説明

ウィングのロック方法とこの方法を用いた収納ボックス

【目的】 ボックス本体に生じた大きな揺れを検知してウィングを自動的にロックするオートロック装置をボックス本体内に組み込めるようにして、家具等の見栄えを阻害することなく、地震時に収納物品が外へ飛び出すのを防止する。
【構成】 本発明のウィング付き収納ボックスのオートロック装置は、前方に開口する開口部4にウィング5が枢着されたボックス本体3の開口縁部の内面8Aに取り付けられるケーシング15と、前記ケーシング15内に出退自在に挿通され、かつ、前記ウィング5の内面5Aに固定したブラケット40に係合して同ウィング5の開放を阻止するロック位置Bに付勢されているデッドボルト16と、前記デッドボルト16が前記ブラケット40から解除されるアンロック位置Aとなるよう当該デッドボルト16を前記ケーシング15内に保持しておく保持部材18と、前記ボックス本体3に生じた過大な揺れに伴う慣性力を前記保持部材18に作用させて同保持部材18を前記デッドボルト16から解除するオートロック手段19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウィング付き収納ボックスのオートロック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、食器棚、本棚、タンス、化粧ケース等の家具に代表されるウィング付きの収納ボックスでは、前面が開放されたボックス本体の開口部に扉(ウィング)が観音開き状に枢着されている。この扉の縁部内面には、ボックス本体の天板等に設けたマグネットに対応する鉄製の板片が取り付けられていて、扉をボックス本体に向かって閉めていくと同本体側のマグネットが前記板片を吸着し、これによって扉を閉鎖位置に保持するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記家具に代表されるウィング付きの収納ボックスでは、収納物品の出し入れを頻繁に行うため、一般に施錠装置を設ける場合が少なく、また、施錠装置を設けたとしてもユーザーがこれを余り利用しないことが多い。このため、先の阪神大震災の経験からも判るように、大震度の地震等のため収納ボックスが大きく揺らされると、その揺れによってマグネットの吸着力のみで閉鎖されている扉が開いて食器等の収納物品が外に飛び出し、これによって収納物品が破損したり居住者に当たって負傷することがある。
【0004】そこで、本願発明者は、ボックス本体に生じた大きな揺れを検知してウィングを自動的にロックすることにより、収納物品が外へ飛び出すのを防止できるウィング付き収納ボックスのオートロック装置を既に特許出願している(特願平7−49985号参照)。しかし、上記オートロック装置では、地震発生時に自動的に突出するデッドボルトを収納するケーシングをボックス本体の天板上面に固定し、しかも、このデッドボルトをウィングの外表面まで突出させることによりウィングをロックするようにしているので、デッドボルトを案内するケーシングのガイド部が家具等の収納ボックスの前面に突出することになり、このため、当該収納ボックスの見栄えを悪くするという問題がある。
【0005】すなわち、ケーシングをボックス本体の天板上面に固定する手段では、当該オートロック装置を家具等に後付けするには適しているが、最初から家具等の天板上面にケーシングを固定してあるとその天板に異物が固定してある感じがして見栄えが悪いため、オートロック装置をボックス本体内に組み込めないかという要望が強かった。一方、オートロック装置をボックス本体内に組み込むとしても、同装置のケーシング自体が大きすぎるとボックス本体の収納スペースを侵すことになるので、同装置をボックス本体内に取り付けるにはケーシングを可及的にコンパクトにする必要がある。
【0006】また、オートロック装置をボックス本体内に収めると、デッドボルトがさほど大きくない振動によって不本意に突出してしまった場合には、もはや当該デッドボルトを解除できなくなるという問題もある。本発明は、上記のような実情に鑑み、ボックス本体に生じた大きな揺れを検知してウィングを自動的にロックするオートロック装置をボックス本体内に組み込めるようにして、家具等の見栄えを阻害することなく、地震時に収納物品が外へ飛び出すのを防止できるようにすることを第一の目的とする。
【0007】また、本発明は、ボックス本体内の収納スペースを阻害されないよう、ボックス本体内に組み込む当該オートロック装置のケーシングを可及的にコンパクトにするとともに、材料コストも低く抑えられるようにすることを第二の目的とする。更に、本発明は、ボックス本体内に設けたオートロック装置のデッドボルトを簡単に解除できるようにすることを第三の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は次の技術的手段を講じた。すなわち、本発明に係るウィング付き収納ボックスのオートロック装置は、前方に開口する開口部にウィングが枢着されたボックス本体の開口縁部の内面に取り付けられるケーシングと、前記ケーシング内に出退自在に挿通され、かつ、前記ウィングの内面に固定したブラケットに係合して同ウィングの開放を阻止するロック位置に付勢されているデッドボルトと、前記デッドボルトが前記ブラケットから解除されるアンロック位置となるよう当該デッドボルトを前記ケーシング内に保持しておく保持部材と、前記ボックス本体に生じた過大な揺れに伴う慣性力を前記保持部材に作用させて同保持部材を前記デッドボルトから解除するオートロック手段と、を備えたものである(請求項1)。
【0009】より具体的には、ケーシングに、デッドボルトの出退方向と交差するよう前後方向に延びる収納部が形成され、保持部材は、前記デッドボルト側に付勢された状態で前記収納部内において前後方向移動自在にガイドされ、かつ、前端部にデッドボルトの掛止部を有する板材よりなり、オートロック手段は、前記収納部内に前後方向移動自在に装填され、かつ、後方へ移動したときに前記保持部材に衝突してその掛止部を前記デッドボルトから解除させる重り部材よりなるものを採用できる。この場合、その重り部材としは、前記収納部内でガイドされている前記保持部材を取り囲む断面コ字状に形成された金属体より構成することが好ましい(請求項2)。
【0010】また、不本意にロックされたデッドボルトをボックス本体の外から解錠できるようにするには、デッドボルトがボックス本体の開口縁部の内面に向かって出退するようケーシングを同内面に固定するとともに、ボックス本体の開口縁部におけるデッドボルトの突出端対応位置に、当該ボックス本体の内外に通じる解除孔を設ければよい(請求項3)。更に、ボックス本体の開口縁部の内面に、前面側にマグネットによる吸着面を有する接当部材が設けられ、ウィングの内面に、前記マグネットに吸着される板片が固定された収納ボックスに本発明を採用する場合には、前記接当部材にケーシングを一体に形成するとともに(請求項4)、前記板片にブラケットを一体に形成することが好ましい(請求項5)。
【0011】
【作用】ボックス本体に大きな揺れが生じていない通常の場合は、デッドボルトが保持部材によって予めアンロック位置に保持されていて、このためウィングを自由に開閉できる。一方、地震等によりボックス本体に過大な揺れが生じると、オートロック手段がその慣性力によって保持部材をデッドボルトから解除するので、デッドボルトがケーシングから飛び出してロック位置となりウィングの開放を自動的に阻止する。
【0012】このさい、本発明では、ケーシングを開口縁部の内面に取り付けるとともに、このケーシングに出退自在に挿通されたデッドボルトに係合してウィングの開放を阻止するブラケットをウィングの内面に固定するようにしたので、上記作用を行うオートロック装置をボックス本体内に組み込むことが可能となる(請求項1)。また、本発明では、大きな揺れに伴って保持部材をデッドボルトから解除させる重り部材を、ケーシングの収納部内でガイドされている保持部材を取り囲む断面コ字状に形成したので、保持部材を重り部材の断面内に取り込むことができ、ケーシングの幅寸法を可及的にコンパクトにできる(請求項2)。
【0013】一方、デッドボルトがさほど大きくない振動によって突出してしまった場合には、天板の上方から解除孔に挿通した棒状材でデッドボルトの突出端を下方へ押し込めば、デッドボルトをアンロック位置に復帰させることができる(請求項3)。また、マグネットを有する接当部材にケーシングを一体に形成すれば、ケーシングを接当部材とは別に取り付ける手間を省くことができ(請求項4)、マグネットを吸着する板片にブラケットを一体に形成すれば、部品点数が少なくて済む(請求項5)。
【0014】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1〜図3は本発明の第一実施例を示している。図3は、本実施例のオートロック装置1を採用した食器棚(収納ボックス)2を示しており、この食器棚2は、内部に食器が収納される前面が開放されたボックス本体3を備え、このボックス本体3の上部側の開口部4には左右一対の扉(ウィング)5が観音開き状に枢着されている。
【0015】また、ボックス本体3の中央部には左右一対の引き出し6が、かつ、下部には引き戸7が設けられている。扉5の縁部内面5Aには、ボックス本体3の天板8と底板9に設けた接当部材10のマグネット11に対応する鋼製の板片(図3には図示せず)が取り付けられ、ボックス本体3に向かって揺動された扉5の板片を本体3側のマグネット11で吸着することにより、扉5を閉鎖位置に保持できるようになっている。ボックス本体3の天板8には、地震等の揺れによって当該食器棚2が倒れるのを防止するワイヤー12の固定金具13が固着され、このワイヤー12の先端は部屋の上隅に設けた掛止金具14に引っ掛けられている。
【0016】ボックス本体3の天板8には、同じく地震等の揺れによって扉5が開くのを自動的に阻止する前記オートロック装置1が取り付けられている。図1及び図2R>2に示すように、このオートロック装置1は、天板8の前縁部下面(ボックス本体3の開口縁部の内面)8Aに取り付けられる合成樹脂製のケーシング15と、このケーシング15内に上下出退自在に挿通されたデッドボルト16と、このデッドボルト16を常時上方へ付勢する第一コイルバネ17と、デッドボルト16を予めケーシング15内に保持しておく保持部材18と、地震等に伴う過大な揺れを検知して保持部材18をデッドボルト16から解除するオートロック手段19と、を備えている。
【0017】ケーシング15は、天板8の下面8Aにねじ止めされる上面側が開口された固定部20と、この固定部20の前端部に同固定部20と直交して一体に固着された有底筒状のガイド筒部21と、固定部20の上面開口部を閉塞する蓋部材22とを備えている。図1に示すように、ケーシング15は、ガイド筒部21の上端開口21Aが天板8の下面8Aから適当な間隔をもって離間するよう、蓋部材22に積層されたスペーサ23を介して天板8の下面8Aにねじ止めされている。
【0018】すなわち、ガイド筒部21の上端開口は21Aは図1に示す取付状態において天板8の下面8Aから離間しており、これにより、後述するブラケット40の挿通空間24が形成されている。また、このガイド筒部21の上端開口21Aから前記デッドボルト16が上下動自在に挿通されている。なお、食器棚2の種類によって天板8と扉5の間隔Eが変化した場合には、厚みの異なるスペーサ23を採用してケーシング15の取付高さを変更することにより、適正な挿通空間24を確保することができる。
【0019】図2に示すように、蓋部材22は、固定部17の上面開口部を閉塞する方形板状の蓋本体25と、この蓋本体25の前端に固定したガイド蓋26とからなり、蓋本体25の左右両側に設けた第一ねじ孔27に挿通した図外の取付ねじによってケーシング15に固定されている。蓋本体25の下面の左右両側には、固定部20に設けた位置決め孔28に嵌合してケーシング15に対する位置決めを行う位置決めピン29が突設されている。ガイド蓋26は、平面視ほぼT字状に形成されており、固定部20の前部に形成されている段部30に嵌合し、このさい、前記保持部材18の前部を前後方向(図1R>1の左右方向)にガイドする。すなわち、ガイド蓋26の中央部には下側に開口しかつ前後方向に延びるガイド溝31が形成され、このガイド溝31に板状の保持部材18の前部を挿通することにより、同保持部材18が前後方向にガイドされている。
【0020】また、蓋本体25とケーシング15の固定部20には、ともに四隅の同じ位置に第二ねじ孔32が形成されており、この第二ねじ孔32に上向きに挿通した取付ねじ33を天板8の下面8Aに向かってねじ込むことにより、ケーシング15がこれを閉塞する蓋部材とこの上に積層されるスペーサ23を介して天板8に固定されている。図1及び図2に示すように、デッドボルト16はガイド筒部21の内空長とほぼ同じ長さを有し、下端から中央部に延びる有底のバネ収納穴34を備え、このバネ収納穴34に収納した第一コイルバネ17とともにガイド筒部21に挿通される。このとき、この第一コイルバネ17は、その下端部がガイド筒部21の底壁35に立設した連結ピン36に套嵌され、バネ収納穴34内に圧縮状態で収納される。このため、デッドボルト16は第一コイルバネ17によって常時上方へ付勢されている。
【0021】デッドボルト16の側面下部には左右一対のストッパー37が突設され、このストッパー37間で上下方向の案内溝38が形成されている。この案内溝38に前記ガイド筒部21の内面に上下方向に延設したガイドレール39を嵌合させるようにして、当該デッドボルト16がカイド筒部21内に挿通されている。また、ストッパー37は前記ガイド蓋26の前端部26Aに当接することにより、当該デッドボルト16が上方へ抜け出すのを規制している。一方、扉5の内面5Aには、デッドボルト16に係止されて扉5の開放を規制するブラケット40が取付ねじ41によって固定されている。このブラケット40は取付板42とこれに直交する方形リング状の係止板43とから側面視L字状に屈曲形成されており、係止板43にはデッドボルト16の横断面よりも大きい係合孔44が形成されている。
【0022】ブラケット40は、取付板42を取付ねじ41によって扉5の内面5Aにねじ止めすることにより、係止板43が内面5Aから後方へ突出するように取り付けられていて、このブラケット40の取付位置は、扉5の閉鎖状態において当該係止板41がデッドボルト16の出退位置と同じ平面位置となり、かつ、前記挿通空間24に入り込む高さ位置とされている。このため、デッドボルト16がそのガイド筒部21内にすべて納まっているときは(図1(b)の実線)、デッドボルト16はブラケット40から解除されており、扉5の開放を許容するアンロック位置Aとなるが、他方、ストッパー37がガイド蓋26の前端部26Aに当接するまで突出したときは(図1(b)の仮想線)、デッドボルト16の上部が扉5に固定してあるブラケット40の係合孔44に入り込み、当該扉5の開放が阻止されるロック位置Bとなる。
【0023】前記ケーシング15の固定部20には、デッドボルト16の出退方向と交差するよう前後方向(図1R>1における左右方向)に延びる収納部45が形成されており、この収納部45の左右方向中央部に、前記保持部材18が前後方向移動自在にガイドされた状態で挿通されている。すなわち、本実施例の保持部材18は、ほぼ短冊板状に形成された金属製のスライド板よりなり、収納部45の底面中央部に相対向して立設された左右一対のガイド板46の間に縦向きに嵌め込むことにより、収納部45内に前後方向移動可能にガイドされている。
【0024】この板状の保持部材18は、デッドボルト16の側面に形成した掛止凹部47に嵌合する掛止片(掛止部)48を前端部に備え、当該保持部材18をデッドボルト16側に付勢する第二コイルバネ49を連結するための連結片50を後端部に備えている。また、保持部材18の後部上端縁には、当該保持部材18を第二コイルバネ49に抗して後方へスライドさせるための解除片51が形成されている。なお、保持部材18の掛止片48の上縁は、デッドボルト16の下方移動に伴って当該保持部材18を後方へ押し戻すべく、前下がり傾斜状のテーパー部48Aが形成されている。
【0025】一方、図1(b)に示すように、保持部材18の連結片50を外嵌して取り付けられる第二コイルバネ49は収納部45の後端壁部に当接して当該保持部材18を常時前方へ付勢している。このコイルバネ49の付勢力によって保持部材18の掛止片48がデッドボルト16の掛止凹部47内に強制的に嵌合され、これにより、デッドボルト16を予めアンロック位置Aに保持することができる。本実施例のオートロック手段16は、上記板状の保持部材18とともに収納部45内に前後方向スライド自在に装填され、かつ、後方へ移動したときに保持部材18に衝突して同保持部材18をデッドボルト16から解除させる重り部材52よりなる。この重り部材52は、収納部45よりも短い前後方向長さを有する金属体よりなり、収納部45内でガイドされている保持部材18を取り囲むことができる断面コ字状に形成されている。
【0026】すなわち、図2に示すように、重り部材52の中央部下面側には、収納部45内に立設されている左右一対のガイド板46をともに収納できる断面を有する逃げ凹部53が前後方向に延設されており、この逃げ凹部53内にガイド板46を嵌合させた状態で重り部材52がケーシング15の収納部45内に前後スライド自在に収容されている。また、重り部材52の中央部上面側には、後端から中央部にまで至るスリット54が形成されており、重り部材52を収納部45に収納した際に、保持部材18の解除片51がこのスリット54に嵌合される。
【0027】このように、本実施例では、上記作用をする保持部材18を板材で形成するとともに、この保持部材18をおなじ収納部45に収納する重り部材52で取り囲むようにしているので、ケーシング15の左右方向の寸法を可及的にコンパクトにできる。また、保持部材18の解除片51を前後にスライドする重り部材52のスリット54に嵌合させているので、重り部材52を著しく軽量化させることなく、ケーシング15の前後方向の寸法を可及的に短くできる利点がある。
【0028】なお、上記重り部材52を構成する金属体としては、前後方向の滑りのよさを長期間確保すべく、錆の発生しにくい真鍮を採用することが好ましい。上記重り部材52は、ボックス本体3が大きく揺れるとこれに伴って収納部45内で前後に往復動するが、その揺れが地震等により生じた過大なものであるときは、重り部材52がそのスリット54に挿通されている保持部材18の解除片51に強く衝突する。この衝突により、第二コイルバネ49によって前方へ付勢されている保持部材18が後方(図1の左側)へ変位して保持部材18の掛止片48がデッドボルト16の掛止凹部47から離脱し、その後、デッドボルト16が第一コイルバネ17によって上方に突出されてロック位置Bとなる。
【0029】この場合、デッドボルト16がさほど大きくない振動によって突出し、扉5が不本意にロックされてしまうこと場合もありうる。そこで、本実施例では、デッドボルト16が天板8の下面8Aに向かって上下方向に出退することから、図1(a)に示すように、当該デッドボルト16の突出端対応位置に、天板8を上下方向に貫通する解除孔55を設けている。このため、デッドボルト16がさほど大きくない振動によって突出してしまった場合でも、天板8の上方から解除孔55に挿通した図外の棒状材でデッドボルト16の突出端を下方へ押し込むことにより、デッドボルト16をアンロック位置Aに復帰させることができる。
【0030】上記実施例に係るオートロック装置1によれば、第一コイルバネ17に抗してデッドボルト16を押し下げると、保持部材18の掛止片48がそのテーパー部48Aを通過して掛止凹部47に嵌合し、デッドボルト16をアンロック位置Aに保持し、ボックス本体3に大きな揺れが生じていない通常の場合は扉5を自由に開閉することができる。一方、地震等によりボックス本体3に過大な揺れが生じると、上記のように重り部材52が保持部材18の解除片51に衝突したときの衝撃力によって掛止片48による保持が解除され、デッドボルト16が自動的に瞬時にロック位置Bとなるので、食器棚2内の食器が外部に飛び出すのを未然に防止できる。
【0031】なお、上記実施例において、左右の扉5のうち一方の扉5の縁部に、両扉5間の間隙を閉塞する帯板状の召し合わせ部材を固着する場合には、他方の扉5を開かないと一方の扉5を開くことができないので、他方の扉5のみにブラケット40を設け、これを自動的に係止するオートロック装置1をボックス本体3に一つ設ければ足りる。ただし、召し合わせ部材が一方の扉5に対して揺動自在に枢着されている場合には、後述の第二実施例のように、左右両扉5にブラケット40を設け、これらのブラケット40に対応するボックス本体3のそれぞれの位置にオートロック装置1を設ける必要がある。
【0032】また、片方開き扉5の収納ボックス2の場合には、オートロック装置1をボックス本体3の立側面に取り付けることもできる。また、本発明は、食器棚2だけでなく、本棚、タンス等の家具の他、ウィングを備えた収納ボックスに広く採用できる。次に、図4〜図8は本発明の第二実施例を示しており、この実施例では、召し合わせ部材59を設けた扉5も独立に開閉できるよう、同部材59を一方の扉5に対して揺動自在に枢着されている収納ボックス2に本発明のオートロック装置1を採用した場合を示している。
【0033】図4において、本実施例の収納ボックス2は、タンス、食器ケース、化粧ケースその他の家具に使用されるもので、左右の側板3Aと天板8及び底板9とから方形枠状に組み立てられたボックス本体3と、ボックス本体3の前面開口部4に同開口部4を開閉自在に閉塞する左右一対の扉5L,5Rとを備えている。この左右一対の扉5L,5Rは、その幅方向外側縁がボックス本体3の側板3Aに蝶番等を介して枢着され、収納ボックス2の内外方向に回動自在ないわゆる観音開き式とされていて、両扉5L,5Rの外面中央には把手57が固着されている。
【0034】両扉5L,5Rの先端部でかつ内面下部には板片58が張設されていて、この板片58はオートロック装置1に必要な前記ブラケット40を兼ねている。すなわち、図4及び図7に示すように、ブラケット40の取付板42は幅方向に長い帯板に形成されており、接当部材10のマグネット11に吸着される板片58としての機能を有する。天板8及び底板9の開口部4側でかつ幅方向中央には、後述する召し合わせ部材59を閉姿勢にするための接当部材10がそれぞれ固定されている。
【0035】図4及び図6に示すように、この上下の接当部材10は、いずれも、召し合わせ部材59の接当面60を前面中央部に備え、前記板片58を引きつけて両扉5L,5Rを閉塞状態にするマグネット11を前面左右両側に有している。また、上下の接当部材10のうち、上側の接当部材10Uの左右両端部には、前記オートロック装置1のケーシング15が一体に組み込まれている。すなわち、オートロック装置1のケーシング15は、そのデッドボルト16を前側(ボックス本体3の開口側)へ向けるようにして、接当部材10Uの左右両端部に形成した取付凹部11Aに嵌め込まれている。この取付凹部11Aは、ケーシング15の取付部であると同時に、前記挿通空間24を確保するスペースとしての意義を有する。
【0036】このように、本実施例では、接当部材10にオートロック装置1のケーシング15を一体に組み込んだので、接当部材10を天板8に固定すると同時にオートロック装置1のケーシング15も天板8に取り付けられることになる。また、ブラケット40をその取付板42がマグネット11に吸着されるように配置すれば、デッドボルト16とブラケット40の係合孔44との位置合わせが容易となるので、ブラケット40の取付手間も低減できる。なお、オートロック装置1自体の内部構造は第一実施例の場合と同様であるので、図面に同一符号を付してその説明を省略する。また、本実施例では接当部材10の左右両側にオートロック装置1を並設しているので、図4及び図6に示すように、デッドボルト16のロックを解除するための解除孔55を天板8に二つ設けている。
【0037】更に、本実施例では、下側の接当部材10Lにはオートロック装置1を設けていないが、底板9に設けた解除孔55からデッドボルト16を操作するスペースを確保できる場合には、下側の接当部材10Lにもオートロック装置1を設けることができる。召し合わせ部材59は、扉閉鎖時に両扉5L,5Rの先端間の間隙eを閉塞するためのもので、左側の扉5Lの先端部内面に、上下一対のオートヒンジ61を介して上下方向のシャフト62回りでかつ収納ボックス2の内外方向に揺動自在に枢着されている。この召し合わせ部材59は、ボックス本体3の内空高さとほぼ同じ長さの長尺帯板材よりなり、幅方向右側の縁部が前記接当部材10Uとスムーズに摺接するよう断面円弧状に形成されている。
【0038】上下一対のオートヒンジ61は、図5に示すように、左側の扉5Lの先端部に固定される固定翼63と、召し合わせ部材59を支持する可動翼64とを備えている。固定翼63の表面には、相対向する一対の枢支ブラケット65と、このブラケット65の一側縁間を連結する規制壁64とが立設されていて、このブラケット65間にシャフト62が上下方向に架設されている。可動翼64は、召し合わせ部材59の内面に固着されてその召し合わせ部材59を回動自在に支持する支持板67と、支持板67の幅方向一側縁から延設されたアーム部68と、アーム部68の先端に設けた上下一対の筒部69とを備え、枢支ブラケット65間に配置した筒部69にシャフト62を挿通させることにより、固定翼63に対してシャフト62回りに回動自在に取り付けられている。なお、可動翼64は、そのアーム部68が回動方向において弾性変形しうるプラスチック等の樹脂材料で構成されている。
【0039】可動翼64のアーム部68は、断面へ字状に屈曲されて背面側に前記規制壁66との当り面70を有していて、図7に示すように、可動翼64の固定翼63に対する回動角αは、アーム部68の当り面70が規制壁66に当接することによって90度より小さくなるように設定されている。そして、この可動翼64の回動角αが右側の扉5R側に向くよう召し合わせ部材59を左側の扉5Lに固定することにより、召し合わせ部材59の左側への揺動範囲を90度以内に規制するようにしている。
【0040】また、シャフト62の筒部69間には、可動翼64のアーム部68を固定翼63の規制壁66側に付勢する巻きバネ71が套嵌されていて、本実施例では、この巻きバネ71によって、前記召し合わせ部材15が左側の扉5Lへの取付状態において常に内側揺動方向へ付勢されている。従って、召し合わせ部材59は、図7R>7に示すように、扉5Lが開放されているときはその扉5Lの内面から回動角αだけ内側に傾斜した状態で保持されている。上記構成の召し合わせ装置を有す収納ボックス3においては、先ず、図7に示すように、左側の扉5Lが開放状態でかつ右側の扉5Rが閉鎖状態にある場合には、召し合わせ部材59は、巻きバネ71によって内側(図1の上側)揺動方向に付勢されているため、左側の扉5Lの内面から回動角αだけ傾いた状態で保持されている。
【0041】このとき、右側の扉5Rは閉鎖されているので、右側のブラケット40の取付板42(板片58)がマグネット11に吸着されているとともに、ブラケット40の係止板43は、その係合孔44がデッドボルト16と対応するよう挿通空間24内に位置している。この状態から左側の扉5Lを閉じていくと召し合わせ部材59の縁部が上下の接当部材10の接当面60に接当する。そこから、さらに左側の扉5Lを閉じ方向に押すと、召し合わせ部材59が接当面60上を摺動しながら接当面60から反力を受け、巻きバネ71の付勢力に抗して前側(図7の下側)に揺動し、図8(a)に示すように、左側の扉5Lが完全に閉鎖された時に両扉5L,5R先端部間の間隙eが当該召し合わせ部材59によって収納ボックス2の内側から閉塞されることになる。
【0042】また、このとき、左側の扉5Lも閉鎖されるので、左側のブラケット40の取付板42(板片58)がマグネット11に吸着されるとともに、左側のブラケット40の係止板43は、その係合孔44がデッドボルト16と対応するよう挿通空間24内に位置することになる。一方、両扉5L,5Rがいずれも閉鎖状態にある場合には、右側の扉5Rを独立して開放できることは勿論のこと、上記と逆の動作手順をふむことにより、右側の扉5Rを閉鎖させたまま左側の扉5Lのみを開放することができる。
【0043】なお、上記したオートロック装置1を組み込んだ接当部材10と、扉5をロックするブラケット40を兼ねた板片58は、召し合わせ部材59を揺動自在に取り付けた上記召し合わせ装置を設けていない収納ボックス2にも採用することができる。上記実施例は例示的なものであって限定的なものではない。すなわち、本発明の範囲は前記した特許請求の範囲によって示され、その請求項の意味に入るすべての変形例は本発明に含まれるものである。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ボックス本体に生じた大きな揺れを検知してウィングを自動的にロックするオートロック装置をボックス本体内に組み込むことが可能となるので、家具等の見栄えを阻害することなく、地震時に収納物品が外へ飛び出すのを有効に防止できて震災による被害を可及的に小さくできる(請求項1)。また、請求項2に記載の発明によれば、保持部材を重り部材の断面内に取り込むことができるので、オートロック装置を可及的にコンパクトにでき、かつ、その材料コストも低く抑えられる。
【0045】請求項3に記載の発明によれば、解除孔に挿通した棒状材でデッドボルトの突出端を下方へ押し込むだけでデッドボルトをアンロック位置に復帰できるので、オートロック装置をボックス本体内に設けたにも拘らず、デッドボルトのロック解除を容易に行える。請求項4に記載の発明によれば、ケーシングを接当部材とは別に取り付ける手間を省くことができるので、オートロック装置の取付作業が簡便になる。請求項5に記載の発明によれば、板片にブラケットを一体に形成したので、部品点数を少なくでき、オートロック装置の製造コスト及び材料コストを更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第一実施例を示し、(a)はオートロック装置の取付構造を示す食器棚(収納ボックス)の上部の縦断面図であり、(b)は同装置を拡大した縦断面図である。
【図2】同装置の分解斜視図である。
【図3】同装置が取り付けられた食器棚の斜視図である。
【図4】第二実施例に係るオートロック装置を有する収納ボックスの斜視図である。
【図5】(a)は召し合わせ部材の取付構造を示す斜視図であり、(b)は召し合わせ部材をウィングに取り付けるためのオートヒンジの斜視図である。
【図6】上側の接当部材の正面図である。
【図7】ウィングを閉鎖する直前における上側の接当部材の平面図である。
【図8】(a)はウィングを閉鎖した後における上側の接当部材の平面図であり、(b)はその(a)におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
1 オートロック装置
2 収納ボックス(食器棚)
3 ボックス本体
4 開口部
5 ウィング(扉)
5A ウィングの内面
8A ボックス本体の内面(天板の下面)
10 接当部材
11 マグネット
15 ケーシング
16 デッドボルト
18 保持部材
19 オートロック手段
40 ブラケット
45 収納部
48 掛止部(掛止片)
52 重り部材
55 解除孔
58 板片
A アンロック位置
B ロック位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前方に開口する開口部(4)にウィング(5)が枢着されたボックス本体(3)の開口縁部の内面(8A)に取り付けられるケーシング(15)と、前記ケーシング(15)内に出退自在に挿通され、かつ、前記ウィング(5)の内面(5A)に固定したブラケット(40)に係合して同ウィング(5)の開放を阻止するロック位置(B)に付勢されているデッドボルト(16)と、前記デッドボルト(16)が前記ブラケット(40)から解除されるアンロック位置(A)となるよう当該デッドボルト(16)を前記ケーシング(15)内に保持しておく保持部材(18)と、前記ボックス本体(3)に生じた過大な揺れに伴う慣性力を前記保持部材(18)に作用させて同保持部材(18)を前記デッドボルト(16)から解除するオートロック手段(19)と、を備えているウィング付き収納ボックスのオートロック装置。
【請求項2】 ケーシング(15)に、デッドボルト(16)の出退方向と交差するよう前後方向に延びる収納部(45)が形成され、保持部材(18)は、前記デッドボルト(16)側に付勢された状態で前記収納部(45)内において前後方向移動自在にガイドされ、かつ、前端部にデッドボルト(16)の掛止部(48)を有する板材よりなり、オートロック手段(19)は、前記収納部(45)内に前後方向移動自在に装填され、かつ、後方へ移動したときに前記保持部材(18)に衝突してその掛止部(48)を前記デッドボルト(16)から解除させる重り部材(52)よりなり、この重り部材(52)は、前記収納部(45)内でガイドされている前記保持部材(18)を取り囲む断面コ字状に形成された金属体よりなる請求項1に記載のウィング付き収納ボックスのオートロック装置。
【請求項3】 デッドボルト(16)がボックス本体(3)の開口縁部の内面(8A)に向かって出退するようケーシング(15)が同内面(8A)に固定されており、ボックス本体(3)の開口縁部におけるデッドボルト(16)の突出端対応位置に、当該ボックス本体(3)の内外に通じる解除孔(55)が設けられている請求項1又は2に記載のウィング付き収納ボックスのオートロック装置。
【請求項4】 ボックス本体(3)の開口縁部の内面(8A)に、前面側にマグネット(11)による吸着面を有する接当部材(10)が設けられ、ウィング(5)の内面(5A)に、前記マグネット(11)に吸着される板片(58)が固定されている収納ボックス(2)において、前記接当部材(10)にケーシング(15)が一体に形成されている請求項1〜3に記載のウィング付き収納ボックスのオートロック装置。
【請求項5】 板片(58)にブラケット(40)が一体に形成されている請求項4に記載のウィング付き収納ボックスのオートロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−2034(P2000−2034A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−153986
【分割の表示】特願平7−134376の分割
【出願日】平成7年5月31日(1995.5.31)
【出願人】(000140306)株式会社奥田製作所 (50)