説明

インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼに基づく免疫療法

本発明は、癌の予防および治療分野に関する。特に、抗癌免疫応答を誘発することができるタンパク質インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはそのペプチドフラグメントを提供する。具体的には、本発明は、癌処置のためのIDOまたはIDO由来のペプチドまたはIDO特異的T細胞の使用に関する。したがって、本発明は、任意選択的に他の免疫療法と組み合わせて使用することができる抗癌ワクチンおよび癌処置としてワクチン接種によってin vivoで養子移入または誘導されたIDO特異的T細胞に関する。本発明の一態様は、本明細書中に提供した医薬品を癌化学療法処置と組み合わせて使用することができることである。さらなる態様は、上記と同じ手段による感染の予防および治療に関する。癌および感染の処置、診断、および予後診断におけるIDOおよびその免疫原性ペプチドフラグメントの使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願で引用されたすべての特許および非特許の参考文献はまた、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌の予防および治療分野に関する。特に、タンパク質であるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)または抗癌免疫応答を誘発することができるそのペプチドフラグメントを提供する。具体的には、本発明は、癌処置のためのIDO、IDO由来のペプチド、またはIDO特異的T細胞の使用に関する。したがって、本発明は、任意選択的に他の免疫療法と組み合わせて使用することができる抗癌ワクチンおよび癌治療としてのワクチン接種によって養子導入されるかin vivoで誘導されるIDO特異的T細胞に関する。本発明の一態様は、本明細書中に提供した医薬品を癌化学療法と組み合わせて使用することができることである。さらなる一態様は、上記と同一の手段による感染の防止および治療に関する。
【0003】
癌および感染の治療、診断、および予後におけるIDOおよびその免疫学的ペプチドフラグメントの使用も提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
免疫系は、新生物細胞を認識して破壊する能力を有する。しかし、腫瘍性形質転換が免疫原性抗原の発現に関連するという事実にもかかわらず、免疫系はしばしばこれらの抗原に対して有効に応答することができない。免疫系は、明らかにこれらの抗原に対して寛容性を示すようになる(非特許文献1)。これが起こる場合、新生物細胞は制御不可能に増殖し、罹患個体の予後が不良な悪性癌を形成する。癌免疫療法を成功させるには、寛容状態の獲得を克服しなければならない。
【0005】
インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)は、免疫系のホメオスタシスの維持における主要成分であるが、腫瘍誘導性寛容にも寄与する。IDOの発現および活性化により、必須アミノ酸であるトリプトファンの分解によるT細胞の直接抑制または局所Treg−(活性化調節性T細胞)媒介性免疫抑制の増強のいずれかによって腫瘍および腫瘍流入領域リンパ節(LN)内の寛容原性環境が得られる。前者に関して、IDOの生物学的影響は、トリプトファンの局所枯渇によって媒介されるものもあれば、免疫調節性トリプトファン代謝産物によって媒介されるものもある3,4(非特許文献2、非特許文献3)。最近、T細胞におけるIDO応答性シグナル伝達系(ストレスキナーゼGCN2を含む)が同定されている。T細胞からトリプトファンが枯渇された場合にGCN2は非荷電tRNAの上昇に応答し、GCN2を欠くT細胞にはIDO媒介性抑制およびアネルギー誘導が無効である
【0006】
IDOを、腫瘍細胞および腫瘍間質細胞によって腫瘍内に発現することができ、ここでIDOは免疫応答のエフェクター段階を阻害する。さらに、IDO発現抗原提示細胞(APC)は腫瘍流入領域リンパ節中に存在し、ここでAPCは寛容原性微小環境を作製すると考えられる。実際、腫瘍流入領域リンパ節から単離されたIDO発現CD19形質細胞様樹状細胞(DC)は、in vivoでの強い免疫抑制およびT細胞アネルギー7,8(非特許文献4、非特許文献5)を媒介し、正常なリンパ節および脾臓由来の形質細胞様DCはIDOを発現しない。腸を除く正常なリンパ組織でIDOを構成的に発現する細胞はほとんどない。これは、IDOを構成的に発現する腫瘍流入領域リンパ節中のDCが腫瘍の存在に関連する刺激を受けなければならないことを意味する。この刺激は、腫瘍から流入領域リンパ節への活性化調節性T細胞(Treg)の移動によると考えられる。Tregは、CTLA−4の細胞表面発現を介してIDOを誘導することが示されている。IDOの誘導は、腫瘍流入領域リンパ節を免疫化から寛容環境に変換する。実際、IDODCがin vivoで注射されると、これらは注射部位から流れ出てリンパ節中の抗原特異的T細胞の抑制およびアネルギーを引き起こす10。免疫コンピテント細胞におけるその発現と無関係に、IDOは腫瘍微小環境にて腫瘍細胞自体または異なる間質細胞のいずれかに頻繁に発現する。この状況では、IDOは免疫応答のエフェクター段階を阻害すると考えられる11,12。クリニックでは、腫瘍細胞中のIDO発現が予後不良に関連することが繰り返し認められている13,14
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Morris E, Hart D, Gao Lら: Generation of tumor−specific T−cell therapies. Blood Rev(2006)20:61−69
【非特許文献2】Platten M, Ho PP, Youssef Sら: Treatment of autoimmune neuroinflammation with a synthetic tryptophan metabolite. Science(2005)310:850−855
【非特許文献3】Bauer TM, Jiga LP, Chuang JJら: Studying the immunosuppressive role of indoleamine 2,3−dioxygenase: tryptophan metabolites suppress rat allogeneic T−cell responses in vitro and in vivo. Transpl Int(2005)18:95−100
【非特許文献4】Sharma MD, Baban B, Chandler Pら: Plasmacytoid dendritic cells from mouse tumor−draining lymph nodes directly activate mature Tregs via indoleamine 2,3−dioxygenase. J Clin Invest(2007)117:2570−2582
【非特許文献5】Munn DH, Sharma MD, Hou Dら: Expression of indoleamine 2,3−dioxygenase by plasmacytoid dendritic cells in tumor−draining lymph nodes. J Clin Invest(2004)114:280−290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、IDO発現およびそれに伴うIDO誘導性の癌免疫抑制が癌治療で問題を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
癌免疫抑制の問題は、本発明者らによる癌患者におけるIDO発現細胞に対する自発的細胞傷害性免疫応答の驚くべき所見に基づく本発明によって解決される。これらの所見は、癌疾患の調節において一般的に適用可能な新規の治療および診断アプローチを可能にする。
【0010】
本発明は、IDO発現癌細胞の直接的死滅およびIDO発現性でアネルギー誘導性のAPC/DCの死滅によって癌疾患を標的にする。T細胞がIDO発現細胞を認識できるようにすることによってこれを行う。同様に、臨床状態が感染である場合、T細胞は、IDO発現APC/DCを死滅させることができる。したがって、癌細胞およびAPC中での免疫抑制酵素IDOの発現は、これらのIDO発現細胞を標的にする本発明の方法の適用と併せて陽性である。このアプローチは、特にAPC/DCの死滅を伴う場合、IDOが一般にAPC/DC周囲の寛容環境を除去するために下方制御/阻害を試みる一方でこれらの細胞を保存し、これが有効な免疫応答を開始させるために必要であると見なされる本分野での一般的意見に反する。
【0011】
さらに、IDO発現細胞が他の免疫療法アプローチの所望の効果を拮抗するので、IDO発現細胞に対する自発的細胞傷害性免疫応答の所見は特に驚くべきことである。したがって、IDOターゲティング免疫療法と腫瘍ターゲティング免疫療法との組み合わせは相乗効果が高い。
【0012】
本発明は、医薬品として使用するためのアジュバントと組み合わせた配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸を含むワクチン組成物に関する。
【0013】
ワクチン組成物およびさらなる免疫刺激組成物を含む部分のキット(kit−of−parts)に関する本発明の態様で上記開示のワクチンに基づいた免疫療法の組み合わせの相乗効果が得られる。
【0014】
本発明のワクチンと他の癌処置(化学療法薬など)との組み合わせの態様も本明細書中に提供する。
【0015】
本発明のワクチンと感染に対する他の処置(免疫療法および/または抗生物質など)との組み合わせの態様も本明細書中に提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、またはIDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメントを含む、癌患者におけるIDOに反応性を示すPBLまたは腫瘍組織中のT細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための組成物に関する。
【0017】
さらなる態様は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、またはIDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメントを含む、癌患者におけるIDOに反応性を示すPBLまたは腫瘍組織中のT細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための診断キットに関する。
【0018】
IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含むペプチドフラグメントとクラスI HLA分子またはクラスII HLA分子またはかかる分子のフラグメントとの複合体も本明細書中に提供する。
【0019】
腫瘍組織または血液サンプルをIDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含むペプチドフラグメントとクラスI HLA分子またはクラスII HLA分子またはかかる分子のフラグメントとの複合体と接触させる工程、および組織または血球への複合体の結合を検出する工程を含む、癌患者におけるIDO反応性T細胞の存在を検出する方法は、本発明のさらなる一態様である。
【0020】
本発明のさらなる一態様は、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含むペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子に関する。
【0021】
任意の上記手段による臨床状態(癌または感染など)の処置方法は本発明の範囲に含まれるということになる。この手段には、臨床状態に罹患した個体への有効量の上記開示のワクチン組成物の投与、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含むペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子、または別の免疫刺激組成物および/または化学療法薬と共に上記ワクチンまたは分子を含む部分のキットが含まれる。
【0022】
したがって、本発明の目的はまた、癌疾患の処置または防止のための医薬品の製造においてIDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメントまたは上記ワクチン組成物を使用することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、個体から血液サンプルを提供する工程、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDO、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、またはIDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する工程、血液サンプルがタンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうか決定する工程、およびそれによってタンパク質またはペプチドに対する免疫応答が個体中で惹起されたかどうかを決定する工程を含む、免疫化をモニタリングする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1−1】IDOに対するHLA−A2拘束T細胞応答。
【図1−2】IDOに対するHLA−A2拘束T細胞応答。
【図2−1】図2aは、HLA−A2拘束ポジティブコントロールペプチドの結合。図2bは、腎細胞癌患者由来のPBL中のIDO5特異的CD8T細胞。図2cは、IDO5特異的T細胞の四量体分析。
【図2−2】図2d〜fは、IDO5特異的T細胞の四量体分析。
【図3】IDO5特異的T細胞クローンの特異性および機能的能力。
【図4】ヒストグラムは細胞内IDO染色を示す。
【図5−1】IDO5特異的T細胞クローン(RBS35)のIFN−γ処置乳癌細胞株を死滅させる機能的能力。
【図5−2】IDO5特異的T細胞クローン(RBS35)のIFN−γ処置乳癌細胞株を死滅させる機能的能力。
【図6】IDO5特異的T細胞クローン(RBS35)のDCを死滅させる機能的能力。
【図7】51Cr放出アッセイによってアッセイされたIDO5特異的T細胞の特異性および機能的能力。
【図8】IDO配列であるIDO、IDOA、IDOB、およびIDOCの多重アラインメント。
【図9】IDOおよびIDOLIKEのペアワイズアラインメント。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の主な目的は、癌の防止、リスクの軽減、または処置における医薬品として使用するためのインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはその免疫原性活性ポリペプチドフラグメントを含むワクチン組成物を提供することである。
【0026】
定義
アジュバント:投与される免疫原性決定基/抗原/核酸構築物と混合した場合に決定基に対する免疫応答を増加させるかそうでなければ改変する任意の物質。
【0027】
アミノ酸:任意の合成または天然に存在するアミノカルボン酸であって、ペプチドおよびポリペプチド中に生じる任意のアミノ酸が含まれる(in vivoで合成された(したがって、アミノ酸修飾物が含まれる)タンパク質および酵素が含まれる)。用語アミノ酸を、本明細書中で、少なくとも1つの他の種(2つなど)(例えば、3つ(3つを超える他の種など))と反応した記載のアミノ酸を含むことを意味する用語「アミノ酸残基」の同意語として使用する。総称アミノ酸は、天然および非天然のアミノ酸の両方を含み、そのいずれかが「D」または「L」異性体であり得る。
【0028】
抗体:免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の活性部分。抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリン分子または免疫原性活性を保持するそのフラグメントである。
【0029】
抗原:クローン的に分布した免疫受容体(T細胞受容体またはB細胞受容体)に結合することができる任意の物質。通常、ペプチド、ポリペプチド、または多量体ポリペプチドである。抗原は、好ましくは、免疫応答を誘発することができる。
【0030】
APC:抗原提示細胞。APCは、その表面上にMHCと複合体化した外来抗原を提示する細胞である。T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を使用してこの複合体を認識することができる。APCは以下の2つのカテゴリーに分類される:プロフェッショナル(以下の3つの型が存在する:樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞)または非プロフェッショナル(ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合性遺伝子複合体タンパク質を構成的に発現せず、これらは、IFN−γなどの一定のサイトカインによって非プロフェッショナルAPCの刺激の際のみに発現される)。
【0031】
追加免疫:追加抗原の注射または投与によって追加免疫するとは、さらなる用量の免疫剤(ワクチンなど)を、免疫剤の前の投与によって誘発された免疫応答を維持するために最初の投与後のある時点で投与することである。
【0032】
癌:本明細書中では、良性または悪性の任意の前新生物疾患または新生物疾患であり、「新生物」は、細胞の異常な増殖をいう。
【0033】
キャリア:免疫応答の誘導を補助するために抗原にカップリングされる実体または化合物。
【0034】
キメラタンパク質:2つ以上の完全または部分的な遺伝子または一連の(非)ランダム核酸の同時スプライシングによって作製されたヌクレオチド配列によってコードされる遺伝子操作されたタンパク質。
【0035】
臨床状態:医学的配慮を必要とする様態(本明細書中では、特に、IDO発現に関連する様態)。かかる様態の例には、癌および感染が含まれる。
【0036】
補体:その作用が抗体の働きを「補完する」複雑な一連の血液タンパク質。補体は細菌を破壊し、炎症を引き起こし、免疫応答を調節する。
【0037】
CTL:細胞傷害性Tリンパ球。T細胞受容体と共にCD8を発現し、従って、クラスI分子によって提示される抗原に応答することができるT細胞の亜群。
【0038】
サイトカイン:成長または分化のモジュレーター。この用語は本明細書中で非限定的に使用され、本発明および特許請求の範囲を制限すると解釈すべきではない。サイトカインに加えて、接着分子、アクセサリー分子、またはその任意の組み合わせを単独またはサイトカインと組み合わせて使用することができる。
【0039】
送達ビヒクル:ヌクレオチド配列、ポリペプチド、またはその両方を少なくとも一方の媒体から他方に輸送することができる実体。
【0040】
DC:樹状細胞。(DC)は免疫細胞であり、哺乳動物免疫系の一部を形成する。その主な機能は、抗原物質をプロセシングし、免疫系の他の細胞に対してその表面上に抗原物質を提示することである。したがって、DCは抗原提示細胞(APC)として機能する。
【0041】
フラグメント:フラグメントを、核酸またはポリペプチドの非全長部分を示すために使用する。したがって、フラグメント自体がそれぞれ核酸またはポリペプチドでもある。
【0042】
機能的ホモログ:機能的ホモログは、野生型バージョン/所与の遺伝子の配列/遺伝子産物/タンパク質/ポリペプチドと少なくともいくつかの配列同一性を示し、且つ元の配列機能性の少なくとも一態様を保持している任意の核酸/タンパク質/ポリペプチドであり得る。本明細書中では、IDOの機能的ホモログは、IDO発現細胞に対して免疫応答を誘導する能力を有する。
【0043】
IDO:インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ。配列番号:(1、13、14、15、および16)で識別する。
【0044】
個体:一般に、鳥類、哺乳動物、魚類、両生類、または爬虫類の任意の種または亜種、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくはヒト。
【0045】
感染:本明細書中では、用語「感染」は、免疫応答を生じる任意の種類の臨床状態に関する。したがって、感染、慢性感染、自己免疫性容態、およびアレルギー性炎症が含まれる。
【0046】
単離:本明細書中に開示の核酸、ポリペプチド、および抗体に関連して使用される、「単離」は、これらをその天然の、典型的には細胞の環境の成分から同定および分離し、そし/または回収することをいう。本発明の核酸、ポリペプチド、および抗体を好ましくは単離し、本発明のワクチンおよび他の組成物は、好ましくは、単離した核酸、ポリペプチド、または単離した抗体を含む。
【0047】
MHC:主要組織適合性遺伝子複合体であって、2つの主なMHCサブクラスであるクラスIおよびクラスIIが存在する。
【0048】
核酸:遺伝情報を伝達するヌクレオチドの鎖または配列。本発明に関して、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)である。
【0049】
核酸構築物:遺伝子操作された核酸。典型的には、いくつかのエレメント(遺伝子または遺伝子のフラグメント、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリAテール、リンカー、ポリリンカー、操作リンカー、多重クローニング部位(MCS)、マーカー、終止コドン、他の調節エレメント、または内部リボゾーム侵入部位(IRES)など)を含む。
【0050】
操作リンカー:核酸またはポリペプチドの生物学的プロセシングを確保する様式で核酸構築物または(キメラ)ポリペプチドの2つの部分と共に結合するヌクレオチド配列またはアミノ酸残基配列。
【0051】
病原体:疾患の特異的原因因子、特に、その宿主に疾患を引き起こし得る生物学的因子(ウイルス、細菌、プリオン、または寄生虫など)。感染性因子ともいう。
【0052】
PBL:末梢血球は、循環血液内で見出されるが、リンパ系、脾臓、肝臓、または骨髄内で隔絶されない血液中の有形成分(赤血球、白血球、および血小板からなる)である。
【0053】
PBMC:末梢血単核球(PBMC)は、円形の核を有する血球(リンパ球または単球など)である。これらの血球は、感染と戦い、侵入者に適応するための免疫系における重要成分である。リンパ球集団は、T細胞(CD4およびCD8陽性、約75%)、B細胞およびNK細胞(合わせて約25%)からなる。
【0054】
ペプチド:配列を定義し、アミド結合によって結合された複数の共有結合アミノ酸残基。この用語を、オリゴペプチドおよびポリペプチドと同様に使用する。天然および/または非天然のアミノ酸を、ペプチド結合または非ペプチド結合によって結合することができる。用語ペプチドはまた、当該分野で公知の化学反応または酵素触媒反応によって導入された翻訳後修飾を含む。本用語は、ポリペプチドのバリアントまたはフラグメントをいうことができる。
【0055】
薬学的キャリア:賦形剤または安定剤ともいい、使用した投薬量および濃度で曝露された細胞または個体に無害である。しばしば、生理学的に許容可能なキャリアは水性pH緩衝液である。生理学的に許容可能なキャリアの例には、緩衝液(リン酸、クエン酸、および他の有機酸の緩衝液など);抗酸化剤(アスコルビン酸が含まれる);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる);キレート剤(EDTAなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)など)が含まれる。
【0056】
複数:少なくとも2つ。
【0057】
プロモーター:RNAポリメラーゼが結合して1つまたは複数の近隣の構造遺伝子によって伝令RNAの転写が開始されるDNA鎖中の結合部位。
【0058】
シグナルペプチド:.細胞中のタンパク質の最終的な位置を決定するアミノ酸の短い配列。ソーティングペプチドともいう。
【0059】
界面活性剤:溶解される液体の表面張力を軽減することができる表面活性剤。界面活性剤は、親水性を示す極性基および疎水性を示す非極性基を含み、しばしば、脂肪鎖から構成される化合物である。
【0060】
Treg:調節性T細胞/Tリンパ球
ワクチン:動物において免疫応答を誘導することができる物質または組成物。本明細書中では免疫原性組成物ともいう。免疫応答は、一次反応よりもむしろ二次反応によって対処され、それによって宿主生物に及ぼす影響が軽減される生物(感染性因子を生じる)における免疫応答(体液性/抗体および/または細胞性)誘導性記憶である。本発明のワクチンを、予防および/または治療用医薬品として投与することができる。組成物は、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる:抗原、Iiに作動可能に連結された1つまたは複数の抗原を含む核酸構築物、キャリア、アジュバント、および薬学的キャリア。
【0061】
バリアント:所与の基準となる核酸またはポリペプチドの「バリアント」は、基準となる核酸またはポリペプチドとある程度の配列相同性/同一性を示すが、基準となる核酸またはポリペプチドと同一でない核酸またはポリペプチドをいう。
【0062】
インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ
インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)は、L−トリプトファンのN−ホルミルキヌレニンへの変換を触媒する酵素であり、したがって、キヌレニン経路によるトリプトファン異化の第1の律速酵素である。トリプトファンの異化によってトリプトファンが枯渇し、それにより、T細胞応答が抑制され、哺乳動物の妊娠、腫瘍抵抗性、慢性感染、自己免疫、およびアレルギー性炎症における免疫寛容を促進する。したがって、癌だけでなく一般的な感染(特に、慢性感染)、自己免疫、およびアレルギー性炎症も、特に、本発明に関連する全ての臨床状態である。
【0063】
IDOは、ヒトにおいて以下の5つの形態で存在する:IDO、IDOA、IDOB、IDOC、およびIDOLIKE(文献ではIDO2としても公知)。IDOは、配列番号1に開示の403アミノ酸残基長のポリペプチドであり、配列番号16のIDOLIKEと共に本明細書中で好ましいIDOである。他のIDOもまた本発明に関連するが、これらについてはほとんど知られておらず、本明細書中でIDOA:配列番号13、IDOB:配列番号14、およびIDOC:配列番号15として識別する。IDOLIKEはIDOほど広く発現しないが、関連物質と同様に、トリプトファン異化によって免疫寛容が駆動される抗原提示樹状細胞中でも発現する。IDOのように、IDOLIKEはトリプトファンを触媒し、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化を誘発し、LIP(免疫調節転写因子NF−IL6の阻害イソ型)の翻訳を駆動する(Popov & Schultze,2008)。本明細書中の用語IDOは、一般に、上記IDOの全ておよびその対応する配列をいう。
【0064】
IDOは主な免疫調節分子として同定されており、この分子は、免疫応答の調節下にあるいくつかの負のフィードバック機構の一部である。この様式では、IDOは癌において重要な免疫抑制機能も発揮する。本発明を基礎とする研究では、IDO自体が免疫応答の標的として役立つことができ、免疫療法、特に癌治療に活用することができるかどうかを試験した。「逆免疫学的」アプローチにより、IDOタンパク質内にHLA−A2ペプチドが同定され、これに対する自発的なT細胞反応性が非関連腫瘍型(すなわち、黒色腫、腎細胞癌、および乳癌)に罹患した患者で検出された。これらの天然に存在するT細胞応答は、容易に、in vitro刺激後にHLA/ペプチド四量体を使用したフローサイトメトリーによって視覚化されるだけでなく、直接的なex vivoアッセイによっても視覚化された。さらに、IDO反応性T細胞が実際にペプチド特異的細胞傷害性エフェクター細胞であることが明白に確認された。言い換えると、IDO特異的T細胞は、異なる起源(黒色腫、結腸癌腫、乳癌など)のIDO+癌細胞株および直接的にex vivo富化したAML芽球を有効に溶解する。非関連癌型に罹患した患者由来のPBL中のIDO由来ペプチドエピトープに対する自発的CTL応答の存在およびIDO特異的T細胞による異なる起源の癌細胞の死滅は、IDOの免疫療法への潜在性を明確に示す。IDO特異的CTLがIDO+成熟DCを認識して死滅させ、それにより、IDO特異的T細胞が免疫コンピテントDCを死滅させることができるという所見がさらにより特徴的である。最近の報告では、IDOが成熟の際にヒトDCで上方制御されることが証明されている23,24。さらに、IDO発現は癌患者におけるワクチン接種を意図するDCでも認められ、この発現はs.c.(皮下)注射後にin situで維持される25。DCベースの治療ワクチン中のIDO発現は、FoxP3(+)Tregの誘引または誘導を介して重要な臨床的関連性を保持する。
【0065】
IDOの二元的役割−免疫応答の初期段階およびエフェクター段階の両方の阻害−は相互排他的ではない。実際、共に所与の腫瘍で機能する可能性が高い。IDOが癌の免疫療法の結果に高度に関連し得るさらなる役割が存在する(炎症誘導性の拮抗機構としての役割)。拮抗応答は、免疫応答の強度および範囲を制限するのに役立つので、免疫系で重要である一方で、宿主に危険な損害を与え得る。しかし、抗癌免疫療法に関して、拮抗応答は腫瘍に対して強い免疫応答を生じる能力を拮抗する。拮抗は、拮抗が免疫活性化に応答した場合のみ誘発される二次事象であるという意味で寛容と異なる。IDOは、I型およびII型インターフェロンの両方によって誘導されることが公知であり、これらのインターフェロンは免疫活性化部位および炎症部位で見出される可能性が高い26,27。特に、IDO反応性T細胞による死滅に対する腫瘍細胞の感受性がIFN−γとのプレインキュベーションによって増加することを本明細書中で証明する。同様に、共刺激分子4−1BB(CD137)の全身結紮によってIDOが誘導されることが報告されている28。定義によれば、ほとんどの抗癌免疫治療ストラテジーは、その分子標的と無関係に免疫学的な活性化および炎症の誘導を目的とする(例えば、ワクチン部位または腫瘍内)。実質的に、許容可能な毒性の範囲内でできるだけ高く免疫活性化することが目的である。したがって、拮抗は望ましくない。これに関して、CTLA−4遮断(すなわち、抗CTLA−4抗体)を用いた黒色腫および腎細胞癌患者の両方の処置において、小腸結腸炎と腫瘍退縮との間の関連が報告されている29。したがって、自己免疫反応は、臨床的有効性と明確に相関する30,31。CTLA−4遮断は、自己抗原に対する末梢寛容の減少によるその自己腫瘍効果およびIRAE誘導効果ならびにTreg機能の阻害によるT細胞活性化の増加を媒介すると考えられる。
【0066】
IDO発現細胞が他の免疫治療アプローチの所望の効果を拮抗するので、例えば、ワクチン接種、T細胞の養子移入、または免疫刺激剤によるIDO発現細胞のターゲティング(その全てが本発明の態様である)により、必然的にさらなる抗癌免疫療法との作用が相乗的に高くなる。本発明の開示では、CTL規定IDOエピトープが治療的ワクチン接種で広く適用可能であり、したがって、実質的に免疫療法として有益であることを証明する。
【0067】
したがって、本発明の一態様は、臨床状態処置のための医薬品として使用するためのインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)またはその免疫原性活性ポリペプチドフラグメントを含むワクチン組成物を提供することである。前述の臨床状態は癌であり得る。本発明のさらなる態様は、癌を防止するか、リスクを軽減するか、処置することである。別の態様は、他の医薬品(免疫治療用の医薬品および/または化学療法薬など)と組み合わせた本発明のワクチン組成物の使用に関する。さらなる態様は、ウイルスおよび/または微生物起源の疾患の処置のための本明細書中に開示のワクチン組成物の使用、さらに、他の医薬品(免疫治療用の医薬品および/または抗生物質および/または抗ウイルス薬など)と組み合わせたワクチンの使用に関する。
【0068】
機能的ホモログ
配列
野生型ヒトIDO(すなわち、天然に存在するタンパク質の非変異バージョン)を配列番号1で識別する。本発明は、IDO、IDOの免疫原性活性ペプチドフラグメント、最多で2個のアミノ酸が置換されたIDOのペプチドフラグメント、および/または配列番号1と少なくとも70%の配列が同一のIDOの機能的ホモログを含むワクチン組成物を対象とする。用語ポリペプチドフラグメントを、本明細書中で、配列番号1で識別したIDOに直接由来するか、同一であるように合成されたか、少なくとも70%同一の配列を有するように合成されたアミノ酸残基の任意の非全長(配列番号1と比較した場合)ストリングを定義するために使用する。
【0069】
機能的ホモログを、野生型IDO(野生型ヒトIDOなど)と配列が異なるが依然としてIDO発現細胞(癌細胞およびDCなど)に対する免疫応答を誘導することができるIDOの全長またはフラグメントと定義することができる。これらの細胞中で発現したIDOは、野生型であり得るか、内因性に変異されていてよい(先天性変異体または細胞分裂の間に誘導された変異など)。機能的ホモログは、野生型IDOの変異バージョンまたはオルタナティブスプライスバリアントであり得る。別の態様では、IDOの機能的ホモログを、本明細書中の下記のように定義する。機能的ホモログは、ex vivoで導入された1つまたは複数の変異および/または1つまたは複数の配列の欠失および/または付加を有する全長または断片化されたIDOの組換えバージョンであり得るが、これらに限定されない。
【0070】
IDOの機能的ホモログは、配列番号1と少なくともいくつかの配列が同一であり、且つIDO発現細胞に対する免疫応答を誘導する能力を有する任意のタンパク質/ポリペプチドであり得る。
【0071】
したがって、特定の実施形態では、本発明の免疫原性活性ペプチドフラグメントは、50個のアミノ酸残基、例えば、最多で45個のアミノ酸残基(最多で40個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で35個のアミノ酸残基(最多で30個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で25個のアミノ酸残基(配列番号1で識別されるIDOの18〜25個の連続アミノ酸またはその機能的ホモログなど)からなり、機能的ホモログは、最多で3個のアミノ酸(2個のアミノ酸(1個のアミノ酸など)など)が置換された機能的ホモログである。
【0072】
したがって、別の特定の実施形態では、本発明の免疫原性活性ペプチドフラグメントは、最多で25個のアミノ酸残基(最多で24個のアミノ酸残基など、最多で23個のアミノ酸残基など、最多で22個のアミノ酸残基など、最多で21個のアミノ酸残基など、最多で20個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で19個のアミノ酸残基(最多で18個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で17個のアミノ酸残基(最多で16個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で15個のアミノ酸残基(最多で14個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で13個のアミノ酸残基(最多で12個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で11個のアミノ酸残基(配列番号1のIDO由来の8〜10個の連続アミノ酸またはその機能的ホモログなど)からなり、機能的ホモログは、最多で3個のアミノ酸(2個のアミノ酸(1個のアミノ酸など)など)が置換された機能的ホモログである。好ましくは、ペプチドは、IDO由来の最多で10個の連続アミノ酸残基(配列番号1で識別したIDO由来の最多で9個の連続アミノ酸残基など、8個の連続アミノ酸残基など、7個の連続アミノ酸残基など)またはその機能的ホモログを含み、機能的ホモログは、最多で3個のアミノ酸(2個のアミノ酸(1個のアミノ酸など)など)が置換された機能的ホモログである。
【0073】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明のペプチドはノナペプチド(9個のアミノ酸残基を含むペプチド)およびいくつかのデカペプチド(10残基を含む)であり、これらは以下の制限されない群から選択することができる(最初にペプチド名、次に配列、IDO配列中の位置および配列番号):IDO1:QLRERVEKL(54〜62)(配列番号2);IDO2:FLVSLLVEI(164〜172)(配列番号3);IDO3:TLLKALLEI(195〜203)(配列番号4);IDO4:FIAKHLPDL(41〜49)(配列番号5);IDO5:ALLEIASCL(199〜207)(配列番号:6);IDO6:VLSKGDAGL(320〜328)(配列番号:7);IDO7:DLMNFLKTV(383〜391)(配列番号8);IDO8:VLLGIQQTA(275〜283)(配列番号9);IDO9:KVLPRNIAV(101〜109)(配列番号10);IDO10:KLNMLSIDHL(61〜70)(配列番号11);IDO11:SLRSYHLQIV(341〜350)(配列番号12)。好ましくは、本発明のペプチドは、IDO5:ALLEIASCL(199〜207)(配列番号6);IDO2:FLVSLLVEI(164〜172)(配列番号3);および/またはIDO6:VLSKGDAGL(320〜328)(配列番号7)である。最も好ましくは、本発明のワクチン組成物は、IDO5:ALLEIASCL(199〜207)(配列番号6)の少なくとも1つのペプチドを含む。
【0074】
本発明の他のペプチドは、4個と120個との間、好ましくは8個と100個との間、より好ましくは10個と75個との間、さらにより好ましくは12個と60個との間、さらにより好ましくは15個と40個との間(18個と25個との間など)の配列番号1のIDOの連続アミノ酸または配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログを含み(より好ましくは、からなり)、ここで、配列番号1のIDOの最多で3個のアミノ酸が置換、欠失、または付加されている(2個のアミノ酸が置換、欠失、または付加されているか、1個のアミノ酸が置換、欠失、または付加されているなど)。
【0075】
本発明の1つの実施形態では、IDOペプチドはバリアントペプチドを含む。本明細書中で使用する場合、表現「バリアント」は、適切にはヒトIDOである基本タンパク質に相同であるが、配列内の1つまたは複数のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されるという点でペプチドが由来する基本配列と異なるペプチドをいう。適切には、バリアントは、最多で6個のアミノ酸置換、例えば、最多で5個のアミノ酸置換(最多で4個のアミノ酸置換など)、例えば、最多で3個のアミノ酸置換(最多で2個のアミノ酸置換など)、例えば、最多で1個のアミノ酸置換を有するであろう。
【0076】
適切には、バリアントは、配列番号1のIDOに対して少なくとも70%の配列同一性を共有するであろう。したがって、バリアントは、好ましくは、ヒトIDO配列と少なくとも75%の配列同一性、例えば、少なくとも80%の配列同一性(少なくとも85%の配列同一性など)、例えば、少なくとも90%の配列同一性(少なくとも91%の配列同一性など)、例えば、少なくとも91%の配列同一性(少なくとも92%の配列同一性など)、例えば、少なくとも93%の配列同一性(少なくとも94%の配列同一性など)、例えば、少なくとも95%の配列同一性(少なくとも96%の配列同一性など)、例えば、少なくとも97%の配列同一性(少なくとも98%の配列同一性など)、例えば、99%の配列同一性を有する。
【0077】
配列同一性を、多数の周知のアルゴリズムを使用し、多数の異なるギャップペナルティを適用して計算することができる。配列同一性を、全長配列番号1と比較して計算する。任意の配列アラインメントツール(FASTA、BLAST、またはLALIGNなどであるが、これらに限定されない)を、相同性検索および配列同一性の計算のために使用することができる。さらに、必要に応じて、任意の一般的に知られている置換行列(PAM行列、BLOSSUM行列、またはPSSM行列などであるが、これらに限定されない)を検索アルゴリズムと共に適用することができる。例えば、PSSM(位置特異的スコアリング行列)を、PSI−BLASTプログラムを介して適用することができる。さらに、配列アラインメントを、ギャップオープニングおよびギャップ伸長についてのペナルティ範囲を使用して行うことができる。例えば、BLASTアルゴリズムを、5〜12の範囲のギャップオープニングペナルティおよび1〜2の範囲のギャップ伸長ペナルティと共に使用することができる。
【0078】
機能的等価物は、ヒトタンパク質中に天然に存在しないアミノ酸(アミノ酸)(オルニチンなど)の化学修飾(ユビキチン化、標識(例えば、放射性核種、種々の酵素などを使用)、ペグ化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)、または挿入(または化学合成による置換)など)をさらに含むことができるが、機能的等価物は化学修飾を含まないことが好ましい。
【0079】
配列番号1のIDOのアミノ酸残基配列と比較したアミノ酸残基配列の任意の変化は、保存的置換であることが好ましい。当業者は、一方のアミノ酸を1つまたは複数の共通の化学的および/または物理的特徴を有する他方のアミノ酸と置換する「保存的」アミノ酸置換の作製および評価方法を理解しているであろう。保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能性に影響を及ぼす可能性が低い。アミノ酸を、共通の特徴にしたがって分類することができる。保存的アミノ酸置換は、所定のアミノ酸群内の一方のアミノ酸の同一群内の別のアミノ酸との置換であり、ここで、所定の群内のアミノ酸が類似または実質的に類似の特徴を示す。
【0080】
したがって、本発明の1つの実施形態では、ワクチン組成物は、配列番号1のIDOの8〜50個の範囲のアミノ酸、好ましくは8〜10個または20〜25個の範囲のアミノ酸の連続配列からなり、最多で3個のアミノ酸が置換され、置換が好ましくは保存的であるポリペプチドを含む。
【0081】
MHC
以下の2つのMHC分子型が存在する:MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子。MHCクラスI分子は、適応免疫応答の主なエフェクター細胞であるCD8T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は、主に、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現し、樹状細胞であることが最も重要なようである。APCは、ナイーブT細胞および免疫系中の他の細胞を刺激する。これらは、CD8T細胞およびCD4T細胞の両方を刺激する。
【0082】
1つの実施形態では、いくつかの特徴のうちの少なくとも1つを有することによって特徴づけられる配列番号1のIDO由来の8〜10個のアミノ酸または最多で2個の配列番号1のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログからなる新規のMHCクラスI拘束ペプチドフラグメントを提供する。このいくつかの特徴のうちの1つは、本明細書中に記載のアセンブリ結合アッセイによって決定したところ、最多で50μMであるクラスI HLA分子の最大半量の回収(C50値)が可能なペプチド量によって測定される親和性で拘束されるクラスI HLA分子に結合する能力である。このアセンブリアッセイは、ペプチド輸送体欠損細胞株T2へのペプチドの負荷後のHLA分子の安定化に基づく。その後に、正確に折り畳まれた安定なHLA重鎖を、構造依存抗体を使用して免疫沈降し、ペプチド結合を定量する。本実施形態のペプチドは、最多で200、好ましくは最多で100、より好ましくは最多で50、さらにより好ましくは最多で25、さらにより好ましくは最多で20、なおさらにより好ましくは最多で15(最多で10個など)(例えば、配列番号1のIDOの8〜10個の連続アミノ酸の範囲)または最多で2個の配列番号1のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログを含む(より好ましくは、からなる)。
【0083】
本アッセイは、上記親和性で所与のHLA対立遺伝子分子に結合する能力についての候補ペプチドの簡潔なスクリーニング手段を提供する。好ましい実施形態では、本発明のペプチドフラグメントは、最大で30μMのC50値(最大で20μMのC50値(最大で10μM、最大で5μM、および最大で2μMのC50値が含まれる)など)を有する。
【0084】
別の好ましい実施形態では、本明細書中の下記のいくつかの特徴のうちの少なくとも1つを有することによって特徴づけられる、配列番号1のIDOの新規のMHCクラスII拘束ペプチドフラグメントまたは最多で2個の配列番号1のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログ(本明細書中で「ペプチド」ともいう)を提供する。本実施形態のペプチドは、4個と120個との間、好ましくは8個と100個との間、より好ましくは10個と75個との間、さらにより好ましくは12個と60個との間、さらにより好ましくは15個と40個との間(18個と25個との間など)の配列番号1の配列番号1のIDOの連続アミノ酸または最多で2個の配列番号1のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログを含む(より好ましくは、からなる)。
【0085】
したがって、本明細書中の下記のいくつかの特徴のうちの少なくとも1つを有することによって特徴づけられ、そのうちの1つが拘束されるクラスIまたはクラスII HLA分子に結合する能力である、配列番号1のIDOの8〜10個のアミノ酸の新規のMHCクラスI拘束ペプチドフラグメントまたは18〜25個のアミノ酸の新規のMHCクラスII拘束ペプチドフラグメントまたは最多で2個の配列番号1のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログを提供する。
【0086】
特定の実施形態では、以下の特徴:
(i)ELISPOTアッセイによって決定したところ、癌患者のPBL集団において10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でINF−γ産生細胞を誘発することができること、および/または
(ii)腫瘍組織中でエピトープペプチドに反応性を示すCTLをin situで検出することができること、
(iii)in vitroでのIDO特異的T細胞の成長を誘導することができること
の少なくとも1つを有するMHCクラスI拘束ペプチドまたはMHCクラスII拘束ペプチドであるペプチドフラグメントを提供する。
【0087】
より好ましい本発明のペプチドは、ELISPOTアッセイ(例えば、下記の実施例1に記載のELISPOTアッセイ)によって決定したところ特異的T細胞応答を惹起することができるペプチドである。いくつかのペプチドはMHCクラスIまたはクラスIIと高親和性で結合しないが、ELISPOTによって決定したところT細胞応答を依然として生じ得る。MHCクラスIまたはクラスIIと高親和性で結合することができる他のペプチドはまた、ELISPOTによって決定したところT細胞応答を生じる。両方の種類のペプチドが、本発明の好ましいペプチドである。
【0088】
それ故、本発明の好ましいペプチドは、ELISPOTアッセイによって測定した場合に10個の細胞あたり、より好ましくは10個の細胞あたり、さらにより好ましくは10個の細胞あたり、さらにより好ましくは10個の細胞あたり(10個の細胞あたりなど)50個を超えるペプチド特異的スポットが測定される、特異的T細胞応答を惹起することができるペプチドである。
【0089】
本発明の最も好ましいペプチドは、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態に罹患した個体において細胞性免疫応答を誘発することができるペプチドである。臨床状態は、好ましくは癌または感染であり、最も好ましくは癌である。
【0090】
本明細書中に記載のように、HLA系は、ヒト主要組織適合(MHC)系を示す。一般に、MHC系は、以下の範囲の特徴を調節する:移植抗原、胸腺依存性免疫応答、一定の補体因子、および一定の疾患の素因。より具体的には、MHCは、MHCのより一般的な特徴を決定する3つの異なる分子型(すなわち、クラスI、II、およびIII分子)をコードする。3つの分子のうち、クラスI分子は、ほとんどの有核細胞および血小板の表面上に存在するいわゆるHLA−A分子、HLA−B分子、およびHLA−C分子である。
【0091】
本発明のペプチドは、特定のMHCクラスI HLA分子に結合する(によって拘束される)能力によって特徴づけられる。したがって、1つの実施形態では、ペプチドは、MHCクラスI HLA−A分子(HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A9、HLA−A10、HLA−A11、HLA−Aw19、HLA−A23(9)、HLA−A24(9)、HLA−A25(10)、HLA−A26(10)、HLA−A28、HLA−A29(w19)、HLA−A30(w19)、HLA−A31(w19)、HLA−A32(w19)、HLA−Aw33(w19)、HLA−Aw34(10)、HLA−Aw36、HLA−Aw43、HLA−Aw66(10)、HLA−Aw68(28)、HLA−A69(28)が含まれる)によって拘束されるペプチドである。最初の数字表示のみを使用するより簡潔な表示も文献を通して使用されている(例えば、それぞれ、HLA−Aw19およびHLA−A24(49)の代わりにHLA−A19またはHLA−A24)。特定の実施形態では、本発明のペプチドは、HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11、およびHLA−A24からなる群から選択されるMHCクラスI HLA種に拘束される。特定の実施形態では、本発明のペプチドは、MHCクラスI HLA種であるHLA−A2またはHLA−A3に拘束される。
【0092】
さらに有用な実施形態では、本発明のペプチドは、MHCクラスI HLA−B分子(以下のいずれかが含まれる:HLA−B5、HLA−B7、HLA−B8、HLA−B12、HLA−B13、HLA−B14、HLA−B15、HLA−B16、HLA−B17、HLA−B18、HLA−B21、HLA−Bw22、HLA−B27、HLA−B35、HLA−B37、HLA−B38、HLA−B39、HLA−B40、HLA−Bw41、HLA−Bw42、HLA−B44、HLA−B45、HLA−Bw46、およびHLA−Bw47)によって拘束されるペプチドである。本発明の特定の実施形態では、本発明のペプチドが結合することができるMHCクラスI HLA−B種は、HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27、およびHLA−B51から選択される。
【0093】
さらに有用な実施形態では、本発明のペプチドは、MHCクラスI HLA−C分子(以下のいずれかが含まれるがこれらに制限されない:HLA−Cw1、HLA−Cw2、HLA−Cw3、HLA−Cw4、HLA−Cw5、HLA−Cw6、HLA−Cw7、およびHLA−Cw1)によって拘束されるペプチドである。
【0094】
さらに有用な実施形態では、本発明のペプチドは、MHC クラスII HLA分子(以下のいずれかにが含まれるがこれらに制限されない:HLA−DPA−1、HLA−DPB−1、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DRA、HLA−DRB、これらの群内の全ての対立遺伝子、およびHLA−DM、HLA−DO)によって拘束されるペプチドである。
【0095】
特定のHLA分子に結合する能力を潜在的に有するペプチドを、所与の特定のHLA分子に結合する既知の配列のアラインメントによって選択することができ、それにより、ペプチド中の特定の位置でのいくつかの関連アミノ酸の優性が明らかとなる。かかる優性のアミノ酸残基は、本明細書中で、「アンカー残基」または「アンカー残基モチーフ」ともいう。アクセス可能なデータベース中で見出すことができる既知の配列データに基づいたかかる比較的簡潔な手順にしたがうことにより、ペプチドは、特異的HLA分子に結合する可能性が高いIDOに由来し得る。HLA分子範囲についてのかかる分析の代表例を、以下の表に示す。
【0096】
【表1−1】

【0097】
【表1−2】

1つの実施形態では、この位置に特異的なアンカー残基は存在しないが、好ましい実施形態では、アンカー残基はRまたはAである。
【0098】
したがって、一例として、HLA−A3に結合する能力を潜在的に有するノナペプチドは、以下の配列の1つを有するであろう:Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−K、Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y、Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−F、またはXaa−V−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−K(Xaaは任意のアミノ酸残基を示す)。類似の様式で、任意の他のHLA分子に結合する能力を潜在的に有する配列をデザインすることができる。当業者は所与のHLA分子についてのさらなる「アンカー残基モチーフ」を同定することができると認識されるであろう。
【0099】
本発明のペプチドは、由来するIDOの未変性配列である配列を有することができる。しかし、任意の所与のHLA分子に対してより高い親和性を有するペプチドは、例えば、上記手順に基づいた少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、欠失、または付加による配列の修飾によってかかる未変性配列から誘導することができ、それにより所与のHLA分子に関するアンカー残基モチーフが同定される。
【0100】
したがって、有用な実施形態では、本発明のポリペプチドには、その配列が表に列挙した各特異的HLA対立遺伝子について表中に示す任意のアミノ酸残基を含むペプチドが含まれる。
【0101】
したがって、本発明のペプチドは、好ましくは上記表中に示す所与のHLA−A特異的ペプチドの1つまたは複数の、好ましくは全てのアンカー残基をペプチドが含む様式で1〜10個の範囲、好ましくは1〜5個の範囲、より好ましくは1〜3個の範囲、さらにより好ましくは1〜2個の範囲、さらにより好ましくは1個のアミノ酸が別のアミノ酸と交換された、IDO由来の連続配列を含む任意の上記ペプチドであり得る。
【0102】
本発明の好ましいペプチドが拘束される好ましいHLA種の例には、HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11、およびHLA−A24からなる群から選択されるMHCクラスI HLA種が含まれ、より好ましくはペプチドはHLA−A3またはHLA−A2によって拘束される。あるいは、好ましいHLA種には、HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27、およびHLA−B51からなる群から選択されるMHCクラスI HLA−B種が含まれる。
【0103】
本発明のポリペプチドを同定するためのアプローチは、以下の工程:特定のHLA分子(例えば、所与の集団中に高比率で存在するもの)を選択する工程、上記アラインメント分析を行ってIDOタンパク質中の「アンカー残基モチーフ」を同定する工程、1つまたは複数の同定したアンカー残基を含む適切なサイズのペプチドを単離または構築する工程、および実施例1に記載のELISPOTアッセイによって決定したところ、癌患者のPBL集団において10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でINF−γ産生細胞を誘発するペプチドの能力について得られたペプチドを試験する工程を含む。
【0104】
本発明の一態様では、8〜10個のアミノ酸残基より長いIDO由来ペプチドを提供する。8〜10個のアミノ酸より長いポリペプチドを、HLA分子に結合させるためにプロテアソームによってより短い長さにプロセシングする。したがって、8〜10個のアミノ酸残基長を超えるポリペプチドを投与する場合、IDOの「長い」ポリペプチド/タンパク質/タンパク質フラグメント/バリアントを、プロテアソームによってサイトゾル中で一連のより小さなペプチドにプロセシングする。プロテアソームによって種々の異なるより短いペプチドにプロセシングすることができるより長いポリペプチドを使用することの利点は、1つのペプチドを使用して、特定のHLAクラスに拘束される8〜10個のアミノ酸のペプチドよりも多数のHLAクラスをターゲティングすることができることである。
【0105】
驚いたことに、本発明のいくつかのペプチドは、置換を不必要にするのに十分に高い親和性でMHC分子に結合し(図2を参照のこと)、ここでペプチドが提示される場合に抗原として使える状態にある。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、1つまたは複数の以下を含む:IDOタンパク質(配列番号1)、これに由来するポリペプチドフラグメント、同様にバリアント、全長および部分的な長さのIDOの機能的ホモログ、IDOの連続ペプチド、およびこれらの機能的ホモログ。より好ましくは、ワクチン組成物は、本開示の配列表に列挙した任意の配列を含む。非常に好ましくは、ワクチン組成物は、ペプチドIDO5(配列番号6)、IDO2(配列番号3)、および/またはIDO6(配列番号7)を含む。
【0106】
本発明のペプチドの特筆すべき特徴は、癌および/または感染に罹患した個体のAPCまたは腫瘍細胞/新生物細胞(標的細胞)上でPBL集団中の特定のペプチドを特異的に認識するINF−γ産生反応T細胞(すなわち、細胞傷害性T細胞(CTL))を認識または誘発する能力である。この活性は、個体由来のPBL、APC、または腫瘍細胞をELISPOTアッセイに供することによって容易に決定される。アッセイ前に、細胞を試験すべきペプチドと接触させることによってアッセイすべき細胞を刺激することが有利であり得る。好ましくは、ペプチドは、本明細書中で使用したELISPOTアッセイによって決定したところ、10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でINF−γ産生T細胞を誘発または認識することができる。より好ましくは、頻度は、10個のPBLあたり少なくとも5個、最も好ましくは10個のPBLあたり少なくとも10個(10個のPBLあたり少なくとも50個または100個など)である。
【0107】
ELISPOTアッセイは、IDOペプチド特異的T細胞応答をモニタリングするための強力なツールである。本明細書中の所見は、本発明のペプチドが発現され、癌細胞および/またはIDO発現APC上のHLA分子と複合体を形成することを主に意味する。これにより、これらの癌細胞がCTLによる破壊に感受性を示すようになり、癌および感染と戦うためのIDO免疫化の潜在的有用性が強調される。黒色腫患者由来のPBLにおけるHLA拘束IDO由来ペプチドエピトープに対する自発的CTL応答の存在は、IDO免疫原性ペプチドの免疫療法への潜在性を示す。
【0108】
本発明の1つの実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDOまたは配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログが発現する臨床状態に罹患した個体のPBL集団中でINF−γ産生細胞を誘発することができる。臨床状態は、好ましくは癌または/および感染であり、最も好ましくは癌である。
【0109】
供給源
本発明のペプチドは、上記のように、配列番号1、13、14、15、および/または16のIDOまたはそのフラグメントに由来し、より好ましくは、ペプチドは、配列番号1および/または16のIDOに由来し、最も好ましくは、ペプチドは配列番号1のIDOに由来する。ペプチドが由来し得るタンパク質は、タンパク質が発現される任意の動物種由来の任意のIDOであり得る。好ましい実施形態では、出発タンパク質は、哺乳動物種(げっ歯類、ウサギ、および霊長類(ヒトなど)が含まれる)に由来する。選択されたタンパク質の配列に基づいて、本発明のペプチドは、上記の適切なサイズのペプチドが得られるタンパク質出発物質の任意の適切な化学的または酵素的処理によって誘導されるか、当業者が精通する任意の従来のペプチド合成手順によって合成することができる。より好ましくは、IDOタンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、バリアント、および/またはこれらのいずれかの機能的ホモログは、タンパク質配列がヒトで発現されるIDOに由来する。
【0110】
個体
本発明のワクチン組成物で処置すべき個体は、臨床状態に罹患した個体である。個体は、好ましくは哺乳動物種個体であり、最も好ましくはヒト個体である。個体は任意の年齢(若年または高齢)の個体であり得、男性または女性のいずれでもよい。個体が罹患している臨床状態は、新生物疾患(癌など)または感染(微生物感染またはウイルス感染(例えば、HIV)など)であり得る。
【0111】
本発明の実施形態は、癌の処置、リスクの軽減、安定化、または防止のためのワクチンを提供する。別の実施形態では、本発明は、感染(微生物感染またはウイルス感染など)から生じる疾患の処置、リスクの軽減、安定化、または防止のためのワクチンを提供する。
【0112】
さらなる実施形態は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDO、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸、およびアジュバントを含む、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態の処置のためのワクチン組成物に関する。
【0113】

本発明のワクチン組成物を使用して、臨床状態を防止するか、リスクを軽減するか、処置することができる。好ましくは、臨床状態は、IDO発現に関連するかこれによって特徴づけられる。IDOは、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のいずれかで識別されたIDOであり得、野生型のこれらのいずれかと少なくとも70%同一であるが、機能的である必要がないホモログであり得る。IDOの発現レベル(発現はhnRNA、mRNA、前駆体タンパク質、および完全にプロセシングされたタンパク質などの発現である)が臨床状態に罹患していない個体と同一またはより高いと本明細書中で理解される。本発明の好ましい実施形態では、臨床状態は癌である。癌(悪性新生物)は、細胞群が制御されない成長(正常限度を超える成長および分裂)、浸潤(隣接組織への侵入および破壊)、および時折転移(リンパまたは血液を介した体内の他の位置への拡大)の性質を示す疾患クラスである。これら3つの癌の悪性度は、自己制限され、浸潤や転移のない良性腫瘍と区別される。ほとんどの癌は腫瘍を形成するが、形成しないものもある(白血病など)。本明細書中で使用する場合、用語「癌」は、任意の癌、新生物疾患、および前新生物疾患を含むことを意味する。
【0114】
本発明のワクチンの投与によって処置、管理、および/または防止することができる癌の一例として挙げられる制限されない癌の群には、以下が含まれる:結腸癌腫、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫(lymphangeosarcoma)、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭状癌腫、乳頭腺癌腫、シスタンデオカルシノーマ、髄様癌腫、気管支癌腫、腎細胞癌、肝細胞癌腫、胆管癌腫、絨毛癌腫、セミノーマ、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞性肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、膠芽細胞腫、ニューロノーマ、頭蓋咽頭種(craniopharingiomas)、シュワン細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫(acoustic neuroama)、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病およびリンパ腫、急性リンパ球性白血病および急性骨髄性真性赤血球増加症、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、および重鎖病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、直腸癌、泌尿器癌、子宮癌、口腔癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、喉頭癌、食道癌、乳腺腫瘍、小児期ヌル急性リンパ性白血病(ALL)、胸腺ALL、B細胞ALL、急性骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、急性巨核球性白血病、バーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、およびT細胞性白血病、小細胞および巨大な非小細胞の肺癌腫、急性顆粒球性白血病、胚細胞腫瘍、子宮内膜癌、胃癌、頭頸部癌、慢性リンパ性白血病、毛様細胞白血病、および甲状腺癌。
【0115】
本発明のワクチン組成物の好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、被験体における臨床反応を誘発することができる。ここで、臨床反応を安定病態によって特徴づけることができるか、好ましい実施形態では、臨床反応を部分的応答によって特徴づけることができるか、好ましくは、臨床反応を癌の完全な寛解によって特徴づけることができる。好ましくは、癌は、黒色腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、血液学的癌(白血病など)、結腸および腎臓の細胞癌からなる群から選択される。
【0116】
本発明の一態様では、ワクチン組成物は、個体における臨床反応を誘発することができる。1つの実施形態では、臨床反応を安定病態(さらに悪化も進行もしない)によって特徴づけることができるか、好ましい実施形態では、臨床反応を部分的応答によって特徴づけることができるか、好ましくは、臨床反応を癌または感染の完全な寛解によって特徴づけることができる。臨床反応を、下記のように決定することができる。
【0117】
本発明の別の態様では、ワクチン組成物は、臨床反応が最も巨大な標的病変の最大直径の合計の増加によって特徴づけられる、被験体における臨床反応を誘発することができる。減少を、下記のように決定することができる。
【0118】
器官あたり最大で5個までの病変および全部で10個の病変の全ての測定可能な病変、全ての関連する器官の代表を、標的病変として同定し、ベースラインで記録および測定すべきである。
・標的病変を、そのサイズ(最長の直径を有する病変)および正確な反復測定のためのその適合性(画像化技術によるか臨床的に)に基づいて選択すべきである。
・全標的病変についての最長径(LD)の合計を計算し、ベースライン総和LDとして報告する。ベースライン総和LDを、目的の腫瘍を特徴づける基準として使用するであろう。
・全ての他の病変(または疾患部位)を、非標的病変として同定すべきであり、ベースラインでも記録すべきである。これらの病変の測定は必要でないが、それぞれの有無を追跡を通して留意すべきである。
【0119】
標的病変の評価
・完全な応答(CR):全ての標的病変の消滅。
・部分的応答(PR):ベースライン総和LDを基準として採用した標的病変のLDの総和の少なくとも30%減少。
・進行性疾患(PD):処置開始から記録された最小の総和LDを基準として採用した標的病変のLDの総和の少なくとも20%増加または1つまたは複数の新規の病変の出現。
・安定病態(SD):処置開始から最小の総和LDを基準として採用した、RPを定量するのに十分な縮みおよびPDを定量するのに十分な増加のいずれでもないこと。
【0120】
非標的病変の評価
・完全な応答(CR):全ての非標的病変の消滅および腫瘍マーカーレベルの正常化。
・不完全な応答/安定病態(SD):1つまたは複数の非標的病変の持続および/または正常限度を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
・進行性疾患(PD):1つまたは複数の新規の病変の出現および/または既存の非標的病変の明白な進行。
【0121】
本発明の1つの実施形態では、任意の本明細書中に記載のタンパク質および/またはポリペプチドを含むワクチン組成物は、臨床反応が最大の標的病変の最長の直径の総和の減少によって特徴づけられる、被験体における臨床反応を誘発することができる。
【0122】
IDOを発現する癌に罹患した個体に投与した場合に本発明のワクチン組成物が配列番号1のIDOまたは配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログを発現する癌に対して免疫応答を誘発することができることが意図される。本発明のワクチン組成物は、ワクチン接種個体において癌細胞、IDO発現APCに対して細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を誘発し、そして/または被験体における腫瘍間質中の抗原特異的T細胞の浸潤を誘導することができる。
【0123】
PBL集団において免疫応答を誘発する能力に加えて、本発明のペプチドがin situで(すなわち、固形腫瘍組織中で)細胞溶解性免疫応答を誘発することができることも意図される。これを、例えば、HLA−ペプチド複合体(例えば、多量体化され、検出可能なレベルで提供される)の提供および本発明のエピトープペプチドと反応性を示す腫瘍組織CTL中で検出するための免疫組織化学染色のためのかかる複合体の使用によって証明することができる。したがって、本発明のペプチドのさらに有意な特徴は、腫瘍組織中でエピトープペプチドに反応性を示すCTLをin situで検出することができることである。
【0124】
本発明のペプチドが、HLA分子に結合して細胞表面上にHLAとペプチドとの複合体を提示し、次いで複合体が細胞溶解性T細胞のエピトープまたは標的として作用するその能力に加えて、他の免疫応答型(複合体に対して抗体を産生するB細胞応答など)および/または遅延型過敏症(DTH)反応を誘発することができることも意図される。本発明のペプチドの注射部位での後者の免疫応答型は、発赤および明確な硬化と定義される。
【0125】
本発明の目的は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)または配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸、およびアジュバントを含む、癌の防止、リスクの軽減、または処置のためのワクチン組成物を提供することである。
【0126】
癌併用処置
いくつかの場合、本発明の処置方法をさらなる従来の癌処置(化学療法、放射線治療、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置など)と組み合わせることが適切であろう。
【0127】
腫瘍細胞中のIDO発現の上昇によって免疫系が阻害されるので、本発明によって開示されたIDOベースの免疫療法と細胞傷害性化学療法および/または別の抗癌免疫療法との組み合わせは、有効な癌治療アプローチである。これらの療法を、本明細書中で、「第2の有効成分」ともいう。
【0128】
本発明のワクチン組成物との同時投与(連続的または同時)に関連する化学療法薬の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:オールトランスレチノイン酸、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イリノテカン、レナリドマイド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。1つの実施形態では、本発明の薬剤の組み合わせで用いる化学療法薬自体が、異なる化学療法薬の組み合わせであり得る。適切な組み合わせには、FOLFOXおよびIFLが含まれる。FOLFOXは、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、およびオキサリプラチンを含む組み合わせである。IFL処置には、イリノテカン、5−FU、およびロイコボリンが含まれる。
【0129】
別の第2の有効成分は、腫瘍処置で個別、同時、または組み合わせて使用するためのキナーゼインヒビターであり得る。適切なキナーゼインヒビターには、抗腫瘍活性を保有することが示されているインヒビター(ゲフィチニブ(イレッサ)およびエルロチニブ(タルセバ)など)が含まれ、これらをペプチドと組み合わせて使用することができる。腎細胞癌処置で有効であることが示されている受容体チロシンキナーゼインヒビター(リンゴ酸スニチニブおよびソラフェニブなど)もまた、第2の有効成分として使用されるのに有用である。
【0130】
第2の有効成分のさらなる例は、免疫刺激物質(例えば、サイトカインおよび抗体)である。サイトカインなどは、以下の群から選択することができるが、これらに制限されない:GM−CSF、I型IFN、インターロイキン21、インターロイキン2、インターロイキン12、およびインターロイキン15。抗体は、好ましくは、免疫刺激抗体(抗CD40または抗CTLA−4抗体など)である。免疫刺激物質はまた、免疫阻害細胞(例えば、調節性T細胞)または因子を枯渇させることができる物質であり得、この物質は、例えば、E3ユビキチンリガーゼであり得る。E3ユビキチンリガーゼ(HECT、RING、およびU−ボックスタンパク質)は、免疫細胞機能の重要な分子調節物質として出現し、それぞれ、タンパク質分解性の破壊のための特異的阻害分子のターゲティングによって感染中の免疫応答の調節に関与し得る。いくつかのHECTタンパク質およびRING E3タンパク質はまた、現在のところ、免疫自己寛容の誘導および維持に関連している。c−Cbl、Cbl−b、GRAIL、Itch、およびNedd4はそれぞれ、T細胞成長因子の産生および増殖を下方制御する。
【0131】
1つの実施形態では、IDO由来のポリペプチドを含む本発明のワクチン組成物を、第2の有効成分(免疫刺激物質など)と組み合わせて投与する。免疫刺激物質は、好ましくは、インターロイキン(IL−21またはIL−2など)または化学療法薬である。
【0132】
感染
本明細書中で使用する場合、用語感染は、免疫応答を生じる任意の種類の臨床状態(炎症など)に関し、したがって、感染症、慢性感染、自己免疫容態、およびアレルギー性炎症が含まれる。したがって、感染(感染症、慢性感染、自己免疫容態、およびアレルギー性炎症など)は、本発明に関連する全ての臨床状態であり、以下で同様に扱われる。さらに、用語感染および炎症を、本明細書中で交換可能に使用する。
【0133】
炎症は、有害刺激(病原体、損傷細胞、または刺激物など)に対する血管組織の複雑な生物学的応答である。炎症は、生物による傷害性の刺激を除去し、組織の治癒過程を開始させる防御的試みである。炎症を、急性または慢性のいずれかに分類することができる。急性炎症は、有害刺激に対する身体の最初の応答であり、血漿および白血球の血液から損傷組織への移動の増加によって達成される。生化学的事象のカスケードが炎症反応を伝播および成熟させ、これには、損傷組織内の局所血管系、免疫系、および種々の細胞が関与する。慢性炎症として公知の長期炎症により、炎症部位に存在する細胞型が進行性に変化し、炎症過程由来の組織の同時の破壊および治癒によって特徴づけられる。いずれかの場合、IDOは免疫系細胞(APCなど)によって発現され、したがって、感染および炎症は、本発明のワクチン組成物の投与によって処置することができるか、防止することができるか、リスクを軽減することができる臨床状態である。ワクチン組成物は、好ましくは、IDOタンパク質、由来するタンパク質フラグメント、ポリペプチド、またはペプチド、またはこれらのいずれかの機能的ホモログを含む。
【0134】
本発明に関する炎症に関連する傷害の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アレルギー性炎症、喘息、自己免疫疾患、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、感染症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流障害、関節リウマチ、移植片拒絶、および脈管炎。
【0135】
慢性感染および慢性炎症
慢性炎症は、特に本発明に関連する。慢性炎症は、同時活動性炎症、組織破壊、および修復の試みによって特徴づけられる病的状態である。慢性炎症組織は、単核免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、および形質細胞)の浸潤、組織破壊、および治癒の試み(血管形成および線維形成が含まれる)によって特徴づけられる。
【0136】
急性炎症では、刺激の除去によって単球(適切な活性化下でマクロファージになる)の炎症組織への動員が停止され、既存のマクロファージがリンパ管を介して炎症組織から抜け出る。しかし、慢性炎症組織では、刺激は持続的であり、したがって、単球の動員が維持され、既存のマクロファージが所定の位置に係留され、マクロファージの増殖が刺激される(特に、アテローム斑中)。
【0137】
本発明の目的は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸、およびアジュバントを含む、慢性炎症の防止、リスクの軽減、または処置のためのワクチン組成物を提供することである。
【0138】
感染症
本発明のワクチン組成物を使用して、臨床状態を防止するか、リスクを軽減するか、処置することができる。本発明の好ましい実施形態では、臨床状態は感染症である。感染症を、感染症に罹患した個体において増加されたIDO発現を誘導することができる任意の感染性因子(細菌、ウイルス、寄生虫、および/または真菌など)によって促進することができ、好ましくは、感染症は、慢性疾患であるか、慢性疾患リスクがある。発明の背景に記載のように、IDO発現の増加は、トリプトファン除去によってIDO発現生物の近傍の微生物因子に直接影響を及ぼす。しかし、IDO発現細胞がAPCである場合に、IDO発現の増加がTreg細胞の活性を誘導/阻害するので、このアプローチは逆効果である。したがって、本発明の態様は、感染性因子に起因する疾患の処置、改善(重症度の軽減)、安定化および/または防止のためのIDOタンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、および/またはこれらのいずれかのバリアントを含むワクチン組成物を提供することである。
【0139】
感染症はウイルスに起因し得、処置で本発明のワクチン組成物を投与することができるウイルス疾患には以下のウイルス疾患が含まれるが、これらに限定されない:HIV、AIDS、AIDS関連症候群、水疱(水痘)、感冒、サイトメガロウイルス感染、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、手足口病、肝炎、単純ヘルペス、帯状疱疹、HPV(ヒトパピローマウイルス)、インフルエンザ(Flu)、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、伝染性単核球症、ムンプス、ノロウイルス、灰白髄炎、進行性多巣性白質脳症(Progressive multifocal leukencephalopathy)、狂犬病、風疹、SARS、天然痘(痘瘡)、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、ウエストナイル疾患、および黄熱病。好ましくは、ワクチン組成物を、HIV/AIDSおよび癌を生じ得るウイルス感染に罹患した個体に投与する。ヒト癌に関連する主なウイルスは、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、およびヒトTリンパ球向性ウイルスである。したがって、本発明の目的は、これらのウイルス感染の処置または処置の一部として投与することである。
【0140】
本発明に関連する細菌感染の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:炭疽病、細菌性髄膜炎、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、カンピロバクター症、ネコ引っ掻き病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、淋病、膿痂疹、レジオネラ症、癩病(ハンセン病)、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、リウマチ熱、MRSA感染、ノカルジア症、百日咳(百日咳き)、ペスト、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、野兎病、チフス熱、発疹チフス、および尿路感染。本発明の目的は、細菌感染の処置および/または防止および/またはリスクの軽減のためのワクチンを提供することである。
【0141】
本発明のさらなる態様は、以下の処置および/または防止および/またはリスクの軽減のためのワクチン組成物を提供することである:寄生虫感染症(アフリカトリパソーマ症、アメーバ症、回虫症、バベシア症、シャーガス病、肝吸虫症、クリプトスポリジウム症、嚢虫症,裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、自由生活性アメーバ感染、ランブル鞭毛虫症、顎口虫症、模様条虫症、イソスポーラ症、カラアザール、リーシュマニア症、マラリア、メタゴニムス症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、蟯虫感染、疥癬、住血吸虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、トリコネローシス、旋毛虫症、鞭虫症、トリコモナス症、およびトリパソノーマ症などであるが、これらに限定されない);真菌感染症(アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス症、クリプトコックス症、ヒストプラスマ症、足白癬などであるが、これらに限定されない);プリオン感染症(伝染性海綿状脳症、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー致死性家族性不眠症、およびアルパース症候群などであるが、これらに限定されない)。したがって、本発明の目的は、これらの寄生虫、真菌、またはプリオンに起因する感染の処置または処置の一部として投与することである。
【0142】
感染症併用処置
さらに、本発明のワクチン組成物の投与による任意の感染症の処置をさらなる(第2の)有効成分と併せるか、さらなる処置(抗生物質処置、化学療法、免疫刺激物質を使用した処置、樹状細胞を使用した処置、抗ウイルス薬、および抗寄生虫薬など)と組み合わせて行うことができる。
【0143】
本発明のワクチンと組み合わせて感染症処置で使用することができる第2の有効成分の例には、抗生物質が含まれるが、これに限定されない。本明細書中の用語抗生物質は、抗細菌、抗真菌、抗ウイルス、および/または抗寄生虫活性を有する物質をいう。本発明の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、エルタペネム、イミペネム、メロペネム、クロラムフェニコール、フルオロキノロン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、糖ペプチド、バンコマイシン、リンコサミド、クリンダマイシン、マクロライド/ケトライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリトロマイシン、エリスロマイシン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロール、セファマンドール、セフォニシド、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、ロラカルベフ、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、モノバクタム、アズトレモナム、ニトロイミダゾール、メトロニダゾール、オキサゾリジノン、リネゾリド、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラナート、アンピシリン、スルバクタム、バカンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、ピペラシリン/タゾバクタム、チカルシリン、チカルシリン/クラブラナート、ストレプトグラミン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、スルホンアミド/スルファメトキサゾール、トリメトプリム、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、アゾール抗真菌剤クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ボリコナゾール、アンホテリシンB、ナイスタチン、エキノカンジン、カスポフンギン、ミカファンギン、シクロピロックス、フルシトシン、グリセオフルビン、およびテルビナフィン。抗ウイルス剤(ビダラビン、アシクロビル、ガンシクロビル、およびバルサイト(バルガンシクロビル)など)、ヌクレオシド−アナログ逆転写酵素インヒビター(NRTI):AZT(ジドブジン)、ddI(ジダノシン)、ddC(ザルシタビン)、d4T(スタブジン)、3TC(ラミブジン)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NNRTI):ネビラピン、デラビルジン、プロテアーゼインヒビター:サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネフィルナビル、リバビリン、アマンタジン/リマンタジン、リレンザおよびタミフル、プレコナリル、インターフェロンがさらに関連する。
【0144】
1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗生物質と組み合わせた、感染症処置のためのIDO由来タンパク質、ポリペプチド、および/またはこれらの機能的ホモログを含むワクチン組成物に関する。好ましくは、本発明のワクチン組成物を、慢性感染(例えば、HIV)処置のために使用し、したがって、任意の上記列挙の抗生物質(抗ウイルス薬など)と組み合わせて使用する。
【0145】
自己免疫疾患
生物がその構成要素(分子下レベルに至るまで)を自己として認識できず、その結果、生物自体の細胞および組織に対して免疫応答が生じる場合に、自己免疫疾患が生じる。かかる異常な免疫応答に起因する任意の疾患は自己免疫疾患と呼ばれ、本発明に関連する。その例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:セリアック病、真性糖尿病1型(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、多発性硬化症(MS)、橋本甲状腺炎、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑、および関節リウマチ(RA)。
【0146】
本発明の目的は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸、およびアジュバントを含む、自己免疫疾患の防止、リスクの軽減、または処置のためのワクチン組成物を提供することである。
【0147】
自己免疫疾患の併用処置
現在の自己免疫疾患処置は、通常、免疫抑制治療、抗炎症治療、または対症療法である。非免疫療法(橋本甲状腺炎におけるホルモン補充または真性糖尿病1型処置など)により、自己攻撃を引き起こしている。食事療法により、セリアック病の重症度が制限される。ステロイド処置またはNSAID処置により、多数の疾患の炎症症状が制限される。免疫グロブリンの静脈内調製物(IVIG)は、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIDP)およびギラン・バレー症候群(GBS)のために使用される。より特異的な免疫調節処置(TNFαアンタゴニストエタネルセプトなど)は、RA処置で有用であることが示されている。これらの免疫療法は、有害作用(感染に対する過敏症など)リスクの増加に関連し得る。
【0148】
蠕虫療法はこれらの所見に基づいて開発され、個体への特定の腸内寄生線虫(蠕虫)の接種を含む。現在、2つの密接に関連する処置((Necator americanus(一般に鉤虫として公知)またはTrichuris Suis Ova(一般にブタ鞭虫卵として公知)のいずれかを接種する))が利用可能である。このアプローチが種々の自己免疫障害(クローン病、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー、多発性硬化症、および慢性炎症性障害が含まれる)の処置で非常に有効であることを証明する研究が利用可能である。
【0149】
1つの実施形態では、本明細書中に開示のワクチンを、第2の有効成分(任意の上記薬物など)および自己免疫疾患処置と組み合わせて使用する。
【0150】
アレルギー性炎症
アレルギーは、しばしばアトピーとも呼ばれる免疫系の障害である。アレルギー反応は、アレルゲンとして公知の環境物質に対して生じる。これらの反応は、後天性であり、予測可能であり、急速である。厳密には、アレルギーは、4つの過敏症形態のうちの1つであり、I型(または即時型)過敏症と呼ばれる。IgEとして公知の抗体型による肥満細胞および好塩基球と呼ばれる一定の白血球の過剰な活性化(極度の炎症反応を引き起こす)によって特徴づけられる。一般的なアレルギー反応には、湿疹、蕁麻疹、枯草熱、喘息、食物アレルギー、および刺咬昆虫(ススメバチおよびミツバチなど)の毒液に対する反応が含まれる。
【0151】
アレルギー性炎症は、いくつかの疾病または病状(アレルギー喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、およびいくつかの眼アレルギー性疾患が含まれる)の重要な病態生理学的特徴である。
【0152】
本発明の目的は、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸、およびアジュバントを含む、アレルギー性炎症の防止、リスクの軽減、または処置のためのワクチン組成物を提供することである。
【0153】
アレルギー性炎症の併用処置
アレルギー性炎症の処置、薬物療法、および免疫療法のために以下の2つの治療型が利用可能である:薬物療法および免疫療法。
【0154】
薬物療法は、アレルギー性メディエーターの作用を遮断するか、細胞の活性化および脱顆粒過程を防止するための拮抗薬の使用である。これらには、抗ヒスタミン薬、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エピネフリン(アドレナリン)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、および抗ロイコトリエン(モンテルカスト(シングライル)またはザフィルルカスト(アコレート)など)が含まれる。抗コリン薬、鬱血除去薬、肥満細胞安定剤、および好酸球走化性を損なわせると考えられる他の化合物も一般に使用される。
【0155】
免疫療法は、漸増用量の問題のアレルゲンで個体を段階的にワクチン接種する脱感作治療または減感作処置である。第2の免疫療法の形態は、モノクローナル抗IgE抗体の静脈内注射を含む。第3の形態である舌下免疫療法は、非病原体抗原(食品および常在細菌など)に対する経口免疫寛容を活用する経口投与療法である。
【0156】
1つの実施形態では、本明細書中に開示のワクチンを、第2の有効成分(任意の上記薬物など)およびアレルギー性炎症処置と組み合わせて使用する。
【0157】
薬学的組成物
本発明は、個体においてIDO発現に関連する臨床障害を処置し、リスクを軽減し、そして/または防止することができる薬学的組成物に関する。言い換えれば、用語ワクチンおよび薬学的組成物を本明細書中で交換可能に使用する。本発明のワクチン/薬学的組成物は、抗原(タンパク質、ポリペプチドおよび/または核酸分子など)を含む「伝統的な」ワクチン組成物であり得る。これらはまた、細胞(個体を起源とし、後に処理された改変細胞など)を含む組成物または複合体分子を含む組成物(抗体またはTCRなど)の形態であり得る。
【0158】
一般に、ワクチンは、個体において免疫応答を誘導することができる物質または組成物である。組成物は、1つまたは複数の以下を含むことができる:「活性成分」(抗原など)(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、および核酸など)、他のエレメントのうちの1つまたは複数の抗原を含む核酸構築物、細胞、(例えば、養子移入のための負荷APC、T細胞)、複合体分子(抗体、TCR、およびMHC複合体など)、キャリア、アジュバント、および薬学的キャリア。以下に本発明のワクチン組成物の種々の成分をより詳細に開示する。
【0159】
本発明のワクチン組成物は、癌および/または感染(IDO発現を引き起こす)に罹患した個体に投与した場合に、配列番号1のIDOまたは配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログを発現する癌、DC、またはAPCに対する免疫応答を誘発することができる。好ましい実施形態では、臨床状態は癌である。本発明のワクチン組成物は、ワクチン接種した個体においてIDOを発現する癌細胞、APC、およびDCに対する細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を誘発し、そして/または被験体における腫瘍間質中の抗原特異的T細胞の浸潤を誘導することができる。
【0160】
抗原および他の活性成分
タンパク質/ポリペプチドベースのワクチン組成物
本発明のペプチドは、驚くべき高い親和性で結合し(図2を参照のこと)、ここでペプチドが提示される場合に抗原として使える状態にある。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、1つまたは複数の以下を含む:IDOタンパク質(配列番号1)、これに由来するポリペプチドフラグメント、同様にバリアント、全長および部分的な長さのIDOの機能的ホモログ、IDOの連続ペプチド、およびこれらの機能的ホモログ。より好ましくは、ワクチン組成物は、本開示の配列表に列挙した任意の配列を含む。非常に好ましくは、ワクチン組成物は、ペプチドIDO5(配列番号6)、IDO2(配列番号3)、および/またはIDO6(配列番号7)を含む。
【0161】
本発明のワクチン組成物中の抗原の選択は、当業者によって決定可能なパラメーターに依存するであろう。記載されているように、本発明のそれぞれの異なるペプチドは、特定のHLA分子によって細胞表面上に提示される。そのようなものとして、治療すべき被験体をHLA表現型に関して分類する場合、特定のHLA分子に結合することが公知のペプチドを選択する。あるいは、目的の抗原を、所与の集団中の種々のHLA表現型の頻度に基づいて選択する。一例として、HLA−A2は、白色人種で最も一般的な表現型である。したがって、HLA−A2に結合するペプチドを含む組成物は、白色人種の大部分で活性であろう。さらに、本発明の抗原/ペプチドを、特定のHLA分子への結合を増強するために表2に記載のアンカー残基モチーフにしたがって修飾することができる。
【0162】
本発明の組成物はまた、より高い比率の標的集団を対象とするために2つ以上のIDO由来のペプチド(それぞれ、異なるHLA分子と特異的に相互作用する)の組み合わせを含むことができる。したがって、例として、薬学的組成物は、HLA−A分子によって拘束されるペプチドとHLA−B分子によって拘束されるペプチドとの組み合わせ(例えば、標的集団中のHLA表現型の頻度に対応するHLA−A分子およびHLA−B分子(例えば、HLA−A2およびHLA−B35など)が含まれる)を含むことができる。さらに、組成物は、HLA−C分子によって拘束されるペプチドを含むことができる。
【0163】
ペプチドベースのワクチンの場合、エピトープを、宿主抗原提示細胞による抗原取り込みおよびプロセシングと無関係な外因性負荷によって提示することができる「MHC提供」形態で投与することができる。本発明のペプチドは、短い「MHC提供」形態およびプロテアソームによるプロセシングを必要とし、それにより、複数の腫瘍抗原をターゲティングすることができるより複雑なワクチン組成物が得られるより長い形態の両方のペプチドを含む。より多数の異なるHLA群がワクチンによってターゲティングされるほど、ワクチンが多様な集団で機能する可能性が高くなる。
【0164】
本発明は、好ましい実施形態では、医薬品として使用するためのアジュバントと組み合わせた配列番号1のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)、配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、IDOまたはその機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、またはIDOまたはペプチドフラグメントをコードする核酸を含むワクチン組成物に関する。ワクチン組成物を、個体における臨床状態を処置、防止、または関連するリスクを軽減するために投与することができる。
【0165】
多エピトープワクチン組成物
本発明はまた、高免疫原性多エピトープワクチンに関する。好ましくは、かかるワクチンを、下記の他の適切なペプチドおよび/またはアジュバントと任意選択的に組み合わせた最良に適合させたIDO由来ペプチドの同時送達が容易になるようにデザインすべきである。本発明は、下記のIDOおよび/またはアジュバントに属さないかこれらに由来するさらなるタンパク質またはペプチドフラグメントと任意選択的に組み合わせたIDO由来ペプチドを含むかかる多エピトープワクチンを含む。より複雑な組成物を有するワクチンの開発を駆動する重要な要因は、例えば、慎重に選択したCTLおよびT細胞エピトープの集団を含むかコードするワクチンのデザインによって複数の腫瘍抗原をターゲティングするという要望である。したがって、本発明は、一態様では、クラスIおよびクラスII拘束IDOエピトープの両方を含むワクチン組成物に関する。
【0166】
したがって、本発明のペプチドは、短い「MHC提供」形態(クラスI拘束)およびプロテアソームによるプロセシングを必要とするより長い形態(クラスII拘束)の両ペプチドを含む。したがって、本発明の組成物を、以下に定義のクラスI拘束エピトープおよび/またはクラスII拘束エピトープを含む多エピトープワクチンとして提供することができる。
【0167】
核酸ベースのワクチン組成物
本発明のワクチン組成物は、IDOに属するタンパク質またはその免疫原性活性ペプチドフラグメントをコードする核酸を含むことができる。したがって、この核酸は、上記タンパク質およびペプチドフラグメントのいずれかをコードすることができる。核酸は、例えば、DNA、RNA、LNA、HNA、PNAであり得、好ましくは、核酸はDNAまたはRNAである。
【0168】
本発明の核酸を、任意の適切なベクター(発現ベクターなど)内に含めることができる。多数のベクターが利用可能であり、当業者は特定の目的に有用なベクターを選択することができるであろう。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、または人工染色体の形態であり得る。適切な核酸配列を、種々の手順によってベクターに挿入することができる。例えば、DNAを、当該分野で周知の技術を使用して適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。本発明の核酸配列は別として、ベクターは、1つまたは複数のシグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列をさらに含むことができる。ベクターはまた、さらなる配列(エンハンサー、ポリAテール、リンカー、ポリリンカー、操作リンカー、多重クローニング部位(MCS)、終止コドン、内部リボゾーム侵入部位(IRES)、および組み込みのための宿主相同配列、または他の定義されたエレメントなど)を含むことができる。核酸構築物の操作方法は当該分野で周知である(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,2nd Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照のこと)。ベクターは、好ましくは、適切な細胞中でのその発現を指示する調節核酸配列に作動可能に連結された核酸を含む発現ベクターである。本発明の範囲内で、調節核酸配列は、一般に、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、より好ましくは抗原提示細胞中での発現を指示することができるはずである。
【0169】
1つの好ましい実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。ベクターはまた、細菌ベクター(弱毒化細菌ベクターなど)であり得る。弱毒化細菌ベクターを、感染および持続部位での持続的な粘膜免疫応答を誘導するために使用することができる。異なる組換え細菌をベクターとして使用することができる。例えば、細菌ベクターを、Salmonella、Lactococcus、およびListeriaからなる群から選択することができる。一般に、マウスにおいて強いCTL誘導および腫瘍退縮と共に異種抗原HPV16 L1またはE7に対する免疫の誘導が認められる。ベクターは、T細胞刺激性ポリペプチドをコードする核酸をさらに含むことができる。
【0170】
負荷APC
有用な実施形態では、癌疾患に対して指示される免疫原性応答を、個体由来の抗原提示細胞(APC)上のMHCクラスIまたはクラスII分子に負荷すること、個体からPBLを単離し、細胞をペプチドとインキュベートした後に注射によって個体に細胞を戻すこと、または個体から前駆体APCを単離し、サイトカインおよび抗原を使用して細胞をプロフェッショナルAPCに分化させた後に注射によって個体に細胞を戻すことのいずれかによって本発明のペプチドを投与することによって誘発する。
【0171】
したがって、本発明の態様は、IDOもしくはその免疫原性活性ペプチドフラグメントまたはこのタンパク質をコードする核酸もしくは免疫原性活性ペプチドフラグメントを含む抗原提示細胞を含むワクチン組成物を提供することである。抗原提示細胞は、T細胞に抗原を提示することができる任意の細胞であり得る。好ましい抗原提示細胞は樹状細胞である。樹状細胞(DC)を、任意の適切なプロトコール(例えば、下記のプロトコール)にしたがった治療手順で調製し、使用することができる。当業者は、プロトコールを異なるHLA型および異なる疾患を有する個体で使用されるように適合させることができると認識するであろう。
【0172】
樹状細胞(DC)を、50μg/mlのHLA拘束ペプチド(GMP qualityで合成)と37℃で1時間パルスすることができ、ペプチドおよび5×10細胞を1日目および14日目、その後に4週間毎に皮下投与し、5回のワクチン接種後にさらに白血球搬出を行う。臨床での使用および品質管理のためのDCの生成を、本質的にNicoletteら、(2007)に記載のように行うことができる。
【0173】
したがって、本発明の1つの実施形態では、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態(好ましくは、臨床状態は癌または感染である)に罹患した個体の処置方法は、ex vivoで個体の抗原提示細胞(APC)にペプチドを提示し、その後に処置されたAPCを注射によって個体に戻すことによってペプチドを投与する方法である。これを行うための方法は他に少なくとも2つある。一方の方法は、個体からAPCを単離し、MHCクラスI分子をペプチドとインキュベート(負荷)することである。MHCクラスI分子の負荷は、ペプチドに特異的なMHCクラスI分子を有するAPCがペプチドと結合し、それによりペプチドをT細胞に提示することができるようにAPCをペプチドとインキュベートすることを意味する。その後、APCを個体に再注射する。別の方法は、樹状細胞の細胞生物学分野でなされた最近の発見に依存する。この場合、単球(樹状細胞前駆体である)を個体から単離し、サイトカインおよび抗原の使用によってin vitroでプロフェッショナルAPC(または樹状細胞)に分化する。その後、in vitroで生成されたDCをペプチドでパルスし、個体に注射する。
【0174】
養子免疫療法/養子移入
本発明の重要な態様は、in vitroでのIDO特異的T細胞の培養および個体へのこれらの養子移入に関する。養子移入は、既に特異的免疫応答を生じることができる実際の免疫系成分を医師が個体に直接移入することを意味する。
【0175】
本発明の1つの目的は、例えば、養子移入に有用であり得るIDO特異的T細胞を提供することである。IDOペプチド/MHCクラスI複合体またはIDOペプチド/MHCクラスII複合体に特異的に結合することができるT細胞受容体を含む単離T細胞を個体に養子移入することができる。このT細胞は、好ましくは、in vitroで拡大したT細胞であり、IDOペプチドは上記の任意のIDOペプチドであり得る。in vitroでのT細胞の拡大方法は当業者に周知である。本発明はまた、MHC拘束IDOペプチド複合体に特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞を個体(癌疾患に罹患したヒトなど)に投与する工程を含み、IDO由来ペプチドが上記の任意のIDOペプチドであり得る、処置方法に関する。本発明は、さらに、癌または感染の処置薬の調製のためのIDOまたはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞の使用に関する。本質的にWalterら、(1995)に記載のように自己T細胞移入を行うことができる。
【0176】
TCR移入
さらに別の実施形態では、かかるT細胞を養子移入前に照射して、個体中の増殖を調節することができる。TCR遺伝子移入によってT細胞の特異性を遺伝子操作することが可能である(Engelsら、2007)。これにより、IDOペプチド特異性を保有するT細胞を個体に移入することが可能である。一般に、腫瘍またはウイルスの存在しない環境下でのT細胞の拡大および注入前のT細胞機能の分析が可能であるので、養子免疫療法のためのT細胞の使用は魅力的である。養子移入におけるTCR遺伝子改変T細胞(異種TCR発現を指示する発現構築物で形質転換されたT細胞など)の適用は、T細胞株の移入と比較して以下のいくつかの利点を有する:(i)再指示されたT細胞の生成を一般に利用可能であること。(ii)高親和性または超高親和性TCRを選択または作製し、T細胞操作に使用することができること。(iii)コドン最適化またはマウス化TCRを使用して高アビディティT細胞を生成し、安定化TCRのより良好な表面発現が可能であること。T細胞受容体(TCR)遺伝子移入によるT細胞特異性の遺伝子操作を、本質的にMorganら、(2006)に記載のように行うことができる。
【0177】
TCRトランスフェクション
既知の抗腫瘍反応性を有するTCRを、初代ヒトTリンパ球に遺伝的に導入することができる。腫瘍特異的CTLクローン由来のTCRのα鎖およびβ鎖をコードする遺伝子を初代T細胞にトランスフェクトし、この方法で腫瘍抗原に対する特異性を有するT細胞を再プログラミングすることができる。TCR RNAをエレクトロポレーションによってPBLにトランスフェクトする(Schaftら、2006)。あるいは、レトロウイルスベクターを使用したTCR遺伝子移入によって新規の特異性を有するT細胞を得ることができる(Morganら、2006)。しかし、レトロウイルスベクター由来のプロウイルスをトランスフェクトした細胞のゲノム中に無作為に組み込み、その後に細胞成長を妨害することができる。RNAはトランスフェクトされた細胞中に一過性にしか存在せず、ゲノム中に組み込むことができないので、TCRコードRNAを用いたT細胞のエレクトロポレーションによってこの不利益が克服される(Schaftら、2006)。さらに、細胞のトランスフェクションは、研究で日常的に使用されている。
【0178】
アジュバントおよびキャリア
本発明のワクチン組成物は、好ましくは、アジュバントおよび/またはキャリアを含む。有用なアジュバントおよびキャリアの例を以下に示す。したがって、IDOタンパク質、ポリペプチドフラグメント、これらに由来するバリアント、またはペプチドを、本発明の組成物中でアジュバントおよび/またはキャリアと組み合わせることができる。
【0179】
アジュバントは、ワクチン組成物との混合によってIDOまたはそのペプチドフラグメントに対する免疫応答が増加するか、そうでなければ改変される任意の物質である(以下をさらに参照のこと)。キャリアは、IDOまたはそのペプチドフラグメントが関連することができ、得に本発明のペプチドの提示を補助する足場構造(例えば、ポリペプチドまたはポリサッカリド)である。
【0180】
多数の本発明のペプチドは比較的小さな分子である。したがって、ペプチドは、ペプチドをアジュバントおよび/またはキャリアなどの種々の物質と組み合わせてワクチン、免疫原性組成物などを産生するために本明細書中に記載の組成物中に必要とされ得る。広義のアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントについての一般的考察は、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles & Practice(2nd edition,1986)の61〜63頁に記載されている。Godingは、目的の抗原が低分子量であるか免疫原性が低い場合、免疫原性キャリアへのカップリングが推奨されると記述している。かかるキャリア分子の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、およびニワトリ免疫グロブリンが含まれる。種々のサポニン抽出物もまた、免疫原性組成物中のアジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(周知のサイトカイン)をアジュバントとして使用することが提案されている(WO97/28816号)。
【0181】
キャリアは、アジュバントと無関係に存在することができる。キャリアの機能は、例えば、その活性または免疫原性を増加させるためか、安定性を付与するためか、生物学的活性を増加させるためか、血清半減期を増加させるために特定のペプチドフラグメントの分子量を増加させることであり得る。さらに、キャリアは、IDOタンパク質、ポリペプチド、そのバリアントまたはペプチドフラグメントのT細胞への提示を補助することができる。キャリアは、当業者に公知の任意の適切なキャリア(例えば、タンパク質または抗原提示細胞)であり得る。キャリアタンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリン、またはオボアルブミンなど)、免疫グロブリン、またはホルモン(インスリンまたはパルミチン酸など)であり得るが、これらに限定されない。ヒトの免疫化のために、キャリアは、ヒトに許容可能且つ安全な生理学的に許容可能なキャリアでなければならない。しかし、破傷風類毒素および/またはジフテリア類毒素は、本発明の1つの実施形態における適切なキャリアである。あるいは、キャリアは、デキストラン(例えば、セファロース)であり得る。
【0182】
したがって、本発明の態様は、組成物中に存在するIDOタンパク質、ポリペプチドフラグメント、これらに由来するバリアントまたはペプチドがキャリア(例えば、上記タンパク質など)または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞(DC)など)に関連することである。
【0183】
アジュバントは、例えば、以下からなる群から選択することができる:AlK(SO、AlNa(SO、AlNH(SO)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)、Ca(PO、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−DMP)、N−アセチル−ノルヌラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11687、nor−MDPとも呼ばれる)、N−アセチルムラミウル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEとも呼ばれる)、RIBI(MPL+TDM+CWS)を含む2%スクアレン/Tween−80(登録商標)乳濁液、リポ多糖およびその誘導体(脂質Aが含まれる)、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント、Merckアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、Mycobacterium tuberclosis由来のワックスD、Corynebacterium parvum、Bordetella pertussis、およびBrucella属で見出された物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUNのメンバー(米国特許第58767号および同第5,554,372号を参照のこと)、脂質A誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリクスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA−51、およびQS−21。本発明と共に使用すべき好ましいアジュバントには、油/界面活性剤ベースのアジュバント(モンタニドアジュバント(Seppic、Belgiumから利用可能)、好ましくはモンタニドISA−51など)が含まれる。他の好ましいアジュバントは、細菌DNAベースのアジュバント(CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントなど)である。さらなる他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNAベースのアジュバント(ポリI:Cなど)である。イミダゾキニリンは、好ましいアジュバントのさらに別の例である。最も好ましいアジュバントは、ヒトへの使用に適切なアジュバントである。
【0184】
モンタニドアジュバント(全てSeppic,Belgiumから利用可能)を、モンタニドISA−51、モンタニドISA−50、モンタニドISA−70、モンタニドISA−206、モンタニドISA−25、モンタニドISA−720、モンタニドISA−708、モンタニドISA−763A、モンタニドISA−207、モンタニドISA−264、モンタニドISA−27、モンタニドISA−35、モンタニドISA51F、モンタニドISA016D、およびモンタニドIMSからなる群から選択することができ、好ましくは、モンタニドISA−51、モンタニドIMS、およびモンタニドISA−720からなる群から選択することができ、より好ましくはモンタニドISA−51からなる群から選択することができる。モンタニドISA−51(Seppic,Inc.)は、異なる界面活性剤を非代謝性鉱物油、代謝性油、またはこれら2つの混合物と組み合わせた油/界面活性剤ベースのアジュバントである。これらを、IDOまたはそのペプチドフラグメントを含む水溶液を有する乳濁液として使用するために調製する。界面活性剤はオレイン酸マンニドである。QS−21(Antigenics;Aquila Biopharmaceuticals,Framingham,MA)は、水溶液として取り扱われる高度に精製された水溶性サポニンである。QS−21およびモンタニドISA−51アジュバントを、無菌の使い捨てバイアル中に提供することができる。
【0185】
周知のサイトカインGM−CSFは、本発明の別の好ましいアジュバントである。GM−CSFは、ここ10年間にわたってアジュバントとして使用されており、好ましくはWO97/28816号に記載のGM−CSFであり得る。
【0186】
本発明で使用することができるアジュバントの望ましい機能を、以下の表に列挙する。
【0187】
【表2】

本発明のワクチン組成物は、1つを超えるアジュバントを含むことができる。さらに、本発明は、任意のアジュバント物質および/またはキャリア(任意の上記またはその組み合わせが含まれる)をさらに含む治療組成物を含む。IDOタンパク質、そのバリアント、またはペプチドフラグメント、およびアジュバントを任意の適切な順序で個別に投与することができることも意図される。好ましくは、本発明のワクチン組成物は、モンタニドアジュバント(モンタニドISA51またはモンタニドISA720など)またはGM−CSFアジュバントを含む。
【0188】
したがって、本発明は、アジュバント物質(任意の上記またはその組み合わせが含まれる)をさらに含む治療組成物を含む。抗原(すなわち、本発明のペプチド)およびアジュバントを同時または任意の適切な順序で個別に投与することができることも意図される。
【0189】
投与量および投与
薬学的組成物中の本発明の免疫原性ペプチドの量は、特定の適用に応じて変化し得る。しかし、ペプチド組成物の単回用量は、好ましくは、約10μg〜約5000μgの範囲、より好ましくは約50μg〜約2500μg(約100μg〜約1000μgなど)の範囲である。投与様式には、皮内投与、皮下投与、および静脈内投与、持続放出処方物の形態での埋め込みなどが含まれる。当業者に公知の任意および全ての投与形態が本明細書中に含まれる。注射用免疫原性ペプチド組成物の処方に適切であることが当該分野で公知の任意および全ての従来の投薬形態(必要に応じて従来の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、防腐剤、アジュバント、緩衝液の成分などを含む凍結乾燥形態および溶液、懸濁液または乳濁液形態など)も含まれる。
【0190】
薬学的組成物を、当業者に公知の任意の従来のプロトコールを使用して調製および投与することができる。実施例3〜5では、本発明のワクチン組成物の非限定的な調製例およびワクチンなどの非限定的な投与例を示す。当業者は、プロトコールを本明細書中に記載の任意のワクチン組成物に容易に適合することができることを認識するであろう。本発明のさらなる実施形態では、本発明の薬学的組成物は、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態(癌および感染など)に罹患した個体の処置に有用である。
【0191】
本発明の組成物の免疫防御効果を、当業者に公知のいくつかのアプローチを使用して決定することができる。首尾の良い免疫応答を、免疫化後のDTH反応の発生および/またはワクチン組成物のペプチドを特異的に認識する抗体の検出によって決定することもできる。
【0192】
本発明のワクチン組成物を、治療有効量で個体に投与することができる。有効量は、種々の要因(個体の容態、体重、性別、および年齢など)に応じて変化し得る。他の要因には、投与様式が含まれる。
【0193】
薬学的組成物を、種々の経路(皮下、局所、経口、および筋肉内など)によって個体に投与することができる。薬学的組成物を、経口または非経口で投与する。非経口送達方法には、局所投与、動脈内(組織に直接)投与、筋肉内投与、皮下投与、髄内投与、髄腔内投与、脳室内投与、静脈内投与、腹腔内投与、または鼻腔内投与が含まれる。本発明はまた、ワクチン組成物を用いた予防および処置で用いるのに適切な局所、経口、全身、および非経口用の薬学的処方物を提供することを目的とする。
【0194】
例えば、ワクチン組成物を、錠剤、カプセル(それぞれ、持続放出処方物および徐放処方物が含まれる)、丸薬、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、溶液、懸濁液、シロップ、および乳濁液、または注射などの経口投薬形態で投与することができる。同様に、ワクチン組成物を、静脈内形態(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内形態、皮下形態、局所形態(閉塞ありまたはなし)、または筋肉内形態(全ての使用形態は、薬学分野の当業者に周知)で投与することもできる。本明細書中に記載の任意の化合物を含む有効であるが非毒性の量のワクチンを、予防薬または治療薬として使用することができる。注射用免疫原性ペプチド組成物の処方に適切であることが当該分野で公知の任意および全ての従来の投薬形態(必要に応じて従来の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、防腐剤、アジュバント、緩衝液の成分などを含む凍結乾燥形態および溶液、懸濁液または乳濁液形態など)も含まれる。
【0195】
本発明のワクチン組成物の好ましい投与様式には、全身投与(静脈内または皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経口投与、直腸投与、膣投与、肺投与、および一般的に任意の粘膜投与形態など)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本明細書中に記載の任意の投与形態のための手段が本発明に含まれることが本発明の範囲内に含まれる。
【0196】
本発明のワクチンを、1回または任意の回数(2回、3回、4回、または5回など)投与することができる。1回を超えるワクチン投与は、得られた免疫応答を追加免疫する効果がある。ワクチンを、前の投与と異なる形態または身体の部分にワクチンを投与することによってさらに追加免疫することができる。追加抗原注射は、同種または異種追加抗原注射のいずれかである。同種追加抗原注射は、第1およびその後のワクチン接種が同一構築物、より具体的には、同一送達ビヒクル、特に同一ウイルスベクターを含む場合である。異種追加抗原注射は、同一構築物が異なるウイルスベクター内に含まれる場合である。
【0197】
第2の有効成分
本発明の態様は、得られた本明細書中のワクチン組成物を第2の有効成分と組み合わせて使用することである。ワクチン組成物および第2の有効成分の投与は、連続的または組み合わせであり得る。癌および感染のための第2の有効成分の例は上記である。さらなる態様は、ワクチン組成物を処置すべき所与の臨床状態のための関連する他の療法と組み合わせて使用することができることである。かかる療法には、手術、化学療法または遺伝子治療、免疫刺激物質、または抗体が含まれ得る。当業者は所与のシナリオに適切な併用療法を決定することができる。
【0198】
いくつかの場合、本発明の処置方法をさらなる医学的処置(化学療法、放射線治療、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体および/または抗生物質を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置など)と組み合わせることが適切であろう。
【0199】
診断および予後診断ツール
本発明のペプチドにより、癌疾患および感染に関する広く適用可能な診断手順および予後診断手順を開発するための根拠が得られる。したがって、他の有用な実施形態では、本発明の組成物は、個体におけるIDO発現細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための組成物である。診断手順は、PBLまたは腫瘍組織中のIDO反応性T細胞の検出に基づく。
【0200】
したがって、個体中の1つまたは複数の本発明のペプチドを含むPBLまたは腫瘍組織中のIDO反応性T細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための診断キット、個体中のかかる反応性T細胞の存在の検出方法、腫瘍組織または血液サンプルを本発明のペプチドとクラスIまたはクラスII HLA分子またはかかる分子のフラグメントとの複合体と接触させる工程および組織または血球への複合体の結合を検出する工程を含む方法を提供する。一態様では、本発明は、診断試薬(本明細書中に記載の診断試薬など)として有用な本発明のペプチドとクラスIまたはクラスII HLA分子またはかかる分子のフラグメントとの複合体を提供する。かかる複合体は、単量体または多量体であり得る。
【0201】
別の有用な診断または予後診断アプローチは、異種動物種中の抗体(例えば、本発明のヒトIDO由来ペプチドに対して指向するマウス抗体)の生成に基づき、次いで、この抗体を使用して、例えば、ペプチドを提示する癌細胞の存在を診断することができる。かかる免疫化の目的のために、ペプチド量は、一連のin vivo療法で使用した量より少量であり得る(上記の量など)。一般に、好ましい用量は、約1μg〜約750μgのペプチドの範囲であり得る。本発明のペプチドでの免疫化に基づいてモノクローナル抗体を産生することも可能である。したがって、本発明はまた、本発明のペプチドに特異的に結合することができる分子((特に、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(そのフラグメントが含まれる))およびかかる結合を遮断することができる分子(例えば、本発明のペプチドに対して指向するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体に対して惹起する抗体)に関する。本発明は、さらに、本発明のペプチドまたはタンパク質およびこれらをコードする単離核酸に特異的に結合することができる単離T細胞受容体に関する。かかるT細胞受容体を、例えば、当業者に周知の標準的技術を使用してタンパク質またはペプチド特異的T細胞からクローン化することができる。
【0202】
一態様では、本発明はまた、本明細書中に記載のIDOおよび/またはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含む単離T細胞に関する。単離T細胞は、CD8T細胞またはCD4T細胞であり得る。単離T細胞は、好ましくは、in vitroで拡大されたT細胞である。in vitroでのT細胞の拡大方法は当業者に周知である。かかるT細胞は、特に、養子移入(adaptive transfer)または自己細胞移入による癌処置で有用であり得る。したがって、本発明はまた、T細胞を含む薬学的組成物およびIDOまたはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞を必要とする個体(癌および/または感染に罹患した個体など)に投与する工程を含む処置方法に関する。自己細胞移入を、本質的にWalterら(1995)に記載のように行うことができる。
【0203】
本発明は、有効量の本明細書中に定義の組成物(例えば、本明細書中に記載の抗体またはT細胞受容体または部分のキットであり得るペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子)を疾患に罹患している個体に投与する工程を含む、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態(癌および感染(好ましくは癌)など)を処置、防止、緩和、または治癒する手段を提供する。したがって、本発明のさらなる態様は、配列番号1および/または配列番号16のIDO発現に関連する臨床状態の処置方法を提供することである。
【0204】
免疫化のモニタリング
好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物はワクチン組成物である。したがって、本発明の目的および態様は、本発明のワクチン組成物を投与する個体における免疫化をモニタリングすることである。したがって、薬学的組成物は、癌および/または感染に対して免疫応答を誘発することができる免疫原性組成物またはワクチンであり得る。本明細書中で使用する場合、表現「免疫原性組成物またはワクチン」は、IDO発現細胞(癌細胞、APC、またはDCなど)に対して指示される少なくとも1つの免疫応答型を誘発する組成物に関する。したがって、かかる免疫応答は、以下のうちのいずれかであり得る:細胞表面上に提示されるHLA/ペプチド複合体を認識し、細胞を溶解することができるCTLを生成するCTL応答(すなわち、ワクチンは、ワクチン接種被験体中の癌細胞に対する細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を誘発する);抗癌抗体を産生するB細胞応答;および/またはDTH型の免疫応答。本発明の目的は、個体への本発明の組成物の投与後の任意の上記反応のモニタリングによって個体の免疫化をモニタリングすることである。
【0205】
一態様では、本発明は、
i)個体から血液サンプルを提供する工程、
ii)IDOまたはそのペプチドフラグメントを提供する工程であって、タンパク質またはペプチドが本明細書中に記載の任意のタンパク質またはペプチドであり得る、提供する工程、
iii)血液サンプルがタンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうか決定する工程、
iv)それによってタンパク質またはペプチドに対する免疫応答が個体中で惹起されたかどうかを決定する工程を含む、免疫化をモニタリングする方法に関する。
【0206】
個体は、好ましくは、ヒト(例えば、IDOまたはそのペプチドフラグメントまたはタンパク質またはペプチドをコードする核酸で免疫化されたヒト)である。
部分のキット
本発明はまた、
・本明細書中に記載の任意のワクチン組成物および/または
・IDOタンパク質またはそのバリアントおよび/または
・本明細書中に記載の任意のIDOのポリペプチドフラグメント、そのバリアント、および/またはこれら由来のペプチド、および/または
・上記の2項のタンパク質をコードする任意の核酸、および
部分のキットを使用するための説明書
を含む部分のキットに関する。
【0207】
本発明はまた、
・本明細書中に記載の任意のワクチン組成物および/または
・IDOタンパク質またはそのバリアントおよび/または
・本明細書中に記載の任意のIDOのポリペプチドフラグメント、そのバリアント、および/またはこれら由来のペプチド、および/または
・上記の2項のタンパク質をコードする任意の核酸、および
第2の有効成分
を含む部分のキットに関する。
【0208】
好ましくは、癌を処置する場合に例えば上記列挙の化学療法薬の中から第2の有効成分が選択されるように、処置すべき臨床状態に対応して第2の有効成分を選択する。同様に、微生物/ウイルス感染を処置する場合、第2の有効成分は、好ましくは抗生物質および/または抗ウイルス薬である。
【0209】
部分のキットの成分は、好ましくは各組成物中に含まれる。しかし、部分のキットの成分が全て同一組成物内に含まれることは本発明の範囲内である。したがって、部分のキットの成分を、同時または任意の順序で連続的に投与することができる。
【0210】
図面の詳細な説明
図1:IFN−γELISPOTによって測定したIDOに対するHLA−A2拘束T細胞応答。13人の健康な個体、4人の乳癌患者、6人の黒色腫患者、および10人の腎細胞癌患者由来のPBLを分析した。全個体はHLA−A2陽性であった。ペプチドIDO2(FLVSLLVEI)(a)、IDO6(VLSKGDGL)(b)、およびIDO5(ALLEIASCL)(c)を試験した。Tリンパ球をペプチドで1回刺激後、関連ペプチドを用いるか用いないで4×10細胞/ウェルにて2連でプレートした。ペプチド特異的スポットの平均数(ペプチドを添加しないスポットを差し引いた後)を、ImmunoSpot Series2.0分析器(CTL Analyzers)を使用して各患者について計算した。(d)細胞内IDO染色によって測定されたPBMC中のIDO発現に相関したIFN−γ ELISPOTによって測定したPBMC中のIDO5特異的細胞数。患者を以下の2つの群に分類した;IDO−PBMCまたはIDO+PBMC。MFIIDOおよびMFIアイソタイプコントロールを比較する2回サンプリングした片側t検定によって細胞内IDO発現を得た。ここで、MFIは平均蛍光強度である。p値<0.05(有意水準)について、PBMCをIDO+と定義した。白三角は、各群における4×10個のPBMCあたりのIDO5特異的スポットの平均数を示す。黒三角は、各群についての平均のIDO5特異的スポット数を示す。(e)乳癌患者由来のPBMC中のIDO5に対するELISPOT応答の例。
【0211】
図2:IDO5特異的T細胞の四量体分析。(a)HLA−A2拘束ポジティブコントロールペプチドHIV−1pol476〜484(ILKEPVHGV)の結合を、アセンブリアッセイによってペプチドIDO5と比較した。(b)四量体複合体HLA−A2/IDO5−PEおよびCD8−アロフィコシアニンを使用したフローサイトメトリー染色によって視覚化した腎細胞癌患者由来のPBL中のIDO5特異的CD8T細胞の例。ネガティブコントロールとして、同一患者由来のPBLを、四量体複合体HLA−A2/HIV pol476〜484−PEおよびCD8−アロフィコシアニンで染色した。(c)健康なドナーまたは乳癌、黒色腫、もしくは腎細胞癌の患者由来のPBLを、四量体複合体HLA−A2/IDO5またはHLA−A2/HIV polで染色し、ex vivoまたは1回のin vitroペプチド刺激後のいずれかでフローサイトメトリーによって分析した。点線は、IDO5四量体陽性細胞が同一患者においてex vivoおよびin vitroの両方で検出可能であることを示す。(d)フローサイトメトリーによってex vivoで視覚化された腎細胞癌患者由来のCD8T細胞富化PBMC由来のIDO5四量体/CD8ゲーティング細胞のCD45RAおよびCD28表現型分析の例。比較のために、細胞をアイソタイプ適合コントロールで染色した。(e)四量体複合体HLAA2/IDO5−PEおよびCD8−APC−Cy7を使用してフローサイトメトリー染色によって視覚化した黒色腫患者由来のIL−2拡大TIL培養物の例。ネガティブコントロールとして、TILを四量体複合体HLA−A2/HIV pol476〜484−PEおよびCD8−APC−Cy7で染色した。(f)IDO5四量体のポジティブコントロールとして、IDO5特異的T細胞クローンをHLA−A2/HIV−PEおよびHLA−A2/IDO5−PE四量体で染色した。
【0212】
図3:IDO5特異的T細胞クローンの特異性および機能的能力。(RBS35)を51Cr放出アッセイによってアッセイした。(a)ペプチドを使用しないかIDO5ペプチドでパルスしたT2細胞の溶解。(b)HLA−クラスI特異的抗体W6/32を添加しないか添加したIDO+、HLA−A2+結腸癌細胞株SW480の特異的溶解およびIDO−、HLA−A2+結腸癌細胞株HCT−116の溶解。(c)IDO5でパルスしたかパルスしていない非放射性T2細胞を無添加または添加したIDO+、HLA−A2+黒色腫細胞株FM55Mの溶解(インヒビター/標的比=20:1)。(d)HLA−A2陽性AML患者から富化したAML−芽球の溶解。AML−芽球、B細胞、およびT細胞を、CD19およびCD3マイクロビーズをそれぞれ使用してAML患者の骨髄から枯渇させた。高度に富化したAML−芽球を、HLA−クラスI特異的抗体W6/32を添加するか添加しないで標的細胞として使用した。全アッセイを、異なるE:T比で行った。(e)癌細胞株中の細胞内IDO発現を示すヒストグラム。データは、3試験の代表である。MFIIDO(暗色のヒストグラム)およびMFIアイソタイプコントロール(淡色のヒストグラム)を比較する2回サンプリングした片側t検定によって細胞内IDO発現を得た。ここで、MFIは平均蛍光強度である。左:HCT−116(p=0.300)。右:SW480(p=0.002)。
【0213】
図4:ヒストグラムは細胞内IDO染色を示す(暗色のヒストグラム)。ネガティブコントロールは、二次蛍光色素抱合抗体のみでの染色物であった(淡色のヒストグラム)。IDO発現を、MFI陽性−MFIバックグラウンド/2×SDバックグラウンド(式中、MFIは平均蛍光強度である)と定義された染色指数を使用して決定した。細胞を、染色指数が1を超える場合にIDO陽性と定義した21。(a)結腸癌細胞株HCT−116(0,01)およびSW480(1,3)、(b)乳癌細胞株CAMA−1(1,3)およびCAMA−1+IFN−γ(1,8)、および(c)未成熟DC(0,2)および成熟DC(1,2)。
【0214】
図5:51Cr放出アッセイによってアッセイしたIDO5特異的T細胞クローン(RBS35)がIFN−γ処置乳癌細胞株を死滅させる機能的能力。IFN−γ処置前および処置後のHLA−A2陽性乳癌細胞株CAMA−1(a)およびMDA−MB−231(b)の溶解。全アッセイを、異なるE:T比で行った。(c)、左:IFN−□処置前および処置後のCAMA−1中の細胞内IDO発現を示すヒストグラム。データは、3試験の代表である。MFIIDO(暗色のヒストグラム)およびMFIアイソタイプコントロール(淡色のヒストグラム)を比較する2回サンプリングした片側t検定によって細胞内IDO発現を得た。ここで、MFIは平均蛍光強度である。上:CAMA−1(p=0.020およびMFIIDO/MFIアイソタイプコントロール=2.3)。下:CAMA−1+IFN−□処置25(p=0.004およびMFIIDO/MFIアイソタイプコントロール=3.5)。右:IFN−□処置前および処置後のCAMA−1中のHLA−A2発現を示すヒストグラム。データは、3試験の代表である。MFIHLA−A2(暗色のヒストグラム)およびMFIアイソタイプコントロール(淡色のヒストグラム)を比較する2回サンプリングした片側t検定によってHLA−A2発現を得た。上:CAMA−1(p=0.004およびMFIHLA−A2/MFIアイソタイプコントロール=43.7)。下:CAMA−1+IFN−□処置(p=0.002およびMFIIDO/MFIHLA−A2=141.2)。(d)IDO5特異的T細胞のバルク培養によるIDOタンパク質発現の下方制御のためのIDO ShRNAでトランスフェクトした結腸癌細胞株SW480の溶解。ポジティブコントロールとして、コントロールShRNAでトランスフェクトしたSW480細胞を標的細胞として使用した。全アッセイを、異なるE:T比で行った。(d)コントロールShRNA(p=0.001およびMFIIDO/MFIアイソタイプコントロール=4.8)(上)およびIDO ShRNA(p=0.040およびMFIIDO/MFIアイソタイプコントロール=2.1)(下)でトランスフェクトしたSW480中の細胞内IDO発現を示すヒストグラム。
【0215】
図6:51Cr放出アッセイによってアッセイしたIDO5特異的T細胞クローン(RBS35)がDCを死滅させる機能的能力。(a)自己未成熟および成熟DCの溶解。(b)HLA−A2+同種未成熟および成熟DCの溶解。全アッセイを、異なるE:T比で行った。(c)DCにおける細胞内IDO発現を示すヒストグラム。データは、3試験の代表である。MFIIDO(暗色のヒストグラム)およびMFIアイソタイプコントロール(淡色のヒストグラム)を比較する2回サンプリングした片側t検定によって細胞内IDO発現を得た。ここで、MFIは平均蛍光強度である。左:In vitro未成熟DC(p=0.100)。右:In vitro成熟DC(p=0.001)。(d)IDO+PBMCからex vivoで直接単離した自己CD14+単球、CD3+T細胞、およびCD19+B細胞の溶解。コントロールとして、in vitroで生成した自己IDO未成熟DCおよびIDO+成熟DCを使用した。(e)乳癌患者由来のPBMCにおいてELISPOTによって測定したEBV BMLF1280−288(GLCTLVAML)に対するHLA−A2拘束T細胞応答の例。EBV BMLF1(GLCTLVAML)由来のHLA−A2拘束エピトープに対する反応性についての試験前に26のIDO特異的T細胞がなし(左)およびあり(PBMC:IDO特異的T細胞比3000:1)(右)にて、PBMC培養物をIFN−□で5日間処置した。以下の3つの異なるPMBC濃度を試験した:1.5×10細胞、5×10細胞(上の2行)、および10細胞(下の2行)。
【0216】
図7:51Cr放出アッセイによってアッセイしたIDO5特異的T細胞の特異性および機能的能力。(a)IDO5ペプチドまたは無関係のペプチド(HIV−1 pol476−484)でパルスした非放射性T2細胞を無添加および添加したHLA−A2+/IDO+黒色腫細胞株FM55MのRBS35の溶解(インヒビター/標的比=20:1)および標的細胞としてナチュラルキラー細胞株K562を使用して試験したRBS35のNK細胞活性。(b)HLA−A2+AML患者から富化したAML−芽球のRBS35による溶解。AML−芽球、B細胞、およびT細胞を、CD19+およびCD3+マイクロビーズをそれぞれ使用してAML患者の骨髄から枯渇させた。高度に富化したAML−芽球を、HLA−クラスI特異的抗体W6/32を添加するか添加しないで標的細胞として使用した。(c)IDO5ペプチドまたは無関係のペプチド(HIV−1 pol476〜484)でパルスしたT2細胞の溶解およびIDO5特異的T細胞バルク培養によるHLAA2+/IDO+結腸癌細胞株SW480の溶解。(d)51Cr放出アッセイによってアッセイした以下の3つの異なるIDO5特異的T細胞クローンによるHLA−A2+/IDO+結腸癌細胞株SW480およびHLA−A2+/IDO−結腸癌細胞株HCT−116の溶解:(RBS26(白色の三角)、RBS31(黒色の三角)、RBS46(灰色の三角))。全アッセイを、異なるE:T比で行った。
【0217】
図8:Clustal WによるIDO配列の多重アラインメント。
【0218】
図9:Clustal WによるIDOおよびIDOLIKEのペアワイズアラインメント。
【実施例】
【0219】
実施例1
患者/個体
PBL/PBMCを、癌患者(乳癌、黒色腫、および腎細胞癌)および健康なコントロールから採取した。血液サンプルを、任意の種類の抗癌療法の終了から最短で4週間後に採取した。大部分の腎細胞癌患者は以前にIL2およびIFN−αで処置されており、ほとんどの黒色腫患者は高用量のIL2およびIFN−αを投与されている一方で、全乳癌患者は数種類の化学療法(例えば、エピルビシン、ドセタキセル、カペシタビン(cabecitabine))、トラスツズマブ、および/または内分泌療法で予め処置されていた。PBLをLymphoprep分離を使用して単離し、HLAタイピングし(Department of Clinical Immunology,University Hospital,Copenhagen,Denmark)、10%DMSOを含むFCS中で凍結した。全部で20人のHLA−A2+患者が含まれ、これらのうちで採血前に免疫療法を受けた者はいなかった。任意のこれらの測定前に患者から説明と同意を得た。
【0220】
ペプチド
IDO由来のエピトープを、HLA−A2対立遺伝子の好ましいペプチド長、アンカー残基、および補助アンカーについての知識にしたがって予想した。IDOタンパク質のスキャニングを、MHCクラスIアンカー残基のタンパク質配列の手作業の試験と組み合わせて「データベースSYFPEITHIP」32を使用して行った。選択ペプチドをGenscriptから購入した。以下の11種の9量体および10量体のペプチドを産生した:IDO1の54〜62位(QLRERVEKL)、IDO2の164〜172位(FLVSLLVEI)、IDO3の195〜203位(TLLKALLEI)、IDO4の41〜49位(FIAKHLPDL)、IDO5の199〜207位(ALLEIASCL)、IDO6の320〜328位(VLSKGDGL)、IDO7の383〜391位(DLMNFLKTV)、IDO8の275〜283位(VLLGIQQTA)、IDO9の101〜109位(KVLPRNIAV)、IDO10の61〜70位(KLNMLSIDHL)、およびIDO11の341〜350位(SLRSYHLQIV)。ペプチドを、DMSO(最終濃度10mM)または蒸留水に溶解した(最終濃度2mM)。HLA−A2高親和性結合エピトープHIV−1 pol476〜484(ILKEPVHGV)を、無関係のコントロールとして使用した。HLA−A2拘束エプスタイン・バーウイルスペプチドEBVBMLF1280〜288(GLCTLVAML)をコントロールとして使用した。
【0221】
MHCクラスI分子へのペプチド結合についてのアセンブリアッセイ
[35]−メチオニンで代謝的に標識されたHLA−A2分子への合成ペプチド(Genscript)の結合親和性を、以前に記載のアセンブリアッセイで測定した33。アッセイは、細胞溶解の際にTAP欠損細胞株T2から放出された空のHLA分子のペプチド媒介安定化に基づく。安定に折り畳まれたHLA分子を、HLAクラス−I特異的高次構造依存モノクローナル(mAb)W6/32の使用によって免疫沈降し、等電点(IEF)ゲル電気泳動によって分離した。主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)重鎖バンドを、ImageGauge Phosphoimagerプログラム(FUJI Photo Film,Carrolton,TX)を使用して定量した。バンド強度は、アッセイ中に回収されたペプチド結合クラスI MHC複合体の量と直接比例した。HLA−A2の回収物を、100、10、1、および0.1μMの関連ペプチドの存在下で測定した。最大半量安定化に十分なペプチド濃度として各ペプチドのCD50値を計算した。
【0222】
PBLの抗原刺激
酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイの感度を高くするために、分析前にPBLをin vitroにてペプチドで1回刺激した34。0日目に、PBLを解凍し、10μMペプチド(GenScript)の存在下で24ウェルプレート(Nunc)中の5%熱失活ヒト血清を含むX−vivo培地(BioWhittaker)中に濃度2×106細胞にて2ml/ウェルでプレートした。1日後、40IU/ml組換えインターロイキン−2(IL−2)(PeproTech)を培養物に添加した。8日目に培養細胞をIFN−γELISPOTアッセイで試験した。
【0223】
IFN−γELISPOTアッセイ
以前に記載のように、ELISPOTアッセイを使用して、ペプチドエピトープ特異的INF−γ放出エフェクター細胞を定量した17。いくつかの実験では、記載のように(34)PBMCを分析前にin vitroにてペプチドで1回刺激して、アッセイ感度を上げた。簡潔に述べれば、底がニトロセルロース96ウェルプレート(MultiScreen MAIP N45;Millipore)を、抗IFN−γ抗体(1−D1K;Mabtech)でコーティングした。ウェルを洗浄し、X−vivo培地によってブロッキングし、10μMペプチドを使用するか使用しないでエフェクター細胞を異なる細胞濃度にて2連で添加した。プレートを一晩インキュベートした。翌日、培地を破棄し、ウェルを洗浄後、ビオチン化二次抗体(7−B6−1−ビオチン;Mabtech)を添加した。プレートを室温(RT)で2時間インキュベートし、洗浄し、アビジン−酵素抱合体(AP−Avidin;Calbiochem/Invitrogen Life Technologies)を各ウェルに添加した。プレートをRTで1時間インキュベートし、酵素基質NBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies)を各ウェルに添加し、RTで5〜10分間インキュベートした。暗紫色スポットの出現時に、水道水での洗浄によって反応を停止させた。スポットをImmunoSpot Series 2.0分析器(CTL Analyzers)を使用して計数し、ペプチド特異的CTL頻度を、スポット形成細胞数から計算することができる。
【0224】
フローサイトメトリー
四量体染色のために、癌患者および健康なドナー由来のPBLならびに癌患者由来のTILを、in vitroにてペプチドで1回刺激するか、ex vivoで直接分析した。7日目に、CD8細胞をDynal CD8ネガティブ単離キット(Dynal Biotech)を使用してPBLから単離した。得られたT細胞培養物をPEカップリング四量体で染色し、その後に以下の蛍光色素(flourochrome)カップリングmAbで抗体を染色した:CD8−アロフィコシアニン/APC−Cy7、CD3−FITC、CD3−FITC、CD45RO−FITC、CD45RA−PE−Cy5、およびCD28−アロフィコシアニン(BD Immunocytometry Systems)。四量体染色をPBS+2%FCS中で暗所にて室温で15分間行い、それに対して、抗体染色をPBS+2%FCS中にて4℃の暗所で行った。以下のMHC四量体複合体を使用した:HLA−A2/IDO5(ALLEIASCL)およびHLA−A2/HIV−1 pol476〜484(ILKEPVHGV)。サンプルを、DIVAソフトウェア(BD Biosciences)を使用したBD FACS ariaで分析した。
【0225】
癌細胞株およびDCを、フローサイトメトリーを使用してIDO発現について試験した。固定および透過処理後(Cytofix/Cytoperm,BD)、細胞をマウス抗IDO抗体(Millipore Corporation)で染色し、その後にFITC標識抗マウス二次抗体(DAKO)で染色した。全実験について、誤って結合した二次抗体および自己蛍光由来のバックグラウンド蛍光を決定するために、FITCカップリング二次抗体のみで染色したネガティブコントロールを含めた。IDO発現を、MFI陽性−MFIバックグラウンド/2×SDバックグラウンド(式中、MFIは平均蛍光強度である)として定義された染色指数を使用して決定した。細胞を、染色指数が1を超える場合にIDO陽性と定義した21
【0226】
癌細胞を、フローサイトメトリーを使用してHLA−A2発現について試験した。細胞を蛍光色素カップリングHLA−A2 mAb(BD Bioscience)で染色した。比較のために、細胞をアイソタイプ適合コントロールで染色した。サンプルを、DIVAソフトウェア(BD Biosciences)を使用してBD FACS ariaで分析した。正規性を仮定すると、MFIHLA−A2およびMFIアイソタイプコントロールを比較する2回サンプリングした片側t検定によってHLA−A2発現を得た。ここで、MFIは平均蛍光9の強度である。p値<0.05(有意水準)について、細胞をHLA−A2+と定義した。発現倍数を、MFIHLA−A2/MFIアイソタイプコントロールとして定義した。
【0227】
樹状細胞(DC)
10%ヒトAB血清で富化したRPMI−1640中での37℃で60分間の培養皿上の接着によってPBMCからDCを生成した。接着単球を、10%ヒトAB血清を補足したRPMI−1640中にてIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(800U/ml)の存在下で6日間培養した。DCを、IL−1β(2ng/ml)、IL−6(1000U/ml)、TNF−α(10ng/ml)、およびPGE2(1μg/ml)の添加によって測定した。
【0228】
抗原特異的T細胞培養物およびクローンの確立
癌患者由来のPBLを、照射した(25Gy)IDO5負荷自己DC(PBL:DC比=3×10:3×10)、3μg/mlのβ2m、20U/mlのIL−12(PeproTech)、および40U/mlのIL−7(PeproTech)で刺激した。培養物を、10日毎に照射自己DC(2回)、その後に照射PBL(2回)で刺激した。20U/mlのIL−12(PeproTech)および40U/mlのIL−7(PeproTech)をDCでの各刺激後に添加し、40U/mlのIL−2(PeproTech)をPBLでの各刺激後に添加した。1ヶ月間の成長後、培養物を標準的な51Cr放出アッセイにおいてIDO5に対する特異性について試験した。特異的培養物由来のPBLを、106/mlの照射(25Gy)IDO5負荷PBLおよび120U/mlのIL−2(PeproTech)の存在下にて限界希釈によってクローン化した。3〜4日毎に、50μlのIL−2を含む新鮮な培地を、最終濃度120U/mlまで添加した。成長中のクローンを、IDO5負荷PBL(5×10細胞/ウェル)および120U/mlのIL−2を使用して拡大した。拡大後、クローンを、標準的な51Cr放出アッセイにおいて特異性および細胞傷害可能性について試験した。
【0229】
細胞傷害性アッセイ
CTL媒介細胞傷害性についての従来の51Cr放出アッセイを、他に記載のように行った35。標的細胞は、T2細胞、in vitroで生成した自己未成熟および成熟DC、同種HLA−A2陽性未成熟および成熟DC、自己ex vivo単離単球、T細胞およびB細胞(CD14+、CD3+、またはCD19+マイクロビーズ(MACS)を使用して単離)、ナチュラルキラー標的細胞株K562、ex vivo負荷HLA−A2陽性AML−芽球(CD19+およびCD3+マイクロビーズ(MACS)を使用してAML患者の骨髄から単離)、HLA−A2陽性乳癌細胞株CAMA−1およびMDA−MB−231、HLA−A2陽性結腸癌細胞株HCT−116、およびSW480(全てAmerican Type Culture Collection(ATCC)から利用可能)、ならびにHLA−A2陽性黒色腫細胞株FM55M(IPD−ESTDABデータベース由来、www.ebi.ac.uk/cgi−bin/ipd/estdab/36で利用可能)であった。HLA特異的mAb W6/32(2μg/100μl)を使用して溶解をブロッキングした37。いくつかのアッセイでは、癌細胞を100U/ml IFN−γで2日間処置した。
【0230】
AML芽球の富化
CD19+およびCD3+マイクロビーズ(MACS)をそれぞれ使用して、AML患者の骨髄からB細胞およびT細胞を枯渇させた。高度に富化したAML−芽球(CD3−、CD19−)を、標準的な51Cr放出アッセイにおいて標的細胞として使用した。
【0231】
癌細胞におけるIDOの下方制御
ヒトSW480を、製造者の説明書にしたがってFuGene6(Roche)を使用してSuperArrayから得た表示の低分子ヘアピンRNA(ShRNA)プラスミドでトランスフェクトした。細胞を、LSB緩衝液(Sigma)中で直接溶解した。LSB溶解物を5分間ボイルし、10%プレキャストタンパク質ゲル(BioRad)上にロードした。タンパク質を、セミドライトランスファー法によってPVDF膜(Millipore Corporation)に電気的に移行させ、製造者の説明書にしたがって表示の抗体で探索した。ブロットを、Amershamから入手したECLシステムおよびCCDカメラ(LAS−1000,Fujifilm)を使用して現像した。以下の抗体を使用した:抗Cdk7(MO−1)(Santa Cruz)および抗IDO(Millipore Corporation)。
【0232】
IDO由来HLA−A2拘束T細胞エピトープ
11種のIDO由来ペプチドを、主なHLA−A2特異的アンカー残基に基づいたアルゴリズムを使用して選択し、その後に合成した16。ELISPOT IFN−γ分泌アッセイを使用して、癌患者および健康な個体由来の末梢血T細胞をこれらのIDO由来ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在について試験した。このアプローチは、癌患者における腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の同定に非常に有効であることが以前に証明されている17〜19。したがって、HLA−A2陽性の後期癌患者(乳癌、黒色腫、および腎細胞癌)由来の末梢血リンパ球(PBL)を、ELISPOTによる試験前にin vitroにて異なるペプチドで1回刺激した。記載のように、ELISPOTの感度を上げるためにこの手順を選択した17,20。IDO2(IDO164〜172;FLVSLLVEI)、IDO6(IDO320〜328;VLSKGDGL)、特にIDO5(IDO199〜207;ALLEIASCL)に対するELISPOT応答を検出した(図1)。コントロールとして、これら3つのIDO由来ペプチドに対する反応性について健康な個体由来のPBLを試験した。任意の健康なコントロールにおける任意のIDO由来ペプチドに対する自発的応答は検出できなかった。「NCBIデータベース」を使用したこれらのペプチドのアミノ酸配列のBLAST検索により、IDOタンパク質中でこれらのモチーフのみが一般的であることが示された。
【0233】
実施例2
(材料と方法は実施例1に記載のとおりである)
癌患者におけるIDO反応性HLA−A2拘束T細胞の検出
見かけ上最も免疫原性の高いIDO由来ペプチド(すなわち、IDO5)を、アセンブリアッセイによるHLA−A2高親和性ポジティブコントロールエピトープ(すなわち、HIV−1 pol476−484(ILKEPVHGV))との比較によってHLA−A2に対する結合親和性について試験した(図2a)。特に、IDO5は、高親和性コントロールエピトープよりも遥かに良好にHLA−A2に結合した。HLA−A2へのIDO5の高い結合親和性により、安定なHLA−A2/IDO5四量体を作製することができ、これを使用して、フローサイトメトリーによってIDO反応性CTLを検出することができた。この分析により、HLA−A2陽性癌患者の血中のIDO5反応性CD8 T細胞の存在が明確に確認された(図2)。図2bは、コントロールとして使用したHIV四量体複合体での腎細胞癌患者におけるin vitro刺激後のIDO5特異的T細胞応答の例を示す。in vitro刺激によってIDO反応性T細胞の頻度が顕著に増加する一方で、選択した患者においてex vivoでIDO反応性T細胞が容易に検出可能であった(図2c)。in vitro刺激後に最も強い応答を示す3人の患者では、各反応性もex vivoで検出された。全体的に見て、7人のHLA−A2陽性の健康な個体および11人のHLA−A2陽性患者由来のPBLを分析し、健康なドナーにおける0.001%と比較して、癌患者におけるin vitro刺激後の総CD8+T細胞のIDO反応性細胞の平均頻度は0.03%であることが明らかとなった(図2c)。
【0234】
いかなる健康なドナーにおいてもIDO反応性T細胞は検出できなかった(図2b)。IDO反応性T細胞のex vivo染色により、天然に存在するIDO5特異的T細胞がCD45RA−CD28+中心/エフェクター記憶表現型を有することが示された(34)。IDO5四量体ゲーティング細胞のかかるex vivo表現型染色の例を図2dに示す。比較として、サンプルをアイソタイプ適合コントロールで染色した。次に、四量体染色によってHLA−A2+黒色腫および頭頸部癌患者由来のIL−2処置TIL培養物中のIDO5特異的T細胞の存在を試験した。図2eに示すように、IDO5特異的T細胞をTIL間で容易に検出することができる。全体的に見て、5人の分析した患者のうちの4人が検出可能なIDO5特異的T細胞を有していた。同様に、黒色腫患者および頭頸部癌患者由来のTIL培養物中のIDO5特異的T細胞を、ELISPOTで検出することができた(データ示さず)。HLA−A2/IDO5四量体の特異性を調節するために、IDO5特異的T細胞クローンを染色した。HLA−A2/IDO5四量体はIDO5特異的T細胞クローンを有効に染色したのに対して、T細胞クローンはコントロールHLAA2/HIV四量体によって染色されなかった(図2f)。
【0235】
実施例3
(材料と方法は実施例1に記載のとおりである)
IDO特異的T細胞の機能的能力
IDO5ペプチドに対する応答を保有する患者が同定された場合、本発明者らは、in vitroでこのペプチドに対するCTLバルク培養物を生成するためにかかる患者由来のPBLを使用した。PBLを、自己IDO5パルスDCによって刺激した。4ラウンドの刺激後、ペプチドの特異性を標準的な51Cr放出アッセイで試験した。これらのバルク培養物由来の細胞は、IDO5ペプチドでパルスしたTAP欠損T2細胞を溶解した。IDO特異的T細胞の溶解能力をより詳細に分析するために、限界希釈クローニングによってこれらのバルク培養物からCTLクローンを確立した。短い拡大期間後、成長クローンの特異性を、標準的な51Cr放出アッセイによって分析した。IDO特異的溶解能力を示す33個のT細胞クローンのうち、より優れた成長速度によってさらに拡大させるための4個のクローンを選択した。代表的なT細胞クローンを図3aに示す。T細胞クローンRBS35はIDO5パルスT2細胞を有効に死滅させたのに対して、ペプチドを含まないT2細胞は溶解されなかった(図3a)。
【0236】
実施例4
(材料と方法は実施例1に記載のとおりである)
IDO特異的T細胞による腫瘍標的の死滅
多数の癌細胞株およびDCを、細胞内タンパク質染色およびその後のFACS分析によってIDO発現について試験した21。この目的を達成するために、結腸癌細胞株SW480、黒色腫細胞株FM55M、乳癌細胞株CAMA−1およびMDA−MB231、直接富化したAML−芽球、および成熟DCはIDO陽性であった。結腸癌細胞株HCT−116および未成熟DCのみがIDO陰性であった。さらに、癌細胞株のIFN−γ処置によってIDO発現が増加した。
【0237】
IDO染色の代表例を図4中のヒストグラムに示す。
【0238】
重要なことに、T細胞クローンRBS35は、ペプチドパルスT2細胞だけでなくHLA−A2+、IDO+結腸癌細胞株SW480(図3b)も高効率で死滅させた。対照的に、RBS35はHLA−A2+/IDO−結腸癌細胞株HCT−116を溶解しなかった(図3b)。RBS35のHLA拘束を、SW480標的細胞の溶解を完全に無効にしたHLA特異的mAb W6/32を使用したHLA−クラスIのブロッキングによって確認した(図3b)。同様に、HLA−A2+/IDO+黒色腫細胞株FM55MはRBS35によって死滅した(図3c)。IDO5(10μM)ペプチドでパルスした非標識T2細胞を使用した非放射性ターゲティング阻害アッセイにより、死滅のHLA−A2/ペプチド特異性が確認された:非放射性(非標識)IDO5パルスT2細胞の添加によってFM55M黒色腫細胞の死滅が完全に抑制された一方で、ペプチドを使用しない非放射性T2細胞の添加ではFM55Mの死滅効果はなかった(図3c)。無関係のペプチド(HIV−1 pol476−484)でパルスした非放射性T2細胞の添加もFM55Mの死滅効果がなかった(図7a)。NK細胞標的細胞株 K562に対する細胞傷害性は認められなかった(図7a)。
【0239】
さらに、RBS35がAML患者の骨髄由来のex vivoで直接富化したヒトHLA−A2+AML−芽球を溶解する能力を試験した。この目的のために、HLA−A2+AML患者の骨髄からT細胞(CD3+)およびB細胞(CD19+)を枯渇させた。その後、高度に富化したAML−芽球(CD3−、CD19−)を、51Cr放出アッセイにおける標的細胞として使用した。図3dに示すように、RBS35は、HLA依存様式で白血病細胞を有効に溶解した。6人の患者(5人のHLA−A2+患者および1人のHLA−A2−患者)由来のAML芽球を富化し、これらは全てIDOを発現した(データ示さず)。RBS35がHLA依存性様式でHLA−A2+白血病細胞を有効に溶解した一方で、HLA−A2−白血病細胞は溶解されなかった(図7b)。
【0240】
RBS35による腫瘍標的の代表的な死滅を示すために、ポリクローナルのIDO5特異的バルク培養物および3つの他のT細胞クローン(RBS26、RBS31、RBS46)によるSW480の死滅を図7cおよび図7dに示す。RBS35と同様に、これらのクローン(RBS26、RBS31、RBS46)はHLA−A2+/IDO−結腸癌細胞株HCT−116を溶解しなかった(図7d)。
【0241】
最後に、HLA−A2+乳癌細胞株CAMA−1およびMDA−MB−231の死滅を試験した。CAMA−1細胞株はRBS35によって死滅したのに対して(図5a)、MDA−MB−231はRBS35によって認識されなかった(図5b)。INF−γ処置により、両細胞株中のIDO発現は増加した。これと一致して、INF−γ処置は、RBS35によるCAMA−1の死滅を増加させ、MDA−MB−231細胞の死滅を導入させた(図5)。
【0242】
さらに、本発明者らは、ポリクローナルIDO5特異的バルク培養物およびRBS35クローンによる死滅が実際にIDO特異的であることを示す。したがって、IDO shRNAを使用して、ヒトSW480結腸癌細胞株中のIDOタンパク質発現が下方制御され、それにより、これらの腫瘍細胞が死滅から救済された(図5c)。この下方制御を、細胞内タンパク質染色によって視覚化した。これらの染色により、IDO ShRNAの使用によって細胞中のIDOタンパク質発現レベルが減少することが確認された(図5d)。次いで、トランスフェクトした細胞を、51Cr放出アッセイにおける標的分子として使用した。IDO ShRNAでトランスフェクトされた癌細胞は、ポリクローナルIDO特異的バルク培養によって認識されなかったのに対して、無関係のコントロールShRNAでトランスフェクトされた細胞は図5cに示すように死滅した。
【0243】
実施例5
(材料と方法は実施例1に記載のとおりである)
IDO特異的T細胞による免疫コンピテント細胞の死滅
IDO発現は腫瘍細胞および腫瘍間質細胞に拘束されないが、免疫細胞中でも誘導することができる。したがって、次のさらにより重要な工程として、IDO発現DCもIDO反応性CTLによる死滅に感受性を示すかどうかという問題に取り組んだ。この概念を試験するために、本発明者らは、CTLクローンが生成された同一ドナーから自己DCを生成した。IL−1β、IL−6、TNF−α、およびPGE2からなる標準的な成熟カクテルの添加によってDCを成熟させた22。RBS35は、成熟DCを有効に死滅させた。対照的に、自己未成熟IDO−DCはRBS35によって死滅しなかった(図6a)。さらに、HLA−A2+ドナー由来のIDO+成熟DCおよびIDO−未成熟DCのRBS35による認識を試験した。同種成熟化DCはRBS35に死滅したのに対して、同一ドナー由来のIDO−未成熟DCは死滅しなかった(図6b)。
【0244】
図6cでは、iDCと対照的にmDCはIDOを発現することを示す。次に、RBS35が自己の単球、T細胞、およびB細胞を溶解する能力を試験した。この目的のために、CD14+単球、CD3+T細胞、およびCD19+B細胞をex vivoで直接IDO+PBMCから単離した。次いで、単離した細胞を、51Cr放出アッセイにおける標的細胞として使用した。自己CD14+単球、CD3+T細胞、およびCD19+B細胞は、RBS35によって溶解されなかった(図6d)。
【0245】
最後に、IDO特異的T細胞がIDO−発現抑制細胞の枯渇によって免疫応答を増強するかどうかを試験するためのin vitroモデルを提供した。それ故、PBMCの培養物をIFN−γで処置して、自己IDO特異的T細胞を含むか含まない培養物中の免疫活性およびIDO発現を増加させた。5日後、培養物中のEBV BMLF1280−288(GLCTLVAML)由来のHLA−A2拘束免疫優性エピトープに対する免疫反応性を試験した。培養物中の全細胞数が同一であったにもかかわらず、EBVペプチドに対する反応性は、IDO特異的T細胞を有する培養物中でより高かった(図6e)。次ぎに、IDO特異的T細胞の添加が通常の検出限界をはるかに下回る10個のPBMCしか使用しないELISPOTにおいてEBV応答を検出可能な範囲まで免疫反応性を増加させるかどうかを精査した。実際、この低濃度のPBMCでさえも明確なEBV応答を検出することができた(図6e)。予想通り、IDO特異的T細胞を含まない培養物中では、この低い細胞濃度ではいかなるEBV応答は検出できなかった(図6e)。
【0246】
参考文献のリスト
【0247】
【化1】

【0248】
【化2】

【0249】
【化3】

【0250】
【化4】

【0251】
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するためのワクチン組成物であって、
a)配列番号(1、13、14、15、および/または16)のインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)または配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、前記IDOまたは前記その機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、または前記IDOまたは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸、ならびに
b)アジュバント
を含む、ワクチン組成物。
【請求項2】
前記インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)が配列番号1のIDOである、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記免疫原性活性ペプチドフラグメントが5〜50個の範囲のアミノ酸の連続配列からなる、請求項1または2のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記免疫原性活性ペプチドフラグメントが、前記配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDOの
a)8〜11個の範囲のアミノ酸の連続配列および/または
b)18〜30個の範囲のアミノ酸の連続配列または最多で2個のアミノ酸が置換されたその機能的ホモログ
である、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記ワクチン組成物が、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態に罹患した個体に投与した場合に、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDOまたはその機能的ホモログを発現する癌および/または抗原提示細胞に対して免疫応答を誘発することができる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記ワクチン組成物が個体の細胞性免疫応答を誘発することができる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記臨床状態が癌である、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記臨床状態が感染である、請求項1から6のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
以下の特徴:
a)ELISPOTアッセイによって決定したところ、臨床状態に罹患した個体のPBL集団において10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でINF−γ産生細胞を誘発することができ、そして/または
b)腫瘍組織中でエピトープペプチドに反応性を示すCTLをin situで検出することができ、
c)in vitroでのIDO特異的T細胞の成長を誘導することができる
の少なくとも1つを有するMHCクラスI拘束ペプチドを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
MHCクラスI分子によって拘束されるペプチドフラグメントを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
MHCクラスII分子によって拘束されるペプチドフラグメントを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
ペプチドフラグメントを含み、前記ペプチドフラグメントが配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDO由来の8〜10個または18〜25個の連続するアミノ酸からなる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
臨床状態に罹患した個体のPBL集団において10個のPBLあたり少なくとも1個の頻度でINF−γ産生細胞を誘発することができるペプチドフラグメントを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
配列番号1のIDOまたは配列番号1と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログが発現する場合に臨床状態に罹患した個体のPBL集団においてINF−γ産生細胞を誘発することができるペプチドフラグメントを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
癌疾患が腫瘍形成癌疾患である、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記ペプチドフラグメントが、最多で50個のアミノ酸残基、例えば、最多で45個のアミノ酸残基(最多で40個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で35個のアミノ酸残基(最多で30個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で25個のアミノ酸残基(20〜25個のアミノ酸残基など)からなる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記ペプチドフラグメントが、最多で20個のアミノ酸残基、例えば、最多で19個のアミノ酸残基(最多で18個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で17個のアミノ酸残基(最多で16個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で15個のアミノ酸残基(最多で14個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で13個のアミノ酸残基(最多で12個のアミノ酸残基など)、例えば、最多で11個のアミノ酸残基(8〜10個のアミノ酸残基など)からなる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記ペプチドが配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、および/または11の群から選択される、請求項1から15および/または17のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドが配列番号3および/または6(IDO2および/またはIDO5)である、請求項1から15および/または17から18のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項20】
前記ワクチンが、ワクチン接種個体中でIDO発現癌細胞および/またはIDO発現抗原提示細胞に対して細胞傷害効果を有する調節性T細胞の産生を誘発する、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記ワクチン組成物が、被験体における腫瘍間質中の抗原特異的T細胞の浸潤を誘導することができる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記ワクチン組成物が被験体における臨床反応を誘発することができ、前記臨床反応が安定な疾患、部分的応答、または完全な寛解によって特徴づけられる、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
IDOではないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択される免疫原性タンパク質またはペプチドフラグメントをさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記アジュバントが、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、およびイミダゾキニリンからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記アジュバントがモンタニドISAアジュバントである、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記アジュバントがモンタニドISA51またはモンタニドISA720である、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記アジュバントがモンタニドISA51である、請求項26に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記アジュバントがGM−CSFである、請求項1から24のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記ワクチン組成物が、前記免疫原性活性ペプチドフラグメントまたは前記免疫原性活性ペプチドフラグメントをコードする核酸を含む抗原提示細胞を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項29に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
前記核酸が請求項2から14のいずれか1項に記載のペプチドをコードする、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項32】
前記核酸がベクター内に含まれる、請求項1または31のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項33】
前記ベクターが、ウイルスベクターおよび細菌ベクターからなる群から選択される、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
前記ベクターがT細胞刺激性ポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項32または33のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか1項に記載のワクチン組成物および第2の有効成分を含む部分のキット。
【請求項36】
前記第2の有効成分が免疫刺激組成物である、請求項35に記載のワクチン組成物を含む部分のキット。
【請求項37】
さらなる免疫刺激組成物が1つまたは複数のインターロイキンを含む、請求項35または36のいずれか1項に記載の部分のキット。
【請求項38】
前記インターロイキンがIL−2および/またはIL−21から選択される、請求項35から37のいずれか1項に記載の部分のキット。
【請求項39】
前記第2の有効成分が抗癌剤である、請求項1から34のいずれか1項に記載のワクチン組成物を含む部分のキット。
【請求項40】
前記抗癌剤が化学療法薬である、請求項39に記載の部分のキット。
【請求項41】
前記化学療法薬が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イリノテカン、レナリドマイド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンから選択される、請求項39または40のいずれか1項に記載の部分のキット。
【請求項42】
前記第2の有効成分が抗生物質である、請求項1から34のいずれか1項に記載のワクチン組成物を含む部分のキット。
【請求項43】
前記抗生物質が、アモキシシリン、ペニシリン、アシクロビル、および/またはビダラビンから選択される、請求項1から3および20から45のいずれか1項に記載のワクチン組成物を含む部分のキット。
【請求項44】
提供された前記組成物を同時または連続的に投与する、請求項35から43のいずれか1項に記載の部分のキット。
【請求項45】
請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントを含む、臨床状態に罹患した個体におけるIDOに反応性を示すPBLまたは腫瘍組織中のT細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための組成物。
【請求項46】
請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントを含む、臨床状態に罹患した個体におけるIDOに反応性を示すPBLまたは腫瘍組織中のT細胞の存在のex vivoまたはin situ診断のための診断キット。
【請求項47】
請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントとクラスI HLA分子またはクラスII HLA分子またはかかる分子のフラグメントとの複合体。
【請求項48】
単量体である、請求項47に記載の複合体。
【請求項49】
多量体である、請求項47に記載の複合体。
【請求項50】
腫瘍組織または血液サンプルを請求項47に記載の複合体と接触させる工程、および前記組織または血球への前記複合体の結合を検出する工程を含む、臨床状態に罹患した個体におけるIDO反応性T細胞の存在を検出する方法。
【請求項51】
請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子。
【請求項52】
抗体またはそのフラグメントである、請求項51に記載の分子。
【請求項53】
前記分子がT細胞受容体である、請求項51または52のいずれか1項に記載の分子。
【請求項54】
請求項51または53の分子の結合を遮断することができる分子。
【請求項55】
臨床状態に罹患した個体に有効量の請求項1から34のいずれか1項に記載の組成物、請求項51に記載の分子、または請求項35から44のいずれか1項に記載の部分のキットを投与する工程を含む、IDO発現によって特徴づけられる臨床状態を処置する方法。
【請求項56】
処置すべき前記臨床状態が、IDOが発現される癌疾患である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
さらなる癌処置と組み合わせた請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
処置すべき前記臨床状態がAPC中でIDOを発現させる感染である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記感染に対するさらなる処置と組み合わせた、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記さらなる処置が、化学療法、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
臨床状態の処置または防止のための医薬品の製造における請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントまたは請求項1から34のいずれか1項に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項63】
処置すべき前記疾患が、IDOが発現される癌疾患である、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
さらなる癌処置と組み合わせた請求項62または63のいずれか1項に記載の使用。
【請求項65】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線治療、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置からなる群から選択される、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
処置すべき前記臨床状態がAPC中でIDOを発現させる感染である、請求項62に記載の使用。
【請求項67】
前記感染に対するさらなる処置と組み合わせた、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
前記さらなる処置が、化学療法、免疫刺激物質を使用した処置、遺伝子治療、抗体を使用した処置、および樹状細胞を使用した処置からなる群から選択される、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
免疫化をモニタリングする方法であって、
a)個体から血液サンプルを提供する工程、
b)配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDO、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、前記IDOまたは前記その機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、または前記IDOまたは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する工程、
c)前記血液サンプルがタンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうか決定する工程、
d)それによって前記タンパク質またはペプチドに対する免疫応答が前記個体中で惹起されたかどうかを決定する工程
を含む、方法。
【請求項70】
前記IDOが配列番号1のIDOである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ペプチドフラグメントが請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントである、請求項69または70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
癌および/または感染などのIDO発現に関連する臨床状態の処置または防止で用いる、配列番号(1、13、14、15、および/または16)のIDO、配列番号(1、13、14、15、および/または16)と少なくとも70%同一であるその機能的ホモログ、前記IDOまたは前記その機能的ホモログの連続配列を含む免疫原性活性ペプチドフラグメント、または前記IDOまたは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸。
【請求項73】
癌の処置または防止で使用する、請求項1から19のいずれか1項に記載のペプチドフラグメントまたは請求項1から34のいずれか1項に記載のワクチン組成物。

【図8】
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【図9】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−520783(P2011−520783A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504314(P2011−504314)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/DK2009/000095
【国際公開番号】WO2009/143843
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510275507)
【Fターム(参考)】