は、300pM以下、好ましくは200pM以下、そしてより好ましくは70〜200pMのKDを示し、IL−1Rへの結合を阻害し、そして好ましくはIL−1Rへ、IL−1と同様に同位置で結合する。
【0045】
用語「IL−1R発現細胞」とは、IL−1受容体を発現しているそのような細胞をいう。そのような細胞とは、例えばMRC5細胞のような、ヒト繊維芽細胞である。
【0046】
本発明に従う抗体は、抗体2D8と同じIL−1Rのエピトープへの結合を示し、結合の立体障害によりIL−1Rへの結合において阻害される。結合阻害は、固定化IL−1R及び抗体2D8を用いた競合アッセイにより検出することができる。50%以上のシグナル減少は、抗体が抗体2D8と競合することを示す。
【0047】
用語「エピトープ」とは、抗体へ特異的に結合することができるタンパク質決定因子を意味する。エピトープは、通常、例えばアミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面配置からなり、そして通常は特異的な3次元構造の特徴も、特異的な電荷の特徴も有する。コンフォメーション及び非コンフォメーションのエピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒存在下で失われる点で、区別される。本発明に従う抗体が特異的に結合するIL−1Rのエピトープは、本発明に従う抗体により、天然の、そして変性したIL−1Rの両者について認識される。本発明に従う抗体は、脱グリコシル化IL−1Rへの結合より、少なくとも約50倍、好ましくは少なくとも100倍強く(N−グリコシダーゼFでの処理後、ウェスタンブロットにより測定)、ヒトIL−1R(グリコシル化、可溶性細胞外ドメイン)へ結合する。従って、本発明に従う抗体は脱グリコシル化IL−1Rへの結合について親和性が有意に減少することを示す
【0048】
本発明に従う抗体には、さらに前記本発明に従う抗体の特徴に影響せず又はそれを変化させない、「保存的配列改変」、ヌクレオチド及びアミノ酸配列改変を有するそのような抗体が挙げられる。改変は、当該技術分野で既知の標準的技術、例えば部位特異的変異誘発及びPCR仲介変異誘発により導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸で置き換える置換が挙げられる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で明確にされている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このように、ヒトの抗IL−1R抗体において予見した非必須アミノ酸残基を、好ましくは同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基と置換することができる。
【0049】
アミノ酸置換は、Riechmann, L.ら、Nature 332(1988年)323〜327及びQueen, C.ら、Proc. Natl.Acad.Sci.USA86 (1989年) 10029〜10033に記載されるような分子モデリングに基づく変異誘発により、実施するとよい。
【0050】
本発明に従う抗体は、好ましくは少なくとも約5日、好ましくは8〜15日のin vivo(カニクイザル又はヒト)の血清半減期を示す。
【0051】
本発明に従う抗体は、好ましくは組換え手段により産生する。このような方法は当該技術分野で周知であり、そして原核細胞及び真核細胞におけるタンパク質発現、続く抗体ポリペプチドの単離及び通常の薬学的に許容しうる純度への精製を含む。タンパク質発現のためには、軽鎖及び重鎖又はそれらのフラグメントをコードする核酸を標準的方法により発現ベクターへ挿入する。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母又はE.coli細胞のような、適当な原核宿主細胞又は真核宿主細胞で実施し、そして抗体を細胞(溶解後の上清又は細胞)から回収する。
【0052】
抗体の組換え体産生は、当該技術分野において周知であり、そして例えば、Makrides, S.C.、Protein Expr.Purif.17(1999年) 183〜202; Geisse, S.ら、Protein Expr.Purif.8(1996年) 271〜282; Kaufman, R.J.、Mol.Biotechnol.16(2000年) 151〜161; Werner, R.G.、Drug Res.48(1998年)870〜880の概説の項目に記載されている。
【0053】
抗体は、全細胞、細胞溶解、又は部分的に精製した又はその後の純粋な形態において、存在するとよい。他の細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質を除去するために、標準的技術、例えばアルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び他の当該技術分野における周知の技術により、精製を実施する。Ausubel, F.ら編集、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987年) を参照のこと。
【0054】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M.ら、Cytotechnology 32(2000年)109〜123; 及びBarnes, L.M.ら、Biotech.Bioeng.73(2001年) 261〜270に記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y.ら、Nucl.Acids.Res.30(2002年) E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989年) 3833〜3837; Carter, P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992年) 4285〜4289; 及びNorderhaug、L.ら、J.Immunol.Methods 204(1997年) 77〜87に記載されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.-J.及びChristensen, K.、によりCytotechnology 30(1999年)71〜83に、そしてSchlaeger, E.-J.によりImmunol.Methods 194(1996年)191〜199に記載されている
【0055】
原核細胞に適したコントロール配列としては、例えばプロモーター、場合によりオペレーター配列、そしてリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが既知である。
【0056】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれた場合に、「作動可能に連結して」いる。例えば、ポリペプチドの分泌に加わるプレタンパク質として発現させる場合は、プレ配列又は分泌リーダーについてのDNAをポリペプチドについてのDNAに作動可能に連結し;配列の転写に影響させる場合は、プロモーター又はエンハンサーをコード配列に作動可能に連結し;あるいは翻訳を促進するように配置する場合は、リボソーム結合部位をコード配列に作動可能に連結する。一般的に、「作動可能に連結した」とは、連結しているDNA配列が近接し、そして分泌リーダーの場合には、近接して、かつ読み枠内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接していなくともよい。連結は、都合のよい制限部位での連結により達成する。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを、慣用のプラクティスに従って用いる。
【0057】
モノクローナル抗体を、適当に培養培地から、慣用の免疫グロブリン精製手順、例えばタンパク質Aセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーにより、分離する。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、慣用の手順を用いて、容易に単離し、そして配列決定する。ハイブリドーマ細胞を、そのようなDNA及びRNAの元として役目を果たさせることができる。一旦単離して、DNAを発現ベクターに挿入し、それを次に宿主細胞、例えばHEK293細胞、CHO細胞又はミエローマ細胞といった、他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞へトランスフェクションして、宿主細胞における組換えモノクローナル抗体の合成を得るとよい。
【0058】
ヒトのIL−1R抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチドの変更を抗体DNAヘ導入することにより、又はペプチド合成により調製する。しかし、そのような改変は、非常に限られた範囲内でのみ、例えば前記のように実施することができる。例えば、改変は前記の抗体の特徴、例えばIgGアイソタイプ及びエピトープ結合を変えずに、組換え体産生の収率、タンパク質の安定性を改善し、あるいは精製を容易にすることができる。
【0059】
抗IL−1R抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しないシステイン残基であれば、一般的にはセリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善し、そして異常な架橋を妨げてもよい。反対に、システイン結合を抗体に加えて、その安定性を改善してもよい(特に、抗体がFvフラグメントのような抗体フラグメンであれば)。
【0060】
抗体のアミノ酸変異体の別タイプでは、抗体のオリジナルのグリコシル化パターンが変わる。変わるとは、抗体に見られる1個以上の炭水化物部分が欠失すること、及び/又は抗体に存在しない1個以上のグリコシル化部位が付加することを意味する。抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結している。N連結とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への付着をいう。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンであって、Xがプロリン以外のアミノ酸であるものは、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素的付着のための認識配列である。このように、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在が、可能なグリコシル化部位を創る。グリコシル化部位の抗体への付加は、1個以上の前記トリペプチド配列(N連結グリコシル化部位のため)を含むようにアミノ酸配列を変えることにより、都合のよく達成する。
【0061】
抗IL−1R抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で既知の種々の方法により調製する。これらの方法としては、天然起源(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)からの単離、又はヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗IL−1R抗体の予め調製した変異体若しくは非変異体バージョンのオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発及びカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
共有的改変の別のタイプとしては、化学的又は酵素的にグリコシドを抗体へカップリングすることが挙げられる。これらの手順は、N連結又はO連結グリコシル化についてのグリコシル化能を有する宿主細胞での抗体の産生を要しないという点で、有利である。用いたカップリング機序により、糖を(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのもののような遊離のスルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンのもののような遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン又はトリプトファンのもののような芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミド基に付着させるとよい。これらの方法は、WO87/05330及びAplin, J.D.及びWriston, J.C.Jr.、CRC Crit.Rev.Biochem.4 (1981年) 259〜306に記載されている。
【0063】
抗体に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化には、抗体の、化合物であるトリフルオロメタンスルホン酸又は等価の化合物への暴露を要する。この処理により、抗体は無傷のままに、連結している糖(Nアセチルグルコサミン又はNアセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖を開裂する結果となる。化学的脱グリコシル化は、Sojahr, H.T.及びBahl, O.P.、Arch.Biochem.Biophys.259(1987年)52〜57により、そしてEdge, A.S.ら、Anal.Biochem.118(1981年)131〜137により、記載されている。抗体の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakura, N.R.及びBahl.O.P.、Meth.Enzymol.138(1987年)350〜359に記載されたように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼの使用により達成できる。
【0064】
抗体の共有的改変の別タイプには、抗体を種々の非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンのうちの1つへ、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に説明されているように、連結することを含む。
【0065】
本発明は、好ましくはIL−1Rに結合するポリペプチドをコードする核酸フラグメントを含み、該ポリペプチドはIL−1のIL−1Rへの結合を阻害し、配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)から選択される。
【0066】
再構築した重鎖及び軽鎖の可変領域を、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3’非翻訳、ポリアデニル化及び転写終結の配列と組合せて、発現ベクター構築物を形成する。重鎖及び軽鎖の発現構築物は、単一ベクターへ、共トランスフェクションして、逐次的にトランスフェクションするか、又は別々にトランスフェクションして宿主細胞へ組合わせることができ、それを次に融合して、両鎖を発現する単一の宿主細胞を形成する。
【0067】
従って、本発明は本発明に従う組換えのヒト抗体の製造方法であって、配列番号1の可変領域からなる重鎖(VH)及び配列番号2の可変領域からなる軽鎖(VL)、並びにヒトの軽鎖定常領域(CL)をコードする核酸を、原核宿主細胞又は真核宿主細胞で発現させ、そして該抗体を該細胞から回収することを特徴とする製造方法を提供する。
【0068】
本発明はさらに、IL−1Rのin vitroでの診断のための、好ましくは試料のIL−1Rと本発明に従う抗体との間の結合を決定する免疫学的アッセイによる、本発明に従う抗体の使用を含む。
【0069】
別の観点では、本発明は本発明の1個の又は組合せでのモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を含有する、薬学的に許容しうる担体と共に製剤化した組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0070】
本明細書中に用いる「薬学的に許容しうる担体」としては、生理適合しうるいかなる、そして全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与に適する(例えば、注射又は点滴による)。
【0071】
「薬学的に許容しうる塩」とは、抗体の所望とする生物学的活性を維持し、そして望ましくない毒性効果を与えない塩をいう(例えば、Berge, S.M.ら、J.Pharm.Sci.66(1977年)1〜19を参照のこと)。そのような塩を、本発明に含む。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩のような非毒性無機塩由来のものが挙げられる。
【0072】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知の種々の方法により投与することができる。当該技術分野の技術者により認められるように、投与経路及び/又は様式は、所望とする結果によって異なる。
【0073】
本発明の組成物を、特定の投与経路により投与するためには、化合物を、又は共投与する化合物を、その不活性化を防ぐ材料で被覆する必要があるかもしれない。例えば、化合物を患者へ適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤において、投与するとよい。薬学的に許容しうる希釈剤としては、食塩水及び水性緩衝液が挙げられる。
【0074】
薬学的に許容しうる担体としては、無菌の注射可能な溶液又は分散液の即席調剤用の、無菌水溶液又は分散液並びに無菌粉が挙げられる。薬学的活性物質のためのそのような媒及び剤の使用は、当該技術分野で既知である。
【0075】
本明細書中で用いる表現「非経口投与」及び「非経口的に投与する」とは、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味するが、限定はなく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角質下、関節腔内、関節下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び点滴が挙げられる。
【0076】
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような賦形剤を含有してもよい。微生物の存在予防を、滅菌手順又は無菌の製造条件、並びに種々の抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含有せしめることの両者により、確実にするとよい。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを、組成物中に含有せしめることも望ましいであろう。さらに注射可能な剤形の吸収遷延は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅延させる剤を含有せしめることにより、実現させるとよい。
【0077】
選択した投与経路に関わらず、本発明の化合物は、適切な水和物形及び/又は本発明の薬学的組成物において用いるとよく、薬学的に許容しうる剤形に、当該技術分野の技術者に既知の慣用の方法により製剤化する。
【0078】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投与レベルは、特に患者、組成物及び投与様式について、患者に毒性とならずに、所望とする治療の応答を得るために有効である活性成分を得るように、変えるとよい。選択した投与レベルは、採用した本発明の特別な組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、採用した特別な化合物の投与経路、投与時間、排泄率といった種々の薬物動態因子、治療期間、他の医薬、採用した特別な組成物との組合せで用いた化合物及び/又は材料、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、一般的な健康及び以前の薬歴などに依存するが、このような因子は医薬の分野で周知である。
【0079】
組成物は、組成物がシリンジにより送達可能である程度に、無菌かつ液体でなければならない。水だけでなく、担体は等張の緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコー及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの適切な混合物であればよい。
【0080】
適当な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により維持するとよい。多くの場合、組成物における等張剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含有せしめることにより実現できる。
【0081】
前記のように、活性化合物を適切に保護すると、化合物を、例えば不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体と共に経口投与するとよい。
【0082】
本発明に従う抗体を、リウマチ様関節炎を患った、そしてそのような治療を必要とする患者の処置に用いることができる。従って、本発明はリウマチ様関節炎を患った患者の処置方法を含む。
【0083】
本発明はさらに、本発明に従う抗体の有効量を薬学的に許容しうる担体と共に含む薬学的組成物の製造方法、及びそのような方法のための本発明に従う抗体の使用を提供する。
【0084】
以下の実施例、参考文献及び配列表を、本発明の理解を助けるために提供するが、その真の意図は付した特許請求の範囲を説明するものである。本発明の精神を逸脱することなく、説明した手順において、改変することができると解される。
【0085】
配列の記載
配列番号1は、ラット2D8の重鎖の可変領域;ラット起源のaa1〜19シグナル配列、20〜134可変領域、135〜139末端フラグメントである。
配列番号2は、ラット2D8の軽鎖の可変領域;ラット起源のaa1〜20シグナル配列、21〜129可変領域、130〜138末端フラグメントである。
配列番号3は、2D8キメラH鎖(ラット/ヒト)(IgG1)のアミノ酸配列である。
配列番号4は、2D8キメラH鎖(ラット/ヒト)(IgG4)のアミノ酸配列である。
配列番号5は、2D8キメラL鎖(ラット/ヒト)のアミノ酸配列である。
配列番号6は、HURVHのアミノ酸配列である(図7及び図9)。
配列番号7は、HURDIVHv1のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号8は、HURDIVHv2のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号9は、HURDIVHv3のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号10は、HURDIVHv4のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号11は、HURDIVHv5のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号12は、HURDIVHv6のアミノ酸配列である(図7)。
配列番号13は、HURVKのアミノ酸配列である(図8及び図10)。
配列番号14は、HURDIVKv4のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号15は、HURDIVKv5のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号16は、HURDIVKv7のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号17は、HURDIVKv8のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号18は、HURDIVKv9のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号19は、HURDIVKv10のアミノ酸配列である(図8)。
配列番号20は、HUR HuVHv1のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号21は、HUR HuVHv2のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号22は、HUR HuVHv3のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号23は、AAB67785−1のアミノ酸配列である(図9)。
配列番号24は、HUR HuVKv1のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号25は、HUR HuVKv2のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号26は、HUR HuVKv3のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号27は、CAD43025のアミノ酸配列である(図10)。
配列番号28は、IL−1Rのアミノ酸配列である(図11)。
配列番号29は、軽鎖の定常領域の配列である(図14)。
配列番号30は、重鎖IgG4の配列である(図15)。
配列番号31は、IgG1の定常領域の配列である(図16)。
配列番号32は、DEI5/8の重鎖の配列である(図17)。
配列番号33は、DEI5/8の軽鎖の配列である(図17)。
【0086】
実施例
実施例1
h−IL−1Rに対するラットモノクローナル抗体の産生
ハイブリドーマの培養
産生したラットモノクローナル抗体を、RPMI 1640及び血清なしの10%Hyclone培地中(Bio Whittaker)、37℃及び5%CO2で、培養した。
免疫化手順及びハイブリドーマ発生
5匹のSprague Dawleyラットを、SF9昆虫細胞で産生させた組換えのヒトIL−1Rで、免疫化した。最初の免疫化(100μgタンパク質)は、完全なフロイントのアジュバントで腹腔内に実施した。全ての他の免疫化は、不完全なフロイントのアジュバントで実施した。モノクローナル抗体は、ラットの脾細胞とNSO細胞を融合させて、産生した。
【0087】
実施例2
IL−1R特異的ELISA
免疫化したマウス血清中の抗IL−1Rタイター又は培養上清中の抗体を、抗原特異的ELISAにより決定した。PBSBSA(PBS/1%BSA)中0.125μg/mlの濃度の可溶性ビオチン化h−IL−1Rを、1時間室温で、シェーカー上で、96ウェルプレート(スプレプトアビジンで予備被覆)に被覆した。その後、ウェルをPBSBSAを用いて、30分間室温でブロックした。血清を1/100にPBSBSAで予備希釈し、そして1/6400まで連続希釈した。上清を、PBSBSA中1/100〜1/10000までの範囲で計算して、希釈した。希釈した血清又は上清をウェルに加え、そして2時間室温で、シェーカー上でインキュベートした。Pre−tap血清又は培養培地を、陰性コントロールとして用いた。125ng/mlのラット抗ヒトIL−1R抗体(クローン2D8)を、陽性コントロールとして用いた。続いて、プレートをPBS/0.05% Tween20で3回洗浄し、そして西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)複合ウサギ抗ラットIgG(Bethyl Laboratories Inc.)と共にインキュベートし、PBSBSAにおいて、1時間室温のシェーカー上で希釈した。ウェルをPBS/0.05% Tween20で4回洗浄し、そしてアッセイを新鮮に調製したTM Blue(登録商標)(Intergen Company)溶液を用いて、15〜20分間室温の暗室中、シェーカー上で発色させた。吸収を、370nmで参照波長として492nmを用いて測定した。場合により、各ウェルへ20μlの1M H2SO4を添加して色素反応を止めることができるが、この場合は測定を、450nmで参照波長として690nmを用いて実施した。結果を、図1に示す。
【0088】
実施例3
抗hIL−1R抗体の結合特性の決定
決定は、BIACORE(登録商標)3000で、CM5チップを用いて実施した。カップリングは、アミンカップリングとして実施した。用いた緩衝液は、PBST(PBS+0.05%Tween)、pH7.4、25℃であった。
a)抗hIL−1R抗体のIL−1Rへの親和性の決定
親和性測定のため、抗Fcγ抗体(ウサギ抗ヒト)を、IL−1Rに対する抗体提示のため、チップ表面上へカップリングさせた。抗IL−1R抗体を、抗Fcγ抗体に結合させ、そして組換えヒトIL−1R細胞外ドメインを溶液中種々の濃度で加えた。会合は60秒のIL−1Rインジェクションにより測定し、解離は3分間緩衝液でチップ表面を洗浄することにより測定した。抗体についての親和性定数KD(Kon/Koff)は、
抗体2D8 100pM
キメラ2D8(IgG1) 93pM
キメラ2D8(IgG4) 105pM
であった。
全抗体の全測定についてのデータ範囲は70〜120pMであり、従って3個の抗体の親和性は同じ範囲である。
【0089】
b)IL−1Rへの、抗hIL−1R抗体のリガンドIL−1の結合との競合
これらの測定については、a)と同じ方法を用いた。hIL−1Rを抗hIL−1R抗体の2D8に結合させると、もはやhIL−1は受容体へ結合しなかった。この抗体は、受容体上でhIL−1の結合部位をブロックする(図3)。
【0090】
c)三元複合体構築物hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの、抗hIL−1R2D8抗体による阻害
三元複合体の検出については、ポリクローナルの抗IgG抗体を、融合タンパク質Fc/hIL−1R AcP(SwissProt Q9NPH3;R&D Systems)の提示のため、チップ表面へカップリングさせた。hIL−1/hIL−1R複合体の溶液中での固定化hIL−1R AcPへの結合を検出した。hIL−1Rとインキュベートすると、抗hIL−1R2D8抗体はこの三元複合体hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの形成を阻害した(図4)。
【0091】
実施例4
a)MRC−5細胞におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害
ヒト繊維芽細胞におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害を、細胞バイオアッセイで決定した。ヒトの胚性肺繊維芽細胞MRC−5をh−ILβで刺激し、そしてIL−8の産生を一工程のELISAで決定した。抗h−IL−1R抗体の添加による刺激の阻害は、抗体のブロッキング機能を立証する。
バイオアッセイは、以下のアッセイ手順に従って行なった。:
1日目に、MRC5細胞をウェル当たり2.5×103細胞個の密度で、100μlの培養培地(10%PBS)に播き、そして24時間インキュベータ中でインキュベートした。
2日目に、培養培地を除去し、そして試料を50μlアッセイ培地(1%FBS)(精製抗体を試験する場合)又はハイブリドーマ培地SF(ハイブリドーマ上清を試験する場合)に加えた。ハイブリドーマ上清の最適希釈は、1:1000と1:1,000,000の間であった。インキュベーションは、30分間インキュベーター内で実施した。続いてh−1R−1β、50μl/ウェル(2×濃縮!)を、アッセイ培地(1%FBS、又はハイブリドーマ上清を試験する場合は2%FBS)において、1%の最終FBS濃度まで加えた。さらにインキュベーションを37℃で7時間実施し、そして上清(80μl)を別の96ウェルプレートへ移した。
【0092】
b)h−IL−8−ELISA
アッセイ(Miller, M.D.及びKrangel, M.S.、評論Rev.Immunol.12(1992年)17〜46)を、製造者のプロトコール(R&D Systems、米国)に従って、未希釈の上清(血液及び脳脊髄液試料についてのプロトコール)を用いて実施した。刺激の最大(抗体を用いないコントロール)は、およそ750pg/mlのIL−8であった。抗体によるIL−8分泌の阻害についてのIC50を図5に示す。
抗体2D8 7.2pM(1.08ng/ml)
キメラ2D8(IgG1) 4.7pM(0.71ng/ml)
キメラ2D8(IgG4) 5.1pM(0.77ng/ml)
本発明に従う抗体を用いた全実験の範囲は、4.0〜35.0pMであった。
2D8の、IL−1Rに対する市販で入手可能な抗体との、このMRC−5バイオアッセイにおける比較を、表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
図7〜10のアミノ酸配列に基づき、ヒト化及びT細胞抗原枯渇抗体のパネルを変異誘発により構築し、そしてh−IL−8−ELISAによりIC50について調べる。結果を、抗体2D8(1.0)に関して、表2に示す。
用いた略記の説明:
HUM:図9及び図10の配列の組合せ
DEI:図7及び図8の配列の組合せ
HUM2/2:配列HURHuVHv2及びHURHuVKv2の組合せ
DEI1/8:配列HURDIVHv1及びHURDIVKv8の組合せ
【0095】
【表2】
【0096】
c)ELISAによる免疫活性の決定
2D8抗体と比較した抗体の相対的な免疫活性を、ELISAにより決定した。可溶性ビオチン化ヒトIL−1Rを、室温で1時間96ウェルプレート(ストレプトアビジンで予備被覆した)に被覆した。BSAでブロッキング後、抗体を希釈し、そしてウェルに加えて、室温で2時間インキュベーションした。プレートを3回洗浄し、そして西洋わさびペルオキシダーゼ(POD)複合ウサギ抗ラットIgGと共に室温で1時間インキュベーションした。さらに洗浄後、結合した抗体量を、TM−Blue(登録商標)を添加して370nでの吸収を測定することにより決定した。
結果を、表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
実施例5
ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生の阻害
抗体2D8の、ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生を阻害するブロッキング能を評価するために、バイオアッセイを実施した。ヘパリン(19U/ml)を用いて採取したヒト血液を10ng/mlのh−IL1βを用いて刺激し、そしてIL−8の産生を一工程のELISAで決定した。抗h−IL−1R抗体の添加による刺激の阻害は、ヒトのex vivoアッセイにおける抗体のブロッキング機能を証明する。IL−1と共に抗体の存在下又は欠損下においてインキュベーションを37℃で16時間実施し、1:5希釈した試料をIL−8存在について製造者のプロトコール(R&D Systems、米国)に従って試験した以外は、実施例4の記載に従って、バイオアッセイを実施した。ヒト血液におけるIL−1誘導のIL−8産生は、100ng/mlの2D8抗体の濃度で〜50%阻害した(図6を参照のこと)。
【0099】
実施例6
抗体の組換え体産生
マウス可変領域に連結したヒト定常領域からなるキメラの抗体を発現するためのベクターを、構築した。2つのキメラの重鎖の発現ベクターを、発現ベクターpSVgptにおいてヒトIgG1及びヒトIgG4定常領域に連結した抗IL1RラットVHからなるように構築した。キメラの軽鎖のベクターは、発現ベクターpSVhygにおいてヒトCカッパに連結した抗IL−1RラットVKからなるように、構築した。リーダーシグナルペプチド、リーダーイントロン及びマウスの免疫グロブリンプロモーターを含む5フランキング配列、並びにスプライス部位及びイントロン配列を含む3フランキング配列を、キメラの発現ベクターへ導入した。重鎖及び軽鎖の発現ベクターを、NS0細胞(ECACC No85110503、マウスミエローマを産生する非免疫グロブリン)へ、エレクトロポレーションにより共トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞クローンを、ヒトIgGについてのELISAによりヒト抗体の産生のためスクリーニングした。
【0100】
実施例7
IL−1Rの脱グリコシル化
形質転換したSF9昆虫細胞の上清から精製した組換えの可溶性ヒトタイプ1IL−1受容体(IL−1R)(アミノ酸配列については、図11を参照のこと)5μgを、3mUのノイラミニダーゼ(N)(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ国;No.269611)、0.3UのN−グリコシダーゼF(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ国;No.1347101)と、それぞれ37℃で17時間インキュベーションした。遠心分離後、試料をSDS−PAGEにより分析した。
SDS−PAGE分析(図12)により、IL−1R(レーン1)の分子量がN−グリコシダーゼF(レーン3)とのインキュベーションでは約9kDa減少した一方で、ノイラミニダーゼ(レーン2)及びO−グリコシダーゼ(レーン4)とのインキュベーションでは分子量の有意な変化は観察されないことを実証した。ノイラミニダーゼとN−グリコシダーゼFとの組み合わせ(レーン5)、O−グリコシダーゼとN−グリコシダーゼFとの組み合わせ(レーン6)、又は全3つの組み合わせ(レーン8)は、炭水化物側鎖のさらなる開裂という結果にはならなかった。ノイラミニダーゼ及びO−グリコシダーゼの組み合わせでは、炭水化物側鎖を除去しなかった(レーン7)。
データは、IL−1Rが1つ以上の可能性のあるN−グリコシル化部位でグリコシル化し、そしてN連結グリコシル化がN−グリコシダーゼFとのインキュベーションにより完全に除去されうることを実証する。O連結グリコシル化は、検出しなかった。
2D8抗体についてのウェスタンブロットのデータを、図13に示す(レーンは、図12にならう)。
【0101】
実施例8
エピトープの決定
抗原分子上の抗体の結合領域(エピトープ)を、ブロッティング及びpepscan分析により決定した。
ブロッティング分析については、天然の又は変性した組換えの、可溶性ヒトIL−1R(rshIL−1R)試料をメンブレンに直接スポットし、抗hIL1R抗体とインキュベーションし、そして抗FCガンマ−POD抗体を用いて化学発光検出により検出した。さらに、rshIL−1RをN−グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化して、グリコシル化及び脱グリコシル化した両rshIL−1RをSDS−PAGE上で変性条件を下げて分離した。タンパク質をPVDF膜上でブロットし、抗hIL−1R抗体と共にインキュベーションし、そして抗FCγ−POD抗体を用いて化学発光検出により検出した。
ドットブロット分析では、本発明に従う抗体が特異的にrshIL−1Rへ、自然の又は変性条件下で結合することを示した。最後に、ウェスタンブロット分析では、本発明に従う抗体はグリコシル化rshIL1R(天然又は変性)のみを認識することを示した。脱グリコシル化したhIL1Rは、ウェスタンブロット分析では検出されなかった。他のグリコシル化タンパク質(例えば、エリスロポエチン、カルボキシペプチダーゼY)は、本発明に従う抗体により認識せず、グリコシル化rshIL−1Rの認識の特異性が高い。
さらに、rshIL−1Rの細胞外ドメインを表すビオチン化ペプチド(20個のアミノ酸)を、抗IL−1R/rshIL−1R pepcan分析での使用のために合成した。ペプチドは10個のアミノ酸が重なり、そして不活性なN末端ビオチン化スペーサーを含む。ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンを被覆したマイクロタイタープレートへカップリングさせ、抗hIL1R抗体とインキュベーションし、そして抗FCγ抗体を用いて検出した。結合したペプチドは認識されるIL−1Rの配列エピトープを表す。
【0102】
実施例9
IL−1Rアンタゴニストの存在下での、IL−1Rへの2D8及びDEI5/8の結合
IL−1Rとの抗IL−1R抗体のタンパク質タンパク質相互作用を、表面プラスモン共鳴によりBiacore 3000 Systemを用いて分析した。会合速度は、2分間の注入により決定し;解離速度は3分間の洗浄工程により測定した。陰性コントロールのデータを系の内因性ベースラインドリフトの補正及びノイズシグナル減少のためにオリジナルの曲線から引いた。抗体及びチップ表面に固体化したIL−1Rを用いた2つのアッセイ形式を、本研究で用いる。
a)抗IL−1R抗体2D8を、チップ表面上(CM5)にアミンカップリングにより共有的に固定する。IL−1Rを10nMの濃度で、大量トランスファー条件下で注入して、阻害研究での参照として働く最大のシグナルを決定した。IL−1R(10nM)結合の阻害を、IL−1Rアンタゴニスト、IL−ベータ又はDEI5/8の濃度を増大して(0.78〜100nM)IL−1Rをプレインキュベーション(HBS−P緩衝液中で少なくとも20分間室温で)することにより、測定する。続いて、試料をフローセルへ注入し、そして固定化2D8抗体との相互作用を決定する。
b)IL−1ベータを、チップ表面上(CM5)にアミンカップリングにより共有的に固定する。IL−1Rを10nMの濃度で、大量トランスファー条件下で注入して、参照値としてはたらく最大シグナルを決定した。rshIL−1R(10nM)結合の阻害を、IL−1Rアンタゴニスト、rshIL−1ベータ又はDEI5/8の濃度を増大して(0.78〜100nM)IL−1Rをプレインキュベーションすることにより、測定する。続いて、試料をフローセルに注入し、そして固定化rhIL−1ベータとの相互作用を決定する。
IL−1Rアンタゴニストは、第一のアッセイでは、100μMの濃度でIL−1R結合の阻害を示さない。IL−1ベータは8nMで、DEI5/8は2nMで、最大半量の阻害(IC50)を示す。第二のアッセイでは、IL−1Rアンタゴニストは4nMの、DEI5/8は2nMの、そして2D8は2nMの阻害活性(IC50)を示す。
IL−1Rアンタゴニストは2D8へのIL−1Rの結合を、100μMまでの濃度では阻害せず、2D8及びIL−1Rアンタゴニストは競合する様式でIL−1Rへ結合しないと結論する。2D8は結合に際してIL−1Rの直接のコンフォメーションの変化を導く。このIL−1Rのコンフォメーションの変化は、もはやIL−1Rアンタゴニストの受容体への結合を許さない。受容体への結合において、IL−1Rアンタゴニストに対し、2D8及びDEI5/8はアロステリック阻害を示す。IL−1ベータは2D8へのIL−1Rの結合を阻害し、IL−1ベータ及び2D8のIL−1Rへの競合的結合を示唆する。
【0103】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、2D8抗体についてのELISA結合アッセイである。
【図2】図2は、2D8抗体のIL−1Rへの親和性の決定である。
【図3】図3は、IL−1Rへの、2D8抗体のリガンドIL−1の結合との競合である。
【図4】図4は、2D8抗体による三元複合体構築物hIL−1/hIL−1R/hIL−1R AcPの阻害である。上の線:hIL−1R AcpへのhIL−1/hIL−1Rの結合下の線:抗体2D8の添加
【図5A】図5Aは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図5B】図5Bは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図5C】図5Cは、MRC−5細胞におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図6】図6は、ヒトの血液におけるIL−1誘導IL−8産生の阻害である。
【図7】図7は、T細胞エピトープを欠く重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図8】図8は、T細胞エピトープを欠く軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図9】図9は、ヒト化した重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図10】図10は、ヒト化した軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【図11】図11は、IL−1Rのアミノ酸配列である。ボールドのN:可能なグリコシル化部位
【図12】図12は、グリコシル化IL−1Rの、グリコシダーゼでの処理後のSDS PAGEである。
【図13】図13は、グリコシル化及び脱グリコシル化IL−1Rとの2D8のウェスタンブロットである。
【図14】図14は、軽鎖の定常領域である。
【図15】図15は、重鎖の定常領域である(IgG4)。
【図16】図16は、重鎖の定常領域である(IgG1)。
【図17】図17は、DEI5/8の重鎖及び軽鎖である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL−1Rに結合し、そしてIL−1RへのヒトIL−1の結合を阻害する抗体であって、該抗体が、MRC5(ATCC CCL 171)のようなヒトの繊維芽細胞におけるIL−1が媒介するIL−8及びIL−6の分泌の阻害について、35pM以下のIC50値を示す、ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得ることができるか、又はキメラの、ヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗体変異体又は該抗体のフラグメントあることを特徴とする抗体。
【請求項2】
前記抗体が、ハイブリドーマ細胞系MAL<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)により産生されることを特徴とする、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、CH1とCH2との間の約aa220〜240でのヒンジ領域及び/又はCH2とCH3との間の約aa330の第2インタードメイン領域内で改変された、IgG4アイソタイプのものであるか、又はIgG1アイソタイプのものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、図7〜10及び図14〜16から選択される可変領域及び定常領域を示すことを特徴とする、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
約300pM以下(KD)の親和性を特徴とする、請求項1〜4記載の抗体。
【請求項6】
相補性決定領域(CDRs)として、以下の配列:
a)重鎖内に、CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)、並びに
b)軽鎖内に、CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)
を含むことを特徴とする、請求項1〜5記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、ラット起源のものであることを特徴とする、請求項1〜6記載の抗体。
【請求項8】
ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得ることができる、請求項1〜7記載の抗体。
【請求項9】
薬学的組成物の製造のための請求項1〜8記載の抗体の使用。
【請求項10】
薬学的有効量で請求項1〜8記載の抗体を含有する薬学的組成物。
【請求項11】
ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)。
【請求項12】
請求項1〜8記載の抗体の薬学的有効量を含む薬学的組成物の製造方法。
【請求項13】
以下に定義する他の抗体鎖とそれぞれアセンブルすることができるポリペプチドをコードしている核酸であって、該ポリペプチドが
a)CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)を含む抗体重鎖、又は
b)CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)を含む抗体軽鎖
のいずれかである、核酸。
【請求項14】
原核宿主細胞又は真核宿主細胞内で前記核酸を発現することができる、請求項13記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項14記載のベクターを含む原核宿主細胞又は真核宿主細胞。
【請求項16】
IL−1Rに結合し、そしてIL−1RへのIL−1の結合を阻害するポリペプチドの製造方法であって、請求項13記載の重鎖をコードする核酸及び軽鎖をコードする核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞内で発現すること、並びに該ポリペプチドを該細胞から回収することを特徴とする、製造方法。
【請求項17】
抗炎症治療を必要とする患者の処置方法であって、患者に請求項1〜8記載の抗体の治療学的有効量を投与することを特徴とする、処置方法。
【請求項18】
本発明に従う抗体の製造方法であって、抗体2D8の可変領域の配列において、図7〜10に示したそれぞれの読み枠にはめたアミノ酸に、1個以上のアミノ酸を突然変異、欠失又は付加し、発現ベクターを図14〜16に示すように、連続する読み枠において、該改変した抗体の可変領域及び追加のヒト定常領域をコードする核酸を含んで製造し、発現を宿主細胞内で実施し、そして組換えにより産生した抗体の軽鎖及び重鎖を本発明に従う抗体とアセンブルすることを特徴とする、製造方法。
【請求項1】
ヒトIL−1Rに結合し、そしてIL−1RへのヒトIL−1の結合を阻害する抗体であって、該抗体が、MRC5(ATCC CCL 171)のようなヒトの繊維芽細胞におけるIL−1が媒介するIL−8及びIL−6の分泌の阻害について、35pM以下のIC50値を示す、ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得ることができるか、又はキメラの、ヒト化した、若しくはT細胞エピトープを欠く抗体変異体又は該抗体のフラグメントあることを特徴とする抗体。
【請求項2】
前記抗体が、ハイブリドーマ細胞系MAL<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)により産生されることを特徴とする、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、CH1とCH2との間の約aa220〜240でのヒンジ領域及び/又はCH2とCH3との間の約aa330の第2インタードメイン領域内で改変された、IgG4アイソタイプのものであるか、又はIgG1アイソタイプのものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、図7〜10及び図14〜16から選択される可変領域及び定常領域を示すことを特徴とする、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
約300pM以下(KD)の親和性を特徴とする、請求項1〜4記載の抗体。
【請求項6】
相補性決定領域(CDRs)として、以下の配列:
a)重鎖内に、CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)、並びに
b)軽鎖内に、CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)
を含むことを特徴とする、請求項1〜5記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、ラット起源のものであることを特徴とする、請求項1〜6記載の抗体。
【請求項8】
ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)から得ることができる、請求項1〜7記載の抗体。
【請求項9】
薬学的組成物の製造のための請求項1〜8記載の抗体の使用。
【請求項10】
薬学的有効量で請求項1〜8記載の抗体を含有する薬学的組成物。
【請求項11】
ハイブリドーマ細胞系MAK<h−IL−1RI>2D8(DSM ACC 2601)。
【請求項12】
請求項1〜8記載の抗体の薬学的有効量を含む薬学的組成物の製造方法。
【請求項13】
以下に定義する他の抗体鎖とそれぞれアセンブルすることができるポリペプチドをコードしている核酸であって、該ポリペプチドが
a)CDRsとして、配列番号1のCDR1(aa45〜54)、CDR2(aa69〜84)及びCDR3(aa117〜123)を含む抗体重鎖、又は
b)CDRsとして、配列番号2のCDR1(aa43〜57)、CDR2(aa73〜79)及びCDR3(aa112〜120)を含む抗体軽鎖
のいずれかである、核酸。
【請求項14】
原核宿主細胞又は真核宿主細胞内で前記核酸を発現することができる、請求項13記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項14記載のベクターを含む原核宿主細胞又は真核宿主細胞。
【請求項16】
IL−1Rに結合し、そしてIL−1RへのIL−1の結合を阻害するポリペプチドの製造方法であって、請求項13記載の重鎖をコードする核酸及び軽鎖をコードする核酸を原核宿主細胞又は真核宿主細胞内で発現すること、並びに該ポリペプチドを該細胞から回収することを特徴とする、製造方法。
【請求項17】
抗炎症治療を必要とする患者の処置方法であって、患者に請求項1〜8記載の抗体の治療学的有効量を投与することを特徴とする、処置方法。
【請求項18】
本発明に従う抗体の製造方法であって、抗体2D8の可変領域の配列において、図7〜10に示したそれぞれの読み枠にはめたアミノ酸に、1個以上のアミノ酸を突然変異、欠失又は付加し、発現ベクターを図14〜16に示すように、連続する読み枠において、該改変した抗体の可変領域及び追加のヒト定常領域をコードする核酸を含んで製造し、発現を宿主細胞内で実施し、そして組換えにより産生した抗体の軽鎖及び重鎖を本発明に従う抗体とアセンブルすることを特徴とする、製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−527230(P2007−527230A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525761(P2006−525761)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010047
【国際公開番号】WO2005/023872
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010047
【国際公開番号】WO2005/023872
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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