説明

インモールド成形装置

【課題】樹脂成形品の角部への転写性に優れて、金型内へのゴミ付着による外観不良防止に効果的なインモールド成形装置及びインモールド成形方法の提供。
【解決手段】加飾樹脂成形品1のインモールド成形装置10であって、キャビティ型20とコア型30からなる射出成形型と、キャビティ型20とコア型30との間に挿入された加飾フィルム40に向けて吹き出すガス供給手段とを備え、ガス吹出口33は、射出成形される樹脂体の角部1aであって且つ加飾部に対応する加飾フィルム40部分に向けて吐出するように配設されたものであることを特徴とする。なお、ガス供給手段は、超臨界流体発生装置等を用いて発生させた流体をガス化し、所定の温度に調整できるものを使う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂体の射出成形と同時に樹脂体表面を加飾するインモールド成形装置及びインモールド成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インモールド成形は、加飾フィルムをキャビティ内に密着させて、成形と同時に加飾フィルム上の模様部を樹脂成形品に転写する技術である。
しかし、樹脂成形品の加飾する形状部の凹凸形状が複雑であり、対応するキャビティの角部が鋭角であったりすると、真空引き等によって加飾フィルムをキャビティ面に密着させようとしても、加飾フィルムにそれだけの伸びがなかったり、転写用のインクに伸びがなかったりして加飾模様にムラやキレツが生じる問題があった。
この角部の転写性を向上するために、伸びやすい加飾フィルム及びインクの開発が活発に行われているが、成形条件に厳しい制限があったりして却って成形不良を多発してしまう問題もあった。
また、加飾フィルムに付着しているゴミやホコリをそのまま金型内に持ち込み、成形不良の原因の1つとなっていた。
特許第3150759号公報には、樹脂成形品の肉厚角部のヒケ等によるシワを防止するために溶融樹脂に加圧気体を加えて成形する技術を開示するが、加飾フィルムに伸びが少ないと角部に転写ムラが生じる点では課題がそのまま残っていた。
また、フィルムを金型挿入前に、その成形する印刷面フィルム部をヒーターで温める方式もあるが、フィルムが伸びるため、寸歩精度が出ないなどの不具合発生や金型内移動時間ロスでフィルムが冷える問題があり深絞りにも限界があった。
【0003】
【特許文献1】特許第3150759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記技術的課題に鑑みて、樹脂成形品の角部への転写性に優れて、金型内へのゴミ付着による外観不良防止に効果的なインモールド成形装置及びインモールド成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の技術的要旨は、加飾樹脂成形品のインモールド成形装置であって、キャビティ型とコア型からなる射出成形型と、キャビティ型とコア型との間に挿入された加飾フィルムに向けて吹き出すガス供給手段とを備え、ガス吹出口は、射出成形される樹脂体の角部であって且つ加飾部に対応する加飾フィルム部分に向けて吐出するように配設されたものであることを特徴とする。
ここでガス供給手段は、超臨界流体発生装置等を用いて発生させた流体をガス化し、所定の温度に調整したものがよい。
【0006】
ガス吹出口の吹出方向(吐出方向)は、加飾フィルムを金型間に挟んで型締めした時のキャビティ面の角部に向けることで、ガス吹出口から吹き出したガスを、樹脂成形品の角部分に転写する加飾フィルムの角部相当部に集中的に当てる趣旨である。
つまり、この角部相当部はキャビティ面の角部付近とコア型と間に位置決めされることから、キャビティ面角部に向けて吹き出すことで、その間にある角部相当部にガス体を吹き付けるものである。
このように、集中的にガスを吹き付けることで角部相当部は局部的に軟化する。
そして、例えばキャビティ型にキャビティに通じる吸引孔を備えて、溶融樹脂の射出前に真空吸引すると加飾フィルムとキャビティ面とが従来より密着度が向上し、特に角部相当部はキャビティ面角部になめらかに密着する。
また、コーナー以外でも大きく切り欠き形状がある製品等も場合によっては、加飾フィルム及びインクに大きな伸びが必要になる場合があり、その部位にガス吹出口を設けることも本発明の目的の1つである。
吹付けるガスとしては、超臨界流体をガス化したものを用いると加飾フィルムへの浸透性が高く、フィルムをすばやく軟質・改質する。いわゆる親水化効果が得られる。
このようなガスとしては二酸化炭素や窒素が例として挙げられる。
また、ガス温度を80〜200℃程度に加温するとより速く浸透し効果的である。
【0007】
加飾フィルムをキャビティ型とコア型との間に挿入する前に、この加飾フィルムの両面にガスを吹き付けるブロー用ガス吹出手段を有すると、加飾フィルムに付着したホコリ等を金型内に持ち込むのを防止する。
また、ガス温を30℃以上にすると加飾フィルムを予備的に加熱する。
【0008】
このような装置を用いたインモールド成形方法は、キャビティ型とコア型からなる射出成形型の型間に加飾フィルムを挿入する工程と、射出成形される樹脂体の角部に加飾する位置に対応した加飾フィルムに浸透性ガスを吹き付ける工程と、溶融樹脂を射出する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインモールド成形装置では、樹脂成形品の角部に模様を転写する加飾フィルムを金型内に精度よく位置決め固定した後に、コアに備えたガス吹出口から不活性で浸透性の高いガスをインモールド成形直前に吹き付けて、角部相当部を軟化・改質し、キャビティの角部へ出来るだけ密着させた上でインモールド成形を行うことができるので、高温の樹脂を注入することで樹脂成形品の角部における転写不良を効果的に防止出来る。
【0010】
また、インモールド成形前の加飾フィルムの両面フィルム面に向けて、ガスを吹き付けることでフィルム面上のゴミやホコリを除去できるため、ゴミやホコリの金型内への付着による外観不良を防止する。
また、予備的に加飾フィルムを加熱することで成形時間の短縮を図ることが出来、生産性を向上出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るインモールド成形装置の射出成形金型付近の模式図を図1に示す。
図1(イ)は縦断面図を示し、図1(ロ)は平面図を示し、成形金型のパーティングライン付近の要部以外の射出装置等は図示を省略してある。
インモールド成形装置10は、射出成形型を構成するコア型(可動型)30と、キャビティ型(固定型)20とを竪に配置して、コア型30を上下に開閉駆動する。
コア型30とキャビティ型20の間には、フィルム供給装置(図示省略)を用いて加飾フィルム40を横向きに、間欠的に模様部40cを送り込むように通過させる。
加飾フィルム40は基体フィルム40b上に樹脂成形品に転写する模様部40cを備えている。
コア型30とキャビティ型20の間に形成されるキャビティ35は、型締め状態で溶融樹脂を充填して、模様部40cを転写して樹脂成形品を成形する。
コア型30は、そのコア31にキャビティ35に向けて吐出するガス吹出口33を複数有し、ガス取入口32とガス流路34で連通させている。
このガス流路34部分は、分かりやすくするために透視して描いてある。
本発明に係るインモールド成形装置は、超臨界流体発生装置等にて製造した流体をガス化して供給手段を備え、二酸化炭素や窒素等の不活性で、樹脂への溶解性の高いガスをガス取入口からキャビティ内に送り込むようになっている。
この場合に、超臨界流体発生装置等と金型間でガス温を80〜200℃に温度調整できるようになっている。
また、ガスの吹付方向は射出成形される樹脂成形品1の角部1aで、かつ転写される部分に対応する加飾フィルムの位置になるように調整されている。
キャビティ型20には、キャビティ35内を真空吸引するためにキャビティ35に通じる吸引孔21を設けてある。
コア型30とキャビティ型20はそれぞれヒーター(図示省略)を備えて金型温調可能になっている。
【0012】
インモールド成形装置10には、金型20、30間通過前の加飾フィルム40aの面にガスを吹きつけるブロー用ガス吹出口14a、14bを配設している。
ブロー用吹出口14a、14bは、加飾フィルム40aの表面41、裏面42の両面側にそれぞれ配設して、加飾フィルム40の送り出し側に向けてガス11を吹き付けることができるようになっている。
これにより、加飾フィルム表面のゴミやホコリを吹き飛ばしたり、加飾フィルム40を予備的に加熱することができるようになっている。
インモールド成形工程直前に、このようにフィルムが伸びない範囲で予備的に加飾フィルム40を加熱することで、キャビティ35内における加飾フィルム40の加熱時間を短くして生産効率を向上させることが出来る。
また、加飾フィルム40は射出成形型の手前まではパイプ15中を通すことでゴミやホコリの付着を防止している。
【0013】
図2を用いてインモールド成形時の動作について説明する。
図2(イ)は、加飾フィルム40をコア型30とキャビティ型20の間に位置決めした状態を示している。
次いで、加飾フィルム40を図2(ロ)に示すように位置決め状態でクランプ22によりクランプする。
そして、コア型(可動型)30を降下させて図2(ハ)に示すように型締めし、加飾フィルム40をコア31によりキャビティ35内に向けて押し込む。
この状態で、各吹出口33から80〜200℃のガス11を各キャビティ面角部35bへ向けて吹き出す。
この時、吹出口33とキャビティ面角部35bとの間には加飾フィルム40の角部相当部43が位置しているため、ガス体11は加飾フィルム40の角部相当部43に吹き付けられる。
これにより、温度の高い80〜200℃程度のガス11により角部相当部43は集中的に軟化するとともに、その表面が溶融樹脂と密着しやすく改質する。
この時、吸引孔21からキャビティ35内のエアーを真空吸引することで加飾フィルム40は図2(ニ)に示すようにキャビティ面35aに密着する。
キャビティ35に図2(ホ)に示すように、キャビティ35内に溶融樹脂2を射出して充填し、樹脂成形品1を加飾成形する。
樹脂成形品1の角部1aにおいて、加飾フィルム40の角部相当部43は、キャビティ面角部35bに密着させた状態で樹脂を充填するため、転写する模様のしわや亀裂、重ね合い、あるいはモヤ等の転写不良を防止できる。
また、加飾フィルム40は、ブロー用吹出口14a、14bで高温のガス体11を吹き付けて、予めその温度を上昇させていることから、溶融樹脂2と加飾フィルム40との温度差を小さくして湯流れが良くなる。
これにより、樹脂成形品1内へのガスや蒸気の巻き込みを防止し、又、フローマークが生じるのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るインモールド成形装置の射出成形金型付近の要部の模式図を示す。
【図2】インモールド成形装置の金型部分における動作の説明図を示す。
【符号の説明】
【0015】
1 樹脂成形品
1a 樹脂成形品の角部
2 溶融樹脂
10 インモールド成形装置
11 ガス体
12、13 ホース
14a、14b ブロー用ガス体吹出口
15 パイプ
20 キャビティ型
21 吸引孔
22 クランプ
30 コア型
31 コア
32 ガス体取入口
33 ガス体吹出口
34 ガス体流路
35 キャビティ
35a キャビティ面
35b キャビティ面角部
40 加飾フィルム
40a 射出成形型の手前の加飾フィルム
40b 基体フィルム
40c 模様部
41 加飾フィルムの表面
42 加飾フィルムの裏面
43 加飾フィルムの樹脂成形品の角部相当部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ型とコア型からなる射出成形型と、
キャビティ型とコア型との間に挿入された加飾フィルムに向けて吹き出すガス供給手段とを備え、
ガス吹出口は、射出成形される樹脂体の角部であって且つ加飾部に対応する加飾フィルム部分に向けて吐出するように配設されたものであることを特徴とするインモールド成形装置。
【請求項2】
ガス供給手段は、超臨界流体発生装置等を用いて発生させた流体をガス化し、所定の温度に調整するものであることを特徴とするインモールド成形装置。
【請求項3】
加飾フィルムをキャビティ型とコア型との間に挿入する前に、この加飾フィルムにガスを吹き付けるブロー用ガス吹出手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインモールド成形装置。
【請求項4】
キャビティ型とコア型からなる射出成形型の型間に加飾フィルムを挿入する工程と、射出成形される樹脂体の角部に加飾する位置に対応した加飾フィルムに浸透性ガスを吹き付ける工程と、溶融樹脂を射出する工程とを有することを特徴とするインモールド成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−341486(P2006−341486A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169282(P2005−169282)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】