説明

インプラント及びその製造方法

埋め込み可能なプロテーゼ、プロテーゼの構成要素、及びこれらを製造する方法が提供される。この方法は、概してインプラントシェルを供給するステップ、シェル上にコーティングを形成するように硬化可能な流体組成物をシェルに塗布するステップ、及び粒子状成分を組成物に塗布するステップを含む。この組成物は、例えば、シリコーンベースのエラストマー分散体及び懸濁した浸出剤の液滴を含む乳剤などの混合物である。エラストマーを安定化させ、硬化させた後に、粒子状成分及び浸出剤を除去する。これにより、被膜形成又は被膜収縮の発生の抑制に有効なように設計された多孔質の開放気泡表面性状を有する埋め込み可能な部材をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)本願は、2009年10月16日に出願された米国仮特許出願第61/252,330号の優先権を主張し、この出願の開示全体はこの具体的な参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して軟組織のインプラントに関し、より具体的には、体内への固定を促進するように、及び/又は、被膜形成を変更若しくは抑制するように設計された軟組織のインプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
軟組織のインプラント、特に人工乳房は被膜形成及び被膜収縮の課題に悩まされる。インプラントが体内に配置された後すぐに、インプラントの周りに線維性被膜が沈着する炎症反応が始まる。ほとんどの場合、特に比較的大きくて滑らかなインプラントに関して、被膜は、高度に組織化又は整列されたコラーゲン線維から成る。被膜が成長するにしたがって、ある事象を引き金として、収縮表現型(筋繊維芽細胞)への線維芽細胞の分化が起こる場合がある。このシナリオ又は類似するシナリオでは、コラーゲン線維が整列されると、被膜収縮がそれに続いて起こる場合がある。
【0004】
被膜収縮は、不快感又はそれにより生じた痛みによってさえ、患者を衰弱させる可能性がある。また、被膜収縮は、インプラントの外観と感触の両方で美的結果の有効性を弱める可能性があり、インプラント自体を時折損傷する可能性がある。被膜形成及び被膜収縮に関する課題は、乳房インプラントや他の審美的なインプラント同様、ペースメーカー、硬膜代用品、埋め込み可能な除細動器、ペースメーカーのリード線、ヘルニア修復メッシュなどの多くのインプラントタイプで生じる。
【0005】
インプラントの表面テクスチャリングは、表面が平滑なインプラントと比較した場合に、しばしば被膜収縮の発生の低減に役立つことが文献で認められてきた。さらに、気泡で被覆されたインプラント、例えば、ポリウレタンフォームをコーティングしたインプラントの収縮率を低下させる能力に関する証拠が増加している。しかしながら、ポリウレタンフォームによるコーティングは、生体分解性材料であり、ポリウレタンがいったん分解すると、その有効性を失う。さらに、体内でのポリウレタンフォームの劣化は望ましくなく、潜在的に体に有害であることを理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のインプラントのこれらの欠点の少なくとも幾つかに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、人工乳房などの、例えば、プロテーゼに加え、例えば、人工乳房の構成要素として機能するエラストマーのシェルなどの、例えば、プロテーゼの構成要素などの埋め込み可能な部材、及び埋め込み可能な部材の製造方法を提供する。本発明は、例えば、埋め込み可能な装置の表面に塗布する積層物などの被覆物を更に提供する。埋め込み可能な部材は、固定を促進する場合があり、且つ/又は、被膜形成を変更若しくは抑制する場合がある表面を有する。本発明の一態様では、テクスチャリングされた表面は、組織内方成長を促進して、コラーゲン被膜の組織化を抑制する、相互接続した気孔と通路の網状組織によって画定される。一般に、気孔は、1気孔当たりの相互接続の平均数が顕著には変化しないと仮定すると、平均的に3つ以上の相互接続を有する。
【0008】
概して、当該方法は、例えば、従来の平滑なシリコーンベースのインプラントシェルのようなインプラントシェルなどの埋め込み可能な部材を供給するステップと、シェル上にコーティングを形成するように、硬化可能な流体組成物をシェルに塗布するステップとを有する。一実施形態では、組成物は、溶媒を含むシリコーンベースの混合物と、及び混合物内に分散した、例えば浸出剤などの増孔剤とから成る。例えば、溶媒の一部が組成物から蒸発して出ることができることにより、または可溶性成分の沈殿を誘発しながら化学反応が生じることができることにより、組成物はシェル上に安定化することができる。あるいは、シリコーンの重合化の架橋結合の間に、上記の組み合わせのシリコーン若しくは増孔剤が単独で沈殿する間、又はこの沈殿が溶媒蒸発に関連して起こる間に安定化を得ることができる。
【0009】
粒子成分は、以下の本明細書にて時折単に「粒子」又は「粒子コーティング」と呼ぶが、次に、組成物コーティングが完全に硬化していない間、又は組成物コーティングが、粒子コーティングを保持する能力を有するくっつきやすい性質若しくは粘着性を少なくとも有している間に、粒子成分を組成物コーティングに塗布する。
【0010】
幾つかの実施形態では、硬化可能な流体組成物を塗布し、粒子コーティングを塗布するステップは、その後、最終コーティングを塗布するまで、例えば、1回以上、例えば、3回、5回又は最大20回までも繰り返される。最終コーティングは、粒子コーティング又は組成物コーティングであってもよい。
【0011】
そして、粒子又は流体組成物の最終コーティングをシェルに塗布させた後に、コーティングされたシェルは、こんどは組成物中に埋め込まれた粒子を有する組成物を固める適切な硬化条件下に置かれる。
【0012】
一実施形態では、粒子コーティング自体は、以下の方法によりコーティング組成物の安定化に使用される。その方法は、例えば、溶媒の一部又はすべてを吸収すること、シリコーンの架橋結合の重合速度を増加させること、シリコーン又はポロゲン(porogen)の沈殿を促進すること、又は上記の方法の1以上の組み合わせを含む。
【0013】
いったん固められた後、組成物に含まれる浸出剤とその中に埋め込まれた粒子がその後コーティングから除去される。これにより、硬化したエラストマー内の相互接続した気孔の網状組織が露出する。この構造は、比較的大きい気孔と比較的小さい気孔(例えば、微小気孔)の両方を含んでいてもよい。本明細書に記載されたプロセスで形成された表面形状は、これが組織界面及び/又は埋め込み界面にてインプラントの一部として使用されると、従来の表面形状に比し、より好適な形態を達成するような被膜形成の変更、又は被膜収縮の低減若しくは防止の点で極めて有効である場合がある。
【0014】
粒子および浸出剤の除去は、これらの材料を周囲のエラストマーの「基質」から除去し、望ましい表面形状を形成するに効果的な任意の適切な手段により成されてもよい。
【0015】
例えば、硬化したエラストマー基質を概して損傷のない状態に保ちながら、粒子及び/又は浸出剤を溶解、抽出又はそうでなければ除去する能力を有する1つ以上の適切な媒体にコーティングをさらすことによって、粒子及び/又は浸出剤は抽出されてもよい。
【0016】
概して、分散した浸出剤が、各気孔間の相互接続部として機能する微小空洞又は微小気孔を生成する機能を果たしている間に、分散した浸出剤より一般的にサイズが大きい粒子は、硬化したエラストマーに空洞又は気孔を生成するように機能する。相互接続した気孔と微小気孔のこの網状組織は、組織内方成長を容易化し、患者内へのインプラントのより良好な固定を促進し、かつ線維性被膜の組織化を抑制する。これは、被膜形成及び被膜収縮の抑制又は防止に役立つ場合がある。
【0017】
以下の詳細な説明及び添付図面を参照することで、本発明はより明瞭に理解され、且つその態様及び利点はより明瞭に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A−1C】本発明の実施形態に係るエラストマーのシェルを製造する方法における好適なプロセスのステップを表す図である。
【図2−6】図1Aから1Cに示すシェルを製造するプロセスの様々なステップ期間のシェルの構成要素の断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るインプラントシェルを製造する方法におけるステップを示す、簡略化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、埋め込み可能な複合部材、及びこのような埋め込み可能な複合部材を製造する方法が提供される。
【0020】
本発明の一態様では、本発明は、以下の本明細書にて一般的に「インプラント」と呼ぶ埋め込み可能な複合部材を提供する。この埋め込み可能な複合部材は、インプラントが体内に配置されるときに被膜形成の発生又は程度を抑えるに有効である状態にする表面を有する。ここで述べる特定の具体的な実施形態では、インプラントは、乳房再生又は豊胸に有用である充填可能な人工乳房である。しかしながら、本発明は人工乳房に限定されず、インプラントが永久又は一時的に体内に配置されることを意図する状況や、被膜形成又は被膜収縮を回避又は抑制すべき状況などの多くの状況で本発明が有用であることを理解すべきである
【0021】
まず初めに、本発明の方法ではインプラント部材を供給する。インプラント部材は、充填可能であって、人工乳房の形態を有するエラストマーのインプラントシェルであってもよい。このようなシェルは、一般的に胸への埋め込みの前後いずれかに生理食塩水又はシリコーンゲルを充填するよう意図されている。
【0022】
一般に、このようなシェルの製造は、所望の形態を有するマンドレルに液体分散物、例えば、シリコーンエラストマー分散物を塗布することで通常行われる。分散物は、概してシリコーンエラストマー及び溶媒を含む。シリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン又はこれら2つの材料の何らかの組み合わせであってもよい。典型的な溶媒としては、キシレン、トリクロロメタン、ヘプタン、ヘキサン、及びトルエンが挙げられる。
【0023】
シリコーン分散物は、マンドレル上にエラストマーのコーティングを形成する。このコーティングは硬化され、溶媒はそこから蒸発する。所望の厚みを有するインプラントシェルを得るために、この手順を何回も繰り返してよい。本発明の多くのインプラント用の基底構成要素としてこのシェルを用いてもよい。
【0024】
本発明の一態様によれば、所望の表面形状を有するインプラント可能な部材が提供される。当該方法は、硬化可能な流体組成物を基材、例えば、上述したインプラントシェルの表面に塗布するステップと、粒子状の材料を前記組成物に塗布するステップと、幾つかの実施例では層、例えば、組成物と粒子状物質との交互の層を得るようにこれらのステップを繰り返すステップとを有する。その組成物は、本明細書の他の箇所で記載される浸出成分を含む。組成物層は、それに続く塗布の間に安定化することができる。
【0025】
層状化ステップがいったん完了すると、組成物は、少なくとも部分的に硬化可能な状態に置かれる。硬化プロセスのステップは、使用する材料に依存する。1以上のプロセスのステップは、エラストマーから粒子層の粒子及び浸出成分を除去するように行われる。
【0026】
その結果としてもたらされるインプラントは、これが患者に埋め込まれた際、少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有し、この開放気泡の多孔質構造は、インプラントの被膜形成及び/又は付着に影響する形状又は気孔率を有する。
【0027】
硬化可能な流体組成物は、エラストマー成分、溶媒成分及び浸出成分を含む乳剤、分散物、溶液、懸濁液又は混合物の形態であってもよい。
【0028】
エラストマー成分は、硬化していないシリコーン重合体、例えば、シリコーンエラストマーであってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、エラストマー成分は、室温加硫(RTV)シリコーンエラストマーである。エラストマー成分は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン又はこれら2つの組み合わせであってもよい。本発明にて有用な可能性のあるシリコーンエラストマー系は、オキシム、白金又はスズ触媒ベースの系を含むが、これらに限定されない。あるいは、エラストマー成分は、非シリコーンベースの材料であってもよい。
【0029】
溶媒成分は、エラストマーに適した任意の適切な溶媒又は溶媒系であってもよい。溶媒の代表的な実施例としては、クロロホルム、アセトン、水(緩衝生理食塩水)、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、プロピレン・グリコール・メチル・エーテル(PM)、イソプロピル・アルコール(IPA)、n−プロピル・アルコール、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキセン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、ノナン、デカン、デカリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジル・アルコール、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジオキサン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフロオロイソプロパノール、1,1,1−トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸アミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、溶媒は、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トルエン、ジメチル・スルホキシド、ジオキサン、NMP、DMAC、及びこれらの組み合わせから成る溶媒の群から選択される。溶媒成分は1以上の異なった溶媒を含んでいてもよい。例えば、溶媒成分は1から20の異なった溶媒を含んでいてもよい。一般に、溶媒は、任意の適切なプロトン性溶媒若しくは非プロトン性溶媒、又はこれらの混合液若しくは溶液を含んでいてもよい。
【0030】
浸出成分は、任意の適切な固体粒子状物質、半固体、複合材料、ゲル(例えば、ヒドロゲル)、液滴などの形態にある浸出物質/浸出剤である。浸出剤は、溶解可能、又はそうでなければ硬化した形態から適切な手段で除去可能な任意の適切な重合体、セラミック、金属、複合材料又はこれらの組み合わせから成っていてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は1以上の異なった浸出剤から成る。例えば、組成物は1から20の異なるタイプの浸出剤から成っていてもよい。
【0031】
エラストマー成分は、溶解している全固形分の一部として、体積で約1%から約99%の範囲で組成物中に存在することができ、浸出剤は、溶解している全固形分の一部として、体積で約1%から約99%の範囲とすることができる。本発明の特定の実施形態では、組成物は最大96%の浸出相を含む。幾つかの実施形態では、エラストマー成分は、組成物中に約5%から約80%範囲の存在し、浸出剤は、組成物中に、溶解している全固形分の約20%から約95%範囲の存在している。一般に、組成物中の溶解している全固形分は、溶液中に、重量で約1%から約50%の範囲とすることができる。
【0032】
一般に、組成物中の基質相に対する浸出相の比率は、最終的に硬化した組成物の気孔率に影響する。例えば、組成物中のより大きな割合の浸出成分は、各気孔間により大きな相互接続部を有する組成物層を生成する。
【0033】
例示的な実施形態では、硬化可能な流体組成物は乳剤の形態にあり、浸出剤は、乳剤の体積で最大約50%の濃度で存在している。幾つかの実施形態では、組成物は、エラストマーの基質相と懸濁相における浸出剤の液滴とを含むミクロ相分離を含み、液滴は、直径約0.01μmから約10,000μmであり、例えば、直径約1μmから約5,000μm、例えば、直径約50μmから約400μmである。浸出剤がエラストマーから浸出した後に、浸出剤が残した空洞は、除去された粒子が残した各空洞間の相互接続部として機能する。
【0034】
浸出剤は、例えばエラストマー分散(エラストマー成分系/エラストマー溶媒系)によって分散可能な材料であって、エラストマー成分がいったん硬化すると、このエラストマー分散から除去可能な任意の材料であってもよい。浸出剤は、例えば、浸出、蒸発、昇華、溶解などにより、硬化したエラストマーから除去できる物質であってもよい。例示的な実施形態では、浸出剤は、エラストマー分散中に分散した水溶性材料である。
【0035】
本発明に係る典型的な浸出剤は、例えば、ポリエチレン・グリコール(PEG)(ポリオキシエチレンとしても知られている)、ポリエチレン・オキシド及びポリエチレン・オキシド/ポリプロピレン・オキシド共重合体(ポロキサマーとしても知られている)を含むポリアルキレン・オキシド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びこれの共重合体、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル及びこれらの共重合体、アルブミン、ペプチド、リポソーム、陽イオンの脂質、イオン性又は非イオン性洗剤を含むタンパク質、塩化カリウム、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを含む塩、ガラクトース、ブドウ糖及びショ糖を含む糖、可溶性のセルロース、へパリン、シクロデキストリン及びデキストランを含む多糖類、並びにこれらの任意の組み合わせから成っていてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、浸出剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレン・グリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラトン、ポリジオキサノン;並びにこれらの誘導体、混合物、共重合体、ターポリマー、及び組み合わせから成る物質の群から選択された物質である。
【0037】
幾つかの実施形態では、浸出剤は、約0.01μmから約10,000μmの範囲にある直径を有する浸出材料の液滴の形態にある。例えば、浸出剤は、約1μmから約5,000μmの範囲の直径を有する液滴の形態であってもよく、例えば、約50μmから約400μmに範囲であってもよい。
【0038】
粒子層の粒子状物質は任意の好適な粒子から成り、この粒子は、粒子があった空洞を残して、硬化したエラストマーから除去されてもよい。
【0039】
例えば、粒子は、機械的研磨、浸出、蒸発、昇華、溶解などの少なくとも1つによってエラストマーから除去可能な粒子を有していてもよい。
【0040】
例示的な実施形態では、粒子は、固体の水溶性材料である。例えば、粒子は、塩化ナトリウム、硫酸バリウム、硝酸カリウム、及び炭酸ナトリウムから成る材料の群から選択された材料であってもよい。
【0041】
さらに、粒子は、結果として得られた形態をもたらすように所望通りの寸法及び形状を有していてもよい。例えば、粒子は、実質的に丸形か球体、多面体、角張った形状、立方体、又はこれらの組み合わせであってもよい。粒子は、例えば、約0.01μmから約10,000μmの範囲の平均粒径を有してもよく、例えば、10μmから約6,000μmの範囲にあってもよく、例えば、約100μmから約900μmの範囲にあってもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、粒子のサイズは、粒子が沈着する組成物コーティングの厚さにほぼ比例するか、或いは多層化された実施形態における、隣接して相互接続した組成物コーティングの厚さにほぼ比例する。例えば、約500μmの平均サイズを有する粒子は、約100μmから約500μmの厚さを有する組成物層に関連して用いられる可能性がある。約300μmの平均サイズを有する粒子には、約50μmから約400μmの厚さの組成物層が用いられる可能性がある。
【0043】
図1Aから図1Cに本発明の実施形態によるインプラントを製造する例示的なプロセスを示す。図1Aにステップ1を示す。図1Aでは、可撓性を有するエラストマーの埋め込み可能な部材12が示されている。エラストマーのインプラント部材12の部分断面図11が、図1Aだけでなく図2にも示されている。埋め込み可能な部材12は、従来の比較的滑らかな表面のシリコーンベースのエラストマーのインプラントシェル、例えば、シリコーンゲル又は生理食塩水を充填し、人工乳房として使用することを意図したシェルなどの硬化したインプラントシェルであってもよい。
【0044】
本明細書の他の箇所に記載されるような硬化可能な流体組成物14をシェル12の外面に塗布する。図3に、組成物コーティング10を有するシェル12の部分断面図を示す。これは、硬化可能な流体組成物14を収容する溶液浴(図1A参照)内へ入れるマンドレル(不図示)にシェルを固定しつつ、点線13で示すようにシェルを浸すことによって達せられてもよい。組成物14は、本明細書の他の箇所に記載されるように、溶媒を含むシリコーンベースの混合物、及び浸出剤から成る。組成物14をシェル12に塗布するステップは、浸漬やスプレーなどの、塗布の任意の適切な手段で行ってもよい。
【0045】
次に、組成物コーティングは、シェル12上に安定化することができる。例えば、組成物コーティングがもはや自由に流れなくなるまで、安定した位置にシェル12を保持することができる。これは、溶媒の一部がコーティングから蒸発して、コーティングの粘性を上げると起こる。組成物を安定化可能にするステップは、多様な手段、例えば、溶媒の一部を組成物から蒸発して出すことを可能にすることで、又は可溶性の成分の沈殿を誘発しながら、化学反応を発生可能にすることで行ってもよいことが理解できる。あるいは、シリコーンの重合化の架橋結合の間、又はシリコーン若しくは増孔剤の沈殿の間に安定化を達成することができる。また、組成物コーティングの安定化に上述の方法の組み合わせを用いてもよい。
【0046】
組成物14がシェル12上でいったん安定化すると、第2のステップは、シェル12(図1B参照)上の組成物コーティングに粒子を塗布するように粒子浴16にシェル12を浸漬する(点線15参照)。組成物でコーティングされたシェル12に塗布された粒子18が、図1Bに示されている。図4に、組成物コーティング10及び粒子18をともなうシェル12の部分断面図を示す。シェル12への粒子コーティングの塗布は、シェル12上の組成物コーティングがまだ粘着性があって粒子を保持できる間に行われる。粒子塗布以前の組成物の安定化は、組成物が安定し粘着性があって完全に硬化していない状態まで、組成物における少なくとも一部の溶媒が組成物から蒸発して出ることを可能にすることで達せられる。本発明の一態様による、組成物を安定化させる別の方法は以下の実施例に提供される。
【0047】
点線17で示すように、浸出ステップが行われる前にステップ1とステップ2を繰り返すことができる。最終コーティングを塗布するまで、硬化可能な流体組成物を塗布するステップ及び粒子コーティングを塗布するステップを、例えば1回以上、例えば3回、5回又は最大20回さえ繰り返すことができる。最終コーティングは、粒子コーティング又は組成物コーティングであってもよい。
【0048】
粒子又は流体組成物の最終コーティングをシェルに塗布させた後に、コーティングされたシェルは、その中に埋め込まれた粒子を有する組成物を固める適切な硬化条件下に置かれる。
【0049】
上述した固化ステップ後に行われる浸出ステップ19(図1C参照)では、組成物コーティング内に埋め込まれた粒子及び浸出剤は、浸出浴20に浸漬されて除去される。粒子除去の後に残る物は、シェル上の相互接続した気孔21の網状組織(この構造は、比較的大きい気孔と比較的小さい気孔、例えば、微小気孔の両方を含んでいてもよい)である。
【0050】
また、本明細書に記載のプロセスのフローチャートとして図7も参照のこと。
【0051】
実施例1
3:1の体積比にある、水中の約7.5重量パーセントのPVA2000とキシレン中の約40重量パーセントのアセトキシRTVシリコーンとの混合物が調製され、30秒間均質化される。アセチルマンドレルが、混合物中に配置されて、乳房インプラントシェル製造用の標準的な浸漬コーティングのプロセスなどで均一にコーティングされる。その後、顆粒がマンドレル上にこれ以上沈着できなくなるまで(約5から10秒)、マンドレルは、塩顆粒をともなう流動層反応器に配置される。塩顆粒のこの添加は、一部の水を吸収することで混合物を乾燥させて安定化させる傾向がある。その結果、混合物の粘性が増す。コーティングは、90℃で約15分間又は室温で約30分のいずれかで更に安定化できるか、又は別法により、組成物の次の層を塗布してもよいように十分に安定化できる。所望の厚さのコーティングを得るようにその手順を3回から5回繰り返す。
【0052】
165℃で2時間にわたり最終的な硬化を行ってもよく、約3サイクルの間それぞれ水又はDCMで約30分間(撹拌して)浸出させ、真空中で一晩乾燥させる。
【0053】
一実施形態では、組成物をシェルに塗布させた前後いずれかに組成物に材料が添加され、この材料は、例えば、一部の溶媒を吸収することにより、組成物の粘性を増すのに有効である。浸出剤が水中にあるときに、例えば、溶媒を吸収することで相を乾燥/安定化させるために、塩を添加することができる。この点で有用である場合がある他の材料は、糖、及び組成物から溶媒の除去を加速できる他の適切な材料を含む。
【0054】
次に、最終的なエラストマーフォーム構造において気孔又は空洞を形成するように、組成物に粒子コーティングを塗布する。例えば、粘着性のある組成物コーティングに粒子を振り撒いて押すか、或いは粘着性のあるコーティングされたシェルを粒子の浴に浸すことによるなどの、任意の適切な手段で粒子の塗布を行ってもよい。示した実施例では、例えば、空気、及び、例えば塩の粒子などの粒子状物質などの流動化媒体19から成る流動化浴18にコーティングされたシェルを浸すことによって、粒子が塗布される。
【0055】
幾つかの実施形態では、その後、硬化可能な流体組成物を塗布するステップ及び粒子コーティングを塗布するステップが、1回以上、例えば、約0.5回から最大約20回繰り返され、例えば、約1回から約10回、例えば、約2回から約5回繰り返される。
【0056】
本発明の一態様では、組成物コーティングに塗布された粒子コーティングは、各層毎に相対的に異なった寸法を有する粒子のコーティングから成っていてもよい。言い換えると、第1の粒子の層は比較的細かい粒子であってもよく、第2の粒子の層は比較的粗い粒子であってもよく、或いはその逆であってもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、粒子層の各粒子状物質を共に融合させることで、気孔間の相互接続性を増大又は制御してもよいことが意図される。例えば、粒子が塩の結晶である場合に、湿式加熱の適用が各気孔の相互接続性の増大に有効である場合がある。代替的に又は追加的に、各粒子を共に融合させるために、粒子材料用に適切な量の溶媒を加えてもよい。本発明のこの態様を理解するに有用であるかもしれない更なる情報は、同時係属中で共同所有の2009年5月13日に出願された、発明の名称「インプラント及びその製造方法(IMPLANTS AND METHODS FOR MANUFACTURING SAME)」の米国仮特許出願第61/177,955号に見出される場合があり、この開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
例えば、一実施形態では、粒子コーティングと組成物コーティングを交互に塗布するステップは、硬化可能な流体組成物の第1の層をシェルに塗布することと、粒子、例えば、比較的小さい粒子の第1の層を組成物に塗布することと、組成物の第2の層を粒子の第1の層に塗布することと、粒子、例えば比較的大きい粒子の第2の層を組成物の第2の層に塗布することとを含む。図5は、組成物コーティング10と粒子コーティング18を交互に配置した層を示すシェルの断面図である。特定の実施形態では、粒子の第1の層は、約30μmから約150μmの範囲の平均サイズを有する粒子を有し、粒子の第2の層は、約100μmから約450μmの範囲の平均サイズを有する粒子を有する。さらに他の実施形態では、当該方法は、組成物の第3の層を粒子の第2の層に塗布すること、及び、任意選択で、粒子の第3の層を組成物の第3の層に供給することを更に含む。粒子の第3の層は、約250μmから約750μmの範囲の平均サイズを有していてもよい。
【0059】
層状化され、コーティングされたシェルは、その後、その中に埋め込まれた粒子をともなう組成物を固めて、更に安定化させる適切な硬化条件下に置かれる。
【0060】
次に、硬化したコーティングから粒子と浸出剤をその後除去し、それにより硬化したエラストマー内の高度に相互接続した気孔の網状組織が露出する。図6に、粒子除去の後の相互接続した気孔21の網状組織をともなうシェル11の部分断面図を示す。粒子を除去するステップは、粒子を溶解させること、又は粒子を摩耗面と接触させることを有していてもよい。同一ステップ又は異なるステップにおいて、組成物層の浸出剤はエラストマーから除去される。
【0061】
幾つかの実施形態では、本発明のここで記述したプロセスのうちの1つ以上に加えて従来のガス発泡プロセスを用いる。例えば、組成物をシェルに塗布するステップ以前に、組成物に通気して組成物内に気泡を形成するように、気体、例えば空気を組成物を貫通して通過させて組成物が通気されてもよい。有利なことに、浸出物質、粒子状物質及び気泡からもたらされる高度に相互接続した気孔を露出させるように、通気された組成物コーティング上に形成し始めてもよい任意の表面のスキンが、浸出相の抽出間に開放されることになる。
【0062】
粒子及び/又は浸出剤を溶解する能力を有する1つ以上の適切な媒体に層をさらすことで、これらの材料を抽出することによって、粒子および浸出剤の除去は達成されてもよい。例えば、コーティングされたシェルは、浸出浴19(図1C参照)の中に浸漬されるか又は沈められる。浸出浴は水又は水溶液からなっていてもよく、水溶液は、硬化したエラストマー基質を実質的に損傷のない状態に保ちながら、浸出剤及び/又は粒子を溶解、浸出又はそうでなければ除去の能力を有する物質を含む。
【0063】
幾つかの実施形態では、分散した浸出剤より一般的に大きい粒子は、硬化したエラストマー内に気孔を形成するように機能し、分散した浸出剤は、比較的大きい各気孔間に微小気孔又は相互接続部を形成するように機能する。
【0064】
結果としてもたらされる開放気泡構造は、組織内方成長を容易化し、インプラントの固定又は保持を改善し、被膜収縮の抑制を促進する場合があるインプラント周りに形成されるコラーゲン被膜の組織化を抑制するものと考えられる。
【0065】
本発明の別の態様では、少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有する埋め込み可能な複合部材を提供し、この複合部材は、本明細書に記載したプロセスの1つによって製造される。
【0066】
本発明のまた別の実施形態では、粒子の第1の層と第2の層の各々は、実質的に一様なサイズ又は形状の粒子で製造される。本発明の別の態様では、粒子の第1の層と第2の層の各々は、異なったサイズ又は形状の成分で製造される。
【0067】
上述したステップによってシェルを仕上げた後に、仕上げた人工乳房を作るのに必要なステップは、従来のものであってもよい。まず最初に、マンドレルサポートによって残されたあらゆる開口部には、硬化していないシリコーンエラストマーのシートを貼り付けてもよい。人工乳房にシリコーンゲルを充填すべきならば、このゲルは添加して硬化され、充填された人工乳房はパッケージ化され、パッケージ化された人工乳房は殺菌される。人工乳房を生理食塩水で膨張すべきならば、バルブが組み立てられて取り付けられ、人工乳房は必要に応じて後硬化され、その後、人工乳房は、清浄化、パッケージ化、及び殺菌される。また、シリコーンと生理食塩水の組み合わせの人工乳房も製造することができる。
【0068】
シリコーンエラストマー部材に開放気泡構造を有する外層を形成する方法を説明してきた。より具体的には、当該方法は、開放気泡構造を有するシリコーンエラストマーの外側の表層をともなう医療インプラントを形成するか、瘢痕形成の調節用のテクスチャリングされた表面を有する細長い片を形成するか、又は人工乳房を製造するプロセスを改良するために適用することができる。この方法で製造された製品も説明してきたが、この製品は、被膜収縮を抑制し、瘢痕形成を防止又は調節し、医療インプラントを固定する際に卓越した実用性を有することが要求される。
【0069】
また、外傷又は外科的切開部の治療での瘢痕組織形成は、線維性組織の成長を含むプロセスである。線維性組織が一方向に整列するため、目に見える傷跡がこの治療によってもたらさる。しかしながら、瘢痕形成を防ぐことが、特にあるタイプの形成外科でしばしば美観上望ましい。線維性組織が整列することを防ぐことで瘢痕形成を防止又は抑制するように、本発明により製造された開放気泡構造面を有する部材を、治療する外傷又は切開部内の皮下に配置することができる。
【0070】
動きに対して医療インプラントを固定することは、しばしば重要である。人工乳房は、固定の必要があるインプラントの一実施例である。顔面インプラントは、固定の必要があるインプラントの別の実施例である。顔面インプラントでは、インプラントが目立つ位置に配されるため、インプラントが動きに対してしっかりと固定されることが特に重要である。本発明により製造された開放気泡構造面をともなうこのようなインプラントを提供することは、インプラントのしっかりとした固定を確実にする特に有利な方法である。
【0071】
実施例2
浸出剤として機能するポリエチレン・グリコール・モノメチル・エーテル(2000ダルトン)を混合することによって、組成物を調製する。この組成物は、有機溶媒(例えば、キシレン)中、および約5から約40重量パーセントのアセトキシRTVシリコーン、または幾つかの特定の実施形態では17、25、及び35重量パーセントのアセトキシRTVシリコーンにおいて、例えば、低粘度のシリコーンエラストマー分散物(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体)、ポリ(ジメチルシロキサン−ラン−ジフェニルシロキサン(dimethylsiloxane-ran-diphenylsiloxane)等々)をともなう浸出剤として機能することになる。この組成物は、マンドレル又は他の機械的な支持部上に保持されたエラストマーのシェルの表面に塗布される。層は、溶媒の大部分を蒸発させる除くことができる。
【0072】
塩と空気の流動化した浴にコーティングされたシェルを沈めることによって、塩化ナトリウム結晶(約250μmから約850μmのサイズ)のコーティングが粘着性のある組成物層に塗布される。これによって、比較的一様に分配された単一層の粒子コーティングが形成される。
【0073】
エラストマーによって溶媒を蒸発させて除くことができ、その後エラストマーは約145℃で硬化させることができる。
【0074】
コーティングされたシェルは、その後約40℃の水溶性洗浄媒体中に沈められて、粒子と浸出剤を除去するように緩やかに撹拌される。
【0075】
実施例3
組成物が、10mLのキシレン、10mLのDCM、乾燥体積5mLのPEG2000及び乾燥体積5mLのアセトキシRTVシリコーンエラストマーの混合物である点を除いて、実施例1と同一のプロセスが行われる。
【0076】
実施例4
組成物が、5mLの水、1mLのキシレン、乾燥体積0.5mLのPVA1500及び乾燥体積0.2mLのRTVの混合物である点を除いて、実施例2と同一のプロセスが行われる。
【0077】
本発明の別の態様では、例えば、積層物として有用な薄くて、可撓性を有するシートなどの物品が供給される。より具体的には、埋め込み可能な装置又は埋め込み可能な物体が患者に埋め込まれるときに組織付着又は組織内方成長を促進するために、本発明は、埋め込み可能な装置又は埋め込み可能な物体上の積層物として使用するに適した生体適合性シートを提供する。そのため、本発明に係る材料の製造は、従来の浸漬プロセスに限定されず、他の好適な手段、例えば、成形又は鋳造によって調製されたシートを積層することでなされてもよい。例えば、シート又は積層物は、存在するすべての成分を様々な比率で(DCM、PEG)プラス(キシレン、RTV)用いて流体材料を成形することで調製することができ、ある場合には、シート又は積層物は、を粒子状の成分、例えば液体に添加された塩の結晶と混合させて振動させることができることを発明者は意図する。粒子状混合物及び流体混合物は、振動又は混合させ、かつ基材上又は型穴の中で成形することができる。幾つかの実施形態では、粒子成分は、全溶解固形分の約10%から約99%範囲の塩から成る。より具体的な実施形態では、塩は約25%から約60%で存在している。異なる量及び異なる粒子のサイズ/形状の塩によって、異なった気孔率を有する積層物が製造されることが理解することができる。積層物は、いったん硬化されると、例えば、物体又は装置の1つ以上の表面にこのような積層物を追加することで改良されることになる任意の物体または装置などのような、体内に埋め込まれる医療機器、インプラント、又は他の物体上に当技術分野で公知の任意の従来手段で積層することができる。例えば、シートは、長期埋め込み可能なカテーテル、硬膜代用品などのためのカテーテルのカフに積層されてもよい。
【0078】
実施例5
インプラント用の積層物は次のように調製される。10mLのキシレン、10mLのDCM、乾燥体積5mLのPEG2000及び乾燥体積5mLのアセトキシRTVシリコーンエラストマーでできた流体組成物を体積3.5mLの塩の粒子と混合する。この混合物は、粒子の実質的に一様な分配を確実化するように共に振動させる。混合物は、約1mmから約5mmの一定の厚さを有する層を形成するように成形面に混合物を塗布することによって成形された成形物(cast)である。層は安定化可能であって、十分な期間、約120℃で硬化される。硬化したシートは、成形面から取り外され、その後、浸出成分と塩の粒子のすべてを除去するように純水の緩やかなスプレーと接触させられる。その結果として得られる薄くて可撓性を有する、多孔質のシリコーンフォームのシートは、後に埋め込み可能な装置表面上の積層物として使用されるために、販売又は貯蔵用にその後更に加工、殺菌及びパッケージ化される。
【0079】
実施例6
実施例5のプロセスが、硬化ステップの前に、追加的な3回の繰り返しステップ、流体組成物/粒子状混合物を安定化された層に塗布するステップをともなって行われる。この実施例では、最終的な薄くて可撓性のシートは、多層のシートであって、約5mmより大きい厚さを有する。
【0080】
実施例7
実施例5のプロセスが行われるが、硬化して安定化したシートは、これが販売又は貯蔵用にパッケージ化される前に、浸出剤及び粒子状物質を除去するために水のスプレーと接触されない。浸出剤と粒子状物質を除去し、殺菌し、かつ医療機器の表面にシートを接着することに関して指示が与えられる。
【0081】
実施例8
約240mm×240mmの、硬化していない気泡の正方形状シート2枚を製造するように実施例5のプロセスを行う。スプレー又ははけ塗りによって、DCMのシリコーン接着剤の層を各シートの片側に塗布する。シートは均一に引き伸ばされ、シリコーン又は空気を充填した、新たに成形された乳房インプラントシェル上に、接着面が互いに対向するように一方のシート上にもう一方のシートが配置される。気泡シートは、インプラントの縁で互いに接合されて、インプラントの周囲において適切なクランプで取り付けられる。24時間後に、クランプを取り外す。余分な気泡は、インプラントから遠ざかるようにプレス機によって打ち抜かれる。インプラント/気泡は、最終的な後硬化のために2.5時間、140℃にさらされる。
【0082】
本発明は、様々な特定の実施例及び実施形態に関して記載されてきたが、本発明はそれらに限定されず、本発明の範囲内で本発明が多様に実施できることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有する埋め込み可能な部材であって、
(a)埋め込み可能なシェルを供給するステップと、
(b)前記シェルに硬化可能な流体組成物を塗布するステップであって、前記組成物は、エラストマー成分、浸出剤、及び溶媒成分を含む混合物を含む、ステップと、
(c)前記組成物に粒子の層を塗布するステップと、
(d)前記組成物を安定化することを可能にするステップと、
(e)少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有する複合材料を形成するように、前記安定化された組成物から前記粒子及び前記浸出剤を除去するステップと、
を含む方法で製造される部材。
【請求項2】
前記埋め込み可能なシェルは、乳房インプラント用のシェルである、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記浸出剤は水溶性の重合体である、請求項1に記載の部材。
【請求項4】
前記浸出剤は、ポリビニル・アルコール、ポリエチレン・グリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラトン、ポリジオキサノン、これらの誘導体、これらの混合物、これらの共重合体、これらのターポリマー、及びこれらの組み合わせから成る薬剤の群から選択された薬剤である、請求項1に記載の部材。
【請求項5】
前記溶媒成分は、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン(DCM)、ジメチル・スルホキシド、ジオキサン、NMP、DMAc、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された溶媒を含む、請求項1に記載の部材。
【請求項6】
前記混合物は乳剤である、請求項1に記載の部材。
【請求項7】
前記粒子は、塩化ナトリウム、硫酸バリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウムから成る材料の群から選択された材料を含む、請求項1に記載の部材。
【請求項8】
前記粒子は実質的に丸い、請求項1に記載の部材。
【請求項9】
前記浸出剤は、約50μmから約400μmの範囲の直径を有する液滴の形態にある、請求項1に記載の部材。
【請求項10】
前記粒子は、約100μmから約900μmの範囲の平均粒径を有する、請求項9に記載の部材。
【請求項11】
前記粒子は、約100μmから約900μmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の部材。
【請求項12】
層状構造を形成するように、前記除去するステップの前に、前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)を繰り返すステップを更に含む、請求項1に記載の部材。
【請求項13】
前記除去するステップは、前記安定化された組成物を前記粒子及び前記浸出剤用の溶媒と接触させることを含む、請求項1に記載の部材。
【請求項14】
少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有する埋め込み可能な複合部材であって、
(a)埋め込み可能なシェルを供給するステップと、
(b)前記シェルに硬化可能な流体組成物の第1の層を塗布するステップであって、前記組成物は、エラストマー成分、浸出剤、及び溶媒成分を含む混合物を含む、ステップと、
(c)前記組成物に粒子の第1の層を塗布するステップと、
(d)前記粒子の第1の層に前記組成物の第2の層を塗布するステップと、
(e)前記組成物の前記第2の層に粒子の第2の層を塗布するステップと、
(f)前記組成物を安定化することを可能にするステップと、
(g)少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有する複合材料を形成するように、前記安定化された組成物から前記粒子及び前記浸出剤を除去するステップと、
を含む方法で製造される部材。
【請求項15】
粒子の前記第1の層は比較的小さい粒子から成り、粒子の前記第2の層は比較的大きい粒子から成る、請求項14に記載の部材。
【請求項16】
インプラント用の積層物として使用するのに適した物品であって、
(a)成形面に粒子状の成分及び硬化可能な流体組成物を塗布することであって、前記流体組成物は、エラストマー成分、浸出剤、及び溶媒成分を含む混合物を含む、塗布することと、
(b)前記流体組成物の成分を安定化することを可能にすることと、
(c)少なくとも一部が開放気泡の多孔質構造である外面を有するシートを形成するように、前記安定化された組成物から前記粒子状の成分及び前記浸出剤の少なくとも1つを除去することと、
(d)前記成形面から前記シートを除去することと、
のプロセスにより作成された可撓性シートを備える、物品。
【請求項17】
埋め込み可能な物体を患者に埋め込むときに、組織付着又は組織内方成長を促進するように、前記埋め込み可能な物体上の積層物として使用するのに適したシートを備える物品であって、
前記シートは、
基材又は成形面に流体/粒子状混合物を塗布するステップであって、前記流体/粒子状混合物は、粒子状の成分と、エラストマー成分、浸出剤、及び溶媒成分を含む硬化可能な流体組成物とを有する、ステップと、
前記流体/粒子状混合物を安定化することを可能にするステップと、
前記基材又は前記成形面から前記シートを除去するステップと、
を含むプロセスにより作成される、物品。
【請求項18】
前記流体/粒子状混合物を安定化することを可能にする前記ステップの後に、多孔質のシートを形成するように、前記安定化された流体/粒子状混合物から前記粒子状の成分及び前記浸出剤のうちの少なくとも1つを除去するステップを更に備える、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記粒子状の成分及び前記浸出剤のうちの少なくとも1つを除去する前記ステップは、成形面の前記基材から前記シートを除去する前記ステップの前に行われる、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記シートは層状のシートであり、前記プロセスは、前記基材又は前記成形面から前記シートを除去する前記ステップの前に前記塗布するステップを繰り返すステップを更に含む、請求項17に記載の物品。

【図1A−1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−508024(P2013−508024A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534241(P2012−534241)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051838
【国際公開番号】WO2011/046806
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】