説明

インフルエンザ検出方法およびそのためのキット

本発明は、インフルエンザAおよび/またはBウイルスの存在について単純、特異的および/または高感度に試験するためのオリゴヌクレオチドを提供する。また、試験において有用なプローブおよび/またはプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドを含むキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザAおよび/またはBウイルスの存在を検出するための、プライマー、プローブならびにそのようなプライマーおよび/またはプローブを用いた方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
合計3種類のインフルエンザウイルス株、すなわち、A、BおよびCが存在する。3つの株のうち、インフルエンザAは、人間を含めた様々な動物に感染することができるため、最も病原性が高いとみなされている。インフルエンザBおよびインフルエンザCウイルスは、通常は人間にのみ感染する。野鳥を天然の宿主として使用するインフルエンザウイルスは「トリインフルエンザウイルス」と呼ばれ、人間を天然の宿主として使用するインフルエンザウイルスは「ヒトインフルエンザウイルス」と呼ばれる。いくつかの事例において、人間および他の動物は、感染した家畜化した鳥および/または感染した野鳥との接触を介して、トリインフルエンザウイルスに感染する。種を交差して人間に感染したトリインフルエンザウイルスが、最近のヒトインフルエンザの大流行の原因となっている。
【0003】
外被に包まれたウイルスであるインフルエンザウイルスは、8つの一本鎖のマイナス鎖RNAセグメントを含有するゲノムを有する。ウイルス外被は、ウイルスの付着を司っているタンパク質である2つの主要な表面ウイルス糖タンパク質、すなわち血球凝集素(「HA」)およびノイラミニダーゼ(「NA」)を有する、宿主由来の脂質二重層を有する。外被内では、マトリックスタンパク質(「MI」)および核タンパク質(「NP」)がウイルスRNAを保護している。インフルエンザウイルスのA、B、およびC型の命名は、MIマトリックスタンパク質およびNPの抗原特性に基づいている。8つのRNAセグメントは、少なくとも10個のウイルスタンパク質をコードしており、セグメント1、2、および3は、3つのウイルスポリメラーゼタンパク質をコードしており、セグメント4はHAをコードしており、セグメント5はNPをコードしており、セグメント6はNAをコードしており、セグメント7はM1およびM2マトリックスタンパク質をコードしており(前者はイオンチャネル活性を有し、ウイルス外被中に包埋されている)、セグメント8は非構造タンパク質NS1およびNS2をコードしている(前者は宿主の抗ウイルス応答を遮断し、後者はウイルス粒子のアセンブリに関与している)。
【0004】
インフルエンザA株は、ウイルスの表面上のHAおよびNAタンパク質に基づいて、亜型へとさらに分類することができる。インフルエンザAウイルスは、16個の異なるHA亜型および9個の異なるNA亜型を有し、これらはすべて、ウイルスの表面上に多くの異なる組合せで存在し得る。たとえば、H5N1ウイルスは、その表面上にHA5タンパク質およびNA1タンパク質を有する。特にインフルエンザAウイルスの、高い度合の遺伝的、したがって免疫学的な可変性の理由は、通常の遺伝的浮動(点突然変異)に加えて、遺伝的シフト(ウイルス遺伝子の再集合)が稀に起こる場合もあることが原因である。これは、他のウイルスとは異なり、インフルエンザウイルスのゲノムがセグメント化されていること、また、インフルエンザAが人間および動物のどちらにもおける病原体であることが原因である。
【0005】
すべての亜型が鳥において見つかっている。人間において見つかっている、より一般的なインフルエンザA亜型は、H1、H2、およびH3亜型であり、H5、H7、およびH9亜型も、人間に感染することが知られている。インフルエンザBおよびC株は亜型に従って分類されていない。
【0006】
1997年以降、以前は鳥に排他的に感染していたインフルエンザAウイルスがヒトに感染しており、致命的な結果となっている。一部のヒトの死亡の結果を伴った、確認されたトリインフルエンザウイルスの流行が、1997年(香港でH5N1)、1999年(中国および香港でH9N2)、2002年(米国バージニア州でH7N2)、2003年(中国および香港でH5N1、オランダでH7N7、香港でH9N2、米国ニューヨーク州でH7N2)、2004年(タイおよびベトナムでH5N1、カナダでH7N3)、ならびに2005年(タイおよびベトナムでH5N1)に報告されている。
【0007】
インフルエンザAおよびBウイルスは、主に鼻咽頭および口腔咽頭の腔に感染し、最初は罹患した人において一般的な呼吸器症状を引き起こす。アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスまたは呼吸器合胞体(syncitial)ウイルス(RSウイルス)などの、鼻腔または咽頭腔に感染する他のウイルスが類似の症状を引き起こすため、熟練の医療従事者でさえも、患者の臨床症状のみに基づいて、高い信頼性でインフルエンザを診断することは不可能である。
【0008】
トリインフルエンザAおよびBウイルスを検出するための伝統的な方法には、培養強化酵素結合免疫吸着アッセイ(「CE−ELISA」)および有胚のニワトリ卵におけるウイルス単離などの、溶菌斑アッセイ(plaque assay)が含まれる。ウイルスの赤血球凝集素およびノイラミニダーゼの亜型決定は、検出後に血清学的方法によって実施する。伝統的な方法は十分な感度であることが示されているが、プロセスには時間がかかり、したがって、個々の患者の診断にすぐに関連性のあるものではない。たとえば、有胚卵におけるウイルス単離は、結果が得られるまでに1〜2週間かかる。インフルエンザA/B感染症を検出するための他の方法は、抗原の検出、細胞培養物中の単離、または逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によるインフルエンザに特異的なRNAの検出を含む。抗原検出の使用は、そのような試験の感度が原因で大きな問題が存在する。迅速試験キットは、一般に、24時間以内に結果を提供し、インフルエンザの検出において約70%の感度であり、約90%の特異度である。迅速試験キットの感度とは、試料の30%のもので偽陰性が得られ得ることを意味し、試験は多重化されていない。これらはすべて実験室内で実施し、通常は、その結果は、処方される処置に影響を与えるほど十分に迅速に生成されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、世界保健機関で規定されているように、ヒトにおいてトリインフルエンザAウイルスを同定するための推奨される診断方法は、免疫蛍光アッセイ(IFA)、ウイルス培養およびPCRアッセイである。IFAおよびウイルス培養方法はどちらも労力を要し、大量の試料で実現可能でない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、添付の独立クレーム中に定義されている。本発明の一部の任意選択の特徴は、添付の従属クレーム中に定義されている。
【0011】
詳細には、本発明は上記問題に取り組み、患者検体中のインフルエンザウイルスをより効率的に検出する方法において有用な、感度および特異性の高いオリゴヌクレオチド、その断片および/または誘導体を提供する。プライマーおよび/またはプローブは、インフルエンザの検出において高感度かつ特異的であり、インフルエンザによる感染症および/またはそれに関連する病状を決定するための、迅速かつ対費用効果の高い診断的および予後的試薬を提供し得る。詳細には、これらのプライマーは、季節性インフルエンザAおよびBを新規インフルエンザAから区別することによってすべてのインフルエンザAおよびインフルエンザB株ならびに亜型を検出することができ、また、新しく出現したインフルエンザAおよびB株を検出することができる、特異的および/または高感度の検出方法を提供する。これらのプライマーは、現地、すなわち医療現場(「POC」)で行うことができる情報価値のあるインフルエンザアッセイを提供し得る。
【0012】
一態様によれば、本発明は、配列番号1から配列番号19、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる、少なくとも1つの単離したオリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドは、インフルエンザAおよび/またはBウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができ得る。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む少なくとも1対のオリゴヌクレオチドを提供し、順方向プライマーは、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号16、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなり、逆方向プライマーは、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による1対のオリゴヌクレオチドおよび少なくとも1つのプローブを含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。プローブは、配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号12、配列番号15、配列番号19、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択され得るヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0015】
さらなる態様によれば、本発明は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13および配列番号16、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる少なくとも1つの順方向プライマー、ならびに配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる少なくとも1つの逆方向プライマーを用いて、インフルエンザAおよび/またはBウイルスから増幅された、少なくとも1つの単位複製配列を提供する。
【0016】
一態様によれば、本発明は、
(a)少なくとも1つの生体試料を提供するステップと、
(b)本発明の任意の態様による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対またはオリゴヌクレオチド組を、生体試料中の少なくとも1つの核酸、ならびに/または生体試料から抽出、精製および/もしくは増幅した少なくとも1つの核酸と接触させるステップと、
(c)ステップ(b)の接触から生じた任意の結合を検出し、結合が検出された場合にインフルエンザAおよび/またはBウイルスが存在するステップと
を含む、生体試料中のインフルエンザAおよび/またはBウイルスの存在を検出する少なくとも1つの方法を提供する。
【0017】
一態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による少なくとも1つの順方向プライマーおよび本発明の任意の態様による1つの逆方向プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施することを含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスの核酸を増幅する少なくとも1つの方法を提供する。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対またはオリゴヌクレオチド組を含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスを検出するための少なくとも1つのキットを提供する。すべてのプライマーおよびプローブを混合して、多重化された1ステップの蛍光プローブに基づいたリアルタイムPCRを、1本のチューブ中で、高い特異性および高い感度で構築し得る。
【0019】
特定の態様によれば、患者検体中のインフルエンザAおよび/またはBウイルスのDNAを検出することができるPCRの方法において有用な、感度および特異性の高いプライマー、その断片および/または誘導体が提供される。この試験を使用して、インフルエンザAおよび/またはBウイルスに罹患している患者からの検体を検査し得る。プライマーは高感度かつ特異的であり得る。さらに、少なくとも1つのIC分子をそれぞれの反応中に含めて、PCRの性能を監視し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)(FAM)Flu A、(B)(HEX)ブタH1N1、(C)(TexRD)Flu B、(D)(CY5)Flu A H3N2を検出する、四重RT−PCRの結果を示すグラフである。
【図2】臭化エチジウムによって分析した、PCR産物の大きさを示すアガロースゲル電気泳動の結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で言及した書誌参照は、利便上、参考文献のリストとして記載し、実施例の最後に追加されている。そのような書誌参照の内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
【0022】
定義
用語「生体試料」とは、本明細書中で、少なくとも1つの動物および/または植物からの任意の組織および/または流体の試料として定義される。生体試料は、ヒトを含めた動物、流体、固体(たとえば大便)または組織、ならびに、乳製品、野菜、肉や食肉以外の部分、および廃棄物などの、液体および固体の食品および飼料の製品および成分であり得る。生体試料は、それだけには限定されないが、有蹄動物、熊、魚、ウサギ目動物(lagamorph)、げっ歯類などの動物を含めた、様々な家畜のファミリーのすべて、および自然または野生の動物から得られ得る。環境試料には、表面物質、土壌、水、空気および工業的試料などの環境物質、ならびに食品および乳業の加工機器、装置、器具、用具、使い捨ておよび使い捨てでない物品から得られた試料が含まれる。これらの例は、本明細書中に開示した方法に適用可能な試料の種類を限定するものと解釈されるべきでない。特に、生体試料は、少なくとも人間からの任意の組織および/または流体であり得る。
【0023】
本明細書中、用語「相補的」とは、塩基対合の規則によって関連づけられたポリヌクレオチド(すなわち、オリゴヌクレオチドまたは標的核酸などのヌクレオチドの配列)に関して使用する。たとえば、配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」に相補的である。核酸鎖間の相補性の度合は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に顕著な影響を与える。このことは、増幅反応、および核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。特に、「相補的配列」とは、一方の配列の5’末端が他方の3’末端と対合するように核酸配列とアラインメントした場合に、「逆平行に会合」するオリゴヌクレオチドをいう。天然の核酸中に一般的に見つからない特定の塩基が本明細書中に開示した核酸中に含まれていてもよく、たとえば、イノシンおよび7−デアザグアニンが含まれる。相補性は完璧である必要はなく、安定な二重鎖はミスマッチの塩基対または一致していない塩基を含有し得る。核酸技術の技術者は、たとえば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度ならびにミスマッチの塩基対の発生率を含めたいくつかの変数を考慮して、二重鎖の安定性を経験的に決定することができる。第1のオリゴヌクレオチドが標的核酸のある領域に相補的であり、第2のオリゴヌクレオチドが同じ領域(またはこの領域の一部分)に対して相補性を有する場合、「重複領域」が標的核酸に沿って存在する。重複の度合は、相補性の程度に応じて変動し得る。
【0024】
用語「含む」とは、本明細書中で、「主に含まれるが、必ずしも単独である必要はない」として定義される。さらに、用語「含む」は、当業者には、「からなる」が含まれるとして自動的に読み取られるであろう。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、単語「含む(comprising)」の変形は、対応して変動する意味を有する。
【0025】
用語「誘導体」とは、本明細書中で、本発明のオリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド配列の化学修飾として定義される。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、たとえば、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換えが含まれることができる。
【0026】
用語「断片」とは、本明細書中で、配列にオリゴヌクレオチドの特徴および機能を与える活性/結合部位を含む、オリゴヌクレオチドの完全配列の不完全または単離した部分として定義される。詳細には、これは少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸が短い場合がある。より詳細には、断片は、オリゴヌクレオチドがインフルエンザウイルスと結合することを可能にする結合部位(複数可)を含む。たとえば、順方向プライマーの断片は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13、もしくは配列番号16の少なくとも10、12、15、18もしくは19個の連続したヌクレオチドを含んでいてもよく、および/または、逆方向プライマーは、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、もしくは配列番号18の少なくとも10、12、15、18、19、20、22、もしくは24個の連続したヌクレオチドを含んでいてもよい。より詳細には、プライマーの断片は少なくとも15個のヌクレオチドの長さであり得る。
【0027】
用語「内部対照(IC)分子」とは、本明細書中で、本発明の方法で使用するインフルエンザウイルスと同じプライマー組によって同時増幅される、in vitroで転写されたオリゴヌクレオチド分子として定義される。詳細には、ICは、偽陰性結果を回避するために、反応混合物中に混合してPCRの性能を監視し得る。このIC分子を検出するためのプローブは、この分子の内部部分に特異的であり得る。この内部部分は人工的に設計される場合があり、自然に存在しない場合がある。
【0028】
本発明のコンテキストにおいて使用する用語「インフルエンザウイルス」には、「トリインフルエンザウイルス」および「ヒトインフルエンザウイルス」の分類に該当するインフルエンザウイルスのすべての亜型が含まれる。インフルエンザウイルスは、インフルエンザA、BまたはCウイルスであり得る。詳細には、インフルエンザAウイルスには、それだけには限定されないが、H1N1、H3N2、H5N1、H5N2、H5N8、H5N9、H7N2、H7N3、H7N4、H7N7、H9N2などが含まれ得る。
【0029】
用語「突然変異」とは、本明細書中で、一定の長さのヌクレオチドの核酸配列中の変化として定義される。当業者は、小さな突然変異、特に置換、欠失および/または挿入の点突然変異は、特に核酸をプローブとして使用する場合に、ヌクレオチドのストレッチにわずかな影響しか与えないことを理解されよう。したがって、本発明によるオリゴヌクレオチドには、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入の突然変異が包含される。さらに、本発明によるオリゴヌクレオチドおよびその誘導体は、プローブとしても機能する場合があり、したがって、本明細書中で言及する任意のオリゴヌクレオチドには、その突然変異および誘導体も包含される。たとえば、突然変異が、標的遺伝子の任意のプライマーハイブリダイゼーション部位の数塩基の位置、特に5’末端で起こる場合、プライマーの配列は、プライマーの感度および特異性に影響を与えない場合がある。
【0030】
用語「生体試料中の核酸」とは、核酸(RNAまたはDNA)を含有する任意の試料をいう。特に、核酸源は、それだけには限定されないが、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ液、痰および精液を含めた生体試料である。
【0031】
一態様によれば、本発明は、配列番号1から配列番号19、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる、少なくとも1つの単離したオリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドは、インフルエンザウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができ得る。インフルエンザウイルスは、インフルエンザAおよび/またはBから選択され得る。特に、オリゴヌクレオチドはプライマーおよび/またはプローブとして有用な場合があり、インフルエンザの一方もしくは両方の株および/または他の非関連のウイルス/微生物を含有する試料中のインフルエンザAおよび/またはBを特異的に検出するための方法で使用し得る。本発明のプライマーおよびプローブのこれらのヌクレオチド配列は、それぞれの株のゲノムに独特であるが、それぞれの株内の多くのウイルスにまたがって保存的でもある、インフルエンザAおよびインフルエンザBのゲノムの領域に特異的にハイブリダイズするように設計されている。
【0032】
本発明の任意の態様によるプライマーは、インフルエンザAの遺伝子型をインフルエンザBから区別するために使用し得る。詳細には、本発明によるプライマーを使用して、インフルエンザAウイルスの様々な亜型の遺伝子型を区別し得る。さらに詳細には、プライマーを使用して、インフルエンザAおよび/またはインフルエンザBウイルスを、ブタ起源H1N1の亜型決定の確認、季節性H1N1、季節性H3N2などと区別し得る。
【0033】
インフルエンザウイルスは薬物耐性株であり得る。インフルエンザウイルスの薬物耐性株は、アマンタジン、オセルタミビル、リマンタジン、ザナミビルなどからなる群から選択される1つまたは複数の薬物に対して耐性であり得る。インフルエンザウイルスの薬物耐性株は、複数の薬物に対して耐性であり得る多剤耐性株であり得る。
【0034】
オリゴヌクレオチド配列は13〜35個の連結されたヌクレオチドの長さであってよく、配列番号1から配列番号19からなる群から選択される配列のうちの任意のものに対して少なくとも70%の配列同一性を含み得る。当業者には、所定プライマーは、増幅反応において相補的核酸鎖の合成を有効にプライミングするために100%の相補性でハイブリダイズする必要はないことが理解されよう。プライマーは、介在または隣接するセグメントがハイブリダイゼーション現象(たとえば、ループ構造またはヘアピン構造)に関与しないように、1つまたは複数のセグメントにわたってハイブリダイズし得る。特に、オリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1から配列番号19からなる群から選択される配列のうちの任意の1つに対して、80%、85%、90%、95%または98%の配列同一性を有し得る。
【0035】
開示した具体的なプライマー配列と比較して、70%〜100%、またはその内の任意の範囲の配列同一性の変動の程度が可能である。配列同一性の決定を以下の例中に記載する。2個の同一でない残基を有する別の20個のヌクレオチドの長さのプライマーと同一である、20個のヌクレオチドの長さのプライマーは、18〜20個の同一の残基を有する(18/20=0.9または90%の配列同一性)。別の例では、すべての残基が20個の核酸塩基の長さのプライマーの15個のヌクレオチドのセグメントと同一である、15個のヌクレオチドの長さのプライマーは、20個のヌクレオチドのプライマーと15/20=0.75または75%の配列同一性を有する。
【0036】
パーセント相同性、配列同一性または相補性は、たとえば、SmithおよびWaternan(Adv.Appl.Math.、1981、2、482〜489)のアルゴリズムを使用する、Gapプログラム(Wisconsin配列解析パッケージ(Sequence Analysis Package)、UNIX用バージョン8、遺伝学コンピューターグループ(Genetics Computer Group)、University Research Park、ウィスコンシン州Madison)によって、初期設定を用いて決定することができる。当業者はパーセント配列同一性またはパーセント配列相同性を計算することができ、必要以上の実験を行わずに、増幅産物を産生させるために核酸の相補鎖の合成をプライミングするその役割におけるプライマーの機能に対する、プライマーの配列同一性の変動の効果を決定することができる。
【0037】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む少なくとも1対のオリゴヌクレオチドを提供し、順方向プライマーは、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号16、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなり、逆方向プライマーは、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による1対のオリゴヌクレオチドおよび少なくとも1つのプローブを含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0039】
プローブは、配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号12、配列番号15および配列番号19、その断片、誘導体、突然変異体、および相補的配列からなる群からのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなっていてよく、また、単位複製配列と結合することができ得る。
【0040】
プローブは、その5’および3’末端で蛍光色素を用いて標識し得る。5’を標識した蛍光色素の例には、それだけには限定されないが、6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(HEX)、テトラクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、およびシアニン−5(Cy5)が含まれ得る。3’を標識した蛍光色素の例には、それだけには限定されないが、5−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)およびブラックホールクエンチャー(black hole quencher)−1、2、3(BHQ−1、2、3)が含まれ得る。
【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドは、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列に基づいた増幅(NASBA)、転写媒介性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)、高温SDA(tSDA)またはライゲーション媒介性増幅(LMA)などの、当分野で知られている様々な核酸増幅技法で使用し得る。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、ウイルス核酸の直接ハイブリダイゼーションを介して増幅なしでインフルエンザAおよびBを直接検出するため、あるいはウイルスの核酸のDNAもしくはRNAコピーまたはその相補体を検出するための、当業者に知られている様々な方法においても使用し得る。
【0042】
本発明の任意の態様によるオリゴヌクレオチドは、臨床または培養試料のどちらかからインフルエンザを検出するための方法において使用してよく、臨床試料には、それだけには限定されないが、鼻咽頭、鼻および喉のスワブならびに鼻咽頭の吸引液および洗浄液が含まれ得る。臨床試料は、ウイルス核酸のより効率的な検出を可能にするために、試験前に予備処理を行い得る。たとえば、試料を採取し、ウイルスを安定化させるために輸送培地に加え得る。鼻咽頭、鼻および喉のスワブを輸送培地に加え得る。鼻咽頭の吸引液および洗浄液は、輸送培地を加えることによって安定化される場合またはされない場合がある。試験室で受け取られた後、ウイルスを不活性化し、溶解してウイルスRNAを遊離させ得る。その後、核酸を任意選択で抽出して、後のアッセイステップの潜在的な阻害剤または他の干渉剤を除去し得る。本発明の方法を行うために、ウイルス核酸をインフルエンザAおよび/またはインフルエンザBの特異的検出に必須の構成要素と混合し得る。
【0043】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを用いてインフルエンザから増幅された、少なくとも1つの単位複製配列を提供する。
【0044】
一態様によれば、本発明は、
(a)少なくとも1つの生体試料を提供するステップと、
(b)本発明の任意の態様による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対またはオリゴヌクレオチド組を、生体試料中の少なくとも1つの核酸、ならびに/または生体試料から抽出、精製および/もしくは増幅した少なくとも1つの核酸と接触させるステップと、
(c)ステップ(b)の接触から生じた任意の結合を検出および/または定量し、結合が検出された場合にインフルエンザウイルスが存在するステップと
を含む、生体試料中のインフルエンザウイルスの存在を検出および/または定量する少なくとも1つの方法を提供する。
【0045】
一態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による少なくとも1つの順方向プライマーおよび本発明の任意の態様による1つの逆方向プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施することを含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスの核酸を増幅する少なくとも1つの方法を提供する。
【0046】
別の態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様による少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対またはオリゴヌクレオチド組を含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスを検出するための少なくとも1つのキットを提供する。キットは、インフルエンザ症状を患っている患者においてヒトおよびトリのインフルエンザウイルスを検出するために、臨床医によって使用され得る。そのようなキットは、トリインフルエンザA、インフルエンザA、またはヒトインフルエンザBを検出するための1つまたは複数のプライマーおよびプローブの組を含むであろう。
【0047】
トリインフルエンザA、インフルエンザA、またはヒトインフルエンザBを検出するためのプライマーおよび/またはプローブの組は、表1中に見つけ得る。
【0048】
【表1】

【表2】

表1.トリインフルエンザA、インフルエンザA、および/またはヒトインフルエンザBを検出するための5個のプライマーおよび/またはプローブの組。「Y」はヌクレオチドC/Tを表し、「K」はG/Tを表し、「R」はヌクレオチドA/Gを表す。
【0049】
一態様では、本発明は、
−配列番号1、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号2、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号3、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0050】
本発明の本態様による組は、試料からのインフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。
【0051】
別の態様によれば、本発明は、
−配列番号4、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号5、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号6、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0052】
本発明の本態様による組は、インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのH1N1亜型であり得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのブタ起源H1N1亜型であり得る。
【0053】
別の態様によれば、本発明は、
−配列番号7、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号8、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号9、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0054】
本発明の本態様による組は、インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのH1N1亜型であり得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのブタ起源H1N1亜型であり得る。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、
−配列番号10、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号11、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号12、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0056】
本発明の本態様による組は、インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのH1N1亜型であり得る。インフルエンザAウイルスは季節性H1N1であり得る。
【0057】
一態様によれば、本発明は、
−配列番号13、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号14、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号15、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0058】
本発明の本態様による組は、インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのH3N2亜型であり得る。インフルエンザAウイルスはインフルエンザAウイルスのブタ起源H3N2亜型であり得る。
【0059】
別の態様によれば、本発明は、
−配列番号16、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる順方向プライマー、
−配列番号17もしくは配列番号18、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる逆方向プライマー、および
−配列番号19、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプローブ
を含む、少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0060】
本発明の本態様による組は、インフルエンザBウイルスと結合するおよび/またはそれを検出することができ得る。
【0061】
一態様によれば、本発明は、本発明の任意の態様によるオリゴヌクレオチドを用いてポリメラーゼ連鎖反応を実施することを含む、インフルエンザウイルスの核酸を増幅する少なくとも1つの方法を提供する。
【0062】
本発明の任意の態様による方法は、内部分子(IC)およびICに特異的なプローブを生体試料と混合するステップをさらに含み得る。ICの使用はインフルエンザ診断の効率を改善させて結果の正確さを高め得る。
【0063】
上記は、例示の目的で提供し、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することで、より容易に理解されると考えられる。
【実施例】
【0064】
当分野で知られており、具体的に記載していない標準の分子生物学技法は、一般に、SambrookおよびRussel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(2001)の記載に従った。
【実施例1】
【0065】
ここまでに本発明を一般的に説明した。例示の目的で提供し、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することで、上記はより容易に理解されるであろう。
【0066】
四重検出
蛍光プローブに基づいたリアルタイムの1ステップのRT−PCRを、Superscript(商標)III RT/Platinum(登録商標)Taq Mix(カタログ番号11732−20、Invitrogen、米国)を用いて、2.5μlのRNA試料、4対の順方向/逆方向プライマー、0.15μMの最終濃度のそれぞれのプライマーおよび0.1μMの最終濃度の4つすべてのプローブを含有する25μlの反応体積で、サーマルサイクラー中で行った。熱サイクリングは、Stratagene Mx3000P(Stratagene、米国La Jolla)によって行った。その後、蛍光検出をそれぞれのサイクルで読み取って、陽性試料を明らかにした。4つのプライマー対には、A145F/R(それぞれ配列番号1および配列番号2)、H1s142F/R(それぞれ配列番号7および配列番号8)、H3−116F/R(それぞれ配列番号13および配列番号14)、ならびにB188F/R1、R2(それぞれ配列番号16、配列番号17および配列番号18)が含まれていた。4つの対応する蛍光プローブには、A145−FAM(配列番号3)、H1s142−HEX(配列番号9)、H3−116−Cy5(配列番号15)およびB188−TxRd(配列番号19)が含まれていた。
【0067】
Stratagene Mx3000P(Stratagene、米国La Jolla)は、以下のステップおよび条件で使用した:55℃で10分間の逆転写、95℃で2.5分間のPlatinum Taq DNAポリメラーゼの初期の活性化、続いて、42サイクルの、95℃で17秒間の変性、55℃で31秒間のアニーリング、および68℃で32秒間の伸長。蛍光データ収集点は、それぞれのサイクルの55℃のプラトーのアニーリングステップに設定した。
【0068】
以下の試料でRT−PCRを実施した。
1.ブタ様H1N1、WHO、オーストラリアによるA/Auckland/3/2009 H1N1ブタ様インフルエンザから抽出した精製RNA。
(−5):10−5培希釈、(−6):10−6培希釈、(−7):10−7培希釈、ストックから。
2.H3N2、患者から抽出した精製RNA。
(−2):10−2培希釈、(−3):10−3培希釈。
3.Flu B、ATCC、VR−786から得たウイルスストックから抽出した精製RNA。
(−5):10−5培希釈、(−6):10−6培希釈。
4.NTC、水。
【0069】
結果を表2に示す。サイクル閾値(Ct)をサイクルの回数に対してプロットし、図1に示した。
【0070】
【表3】

表2.配列番号1、配列番号2、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号14、配列番号16、配列番号17および配列番号18のプライマーを用いたRT−PCRの結果。
【実施例2】
【0071】
ゲル電気泳動用のH1s138プライマー対(配列番号4および配列番号5)
一重の1ステップのRT−PCRを、酵素混合物、プライマー対のH1s138プライマー対(すなわち配列番号4および配列番号5)を含有するSuperScript(登録商標)III Platinum(登録商標)One−Step qRT−PCRキット(カタログ番号:11732−20)で行った。PCR産物は、臭化エチジウム−アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0072】
以下の試料でPCRを実施した:
1.ブタ様H1N1、WHO、オーストラリアによるA/Auckland/3/2009 H1N1ブタ様インフルエンザから抽出した精製RNA。(−6):ストックから10−6培希釈、
2.患者試料、および
3.陰性対照、水。
【0073】
結果を表3に示す。電気泳動の結果を図2に示す。予測されたPCR産物の長さは138bpである。図2に見られるように、プライマーは標的に特異的であり、陽性対照および一部の患者の試料で138bpのバンドをもたらした。
【0074】
【表4】

表3.患者試料の電気泳動および四重(実施例1と同様)の結果。
【0075】
実施例1で説明した四重RT−PCRを同じ患者の試料に対して使用した。結果を表2に示す。見ることができるように、図2で陽性であった患者の試料(すなわち138bpのバンドを示す)はブタ起源H1N1を有することが確認されたため、電気泳動の結果は四重RT−PCRの結果に対応している。
【0076】
参考文献
SambrookおよびRussel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(2001)。
SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.、1981、2、482〜489。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1から配列番号19、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、単離したオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列が13〜35個の連結されたヌクレオチドの長さであり、配列番号1から配列番号19のうちの任意の1つに対して少なくとも70%の配列同一性を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号1から配列番号19、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列からなる、単離したオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
インフルエンザAおよび/またはBウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離したオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
順方向プライマーが、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号16、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
順方向プライマーが、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13および配列番号16、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列からなり、逆方向プライマーが、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列からなる、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
順方向プライマーが、配列番号1、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号2、その断片、誘導体、または相補的配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項7に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号3、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
順方向プライマーが、配列番号4、配列番号7、その断片、誘導体、および相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号5、配列番号8、その断片、誘導体、突然変異体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
順方向プライマーが、配列番号4、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号5、その断片、誘導体、または相補的配列を含む、請求項10に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項12】
順方向プライマーが、配列番号7、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号8、その断片、誘導体、または相補的配列を含む、請求項10に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項13】
インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項10から12のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項14】
インフルエンザAウイルスがインフルエンザAウイルスのH1N1亜型である、請求項13に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項15】
インフルエンザAウイルスが、インフルエンザAウイルスのブタ起源H1N1亜型である、請求項13または14のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか一項に記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号6または配列番号9、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
請求項11に記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号6、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項12に記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号9、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
順方向プライマーが、配列番号10、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号11、その断片、誘導体、または相補的配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項19に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項21】
インフルエンザAウイルスが、インフルエンザAウイルスの季節性H1N1亜型である、請求項20に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか一項に記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号12、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
順方向プライマーが、配列番号13、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号14、その断片、誘導体、または相補的配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
インフルエンザAウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項23に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項25】
インフルエンザAウイルスが、インフルエンザAウイルスの季節性H3N2亜型である、請求項24に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか一項に記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号15、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
順方向プライマーが、配列番号16、その断片、誘導体、または相補的配列を含み、逆方向プライマーが、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、または相補的配列の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つの順方向プライマーおよび少なくとも1つの逆方向プライマーを含む1対のオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
インフルエンザBウイルスと結合するおよび/またはそれから増幅されることができる、請求項27に記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項29】
請求項27または28のいずれかに記載の1対のオリゴヌクレオチド、および配列番号19、その断片、誘導体、または相補的配列のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブを含む、1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13および配列番号16、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの順方向プライマー、ならびに配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの逆方向プライマーを用いて、インフルエンザAおよび/またはBウイルスから増幅された単位複製配列。
【請求項31】
配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号12、配列番号15、配列番号19、その断片、誘導体、および相補的配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのプローブが、単位複製配列と結合することができる、請求項30に記載の単位複製配列。
【請求項32】
(a)少なくとも1つの生体試料を提供するステップと、
(b)請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを、生体試料中の少なくとも1つの核酸、ならびに/または生体試料から抽出、精製および/もしくは増幅した少なくとも1つの核酸と接触させるステップと、
(c)ステップ(b)の接触から生じた任意の結合を検出および/または定量し、結合が検出された場合にウイルスが存在するステップと
を含む、生体試料中のインフルエンザの存在を検出および/または定量する方法。
【請求項33】
(a)少なくとも1つの生体試料を提供するステップと、
(b)請求項9、16から18、22、26または29のいずれか一項に記載の1組のオリゴヌクレオチドを、生体試料中の少なくとも1つの核酸、ならびに/または生体試料から抽出、精製および/もしくは増幅した少なくとも1つの核酸と接触させるステップと、
(c)ステップ(b)の接触から生じた任意の結合を検出および/または定量し、結合が検出された場合にウイルスが存在するステップと
を含む、生体試料中のインフルエンザAおよび/またはBウイルスの存在を検出および/または定量する方法。
【請求項34】
インフルエンザウイルスがインフルエンザAまたはインフルエンザBである、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
インフルエンザAウイルスの亜型がブタ起源H1N1、季節性H1N1、および季節性H3N2からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(a)の後に、内部分子(IC)およびICに特異的なプローブを生体試料と混合するステップをさらに含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から4のいずれかに記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスを検出するためのキット。
【請求項38】
請求項5から8、10から15、19から21、23から25、または27から28のいずれか一項に記載の少なくとも1対のオリゴヌクレオチドを含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスを検出するためのキット。
【請求項39】
請求項9、16から18、22、26または29のいずれか一項に記載の少なくとも1組のオリゴヌクレオチドを含む、インフルエンザAおよび/またはBウイルスを検出するためのキット。

【図2】
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【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2012−532627(P2012−532627A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520570(P2012−520570)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000263
【国際公開番号】WO2011/008171
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(508320734)エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (7)
【出願人】(512003009)タン トク セン ホスピタル プライベート リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】TAN TOCK SENG HOSPITAL PTD LTD.
【住所又は居所原語表記】11 Jalan Tan Tock Seng Singapore 308433 Singapore
【Fターム(参考)】