インドリル置換ピラジノ−キノリンおよびがん治療のためのこれらの使用
式Iの化合物(式中、くさび状の結合、R1、R2、R3、R4、R5、R5a、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYが、明細書において与えられた意味を有する)および薬学的に許容されるその塩であって、がん、および血管形成の阻害により影響される状態の治療に有用な化合物が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な薬学的に有用な化合物であって、がん治療に有用となり得る化合物に関する。本発明はまた、化合物を調製するための合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、全世界の人々に影響を与えている疾患のクラスである。一般的に、良性腫瘍の細胞は、これらの分化している特徴を保持し、完全に無制限には分割しない。良性腫瘍は通常、局在し、非転移性である。
【0003】
悪性腫瘍において、細胞は、未分化となり、体の増殖調節シグナルに反応せず、無制限に増殖する。悪性腫瘍は、一般的に2つの種類:原発性腫瘍および二次性腫瘍に分けられる。原発性腫瘍は、これらが発見された組織から直接生じる。二次性腫瘍は、原発性腫瘍から始まることもあるし、または体の他の部分で始まることもあり、離れた部位へと広がる(転移する)もしくは転移することが可能である。転移への共通の経路は、隣接する組織への直接の増殖、血管系もしくはリンパ系を介しての広がりまたは血流である。
【0004】
腫瘍の転移は、がん患者における死亡の主な原因である。血管形成が、がんの進行および転移に臨床的に関係しているという有力な証拠がある。血管形成は、いくつかのステップからなる:基底膜の崩壊、内皮細胞の増殖および遊走、ならびに毛細血管形成である。腫瘍により勧誘された新しい毛細血管は、栄養および酸素を増大する腫瘍へと送達し、異化生成物および二酸化炭素を排除する。異常な血管形成に関連する疾患は、血管増殖を必要とし、または誘発する。例えば、角膜の血管形成は、3つの段階:前血管の潜伏期間、活性のある新血管新生、ならびに血管の成熟および回帰を含む。例えば白血球、血小板、サイトカイン、およびエイコサノイドなどの炎症反応の要素または未確認の血漿成分を含めた、様々な血管新生因子の独自性およびメカニズムは、いまだに明らかにされていない。
【0005】
この活性はまた、転移のために必要である。転移性の表現型の発症における重要な初期事象の1つは、血管形成に関与している遺伝子、例えば腫瘍細胞から放出され、これらの微環境に影響を及ぼすVEGFおよび他のタンパク質などの誘導である。がん細胞は、過剰な血管新生促進因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、bFGF(基本的な線維芽細胞成長因子)などを産生する。VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、VEGF-Fおよび胎盤増殖因子を含めたVEGFファミリーには7つのメンバーが存在する。VEGFは、具体的には、チロシンキナーゼ受容体VEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3を介して作用する。主要な分子は、VEGF-A(これより以下「VEGF」とも呼ぶ)であり、増殖、発芽、遊走および内皮細胞の管形成を促進することによって血管形成を誘発する。VEGF-Aは、がんにおける血管形成の最も強力な促進剤の1つである。VEGFは、VEGFR-1に結合し、PI3K-Aktキナーゼを介してシグナル伝達を活性化し、これが生存および遊走の増加につながる。他方では、これによって、c-srcが活性化され、これに続くVEGFR-2との相互作用により、PLC活性が誘発される。VEGFの発現は、がんにおける転移性能力に関連していることが示された。VEGFは、細胞周期成分に直接影響を及ぼし、細胞増殖を促進することによって疾患の進行を誘発する可能性がある。転移は非常に複雑なプロセスであり、隣接する組織への侵入、脈管内への侵入、循環系を介した輸送、二次的部位における停止および増殖を含めた、一連の連続したステップを介して発生する。
【0006】
腫瘍細胞は、休眠期間を経て、次の再発の間に急速な増殖が起こり得ることが、臨床研究により明らかに示されている。がん細胞の特定器官への自動誘導は、ほとんど不明のままである。癌において、最初のステップである転移性の播殖は、細胞外マトリックスからの上皮細胞の解離と、円形を達成するためのアクチン細胞骨格の崩壊を含む。組織の微環境における移動性細胞の移動は、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解性リモデリングを必要とする。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)タンパク質ファミリーメンバーは、ECMリモデリングおよび細胞侵入において重要な役割を果たす。MMPは、ECMの生態において、例えばECM巨大分子からの潜在性フラグメントおよび新規エピトープの放出、増殖因子の放出および細胞-ECM界面の改質など複数の役割を果たす、亜鉛依存のエンドペプチダーゼである。ほとんどのMMPは、分泌されたタンパク質である。しかし、これらのうちの6つは、膜タンパク質である。MMPの主な機能は、ECMの構造成分の崩壊であり、細胞の直接的または間接的な遊走である。細胞外マトリックスの崩壊は、遊走を促進させるだけでなく、マトリックス記憶域から主要な増殖因子も放出させる。興味深いことに、MMPは、I型コラーゲンの崩壊による血管リモデリング、血管周囲細胞の制御およびVEGFプロセシングを引き起こすもととなる。MMP放出後の組織構造の変化は、E-カドヘリンおよびデスモグレインの切断が原因である。MMPおよびTIMPの発現および相互作用は、様々ながんの侵入および転移の能力に関与しているようである。
【0007】
例えば本明細書中これより以下に記載されているような、いくつかの異なる種類のがんは、全世界の人々に影響を及ぼしている。前立腺がん(PCa)は、最もまん延しているがんの1つであり、全世界でがん関連の主な死亡原因である。前立腺がんの発生率は、全世界で有意に増加した(Jemal A、Siegel R、Ward E、et al.、Cancer statistics、2006. CA; a Cancer Journal for clinicians 56: 106〜130頁、2006; Yin M、Bastacky S、Chandran U、Becich MJ and Dhir R: Prevalence of incidental prostate cancer in the general population: a study of healthy organ donors; The Journal of urology 179: 892〜895頁、discussion 895、2008)。初期診断および治療における最近の進歩にもかかわらず、西欧諸国の男性において、PCaは、依然として2番目に致命的ながんのままである(Jemal et al.、同頁、Yin et al.,同頁)。
【0008】
初期の段階では、前立腺がんの大多数は、アンドロゲン除去療法に反応するが、ほとんどの腫瘍は、最終的にアンドロゲン不応性の状態へと進行することになる(Gronberg H: Prostate cancer epidemiology. Lancet 361: 859-864、2003)。一度前立腺がんがホルモン不応性になると、がん細胞は、リンパ節および離れた器官へと侵入および転移する能力を急速に得ることができる(Kalluri R: Basement membranes: structure, assembly and role in tumour angiogenesis. Nature reviews 3: 422〜433頁、2003)。
【0009】
腫瘍の転移は、がん患者における死亡の主な原因である。治療した患者の約三分の一において再発が生じ、転移性疾患に対する治癒的治療は現在存在しない(Yin et al.、同頁; Gronberg H、同頁; Albertsen PC、Hanley JA and Fine J: 20-year outcomes following conservative management of clinically localized prostate cancer. Jama 293: 2095〜2101頁、2005; Society AC: Cancer Facts & Figures 2008. Atlanta、GA、American Cancer Society、2008)。ホルモン依存性からホルモン不応性への進行および転移性前立腺がんについての理解は乏しい。この疾患の高い罹患率、人口の高齢化、およびがん転移に対する効果的治療の欠如を考えると、新規な治療による手法を発見および開発することが緊急に必要である。
【0010】
原発性PCaは、ホルモン療法で治療するが、このホルモン療法は、アンドロゲン産生を抑制し、アンドロゲン受容体(AR)媒介性の増殖および生存経路を遮断することを目標としている。進行性PCaにおいて、アンドロゲン除去療法(ADT)は、中心となる治療である。腫瘍の外科的除去およびホルモンアゴニストまたはAR拮抗剤、例えばフルタミドなどの使用は、主な種類のADTである(DeMarzo AM、Nelson WG、Isaacs WB and Epstein Jl: Pathological and molecular aspects of prostate cancer. Lancet 361: 955〜964頁、2003)。
【0011】
紡錘体および細胞増殖周期をターゲットとするDocetaxelは、進行性PCaにおいて使用されている。しかし、単一の薬剤としては、Docetaxelの活性は中程度である。進行性転移性がんの最新の治療は、抗血管新生の薬物が有効である。VEGF阻害剤であるAvastin(登録商標)は、転移性前立腺がんの治療のために血管原性経路をターゲットとし、治験において試験されてきた(Di Lorenzo G、Figg WD、Fossa SD、et al.: Combination of Bevacizumab and Docetaxel in Docetaxel-Pre-treated Hormone-Refractory Prostate Cancer: A Phase 2 Study. European Urology 54: 1089〜1096頁、2008)。Avastin(登録商標)を単一薬剤として、またはDocetaxelと組み合わせて使用した場合、反応速度が大きく改善した。しかし、個々の薬物の毒性がこうして組み合わさることによって、複数の有害作用、特に骨髄抑制および心不全を引き起こすことから、DocetaxelおよびAvastin(登録商標)により誘発される副作用は、重度になり得る(Friberg LE、Henningsson A、Maas H、Nguyen L and Karlsson MO: Model of chemotherapy-induced myelosuppression with parameter consistency across drugs. J Clin Oncol 20: 4713〜4721頁、2002)。加えて、これら薬物は高価である。
【0012】
したがって、有害作用を最小に抑え、コストのより低い代替治療を開発することによって、優れた臨床上および経済的利点を得ることになる。
【0013】
転移性がんの治療に対して効果的な薬物の候補は、細胞増殖経路、アポトーシス経路および血管形成シグナル伝達を含めた複数のがん細胞経路をターゲットとする特性を有するべきである。侵攻型のがんの治療に対する高いバイオアベイラビリティーもまた重要である。
【0014】
本明細書において明らかに以前に公開された文献が列挙または考察されていたとしても、これは必ずしも、文献が最新技術の一部であり、または共通の一般知識であるという承認と見なされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願WO98/16526
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Jemal A、Siegel R、Ward E、et al.、Cancer statistics、2006. CA a Cancer Journal for clinicians 56: 106〜130頁、2006
【非特許文献2】Yin M、Bastacky S、Chandran U、Becich MJ and Dhir R: Prevalence of incidental prostate cancer in the general population: a study of healthy organ donors; The Journal of urology 179: 892〜895頁、discussion 895、2008
【非特許文献3】Gronberg H: prostate cancer epidemiology. Lancet 361: 859〜864、2003
【非特許文献4】Kalluri R: Basement membranes: structure、assembly and role in tumour angiogenesis. Nature reviews 3: 422〜433頁、2003
【非特許文献5】Albertsen PC、Hanley JA and Fine J: 20-year outcomes following conservative management of clinically localized prostate cancer. Jama 293: 2095〜2101頁、2005
【非特許文献6】Society AC: Cancer Facts & Figures 2008. Atlanta、GA、American Cancer Society、2008
【非特許文献7】DeMarzo AM、Nelson WG、Isaacs WB and Epstein Jl: Pathological and molecular aspects of prostate cancer. Lancet 361 : 955〜964頁、2003
【非特許文献8】Di Lorenzo G、Figg WD、Fossa SD、et al.: Combination of Bevacizumab and Docetaxel in Docetaxel-Pre-treated Hormone-Refractory Prostate Cancer: A Phase 2 Study. European Urology 54: 1089〜1096頁、2008)
【非特許文献9】Friberg LE、Henningsson A、Maas H、Nguyen L and Karlsson MO: Model of chemotherapy-induced myelosuppression with parameter consistency across drugs. J Clin Oncol 20: 4713〜4721頁、2002
【非特許文献10】Crescendi、Orlando、1997、Eur. J. Biochem.、247、66〜73頁
【非特許文献11】「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M. Trost and I. Fleming、Pergamon Press、1991
【非特許文献12】「Comprehensive Organic Functional Group Transformations」by A.R. Katritzky、O.Meth-Cohnand C. W. Rees、Pergamon Press、1995
【非特許文献13】「Protective Groups in Organic Synthesis」、3rdedition、T. W. Greene & P.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)
【非特許文献14】Petrylak DP: Future directions in the treatment of androgen-independent prostate cancer. Urology 65: 8〜12頁、200538.2007
【非特許文献15】Hung H: Bevacizumab plus 5-fluorouracil induce growth suppression in the CWR-22 and CWR-22R prostate cancer xenografts. Molecular cancer therapeutics 6: 2149〜2157頁、2007
【非特許文献16】Wegiel B、Bjartell A、Tuomela J、et al.: Multiple cellular mechanisms related to cyclin Al in prostate cancer invasion and metastasis. Journal of the National Cancer Institute 100: 1022〜1036頁、2008
【非特許文献17】Wegiel B、Bjartell A、Ekberg J、Gadaleanu V、Brunhoff C and Persson JL: A role for cyclin Al in mediating the autocrine expression of vascular endothelial growth factor in prostate cancer. Oncogene 24: 6385〜6393頁、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
化合物Etoposideは、様々ながんの治療に使用されてきたものである。この化合物は、すべてが連なって縮合している、ジオキソリル、テトラヒドロナフチルおよびテトラヒドロフラニルを含む四環系コアを含有する。
【0018】
ピラジノテトラヒドロテトラヒドロイソキノリンのサブユニットまたはその変異体を含有する複素環式化合物は、例えば国際特許出願WO98/16526および学術誌論文Crescendi、Orlando、1997、Eur. J. Biochem.、247、66〜73頁に記載されている通り、薬剤としての使用が知られている。しかし、これらの文書のいずれも、このようなサブユニットが、インドリル基で置換されている化合物に関するものではない。
【0019】
さらに、以下の化合物:
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、9a位の水素は、S配置であり、5位の3-インドリル基は、R配置である(すなわち、上記化合物は、絶対立体化学である)が、中国において植物抽出物から単離された。この化合物および/またはこの化合物が単離され得る抽出物は、薬剤としての生物活性を示した。しかしこのような化合物の潜在的な合成による調製に関する開示は存在せず、さらに薬剤としての使用のための、異なる相対立体化学および/または絶対立体化学を有するこのような化合物の開示は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩がここに提供され
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、
【0025】
【化3】
【0026】
により表される結合は、相対立体化学を表し(すなわち、関連する水素原子および3-インドリル基は、互いにcis位にある)、
XおよびYは、独立して、-O-、-N(Ra)-を表すか、またはこれらのうちのいずれか1つは、代わりに-N=を表してもよく、
Raは、Hを表すか、または1つもしくは複数のフルオロ原子で場合によって置換されているC1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または、R1およびR2は、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基を表してもよく(すなわち、R1およびR2は、一緒に連結することによって、これらに必ず結合しているXおよびY基と一緒になって、5または6員の環を形成してもよく、この環には、置換基XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基が存在する)、
R3〜R10は、独立して、H、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または
任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8、またはR8とR9)は、一緒に連結することによって、1〜3つの二重結合を場合によって含有し、1〜4個(例えば1または2個)のヘテロ原子を場合によって含有する、さらなる3員〜8員(例えば5または6員)環を形成してもよく、この環は、それ自体、ハロおよびC1-4アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)から選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されており、
Rbは、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
RcとRdは、独立して、HまたはC1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
R11とR12は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、フェニル(ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表し、
R13およびR14は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表す)、
この化合物および塩は、本明細書中これより以下「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0027】
本発明の別の実施形態において、本明細書中でこれより前に記載の本発明の化合物が提供される、ただしこの化合物は、以下ではないものとし
【0028】
【化4】
【0029】
すなわち、XおよびYが-O-を表し、R1およびR2が一緒になって、XおよびYを連結している-CH2-部分を表し、R3〜R10、R12、R13およびR14が水素を表し、R11がメチルを表す場合、9a位での水素がS配置であれば、3-インドリル基はS配置ではないものとし、
この化合物および塩はまた、本明細書中これより以下「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0030】
念のため書き添えると、本明細書中これより前に、3-インドリル基および関連する水素原子(「くさび状」結合で付加されている)は、互いにcis位にあるということが述べられたことを考えると、式IAおよびIBの以下の化合物は、本発明の化合物の範囲内に包含される:
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、整数は、本明細書中これより前に定義された通りであるが(およびR5aは、好ましくは水素であり、よって省略)、「くさび状」結合(3-インドリル基および関連する水素原子に付加している)は、太字の「R」または「S」で表されている、絶対配置の結合を表す)。すなわち、これは、5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子が両方ともS配置である式IAの化合物、またはこれらの部分(5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子)が両方ともR配置である式IBの化合物であってよい。さらに、本発明の化合物は、これらの関連する、式IAおよびIBの化合物(2つのくさび状結合が、両方ともR配置であるか、または両方ともS配置である)の混合物(例えばラセミ混合物など)、すなわち、cisジアステレオ異性体の2つの異なるエナンチオマーの混合物であってよい。例えば、不斉収率(ee)が50:50を超える、例えば80:20を超える、例えば90:10を超えるような、本発明の化合物の単一のエナンチオマーが得られることが好ましい(このような状況において、eeは、99%を超える、またはおよそ99%であることが最も好ましいが、これは合成に使用する可能性のある出発物質の光学純度が条件となり得る)。最も好ましくは、2つの関連するキラル中心での絶対立体化学がS配置である本発明の化合物の単一のエナンチオマーが望ましい(上記化合物IAを参照)。
【0033】
本発明の化合物は、5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子が、相対的にcis-である化合物であると本明細書中に述べられている。これは、cisジアステレオ異性体が、所望しないtransジアステレオ異性体と比較して少なくとも80:20の比率で存在することを意味する。cisジアステレオ異性体は、少なくとも90:10の比率、例えば少なくともまたはおよそ95:5、最も好ましくは少なくともまたはおよそ99:1(例えば、本発明の化合物中に存在するtransジアステレオ異性体は、基本的にはゼロ、またはごく少量である)で存在することが好ましい。
【0034】
薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。このような塩は、従来の手段、例えば、式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態と、1つまたは複数の当量の適切な酸または塩基とを、場合によっては溶媒中で、または塩不溶性の媒体中で反応させ、続いて前記溶媒、または前記媒体を、標準的技法(例えば真空中で、凍結乾燥により、または濾過により)を用いて除去することによって、形成することができる。塩はまた、本発明の化合物の対イオンと、別の対イオンとを、例えば適切なイオン交換樹脂を用いて、塩の形態で交換することによって調製することもできる。念のため書き添えると、溶媒和物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
本発明の化合物は、二重結合を含有してもよく、よってそれぞれ個々の二重結合に関して、E(逆に(entgegen))およびZ(一緒に(zusammen))幾何異性体として存在することもできる。このような異性体およびその混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
本発明の化合物はまた、互変異性を示すこともできる。すべての互変異性体の形態およびその混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
本発明の化合物はまた、1つまたは複数の不斉炭素原子を含有してもよく、したがって光学異性および/またはジアステレオ異性を示してもよい。ジアステレオ異性体は、従来の技法、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶を用いて分離することができる。様々な立体異性体は、従来の技法、例えば分別結晶またはHPLCなどの技法を用いて、本化合物のラセミまたは他の混合物を分離することにより単離することができる。もう1つの方法として、所望の光学異性体は、ラセミ化またはエピマー化(すなわち、「キラルプール」法)を起こさないような条件下での適切な光学活性のある出発物質の反応により、または適切な出発物質と、適切なステージにおいてその後取り除くことができる「キラル補助基」との反応により、または例えばホモキラル酸を用いた誘導化(すなわち、動力学的分割を含めた分割)、これに続くクロマトグラフィーなど従来の手段によるジアステレオマー誘導体の分離により、または適切なキラル試薬またはキラル触媒との反応により、これらすべてを当業者に既知の条件下で行うことによって生成することができる。すべての立体異性体およびその混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
他に特定されていない限り、本明細書中に定義されたC1-qアルキル基(qは範囲の上限である)は、直鎖であってよく、または十分な数の炭素原子(すなわち、必要に応じて最小2または3個)が存在する場合、分枝鎖および/または環式であってよい(したがって、C3-q-シクロアルキル基を形成する)。十分な数の炭素原子(すなわち、最小4個)が存在する場合、このような基はまた、一部環式であってよい。このようなアルキル基はまた飽和であってよく、または十分な数の炭素原子(すなわち、最小2個)が存在する場合、不飽和であってよい(例えば、C2-qアルケニルまたはC2-qアルキニル基を形成する)。別段特定されていない限り、C1-2アルキレン基は、本明細書中で定義された通り、-CH2-または-CH2-CH2-、すなわち、直鎖(非分枝アルキレン)を指す。しかし、C1-2アルキレンはまた、不飽和のC1-2アルキレン、すなわち、=C(H)-および-CH=CH-を包含する。
【0039】
「ハロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0040】
念のため書き添えると、「R1〜R15」などの用語が本明細書中で使用される場合、これは、当業者であれば、R1、R2、R3、R4、R5、R5a(ただし、R5aは、存在しないことが好ましい、すなわち、これは水素を表す)、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15(R15も含む)を意味することを理解している。
【0041】
本発明はまた、1つまたは複数の原子が、自然界に通常見出される原子質量または質量数(または自然界に最も豊富に見出されるもの)とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられているという事実以外は、本明細書中で列挙されているものと同一である、本発明の同位体的に標識した化合物を包含する。本明細書中で特定された任意の特定の原子または要素のすべての同位体は、本発明の化合物の範囲内で想定されている。それ故、本発明の化合物はまた、1つまたは複数の水素原子が水素同位体重水素で置き換えられている重水素化化合物も含む。
【0042】
本明細書中に述べられているすべての個々の特徴(例えば好ましい特徴)は、単独で、または本明細書中に述べられている任意の他の特徴と組み合わせて(好ましい特徴を含む)解釈されてもよい(それ故、好ましい特徴は、他の好ましい特徴と関連して解釈されてもよいし、またはこれらから独立して解釈されてもよい)。
【0043】
本発明の対象である本発明の化合物は、安定した化合物が含まれることを当業者であれば理解されよう。すなわち、本発明の化合物は、例えば反応混合物を有用な程度の純度にするまでの単離に十分耐えられる位強いものを含む。
【0044】
言及することができる本発明の化合物としては、任意の2つの隣接するR6からR9までの基が、一緒に連結されていない可能性のあるもの、すなわち、R6〜R9が、独立してH、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すものが挙げられる。
【0045】
言及することができる他の本発明の化合物としては、任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8またはR8とR9)が、一緒に連結することによって、さらなる環を形成し、次いでその環が、好ましくは5または6員の(例えば6員の)炭素環、好ましくは二重結合を含有するもの(例えば1つまたは複数の、好ましくはベンゼン環を形成する、式Iの化合物の必須のインドリル基に縮合したもの)であり、R5aが、水素を表すものが挙げられる。
【0046】
好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
R5およびR5aは、独立して水素を表し、
R6〜R9は、独立して、水素、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、非置換C1-6アルキルまたは非置換-CH2-フェニルを表すか、または
2つの隣接するR6からR9までの基(例えばR8とR9)は、一緒に連結することによって、6員環(例えばベンゼン環)を形成し、
R6〜R9の任意の2つまたは3つ(例えばR6とR8と、例えば場合によってR9)は、水素を表し、その他(例えばR7)は、水素を表すか、またはハロ(例えばクロロ)および-ORbから選択される置換基を表し、または、任意の2つの隣接する置換基(例えばR8およびR9)は、一緒に連結することによって、さらなる6員環(例えばベンゼン環)を形成し、
R12は、水素、C1-4(例えばC1-2)アルキル(例えばメチル、このアルキル基は、好ましくは非置換である)または-CH2-フェニルを表す。
【0047】
言及することができる好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
Raは、Hまたは非置換C1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、非置換C1-6アルキル、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニルを表すか、または、R1およびR2は、一緒になってC1-2アルキレンリンカー基を表してもよく、
R3〜R10は、独立して、-N(Rc)Rdを表すか、または好ましくはH、ハロ、-ORb、非置換C1-6アルキルもしくは非置換-CH2-フェニル(より好ましくは、R3〜R10のうちの少なくとも5つ(例えば少なくとも6つ)は、水素を表す、すなわち、R3〜R10のうちの2つのみ、または好ましくは1つのみが、水素以外の置換基を表す)を表し、
Rbは、非置換-C(O)C1-6アルキル、または好ましくは、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
RcおよびRdは、独立して、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
R11およびR12は、独立して、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニル、または好ましくは、H、非置換C1-6アルキルもしくは非置換フェニルを表し、
R13およびR14は、独立して、非置換-CH2-フェニル、または好ましくはHもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
フェニル部分上の好ましい置換基は、ハロ(例えばフルオロおよびクロロ)およびメチルを含む。
【0048】
言及することができるより好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
Raは、水素を表し、
R1およびR2は、独立して、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表すか、またはR1およびR2は、一緒になって、-CH2-、-CH2CH2-または-C(H)=(XおよびYを一緒に連結している)を表し、XおよびYは両方とも-O-を表し、XおよびYのうちのいずれか一方は、-O-を表し、他方は、-N(Ra)-または-N=(この例では、R1およびR2は、好ましくは、-CH2-または-C(H)=を表す)を表すか、またはXおよびYのうちのいずれか一方は、-N(Ra)-を表し、他方は、-O-または-N=(この例では、R1およびR2は好ましくは、-CH2-または-C(H)=を表す)を表し、
R3〜R10は、独立して、水素または-0Rb(例えば、R3〜R10のうちのいずれか1つ、例えばR5が-0Rbまたは水素を表し、その他が水素を表してもよい)を表し、
Rbは、水素を表し、
R13およびR14は、独立して、水素を表し、
R11は、C1-4(例えばC1-3)アルキル(例えばメチル、エチルまたはn-プロピル)または非置換であるフェニルを表し、
R12は、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表し、
5位の必須の3-インドリル部分は、S配置であり、
9a位の水素原子は、S配置である。
【0049】
X、Y、R1およびR2(後者の2つが、XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基を表す場合)が表し得る好ましい環として、以下が挙げられる:
【0050】
【化6】
【0051】
例えば、1,3-ジオキソリル基、1,4-ジオキシニル基(好ましくは2,3-ジヒドロ-[1,4]-ジオキシニル基)、オキサゾリル基(例えばオキサゾリルまたは2,3-ジヒドロ-オキサゾリル)またはイミダゾリル基(表されている2つのイミダゾリル基は、互変異性により平衡状態で存在し得ることは、当業者であれば理解されよう)。R1およびR2が一緒に連結されていない場合、このような基は、独立して、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表し、例えば、-X-R1および-Y-R2は、独立して、-OHまたは-OCH3(例えば、-X-R1および-Y-R2は、両方とも-OHを表すか、または両方とも-OCH3を表す)を表す。
【0052】
言及することができるさらなる好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
XおよびYは、独立して、-0-を表し、
R1およびR2は、一緒になって、XおよびYを連結して1,3-ジオキソリル部分を形成する-CH2-リンカー基、すなわち、
【0053】
【化7】
【0054】
を表し、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R12、R13およびR14は、独立して、水素を表し、
R11は、C1-3アルキル(例えばメチル)を表し、
必須の3-インドリル部分は、S配置であり、
9a位の水素原子は、S配置である。
【0055】
本発明の化合物は、当業者には周知の技法、例えば本明細書中これより以下に記載されている技法に従い生成することができる。
【0056】
本発明のさらなる態様に従い、式Iの化合物を調製するための方法が提供され、この方法は、以下を含む:
(i)R1およびR2が一緒に連結されている式Iの化合物に対しては、R1およびR2が両方とも水素(または保護されたその誘導体)を表す式Iの化合物と、式IIの化合物
L1-R1/2-L2 II
(式中、L1およびL2は、独立して、適切な脱離基、例えばスルホネート基(例えば-OS(O)2CF3、-OS(O)2CH3、-OS(O)2PhMeまたはノナフラート)、クロロ、ブロモ、または、好ましくは、ヨードなどを表し、R1/2は、C1-2アルキレン(本明細書中でこれより前にR1およびR2の連結に関して定義された通りである)を表す)との反応を、標準的反応条件下、例えば適切な塩基、例えばNaH、NaOH、Na2CO3、K2CO3、K3PO4、Cs2CO3、アルコキシド塩基(例えばf-BuONaまたはt-BuOKなど)またはアミン塩基(例えばEt3N、ピリジン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなど)などの存在下、または塩基の混合物の存在下、および適切な溶媒、例えばトルエン、ジクロロメタン、アセトニトリルまたは極性の非プロトン性溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミド)、またはこれらの混合物などの存在下で行う。好ましい塩基として、Cs2CO3が挙げられ、好ましい溶媒としてジメチルホルムアミドが挙げられる。このような反応は、室温で行うことができるが、好ましくは高温で行う(例えば10O℃より上、例えば約150℃で)、
(ii)式Iの化合物または保護されたその誘導体はまた、式IIIの化合物(またはその単一のエナンチオマー、例えば-NH2基を保持する結合が特定の配置であるキラルアミンなど)
【0057】
【化8】
【0058】
(式中、L3は、適切な脱離基、例えば本明細書中で前にL1およびL2について定義されたものなど(例えばヨード、ブロモまたはクロロ)を表すが、好ましくは-ORa(式中、Raは、好ましくはC1-6アルキル、例えばメチルを表す)を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R11、R13、R14、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)と、式IVの化合物または保護されたその誘導体
【0059】
【化9】
【0060】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10およびR12は、本明細書中で前に定義された通りである)との反応を、縮合および環化の反応条件下、例えば酢酸および酢酸ナトリウム(ただし、異なる溶媒および/または塩基を使用してもよい)の存在下で行うことにより調製することもでき、この反応で、本明細書中でこれより以下に定義される式Vの中間体を生成することができる。その後(例えば、式Vの中間体化合物の酸付加塩、例えばAcOH塩が形成された場合)、反応混合物は、中和することができ(例えばNaHCO3(水性、飽和)の添加により)、その結果、例えば形成され得る式Vの任意の中間体化合物の分子内環化反応などにより、式Iの化合物を形成することもできる。式IIIの化合物の立体化学は、このようにして形成された式Iの化合物の立体化学に影響を及ぼし得ることを当業者であれば理解されよう。例えば式IIIの化合物が、特定の配置のキラル中心を含有する場合、出発物質の立体特異性は、このようにして形成された生成物の立体化学(例えば式Iの)を支配することができる。例えば、以下のスキームにおいて、式IIIAで表された絶対立体化学を有する式IIIの化合物は、以下のスキームにおいて式IAで表された絶対立体化学を有する式Iの化合物を生成し得る。
【0061】
【化10】
【0062】
同様に、式IIIの化合物のラセミ形態から開始することは、式Iの化合物のジアステレオ異性体および/またはエナンチオマーのいずれかの調製を可能にする(例えばHPLCなどのクロマトグラフィーによるジアステレオ異性体の分離により、さらに、例えば分割などによるエナンチオマーの分離により)ことを当業者であれば理解されよう。
(iii)式Vの化合物またはその塩(例えば、酸付加塩、例えばAcOH塩など)、またはその単一のエナンチオマー(単一のエナンチオマーおよび単一のcis-ジアステレオ異性体)
【0063】
【化11】
【0064】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)の分子内環化は、標準的な条件で実施することができ、例えば式Vの化合物の酸付加塩が使用される場合(例えば化合物がその場で形成される場合)、中和を最初に行うことができる(例えば、上のステップ(ii)に関して記載されている条件下などで)。この分子内環化(すなわち、カルボニル基での求核置換)は、自然に起こり得るか、または適切な塩基の添加によって促進させることもできる、または
(iv)式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は、水素以外の置換基を表す(例えば両方が水素以外の置換基を表す))は、対応する式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は水素を表す)から、式VAの化合物(または2つの異なるその化合物)
R11/12-L4 VA
(式中、R11/12は、R11またはR12(所望する結合の位置に応じて)を表す、ただし、水素を表さないものとする)を用いて、塩基の存在下で(例えば、上のステップ(i)の工程に関して記載されたものなど、例えばNaH)および適切な溶媒(例えば、上のステップ(i)の工程に関して記載されたものなど、例えばジメチルホルムアミドなど極性の非プロトン性溶媒)の存在下で、当業者に既知の標準的条件下で調製することができる。これら反応条件は、R11/12が、C1-6アルキル、-C(O)-C1-6アルキルまたは-CH2フェニル(式中、アルキルおよびフェニル部分は、本明細書中で前に定義されたように場合によって置換されている)を表す化合物の調製に対して有効であることを当業者であれば理解されよう。R11/12が、場合によって置換されているフェニルを表す化合物の調製のためには、異なる条件、例えば、適切な触媒(例えばPd(OAc)2など)の存在下、場合による添加剤、塩基および適切な溶媒の存在下でのカップリング反応条件などを使用することが必要となり得る。
【0065】
式IIIの化合物は、式VIの化合物または保護されたその誘導体(例えば、アミノ保護された誘導体、例えば-NHBoc保護された誘導体、またはそのエステル)、またはその単一のエナンチオマー
【0066】
【化12】
【0067】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)と、式VIIの化合物
H(R11)N-C(R13)(R14)-C(O)L3 VII
(式中、R11、R13、R14およびL3は、本明細書中で前に定義された通りである(さらに、L3は、好ましくは上で定義された-ORaである))との反応を、標準的なアミドカップリング反応条件下、例えば適切なカップリング試薬(例えば1,1’-カルボニルジイミダゾール、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(またはその塩酸塩)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジルまたは最も好ましくはビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスホン酸クロリド(すなわち、Bop-Cl)など)の存在下で、場合によっては適切な塩基(例えば水素化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミン、水酸化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドおよび/またはリチウムジイソプロピルアミド(またはその変異体)および適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トリフルオロメチルベンゼン、ジオキサンまたはトリエチルアミン)の存在下で行うことにより調製することができる。好ましいカップリング剤として、Bop-Clが挙げられ、好ましい塩基として、トリエチルアミンおよび/または重炭酸ナトリウム(例えばその混合物)が挙げられ、好ましい溶媒系は、ジクロロメタンである(この例において、反応混合物は、ある期間に渡り室温またはそれ位の温度で反応させることができる)。もう1つの方法として、式Vlの化合物のカルボン酸基を標準的条件下で対応する塩化アシルに変換させてもよく(例えばSOCl2または塩化オキサリルの存在下)、次いで塩化アシルを、例えば上述された条件と同様の条件下で式VIIの化合物と反応させる。
【0068】
本明細書中に述べられている化合物(例えば式II、IV、VA、VIおよびVIIの化合物、ならびに特定の他の式IIIの化合物)は、市販のものであるか、文献において既知のものであるか、または本明細書中に記載されている方法と類似の方法、または従来の合成手順のいずれかにより、標準的技法に従って、適切な試薬および反応条件を用いて入手可能な出発物質から得ることもできる。この点において、当業者は、中でも「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M. Trost and I. Fleming、Pergamon Press、1991を参照することができる。
【0069】
本発明の最終の化合物または関連する中間体における置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、当業者に周知の方法により、上に記載の工程の後またはその間に、1回または複数回改質してもよい。このような方法の例として、置換、還元、酸化、アルキル化、アシル化、加水分解、エステル化、エーテル化、ハロゲン化またはニトロ化などが挙げられる。このような反応は、対称的または非対称的な本発明の最終化合物または中間体の形成をもたらすことができる。前駆体基は、反応順序の間の任意の時点において、異なるこのような基、または式Iで定義された基へと変えることができる。この点に関して、当業者はまた、「Comprehensive Organic Functional Group Transformations」by A.R. Katritzky、O.Meth-Cohn and C. W. Rees、Pergamon Press、1995を参照することができる。
【0070】
本発明の化合物は、従来の技法(例えば再結晶化)を用いてこれらの反応混合物から単離することができる。
【0071】
上に記載の、および本明細書中これより以下に記載の工程において、中間体化合物の官能基は保護基によって保護することが必要となり得ることを当業者であれば理解されよう。
【0072】
例えば、アミノ基は、塩基(例えばNaOHまたはアミン塩基、例えばトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジンなど)の存在下での、BoC2Oおよび適切な溶媒(例えば水または極性の非プロトン性溶媒、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物など)との反応により、Boc基で保護することができる。標準的脱保護の反応条件として、酸の存在下(例えば極性の非プロトン性溶媒などの溶媒中のHClの存在下)での脱保護が挙げられる。
【0073】
官能基の保護および脱保護は、上記スキームにおける反応の前後に行うことができる。
【0074】
保護基は、当業者に周知であり、本明細書中これより以下に記載されている技法に従い取り除くことができる。例えば、本明細書中に記載されている保護された化合物/中間体は、標準的脱保護技法を用いて保護されていない化合物に、化学的に変換することができる。「保護基」には、保護することが所望されている実際の基の前駆体である適切な代替の基もまた含まれる。例えば、「標準的な」アミノ保護基の代わりに、ニトロまたはアジド基を使用することによって、アミノ保護基としての機能を効果的に果たすことができ、例えば本明細書中に記載されている標準的な還元条件下で、この基を後にアミノ基へと変換することもできる(保護基として作用するという目的を果たしたので)。言及することができる保護基として、ラクトン保護基(またはその誘導体)を挙げることができ、このラクトン保護基は、ヒドロキシ基とα-カルボキシ基の両方を保護する役目(すなわち、このような環式部分が、2つの官能基の間に形成されるように)を果たすことができる。
【0075】
関係する化学反応の種類により、保護基の必要性および種類ならびに合成を遂行するための順序が示されることになる。
【0076】
保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、3rdedition、T. W. Greene & P.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)において、完全に記載されている。
【0077】
本発明のよりさらなる実施形態において、合成形態の本発明の化合物(すなわち、式Iの化合物(またはその塩))が提供され、この化合物は、例えば本明細書中に記載されている工程に従い合成により生成されるという事実で特徴づけられる。このような化合物はまた、本明細書中で「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0078】
医学的および薬学的使用
本発明の化合物は、医薬品として適応される。本発明のさらなる態様に従い、医薬品としての使用のための、本明細書中で前に提供された本発明の化合物(ただし、いかなる条件なしで、必要に応じて)が提供される。医薬品としての使用のための、合成形態の本発明の化合物(ただし、いかなる条件なしで、必要に応じて)もまた提供される。
【0079】
念のため書き添えると、本発明の化合物は、そのような薬理学的な活性を所有し得るが、このような活性を所有し得ないが、非経口的にまたは経口的に投与され、その後体内で代謝されることによって、本発明の化合物を形成することができるような、本発明の化合物の、特定の薬学的に許容される(例えば「保護された」)誘導体が存在し得る、または調製することができる。したがって、このような化合物(一部の薬理学的な活性を所有し得るが、ただし、このような活性は、これらが代謝されて形成する「活性のある」化合物の活性よりかなり低い)は、本発明の化合物の「プロドラッグ」として記載することができる。
【0080】
「本発明の化合物のプロドラッグ」とは実験的に検出可能な量で、経口または非経口での投与後、所定の時間(例えば約1時間)内に、本発明の化合物を形成する化合物を含む。本発明の化合物のすべてのプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
さらに、本発明のある化合物は、そのような薬理学的活性を所有していないか、または最小の薬理学的活性を所有し得るが、非経口的にまたは経口的に投与し、その後体内で代謝されて、そのような薬理学的な活性を所有する本発明の化合物を形成し得る。このような化合物(一部の薬理学的活性を所有し得るが、ただし、このような活性は、これらが代謝されて形成する「活性のある」本発明の化合物の活性よりかなり低いような化合物も含む)もまた「プロドラッグ」として記載することができる。
【0082】
したがって、本発明の化合物は、薬理学的な活性を所有し、および/または経口または非経口投与後に体内で代謝されて、薬理学的活性を所有する化合物を形成するので有用である。
【0083】
本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件なし)は、がんの治療に有用となり得る。「がん」とは、無制限な細胞増殖(例えば無制限な分裂)、侵入(例えば隣接する組織への直接の増殖)または転移から生じる任意の疾患を意味する。「無制限な増殖」とは、がん細胞の数および/またはサイズの増加(本明細書中では「増殖」とも呼ぶ)を含む。「転移」とは、対象の体内の原発性腫瘍部位から、対象の体内の1つまたは複数の他の領域(ここで次に細胞は二次性腫瘍を形成することができる)へのがん細胞の移動または遊走(例えば侵襲性)を意味する。したがって、本発明の一実施形態では、がんに罹患している対象における二次性腫瘍の形成を、全部または部分的に阻害するための化合物および方法を提供する。
【0084】
有利には、本発明の化合物は、がん細胞の増殖および/または転移を選択的に阻害することが可能であってよい。
【0085】
「選択的に」とは、本発明の化合物は、この化合物が非がん細胞の機能(例えば増殖)を調節するよりも大きい度合で、がん細胞の増殖および/または転移を阻害することができることを意味する。好ましくは、本発明の化合物は、がん細胞のみの増殖および/または転移を阻害する。
【0086】
本発明の化合物は、すべての腫瘍(非固形および固形腫瘍)を含めた、あらゆるがんの種類の治療における使用に適切となり得る。がんの種類として(ただし、これらに限定されない)良性腫瘍(例えば血管腫、肝細胞性腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、肝結節性再生性過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫など)および悪性腫瘍(例えば白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺がん、乳がん、皮膚がん、骨のがん、肝がん、肺がん、脳のがん、喉頭、膀胱、胆嚢、卵巣、子宮頸部、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、食道、副腎、神経性組織、頭部および頸部、大腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞癌、潰瘍性と乳頭状の両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部上皮異形成およびインサイチュ癌腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎臓細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性神経膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫)を挙げることができる。言及することができるその他ものとして、精巣、泌尿生殖器、神経膠芽細胞腫、神経芽腫、ケラトアカントーマ、類表皮癌、大細胞癌、卵胞癌、未分化癌、乳頭癌、セミノーマ、ミエロイド障害、リンパ様障害、ヘアリーセル、口腔ならびに咽頭(口腔内)、唇、舌、口、小腸、大腸-直腸、大腸、直腸、脳ならびに中枢神経系などのがん、ホジキン病ならびに白血病;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T-細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫ならびにバーキットリンパ腫を含む);骨髄細胞系列の造血器腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を含む);間葉由来の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星状腫、神経芽腫、グリア細胞腫およびシュワン細胞腫を含む);ならびに他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、角膜黄色腫、甲状腺小胞がんおよびカポジ肉腫を含む)を挙げることができる。
【0087】
特に、本発明の化合物は、耐ホルモン性および侵攻性のヒト前立腺腫瘍(例えば、異種移植片マウスモデルにおいて示し得るようなもの)の増殖および侵入に対して強力な抑制活性を所有し得る。したがって、本発明の化合物は、侵攻性のがん、例えば前立腺がんなどの治療に有用となり得ることが特に好ましい。
【0088】
本発明の化合物は、PC-3がん細胞株(例えばATCCから得たもの)を用いたアッセイで試験した場合、細胞増殖の速度を減少させることができる。したがって化合物は、このタイプの腫瘍および一般的にはがんの生存能力に対する有利な抑制効果を所有し得る。PC-3がん細胞株は、ホルモンに依存しない、侵襲性の前立腺がんを代表するいくつかの特性を有する。例えば、PC-3細胞は、機能性アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達が欠乏し、培養中の培地内で急速に増大し、ヌードマウスに移植した場合、大きな、非常に侵攻性のある腫瘍を形成することができる。それ故、本明細書中これより以下に記載されている生物学的試験(例えばPC-3異種移植片マウスモデル)から、インビボで前立腺癌細胞のゆっくりとした播殖を模倣することによって、試験した化合物の有用性について、信頼できる断定が得られる。
【0089】
さらに、広く使用されている、Avastin(登録商標)またはDocetaxelなどのがん薬物でさえも、単独または組み合わせた場合、PC-3細胞に対する抑制効果は低かったことが報告されている(Petrylak DP: Future directions in the treatment of androgen-independent prostate cancer. Urology 65: 8〜12頁、200538.2007;およびHung H: Bevacizumab plus 5-fluorouracil induce growth suppression in the CWR-22 and CWR-22R prostate cancer xenografts. Molecular cancer therapeutics 6: 2149〜2157頁、2007)。
【0090】
本発明の化合物は、腫瘍増殖、血管形成および転移に伴う複数の細胞経路をターゲットにすることができる。本発明の化合物はまた、他のがん経路、例えば細胞周期制御およびアポトーシスに影響を与え得る。
【0091】
したがって、本発明の化合物は、VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤であってよく、例えば本発明の化合物は、これらだけに限らないがVEGFおよび/またはVEGF受容体2(本明細書中に記載されている試験に示し得るようなもの)を含めたVEGF受容体の発現を阻害することができる。これは選択的に起こり得るか、または本発明の化合物ががんを治療するためにこれに基づき作用する複数の機序のうちの1つであってよい。VEGFシグナル伝達経路は、腫瘍脈管化および侵入に連結していることが知られており、それ故本発明の化合物は、血管形成を阻害することによる抗がん作用を所有し得る(したがって、抗血管形成薬剤として分類され得る)。したがって本発明の別の実施形態において、本発明の化合物は、血管形成(および/またはVEGF)の阻害が、所望され、および/または必要とされる、疾患の治療に有用となり得る。
【0092】
「阻害」という用語は任意の測定可能な低下および/または予防を指すこともあり、血管形成という文脈では、血管形成(例えば、これらだけに限らないがVEGFおよびVEGF受容体2を含めたVEGF受容体の発現)の低下および/または予防を指す。抑制活性は、本発明の化合物と、VEGF受容体(a)、例えばVEGFおよび/またはVEGF受容体2などを含有する試料における血管形成阻害を、本発明の化合物の非存在下での当量の試料と比較することによって測定することができる。測定可能な変化は、客観的(例えば、いくつかの試験またはマーカー、例えばインビトロのまたはインビボのアッセイまたは試験、例えば本明細書でこれより以下に記載されているものなど、または当業者に既知の別の適切なアッセイまたは試験で測定可能)であっても、または主観的(例えば対象が効果を指摘する、または感じる)であってもよい。
【0093】
本発明の化合物は、上記条件の治療的処置および/または予防的処置の両方に適応させることができる。
【0094】
本発明のさらなる態様に従い、血管形成(および/またはVEGF、例えばVEGFおよび/またはVEGF受容体2の発現の阻害が所望されるおよび/または必要とされるもの)に伴う、またはこれに冒されている可能性のある疾患(例えばがん、または本明細書中に述べられたような別の疾患)を治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を、このような状態に罹っているか、または罹りやすい患者に投与することを含む方法が提供される。
【0095】
「患者」には、哺乳動物(ヒトを含む)患者が含まれる。それ故、上で考察された治療の方法は、ヒトまたは動物の体の治療を含み得る。
【0096】
「有効量」という用語は、治療した患者に治療上の効果を与える化合物の量を指す。効果は、客観的(例えば一部の試験またはマーカーで測定可能)であっても、または主観的(例えば対象が効果を指摘する、または感じる)であってもよい。
【0097】
本発明の化合物は、薬学的に許容される剤形で、経口、静脈内、皮下、口腔、直腸、経皮、経鼻、気管、気管支、舌下、他のいずれかの非経口の経路により投与するか、または吸入を介して投与することができる。
【0098】
本発明の化合物は、単独で投与することができるが、既知の医薬製剤として投与するのが好ましく、経口投与には錠剤、カプセル剤またはエリキシル剤など、直腸投与には坐剤など、非経口または筋肉内投与には滅菌溶液または懸濁液などがある。医薬製剤のタイプは、意図する投与経路および標準的薬務に当然払うべき注意を払って選択することができる。このような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってよく、使用条件下で悪影響をもたらす副作用または毒性を有し得ない。
【0099】
このような製剤は、標準的な、および/または一般に認められた薬務に従い調製することができる。さもなければ、適切な製剤の調製は、所定の技法を用いて、および/または標準的なおよび/または一般に認められた薬務に従い、当業者により、非独創的に遂行することができる。
【0100】
したがって、本発明のさらなる態様に従い、本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を含む医薬製剤を、薬学的に許容される助剤、賦形剤および/または担体と混合して提供する。
【0101】
例えば本発明の化合物(すなわち、活性成分)の作用強度および物理的特徴に応じて、言及することのできる医薬製剤として、活性成分が、少なくとも1重量%(または少なくとも10重量%、少なくとも30重量%または少なくとも50重量%)存在するものを挙げることができる。すなわち、活性成分と、医薬組成物の他の成分(すなわち、助剤、賦形剤および担体の添加)との重量比は、少なくとも1:99(または少なくとも10:90、少なくとも30:70または少なくとも50:50)である。
【0102】
製剤中の本発明の化合物の量は、状態の重症度および治療すべき患者、ならびに使用する化合物に依存することになるが、当業者によって非独創的に決定することができる。
【0103】
本発明は、本明細書中で前に定義された医薬製剤を調製するための方法であって、本明細書中で前に定義された本発明の化合物、または薬学的に許容されるそのエステル、アミド、溶媒和物または塩を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にすることを含む方法をさらに提供する。
【0104】
本発明の化合物はまた、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用となり得る他の治療上の薬剤(例えば本明細書中に記載されている別のVEGF阻害剤)と組み合わせることができる。本発明の化合物はまた、他の治療法と組み合わせることができる。
【0105】
本発明のさらなる態様に従い、
(A)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)と、
(B)がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つまたは複数の治療上の薬剤と
を含む組合せ製品であって、
成分(A)および(B)のそれぞれが、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して配合されている組合せ製品が提供される。
【0106】
このような組合せ製品は、他の治療上の薬剤と併用した本発明の化合物の投与を提供し、したがって、これら製剤のうちの少なくとも1つが本発明の化合物を含み、少なくとも1つが他の治療上の薬剤を含む別個の製剤として提示されるか、または組み合わせた調製物(すなわち、本発明の化合物と他の治療用薬剤とを含む単一の製剤として提示される)か(すなわち、配合される)のいずれかであってよい。
【0107】
したがって、
(1)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)と、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つまたは複数の治療上の薬剤と、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体とを含む医薬製剤、ならびに
(2)成分(a)および(b)を含む成分キットであって
(a)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤、
(b)がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つもしくは複数の治療用薬剤を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤、
成分(a)および(b)がそれぞれ、他方と併用して投与するのに適した形態で提供される成分キットがさらに提供される。
【0108】
本発明は、組合せ製品(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を調製するための方法であって、本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通り)または薬学的に許容されるそのエステル、アミド、溶媒和物もしくは塩を、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な他の治療用薬剤(または複数の薬剤)、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にすることを含む方法をさらに提供する。
【0109】
「一緒にすること」とは、2つの成分を互いに併用して投与するのに適するようにすることを意味する。
【0110】
したがって、2つの成分を互いに「一緒にする」ことにより、本明細書中で前に定義された成分キットを調製するための方法に関連して、成分キットの2つの成分が、(i)併用療法において互いに併用して使用するためにその後一緒にすることができる別個の製剤(すなわち、互いに独立している)として提供することができるか、または
(ii)併用療法において互いに併用して使用するために別個の成分の「組合せパック」として一緒に包装し、提示することができることも含まれる。
【0111】
治療すべき障害および患者、ならびに投与の経路によって、本発明の化合物は、それを必要とする患者に、異なる治療有効量で投与してもよい。しかし、本発明の文脈において、哺乳動物、特にヒトに投与する用量は、妥当な期間に渡り、哺乳動物において治療上の反応を起こすために十分であるべきである。正確な用量および組成物ならびに最も適切なデリバリーレジメンの選択は、中でも製剤の薬理学的な特性、治療がなされている状態の性質および重症度、ならびにレシピエントの健康状態および知力、ならびに特定の化合物の効力、治療される患者の年齢、状態、体重、性別および反応、ならびに疾患のステージ/重症度にも影響されることは、当業者であれば理解されよう。
【0112】
投与は、継続的であっても、または断続的であってよい(例えば大量瞬時投与)。用量はまた、投与のタイミングおよび頻度により決定することができる。経口または非経口投与の場合、一日あたりの本発明の化合物の用量は、約0.01mg〜約10g(例えば1000mg)まで変動し得る。例えば、用量範囲は、1mg/kg〜1000mg/kg(例えば10mg/kg〜500mg/kgの間、好ましくは約20mg/kg〜200mg/kgの間)であってよい、例えば、本明細書中これより以下に記載されているマウスモデルにおいて使用した用量範囲であってよい。
【0113】
いずれにせよ、医師、または他の当業者であれば、実際の用量を定期的に決定することができ、この用量が個々の患者にとって最も適切な量となる。上記の用量は、平均的なケースの代表的なものであり、もちろんこれより高いまたは低い用量範囲が有利であるような個々の例も存在する可能性もあり、これも本発明の範囲内である。
【0114】
本発明の化合物は、腫瘍増殖、アポトーシス、血管形成および転移に関与している複数の経路をターゲットとするという優位性があり得る。本発明の化合物は、効果的な血管形成阻害剤(および/またはVEGF阻害剤)であってよい、すなわち、これらは、血管形成を阻害し得る(および/またはVEGF、例えばこれらは、VEGFおよびVEGF受容体2の発現を阻害し得る)(例えば、選択的に、または作用の一様式として)。
【0115】
本発明の化合物はまた、上または他で述べられている適応症における使用であるかどうかに関わらず、従来技術において既知の化合物に比べて、より効果的であり、毒性が少なく、作用がより長く、より強力であり、わずかな副作用しか起こさず、より容易に吸収され、および/またはより良い薬物動態学的プロファイルを有する(例えばより高い経口バイオアベイラビリティーおよび/またはより低いクリアランス)、および/または他の有用な薬理学的、物理的または化学的特性を有することができるという利点を持ち得る。
【0116】
例えば、本発明の化合物は、患者が満足して容認することができ、例えば他の治療用薬剤と比較して、副作用(例えば体重減少または他の有毒な副作用)をほとんどまたは全く示さない。これは、さらに高濃度/用量での本発明の化合物の場合にも当てはめることができる。本発明の化合物はまた、相対的または比較的低い用量で、優れた作用強度(例えば他の治療用薬剤よりもより良い作用強度)を示し得る。それ故本発明の化合物は、大きい治療窓を有することができる。
【0117】
本発明の化合物は、他の既知の化学療法剤(例えばAvastin(登録商標)、Docetaxelおよび/またはEtoposide)よりも優れた利点を有することができ、これら利点とは、より良い作用強度およびより良い安全性プロファイル(すなわち、より少ない副作用)などが挙げられる。このような相対的な利点は、生物学的試験、例えば本明細書中これより以下に記載されているものなどにおいて示すことができる。
【0118】
本発明の特定の態様を具体化する好ましい、非限定的な実施例が、以下の図を参照して、次に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例1の化合物(本明細書中「物質X」とも呼ぶ)の様々な用量での治療に対する健常なマウスの耐性A.健常なマウスを、二日に一度13日間、100mg/kgの物質Xで治療した。各マウスの体重を、第1日目から第13日目まで定期的に測定した。値は、平均値±標準偏差(SD)である。B.健常なマウスを、二日に一度13日間、200mg/kgの物質Xで治療した。各マウスの体重を、二日に一度測定した。値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図2】大きいサイズの腫瘍のある異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、500〜600mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、静脈内からの40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で20日間治療し、腫瘍サイズを定期的に測定した。腫瘍サイズの値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図3】物質Xの経口投与による、異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、300〜350mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で治療した。物質Xを経口的に投与した。
【図4】Etoposideおよび物質Xによる、異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、200〜300mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、20mg/kgのEtoposide、40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で、IVで二日に一度、14日間治療した。腫瘍サイズを定期的に測定した。腫瘍サイズの値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図5】VEGFおよびVEGF受容体2の発現に対する物質Xの効果VEGFおよびVEGF受容体2の免疫組織化学的分析を、対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの腫瘍において実施した。代表的な画像を示す。腫瘍切片(対照)または(物質X)をヒトVEGFおよびVEGF受容体2に対する抗体で染色した。
【図6】対照および物質Xで治療したマウスからの全腫瘍の切片の組織構造および脈管化に対する物質Xの効果の評価A.抗VEGF受容体2抗体で染色した1対の腫瘍の外観および組織構造の比較B.対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの腫瘍の、CD31の発現についての免疫組織化学的分析。腫瘍切片(対照)または(物質X)を、CD31に対する抗体で染色した。(B)腫瘍内の中央または端の領域での高い血管密度の領域を検査した。顕微鏡視野ごとのCD31陽性ピクセル数を記録した。腫瘍1つにつき少なくとも2つの切片および1切片につき3つの視野を判定した。統計T-試験を実施し、2つを並べた。0.05未満のP値は、統計学的に有意と考えられ、0.01未満のP値には、2つのアステリスクを標識した。
【図7】Lund UniversityおよびEnamineにより合成された化合物XのPC-3細胞増殖に対する効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果に対する用量反応曲線。
【図8】PC-3細胞増殖に対する実施例2(類似化合物1)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図9】PC-3細胞増殖に対する実施例3(類似化合物2)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図10】PC-3細胞増殖に対する実施例4(類似化合物3)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図11】PC-3細胞増殖に対する実施例5(類似化合物4)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図12】PC-3細胞増殖に対する実施例6(類似化合物5)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図13】類似化合物1および3の効果と、EtoposideおよびDocetaxelを並べて比較したもの。48時間後の生存細胞の数。値は、平均値±標準偏差である。
【図14】U937ヒト白血病単球リンパ腫細胞株に対する類似化合物1および3の抗腫瘍効果。
【図15】IC50類似化合物濃度での治療後の時間点での細胞増殖分析:化合物X30μM、類似化合物1 36μM、類似化合物2 60μM、類似化合物3 32μM、類似化合物4 30μM。
【図16】BrdUアッセイにおいて試験した様々な化合物の結果
【図17】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図18】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図19】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図20】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図21】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図22】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図23】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図24】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【発明を実施するための形態】
【0120】
(実施例)
実施例/生物試験
材料は業務用供給会社から購入し、別段明示されていない限りさらなる精製なしに使用した。すべての水分および空気受容性の反応は、オーブン乾燥したガラス製品を用いて、乾燥窒素の雰囲気下で行った。高分解能質量スペクトル(ESI)を、Micromass Q-TOFマイクロ分光器上に記録した。Bruker Avance II上で、400MHz(1H)でNMRスペクトルを記録した。化学シフトは、重水素化溶媒の残留ピークに相対的である。すべてのフラッシュクロマトグラフィーを、60Å35〜70μm Matrexシリカゲル上で実施した。シリカゲル60 F254(Merck)プレート上でTLC分析を行い、a)UV光およびb)バニリン/硫酸ならびに加熱で視覚化した。
【0121】
【化13】
【0122】
中間体(12)の合成のための手順。(ステップI)
L-Dopa(11)(1当量)のジオキサン中溶液(これによりL-Dopa(11)の0.6M溶液を生成)に、ジオキサン中に溶解した1M NaOH(1.1当量)、H2O(55当量)およびBoc2O(1.1当量)(これによりBoc2Oの2.8M溶液を生成)を添加した。30、60および120分後に、1M NaOHの添加により、pHを10に調整した。この溶液を室温で撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、1M HClの添加によりpHを約2に調整し、EtOAc×2で抽出した。プールした有機相を、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。この生成物は、さらに精製しなかった。
【0123】
中間体(15)および(16)の合成のための一般的手順。(ステップII)
カルボン酸(12)(1当量)およびアミン(例えば(13)、(14))(1.1当量)のCH2Cl2中懸濁液(これによりカルボン酸(11)の0.03M溶液を生成)に、Et3N(3.5当量)を添加し、生成した溶液を0℃に冷却した。Bop-Cl(1.16当量)、続いてNaHCO3(2.1当量)を添加し、懸濁液を室温で撹拌した。揮発物を蒸発させ、残渣を、EtOAcと1M HClに分離した。有機相を飽和(水性)NaHCO3、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0124】
中間体(17)および(18)の合成のための一般的手順。(ステップIII)
Boc保護した一級アミン(例えば(15)、(16))の撹拌懸濁液に、Et2O中2M HCl(これにより保護されたアミン(例えば(15)、(16))の0.1M懸濁液を生成)を0℃で添加した。懸濁液を0℃で1時間撹拌した。懸濁液を濾別し、氷冷したEt2Oで洗浄し、MeOH中に溶解し、蒸発させた。生成物はさらに精製しなかった。
【0125】
中間体(23)、(24)、(25)および(26)の合成のための一般的手順(ステップIV)
インドール誘導体(例えば(19)、(20)、(21)、(22))(1当量)の乾燥THF中溶液(これによりインドール誘導体(例えば(19)、(20)、(21)、(22))の0.05M溶液を生成)に、Boc2O(1.5当量)を添加し、続いてDMAP(0.3当量)を添加した。この溶液を室温で6時間撹拌した。溶液をH2Oで希釈し、揮発物を蒸発させ、残渣をEtOAc×2で抽出した。プールした有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。生成物はさらに精製しなかった。
【0126】
中間体/物質(9)、(10)、(27)、(28)、(29)および(30)の合成のための一般的手順。(ステップV)
一級アミン(例えば(17)または(18))(1当量)のAcOH中溶液(これにより一級アミンの0.07M溶液(例えば(17)または(18))を生成)に、3当量のNaOAcおよび1当量のアルデヒド(例えば(23)、(24)、(25)、(26))を添加した。この混合物を室温で撹拌した。飽和(水性)NaHCO3の添加によりこの混合物を中和し、CH2Cl2で3回抽出した。プールした有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をSiO2(溶出剤としてEtOAc)上で濾過し/フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc)。
【0127】
物質(1)、(2)、(3)および(4)の合成のための一般的手順。(ステップVI)
テトラヒドロイソキノリン誘導体(例えば(27)、(28)、(29)、(30))(1当量)およびCs2CO3(1.5当量)の、蒸留したばかりのDMF(これによりテトラヒドロイソキノリン誘導体(例えば(27)、(28)、(29)、(30))の0.5M溶液を生成)中混合物に、BrCH2Cl(1.5当量)を添加した。この混合物を150℃で2.5時間加熱した。この混合物を濾過し、EtOAcで希釈し、H2O×2、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤として、EtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0128】
物質(5)の合成のための手順。(ステップVII)
(1)(1当量)の、蒸留したばかりのDMF中溶液(これにより(1)の0.4M溶液を生成)に、NaH(1.2当量)を0℃で添加し、この混合物を0℃で10分間撹拌し、その後、Mel(1.2当量)を添加した。この溶液を室温で撹拌した。H2Oを添加し、この混合物をEtOAc×3で抽出した。プールした有機相をH2O、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0129】
物質(6)の合成の手順。(ステップVIII)
(1)(1当量)の、蒸留したばかりのDMF中溶液(これにより(1)の0.5M溶液を生成)に、NaH(1.2当量)を0℃で添加し、この混合物を0℃で10分間撹拌し、その後、臭化ベンジル(1.2当量)を添加した。この溶液を室温で4時間撹拌した。H2Oを添加し、混合物をEtOAc×3で抽出した。プールした有機相を、H2O、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤として、EtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0130】
(実施例1)(本明細書中では「物質X」とも呼ぶ)
(5S,9aS)-5-(1H-インドール-3-イル)-8-メチル-7,8,9a,10-テトラヒドロ-5H-1,3-ジオキサ-5a,8-ジアザ-シクロペンタ[b]アントラセン-6,9-ジオン(代替の名称:(2S,8S)-2-(1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(1))
【0131】
【化14】
【0132】
(a)N-Boc保護されたL-Dopa(2)
5.004g(25.4mmol)L-Dopa(1)のジオキサン40mlおよびH2O(25ml)中溶液に、ジオキサン8ml中に溶解した1M NaOH(28ml(28mmol))およびBOC2O(6.0893g(27.9mmol))を添加した。生成した溶液を室温で30分間撹拌し、この後で、1M NaOHの添加により、pHを10に調整した。1時間後と7.5時間後に、このpHを再び10に調整した。最後のpH調整後、この溶液を一晩撹拌した。揮発物を蒸発させ、生成した水相をpH2に調整し、3×100mlのEtOAcで抽出した。プールした有機相を水150ml、ブライン150mlで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させることによって、7.6g(25.4mmol、100%)のN-Boc保護されたL-Dopa(2)を得た。
【0133】
(b)N-Boc-{[(S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオニル]-メチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(3)
5.0341g(16.9mmol)の(2)および2.6002g(18.6mmol)のサルコシンメチルエステル塩酸塩を、CH2Cl2(500ml)中に懸濁した。Et3N(8.3ml(59.5mmol))を添加し、混合物を0℃に冷却した。Bop-Cl(5.0118g(19.7mmol))、続いてNaHCO3(2.9991g(35.7mmol))を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。揮発物を蒸発させ、残渣を、EtOAc(400ml)および1M HCl(水性)(400ml)で分離した。有機相を400mlの飽和(水性)NaHCO3、ブライン(200ml)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(Pet.エーテル:EtOAc、1:4)により1.9425g(5.1mmol、30%)を得た(3)。
【0134】
(c){[(S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオニル]-メチル-アミノ)-酢酸メチルエステル、塩酸(4)
1.514g(3.96mmol)の(3)に、Et2O中の2M HCl(42ml)をO℃で添加した。生成した懸濁液を0℃で1時間撹拌した。懸濁液を濾別し、氷冷Et2Oで洗浄し、最少量のMeOH中に再溶解し、蒸発させた。この物質は、さらに精製しなかった(0.897g(2.8mmol、71%)(4))。
【0135】
(d)N-Boc-インドール-3-カルボキサルデヒド
インドール-3-カルボキサルデヒド(0.8754g(6mmol))を、蒸留したばかりのTHF(170ml)中に取り込み、Boc2O(2.0323g(9.3mmol))を添加し、続いてDMAP(0.2006g(1.6mmol))を添加し、この混合物を室温で4時間撹拌した。H2O(75ml)を添加し、揮発を蒸発させた。残渣をEtOAc(2×75ml)で抽出した。プールした有機相をブライン(75ml)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。これによって、1.4790g(6mmol)のBoc-保護されたインドール-3-カルボキサルデヒドを得た。
【0136】
(e)(6S,11aS)-8,9-ジヒドロキシ-6-(1-Boc-1H-インドール-3-イル)-2-メチル-2,3,11,11a-テトラ-ヒドロ-6H-ピラジノ[1,2-b]イソキノリン-1,4-ジオン(5)
0.897g(2.8mmol)の(4)を、AcOH(56ml)中に溶解し、NaOAc(0.6969g(8.4mmol))およびBoc(0.6923g(2.8mmol))保護されたインドール-3-カルボキサルデヒドを添加した。この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を2つに分け、これら半分のそれぞれを、飽和(水性)NaHCO3(pH8)の添加により中和し、CH2Ch×3 (150ml)で抽出した。プールした有機相を、ブライン(200ml)で洗浄し、Na2S04上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)により0.665g(1.4mmol、50%)の(5)を得た。
【0137】
(f)(5S,9aS)-5-(1H-インドール-3-イル)-8-メチル-7,8,9a,10-テトラヒドロ-5H-1,3-ジオキサ-5a,8-ジアザ-シクロペンタ[b]アントラセン-6,9-ジオン(6)
0.665g(1.4mmol)の(5)および0.6853g(2.1mmol)のCs2CO3を、蒸留したばかりのDMF(3.3ml)中に懸濁した。BrCH2Cl(0.140ml(2.1mmol))を添加し、混合物を150℃で1.5時間加熱した。熱源を取り除き、混合物を室温まで冷却させておいた。その後、混合物を濾過し、EtOAc(100ml)およびH2O(100ml)で分離させた。水相をEtOAc(2×100ml)で抽出した。プールした有機相を150mlのブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(Pet.エーテル:EtOAc、1:4)により0.167g(0.43mmol、31%)の(6)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.07 (bs, 1H), 7.54 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.36 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.09 (t, J=7.4 Hz, 1H), 6.98 (t, 7.5 Hz, 1H), 6.94 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 5.99 (s, 1H), 5.98 (s, 1H), 4.21 (d, J=17.5 Hz, 1H), 4.05 (dd, J1=11.9 Hz J2=4.4 Hz, 1H), 3.99 (d, J=17.64 Hz, 1H), 3.10 (m, 2H), 2.78 (s, 3H)
m/z、C22H20N3O4(M+H)+の計算値: 390.1448; 実測値: 390.1454
【0138】
(実施例2)(本明細書中では「類似化合物1」とも呼ぶ)
【0139】
【化15】
【0140】
(2S,8S)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(2)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 8.37 (bs, 1H), 7.79 (d, J=2.1 Hz, 1H), 7.35 (d, J=8.7 Hz, 1H), 7.19 (dd, J1=8.7 Hz J2=2.0 Hz, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.79 (d, J=2.5 Hz, 1H), 6.72 (s, 1H), 6.62 (1H), 5.99 (d, J=1.3 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.29 (dd, J1=12.6 J2=4.3 Hz, 1H), 4.13 (d, J=17.7 Hz, 1H), 4.01 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.31 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.2 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.2 Hz J2=12.5 Hz, 1H), 2.92 (s, 3H)
m/z、C22H18CIN3O4Na (M+Na)+の計算値: 446.0878; 実測値: 446.0884
【0141】
(実施例3)(本明細書中では「類似化合物2」とも呼ぶ)
【0142】
【化16】
【0143】
(2S,8S)-2-(5-メトキシ-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラ-シクロ[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(3)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.73 (bs, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.24 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.11 (s, 1H), 6.87 (dd, J1=8.8 Hz J2=2.6 Hz, 1H), 6.62 (m, 3H), 5.93 (d, J=1.3 Hz, 1H), 5.91 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.35 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 4.08 (m, 1H), 3.98 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.31 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 2.94 (m, 1H), 2.88 (s, 3H)
m/z、C23H21N3O5Na (M+Na)+の計算値: 442.1373; 実測値: 442.1379
【0144】
(実施例4)(本明細書中では「類似化合物3」とも呼ぶ)
【0145】
【化17】
【0146】
(2S,8S)-6-メチル-2-{1H-ナフト[1,2-b]ピロール-3-イル}-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラ-シクロ[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(4)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 9.818 (bs, 1H), 8.09 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.89 (d, J=8.1, 1H), 7.82 (d, J=8.7 Hz, 1H), 7.49 (t, J=8.1 Hz, 1H), 7.49 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.39 (t, J=8.0 Hz, 1H), 7.16 (s, 1H), 6.69 (d, J=2.1 Hz, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.59 (d, J=3.9 Hz, 1H), 5.92 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.91 (d, J=1.1 Hz, 1H), 4.35 (dd, J1=12.4 Hz J2=4.2 Hz, 1H), 4.11 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.96 (d, J=17.8 Hz, 1H), 3.29 (dd, J1=16.4 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 3.00 (dd, J1=16.1 Hz, J2=12.5 Hz, 1H), 2.88 (s, 3H)
m/z、C26H22N3O4 (M+H)+の計算値: 440.1605; 実測値: 440.1610
【0147】
(実施例5)(本明細書中では「類似化合物4」とも呼ぶ)
【0148】
【化18】
【0149】
(2S,8S)-6-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(5)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 7.74 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 7.33 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.26 (dt, J1=8.2 Hz J2=1.1 Hz, 1H), 7.12 (m, 2H), 6.73 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.99 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.1 Hz, 1H), 4.34 (dd, J1=12.4 Hz, J2=4.2 Hz, 1H), 4.11 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.96 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.71 (s, 3H), 3.32 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.2 Hz J2=12.6 Hz, 1H), 2.89 (s, 3H)
m/z、C23H22N3O4 (M+H)+の計算値: 404.1605; 実測値: 404.1610
【0150】
(実施例6)(本明細書中では「類似化合物5」とも呼ぶ)
【0151】
【化19】
【0152】
(2S,8S)-2-(1-ベンジル-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(6)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 7.77 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.20 (m, 9H), 6.77 (s, 1H), 6.72 (s, 1H), 6.67 (s, 1H), 5.98 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.1, 1H), 5.27 (s, 2H), 4.34 (dd, J1=12.4 Hz, J2=4.3 Hz, 1H), 4.12 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.98 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.32 (dd, J1=16.3 Hz, J2=4.4 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.3 Hz J2=12.5 Hz, 1H), 2.92 (s, 3H)
m/z、C29H25N3O4Na (M+Na)+の計算値: 502.1737; 実測値: 502.1743
生物学的実施例
生物学的実施例A
材料および方法
材料
物質Xを、PBS緩衝液中で5%に希釈された100%DMSO中に溶解した。
【0153】
腫瘍増殖および転移の異種移植片マウスモデル
週齢6〜8週(Taconic;Bomholt、Denmark)のNMRI無胸腺ヌードマウスを使用した。ホルモンに依存しないPC3腫瘍細胞を、以前に述べた無胸腺ヌードマウスへ皮下から移植することにより、前立腺がん異種移植片マウスモデルを作り出した(Wegiel B、Bjartell A、Tuomela J、et al.: Multiple cellular mechanisms related to cyclin Al in prostate cancer invasion and metastasis. Journal of the National Cancer Institute 100: 1022〜1036頁、2008)。
【0154】
アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA)からPC-3細胞を購入し、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640内で培養した。マウス1匹につき1×106個のPC-3細胞を使用した。マウスを3つのグループに分けた(1グループにつき6匹のマウス)。第1のグループは、治療開始前に、170〜400mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。第2のグループは、治療開始前に、550〜650mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。第3のグループは、治療開始前に、700〜800mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。週に2回、腫瘍の直径をキャリパーを用いて測定した。腫瘍容量をa*(b2/2)の方程式を用いて計算した(式中、aおよびbは、それぞれ腫瘍の長さおよび幅を表す)。
【0155】
腫瘍が上述の所望のサイズに到達した時点で、実施例1の化合物(本明細書中では「物質X」とも呼ぶ)または対照として5%DMSO(ビヒクル)を含有するPBSの治療を開始した。第1の実験設定において、物質Xは、二日に一度静脈内に投与した。第2の実験設定において、物質Xは、二日に一度経口的に投与した。結果に記載されている通り、腫瘍増殖を定期的に評価した。イソフルオレン吸入を介した安楽死での処置後、マウスを屠殺した。リンパ節、肝臓、肺、脾および大腿を各マウスから取り出した。腫瘍組織の半分を組織構造分析および免疫組織化学的分析に使用した。組織構造分析のため、組織を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィンに埋め込んだ。切片は、ヘマトキシリネオシン(H&E)で染色するか、または抗体で免疫組織化学的に染色し、光学顕微鏡で分析した。組織の他の半分は、タンパク質分析に使用し、したがって液体の窒素内で瞬時冷凍した。治療の第1日目および最終日のマウスの体重をまとめ、比較した。屠殺したマウスからの様々な組織の腫瘍侵入および転移を検査した。
【0156】
比較実験のため、190〜250mm3のサイズの腫瘍があるマウスを、二日に一度のIV注射を介して、20mg/kgの用量の細胞傷害薬物Etoposide(シグマ)で治療した。結果に記載されている通り、腫瘍サイズを測定した。3匹のマウスを、Etoposideで治療し、または対照としてビヒクルで治療した。マウスを屠殺し、組織を上述のように収集した。
【0157】
基本的毒性実験
物質Xの毒性評価のため、100mg/kgまたは200mg/kgの用量での、13日間に渡る、二日に一度の静脈内投与により、健常なマウスを物質Xで治療した。治療の第1日目から第13日目まで、各マウスの体重を定期的に測定した。死亡、瀕死、飼料消費および活動を含む症状観察を二日に一度実施した。血球数の測定のために血液試料を第1日目および第13日目に採取した。腫瘍を有するマウスについて、物質Xの毒性を評価するため、皮下PC-3腫瘍のあるマウスを、二日に一度19日間に渡り、200mg/kgの高用量の物質Xで治療した。体重を測定し、症状観察を二日に一度実施した。リンパ節、肝臓、肺、脾および大腿を各マウスから取り出し、検査した。上述の物質X、80mg/kgで毎日治療した、腫瘍のあるマウスにおいて、物質Xの毒性も評価した。
【0158】
血管形成の免疫組織化学および定量化
ヒトCD-31への抗体(Dako、Golstrup、Denmark A/S)を用いて、腫瘍組織についての免疫組織化学を以前に述べられているように実施した(Wegiel B、Bjartell A、Ekberg J、Gadaleanu V、Brunhoff C and Persson JL: A role for cyclin Al in mediating the autocrine expression of vascular endothelial growth factor in prostate cancer. Oncogene 24: 6385〜6393頁、2005)。抗ウサギペルオキシダーゼ-コンジュゲート二次抗体を適用した。ジアミノベンジジン比色分析試薬溶液(Dako)を使用した。ヘマトキシリン(Sigma, St. Louis、MO)でスライドを対比染色した。Olympus BX5l顕微鏡で検体を20×または40×の倍率で見た。腫瘍血管形成の分析のため、CD3lに対して抗体で染色した腫瘍切片を検査および定量化した。腫瘍内の高い血管密度の領域を検査した。顕微鏡視野ごとのCD31陽性ピクセル数を記載した。腫瘍1つあたり少なくとも2つの切片および1切片あたり3つの視野を測定した。
【0159】
結果
基本的毒性実験での安全性
物質Xの基本的安全性実験は、最初に、高用量の100mg/kgでの二日に一度のレジメンが安全であるかどうか試験するために、腫瘍のない健常なマウスで実施した。図1Aに示すように、高用量の物質Xを用いた13日間の治療期間を通じて体重に有意な変化はなかった。症状観察は、飼料消費および日々の活動における異常について、またはいかなる観察可能な毒性作用も13日間の間に示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。これら基本的毒性試験は、物質Xが健常なマウスにおいて高用量で安全であることを示した。
【0160】
13日という長期間の間、200mg/kgの物質Xで二日に一度マウスを治療した。図1Bに示すように、腫瘍のあるマウスの体重は、実験期間を通して安定していた。症状観察は、飼料消費および日々の活動についての異常またはいかなる観察可能な毒性作用も示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。
【0161】
次いで、高用量の物質XをPC-3異種移植片マウスで試験し、これによって前立腺がん患者でのその効果を模倣した。ヌードマウスへ腫瘍細胞を皮下に刺入することによってヒトPC-3腫瘍のマウス異種移植片を作り出した。さらに、異種移植片マウスモデルにおいて有意な制癌活性をもたらした用量40mg/kgの安全性について試験した。腫瘍のあるマウスをこの用量で毎日治療することは、がん治療に対する物質Xの安全性を意味することができる。毎日物質Xで30日間治療した、腫瘍のあるマウスの体重は、治療期間を通して一定のままであった(データは示されていない)。症状観察は、飼料消費および/または日々の活動における異常について、またはいかなる他の観察可能な毒性作用も示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。
【0162】
異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害
腫瘍増殖および転移についての物質Xの効果をインビボで実験するため、前立腺がん異種移植片マウスモデルを作り出した。転移性前立腺がんPC-3細胞を、各マウスの右側腹部に皮下注射することによって、異種移植片マウスモデルを作り出した。腫瘍が190〜240mm3のサイズへ増大した時点で、静脈内からの20mg/kgの物質Xで、または対照としてビヒクルで、マウスを21日間治療した。ビヒクル単独で治療した対照グループにおける腫瘍は、21日後大きいサイズへと急激に増大したが、物質Xで治療したマウスでは腫瘍は縮小した。これは、異種移植片マウスにおける腫瘍増殖に対する、インビボでの、物質Xの有意な抑制効果を示唆している。
【0163】
大きな、侵襲性腫瘍のある異種移植片マウスの腫瘍増殖および侵入の阻害
次に、より大きな腫瘍のあるマウスにおける腫瘍増殖および侵入に対する物質Xの効果を評価した。400mm3のサイズへと増大したPC-3腫瘍は、転移性になり得ること、この腫瘍細胞は、リンパ節、肝臓または肺へと侵入することになることがこれまでに判明している。物質Xが侵攻性の腫瘍増殖を制御することができるかどうか試験するために、移植した腫瘍を約500〜600mm3のサイズまで増大させ、次いで40mg/kgの物質Xまたは溶媒を対照として用いて、静脈内投与によりマウスの治療を開始した。対照グループの大きな腫瘍は、継続して急速に増大したが、物質Xで治療したマウスの腫瘍は増大せず、第20日目にサイズのわずかな減少を示した(図2)。
【0164】
次いで、より長期間に渡る、大きな、侵襲性腫瘍に対する物質Xの効果を試験した。マウスを2つのグループに分け、一方のグループは、静脈内投与で30日間、40mg/kgの物質Xで治療を行い、他方のグループは、同じ治療レジメンにより20日間、物質Xで治療を行った。第21日目に、グループ2のマウスには、経口投与により、40mg/kgの物質Xで治療を行った。その結果、物質Xで治療したマウスの腫瘍増殖は、全治療期間に渡り阻害され、治療終了時には腫瘍は有意に縮小したことが示された。対照的に、対照グループの腫瘍は、急激に増大し、転移した。第2の治療グループにおいて、経口投与により物質Xで治療を行ったマウスの腫瘍のサイズは、継続的に静脈内投与で治療したマウスよりもわずかに大きく、これは、物質Xは、経口的にバイオアベイラブルであるが、経口のバイオアベイラビリティーは静脈内投与より低いことを示唆している。組織構造分析および免疫組織化学分析を実施し、実験終了時には、これらマウスのいずれにおいても、腫瘍細胞の二次部位への浸潤を検出することはできなかった。対照的に、対照マウスの腫瘍は、リンパ節へ転移したことが判明した(データは示されていない)。
【0165】
全治療期間に渡る物質Xの経口投与によるマウスの治療も行った。図3に示すように、経口投与を介してマウスに与えられた物質Xは、腫瘍増殖を阻害することができたが、効果は静脈内投与ほど強くなかった。
【0166】
異種移植片マウスにおける腫瘍増殖に対するEtoposideと物質Xの効果の比較
物質Xの効果と、侵襲性腫瘍を治療するために広く使用されている細胞毒性薬とを比較するために、サイズが約250mm3に増大した腫瘍のあるPC-3マウスで、静脈内投与(IV)による20mg/kgのEtoposideの効果を試験した。図4に示すように、対照グループの腫瘍は、14日後、急激に大きいサイズへと増大した。対照的に、Etoposide治療グループの腫瘍は、ゆっくりと増大した。より重要なことに、物質Xは、Etoposideと比べて、腫瘍に対してより強い抑制効果を示した。
【0167】
腫瘍異種移植片マウスにおけるVEGFおよびVEGF受容体2の発現に対する物質Xの効果
腫瘍脈管構造を促進することができ、腫瘍侵入に必要とされる、重要な血管新生因子である、VEGFおよびVEGFR2の発現を検査した。対照マウスまたは物質Xで治療したマウスから切開した腫瘍について免疫組織化学分析を実施した。対照と比較して、物質Xで治療した腫瘍では、VEGFおよびVEGFR2の発現が有意に下方制御されていた(図5)。これは、物質Xが、VEGFシグナル伝達経路をターゲットとするVEGF阻害剤となり得ることを示唆している。
【0168】
異種移植片マウスにおける腫瘍の腫瘍組織構造および脈管化に対する物質Xの効果
ビヒクルまたは物質Xで治療したマウスにおけるVEGF受容体2の染色により腫瘍組織構造の特徴づけも行った。対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの全腫瘍を含有する切片を並べて比較することによって、腫瘍サイズおよび形態における2グループ間の差が明らかに示された(図6A)。物質Xで治療したマウスからの腫瘍のサイズは、対照マウスからの腫瘍よりも小さく見える。興味深いことに、物質Xで治療した腫瘍内には大きな空の領域が存在し、これは、進行中の腫瘍の減少が、死んだ腫瘍細胞の排除に関連している可能性があることを示唆している。これらの結果から、物質Xは、大きな、侵襲性腫瘍の増殖を阻害することができることがさらに確証された。
【0169】
次いで、物質Xで治療した腫瘍において、CD31(腫瘍脈管構造に発現し、腫瘍侵入に対して重要なタンパク質)の発現を、免疫組織化学分析により測定した(図6B)。腫瘍の端および中央の領域を含めて、腫瘍内のCD31の発現およびCD31の陽性血管を定量化することにより腫瘍脈管化の度合を判定した。物質Xで治療した腫瘍におけるCD31の発現およびCD31を発現する血管の数と、対照腫瘍のものとを比較すると、統計学的に有意な減少があった(図6C)。この結果は、侵攻性PC-3腫瘍の脈管化を阻止することによって、物質Xが腫瘍増殖および侵入を阻害し得ることを示唆している。
【0170】
生物学的実施例B
材料および方法
化学薬品
最初に、全く新しく合成した化合物およびEtoposideを、10OmMの初濃度で100%DMSO中に溶解し、次いで培地内で、200μMの最終濃度に希釈した。市販の形態のAvastin(25mg/ml)を培地内で適切な濃度に希釈した。
【0171】
細胞培養
ホルモンに依存しないおよび転移性のPC-3前立腺がん細胞を、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640内で培養した。EtoposideをSigmaから、AvastinをRocheから購入した。
【0172】
細胞増殖アッセイおよびIC50測定
0.3×106/mlの密度で、合計6×104個の細胞を細胞カウント用に96-ウェルプレートに播種した。化合物、陽性対照としてEtoposideまたはAvastinを、1μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μMで用いて、48時間細胞を治療した。Avastinには、5μM、20μMおよび50μM濃度を使用した。細胞をトリパンブルーで標識し、生存細胞を定量化した。
【0173】
製造元プロトコルに従い、非放射性BrdUベースの細胞増殖アッセイキット(Roche、Germany)を用いて、PC-3細胞増殖についての類似化合物の効果を判定した。陽性対照としてEtoposideおよびAvastinを使用した。簡潔に言うと、10%FBSを含有するRPMI-1640培地内で、48時間(BrdUでの標識18時間を含め)、96/ウェルプレートに2×103細胞を培養した。細胞DNAへのBrdUの組み込みは、ELISAプレートリーダー上で、450nmおよび690nmでの光吸収を測定することによって判定した。
【0174】
Annexin V-アポトーシスアッセイ
細胞は、50μMおよび100μMの化合物およびEtoposideで48時間処理し、収集し、PBSで洗浄し、結合緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.14M NaCl、2.5M mM CaCl2)(BD Bioscience、san Jose、CA、USA)中に再懸濁し、APS-コンジュゲートannexin Vおよび7-AAD(BDバイオサイエンス)で染色した。暗所で、室温で15分間、細胞をインキュベートし、アポトーシスの率を流動細胞数測定器(Calibur、BD)で測定し、FCS Express Professional software(De No Vo software、CA、USA)を用いて分析した。
【0175】
細胞周期分析
処理後、細胞を収集し、次いで氷冷の70%EtOH中に固定した。次いで細胞をPBSで洗浄し、1mg/mlのクエン酸ナトリウム(Sigma)、0.1mg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma)、3μl/mlのTritonX-100、0.02mg/mlのRNaseA(シグマ)を含有するDNA染色緩衝液内で、4℃で30分間インキュベートした。FACS Calibur cytofluorometr(BD)で胞周期プロファイルを測定し、FCS Express Professional(De No Vo software、CA、USA)およびMulticycle(Phoenix Flow Systems,Inc.、CA、USA)ソフトウエアを用いて分析した。
【0176】
結果
転移性前立腺がんPC-3細胞の増殖に対する化合物Xおよびその類似化合物の効果の評価
A.Lund UniversityおよびEnamineが合成した化合物XのIC50値の比較
【0177】
有効性において化合物Xの異なるバッチ間に差はない。これらの両方が、統計学的に有意な細胞数の減少5μMを伴う、細胞増殖の用量依存的阻害を誘発した。増殖抑制に対するIC50は、計算により30μMであった(図7を参照)。
【0178】
B.PC-3細胞増殖に対する類似化合物1の効果
細胞増殖に対する類似化合物1の計算によるIC50は36μM。統計学的に有意な細胞増殖阻害は、10μm〜20μMの間に開始した(図8を参照)。
【0179】
C.PC-3細胞増殖に対する類似化合物2の効果
類似化合物2の有意な増殖抑制は、5μM濃度から開始した。細胞増殖に対して求めたIC50は60μMであった(図9を参照)。
【0180】
D.PC-3細胞増殖に対する類似化合物3の効果
類似化合物3は、化合物Xとして5μMから効果を示し、IC50は32μMであった(図10を参照)。
【0181】
E.PC-3細胞増殖に対する類似化合物4の効果
類似化合物4の細胞治療は、10μmから100μMへの統計学的に有意な細胞増殖の阻害を示した。計算したIC50は、30μMであった(図11を参照)。
【0182】
F.PC-3細胞増殖に対する類似化合物5の効果
類似化合物5によるPC-3細胞の治療の結果、細胞は減少した(図12)。
【0183】
図13は、類似化合物1および3の効果を、EtoposideおよびDocetaxelと並べて比較したものを示す。
【0184】
図14は、類似化合物1および3のU937ヒト白血病単球リンパ腫細胞株に対する抗腫瘍効果を示す。
【0185】
BrdUベースの細胞増殖アッセイ
結果を図15および16に表す。
【0186】
アポトーシスアッセイ
結果を図17、18、19および20に表す。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
対照および陽性対照としてEtoposideと比較した場合、類似化合物1および類似化合物3で治療した細胞において、初期と後期の両方のアポトーシス細胞数が増加している。
【0190】
細胞周期分析
結果を図21、22、23および24に表す。
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
得た結果によると、Etoposideで治療した細胞においてG2/M相の遮断があったが、類似化合物1で治療した細胞にはなかった。100μMにおいて類似化合物3で治療した細胞には遮断が存在し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な薬学的に有用な化合物であって、がん治療に有用となり得る化合物に関する。本発明はまた、化合物を調製するための合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、全世界の人々に影響を与えている疾患のクラスである。一般的に、良性腫瘍の細胞は、これらの分化している特徴を保持し、完全に無制限には分割しない。良性腫瘍は通常、局在し、非転移性である。
【0003】
悪性腫瘍において、細胞は、未分化となり、体の増殖調節シグナルに反応せず、無制限に増殖する。悪性腫瘍は、一般的に2つの種類:原発性腫瘍および二次性腫瘍に分けられる。原発性腫瘍は、これらが発見された組織から直接生じる。二次性腫瘍は、原発性腫瘍から始まることもあるし、または体の他の部分で始まることもあり、離れた部位へと広がる(転移する)もしくは転移することが可能である。転移への共通の経路は、隣接する組織への直接の増殖、血管系もしくはリンパ系を介しての広がりまたは血流である。
【0004】
腫瘍の転移は、がん患者における死亡の主な原因である。血管形成が、がんの進行および転移に臨床的に関係しているという有力な証拠がある。血管形成は、いくつかのステップからなる:基底膜の崩壊、内皮細胞の増殖および遊走、ならびに毛細血管形成である。腫瘍により勧誘された新しい毛細血管は、栄養および酸素を増大する腫瘍へと送達し、異化生成物および二酸化炭素を排除する。異常な血管形成に関連する疾患は、血管増殖を必要とし、または誘発する。例えば、角膜の血管形成は、3つの段階:前血管の潜伏期間、活性のある新血管新生、ならびに血管の成熟および回帰を含む。例えば白血球、血小板、サイトカイン、およびエイコサノイドなどの炎症反応の要素または未確認の血漿成分を含めた、様々な血管新生因子の独自性およびメカニズムは、いまだに明らかにされていない。
【0005】
この活性はまた、転移のために必要である。転移性の表現型の発症における重要な初期事象の1つは、血管形成に関与している遺伝子、例えば腫瘍細胞から放出され、これらの微環境に影響を及ぼすVEGFおよび他のタンパク質などの誘導である。がん細胞は、過剰な血管新生促進因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、bFGF(基本的な線維芽細胞成長因子)などを産生する。VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、VEGF-Fおよび胎盤増殖因子を含めたVEGFファミリーには7つのメンバーが存在する。VEGFは、具体的には、チロシンキナーゼ受容体VEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3を介して作用する。主要な分子は、VEGF-A(これより以下「VEGF」とも呼ぶ)であり、増殖、発芽、遊走および内皮細胞の管形成を促進することによって血管形成を誘発する。VEGF-Aは、がんにおける血管形成の最も強力な促進剤の1つである。VEGFは、VEGFR-1に結合し、PI3K-Aktキナーゼを介してシグナル伝達を活性化し、これが生存および遊走の増加につながる。他方では、これによって、c-srcが活性化され、これに続くVEGFR-2との相互作用により、PLC活性が誘発される。VEGFの発現は、がんにおける転移性能力に関連していることが示された。VEGFは、細胞周期成分に直接影響を及ぼし、細胞増殖を促進することによって疾患の進行を誘発する可能性がある。転移は非常に複雑なプロセスであり、隣接する組織への侵入、脈管内への侵入、循環系を介した輸送、二次的部位における停止および増殖を含めた、一連の連続したステップを介して発生する。
【0006】
腫瘍細胞は、休眠期間を経て、次の再発の間に急速な増殖が起こり得ることが、臨床研究により明らかに示されている。がん細胞の特定器官への自動誘導は、ほとんど不明のままである。癌において、最初のステップである転移性の播殖は、細胞外マトリックスからの上皮細胞の解離と、円形を達成するためのアクチン細胞骨格の崩壊を含む。組織の微環境における移動性細胞の移動は、細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解性リモデリングを必要とする。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)タンパク質ファミリーメンバーは、ECMリモデリングおよび細胞侵入において重要な役割を果たす。MMPは、ECMの生態において、例えばECM巨大分子からの潜在性フラグメントおよび新規エピトープの放出、増殖因子の放出および細胞-ECM界面の改質など複数の役割を果たす、亜鉛依存のエンドペプチダーゼである。ほとんどのMMPは、分泌されたタンパク質である。しかし、これらのうちの6つは、膜タンパク質である。MMPの主な機能は、ECMの構造成分の崩壊であり、細胞の直接的または間接的な遊走である。細胞外マトリックスの崩壊は、遊走を促進させるだけでなく、マトリックス記憶域から主要な増殖因子も放出させる。興味深いことに、MMPは、I型コラーゲンの崩壊による血管リモデリング、血管周囲細胞の制御およびVEGFプロセシングを引き起こすもととなる。MMP放出後の組織構造の変化は、E-カドヘリンおよびデスモグレインの切断が原因である。MMPおよびTIMPの発現および相互作用は、様々ながんの侵入および転移の能力に関与しているようである。
【0007】
例えば本明細書中これより以下に記載されているような、いくつかの異なる種類のがんは、全世界の人々に影響を及ぼしている。前立腺がん(PCa)は、最もまん延しているがんの1つであり、全世界でがん関連の主な死亡原因である。前立腺がんの発生率は、全世界で有意に増加した(Jemal A、Siegel R、Ward E、et al.、Cancer statistics、2006. CA; a Cancer Journal for clinicians 56: 106〜130頁、2006; Yin M、Bastacky S、Chandran U、Becich MJ and Dhir R: Prevalence of incidental prostate cancer in the general population: a study of healthy organ donors; The Journal of urology 179: 892〜895頁、discussion 895、2008)。初期診断および治療における最近の進歩にもかかわらず、西欧諸国の男性において、PCaは、依然として2番目に致命的ながんのままである(Jemal et al.、同頁、Yin et al.,同頁)。
【0008】
初期の段階では、前立腺がんの大多数は、アンドロゲン除去療法に反応するが、ほとんどの腫瘍は、最終的にアンドロゲン不応性の状態へと進行することになる(Gronberg H: Prostate cancer epidemiology. Lancet 361: 859-864、2003)。一度前立腺がんがホルモン不応性になると、がん細胞は、リンパ節および離れた器官へと侵入および転移する能力を急速に得ることができる(Kalluri R: Basement membranes: structure, assembly and role in tumour angiogenesis. Nature reviews 3: 422〜433頁、2003)。
【0009】
腫瘍の転移は、がん患者における死亡の主な原因である。治療した患者の約三分の一において再発が生じ、転移性疾患に対する治癒的治療は現在存在しない(Yin et al.、同頁; Gronberg H、同頁; Albertsen PC、Hanley JA and Fine J: 20-year outcomes following conservative management of clinically localized prostate cancer. Jama 293: 2095〜2101頁、2005; Society AC: Cancer Facts & Figures 2008. Atlanta、GA、American Cancer Society、2008)。ホルモン依存性からホルモン不応性への進行および転移性前立腺がんについての理解は乏しい。この疾患の高い罹患率、人口の高齢化、およびがん転移に対する効果的治療の欠如を考えると、新規な治療による手法を発見および開発することが緊急に必要である。
【0010】
原発性PCaは、ホルモン療法で治療するが、このホルモン療法は、アンドロゲン産生を抑制し、アンドロゲン受容体(AR)媒介性の増殖および生存経路を遮断することを目標としている。進行性PCaにおいて、アンドロゲン除去療法(ADT)は、中心となる治療である。腫瘍の外科的除去およびホルモンアゴニストまたはAR拮抗剤、例えばフルタミドなどの使用は、主な種類のADTである(DeMarzo AM、Nelson WG、Isaacs WB and Epstein Jl: Pathological and molecular aspects of prostate cancer. Lancet 361: 955〜964頁、2003)。
【0011】
紡錘体および細胞増殖周期をターゲットとするDocetaxelは、進行性PCaにおいて使用されている。しかし、単一の薬剤としては、Docetaxelの活性は中程度である。進行性転移性がんの最新の治療は、抗血管新生の薬物が有効である。VEGF阻害剤であるAvastin(登録商標)は、転移性前立腺がんの治療のために血管原性経路をターゲットとし、治験において試験されてきた(Di Lorenzo G、Figg WD、Fossa SD、et al.: Combination of Bevacizumab and Docetaxel in Docetaxel-Pre-treated Hormone-Refractory Prostate Cancer: A Phase 2 Study. European Urology 54: 1089〜1096頁、2008)。Avastin(登録商標)を単一薬剤として、またはDocetaxelと組み合わせて使用した場合、反応速度が大きく改善した。しかし、個々の薬物の毒性がこうして組み合わさることによって、複数の有害作用、特に骨髄抑制および心不全を引き起こすことから、DocetaxelおよびAvastin(登録商標)により誘発される副作用は、重度になり得る(Friberg LE、Henningsson A、Maas H、Nguyen L and Karlsson MO: Model of chemotherapy-induced myelosuppression with parameter consistency across drugs. J Clin Oncol 20: 4713〜4721頁、2002)。加えて、これら薬物は高価である。
【0012】
したがって、有害作用を最小に抑え、コストのより低い代替治療を開発することによって、優れた臨床上および経済的利点を得ることになる。
【0013】
転移性がんの治療に対して効果的な薬物の候補は、細胞増殖経路、アポトーシス経路および血管形成シグナル伝達を含めた複数のがん細胞経路をターゲットとする特性を有するべきである。侵攻型のがんの治療に対する高いバイオアベイラビリティーもまた重要である。
【0014】
本明細書において明らかに以前に公開された文献が列挙または考察されていたとしても、これは必ずしも、文献が最新技術の一部であり、または共通の一般知識であるという承認と見なされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願WO98/16526
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Jemal A、Siegel R、Ward E、et al.、Cancer statistics、2006. CA a Cancer Journal for clinicians 56: 106〜130頁、2006
【非特許文献2】Yin M、Bastacky S、Chandran U、Becich MJ and Dhir R: Prevalence of incidental prostate cancer in the general population: a study of healthy organ donors; The Journal of urology 179: 892〜895頁、discussion 895、2008
【非特許文献3】Gronberg H: prostate cancer epidemiology. Lancet 361: 859〜864、2003
【非特許文献4】Kalluri R: Basement membranes: structure、assembly and role in tumour angiogenesis. Nature reviews 3: 422〜433頁、2003
【非特許文献5】Albertsen PC、Hanley JA and Fine J: 20-year outcomes following conservative management of clinically localized prostate cancer. Jama 293: 2095〜2101頁、2005
【非特許文献6】Society AC: Cancer Facts & Figures 2008. Atlanta、GA、American Cancer Society、2008
【非特許文献7】DeMarzo AM、Nelson WG、Isaacs WB and Epstein Jl: Pathological and molecular aspects of prostate cancer. Lancet 361 : 955〜964頁、2003
【非特許文献8】Di Lorenzo G、Figg WD、Fossa SD、et al.: Combination of Bevacizumab and Docetaxel in Docetaxel-Pre-treated Hormone-Refractory Prostate Cancer: A Phase 2 Study. European Urology 54: 1089〜1096頁、2008)
【非特許文献9】Friberg LE、Henningsson A、Maas H、Nguyen L and Karlsson MO: Model of chemotherapy-induced myelosuppression with parameter consistency across drugs. J Clin Oncol 20: 4713〜4721頁、2002
【非特許文献10】Crescendi、Orlando、1997、Eur. J. Biochem.、247、66〜73頁
【非特許文献11】「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M. Trost and I. Fleming、Pergamon Press、1991
【非特許文献12】「Comprehensive Organic Functional Group Transformations」by A.R. Katritzky、O.Meth-Cohnand C. W. Rees、Pergamon Press、1995
【非特許文献13】「Protective Groups in Organic Synthesis」、3rdedition、T. W. Greene & P.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)
【非特許文献14】Petrylak DP: Future directions in the treatment of androgen-independent prostate cancer. Urology 65: 8〜12頁、200538.2007
【非特許文献15】Hung H: Bevacizumab plus 5-fluorouracil induce growth suppression in the CWR-22 and CWR-22R prostate cancer xenografts. Molecular cancer therapeutics 6: 2149〜2157頁、2007
【非特許文献16】Wegiel B、Bjartell A、Tuomela J、et al.: Multiple cellular mechanisms related to cyclin Al in prostate cancer invasion and metastasis. Journal of the National Cancer Institute 100: 1022〜1036頁、2008
【非特許文献17】Wegiel B、Bjartell A、Ekberg J、Gadaleanu V、Brunhoff C and Persson JL: A role for cyclin Al in mediating the autocrine expression of vascular endothelial growth factor in prostate cancer. Oncogene 24: 6385〜6393頁、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
化合物Etoposideは、様々ながんの治療に使用されてきたものである。この化合物は、すべてが連なって縮合している、ジオキソリル、テトラヒドロナフチルおよびテトラヒドロフラニルを含む四環系コアを含有する。
【0018】
ピラジノテトラヒドロテトラヒドロイソキノリンのサブユニットまたはその変異体を含有する複素環式化合物は、例えば国際特許出願WO98/16526および学術誌論文Crescendi、Orlando、1997、Eur. J. Biochem.、247、66〜73頁に記載されている通り、薬剤としての使用が知られている。しかし、これらの文書のいずれも、このようなサブユニットが、インドリル基で置換されている化合物に関するものではない。
【0019】
さらに、以下の化合物:
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、9a位の水素は、S配置であり、5位の3-インドリル基は、R配置である(すなわち、上記化合物は、絶対立体化学である)が、中国において植物抽出物から単離された。この化合物および/またはこの化合物が単離され得る抽出物は、薬剤としての生物活性を示した。しかしこのような化合物の潜在的な合成による調製に関する開示は存在せず、さらに薬剤としての使用のための、異なる相対立体化学および/または絶対立体化学を有するこのような化合物の開示は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩がここに提供され
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、
【0025】
【化3】
【0026】
により表される結合は、相対立体化学を表し(すなわち、関連する水素原子および3-インドリル基は、互いにcis位にある)、
XおよびYは、独立して、-O-、-N(Ra)-を表すか、またはこれらのうちのいずれか1つは、代わりに-N=を表してもよく、
Raは、Hを表すか、または1つもしくは複数のフルオロ原子で場合によって置換されているC1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または、R1およびR2は、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基を表してもよく(すなわち、R1およびR2は、一緒に連結することによって、これらに必ず結合しているXおよびY基と一緒になって、5または6員の環を形成してもよく、この環には、置換基XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基が存在する)、
R3〜R10は、独立して、H、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または
任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8、またはR8とR9)は、一緒に連結することによって、1〜3つの二重結合を場合によって含有し、1〜4個(例えば1または2個)のヘテロ原子を場合によって含有する、さらなる3員〜8員(例えば5または6員)環を形成してもよく、この環は、それ自体、ハロおよびC1-4アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)から選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されており、
Rbは、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
RcとRdは、独立して、HまたはC1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
R11とR12は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、フェニル(ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表し、
R13およびR14は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表す)、
この化合物および塩は、本明細書中これより以下「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0027】
本発明の別の実施形態において、本明細書中でこれより前に記載の本発明の化合物が提供される、ただしこの化合物は、以下ではないものとし
【0028】
【化4】
【0029】
すなわち、XおよびYが-O-を表し、R1およびR2が一緒になって、XおよびYを連結している-CH2-部分を表し、R3〜R10、R12、R13およびR14が水素を表し、R11がメチルを表す場合、9a位での水素がS配置であれば、3-インドリル基はS配置ではないものとし、
この化合物および塩はまた、本明細書中これより以下「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0030】
念のため書き添えると、本明細書中これより前に、3-インドリル基および関連する水素原子(「くさび状」結合で付加されている)は、互いにcis位にあるということが述べられたことを考えると、式IAおよびIBの以下の化合物は、本発明の化合物の範囲内に包含される:
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、整数は、本明細書中これより前に定義された通りであるが(およびR5aは、好ましくは水素であり、よって省略)、「くさび状」結合(3-インドリル基および関連する水素原子に付加している)は、太字の「R」または「S」で表されている、絶対配置の結合を表す)。すなわち、これは、5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子が両方ともS配置である式IAの化合物、またはこれらの部分(5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子)が両方ともR配置である式IBの化合物であってよい。さらに、本発明の化合物は、これらの関連する、式IAおよびIBの化合物(2つのくさび状結合が、両方ともR配置であるか、または両方ともS配置である)の混合物(例えばラセミ混合物など)、すなわち、cisジアステレオ異性体の2つの異なるエナンチオマーの混合物であってよい。例えば、不斉収率(ee)が50:50を超える、例えば80:20を超える、例えば90:10を超えるような、本発明の化合物の単一のエナンチオマーが得られることが好ましい(このような状況において、eeは、99%を超える、またはおよそ99%であることが最も好ましいが、これは合成に使用する可能性のある出発物質の光学純度が条件となり得る)。最も好ましくは、2つの関連するキラル中心での絶対立体化学がS配置である本発明の化合物の単一のエナンチオマーが望ましい(上記化合物IAを参照)。
【0033】
本発明の化合物は、5位の3-インドリル基および9a位の関連する水素原子が、相対的にcis-である化合物であると本明細書中に述べられている。これは、cisジアステレオ異性体が、所望しないtransジアステレオ異性体と比較して少なくとも80:20の比率で存在することを意味する。cisジアステレオ異性体は、少なくとも90:10の比率、例えば少なくともまたはおよそ95:5、最も好ましくは少なくともまたはおよそ99:1(例えば、本発明の化合物中に存在するtransジアステレオ異性体は、基本的にはゼロ、またはごく少量である)で存在することが好ましい。
【0034】
薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。このような塩は、従来の手段、例えば、式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態と、1つまたは複数の当量の適切な酸または塩基とを、場合によっては溶媒中で、または塩不溶性の媒体中で反応させ、続いて前記溶媒、または前記媒体を、標準的技法(例えば真空中で、凍結乾燥により、または濾過により)を用いて除去することによって、形成することができる。塩はまた、本発明の化合物の対イオンと、別の対イオンとを、例えば適切なイオン交換樹脂を用いて、塩の形態で交換することによって調製することもできる。念のため書き添えると、溶媒和物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
本発明の化合物は、二重結合を含有してもよく、よってそれぞれ個々の二重結合に関して、E(逆に(entgegen))およびZ(一緒に(zusammen))幾何異性体として存在することもできる。このような異性体およびその混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
本発明の化合物はまた、互変異性を示すこともできる。すべての互変異性体の形態およびその混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
本発明の化合物はまた、1つまたは複数の不斉炭素原子を含有してもよく、したがって光学異性および/またはジアステレオ異性を示してもよい。ジアステレオ異性体は、従来の技法、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶を用いて分離することができる。様々な立体異性体は、従来の技法、例えば分別結晶またはHPLCなどの技法を用いて、本化合物のラセミまたは他の混合物を分離することにより単離することができる。もう1つの方法として、所望の光学異性体は、ラセミ化またはエピマー化(すなわち、「キラルプール」法)を起こさないような条件下での適切な光学活性のある出発物質の反応により、または適切な出発物質と、適切なステージにおいてその後取り除くことができる「キラル補助基」との反応により、または例えばホモキラル酸を用いた誘導化(すなわち、動力学的分割を含めた分割)、これに続くクロマトグラフィーなど従来の手段によるジアステレオマー誘導体の分離により、または適切なキラル試薬またはキラル触媒との反応により、これらすべてを当業者に既知の条件下で行うことによって生成することができる。すべての立体異性体およびその混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
他に特定されていない限り、本明細書中に定義されたC1-qアルキル基(qは範囲の上限である)は、直鎖であってよく、または十分な数の炭素原子(すなわち、必要に応じて最小2または3個)が存在する場合、分枝鎖および/または環式であってよい(したがって、C3-q-シクロアルキル基を形成する)。十分な数の炭素原子(すなわち、最小4個)が存在する場合、このような基はまた、一部環式であってよい。このようなアルキル基はまた飽和であってよく、または十分な数の炭素原子(すなわち、最小2個)が存在する場合、不飽和であってよい(例えば、C2-qアルケニルまたはC2-qアルキニル基を形成する)。別段特定されていない限り、C1-2アルキレン基は、本明細書中で定義された通り、-CH2-または-CH2-CH2-、すなわち、直鎖(非分枝アルキレン)を指す。しかし、C1-2アルキレンはまた、不飽和のC1-2アルキレン、すなわち、=C(H)-および-CH=CH-を包含する。
【0039】
「ハロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0040】
念のため書き添えると、「R1〜R15」などの用語が本明細書中で使用される場合、これは、当業者であれば、R1、R2、R3、R4、R5、R5a(ただし、R5aは、存在しないことが好ましい、すなわち、これは水素を表す)、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15(R15も含む)を意味することを理解している。
【0041】
本発明はまた、1つまたは複数の原子が、自然界に通常見出される原子質量または質量数(または自然界に最も豊富に見出されるもの)とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられているという事実以外は、本明細書中で列挙されているものと同一である、本発明の同位体的に標識した化合物を包含する。本明細書中で特定された任意の特定の原子または要素のすべての同位体は、本発明の化合物の範囲内で想定されている。それ故、本発明の化合物はまた、1つまたは複数の水素原子が水素同位体重水素で置き換えられている重水素化化合物も含む。
【0042】
本明細書中に述べられているすべての個々の特徴(例えば好ましい特徴)は、単独で、または本明細書中に述べられている任意の他の特徴と組み合わせて(好ましい特徴を含む)解釈されてもよい(それ故、好ましい特徴は、他の好ましい特徴と関連して解釈されてもよいし、またはこれらから独立して解釈されてもよい)。
【0043】
本発明の対象である本発明の化合物は、安定した化合物が含まれることを当業者であれば理解されよう。すなわち、本発明の化合物は、例えば反応混合物を有用な程度の純度にするまでの単離に十分耐えられる位強いものを含む。
【0044】
言及することができる本発明の化合物としては、任意の2つの隣接するR6からR9までの基が、一緒に連結されていない可能性のあるもの、すなわち、R6〜R9が、独立してH、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すものが挙げられる。
【0045】
言及することができる他の本発明の化合物としては、任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8またはR8とR9)が、一緒に連結することによって、さらなる環を形成し、次いでその環が、好ましくは5または6員の(例えば6員の)炭素環、好ましくは二重結合を含有するもの(例えば1つまたは複数の、好ましくはベンゼン環を形成する、式Iの化合物の必須のインドリル基に縮合したもの)であり、R5aが、水素を表すものが挙げられる。
【0046】
好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
R5およびR5aは、独立して水素を表し、
R6〜R9は、独立して、水素、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、非置換C1-6アルキルまたは非置換-CH2-フェニルを表すか、または
2つの隣接するR6からR9までの基(例えばR8とR9)は、一緒に連結することによって、6員環(例えばベンゼン環)を形成し、
R6〜R9の任意の2つまたは3つ(例えばR6とR8と、例えば場合によってR9)は、水素を表し、その他(例えばR7)は、水素を表すか、またはハロ(例えばクロロ)および-ORbから選択される置換基を表し、または、任意の2つの隣接する置換基(例えばR8およびR9)は、一緒に連結することによって、さらなる6員環(例えばベンゼン環)を形成し、
R12は、水素、C1-4(例えばC1-2)アルキル(例えばメチル、このアルキル基は、好ましくは非置換である)または-CH2-フェニルを表す。
【0047】
言及することができる好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
Raは、Hまたは非置換C1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、非置換C1-6アルキル、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニルを表すか、または、R1およびR2は、一緒になってC1-2アルキレンリンカー基を表してもよく、
R3〜R10は、独立して、-N(Rc)Rdを表すか、または好ましくはH、ハロ、-ORb、非置換C1-6アルキルもしくは非置換-CH2-フェニル(より好ましくは、R3〜R10のうちの少なくとも5つ(例えば少なくとも6つ)は、水素を表す、すなわち、R3〜R10のうちの2つのみ、または好ましくは1つのみが、水素以外の置換基を表す)を表し、
Rbは、非置換-C(O)C1-6アルキル、または好ましくは、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
RcおよびRdは、独立して、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
R11およびR12は、独立して、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニル、または好ましくは、H、非置換C1-6アルキルもしくは非置換フェニルを表し、
R13およびR14は、独立して、非置換-CH2-フェニル、または好ましくはHもしくは非置換C1-6アルキルを表し、
フェニル部分上の好ましい置換基は、ハロ(例えばフルオロおよびクロロ)およびメチルを含む。
【0048】
言及することができるより好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
Raは、水素を表し、
R1およびR2は、独立して、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表すか、またはR1およびR2は、一緒になって、-CH2-、-CH2CH2-または-C(H)=(XおよびYを一緒に連結している)を表し、XおよびYは両方とも-O-を表し、XおよびYのうちのいずれか一方は、-O-を表し、他方は、-N(Ra)-または-N=(この例では、R1およびR2は、好ましくは、-CH2-または-C(H)=を表す)を表すか、またはXおよびYのうちのいずれか一方は、-N(Ra)-を表し、他方は、-O-または-N=(この例では、R1およびR2は好ましくは、-CH2-または-C(H)=を表す)を表し、
R3〜R10は、独立して、水素または-0Rb(例えば、R3〜R10のうちのいずれか1つ、例えばR5が-0Rbまたは水素を表し、その他が水素を表してもよい)を表し、
Rbは、水素を表し、
R13およびR14は、独立して、水素を表し、
R11は、C1-4(例えばC1-3)アルキル(例えばメチル、エチルまたはn-プロピル)または非置換であるフェニルを表し、
R12は、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表し、
5位の必須の3-インドリル部分は、S配置であり、
9a位の水素原子は、S配置である。
【0049】
X、Y、R1およびR2(後者の2つが、XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基を表す場合)が表し得る好ましい環として、以下が挙げられる:
【0050】
【化6】
【0051】
例えば、1,3-ジオキソリル基、1,4-ジオキシニル基(好ましくは2,3-ジヒドロ-[1,4]-ジオキシニル基)、オキサゾリル基(例えばオキサゾリルまたは2,3-ジヒドロ-オキサゾリル)またはイミダゾリル基(表されている2つのイミダゾリル基は、互変異性により平衡状態で存在し得ることは、当業者であれば理解されよう)。R1およびR2が一緒に連結されていない場合、このような基は、独立して、水素またはC1-3アルキル(例えばメチル)を表し、例えば、-X-R1および-Y-R2は、独立して、-OHまたは-OCH3(例えば、-X-R1および-Y-R2は、両方とも-OHを表すか、または両方とも-OCH3を表す)を表す。
【0052】
言及することができるさらなる好ましい本発明の化合物として、以下が挙げられる:
XおよびYは、独立して、-0-を表し、
R1およびR2は、一緒になって、XおよびYを連結して1,3-ジオキソリル部分を形成する-CH2-リンカー基、すなわち、
【0053】
【化7】
【0054】
を表し、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R12、R13およびR14は、独立して、水素を表し、
R11は、C1-3アルキル(例えばメチル)を表し、
必須の3-インドリル部分は、S配置であり、
9a位の水素原子は、S配置である。
【0055】
本発明の化合物は、当業者には周知の技法、例えば本明細書中これより以下に記載されている技法に従い生成することができる。
【0056】
本発明のさらなる態様に従い、式Iの化合物を調製するための方法が提供され、この方法は、以下を含む:
(i)R1およびR2が一緒に連結されている式Iの化合物に対しては、R1およびR2が両方とも水素(または保護されたその誘導体)を表す式Iの化合物と、式IIの化合物
L1-R1/2-L2 II
(式中、L1およびL2は、独立して、適切な脱離基、例えばスルホネート基(例えば-OS(O)2CF3、-OS(O)2CH3、-OS(O)2PhMeまたはノナフラート)、クロロ、ブロモ、または、好ましくは、ヨードなどを表し、R1/2は、C1-2アルキレン(本明細書中でこれより前にR1およびR2の連結に関して定義された通りである)を表す)との反応を、標準的反応条件下、例えば適切な塩基、例えばNaH、NaOH、Na2CO3、K2CO3、K3PO4、Cs2CO3、アルコキシド塩基(例えばf-BuONaまたはt-BuOKなど)またはアミン塩基(例えばEt3N、ピリジン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなど)などの存在下、または塩基の混合物の存在下、および適切な溶媒、例えばトルエン、ジクロロメタン、アセトニトリルまたは極性の非プロトン性溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミド)、またはこれらの混合物などの存在下で行う。好ましい塩基として、Cs2CO3が挙げられ、好ましい溶媒としてジメチルホルムアミドが挙げられる。このような反応は、室温で行うことができるが、好ましくは高温で行う(例えば10O℃より上、例えば約150℃で)、
(ii)式Iの化合物または保護されたその誘導体はまた、式IIIの化合物(またはその単一のエナンチオマー、例えば-NH2基を保持する結合が特定の配置であるキラルアミンなど)
【0057】
【化8】
【0058】
(式中、L3は、適切な脱離基、例えば本明細書中で前にL1およびL2について定義されたものなど(例えばヨード、ブロモまたはクロロ)を表すが、好ましくは-ORa(式中、Raは、好ましくはC1-6アルキル、例えばメチルを表す)を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R11、R13、R14、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)と、式IVの化合物または保護されたその誘導体
【0059】
【化9】
【0060】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10およびR12は、本明細書中で前に定義された通りである)との反応を、縮合および環化の反応条件下、例えば酢酸および酢酸ナトリウム(ただし、異なる溶媒および/または塩基を使用してもよい)の存在下で行うことにより調製することもでき、この反応で、本明細書中でこれより以下に定義される式Vの中間体を生成することができる。その後(例えば、式Vの中間体化合物の酸付加塩、例えばAcOH塩が形成された場合)、反応混合物は、中和することができ(例えばNaHCO3(水性、飽和)の添加により)、その結果、例えば形成され得る式Vの任意の中間体化合物の分子内環化反応などにより、式Iの化合物を形成することもできる。式IIIの化合物の立体化学は、このようにして形成された式Iの化合物の立体化学に影響を及ぼし得ることを当業者であれば理解されよう。例えば式IIIの化合物が、特定の配置のキラル中心を含有する場合、出発物質の立体特異性は、このようにして形成された生成物の立体化学(例えば式Iの)を支配することができる。例えば、以下のスキームにおいて、式IIIAで表された絶対立体化学を有する式IIIの化合物は、以下のスキームにおいて式IAで表された絶対立体化学を有する式Iの化合物を生成し得る。
【0061】
【化10】
【0062】
同様に、式IIIの化合物のラセミ形態から開始することは、式Iの化合物のジアステレオ異性体および/またはエナンチオマーのいずれかの調製を可能にする(例えばHPLCなどのクロマトグラフィーによるジアステレオ異性体の分離により、さらに、例えば分割などによるエナンチオマーの分離により)ことを当業者であれば理解されよう。
(iii)式Vの化合物またはその塩(例えば、酸付加塩、例えばAcOH塩など)、またはその単一のエナンチオマー(単一のエナンチオマーおよび単一のcis-ジアステレオ異性体)
【0063】
【化11】
【0064】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)の分子内環化は、標準的な条件で実施することができ、例えば式Vの化合物の酸付加塩が使用される場合(例えば化合物がその場で形成される場合)、中和を最初に行うことができる(例えば、上のステップ(ii)に関して記載されている条件下などで)。この分子内環化(すなわち、カルボニル基での求核置換)は、自然に起こり得るか、または適切な塩基の添加によって促進させることもできる、または
(iv)式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は、水素以外の置換基を表す(例えば両方が水素以外の置換基を表す))は、対応する式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は水素を表す)から、式VAの化合物(または2つの異なるその化合物)
R11/12-L4 VA
(式中、R11/12は、R11またはR12(所望する結合の位置に応じて)を表す、ただし、水素を表さないものとする)を用いて、塩基の存在下で(例えば、上のステップ(i)の工程に関して記載されたものなど、例えばNaH)および適切な溶媒(例えば、上のステップ(i)の工程に関して記載されたものなど、例えばジメチルホルムアミドなど極性の非プロトン性溶媒)の存在下で、当業者に既知の標準的条件下で調製することができる。これら反応条件は、R11/12が、C1-6アルキル、-C(O)-C1-6アルキルまたは-CH2フェニル(式中、アルキルおよびフェニル部分は、本明細書中で前に定義されたように場合によって置換されている)を表す化合物の調製に対して有効であることを当業者であれば理解されよう。R11/12が、場合によって置換されているフェニルを表す化合物の調製のためには、異なる条件、例えば、適切な触媒(例えばPd(OAc)2など)の存在下、場合による添加剤、塩基および適切な溶媒の存在下でのカップリング反応条件などを使用することが必要となり得る。
【0065】
式IIIの化合物は、式VIの化合物または保護されたその誘導体(例えば、アミノ保護された誘導体、例えば-NHBoc保護された誘導体、またはそのエステル)、またはその単一のエナンチオマー
【0066】
【化12】
【0067】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、XおよびYは、本明細書中で前に定義された通りである)と、式VIIの化合物
H(R11)N-C(R13)(R14)-C(O)L3 VII
(式中、R11、R13、R14およびL3は、本明細書中で前に定義された通りである(さらに、L3は、好ましくは上で定義された-ORaである))との反応を、標準的なアミドカップリング反応条件下、例えば適切なカップリング試薬(例えば1,1’-カルボニルジイミダゾール、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(またはその塩酸塩)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジルまたは最も好ましくはビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスホン酸クロリド(すなわち、Bop-Cl)など)の存在下で、場合によっては適切な塩基(例えば水素化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミン、水酸化ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドおよび/またはリチウムジイソプロピルアミド(またはその変異体)および適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トリフルオロメチルベンゼン、ジオキサンまたはトリエチルアミン)の存在下で行うことにより調製することができる。好ましいカップリング剤として、Bop-Clが挙げられ、好ましい塩基として、トリエチルアミンおよび/または重炭酸ナトリウム(例えばその混合物)が挙げられ、好ましい溶媒系は、ジクロロメタンである(この例において、反応混合物は、ある期間に渡り室温またはそれ位の温度で反応させることができる)。もう1つの方法として、式Vlの化合物のカルボン酸基を標準的条件下で対応する塩化アシルに変換させてもよく(例えばSOCl2または塩化オキサリルの存在下)、次いで塩化アシルを、例えば上述された条件と同様の条件下で式VIIの化合物と反応させる。
【0068】
本明細書中に述べられている化合物(例えば式II、IV、VA、VIおよびVIIの化合物、ならびに特定の他の式IIIの化合物)は、市販のものであるか、文献において既知のものであるか、または本明細書中に記載されている方法と類似の方法、または従来の合成手順のいずれかにより、標準的技法に従って、適切な試薬および反応条件を用いて入手可能な出発物質から得ることもできる。この点において、当業者は、中でも「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M. Trost and I. Fleming、Pergamon Press、1991を参照することができる。
【0069】
本発明の最終の化合物または関連する中間体における置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、当業者に周知の方法により、上に記載の工程の後またはその間に、1回または複数回改質してもよい。このような方法の例として、置換、還元、酸化、アルキル化、アシル化、加水分解、エステル化、エーテル化、ハロゲン化またはニトロ化などが挙げられる。このような反応は、対称的または非対称的な本発明の最終化合物または中間体の形成をもたらすことができる。前駆体基は、反応順序の間の任意の時点において、異なるこのような基、または式Iで定義された基へと変えることができる。この点に関して、当業者はまた、「Comprehensive Organic Functional Group Transformations」by A.R. Katritzky、O.Meth-Cohn and C. W. Rees、Pergamon Press、1995を参照することができる。
【0070】
本発明の化合物は、従来の技法(例えば再結晶化)を用いてこれらの反応混合物から単離することができる。
【0071】
上に記載の、および本明細書中これより以下に記載の工程において、中間体化合物の官能基は保護基によって保護することが必要となり得ることを当業者であれば理解されよう。
【0072】
例えば、アミノ基は、塩基(例えばNaOHまたはアミン塩基、例えばトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジンなど)の存在下での、BoC2Oおよび適切な溶媒(例えば水または極性の非プロトン性溶媒、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物など)との反応により、Boc基で保護することができる。標準的脱保護の反応条件として、酸の存在下(例えば極性の非プロトン性溶媒などの溶媒中のHClの存在下)での脱保護が挙げられる。
【0073】
官能基の保護および脱保護は、上記スキームにおける反応の前後に行うことができる。
【0074】
保護基は、当業者に周知であり、本明細書中これより以下に記載されている技法に従い取り除くことができる。例えば、本明細書中に記載されている保護された化合物/中間体は、標準的脱保護技法を用いて保護されていない化合物に、化学的に変換することができる。「保護基」には、保護することが所望されている実際の基の前駆体である適切な代替の基もまた含まれる。例えば、「標準的な」アミノ保護基の代わりに、ニトロまたはアジド基を使用することによって、アミノ保護基としての機能を効果的に果たすことができ、例えば本明細書中に記載されている標準的な還元条件下で、この基を後にアミノ基へと変換することもできる(保護基として作用するという目的を果たしたので)。言及することができる保護基として、ラクトン保護基(またはその誘導体)を挙げることができ、このラクトン保護基は、ヒドロキシ基とα-カルボキシ基の両方を保護する役目(すなわち、このような環式部分が、2つの官能基の間に形成されるように)を果たすことができる。
【0075】
関係する化学反応の種類により、保護基の必要性および種類ならびに合成を遂行するための順序が示されることになる。
【0076】
保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、3rdedition、T. W. Greene & P.G.M. Wutz、Wiley-Interscience (1999)において、完全に記載されている。
【0077】
本発明のよりさらなる実施形態において、合成形態の本発明の化合物(すなわち、式Iの化合物(またはその塩))が提供され、この化合物は、例えば本明細書中に記載されている工程に従い合成により生成されるという事実で特徴づけられる。このような化合物はまた、本明細書中で「本発明の化合物」と呼ぶ。
【0078】
医学的および薬学的使用
本発明の化合物は、医薬品として適応される。本発明のさらなる態様に従い、医薬品としての使用のための、本明細書中で前に提供された本発明の化合物(ただし、いかなる条件なしで、必要に応じて)が提供される。医薬品としての使用のための、合成形態の本発明の化合物(ただし、いかなる条件なしで、必要に応じて)もまた提供される。
【0079】
念のため書き添えると、本発明の化合物は、そのような薬理学的な活性を所有し得るが、このような活性を所有し得ないが、非経口的にまたは経口的に投与され、その後体内で代謝されることによって、本発明の化合物を形成することができるような、本発明の化合物の、特定の薬学的に許容される(例えば「保護された」)誘導体が存在し得る、または調製することができる。したがって、このような化合物(一部の薬理学的な活性を所有し得るが、ただし、このような活性は、これらが代謝されて形成する「活性のある」化合物の活性よりかなり低い)は、本発明の化合物の「プロドラッグ」として記載することができる。
【0080】
「本発明の化合物のプロドラッグ」とは実験的に検出可能な量で、経口または非経口での投与後、所定の時間(例えば約1時間)内に、本発明の化合物を形成する化合物を含む。本発明の化合物のすべてのプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
さらに、本発明のある化合物は、そのような薬理学的活性を所有していないか、または最小の薬理学的活性を所有し得るが、非経口的にまたは経口的に投与し、その後体内で代謝されて、そのような薬理学的な活性を所有する本発明の化合物を形成し得る。このような化合物(一部の薬理学的活性を所有し得るが、ただし、このような活性は、これらが代謝されて形成する「活性のある」本発明の化合物の活性よりかなり低いような化合物も含む)もまた「プロドラッグ」として記載することができる。
【0082】
したがって、本発明の化合物は、薬理学的な活性を所有し、および/または経口または非経口投与後に体内で代謝されて、薬理学的活性を所有する化合物を形成するので有用である。
【0083】
本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件なし)は、がんの治療に有用となり得る。「がん」とは、無制限な細胞増殖(例えば無制限な分裂)、侵入(例えば隣接する組織への直接の増殖)または転移から生じる任意の疾患を意味する。「無制限な増殖」とは、がん細胞の数および/またはサイズの増加(本明細書中では「増殖」とも呼ぶ)を含む。「転移」とは、対象の体内の原発性腫瘍部位から、対象の体内の1つまたは複数の他の領域(ここで次に細胞は二次性腫瘍を形成することができる)へのがん細胞の移動または遊走(例えば侵襲性)を意味する。したがって、本発明の一実施形態では、がんに罹患している対象における二次性腫瘍の形成を、全部または部分的に阻害するための化合物および方法を提供する。
【0084】
有利には、本発明の化合物は、がん細胞の増殖および/または転移を選択的に阻害することが可能であってよい。
【0085】
「選択的に」とは、本発明の化合物は、この化合物が非がん細胞の機能(例えば増殖)を調節するよりも大きい度合で、がん細胞の増殖および/または転移を阻害することができることを意味する。好ましくは、本発明の化合物は、がん細胞のみの増殖および/または転移を阻害する。
【0086】
本発明の化合物は、すべての腫瘍(非固形および固形腫瘍)を含めた、あらゆるがんの種類の治療における使用に適切となり得る。がんの種類として(ただし、これらに限定されない)良性腫瘍(例えば血管腫、肝細胞性腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、肝結節性再生性過形成、トラコーマおよび化膿性肉芽腫など)および悪性腫瘍(例えば白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺がん、乳がん、皮膚がん、骨のがん、肝がん、肺がん、脳のがん、喉頭、膀胱、胆嚢、卵巣、子宮頸部、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、食道、副腎、神経性組織、頭部および頸部、大腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞癌、潰瘍性と乳頭状の両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部上皮異形成およびインサイチュ癌腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎臓細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性神経膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫)を挙げることができる。言及することができるその他ものとして、精巣、泌尿生殖器、神経膠芽細胞腫、神経芽腫、ケラトアカントーマ、類表皮癌、大細胞癌、卵胞癌、未分化癌、乳頭癌、セミノーマ、ミエロイド障害、リンパ様障害、ヘアリーセル、口腔ならびに咽頭(口腔内)、唇、舌、口、小腸、大腸-直腸、大腸、直腸、脳ならびに中枢神経系などのがん、ホジキン病ならびに白血病;リンパ系の造血器腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T-細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫ならびにバーキットリンパ腫を含む);骨髄細胞系列の造血器腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を含む);間葉由来の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星状腫、神経芽腫、グリア細胞腫およびシュワン細胞腫を含む);ならびに他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、角膜黄色腫、甲状腺小胞がんおよびカポジ肉腫を含む)を挙げることができる。
【0087】
特に、本発明の化合物は、耐ホルモン性および侵攻性のヒト前立腺腫瘍(例えば、異種移植片マウスモデルにおいて示し得るようなもの)の増殖および侵入に対して強力な抑制活性を所有し得る。したがって、本発明の化合物は、侵攻性のがん、例えば前立腺がんなどの治療に有用となり得ることが特に好ましい。
【0088】
本発明の化合物は、PC-3がん細胞株(例えばATCCから得たもの)を用いたアッセイで試験した場合、細胞増殖の速度を減少させることができる。したがって化合物は、このタイプの腫瘍および一般的にはがんの生存能力に対する有利な抑制効果を所有し得る。PC-3がん細胞株は、ホルモンに依存しない、侵襲性の前立腺がんを代表するいくつかの特性を有する。例えば、PC-3細胞は、機能性アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達が欠乏し、培養中の培地内で急速に増大し、ヌードマウスに移植した場合、大きな、非常に侵攻性のある腫瘍を形成することができる。それ故、本明細書中これより以下に記載されている生物学的試験(例えばPC-3異種移植片マウスモデル)から、インビボで前立腺癌細胞のゆっくりとした播殖を模倣することによって、試験した化合物の有用性について、信頼できる断定が得られる。
【0089】
さらに、広く使用されている、Avastin(登録商標)またはDocetaxelなどのがん薬物でさえも、単独または組み合わせた場合、PC-3細胞に対する抑制効果は低かったことが報告されている(Petrylak DP: Future directions in the treatment of androgen-independent prostate cancer. Urology 65: 8〜12頁、200538.2007;およびHung H: Bevacizumab plus 5-fluorouracil induce growth suppression in the CWR-22 and CWR-22R prostate cancer xenografts. Molecular cancer therapeutics 6: 2149〜2157頁、2007)。
【0090】
本発明の化合物は、腫瘍増殖、血管形成および転移に伴う複数の細胞経路をターゲットにすることができる。本発明の化合物はまた、他のがん経路、例えば細胞周期制御およびアポトーシスに影響を与え得る。
【0091】
したがって、本発明の化合物は、VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤であってよく、例えば本発明の化合物は、これらだけに限らないがVEGFおよび/またはVEGF受容体2(本明細書中に記載されている試験に示し得るようなもの)を含めたVEGF受容体の発現を阻害することができる。これは選択的に起こり得るか、または本発明の化合物ががんを治療するためにこれに基づき作用する複数の機序のうちの1つであってよい。VEGFシグナル伝達経路は、腫瘍脈管化および侵入に連結していることが知られており、それ故本発明の化合物は、血管形成を阻害することによる抗がん作用を所有し得る(したがって、抗血管形成薬剤として分類され得る)。したがって本発明の別の実施形態において、本発明の化合物は、血管形成(および/またはVEGF)の阻害が、所望され、および/または必要とされる、疾患の治療に有用となり得る。
【0092】
「阻害」という用語は任意の測定可能な低下および/または予防を指すこともあり、血管形成という文脈では、血管形成(例えば、これらだけに限らないがVEGFおよびVEGF受容体2を含めたVEGF受容体の発現)の低下および/または予防を指す。抑制活性は、本発明の化合物と、VEGF受容体(a)、例えばVEGFおよび/またはVEGF受容体2などを含有する試料における血管形成阻害を、本発明の化合物の非存在下での当量の試料と比較することによって測定することができる。測定可能な変化は、客観的(例えば、いくつかの試験またはマーカー、例えばインビトロのまたはインビボのアッセイまたは試験、例えば本明細書でこれより以下に記載されているものなど、または当業者に既知の別の適切なアッセイまたは試験で測定可能)であっても、または主観的(例えば対象が効果を指摘する、または感じる)であってもよい。
【0093】
本発明の化合物は、上記条件の治療的処置および/または予防的処置の両方に適応させることができる。
【0094】
本発明のさらなる態様に従い、血管形成(および/またはVEGF、例えばVEGFおよび/またはVEGF受容体2の発現の阻害が所望されるおよび/または必要とされるもの)に伴う、またはこれに冒されている可能性のある疾患(例えばがん、または本明細書中に述べられたような別の疾患)を治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を、このような状態に罹っているか、または罹りやすい患者に投与することを含む方法が提供される。
【0095】
「患者」には、哺乳動物(ヒトを含む)患者が含まれる。それ故、上で考察された治療の方法は、ヒトまたは動物の体の治療を含み得る。
【0096】
「有効量」という用語は、治療した患者に治療上の効果を与える化合物の量を指す。効果は、客観的(例えば一部の試験またはマーカーで測定可能)であっても、または主観的(例えば対象が効果を指摘する、または感じる)であってもよい。
【0097】
本発明の化合物は、薬学的に許容される剤形で、経口、静脈内、皮下、口腔、直腸、経皮、経鼻、気管、気管支、舌下、他のいずれかの非経口の経路により投与するか、または吸入を介して投与することができる。
【0098】
本発明の化合物は、単独で投与することができるが、既知の医薬製剤として投与するのが好ましく、経口投与には錠剤、カプセル剤またはエリキシル剤など、直腸投与には坐剤など、非経口または筋肉内投与には滅菌溶液または懸濁液などがある。医薬製剤のタイプは、意図する投与経路および標準的薬務に当然払うべき注意を払って選択することができる。このような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってよく、使用条件下で悪影響をもたらす副作用または毒性を有し得ない。
【0099】
このような製剤は、標準的な、および/または一般に認められた薬務に従い調製することができる。さもなければ、適切な製剤の調製は、所定の技法を用いて、および/または標準的なおよび/または一般に認められた薬務に従い、当業者により、非独創的に遂行することができる。
【0100】
したがって、本発明のさらなる態様に従い、本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を含む医薬製剤を、薬学的に許容される助剤、賦形剤および/または担体と混合して提供する。
【0101】
例えば本発明の化合物(すなわち、活性成分)の作用強度および物理的特徴に応じて、言及することのできる医薬製剤として、活性成分が、少なくとも1重量%(または少なくとも10重量%、少なくとも30重量%または少なくとも50重量%)存在するものを挙げることができる。すなわち、活性成分と、医薬組成物の他の成分(すなわち、助剤、賦形剤および担体の添加)との重量比は、少なくとも1:99(または少なくとも10:90、少なくとも30:70または少なくとも50:50)である。
【0102】
製剤中の本発明の化合物の量は、状態の重症度および治療すべき患者、ならびに使用する化合物に依存することになるが、当業者によって非独創的に決定することができる。
【0103】
本発明は、本明細書中で前に定義された医薬製剤を調製するための方法であって、本明細書中で前に定義された本発明の化合物、または薬学的に許容されるそのエステル、アミド、溶媒和物または塩を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にすることを含む方法をさらに提供する。
【0104】
本発明の化合物はまた、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用となり得る他の治療上の薬剤(例えば本明細書中に記載されている別のVEGF阻害剤)と組み合わせることができる。本発明の化合物はまた、他の治療法と組み合わせることができる。
【0105】
本発明のさらなる態様に従い、
(A)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)と、
(B)がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つまたは複数の治療上の薬剤と
を含む組合せ製品であって、
成分(A)および(B)のそれぞれが、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して配合されている組合せ製品が提供される。
【0106】
このような組合せ製品は、他の治療上の薬剤と併用した本発明の化合物の投与を提供し、したがって、これら製剤のうちの少なくとも1つが本発明の化合物を含み、少なくとも1つが他の治療上の薬剤を含む別個の製剤として提示されるか、または組み合わせた調製物(すなわち、本発明の化合物と他の治療用薬剤とを含む単一の製剤として提示される)か(すなわち、配合される)のいずれかであってよい。
【0107】
したがって、
(1)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)と、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つまたは複数の治療上の薬剤と、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体とを含む医薬製剤、ならびに
(2)成分(a)および(b)を含む成分キットであって
(a)本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤、
(b)がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な1つもしくは複数の治療用薬剤を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤、
成分(a)および(b)がそれぞれ、他方と併用して投与するのに適した形態で提供される成分キットがさらに提供される。
【0108】
本発明は、組合せ製品(本明細書中で前に定義された通りであるが、条件はなし)を調製するための方法であって、本発明の化合物(本明細書中で前に定義された通り)または薬学的に許容されるそのエステル、アミド、溶媒和物もしくは塩を、がんおよび/または増殖性疾患の治療に有用な他の治療用薬剤(または複数の薬剤)、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にすることを含む方法をさらに提供する。
【0109】
「一緒にすること」とは、2つの成分を互いに併用して投与するのに適するようにすることを意味する。
【0110】
したがって、2つの成分を互いに「一緒にする」ことにより、本明細書中で前に定義された成分キットを調製するための方法に関連して、成分キットの2つの成分が、(i)併用療法において互いに併用して使用するためにその後一緒にすることができる別個の製剤(すなわち、互いに独立している)として提供することができるか、または
(ii)併用療法において互いに併用して使用するために別個の成分の「組合せパック」として一緒に包装し、提示することができることも含まれる。
【0111】
治療すべき障害および患者、ならびに投与の経路によって、本発明の化合物は、それを必要とする患者に、異なる治療有効量で投与してもよい。しかし、本発明の文脈において、哺乳動物、特にヒトに投与する用量は、妥当な期間に渡り、哺乳動物において治療上の反応を起こすために十分であるべきである。正確な用量および組成物ならびに最も適切なデリバリーレジメンの選択は、中でも製剤の薬理学的な特性、治療がなされている状態の性質および重症度、ならびにレシピエントの健康状態および知力、ならびに特定の化合物の効力、治療される患者の年齢、状態、体重、性別および反応、ならびに疾患のステージ/重症度にも影響されることは、当業者であれば理解されよう。
【0112】
投与は、継続的であっても、または断続的であってよい(例えば大量瞬時投与)。用量はまた、投与のタイミングおよび頻度により決定することができる。経口または非経口投与の場合、一日あたりの本発明の化合物の用量は、約0.01mg〜約10g(例えば1000mg)まで変動し得る。例えば、用量範囲は、1mg/kg〜1000mg/kg(例えば10mg/kg〜500mg/kgの間、好ましくは約20mg/kg〜200mg/kgの間)であってよい、例えば、本明細書中これより以下に記載されているマウスモデルにおいて使用した用量範囲であってよい。
【0113】
いずれにせよ、医師、または他の当業者であれば、実際の用量を定期的に決定することができ、この用量が個々の患者にとって最も適切な量となる。上記の用量は、平均的なケースの代表的なものであり、もちろんこれより高いまたは低い用量範囲が有利であるような個々の例も存在する可能性もあり、これも本発明の範囲内である。
【0114】
本発明の化合物は、腫瘍増殖、アポトーシス、血管形成および転移に関与している複数の経路をターゲットとするという優位性があり得る。本発明の化合物は、効果的な血管形成阻害剤(および/またはVEGF阻害剤)であってよい、すなわち、これらは、血管形成を阻害し得る(および/またはVEGF、例えばこれらは、VEGFおよびVEGF受容体2の発現を阻害し得る)(例えば、選択的に、または作用の一様式として)。
【0115】
本発明の化合物はまた、上または他で述べられている適応症における使用であるかどうかに関わらず、従来技術において既知の化合物に比べて、より効果的であり、毒性が少なく、作用がより長く、より強力であり、わずかな副作用しか起こさず、より容易に吸収され、および/またはより良い薬物動態学的プロファイルを有する(例えばより高い経口バイオアベイラビリティーおよび/またはより低いクリアランス)、および/または他の有用な薬理学的、物理的または化学的特性を有することができるという利点を持ち得る。
【0116】
例えば、本発明の化合物は、患者が満足して容認することができ、例えば他の治療用薬剤と比較して、副作用(例えば体重減少または他の有毒な副作用)をほとんどまたは全く示さない。これは、さらに高濃度/用量での本発明の化合物の場合にも当てはめることができる。本発明の化合物はまた、相対的または比較的低い用量で、優れた作用強度(例えば他の治療用薬剤よりもより良い作用強度)を示し得る。それ故本発明の化合物は、大きい治療窓を有することができる。
【0117】
本発明の化合物は、他の既知の化学療法剤(例えばAvastin(登録商標)、Docetaxelおよび/またはEtoposide)よりも優れた利点を有することができ、これら利点とは、より良い作用強度およびより良い安全性プロファイル(すなわち、より少ない副作用)などが挙げられる。このような相対的な利点は、生物学的試験、例えば本明細書中これより以下に記載されているものなどにおいて示すことができる。
【0118】
本発明の特定の態様を具体化する好ましい、非限定的な実施例が、以下の図を参照して、次に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例1の化合物(本明細書中「物質X」とも呼ぶ)の様々な用量での治療に対する健常なマウスの耐性A.健常なマウスを、二日に一度13日間、100mg/kgの物質Xで治療した。各マウスの体重を、第1日目から第13日目まで定期的に測定した。値は、平均値±標準偏差(SD)である。B.健常なマウスを、二日に一度13日間、200mg/kgの物質Xで治療した。各マウスの体重を、二日に一度測定した。値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図2】大きいサイズの腫瘍のある異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、500〜600mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、静脈内からの40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で20日間治療し、腫瘍サイズを定期的に測定した。腫瘍サイズの値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図3】物質Xの経口投与による、異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、300〜350mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で治療した。物質Xを経口的に投与した。
【図4】Etoposideおよび物質Xによる、異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害PC-3移植されたマウスの腫瘍が、200〜300mm3のサイズに増大した時点で、このマウスを、20mg/kgのEtoposide、40mg/kgの物質Xまたは溶媒(対照)で、IVで二日に一度、14日間治療した。腫瘍サイズを定期的に測定した。腫瘍サイズの値は、平均値±標準偏差(SD)である。
【図5】VEGFおよびVEGF受容体2の発現に対する物質Xの効果VEGFおよびVEGF受容体2の免疫組織化学的分析を、対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの腫瘍において実施した。代表的な画像を示す。腫瘍切片(対照)または(物質X)をヒトVEGFおよびVEGF受容体2に対する抗体で染色した。
【図6】対照および物質Xで治療したマウスからの全腫瘍の切片の組織構造および脈管化に対する物質Xの効果の評価A.抗VEGF受容体2抗体で染色した1対の腫瘍の外観および組織構造の比較B.対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの腫瘍の、CD31の発現についての免疫組織化学的分析。腫瘍切片(対照)または(物質X)を、CD31に対する抗体で染色した。(B)腫瘍内の中央または端の領域での高い血管密度の領域を検査した。顕微鏡視野ごとのCD31陽性ピクセル数を記録した。腫瘍1つにつき少なくとも2つの切片および1切片につき3つの視野を判定した。統計T-試験を実施し、2つを並べた。0.05未満のP値は、統計学的に有意と考えられ、0.01未満のP値には、2つのアステリスクを標識した。
【図7】Lund UniversityおよびEnamineにより合成された化合物XのPC-3細胞増殖に対する効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果に対する用量反応曲線。
【図8】PC-3細胞増殖に対する実施例2(類似化合物1)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図9】PC-3細胞増殖に対する実施例3(類似化合物2)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図10】PC-3細胞増殖に対する実施例4(類似化合物3)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図11】PC-3細胞増殖に対する実施例5(類似化合物4)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図12】PC-3細胞増殖に対する実施例6(類似化合物5)の効果。48時間後の生存細胞の数。A.値は、平均値±標準偏差である。B.増殖抑制効果についての用量反応曲線。
【図13】類似化合物1および3の効果と、EtoposideおよびDocetaxelを並べて比較したもの。48時間後の生存細胞の数。値は、平均値±標準偏差である。
【図14】U937ヒト白血病単球リンパ腫細胞株に対する類似化合物1および3の抗腫瘍効果。
【図15】IC50類似化合物濃度での治療後の時間点での細胞増殖分析:化合物X30μM、類似化合物1 36μM、類似化合物2 60μM、類似化合物3 32μM、類似化合物4 30μM。
【図16】BrdUアッセイにおいて試験した様々な化合物の結果
【図17】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図18】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図19】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図20】アポトーシスアッセイにおける特定の実施例の結果
【図21】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図22】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図23】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【図24】細胞周期分析における特定の実施例の結果
【発明を実施するための形態】
【0120】
(実施例)
実施例/生物試験
材料は業務用供給会社から購入し、別段明示されていない限りさらなる精製なしに使用した。すべての水分および空気受容性の反応は、オーブン乾燥したガラス製品を用いて、乾燥窒素の雰囲気下で行った。高分解能質量スペクトル(ESI)を、Micromass Q-TOFマイクロ分光器上に記録した。Bruker Avance II上で、400MHz(1H)でNMRスペクトルを記録した。化学シフトは、重水素化溶媒の残留ピークに相対的である。すべてのフラッシュクロマトグラフィーを、60Å35〜70μm Matrexシリカゲル上で実施した。シリカゲル60 F254(Merck)プレート上でTLC分析を行い、a)UV光およびb)バニリン/硫酸ならびに加熱で視覚化した。
【0121】
【化13】
【0122】
中間体(12)の合成のための手順。(ステップI)
L-Dopa(11)(1当量)のジオキサン中溶液(これによりL-Dopa(11)の0.6M溶液を生成)に、ジオキサン中に溶解した1M NaOH(1.1当量)、H2O(55当量)およびBoc2O(1.1当量)(これによりBoc2Oの2.8M溶液を生成)を添加した。30、60および120分後に、1M NaOHの添加により、pHを10に調整した。この溶液を室温で撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、1M HClの添加によりpHを約2に調整し、EtOAc×2で抽出した。プールした有機相を、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。この生成物は、さらに精製しなかった。
【0123】
中間体(15)および(16)の合成のための一般的手順。(ステップII)
カルボン酸(12)(1当量)およびアミン(例えば(13)、(14))(1.1当量)のCH2Cl2中懸濁液(これによりカルボン酸(11)の0.03M溶液を生成)に、Et3N(3.5当量)を添加し、生成した溶液を0℃に冷却した。Bop-Cl(1.16当量)、続いてNaHCO3(2.1当量)を添加し、懸濁液を室温で撹拌した。揮発物を蒸発させ、残渣を、EtOAcと1M HClに分離した。有機相を飽和(水性)NaHCO3、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0124】
中間体(17)および(18)の合成のための一般的手順。(ステップIII)
Boc保護した一級アミン(例えば(15)、(16))の撹拌懸濁液に、Et2O中2M HCl(これにより保護されたアミン(例えば(15)、(16))の0.1M懸濁液を生成)を0℃で添加した。懸濁液を0℃で1時間撹拌した。懸濁液を濾別し、氷冷したEt2Oで洗浄し、MeOH中に溶解し、蒸発させた。生成物はさらに精製しなかった。
【0125】
中間体(23)、(24)、(25)および(26)の合成のための一般的手順(ステップIV)
インドール誘導体(例えば(19)、(20)、(21)、(22))(1当量)の乾燥THF中溶液(これによりインドール誘導体(例えば(19)、(20)、(21)、(22))の0.05M溶液を生成)に、Boc2O(1.5当量)を添加し、続いてDMAP(0.3当量)を添加した。この溶液を室温で6時間撹拌した。溶液をH2Oで希釈し、揮発物を蒸発させ、残渣をEtOAc×2で抽出した。プールした有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。生成物はさらに精製しなかった。
【0126】
中間体/物質(9)、(10)、(27)、(28)、(29)および(30)の合成のための一般的手順。(ステップV)
一級アミン(例えば(17)または(18))(1当量)のAcOH中溶液(これにより一級アミンの0.07M溶液(例えば(17)または(18))を生成)に、3当量のNaOAcおよび1当量のアルデヒド(例えば(23)、(24)、(25)、(26))を添加した。この混合物を室温で撹拌した。飽和(水性)NaHCO3の添加によりこの混合物を中和し、CH2Cl2で3回抽出した。プールした有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をSiO2(溶出剤としてEtOAc)上で濾過し/フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc)。
【0127】
物質(1)、(2)、(3)および(4)の合成のための一般的手順。(ステップVI)
テトラヒドロイソキノリン誘導体(例えば(27)、(28)、(29)、(30))(1当量)およびCs2CO3(1.5当量)の、蒸留したばかりのDMF(これによりテトラヒドロイソキノリン誘導体(例えば(27)、(28)、(29)、(30))の0.5M溶液を生成)中混合物に、BrCH2Cl(1.5当量)を添加した。この混合物を150℃で2.5時間加熱した。この混合物を濾過し、EtOAcで希釈し、H2O×2、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤として、EtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0128】
物質(5)の合成のための手順。(ステップVII)
(1)(1当量)の、蒸留したばかりのDMF中溶液(これにより(1)の0.4M溶液を生成)に、NaH(1.2当量)を0℃で添加し、この混合物を0℃で10分間撹拌し、その後、Mel(1.2当量)を添加した。この溶液を室温で撹拌した。H2Oを添加し、この混合物をEtOAc×3で抽出した。プールした有機相をH2O、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤としてEtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0129】
物質(6)の合成の手順。(ステップVIII)
(1)(1当量)の、蒸留したばかりのDMF中溶液(これにより(1)の0.5M溶液を生成)に、NaH(1.2当量)を0℃で添加し、この混合物を0℃で10分間撹拌し、その後、臭化ベンジル(1.2当量)を添加した。この溶液を室温で4時間撹拌した。H2Oを添加し、混合物をEtOAc×3で抽出した。プールした有機相を、H2O、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶出剤として、EtOAc/Pet.エーテル(60〜80))。
【0130】
(実施例1)(本明細書中では「物質X」とも呼ぶ)
(5S,9aS)-5-(1H-インドール-3-イル)-8-メチル-7,8,9a,10-テトラヒドロ-5H-1,3-ジオキサ-5a,8-ジアザ-シクロペンタ[b]アントラセン-6,9-ジオン(代替の名称:(2S,8S)-2-(1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(1))
【0131】
【化14】
【0132】
(a)N-Boc保護されたL-Dopa(2)
5.004g(25.4mmol)L-Dopa(1)のジオキサン40mlおよびH2O(25ml)中溶液に、ジオキサン8ml中に溶解した1M NaOH(28ml(28mmol))およびBOC2O(6.0893g(27.9mmol))を添加した。生成した溶液を室温で30分間撹拌し、この後で、1M NaOHの添加により、pHを10に調整した。1時間後と7.5時間後に、このpHを再び10に調整した。最後のpH調整後、この溶液を一晩撹拌した。揮発物を蒸発させ、生成した水相をpH2に調整し、3×100mlのEtOAcで抽出した。プールした有機相を水150ml、ブライン150mlで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させることによって、7.6g(25.4mmol、100%)のN-Boc保護されたL-Dopa(2)を得た。
【0133】
(b)N-Boc-{[(S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオニル]-メチル-アミノ}-酢酸メチルエステル(3)
5.0341g(16.9mmol)の(2)および2.6002g(18.6mmol)のサルコシンメチルエステル塩酸塩を、CH2Cl2(500ml)中に懸濁した。Et3N(8.3ml(59.5mmol))を添加し、混合物を0℃に冷却した。Bop-Cl(5.0118g(19.7mmol))、続いてNaHCO3(2.9991g(35.7mmol))を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。揮発物を蒸発させ、残渣を、EtOAc(400ml)および1M HCl(水性)(400ml)で分離した。有機相を400mlの飽和(水性)NaHCO3、ブライン(200ml)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(Pet.エーテル:EtOAc、1:4)により1.9425g(5.1mmol、30%)を得た(3)。
【0134】
(c){[(S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオニル]-メチル-アミノ)-酢酸メチルエステル、塩酸(4)
1.514g(3.96mmol)の(3)に、Et2O中の2M HCl(42ml)をO℃で添加した。生成した懸濁液を0℃で1時間撹拌した。懸濁液を濾別し、氷冷Et2Oで洗浄し、最少量のMeOH中に再溶解し、蒸発させた。この物質は、さらに精製しなかった(0.897g(2.8mmol、71%)(4))。
【0135】
(d)N-Boc-インドール-3-カルボキサルデヒド
インドール-3-カルボキサルデヒド(0.8754g(6mmol))を、蒸留したばかりのTHF(170ml)中に取り込み、Boc2O(2.0323g(9.3mmol))を添加し、続いてDMAP(0.2006g(1.6mmol))を添加し、この混合物を室温で4時間撹拌した。H2O(75ml)を添加し、揮発を蒸発させた。残渣をEtOAc(2×75ml)で抽出した。プールした有機相をブライン(75ml)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。これによって、1.4790g(6mmol)のBoc-保護されたインドール-3-カルボキサルデヒドを得た。
【0136】
(e)(6S,11aS)-8,9-ジヒドロキシ-6-(1-Boc-1H-インドール-3-イル)-2-メチル-2,3,11,11a-テトラ-ヒドロ-6H-ピラジノ[1,2-b]イソキノリン-1,4-ジオン(5)
0.897g(2.8mmol)の(4)を、AcOH(56ml)中に溶解し、NaOAc(0.6969g(8.4mmol))およびBoc(0.6923g(2.8mmol))保護されたインドール-3-カルボキサルデヒドを添加した。この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を2つに分け、これら半分のそれぞれを、飽和(水性)NaHCO3(pH8)の添加により中和し、CH2Ch×3 (150ml)で抽出した。プールした有機相を、ブライン(200ml)で洗浄し、Na2S04上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)により0.665g(1.4mmol、50%)の(5)を得た。
【0137】
(f)(5S,9aS)-5-(1H-インドール-3-イル)-8-メチル-7,8,9a,10-テトラヒドロ-5H-1,3-ジオキサ-5a,8-ジアザ-シクロペンタ[b]アントラセン-6,9-ジオン(6)
0.665g(1.4mmol)の(5)および0.6853g(2.1mmol)のCs2CO3を、蒸留したばかりのDMF(3.3ml)中に懸濁した。BrCH2Cl(0.140ml(2.1mmol))を添加し、混合物を150℃で1.5時間加熱した。熱源を取り除き、混合物を室温まで冷却させておいた。その後、混合物を濾過し、EtOAc(100ml)およびH2O(100ml)で分離させた。水相をEtOAc(2×100ml)で抽出した。プールした有機相を150mlのブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(Pet.エーテル:EtOAc、1:4)により0.167g(0.43mmol、31%)の(6)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.07 (bs, 1H), 7.54 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.36 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.09 (t, J=7.4 Hz, 1H), 6.98 (t, 7.5 Hz, 1H), 6.94 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 5.99 (s, 1H), 5.98 (s, 1H), 4.21 (d, J=17.5 Hz, 1H), 4.05 (dd, J1=11.9 Hz J2=4.4 Hz, 1H), 3.99 (d, J=17.64 Hz, 1H), 3.10 (m, 2H), 2.78 (s, 3H)
m/z、C22H20N3O4(M+H)+の計算値: 390.1448; 実測値: 390.1454
【0138】
(実施例2)(本明細書中では「類似化合物1」とも呼ぶ)
【0139】
【化15】
【0140】
(2S,8S)-2-(5-クロロ-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(2)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 8.37 (bs, 1H), 7.79 (d, J=2.1 Hz, 1H), 7.35 (d, J=8.7 Hz, 1H), 7.19 (dd, J1=8.7 Hz J2=2.0 Hz, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.79 (d, J=2.5 Hz, 1H), 6.72 (s, 1H), 6.62 (1H), 5.99 (d, J=1.3 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.29 (dd, J1=12.6 J2=4.3 Hz, 1H), 4.13 (d, J=17.7 Hz, 1H), 4.01 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.31 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.2 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.2 Hz J2=12.5 Hz, 1H), 2.92 (s, 3H)
m/z、C22H18CIN3O4Na (M+Na)+の計算値: 446.0878; 実測値: 446.0884
【0141】
(実施例3)(本明細書中では「類似化合物2」とも呼ぶ)
【0142】
【化16】
【0143】
(2S,8S)-2-(5-メトキシ-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラ-シクロ[8.7.0.03,8.012’16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(3)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.73 (bs, 1H), 7.34 (m, 1H), 7.24 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.11 (s, 1H), 6.87 (dd, J1=8.8 Hz J2=2.6 Hz, 1H), 6.62 (m, 3H), 5.93 (d, J=1.3 Hz, 1H), 5.91 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.35 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 4.08 (m, 1H), 3.98 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.31 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 2.94 (m, 1H), 2.88 (s, 3H)
m/z、C23H21N3O5Na (M+Na)+の計算値: 442.1373; 実測値: 442.1379
【0144】
(実施例4)(本明細書中では「類似化合物3」とも呼ぶ)
【0145】
【化17】
【0146】
(2S,8S)-6-メチル-2-{1H-ナフト[1,2-b]ピロール-3-イル}-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラ-シクロ[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(4)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 9.818 (bs, 1H), 8.09 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.89 (d, J=8.1, 1H), 7.82 (d, J=8.7 Hz, 1H), 7.49 (t, J=8.1 Hz, 1H), 7.49 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.39 (t, J=8.0 Hz, 1H), 7.16 (s, 1H), 6.69 (d, J=2.1 Hz, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.59 (d, J=3.9 Hz, 1H), 5.92 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.91 (d, J=1.1 Hz, 1H), 4.35 (dd, J1=12.4 Hz J2=4.2 Hz, 1H), 4.11 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.96 (d, J=17.8 Hz, 1H), 3.29 (dd, J1=16.4 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 3.00 (dd, J1=16.1 Hz, J2=12.5 Hz, 1H), 2.88 (s, 3H)
m/z、C26H22N3O4 (M+H)+の計算値: 440.1605; 実測値: 440.1610
【0147】
(実施例5)(本明細書中では「類似化合物4」とも呼ぶ)
【0148】
【化18】
【0149】
(2S,8S)-6-メチル-2-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(5)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 7.74 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 7.33 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.26 (dt, J1=8.2 Hz J2=1.1 Hz, 1H), 7.12 (m, 2H), 6.73 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.99 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.1 Hz, 1H), 4.34 (dd, J1=12.4 Hz, J2=4.2 Hz, 1H), 4.11 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.96 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.71 (s, 3H), 3.32 (dd, J1=16.3 Hz J2=4.3 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.2 Hz J2=12.6 Hz, 1H), 2.89 (s, 3H)
m/z、C23H22N3O4 (M+H)+の計算値: 404.1605; 実測値: 404.1610
【0150】
(実施例6)(本明細書中では「類似化合物5」とも呼ぶ)
【0151】
【化19】
【0152】
(2S,8S)-2-(1-ベンジル-1H-インドール-3-イル)-6-メチル-13,15-ジオキサ-3,6-ジアザテトラシクロ-[8.7.0.03,8.012,16]ヘプタデカ-1(10),11,16-トリエン-4,7-ジオン(6)
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 7.77 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.20 (m, 9H), 6.77 (s, 1H), 6.72 (s, 1H), 6.67 (s, 1H), 5.98 (d, J=1.1 Hz, 1H), 5.97 (d, J=1.1, 1H), 5.27 (s, 2H), 4.34 (dd, J1=12.4 Hz, J2=4.3 Hz, 1H), 4.12 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.98 (d, J=17.7 Hz, 1H), 3.32 (dd, J1=16.3 Hz, J2=4.4 Hz, 1H), 3.01 (dd, J1=16.3 Hz J2=12.5 Hz, 1H), 2.92 (s, 3H)
m/z、C29H25N3O4Na (M+Na)+の計算値: 502.1737; 実測値: 502.1743
生物学的実施例
生物学的実施例A
材料および方法
材料
物質Xを、PBS緩衝液中で5%に希釈された100%DMSO中に溶解した。
【0153】
腫瘍増殖および転移の異種移植片マウスモデル
週齢6〜8週(Taconic;Bomholt、Denmark)のNMRI無胸腺ヌードマウスを使用した。ホルモンに依存しないPC3腫瘍細胞を、以前に述べた無胸腺ヌードマウスへ皮下から移植することにより、前立腺がん異種移植片マウスモデルを作り出した(Wegiel B、Bjartell A、Tuomela J、et al.: Multiple cellular mechanisms related to cyclin Al in prostate cancer invasion and metastasis. Journal of the National Cancer Institute 100: 1022〜1036頁、2008)。
【0154】
アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA)からPC-3細胞を購入し、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640内で培養した。マウス1匹につき1×106個のPC-3細胞を使用した。マウスを3つのグループに分けた(1グループにつき6匹のマウス)。第1のグループは、治療開始前に、170〜400mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。第2のグループは、治療開始前に、550〜650mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。第3のグループは、治療開始前に、700〜800mm3の間のサイズまで腫瘍を増大させた。週に2回、腫瘍の直径をキャリパーを用いて測定した。腫瘍容量をa*(b2/2)の方程式を用いて計算した(式中、aおよびbは、それぞれ腫瘍の長さおよび幅を表す)。
【0155】
腫瘍が上述の所望のサイズに到達した時点で、実施例1の化合物(本明細書中では「物質X」とも呼ぶ)または対照として5%DMSO(ビヒクル)を含有するPBSの治療を開始した。第1の実験設定において、物質Xは、二日に一度静脈内に投与した。第2の実験設定において、物質Xは、二日に一度経口的に投与した。結果に記載されている通り、腫瘍増殖を定期的に評価した。イソフルオレン吸入を介した安楽死での処置後、マウスを屠殺した。リンパ節、肝臓、肺、脾および大腿を各マウスから取り出した。腫瘍組織の半分を組織構造分析および免疫組織化学的分析に使用した。組織構造分析のため、組織を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、パラフィンに埋め込んだ。切片は、ヘマトキシリネオシン(H&E)で染色するか、または抗体で免疫組織化学的に染色し、光学顕微鏡で分析した。組織の他の半分は、タンパク質分析に使用し、したがって液体の窒素内で瞬時冷凍した。治療の第1日目および最終日のマウスの体重をまとめ、比較した。屠殺したマウスからの様々な組織の腫瘍侵入および転移を検査した。
【0156】
比較実験のため、190〜250mm3のサイズの腫瘍があるマウスを、二日に一度のIV注射を介して、20mg/kgの用量の細胞傷害薬物Etoposide(シグマ)で治療した。結果に記載されている通り、腫瘍サイズを測定した。3匹のマウスを、Etoposideで治療し、または対照としてビヒクルで治療した。マウスを屠殺し、組織を上述のように収集した。
【0157】
基本的毒性実験
物質Xの毒性評価のため、100mg/kgまたは200mg/kgの用量での、13日間に渡る、二日に一度の静脈内投与により、健常なマウスを物質Xで治療した。治療の第1日目から第13日目まで、各マウスの体重を定期的に測定した。死亡、瀕死、飼料消費および活動を含む症状観察を二日に一度実施した。血球数の測定のために血液試料を第1日目および第13日目に採取した。腫瘍を有するマウスについて、物質Xの毒性を評価するため、皮下PC-3腫瘍のあるマウスを、二日に一度19日間に渡り、200mg/kgの高用量の物質Xで治療した。体重を測定し、症状観察を二日に一度実施した。リンパ節、肝臓、肺、脾および大腿を各マウスから取り出し、検査した。上述の物質X、80mg/kgで毎日治療した、腫瘍のあるマウスにおいて、物質Xの毒性も評価した。
【0158】
血管形成の免疫組織化学および定量化
ヒトCD-31への抗体(Dako、Golstrup、Denmark A/S)を用いて、腫瘍組織についての免疫組織化学を以前に述べられているように実施した(Wegiel B、Bjartell A、Ekberg J、Gadaleanu V、Brunhoff C and Persson JL: A role for cyclin Al in mediating the autocrine expression of vascular endothelial growth factor in prostate cancer. Oncogene 24: 6385〜6393頁、2005)。抗ウサギペルオキシダーゼ-コンジュゲート二次抗体を適用した。ジアミノベンジジン比色分析試薬溶液(Dako)を使用した。ヘマトキシリン(Sigma, St. Louis、MO)でスライドを対比染色した。Olympus BX5l顕微鏡で検体を20×または40×の倍率で見た。腫瘍血管形成の分析のため、CD3lに対して抗体で染色した腫瘍切片を検査および定量化した。腫瘍内の高い血管密度の領域を検査した。顕微鏡視野ごとのCD31陽性ピクセル数を記載した。腫瘍1つあたり少なくとも2つの切片および1切片あたり3つの視野を測定した。
【0159】
結果
基本的毒性実験での安全性
物質Xの基本的安全性実験は、最初に、高用量の100mg/kgでの二日に一度のレジメンが安全であるかどうか試験するために、腫瘍のない健常なマウスで実施した。図1Aに示すように、高用量の物質Xを用いた13日間の治療期間を通じて体重に有意な変化はなかった。症状観察は、飼料消費および日々の活動における異常について、またはいかなる観察可能な毒性作用も13日間の間に示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。これら基本的毒性試験は、物質Xが健常なマウスにおいて高用量で安全であることを示した。
【0160】
13日という長期間の間、200mg/kgの物質Xで二日に一度マウスを治療した。図1Bに示すように、腫瘍のあるマウスの体重は、実験期間を通して安定していた。症状観察は、飼料消費および日々の活動についての異常またはいかなる観察可能な毒性作用も示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。
【0161】
次いで、高用量の物質XをPC-3異種移植片マウスで試験し、これによって前立腺がん患者でのその効果を模倣した。ヌードマウスへ腫瘍細胞を皮下に刺入することによってヒトPC-3腫瘍のマウス異種移植片を作り出した。さらに、異種移植片マウスモデルにおいて有意な制癌活性をもたらした用量40mg/kgの安全性について試験した。腫瘍のあるマウスをこの用量で毎日治療することは、がん治療に対する物質Xの安全性を意味することができる。毎日物質Xで30日間治療した、腫瘍のあるマウスの体重は、治療期間を通して一定のままであった(データは示されていない)。症状観察は、飼料消費および/または日々の活動における異常について、またはいかなる他の観察可能な毒性作用も示さなかった。肝臓および腎臓の分析を行い、これら器官の組織構造に異常は検出できなかった(データは示されていない)。
【0162】
異種移植片動物モデルにおける腫瘍増殖の阻害
腫瘍増殖および転移についての物質Xの効果をインビボで実験するため、前立腺がん異種移植片マウスモデルを作り出した。転移性前立腺がんPC-3細胞を、各マウスの右側腹部に皮下注射することによって、異種移植片マウスモデルを作り出した。腫瘍が190〜240mm3のサイズへ増大した時点で、静脈内からの20mg/kgの物質Xで、または対照としてビヒクルで、マウスを21日間治療した。ビヒクル単独で治療した対照グループにおける腫瘍は、21日後大きいサイズへと急激に増大したが、物質Xで治療したマウスでは腫瘍は縮小した。これは、異種移植片マウスにおける腫瘍増殖に対する、インビボでの、物質Xの有意な抑制効果を示唆している。
【0163】
大きな、侵襲性腫瘍のある異種移植片マウスの腫瘍増殖および侵入の阻害
次に、より大きな腫瘍のあるマウスにおける腫瘍増殖および侵入に対する物質Xの効果を評価した。400mm3のサイズへと増大したPC-3腫瘍は、転移性になり得ること、この腫瘍細胞は、リンパ節、肝臓または肺へと侵入することになることがこれまでに判明している。物質Xが侵攻性の腫瘍増殖を制御することができるかどうか試験するために、移植した腫瘍を約500〜600mm3のサイズまで増大させ、次いで40mg/kgの物質Xまたは溶媒を対照として用いて、静脈内投与によりマウスの治療を開始した。対照グループの大きな腫瘍は、継続して急速に増大したが、物質Xで治療したマウスの腫瘍は増大せず、第20日目にサイズのわずかな減少を示した(図2)。
【0164】
次いで、より長期間に渡る、大きな、侵襲性腫瘍に対する物質Xの効果を試験した。マウスを2つのグループに分け、一方のグループは、静脈内投与で30日間、40mg/kgの物質Xで治療を行い、他方のグループは、同じ治療レジメンにより20日間、物質Xで治療を行った。第21日目に、グループ2のマウスには、経口投与により、40mg/kgの物質Xで治療を行った。その結果、物質Xで治療したマウスの腫瘍増殖は、全治療期間に渡り阻害され、治療終了時には腫瘍は有意に縮小したことが示された。対照的に、対照グループの腫瘍は、急激に増大し、転移した。第2の治療グループにおいて、経口投与により物質Xで治療を行ったマウスの腫瘍のサイズは、継続的に静脈内投与で治療したマウスよりもわずかに大きく、これは、物質Xは、経口的にバイオアベイラブルであるが、経口のバイオアベイラビリティーは静脈内投与より低いことを示唆している。組織構造分析および免疫組織化学分析を実施し、実験終了時には、これらマウスのいずれにおいても、腫瘍細胞の二次部位への浸潤を検出することはできなかった。対照的に、対照マウスの腫瘍は、リンパ節へ転移したことが判明した(データは示されていない)。
【0165】
全治療期間に渡る物質Xの経口投与によるマウスの治療も行った。図3に示すように、経口投与を介してマウスに与えられた物質Xは、腫瘍増殖を阻害することができたが、効果は静脈内投与ほど強くなかった。
【0166】
異種移植片マウスにおける腫瘍増殖に対するEtoposideと物質Xの効果の比較
物質Xの効果と、侵襲性腫瘍を治療するために広く使用されている細胞毒性薬とを比較するために、サイズが約250mm3に増大した腫瘍のあるPC-3マウスで、静脈内投与(IV)による20mg/kgのEtoposideの効果を試験した。図4に示すように、対照グループの腫瘍は、14日後、急激に大きいサイズへと増大した。対照的に、Etoposide治療グループの腫瘍は、ゆっくりと増大した。より重要なことに、物質Xは、Etoposideと比べて、腫瘍に対してより強い抑制効果を示した。
【0167】
腫瘍異種移植片マウスにおけるVEGFおよびVEGF受容体2の発現に対する物質Xの効果
腫瘍脈管構造を促進することができ、腫瘍侵入に必要とされる、重要な血管新生因子である、VEGFおよびVEGFR2の発現を検査した。対照マウスまたは物質Xで治療したマウスから切開した腫瘍について免疫組織化学分析を実施した。対照と比較して、物質Xで治療した腫瘍では、VEGFおよびVEGFR2の発現が有意に下方制御されていた(図5)。これは、物質Xが、VEGFシグナル伝達経路をターゲットとするVEGF阻害剤となり得ることを示唆している。
【0168】
異種移植片マウスにおける腫瘍の腫瘍組織構造および脈管化に対する物質Xの効果
ビヒクルまたは物質Xで治療したマウスにおけるVEGF受容体2の染色により腫瘍組織構造の特徴づけも行った。対照マウスおよび物質Xで治療したマウスからの全腫瘍を含有する切片を並べて比較することによって、腫瘍サイズおよび形態における2グループ間の差が明らかに示された(図6A)。物質Xで治療したマウスからの腫瘍のサイズは、対照マウスからの腫瘍よりも小さく見える。興味深いことに、物質Xで治療した腫瘍内には大きな空の領域が存在し、これは、進行中の腫瘍の減少が、死んだ腫瘍細胞の排除に関連している可能性があることを示唆している。これらの結果から、物質Xは、大きな、侵襲性腫瘍の増殖を阻害することができることがさらに確証された。
【0169】
次いで、物質Xで治療した腫瘍において、CD31(腫瘍脈管構造に発現し、腫瘍侵入に対して重要なタンパク質)の発現を、免疫組織化学分析により測定した(図6B)。腫瘍の端および中央の領域を含めて、腫瘍内のCD31の発現およびCD31の陽性血管を定量化することにより腫瘍脈管化の度合を判定した。物質Xで治療した腫瘍におけるCD31の発現およびCD31を発現する血管の数と、対照腫瘍のものとを比較すると、統計学的に有意な減少があった(図6C)。この結果は、侵攻性PC-3腫瘍の脈管化を阻止することによって、物質Xが腫瘍増殖および侵入を阻害し得ることを示唆している。
【0170】
生物学的実施例B
材料および方法
化学薬品
最初に、全く新しく合成した化合物およびEtoposideを、10OmMの初濃度で100%DMSO中に溶解し、次いで培地内で、200μMの最終濃度に希釈した。市販の形態のAvastin(25mg/ml)を培地内で適切な濃度に希釈した。
【0171】
細胞培養
ホルモンに依存しないおよび転移性のPC-3前立腺がん細胞を、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640内で培養した。EtoposideをSigmaから、AvastinをRocheから購入した。
【0172】
細胞増殖アッセイおよびIC50測定
0.3×106/mlの密度で、合計6×104個の細胞を細胞カウント用に96-ウェルプレートに播種した。化合物、陽性対照としてEtoposideまたはAvastinを、1μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μMで用いて、48時間細胞を治療した。Avastinには、5μM、20μMおよび50μM濃度を使用した。細胞をトリパンブルーで標識し、生存細胞を定量化した。
【0173】
製造元プロトコルに従い、非放射性BrdUベースの細胞増殖アッセイキット(Roche、Germany)を用いて、PC-3細胞増殖についての類似化合物の効果を判定した。陽性対照としてEtoposideおよびAvastinを使用した。簡潔に言うと、10%FBSを含有するRPMI-1640培地内で、48時間(BrdUでの標識18時間を含め)、96/ウェルプレートに2×103細胞を培養した。細胞DNAへのBrdUの組み込みは、ELISAプレートリーダー上で、450nmおよび690nmでの光吸収を測定することによって判定した。
【0174】
Annexin V-アポトーシスアッセイ
細胞は、50μMおよび100μMの化合物およびEtoposideで48時間処理し、収集し、PBSで洗浄し、結合緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.14M NaCl、2.5M mM CaCl2)(BD Bioscience、san Jose、CA、USA)中に再懸濁し、APS-コンジュゲートannexin Vおよび7-AAD(BDバイオサイエンス)で染色した。暗所で、室温で15分間、細胞をインキュベートし、アポトーシスの率を流動細胞数測定器(Calibur、BD)で測定し、FCS Express Professional software(De No Vo software、CA、USA)を用いて分析した。
【0175】
細胞周期分析
処理後、細胞を収集し、次いで氷冷の70%EtOH中に固定した。次いで細胞をPBSで洗浄し、1mg/mlのクエン酸ナトリウム(Sigma)、0.1mg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma)、3μl/mlのTritonX-100、0.02mg/mlのRNaseA(シグマ)を含有するDNA染色緩衝液内で、4℃で30分間インキュベートした。FACS Calibur cytofluorometr(BD)で胞周期プロファイルを測定し、FCS Express Professional(De No Vo software、CA、USA)およびMulticycle(Phoenix Flow Systems,Inc.、CA、USA)ソフトウエアを用いて分析した。
【0176】
結果
転移性前立腺がんPC-3細胞の増殖に対する化合物Xおよびその類似化合物の効果の評価
A.Lund UniversityおよびEnamineが合成した化合物XのIC50値の比較
【0177】
有効性において化合物Xの異なるバッチ間に差はない。これらの両方が、統計学的に有意な細胞数の減少5μMを伴う、細胞増殖の用量依存的阻害を誘発した。増殖抑制に対するIC50は、計算により30μMであった(図7を参照)。
【0178】
B.PC-3細胞増殖に対する類似化合物1の効果
細胞増殖に対する類似化合物1の計算によるIC50は36μM。統計学的に有意な細胞増殖阻害は、10μm〜20μMの間に開始した(図8を参照)。
【0179】
C.PC-3細胞増殖に対する類似化合物2の効果
類似化合物2の有意な増殖抑制は、5μM濃度から開始した。細胞増殖に対して求めたIC50は60μMであった(図9を参照)。
【0180】
D.PC-3細胞増殖に対する類似化合物3の効果
類似化合物3は、化合物Xとして5μMから効果を示し、IC50は32μMであった(図10を参照)。
【0181】
E.PC-3細胞増殖に対する類似化合物4の効果
類似化合物4の細胞治療は、10μmから100μMへの統計学的に有意な細胞増殖の阻害を示した。計算したIC50は、30μMであった(図11を参照)。
【0182】
F.PC-3細胞増殖に対する類似化合物5の効果
類似化合物5によるPC-3細胞の治療の結果、細胞は減少した(図12)。
【0183】
図13は、類似化合物1および3の効果を、EtoposideおよびDocetaxelと並べて比較したものを示す。
【0184】
図14は、類似化合物1および3のU937ヒト白血病単球リンパ腫細胞株に対する抗腫瘍効果を示す。
【0185】
BrdUベースの細胞増殖アッセイ
結果を図15および16に表す。
【0186】
アポトーシスアッセイ
結果を図17、18、19および20に表す。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
対照および陽性対照としてEtoposideと比較した場合、類似化合物1および類似化合物3で治療した細胞において、初期と後期の両方のアポトーシス細胞数が増加している。
【0190】
細胞周期分析
結果を図21、22、23および24に表す。
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
得た結果によると、Etoposideで治療した細胞においてG2/M相の遮断があったが、類似化合物1で治療した細胞にはなかった。100μMにおいて類似化合物3で治療した細胞には遮断が存在し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩
【化1】
(式中、
【化2】
で表されている結合は、相対立体化学(すなわち、関連する水素原子および3-インドリル基が互いにcis位である)を表し、
XおよびYは、独立して、-O-、-N(Ra)-を表すか、またはこれらのうちのいずれか1つが代わりに-N=を表してもよく、
Raは、Hを表すか、または1つもしくは複数のフルオロ原子で場合によって置換されているC1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または、R1およびR2は、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基(すなわち、R1およびR2は、一緒に連結することによって、これらに必ず結合しているXおよびY基と一緒になって、5または6員の環を形成してもよく、この環には、置換基XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基が存在する)を表し、
R3〜R10は、独立して、H、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つもしくは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または
任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8またはR8とR9)は、一緒に連結することによって、1〜3つの二重結合を場合によって含有し、1〜4個(例えば1または2個)のヘテロ原子を場合によって含有する、さらなる3〜8員(例えば5または6員)環を形成してもよく、この環は、それ自体、ハロおよびC1-4アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)から選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されており、
Rbは、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
RcおよびRdは、独立して、HまたはC1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
R11およびR12は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、フェニル(ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表し、
R13およびR14は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表す)。
【請求項2】
【化3】
ではないことを条件とする、請求項1に記載の式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
5位の3-インドリル基がS-配置であり、および/または9a位の水素がS-配置である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR2が、独立して、H、非置換C1-6アルキル、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニルを表すか、または、R1およびR2が、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基を表してもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R3〜R10が、独立して、H、ハロ、-ORb、非置換C1-6アルキルまたは非置換-CH2-フェニルを表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Rbが、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表すか、ならびに/またはRcおよびRdが、独立して、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R11およびR12が、独立して、H、非置換C1-6アルキル、もしくは非置換フェニルを表し、ならびに/または、R13およびR14が、独立してHもしくは非置換C1-6アルキルを表す、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
医薬品としての使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤。
【請求項10】
がんの治療における使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
がんの治療のための薬剤の製造のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項12】
がんが、血管腫、肝細胞性腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、肝結節性再生性過形成、トラコーマ、化膿性肉芽腫、白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺がん、乳がん、皮膚がん、骨がん、肝がん、肺がん、脳のがん、喉頭、膀胱、胆嚢、卵巣、子宮頸部、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、食道、副腎、神経性組織、頭部および頸部、大腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞癌、潰瘍性および乳頭状の両タイプの扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部上皮異形成およびインサイチュ癌腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎臓細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性神経膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫である、請求項10に記載の化合物または請求項11に記載の使用。
【請求項13】
VEGFおよび/または血管形成阻害剤としての使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
VEGFおよび/または血管形成の阻害が所望され、および/または必要とされる疾患の治療のための薬剤を製造するための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項15】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、このような状態に罹っているか、または罹りやすい患者に投与することを含む、VEGFおよび/または血管形成の阻害が所望され、および/または必要とされるがんもしくは疾患の治療の方法。
【請求項16】
患者が哺乳動物、例えばヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与が、薬学的に許容される剤形で、経口、静脈内、皮下、口腔、直腸、皮膚、経鼻、気管、気管支、舌下、他のいずれかの非経口の経路により行われるか、または吸入を介して行われる、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
毎日の用量の範囲が約0.01mg〜約10gの間である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(A)請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩と、
(B)がんの治療に有用な1つまたは複数の治療用薬剤と
を含み、
成分(A)および(B)のそれぞれが、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して配合される組合せ製品。
【請求項20】
(i)〜(iv)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(またはその単一のエナンチオマー)の調製のための方法
(i)R1およびR2が一緒に連結されている式Iの化合物に対し、R1およびR2が両方とも水素(または保護されたその誘導体)を表す式Iの化合物と、式IIの化合物
L1-R1/2-L2 II
(式中、L1およびL2は、独立して、適切な脱離基を表し、R1/2は、C1-2アルキレン(R1およびR2の連結に関して請求項1に記載された通り)を表す)との反応、
(ii)式IIIの化合物またはその単一のエナンチオマー
【化4】
(式中、L3は、適切な脱離基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R11、R13、R14、XおよびYは、請求項1に記載の通りである)と、式IVの化合物
【化5】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10およびR12は、請求項1に記載の通りである)との反応、
(iii)式Vの化合物またはその単一のエナンチオマーまたはその塩
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、請求項1に記載の通りである)の分子内環化、
(iv)R11および/またはR12が水素以外の置換基を表す式Iの化合物に対し、対応する式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は、水素を表す)と、式VAの化合物(またはその2つの異なる化合物)
R11/12-L4 VA
(式中、R11/12は、請求項1に記載のR11またはR12(所望する結合の位置に依存する)を表すが、ただし、水素は表さないものとする)との反応。
【請求項21】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体とを一緒にするステップを含む、請求項9に記載の医薬製剤を調製するための方法。
【請求項22】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩を、がんの治療に有用な他の治療用薬剤および少なくとも1つの薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にするステップを含む、請求項19に記載の組合せ製品を調製するための方法。
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩
【化1】
(式中、
【化2】
で表されている結合は、相対立体化学(すなわち、関連する水素原子および3-インドリル基が互いにcis位である)を表し、
XおよびYは、独立して、-O-、-N(Ra)-を表すか、またはこれらのうちのいずれか1つが代わりに-N=を表してもよく、
Raは、Hを表すか、または1つもしくは複数のフルオロ原子で場合によって置換されているC1-6アルキルを表し、
R1およびR2は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または、R1およびR2は、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基(すなわち、R1およびR2は、一緒に連結することによって、これらに必ず結合しているXおよびY基と一緒になって、5または6員の環を形成してもよく、この環には、置換基XおよびYを連結しているC1-2アルキレン基が存在する)を表し、
R3〜R10は、独立して、H、ハロ、-ORb、-N(Rc)Rd、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つもしくは複数の置換基で場合によって置換されている)を表すか、または
任意の2つの隣接するR6からR9までの基(すなわち、R6とR7、R7とR8またはR8とR9)は、一緒に連結することによって、1〜3つの二重結合を場合によって含有し、1〜4個(例えば1または2個)のヘテロ原子を場合によって含有する、さらなる3〜8員(例えば5または6員)環を形成してもよく、この環は、それ自体、ハロおよびC1-4アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)から選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されており、
Rbは、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
RcおよびRdは、独立して、HまたはC1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)を表し、
R11およびR12は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、-C(O)C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)、フェニル(ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表し、
R13およびR14は、独立して、H、C1-6アルキル(1つまたは複数のフルオロ原子で場合によって置換されている)または-CH2-フェニル(フェニル部分は、ハロおよびC1-3アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)を表す)。
【請求項2】
【化3】
ではないことを条件とする、請求項1に記載の式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
5位の3-インドリル基がS-配置であり、および/または9a位の水素がS-配置である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR2が、独立して、H、非置換C1-6アルキル、非置換-C(O)C1-6アルキル、非置換-CH2-フェニルを表すか、または、R1およびR2が、一緒になって、C1-2アルキレンリンカー基を表してもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R3〜R10が、独立して、H、ハロ、-ORb、非置換C1-6アルキルまたは非置換-CH2-フェニルを表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Rbが、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表すか、ならびに/またはRcおよびRdが、独立して、Hもしくは非置換C1-6アルキルを表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R11およびR12が、独立して、H、非置換C1-6アルキル、もしくは非置換フェニルを表し、ならびに/または、R13およびR14が、独立してHもしくは非置換C1-6アルキルを表す、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
医薬品としての使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩を、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して含む医薬製剤。
【請求項10】
がんの治療における使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
がんの治療のための薬剤の製造のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項12】
がんが、血管腫、肝細胞性腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、肝結節性再生性過形成、トラコーマ、化膿性肉芽腫、白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺がん、乳がん、皮膚がん、骨がん、肝がん、肺がん、脳のがん、喉頭、膀胱、胆嚢、卵巣、子宮頸部、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、食道、副腎、神経性組織、頭部および頸部、大腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞癌、潰瘍性および乳頭状の両タイプの扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性のリンパ性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節細胞腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体質腫瘍、ウィルムス腫瘍、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫、子宮頸部上皮異形成およびインサイチュ癌腫、神経芽腫、網膜芽腫、軟部組織の肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎臓細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性神経膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌および肉腫である、請求項10に記載の化合物または請求項11に記載の使用。
【請求項13】
VEGFおよび/または血管形成阻害剤としての使用のための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
VEGFおよび/または血管形成の阻害が所望され、および/または必要とされる疾患の治療のための薬剤を製造するための、請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項15】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩の治療有効量を、このような状態に罹っているか、または罹りやすい患者に投与することを含む、VEGFおよび/または血管形成の阻害が所望され、および/または必要とされるがんもしくは疾患の治療の方法。
【請求項16】
患者が哺乳動物、例えばヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与が、薬学的に許容される剤形で、経口、静脈内、皮下、口腔、直腸、皮膚、経鼻、気管、気管支、舌下、他のいずれかの非経口の経路により行われるか、または吸入を介して行われる、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
毎日の用量の範囲が約0.01mg〜約10gの間である、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(A)請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩と、
(B)がんの治療に有用な1つまたは複数の治療用薬剤と
を含み、
成分(A)および(B)のそれぞれが、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と混合して配合される組合せ製品。
【請求項20】
(i)〜(iv)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(またはその単一のエナンチオマー)の調製のための方法
(i)R1およびR2が一緒に連結されている式Iの化合物に対し、R1およびR2が両方とも水素(または保護されたその誘導体)を表す式Iの化合物と、式IIの化合物
L1-R1/2-L2 II
(式中、L1およびL2は、独立して、適切な脱離基を表し、R1/2は、C1-2アルキレン(R1およびR2の連結に関して請求項1に記載された通り)を表す)との反応、
(ii)式IIIの化合物またはその単一のエナンチオマー
【化4】
(式中、L3は、適切な脱離基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R11、R13、R14、XおよびYは、請求項1に記載の通りである)と、式IVの化合物
【化5】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10およびR12は、請求項1に記載の通りである)との反応、
(iii)式Vの化合物またはその単一のエナンチオマーまたはその塩
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、XおよびYは、請求項1に記載の通りである)の分子内環化、
(iv)R11および/またはR12が水素以外の置換基を表す式Iの化合物に対し、対応する式Iの化合物(式中、R11および/またはR12は、水素を表す)と、式VAの化合物(またはその2つの異なる化合物)
R11/12-L4 VA
(式中、R11/12は、請求項1に記載のR11またはR12(所望する結合の位置に依存する)を表すが、ただし、水素は表さないものとする)との反応。
【請求項21】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体とを一緒にするステップを含む、請求項9に記載の医薬製剤を調製するための方法。
【請求項22】
請求項1、または請求項2から7のいずれか一項に記載の式Iの化合物(ただし、条件なしで、必要に応じて)または薬学的に許容されるその塩を、がんの治療に有用な他の治療用薬剤および少なくとも1つの薬学的に許容される助剤、賦形剤または担体と一緒にするステップを含む、請求項19に記載の組合せ製品を調製するための方法。
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−530772(P2012−530772A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516835(P2012−516835)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000514
【国際公開番号】WO2010/149944
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511314359)オンコレル・アーベー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000514
【国際公開番号】WO2010/149944
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511314359)オンコレル・アーベー (1)
【Fターム(参考)】
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