説明

インフレーションフィルムの製造装置および製造方法、ならびにこれより得られたインフレーションフィルム

【課題】衛生面や生産性を確保し、品質の低下を抑制すると共に、平坦に巻き取ることができるインフレーションフィルムの製造装置および製造方法、ならびにこれより得られたインフレーションフィルムを実現する。
【解決手段】連続的に成形されるインフレーションフィルムの製造装置1において、筒状にインフレーションフィルム10を成形する成形手段20と、該インフレーションフィルム10を冷却する冷却手段30と、インフレーションフィルム10を扁平状にする扁平手段40と、扁平状のインフレーションフィルム50を巻き取る巻取り手段60とを具備し、前記扁平手段40と巻取り手段60との間に、扁平状のインフレーションフィルム50の両端をレーザーで溶断する溶断手段70を備えることを特徴とするインフレーションフィルムの製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーションフィルムの製造装置および製造方法、ならびにこれより得られたインフレーションフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフレーション法やTダイ法により、連続的に成形されたフィルムは、冷却された後、ロール状に巻き取られて搬送、保管される場合が多い(例えば、特許文献1参照。)。
インフレーション法により成形される筒状のフィルムは、通常、冷却後に扁平状にされてから巻き取られる。しかし、筒状のフィルムを扁平状にすると、図4(a)に示すように端部51に空気が溜まり、特に屈曲部分はフィルムの反発力により膨らみやすくなり、フィルムを2枚重ねたときの厚さに比べて見かけの厚さが増し、厚みムラが生じることがあった。また、フィルムの厚さを厚くするほど、扁平状にした際に端部51が屈曲しにくかった。特に輸液バッグなど、薬剤を収容する医療容器に用いられるフィルムは、フィルムに100〜1000μm程度の厚みを持たす必要があるため、扁平状にすると端部の屈曲部分はフィルムの反発力により、フィルムを2枚重ねたときの厚さに比べて見かけの厚さが増しやすく、厚みムラが生じやすかった。
【0003】
図4(a)に示すような厚みムラが生じた状態でフィルムを巻き取ると、フィルムの端部に相当する部分が、中央部に相当する部分に比べて嵩だかになり、平坦に巻き取ることが困難になるといった問題があった。
従来、フィルムの巻取り方法として、巻軸に軸方向にトラバースしつつ巻き取る方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
そこで、トラバース法を適用してインフレーション法により成形されたフィルムを巻き取ることで、上述した問題を解決する試みがなされている。
しかし、トラバース法により巻き取られたフィルムは、フィルムにうねりの癖が残ってしまうといった場合があった。
【0004】
ところで、Tダイ法により成形されたフィルムは、端部の外側に耳部が形成されやすい。該耳部はフィルム本体とは異なり厚さや幅方向の長さを制御することが困難である。そのため、品質上、フィルムを製造する際は耳部を切断してフィルム本体を巻き取る必要があり、近年、耳部を切断してフィルムを巻き取る方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
そこで、上述した耳部の切断技術を適用して、インフレーション法により成形され、扁平状にされたフィルムの両方の端部、すなわち両端を切断して巻き取る方法が実施されている。該方法によれば、フィルムを巻き取る際に部分的に嵩だかになることを防げるので平坦に巻き取りやすく、かつ、フィルムにうねりの癖が残る恐れもない。
【特許文献1】特開平9−123251号公報
【特許文献2】特開2002−211813号公報
【特許文献3】特開平7−144814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フィルムの両端を切断して巻き取る方法では、フィルムの内面が外気と接触しやすくなるので、衛生上の問題があった。特に、薬剤を収容する医療容器など、衛生面に注意を払う必要がある容器に用いられるフィルムを製造する場合には適さなかった。
【0007】
そこで、衛生上の問題を解決するために、ニクロム線などの熱線や、所定の温度に加熱した切断刃を扁平状のフィルムの両端に接触させて、接触部分を溶かしてシールしつつ切断する、いわゆる溶断を行った後に巻き取る方法や、両端を溶着させて巻き取る方法が考えられる。
これらの方法によれば、フィルムの内面を外気と遮断できるので、衛生面を確保しつつ平坦にフィルムを巻き取ることができる。
【0008】
しかし、熱線や加熱した切断刃を用いて、扁平状のフィルムの両端を溶断する場合、連続的に搬送されるフィルムに接触するため、熱線や切断刃に負荷がかかりやすかった。特にニクロム線などの熱線は脆いので、負荷がかかると折れたり劣化物の破片が飛翔したりしやすかった。該破片がフィルムに付着するとフィルムが汚染されるため、品質が低下することとなる。
また、熱線や切断刃の接触により溶けたフィルム、すなわち溶融樹脂が熱線や切断刃に付着し、その付着物または劣化物がフィルムの溶断時にフィルムに付着してしまうといった不具合もあった。
【0009】
また、両端を溶着させて巻き取る方法の場合、該当箇所を所望の温度まで温めるのに時間がかかることがあり、フィルムの引き取り速度が昇温速度に追いつかなくなり、両端の溶着が不十分のまま巻き取れるといった問題がある。さらに、溶着後のフィルムを巻き取る前に、温めたフィルムを冷却する必要があるため、巻き取るまでに時間がかかりやすく、生産性が低下する懸念がある。
【0010】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、衛生面や生産性を確保し、品質の低下を抑制すると共に、平坦に巻き取ることができるインフレーションフィルムの製造装置および製造方法、ならびにこれより得られたインフレーションフィルムを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインフレーションフィルムの製造装置は、連続的に成形されるインフレーションフィルムの製造装置において、筒状にインフレーションフィルムを成形する成形手段と、該インフレーションフィルムを冷却する冷却手段と、インフレーションフィルムを扁平状にする扁平手段と、扁平状のインフレーションフィルムを巻き取る巻取り手段とを具備し、前記扁平手段と巻取り手段との間に、扁平状のインフレーションフィルムの両端をレーザーで溶断する溶断手段を備えることを特徴とする。
ここで、前記溶断手段は、扁平状のインフレーションフィルムの両端よりも内側をレーザーで長さ方向にさらに溶断することが好ましい。
さらに、前記レーザーがCOレーザーであることが好ましい。
【0012】
また、本発明のインフレーションフィルムの製造方法は、連続的に成形されるインフレーションフィルムの製造方法において、筒状にインフレーションフィルムを成形する成形工程と、該インフレーションフィルムを冷却する冷却工程と、インフレーションフィルムを扁平状にする扁平工程と、扁平状のインフレーションフィルムを巻き取る巻取り工程とを有し、前記扁平工程と巻取り工程との間に、扁平状のインフレーションフィルムの両端をレーザーで溶断する溶断工程を有することを特徴とする。
ここで、前記溶断工程は、扁平状のインフレーションフィルムの両端よりも内側をレーザーで長さ方向にさらに溶断することが好ましい。
さらに、前記レーザーがCOレーザーであることが好ましい。
【0013】
また、本発明のインフレーションフィルムは、前記インフレーションフィルムの製造方法により得られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衛生面や生産性を確保し、品質の低下を抑制すると共に、平坦に巻き取ることができるインフレーションフィルムの製造装置および製造方法を実現できる。
また、本発明のインフレーションフィルムの製造装置および製造方法によれば、高品質のインフレーションフィルムが得られる。
さらに、本発明のインフレーションフィルムの製造装置および製造方法によれば、1つのインフレーションフィルムから、複数の筒状のフィルムを製造することができる。
また、本発明によれば、インフレーションフィルムの厚さを厚くしても、容易に平坦に巻き取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のインフレーションフィルムの製造装置の全体構造の一例を示す概略図である。
本例のインフレーションフィルムの製造装置1は、筒状にインフレーションフィルム10を成形する成形手段20と、該インフレーションフィルム10を冷却する冷却手段30と、インフレーションフィルム10を扁平状にする扁平手段40と、扁平状のインフレーションフィルム50を巻き取る巻取り手段60とを有して構成されている。
また、本発明のインフレーションフィルムの製造装置1には、扁平手段40と巻取り手段60との間に、扁平状のインフレーションフィルム50の両端を溶断する溶断手段70が備えられている。
以下、扁平前のインフレーションフィルム10を「成形フィルム10」、扁平後のインフレーションフィルム50を「扁平フィルム50」と略す場合がある。
【0016】
成形手段20は、ダイ21を取り付けた押出機22を備えている。
ダイ21および押出機22としては特に制限されず、公知のインフレーション用のダイ、および押出機を用いることができる。
押出機22から連続的に、筒状に押し出された溶融樹脂は、垂直方向に引き取られながら直ちに空気圧で膨む。この例では、ダイ21の吐出口が下向きに向いているので、筒状に押し出された溶融樹脂は下向き、すなわち鉛直方向に引き取られる。
【0017】
冷却手段30としては、成形手段にて成形された成形フィルム10を冷却できるものであれば、特に制限されないが、成形手段が上述したような下吹きタイプの場合、例えば内部を冷媒が循環する冷却リングなどが挙げられる。冷媒としては水などが挙げられる。
【0018】
扁平手段40としては、筒状に膨らんでいる成形フィルム10を扁平状にできるものであれば、特に制限されないが、例えば成形フィルム10を挟み込んで扁平状にするピンチロールなどが挙げられる。
巻取り手段60としては、扁平手段により扁平状にされた扁平フィルム50をロールなどに巻き取れるものであれば、特に制限されない。
【0019】
溶断手段70は、前記扁平手段40と巻取り手段60との間に設けられている。溶断手段70には、レーザー照射機構が備わっており、扁平フィルム50の両端にレーザーを照射して溶断する。レーザー照射機構としては、レーザーを照射できるものであれば特に制限されないが、例えばファナック社製の「C4000i−MODEL B」などが挙げられる。
前記レーザー照射機構から照射されるレーザーとしては、COレーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、UV固体レーザー、エキシマレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、透明なフィルムにも対応できるCOレーザーが特に好ましい。
【0020】
また、本例の溶断手段70には、両端を溶断することにより扁平フィルム50から切断された切断物を回収する回収機構71が備えられている。回収機構71としては、例えば切断物を巻取りながら回収する回収ローラなどが挙げられる。
【0021】
本発明のインフレーションフィルムの製造装置1においては、溶断手段70が、扁平フィルム50の両端よりも内側をレーザーで長さ方向にさらに溶断することが好ましい。溶断手段70が扁平フィルム50の両端よりも内側を溶断するには、例えば図3に示すように、扁平フィルム50の両端よりも内側にレーザーを照射する溶断手段70を所定の間隔で複数設ければよい。
なお、図3において、図2と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
なお、インフレーションフィルムの製造装置1には、上述した各手段の前後に駆動式の送りロールや引取りロールが備えられていてもよい。引取りロールによって、成形フィルム10や扁平フィルム50は各手段に導かれるが、この際、引取りロールの引取り速度を、送りロールの送り速度以上の速さに設定することによって、円滑に成形フィルム10や扁平フィルム50を搬送させることができる。図1に示す例では、扁平手段40の下流、溶断手段70の上流に引取りロール80が備えられている。
【0023】
次に、図1のインフレーションフィルムの製造装置1を用いて、本発明のインフレーションフィルムの製造方法の一例を説明する。
本発明のインフレーションフィルムの製造方法は、筒状にインフレーションフィルムを成形する成形工程と、該インフレーションフィルムを冷却する冷却工程と、インフレーションフィルムを扁平状にする扁平工程と、扁平状のインフレーションフィルムを巻き取る巻取り工程とを有する。
また、本発明のインフレーションフィルムの製造方法には、前記扁平工程と巻取り工程との間に、扁平状のインフレーションフィルムの両端をレーザーで溶断する溶断工程を有する。
【0024】
成形工程は、成形手段20の押出機22より、溶融した樹脂をダイ21から筒状に押し出して、成形フィルム10を成形する工程である。ダイ21から押し出された溶融樹脂は、鉛直方向に引き取られながら直ちに空気圧で膨らみ、または引き取られることにより縮み、成形フィルム10に成形される。
引き取り速度は3〜100m/分が好ましい。
【0025】
本発明に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば、特に制限されない。例えば成形される材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、環状ポリオレフィン、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。これらを用いて成形フィルムが成形される。
本発明のインフレーションフィルムは、1種類の材料からなる単層フィルムであってもよく、複数の種類の層からなる多層フィルムであってもよい。
【0026】
冷却工程は、成形フィルム10を冷却する工程である。冷却方法としては、空冷や水冷などが挙げられる。空冷の場合は、成形手段20より成形された成形フィルム10を自然冷却したり、空気などを吹きつけて冷却したりする。一方、水冷の場合は、図1に示すように成形フィルム10を、水冷リングなどの冷却手段30の内側を通過させて冷却する。
【0027】
扁平工程は、冷却工程で冷却された成形フィルム10を扁平状にする工程であり、例えば扁平手段40がピンチロールの場合、一対のピンチロールの間を成形フィルム10が通過することで成形フィルム10がピンチロールに挟まれて扁平状になる。
扁平手段40への引き取り速度は、成形工程時の引き取り速度と同じ速度に設定するのが好ましい。
【0028】
扁平工程により扁平状になった扁平フィルム50は、図4に示すように、端部51に空気が溜まったり、屈曲によるフィルムの反発力により見かけの厚さが増したりする。特に、フィルムの厚さが厚くなるほど、フィルムを扁平状にした際に端部51が屈曲しにくくなる傾向にある。
【0029】
溶断工程は、扁平工程により扁平状にされた扁平フィルム50の両方の端部51、すなわち両端を、溶断手段70にて溶断する工程である。端部51の溶断にはレーザーを用いる。レーザーとしては、COレーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、UV固体レーザー、エキシマレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、透明なフィルムにも対応できるCOレーザーが特に好ましい。
【0030】
連続的に搬送される扁平フィルム50の両端にレーザーを照射することで、図2に示すように、切り口が扁平フィルム50の搬送方向と平行になる。
レーザーの照射条件としては、レーザー出力を10w〜10kwに設定するのが好ましく、より好ましくは100w〜1kwである。また、扁平フィルム50の搬送速度は、成形工程時の引き取り速度と同じ速度に設定するのが好ましい。さらに、扁平フィルム50の端部51の外縁52から、レーザー照射位置53までの距離dは、レーザーが照射されるスポットの大きさに合わせて設定するのが好ましい。
【0031】
扁平フィルム50の両端を溶断することで、図4(b)に示すように厚みムラが解消されると共に、フィルムの内面を外気と遮断できるので、衛生面をも確保できる。
なお、図2に示すように、溶断により扁平フィルム50から切断された切断物54は、図1に示す溶断手段70に備えられた回収機構71により回収され、系外へ排出される。
【0032】
また、溶断工程は、図3に示すように、扁平フィルム50の両端よりも内側にレーザーを照射する溶断手段70を所定の間隔で複数設け、扁平フィルム50の長さ方向に溶断してもよい。これにより、1つの成形フィルムから複数の扁平フィルム50を同時に製造できる。
なお、扁平フィルム50の両端よりも内側を長さ方向に溶断する工程は、図3に示すように扁平フィルム50の両端を溶断する工程と同時に行ってもよいし、両端を溶断する工程の前、または後に行ってもよい。
【0033】
巻取り工程は、溶断工程により溶断された扁平フィルム50をロールなどに巻き取る手段である。
巻取り速度は成形工程時の引き取り速度と同じ速度に設定するのが好ましい。
【0034】
このようにして得られたインフレーションフィルムは、扁平フィルムの端部が溶着しているので、図4(a)に示すような見かけの厚さが増加する恐れがない。従って、扁平フィルムを巻く際に、フィルムの端部に相当する部分と中央部に相当する部分との厚さにムラが生じにくくなるので、平坦に巻き取ることができると共に、フィルムの内面を外気と遮断できるので、衛生面も確保できる。
【0035】
さらに、本発明はレーザーにて扁平フィルムの両端を溶断する非接触型の溶断方法である。一方、従来の溶断方法は、ニクロム線などの熱線や、加熱した切断刃を扁平フィルムの両端に接触させて溶断する接触型の溶断方法である。接触型の溶断方法の場合、熱線や切断刃に負荷がかかることで熱線や切断刃が折れたり劣化物の破片が飛翔したりしやすく、特に破片がフィルムに付着するとフィルムが汚染されるため、品質が低下しやすかった。
しかし、本発明によれば、非接触型の溶断方法を採用しているので、破片がフィルムに付着することに起因するフィルム汚染を抑制でき、高品質を保持できる。
【0036】
また、従来のように扁平フィルムの両端を溶着させて巻き取る方法の場合、溶着後のフィルムを巻き取る前に、温めたフィルムを冷却する必要があるため、巻き取るまでに時間がかかりやすく、生産性が低下しやすかった。
しかし、本発明によれば、溶断後にフィルムを冷却する必要がないので、溶断手段の直後に巻取り手段を配置することも可能である。従って、生産性を維持することができる。
【0037】
また、通常、フィルムの厚さを厚くするほど扁平状にした際に端部が屈曲しにくく、厚さが増して厚みムラが生じやすくなり、扁平フィルムは平坦に巻き取られにくくなる。
しかし、本発明によれば、フィルムの厚さを厚くしても、扁平フィルムの両端を溶断させることにより厚みムラを解消できるので、扁平フィルムを平坦に巻き取ることができる。従って、例えば輸液バッグなど薬剤を収容する医療容器用のフィルムのように、フィルムに100〜1000μm程度の厚みを持たす必要がある場合でも、本発明により得られるインフレーションフィルムは所望の厚さのフィルムを製造することができるので、医療容器用のフィルムとしても好適である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<インフレーションフィルムの製造>
図1に示す装置を用い、インフレーションフィルムを製造した。インフレーションフィルムの原料、および各工程における条件を以下に示す。
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(メルトフローレート):2g/10分、密度:0.921g/cm)を使用した。
なお、MFRは、日本工業規格JIS K 7210に準拠し、190℃、21.18Nの荷重にてMFRを測定した。
【0039】
成形工程:押出機22より、引き取り速度20m/分にて、溶融した原料をダイ21から筒状に押し出し、厚さ300μmの成形フィルム10を成形した。
冷却工程:水冷にて成形フィルム10を冷却した。
扁平工程:扁平手段40への引き取り速度20m/分にて、一対のピンチロールの間に成形フィルム10を通過させて、扁平フィルム50とした。
溶断工程:溶断手段70として、COレーザー装置(ファナック社製、「C4000i−MODEL B」)を用い、出力を1kw、扁平フィルム50の搬送速度を20m/分、図2に示す扁平フィルム50の端部51の外縁52から、レーザー照射位置53までの距離dを19cmに設定し、扁平フィルム50の両端を溶断した。
巻取り工程:巻取り速度20m/分にて、溶断された扁平フィルム50をロールに巻き取った。
【0040】
このようにして得られたインフレーションフィルムは、図4(b)に示すように厚みムラが解消されたので、平坦に巻き取ることができると共に、フィルムの内面を外気と遮断できるので、衛生面も確保できた。また、生産性や品質の低下を抑制できた。
【0041】
[比較例1]
溶断工程において、ニクロム線を扁平フィルム50の両端に接触させて溶断した以外は、実施例1と同様にして、インフレーションフィルムを製造した。
その結果、製造初期においては実施例で得られたインフレーションフィルムと同等の品質のインフレーションフィルムを製造することができたが、時間の経過と共に、ニクロム線が劣化し、劣化物の破片が飛翔してインフレーションフィルムに付着し、品質が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のインフレーションフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】扁平フィルムの搬送方向とレーザーの照射方向の関係を示す図である。
【図3】溶断手段の他の例を示す図である。
【図4】(a)は扁平された直後のインフレーションフィルムの一例を示す斜視図であり、(b)は溶断されたインフレーションフィルムの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1:インフレーションフィルムの製造装置、10:扁平前のインフレーションフィルム、20:成形手段、21:ダイ、22:押出機、30:冷却手段、40:扁平手段、50:扁平状のインフレーションフィルム、51:端部、52:外縁、53:照射位置、54:切断物、60:巻取り手段、70:溶断手段、71:回収機構、80:引取りロール。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に成形されるインフレーションフィルムの製造装置において、
筒状にインフレーションフィルムを成形する成形手段と、該インフレーションフィルムを冷却する冷却手段と、インフレーションフィルムを扁平状にする扁平手段と、扁平状のインフレーションフィルムを巻き取る巻取り手段とを具備し、
前記扁平手段と巻取り手段との間に、扁平状のインフレーションフィルムの両端をレーザーで溶断する溶断手段を備えることを特徴とするインフレーションフィルムの製造装置。
【請求項2】
前記溶断手段は、扁平状のインフレーションフィルムの両端よりも内側をレーザーで長さ方向にさらに溶断することを特徴とする請求項1に記載のインフレーションフィルムの製造装置。
【請求項3】
前記レーザーがCOレーザーであることを特徴とする請求項1または2に記載のインフレーションフィルムの製造装置。
【請求項4】
連続的に成形されるインフレーションフィルムの製造方法において、
筒状にインフレーションフィルムを成形する成形工程と、該インフレーションフィルムを冷却する冷却工程と、インフレーションフィルムを扁平状にする扁平工程と、扁平状のインフレーションフィルムを巻き取る巻取り工程とを有し、
前記扁平工程と巻取り工程との間に、扁平状のインフレーションフィルムの両端をレーザーで溶断する溶断工程を有することを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶断工程は、扁平状のインフレーションフィルムの両端よりも内側をレーザーで長さ方向にさらに溶断することを特徴とする請求項4に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記レーザーがCOレーザーであることを特徴とする請求項4または5に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載のインフレーションフィルムの製造方法により得られたことを特徴とするインフレーションフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−160929(P2009−160929A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314956(P2008−314956)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】