説明

インバータ回路

【課題】管電流の監視をせずに、簡易な回路構成でありながら低温時に脈流の発生を回避することができるインバータ回路を提供する。
【解決手段】発振回路16に接続されている固定抵抗21に、サーミスタ22を並列接続する。サーミスタ22は、ランプ11の温度を検知するように設置する。サーミスタ22は、温度の上昇に応じて抵抗値が低下する負特性を有する。したがって、ランプ11の温度が低い場合、固定抵抗21とサーミスタ22の合成抵抗は、高い抵抗値を有することになる。抵抗値が高くなると、発振回路の時定数が高くなり、発振回路16の発振周波数が低下する。ここで、トランス12は、周波数の低下に伴って出力が上昇する特性を有する。よって、ランプの温度変化に応じた最適な電力を出力する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極管を駆動するインバータ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶テレビ等のバックライトは、冷陰極管(CCFL)が多く用いられている。CCFLは、ランプ温度に応じてインピーダンスが変化するため、ランプ温度によって各種特性が変化する。
【0003】
例えば、特許文献1では、起動時の低温状態における低輝度を考慮して、ランプの温度が低い場合にインバータ回路の発振周波数を高く設定し、高速に輝度を上昇させる装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−102397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CCFLは、駆動用インバータ回路のトランスの出力を一定とすると、起動時の低温状態において電力供給が不足し、脈流が発生する場合がある。脈流が発生すると輝度の脈動を誘発し、表示品位を劣化させてしまう。
【0006】
特許文献1の装置では、ランプの温度が低い場合に発振周波数を高くするだけであり、出力が一定であるため、脈流を誘発するおそれがある。また、発振周波数が高くなると出力が低下するトランスを用いた場合には、さらに脈流を誘発する可能性が高くなる。
【0007】
一般には、ランプの管電流を監視することにより、インバータ回路の出力を制御することで脈流を防止することができる。しかし、この場合、フィードバック系の制御回路が必要となり、複雑な回路を必要とする。また、特許文献1の装置についても、制御回路で発振周波数を制御するものであり、複雑な回路を必要とする。
【0008】
そこで、本発明は、管電流の監視をせずに、簡易な回路構成でありながら低温時に脈流の発生を回避することができるインバータ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷陰極管駆動用のインバータ回路は、接続されるコンデンサおよび抵抗器により発振周波数が決定される発振回路と、前記発振回路の発振周波数に応じた電力を出力するトランスと、を備え、前記発振回路に、ランプ温度の変化に応じて抵抗値が変化する温度変化型抵抗器を接続したことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明のインバータ回路は、ランプ温度の変化に応じて発振回路に接続される抵抗器の抵抗値が変化し、発振周波数が変化する。例えば、CR発振回路であれば、抵抗値の上昇に応じて発振周波数が低下する。発振周波数が変化すると、トランスの出力が変化する。周波数が低くなれば出力が上昇するトランスを用いる場合、抵抗器として、ランプ温度の上昇に応じて抵抗値が低下する負特性の温度変化型抵抗器(サーミスタ)を用いるとよい。また、既存の発振回路であっても、固定抵抗にサーミスタを並列接続するだけで、ランプ温度の低下に応じて合成抵抗値が上昇する構成とすることができる。
【0011】
以上のように、本発明のインバータ回路は、発振回路にサーミスタを接続するだけの簡易な構成でありながら、温度変化に応じた最適な電力を出力する構成となり、低温時の脈流の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、管電流の監視をせずに、簡易な回路構成でありながら低温時に脈流の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るインバータ回路を示す図である。
【図2】サーミスタの抵抗値の温度特性を示す図である。
【図3】発振周波数の温度特性を示す図である。
【図4】トランス出力回路の出力の周波数特性を示す図である。
【図5】ランプに供給する電力の温度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るインバータ回路の構成を示すブロック図である。本実施形態のインバータ回路は、冷陰極管のランプ(LAMP)11に接続されるトランス(TRANSFORMER)12、トランス12を駆動するドライバ(Driver)13、およびドライバ13を制御するコントロールIC14を備えている。
【0015】
ドライバ13には、トランス用電源供給回路(INV.POWERSUPPLY)17が接続され、コントロールIC14には、コントロール用電源供給回路(CONTROL POWERSUPPLY)18が接続される。ドライバ13およびコントロールIC14には、それぞれ直流電力が供給される。ドライバ13は、コントロールIC14から出力される制御信号に従ってトランス12を駆動し、交流電力をランプ11に印可する。トランス12およびドライバ13によりトランス出力回路を構成する。なお、本実施形態に係るインバータ回路は、ランプ11の管電流の監視、およびデューティ比の変更を行わないオープンループ制御である。
【0016】
コントロールIC14は、ドライバ13に接続されるドライバ論理回路(Driver Logic)15、および発振回路(Osillator)16からなる。ドライバ論理回路15は、発振回路16の発振周波数に応じてドライバ13を制御する制御信号を出力する。
【0017】
発振回路16には、固定抵抗21、サーミスタ22、およびコンデンサ23が接続されている。固定抵抗21とサーミスタ22は、並列に発振回路16に接続されている。発振回路16、固定抵抗21、サーミスタ22、およびコンデンサ23により、CR発振回路を構成している。発振回路16の発振周波数は、固定抵抗21およびサーミスタ22の合成抵抗値と、コンデンサ23の容量により決定される。サーミスタ22は、本発明の温度変化型抵抗器に相当する。
【0018】
図2は、サーミスタ22の抵抗値の温度特性を示す図である。なお、同図の特性は説明のために一例を示したものであり、実際に測定した特性を示すものではない。
【0019】
同図に示すように、サーミスタ22は、温度T(℃)の上昇に応じて抵抗値RTH(kΩ)が低下する負特性を有する。ここで、本実施形態のサーミスタ22は、ランプ11の温度を検知するように設置されており、ランプ11の温度に応じて抵抗値が変化するように構成されている。したがって、固定抵抗21およびサーミスタ22の合成抵抗値R//(kΩ)は、ランプの温度変化が低下すると抵抗値が上昇する特性を有する。
【0020】
図3は、発振回路16を含むCR発信回路全体の発振周波数の温度特性を示す図である。なお、同図の特性についても、説明のために一例を示したものであり、実際に測定した特性を示すものではない。
【0021】
上述のように、サーミスタ22は、負特性を有するため、ランプ11の温度が低い場合には、固定抵抗21とサーミスタ22の合成抵抗値R//が高くなる。抵抗値が高くなると、時定数が高くなるため、CR発振回路の発振周波数は低くなる。したがって、同図に示すように、CR発振回路は、ランプ11の温度T(℃)の上昇に応じて発振周波数fr(kHz)が上昇する特性となる(低温時に周波数が低い特性となる)。
【0022】
図4(A)は、トランス12を含むトランス出力回路全体の出力の周波数特性を示す図である。なお、同図の特性についても、説明のために一例を示したものであり、実際に測定した特性を示すものではない。
【0023】
同図に示すように、本実施形態のインバータ回路におけるトランス出力回路は、周波数の低下に応じて出力電力(W)が上昇する特性を有する。コントロールIC14での発振周波数は、上述のように固定抵抗21およびサーミスタ22の合成抵抗値と、コンデンサ23の容量により決定されるものであるが、主としてコンデンサ23と固定抵抗21によって周波数帯域が決められており、サーミスタ22では、その発振周波数を微調整するように設けられている。
【0024】
図3に示したように、CR発振回路は、低温時に発振周波数が低い特性を有するため、低温時にはコントロールIC14から低い周波数に対応する制御信号が出力される。したがって、本実施形態のインバータ回路におけるトランス出力回路の出力特性は、ランプ11の温度が低い場合に出力が高くなり、温度変化に応じて出力が変化する特性を有するものとなる。
【0025】
図5に、ランプ11を駆動するために必要な供給電力の温度特性を示す。同図に示すように、冷陰極管は、ランプ温度に応じてインピーダンスが変化するため、低温時にはランプ11を駆動する電力が多く必要である。供給電力が不足するとランプ11の管電流には脈流が発生する。脈流が発生すると輝度の脈動を誘発し、表示品位を劣化させてしまう。
【0026】
しかし、本実施形態のインバータ回路は、ランプ11の温度が低い場合にトランス12の出力が高くなる特性を有するため、温度変化に応じた最適な電力を出力する構成となり、低温時の脈流の発生を回避することができる。
【0027】
図4(B)に、ランプ11の管電流と発振回路16の発振周波数との関係を示す。ランプ11の温度が低い場合には、周波数が低下してトランス12の出力が上昇するため、同図(B)に示すように、ランプ11の管電流は、発振周波数の低下に応じて上昇する。例えば、ランプ11の温度が十分に上昇した定常状態において発振周波数が45kHz、起動時(低温時)には発振周波数が40kHzになるように設定すると、定常状態では管電流が10mAであるが、起動時には管電流が11mA程度となり、定常状態より高い管電流となる。したがって、低温時の脈流の発生を回避することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態のインバータ回路は、発振回路16に接続されている固定抵抗21にサーミスタ22を並列接続するだけの簡易な構成であり、フィードバックのないオープンループ制御でありながらも、ランプの温度変化に応じた最適な管電流に制御することができ、低温時の脈流の発生を回避することができる。
【0029】
なお、トランス12が周波数の低下に応じて出力が低下する正特性である場合、正特性のサーミスタ22を用いることで、脈流の発生を回避することができる。
【符号の説明】
【0030】
11…ランプ
12…トランス
13…ドライバ
14…コントロールIC
15…ドライバ論理回路
16…発振回路
21…固定抵抗
22…サーミスタ
23…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されるコンデンサおよび抵抗器により発振周波数が決定される発振回路と、
前記発振回路の発振周波数に応じた電力を出力するトランス出力回路と、
を備えた冷陰極管駆動用のインバータ回路において、
前記発振回路に、ランプ温度の変化に応じて抵抗値が変化する温度変化型抵抗器を接続したことを特徴とするインバータ回路。
【請求項2】
前記トランス出力回路は、周波数の低下に応じて出力が上昇する特性を有し、
前記温度変化型抵抗器は、ランプ温度の低下に応じて抵抗値が上昇する特性を有し、
前記発振回路は、前記抵抗値が上昇すると、発振周波数が低下する特性を有する請求項1に記載のインバータ回路。
【請求項3】
前記発振回路は、固定抵抗を有し、当該固定抵抗に前記温度変化型抵抗器を並列に接続する請求項1または請求項2に記載のインバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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