説明

インテグリンヘテロダイマー及びそのαサブユニット

【課題】新規インテグリンサブユニットα11及びインテグリンヘテロダイマーの提供。
【解決手段】特定な配列のアミノ酸配列を含んで成る組換え又は単離されたインテグリンサブユニットα11をコードするポリヌクレオチド配列を単離し、その単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、遺伝子組み換え技術により宿主細胞を形質転換する。更に、当該サブユニットα11およびサブユニットβ1を含んでなる組み換え、または単離されたインテグリンヘテロダイマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブユニットα11及びサブユニットβを含む組換え体の又は単離されたインテグリンヘテロダイマー、そのサブユニットα11、前記インテグリン及びサブユニットα11の相同体及びフラグメント、それを生産する方法、それをコードするポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド、それを含むベクター及び細胞、その結合部位に特異的に結合する結合体、並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは、細胞を細胞外マトリックス又は他の細胞に連結させる非共有結合で会合したα−及びβ−鎖から構成されるヘテロダイマーである(1)。細胞骨格と細胞外リガンドとの間の機械的結合として作用することに加えて、インテグリンは細胞増殖、組換マイグレーション及び細胞分化のような過程に影響を与えるシグナル伝達レセプターである(2〜4)。インテグリンは共通のβ鎖、共通リガンド結合特性、又はα鎖の共通の構造的特徴に基づいてサブファミリーに分類することができる。現在、17のα鎖及び8のβ鎖が同定されている(5)。共通のβ鎖を有するサブファミリーの中で、β1サブファミリーが最も多いメンバーである。今日まで、β1鎖に会合した11のインテグリンα鎖が同定されており、α1〜α10及びαVとしてキャラクタライズされている(5)。
【0003】
いくつかのインテグリンはそれらの各々のリガンドにおいて配列RGDに結合する(1)。今まで同定されたこれらのインテグリンの中で、α4−,α5,α8−,αIIb−及びαV−鎖はRGD依存性相互作用を媒介するヘテロダイマーを形成する。RGDを含むリガンドは一般に間質型の細胞外マトリックスに一般に見出される。主な非RGD依存性リガンドには、種々のコラーゲン及びラミニンイソフォームがある。コラーゲン及びラミニンの両方がそれらの一次配列内にRGDを含むが、これらのRGD配列は潜在性であり(6〜9)、通常、ネイティブタンパク質において細胞にアクセスできないが、それらは細胞外マトリックスの生長及び再組織化の間、露出され得る。
【0004】
インテグリンの別のサブディビジョンは、α鎖の構造的類似性に基づいて作ることができる。いくつかのインテグリンは、フォン・ウィルブランド因子(12)中に存在するコラーゲン結合A−ドメインと相同である細胞外I−ドメイン(10,11)を含む。I−ドメインは8つの既知のインテグリン(α1,α2,α10,αL,αM,αX,αD及びαE)中に存在する約200アミノ酸の挿入されたドメインを構成する。Mg2+の存在下で結晶化したインテグリンI−ドメインの構造的分析は、リガンド結合に重大であることが示されている特徴的な“MIDAS”(金属イオン依存性接着部位)の存在を示した(13)。
【0005】
I−ドメインを含むインテグリンα鎖は重及び軽鎖に開裂しない。但し、ラットα1鎖は膜貫通領域近くにタンパク質加水分解開裂部位を有する(14, 15)。I−ドメインインテグリンについて、主なリガンド結合部位はI−ドメイン内に見出される(10)。β1インテグリンサブファミリー内に見出されるI−ドメインのための既知のリガンドには、ラミニン及びコラーゲン(α1β1及びα2β1インテグリン)(16〜19)、並びにエコウイルス(α2β1インテグリン)(20)がある。
【0006】
構造比較は、インテグリンは、上部表面上のリガンド結合領域を伴って1つの球状ドメインを形成するいわゆる7−ブレーディドβ−プロペラー構造にコールディングすることを示唆している(21)。I−ドメインはこのプロペラー内のブレード2及び3の間に挿入され、二価カチオン結合部位はブレード4〜7内の下部表面上に位置する(22,23)。β2インテグリンの研究は、β2鎖の正確なホールディングはαL−鎖の存在に依存するが、I−ドメインはα−及びβ−鎖内の他の構造因子と独立してホールディングすることを示している(24)。
【0007】
インテグリンα−鎖において、より小さな保存されたスターク領域は短い膜貫通領域から予想されるβ−プロペラーを分離させる。このスターク領域は、おそらく、細胞外及び細胞内領域の間のコンホメーション変化を伝達すること、並びにタンパク質−タンパク質相互作用を媒介することに関連する。インテグリンは細胞シグナル伝達に関与するが、細胞質の尾部は短く、酵素活性を欠如する。配列GFFKRはインテグリンα−サブユニット細胞質尾部の大部分において保存されており、カルレチキュリン結合のために重要であることが示されている(25)。
【0008】
筋肉形成の間及び筋ジストロフィーにおける細胞外マトリックスとの細胞相互作用は過去何年もの間、関心が増加している。1960年代初期に、Drosophilaにおいて変異体が記述され、それは、胚を長球形状にする。最初の胚の筋収縮の時にそれらの接着点からの筋肉の脱離を特徴とした(26)。1988年における致死的ミオスフェロイド変異体における分子欠損のインテグリンβ−鎖へのマッピング(27)は、筋肉一体性を維持することにおけるインテグリンの役割についての最初の証拠であった。より最近、Drosophila変異体の精密な分析は、筋肉終点接着及びサルコメア構造におけるインテグリンについての明確な役割を示した(28)。Drosophilaインテグリンは全て開裂されたα鎖であり、接着域にクラスター化する能力のような脊椎動物インテグリンと多くの特徴を共有する(29)。
【0009】
マウスにおけるα7インテグリン遺伝子の不活性化(30)、及びヒトITGA7遺伝子における変異(31)が、両方とも主要な筋肉接着点に影響を与える筋ジストロフィーを引きおこすという発見は、進化の間のインテグリン機能の著しい保存性を示す。β1サブファミリーの11のメンバーのうち、α7は、成熟体骨格筋サルコレマ(34)内のBIDインテグリン鎖と会合する主要インテグリンα鎖(32, 33)として存在する。興味あることに、基底膜タンパク質ラミニンα2−鎖中の変異(35〜37)は、ラミニンインテグリンα7β1について観察されるより厳しい疾患を引きおこす(30)。これは、ラミニンのための他のレセプターが筋肉中に存在することを示す。
【発明の開示】
【0010】
培養したヒト胎児筋細胞において新規インテグリンが現在同定されている(38)。本発明は、とりわけ、筋肉組織内で発現されるβ1会合インテグリン鎖を含むこの新規I−ドメインのクローニング及びキャラクタリゼーションに関する。
【0011】
発明の概要
このインテグリンサブユニットα11についての全長cDNAを単離した。そのcDNAのオープン読み枠は、1188アミノ酸の前駆体をコードする。1166アミノ酸のその予想される成熟タンパク質は、7の保存されたFG−GAP反復、MIDASモチーフを伴うI−ドメイン、短い膜貫通領域及び配列GFFRSを含む24アミノ酸のユニーク細胞質ドメインを含む。α11は、他のI−ドメインインテグリンと同様に、重及び軽鎖の生成のための二塩基性開裂部位を欠如し、反復5〜7中に3つの潜在的二価カチオン結合部位を含む。細胞外スターク部分中の22の挿入されたアミノ酸の存在(アミノ酸804〜826)は、α11インテグリン配列を他のインテグリンα鎖から区別させる。アミノ酸配列比較は、α10インテグリン鎖と42%の最も高い同一性を示す。
【0012】
α11インテグリンに対する抗体での免疫沈降は、非還元条件下でSDS−PAGEにより分析した時に140 kD α2インテグリン鎖より明確に大きい145 kDタンパク質を捕獲する。蛍光イン・シトゥハイブリダイゼーションは、インテグリンα11遺伝子を、Bardet−Biedl症候群について同定された遺伝子座の近くの染色体15q23にマッピングする。ノーザン・ブロッティングに基づいて、インテグリンα11 mRNAレベルは成人ヒト子宮及び心臓において高く、骨格筋及びいくつかの他のテストした組織において中間である。試験管内筋原性分化の間、α11 mRNA及びタンパク質は上昇制御される。リガンド結合特性の研究は、α11β1がコラーゲンタンプI Sepharoseに結合し、培養された筋肉細胞がα11β1をコラーゲンタイプI上の接着域に局在化させることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、その異なる態様において、以下のものに関する:
配列番号:1に示すアミノ酸配列を本質的に含む組換え体の又は単離されたインテグリンサブユニット、又はその相同体もしくはフラグメント。
本発明は、他の種から単離された前記インテグリンのインテグリン相同体、例えばサブユニットβ、好ましくはβ1と会合したサブユニットα11を含むウシインテグリンヘテロダイマー、並びに他の型のヒト細胞又は他の種の起源の細胞から単離された相同体も包含する。
【0014】
本発明の文脈における用語“相同体”は、同一又は類似の機能を有し、特に単にタンパク質構造の類似性だけでなく遺伝子構造に基づく証拠を要求する、共通の進化的起源のタンパク質を包含することを意味する。
【0015】
本発明は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を本質的に含む組換えインテグリンサブユニットα11、又はその相同体もしくはフラグメントを生産する方法であって、
a)インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを単離し、
b)その単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、
c)該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、
d)その形質転換された宿主細胞を、培養培地中で、前記インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントの前記形質転換された宿主細胞中での発現に適した条件下で培養し、そして任意に、
e)前記形質転換された宿主細胞又は前記培養培地から、前記インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントを単離すること
を含む方法も包含する。形質転換は、in vitro、in situ又はin vivoで行うことができる。
【0016】
更なる態様において、本発明は以下のものを包含する:
−インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントを供する方法であって、該サブユニットが、天然に存在する細胞から単離される方法。
−インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチドであって、ポリヌクレオチドが、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列又はその好適な部分を本質的に含む単離されたポリヌクレオチド。
【0017】
−前記インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであって、該単離されたポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドがインテグリンサブユニットα10をコードするDNA又はRNAとハイブリダイズしない単離されたポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【0018】
−前記インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであって配列番号:1に示すヌクレオチド配列又はその部分を含むものを含むベクター。
−インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするDNA又はRNAとハイブリダイズするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであってインテグリンサブユニットα10をコードするDNA又はRNAとハイブリダイズしないものを含むベクター。
【0019】
−先に定義されるベクターを含む細胞。
−先に定義される方法により生産される細胞であって、インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであって配列番号:1に記載のヌクレオチド配列又はその部分を本質的に含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが、前記細胞のゲノムに安定に組み込まれている細胞。
【0020】
−インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントのアミノ酸配列の結合部位であって、該結合部位が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される物に対して特異的に結合する能力を有する結合部位。
−配列番号:1のアミノ酸配列を含むインテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントに対して特異的に結合する能力を有する結合体であって、該結合体が、好ましくは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される結合体。
【0021】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含む組換え体の又は単離されたインテグリンヘテロダイマーであって、該サブユニットα11が配列番号:1に記載のアミノ酸配列又はその相同体もしくはフラグメントを本質的に含むインテグリンヘテロダイマー。前記サブユニットβは好ましくはβ1である。
【0022】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含む組換えインテグリンヘテロダイマーを生産する方法であって、該サブユニットα11が配列番号:1に記載のアミノ酸配列又はその相同体もしくはフラグメントを本質的に含み、前記方法が、
a)インテグリンヘテロダイマーのサブユニットα11をコードするヌクレオチド配列を含む一方のポリヌクレオチド、並びに任意に、前記インテグリンヘテロダイマーのサブユニットβをコードするポリヌクレオチド、又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含み、同様の生物活性を有する他方のポリヌクレオチドを単離し、
b)前記サブユニットα11をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、任意に前記サブユニットβをコードする単離されたヌクレオチドを含む発現ベクターと組み合わせて作製し、
c)1又は複数の該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、ここで形質転換はin vitro、in situ又はin vivoで行うことができ、
d)その形質転換された宿主細胞を、培養培地中で、サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー又はその相同体もしくはフラグメントの前記形質転換された宿主細胞中での発現のために適した条件下で培養し、そして任意に、
e)前記形質転換された宿主細胞又は前記培養培地から、サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー又はその相同体もしくはフラグメント、又はそのα11サブユニットを単離すること
を含む方法。
【0023】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー又は同様の生物活性を有するその相同体もしくはフラグメントを供する方法であって、前記インテグリンヘテロダイマーが天然に存在する細胞から単離される方法。
−i)インテグリンヘテロダイマーのサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであって配列番号:1に記載のヌクレオチド配列又はその部分を本質的に含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含む第1のベクターと、
ii)前記インテグリンヘテロダイマーのサブユニットβ又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含む第2のベクターと、
を含む細胞。
【0024】
−先に定義されるインテグリンヘテロダイマー又はその相同体もしくはフラグメントの結合部位であって、該結合部位が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される物に対して特異的に結合する能力を有する結合部位。
−前記インテグリンヘテロダイマー又はその相同体もしくはフラグメント、又はそのサブユニットα11に対して特異的に結合する能力を有する結合体。前記サブユニットβは好ましくはβ1である。前記結合体は、好ましくは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される。
【0025】
−細胞質ドメイン、特にI−ドメインのアミノ酸配列:KLGFFRSARRRREPGLDPTPKVLEを本質的に含むペプチド、特に配列番号:1のアミノ酸番号約159〜アミノ酸番号約355のアミノ酸配列を本質的に含むペプチド、並びに細胞外伸長領域、特に配列番号:1のアミノ酸番号約804〜アミノ酸番号約826のアミノ酸配列を本質的に含むペプチドを含む群から選択されるペプチドである、インテグリンサブユニットα11のフラグメント。
−先に定義されるインテグリンサブユニットα11のフラグメントを生産する方法であって、アミノ酸配列の連続的付加を含む方法。この方法は、当業者に知られた様式で保護基を付加及び除去することを含む。
【0026】
−先に定義されるインテグリンサブユニットα11のフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
−先に定義されるフラグメントの結合部位であって、該結合部位が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される物に対して特異的に結合する能力を有する結合部位。
−先に定義されるフラグメントに対して特異的に結合する能力を有する結合体。好ましくは、前記結合体は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、天然のインテグリン結合リガンド、並びにそれらのフラグメントを含む群から選択される。
【0027】
−配列番号:1に記載のアミノ酸配列を本質的に含むインテグリンサブユニットα11、又は該サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はその相同体もしくはフラグメントを、前記インテグリンサブユニットα11を発現する、ヒト起源を含む動物の細胞又は組織のマーカー又は標的分子として用いる方法。特に、前記サブニユットβはβ1である。
この方法の実施形態において、前記フラグメントは、先に定義される群から選択されるペプチドである。
【0028】
前記方法の一実施形態において、前記細胞は、繊維芽細胞、筋肉細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、間質性由来細胞、及び幹細胞を含む群から選択される。
特に、前記方法は、前記サブユニットα11に関連する病理的状態の間に用いられる。前記病理的状態は一実施形態において、筋肉の損傷、筋ジストロフィー、繊維症又は創傷治癒を含む。別の実施形態において、前記病理状態は、軟骨及び/又は骨の損傷、又は軟骨及び/又は骨の疾患を含む。なお更なる実施形態において前記病理状態は、外傷、慢性関節リウマチ、変形性関節症又は骨粗しょう症を含む。
【0029】
更なる実施形態において前記方法は、胚の発達の間の軟骨の形成を検出するため、又は軟骨及び/又は筋肉の生理的又は治療的修復を検出するため、又は軟骨細胞及び/又は筋肉細胞の選択及び分析、又は分類、単離もしくは精製のため、又は軟骨もしくは軟骨細胞各々の移植の間の軟骨もしくは軟骨細胞の、又は筋肉もしくは筋肉細胞各々の移植の間の筋肉もしくは筋肉細胞の再生を検出するため、又は軟骨細胞又は筋肉細胞の分化の研究のための方法である。
【0030】
前記方法は、in vitro、in situ又はin vivo過程で行うことができる。
−先に定義されるインテグリンサブユニットα11、又は該サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はその相同体もしくはフラグメントの結合部位に特異的に結合する能力を有する結合体を、前記インテグリンサブユニットα11を発現する、ヒト起源を含む動物の細胞又は組織のマーカー又は標的分子として用いる方法。特に前記サブユニットβはβ1である。
この方法の実施形態において、前記フラグメントは先に定義される通りである。
【0031】
−実施形態において、前記方法は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むインテグリンサブユニットα11、又は該サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はその相同体もしくはフラグメントの存在を検出するための方法である。
更に、この方法の実施形態は、マーカー又は標的分子としてインテグリンサブユニットα11を用いる方法と合わせて先に定義される同様の実施形態を包含する。
【0032】
−細胞上での、インテグリンサブユニットα11又は該インテグリンサブユニットの相同体もしくはフラグメントの存在を検出するための方法であって、配列番号:1に記載のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを本質的に含む群から選択されるポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーション条件下でマーカーとして用い、ここで、前記ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが、インテグリンサブユニットα10をコードするDNA又はRNAとハイブリダイズしない方法。前記細胞は、筋肉細胞を含む群から選択することができる。
【0033】
この方法の実施形態において、前記フラグメントは先に定義される通りである。
更に、この方法の実施形態は、マーカー又は標的分子としてインテグリンサブユニットα11を用いる方法と合わせて先に定義される同様の実施形態を包含する。
−サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットα11の相同体もしくはフラグメントを標的分子として用いることができる医薬剤又は抗体を活性成分として含む医薬組成物。
【0034】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットα11の相同体もしくはフラグメントの細胞表面発現又は活性化を刺激することができる医薬剤又は抗体を活性成分として含む医薬組成物。一実施形態において、前記組成物は、筋肉、軟骨、骨又は血管の形成を刺激、阻害又は遮断するのに用いるためである。
【0035】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、及び前記インテグリンもしくはサブユニットα11の相同体もしくはフラグメント、並びに前記インテグリンサブユニットα11をコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含む群の少くとも1のメンバーを活性成分として含むワクチン。
【0036】
−インテグリンヘテロダイマーのサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであって配列番号:1に記載のヌクレオチド配列又はその部分を本質的に含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むベクター、並びに任意に、前記インテグリンヘテロダイマーのサブユニットβをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含む第2のベクターを、前記サブユニットα11に関連する病理的状態の被検体に投与する遺伝子治療の方法。
【0037】
−配列番号:1に記載のアミノ酸配列を実質的に含むインテグリンサブユニットα11、又は該サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はその相同体もしくはフラグメントの結合部位に特異的に結合する能力を有する結合体を、細胞の接着を促進するために用いる方法。
−インテグリンサブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットα11の相同体もしくはフラグメントを、接着が組織の機能を害する場合に組織中の抗接着性薬剤又は分子のための標的として用いる方法。
【0038】
−インテグリン結合体の存在を試験管内で検出する方法であって、サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットの相同体もしくはフラグメントのサンプルとの相互作用により、前記インテグリン、サブユニットα11、又はその相同体もしくはフラグメントが、前記サンプル中に存在する天然のリガンド又は他のインテグリン結合タンパク質との結合を調節することを含む方法。
【0039】
−サブユニットα11及びサブユニットβを含むヒトヘテロダイマーインテグリン、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットの相同体もしくはフラグメントの、インテグリン結合体との相互作用の結果を試験管内で研究し、それにより細胞の反応を開始する方法。この方法の一実施形態において、前記相互作用の結果は細胞の機能の変化として測定される。
−インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを、標的分子として用いる方法。
【0040】
この方法の一実施形態は、インテグリンサブユニットα10をコードするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドとハイブリダイズしないポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを、インテグリンサブユニットα11又はその相同体もしくはフラグメントをコードするDNA又はRNAにハイブリダイズさせることを含む。
−配列番号:1又は配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むインテグリンサブユニットα10、又は該サブユニットα10及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又は同様の生物活性を有するその相同体もしくはフラグメントに対して特異的に結合する能力を有する結合体を、骨一体化(osseo−integration)を刺激するためにインプラントの表面への軟骨細胞及び/又は骨芽細胞の接着を促進するために用いる方法。
【0041】
−インテグリンサブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα10、又は前記インテグリンもしくはサブユニットα10の相同体もしくはフラグメントを、接着が組織の機能を害する場合に、腱、靭帯、骨格筋又は他の組織における抗接着性薬剤又は分子のための標的として用いる方法。
−軟骨又は骨の形成を刺激、阻害又は遮断する方法であって、サブユニットα11及びサブユニットβを含むインテグリンヘテロダイマー、又はそのサブユニットα11、又は前記インテグリンもしくはサブユニットα11の相同体もしくはフラグメントを標的分子として用いることができる好適な量の医薬剤又は抗体を被検体に投与することを含む方法。
【実施例】
【0042】
実験方法
細胞培養
ヒト胎児筋芽細胞/筋管細胞培養物を73日を経た流産した胎児の腿部の筋肉起源のクローンG6から得た((39);以降、G6と呼ぶ)。G6、並びにDr. Helen Blau (Stanford University, CA)から得た2.5年の生後ヒト衛星細胞を以前の報告の通りに生長させた(39)。ヒト横紋筋肉腫細胞系RD(ATCC No.CCL−136)及びA204(ATCC No.CRL−7900)を、10%胎児ウシ血清を補給したDMEM(Swedish Agricultural University, Uppsala)中で生長させた。
【0043】
RNA単離及びcDNA合成
G6及びXXVI筋芽細胞、3又は7日間、分化した同じ細胞、並びにRD及びA204細胞系からの全RNAをRNeasy Midiキット(Qiagen)を用いて、製造元の説明に従って単離した。ポリA RNAを、Dynabeads mRNA DIRECTキット(DYNAL A.S., Norway)を用いてG6及びXXVI細胞の全RNAから抽出した。
【0044】
ヒトα11プローブのPCRベースのクローニング及び生成
第1鎖cDNAを、逆転写PCRキット(Perkin-Elmer)を用いて1μgのG6 mRNAから生成した。Advantage cDNA Polymerase Mix(Clontech)を、2つの異なる対のプライマー:(1)5′ ACG GGA GAC GTG TAC AAG TG 3′(正)、5′-AAA GTG CTG AAC CTC CAC CC-3′(逆)及び(2)5′-CAC CAT CCA CCA GGC TAT GC-3′(正)、5′-TTA GCG TTC CGT TAT AAA CA-3′(逆)を用いて、PCR増幅に用いた。そのPCR条件は、94℃、4分(“ホットスタート”);94℃、30s;55℃、30s;及び72℃、1分の25サイクルであった。PCR1及びPCR2と呼ぶ2つの産物を得て(図1)、プラスミドベクターTA(Invitrogen)にサブクローン化し、配列決定した。
【0045】
PCR3と呼ぶ1.4 kbの大きさの単一産物(図1)をプライマー1(正)及び2(逆)、並びにテンプレートとしてヒト心臓Marathon−Ready cDNA(Clontech)を用いて増幅した。適用したタッチダウンプログラム中のアニーリング温度は、68℃、1分、5サイクル;65℃、1分、5サイクル;60℃、1分、25サイクルであった。他のステップは上述の通りであった。最後のサイクルの後、反応を更に7分、72℃、伸ばし、次に4℃に保持した。5′端を含む配列を得るために、Rapid Amplification of cDNA Ends(RACE)を、製造元の説明(Marathon cDNA Amplificationキット、Clonetech)に従って、G6 mRNA及び遺伝子特異的アンチセンスプライマー:5′-CTT GGA GAA CCT GAA GTT GGA GTT GAC- 3′から調製したcDNAを用いて、用いた。
【0046】
増幅を、“タッチ・ダウン”プログラム(上述)を適用して行った。関連産物を同定するために、10μLの各々のRACE産物を1%アガロースゲル上で分離し、先に記載される(40)ようにサザンブロット分析にかけた。PCR2(上述)を〔α−32P〕dCTP(Amersham Pharmacia Biotech, Sweden)で、Redy PrimeII DNAラベリングシステム(Amersham Pharmacia Biotech, UK)を用いて標識し、ハイブリダイゼーションプローブとして用いた。1つの特異的シグナルを検出した。対応するcDNAを精製し(Gel Extractionキット、Quagen)、TAベクターにクローン化し、配列決定した(図1を参照)。
【0047】
cDNAライブラリーのスクリーニング
λZAPカスタムメイドG6 cDNAライブラリー(Stratagene, USA )をプローブとしてPCR2(上述)でスクリーニングした。((40)に記載されるように行った)スクリーニング手順により、5′非コーディング領域及びインテグリンα11のコーディング部分の始まりを表す2つのクローンを得た(図1)。更なる配列を得るために、ヒト子宮5′−ストレッチλgt11 cDNAライブラリー(Clonetech)をプローブとしてPCR1及びPCR2の混合物でスクリーニングした。そのプローブを、〔α−32P〕dCTPで、Ready−To−Go DNAラベリングビーズ(Amersham Pharmacia Biotech, Sweden)を用いて標識した。
【0048】
α11 cDNAの部分を表す3つのクローン(図1の1.1〜1.3)を得た。ヒト子宮5′−ストレッチλgt11 cDNAライブラリーの(図1の2183〜2473に対応する)プローブλ290での再スクリーニングは、α11 cDNAの残りを含む更に3つのクローン(図1の2.1〜2.3)を作り出した。陽性クローンをプラーク精製し、ファージDNAをLambda Midiキット(Qiagen)を用いて単離し、次に、配列決定の前にBluescript SK又はpUC19プラスミドにサブクローン化した。
【0049】
ノーザンハイブリダイゼーション
G6及びXXVI細胞からのポリA RNA 6μg、並びにRD及びA204細胞系からの全RNA 10μgを含むフィルター、並びに成人ヒト組織からのポリA RNAを含むHuman Multiple Tissue Northern Blot(Clontech)を68℃で、上述の通り標識したプローブで、Express Hyb溶液(Clonetech)中でハイブリダイズさせた。用いたプローブは、PCR1,PCR2,cDNAクローン1.3(図1)、3RA(ヒトインテグリンα1 mRNAに特異的な1.8kb cDNA、E.E.Marcantonio (Columbia University, New York)からの贈り物)、ヒトG3 PHD mRNAを認識する1.1kb cDNAクローン、及びヒトβ−アクチンを認識する1.8kb cDNAクローン(両方ともClontech)であった。
【0050】
cDNA配列決定及び配列分析
全てのPCRフラグメント及びcDNAクローンを、手動で(29)、又はABI310 Genetic Analyzer自動シーケンサーを用いて両方の鎖で配列決定した。配列は、Mac VectorTM 6.0,DNA Star, FakturaTM NEW 1.2.0、及びSequence Novigator 1.0.1ソフトウェアプログラムにより分析した。全てのI−ドメイン含有インテグリンαサブユニットのディスタンス・ツリーをSEAVIEW及びPHYLO−WINソフトウェア−(40)を用いてアセンブルした。I−ドメインインテグリンサブファミリー内の各々の2つの膜の間の類似性(%)を、式:I=(1−D)×100(式中、“I”は同一性であり、“D”は距離である)により計算した。
【0051】
抗体
インテグリンα11細胞質ドメインからのペプチド:CRREPGLDPTPKVLEに対するポリクローナル抗血清(全てcyt)を生産した。ペプチド合成及びキーホールリンペットヘモシアニンへの連結、ウサギの免疫化及びアフィニティー精製は、Innovagen AB(Lund, Sweden)で行った。インテグリンβ1に対するモノクローナル抗体Mab 13をS.K.Akiyama (NIEHS, NIH)から得た。インテグリンα1(クローンFB12、MAB 1973として販売)及びインテグリンα2(クローンBHA2.1、Mab 1998として販売)に対するモノクローナル抗体は、両方とも、Chemicon, Temecula, CAから得た。ビンキュリンに対するモノクローナル抗体(クローンhVIN−1)は、Sigma (Saint Louis, MO, USA)から得た。二次蛍光抗体(多重ラベリンググレードのCY3TM−結合化ヤギ抗ウサギIgG及びFITC−結合化ヤギ抗マウスIgG)は、Jackson Immuno Research Laboratories, Inc. (West Grove, PA, USA)から得た。
【0052】
免疫沈降法及びSDS−PAGE
G6及びXXVI細胞を〔35S〕システイン/メチオニンで標識し、先に報告(38)されるように免疫沈降法及びSDS−PAGEにかけた。インテグリンヘテロダイマーを解離するのに用いる2ステップ手順を次の通り行った。サンプルのβ1抗体とのインキュベーション及びGammaBind G Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden )での捕獲の後、100μLの1% SDSを洗浄したビーズに加え、次にそれを5分、沸騰させた。
【0053】
10mMのTris−HCl、pH 7.4、0.15M NaCl及び1% Triton X−100を1mLの最終容量で加え、そのライゼートを1時間、GammaBind G Sepharoseとインキュベートした。GammaBind Gとのインキュベーションを反応性β1抗体が残らないのを確実にするために行った。GammaBind G Sepharoseの除去の後、α11インテグリン抗体を更に2時間、加え、次にプロテインA Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech)で捕獲し、そしてSDS−PAGEサンプル緩衝液中で沸騰した。
【0054】
染色体局在化
ヒトインテグリンα11の染色体局在化を、本質的に先に記載(42)されるように、FISH(Fluorescent In Situ Hybridization )技術及びDAPI(4′,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)バンディングの組合せを用いることにより行った。ハイブリダイゼーションプローブとして、1.4kb RT−PCR産物PCR3を用いた。
【0055】
表面ヨウ素化及びアフィニティークロマトグラフィー
培養したXXVI細胞を記載されるように表面ヨウ素化した(38)。標識化細胞を1mLの可溶化緩衝液(10mM Tris−HCl pH7.4、15mM NaCl、1% Triton X−100、1mM MgCl2 、1mM CaCl2 、1mM MnCl2 )に溶解し、14000gで20分、遠心し、そして可溶性膜タンパク質を、可溶化緩衝液で平衡化したコラーゲンタイプI Sepharose((14)に記載されるように3mg/mLゲルでCNBr−活性化Sepharose CL−4Bに結合したVitrogen(Collagen Corp., Palo Alto )からのウシコラーゲンタイプI)に適用した。
【0056】
1時間のインキュベーションの後、カラムを緩衝液A(10mM Tris−HCl pH 7.4、50mM NaCl、1mM MgCl2 、0.1% Triton X−100)で、そしてNaClなしで10カラム容量の緩衝液Aで全体を洗浄した。結合したタンパク質を20mM EDTA、10mM Tris−HCl pH7.4、0.1% Triton X−100で溶出した。ピークの画分をプールし免疫沈降法及びSDS−PAGEの下に記載されるように、β1インテグリン及びα11インテグリン抗体での免疫沈降法により濃縮した。溶出された画分及び捕獲されたタンパク質を7.5% SDS−PAGEゲルで分析し、次にオートラジオグラフィーにかけた。
【0057】
間接的免疫蛍光
カバースリップ上で培養した細胞を無血清培地中で洗浄し、8分、アセトン中で−20℃で固定化した。非特異的結合部位を、リン酸緩衝塩類溶液に希釈した10%ヤギ血清とインキュベートすることによりブロックした。二重免疫蛍光染色プロトコルにおいて、一次抗体(抗α11 cyt(ウサギ抗体)及び抗ビンキュリン(マウス抗体))を、固定化細胞と、1.5時間、+37℃で同時にインキュベートした。詳しくは、結合した抗体を抗ウサギCy3 IgG及び抗マウスFITC IgGを用いて検出した。染色した細胞をVectashieldTMマウンティング培地(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA, USA)にマウントし、可視化し、そして蛍光を観察するための光学機器を備えたZeiss光学顕微鏡下で写真をとった。
【0058】
結果及び議論
新規インテグリンα鎖のcDNAクローニング
我々が以前にαmtと呼ぶヒト胎児筋肉細胞でキャラクタライズした(38)インテグリン鎖の性質を決定するために、いくつかのアプローチを用いた。インテグリンαサブユニットの保存領域に、縮重プライマーと一緒にテンプレートとして胎児ウシ筋肉細胞からのmRNAでのPCRを適用し(43)、我々はα1,α4,α5,α6及びαVインテグリン鎖についてcDNAを増幅した(データは示さない)が、新規インテグリンは増幅しなかった。しかしながら、文献を調査しているうち、我々は、ヒト一次筋芽細胞を横紋筋肉腫RDと比較する減算(subtractive)ハイブリダイゼーションプロトコルにおいて得られたインテグリン配列にでくわした(44)。
【0059】
これらの配列がヒト胎児G6肉芽細胞cDNAからPCRにより増幅され得ることを確認した後、これらの配列が同じ転写物から得られることを仮定してPCRを行った。この方法において、インテグリン様配列を伴う1.4kb cDNAフラグメントを得た。ヒト胎児筋芽細胞cDNAライブラリーのスクリーニング及び5′RACEは更なる5′配列を作り出した。我々は、いくつかのヒト組織内でのmRNA発現パターンを決定し(以下参照)、子宮内での高いmRNA発現を観察した。子宮cDNAライブラリーのスクリーニングにより、完全なオープン読み枠を同定した。クローニングストラテジーの概略図を図1に示す。
【0060】
α11インテグリン鎖のcDNA配列及び予想されるアミノ酸配列
cDNAクローンの配列分析及び5′RACE産物により、我々は、90ntの5′非コーディング配列、3564ntのオープン読み枠、及び326ntの3′非コーディング配列から構成される3983ヌクレオチド(nt)の連続配列を得た。配列の翻訳は22アミノ酸長シグナルペプチドを含む1188アミノ酸のインテグリンα鎖様前駆体を予測する(図2、GenBank accession No. AF 137378)。その成熟1166アミノ酸長ペプチドはいずれの他の現在同定されているインテグリンα鎖より長い(最も近いのは1160アミノ酸から構成されるαE)(45)。その1115アミノ酸長は、細胞外ドメインが反復2及び3の間に挿入されたI−ドメインを伴うアミノ末端内の7のFG−GAP反復を含む。
【0061】
I−ドメインは、195アミノ酸からなり、保存されたMIDASモチーフを含む。I−ドメイン内の金属キレート化部位に加えて、共通配列DXD/NXDXXXDを伴う3つの更なる潜在的な二価カチオン結合モチーフが反復5〜7中に存在する。全部で20のシステインが細胞外ドメイン内に位置する。これらの中で、16個は最も密接に関連するインテグリンα10及びα1鎖において保存されており、それらは分子内ジスルフィド結合に寄与し得る。位置Cys606及びCys988に見い出される2つの非保存性システインは、遊離不対システインである可能性が高いが、2つの非保存性システインCys806及びCys817は、対になってジスルフィド結合を形成し得る。
【0062】
示唆されるβ−プロペラー構造中のシステインのマッピングは、最初の3つのジスルフィド結合がβ−プロペラーのブレード1及び2を安定化させるようであり、残りの結合は、膜貫通ドメインに向かうスターク領域内で、プロペラー領域の外側に見い出される。16の潜在的なN−グリコシル化部位がα11中に存在する。配列モチーフのための調査は、位置951で開始する22アミノ酸ロイシンジッパーモチーフ、及びGタンパク質結合レセプター内に見出される配列に類似した位置1082で開始する17アミノ酸配列の存在を示す。これらの配列は、タンパク質−タンパク質相互作用のために重要な機能的ドメインを示し得る。
【0063】
膜貫通領域(アミノ酸1142〜1164)は23アミノ酸長であり、次に24アミノ酸の細胞質尾部が続く。細胞質尾部は、α8〜α10を除く全ての他のα鎖において見出される保存されたGFFKR配列のかわりに配列GFFRSを含む。細胞質ドメインを規定することにおけるこの配列の重要性、並びにカルレチキュリン及び他の細胞内成分に結合するその能力の可能性を決定することがおもしろいであろう。
【0064】
インテグリンα11鎖の他のインテグリンα鎖との比較
予想されるα11インテグリンアミノ酸配列の他のインテグリン配列とのアライメントは、α10(42%同一性)、α1(37%同一性)、及びα2(35%同一性)と最も高い全体の同一性を示し、次にインテグリンサブユニットを含む残りのI−ドメインである。非I−ドメイン含有インテグリンの中で、α4及びα9は最もα11に似ている。ディスタンス・ツリーはα10及びα11が最も密接に関連するα1及びα2インテグリン鎖から別個の技を形成することを示す(図3)。
【0065】
他のインテグリンとの類似性はN末端β−プロペラ部において特に高いが、スターク領域において低い。α1インテグリンのα2インテグリンとの比較は、α1インテグリン鎖のβ−プロペラー領域内の38残基挿入の存在を指摘している(15)。α1鎖と同様に、α11は他のI−ドメイン含有インテグリン鎖中に存在しない挿入されたアミノ酸も含む。しかしながら、α11鎖において、これらはアミノ酸804〜826においてスターク領域内に見出される。予想される挿入の正確なボーダーはアラインメント法及び選択したパラメータにより変化するが、少なくとも22アミノ酸を貫通すると予想される。その挿入は、他のインテグリン配列と有意な類似性を示さず、ジスルフィド結合を形成するような2つのシステインを含まない(図2を参照)。
【0066】
我々は、予想される挿入された配列がクローニング人工物であるとは思わない。なぜならそれは3つの独立して分析されたクローン中に存在するからである。非I−ドメイン挿入配列の他の例はDrosophila αPS2鎖において見出され、ここではリガンド結合領域中の発達的に制御されたスプライシングがリガンドアフィニティーを調節する(46)。α7インテグリン鎖内で、β−プロペラー内の予想されるブレード2及び3の間の細胞外ドメイン内のスプライシングはX1及びX2変異体を作り出し、細胞特異的様式でラミニン−1への結合に影響を与える(47)。より密接に関連するα1インテグリン鎖において、7−ブレードプロペラーの6番目のブレードの始めにあると予想される位置に38の余分なアミノ酸が存在する。
【0067】
今まで、α1又はα11内の余分なアミノ酸が交互のスプライシングにより生じるという証拠はない。α11において、予想される挿入された領域はβ−プロペラーの外側にあり、ほとんどリガンド結合に直接作用しそうにないが、かわりに、タンパク質−タンパク質相互作用を改変することに関連し得、又はアウトサイド・イン又はインサイド・アウトシグナルのために重要であり得る。この点において特定のインテグリンα−鎖のスターク領域に結合することによるテトラスパンタンパク質は、PI−4キナーゼ及びプロテインキナーゼCをインテグリン複合体に補充し得ることに注目することに興味がある(48)。同様に、特定のインテグリンα鎖の細胞外膜近傍部分はShc媒介インテグリンシグナル伝達に関連することが示されている(49)。
【0068】
オタマジャクシ退行の間に上昇制御される遺伝子についてのスクリーニングの間に同定された配列の分析は、部分配列を示し、それは、その時点で、インテグリンα1と最も高い類似性(41%同一性)を示すと報告された(50)。この配列は、翻訳された時(アミノ酸1〜116)、ヒトα11と71%の同一性を示し、これによりα1のものよりむしろα11のXenopusオーソログを最も示すようである。
【0069】
インテグリンα11遺伝子の染色体局在化
蛍光cDNA遺伝子プローブを有糸分裂中期の染色体スプレッド上でのイン・シトゥハイブリダイゼーションのために用いた。その分析はインテグリンα11遺伝子(ITGA11)が染色体15q23上に位置することを示す(図4)。I−ドメイン含有インテグリンα1及びα2のための遺伝子は、両方との染色体5上に存在し(51, 52)、それは、密接に関連するβ2インテグリン会合α鎖全てについての遺伝子が染色体16にマッピングされるのと同様である。
【0070】
興味あることに、α11遺伝子及びその密接に関連するα1及びα2遺伝子は、異なる染色体にマッピングされる。インテグリンα10遺伝子の染色体局在化を決定することは進化的な関心があるであろう。奇妙にも、色素性網膜炎、多指症、肥満症、性器発育不全症、精神遅滞、及び腎異常によりキャラクタライズされるBardet−Biedl症候群の形態は、15q22−23にマッピングされる(54)。更なる研究は、ITGA11のBardet−Biedl症候群へのつながりの可能性を明確にするであろう。
【0071】
成熟体組織中のα11 mRNAの発現パターン
種々の成人ヒト組織からのmRNAのノーザンブロット分析は、成人ヒト子宮におけるα11の最も高いレベルの発現を示す。強力なシグナルが心臓でも見られ、中間レベルのα11 mRNAが骨格筋内に存在し、そして中間へ低レベルがテストした他の成人組織で見られる(図5及び不図示)。比較のため、同じブロットを密接に関連するα1インテグリンmRNAのために行った(図5)。α1及びα11の発現レベルの著しい差が平滑筋の豊富な子宮内で観察され、それはα1を欠如するようであった。免疫組織化学分析及びイン・シトゥハイブリダイゼーションは、筋肉及び他の組織におけるα11タンパク質及びmRNAの詳細な分布を解釈するであろう。
【0072】
α1(33)もα2(55)も筋繊維内には存在せず、骨格筋組織内でのα10の分布は知られていない(5)。従って、今まで、骨格筋サルコレマ内で発現されると報告されているI−ドメイン含有インテグリンはない。現在、α1インテグリンのための遺伝子はマウス内で不活性化されて、明らかに正常な表現型になっている(56)。より注意深い分析は、亜細胞の皮膚(57)及びコラーゲン合成の異常制御(58)を特徴とする表現型を示した。α1, α2及びα10インテグリン間のオーバーラップする発現の部位を比較し、そしてα1インテグリン欠損マウス内の可能性ある機能的代償的メカニズムを検査するためにα10及びα11に試薬を用いることに関心があろう。
【0073】
α11タンパク質の生化学的キャラクタリゼーション
全長α11インテグリンcDNAのクローニングの後、予想されるアミノ酸配列が、我々が以前に、ヒト筋芽細胞の試験管内分化の間に上昇制御されることに気づいた新規の未開裂β1インテグリン会合α鎖と同一であるか否かを決定することが本質的であった(38)。この問題に答えるために、我々は、インテグリンα11鎖の細胞質尾部に対する抗体を生じさせた。ヒト衛星細胞からの免疫沈降は、抗体が、非還元条件下でのSDS−PAGEの115kDa β1バンド(図6、パネルA)と関連する145kDa α11バンドを沈降させることを示した。還元条件下で、α11バンドは155kDa としてマイグレートした(図6、パネルBを参照)。
【0074】
その翻訳されたアミノ酸配列から、133,400のMrがα11鎖について予測される。16の潜在的なグリコシル化部位を考慮すると、これはSDS−PAGEで観察された155kDa バンドとよく適合する。非還元条件下で、145kDa バンドはα2より距離的に大きく(図6、パネルA)、α10インテグリン鎖は140kDa バンドとして同時マイグレートし、α11は180kDa インテグリンα1バンド以下にマイグレートする。α2(59)及びα10(5)は、両方とも、10の潜在的なグリコシル化部位を含むが、α1は26のグリコシル化部位を含む(60)。α1及びα2/α10と比較したSDS−PAGEにおけるα11の中間サイズは、これにより、グリコシル化の差の結果のようである。
【0075】
α11がβ1サブユニットと会合することを示すために、2ステップを免疫沈降手順を行った。インテグリンを最初にモノクローナル抗β1インテグリン抗体で沈降させ、次に、GammaBind Gが捕獲したインテグリンを1% SDS中で沸騰することにより解離させた。第2のステップにおいて、SDSを10倍に希釈し、α11に対する抗体を加えた。図6、パネルAに示す通り、α11に対する抗体はβ1抗体で最初に捕獲された解離した沈殿からの145kDa バンドのみを免疫沈殿させた。
【0076】
試験管内での筋原性分化の間のα11 mRNA及びタンパク質の誘導
αmtは、試験管内でのヒト胎児筋系細胞上での筋原性分化の間に上昇制御される主要なインテグリンα鎖であることが以前に決定されている(38)。筋芽細胞及び筋管細胞中でのα11レベルを比較するために、増殖培地中の筋芽細胞培養物から、並びに7日間で、分化培地中で分化して筋管を形成することができる平行培地から、免疫沈降を分析した。β1及びα11抗体両方での免疫沈降は、α11が、αmtと同様に、ヒト胎児筋肉細胞及び衛星細胞の分化培養物中で、タンパク質レベルが強力に上昇制御されることを示した(図6、パネルB)。
【0077】
上昇制御がmRNA又はタンパク質レベルでおこるかを決定するために、我々は、異なる分化段階から全てのmRNAを分析した(1日目、3日目及び7日目)(図6、パネルC)。既に分化培地中で3日目に、α11 mRNAの強力な上昇制御が見られ、α11インテグリンタンパク質の上昇制御が転写又はmRNA安定性の増加の結果としておこることが確立された。同様のSDS−PAGEマイグレーションパターン、還元条件下での同様の挙動、β1インテグリン鎖との関連、及びヒト胎児筋芽細胞の試験管内分化の間の上昇制御に基づいて、現在のデータは、α11インテグリンがαmtと同一であることを示す。
【0078】
2つの横紋筋肉腫細胞系RD及びA204からのmRNAの分析(図6、パネルC)はいずれの細胞系でもα11の存在についての証拠を供さなかった。ヒト胎児筋肉細胞中でのα11β1の観察された上昇制御及び成人筋肉におけるα11メッセージの存在に基づいて、我々は、α11が筋肉形成の早期のステップに関連し得ること、及びそれは成人筋肉組織において安定化の役割を果たし得ることを示唆する。α7インテグリンサブユニットは筋肉中の主要なβ1関連インテグリン鎖であるが、α7の遺伝子欠損はかなりマイルドな筋ジストロフィーを導く(30)。
【0079】
α11β1インテグリンのリガンド結合特異性
β1インテグリンサブファミリーの今まで同定されたI−ドメイン含有インテグリンは全てコラーゲンに結合する(5,15,59)。α1及びα2のために、この結合能力はI−ドメイン内にあることが示されている(17,18)。α11β1がコラーゲンにも結合するか否かを決定するために、我々は、表面ヨウ素化XXVI衛星細胞からの膜タンパク質のコラーゲンタイプI Sepharoseクロマトグラフィーを行った。EDTAの溶出液の直接分析は、平行する免疫沈殿中のα1,α2,α11及びβ1の位置に対応する弱いバンドを示した(図7、パネル1)。EDTA溶出液をβ1及びα11抗体での免疫沈降により濃縮した。図7に示すように、コラーゲンI Sepharose溶出液中に優勢をα11バンドが存在する。
【0080】
α11抗体で捕獲されたタンパク質中の比較的弱いβ1バンドは、α11β1ヘテロダイマーはEDTAの存在下で部分的に解離することを示す。完全な細胞内でのα11β1インテグリンのコラーゲンIとの相互作用を可視化するため、α11β1を発現する筋原細胞をトリプシン処理し、1時間、コラーゲン及びフィブロネクチン上にプレートした。接着域を形成する能力を、α11鎖及びビンキュリンについての二重免疫蛍光染色により研究した。図7のパネル2に見られるように、α11はコラーゲン上のビンキュリン陽性接着域に局在化したが、フィブロネクチン上ではなかった。
【0081】
細菌GST融合タンパク質として発現されるα11 I−ドメインでの結合研究は、コラーゲンIについての特異的アフィニティーも確認した(非公開、M.Hoeoek, R.Rick, R.Owens )。α11 cDNAの種々のインテグリンバックグラウンドでの細胞への安定なトランスフェクションは、異なるコラーゲン、並びにおそらくラミニン、イソフォームとのα11β1相互作用のより詳細な研究を許容するであろう。α11β1の生体内分布研究と組み合わせて、これは、異なる組織中でのα11β1のための生体内リガンドに関する価値ある情報を与えるようである。
【0082】
ヒト胚におけるα11インテグリンタンパク質分布
形態学的に正常なヒト胚(排卵後4〜8週)をパリのHopital Broussais のMifepristone (RV486)により誘導される法的中絶から得た。全ての手順はパリのEthical Committee of Saint-Vincent de Paul Hospital により認可された。
【0083】
各々のサンプルを、最初に、立体顕微鏡下で解剖して巨視的に検査した。胚の発達段階を、確立された基準を用いて決定した。乾燥氷上で死後最初の24時間以内に分娩及び凍結後すぐに組織を収集し、使用するまで−80℃で保存した。7ミクロン厚のクリオスタットセクションを、先にアセトン中の2% 3−アミノプロピル−トリエトキシシラン溶液でコートしたスライドにマウントした。そのクリオセクションを固定化しないままにし、次にリン酸緩衝塩類溶液中に希釈した10%ヤギ血清で非特異的結合部位をブロッキングした。免疫蛍光のため、そのセクションをα11抗体で1.5時間、+37℃でインキュベートした。特異的に結合した抗体をヤギ抗ウサギCy3 IgG(Jackson Immunoresearch)を用いて検出した。その染色した組織セクションをVectashieldTMマウンティング培地(Vector Laboratories Inc.)にマウントし、可視化して、蛍光を観察するための光学機器を備えたZeiss光学顕微鏡下で写真をとった。
【0084】
得られた結果を図8に示す。高レベルのα11タンパク質が椎骨周囲(矢印)、椎間板内(アスタリスク)、肋骨周囲(太い矢印)及び前肢内の形成中の軟骨周辺(矢じり)に見えた。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、インテグリンα11サブユニットの全長配列の異なる部分を示すPCRフラグメント及びcDNAクローンの概略的形成を示す。 A.クローン1.1〜1.3及び2.1〜2.3は各々、1回目及び2回目のスクリーニングからのものである。フラグメント0.0は、5′RACE産物及びG6ライブラリーのスクリーニングから得られたクローンを示す。PCRフラグメント1〜3及びクローン1.3のSacIフラグメント、λ290は太線でマークする。該略図上の全てのクローンの名前及び位置はBにおいて表の形態で示す。 B.Aに示すPCR増幅化フラグメント及びcDNAクローンの名前を左のカラムに、インテグリンα11の全長cDNAにおけるそれらの位置を右のカラムに示す。
【0090】
【図2a】図2aは、ヒトインテグリンα11鎖のヌクレオチド及び縮重アミノ酸配列を示す。 予想されるシグナルペプチドをボールド下線で、I−ドメインをボックスで、潜在的なN−連結グリコシル化部位をアスタリスクでマークし、システインを下線で、潜在的な二価カチオン結合モチーフを二重下線で、そして膜貫通ドメインをダッシュの下線で示す。22アミノ酸挿入物をボールドで囲う。
【図2b】図2bは、ヒトインテグリンα11鎖のヌクレオチド及び縮重アミノ酸配列を示す。 予想されるシグナルペプチドをボールド下線で、I−ドメインをボックスで、潜在的なN−連結グリコシル化部位をアスタリスクでマークし、システインを下線で、潜在的な二価カチオン結合モチーフを二重下線で、そして膜貫通ドメインをダッシュの下線で示す。22アミノ酸挿入物をボールドで囲う。
【図2c】図2cは、ヒトインテグリンα11鎖のヌクレオチド及び縮重アミノ酸配列を示す。 予想されるシグナルペプチドをボールド下線で、I−ドメインをボックスで、潜在的なN−連結グリコシル化部位をアスタリスクでマークし、システインを下線で、潜在的な二価カチオン結合モチーフを二重下線で、そして膜貫通ドメインをダッシュの下線で示す。22アミノ酸挿入物をボールドで囲う。
【図3】図3は、I−ドメイン含有α−インテグリンサブファミリーメンバーのディスタンス・ツリーを示す。 SEAVIEW及びPHYLOWINソフトウエアに基づいて、Clustalw多重アライメントを用いてツリーをアセンブルした。底部におけるスケールは同一性の割合(%)を示す。
【0091】
【図4】図4は、蛍光イン・シトゥハイブリダイゼーション(FISH)によるITGA11遺伝子の染色体マッピングを示す。 A.左のパネルは、ヒト染色体15上のFISHシグナルを示し;右のパネルはヒト染色体15を同定するために4′,6−ジアミノ−2−フェニルインドールで染色した同じ有糸分裂の図を示す。 B.10の異なるイメージの詳細な分析に基づくプローブPCR3のためのFISHマッピング結果の図。各々のドットはヒト染色体15上で検出された二重FISHシグナルを示す。
【0092】
【図5】図5は、成人ヒト組織におけるインテグリンα11及びα1サブユニットmRNAの発現を示す。 インテグリンα11 mRNA及びインテグリンα1 mRNAを種々の成人ヒト組織からのRNAで膜上で分析した。ここでは、mRNAローディングはβ−アクチンに対して標準化した。ハイブリダイゼーションのために用いたプローブを左側にマークした。分子量標準の大きさを右にマークした。β−アクチンプローブは2kb β/γアクチン転写物及び筋肉特異的1.8kb α−アクチンメッセージと反応することに注意のこと。
【0093】
【図6】図6は、インテグリンα11鎖の生化学的キャラクタリゼーション並びに筋原細胞における対応するタンパク質及びmRNAの上昇制御を示す。 A.α11はβ1インテグリン鎖と会合する。ヒトXXVI及びG6筋肉細胞を〔35S〕システイン/メチオニンで代謝的に標識し、インテグリンを示される抗体(β1,α2及びα11)で免疫沈降させた。抗β1抗体でSDSを伴って沈殿させたタンパク質を処理し、次にα11抗体(抗α11+SDS)での2回目の沈殿により得られた、β1サブユニットとのインテグリンα11の会合についての証拠。沈殿したタンパク質を還元剤の欠如下で7.5% SDS−PAGEゲル上で分離し、次にフルオログラフィーにかけた。 B.試験管内での筋原性分化に基づくα11の誘導。 G6筋肉細胞を、増殖培地中で増殖させた時(mb増殖中筋芽細胞)及び分化培地中で7日の後(mt−筋管)、〔35S〕システイン/メチオニンで代謝的に標識した。インテグリンをβ1及びα11に対する抗体で沈殿させ、その沈殿を非還元及び還元条件下の両方で7.5% SDS-PAGEゲルで分離した。レーン1,3,5及び7はインテグリンβ1に対する抗体、レーン2,4,6及び8はインテグリンα11に対する抗体での免疫沈降である。 C.分化した筋原細胞におけるインテグリンα11 mRNAの上昇制御 mRNAを3日(d3)又は7日(d7)、増殖(p)又は分化(d)条件下で増殖するG6及びXXVI細胞から抽出した。全RNAをRD及びA204細胞から単離した。アガロースゲル上でのRNAの分離及び膜への転移の後、フィルターをα11インテグリン(α11)及びグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対するプローブとハイブリダイズさせた。RNA鎖のバンドの大きさ(kb)を右にマークする。
【0094】
【図7−1】図7−1は、α11β1インテグリンのリガンド結合特性を示す。 パネル1:XXVI細胞上のコラーゲン結合性インテグリン XXVI細胞を表面ヨウ素化し、インテグリンを免疫沈降及びコラーゲンI Sepharoseアフィニティークロマトグラフィーにより分析した。免疫沈降は、XXVI細胞の表面上のβ1インテグリン(レーン1)、α1β1(レーン2)、α11β1(レーン3)及びα2β1(レーン4)の存在を示す。コラーゲンI Sepharoseに結合したEDTAで溶出されたタンパク質はα1,α11,α2及びβ1インテグリン鎖の位置に弱いバンドを含む(レーン5)。β1インテグリン抗体(レーン6)及びα11インテグリン抗体(レーン7)での免疫沈降はEDTA溶出液中のα11及びβ1の存在を確認する。
【図7−2】図7−2のパネル2:α11β1はコラーゲン上の接着域に局在化する。 コラーゲンタイプI(A及びC)及びフィブロネクチン(B及びD)上に接種したヒトXXVI衛星細胞中のビンキュリン(A,B)及びα11インテグリン鎖(C,D)の間接的な免疫蛍光可視化。コラーゲンに結合することができる細胞の接着域へのインテグリンα11鎖の局在化及びフィブロネクチン上に接種した細胞上でのその完全な欠如に注意のこと。ビンキュリンは両方の基質上の接着域に見出される。A及びCは、両方の抗原について二重染色した同じ細胞を示す。スケールバーは20μmである。
【図8】図8は、妊娠8週でのα11インテグリンタンパク質分布を示す。 8週間の妊娠におけるヒト胚の矢状断の免疫組織化学的染色の混成。椎骨周辺(矢印)、椎間板内(アスタリスク)、肋骨周辺(細い矢印)、及び前肢内の形成中の軟骨周辺(矢じり)の高レベルのα11タンパク質に注目のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含んで成る組換え又は単離されたインテグリンサブユニットα11。
【請求項2】
配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含んで成る組換えインテグリンサブユニットα11を生産する方法であって、
a)インテグリンサブユニットα11をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを単離し、
b)その単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、
c)該発現ベクターで宿主細胞を生体外形質転換し、
d)その形質転換された宿主細胞を、培養培地中で、前記インテグリンサブユニットα11の前記形質転換された宿主細胞中での発現に適した条件下で培養し、そして任意に、
e)前記形質転換された宿主細胞又は前記培養培地から、前記インテグリンサブユニットα11を単離する、
ことを含む方法。
【請求項3】
インテグリンサブユニットα11をコードする、配列番号:1に示すヌクレオチド配列を含んで成る単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターを含む細胞。
【請求項6】
請求項2に記載のステップa)〜c)の方法により生産される細胞であって、請求項1に記載のインテグリンサブユニットα11をコードし、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列を含んで成るポリヌクレオチドが、前記細胞のゲノムに安定に組み込まれている細胞。
【請求項7】
請求項1に記載のインテグリンサブユニットα11に対して特異的に結合する能力を有する、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそれらのフラグメント。
【請求項8】
請求項1に記載のサブユニットα11及びサブユニットβ1を含んで成る組換え又は単離されたインテグリンヘテロダイマー。
【請求項9】
請求項8に記載のサブユニットα11及びサブユニットβ1を含んで成る組換えインテグリンヘテロダイマーを生産する方法であって、
a)請求項3に記載のポリヌクレオチド、及び任意に、前記インテグリンヘテロダイマーのサブユニットβ1をコードするヌクレオチド配列を含む他方のポリヌクレオチドを単離し、
b)その単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、
c)1又は複数の該発現ベクターで宿主細胞を生体外形質転換し、
d)その形質転換された宿主細胞を、培養培地中で、前記インテグリンヘテロダイマーの前記形質転換された宿主細胞中での発現のために適した条件下で培養し、そして任意に、
e)前記形質転換された宿主細胞又は前記培養培地から、前記インテグリンヘテロダイマーを単離する、
ことを含んで成る方法。
【請求項10】
i)請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、
ii)前記インテグリンヘテロダイマーのサブユニットβ1をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターと、
を含む細胞。
【請求項11】
請求項8に記載のインテグリンヘテロダイマーに対して特異的に結合する能力を有する、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそれらのフラグメント。
【請求項12】
請求項1に記載のインテグリンサブユニットα11のフラグメントであって、
アミノ酸配列: KLGFFRSARRRREPGLDPTPKVLEを含む細胞質ドメインからのペプチド、
配列番号:1のアミノ酸番号804〜アミノ酸番号826の細胞外ドメインのアミノ酸配列を含むペプチド、及び
配列番号:1のアミノ酸番号159〜アミノ酸番号355からのI−ドメインのアミノ酸配列を含むペプチド、
から成る群から選択されるフラグメント。
【請求項13】
請求項12に記載のインテグリンサブユニットα11のフラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項12に記載のインテグリンサブユニットα11フラグメントに対して特異的に結合する能力を有する、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体又はそれらのフラグメント。
【請求項15】
請求項7、11又は14に記載のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体又はそれらのフラグメントを使用することを含んで成る、ヒトを含めての動物の細胞又は組織の存在を生体外で検出する方法であって、当該細胞又は組織が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含んで成るインテグリンサブユニットα11、又は当該インテグリンサブユニットα11とサブユニットβ1とを含むヘテロダイマーを発現するものである、前記の方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−246894(P2006−246894A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119501(P2006−119501)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【分割の表示】特願2001−502468(P2001−502468)の分割
【原出願日】平成12年5月31日(2000.5.31)
【出願人】(501466558)カルテラ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】