イン・サイチュー解析のためのオリゴヌクレオチドプローブおよびタンパク質を標識するためのオリゴヌクレオチド
【課題】細胞もしくは組織サンプル中の複数の核酸標的遺伝子または抗原を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブコレクションを提供する。
【解決手段】細胞もしくは組織サンプル中の特定の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションもしくは「カクテル」を提供する。カクテルは、次のものを検出するために有用である:κ遺伝子;λ遺伝子;CMV(サイトメガロウイルス)遺伝子;EBER(Epstein−BarrRNA)遺伝子;Alu;ポリA;および検出テール。
【解決手段】細胞もしくは組織サンプル中の特定の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションもしくは「カクテル」を提供する。カクテルは、次のものを検出するために有用である:κ遺伝子;λ遺伝子;CMV(サイトメガロウイルス)遺伝子;EBER(Epstein−BarrRNA)遺伝子;Alu;ポリA;および検出テール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸遺伝子標的を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブのコレクションに関する。特に、本発明はオリゴプローブのコレクションに関する。
【背景技術】
【0002】
イン・サイチュー解析はイン・サイチューのハイブリダイゼーションおよび免疫組織化学を含む。イン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)は、細胞もしくは組織サンプル中の標的とする核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、標的遺伝子配列もしくは転写物に対してアンチセンスである標識したDNAもしくはRNAプローブ分子を用いる。ISHは、発生生物学、細胞生物学および分子生物学を含む、多数の生物医療分野において有用な道具であることが分かっている。ISHは、例えば、遺伝障害を診断したり、遺伝子をマッピングしたり、遺伝子発現を研究したり、そして標的遺伝子発現の部位を局在化するために使用されてきた。
【0003】
典型的には、ISHは、ガラススライド上に固定化した細胞もしくは組織サンプルを、細胞もしくは組織サンプル中の特定の標的遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができる標識した核酸プローブに接触させることによって実施される(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。細胞もしくは組織サンプル中の核酸への標識したプローブ分子のハイブリダイゼーションは、次に、例えば、放射能に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法、またはBrdUのようなハプテンに結合している蛍光標識したタンパク質、プローブ中に組み入れられたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したヌクレオチドの結合に基づく間接検出法を用いて検出することができる。ハプテンに基づく方法は、さらに、結合性タンパク質−酵素複合体、例えば抗体−酵素複合体によって結合されるそれらの分子および比色法に基づく検出化学を含めるように拡張された。さらに、いくつかの標的遺伝子が、複数の異なる核酸タグで標識された複数の核酸プローブに細胞もしくは組織サンプルを接触させることによって同時に解析することができる。例えば、複数の核酸プローブが、異なる発光波長をもつ複数の蛍光化合物により標識することができ、それによって単一の標的細胞もしくは組織サンプルにおいて1段階で実施される同時多重発色分析を可能にする。
【0004】
オリゴヌクレオチドプローブ中への標識したヌクレオチドの組み入れに伴う重要な問題は、通常、ヌクレオチドに結合している複合部分が、ワトソン・クリック塩基対の形成を妨害し、その結果その標的へのプローブのハイブリダイゼーションにネガティブに影響することである。このことは、非置換シトシン(1級アミン)と形成される自然のG−C結合に較べて、立体障害および2級アミンの低い反応性状態への予期されるシフト(N4標識したシトシンに見られるような)のために、N4−置換されたシトシンヌクレオチドを介して結合された標識の使用に関して見られた。小さいヌクレオチド(25〜50塩基)における何らかの小変化またはG−C結合の妨害は、意図した標的配列とハイブリダイズするこれらのオリゴの能力を低下させることがある。
【0005】
オリゴヌクレオチド中に標識したヌクレオチドを組み入れるために適当なプローブ設計を開発する技術上の必要性が残っている。本発明者らは、数種の人工配列が、プローブ標識のための効果的に機能する代替物であり、そしてまた細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、単独でも、また複合したオリゴヌクレオチドプローブ混合物においても働くことを例証する。プローブコレクションのためのそのよ
うな遺伝子配列の開発および標識戦略は、医療、遺伝子および分子生物学技術における広い応用性を有する。
【0006】
標識化学によるこの妨害およびハイブリダイゼーションストリンジェンシーおよび動力学が、本明細書において、少なくとも2つの別個の機能性ドメイン、すなわち遺伝子特異的であり、塩基対形成に必要である1つのドメインもしくは配列、およびスペーシングヌクレオチドと標識したヌクレオチドからなる人工的な非特異的配列(サンプルのゲノムに関して)である第2ドメインを有するオリゴを設計することによって解決される。これらの要素は、これらの標識ヌクレオチドがタンパク質(免疫グロブリンもしくはアビジン)を結合するためにハプテンとして一層作用しやすく、したがって遺伝子に特異的なドメインにおいてワトソン・クリック塩基対を妨害しないように置かれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】In Situ Hybridization:Medical Applications(G.R.Coulton and J.de Belleroche,eds.,Kluwer Academic Publishers,1992)
【非特許文献2】In Situ Hybridization:In Neurobiology;Advances in Methodology(J.H.Eberwine,K.L.Valentino,and J.D.Barchas,eds.,Oxford University Press,1994)
【非特許文献3】In Situ Hybridization:A Practical Approach(D.G.Wilkinson,ed.,Oxford University Press,1992)
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、オリゴヌクレオチドプローブ中に標識を組み入れるための新規戦略および標識されたオリゴヌクレオチドプローブのコレクションを提供する。特に、本発明は、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析における使用のために、オリゴヌクレオチドプローブのコレクション中に組み入れることができるそのような配列の反復ポリマーを作成するための配列式を用いる非遺伝子特異的配列に関する。さらに、配列式に基づく標識された合成オリゴヌクレオチドポリマーを使用することは、結合性タンパク質、すなわち免疫グロブリンに複合された場合には、免疫組織化学的解析において使用されるそのようなタンパク質を標識するための非常に効果的な、そして制御される方法である。本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の特定核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションもしくは「カクテル」を提供する。カクテルは、次のものを検出するために有用である:κ遺伝子(配列番号:1から16まで);λ遺伝子(配列番号:17から19まで);CMV(サイトメガロウイルス)遺伝子(配列番号:30から50まで);EBER(Epstein−Barr初期RNA)遺伝子(配列番号:51から54まで);Alu(配列番号:55から56まで);ポリA(配列番号:57);および検出テール(配列番号:58)。
【0009】
本発明は、配列(CTATTTT)nおよびその相補体(AAAATAG)n[式中、「n」は少なくとも1である]を含んでなるオリゴヌクレオチド標識ドメインに向けられる。
【0010】
また、本発明は、少なくとも2つの別個の機能性ドメイン、請求項2の標識ドメインを含んでなる第1のドメイン、および遺伝子に特異的な標的配列を含んでなる第2のドメイ
ンを有するオリゴヌクレオチドプローブに向けられる。
【0011】
また、本発明は、プローブが配列番号:1から16までより本質的になる群から選ばれるκ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核(hetereonuclear)RNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0012】
また、本発明は、プローブが配列番号:17から29までより本質的になる群から選ばれるλ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核RNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0013】
また、本発明は、プローブが配列番号:30から50までより本質的になる群から選ばれるサイトメガロウイルス(CMV)即時型RNAおよび/または対応するmRNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0014】
また、本発明は、プローブが配列番号:51から54までより本質的になる群から選ばれるEpstein−Barrウイルス(EBV)初期RNA、RNA1およびRNA2、(EBER)を検出するためのプローブセットに向けられる。
【0015】
また、本発明は、プローブが配列番号:55および56より本質的になる群から選ばれるヒトAlu反復サテライトゲノムDNA配列を検出するためのプローブセットに向けられる。
【0016】
本発明の特定の好適な実施態様は、以下のある好適な実施態様および請求項のより詳細な記述から明らかになるであろう。
【0017】
図1は、2ドメインプローブ設計の遺伝子プローブ構造を図解している。これは、次の実施例において記述される遺伝子特異的カクテルにおけるプローブのために使用されるオリゴヌクレオチドの設計である。各プローブは、2つのドメイン:5’標識ドメインおよび3’標的遺伝子の標的遺伝子に特異的なドメインからなる。標識ドメインは、この特異配列(CTATTTT)nからなり、この場合、各シトシンは、発蛍光団もしくはシトシン−ハプテン複合体により標識されてもよく、この実施態様ではハプテンはフルオレセインである。この図は、具体的には、301(配列番号:55)および302(配列番号:56)プローブについての核酸配列を示し、これらの各々は、ヒト反復Alu配列に対応する標的遺伝子の遺伝子特異的ドメインおよびフルオレセインハプテンを有する標識ドメインを保持する。
【0018】
図2は、標識ドメインを含んでなるプローブ(330プローブ;配列番号:58)を用いるヒト皮膚組織のイン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、これらのISH実施例において使用されたオリゴヌクレオチドに共通する標識ドメインの配列式(CTATTTT)nCTが、それがハイブリダイズしないためにヒト核酸配列とワトソン・クリック塩基対を形成する能力において非特異的で、そして非反応性であることを示している。
【0019】
図3は、標識ドメインおよびポリd(T)標的遺伝子特異的ドメインを含んでなるプローブ(320プローブ;配列番号:57)を用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。細胞質に局在される検出可能なシグナルの存在は、このプローブがメッセンジャーRNAのポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることができることを示している。
【0020】
図4A−4Bは、組織サンプルが、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボ
ヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)場合の、320プローブを用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがメッセンジャーRNAに共通するポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることを示している。
【0021】
図5A−5Bは、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄が室温(A)または37℃(B)で実施された場合の、320プローブを用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。この結果は、より強い発色がより低いストリンジェント条件を示すことによって、発色の強度がハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに関係することを示している。
【0022】
図6は、320プローブを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。これは、このプローブ設計がまた包埋細胞系ならびに包埋組織を用いて機能することを示している。
【0023】
図7は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0024】
図8は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0025】
図9は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるラット細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、このプローブコレクションがヒト核酸配列に特異的であることを示している。
【0026】
図10は、エプスタイン・バーウイルス(EBV) EBER核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:51から54まで)を用いるEBV陰性ヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0027】
図11は、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0028】
図12は、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0029】
図13A−13Bは、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明するが、この場合、組織サンプルは、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがヒトEBER1および2核RNAに特異的にハイブリダイズすることを示している。
【0030】
図14は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:15)を用いるκ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0031】
図15は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:2−4、配列番号:7−12、配列番号:14,15)を用いるリンパ腫組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)のリンパ腫組織はκ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はλ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、κ軽鎖プローブコレクションがκ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【0032】
図16は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0033】
図17は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒトRPMI 8226細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0034】
図18A−18Bは、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織はλ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はκ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、λ軽鎖プローブコレクションがヒトλ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【0035】
図19は、CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いるサイトメガロウイルス(CMV)ポジティブヒト肺組織のISH解析について得られた結果を説明する(CMV感染細胞)。
図20は、CMV即時型mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されなかったラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0036】
図21A−21Bは、CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されたラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織は倍率40Xにおいて示され、そして(B)の組織は倍率20Xにおいて示される。
【0037】
<好適な実施態様の詳細な記述>
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブコレクションを提供する。特に、本発明は、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析における使用のためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションに関する。
【0038】
より具体的には、本発明は、オリゴヌクレオチドプローブまたはタンパク質に検出可能な部分(標識)を結合するためのヌクレオチドポリマーまたは標識ドメインについての特定の配列式の使用に関する。これらの配列もしくはその誘導体の特定の利用は、ハイブリ
ダイゼーション条件の標準ストリンジェンシー下では検出可能なレベルにおいてヒトDNAもしくはRNAにハイブリダイズしないという不活性または非反応性の特性である。これらの標識ドメインまたはポリマーは、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析において細胞もしくは組織サンプル中の遺伝子に特異的な配列を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ中への組み入れに有用な遺伝子配列であることが例証された。さらに、この不活性な配列のセットは、免疫組織化学的解析においてハプテンおよび抗原を検出するために、免疫グロブリンもしくは他のタンパク質に標識を結合させるために有用である。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「プローブ」もしくは「オリゴヌクレオチドプローブ」は、相補的核酸標的遺伝子を検出するために使用される核酸分子を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸(または相補体)配列が結合して二本鎖核酸分子を形成する過程を指す。例えば、放射性もしくは蛍光タグにより標的核酸分子を標識することによって、プローブと標的遺伝子間の相互作用が検出できる。
【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびコレクションのオリゴヌクレオチドプローブは慣用の方法を用いて合成される。参照、例えば、Methods in Molecular Biology,Vol20:Protocols for Oligonucleotides and Analogs 165−89(S.Agrawal,ed.,1993);Oligonucleotides and Analogues:A Pratical Approach 87−108(F.Eckstein,ed.,1991)。
【0042】
本発明の好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、2つの別個のドメイン:5’(または標識)ドメインおよび3’(または遺伝子に特異的な標的)ドメインを保持する(参照、図1A)。本発明のより好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、配列(CTATTTT)nおよび/または配列(CTATTTT)nCTからなる標識ドメインを保持する。また、他の実施態様が本明細書において例証され、これは2つの末端の標識ドメインおよび中央の遺伝子特異的標的ドメインを有する3重ドメイン態様も含む。具体的には、配列番号:125−126がこの標識スキームを表している。なお、標識ドメインのさらなる好適な実施態様は、TC(TTTTATC)nまたはその相補体である。この配列は(CTATTTT)nCT標識ドメインと同じくらい独特であると予想される。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、特定の細胞もしくは組織において該プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションが検出できるように標識される。イン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析における使用のために許容される標識は当業者には既知である。そのような標識は、例えば、放射能に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法と共役されたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したプローブ、または抗体−酵素に基づく検出法と共役されたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したプローブを用いて、プローブと標的遺伝子間の相互作用が検出されるのを可能にする。本発明の好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブはフルオレセインにより標識される。本発明のより好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、シトシンヌクレオチドが、直接検出のための発蛍光団、または間接検出のためのハプテンにより標識されてもよい配列(CTATTTT)nCTからなる標識ドメインを保持する。いずれにおいても、フルオレセイン−シトシンヌクレオチド複合体およびフルオレセイン分子は、OBEA結合を介してシトシンのN4位に結合される(引用によって本明細書に組み入れられているMishra et al.,米国特許第5,684,142号参照)。好適な実施態様では、標識ドメインに結合される発蛍光団の密度は、標識ドメインのみに対して測定された場合、少なくとも7モル%、好ましくは
少なくとも10モル%、もっとも好ましくは少なくとも16モル%である。例えば、プローブ401が考えられる場合(2ドメインプローブ)、それは、Cがまた標識される3’末端CTを含む30塩基の標識ドメインを含有し、モル%は5/30=16.7モル%標識である。プローブ全体では、モル%は8.3である。
【0043】
本発明の幾つかの実施態様では、いくつかの標的遺伝子が、複数の異なる核酸タグで標識された複数の核酸プローブに細胞もしくは組織サンプルを接触させることによって同時に解析される。例えば、複数の核酸プローブが、異なる発光波長をもつ複数の蛍光化合物により標識でき、それによって単一の標的細胞もしくは組織サンプルにおいて1段階で実施される同時多色分析を可能にする。
【0044】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブコレクションは、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためにISH解析において使用することができる。ISH解析は、例えば、In Situ Hybridization:Medical Applications(G.R.Coulton and J.de Belleroche,eds.,Kluwer Academic Publishers,1992);In Situ Hybridization:In Neurobiology;Advances in Methodology(J.H.Eberwine,K.L.Valentino,and J.D.Barchas,eds.,Oxford University Press,1994);またはIn Situ Hybridization:A Practical Approach(D.G.Wilkinson,ed.,Oxford University Press,1992)において記述されるように実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】2ドメインプローブ設計の遺伝子プローブ構造を図解する。これは、上記実施例において記述される遺伝子特異的カクテルにおけるプローブのために使用されるオリゴヌクレオチドの設計である。各プローブは、2つのドメイン:5’標識ドメインおよび3’標的遺伝子の標的遺伝子に特異的なドメインからなる。標識ドメインは、この特異配列(CTATTTT)nCTからなり、この場合、シトシンヌクレオチドは、シトシン−ハプテン複合体であり、この実施例ではハプテンはフルオレセインである。この図は、具体的には、301(配列番号:55)および302(配列番号:56)プローブについての核酸配列を示し、これらの各々は、ヒト反復Alu配列に対応する標的遺伝子の遺伝子特異的ドメインおよびフルオレセインハプテンを有する標識ドメインを保持する。
【図2】標識ドメインを含んでなるプローブ(330プローブ;配列番号:58)を用いるヒト皮膚組織のイン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、これらのISH実施例において使用されたオリゴヌクレオチドに共通する標識ドメインの配列式(CTATTTT)nCTが、それがハイブリダイズしないためにヒト核酸配列とワトソン・クリック塩基対を形成する能力において非特異的で、そして非反応性であることを示している。
【図3】標識ドメインおよびポリd(T)標的遺伝子特異的ドメインを含んでなるプローブ(320プローブ;配列番号:57)を用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。細胞質に局在される検出可能なシグナルの存在は、このプローブがメッセンジャーRNAのポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズできることを示している。
【図4】組織サンプルが、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)場合の、320プローブを用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがメッセンジャーRNAに共通するポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることを示している。
【図5】ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄が室温(A)または37℃(B)で実施された場合の、320プローブを用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。この結果は、より強い発色がより低いストリンジェント条件を示すことによって、発色の強度がハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに関係することを示している。
【図6】320プローブを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。これは、このプローブ設計がまた包埋細胞系ならびに包埋組織を用いて機能することを示している。
【図7】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図8】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図9】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるラット細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、このプローブコレクションがヒト核酸配列に特異的であることを示している。
【図10】Epstein−Barrウイルス(EBV) EBER核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:51から54まで)を用いるEBV陰性ヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図11】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図12】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図13】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明するが、この場合、組織サンプルは、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがヒトEBER1および2核RNAに特異的にハイブリダイズすることを示している。
【図14】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:15)を用いるκ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図15】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:2−4、配列番号:7−12、配列番号:14,15)を用いるリンパ腫組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)のリンパ腫組織はκ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はλ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、κ軽鎖プローブコレクションがκ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【図16】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図17】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒトRPMI 8226細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図18】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織はλ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はκ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、λ軽鎖プローブコレクションがヒトλ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【図19】CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いるサイトメガロウイルス(CMV)ポジティブヒト肺組織のISH解析について得られた結果を説明する。矢印はCMV感染細胞を示す。
【図20】CMV即時型mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されなかったラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図21】CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されたラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織は倍率40Xにおいて示され、そして(B)の組織は倍率20Xにおいて示される。
【0046】
本発明のプローブおよびプローブコレクションの好適な実施態様は、図1−21および実施例1−2を参照することによってもっとも良く理解される。以下に示す実施例は、本発明の特別な実施態様および種々のその使用の具体的説明である。それらは、説明の目的のためにのみ記述され、そして本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
実施例1
プローブコレクションの調製
長さ55〜60塩基の多数のオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブコレクションが次のように設計された。この実施例では、各オリゴヌクレオチドプローブは、2つの別個のドメイン:5’(または標識)ドメインおよび3’(または標的遺伝子に特異的)ドメインを保持した(参照、図1)。
【0048】
この実施態様では、標識ドメインは配列(CTATTTT)nCTからなり、この場合
、シトシンヌクレオチドは、フルオレセイン−シトシンヌクレオチド複合体を表し、そしてフルオレセイン分子は、OBEA結合を介してシトシンのN4位に結合される。
【0049】
標的遺伝子に特異的なドメインは、特定核酸標的遺伝子に対して相補的である25−30塩基配列からなる。オリゴヌクレオチドプローブは、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖可変部(参照、表1;オリゴヌクレオチドプローブ401−416)、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部(オリゴヌクレオチドプローブ501−515)、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)配列(オリゴヌクレオチドプローブ221−241)、ヒトEpstein−Barrウイルス(EBV)EBER(Epstein−Barr初期RNA)配列(オリゴヌクレオチドプローブ100A2,100C2,100A1および100B1),ヒト反復Alu配列(オリゴヌクレオチドプローブ301および302)、およびポリd(T)(オリゴヌクレオチドプローブ320)に対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するよう設計された。
【0050】
実施例2
標識ドメイン設計:Alu反復配列プローブ
Aluヒト反復配列に対するすべて4プローブが使用されて標識ドメイン設計を評価した。プローブ番号301(配列番号:55)、301A(配列番号:116)、301A2/2(配列番号:121)、および301A3/2(配列番号:122)が表1に示される。
【0051】
4つのプローブは、それぞれ、反応液中プローブ1ml当たり濃度100,75,50および25ng/mlにおいて評価された。このハイブリダイゼーション解析は、標準プロトコールを用いてマニュアルで実施された。標的、パラフィン包埋細胞系MBA MD468(Oncor INFORMTMHer−2/neu Control Slides,Cat.No.S8100,Level 1,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)が標的サンプルであり、そして標準キシレン法によってパラフィンを除去することによって処理された。組織は、VentanaのAPKバッファーによる1:2希釈液として、50℃で12分間VentanaのProtease 1にさらされた。ハイブリダイゼーション反応は、2XSSC/TritonX−100の残留100ul容量に対して、100ulプローブとしてのプローブ希釈液(25%ホルムアミド、5%デキストラン硫酸、2XSSC、1%Triton)の添加により達成された。スライドは85℃で5分間加熱され、次いで、37℃で1時間インキュベートされた。標準SSC洗浄が過剰のプローブを除去するために続いた。ハイブリッドはFITCに対する抗体により検出された。マウス抗体は、Ventana Enhanced Alkaline Phosphatase Blue Detection(cat#760−061)を用いて比色法により検出された。特に指摘しなければ、すべての試薬はVentana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZから得られた。結果は明視野顕微鏡を用いて発色検出によって観察された。
【0052】
これらの実験の結果は、シグナル強度がプローブに共役されたフルオレセインハプテンの総数の関数であり、そしてシグナルが特定の標識ドメイン設計に属することであった。プローブ分子当たりのフルオレセイン数が大きいほど、より大きいシグナルが観察された。設計の比較およびプローブへのハプテンの配置は、これがシグナルの強度におけるファクターではないことを示した。5フルオレセインを含有した2つのプローブ(301A3/2(配列番号:122)および301(配列番号:55))両方は等しいシグナルを生じた。これらの2つのプローブは、301A2/2、4フルオレセインを有する分離した標識ドメイン設計を有するプローブ、について見られるよりも大きいシグナルを生じた。プローブ301A2/2は、プローブ301A、5’末端に1つの標識ドメイン設計を有し、そして3フルオレセインを有するプローブ、よりも大きいシグナルを生じた。
【0053】
実施例3
標識ドメイン設計:EBERプローブ
この実験は、フルオレセインハプテン間のより大きい間隔が、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析におけるプローブ検出段階におけるシグナル生成を改善できるか否かを決定するために、2つの標識ドメイン設計および配列を比較した。
【0054】
使用された組織は、シラン+ガラス顕微鏡スライド上に置かれた厚さ4ミクロンの中性バッファーホルマリンパラフィン包埋切片中に固定されたEBV感染ヒト脾臓組織であった。組織切片は、Ventana DISCOVERYTM機器において脱パラフィンされ、続いて温度37℃でVentanaのProtease1により6分間消化された。プローブは、Ventana Medical Systems,Inc.の自動ISH染色システム,Discoveryによって調製された後にスライド上に残された等容量の2XSSC/TritonX−100残留容量に対して適用される100ulとして、濃度50ng/mlにおいてハイブリダイゼーションバッファー希釈液に溶解された。プローブ希釈液は37℃で6分間スライド上で残留容量と混合され、次いで、溶液は85℃に加熱され、そして全10分間そこで維持された。次いで、スライドは温度37℃にされ、そしてその温度で1時間維持された。スライド上のこれらの水性反応のすべては、処理中の水の蒸発損失を防ぐためにLIQUID COVERSLIPTMのフィルム下ですべて実施された。ハイブリダイゼーション後の各スライドは、各洗浄間に6分間インキュベーションしつつ2XSSC/Triton溶液で3回洗浄され、スライド容量は約300ul(+/−10%vol)であった。ハイブリッドはFITCに対する抗体により検出された。マウス抗体は、Ventana Enhanced Alkaline Phosphatase Blue Detection(cat#760−061)を用いて比色法により検出された。
【0055】
この研究のために使用された2つのオリゴヌクレオチドプローブは、プローブ100A1(配列番号:53)および1002A32(配列番号:120)である。これらのプローブの間の2つの差異は標識ドメイン配列と構造であった。配列式(CTATTTT)4CT(配列番号:58)を有するプローブ100A1の標識ドメインは、遺伝子標的ドメインに対して5’に存在し、OBEAリンカーを介してシトシン残基に結合された5フルオレセインを含有していた。オリゴプローブ1002A32の標識ドメインは(配列番号:125)に類似していた。異なる配列以外に、主要な差異は、シトシン間隔が7塩基離れて比較的近くに存在するオリゴ100A1に較べて、フルオレセイン標識されたシトシンが、10塩基離れて間隔を置かれているということである。Hスコア解析によって推定されるこの比較の結果は、これらのオリゴヌクレオチドがスライド上で生成されたシグナル量に関して同等であることであった。データは、100A2については、3視野のすべてにおいて解析された368細胞ではHスコアは106であり、そしてプローブ1002A32については、3視野において解析された345細胞ではHスコアは109であることであった。Hスコアは、スライド上の総標的特異的シグナルの相対的比較を得るために、組織切片におけるスコアバックグラウンド対シグナル比に因数分解する、顕微鏡を用いて実施される分光写真解析である。(参照、引用文献Giroud,F.Perrin C,and Simony Lafontaine,J.;Quantitative Immunocytochemistry and Immunohistochemistry. Third Conference of the European Society for Analytical Cellular Pathology,1994;and AutoCyte Quic Immuno User’s Manual,1998,document number PA−029,Co AutoCyte Inc. Burlingto NC2721)。ヒストグラムおよびスコアシートは、各オリゴが比色シグナルを生じる上で等しく有効であったことを示している。
このことは、標識ドメインの位置が遺伝子標的配列に対して3プライムであっても5プライムであってもよいか、または遺伝子標的配列が2つの標識ドメイン間に位置していてもよいことを示している。
【0056】
実施例4
イン・サイチューハイブリダイゼーション
実施例1において調製されたプローブコレクションは、最初に、20%デキストラン硫酸(wt/vol)、50%ホルムアミド(vol/vol)、2XSSC、10mMtris−HCl、5mMEDTAおよび0.05%Brij−35からなる溶液において最終pH7.3において希釈された。次いで、プローブコレクションは2XSSCおよび0.05%TritonX−100からなる溶液の等容量と混合された。
【0057】
ISH解析のためのサンプルは、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された細胞もしくは組織サンプルを4μmの切片に切断し、そして切片をガラススライド上に置くことによって調製された。続くサンプルの処理およびISHは、自動装置、例えば、両方とも引用によって本明細書に組み入れられている同時所有で同時係属中の米国特許出願第60/076,198号および同第09/259,240号に記述されているDISCOVERYTM Automated ISH/IHC Stainer(Ventana Medical Systems,Inc.Tucson,AZ)において実施された。サンプルからパラフィンを除去するために、スライドは水溶液に浸漬され、約20分間加熱され、次いで洗浄された。自動脱パラフィン操作は、両方とも引用によって本明細書に組み入れられている米国特許出願第60/099、018号および同第09/259,240号に一層完全に記述されている。次いで、サンプルはプロテアーゼで処理され、そしてスライドは、85℃(RNA標的遺伝子に対するハイブリダイゼーションのため)もしくは90−95℃(DNA標的遺伝子に対するハイブリダイゼーションのため)に4〜10分間加熱された。
【0058】
ハイブリダイゼーション反応液は、典型的には、10%デキストラン硫酸(wt/vol)、25%ホルムアミド(vol/vol)、2XSSC、5mMtris、2.5mMEDTA,0.025%Brij−35,TritonX−100、および各個々のプローブ分子25〜125ng/mlからなるハイブリダイゼーションバッファーにおいて行われた。ISH反応は37℃〜54℃において実施された。実施例1において記述されるプローブコレクションを用いるISHでは、ハイブリダイゼーション反応は場合によっては47℃で1時間実施された(ハイブリダイゼーション反応が場合によっては37℃で1時間実施されたポリd(T)プローブを除く)。
【0059】
サンプル中の特定の標的遺伝子に対するフルオレセイン標識プローブ分子のハイブリダイゼーションは、一連の結合性タンパク質を用いることによって検出された、すなわち二次抗体検出。しかしながら、結合されたプローブを可視化できるdetect検出法を使用することも同じく可能である。二次検出では、最初に、フルオレセイン標識されたプローブ分子に対向された抗フルオレセインマウスモノクローナル抗体がサンプルに添加された。次に、マウス抗体に対向したビオチン標識ポリクローナルヤギ抗体がサンプルに添加された。最後に、ハイブリダイゼーション反応物は、リン酸5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)基質を用いて比色法により検出された。この技術は、「二次抗体検出」と呼ばれ、当業者には日常的に行われる。一次および二次抗体は、Ventana Medical Systems,Inc.Tucson,AZを含む多くの販売元から得ることができ、これらはVentana自動染色システム(ESR,NexESR,DISCOVERYTM,およびBENCHMARKTM)において使用するために最適化されている。
【0060】
図2−21は、図1において図解される構造モチーフを有する本明細書で開示され、特許請求されるプローブまたはそのようなプローブからなるプローブコレクションを使用して、種々の細胞系もしくは組織サンプルのイン・サイチューハイブリダイゼーション解析について得られた結果を説明している。
【0061】
【表1−1】
【0062】
【表1−2】
【0063】
【表1−3】
【0064】
【表2】
【0065】
前記の開示は、ある特定の本発明の実施態様を強調しており、そしてあらゆるその改変もしくは代替等価物は、添付される請求項において記述される本発明の精神および範囲内にあることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸遺伝子標的を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブのコレクションに関する。特に、本発明はオリゴプローブのコレクションに関する。
【背景技術】
【0002】
イン・サイチュー解析はイン・サイチューのハイブリダイゼーションおよび免疫組織化学を含む。イン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)は、細胞もしくは組織サンプル中の標的とする核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、標的遺伝子配列もしくは転写物に対してアンチセンスである標識したDNAもしくはRNAプローブ分子を用いる。ISHは、発生生物学、細胞生物学および分子生物学を含む、多数の生物医療分野において有用な道具であることが分かっている。ISHは、例えば、遺伝障害を診断したり、遺伝子をマッピングしたり、遺伝子発現を研究したり、そして標的遺伝子発現の部位を局在化するために使用されてきた。
【0003】
典型的には、ISHは、ガラススライド上に固定化した細胞もしくは組織サンプルを、細胞もしくは組織サンプル中の特定の標的遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができる標識した核酸プローブに接触させることによって実施される(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。細胞もしくは組織サンプル中の核酸への標識したプローブ分子のハイブリダイゼーションは、次に、例えば、放射能に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法、またはBrdUのようなハプテンに結合している蛍光標識したタンパク質、プローブ中に組み入れられたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したヌクレオチドの結合に基づく間接検出法を用いて検出することができる。ハプテンに基づく方法は、さらに、結合性タンパク質−酵素複合体、例えば抗体−酵素複合体によって結合されるそれらの分子および比色法に基づく検出化学を含めるように拡張された。さらに、いくつかの標的遺伝子が、複数の異なる核酸タグで標識された複数の核酸プローブに細胞もしくは組織サンプルを接触させることによって同時に解析することができる。例えば、複数の核酸プローブが、異なる発光波長をもつ複数の蛍光化合物により標識することができ、それによって単一の標的細胞もしくは組織サンプルにおいて1段階で実施される同時多重発色分析を可能にする。
【0004】
オリゴヌクレオチドプローブ中への標識したヌクレオチドの組み入れに伴う重要な問題は、通常、ヌクレオチドに結合している複合部分が、ワトソン・クリック塩基対の形成を妨害し、その結果その標的へのプローブのハイブリダイゼーションにネガティブに影響することである。このことは、非置換シトシン(1級アミン)と形成される自然のG−C結合に較べて、立体障害および2級アミンの低い反応性状態への予期されるシフト(N4標識したシトシンに見られるような)のために、N4−置換されたシトシンヌクレオチドを介して結合された標識の使用に関して見られた。小さいヌクレオチド(25〜50塩基)における何らかの小変化またはG−C結合の妨害は、意図した標的配列とハイブリダイズするこれらのオリゴの能力を低下させることがある。
【0005】
オリゴヌクレオチド中に標識したヌクレオチドを組み入れるために適当なプローブ設計を開発する技術上の必要性が残っている。本発明者らは、数種の人工配列が、プローブ標識のための効果的に機能する代替物であり、そしてまた細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、単独でも、また複合したオリゴヌクレオチドプローブ混合物においても働くことを例証する。プローブコレクションのためのそのよ
うな遺伝子配列の開発および標識戦略は、医療、遺伝子および分子生物学技術における広い応用性を有する。
【0006】
標識化学によるこの妨害およびハイブリダイゼーションストリンジェンシーおよび動力学が、本明細書において、少なくとも2つの別個の機能性ドメイン、すなわち遺伝子特異的であり、塩基対形成に必要である1つのドメインもしくは配列、およびスペーシングヌクレオチドと標識したヌクレオチドからなる人工的な非特異的配列(サンプルのゲノムに関して)である第2ドメインを有するオリゴを設計することによって解決される。これらの要素は、これらの標識ヌクレオチドがタンパク質(免疫グロブリンもしくはアビジン)を結合するためにハプテンとして一層作用しやすく、したがって遺伝子に特異的なドメインにおいてワトソン・クリック塩基対を妨害しないように置かれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】In Situ Hybridization:Medical Applications(G.R.Coulton and J.de Belleroche,eds.,Kluwer Academic Publishers,1992)
【非特許文献2】In Situ Hybridization:In Neurobiology;Advances in Methodology(J.H.Eberwine,K.L.Valentino,and J.D.Barchas,eds.,Oxford University Press,1994)
【非特許文献3】In Situ Hybridization:A Practical Approach(D.G.Wilkinson,ed.,Oxford University Press,1992)
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するために、オリゴヌクレオチドプローブ中に標識を組み入れるための新規戦略および標識されたオリゴヌクレオチドプローブのコレクションを提供する。特に、本発明は、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析における使用のために、オリゴヌクレオチドプローブのコレクション中に組み入れることができるそのような配列の反復ポリマーを作成するための配列式を用いる非遺伝子特異的配列に関する。さらに、配列式に基づく標識された合成オリゴヌクレオチドポリマーを使用することは、結合性タンパク質、すなわち免疫グロブリンに複合された場合には、免疫組織化学的解析において使用されるそのようなタンパク質を標識するための非常に効果的な、そして制御される方法である。本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の特定核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションもしくは「カクテル」を提供する。カクテルは、次のものを検出するために有用である:κ遺伝子(配列番号:1から16まで);λ遺伝子(配列番号:17から19まで);CMV(サイトメガロウイルス)遺伝子(配列番号:30から50まで);EBER(Epstein−Barr初期RNA)遺伝子(配列番号:51から54まで);Alu(配列番号:55から56まで);ポリA(配列番号:57);および検出テール(配列番号:58)。
【0009】
本発明は、配列(CTATTTT)nおよびその相補体(AAAATAG)n[式中、「n」は少なくとも1である]を含んでなるオリゴヌクレオチド標識ドメインに向けられる。
【0010】
また、本発明は、少なくとも2つの別個の機能性ドメイン、請求項2の標識ドメインを含んでなる第1のドメイン、および遺伝子に特異的な標的配列を含んでなる第2のドメイ
ンを有するオリゴヌクレオチドプローブに向けられる。
【0011】
また、本発明は、プローブが配列番号:1から16までより本質的になる群から選ばれるκ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核(hetereonuclear)RNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0012】
また、本発明は、プローブが配列番号:17から29までより本質的になる群から選ばれるλ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核RNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0013】
また、本発明は、プローブが配列番号:30から50までより本質的になる群から選ばれるサイトメガロウイルス(CMV)即時型RNAおよび/または対応するmRNAを検出するためのプローブセットに向けられる。
【0014】
また、本発明は、プローブが配列番号:51から54までより本質的になる群から選ばれるEpstein−Barrウイルス(EBV)初期RNA、RNA1およびRNA2、(EBER)を検出するためのプローブセットに向けられる。
【0015】
また、本発明は、プローブが配列番号:55および56より本質的になる群から選ばれるヒトAlu反復サテライトゲノムDNA配列を検出するためのプローブセットに向けられる。
【0016】
本発明の特定の好適な実施態様は、以下のある好適な実施態様および請求項のより詳細な記述から明らかになるであろう。
【0017】
図1は、2ドメインプローブ設計の遺伝子プローブ構造を図解している。これは、次の実施例において記述される遺伝子特異的カクテルにおけるプローブのために使用されるオリゴヌクレオチドの設計である。各プローブは、2つのドメイン:5’標識ドメインおよび3’標的遺伝子の標的遺伝子に特異的なドメインからなる。標識ドメインは、この特異配列(CTATTTT)nからなり、この場合、各シトシンは、発蛍光団もしくはシトシン−ハプテン複合体により標識されてもよく、この実施態様ではハプテンはフルオレセインである。この図は、具体的には、301(配列番号:55)および302(配列番号:56)プローブについての核酸配列を示し、これらの各々は、ヒト反復Alu配列に対応する標的遺伝子の遺伝子特異的ドメインおよびフルオレセインハプテンを有する標識ドメインを保持する。
【0018】
図2は、標識ドメインを含んでなるプローブ(330プローブ;配列番号:58)を用いるヒト皮膚組織のイン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、これらのISH実施例において使用されたオリゴヌクレオチドに共通する標識ドメインの配列式(CTATTTT)nCTが、それがハイブリダイズしないためにヒト核酸配列とワトソン・クリック塩基対を形成する能力において非特異的で、そして非反応性であることを示している。
【0019】
図3は、標識ドメインおよびポリd(T)標的遺伝子特異的ドメインを含んでなるプローブ(320プローブ;配列番号:57)を用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。細胞質に局在される検出可能なシグナルの存在は、このプローブがメッセンジャーRNAのポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることができることを示している。
【0020】
図4A−4Bは、組織サンプルが、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボ
ヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)場合の、320プローブを用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがメッセンジャーRNAに共通するポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることを示している。
【0021】
図5A−5Bは、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄が室温(A)または37℃(B)で実施された場合の、320プローブを用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。この結果は、より強い発色がより低いストリンジェント条件を示すことによって、発色の強度がハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに関係することを示している。
【0022】
図6は、320プローブを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。これは、このプローブ設計がまた包埋細胞系ならびに包埋組織を用いて機能することを示している。
【0023】
図7は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0024】
図8は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0025】
図9は、301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるラット細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、このプローブコレクションがヒト核酸配列に特異的であることを示している。
【0026】
図10は、エプスタイン・バーウイルス(EBV) EBER核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:51から54まで)を用いるEBV陰性ヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0027】
図11は、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0028】
図12は、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0029】
図13A−13Bは、EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明するが、この場合、組織サンプルは、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがヒトEBER1および2核RNAに特異的にハイブリダイズすることを示している。
【0030】
図14は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:15)を用いるκ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0031】
図15は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:2−4、配列番号:7−12、配列番号:14,15)を用いるリンパ腫組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)のリンパ腫組織はκ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はλ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、κ軽鎖プローブコレクションがκ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【0032】
図16は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【0033】
図17は、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒトRPMI 8226細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0034】
図18A−18Bは、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織はλ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はκ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、λ軽鎖プローブコレクションがヒトλ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【0035】
図19は、CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いるサイトメガロウイルス(CMV)ポジティブヒト肺組織のISH解析について得られた結果を説明する(CMV感染細胞)。
図20は、CMV即時型mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されなかったラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【0036】
図21A−21Bは、CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されたラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織は倍率40Xにおいて示され、そして(B)の組織は倍率20Xにおいて示される。
【0037】
<好適な実施態様の詳細な記述>
本発明は、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためのオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブコレクションを提供する。特に、本発明は、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析における使用のためのオリゴヌクレオチドプローブのコレクションに関する。
【0038】
より具体的には、本発明は、オリゴヌクレオチドプローブまたはタンパク質に検出可能な部分(標識)を結合するためのヌクレオチドポリマーまたは標識ドメインについての特定の配列式の使用に関する。これらの配列もしくはその誘導体の特定の利用は、ハイブリ
ダイゼーション条件の標準ストリンジェンシー下では検出可能なレベルにおいてヒトDNAもしくはRNAにハイブリダイズしないという不活性または非反応性の特性である。これらの標識ドメインまたはポリマーは、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析において細胞もしくは組織サンプル中の遺伝子に特異的な配列を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ中への組み入れに有用な遺伝子配列であることが例証された。さらに、この不活性な配列のセットは、免疫組織化学的解析においてハプテンおよび抗原を検出するために、免疫グロブリンもしくは他のタンパク質に標識を結合させるために有用である。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「プローブ」もしくは「オリゴヌクレオチドプローブ」は、相補的核酸標的遺伝子を検出するために使用される核酸分子を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸(または相補体)配列が結合して二本鎖核酸分子を形成する過程を指す。例えば、放射性もしくは蛍光タグにより標的核酸分子を標識することによって、プローブと標的遺伝子間の相互作用が検出できる。
【0041】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびコレクションのオリゴヌクレオチドプローブは慣用の方法を用いて合成される。参照、例えば、Methods in Molecular Biology,Vol20:Protocols for Oligonucleotides and Analogs 165−89(S.Agrawal,ed.,1993);Oligonucleotides and Analogues:A Pratical Approach 87−108(F.Eckstein,ed.,1991)。
【0042】
本発明の好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、2つの別個のドメイン:5’(または標識)ドメインおよび3’(または遺伝子に特異的な標的)ドメインを保持する(参照、図1A)。本発明のより好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、配列(CTATTTT)nおよび/または配列(CTATTTT)nCTからなる標識ドメインを保持する。また、他の実施態様が本明細書において例証され、これは2つの末端の標識ドメインおよび中央の遺伝子特異的標的ドメインを有する3重ドメイン態様も含む。具体的には、配列番号:125−126がこの標識スキームを表している。なお、標識ドメインのさらなる好適な実施態様は、TC(TTTTATC)nまたはその相補体である。この配列は(CTATTTT)nCT標識ドメインと同じくらい独特であると予想される。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、特定の細胞もしくは組織において該プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションが検出できるように標識される。イン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析における使用のために許容される標識は当業者には既知である。そのような標識は、例えば、放射能に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法、蛍光に基づく直接検出法と共役されたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したプローブ、または抗体−酵素に基づく検出法と共役されたジゴキシゲニン標識もしくはビオチン標識したプローブを用いて、プローブと標的遺伝子間の相互作用が検出されるのを可能にする。本発明の好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブはフルオレセインにより標識される。本発明のより好適な実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、シトシンヌクレオチドが、直接検出のための発蛍光団、または間接検出のためのハプテンにより標識されてもよい配列(CTATTTT)nCTからなる標識ドメインを保持する。いずれにおいても、フルオレセイン−シトシンヌクレオチド複合体およびフルオレセイン分子は、OBEA結合を介してシトシンのN4位に結合される(引用によって本明細書に組み入れられているMishra et al.,米国特許第5,684,142号参照)。好適な実施態様では、標識ドメインに結合される発蛍光団の密度は、標識ドメインのみに対して測定された場合、少なくとも7モル%、好ましくは
少なくとも10モル%、もっとも好ましくは少なくとも16モル%である。例えば、プローブ401が考えられる場合(2ドメインプローブ)、それは、Cがまた標識される3’末端CTを含む30塩基の標識ドメインを含有し、モル%は5/30=16.7モル%標識である。プローブ全体では、モル%は8.3である。
【0043】
本発明の幾つかの実施態様では、いくつかの標的遺伝子が、複数の異なる核酸タグで標識された複数の核酸プローブに細胞もしくは組織サンプルを接触させることによって同時に解析される。例えば、複数の核酸プローブが、異なる発光波長をもつ複数の蛍光化合物により標識でき、それによって単一の標的細胞もしくは組織サンプルにおいて1段階で実施される同時多色分析を可能にする。
【0044】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプローブコレクションは、細胞もしくは組織サンプル中の核酸標的遺伝子を検出または局在化するためにISH解析において使用することができる。ISH解析は、例えば、In Situ Hybridization:Medical Applications(G.R.Coulton and J.de Belleroche,eds.,Kluwer Academic Publishers,1992);In Situ Hybridization:In Neurobiology;Advances in Methodology(J.H.Eberwine,K.L.Valentino,and J.D.Barchas,eds.,Oxford University Press,1994);またはIn Situ Hybridization:A Practical Approach(D.G.Wilkinson,ed.,Oxford University Press,1992)において記述されるように実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】2ドメインプローブ設計の遺伝子プローブ構造を図解する。これは、上記実施例において記述される遺伝子特異的カクテルにおけるプローブのために使用されるオリゴヌクレオチドの設計である。各プローブは、2つのドメイン:5’標識ドメインおよび3’標的遺伝子の標的遺伝子に特異的なドメインからなる。標識ドメインは、この特異配列(CTATTTT)nCTからなり、この場合、シトシンヌクレオチドは、シトシン−ハプテン複合体であり、この実施例ではハプテンはフルオレセインである。この図は、具体的には、301(配列番号:55)および302(配列番号:56)プローブについての核酸配列を示し、これらの各々は、ヒト反復Alu配列に対応する標的遺伝子の遺伝子特異的ドメインおよびフルオレセインハプテンを有する標識ドメインを保持する。
【図2】標識ドメインを含んでなるプローブ(330プローブ;配列番号:58)を用いるヒト皮膚組織のイン・サイチューハイブリダイゼーション(ISH)解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、これらのISH実施例において使用されたオリゴヌクレオチドに共通する標識ドメインの配列式(CTATTTT)nCTが、それがハイブリダイズしないためにヒト核酸配列とワトソン・クリック塩基対を形成する能力において非特異的で、そして非反応性であることを示している。
【図3】標識ドメインおよびポリd(T)標的遺伝子特異的ドメインを含んでなるプローブ(320プローブ;配列番号:57)を用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。細胞質に局在される検出可能なシグナルの存在は、このプローブがメッセンジャーRNAのポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズできることを示している。
【図4】組織サンプルが、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)場合の、320プローブを用いるヒト皮膚組織のISH解析について得られた結果を説明する。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがメッセンジャーRNAに共通するポリアデニル化領域に特異的にハイブリダイズすることを示している。
【図5】ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄が室温(A)または37℃(B)で実施された場合の、320プローブを用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。この結果は、より強い発色がより低いストリンジェント条件を示すことによって、発色の強度がハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに関係することを示している。
【図6】320プローブを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。これは、このプローブ設計がまた包埋細胞系ならびに包埋組織を用いて機能することを示している。
【図7】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトRaji細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図8】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図9】301および302プローブからなるプローブコレクションを用いるラット細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。検出可能なシグナルの不在は、このプローブコレクションがヒト核酸配列に特異的であることを示している。
【図10】Epstein−Barrウイルス(EBV) EBER核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:51から54まで)を用いるEBV陰性ヒトHT細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図11】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図12】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図13】EBV EBER1および2核RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:51から54まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明するが、この場合、組織サンプルは、イン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理されなかった(A)か、またはイン・サイチューハイブリダイゼーション前にリボヌクレアーゼAにより処理された(B)。(B)における検出可能なシグナルにおける減少は、このプローブがヒトEBER1および2核RNAに特異的にハイブリダイズすることを示している。
【図14】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:15)を用いるκ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図15】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:2−4、配列番号:7−12、配列番号:14,15)を用いるリンパ腫組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)のリンパ腫組織はκ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はλ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、κ軽鎖プローブコレクションがκ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【図16】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブ(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒト扁桃組織のISH解析について得られた結果を説明する。
【図17】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるλ軽鎖ポジティブヒトRPMI 8226細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図18】ヒト免疫グロブリンλ軽鎖mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:19から29まで)を用いるヒト脾臓組織のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織はλ軽鎖を過発現し、そして(B)の組織はκ軽鎖を過発現する。(B)における検出可能なシグナルの不在は、λ軽鎖プローブコレクションがヒトλ軽鎖mRNAに特異的であることを示している。
【図19】CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いるサイトメガロウイルス(CMV)ポジティブヒト肺組織のISH解析について得られた結果を説明する。矢印はCMV感染細胞を示す。
【図20】CMV即時型mRNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されなかったラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。
【図21】CMV即時型RNAに対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するプローブからなるプローブコレクション(配列番号:30−32,配列番号:34−35,配列番号:38,配列番号:50)を用いる、CMV即時型RNAの発現がシクロヘキサミドによって誘発されたラット9G細胞系のISH解析について得られた結果を説明する。(A)の組織は倍率40Xにおいて示され、そして(B)の組織は倍率20Xにおいて示される。
【0046】
本発明のプローブおよびプローブコレクションの好適な実施態様は、図1−21および実施例1−2を参照することによってもっとも良く理解される。以下に示す実施例は、本発明の特別な実施態様および種々のその使用の具体的説明である。それらは、説明の目的のためにのみ記述され、そして本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
実施例1
プローブコレクションの調製
長さ55〜60塩基の多数のオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブコレクションが次のように設計された。この実施例では、各オリゴヌクレオチドプローブは、2つの別個のドメイン:5’(または標識)ドメインおよび3’(または標的遺伝子に特異的)ドメインを保持した(参照、図1)。
【0048】
この実施態様では、標識ドメインは配列(CTATTTT)nCTからなり、この場合
、シトシンヌクレオチドは、フルオレセイン−シトシンヌクレオチド複合体を表し、そしてフルオレセイン分子は、OBEA結合を介してシトシンのN4位に結合される。
【0049】
標的遺伝子に特異的なドメインは、特定核酸標的遺伝子に対して相補的である25−30塩基配列からなる。オリゴヌクレオチドプローブは、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖可変部(参照、表1;オリゴヌクレオチドプローブ401−416)、ヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変部(オリゴヌクレオチドプローブ501−515)、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)配列(オリゴヌクレオチドプローブ221−241)、ヒトEpstein−Barrウイルス(EBV)EBER(Epstein−Barr初期RNA)配列(オリゴヌクレオチドプローブ100A2,100C2,100A1および100B1),ヒト反復Alu配列(オリゴヌクレオチドプローブ301および302)、およびポリd(T)(オリゴヌクレオチドプローブ320)に対応する標的遺伝子特異的ドメインを保持するよう設計された。
【0050】
実施例2
標識ドメイン設計:Alu反復配列プローブ
Aluヒト反復配列に対するすべて4プローブが使用されて標識ドメイン設計を評価した。プローブ番号301(配列番号:55)、301A(配列番号:116)、301A2/2(配列番号:121)、および301A3/2(配列番号:122)が表1に示される。
【0051】
4つのプローブは、それぞれ、反応液中プローブ1ml当たり濃度100,75,50および25ng/mlにおいて評価された。このハイブリダイゼーション解析は、標準プロトコールを用いてマニュアルで実施された。標的、パラフィン包埋細胞系MBA MD468(Oncor INFORMTMHer−2/neu Control Slides,Cat.No.S8100,Level 1,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)が標的サンプルであり、そして標準キシレン法によってパラフィンを除去することによって処理された。組織は、VentanaのAPKバッファーによる1:2希釈液として、50℃で12分間VentanaのProtease 1にさらされた。ハイブリダイゼーション反応は、2XSSC/TritonX−100の残留100ul容量に対して、100ulプローブとしてのプローブ希釈液(25%ホルムアミド、5%デキストラン硫酸、2XSSC、1%Triton)の添加により達成された。スライドは85℃で5分間加熱され、次いで、37℃で1時間インキュベートされた。標準SSC洗浄が過剰のプローブを除去するために続いた。ハイブリッドはFITCに対する抗体により検出された。マウス抗体は、Ventana Enhanced Alkaline Phosphatase Blue Detection(cat#760−061)を用いて比色法により検出された。特に指摘しなければ、すべての試薬はVentana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZから得られた。結果は明視野顕微鏡を用いて発色検出によって観察された。
【0052】
これらの実験の結果は、シグナル強度がプローブに共役されたフルオレセインハプテンの総数の関数であり、そしてシグナルが特定の標識ドメイン設計に属することであった。プローブ分子当たりのフルオレセイン数が大きいほど、より大きいシグナルが観察された。設計の比較およびプローブへのハプテンの配置は、これがシグナルの強度におけるファクターではないことを示した。5フルオレセインを含有した2つのプローブ(301A3/2(配列番号:122)および301(配列番号:55))両方は等しいシグナルを生じた。これらの2つのプローブは、301A2/2、4フルオレセインを有する分離した標識ドメイン設計を有するプローブ、について見られるよりも大きいシグナルを生じた。プローブ301A2/2は、プローブ301A、5’末端に1つの標識ドメイン設計を有し、そして3フルオレセインを有するプローブ、よりも大きいシグナルを生じた。
【0053】
実施例3
標識ドメイン設計:EBERプローブ
この実験は、フルオレセインハプテン間のより大きい間隔が、イン・サイチューハイブリダイゼーション解析におけるプローブ検出段階におけるシグナル生成を改善できるか否かを決定するために、2つの標識ドメイン設計および配列を比較した。
【0054】
使用された組織は、シラン+ガラス顕微鏡スライド上に置かれた厚さ4ミクロンの中性バッファーホルマリンパラフィン包埋切片中に固定されたEBV感染ヒト脾臓組織であった。組織切片は、Ventana DISCOVERYTM機器において脱パラフィンされ、続いて温度37℃でVentanaのProtease1により6分間消化された。プローブは、Ventana Medical Systems,Inc.の自動ISH染色システム,Discoveryによって調製された後にスライド上に残された等容量の2XSSC/TritonX−100残留容量に対して適用される100ulとして、濃度50ng/mlにおいてハイブリダイゼーションバッファー希釈液に溶解された。プローブ希釈液は37℃で6分間スライド上で残留容量と混合され、次いで、溶液は85℃に加熱され、そして全10分間そこで維持された。次いで、スライドは温度37℃にされ、そしてその温度で1時間維持された。スライド上のこれらの水性反応のすべては、処理中の水の蒸発損失を防ぐためにLIQUID COVERSLIPTMのフィルム下ですべて実施された。ハイブリダイゼーション後の各スライドは、各洗浄間に6分間インキュベーションしつつ2XSSC/Triton溶液で3回洗浄され、スライド容量は約300ul(+/−10%vol)であった。ハイブリッドはFITCに対する抗体により検出された。マウス抗体は、Ventana Enhanced Alkaline Phosphatase Blue Detection(cat#760−061)を用いて比色法により検出された。
【0055】
この研究のために使用された2つのオリゴヌクレオチドプローブは、プローブ100A1(配列番号:53)および1002A32(配列番号:120)である。これらのプローブの間の2つの差異は標識ドメイン配列と構造であった。配列式(CTATTTT)4CT(配列番号:58)を有するプローブ100A1の標識ドメインは、遺伝子標的ドメインに対して5’に存在し、OBEAリンカーを介してシトシン残基に結合された5フルオレセインを含有していた。オリゴプローブ1002A32の標識ドメインは(配列番号:125)に類似していた。異なる配列以外に、主要な差異は、シトシン間隔が7塩基離れて比較的近くに存在するオリゴ100A1に較べて、フルオレセイン標識されたシトシンが、10塩基離れて間隔を置かれているということである。Hスコア解析によって推定されるこの比較の結果は、これらのオリゴヌクレオチドがスライド上で生成されたシグナル量に関して同等であることであった。データは、100A2については、3視野のすべてにおいて解析された368細胞ではHスコアは106であり、そしてプローブ1002A32については、3視野において解析された345細胞ではHスコアは109であることであった。Hスコアは、スライド上の総標的特異的シグナルの相対的比較を得るために、組織切片におけるスコアバックグラウンド対シグナル比に因数分解する、顕微鏡を用いて実施される分光写真解析である。(参照、引用文献Giroud,F.Perrin C,and Simony Lafontaine,J.;Quantitative Immunocytochemistry and Immunohistochemistry. Third Conference of the European Society for Analytical Cellular Pathology,1994;and AutoCyte Quic Immuno User’s Manual,1998,document number PA−029,Co AutoCyte Inc. Burlingto NC2721)。ヒストグラムおよびスコアシートは、各オリゴが比色シグナルを生じる上で等しく有効であったことを示している。
このことは、標識ドメインの位置が遺伝子標的配列に対して3プライムであっても5プライムであってもよいか、または遺伝子標的配列が2つの標識ドメイン間に位置していてもよいことを示している。
【0056】
実施例4
イン・サイチューハイブリダイゼーション
実施例1において調製されたプローブコレクションは、最初に、20%デキストラン硫酸(wt/vol)、50%ホルムアミド(vol/vol)、2XSSC、10mMtris−HCl、5mMEDTAおよび0.05%Brij−35からなる溶液において最終pH7.3において希釈された。次いで、プローブコレクションは2XSSCおよび0.05%TritonX−100からなる溶液の等容量と混合された。
【0057】
ISH解析のためのサンプルは、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された細胞もしくは組織サンプルを4μmの切片に切断し、そして切片をガラススライド上に置くことによって調製された。続くサンプルの処理およびISHは、自動装置、例えば、両方とも引用によって本明細書に組み入れられている同時所有で同時係属中の米国特許出願第60/076,198号および同第09/259,240号に記述されているDISCOVERYTM Automated ISH/IHC Stainer(Ventana Medical Systems,Inc.Tucson,AZ)において実施された。サンプルからパラフィンを除去するために、スライドは水溶液に浸漬され、約20分間加熱され、次いで洗浄された。自動脱パラフィン操作は、両方とも引用によって本明細書に組み入れられている米国特許出願第60/099、018号および同第09/259,240号に一層完全に記述されている。次いで、サンプルはプロテアーゼで処理され、そしてスライドは、85℃(RNA標的遺伝子に対するハイブリダイゼーションのため)もしくは90−95℃(DNA標的遺伝子に対するハイブリダイゼーションのため)に4〜10分間加熱された。
【0058】
ハイブリダイゼーション反応液は、典型的には、10%デキストラン硫酸(wt/vol)、25%ホルムアミド(vol/vol)、2XSSC、5mMtris、2.5mMEDTA,0.025%Brij−35,TritonX−100、および各個々のプローブ分子25〜125ng/mlからなるハイブリダイゼーションバッファーにおいて行われた。ISH反応は37℃〜54℃において実施された。実施例1において記述されるプローブコレクションを用いるISHでは、ハイブリダイゼーション反応は場合によっては47℃で1時間実施された(ハイブリダイゼーション反応が場合によっては37℃で1時間実施されたポリd(T)プローブを除く)。
【0059】
サンプル中の特定の標的遺伝子に対するフルオレセイン標識プローブ分子のハイブリダイゼーションは、一連の結合性タンパク質を用いることによって検出された、すなわち二次抗体検出。しかしながら、結合されたプローブを可視化できるdetect検出法を使用することも同じく可能である。二次検出では、最初に、フルオレセイン標識されたプローブ分子に対向された抗フルオレセインマウスモノクローナル抗体がサンプルに添加された。次に、マウス抗体に対向したビオチン標識ポリクローナルヤギ抗体がサンプルに添加された。最後に、ハイブリダイゼーション反応物は、リン酸5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)基質を用いて比色法により検出された。この技術は、「二次抗体検出」と呼ばれ、当業者には日常的に行われる。一次および二次抗体は、Ventana Medical Systems,Inc.Tucson,AZを含む多くの販売元から得ることができ、これらはVentana自動染色システム(ESR,NexESR,DISCOVERYTM,およびBENCHMARKTM)において使用するために最適化されている。
【0060】
図2−21は、図1において図解される構造モチーフを有する本明細書で開示され、特許請求されるプローブまたはそのようなプローブからなるプローブコレクションを使用して、種々の細胞系もしくは組織サンプルのイン・サイチューハイブリダイゼーション解析について得られた結果を説明している。
【0061】
【表1−1】
【0062】
【表1−2】
【0063】
【表1−3】
【0064】
【表2】
【0065】
前記の開示は、ある特定の本発明の実施態様を強調しており、そしてあらゆるその改変もしくは代替等価物は、添付される請求項において記述される本発明の精神および範囲内にあることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
κ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核(hetereonuclear)RNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:1から16までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項2】
λ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核RNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:17から19までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項3】
サイトメガロウイルス(CMV)即時型RNAおよび/または対応するmRNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:3−30から50までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項4】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)の初期RNAs、RNA1およびRNA2、(EBER)を検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:51から54までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項5】
ヒトAlu反復サテライトゲノムDNA配列を検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:55および56より本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項6】
プローブが配列番号:59から74まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項7】
プローブが配列番号:75から87まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項8】
プローブが配列番号:88から108まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項9】
プローブが配列番号:109から112まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項10】
プローブが配列番号:113から114まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項11】
配列番号:58の配列からなる標識ドメインを有する第1のドメイン及び遺伝子特異的標的配列を有する標的ドメインを含む第2のドメインを含んでなる合成オリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項1】
κ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核(hetereonuclear)RNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:1から16までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項2】
λ免疫グロブリン軽鎖mRNAまたは対応する異核RNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:17から19までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項3】
サイトメガロウイルス(CMV)即時型RNAおよび/または対応するmRNAを検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:3−30から50までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項4】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)の初期RNAs、RNA1およびRNA2、(EBER)を検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:51から54までより本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項5】
ヒトAlu反復サテライトゲノムDNA配列を検出するためのプローブセットであって、プローブが配列番号:55および56より本質的になる群から選ばれることを特徴とする、プローブセット。
【請求項6】
プローブが配列番号:59から74まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項7】
プローブが配列番号:75から87まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項8】
プローブが配列番号:88から108まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項9】
プローブが配列番号:109から112まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項10】
プローブが配列番号:113から114まで、とそれらの相補体より本質的になる群から選ばれるDNAプローブセット。
【請求項11】
配列番号:58の配列からなる標識ドメインを有する第1のドメイン及び遺伝子特異的標的配列を有する標的ドメインを含む第2のドメインを含んでなる合成オリゴヌクレオチドプローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−65660(P2012−65660A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233295(P2011−233295)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2002−527314(P2002−527314)の分割
【原出願日】平成13年9月6日(2001.9.6)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2002−527314(P2002−527314)の分割
【原出願日】平成13年9月6日(2001.9.6)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
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