インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する医薬組成物およびその調製方法
【課題】インフルエンザウイルスの表面抗原タンパク質である、赤血球凝集素(Hemagglutinin、HA)の活性を抑制する医薬組成物およびその調製方法の提供。
【解決手段】ラン藻を低温で崩壊させる調製方法によって得られるラン藻抽出液からなる医薬組成物。該調製方法は以下のステップを含む:(a)ラン藻を非有機溶剤と混合して懸濁溶液を作製する。(b)該懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍し、冷凍ブロックを作製する。さらに低温で冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返す。(c)冷凍ブロックを融解後、ラン藻残渣およびラン藻抽出液を分離する。(d)分離後の抽出物を集める。この医薬組成物は、A型および/またはB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素とシアル酸(sialic acid)の結合を効果的に抑制し、さらにインフルエンザウイルスの感染および複製を抑制する目的を達成した。
【解決手段】ラン藻を低温で崩壊させる調製方法によって得られるラン藻抽出液からなる医薬組成物。該調製方法は以下のステップを含む:(a)ラン藻を非有機溶剤と混合して懸濁溶液を作製する。(b)該懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍し、冷凍ブロックを作製する。さらに低温で冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返す。(c)冷凍ブロックを融解後、ラン藻残渣およびラン藻抽出液を分離する。(d)分離後の抽出物を集める。この医薬組成物は、A型および/またはB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素とシアル酸(sialic acid)の結合を効果的に抑制し、さらにインフルエンザウイルスの感染および複製を抑制する目的を達成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本案は、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する、医薬組成物およびその調製方法に関する。特に、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法を利用して得られた抽出物が、A型および/またはB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素およびシアル酸(sialic acid)の結合を効果的に抑制し、さらにインフルエンザウイルスの感染および複製を抑制する目的を達成することに関する。ノイラミニダーゼ(Neuraminidase)阻害剤に薬剤耐性を有する変異型のA型インフルエンザウイルスに対しても、この医薬組成物はその感染能力を抑制することができる。
【背景技術】
【0002】
藻類の種類はきわめて多く、含まれる色素の種類、細胞核および細胞構造の特徴に基づいて、9つに分類されている。そのうち海水中の藻類が海藻と称される。海藻の植物体は多細胞体であり、その大きさおよび形状の違いは大きい。小さいものはほんのわずかの大きさしかなく、昆布など大きいものは60メートルまで達する。したがって、海藻は大きさによって、微細藻類および巨大藻類の2種に区別される。温帯地域で生育する海藻は大型のものが比較的多く、その植物相も比較的豊富である。反対に、亜熱帯および熱帯地域の海藻は比較的小さく、その植物相も比較的乏しい。生成される色素によって分類される場合、海藻にはラン藻、緑藻、褐藻および紅藻の4つのグループがある。これらの海藻は、潮間帯および比較的浅い潮下帯の岩石または岩礁に生育する。
【0003】
ホンダワラを例とすると、分類上は褐藻に、形態的には巨大藻類に属する。台湾に20種類余りが生育し、台湾産の海藻では、種類および生産量とも最多である。最大の海藻でもあり、2メートルほどまで成長する。ホンダワラ植物体の構造は、藻類で最も複雑であり、大型の盤状、または枝状の付着器を有する以外に、高等植物のような茎、枝および葉の部分を有する。このほか、気泡および生殖器托などの器官も有する。
【0004】
ラン藻を例とすると、ラン藻は微細藻類に属し、原核生物に属する。藍緑藻または藍色細菌とも呼ばれ、クロオコックス、ユレモ、スピルリナおよびネンジュモなどの種類がある。すべての藻類生物のなかで、ラン藻は最も簡単で、最も原始的である。ラン藻は単細胞生物であり、細胞核を有さないが、細胞の中央に核物質を有し、通常粒状または網状を呈する。クロマチンおよび色素は、均等に細胞質に分布される。核物質は核膜および核小体を有さないが、核の機能を有するため、原核と呼ばれる。
【0005】
藻類の形態、色素の色および細胞構造の違いは大きいため、生育環境および含まれる生物活性物質は異なり、各種藻類の有効生物活性物質に対する抽出方法も異なる。例えば、巨大藻類はその体積が大きいため、抽出前に、先に細断のステップを実施するべきであるが、微細藻類はその体積が微小であるため、いかなる細断の動作も必要としない。しかし、抽出の難しさは、細胞壁を破壊すること、細胞壁の外側のゼラチン質を除去すること、さらに抽出ステップの操作と同時に、抽出物中の生物活性物質の活性を維持することにある。
【0006】
微細藻類は、地球上に数十億年存在する光合成生物であり、二酸化炭素を利用してバイオ燃料とする。さらにヒトと相当近似するアミノ酸、ビタミン、ミネラル、カルシウム、リン、鉄などの無機元素、β−カロチン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、およびフィコビリン(フィコエリトリン、フィコシアノビリンおよびアロフィコシアニンの総称)を豊富に含むため、栄養価が極めて高い栄養補助食品、食品、飲料または動物飼料の添加物として製造される。
【0007】
ラン藻は、微細藻類に属する。前述した微細藻類に含まれる物質または元素を有する以外に、現在、ある研究により、ラン藻抽出液がピコルナウイルス科(Picornaviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルスおよびHIVウイルスに対して、抑制効果を有することが示された。さらに、ラン藻の1種であるスピルリナは、タンパク質(乾燥重量で60〜70%を占める)、ビタミン(B12およびβ−カロチン含量が高い)、ミネラル、必須アミノ酸と脂肪酸を豊富に含み、特にγ−リノレン酸(GLA)含量が豊富である。したがって、スピルリナは重要な栄養供給源、およびウイルスの複製を抑制する、薬物組成物の原料供給源となる。
【0008】
インフルエンザは、濾過性ウイルスによって引き起こされる疾病であり、分類上オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属する。引き起こされる血清免疫反応により、A型、B型およびC型インフルエンザに区分される。A型インフルエンザは、さらにウイルス表面の赤血球凝集素(hemagglutinin、HA)およびノイラミニダーゼ(neuroaminidase、NA)によって分類され、ヒトに伝染流行する一般的な血清型は、H1N1およびH3N2である。
【0009】
宿主細胞に侵入することは、ウイルスの生活史のスタートにとって重要なステップである。インフルエンザウイルス(influenza virus)を例とすると、このステップを担当するタンパク質が、赤血球凝集素(hemagglutinin)である。赤血球凝集素が呼吸器の内皮細胞表面のシアル酸(sialic acid)を識別し、両者が結合すると、飲作用が誘発されウイルスが飲み込まれる。その後ウイルスのカプシドが酵素の働きで破壊され、RNAからなるウイルス遺伝物質およびタンパク質が放出される。最後にこれらの物質が細胞核内に侵入し、ウイルスの複製過程が開始される。このことから、赤血球凝集素は抗インフルエンザ薬の開発上、重要な対象となることがわかる。しかしながら、現在のところ、赤血球凝集素の抑制に関する薬物は無い。
【0010】
近年、パニックを引き起こしているH1N1新型インフルエンザは、大流行および深刻な合併症を引き起こすA型インフルエンザに属する。タミフルもしくはリレンザなどによる薬物治療、またはワクチン接種による予防を行うことができるが、既存の薬物はノイラミニダーゼ阻害剤に属している。現在、臨床ではすでに、タミフル耐性を有する変異型のA型インフルエンザウイルス株が出現している。この変異型のA型インフルエンザウイルスは、ノイラミニダーゼタンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(Histidine、H)に変異が生じることが、研究によって示されている。
【0011】
このほか、B型インフルエンザウイルスによって引き起こされる症状には、全身の筋肉痛、発熱、咽喉痛、咳、全身の脱力および倦怠感などが含まれ、さらには気管支炎、肺炎および脳炎などの合併症が引き起こされることもある。B型インフルエンザは、地域流行を引き起こすことがあるが、通常、症状はA型ウイルスより穏やかである。しかし、やはり注意を怠るべきではない。臨床では、A型インフルエンザを治療する薬物で、B型インフルエンザを治療することがほとんどであるが、B型インフルエンザウイルスに対して特異的な薬物が、B型インフルエンザの発生の抑制に役立つことが研究されている。
【0012】
米国特許公告第7220417号に、ファエオダクチルムが開示されている。ファエオダクチルムは、巨大藻類に属する。抽出方法は、室温で溶剤を加え、藻類を浸軟させてから、−20℃〜−40℃で1〜7日間冷凍し、最後に再び溶剤を加えて加熱する。この特許は、巨大藻類の抽出方法を主に応用している。冷凍技術を使用しているが、やはり効果的に細胞壁を破壊し、活性成分を効果的に抽出することができないため、再び有機溶剤を加えて加熱する。これは、本発明の低温で崩壊させる技術とは異なる。
【0013】
米国特許公告第20090042801号に、C−フィコシアニン、アロフィコシアニン、スピルリナ成長促進因子、およびその混合物から製造される薬物組成物が開示されている。この特許は、発明者の先行技術であり、このラン藻抽出物から製造される薬物組成物は、以下の調製方法によって得られる。(a)有機ラン藻パウダーおよび低張緩衝液を混合する。(b)室温以下の温度で一夜静置する。(c)分離装置で分離純化する。(d)上清のスペクトルおよび成分含量を測定する。(e)噴霧乾燥を行う。その特徴は、0℃〜18℃の低温調製法を使用することにあり、比較的複雑なラン藻調製ステップによって、長時間をかけて、ようやく少量の有効活性物質を得ることができる。操作のシステムは複雑で時間と労力がかかり、得られた有効活性物質の生産量が少ないため、発明者は再度調製方法の改良を行い、調製ステップに対して、低温で崩壊させる技術の開発を行った。従来の複雑な調製過程を簡素化するだけでなく、抽出した活性物質の活性および濃度も以前より、大いに向上した。
【0014】
したがって、ラン藻中には、ウイルスを抑制することができる、多くの活性物質が含まれる。現在、すでに多くの藻類の抽出技術が提供されているが、ラン藻の生物特性は制限されてしまう。その細胞壁の構造のため、細胞内部の有効活性物質を得る必要がある場合、細胞壁を破壊しなければならない。細胞壁を破壊する従来の方法は、煮沸、粉砕、超音波振動などが含まれる。しかしながら、これらの方法すべては、熱が生じることがあり、相対的に高活性物質が失活してしまうことがある。このほか、有機溶剤を使用して細胞壁を除去することを選択している発明者もいるが、得られた抽出物および本発明で抽出した物質の活性特性は完全に異なり、生物活性および効果も異なる。
【0015】
したがって、効果的に細胞壁を破壊し、ラン藻内物質の活性を抽出することは、一貫して当分野において克服したい難題となっている。したがって、困難さを有する技術のボトルネックにあっても、本発明はさらに多様性で完全な高生物活性物質の抽出を可能にしたラン藻抽出物を含み、さらにこのラン藻抽出物が、変異型のA型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する薬物を含むことを開発した。現在社会における、非常に切迫した需要に対して、本発明のラン藻抽出物は有効な薬物として製造できるため、全世界での治療と、インフルエンザウイルスの拡散および伝染の予防に役立つであろう。
【0016】
本案の請求者は、従来技術における不足を鑑みて、試験および研究に勤しみ、不屈の精神で、最終的に本案の「インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する医薬組成物およびその調製方法」を構想し、先行技術の不足を効果的に克服した。以下は本案の簡潔な説明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許公告第7220417号
【特許文献2】米国特許公告第20090042801号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
先行技術において、高活性物質を有するラン藻抽出液を抽出する困難を克服するため、特に高温の加熱によって、抽出液中の高活性物質が失活するのを防止する。さらに全工程で有機溶剤を使用しないことで、毒性溶剤の残留を防止し、これにより抽出物質が高度な食品安全性を有することを保証する。したがって、本発明は新規の低温で崩壊させる抽出方法によって、ラン藻(またはスピルリナ)抽出物を調製し、A型インフルエンザウイルス、A型インフルエンザウイルスの薬剤耐性突然変異種、およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を効果的に抑制する。
【0019】
本発明は、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法を提供する。本調製方法は、以下のステップを含む。(a)ラン藻および非有機溶剤を混合して、ラン藻を含む懸濁溶液を作製する。(b)ラン藻を含む懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍し、冷凍ブロックを作製する。さらに低温でこの冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返す。(c)融解した冷凍ブロックを、ラン藻残渣および抽出液に分離する。(d)分離後の抽出液を集める。集めた抽出液は、生物活性物質を含むラン藻抽出液である。
【0020】
好ましくは、前記ラン藻はスピルリナでよい。
【0021】
好ましくは、前記非有機溶剤の重量は、ラン藻の2倍以上の重量である。
【0022】
好ましくは、前記非有機溶剤は、水、低張液、緩衝液、または生理食塩水でよい。
【0023】
好ましくは、ステップ(b)の冷凍温度は−10℃より低いか、またはステップ(b)の冷凍温度は、−10℃〜−30℃の間である。ステップ(b)の融解温度は、0℃〜4℃の間である。
【0024】
好ましくは、前記生物活性物質は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択される。
【0025】
好ましくは、前記方法は、ラン藻抽出液を濃縮し、濃縮ラン藻抽出液を得る濃縮ステップをさらに含む。
【0026】
好ましくは、前記方法は、ラン藻抽出液を粉末状にする乾燥ステップをさらに含む。
【0027】
本発明は他に、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、低温で崩壊させる調製方法によって得られるラン藻抽出液である。
【0028】
好ましくは、前記有効量の医薬組成物は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニンおよびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む。
【0029】
好ましくは、A型インフルエンザウイルスにはさらに、変異型のA型インフルエンザウイルスが含まれる。この変異型のA型インフルエンザウイルスは、タミフルに対して薬剤耐性を生じるウイルスを指す。
【0030】
好ましくは、前記医薬組成物は、インフルエンザの予防または治療に適用される。
【0031】
好ましくは、前記医薬組成物は、担体を受容する医薬をさらに含む。
【0032】
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、脂肪または非脂肪性基剤、界面活性剤、懸濁剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤あるいは香料である。
【0033】
好ましくは、前記医薬組成物は、粉末、顆粒、液体、コロイドまたはペーストである。
【0034】
好ましくは、前記医薬組成物は、薬品、食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物として製造される。
【0035】
好ましくは、前記医薬組成物は、経口、経皮吸収、注射または吸入による方法で、輸送される。
【0036】
好ましくは、前記医薬組成物は、哺乳動物に輸送される。
【0037】
好ましくは、前記哺乳動物はヒトである。
【0038】
本発明は他に、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する方法を提供する。この方法は、ラン藻抽出液を提供し、ラン藻抽出液およびウイルスを接触させるステップを含む。ラン藻抽出液は、請求項1の調製方法によって得られたラン藻抽出液である。
【0039】
好ましくは、前記ラン藻抽出液は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニンおよびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明のスピルリナ抽出物によって、A型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療した後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図2】図2は、本発明のスピルリナ抽出物によって、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療した後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図3】図3は、本発明のスピルリナ抽出物によって、赤血球凝集抑制試験HAIを行った概要図である。
【図4a】図4aは、予め100mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を経口投与したBALB/cマウスに、A型インフルエンザウイルスを感染させた後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図4b】図4bは、予め100mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を経口投与したBALB/cマウスに、A型インフルエンザウイルスを感染させた後の、臨床症状の概要図である。
【図5】図5は、本発明のスピルリナ抽出物の、タミフル耐性のA型インフルエンザウイルス株に対する抑制概要図である。
【図6】図6は、異なる濃度のスピルリナ抽出物が、異なる種類のインフルエンザウイルスのウイルスプラークの形成量を抑制する概要図である。
【図7】図7は、スピルリナ抽出物およびその異なる成分が、異なるインフルエンザウイルス株を抑制する概要図である。
【図8】図8は、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法のフローチャート図である。
【図9(a)】図9(a)は、低温で崩壊させる方法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図9(b)】図9(b)は、低温超音波振動法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図9(c)】図9(c)は、熱水煮沸法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図10(a)】図10(a)は、他ブランドのスピルリナパウダー−1に関する、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図10(b)】図10(b)は、他ブランドのスピルリナパウダー−2に関する、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャート、およびウイルス抑制の関連性である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本案が提供する「インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する医薬組成物およびその調製方法」は、以下の実施例による説明によって十分に理解され、当業者はこれを完成することができるだろう。しかしながら、本案の実施は、以下の実施例によってその実施形態を制限されない。当業者はすでに開示された実施例の趣旨により、その他の実施例を推測できる以外に、これらの実施例は、すべて本発明の範囲に属するべきである。
【実施例1】
【0042】
ラン藻を低温で崩壊させる調製方法
実施例1は、ラン藻のスピルリナパウダーを実験材料とした。図8のフローチャートを参照されたい。ステップ101は、改良型の藻類調製方法において、まずスピルリナパウダーを純水、低張液、緩衝液または生理食塩水などの非有機溶剤に、スピルリナパウダーおよび純水の重量比が1:2〜1:10になるように加え、均等になるよう十分攪拌した。ステップ102は、続いて、このスピルリナ懸濁溶液を適当な容積の遠心分離管に分注し、スピルリナ懸濁溶液を0℃以下の冷凍庫に置くか、またはドライアイスを利用して、スピルリナ懸濁溶液を高速に冷凍ブロック状にした。最も好ましい温度は、−10℃〜−80℃である。8〜24時間冷凍したのち、低温で冷凍ブロックをゆっくり解凍した。再融解の温度は0℃〜4℃にコントロールし、ゆっくり温度を戻した。さらに振動、攪拌…などの方法を利用して冷凍ブロックの再融解を促した。同様に、前述の冷凍崩壊ステップを繰り返し、スピルリナ懸濁溶液の冷凍および低温解凍ステップを、2回または2回以上繰り返した。ステップ103は、再融解後の懸濁溶液を遠心分離管で、1時間高速遠心分離を行い、藻類残渣およびスピルリナ抽出液を分離した。ステップ104は、分離後の抽出液を集めた。集めた抽出液は生物活性物質を含むスピルリナ抽出液である。
【0043】
将来、抽出液を製品として使用するニーズに基づいて、高濃度の濃縮液を製造したい場合、多種類の濃縮方法、例えば回転濃縮機または減圧濃縮法を使用し、低温低圧方式で濃縮を行う。温度範囲を20〜40℃に設定し、圧力範囲を15000〜50000水銀柱ミリメートルに設定した。少なくとも8時間続けることにより、濃縮液を得た。製品形態が錠剤、粉状の場合、得られた濃縮液をさらに冷凍乾燥させ、最後に粉末産物が得られる。いかなる形態の産物も、高濃度、高活性のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む。集めた抽出物の(1)成分純度の測定、(2)生菌数および(3)含水量の測定を行い、品質管理の標準規格とした。得られた抽出物の品質管理の標準規格は、(1)成分純度A620/A280>0.6、A651/A620=0.3〜0.5およびA670/A620<0.12(紫外−可視分光光度計で吸収スペクトル200〜700nmを測定する)、(2)生菌数<1×105cfu/g、(3)含水量<7%である。
【0044】
属する技術分野において、通常の知識を有する者は、微細藻類またはラン藻を使用し、前述の低温低圧方法を応用して抽出物を調製することができる。
【実施例2】
【0045】
異なる調製方法のラン藻抽出物および異なる由来のラン藻抽出物の有効成分によるインフルエンザウイルス抑制能力の比較
実施例2は、ラン藻のスピルリナを実験材料とした。異なる調製方法で生産されたスピルリナ抽出物、および異なる由来のスピルリナ抽出物を理解するため、成分組成およびインフルエンザウイルスの抑制能力の関連性を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、ウイルス中和試験も行った。
【0046】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析については、分析カラムにGel filtration(Shodex KW−803)を使用し、1×PBS bufferを移動相とし、流速は1ml/minとした。HPLC機器の規格は、DetectorがECOMLCD2083、PumpがECOMLCP4100、Fixed SyringeがSLC−1F−25である。スピルリナ抽出物を1×PBS bufferで濃度50mg/mlに再懸濁し、200μlを取ってHPLC分析を行った。観測波長は220nmとした。
【0047】
他に、ウイルス中和試験を利用して、ウイルスを抑制する能力を分析した。96ウェルプレートの各wellに130μlのPBSを加えた。1列目の上の4ウェル(A1〜D1)に130μlのラン藻抽出物を加え、続いて130μl取り、右に向かって順番に10列目(A10〜D10)まで2倍の段階希釈を行い、さらに1列目の下の4ウェル(E13〜H13)から、続けてE22〜H22まで段階希釈を行った。150μlの希釈ウイルス液を取り、96ウェルプレートのMDCK cellに添加した。A11〜H11はcell controlの位置であり、FBSを含まないDMEMを150μl添加した。A1〜A10およびH13〜H22はdrug controlの位置であり、これもFBSを含まないDMEMを150μl添加した。5%CO2の35℃インキュベータで1時間培養した。drug dilution plateから50μlの混合液を取り、相互に対応するwellに添加し、再びインキュベータに戻し64時間培養した。最後に、100μlの10%ホルマリンを用いて細胞を1時間固定してから、0.1%クリスタルバイオレットで15分間染色した。ELISAマイクロプレートリーダ(ELISA Reader)を用いて570nmの吸光度を測定し、公式を用いてIC50を求めた。
【0048】
低温で崩壊させる方法(図9a)の利用、および一般的な藻類抽出において常用される方法を比較する。例えば低温超音波振動法(図9b)および熱水煮沸法(図9c)によって調製されたスピルリナ抽出物のHPLC分析を行うと、本発明のプロセス(低温で崩壊させる)によって生産されるスピルリナ抽出物は、ほぼ3つのメインピークに分かれるが、その他2種の調製方法によって生産されるスピルリナ抽出物は、成分が複雑であることを見て取ることができる。したがって、HPLC分析の結果から、抽出したラン藻抽出物の成分が明らかに異なることを、明らかに見てとることができる。さらにこれらの混合物のウイルス中和試験を行った。IC50のデータから、本発明の低温で崩壊させるプロセスによって生産されるスピルリナ抽出物が、最も良好なインフルエンザウイルス抑制効果を有することが示された(下表に示す)。
【0049】
【表1】
【0050】
ウイルス中和試験およびHPLCスペクトルの比較を整合すると、3種のスピルリナ調製方法の結果の最大の違いは、1つ目のピークの含量である。1つ目のピークには、高濃度、高活性のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの主要有効成分が含まれると推測される(図9a)。
【0051】
異なる由来のスピルリナを、本発明のプロセス(低温で崩壊させる)によって抽出し、スピルリナ抽出物(図9a)、他ブランドのスピルリナパウダー−1(図10a)および他ブランドのスピルリナパウダー−2(図10b)のHPLCスペクトルおよびIC50を比較した(下表に示す)。
【0052】
【表2】
【0053】
低温で崩壊させるステップによって抽出されたスピルリナ抽出物、および異なる由来の藻類パウダー材料である他ブランドのスピルリナパウダー−1(図10a)、他ブランドのスピルリナパウダー−2(図10b)はすべて、明らかなウイルス抑制効果を有することが示された。したがって、この結果によって、異なる抽出プロセスで抽出されたラン藻抽出液は、ウイルス抑制に対する機能が非常に大きいことが示された。
【実施例3】
【0054】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物の動物毒性試験
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物を、「国際経済協力開発機構(OECD)425の急性経口毒性試験の規範」に基づいて、用量制限毒性の試験を行い、検査薬物の経口投与(コントロールグループ)濃度は、5000mg/kgであった。この結果により、本発明のスピルリナ抽出物の半数致死量(median lethal dose、LD50)は、5000mg/kgより大きいことがわかった。ほかに国際OECD407の規範に基づいて、SDラットを使用し、ボーラス投与法で本発明のスピルリナ抽出物(投与量:3000mg/kg/day)を与え、連続28日間反復投与毒性試験を行った。実験結果としては、ラットに28日間、連続でスピルリナ抽出物を経口投与した後も、いかなる毒性および副作用も生じないことが示された。
【実施例4】
【0055】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物が、A型インフルエンザウイルス株およびB型インフルエンザウイルス株の感染を抑制する動物試験
続いて、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む、スピルリナ抽出物を用いて、「抗インフルエンザ薬の動物治療効果試験」を行い、投与量が25〜100mg/kg/dayの範囲であるスピルリナ抽出物が、インフルエンザウイルスに感染したBALB/c雌マウスの生存率を高めることがわかった。さらに、インフルエンザウイルスに感染する前の投与は、比較的良好な治療効果を有することもわかった。詳細実験および結果は、以下に述べる。
【0056】
まず、A型インフルエンザウイルス(influenza A WSN virus、H1N1)を経鼻投与する4時間前に、1度本発明のスピルリナ抽出物を、5週齢のBALB/c雌マウスに与えてから、3.4×104pfuのA型インフルエンザウイルスをマウスに経鼻投与した。A型インフルエンザウイルスに感染させた6時間後、もう1度スピルリナ抽出物を与えた。その後毎日2回のボーラス投与を5日間続け、投与量25mg/kg/dayスピルリナ抽出物グループ、およびウイルスコントロールグループ(H1N1ウイルスのみを投与)の結果を比較した。図1を参照されたい。図1は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、A型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療後の、マウスの体重変化の概要図である。図1において、ウイルスコントロールグループは、実験8日目にマウスがすべて死亡したが、25mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を投与しさえすれば、A型インフルエンザウイルスに感染させたマウスに対する保護効果が生じた。BALB/cマウスは、実験初期にほとんどが軽度の症状を発現し、それに伴って体重が減少したが、しだいに健康を回復し、体重も明らかに上昇した。
【0057】
別の実験において、同様にB型インフルエンザウイルスを経鼻投与する4時間前に、1度本発明のスピルリナ抽出物を5週齢のBALB/c雌マウスに与えてから、3.4×105pfuのB型インフルエンザウイルスをマウスに経鼻投与した。B型インフルエンザウイルスに感染させた6時間後、もう1度スピルリナ抽出物を与えた。その後毎日2回のボーラス投与を5日間続け、投与量25mg/kg/dayスピルリナ抽出物グループおよびウイルスコントロールグループ(B型インフルエンザウイルスのみを投与)の結果を比較した。図2を参照されたい。図2は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療後の、マウスの体重変化の概要図である。図2において、ウイルスコントロールグループは、9日目に50%の実験マウスが死亡し、このグループの平均体重曲線が9日目に急速に上昇したのに相対して、25mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を与えたものは、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスに対して、明らかな保護効果が生じた。したがって、生存率は100%であり、さらに臨床症状も大きく軽減した。
【0058】
タミフル(Tamiflu(登録商標))の投与によって、マウスは100%生存するが、臨床症状である、体重の著しい減少、咳、毛髪の乱れおよび毛艶の消失、活動力の低下などは改善されない。これと相対して、本発明のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物は、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスに感染させたマウスを効果的に治療でき、生存率および体重を維持し、さらに咳、毛髪の乱れおよび毛艶の消失、活動力の低下などの顕著な臨床症状が発生しない。
【実施例5】
【0059】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニン、および含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物の、A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルス株の赤血球凝集素(HA)およびシアル酸(sialic acid)の結合抑制の確認
インフルエンザウイルス表面の赤血球凝集素は、シアル酸(sialic acid)を含む受容体物質と特異的結合するため、赤血球の外膜にこの種のシアル酸受容体物質を有する。一定量のインフルエンザウイルスが適当な比率の赤血球と混合すると、結合によって赤血球が凝集する現象が起こる。加えた物質または抗体が、インフルエンザウイルスおよび赤血球の結合を妨害する場合、赤血球の凝集が抑制される現象が観察できる。図3を参照されたい。図3は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、赤血球凝集抑制試験(Hemagglutinin Inhibition Test、HAI)を行った概要図である。図3において、スピルリナ抽出物は、A型およびB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素によって赤血球が凝集する現象を効果的に抑制し、スピルリナ抽出物が、赤血球凝集素およびシアル酸の作用を阻害する能力を有することを示した。インフルエンザウイルスが宿主細胞で複製および増幅する周期に基づいて、スピルリナ抽出物は、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染する前中期に、効果的に抑制することが理解できる。
【実施例6】
【0060】
インフルエンザの予防試験
前述した実施例の結果によって、スピルリナ抽出物は、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染する前中期に、効果的に抑制することが示された。したがって、ウイルスに感染する前にスピルリナ抽出物を投与し、感染後はスピルリナ抽出物を与えない予防試験を行った。まず、4週齢のBALB/c雌マウスに、異なる用量のスピルリナ抽出物を連続7日間経口投与した。さらにA型インフルエンザウイルス(図4)またはB型インフルエンザウイルスに感染させてから、スピルリナ抽出物の投与を停止し、マウスの体重変化および感染の臨床症状を観察した。予め100mg/kg/dayスピルリナ抽出物を経口投与したマウスは、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスの感染に対して生存率は100%に達した。体重はゆっくりと増加し(図4a)、一般的な感染後の体重低下の問題はなく、さらにインフルエンザウイルスに感染したマウスの臨床症状は顕著に軽減した(図4b)。臨床症状0は、「明らかな異常症状が無い」ことを表し、臨床症状1は「呼吸異常の出現」、臨床症状2は「呼吸異常および硬い毛髪の出現」、臨床症状3は「呼吸異常および硬い毛髪の出現と、活動力の低下が観察できる」を表す。特に、本発明のスピルリナ抽出物が、A型インフルエンザウイルスへの感染を予防する効果は、明らかにタミフルより優れていた。図4aにおいて、タミフルグループは、9および12日目にそれぞれ1匹のマウスが死亡し、死亡率の総計は33%であり、ウイルス感染グループは、11、13、15日目にそれぞれ1匹のマウスが死亡し、死亡率の総計は50%であった。スピルリナ抽出物グループは、いずれのマウスも死亡しなかった。
【実施例7】
【0061】
タミフルに対して薬剤耐性を有するA型インフルエンザウイルス、および2009年のA型H1N1新型インフルエンザウイルスの抑制
現在すでに、タミフルに対して薬剤耐性を有するA型ウイルス株が発見されており、この変異型のA型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)の、タンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(H)に変異が生じている。したがって、タミフルに変わる薬物を探すことは、かなりの緊急性を有する。図5を参照されたい。図5は、本発明のスピルリナ抽出物の、タミフル耐性のA型ウイルス株に対する抑制概要図である。図5において、1.5〜3.0mg/mlのスピルリナ抽出物が、変異型のA型インフルエンザウイルスのウイルスプラークの形成を抑制し、スピルリナ抽出物が変異型のA型インフルエンザウイルス、特に、タミフルに対して薬剤耐性を生じるA型インフルエンザウイルス株の治療に応用できることを示した。このウイルスの突然変異の位置は、ノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)タンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(H)である。さらにスピルリナ抽出物の濃度が3.0mg/mlであるとき、スピルリナ抽出物は、多種類のインフルエンザウイルス株を抑制できる(図6)。図7は、スピルリナ抽出物およびその異なる成分が、異なるインフルエンザウイルス株を抑制する概要図である。結果によって、スピルリナ抽出物と、その成分C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖は、異なるインフルエンザウイルス株の半数阻害濃度について、濃度が2.5mg/mlより低くても抑制効果を有することが示された。他に、スピルリナ抽出物とその成分C−フィコシアニンおよび含硫多糖の、2009年のA型H1N1新型インフルエンザに対する抑制能力を測定し、濃度が1.0mg/mlより低くても、半数阻害効果を有した。
【0062】
総合して述べると、本発明は、低温で崩壊させる方法によって調製された、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む高生物活性のスピルリナ抽出物は、B型インフルエンザウイルスの感染および複製を効果的に抑制し、実験動物に対して保護効果を有し、臨床症状を軽減させる。さらに、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ(またはラン藻)抽出物は、変異型のA型インフルエンザウイルス、またはタミフルに対して薬剤耐性を生じるA型インフルエンザウイルス株の活性も抑制する。
【0063】
現在、市場にはすでにラン藻製品が存在するため、本発明の低温で崩壊させることによって抽出された、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む、高生物活性スピルリナ抽出物は、製品設計により、例えば食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物および医薬品などに応用でき、異なる製品形態、例えば粉末状、顆粒状、液状、コロイド状、ペースト状に加工製造される。したがって、ユーザまたは動物は、経口、注射、吸入または経皮吸収の方法により使用できる。
【0064】
先行技術の前案と比較すると、本発明の調製方法および薬物組成物は、新規性および顕著な進歩性を有する。本発明は非常に難しい革新的発明であり、産業的価値を有し、法に基づいて申請を行う。この他、本発明は当業者によっていかなる改正も行うことができるが、添付する特許申請の範囲が保護する範囲から逸脱しない。
【技術分野】
【0001】
本案は、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する、医薬組成物およびその調製方法に関する。特に、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法を利用して得られた抽出物が、A型および/またはB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素およびシアル酸(sialic acid)の結合を効果的に抑制し、さらにインフルエンザウイルスの感染および複製を抑制する目的を達成することに関する。ノイラミニダーゼ(Neuraminidase)阻害剤に薬剤耐性を有する変異型のA型インフルエンザウイルスに対しても、この医薬組成物はその感染能力を抑制することができる。
【背景技術】
【0002】
藻類の種類はきわめて多く、含まれる色素の種類、細胞核および細胞構造の特徴に基づいて、9つに分類されている。そのうち海水中の藻類が海藻と称される。海藻の植物体は多細胞体であり、その大きさおよび形状の違いは大きい。小さいものはほんのわずかの大きさしかなく、昆布など大きいものは60メートルまで達する。したがって、海藻は大きさによって、微細藻類および巨大藻類の2種に区別される。温帯地域で生育する海藻は大型のものが比較的多く、その植物相も比較的豊富である。反対に、亜熱帯および熱帯地域の海藻は比較的小さく、その植物相も比較的乏しい。生成される色素によって分類される場合、海藻にはラン藻、緑藻、褐藻および紅藻の4つのグループがある。これらの海藻は、潮間帯および比較的浅い潮下帯の岩石または岩礁に生育する。
【0003】
ホンダワラを例とすると、分類上は褐藻に、形態的には巨大藻類に属する。台湾に20種類余りが生育し、台湾産の海藻では、種類および生産量とも最多である。最大の海藻でもあり、2メートルほどまで成長する。ホンダワラ植物体の構造は、藻類で最も複雑であり、大型の盤状、または枝状の付着器を有する以外に、高等植物のような茎、枝および葉の部分を有する。このほか、気泡および生殖器托などの器官も有する。
【0004】
ラン藻を例とすると、ラン藻は微細藻類に属し、原核生物に属する。藍緑藻または藍色細菌とも呼ばれ、クロオコックス、ユレモ、スピルリナおよびネンジュモなどの種類がある。すべての藻類生物のなかで、ラン藻は最も簡単で、最も原始的である。ラン藻は単細胞生物であり、細胞核を有さないが、細胞の中央に核物質を有し、通常粒状または網状を呈する。クロマチンおよび色素は、均等に細胞質に分布される。核物質は核膜および核小体を有さないが、核の機能を有するため、原核と呼ばれる。
【0005】
藻類の形態、色素の色および細胞構造の違いは大きいため、生育環境および含まれる生物活性物質は異なり、各種藻類の有効生物活性物質に対する抽出方法も異なる。例えば、巨大藻類はその体積が大きいため、抽出前に、先に細断のステップを実施するべきであるが、微細藻類はその体積が微小であるため、いかなる細断の動作も必要としない。しかし、抽出の難しさは、細胞壁を破壊すること、細胞壁の外側のゼラチン質を除去すること、さらに抽出ステップの操作と同時に、抽出物中の生物活性物質の活性を維持することにある。
【0006】
微細藻類は、地球上に数十億年存在する光合成生物であり、二酸化炭素を利用してバイオ燃料とする。さらにヒトと相当近似するアミノ酸、ビタミン、ミネラル、カルシウム、リン、鉄などの無機元素、β−カロチン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、およびフィコビリン(フィコエリトリン、フィコシアノビリンおよびアロフィコシアニンの総称)を豊富に含むため、栄養価が極めて高い栄養補助食品、食品、飲料または動物飼料の添加物として製造される。
【0007】
ラン藻は、微細藻類に属する。前述した微細藻類に含まれる物質または元素を有する以外に、現在、ある研究により、ラン藻抽出液がピコルナウイルス科(Picornaviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルスおよびHIVウイルスに対して、抑制効果を有することが示された。さらに、ラン藻の1種であるスピルリナは、タンパク質(乾燥重量で60〜70%を占める)、ビタミン(B12およびβ−カロチン含量が高い)、ミネラル、必須アミノ酸と脂肪酸を豊富に含み、特にγ−リノレン酸(GLA)含量が豊富である。したがって、スピルリナは重要な栄養供給源、およびウイルスの複製を抑制する、薬物組成物の原料供給源となる。
【0008】
インフルエンザは、濾過性ウイルスによって引き起こされる疾病であり、分類上オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属する。引き起こされる血清免疫反応により、A型、B型およびC型インフルエンザに区分される。A型インフルエンザは、さらにウイルス表面の赤血球凝集素(hemagglutinin、HA)およびノイラミニダーゼ(neuroaminidase、NA)によって分類され、ヒトに伝染流行する一般的な血清型は、H1N1およびH3N2である。
【0009】
宿主細胞に侵入することは、ウイルスの生活史のスタートにとって重要なステップである。インフルエンザウイルス(influenza virus)を例とすると、このステップを担当するタンパク質が、赤血球凝集素(hemagglutinin)である。赤血球凝集素が呼吸器の内皮細胞表面のシアル酸(sialic acid)を識別し、両者が結合すると、飲作用が誘発されウイルスが飲み込まれる。その後ウイルスのカプシドが酵素の働きで破壊され、RNAからなるウイルス遺伝物質およびタンパク質が放出される。最後にこれらの物質が細胞核内に侵入し、ウイルスの複製過程が開始される。このことから、赤血球凝集素は抗インフルエンザ薬の開発上、重要な対象となることがわかる。しかしながら、現在のところ、赤血球凝集素の抑制に関する薬物は無い。
【0010】
近年、パニックを引き起こしているH1N1新型インフルエンザは、大流行および深刻な合併症を引き起こすA型インフルエンザに属する。タミフルもしくはリレンザなどによる薬物治療、またはワクチン接種による予防を行うことができるが、既存の薬物はノイラミニダーゼ阻害剤に属している。現在、臨床ではすでに、タミフル耐性を有する変異型のA型インフルエンザウイルス株が出現している。この変異型のA型インフルエンザウイルスは、ノイラミニダーゼタンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(Histidine、H)に変異が生じることが、研究によって示されている。
【0011】
このほか、B型インフルエンザウイルスによって引き起こされる症状には、全身の筋肉痛、発熱、咽喉痛、咳、全身の脱力および倦怠感などが含まれ、さらには気管支炎、肺炎および脳炎などの合併症が引き起こされることもある。B型インフルエンザは、地域流行を引き起こすことがあるが、通常、症状はA型ウイルスより穏やかである。しかし、やはり注意を怠るべきではない。臨床では、A型インフルエンザを治療する薬物で、B型インフルエンザを治療することがほとんどであるが、B型インフルエンザウイルスに対して特異的な薬物が、B型インフルエンザの発生の抑制に役立つことが研究されている。
【0012】
米国特許公告第7220417号に、ファエオダクチルムが開示されている。ファエオダクチルムは、巨大藻類に属する。抽出方法は、室温で溶剤を加え、藻類を浸軟させてから、−20℃〜−40℃で1〜7日間冷凍し、最後に再び溶剤を加えて加熱する。この特許は、巨大藻類の抽出方法を主に応用している。冷凍技術を使用しているが、やはり効果的に細胞壁を破壊し、活性成分を効果的に抽出することができないため、再び有機溶剤を加えて加熱する。これは、本発明の低温で崩壊させる技術とは異なる。
【0013】
米国特許公告第20090042801号に、C−フィコシアニン、アロフィコシアニン、スピルリナ成長促進因子、およびその混合物から製造される薬物組成物が開示されている。この特許は、発明者の先行技術であり、このラン藻抽出物から製造される薬物組成物は、以下の調製方法によって得られる。(a)有機ラン藻パウダーおよび低張緩衝液を混合する。(b)室温以下の温度で一夜静置する。(c)分離装置で分離純化する。(d)上清のスペクトルおよび成分含量を測定する。(e)噴霧乾燥を行う。その特徴は、0℃〜18℃の低温調製法を使用することにあり、比較的複雑なラン藻調製ステップによって、長時間をかけて、ようやく少量の有効活性物質を得ることができる。操作のシステムは複雑で時間と労力がかかり、得られた有効活性物質の生産量が少ないため、発明者は再度調製方法の改良を行い、調製ステップに対して、低温で崩壊させる技術の開発を行った。従来の複雑な調製過程を簡素化するだけでなく、抽出した活性物質の活性および濃度も以前より、大いに向上した。
【0014】
したがって、ラン藻中には、ウイルスを抑制することができる、多くの活性物質が含まれる。現在、すでに多くの藻類の抽出技術が提供されているが、ラン藻の生物特性は制限されてしまう。その細胞壁の構造のため、細胞内部の有効活性物質を得る必要がある場合、細胞壁を破壊しなければならない。細胞壁を破壊する従来の方法は、煮沸、粉砕、超音波振動などが含まれる。しかしながら、これらの方法すべては、熱が生じることがあり、相対的に高活性物質が失活してしまうことがある。このほか、有機溶剤を使用して細胞壁を除去することを選択している発明者もいるが、得られた抽出物および本発明で抽出した物質の活性特性は完全に異なり、生物活性および効果も異なる。
【0015】
したがって、効果的に細胞壁を破壊し、ラン藻内物質の活性を抽出することは、一貫して当分野において克服したい難題となっている。したがって、困難さを有する技術のボトルネックにあっても、本発明はさらに多様性で完全な高生物活性物質の抽出を可能にしたラン藻抽出物を含み、さらにこのラン藻抽出物が、変異型のA型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する薬物を含むことを開発した。現在社会における、非常に切迫した需要に対して、本発明のラン藻抽出物は有効な薬物として製造できるため、全世界での治療と、インフルエンザウイルスの拡散および伝染の予防に役立つであろう。
【0016】
本案の請求者は、従来技術における不足を鑑みて、試験および研究に勤しみ、不屈の精神で、最終的に本案の「インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する医薬組成物およびその調製方法」を構想し、先行技術の不足を効果的に克服した。以下は本案の簡潔な説明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許公告第7220417号
【特許文献2】米国特許公告第20090042801号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
先行技術において、高活性物質を有するラン藻抽出液を抽出する困難を克服するため、特に高温の加熱によって、抽出液中の高活性物質が失活するのを防止する。さらに全工程で有機溶剤を使用しないことで、毒性溶剤の残留を防止し、これにより抽出物質が高度な食品安全性を有することを保証する。したがって、本発明は新規の低温で崩壊させる抽出方法によって、ラン藻(またはスピルリナ)抽出物を調製し、A型インフルエンザウイルス、A型インフルエンザウイルスの薬剤耐性突然変異種、およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を効果的に抑制する。
【0019】
本発明は、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法を提供する。本調製方法は、以下のステップを含む。(a)ラン藻および非有機溶剤を混合して、ラン藻を含む懸濁溶液を作製する。(b)ラン藻を含む懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍し、冷凍ブロックを作製する。さらに低温でこの冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返す。(c)融解した冷凍ブロックを、ラン藻残渣および抽出液に分離する。(d)分離後の抽出液を集める。集めた抽出液は、生物活性物質を含むラン藻抽出液である。
【0020】
好ましくは、前記ラン藻はスピルリナでよい。
【0021】
好ましくは、前記非有機溶剤の重量は、ラン藻の2倍以上の重量である。
【0022】
好ましくは、前記非有機溶剤は、水、低張液、緩衝液、または生理食塩水でよい。
【0023】
好ましくは、ステップ(b)の冷凍温度は−10℃より低いか、またはステップ(b)の冷凍温度は、−10℃〜−30℃の間である。ステップ(b)の融解温度は、0℃〜4℃の間である。
【0024】
好ましくは、前記生物活性物質は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択される。
【0025】
好ましくは、前記方法は、ラン藻抽出液を濃縮し、濃縮ラン藻抽出液を得る濃縮ステップをさらに含む。
【0026】
好ましくは、前記方法は、ラン藻抽出液を粉末状にする乾燥ステップをさらに含む。
【0027】
本発明は他に、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、低温で崩壊させる調製方法によって得られるラン藻抽出液である。
【0028】
好ましくは、前記有効量の医薬組成物は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニンおよびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む。
【0029】
好ましくは、A型インフルエンザウイルスにはさらに、変異型のA型インフルエンザウイルスが含まれる。この変異型のA型インフルエンザウイルスは、タミフルに対して薬剤耐性を生じるウイルスを指す。
【0030】
好ましくは、前記医薬組成物は、インフルエンザの予防または治療に適用される。
【0031】
好ましくは、前記医薬組成物は、担体を受容する医薬をさらに含む。
【0032】
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、脂肪または非脂肪性基剤、界面活性剤、懸濁剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤あるいは香料である。
【0033】
好ましくは、前記医薬組成物は、粉末、顆粒、液体、コロイドまたはペーストである。
【0034】
好ましくは、前記医薬組成物は、薬品、食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物として製造される。
【0035】
好ましくは、前記医薬組成物は、経口、経皮吸収、注射または吸入による方法で、輸送される。
【0036】
好ましくは、前記医薬組成物は、哺乳動物に輸送される。
【0037】
好ましくは、前記哺乳動物はヒトである。
【0038】
本発明は他に、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する方法を提供する。この方法は、ラン藻抽出液を提供し、ラン藻抽出液およびウイルスを接触させるステップを含む。ラン藻抽出液は、請求項1の調製方法によって得られたラン藻抽出液である。
【0039】
好ましくは、前記ラン藻抽出液は、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニンおよびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明のスピルリナ抽出物によって、A型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療した後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図2】図2は、本発明のスピルリナ抽出物によって、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療した後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図3】図3は、本発明のスピルリナ抽出物によって、赤血球凝集抑制試験HAIを行った概要図である。
【図4a】図4aは、予め100mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を経口投与したBALB/cマウスに、A型インフルエンザウイルスを感染させた後の、マウスの体重変化の概要図である。
【図4b】図4bは、予め100mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を経口投与したBALB/cマウスに、A型インフルエンザウイルスを感染させた後の、臨床症状の概要図である。
【図5】図5は、本発明のスピルリナ抽出物の、タミフル耐性のA型インフルエンザウイルス株に対する抑制概要図である。
【図6】図6は、異なる濃度のスピルリナ抽出物が、異なる種類のインフルエンザウイルスのウイルスプラークの形成量を抑制する概要図である。
【図7】図7は、スピルリナ抽出物およびその異なる成分が、異なるインフルエンザウイルス株を抑制する概要図である。
【図8】図8は、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法のフローチャート図である。
【図9(a)】図9(a)は、低温で崩壊させる方法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図9(b)】図9(b)は、低温超音波振動法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図9(c)】図9(c)は、熱水煮沸法による、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図10(a)】図10(a)は、他ブランドのスピルリナパウダー−1に関する、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャートである。
【図10(b)】図10(b)は、他ブランドのスピルリナパウダー−2に関する、スピルリナ抽出物の有効成分のHPLCチャート、およびウイルス抑制の関連性である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本案が提供する「インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(Hemagglutinin)を抑制する医薬組成物およびその調製方法」は、以下の実施例による説明によって十分に理解され、当業者はこれを完成することができるだろう。しかしながら、本案の実施は、以下の実施例によってその実施形態を制限されない。当業者はすでに開示された実施例の趣旨により、その他の実施例を推測できる以外に、これらの実施例は、すべて本発明の範囲に属するべきである。
【実施例1】
【0042】
ラン藻を低温で崩壊させる調製方法
実施例1は、ラン藻のスピルリナパウダーを実験材料とした。図8のフローチャートを参照されたい。ステップ101は、改良型の藻類調製方法において、まずスピルリナパウダーを純水、低張液、緩衝液または生理食塩水などの非有機溶剤に、スピルリナパウダーおよび純水の重量比が1:2〜1:10になるように加え、均等になるよう十分攪拌した。ステップ102は、続いて、このスピルリナ懸濁溶液を適当な容積の遠心分離管に分注し、スピルリナ懸濁溶液を0℃以下の冷凍庫に置くか、またはドライアイスを利用して、スピルリナ懸濁溶液を高速に冷凍ブロック状にした。最も好ましい温度は、−10℃〜−80℃である。8〜24時間冷凍したのち、低温で冷凍ブロックをゆっくり解凍した。再融解の温度は0℃〜4℃にコントロールし、ゆっくり温度を戻した。さらに振動、攪拌…などの方法を利用して冷凍ブロックの再融解を促した。同様に、前述の冷凍崩壊ステップを繰り返し、スピルリナ懸濁溶液の冷凍および低温解凍ステップを、2回または2回以上繰り返した。ステップ103は、再融解後の懸濁溶液を遠心分離管で、1時間高速遠心分離を行い、藻類残渣およびスピルリナ抽出液を分離した。ステップ104は、分離後の抽出液を集めた。集めた抽出液は生物活性物質を含むスピルリナ抽出液である。
【0043】
将来、抽出液を製品として使用するニーズに基づいて、高濃度の濃縮液を製造したい場合、多種類の濃縮方法、例えば回転濃縮機または減圧濃縮法を使用し、低温低圧方式で濃縮を行う。温度範囲を20〜40℃に設定し、圧力範囲を15000〜50000水銀柱ミリメートルに設定した。少なくとも8時間続けることにより、濃縮液を得た。製品形態が錠剤、粉状の場合、得られた濃縮液をさらに冷凍乾燥させ、最後に粉末産物が得られる。いかなる形態の産物も、高濃度、高活性のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む。集めた抽出物の(1)成分純度の測定、(2)生菌数および(3)含水量の測定を行い、品質管理の標準規格とした。得られた抽出物の品質管理の標準規格は、(1)成分純度A620/A280>0.6、A651/A620=0.3〜0.5およびA670/A620<0.12(紫外−可視分光光度計で吸収スペクトル200〜700nmを測定する)、(2)生菌数<1×105cfu/g、(3)含水量<7%である。
【0044】
属する技術分野において、通常の知識を有する者は、微細藻類またはラン藻を使用し、前述の低温低圧方法を応用して抽出物を調製することができる。
【実施例2】
【0045】
異なる調製方法のラン藻抽出物および異なる由来のラン藻抽出物の有効成分によるインフルエンザウイルス抑制能力の比較
実施例2は、ラン藻のスピルリナを実験材料とした。異なる調製方法で生産されたスピルリナ抽出物、および異なる由来のスピルリナ抽出物を理解するため、成分組成およびインフルエンザウイルスの抑制能力の関連性を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、ウイルス中和試験も行った。
【0046】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析については、分析カラムにGel filtration(Shodex KW−803)を使用し、1×PBS bufferを移動相とし、流速は1ml/minとした。HPLC機器の規格は、DetectorがECOMLCD2083、PumpがECOMLCP4100、Fixed SyringeがSLC−1F−25である。スピルリナ抽出物を1×PBS bufferで濃度50mg/mlに再懸濁し、200μlを取ってHPLC分析を行った。観測波長は220nmとした。
【0047】
他に、ウイルス中和試験を利用して、ウイルスを抑制する能力を分析した。96ウェルプレートの各wellに130μlのPBSを加えた。1列目の上の4ウェル(A1〜D1)に130μlのラン藻抽出物を加え、続いて130μl取り、右に向かって順番に10列目(A10〜D10)まで2倍の段階希釈を行い、さらに1列目の下の4ウェル(E13〜H13)から、続けてE22〜H22まで段階希釈を行った。150μlの希釈ウイルス液を取り、96ウェルプレートのMDCK cellに添加した。A11〜H11はcell controlの位置であり、FBSを含まないDMEMを150μl添加した。A1〜A10およびH13〜H22はdrug controlの位置であり、これもFBSを含まないDMEMを150μl添加した。5%CO2の35℃インキュベータで1時間培養した。drug dilution plateから50μlの混合液を取り、相互に対応するwellに添加し、再びインキュベータに戻し64時間培養した。最後に、100μlの10%ホルマリンを用いて細胞を1時間固定してから、0.1%クリスタルバイオレットで15分間染色した。ELISAマイクロプレートリーダ(ELISA Reader)を用いて570nmの吸光度を測定し、公式を用いてIC50を求めた。
【0048】
低温で崩壊させる方法(図9a)の利用、および一般的な藻類抽出において常用される方法を比較する。例えば低温超音波振動法(図9b)および熱水煮沸法(図9c)によって調製されたスピルリナ抽出物のHPLC分析を行うと、本発明のプロセス(低温で崩壊させる)によって生産されるスピルリナ抽出物は、ほぼ3つのメインピークに分かれるが、その他2種の調製方法によって生産されるスピルリナ抽出物は、成分が複雑であることを見て取ることができる。したがって、HPLC分析の結果から、抽出したラン藻抽出物の成分が明らかに異なることを、明らかに見てとることができる。さらにこれらの混合物のウイルス中和試験を行った。IC50のデータから、本発明の低温で崩壊させるプロセスによって生産されるスピルリナ抽出物が、最も良好なインフルエンザウイルス抑制効果を有することが示された(下表に示す)。
【0049】
【表1】
【0050】
ウイルス中和試験およびHPLCスペクトルの比較を整合すると、3種のスピルリナ調製方法の結果の最大の違いは、1つ目のピークの含量である。1つ目のピークには、高濃度、高活性のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの主要有効成分が含まれると推測される(図9a)。
【0051】
異なる由来のスピルリナを、本発明のプロセス(低温で崩壊させる)によって抽出し、スピルリナ抽出物(図9a)、他ブランドのスピルリナパウダー−1(図10a)および他ブランドのスピルリナパウダー−2(図10b)のHPLCスペクトルおよびIC50を比較した(下表に示す)。
【0052】
【表2】
【0053】
低温で崩壊させるステップによって抽出されたスピルリナ抽出物、および異なる由来の藻類パウダー材料である他ブランドのスピルリナパウダー−1(図10a)、他ブランドのスピルリナパウダー−2(図10b)はすべて、明らかなウイルス抑制効果を有することが示された。したがって、この結果によって、異なる抽出プロセスで抽出されたラン藻抽出液は、ウイルス抑制に対する機能が非常に大きいことが示された。
【実施例3】
【0054】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物の動物毒性試験
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物を、「国際経済協力開発機構(OECD)425の急性経口毒性試験の規範」に基づいて、用量制限毒性の試験を行い、検査薬物の経口投与(コントロールグループ)濃度は、5000mg/kgであった。この結果により、本発明のスピルリナ抽出物の半数致死量(median lethal dose、LD50)は、5000mg/kgより大きいことがわかった。ほかに国際OECD407の規範に基づいて、SDラットを使用し、ボーラス投与法で本発明のスピルリナ抽出物(投与量:3000mg/kg/day)を与え、連続28日間反復投与毒性試験を行った。実験結果としては、ラットに28日間、連続でスピルリナ抽出物を経口投与した後も、いかなる毒性および副作用も生じないことが示された。
【実施例4】
【0055】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物が、A型インフルエンザウイルス株およびB型インフルエンザウイルス株の感染を抑制する動物試験
続いて、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む、スピルリナ抽出物を用いて、「抗インフルエンザ薬の動物治療効果試験」を行い、投与量が25〜100mg/kg/dayの範囲であるスピルリナ抽出物が、インフルエンザウイルスに感染したBALB/c雌マウスの生存率を高めることがわかった。さらに、インフルエンザウイルスに感染する前の投与は、比較的良好な治療効果を有することもわかった。詳細実験および結果は、以下に述べる。
【0056】
まず、A型インフルエンザウイルス(influenza A WSN virus、H1N1)を経鼻投与する4時間前に、1度本発明のスピルリナ抽出物を、5週齢のBALB/c雌マウスに与えてから、3.4×104pfuのA型インフルエンザウイルスをマウスに経鼻投与した。A型インフルエンザウイルスに感染させた6時間後、もう1度スピルリナ抽出物を与えた。その後毎日2回のボーラス投与を5日間続け、投与量25mg/kg/dayスピルリナ抽出物グループ、およびウイルスコントロールグループ(H1N1ウイルスのみを投与)の結果を比較した。図1を参照されたい。図1は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、A型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療後の、マウスの体重変化の概要図である。図1において、ウイルスコントロールグループは、実験8日目にマウスがすべて死亡したが、25mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を投与しさえすれば、A型インフルエンザウイルスに感染させたマウスに対する保護効果が生じた。BALB/cマウスは、実験初期にほとんどが軽度の症状を発現し、それに伴って体重が減少したが、しだいに健康を回復し、体重も明らかに上昇した。
【0057】
別の実験において、同様にB型インフルエンザウイルスを経鼻投与する4時間前に、1度本発明のスピルリナ抽出物を5週齢のBALB/c雌マウスに与えてから、3.4×105pfuのB型インフルエンザウイルスをマウスに経鼻投与した。B型インフルエンザウイルスに感染させた6時間後、もう1度スピルリナ抽出物を与えた。その後毎日2回のボーラス投与を5日間続け、投与量25mg/kg/dayスピルリナ抽出物グループおよびウイルスコントロールグループ(B型インフルエンザウイルスのみを投与)の結果を比較した。図2を参照されたい。図2は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスを治療後の、マウスの体重変化の概要図である。図2において、ウイルスコントロールグループは、9日目に50%の実験マウスが死亡し、このグループの平均体重曲線が9日目に急速に上昇したのに相対して、25mg/kg/dayでスピルリナ抽出物を与えたものは、B型インフルエンザウイルスに感染させたBALB/cマウスに対して、明らかな保護効果が生じた。したがって、生存率は100%であり、さらに臨床症状も大きく軽減した。
【0058】
タミフル(Tamiflu(登録商標))の投与によって、マウスは100%生存するが、臨床症状である、体重の著しい減少、咳、毛髪の乱れおよび毛艶の消失、活動力の低下などは改善されない。これと相対して、本発明のC−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物は、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスに感染させたマウスを効果的に治療でき、生存率および体重を維持し、さらに咳、毛髪の乱れおよび毛艶の消失、活動力の低下などの顕著な臨床症状が発生しない。
【実施例5】
【0059】
C−フィコシアニン、アロフィコシアニン、および含硫多糖などの成分を含むスピルリナ抽出物の、A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルス株の赤血球凝集素(HA)およびシアル酸(sialic acid)の結合抑制の確認
インフルエンザウイルス表面の赤血球凝集素は、シアル酸(sialic acid)を含む受容体物質と特異的結合するため、赤血球の外膜にこの種のシアル酸受容体物質を有する。一定量のインフルエンザウイルスが適当な比率の赤血球と混合すると、結合によって赤血球が凝集する現象が起こる。加えた物質または抗体が、インフルエンザウイルスおよび赤血球の結合を妨害する場合、赤血球の凝集が抑制される現象が観察できる。図3を参照されたい。図3は、本発明のスピルリナ抽出物を用いて、赤血球凝集抑制試験(Hemagglutinin Inhibition Test、HAI)を行った概要図である。図3において、スピルリナ抽出物は、A型およびB型インフルエンザウイルスの赤血球凝集素によって赤血球が凝集する現象を効果的に抑制し、スピルリナ抽出物が、赤血球凝集素およびシアル酸の作用を阻害する能力を有することを示した。インフルエンザウイルスが宿主細胞で複製および増幅する周期に基づいて、スピルリナ抽出物は、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染する前中期に、効果的に抑制することが理解できる。
【実施例6】
【0060】
インフルエンザの予防試験
前述した実施例の結果によって、スピルリナ抽出物は、インフルエンザウイルスが宿主細胞に感染する前中期に、効果的に抑制することが示された。したがって、ウイルスに感染する前にスピルリナ抽出物を投与し、感染後はスピルリナ抽出物を与えない予防試験を行った。まず、4週齢のBALB/c雌マウスに、異なる用量のスピルリナ抽出物を連続7日間経口投与した。さらにA型インフルエンザウイルス(図4)またはB型インフルエンザウイルスに感染させてから、スピルリナ抽出物の投与を停止し、マウスの体重変化および感染の臨床症状を観察した。予め100mg/kg/dayスピルリナ抽出物を経口投与したマウスは、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスの感染に対して生存率は100%に達した。体重はゆっくりと増加し(図4a)、一般的な感染後の体重低下の問題はなく、さらにインフルエンザウイルスに感染したマウスの臨床症状は顕著に軽減した(図4b)。臨床症状0は、「明らかな異常症状が無い」ことを表し、臨床症状1は「呼吸異常の出現」、臨床症状2は「呼吸異常および硬い毛髪の出現」、臨床症状3は「呼吸異常および硬い毛髪の出現と、活動力の低下が観察できる」を表す。特に、本発明のスピルリナ抽出物が、A型インフルエンザウイルスへの感染を予防する効果は、明らかにタミフルより優れていた。図4aにおいて、タミフルグループは、9および12日目にそれぞれ1匹のマウスが死亡し、死亡率の総計は33%であり、ウイルス感染グループは、11、13、15日目にそれぞれ1匹のマウスが死亡し、死亡率の総計は50%であった。スピルリナ抽出物グループは、いずれのマウスも死亡しなかった。
【実施例7】
【0061】
タミフルに対して薬剤耐性を有するA型インフルエンザウイルス、および2009年のA型H1N1新型インフルエンザウイルスの抑制
現在すでに、タミフルに対して薬剤耐性を有するA型ウイルス株が発見されており、この変異型のA型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)の、タンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(H)に変異が生じている。したがって、タミフルに変わる薬物を探すことは、かなりの緊急性を有する。図5を参照されたい。図5は、本発明のスピルリナ抽出物の、タミフル耐性のA型ウイルス株に対する抑制概要図である。図5において、1.5〜3.0mg/mlのスピルリナ抽出物が、変異型のA型インフルエンザウイルスのウイルスプラークの形成を抑制し、スピルリナ抽出物が変異型のA型インフルエンザウイルス、特に、タミフルに対して薬剤耐性を生じるA型インフルエンザウイルス株の治療に応用できることを示した。このウイルスの突然変異の位置は、ノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)タンパク質配列の274番目の位置のヒスチジン(H)である。さらにスピルリナ抽出物の濃度が3.0mg/mlであるとき、スピルリナ抽出物は、多種類のインフルエンザウイルス株を抑制できる(図6)。図7は、スピルリナ抽出物およびその異なる成分が、異なるインフルエンザウイルス株を抑制する概要図である。結果によって、スピルリナ抽出物と、その成分C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖は、異なるインフルエンザウイルス株の半数阻害濃度について、濃度が2.5mg/mlより低くても抑制効果を有することが示された。他に、スピルリナ抽出物とその成分C−フィコシアニンおよび含硫多糖の、2009年のA型H1N1新型インフルエンザに対する抑制能力を測定し、濃度が1.0mg/mlより低くても、半数阻害効果を有した。
【0062】
総合して述べると、本発明は、低温で崩壊させる方法によって調製された、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む高生物活性のスピルリナ抽出物は、B型インフルエンザウイルスの感染および複製を効果的に抑制し、実験動物に対して保護効果を有し、臨床症状を軽減させる。さらに、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含むスピルリナ(またはラン藻)抽出物は、変異型のA型インフルエンザウイルス、またはタミフルに対して薬剤耐性を生じるA型インフルエンザウイルス株の活性も抑制する。
【0063】
現在、市場にはすでにラン藻製品が存在するため、本発明の低温で崩壊させることによって抽出された、C−フィコシアニン、アロフィコシアニンおよび含硫多糖などの成分を含む、高生物活性スピルリナ抽出物は、製品設計により、例えば食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物および医薬品などに応用でき、異なる製品形態、例えば粉末状、顆粒状、液状、コロイド状、ペースト状に加工製造される。したがって、ユーザまたは動物は、経口、注射、吸入または経皮吸収の方法により使用できる。
【0064】
先行技術の前案と比較すると、本発明の調製方法および薬物組成物は、新規性および顕著な進歩性を有する。本発明は非常に難しい革新的発明であり、産業的価値を有し、法に基づいて申請を行う。この他、本発明は当業者によっていかなる改正も行うことができるが、添付する特許申請の範囲が保護する範囲から逸脱しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
(a)ラン藻および非有機溶剤を混合し、ラン藻を含む懸濁溶液を作製するステップと、
(b)該ラン藻を含む懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍して冷凍ブロックを作製し、さらに低温で該冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返すステップと、
(c)該冷凍ブロックを融解後、ラン藻残渣およびラン藻抽出液に分離するステップと、
(d)分離後の抽出液を集めるステップと、
を含む、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法であって、
集めた抽出液は、生物活性物質を含むラン藻抽出液である調製方法。
【請求項2】
ステップ(a)の該非有機溶剤の重量が、該ラン藻の2倍以上の重量である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
該非有機溶剤が、水、低張液、緩衝液または生理食塩水でよい、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(b)の冷凍温度が、−10℃より低い、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(b)の冷凍温度が、−10℃〜−30℃の間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(b)の融解温度が、0℃〜4℃の間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
該生物活性物質が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
該ラン藻抽出液を濃縮し、濃縮ラン藻抽出液を得る濃縮ステップをさらに含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
該ラン藻抽出液を粉末状にする乾燥ステップをさらに含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物であって、請求項1の調製方法によって得られるラン藻抽出液から任意に選択される医薬組成物。
【請求項11】
該A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物が、ウイルスの赤血球凝集素およびシアル酸の結合を抑制するメカニズムによって達成される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該ラン藻抽出液が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
該A型インフルエンザウイルスが、タミフルのノイラミニダーゼ阻害剤に対して、薬剤耐性を生じる変異型のA型インフルエンザウイルスをさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
該A型インフルエンザウイルスが、2009年のA型H1N1新型インフルエンザウイルスをさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
さらに担体を受容する医薬を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該担体が、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、脂肪または非脂肪性基剤、界面活性剤、懸濁剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤あるいは香料である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
該医薬組成物が、粉末、顆粒、液体、コロイドまたはペーストである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項18】
該医薬組成物が、薬品、食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物として製造される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項19】
該医薬組成物が、経口、経皮吸収、注射または吸入の方法で輸送される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項20】
以下の
ラン藻抽出液を提供するステップと、
該ラン藻抽出液および該ウイルスを接触させるステップと、
を含む、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する方法であって、
該ラン藻抽出液が、請求項1の調製方法によって得られるラン藻抽出液である方法。
【請求項21】
該ラン藻抽出液が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む、請求項20に記載のラン藻抽出液。
【請求項1】
以下の
(a)ラン藻および非有機溶剤を混合し、ラン藻を含む懸濁溶液を作製するステップと、
(b)該ラン藻を含む懸濁溶液を0℃以下の温度で冷凍して冷凍ブロックを作製し、さらに低温で該冷凍ブロックを融解し、このステップを2回以上繰り返すステップと、
(c)該冷凍ブロックを融解後、ラン藻残渣およびラン藻抽出液に分離するステップと、
(d)分離後の抽出液を集めるステップと、
を含む、ラン藻を低温で崩壊させる調製方法であって、
集めた抽出液は、生物活性物質を含むラン藻抽出液である調製方法。
【請求項2】
ステップ(a)の該非有機溶剤の重量が、該ラン藻の2倍以上の重量である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
該非有機溶剤が、水、低張液、緩衝液または生理食塩水でよい、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(b)の冷凍温度が、−10℃より低い、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(b)の冷凍温度が、−10℃〜−30℃の間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(b)の融解温度が、0℃〜4℃の間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
該生物活性物質が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
該ラン藻抽出液を濃縮し、濃縮ラン藻抽出液を得る濃縮ステップをさらに含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
該ラン藻抽出液を粉末状にする乾燥ステップをさらに含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物であって、請求項1の調製方法によって得られるラン藻抽出液から任意に選択される医薬組成物。
【請求項11】
該A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する医薬組成物が、ウイルスの赤血球凝集素およびシアル酸の結合を抑制するメカニズムによって達成される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該ラン藻抽出液が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
該A型インフルエンザウイルスが、タミフルのノイラミニダーゼ阻害剤に対して、薬剤耐性を生じる変異型のA型インフルエンザウイルスをさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
該A型インフルエンザウイルスが、2009年のA型H1N1新型インフルエンザウイルスをさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
さらに担体を受容する医薬を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該担体が、賦形剤、希釈剤、増粘剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、脂肪または非脂肪性基剤、界面活性剤、懸濁剤、ゲル化剤、補助剤、防腐剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤あるいは香料である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
該医薬組成物が、粉末、顆粒、液体、コロイドまたはペーストである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項18】
該医薬組成物が、薬品、食品、飲料、栄養補助食品または動物飼料の添加物として製造される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項19】
該医薬組成物が、経口、経皮吸収、注射または吸入の方法で輸送される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項20】
以下の
ラン藻抽出液を提供するステップと、
該ラン藻抽出液および該ウイルスを接触させるステップと、
を含む、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染と複製を抑制する方法であって、
該ラン藻抽出液が、請求項1の調製方法によって得られるラン藻抽出液である方法。
【請求項21】
該ラン藻抽出液が、アロフィコシアニン、含硫多糖、C−フィコシアニン、およびその混合物からなる群から任意に選択されることを含む、請求項20に記載のラン藻抽出液。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【公開番号】特開2012−106978(P2012−106978A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140562(P2011−140562)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(509315559)遠東生物科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(509315559)遠東生物科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]