説明

インライン注入及び冷却を用いる繊維配置システム及び方法

【課題】高価な予め含浸させた繊維トウ又はドライプリフォームを使用しない繊維配置方法及びシステムの提供。
【解決手段】繊維配置システム10は、樹脂を1つ又は2つ以上の繊維トウ2に塗工し、樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウを形成する樹脂含浸アセンブリ20を備える。繊維配置システムはさらに繊維配置ヘッド30を備え、繊維配置ヘッド30は樹脂含浸アセンブリからインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成された1つ以上の冷却器40を有する。繊維配置ヘッド30はさらに、冷却後の樹脂注入繊維トウを受け取り、切断するように構成された1つ以上の切断機アセンブリ50と、切断後の繊維トウを受け取り、器具70に圧縮するように構成された圧縮アセンブリ60とを有する。繊維配置方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、複合材料部品を形成する繊維配置システム及び方法に関し、特にインライン注入及び効果的インライン冷却を用いる繊維配置システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂注入された繊維複合材料は、重量比強度及び重量比剛性が高いなどの理由で多種多様な産業、たとえば自動車、航空機及び風カエネルギーに使用されることが増えている。複雑な複合材料部品及び/又は繊維パターンを形成することが望まれている。しかし、このような部品の現行の製造方法では通常、ドライ繊維プリフォームを用い、その後樹脂注入するか、「プリプレグ」と呼ばれる予め含浸させた繊維トウを配置する。これら両方の方法とも欠点がある、即ちドライプリフォームの用意には大きな労力を要し、プリプレグトウは非常に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7513965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高価な予め含浸させた繊維トウ又はドライプリフォームを使用しない繊維配置方法及びシステムを提供することが望ましい。さらに、繊維配置方法及びシステムがインライン冷却を向上させてその後のインライン樹脂注入繊維トウの加工と使用を容易にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1観点による繊維配置(ファイバプレイスメントfiber placement)システムは、樹脂を1つ又は2つ以上の繊維トウに塗工し、樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウ(インラインで樹脂を注入した繊維トウ)を形成する樹脂含浸アセンブリを備える。繊維配置システムはさらに繊維配置ヘッドを備え、繊維配置ヘッドは、樹脂含浸アセンブリからインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成された1つ以上の冷却器を含む。繊維配置ヘッドはさらに、冷却後の樹脂注入繊維トウを受け取り、切断するように構成された1つ以上の切断機アセンブリと、切断後の繊維トウを受け取り、器具(ツール)に圧縮するように構成された圧縮アセンブリとを含む。
【0006】
本発明の別の観点は、繊維配置方法である。本方法は、樹脂を1つ又は2つ以上の繊維トウに塗工し、樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウを形成し、インライン樹脂注入繊維トウを約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度まで冷却する工程を含む。繊維配置方法はさらに、冷却後の樹脂注入繊維トウを切断し、切断後の繊維トウを器具に圧縮する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の上記その他の特徴、観点及び効果を一層良く理解できるように、以下に添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図面において、同じ符号は同一部品を示す。
【図1】本発明の実施形態の繊維配置システムを示す線図である。
【図2】図1のシステムに用いる繊維配置ヘッドの斜視図である。
【図3】図2に示す繊維配置ヘッドの反対側の斜視図である。
【図4】図2及び図3の繊維配置ヘッドの断面図である。
【図5】図1のシステムに用いる、2つの注入ローラーを有する樹脂含浸アセンブリの線図である。
【図6】別の例の樹脂含浸アセンブリに用いるノズル配列の1例を示す線図である。
【図7】注入増強装置の1例を示す線図である。
【図8】図2〜図4の繊維配置ヘッドに用いる冷却器の構成の1例を示す斜視図である。
【図9】図8の冷却器の冷却チャンネルの1例を示す線図である。
【図10】図8に示す冷却器の断面図である。
【図11】図2〜図4の繊維配置ヘッドに用いる切断機アセンブリの1例を示す斜視図である。
【図12】図11の切断機アセンブリの断面図である。
【図13】本発明の実施形態の繊維配置方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の繊維配置システム10を図1〜図4を参照して説明する。たとえば図1に示すように、1例である繊維配置システム10は、樹脂(図1には示さず)を1つ又は2つ以上の繊維トウ2に塗工し、樹脂を繊維トウ2に注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウ(これも参照番号2で示す。)を形成する樹脂含浸アセンブリ20を備える。図1の構成例では4つの繊維トウを示すが、本発明は、特定の数の繊維トウに限定されず、繊維トウ数は用途や特定の機械設計に応じて変わる。樹脂含浸アセンブリ20の構成例は、図5〜図7を参照して後で説明する。
【0009】
ここで用いる用語「繊維トウ」は、フィラメント、繊維、多数(たとえば、10,000〜50,000)の繊維からなるトウ及び繊維テープに大別されるすべてのものを指す。通常、トウが50,000以上の繊維を含むと、インターリーブ構造の強度が低減し、一方、トウが3000未満の繊維を含むと、製造コストが増加する。2つの実施例では、12,000及び24,000繊維のトウを使用した。繊維の種類には、ガラス繊維、高強度繊維(たとえば、炭素繊維)、硬質耐剪断性繊維(たとえば、金属繊維又はセラミック繊維)及び強靱性繊維(たとえば、Sガラス、アラミド繊維及び配向ポリエチレン繊維)があるが、これらに限らない。アラミド繊維の例としては、ケブラー(Kevlar登録商標)及びトワロン(Twaron登録商標)があるが、これらに限らない。ケブラーはE. I. du Pont de Nemours and Company(米国バージニア州リッチモンド所在)から販売されている。トワロンアラミド繊維は帝人トワロン(オランダ所在)から販売されている。配向ポリエチレン繊維の例としては、スペクトラ(Spectra登録商標)及びダイニーマ(Dyneema登録商標)があるが、これらに限らない。スペクトラ繊維は、Honeywell Specialty Materials社(米国ニュージャージー州モリス所在)から販売されている。ダイニーマ繊維はDSM(Dutch State Mines)社(オランダ所在)から販売されている。
【0010】
図1に示すように、システム10はさらに、繊維配置ヘッド30を備える。たとえば、図2〜図4に示すように、繊維配置ヘッド30は、樹脂含浸アセンブリ20からインライン樹脂注入繊維トウ2を受け取り、冷却するように構成された冷却器40を1つ以上有する。冷却器40は、図8〜図10を参照して後で詳細に説明する。繊維配置ヘッド30はさらに、冷却後の樹脂注入繊維トウ2を受け取り、切断するように構成された切断機アセンブリ50を1つ以上有する。切断機アセンブリ50は、その1例を図11及び図12を参照して後で説明する。たとえば、図2〜図4に示すように、繊維配置ヘッド30はさらに、切断後の繊維トウを受け取り、器具70に圧縮するように構成された圧縮アセンブリ60を有する。圧縮アセンブリは、図1〜図4を参照して後で説明する。
【0011】
図1に示す構成例では、繊維トウ2をクリール90から供給する。図示例では、クリール90は複数のスプール92を有する。図示のように、最初に各トウ2をそれぞれのスプール92に巻く。1つ又は2つ以上のスプールテンショナ32を設けてクリール90の繊維トウの張りを制御することができる。図1に示すような制御装置80によりスプールテンショナ32を制御することができる。制御装置80を用いて樹脂含浸アセンブリ20及び/又は繊維配置ヘッド30の制御を行うこともできる。別の構成では、別々の制御装置(図示せず)を用いることができる。
【0012】
ある実施形態では、制御装置80は1つ又は2つ以上のプロセッサを有することができる。なお、本発明は、本発明の処理作業を行う特定のプロセッサに限定されない。ここで用いる用語「プロセッサ」は、本発明の処理作業を行うのに必要な計算や演算を行うことができる機械を示す。当業者に明らかであるように、用語「プロセッサ」は、構造化された入力を受理すること及び/又は入力を所定の規則にしたがって処理して出力を生成することができる機械を示す。
【0013】
繊維配置ヘッド30は、回転軸の周りを回転するか静止している器具70に対して移動するように構成されている。制御装置80はさらに、繊維配置ヘッド30と器具70の相対移動を制御するように構成されている。通常、繊維配置ヘッド30が器具70に対して移動する。特に、繊維配置ヘッド30は軸方向移動、並進及び軸回転するように構成されている。理論上、器具70も繊維配置ヘッド30に対して移動するように構成可能であるが、器具70と繊維配置ヘッド30の相対寸法及び構成からこの理論的構成は実用的でない。この相対移動は、様々な方法を用いて、たとえばガントリ、即ち支持機枠(図示せず)に繊維配置ヘッド30を装着するなどして実現することができる。繊維配置ヘッド30は、摺動可能にトラック(図示せず)に係合され、アクチュエータ(図示せず)に駆動されてトラックを上下移動できるようにするか、多軸スピンドルヘッド(図示せず)上に位置することができる。トラック及びアクチュエータは位置決め装置と総称できる。この位置決め装置をガントリに装着することができる。さらに、クリール90、樹脂供給部16、ヒーター(図示せず)及びスプールテンショナ32をガントリに装着してもよい。
【0014】
図5に示す構成例では、樹脂含浸アセンブリ20は、たとえば樹脂供給部(又は樹脂タンク)16から樹脂4を受け取るように構成された1つ又は2つ以上の注入ローラー22を有する。樹脂4の例としては、熱硬化性ポリマー樹脂、たとえばビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びこれらの混合物があるが、これらに限らない。たとえば、図5に示すように、各注入ローラー22には多数のホール24が設けられ、樹脂を繊維トウ(図5には示さず)に注入してインライン樹脂注入トウを形成するように構成されている。図5に示す構成例では、樹脂含浸アセンブリ20が2つの注入ローラー22を有し、4つの繊維トウがそれらの間を通るように構成されている。さらに、図5に示す構成例では、注入ローラー22はボックス33に納められている。
【0015】
1つの構成例では、各注入ローラー22にいくつかのノッチが設けられ、対応する繊維トウを受け取るように構成されている。隣接するノッチは互いにギャップで隔てられている。この構成例では、ホール24は、ノッチに配列され、注入ローラー22の軸線方向に沿って無孔部分で隔てられている。
【0016】
図6は樹脂含浸アセンブリ20の別の構成例を示す。図6に示す構成では、樹脂含浸アセンブリ20は、樹脂をそれぞれの繊維トウ上に堆積するように構成された1つ又は2つ以上のノズル21を有する。様々な構成のノズル21を用いることができる。図示した構成では、各ノズル21は、樹脂を1つの繊維トウ2だけに堆積するように構成されている。図示した構成では、ノズル21は、樹脂を繊維トウ2の片側だけに堆積するように構成されている。別の構成では、樹脂を繊維トウの両側に堆積するようにノズル21を構成することができる。ノズル21の異なるいくつかの構成は、本出願人に譲渡された米国特許出願第12/575,668号「樹脂塗工及び注入システム」(その全文をここに援用する)に記載されている。図6の配列例は8つのトウを含むが、本発明は特定の配列寸法やトウ数に限定されず、特定の用途では、トウ数が8より少なく、別の用途ではトウ数が8より多くてもよい。
【0017】
図6に示す構成例では、繊維配置システム10はさらに、それぞれの繊維トウの繊維速度に応じて各ノズル21に通す樹脂の流量を制御するように構成された制御装置80を備える。制御装置80はさらに、それぞれの繊維トウ2について樹脂幅及び/又は樹脂厚の測定データに基づくフィードバックを用いて、各ノズル21に通す樹脂の流量を制御するように構成されている。このフィードバック制御構成では、樹脂幅及び樹脂厚の少なくとも1つをモニタする1つ又は2つ以上のセンサ12を用いることができる。図6には図を簡単にするためにセンサ12を1つだけ示すが、複数のセンサ12を用いることができ、1例では、繊維トウ2ごとに1つのセンサ12を設けることができるが、これに限らない。センサの例には光センサ又は接触センサがある。
【0018】
さらに、図6に示す構成例では、樹脂含浸アセンブリ20はさらに1つ又は2つ以上のコンピュータ制御ポンプ23を有する。各ポンプは、樹脂をそれぞれのノズル21に供給するように構成されている。図示のように、各ポンプを制御装置80により制御する。有利なことに、図6に示す構成は、製品の特定要求に応じて各トウの樹脂塗工(その結果として注入)速度を制御しながら、ドライ繊維トウの配列に同時にインライン注入を行うことができる。
【0019】
さらに特定の実施形態によれば、樹脂含浸アセンブリ20はさらに、樹脂の繊維トウ2への注入を増強する注入増強装置25を有する。注入増強装置25の1例を図7に示す。図7に示すように、2つのロッド14は、互いに平行かつ繊維トウ2の供給路にほぼ直交方向に向いている。特定の構成に応じて、繊維トウ2がロッド14の上方及び/又は下方及び/又は間に延在してよく、かくしてロッド14が樹脂を少なくとも部分的に繊維トウ2に押し込む。注入増強装置25の別の例に、1対のプラテン(図示せず)を設け、繊維トウ2がプラテン間に延在する構成があるが、これに限らない。注入増強装置25の例は、米国特許出願第12/575,668号「樹脂塗工及び注入システム」に記載されている。
【0020】
次に、繊維配置ヘッド30について図8〜図12を参照して説明する。上述したように、繊維配置ヘッド30は、樹脂含浸アセンブリ20からインライン樹脂注入繊維トウ2を受け取り、冷却するように構成された少なくとも1つの冷却器40を有する。以下に、冷却器40の1例を図8〜図10を参照して説明する。特定の実施形態によれば、各冷却器40は、樹脂注入繊維トウを約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度まで冷却するように構成されている。さらに特定の実施形態によれば、各冷却器40は、樹脂注入繊維トウを約140°F以上の初期温度から約40°F未満の冷却後温度まで冷却するように構成されている。これは、従来の冷却方式が、プリプレグテープを室温未満又は室温程度に冷却したクリールに置き、プリプレグテープの温度上昇を制限するのとは対照的である。
【0021】
図8に示す冷却器構成例では、各冷却器40に複数の冷却チャンネル41が設けられ、それぞれのインライン樹脂注入繊維トウ(図8には示さず)を受け取り、冷却するように構成されている。図8に示す特定の構成では、冷却チャンネル41は下側プレート36に形成されている。図8に4つのチャンネルを示すが、これは例示にすぎず、冷却器は何個のチャンネルを有してもよい。図9に冷却チャンネル41の1例を線図的に示す。特定の実施形態によれば、各インライン樹脂注入繊維トウ2がそれぞれの冷却チャンネル41の上側壁43及び下側壁45から約0.5mm以上のギャップδで隔てられている。さらに特定の例では、ギャップδは約1.0mmであり、さらに特定の例では、ギャップδは約2.0mmである。
【0022】
図10に図8の冷却器40の断面図を示す。図8及び図10に示す構成では、各冷却器40は、冷却材を受け取るように構成された入口42を有する。冷却材の例としては、冷却ガス、たとえば冷却空気があるが、これに限らない。冷却材はコンプレッサ/ブロア(図示せず)により供給することができる。図示例では入口42を1つだけ示すが、複数の入口(図示せず)を用いてもよい。別の構成(図示せず)では、第2の入口を設けて冷却チャンネルの下側に冷却材を供給する。この後者の構成は、トウの振動を低減し、熱伝達を向上するのに望ましいことがある。
【0023】
図10に示すように、たとえば、冷却器40はさらに、入口42と流体連通している少なくとも1つのプレナム(冷却マニホルド)44を有する。図示例ではプレナム44を1つだけ示すが、上側プレート34に複数の冷却マニホルド(図示せず)を画定することができる。限定するわけではないが、1例(図示せず)では、プレナムがトウに対して開口している。別の構成例では、閉じたプレナムに衝突冷却を行う。
【0024】
図10に示す冷却器40はさらに、冷却材の少なくとも一部をプレナム44の内方部分(参照番号35)から外方部分37に分流する分流器46を有する。図示例では、分流器46は分流プレート46を有する。プレート46は中実にすることができる。別の例では、プレート46に1つ又は2つ以上のホール(図示せず)を設けてインライン注入繊維トウを衝突冷却することができる。特に、分流器46は冷却材の少なくとも一部を冷却チャンネル41の出口部分に分流し、かくして冷却チャンネル中に冷却材をさらに均等に分布させ、これにより樹脂注入繊維トウの冷却を促進する。
【0025】
図8に示す構成例では、冷却器(冷却アセンブリ)40にホール38を設けて冷却器40を繊維配置ヘッドアセンブリ30全体に装着する。留め具39を設けて上側プレート34と下側プレート36を固定している。
【0026】
冷却器部品は種々の材料、たとえば金属材料及び低熱伝導度材料、たとえば複合材料、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ノリル(Noryl登録商標)又はレキサン(Lexan登録商標)で形成できる。ノリル及びレキサンは米国マサチューセッツ州ピッツフィールド所在のSABIC(Saudi Basic Industries Corporation)から市販されている。限定するわけではないが、1例では、上側プレート34と下側プレート36は金属からなり、上側プレートの上側と下側プレートの下側に断熱材(図示せず)を設けて周囲空気による冷却器プレートの温度上昇を制限し、これによりトウの冷却をさらに促進する。別の例では、上側プレート34と下側プレート36は、複合材料、PVC、PE、ノリル及びレキサンよりなる群から選択される1つ又は2つ以上の材料からなり、断熱材を設けない。
【0027】
上述の特徴に加えて、並行流及び/又は対向流を用いて冷却をさらに促進することができる。図8では、冷却材(冷却空気)は入口42からシステムに入る。この冷却空気はプレナム44を通って冷却チャンネル41に入る。チャンネル41の中心(長手方向に)付近でプレナム44をチャンネル41に接続する場合、空気の流れが2つに分かれる。空気の一方は繊維トウ2の移動と同方向に流れ、冷却空気及び繊維トウが同じ側から出る。これが、材料及び流体の両方が同方向に流れる、並行流のセットアップである。他方の冷却空気は、別のチャンネル方向に流れ込み、繊維トウ2の移動に逆らってチャンネルを流れ、繊維が入るところでチャンネルから出る。材料及び流体の両方が逆方向に流れる、即ち対向流である。チャンネルの長手方向のプレナムの位置は中心である必要はない。最適化基準に応じて、プレナムはチャンネルの長手方向のどこかに位置することができる。
【0028】
また、直交流を用いてさらに繊維トウを冷却することができる。たとえば、繊維トウを横断して空気を流すことができ(直交流)、空気は繊維の片側(繊維トウに対してほぼ直角)から入り、反対側から出る。しかし、チャンネル内の許容差が厳しい場合には、一般に並行流及び対向流は直交流に比べ実施しやすい。
【0029】
上述の特徴に加えて、冷却器の幾何形状を選択的に構成すること及び冷却材の流量及び温度などの冷却材条件を調節することにより、冷却をさらに向上することができる。しかし、特定の設計構成及び冷却材条件は、境界条件に基づき用途に応じて変化する。たとえば、冷却器の幾何形状により、流れの断面積、流路長、プレナムの位置及び導入方式が決まる。プリプレグ材料で生じる境界条件の例としては、プリプレグ材料の熱伝導率又は比熱、幾何形状、供給量、冷却器入口でのプリプレグ材料の温度及び出口での所望の温度などの特性がある。
【0030】
設計プロセスにおいて、冷却空気の流量や温度などの潜在的な変数すべてを調節して確実にプリプレグ材料の出口温度が所望値になるようにする。このプロセスでは、2つの異なる流れ方向におけるチャンネル内での圧力損失を考慮して並行流と対向流間の冷却空気の総質量流量の配分を求める。この配分は、チャンネルの壁での摩擦圧力損失、プリプレグ表面での摩擦圧力損失及び入出圧力損失による圧力損失の関数である。並行流と対向流間の流れの分配並びに冷却器幾何形状を用いて熱伝達係数を求め、熱伝達係数を用いて、冷却器内の流路に沿ったプリプレグ材料の温度プロファイルを計算する。総合的な境界条件に応じて、幾何形状、供給量、冷却空気条件を調節して所望の成果を得る、たとえば冷却材の使用量をできるだけ少なくしたり、冷却材温度をできるだけ高くしたりする。熱設計の他に、空気(冷却材)流れからのプリプレグ材料への摩擦力を考慮し、摩擦力が繊維配置システム全体に悪影響を与えないようにする。
【0031】
冷却材をプリプレグ材料に流す方法に応じて、繊維トウのずれを考慮する。たとえば、冷却材を片側から導入する場合の繊維トウのずれは、冷却材を両側から導入する場合の繊維トウのずれに比べて顕著となる。さらに、チャンネル中の冷却材導入又は流れからの振動により繊維トウがずれることもある。
【0032】
切断機アセンブリ50の1例を図11及び図12を参照して説明する。しかし、図示した切断機アセンブリは1例にすぎず、本発明は特定の切断機アセンブリに限定されない。図11及び図12に示すアセンブリ例では、切断機アセンブリ50はトウを受け取る複数の供給路52を有する。4つの供給路を示すが、供給路の数は何個でもよい。限定するわけではないが、1例では、トウは約1フィート/秒で移動する。位置合わせピン54を設けて切断機アセンブリ50を繊維配置ヘッド30に装着する。図示した構成例では、つまみねじ(留め具)56を設けて切断機アセンブリの上部を下側プレート58に固定する。他の固定手段を用いてもよい。
【0033】
図11及び図12に示すように、アクチュエータ62を設けて切断機(ブレード)64を付勢する。アクチュエータの例としてはソレノイド及びエアコンプレッサがあるが、これらに限らない。図示例では、摩耗バー66及び支持部品68を設ける。1例では、摩耗バー66は青銅からなるが、これに限らない。さらに、図示例では、止めネジ72を設けて摩耗バーに所望の予荷重を維持する。さらに、ブレード64に戻しばね(図示せず)を設けてもよい。
【0034】
運転時、アクチュエータ62は切断機64を付勢して繊維トウを切断し、戻しばねがブレードを初期位置に戻す。図示例では、ブレードは複数のトウ(この場合、4つのトウ)を同時に切断する。しかし、各トウを切断するのに他の適当な切断機アセンブリを設けてもよい。
【0035】
圧縮アセンブリ60の1例を図1〜図4を参照して説明する。しかし、図示した圧縮アセンブリは1例にすぎず、本発明は特定の圧縮アセンブリに限定されない。図2〜図4に示すアセンブリ例では、圧縮アセンブリ60は、器具(図2〜図4には示さず)にトウ2を圧縮する圧縮ローラー74を有する。圧縮アセンブリ60はさらに、圧縮ローラー74を駆動する加圧アクチュエータ78を有する。
【0036】
繊維配置ヘッド30の別の観点を図2〜図4を参照して説明する。図示した構成では、支持フィルム(ガイド)82を設けてトウ2を支持する。支持フィルムは、非粘着性材料、たとえば商品名テフロン(登録商標)にてE. I. du Pont de Nemours and Company(米国デラウェア州ウィルミントンに本社所在)から市販されている材料を含有することができる。図示例では、ガイドローラー76を設けて支持ガイド82から圧縮ローラー74に繊維トウを案内する。
【0037】
図示した構成では、繊維配置ヘッド30は、繊維トウ2を2つの切断用アセンブリ50のそれぞれに供給する前に繊維トウ2を受け取り、冷却する2つの冷却モジュール40を有する。モーター86によりベルト88を介して駆動される供給ローラー84によりトウ2を移動させる。ピンチアクチュエータ96がスプレダー98を駆動し、そして次にスプレダー98がピンチレバー99を移動する。ピンチローラー94は、ピンチレバー99に連結されているので、ピンチアクチュエータ96によりスプレダー98及びレバー99を介して付勢される。スプリング97がピンチローラー94を初期位置に戻す。運転時、ピンチローラー94を付勢することにより、ピンチローラーがトウ2の各セットをそれぞれの供給ローラー84に押し当てる。
【0038】
図示した構成では、たとえば図3に示すように、2セットのトウのそれぞれを空間的にずらし、両者を合わせたとき繊維トウの連続バンド6を形成する。
【0039】
繊維配置方法を図13を参照して説明する。図13に示すように、繊維配置方法は、工程100で樹脂を1つ又は2つ以上の繊維トウに塗工する。図5及び図6を参照して前述したように、樹脂をタンク16から供給し、種々の手段で塗工することができる。塗工手段の例には、図5の注入ローラー22又は図6のノズル21があるが、これらに限らない。繊維配置方法はさらに、工程102で樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウを形成する。注入は樹脂含浸アセンブリ20を用いて行うことができ、該アセンブリ20には、図7を参照して前述したように、所望により注入増強装置25を設けてもよい。
【0040】
繊維配置方法はさらに、工程104で約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度までインライン樹脂注入繊維トウを冷却する。さらに特定の実施形態によれば、約140°F以上の初期温度から約40°F未満の冷却後温度までインライン樹脂注入繊維トウを冷却する。これは、室温未満又は室温程度の初期温度からのプリプレグテープの温度上昇を制限する従来の冷却方式とは対照的である。図8〜図10を参照して前述したように、冷却は冷却器40を用いて行うことができる。特定の実施形態では、冷却工程104は並行流を用いてインライン樹脂注入繊維トウを冷却する。別の実施形態では、冷却工程104は対向流を用いてインライン樹脂注入繊維トウを冷却する。
【0041】
繊維配置方法はさらに、工程106で冷却後の樹脂注入繊維トウを切断し、工程108で切断後の繊維トウを器具に圧縮する。切断操作は種々の切断アセンブリを用いて行うことができ、1例には図11及び図12の切断機アセンブリ50があるが、これに限らない。圧縮操作は、種々の圧縮アセンブリを用いて行うことができ、1例には圧縮アセンブリ60があるが、これに限らない。
【0042】
本発明を特定の特徴だけについて例示し、説明したが、多くの変更や改変を当業者が想起することができるであろう。したがって、特許請求の範囲は本発明の要旨に入るこのようなすべての変更や改変を含むものとする。
【符号の説明】
【0043】
2 繊維トウ
4 樹脂
6 繊維トウのバンド
10 繊維配置システム
12 センサ
14 ロッド
16 樹脂供給部(タンク)
20 樹脂含浸アセンブリ
21 ノズル
22 注入ローラー
23 ポンプ
24 ホール
25 注入増強装置
26 ノッチ
28 ギャップ
30 繊維配置ヘッド
32 スプールテンショナ
33 ボックス
34 上側プレート
35 プレナムの内方部分
36 下側プレート
37 プレナムの外方部分
38 ホール
39 留め具
40 冷却器
41 冷却チャンネル
42 入口
43 冷却チャンネルの上側壁
44 プレナム
45 冷却チャンネルの下側壁
46 分流器
50 切断機アセンブリ
52 供給路
54 位置合わせピン
56 つまみねじ
58 下側プレート
60 圧縮アセンブリ
62 アクチュエータ
64 切断機(ブレード)
66 摩耗バー
68 支持部品
70 器具
72 止めネジ
74 圧縮ローラー
76 ガイドローラー
78 加圧アクチュエータ
80 制御装置
82 支持フィルム(ガイド)
84 供給ローラー
86 モーター
88 ベルト
90 クリール
92 スプール
94 ピンチローラー
96 ピンチアクチュエータ
97 スプリング
98 スプレダー
99 ピンチレバー
100 樹脂塗工工程
102 樹脂注入工程
104 繊維冷却工程
106 切断工程
108 圧縮工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(4)を1つ又は2つ以上の繊維トウ(2)に塗工し、樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウを形成する樹脂含浸アセンブリ(20)、及び
樹脂含浸アセンブリからインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成された1つ以上の冷却器(40)と、冷却後の樹脂注入繊維トウを受け取り、切断するように構成された1つ以上の切断機アセンブリ(50)と、切断後の繊維トウを受け取り、器具(70)に圧縮するように構成された圧縮アセンブリ(60)とを有する繊維配置ヘッド(30)を備える、
繊維配置システム(10)。
【請求項2】
樹脂含浸アセンブリ(20)が、樹脂(4)を受け取るように構成された1つ又は2つ以上の注入ローラー(22)を有し、各注入ローラーには複数のホール(24)が設けられ、樹脂を繊維トウに注入してインライン樹脂注入トウを形成するように構成されており、
繊維配置システム(10)はさらに1つ以上のクリール(90)を備え、各クリールが1つ又は2つ以上の繊維トウを各冷却器(40)に供給するように構成されている、
請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項3】
樹脂含浸アセンブリ(20)が、樹脂をそれぞれの繊維トウに堆積するように構成された1つ又は2つ以上のノズル(21)を有し、繊維配置システム(10)がさらに、それぞれの繊維トウの繊維速度に対して各ノズル(21)からの樹脂の流量を制御するように構成された制御装置(80)を備え、樹脂含浸アセンブリ(20)がさらに1つ又は2つ以上のコンピュータ制御ポンプ(23)を有し、各ポンプが樹脂をそれぞれのノズル(21)に供給するように構成され、制御装置(80)により各ポンプを制御する、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項4】
樹脂含浸アセンブリ(20)が樹脂をそれぞれの繊維トウに堆積するように構成された1つ又は2つ以上のノズル(21)を有し、樹脂含浸アセンブリ(20)がさらに繊維トウへの樹脂の注入を増強する注入増強装置(25)を有する、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項5】
各冷却器(40)が樹脂注入繊維トウを約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度まで冷却するように構成され、各冷却器(40)には複数の冷却チャンネル(41)が設けられ、それぞれのインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成され、各インライン樹脂注入繊維トウが冷却チャンネルの上側壁(43)及び下側壁(45)から約0.5mm以上のギャップ(δ)で隔てられている、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項6】
各冷却器(40)が樹脂注入繊維トウを約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度まで冷却するように構成され、各冷却器(40)には複数の冷却チャンネル(41)が設けられ、それぞれのインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成され、各冷却チャンネル(41)がさらに並行流、対向流及び直交流の少なくとも1つを用いてそれぞれのインライン樹脂注入繊維トウを冷却するように構成されている、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項7】
各冷却器(40)が樹脂注入繊維トウを約140°F以上の初期温度から約40°F未満の冷却後温度まで冷却するように構成されている、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項8】
各冷却器(40)が、冷却材を受け取るように構成された少なくとも1つの入口(42)と、前記入口と流体連通している少なくとも1つのプレナム(44)と、冷却材の少なくとも一部をプレナムの内方部分から外方部分に分流する分流器(46)とを備え、各冷却器(40)には複数の冷却チャンネル(41)が設けられ、それぞれのインライン樹脂注入繊維トウを受け取り、冷却するように構成され、分流器(46)が冷却材の少なくとも一部を冷却チャンネルの出口部分に分流する、請求項1に記載の繊維配置システム(10)。
【請求項9】
樹脂(4)を1つ又は2つ以上の繊維トウ(2)に塗工し、
樹脂を繊維トウに注入して1つ又は2つ以上のインライン樹脂注入繊維トウを形成し、
インライン樹脂注入繊維トウを約100°F以上の初期温度から約50°F未満の冷却後温度まで冷却し、
冷却後の樹脂注入繊維トウを切断し、
切断後の繊維トウを器具(70)に圧縮する工程を含む、
繊維配置方法。
【請求項10】
前記初期温度が約140°F以上で、冷却後温度が約40°F未満であり、冷却工程で並行流、対向流及び直交流の少なくとも1つを用いてインライン樹脂注入繊維トウを冷却する、請求項9に記載の繊維配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−106082(P2011−106082A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249245(P2010−249245)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】