説明

インダクタンス素子

【課題】 ドラムコアにエッジワイズ巻を施し、占積率が大きく、電気抵抗の小さな小型のインダクタンス素子を提供すること。
【解決手段】 被覆平角線をエッジワイズ巻にした空芯コイル4と、プレートコア(鍔A1)とプレートコア(鍔B1)と軸心3よりなる組み立て式ドラムコアとを使用してドラムコアを組み立てる際に、空芯コイル4を挿入することにより、小型の平角線エッジワイズ巻のインダクタンス素子13bが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムコアに導線を巻線した巻線型インダクタであって、電子機器等に搭載されるインダクタンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラムコアの両端鍔が電極とされ、また前記両端鍔が表面実装端子として用いられているインダクタンス素子が知られている。例えば、特許文献1にこの例が示されている。
【0003】
図2は、従来の小型表面実装インダクタンス素子の斜視図を示しているが、鍔A1および鍔B2と軸心3が一体成形された軟磁性材製のドラムコアに被覆丸導線を使用して巻線し、鍔A1,鍔B2に電極5を設けて丸導線12の端部と該電極5とを接続している。
【0004】
また、特許文献2には、リベット型のコアとリング状の鍔部を組み立てることによってドラムコアを形成し、組み立てたドラムコアに絶縁被覆導線を巻き回してインダクタンス素子を製造する方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−306757号公報
【特許文献2】特開2003−188029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の小型表面実装インダクタンス素子における巻線方法は、断面形状が丸型の導線を使用しており、前記断面形状が平角型の導線に比べて、占積率が小さくなり、電気抵抗が大きくなる。
【0007】
また、被覆平角導線をエッジワイズ巻にして占積率を高めようとしても、エッジワイズ巻の場合は大きな力を要するため、小型のインダクタンスの場合はコアの強度が持たない。さらに、ドラムコアにエッジワイズ巻を施す場合には、ドラムコアの鍔が邪魔をするため巻線ができなくなってしまう。
【0008】
従って、本発明の課題は、ドラムコアにエッジワイズ巻を施し、占積率が大きく、電気抵抗の小さな小型のインダクタンス素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
被覆平角導線をエッジワイズ巻にした空芯コイルと、組み立て式ドラムコアとを使用してドラムコアを組み立てる際に、空芯コイルを挿入することにより、小型の平角導線をエッジワイズ巻したインダクタンス素子が得られる。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ドラムコアに巻線を施し、前記ドラムコアの両端鍔に電極を設けた表面実装インダクタンス素子において、前記ドラムコアが、プレートコアと柱状コアに、またはリベット型コアに、プレートコアを組み合わせてできる組み立て式ドラムコアであって、前記巻線が被覆平角導線をエッジワイズ巻した空芯コイルで構成されたことを特徴とする表面実装インダクタンス素子が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、前記ドラムコアの軸心部分の形状が円柱または多角柱状であることを特徴とする表面実装インダクタンス素子が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記ドラムコアの軸心部分へ空芯コイルを挿入し、前記プレートコアを前記軸心部分に組み込み、磁性粉末混合樹脂にてモールドしたことを特徴とする表面実装インダクタンス素子が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小型インダクタンス素子は、上記のような組み立て方式を採用することで、被覆平角導線をエッジワイズ巻にした占積率の大きな、電気抵抗の小さいインダクタンス素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0015】
図1、図3および図4は、本発明のインダクタンス素子の説明図であって、図1は組み立てて、モールドした後の斜視図を表した図である。なお、図1では、構造が分かるように磁性粉末混合モールド8を透明にしている。また、図3は小型インダクタンス素子の鍔A1と鍔B2、軸心3、空芯コイル4を分解した斜視図を表し、図4は小型インダクタンス素子の鍔B2とリベット型コア7、空芯コイル4を分解した斜視図を表している。
【0016】
図3に示すように、被覆平角導線をエッジワイズ巻にした空芯コイル4を、プレートコア(鍔A)1と軸心3で作られるコアに挿入し、さらにプレートコア(鍔B)2を、蓋をするように挿入する。その後、組み立てられた巻線部を磁性粉末混合モールド8によって封止することによって図1に示すようなインダクタンス素子を得ることができる。
【0017】
また、図4に示すように、空芯コイル4を、リベット型コア7に挿入し、さらにプレートコア(鍔B)2を、蓋をするように挿入する。その後、組み立てられた巻線部を磁性粉末混合モールド8で封止することによって、図1に示すようなインダクタンス素子を得ることもできる。
【0018】
鍔A1に軸心3を組み込む際、前記軸に鍔B2を組み込む際、また、リベット型コア7に鍔B2を組み込む際には軸心3の端面に接着剤6を塗布して固定する。
【0019】
なお、プレートコア(鍔A)1やプレートコア(鍔B)2の中心部には、組み込み作業が容易になるように軸心3と嵌合する穴を設けると良い。この穴は貫通した穴でも、途中まで穴のあいた凹みであっても構わない。
【0020】
また、図3において、プレートコア(鍔A)1とプレートコア(鍔B)2の形状は、穴が開いている面を正面にしたときに四角形をしているが、面取りをしたような八角形や多角形または丸形でも構わない。ただし、端子の接続、基盤への装着が容易であるため、プレートコア(鍔A)1とプレートコア(鍔B)2が電極5に接する部分は平面の方が望ましい。さらに、図3において、軸心3の形状は円柱状となっているが、四角柱や八角柱または多角柱でも同様の結果が得られる。
【0021】
次いで、図4に示すリベット型コア7においても、リベット型コア7の鍔A1の形状は、前記鍔A1が突出している軸心3を手前の面にしたときに、上記同様、面取りをしたような八角形や多角形または丸形でも構わない。ただし、上記と同様に、鍔部が接する電極5は平面が望ましい。また、同様に、軸心3の形状も、円柱状に限らず、四角柱や八角柱または多角柱でも同様の結果が得られる。
【0022】
空芯コイルの端部4a,4bを鍔部の電極5へ半田等で接合した後に、組み込んだ巻線部を磁性粉末混合モールド8によって封止する。ここで、空芯コイルの端部4a,4bを鍔部電極5へ接合する工程は、磁性粉末混合モールド8によって封止した後からでも構わない。これらの接合する工程の場合、鍔部の電極5は、直接鍔部に銀ペーストまたはメッキにて電極を設けても良いし、リードフレームを貼り付けて使っても良い。すなわち、空芯コイルの端部4a,4bと鍔部の電極5が電気的に接続された状態で表面実装用の端子として使用されるように構成されれば良い。
【0023】
これに対して、鍔部まで伸ばした空芯コイルの端部4a,4bの覆平角導線の被覆を剥がして、剥がされた導線部分を表面実装用の電極として使用しても良い。なお、空芯コイルの端部4a,4bは鍔部に接着剤で固定すれば良い。
【0024】
このように、本発明の小型コイルは、被覆平角線をエッジワイズ巻にした占積率の大きな小型インダクタンスを実現している。
【0025】
次いで作製方法について説明すると、まず、ドラムコアの部品である鍔A1、鍔B2、軸心3およびリベット型コア7を、磁性材料を用いてプレス法により成形する。
【0026】
次に、プレートコアもしくはリベット型コア7の鍔A1および鍔B2に銀ペーストまたはメッキにて電極5を形成する。
【0027】
被覆平角導線をエッジワイズに巻線して作製した空芯コイル4を、軸心3の片方の端面に接着剤6を塗布し鍔A1に嵌め込んで硬化させたもの、あるいはリベット型コア7の軸心3に挿入する。その後、もう片方の軸心3の端面あるいはリベット型コア7の軸心3の端面側に接着剤6を塗布し、鍔B2を嵌め込み、再度、硬化させる。
【0028】
エッジワイズに巻線した空芯コイルの両端部4a,4bを鍔部の電極5へ接合させ、出来上がったコアが嵌まる金型にコアを入れ、コア巻線部に磁性粉末混合樹脂を流し込んで硬化させて本発明のインダクタンス素子を製作する。
【0029】
被覆された丸導線12を巻線してできた図2の巻線コア13aと、被覆平角導線をエッジワイズ巻線してできた図1の巻線コア13bを比較すると、被覆平角導線をエッジワイズ巻線してできた図1の巻線コア13bの方が占積率の大きな電気抵抗の小さいインダクタンス素子を提供できる。
【実施例】
【0030】
本実施例では、プレートコア(鍔A1)とプレートコア(鍔B2)と軸心3および被覆平角導線をエッジワイズ巻した空芯コイル4を用いて、2.0cm×1.2cm×1.2cmサイズのチョークコイルを作製した。上記発明を実施するための最良の形態で説明した方法によって、このような小型コイルの製作が可能であり、占積率の大きな電気抵抗の小さいインダクタンス素子を得ることができることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の表面実装インダクタンス素子の組み立て完成品の斜視図。
【図2】従来の小型表面実装インダクタンス素子の斜視図。
【図3】本発明の表面実装インダクタンス素子の分解斜視図。
【図4】リベット型コアを使用した場合の分解斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 鍔A
2 鍔B
3 軸心
4 空芯コイル
4a,4b 空芯コイルの端部
5 電極
6 接着剤
7 リベット型コア
8 磁性粉末混合モールド
11 ドラムコア
12 丸導線
13a,13b 巻線コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムコアに巻線を施し、前記ドラムコアの両端鍔に電極を設けた表面実装インダクタンス素子において、前記ドラムコアが、プレートコアと柱状コアに、またはリベット型コアに、プレートコアを組み合わせてできる組み立て式ドラムコアであって、前記巻き線が被覆平角導線をエッジワイズ巻した空芯コイルで構成されたことを特徴とする表面実装インダクタンス素子。
【請求項2】
前記ドラムコアの軸芯部分の形状が円柱または多角柱状であることを特徴とする請求項1記載の表面実装インダクタンス素子。
【請求項3】
前記ドラムコアの軸心部分へ空芯コイルを挿入し、前記プレートコアを前記軸芯部分に組み込み、磁性粉末混合樹脂にてモールドしたことを特徴とする請求項2に記載の表面実装インダクタンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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