説明

インバータトランスの駆動方法

【課題】バースト制御時のインバータトランスの唸り音を効果的に抑制できるインバータトランスの駆動方法を提供する。
【解決手段】調光制御手段からのPWM信号によってオン・オフを繰り返すスイッチング手段から出力される高周波電圧を一次側に入力し、二次側に接続された放電灯に高周波電流を出力するインバータトランスの駆動方法であって、PWM信号のオン期間における定常動作期間(t1〜t2)の前後の立ち上がりの一定期間(to〜t1)及び立ち下がりの一定期間(t2〜t3)に、PWM信号を構成する各パルスのオン時間が定常動作期間のPWM信号よりも短いPWM信号(S1〜S10、E1〜E10)を、スイッチング手段に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バースト制御を用いたインバータトランスの駆動方法に関し、特に、放電灯点灯装置のバースト調光において、インバータトランスの唸り音を抑制する駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源や放電灯点灯装置などの負荷駆動装置では、駆動制御方法の一つとして、バースト制御が行われている。バースト制御は、例えば放電灯点灯装置では、調光を主な目的としており、インバータから放電灯の駆動電圧を間欠的に出力して放電灯に点灯期間(オン期間)と消灯期間(オフ期間)を設け、放電灯に流れる高周波電流の間欠動作における点灯期間と消灯期間の比を変動させることによって、時間平均的な輝度を制御するものである。
【0003】
このようなバースト制御では、間欠動作の駆動周波数(以下、バースト周波数ともいう)が数100Hz〜数kHzの可聴周波数であるため、放電灯点灯装置等の負荷駆動装置に使用されるインバータトランスに生じる磁歪によって、バースト周波数の騒音(唸り音)が発生することが知られている。
【0004】
従来、放電灯点灯装置におけるバースト制御に対して、インバータトランスに流れるピーク電流を抑制する点に着目した騒音対策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の放電灯点灯装置では、オン期間においてインバータトランスに発生する高周波電流の発生初期に大きな電流(ピーク電流)が流れ、このピーク電流がバースト周波数に従って繰り返し発生することが、インバータトランスの唸り音の原因であるとの分析に基づいて、オン期間の立ち上がりの一定期間に、インバータ回路に供給される直流電圧を徐々に上昇させることにより、インバータトランスに発生する高周波電流を徐々に増大させ、ピーク電流を抑制することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−300112号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるインバータトランスの駆動方法のように、バースト制御におけるオン期間の立ち上がり時にインバータトランスに発生する高周波電流を徐々に増大させるのみでは、実際には、インバータトランスの唸り音を効果的に低減することはできない。また、このような従来のインバータトランスの駆動方法では、バースト調光のオフ期間が比較的短い場合、インバータトランスの高周波電流が十分に減衰できないまま次のオン期間に移行すると、そのオン期間の高周波電流の立ち上がりにおいてピーク電流が顕著に発生し、その結果、インバータトランスの唸り音を十分に低減できない可能性があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、バースト制御時のインバータトランスの唸り音を効果的に抑制できるインバータトランスの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)調光制御手段からのPWM信号によってオン・オフを繰り返すスイッチング手段から出力される高周波電圧を一次側に入力し、二次側に接続された放電灯に高周波電流を出力するインバータトランスの駆動方法であって、前記PWM信号のオン期間における定常動作期間の前後の立ち上がりの一定期間及び立ち下がりの一定期間に、前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間が前記定常動作期間のPWM信号よりも短いPWM信号を、前記スイッチング手段に供給することを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項1)。
【0010】
(2)(1)項に記載のインバータトランスの駆動方法において、前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち上がりの一定期間は直線状に増大し、前記立ち下がりの一定期間は直線状に減少することを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項2)。
【0011】
(3)(1)項に記載のインバータトランスの駆動方法において、前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち上がりの一定期間のうち、その開始時から所定の期間は直線状に増大し、前記所定の期間以後は、曲線的に増大することを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項3)。
【0012】
(4)(1)または(3)項に記載のインバータトランスの駆動方法において、前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち下がりの一定期間のうち、前記定常動作期間の終了時から所定の期間は曲線的に減少し、前記所定の期間以後は直線状に減少することを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項4)。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載のインバータトランスの駆動方法において、前記立ち上がりの一定期間と前記立ち下がりの一定期間とは、期間長が異なることを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項5)。
【0014】
(6)(5)項に記載のインバータトランスの駆動方法において、前記立ち下がりの一定期間は、前記立ち上がりの一定期間よりも短いことを特徴とするインバータトランスの駆動方法(請求項6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成したことにより、バースト制御時のインバータトランスの唸り音を効果的に抑制できるインバータトランスの駆動方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るインバータトランスの駆動方法が実施される放電灯点灯装置の例を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるインバータトランスの駆動方法を示す図であり、(a)は、オン期間とオフ期間を含むバースト調光の過程を示し、(b)は、オン期間におけるPWM信号の詳細な構成を示し、(c)は、オン期間におけるインバータトランスの電流波形を示すものである。
【図3】本発明の第1実施形態におけるインバータトランスの駆動方法において、PWM信号を構成する各パルスのオン時間の経時変化を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるインバータトランスの駆動方法を示す図であり、(a)は、オン期間におけるPWM信号の詳細な構成を示し、(b)は、オン期間におけるインバータトランスの電流波形を示すものである。
【図5】本発明の第2実施形態におけるインバータトランスの駆動方法において、PWM信号を構成する各パルスのオン時間の経時変化を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態におけるインバータトランスの駆動方法において、PWM信号を構成する各パルスのオン時間の経時変化の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態におけるインバータトランスの駆動方法を説明するため、その駆動方法を実施するために好適な放電灯点灯装置の一例を図1に示す。図1に示す放電灯点灯装置1は、インバータトランスT1を備え、インバータトランスT1の一次巻線W1には、それを駆動するためのフルブリッジ回路(スイッチング手段)3が接続され、フルブリッジ回路3には制御回路(調光制御手段)2が接続されている。インバータトランスT1の二次巻線W2には、放電灯La1が接続されている。
【0018】
放電灯点灯装置1において、制御回路2は、フルブリッジ回路3を駆動するための駆動パルス信号としてPWM信号を出力し、フルブリッジ回路3は、直流電源からの電圧Vinを入力して、制御回路2からのPWM信号に従ってオン・オフを繰り返し、インバータトランスT1を駆動する。インバータトランスT1は、フルブリッジ回路3により一次巻線W1に入力された高周波電圧を昇圧し、昇圧された電圧を二次巻線W2に接続された放電灯La1に印加して、放電灯La1を放電、点灯させるものである。
【0019】
制御回路2が出力するPWM信号は、複数の矩形波パルスから構成されており、各パルスのパルス幅に応じて、フルブリッジ回路3のオン時間が制御される。本実施形態では、各矩形波パルスのハイレベルをとる時間がフルブリッジ回路3のオン時間に相当し、本明細書では、PWM信号を構成する各矩形波パルスについても、このハイレベルをとる時間をオン時間という。
また、本実施形態における制御回路2は、PWM信号を出力してフルブリッジ回路3をオン・オフ動作させ、放電灯La1を点灯させる点灯期間(以下、オン期間ともいう)と、PWM信号の出力を中断してフルブリッジ回路3のオン・オフ動作を停止させ、放電灯La1を消灯させる消灯期間(以下、オフ期間ともいう)とを所定の周波数で繰り返し、バースト調光を実施するものである(図2(a)参照)。
【0020】
さらに、図2(b)、(c)、及び図3を参照して、本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法について詳述すれば、次の通りである。
本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法では、バースト調光におけるオン期間(図2(b)のt0〜t3の期間)において、制御回路2が所定のパルス幅(オン時間)を有する一連の矩形波パルスからなるPWM信号をフルブリッジ回路3に供給し、それによって、放電灯La1を所定の輝度で点灯させる定常動作期間(図2(b)のt1〜t2の期間)の前後に、PWM信号を構成する各矩形波パルスのオン時間が定常動作期間のPWM信号よりも短いPWM信号を、フルブリッジ回路3に供給する期間が設けられている。
【0021】
そして、本実施形態では、上記定常動作期間の前後の期間のうち、オン期間の開始時から定常動作期間に入るまでの立ち上がりの一定期間(図2(b)のt0〜t1の時間)において、PWM信号を構成する各矩形波パルス(図2(b)に模式的に示す一連のパルスS1〜S10)のオン時間は、図3に示すように、直線状に増大する。
また、上記定常動作期間の前後の期間のうち、定常動作期間の終了時からオン期間の終了時までの立ち下がりの一定期間(図2(b)のt2〜t3の時間)において、PWM信号を構成する各矩形波パルス(図2(b)に模式的に示す一連のパルスE1〜E10)のオン時間は、図3に示すように、直線状に減少する。
(尚、本実施形態では、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)と立ち下がりの一定期間(t2〜t3)の期間長は、同一とする。)
【0022】
これによって、インバータトランスに発生する高周波電流も、図2(c)に模式的に示す電流波形のように、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)において、直線状に増大して定常動作期間における所定の大きさに到達し、立ち下がりの一定期間(t2〜t3)において、定常動作期間における所定の大きさからゼロになるまで、直線状に減少することになる。
【0023】
このように、本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法では、PWM信号のオン期間における立ち上がりの一定期間(t0〜t1)と立ち下がりの一定期間(t2〜t3)に、PWM信号を構成する各矩形波パルスのオン時間が定常動作期間のPWM信号よりも短いPWM信号(S1〜S10、E1〜E10)を、制御回路2からフルブリッジ回路3に供給することによって、インバータトランスT1の高周波電流におけるピーク電流の発生が抑制され、インバータトランスT1の唸り音を効果的に低減することができる。
【0024】
尚、一般には、インバータトランスT1の唸り音の発生に対して、インバータトランスT1の高周波電流のオン期間の初期における挙動が支配的な因子ではあるものの、本発明は、オン期間の初期に上述したような立ち上がりの一定期間(t0〜t1)を設けただけでは、この唸り音の低減のために十分ではないことに着目し、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)に加えて、オン期間の終期に、PWM信号を構成する各矩形波パルスのオン時間が定常動作期間のPWM信号よりも短い立ち下がりの一定期間(t2〜t3)を設けることによって、インバータトランスT1の唸り音をより効果的に低減させるものである。
また、このように立ち下がりの一定期間(t2〜t3)を設けたことにより、この一定期間内でインバータトランスT1の高周波電流を十分に減少させることができるため、バースト調光のオフ期間が比較的短い場合でも、次のオン期間におけるピーク電流の抑制効果が顕著に発揮される。
【0025】
さらに、本実施形態では、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)において、PWM信号を構成する各矩形波パルス(S1〜S10)のオン時間を直線状に増大させ、立ち下がりの一定期間(t2〜t3)において、PWM信号を構成する各矩形波パルス(E1〜E10)のオン時間を直線状に減少させることによって、対応する各期間におけるインバータトランスT1の高周波電流もそれぞれ直線状に増大または減少するため、各期間におけるインバータトランスT1における磁束の変化が緩やかになり、それによって、インバータトランスに生じる磁歪が低減するため、インバータトランスT1の唸り音をさらに効果的に減少させることができる。また、これよって、立ち下がりの一定期間(t2〜t3)においてインバータトランスT1の高周波電流をより効果的に減少させることができる。
【0026】
さらに、本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法は、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)及び立ち下がりの一定期間(t2〜t3)におけるインバータトランスT1の高周波電流を、単に徐々に増大及び減少させるのではなく、その態様が直線状となるように制御することによって、次のような効果を奏するものである。
【0027】
一般に、一定期間における電流の立ち上がり(または、立ち下がり)が曲線状である場合には、同一の期間内における電流の立ち上がり(または、立ち下がり)が直線状である場合と比較して、必ずその傾斜が急峻となる(したがって、対応する磁束変化が増大する)期間が存在する(例えば、上に凸の曲線では、立ち上がりの一定期間の初期(または、立ち下がりの一定期間の終期)において直線よりも傾斜が急峻となり、下に凸の曲線では、立ち上がりの一定期間の終期(または、立ち下がりの一定期間の初期)において、直線よりも傾斜が急峻となる)。
【0028】
したがって、インバータトランスにおける高周波電流の増大及び減少の態様を直線状に制御することによって、立ち上がり及び立ち下がりの所定の一定期間内において、インバータトランスT1の磁束変化を一様に緩やかにすることが可能となり、インバータトランスにおける磁歪の発生を抑制して、その唸り音を効果的に減少させる上で有利なものである。
【0029】
加えて、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)及び立ち下がりの一定期間(t2〜t3)において、PWM信号を構成する各矩形波パルス(S1〜S10、E1〜E10)のオン時間の変化を直線状としたため、その傾斜を変えることで、例えば各種インバータトランスの仕様等の必要に応じて定常動作期間を容易に増減することが可能となり、本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法が実施される装置の、回路設計の自由度を向上させることができる。
【0030】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態におけるインバータトランスの駆動方法について説明する。尚、本実施形態における方法は、上述した第1実施形態における方法と比較して、その立ち下がりの一定期間における態様が相違するのみであるため、詳細な説明は省略し、以下では、主として第1実施形態との相違点について説明する。また、以下の説明において、図1及び図2に示す要素に対応する要素には、同一の符号を付して参照する。
【0031】
(第2実施形態)
本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法は、オン期間における立ち下がりの一定期間(図4(a)に示すt2〜t3’の時間)が、立ち上がりの一定期間(図4(a)に示すt0〜t1の時間)よりも短い点で、第1の実施形態におけるインバータトランスの駆動方法と相違するものである。
【0032】
本実施形態におけるインバータトランス駆動方法においても、上述した第1実施形態における駆動方法と同様の作用効果を奏するものであるが、特に、本実施形態が有利であるのは、例えば、次のような場合である。
【0033】
上述したように、一般には、インバータトランスT1の唸り音の発生に対して、インバータトランスT1の高周波電流のオン期間の初期における挙動が支配的な因子である。したがって、所定のオン期間に対して十分に長い定常動作期間(t1〜t2)を確保したい場合には、立ち上がりの一定期間を立ち下がりの一定期間よりも短くする、あるいは、立ち上がり及び立ち下がりで同一の一定期間を均等に短くする等の態様よりも、本実施形態における駆動方法のように、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)の期間長を一定に維持しつつ、立ち下がりの一定期間(t2〜t3’)を、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)よりも短くする駆動方法が有利である。
【0034】
また、本実施形態において、立ち下がりの一定期間(t2〜t3’)が、バースト調光の設計上のオン期間の終了時よりも早く終了するように、立ち下がりの一定期間(t2〜t3’)を設定することにより、立ち下がりの一定期間(t2〜t3’)を短くするものであってもよい。これによって、このオン期間に続くオフ期間において、インバータトランスの高周波電流を確実にゼロにまで減衰させ、次のオン期間の高周波電流の立ち上がりにおけるピーク電流の発生を回避して、インバータトランスT1の唸り音の発生を効果的に低減することができる。このような方法は、特に、バースト調光におけるオフ期間が比較的短い場合に、有利なものである。
【0035】
尚、本実施形態では、立ち下がりの一定期間(t2〜t3’)を、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)よりも短くするものとしたが、本発明に係るインバータトランスの駆動方法は、必要に応じて、立ち上がりの一定期間が、立ち下がりの一定期間よりも短いものであってもよい。
【0036】
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態におけるインバータトランスの駆動方法について説明する。尚、本実施形態における方法は、上述した第1実施形態における方法と比較して、その立ち上がりの一定期間における駆動方法が相違するのみであるため、詳細な説明は省略し、以下では、主として第1実施形態との相違点について説明する。また、以下の説明において、図1及び図2に示す要素に対応する要素には、同一の符号を付して参照する。
【0037】
(第3実施形態)
図6は、制御回路2がフルブリッジ回路3に供給するPWM信号について、その各矩形波パルスのオン時間の経時変化を、オン期間の初期部分について示した図である。本実施形態におけるインバータトランスの駆動方法は、図6に示すように、PWM信号を構成する各パルスのオン時間が、立ち上がりの一定期間(to〜t1)において、その開始時(t0)から所定の期間(t0〜t1’)は直線状に増大し、この所定の期間以後(t1’〜t1)は、曲線的に増大する点で、第1の実施形態におけるインバータトランスの駆動方法と相違するものである。また、本実施形態において、所定の期間(t0〜t1’)以後の期間(t1’〜t1)における曲線は、所定の期間(t0〜t1’)における直線に対して、その各点における傾斜が次第に緩やかになる(すなわち、曲線の各点における微分係数は、0以上となる範囲で、所定の期間(t0〜t1’)における直線の微分係数よりも次第に小さくなる)形状を有するものである。
【0038】
本実施形態における方法は、所定の期間(t0〜t1’)における直線をそのまま延長してなる立ち上がりの態様と比較して、立ち上がりの一定期間(t0〜t1)に要する期間長は延長されるものの、所定の期間以後の期間(t1’〜t1)において、定常動作期間(t1以後)におけるPWM信号のオン時間に近いオン時間を確保しつつ、PWM信号のオン時間の増大(ひいては、インバータトランスT1の高周波電流の立ち上がり)を緩やかにすることにより、上述した第1実施形態における方法よりもインバータトランスT1における磁束変化を低減する効果が向上し、それによって、インバータトランスT1の唸り音をさらに効果的に低減することができる。
また、一般に、インバータトランスT1の唸り音の発生に対しては、立ち上がりの一定期間(t1’〜t1)のうち、定常動作期間(t1以後)に移行する直前の部分の影響が大きいため、本実施形態のように、所定の期間(t0〜t1’)以後の期間(t1’〜t1)を曲線状とする構成は、特に有利なものである。
【0039】
以上、本発明を好ましい実施形態によって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、第3実施形態では、PWM信号の立ち上がりの一定期間のうち、所定の期間以後は曲線的に上昇するようにしたが、立ち下がりの一定期間においても、その一定期間のうち、定常動作期間の終了時から所定の期間は曲線的に減少し、この所定の期間以後は直線状に減少するようにしてもよい。この際、定常動作期間の終了時から所定の期間における曲線は、定常動作期間の終了時から、(所定の期間以後における直線の傾斜よりも緩やかな範囲で)、その傾斜が次第に急峻になる(すなわち、曲線の各点における(負の)微分係数の絶対値は、上記直線の(負の)微分係数の絶対値よりも小さい範囲で、次第に大きくなる)ものである。
【符号の説明】
【0040】
1:放電灯点灯装置、2:制御回路(調光制御手段)、3:フルブリッジ回路(スイッチング手段)、E1〜E10:立ち下がりの一定期間におけるPWM信号を構成する矩形波パルス、La1:放電灯、S1〜S10:立ち上がりの一定期間にけるPWM信号を構成する矩形波パルス、t0〜t1:立ち上がりの一定期間、t1〜t2:定常動作期間、t2〜t3、t2〜t3’:立ち下がりの一定期間、t0〜t1’:立ち上がりの一定期間のうち開始時から所定の期間、t1’〜t1:立ち上がりの一定期間のうち所定の期間以後の期間、T1:インバータトランス、W1:一次巻線、W2:二次巻線、Vin:直流電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光制御手段からのPWM信号によってオン・オフを繰り返すスイッチング手段から出力される高周波電圧を一次側に入力し、二次側に接続された放電灯に高周波電流を出力するインバータトランスの駆動方法であって、前記PWM信号のオン期間における定常動作期間の前後の立ち上がりの一定期間及び立ち下がりの一定期間に、前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間が前記定常動作期間のPWM信号よりも短いPWM信号を、前記スイッチング手段に供給することを特徴とするインバータトランスの駆動方法。
【請求項2】
前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち上がりの一定期間は直線状に増大し、前記立ち下がりの一定期間は直線状に減少することを特徴とする請求項1に記載のインバータトランスの駆動方法。
【請求項3】
前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち上がりの一定期間のうち、その開始時から所定の期間は直線状に増大し、前記所定の期間以後は、曲線的に増大することを特徴とする請求項1に記載のインバータトランスの駆動方法。
【請求項4】
前記PWM信号を構成する各パルスのオン時間は、前記立ち下がりの一定期間のうち、前記定常動作期間の終了時から所定の期間は曲線的に減少し、前記所定の期間以後は直線状に減少することを特徴とする請求項1または3に記載のインバータトランスの駆動方法。
【請求項5】
前記立ち上がりの一定期間と前記立ち下がりの一定期間とは、期間長が異なることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータトランスの駆動方法。
【請求項6】
前記立ち下がりの一定期間は、前記立ち上がりの一定期間よりも短いことを特徴とする請求項5に記載のインバータトランスの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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