説明

インダクタ及びその製作方法

【課題】本発明は、コイルと磁性本体からなるインダクタに関する。
【解決手段】本発明の磁性本体は第一磁性体と第二磁性体からなり、コイルは磁性本体内に設置され、第一磁性体は第一透磁性を有し、二磁性体は第二透磁性を有し、第一透磁性と第二磁性体とは異なる。また、本発明に係るインダクタの製造方法については、まず、第一透磁性を有する第一磁性体を提供し、コイルを前記第一磁性体に固定し、その後、第二透磁性を有する第二磁性体を提供する。なお第一透磁性と第二透磁性は異なる。そして、第二磁性体を第一透磁性に固定し、加圧成形によって、第一磁性体と第二磁性体から磁性本体を形成し、コイルを磁性本体に埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受動素子に関し、特にインダクタ及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国特許、特開平4−286305号に記載されているように、従来のインダクタの製作方法は、まずは単一の磁性粉末を加圧することで第一圧粉体と第二圧粉体を形成し、それから中空コイルを第一圧粉体と第二圧粉体の間に設置した後再び加圧することで、一体型のインダクタを形成する。しかしながら、単一の磁性粉末を採用した場合、製品の特性を調整するのに単一のパラメータ(すなわち磁性粉末の材料)しか用いることができず、インダクタンス値、飽和電流、直流インピーダンス等を調整するのは容易ではない。その他にも、圧粉体のモールドを製作するには、コイルのサイズによってモールドを分けてつくらなければならないので、モールドのコストが高くなってしまう。
【0003】
米国特許第6,204,744号で記載されているように、従来のインダクタのもう一つの製作方法は、中空コイル及び第一鉄粉と第二鉄粉を均等に混ぜ合わせた磁性粉末を、成形モールドのキャビティ内に置き、圧力を加えることで成形する。しかしながら、成形圧力は通常とても高く、中空のコイル自体も十分な支えがないため、成形過程においてコイルの外側を覆う絶縁層が剥げ落ちやすくなり、コイルにレイヤーショートの問題が発生しやすくなる。図1で示すように、米国特許第6,204,744号のインダクタの製作方法を利用し、鉄粉(Iron)とステンレス粉(Fe−Cr−SiAlloy)を均等に混ぜ合わせて、さらに加圧成形を利用して得たインダクタは、その特性を、鉄粉(Iron)とステンレス粉(Fe−Cr−SiAlloy)の単一磁粉で製成されたインダクタと比較したとき、鉄粉(Iron)とステンレス粉(Fe−Cr−SiAlloy)を均等に混ぜ合わせる方法を採用したインダクタの特性は、単一磁粉(Fe−Cr−SiAlloy)を採用したときの特性とほとんど同じである。従って、米国特許第6,204,744号のインダクタの製作方法を採用し、2種類の磁粉を均等に混ぜ合わせる方法によって、インダクタンス値、飽和電流、直流インピーダンス等の製品の特性を調整するのは容易ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、異なる透磁特性の第一磁性体と第二磁性体を、層を分けて設置することで、調整のパラメータを増加させ、製品の特性の調整を容易にすることができるインダクタ及びその製作方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、インダクタンス値の向上とコストの低下を実現できるインダクタ及びその製作方法を提供することをもう一つの目的とする。
【0006】
本発明は、同じインダクタンス値の特性を維持しつつ、コストを低下させ、且つ低い直流インピーダンスを有することができる、インダクタ及びその製作方法を提供することをもう一つの目的とする。
【0007】
本発明は、加圧成形時にコイルが十分な支えを得ることで、コイルのレイヤーショートの問題を改善することができる、インダクタ及びその製作方法を提供することをさらなる目的とする。
【0008】
上記の目的に基づいて、本発明の係るインダクタはコイル及び磁性本体を含む。磁性本体は第一磁性体と第二磁性体を含み、コイルは磁性本体内に設置する。第一磁性体は第一透磁特性を有し、第二磁性体は第二透磁特性を有するが、第一透磁特性と第二透磁特性は異なる。本発明は、同時にインダクタの製作方法も記載する。まずは、第一透磁特性を有する第一磁性体を提供し、次にコイルを第一磁性体に固定し、それから第二透磁特性を有する第二磁性体を提供する。なお、第一透磁特性と第二透磁特性は異なる。そして、第二磁性体を第一磁性体に固定し、加圧成形によって第一磁性体と第ニ磁性体から磁性本体が形成され、コイルは磁性本体内に埋め込む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本願の第1発明は、コイルと、第一磁性体と第二磁性体からなり、前記第一磁性体は第一透磁特性を有し、前記第二磁性体は第二透磁特性を有し、前記第一透磁特性と前記第ニ透磁特性は異なると共に、前記第一磁性体と前記第二磁性体は層を分けて設置される、前記コイルをその内部に設置した磁性本体と、前記コイルに連接され、前記磁性本体の外側まで延伸される電極部を含むことを特徴とするインダクタを提供することを要旨としている。
【0010】
また、本願の第2発明は、前記第一磁性体の体積である第一体積を有し、前記第二磁性体の体積である第二体積を有し、前記第一体積は前記第二体積より大きいことを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0011】
また、本願の第3発明は、前記第一体積と前記第二体積の割合はおよそ1・4ないし1.6或いは2・5ないし3であることを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0012】
また、本願の第4発明は、前記第一磁性体は第一磁性粉末と第一樹脂を含み、さらに第一透磁率を有し、前記第二磁性体は第二磁性粉末と第二樹脂を含み、さらに第二透磁率を有し、前記第一透磁率は前記第二透磁率より小さいことを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0013】
また、本願の第5発明は、前記第一磁性粉末は鉄粉であり、前記第二磁性粉末はステンレス粉であり、前記第一樹脂と前記第二樹脂はエポキシ樹脂であり、前記第一磁性粉末の平均粒径は第二磁性粉末の平均粒径より小さいことを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0014】
また、本願の第6発明は、前記コイルは中空コイルであり、前記第一磁性体の一部分と前記第二磁性体の一部分を前記コイルの中空部分に設置し、前記第一磁性体を設置した前記中空部分の体積は、前記第二磁性体を設置した前記中空部分の体積より大きいことを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0015】
また、本願の第7発明は、前記第一磁性体は第一飽和電流値を有し、前記第二磁性体は第二飽和電流値を有し、前記第一飽和電流値は前記第二飽和電流値より大きいことを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0016】
また、本願の第8発明は、前記第一磁性体と前記第二磁性体の間は接合インターフェースを有することを特徴とする、本願の第1発明に記載したインダクタを提供することを要旨としている。
【0017】
また、本願の第9発明は、第一透磁特性を有する第一磁性体を提供する工程と、コイルを前記第一磁性体に固定する工程と、第二透磁特性を有する第二磁性体を提供する工程と、前記第二磁性体を固定する工程と、加圧成形を行い、第一磁性体と第二磁性体から磁性本体を形成し、前記コイルを前記磁性本体内に埋め込む工程を含むことを特徴とするインダクタの製作方法を提供することを要旨としている。
【0018】
また、本願の第10発明は、前記第一磁性体はコア及び複数の側縁を有し、前記コアは前記コイルを貫通し、前記コアは前記側縁より低いことを特徴とする、本願の第9発明に記載したインダクタの製作方法を提供することを要旨としている。
【0019】
また、本願の第11発明は、前記コイルは電極部に連接し、前記電極部を前記磁性本体の外側に延伸し、前記電極部と前記コイルの間はレーザー溶接によって連接されることを特徴とする、本願の第9発明に記載したインダクタの製作方法を提供することを要旨としている。
【0020】
また、本願の第12発明は、前記コイルは電極部に連接し、前記電極部は折り曲げ部を有し、加圧成形を行うとき、前記折り曲げ部によって前記成形のモールドにおける位置を確定させることを特徴とする、本願の第9発明に記載したインダクタの製作方法を提供することを要旨としている。
【発明の効果】
【0021】
このインダクタ及びその製作方法によれば、第一磁性体と第二磁性体の体積比或いは材料特性を調整することで必要なインダクタを素早く設計することができ、調整のパラメータの増加によって、製品の特性を調整するのが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施例]
本発明のいくつかの実施例は以下に詳述する。しかしながら、以下に述べる以外に、本発明は広範囲にわたるその他の実施例でも施行することができ、本発明の範囲は実施例に限定されず、その後の請求項をもとにする。また、本発明をより明確に示し、より分かりやすくするために、図の中の各部分は実際の相対的な大きさに従って製図しているわけではなく、ある箇所の大きさや大きさの比に関する部分は誇張されている。また、図を簡潔にするために、関係のない細かい部分についても製図されていない。
【0023】
図2Aが示すように、本発明の好ましい実施例のインダクタ200は、コイル210、磁性本体220及び電極部230を含む。コイル210は、絶縁層をもつ金属導線を覆い包むことで中空コイルになる。金属導線は銅導線でもよい。磁性本体220は第一磁性体221と第二磁性体222を含み、コイル210は磁性本体220内に設置される。第一磁性体221と第二磁性体222は層を分けて設置され、第一磁性体221と第二磁性体222の間は接合インターフェース223を有する。第一磁性体221は第一磁性粉末及び樹脂を含み、第二磁性体222は第二磁性粉末及び樹脂を含む。樹脂は、例えばエポキシ樹脂(Epoxy Resin)のような熱固性樹脂である。電極部230はコイル210に連接し、磁性本体220の外側まで伸展され第二磁性体222に貼り付けられる。
【0024】
第一磁性体221は第一透磁特性を有し、第一透磁特性は透磁率(permeability)及び飽和電流値(Saturation Current Value)を含む。透磁率の定義は、磁化曲線上において磁場強度(H)がゼロに近づく時の磁束密度(B)と磁場強度(H)の比率であり、cgs制を採用している。飽和電流値の定義は、電流の上昇につれインダクタンス値が低下し、最初のインダクタンス値の80%まで下がったときの電流値である。第二磁性体222は第二透磁特性を有し、第二透磁特性は透磁率及び飽和電流値を含む。なお第一透磁特性と第二透磁特性は異なる。
【0025】
図2Bが示すように、鉄粉(Iron)と樹脂を混合して第一磁性体221を製成し、ステンレス粉(Fe−Cr−SiAlloy)と樹脂を混ぜ合わせて第二磁性体222を製成する。そのインダクタ200の特性と、鉄粉だけを採用した或いはステンレス粉だけを採用したインダクタの特性を比較すると、図から分かるように、インダクタ200の特性は、鉄粉だけを採用した場合とステンレス粉だけを採用した場合との間になる。したがって、第一磁性体221と第二磁性体222の体積比或いは材料特性を調整することで、必要なインダクタを素早く設計することができる。いいかえると、本発明が提供する調整のパラメータの増加によって、製品の特性を調整するのが容易になる。
【0026】
図3が示すように、本発明のもう一つの好ましい実施例であるインダクタ200はコイル210、磁性本体220及び電極部230を含む。コイル210は絶縁層をもつ金属導線を覆い包むことで中空コイルになる。磁性本体220は第一磁性体221と第二磁性体222を含み、第一磁性体221の体積は第二磁性体222より大きい。第一磁性体221は第一磁性粉末と第一樹脂によって製成され、第一透磁率(u1)及び第一飽和電流値(I1)を有する。第二磁性体222は第二磁性粉末と第二樹脂によって製成され第二透磁率(u2)及び第二飽和電流値(I2)を有する。さらに、第一透磁率は第二透磁率より小さく、第一飽和電流値は第二飽和電流値より大きい。詳細にいうと、第二透磁率はおよそ第一透磁率の1.25倍以上であり、第二飽和電流値はおよそ第一飽和電流値の0.5倍以上である。磁性粉末の平均粒径(Mean particle diameter、D50)が大きくなにつれ、透磁率も大きくなるので、本実施例において、第一磁性粉末の平均粒径は第二磁性粉末の平均粒径より小さくなる。
【0027】
コイル210を磁性本体220内に設置し、第一磁性体221の一部分と第二磁性体222の一部分をコイル210の中空部分に設置する。第一磁性体221を設置した中空部分の体積は第二磁性体222を設置した中空部分の体積より大きい(図3Aのように)。或いは、第一磁性体221だけをコイル210の中空部分に設置する(図3Cのように)。また、電極部230はコイル210に連接し磁性本体220の外側にまで延伸する。本実施例においては、優れたインダクタの特性を得るために、電極部230を透磁率が大きい第二磁性体222の上に貼り付ける。
【0028】
第ニ透磁率は高いので、インダクタ200‘のインダクタ量を高めることができる。なお、第一磁性体221の体積は第二磁性体222の体積より大きく、第一透磁率は第二透磁率より小さく、第一飽和電流値は第二飽和電流値より大きいので、インダクタはもともとの特性を依然として維持することができる。
【0029】
本発明のインダクタ200‘と単一の磁粉を採用したインダクタを用い、同じコイルの巻き数、飽和電流、直流インピーダンスという特性の状況下でテストを行う。テストの詳細な条件は表1に示すとおりであり、テストの結果は表2に示すとおりである。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
表1から分かるように、本発明は、平均粒径(Mean particle diameter、D50)が約4umの鉄粉(Fe>98・5%)を第一磁性粉末とし、平均粒径約20umのステンレス粉(Fe−9.5Cr−3Si)を第二磁性粉末とし、固化温度が120℃のエポキシ樹脂(Epoxy Resin)を第一樹脂と第二樹脂とし、第一磁性体221と第二磁性体222をそれぞれ製成する。その他に、第一磁性体221と第二磁性体222の体積比率はおよそ1・4−1・6であり、第一磁性体221の第一透磁率はおよそ22、第二磁性体222の第二透磁率はおよそ28である。また、第二透磁率は第一透磁率のおよそ1.25倍の大きさである。従来のインダクタは鉄粉(Fe>98.5%)及びエポキシ樹脂を採用している。表2から分かるように、インダクタ200‘のインダクタ量が高まると、同時に、ステンレス粉の材料コストも低くなるため、磁粉材料のコストを下げることができるようになる。
磁粉材料のコストを下げることができる。
【0033】
その他に、本発明のインダクタ200‘と単一の磁粉を採用したインダクタを、同じサイズ(すなわち6.5mm×6.9mm×3mm)、同じインダクタンス値(すなわち1.5uH)という状況の下、異なる第一磁性体と第二磁性体の体積比率を採用してテストを行う。テストの詳細な条件は表3及び表5の通りであり、表3のテスト条件におけるテスト結果は表4及び図3Bが示す通りであり、表5のテスト条件におけるテスト結果は表6が示す通りである。
【0034】
【表3】

(表3:第一磁性体と第二磁性体の体積比率は約1.4−1.6である。)
【0035】
【表4】

(表4:表3のテスト条件でのテスト結果)
【0036】
【表5】

(表5:第一磁性体と第二磁性体の体積比率は約2.5−3である。)
【0037】
【表6】

(表6:表5のテスト条件でのテスト結果)
【0038】
表4、表6及び図3Bが示すように、本発明のインダクタ200‘の効率は従来のインダクタと近くなる。インダクタ200’は透磁率が高い第二磁性体222を有しているため、同じインダクタンス値、同じ効率という状況下では、本発明が必要とするコイルの巻き数は少なくなり、そして直流インピーダンス(DCR)も低くなり、使用時の発熱量も少なくなり、さらにはコイルと磁粉のコストも節約できる。注意しなければいけないのは、優れた飽和特性を得るために、第一磁性体221と第二磁性体222の体積比率がおよそ1.4−1.6の時は、第一磁性体221の一部と第二磁性体222の一部分をコイル210の中空部分に設置して、第一磁性体221を設置した中空部分の体積を、第二磁性体222を設置した中空部分の体積より大きくするようにし(図3Aのように)、第一磁性体と第二磁性体の体積比の値がおよそ2.5−3の時は、第一磁性体221だけをコイル210の中空部分に設置(図3Cのように)するようにする。
【0039】
図4が示すように、本発明のインダクタ200(200‘)の製作方法は、第一透磁特性を有する第一磁性体221を提供する工程(手順501)、コイルを第一磁性体221に固定する工程(手順502)、第二透磁特性を有する第二磁性体222を提供する工程(手順503)、第二磁性体222をコイル210に固定する工程(手順504)、加圧成形を行うことによって、第一磁性体と第二磁性体から磁性本体220を形成する工程(手順505)、焼入で磁性本体220を固化させる工程(手順506)、及び電極成形の工程(手順507)を含む。
【0040】
より詳細にいうと、手順501では、磁性粉末混合樹脂を採用し加圧成形によって第一磁性体221を形成する。図5Aと図5Bが示すように、第一磁性体221はE型の断面を有し、さらに側縁225によって形成される四角形の開口部228を有する。開口部228はコイル210の外径より大きく、異なるサイズのコイル210をすべて開口部228内に設置させることができので、異なるサイズのコイル210に応じて別のモールドをつくる必要がない。さらに、第一磁性体221はコア226を有し、コア226はコイル210を貫通し、コイル210が成形時に十分な支えを得ることができる。従って、成形の圧力でコイル210が移動しコイル210の外側を覆う絶縁層が剥げ落ちるという現象が起きにくくなり、レイヤーショートの問題を改善することができる。また、本実施例においては、第一磁性体221の側縁225高度H1はコア226高度H2より大きいため、側縁225の材料が、成形時にコイル210と開口部228の間の隙間を埋めることができる。従って、従来の異なるサイズのコイルが個別のモールドをつくることを必要としていた問題を効果的に解決でき、モールドのコストを効果的に低下させることができる。本実施例において、側縁高度H1とコア高度H2のギャップはおよそ0.5mmより小さい。
【0041】
手順502では、図5Cが示すように、まずコイル210を提供する。コイル210で絶縁層を有する金属導線を覆うことで中空コイルを形成し、さらに、コイル210の両端をつぶしたり導線フレームに連接したりして、電極部230を形成する。電極部230(導線フレーム)とコイル210はレーザー溶接技術によって連接が行われる。電極部230とコイル210の間には円形の溶接点250が形成され(図7のように)、加圧成形時に、溶接点250がコイルの外側を覆う絶縁層を突き破ってレイヤーショートの問題が発生するという問題を改善することができる。電極部230は折り曲げ部231を有する(図7のように)。また、コイル210を固定するとき、まず接着技術を用いて粘着剤240を第一磁性体221の開口部228内に設置し、次にコイル210の中空部分をコア226にセットした後粘着剤240によって第一磁性体221に固定し、コイル210を固定した後、焼入工程によって、粘着剤240を固化させる。本実施例においては、粘着剤240の材質と第一磁性体221と第二磁性体222が採用する樹脂は同じである。
【0042】
手順503では、磁性粉末混合樹脂を採用し加圧成形することで第二磁性体222を形成する。第二磁性体222の第二透磁特性と、第一透磁特性は異なり、第二磁性体222はI型の断面を有する。
【0043】
手順504では、図5Dが示すように、第二磁性体222をコイル210に固定する時、まず接着技術によって粘着剤240‘を第二磁性体222上に固定する。本実施例において、粘着剤240’の材質と、第一磁性体221及び第二磁性体222が採用する樹脂は同じである。また、第二磁性体222を粘着剤240‘によってコイル210に固定することで、第一磁性体221、コイル210、第二磁性体222はサンドイッチ構造を形成することができる。さらに、第一磁性体221と第二磁性体222の間は隙間dを有する。なお、第二磁性体222を固定した後、焼入工程によって、粘着剤240’を固化する。
【0044】
手順505では、図5E及び図7が示すように、手順504で完成されたサンドイッチ構造をモールド300内に設置し、モールドが提供する成形圧力によって、第一磁性体221と第二磁性体222から磁性本体220が形成される。さらに、コイル210は磁性本体220内に埋め込んで設置され、電極部230は磁性本体220の外に露出する。本手順の成形圧力は、第一磁性体221と第二磁性体222の加圧成形が必要とする成形圧力より大きい。本実施例において、サンドイッチ構造をモールド300に設置するとき、電極部230の折り曲げ部231をモールド300にひっかけて固定し、サンドイッチ構造のモールド300における位置を確定させることで、加圧成形時に電極部230が内側に縮み、コイルの外側を覆う絶縁層を突き破ってレイヤーショートの問題が生じるのを防ぐことができる。
【0045】
手順506では、第一磁性体221と第二磁性体222から磁性本体220を形成した後、焼入工程によって磁性本体220を固化させる。焼入温度は樹脂の固化温度より高くなければならず、本実施例おいては、焼入温度はおよそ150−180℃である。最後に、手順507では、図5Fが示すように、折曲の技術によって磁性本体220の外側に露出された電極部230を、第二磁性体222に貼り付けることによって、本発明のインダクタ200(200‘)は完成となる。
【0046】
その他に、第一磁性体221と第二磁性体222の体積比率が大きい(例えば2.5:3)時、直接第一磁性体221の体積を増やしたり、第二磁性体222の体積を減らしたりできる以外にも、図6Aで示すような方式を利用して製作することもできる。すなわち、第一磁性体221と同じ第一透磁特性を有する付加層227を提供する方式である。付加層227は磁性粉末混合樹脂を採用し加圧成形によって形成される。そして、第二磁性体222をコイル210固定する前に、まず付加層227をコイル210に設置或いは第二磁性体222上に固定して、最後に手順504〜手順507を行いインダクタ200の製作を完成させることができる(図6Bのように)。第一磁性体221の構造は複雑なため、第一磁性体221を変化させるとモールドのコストは高くなってしまうが、上記の製作方式を採用することで、第一磁性体221を変化させずに、第一磁性体と第二磁性体の比率を変化させることができるので、製作コストを下げることができる。
【0047】
上述の実施例は、本発明の技術思想及び特徴を説明しただけのものであり、その目的は、当該分野において通常の知識を有する者が本発明の内容を理解し実施できるようにすることにあるのであって、本発明の特許の範囲を限定するものではない。本発明で開示した趣旨に照らして行ったすべての変更および修正は本発明の範囲内に含まれており、下述する特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来のインダクタにおける電流とインダクタンス値の関係図。
【図2A】本発明の実施例におけるインダクタの断面図。
【図2B】インダクタ特性の比較図。
【図3A】本発明の実施例におけるインダクタの断面図。
【図3B】図3Aのインダクタ特性と従来のインダクタ特性の比較図。
【図3C】本発明の実施例におけるインダクタの断面図。
【図4】本発明インダクタの製作方法の工程図。
【図5A】第一磁性体の断面図。
【図5B】第一磁性体の俯瞰図。
【図5C】コイルを第一磁性体に固定した時の断面図。
【図5D】第二磁性体を固定した時の断面図。
【図5E】第一磁性体と第二磁性体から磁性本体を形成する。
【図5F】電極部の成形の断面図。
【図6A】本発明のもう一つの実施例におけるインダクタの断面図。
【図6B】本発明のもう一つの実施例におけるインダクタの断面図。
【図7】電極部とコイルの間の溶接を行った時の俯瞰図。
【符号の説明】
【0049】
200、200‘ インダクタ
210 コイル
220 磁性本体
221 第一磁性体
222 第二磁性体
223 接合インターフェース
225 側縁
226 コア
227 付加層
228 開口部
230 電極部
231 折り曲げ部
240、240‘ 粘着剤
300 モールド
H1 側縁高度
H2 コア高度
d 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
第一磁性体と第二磁性体からなり、前記第一磁性体は第一透磁特性を有し、前記第二磁性体は第二透磁特性を有し、前記第一透磁特性と前記第ニ透磁特性は異なると共に、前記第一磁性体と前記第二磁性体は層を分けて設置される、前記コイルをその内部に設置した磁性本体と、
前記コイルに連接され、前記磁性本体の外側まで延伸される電極部を含むことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
前記第一磁性体は第一体積を有し、前記第二磁性体は第二体積を有し、前記第一体積は前記第二体積より大きいことを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項3】
前記第一体積と前記第二体積の割合はおよそ1・4ないし1.6或いは2・5ないし3であることを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項4】
前記第一磁性体は第一磁性粉末と第一樹脂を含み、さらに第一透磁率を有し、前記第二磁性体は第二磁性粉末と第二樹脂を含み、さらに第二透磁率を有し、前記第一透磁率は前記第二透磁率より小さいことを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項5】
前記第一磁性粉末は鉄粉であり、前記第二磁性粉末はステンレス粉であり、前記第一樹脂と前記第二樹脂はエポキシ樹脂であり、前記第一磁性粉末の平均粒径は第二磁性粉末の平均粒径より小さいことを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項6】
前記コイルは中空コイルであり、前記第一磁性体の一部分と前記第二磁性体の一部分を前記コイルの中空部分に設置し、前記第一磁性体を設置した前記中空部分の体積は、前記第二磁性体を設置した前記中空部分の体積より大きいことを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項7】
前記第一磁性体は第一飽和電流値を有し、前記第二磁性体は第二飽和電流値を有し、前記第一飽和電流値は前記第二飽和電流値より大きいことを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項8】
前記第一磁性体と前記第二磁性体の間は接合インターフェースを有することを特徴とする、請求項1に記載したインダクタ。
【請求項9】
第一透磁特性を有する第一磁性体を提供する工程と、
コイルを前記第一磁性体に固定する工程と、
第二透磁特性を有する第二磁性体を提供する工程と、
前記第二磁性体を固定する工程と、
加圧成形を行い、第一磁性体と第二磁性体から磁性本体を形成し、前記コイルを前記磁性本体内に埋め込む工程を含むことを特徴とするインダクタの製作方法。
【請求項10】
前記第一磁性体はコア及び複数の側縁を有し、前記コアは前記コイルを貫通し、前記コアは前記側縁より低いことを特徴とする、請求項9に記載したインダクタの製作方法。
【請求項11】
前記コイルは電極部に連接し、前記電極部を前記磁性本体の外側に延伸し、前記電極部と前記コイルの間はレーザー溶接によって連接されることを特徴とする、請求項9に記載したインダクタの製作方法。
【請求項12】
前記コイルは電極部に連接し、前記電極部は折り曲げ部を有し、加圧成形を行うとき、前記折り曲げ部によって前記成形のモールドにおける位置を確定させることを特徴とする、請求項9に記載したインダクタの製作方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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