説明

ウイルスを用いた新生物の処置

【課題】ガンを含む疾患の処置のためのウイルスを提供すること。ガンを含む新生物疾患の処置のためのウイルスを提供すること。
【解決手段】本発明は、IFN媒介抗ウイルス応答を欠損する新生物細胞内で複製し得、それによりその死を引き起こすウイルス、ならびにガンおよび大きな腫瘍を含む新生物疾患の処置のための使用に関する。RNAおよびDNAウイルスがこの点に関して有用である。本発明はまた、治療のためのこのようなウイルスの選択、設計、精製および使用のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、インターフェロン(IFN)媒介抗ウイルス応答を欠損する新生物細胞内で複製し得、そしてその死を引き起こすウイルスに関する。RNAおよびDNAウイルスがこの点に関して有用である。本発明はまた、ガンおよび大きな腫瘍を含む新生物疾患の処置のためにこれらのウイルスを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガンを含む新生物疾患は、ヒトの間で主な死因の一つである。米国において毎年130万人を超える新たな症例がガンと診断され、そして55万人が死亡する。身体において二次部位に伝播する前に早期にガンを検出することは、宿主の生存の機会を非常に増加させる。しかし、ガンの早期検出は、いつも可能であるとは限らない。そして、可能である場合でも、高度に悪性のガンの症例においては特に処置は満足行くものではない。化学療法および照射を含むガン処置は、後期においては、特に新生物増殖が大きく、そして/または高度の腫瘍負荷を構成する場合にはほとんど有効ではない(Hillard Stanley、Cancer Treat.Reports、第61巻、第1号、1月/2月、1977、29〜36頁、Tannock、Cancer Research、42:4921−4926、Dec.1982を参照のこと)。
【0003】
種々のウイルスへの曝露に関連する腫瘍の後退が報告されている。記載されたウイルスの殆どがヒトにおいて病原性であり、そして流行性耳下腺炎および麻疹を含む。他の特定のウイルスの特定の型のガン細胞に対する効果もまた記載されている。Smithら、(1956)Cancer、9:1211(アデノウイルの頸ガン腫に対する効果);Holzaepfelら(1957) Cancer、10:557(上皮腫瘍に対するアデノウイルスの効果);Taylorら、(1970)J.Natl.Cancer Inst.44、515(ウシエンテロウイルス−1の肉腫1に対する効果);Shinguら、(1991)J.General Virology、72:2031(ウシエンテロウイルスMZ−468のF647a白血病細胞に対する効果);Suskindら、(1957)PSEBM、94、309(コクサッキーB3ウイルスのHeLa腫瘍細胞に対する効果);Rukavishnikovaら、(1976)Acta Virol.20、387(インフルエンザA株の腹水腫瘍に対する効果)。
【0004】
最初期の参考文献は、天然痘または狂犬病に対して患者にワクチン接種をする目的で、生きた弱毒化ウイルスワクチンで処置した患者において部分的な腫瘍後退を記載した。DePace.N.G.(1912)Ginecologia、9、82−88;Salmon、P.およびBaix(1922)Compt.Rend.Soc.Biol.86、819−820を参照のこと。腫瘍の部分的後退および白血病の後退もまた、天然に発症する麻疹感染の間に認められている。Pasquinucci,G.(1971)Lancet、1、136;Gross S.(1971)Lancet、1、397−398;Bluming、A.Z.およびZiegler、J.L.(1971)Lancet、2、105−106を参照のこと。生きた流行性耳下腺炎ウイルスに意図的に感染させた90人のガン患者の1つの研究において、部分的な腫瘍後退が79例において認められた。Asada(1994)Cancer、34、1907−1928を参照のこと。これらのウイルスの副作用は一過性であるが、これらのヒト病原体での感染の重篤な後遺症が主要な関心事である。
【0005】
ウイルスは、以下のように分類される(Murphy AおよびKingsbury DW、1990、Virology 第2版(Fields,B.N.編)、Raven Press,New York、9〜35頁)
RNAウイルス分類用の特徴 ウイルス科名称
ssRNA、+鎖 Picoranviridae
(ピコルナウイルス科)
非セグメント化 Calciviridae
(カリシウイルス科)
非エンベロープ化
ssRNA、+鎖 Togaviridae
(トガウイルス科)
非セグメント化 Flaviviridae
(フラビウイルス科)
エンベロープ化 Coronaviridae
(コロナウイルス科)
ssRNA、−鎖 Rhabdoviridae
(ラブドウイルス科)
非セグメント化 Filoviridae
(フィロウイルス科)
エンベロープ化 Paramyxoviridae
(パラミクソウイルス科)
ssRNA、−鎖 Orthomyxoviridae
(オルトミクソウイルス科)
セグメント化
エンベロープ化
ssRNA、両鎖 Bunyaviridae
(ブンヤウイルス科)
セグメント化 Arenaviridae
(アレナウイルス科)
エンベロープ化
dsRNA、+鎖 Reoviridae
(レオウイルス科)
セグメント化 Birnaviridae
(ビルナウイルス科)
非エンベロープ化
ssRNA、複製時にDNA工程 Retroviridae
(レトロウイルス科)
+鎖
非セグメント化
エンベロープ化。
【0006】
DNAウイルス
ss/dsDNA、非エンベロープ化 Hepadnaviridae
(ヘパドナウイルス科)
ssDNA、非エンベロープ化 Parvoviridae
(パルボウイルス科)
dsDNA、非エンベロープ化 Papovaviridae
(パポバウイルス科)
Adenoviridae
(アデノウイルス科)
dsDNA、エンベロープ化 Herpesviridae
(ヘルペスウイルス科)
Poxviridae
(ポックスウイルス科)
Iridoviridae
(イリドウイルス科)。
【0007】
ヘルペスウイルス科(またはヘルペスウイルス類)の中には、アルファヘルペスウイルス亜科(水痘ウイルス属および単純ヘルペスウイルス属(Simplexvirus)を含む)、ベータヘルペスウイルス、およびガンマヘルペスウイルスが含まれる。
【0008】
ニューカッスル病ウイルス(「NDV」)は、パラミクソウイルス科(またはパラミクソウイルス類)のメンバーである。NDVについての天然の宿主は、ニワトリおよび他の鳥類である。NDVは代表的に、動物宿主細胞の表面の特定の分子に結合し、細胞表面と融合し、そしてその遺伝物質をその宿主に注入する。NDVは、細胞破壊性ウイルスである。一旦細胞内に入ると、そのウイルス遺伝子は、宿主細胞に、そのウイルスのコピーを作らせるように指令し、これが宿主細胞の死をもたらし、他の細胞に感染するNDVのコピーを放出する。他のいくつかのウイルスと異なり、NDVはいかなる重篤なヒトの疾患をももたらすことは知られていない。他の種類のウイルス(例えば、HTLV−1、B型肝炎)とは異なり、パラミクソウイルスは、発ガン性であるとは知られていない。
【0009】
腫瘍の一過性後退は、NDVに曝露された少数の患者において報告されている。Csatary、L.K.(1971)Lancet、2、825を参照のこと。Csataryは、彼のニワトリにおいて、ニューカッスル病の流行の間にニワトリ農家における胃腸ガンの後退を認めた。類似の逸話的報告において、Cassel、W.A.およびGarrett、R.E.(1965)Cancer、18:863−868は、頸腫瘍へのNDVの注射後の患者において、リンパ節に広がった原発性頸ガンの後退を認めた。腫瘍殺傷活性の機構は、免疫的であると考えられていたので、このウイルスの直接の腫瘍細胞傷害作用を検討するためには何ら研究がなされていなかった。代わりに、NDVの免疫調節作用に対して努力が集中されてきた。例えば、Murray、D.R、Cassel、W.A.、Torbin、A.H.Olkowski、Z.L.およびMoore、M.E.(1977)Cancer、40;680;Cassel、W.A.、Murray,D.R.およびPhillips、H.S.(1983)Cancer、52、856;Bohle、W.、Schlag、PJ、Liebrich、W.Hohneberger、P.,Manasterski,M.,Miller、P.およびSchirrmacher、V.(1990)Cancer 66、1517−1523を参照のこと。
【0010】
上記の引用においては、腫瘍後退のための特定のウイルスの選択は、偶然または試行錯誤に基づいていた。最近になってやっと、ガン処置におけるウイルスの使用のための合理的な機構に基づくアプローチがDNAウイルスを使用して開発された。この型のアプローチの例は、特定の組織起源の腫瘍においてのみ複製する組換えアデノウイルスベクター(Rodriguez、R.ら、1997 Cancer Res.57:2559−2563)または特定のカギとなる調節タンパク質を欠くベクター(Bischoff、JR.ら、1996 Science、274:373−376)の開発において見出される。最近の別のアプローチは、いくつかの腫瘍細胞において欠失する重要なタンパク質機能を回復するための複製非適合性組換えアデノウイルスベクターの使用であった(Zhang、WW、ら、1994、Cancer gene therapy、1:5−13)。最後に、単純ヘルペスウイルスもまた、腫瘍を特徴付ける、迅速に分裂する細胞において優先的に複製するように操作された(Mineta、T.ら、1994、Cancer Res.54:3963−3966)。
【0011】
米国特許出願第08/260,536号は、本明細書においてその全体が参考として援用され、これは、NDVまたは他のパラミクソウイルスのガン処置における使用を開示する。
【0012】
(ウイルスIFNトランスジーン発現)
ウイルス療法を用いるガンの処置に対する1つの一般的なアプローチは、腫瘍塊へ特定の遺伝子を送達するためのウイルスベクターの使用である。
【0013】
組換えアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、およびレトロウイルスは全て、インターフェロン遺伝子単独で、または他のサイトカイン遺伝子と組み合わせて発現させるために改変されてきた。
【0014】
Zhangら((1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:4513−4518)において、ヒトインターフェロンコンセンサス(すなわち、総合的な)遺伝子を発現する組換えアデノウイルスを使用して、ヌードマウス中のヒト乳ガン(または他の)異種移植片を処置した。著者らは、「低い病原性のウイルスを用いたウイルス腫瘍崩壊の組み合わせ、すなわち、IFNおよびIFN遺伝子治療に耐性であること自体は、特定の乳ガンにおいて、異なる種々の腫瘍型の処置への実り多いアプローチであり得た」ことを結論付けた。インターフェロン感受性ウイルスに関する本発明とは対照的に、Zhangら(1996)は、腫瘍の処置においてインターフェロン耐性アデノウイルスの使用を教示する。
【0015】
Zhangら((1996)Cancer Gene Ther.,3:31−38)は、コンセンサスIFNを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて、インビトロでヒト腫瘍細胞を形質導入して、次いで、ヌードマウスへ注射した。この形質導入された細胞は、腫瘍を形成しないか、または非形質導入コントロールよりも遅く増殖したかのいずれかであった。また、形質導入したヒト腫瘍細胞の、別の腫瘍塊、すなわち、形質導入していない腫瘍への注入によって、サイズが少し小さくなった。
【0016】
Peplinskiら((1996)Ann.Surg.Oncol.,3:15−23)において、IFNγ(および単独で、または組み合わせて発現される他のサイトカイン)を、マウス乳ガンモデルで試験した。マウスを、組換えワクシニアウイルスでウイルス的に改変した腫瘍細胞で免疫した。腫瘍細胞で再チャレンジした場合、ウイルス的に改変した細胞で免疫したマウスは、疾患がない状態の生存時間に実質的な改善が見られた。
【0017】
Gastlら((1992)Cancer Res.52:6229−6236)は、腎ガン腫細胞をインビトロで形質導入するためにIFNγ発現レトロウイルスベクターを使用した。これらの細胞は、より多量の、免疫系の機能のために重要な多くのタンパク質を生成したことが示された。
【0018】
Restifoら((1992)J.Exp.Med.,175:1423−1431)は、IFNγ発現レトロウイルスベクターを使用してマウス肉腫細胞カブを形質導入し、このことは、腫瘍細胞株がCD8+ T細胞へウイルス抗原をより効率的に提示することを可能にした。
【0019】
Howardら((1994)Ann.NY Acad.Sci.,716:167−187)は、マウスおよびヒト黒色腫細胞を形質導入するためにIFNγ発現レトロウイルスベクターを使用した。これらの細胞は、免疫系に重要なタンパク質の発言を増加したことが観察された。これらの細胞はまた、形質導入していない親株と比較して、マウスにおいてあまり腫瘍形成性ではなく、そしてインビボで腫瘍特異的CTL応答の活性化を生じた。
【0020】
(インターフェロンの治療的用量のウイルスガン治療に対するアジュバントとしての使用)
IFNの免疫増強特性が公知であるために、いくつかの研究によって、他のウイルスガンワクチン治療と組み合わせて、IFNタンパク質を使用することを研究してきた。非特許文献1において、208人の患者が自己の、NDV改変され、かつ致死的に照射された腎細胞ガン腫腫瘍細胞で免疫され、そして低用量のIL−2またはIFNαで同時処置した。著者らは、この処置レジメが、局所的に進行した腎細胞ガン腫を用いて、患者が通常の経過に対して改善を生じたことを述べた。この用量は、約3.3×103〜2.2×105PFU/kgであった。これは、全身的アプローチとは対照的に、抗腫瘍免疫応答を誘導するという目的を有する局所的投与であった。
【0021】
非特許文献2は、IFNαを、マウスにおけるガンワクチン治療モデルとして組換えワクシニアウイルスとともに同時投与した。この研究は、IFNを受けていないマウスと比較して、IFNを受けたマウスの生存率に統計的な改善を示した。著者らは、IFNの有効性が、CD8陽性T細胞のこれらの動物における誘導にあるとした。
【0022】
非特許文献3は、結腸ガンのマウスモデルを使用して、ワクシニアウイルス結腸腫瘍崩壊(VCO)ガン処置の有効性について、IFNαおよび/またはIL−2の同時治療を試験した。Arroyoらは、VCO+IL−2+IFNの三重の処置がこのマウスモデルにおいて最も有効であることを見出した。このアプローチは、抗腫瘍活性機構としての免疫化による。
【0023】
IFNをこれらの研究で使用して、ガン細胞が免疫系によって認識される能力を増強した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Kirchnerら(1995)World J.Urol.,13:171−173
【非特許文献2】Tanakaら(1994)J.Immunother.Emphasis Tumor Immunol.,16:283−293
【非特許文献3】Arroyoら(1990)Cancer Immunol.Immunother.,31:305−311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
(発明の目的)
本発明の目的は、ガンを含む疾患の処置のためのウイルスを提供することである。本発明のさらなる目的は、ガンを含む新生物疾患の処置のためのウイルスを提供することである。
本発明のさらなる目的は、候補ウイルスを、新生物疾患の治療で使用するために選択および/またはスクリーニングする方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、新生物疾患の処置においてウイルスの治療的有用性を増強するために、ウイルスを遺伝子操作するガイダンスを提供することである。 本発明のさらなる目的は、ウイルス殺傷に対する候補標的細胞の感受性を評価するという目的を有する、ウイルス治療のための潜在的な標的細胞をスクリーニングする方法を提供することである。
【0027】
本発明のなおさらなる目的は、ウイルス治療の管理のガイダンスを提供することである。
【0028】
本発明の目的は、大きな腫瘍を処置するための方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、精製されたウイルスおよびこれを得るための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
(発明の要旨)
本発明は、ウイルスを哺乳動物中の新生物に感染させる方法に関し、この方法は、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、イリドウイルス科、およびヘルペスウイルス科のRNAウイルスおよびDNAウイルスからなる群より選択される、インターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0031】
本発明はまた、ウイルスを哺乳動物中の新生物に感染させる方法に関し、この方法は、インターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルスを動物に全身投与する工程を包含する。
【0032】
本発明はまた、哺乳動物におけるガンを含む新生物を処置する方法に関し、この方法は、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、イリドウイルス科、およびヘルペスウイルス科のRNAウイルスおよびDNAウイルスからなる群より選択される、治療的に有効な量のインターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルスを動物に投与する工程を包含する。
【0033】
本発明はまた、ウイルスを哺乳動物中の新生物に感染させる方法に関し、この方法は、K3L、E3LおよびB18Rからなる遺伝子群より選択されるインターフェロンの抗ウイルス活性をブロッキングすることに関与する1つ以上のウイルス遺伝子における1つ以上の変異を有する、インターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ワクシニアウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0034】
本発明はまた、哺乳動物におけるガンを含む新生物を処置する方法に関し、この方法は、K3L、E3LおよびB18Rからなる遺伝子群より選択されるインターフェロンの抗ウイルス活性をブロッキングすることに関与する1つ以上のウイルス遺伝子における1つ以上の変異を有する、治療的に有効な量のインターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ワクシニアウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0035】
本発明はまた、ウイルスを、哺乳動物中の少なくともサイズが1cmの新生物に感染させる方法に関し、この方法は、哺乳動物中に(1)RNAウイルス;(2)ヘパドナウイルス;(3)パルボウイルス;(4)パポバウイルス;(5)ヘルペスウイルス;(6)ポックスウイルス;および(7)イリドウイルスからなる群より選択されるクローン性ウイルスを投与する工程を包含する。
【0036】
本発明はまた、哺乳動物における新生物を処置する方法に関し、この方法は、哺乳動物中に新生物のサイズが少なくとも1cmであって、(1)RNAウイルス;(2)ヘパドナウイルス;(3)パルボウイルス;(4)パポバウイルス;(5)ヘルペスウイルス;(6)ポックスウイルス;および(7)イリドウイルスからなる群より選択される治療的有効量のクローン性ウイルスを投与する工程を包含する。
【0037】
本発明はまた、哺乳動物における腫瘍を処置する方法に関し、この方法は、治療的に有効な量の、腫瘍に対して細胞殺傷性のRNAウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、この哺乳動物は、少なくとも全体重の1.5%を含む全身腫瘍組織量を有する。
【0038】
本発明はまた、腫瘍細胞または患者から新鮮に取り出した組織をスクリーニングして、ウイルスにより殺傷するための細胞または組織の感受性を決定する方法に関し、この方法は、インターフェロン感受性ウイルスを用いて細胞または組織を示差的細胞毒性アッセイに供する工程を包含する。
【0039】
本発明はまた、哺乳動物中の抗新生物活性を有するウイルスを同定するための方法に関し、この方法は、a)i)IFN媒介抗ウイルス活性が欠損した細胞、およびii)IFN媒介抗ウイルス活性がコンピテントな細胞に試験ウイルスを感染させる工程、ならびにb)試験ウイルスがIFN媒介抗ウイルス活性が欠損した細胞を、インターフェロン媒介抗ウイルス活性がコンピテントな細胞に対して、優先的に殺傷するか否かを決定する工程を包含する。
【0040】
本発明はまた、抗新生物治療に使用するためのウイルスを作製する方法に関し、この方法は、a)IFNの抗ウイルス効果の不活化についてのウイルス機構を減少させるか、または取り除くことによって既存のウイルスを改変する工程、および必要に応じてb)弱毒化する変異を作製し、このことによって上記の既存ウイルスのより低い病原性が生じる工程を包含する。
【0041】
本発明はまた、RNAウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、パルボウイルス、ヘパドナウイルス、水痘ウイルス(Varicellaviruses)、βヘルペスウイルス、およびγヘルペスウイルスからなる群より選択されるウイルスで処置した哺乳動物におけるウイルス複製を制御する方法に関し、この方法は、抗ウイルス化合物を投与する工程を包含する。
【0042】
本発明はまた、哺乳動物における新生物を処置または感染させる方法に関し、この方法は、哺乳動物に由来するサンプル(例えば、血清、腫瘍細胞、腫瘍組織、腫瘍切片)をイムノアッセイに供して、存在するウイルスレセプターの量を検出して、新生物がウイルスを結合し、かつ細胞溶解を引き起こさせることが可能であるか否かを決定する工程、およびレセプターが存在する場合、インターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルス(これは、レセプターに結合する)を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0043】
本発明はまた、ウイルスを哺乳動物における新生物に感染させる方法に関し、この方法は、脱感作する用量のインターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルスを哺乳動物に全身的に投与する工程を包含する。
【0044】
本発明はまた、ウイルスを哺乳動物中の新生物に感染させる方法に関し、この方法は、少なくとも4分間にわたって、インターフェロン感受性、複製コンピテントクローン性ウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0045】
本発明はまた、ウイルスを哺乳動物中の新生物に感染させる方法に関し、この方法は、ニューカッスル病ウイルスMK107株、ニューカッスル病ウイルスNJ Roakin株、シンドビスウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群より選択される複製コンピテントクローン性ウイルスを投与する工程を包含する。
【0046】
本発明には以下が含まれる:
i)ペレット化することなく超遠心によって精製されたパラミクソウイルス;
ii)タンパク質1mgあたり、少なくとも2×109PFUのレベルまで精製されたパラミクソウイルス;
iii)タンパク質1mgあたり、少なくとも1×1010PFUのレベルまで精製されたパラミクソウイルス;
iv)タンパク質1mgあたり、少なくとも6×1010PFUのレベルまで精製されたパラミクソウイルス;
v)タンパク質1mgあたり、少なくとも2×109PFUのレベルまで精製されたRNAウイルス;
vi)タンパク質1mgあたり、少なくとも1×1010PFUのレベルまで精製されたRNAウイルス;
vii)タンパク質1mgあたり、少なくとも6×1010PFUのレベルまで精製されたRNAウイルス;
viii)インターフェロン感受性であって、かつタンパク質1mgあたり、少なくとも2×109PFUのレベルまで精製された細胞殺傷DNAウイルス;
ix)a)K3L、E3LおよびB18R遺伝子のうち1つ以上で、1つ以上の変異を有し、そしてb)チミジンキナーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼ、dUTPaseをコードする遺伝子の1つ以上での変異を減少させる複製コンピテントワクシニアウイルス;
x)K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される、2つ以上の遺伝子で、1つ以上の変異を有する、複製コンピテントワクシニアウイルス;
xi)インターフェロン感受性を増加したヘルペスウイルスが生じるために(2’−5’)Aアナログの発現における改変を有するヘルペスウイルス;および
xii)インターフェロン感受性になったレオウイルスを生じるシグマ3で減少する変異を有するレオウイルス。
【0047】
以下の方法が本発明にもまた含まれる:
i)以下の工程を包含するRNAウイルスを精製する方法;
a)クローン性ウイルスを生成する工程;およびb)ペレット化することなく超遠心によって上記のクローン性ウイルスを精製する工程;またはc)引き続いてゲル濾過クロマトグラフィーを用いる、または用いない接線流濾過によって上記のクローン性ウイルスを精製する工程、ならびに
ii)ペレット化することなく超遠心によってか、または引き続いてゲル濾過クロマトグラフィーを用いるもしくは用いない接線流濾過によってウイルスを精製する工程を包含するパラミクソウイルスを精製する方法。
【0048】
本発明はまた、罹患した細胞が、インターフェロン媒介抗ウイルス応答の欠失を有し、治療的に有効な量のインターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ウイルスを哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物における疾患を処置する方法に関する。
本発明はまた、上記課題を解決するために、以下の項目を提供する。
(項目1) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性RNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目2) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、複製能を有するクローン性RNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして該ウイルスはインターフェロンに対する感受性を有する、方法。
(項目3) 哺乳動物における新生物を処置する方法であって、該方法は、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性RNAウイルスの治療的な有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目4) 前記RNAウイルスが、インターフェロンの非存在下に比較して、インターフェロンの存在下で、少なくとも100分の1複製する、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記RNAウイルスが、インターフェロンの非存在下に比較して、インターフェロンの存在下で、少なくとも1000分の1複製する、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記投与の工程が全身投与である、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記新生物がガンである、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記哺乳動物がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目9) 前記クローン性ウイルスがプラーク精製された、項目1に記載の方法。
(項目10) 前記クローン性ウイルスが組換えクローン性起源である、項目1に記載の方法。
(項目11) 前記RNAウイルスが、パラミクソウイルスである、項目1に記載の方法。
(項目12) 前記パラミクソウイルスが、1mgのタンパク質あたり、少なくとも2×109PFUのレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記パラミクソウイルスが、1mgのタンパク質あたり、少なくとも1×1010PFUのレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目14) 前記パラミクソウイルスが、1mgのタンパク質あたり、少なくとも6×1010PFUのレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目15) 前記パラミクソウイルスが、PFUあたりの粒子比が、5以下のレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目16) 前記パラミクソウイルスが、PFUあたりの粒子比が、3以下のレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目17) 前記パラミクソウイルスが、PFUあたりの粒子比が、1.2以下のレベルにまで精製されている、項目11に記載の方法。
(項目18) 前記パラミクソウイルスが、トリパラミクソウイルス2型である、項目11に記載の方法。
(項目19) 前記パラミクソウイルスが、NDVである、項目11に記載の方法。
(項目20) 前記パラミクソウイルスが、流行性耳下腺炎ウイルスである、項目11に記載の方法。
(項目21) 前記パラミクソウイルスが、ヒトパラインフルエンザウイルスである、項目11に記載の方法。
(項目22) 前記RNAウイルスがラブドウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルスおよびコロナウイルスからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目23) 前記トガウイルスがシンドビスウイルスである、項目22に記載の方法。
(項目24) 前記レオウイルスがσ3での改変を有する、項目22に記載の方法。
(項目25) 前記レオウイルスがσ1での弱毒性の変異を有する、項目22に記載の方法。
(項目26) 前記レオウイルスが弱毒化ロタウイルスである、項目22に記載の方法。
(項目27) 前記ロタウイルスがロタウイルスWC3である、項目26に記載の方法。
(項目28) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される1つ以上の遺伝子において1つ以上の変異を有する、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ワクシニアウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目29) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される1つ以上の遺伝子において1つ以上の変異を有する複製能を有するクローン性ワクシニアウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして、該ウイルスがインターフェロンに対する感受性を有する、方法。
(項目30) 哺乳動物における新生物を処置する方法であって、該方法は、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ワクシニアウイルスの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして、該ウイルスは、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される1つ以上の遺伝子において1つ以上の変異を有する、方法。
(項目31) 前記哺乳動物がヒトである、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記ワクシニアウイルスが、ワクシニア増殖因子、チミジンキナーゼ、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ、およびdUTPアーゼをコードする群より選択される遺伝子において弱毒化変異を有するワクシニアウイルスである、項目30に記載の方法。
(項目33) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、アデノウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、およびイリドウイルスからなる群より選択される、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性DNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目34) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、アデノウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、およびイリドウイルスからなる群より選択される、複製能を有するクローン性DNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして該ウイルスがインターフェロンに対して感受性を有する、方法。
(項目35) 哺乳動物における新生物を処置する方法であって、該方法は、アデノウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、およびイリドウイルスからなる群より選択される、インターフェロン感受性クローン性DNAウイルスの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目36) 前記哺乳動物がヒトである、項目33に記載の方法。
(項目37) 前記アデノウイルスウイルスが、該アデノウイルスがインターフェロン感受性になるようにVA1転写物に改変を有する、項目33に記載の方法。
(項目38) 前記アデノウイルスウイルスが、Ad−4、Ad−7およびAd−21のワクチン株からなる群より選択される、項目37に記載の方法。
(項目39) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ヘルペスウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目40) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、複製能を有するクローン性ヘルペスウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして該ウイルスがインターフェロンに対する感受性を有する、方法。
(項目41) 哺乳動物における新生物を処置する方法であって、該方法は、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ヘルペスウイルスの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目42) 前記ヘルペスウイルスがベータヘルペスウイルス亜科またはガンマヘルペスウイルス亜科のメンバーである、項目41に記載の方法。
(項目43) 前記ヘルペスウイルスが、HSV−1ではないアルファヘルペスウイルス亜科のメンバーである、項目41に記載の方法。
(項目44) 前記哺乳動物がヒトである、項目41に記載の方法。
(項目45) 前記ヘルペスウイルスが、(2’−5’)Anアナログの発現が減少したアルファヘルペスウイルス亜科のメンバーである、項目41に記載の方法。
(項目46) 前記ヘルペスウイルスが、チミジンキナーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼをコードする遺伝子からなる群より選択される弱毒化変異、またはb’a’c’反転反復遺伝子座に欠失を有するヘルペスウイルスである、項目45に記載の方法。
(項目47) 前記ヘルペスウイルスがガンマ34.5遺伝子において改変を有する、項目45に記載の方法。
(項目48) 前記ヘルペスウイルスがガンマ34.5遺伝子において改変およびチミジンキナーゼをコードする遺伝子に弱毒化変異、またはb’a’c’反転反復遺伝子座または機能的に類似の遺伝子座において欠失を有する、項目41に記載の方法。
(項目49) 前記ヘルペスウイルスがチミジンキナーゼ、およびリボヌクレオチドレダクターゼからなる群より選択される遺伝子に弱毒化変異、またはb’a’c’反転反復遺伝子座において欠失を有するヘルペスウイルスである、項目41に記載の方法。
(項目50) 前記新生物が、肺ガン、結腸ガン、前立腺ガン、乳ガン、および脳腫瘍からなる群より選択されるガンである、項目1に記載の方法。
(項目51) 前記新生物が、固形腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目52) 前記脳腫瘍が神経膠芽腫である、項目50に記載の方法。
(項目53) 前記ウイルスが、インターフェロンのウイルス発現を可能にする、インターフェロンをコードする遺伝子を含む、項目1に記載の方法。
(項目54) 前記ウイルスがプロドラッグ活性化酵素をコードする遺伝子を含む、項目1に記載の方法。
(項目55) 前記ウイルス投与の前、間または後にインターフェロンを投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目56) 前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−インターフェロン、ω−インターフェロン、γ−インターフェロンおよび合成コンセンサス形態のインターフェロンからなる群より選択される、項目55に記載の方法。
(項目57) 前記ウイルス投与の前、間または後にチロシンキナーゼインヒビターを投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目58) プリンヌクレオシドアナログ、チロシンキナーゼインヒビター、シメチジン、およびミトコンドリアインヒビターからなる化合物の群より選択される化合物をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目59) 前記ウイルス投与の前、間または後に化学療法薬剤を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目60) 前記ウイルス投与の前、間または後にサイトカインを投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目61) 前記ウイルス投与の前、間または後に免疫抑制剤を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目62) インターフェロン、リバビリン、アシクロビル、およびガンシクロビルからなる群より選択される化合物のウイルス複製制御量を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目63) 前記投与が静脈内投与または腫瘍内投与である、項目1に記載の方法。
(項目64) 哺乳動物における少なくとも1cmの大きさの新生物にウイルスを感染させる方法であって、該方法は、(1)RNAウイルス;(2)ヘパデナウイルス;(3)パルボウイルス;(4)パポバウイルス;(5)ヘルペスウイルス;(6)ポックスウイルス;および(7)イリドウイルスからなる群より選択されるクローン性ウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目65) 哺乳動物における少なくとも1cmの大きさの新生物を処置する方法であって、(1)RNAウイルス;(2)ヘパデナウイルス;(3)パルボウイルス;(4)パポバウイルス;(5)ヘルペスウイルス;(6)ポックスウイルス;および(7)イリドウイルスからなる群より選択されるクローン性ウイルスの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目66) 前記新生物は少なくとも300mm3の体積である、項目64に記載の方法。
(項目67) 前記RNAウイルスがパラミクソウイルスである、項目64に記載の方法。
(項目68) 前記パラミクソウイルスがNDVである、項目67に記載の方法。
(項目69) 前記哺乳動物がヒトである、項目64に記載の方法。
(項目70) 前記投与が静脈内投与または腫瘍内投与である、項目64に記載の方法。
(項目71) 前記パラミクソウイルスが、1mgのタンパク質あたり、少なくとも2×109PFUのレベルにまで精製されている、項目64に記載の方法。
(項目72) 前記NDVが亜病原性である、項目68に記載の方法。
(項目73) 前記新生物がガン性である、項目65に記載の方法。
(項目74) 哺乳動物における腫瘍を処置する方法であって、該方法は、治療有効量の該腫瘍に対して細胞破壊性のRNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含し、そして該哺乳動物が、該哺乳動物の総体重の少なくとも1.5%を含む腫瘍負荷を有する、方法。
(項目75) 前記腫瘍が化学療法に応答しない、項目74に記載の方法。
(項目76) 患者から新たに取り出した腫瘍細胞または組織をスクリーニングして、ウイルスによる殺傷に対する該細胞または組織の感受性を決定する方法であって、インターフェロン感受性ウイルスを用いた示差的細胞傷害性アッセイに組織サンプルを供する工程、を包含する、方法。
(項目77) さらに、p68タンパク質キナーゼ、C−Myc、C−Myb、ISGF−3、IRF−1、インターフェロンレセプターおよびp58からなる群より選択される、タンパク質またはタンパク質をコードするmRNAについて前記細胞または組織をスクリーニングする工程、を包含する、項目76に記載の方法。
(項目78) 哺乳動物における抗新生物活性を有するウイルスを同定するための方法であって、以下の工程:
(a)該試験ウイルスを使用して、(I)インターフェロン媒介抗ウイルス活性を欠く細胞、および(ii)インターフェロン媒介抗ウイルス活性の能力を有する細胞に感染させる工程、ならびに
(b)該試験ウイルスが、該インターフェロン媒介抗ウイルス活性を欠く細胞を、該インターフェロン媒介抗ウイルス活性の能力を有する細胞よりも優先的に殺傷するか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
(項目79) 前記インターフェロン媒介抗ウイルス活性を欠く細胞がKBヒト頭部および頸部ガン細胞である、項目78に記載の方法。
(項目80) 前記インターフェロン媒介抗ウイルス活性の能力を有する細胞がヒト皮膚線維芽細胞である、項目78に記載の方法。
(項目81) 抗新生物治療における使用のためにウイルスを作製する方法であって、該方法は以下の工程:
(a)存在するウイルスを、インターフェロンの抗ウイルス効果の不活化についてのウイルス機構を減少または消失させることによって改変する工程;および必要に応じて、
(b)弱毒化変異を作製する工程、
を包含する、方法。
(項目82) ウイルスで処置される哺乳動物におけるウイルス複製を制御する方法であって、該ウイルスは、RNAウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、イリドウイルス、パルボウイルス、ヘパドナウイルス、水痘ウイルス、ベータヘルペスウイルス、およびガンマヘルペスウイルスからなる群より選択され、そして、該方法は抗ウイルス化合物を投与する工程を包含する、方法。
(項目83) 前記抗ウイルス化合物がインターフェロンである、項目82に記載の方法。
(項目84) 前記抗ウイルス化合物がリバビリン、アシクロビルおよびガンシクロビルからなる群より選択される、項目82に記載の方法。
(項目85) 前記抗ウイルス化合物が、前記ウイルスに対する中和抗体である、項目82に記載の方法。
(項目86) ペレット化することなく超遠心分離よって精製した、パラミクソウイルス。
(項目87) 少なくとも2×109PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、パラミクソウイルス。
(項目88) 卵中で増殖され、そして混入する卵タンパク質を実質的に含まない、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目89) 5以下のPFUあたりの粒子比を有する、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目90) 3以下のPFUあたりの粒子比を有する、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目91) 1.2以下のPFUあたりの粒子比を有する、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目92) 少なくとも1010PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、パラミクソウイルス。
(項目93) 少なくとも6×1010PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、パラミクソウイルス。
(項目94) 前記ウイルスが細胞破壊性である、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目95) 前記パラミクソウイルスが、ニューカッスル病ウイルスである、項目87に記載のパラミクソウイルス。
(項目96) 前記NDVが細胞破壊性である、項目95に記載のパラミクソウイルス。
(項目97) 前記NDVが亜病原性である、項目95に記載のパラミクソウイルス。
(項目98) 少なくとも2×109PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、RNAウイルス。
(項目99) 前記ウイルスが複製コンピテントである、項目98に記載のRNAウイルス。
(項目100) インターフェロン感受性であって、そして少なくとも2×109PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、複製能を有する細胞破壊性ウイルス。
(項目101) 前記ウイルスがクローン性である、項目100に記載の細胞破壊性ウイルス。
(項目102) インターフェロン感受性であり、そして2×109PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製された、細胞破壊性DNAウイルス。
(項目103) 前記ウイルスがポックスウイルスである、項目102に記載の細胞破壊性DNAウイルス。
(項目104) 前記ポックスウイルスが、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される1つ以上の遺伝子において1つ以上の変異を有するワクシニアウイルスである、項目103に記載の細胞破壊性DNAウイルス。
(項目105) (a)K3L、E3LおよびB18Rの1つ以上の遺伝子において1つ以上の変異、ならびに(b)チミジンキナーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼ、dUTPアーゼをコードする1つ以上の遺伝子において弱毒化変異を有する、複製コンピテントであるワクシニアウイルス。
(項目106) K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される2つ以上の遺伝子において1つ以上の変異を有する、複製コンピテントであるワクシニアウイルス。
(項目107) (2’−5’)Aアナログの発現に改変を有する、ヘルペスウイルス。
(項目108) σ3での改変を有し、そして少なくとも2×109PFU/mgタンパク質のレベルにまで精製されている、レオウイルス。
(項目109) σ1およびσ3に変異を有する、レオウイルス。
(項目110) RNAウイルスを精製する方法であって、以下の工程:
(a)クローン性ウイルスを生成する工程、および
(b)ペレット化することなく超遠心分離によって該クローン性ウイルスを精製する工程、
を包含する、方法。
(項目111) 前記RNAウイルスが複製コンピテントである、項目110に記載の方法。
(項目112) パラミクソウイルスを精製する方法であって、ペレット化することなく超遠心分離によって該ウイルスを精製する工程、を包含する、方法。
(項目113) 前記精製工程が、前記超遠心分離の前にさらに以下の工程:
(a)プラーク精製してクローン性ウイルスを生成する工程、
(b)該クローン性ウイルスを卵に接種する工程、
(c)該卵をインキュベートする工程、
(d)該卵を冷却する工程、
(e)該卵から尿膜腔液を採取する工程、および
(f)該尿膜腔液から細胞砕片を除去する工程、
を包含する、項目112に記載の方法。
(項目114) 前記パラミクソウイルスウイルスがNDVである、項目112に記載の方法。
(項目115) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させる方法であって、インターフェロン感受性の複製能を有するRNAウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目116) 前記ウイルスがニューカッスル病ウイルス株ML107、ニューカッスル病ウイルス株NJ Roakin、シンドビスウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目117) 哺乳動物における新生物にウイルスを感染させるための方法であって、該方法は、ニューカッスル病ウイルス株ML107、ニューカッスル病ウイルス株NJ Roakin、シンドビスウイルス、および水疱性口内炎ウイルスからなる群より選択されるクローン性ウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目118) 前記ウイルスが1を超える用量として投与される、項目1、28または33に記載の方法。
(項目119) 前記第一の用量が脱感作用量である、項目118に記載の方法。
(項目120) 前記第一の用量が静脈内投与され、そして続く用量が静脈内に投与される、項目119に記載の方法。
(項目121) 前記第一の用量が静脈内投与され、そして続く用量が腹腔内投与される、項目119に記載の方法。
(項目122) 前記第一の用量が静脈内投与され、そして続く用量が動脈内投与される、項目119に記載の方法。
(項目123) 哺乳動物における新生物を処置する方法であって、該方法は、該哺乳動物からのサンプルをイムノアッセイに供して、該サンプルに存在するウイルスレセプターの量を検出する工程と、該レセプターが存在する場合、該レセプターに結合する、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ウイルスを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目124) 前記ウイルスがシンドビスウイルスであり、そして前記レセプターが高親和性ラミニンレセプターである、項目123に記載の方法。
(項目125) 前記ウイルスが、少なくとも4分間のコースにわたって投与される、項目1、28または33に記載の方法。
(項目126) 腫瘍腹水を処置する方法であって、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ウイルスを投与する工程を包含する、方法。
(項目127) 哺乳動物における疼痛を減少させる方法であって、インターフェロン感受性の複製能を有するクローン性ウイルスを投与する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ウイルス抗原発現における抗インターフェロンβ抗体の効果およびNHEK(正常ヒト上皮ケラチノサイト)細胞における感染力価を示す。
【図2】図2は、異なる細胞(正常ヒト皮膚線維芽細胞CCD922−skおよび2つの型の頭部および頚部ガン腫細胞(KBおよびHep2細胞))におけるウイルス抗原発現に対するインターフェロンβの効果を示す。
【図3】図3Aは、CCD922−sk細胞におけるウイルス抗原発現に対するインターフェロンの効果を示す。および図3Bは、KB細胞におけるウイルス抗原発現に対するインターフェロンの効果を示す。
【図4】図4は、ヒトES−2卵巣ガン腫細胞を有する無胸腺マウスおよび生理食塩水またはNDV株PPMK107のいずれかを用いて処置した無胸腺マウスについての生存曲線を示す。
【図5】図5は、多くのヒト腫瘍および正常細胞株のインターフェロン応答性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
本発明は、どのウイルス複製が、インターフェロン(IFN)媒介抗ウイルス応答が欠失した新生物細胞を選択的に殺傷するかによる新規な機構の発見に関する。本発明はまた、ガンおよび大きな腫瘍を含む新生物疾患の処置のためのウイルスの選択、設計、精製、および使用のための方法を提供する。本発明のウイルスは、IFN媒介抗ウイルス応答のこれらの細胞中での選択的欠損に基づいて、新生物細胞中で選択的に複製し、新生物細胞を殺傷する。適切な用量のウイルスの投与によって、新生物細胞死が生じる一方で、インタクトなIFN媒介抗ウイルス応答を有する正常細胞はウイルスの複製が制限され、そして殺傷されない。
本発明の主題において、ガンのような新生物疾患を含む疾患の処置において使用するためのパラミクソウイルス(例えば、NDV、および他のウイルス)の使用が含まれる。本発明はまた、新生物疾患の治療剤として使用するために適切な他のウイルスのスクリーニングおよび操作を教示する。本発明の別の実施態様は、ウイルス治療のための候補である腫瘍組織を同定するための方法を包含する。最終的に、本発明はまた、高度に精製されたウイルスの調製を記載する。
【0051】
(NDVを含むインターフェロン感受性ウイルスの、新生物疾患を処置するための使用についての原理)
(NDVは、腫瘍細胞の選択的殺傷を示す)
ニューカッスル病ウイルスは、多くのヒト腫瘍細胞に対して選択的細胞傷害性効果を引き起こし、大部分の正常ヒト細胞に対してあまり顕著な効果を有さない。示差的な細胞傷害性アッセイにおいて、肉腫、黒色腫、乳ガン腫、卵巣ガン腫、膀胱ガン腫、結腸ガン腫、前立腺ガン腫、小細胞肺ガン腫および非小細胞肺ガン腫、ならびに神経膠芽腫に由来するヒトガン細胞は、多くの正常ヒト細胞(腎臓上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、および内皮細胞(図1を参照のこと))よりもNDVに対して、約3倍〜4倍のオーダーでより感受性であることが発見された。示差的な細胞傷害性アッセイはまた、患者の細胞または腫瘍組織からの新鮮な単離物に適用され得る。
【0052】
インビトロアッセイを使用して、実施例1に記載したようなNDVの腫瘍殺傷活性を規定する。このアッセイは、5日間で試験した細胞培養物の50%を殺傷するために必要なウイルスの量を測定する。実施例2および3は、インビボ実験の結果を示す。ここで、ウイルスがヒト腫瘍異種移植片を有する無胸腺マウスに、腫瘍内経路(実施例2)または静脈内経路(実施例3)のいずれかで投与された。これらの結果は、NDVが潜在的な化学療法剤の試験のために標準的な動物モデルにおける、種々のヒト腫瘍型の後退を引き起こし得る。
【0053】
NDVが腫瘍内で特異的に複製するという証拠は、ウイルス抗原のための免疫組織化学染色(実施例2)によって示された。腫瘍内ウイルス注入の30分以内に、腫瘍組織はウイルス抗原について陰性であった。しかし、処置の2日後まで、ウイルス抗原に対する強い免疫染色が腫瘍内で見られ、これは、腫瘍内でのウイルス複製を示す。重要なことに、ウイルス複製は、腫瘍組織に特異的であった。なぜなら、隣接する結合組織および皮膚は、ウイルス抗原について陰性であったからである。
【0054】
重要なことに、NDVの効率的な複製は、UV不活化された非クローン性ウイルスを使用する研究において示されるように、ウイルスが感染した細胞を殺傷する能力に重要である(Lorence,R.ら、1994 J Natl Cancer Inst,86:1228−1233)。
【0055】
NDVはまた、腫瘍内および静脈内投与の後に大きな腫瘍の後退を引き起こし得る(実施例4〜9)。無胸腺マウスにおける表皮内A375ヒトメラノーマの大きな異種移植片(最大直径≧10mm;腫瘍容積≧300mm3)の腫瘍内NDV処置は、高い割合の腫瘍後退を導く(実施例4〜8)。無胸腺マウスにおける皮下HT1080ヒト線維芽肉腫の大きな異種移植片(最大直径≧10mm)の静脈内NDV処置は、6匹のマウスのうち5匹のマウスに完全なまたは部分的な腫瘍後退を導く(実施例9)。
【0056】
(サイトカインのクラスIインターフェロンファミリーは、ウイルス感染の重要な陰性モジュレーターである)
クラスIのインターフェロンは、IFNα(造血起源の細胞において主に見られる)およびIFNβ(線維芽細胞および上皮細胞において見られる)から構成される(Joklik,W.K.1990.Interferons.第383〜410頁、Virology、第2版、B.N.Fields,D.M.Knipeら編、Raven Press Ld.,New York:およびSreevalsan,T.、1995、Biological Therapy with Interferon−α and β:Preclinical Studies、第347−364頁、Biologic Therapy of Cancer、第2版、V.T.De Vita,Jr.,S.HellmanおよびS.A.Rosenberg,J.B.,Lippincott Company,Philadelphia)。IFNの両方の型は、ウイルス複製の2本鎖RNA中間体の分解を含む、明らかに一般的な作用機構および2本鎖RNAによって活性化されたタンパク質キナーゼの活性によって細胞性翻訳の阻害によって機能する(Joklik,W.K.1990.Interferons.第383−410頁、Virology.第2版、B.N.Fields,D.M.Knipeら編、Raven Press Ltd.,New York:およびその中に記載の参考文献)。いくつかのウイルス(インフルエンザ、EBV、SV40、アデノウイルス、ワクシニア)は、IFN系の1つ以上の経路が不活化されることによる機構を進化させたため、ウイルスの有効な複製が可能になった(Katze,M.G.1995.Trends in Microbiol.3:75−78)。
【0057】
(広範な種々の腫瘍細胞は、IFN依存性機構によってウイルス感染を制限する能力が欠失している)
ヒト頚部ガン腫細胞(HeLa)は、IFNで前処置した後に水疱性口内炎ウイルスの複製の阻害に対して、非形質転換線維芽コントロール細胞株より、1/300未満の感受性であった(Maheshwari R.K.1983.Biochem.Biophys.Res.Comm.17:161−168)。本発明者らは、腫瘍形成性ヒト頭部および頚部ガン腫細胞(KB)および正常ヒト皮膚線維芽細胞(CCD922−sk)の同時培養の感染は、両方の細胞型において最初にウイルス複製、次いで、継続される複製および腫瘍細胞の殺傷に対して正常細胞の感染の制限が生じることを発見した(実施例10)。さらに、IFNは、培養培地に正常細胞によって分泌されており、腫瘍細胞は、抗ウイルス状態を確立するために産生されている濃度でIFNに応答し得なかった。正常細胞に対して、腫瘍細胞のNDVによる殺傷に対する異なる感受性によるIFNの役割についてのさらなる証明は、正常線維芽細胞(CCD922−sk)または正常上皮ケラチノサイト細胞(NHEK)がIFNに対する中和抗体(実施例11および12)の存在下でNDVでの感染に対してより感受性になることが示された、2つの別個の実験で得られる。最終的に、IFNの存在下での正常線維芽細胞(CCD922−sk)およびヒト腫瘍細胞(KB)の並行感染は、正常細胞が腫瘍細胞より、添加したIFNの抗ウイルス効果より、少なくとも100倍感受性であったことを明らかにした(実施例13および14)。種々の腫瘍細胞株(合計9)の類似の試験は、細胞株のNDVによる殺傷に対する相対的な感受性おける明らかな相関およびこの細胞株がインターフェロン媒介抗ウイルス応答を顕すことができないことを明らかにした(実施例26)。
【0058】
(インターフェロンおよび細胞増殖)
天然および組換え形態のα−IFN、β−IFN、ω−IFN、およびγ−IFNならびに合成コンセンサス形態(例えば、Zhangら(1996)Cancer Gene Therapy,3:31−38に記載のとおり)を含むインターフェロン(IFN)のいくつかの種が存在する。この発見を導く抗ウイルス活性に加えて、IFNは、いまや、細胞増殖および分化の正常な調節に重要な役割を果たすことが公知である。IFNは、ネガティブな増殖調節因子および正常細胞において腫瘍サプレッサタンパク質として作用することが示されているIFNの活性の機能および調節に関与するいくつかの重要なタンパク質であると考えられている(Tanakaら、1994 Cell 77:829−839)。さらに、IFNの抗ウイルス活性を拮抗することが公知であるいくつかの他のタンパク質は、不適切に発現した場合、腫瘍形成能力を有することが示されている(以下を参照のこと。Barber,GN,1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4278−4282)。多くのヒトガンに由来する細胞は、IFNをコードする遺伝子が欠失していることが示され(James,CD,ら、1991、Cancer Res.51:1684−1688)、そしてIFN機能が部分的または完全に損失していることがヒト頚部ガン腫(Petricoin,E.ら、1994、Mol.Cell.Bio.14:1477−1486)、慢性リンパ性白血病(Xu,B.ら、1994、Blood 84:1942−1949)、および悪性黒色腫細胞(Linge,C.ら、1995、Cancer Res.55:4099−4104)において観察されたことが示された。
【0059】
IFN誘導タンパク質キナーゼ(p68)は、細胞およびウイルスタンパク質合成の重要な調節因子であることが示された。p68キナーゼの細胞の分化状態に対しての発現または活性と関連する相関が示された。従って、ほとんど分化していない細胞(例えば、多くのガンにおいて生じる細胞)は、p68機能が欠失している(Haines、G.K.ら、1993 Virchows Arch B Cell Pathol.63:289−95)。p68活性を欠失している細胞は、一般的に、ウイルス媒介殺傷に対して感受性である。なぜなら、p68キナーゼは、IFN誘導抗ウイルス状態の重要なエフェクターであるからである。p68の抗ウイルス活性は、p58と同定された細胞タンパク質と直接相互作用することによって拮抗され得る。NIH3T3細胞においてクローン性され、かつ過剰発現された場合、p58は、細胞に形質転換した表現型および固定依存性増殖を示させる(Barber GNら、1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4278−4282)および多くのヒト白血病細胞株が、p58タンパク質を過剰発現することを示した(Korth MJら、1996 Gene 170:181−188)。分化していない細胞におけるウイルス殺傷に対する感受性は、より分化した表現形の誘導によって明らかになり得る(Kalvakolanu,DVRおよびSen.G.C.1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3167−3171)。
【0060】
(定義)
(インターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞)
本明細書中で使用される用語「インターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞」とは、低レベル(例えば、1mlあたり10ユニット)の外因性インターフェロンに、インターフェロンの非存在下と比較して、インターフェロン感受性ウイルスの複製を有意に減少させること(少なくとも10分の1、より有利には少なくとも100分の1、より有意には少なくとも1000分の1、そして最も有利には、少なくとも10,000分の1)によって応答する細胞である。ウイルス複製の程度は、ウイルス(例えば、感染性ウイルス、ウイルス抗原、ウイルス核酸)の量を測定することによって決定される。CCD922正常線維芽細胞は、インターフェロン媒介抗ウイルス活性応答においてコンピテントな細胞である。
【0061】
(インターフェロン媒介抗ウイルス応答が欠失している細胞)
本明細書中で使用される用語「インターフェロン媒介抗ウイルス応答が欠失している細胞」とは、インターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞についての上記の基準を満たさない、すなわち、低レベル(例えば、1mlあたり10ユニット)の外因性インターフェロンに、インターフェロンの非存在下と比較して、インターフェロン感受性ウイルスの複製を有意に減少させることによって応答しない細胞である。KB経口ガン腫細胞は、インターフェロン媒介抗ウイルス応答が欠失している細胞である。
【0062】
(クローン性)
用語「クローン性」ウイルスの使用は、本明細書中以降、単一の感染性ウイルス粒子に由来するウイルスとして定義される。そのために、個々の分子クローンは、有意な核酸配列相同性を有する。例えば、配列相同性は、300の連続するヌクレオチドに対して、ビリオンの集団に由来する少なくとも8つの個々の分子クローンが95%を超える、より有利には97%を超える、より有利には99%を超える、そして最も有利には100%を超える配列相同性を有する。
【0063】
(細胞殺傷性)
本明細書中で使用される用語「細胞殺傷性」ウイルスとは、細胞に感染して、細胞死を生じさせるウイルスをいう。
【0064】
(脱感作用量)
本明細書中で使用される語句「脱感作用量」とは、ウイルスの引き続く用量の副作用を低減させるために必要なウイルスの量をいう。
【0065】
(示差的細胞傷害性アッセイ)
ウイルスを使用して腫瘍細胞または組織をスクリーニングするために、本明細書中で使用される語句「示差的細胞傷害性アッセイ」とは、(a)腫瘍細胞および1つ以上のコントロール細胞または組織のウイルス感染;(b)感染の1日以上後の各サンプルについての細胞生存または死亡の決定(例えば、実施例1において詳述されるように細胞生存の色素指示薬の使用による);および(c)この結果に基づく、コントロールと比較して、ウイルスに対するサンプルの感受性の予測(例えば、実施例1に詳述されるIC50の決定による)をいう。
【0066】
(新生物に感染する)
本明細書中で使用される用語「新生物に感染する」とは、ウイルス核酸が新生物細胞または組織へ進入することをいう。
【0067】
(インターフェロン感受性)
本明細書中で使用される語句「インターフェロン感受性」ウイルス(例えば、NDV)は、インターフェロンの非存在下と比較して、インターフェロンの存在下において有意にあまり複製しない(少なくとも10分の1、有利には、少なくとも100分の1、より有利には、少なくとも1000分の1、最も有利には、少なくとも10,000分の1)ウイルスを意味する。これは、低レベルの外因性インターフェロン(例えば、1mlあたり10ユニット)の存在または非存在下において、インターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞から得られたウイルス(例えば、感染性ウイルス、ウイルス抗原、ウイルス核酸)の量を測定することによって決定される。
【0068】
(新生物および新生物疾患)
本明細書中で使用される「新生物」は、腫瘍、良性の増殖(例えば、コンジローム、乳頭腫)、および悪性の増殖(例えば、ガン)を含む組織の新たな増殖を意味する。本明細書中で使用される「新生物疾患」とは、新生物の存在によって表された疾患をいう。
【0069】
(複製コンピテント)
本明細書中で使用される用語「複製コンピテント」ウイルスとは、新生物細胞中で感染性子孫を生成するウイルスをいう。
【0070】
(卵タンパク質の夾雑が実質的にない)
用語「卵タンパク質の夾雑が実質的にない」とは、以下によって当業者によって実施されるように、オボアルブミンがウェスタンブロットにおいて検出不可能であるウイルス精製のレベルをいう:(1)1ウェル(幅3.3cm)あたり1.7×109PFUのウイルスを用いて、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル(厚さ1mm)で泳動して;(2)ニトロセルロース膜にゲルからウイルスタンパク質を転写して;そして(3)ウサギ抗オボアルブミン(4mg/mlの抗体濃度の1:200希釈でのウサギIgG画分(Cappel,Inc.から)または等価なポリクローナル抗体)を使用してオボアルブミンについて免疫染色する。
【0071】
(治療的に有効な量)
本明細書中で使用される用語「治療的に有効な量」とは、新生物疾患の処置をいう場合、所望の効果(例えば、新生物増殖の乾酪化、腫瘍後退、臨床状態の改善、または生存率の増加)を生じるウイルスの量をいう。
【0072】
(本発明の化合物)
ウイルスの多様な群は、新生物細胞を選択的に殺傷するために使用される。天然または操作されたウイルスは、抗新生物剤として機能し得る。これらのウイルスは、i)新生物細胞に感染して、新生物細胞死を生じ;ii)新生物細胞において複製コンピテントであり;そしてiii)インターフェロンの抗ウイルス効果によって正常細胞の殺傷が制限される。
【0073】
本発明の有利な実施態様において、上記の3つの特徴[(i)新生物細胞に感染して、新生物細胞死を生じ;(ii)新生物細胞において複製コンピテントであり;そして(iii)インターフェロンの抗ウイルス効果によって正常細胞の殺傷が制限される]を有するウイルスはまた、インターフェロンを誘導する。
【0074】
本発明の別の有利な実施態様において、上記の3つの特徴を有するウイルスはまた、ヒト新生物の後退を引き起こし;および/または以前から存在する免疫の存在のために標的ヒト集団で中和されない。
【0075】
本発明の別の有利な実施態様において、上記の3つの特徴を有するウイルスは、腫瘍細胞に対して細胞殺傷性である。
【0076】
パラミクソウイルス(本明細書中で使用される「パラミクソウイルス」とは、パラミクソウイルス科のメンバーをいう)は、本発明に従って使用されて、大きな腫瘍または高い腫瘍負荷を有する宿主を含む新生物の処置し得る。パラミクソウイルス科は、3つの属を含む:(1)パラミクソウイルス;(2)麻疹様ウイルス(麻疹ウイルス属);および(3)RSウイルス(肺炎ウイルス)。これらのウイルスは、RNAゲノムを含む。細胞殺傷性のパラミクソウイルス科ウイルス、特にパラミクソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス(「NDV」)およびトリパラミクソウイルス2型のような他のトリパラミクソウイルス)は、本発明を実施する有利な方法である。これらのウイルスの弱毒化株は、特に本発明に従う新生物の処置のために特に有効である。
【0077】
NDVは、本発明に従う特に有利なウイルスである。NDVは、ニワトリおよびニワトリ胚に対するその効果に従って、3つの異なるクラスに分類される。「低いビルレンス」株とは、長潜伏期性(lentogenic)をいい、最小致死量(MLD)でニワトリ胚を殺傷するために90〜150時間かかる;「中程度のビルレンス」株とは、亜病原性(mesogenic)をいい、そしてMLDでニワトリ胚を殺傷するために60〜90時間かかる;「高いビルレンス」株とは、短潜伏期性(velogenic)をいい、MLDでニワトリ胚を殺傷するために40〜60時間かかる。例えば、HansonおよびBrandly,1995(Science,122:156−157)ならびにDardiriら、1996(Am.J.Vet.Res.918−920)を参照のこと。3つの全てのクラスが有用であり、有利には、NDVの亜病原性株(例えば、MK107株、NJ Roakin株、およびConnecticut−70726株(実施例21〜23を参照のこと))である。他の亜病原性株の列挙については、例えば、SchloerおよびHanson、1968(J.Virol.2:40−47)を参照のこと。
【0078】
特定の目的のために、クローン性ウイルスを得て、特定のウイルス株の遺伝的均質性を確実にするかまたはそれを増加させ、そして欠失干渉粒子を取り除くことが望ましい。クローン性による欠失干渉粒子の除去は、感染性粒子あたりの全ウイルス粒子の数(例えば、粒子数/PFU)によって評価される、最終産物の純度を増加させることが可能である。
【0079】
クローン性ウイルスは、当業者に利用可能な任意の方法に従って生成され得る。例えば、プラーク精製は、クローン性ウイルスを得るために慣用的に利用される。例えば、Maassabら、Plotkin and Mortimer編、Vaccines.Philadelphia:W.B.Saunders Co.1994、第78−801頁を参照のこと。三重プラーク精製が特に望ましく、ここでプラークは、所望の特徴(例えば、好ましいサイズ、形状、外観、または親株の代表物を有する精製の各回で選択される。クローン性ウイルスを生成する別の手段は、当業者によって適用可能なDNA組換え技術による。クローン性ウイルスを得る別の手段は、限界希釈技術を適用する(例えば、ウイルスサンプルの希釈物を添加して、感受性細胞の単層を含む1ウェルあたり平均1つ未満の感染性ウイルス粒子を与える)。
【0080】
本発明の有利な実施態様において、精製されたウイルスを使用して、新生物疾患を処置する。卵由来のウイルスの精製のための有利な方法は、以下のとおりである(ウイルスは、これらの方法のいずれの工程においてもペレット化されない):
精製方法A
a)クローン性ウイルスを生成する(例えば、プラーク精製)
b)卵にクローン性ウイルスを接種する
c)卵をインキュベートする
d)卵を冷やす
e)卵から尿膜腔液を回収する
f)尿膜腔液から細胞砕片を除去する
g)(例えば、不連続スクロース勾配を使用して)ペレット化することなく尿膜腔液を超遠心する。
【0081】
本発明の別の実施態様において、さらなる工程が、(尿膜腔液からの)細胞砕片の除去後および超遠心の前に加えられ、この工程は以下からなる:
・尿膜腔液を凍結融解する
・(例えば、遠心分離によって)ウイルス懸濁液から夾雑物質を取り除く。
【0082】
本発明の別の実施態様において、超遠心は、連続流(continuous flow)超遠心によって達成される。
【0083】
本発明の1つの実施態様は、複製コンピテントRNAウイルスを精製する方法に関し、この方法は、以下を包含する:
a)クローン性ウイルスを生成する工程、および
b)上記のクローン性ウイルスをペレット化することなく超遠心によって精製する工程。
【0084】
本発明の別の実施態様は、パラミクソウイルス(例えば、NDV)をペレット化することなく超遠心によって精製する工程を包含する、このウイルスを精製する方法を包含する。
【0085】
必要に応じて、超遠心の前に、精製工程はさらに以下を包含する:
a)プラークを精製して、クローン性ウイルスを生成する工程、
b)このクローン性ウイルスを卵に接種する工程、
c)卵をインキュベートする工程、
d)卵を冷やす工程、
e)卵から尿膜腔液を回収する工程、および
f)尿膜腔液から細胞砕片を除去する工程。
【0086】
本発明の別の実施態様は、卵または細胞培養物から複製コンピテントクローン性ウイルスを精製する方法を包含し、この方法は、ウイルスをペレット化させる工程を伴わずに、超遠心工程を包含する。
【0087】
本発明の別の実施態様は、連続接線流濾過(sequential tangential flow filtration)(TFF)によってウイルスを精製する工程を包含する、パラミクソウイルス(例えば、NDV)を精製する方法を包含する。
【0088】
必要に応じて、ゲル濾過クロマトグラフィーによってウイルスをさらに精製し得、ここで、これらの工程の各々は、安定化緩衝液の存在下で行われる(実施例15):
a)プラーク精製して、クローン性ウイルスを生成する工程、
b)このクローン性ウイルスを卵に接種する工程、
c)卵をインキュベートする工程、
d)卵を冷やす工程、
e)卵から尿膜腔液を回収して、尿膜腔液を緩衝液で希釈する工程、
f)尿膜腔液からTFFによって細胞砕片を除去する工程
g)TFFによってウイルスを精製する工程、および
h)ゲル濾過クロマトグラフィーによってウイルスを精製する工程。
【0089】
必要に応じて、ゲル濾過工程から得られたウイルスを、TFFを使用して濃縮し得る。
【0090】
本発明の別の実施態様は、卵または細胞培養物から複製コンピテントクローン性ウイルスを精製する方法を包含し、この方法は、連続接線流濾過(TFF)、次いで、必要に応じてゲル濾過クロマトグラフィー、次いで、必要に応じてTFFによって精製して、ウイルスを濃縮する工程を包含する。
【0091】
(クローン性ウイルス)
これらの方法を使用することによって、クローン性ウイルス(パラミクソウイルス(例えば、NDV)を含む)を、少なくとも2×109PFU/mgタンパク質まで、有利には、少なくとも3×109PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも5×109PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも1×1010PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも2×1010PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも3×1010PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも4×1010PFU/mgタンパク質まで、より有利には、少なくとも5×1010PFU/mgタンパク質まで、そして最も有利には、少なくとも6×1010PFU/mgタンパク質まで、精製を可能にする。
【0092】
これらの方法を使用することによって、クローン性ウイルス(パラミクソウイルス(例えば、NDV)を含む)をPFUあたりのウイルス粒子の数が、10未満、より有利には、5未満、より有利には、3未満、より有利には2未満、最も有利には、1.2未満(PFUあたりのウイルス粒子のより少ない数は、より高い純度を示す)のレベルまで精製を可能にする。
【0093】
(RNAウイルス)
別の実施態様において、この方法は、(クローン性ウイルスについての上記のレベルまで)以下を含むRNAウイルスの精製を可能にする:(a)細胞殺傷性RNAウイルス;(b)1本鎖RNAの非セグメント化、非エンベロープ化ウイルス;(c)1本鎖RNAのセグメント化、エンベロープ化ウイルス;(d)2本鎖RNAのセグメント化、非エンベロープ化ウイルス;および(e)1本鎖RNAの非セグメント化、エンベロープ化ウイルス(例えば、パラミクソウイルス(例えば、NDV)および例えば、レトロウイルス)
(DNAウイルス)
別の実施態様において、これらの方法は、(クローン性ウイルスについての上記のレベルまで)以下からなる群より選択されるインターフェロン感受性細胞殺傷性ウイルスの精製を可能にする:(a)エンベロープ化、2本鎖DNAウイルス(ポックスウイルスを含む);(b)非エンベロープ化、1本鎖DNAウイルス;および(c)非エンベロープ化、2本鎖DNAウイルス。
【0094】
(卵由来ウイルス)
別の実施態様において、これらの方法は、夾雑している卵タンパク質が実質的にないレベルまで卵由来ウイルスの精製を可能にする。ヒト治療に使用するためのウイルス調製物における卵タンパク質の量は、制限されることが好ましい。なぜなら、オボアルブミンのような主要な卵タンパク質はアレルゲンであるからである。
【0095】
新生物疾患(ガンを含む)の処置において有用なウイルスは、表1に示される。これらのウイルスは、必要に応じて、天然に存在する変異物(特定の株または単離物)についてスクリーニングされ、親株に対して改変されたIFN産生を生じる。
【0096】
【表1】

本発明の別の実施態様において、候補ウイルス(天然に存在してもよいし、操作されていてもよい)は、新生物の処置において治療的有用性を提供する能力について試験される。1つの実施態様において、インターフェロン媒介抗ウイルス応答が欠失している細胞(例えば、KB頭部および頸部ガン腫細胞)の50%を殺傷するために必要とされる候補ウイルスの量は、同様の数のインターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞(例えば、正常皮膚線維芽細胞)の50%を殺傷するために必要とされるウイルスの量と比較される。殺傷する量は、トリパンブルー排除またはMTTアッセイを含む任意の数の手段によって定量される(例えば、実施例1を参照のこと)。インターフェロン媒介抗ウイルス応答においてコンピテントな細胞を殺傷するために必要とされる量に対して、インターフェロン媒介抗ウイルス応答が欠失している細胞を殺傷するために必要とされるウイルス量の有意な減少(例えば、少なくとも5分の1)は、試験されているウイルスが新生物の処置において治療的有用性に必要とされる活性を示すことを示す。他のNDVウイルスおよびシンドビスウイルスは、このような腫瘍選択的殺傷を示す、天然に存在するウイルスである(実施例21〜23、および25を参照のこと)。
【0097】
抗ウイルス状態の確立に関与する因子の理解は、ウイルス治療に応答するようである腫瘍についてのスクリーニングアッセイの作製を可能にする。原理的に、患者由来の生検から得られた腫瘍組織は、p68キナーゼ、p58、または抗ウイルス状態もしくは細胞分化の調節に関与する他の因子の発現についてスクリーニングされる。他の因子としては、インターフェロン応答因子−1(IRF−1)、インターフェロン刺激遺伝子因子−3(ISGF−3)、c−Myc、c−Myb、およびIFNレセプターが挙げられるが、これらに限定されない。c−Myc、c−Mybまたはp58の場合において、高レベル発現は、腫瘍組織または細胞がウイルス治療の処置候補であることを示す。p68、IRF−1、ISGF−3、およびIFNレセプターの場合において、低レベル発現は、腫瘍組織または細胞がウイルス治療の処置候補であることを示す。
【0098】
本発明の別の実施態様において、患者の生検から得られた原発性腫瘍組織または細胞を、培養して拡大し、そして適切なウイルス治療による殺傷に対する感受性について試験する。1つの実施態様において、腫瘍組織培養物の50%を殺傷するために必要とされるウイルスの量を、候補ウイルスのスクリーニングについて上記で記載されるように、正常細胞の培養物の50%を殺傷するために必要とされる量と比較する。ウイルス剤による殺傷に対して、正常細胞と比較して腫瘍細胞の感受性の10倍以上の増加は、腫瘍細胞がウイルス処置の細胞殺傷効果に対して特異的に感受性であることを示す。本発明のさらなる実施態様において、標的化された腫瘍細胞が、内因的または外因的に供給されたIFNに応答する能力は、IFN(αまたはβ形態、例えば、1mlあたり10ユニットを使用、実施例27を参照のこと)の存在下で上記のスクリーニングを実施することによって決定される。
【0099】
ウイルスの結合または侵入のために必要とされる細胞応答の理解は、高レセプター発現、従って増強されたインターフェロン感受性ウイルスに対する感受性を有する腫瘍についてのさらなるスクリーニングを可能にする。これは、ウイルス治療に応答する可能性がある患者についてのさらなるレベルのスクリーニングである。有利には、インターフェロン感受性ウイルスでの治療について、患者の腫瘍は、インターフェロンに耐性であり、そしてウイルスについての細胞レセプターの高い発現を有する。原則的に、患者由来の血清、腫瘍細胞、組織、または組織切片は、血清中または腫瘍細胞または腫瘍組織に存在するウイルスレセプターの量についてのイムノアッセイまたは免疫染色によってスクリーニングされる。例えば、シンドビスウイルスは、高親和性ラミニンレセプターを利用して、哺乳動物細胞に感染する(Wangら、1992、J Virol.,66:4992−5001)。この同じレセプターは多くの多様な型の転移性ガンにおいてより高い量で発現されることが公知である。PANC−1腎ガン細胞株、および結腸腺ガン細胞株SW620は、高レベルの高親和性ラミニンレセプターmRNAを発現させ(Campoら、1992、Am J Pathol 141:107301983;Yowら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci,85:6394−6398)、シンドビスウイルスにより高く感受性であることが公知である(実施例25)。対照的に、直腸腺ガン細胞株SW1423は、非常に低レベルの高親和性ラミニンレセプターmRNAを発現させ(Yowら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci,85:6394−6398)、そしてSW620細胞よりも、PPSINDBIS−Ar339による殺傷に対して、4桁を超えてより耐性であることが公知である。
【0100】
NDVの既存の株または他のウイルス(RNAおよびDNAウイルスを含む)は、正常細胞の改変されたIFN応答(例えば、有利には、増加したIFN応答)のためにスクリーニングされるか、または操作される。強力なIFN応答を惹起する能力に加えて、他のウイルス特徴は、ウイルスをスクリーニングするか、またはウイルス中に操作される。改変されたレセプター特異性を有するウイルス(例えば、シンドビスウイルスPPSINDBIS−Ar339、実施例25を参照のこと)または低い神経病原性が、本発明に含まれる(例えば、NDVウイルスPPNJROAKIN、実施例24を参照のこと)。有利には、本発明のウイルスは、細胞と細胞との直接的な接触によって伝播する能力を有する。
【0101】
本明細書中で記載した本発明は、NDVの指標に類似の様式において新生物の処置に有用であるウイルスの広範なグループ(表1を参照のこと)を含む。さらに、正常細胞においてIFN応答を不活化する機構の存在によって、使用するには天然には候補とならないウイルスは、上記の制限を回避するために必要に応じて操作される。未改変のままである場合、インターフェロン応答を不活化する機構を有するウイルスは、そのような機構を除いたウイルスよりも、正常な細胞に対してより毒性である。本発明は、(1)容易に操作され得るベクターの開発;および(2)治療用ウイルスのセットの作製を提供する。操作には、IFNを発現するトランスジーンのウイルス発現を可能にするIFN遺伝子の添加、またはIFN応答経路の他のアクチベーターが挙げられる。さらなる変更は、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼまたはシトシンデアミナーゼ(Blaese RMら、1994.Eur.J.Cancer 30A:1190−1193)のようなプロドラッグ活性化酵素の操作された発現、および免疫系による腫瘍細胞の標的化を可能にする適切なマーカー抗原の発現を含む。さらなる変更は、それらのレセプターを有する標的細胞に対するレセプターリガンドの操作された発現を含む[例えば、それらのウイルスに感染された標的細胞に対する他のウイルスに対するレセプターの発現(Mebastasionら、1997、Cell 90:841〜847;および Schnell MJら、1997、Cell 90:849〜857を参照のこと)]。
【0102】
いくつかのニューカッスル病ウイルス株は、腫瘍細胞の選択殺傷を実証する。亜病原性のニューカッスル病ウイルスの第二株を用いる示差的細胞傷害性アッセイにおいて、腫瘍細胞は、正常細胞よりも、ウイルスにより殺傷される感受性が3桁大きいということが見出された(実施例21)。さらに、第三の亜病原性ニューカッスル病ウイルス株が、示差的細胞傷害性アッセイで用いられた場合、腫瘍細胞は、ウイルスに殺されるには正常細胞よりも80〜5000倍大きい感受性であることが見出された(実施例22)。これらの亜病原性ニューカッスル病ウイルス株の両方はまた、ヒト腫瘍異種移植片を有する胸腺欠損マウスへの腫瘍内投与後に、腫瘍成長の後退を生じた(実施例23)。
【0103】
別の実験において、3つの異なるニューカッスル病ウイルス株の安全性を、胸腺欠損マウスおよび免疫能力のあるマウスにおいて、脳内注射後に試験した。この試験の結果は、3つのすべてのウイルス株が完全な免疫系を有するマウスにおいてよく寛容化されることを示した。胸腺欠損マウスの脳への脳内注射は、ウイルスの1つが他の2つより有意によく寛容化されることを示した(実施例24)。これらの結果は、単独のウイルスファミリーにおいて、ウイルス特性における重要な差異が生じ得、そしてより大きい効力または増大する安全性が治療的に開拓され得ることを実証する。
【0104】
腫瘍崩壊性ウイルスでの処置後に有効力を増大させ、そして毒性を低下させる別の手段は、腫瘍細胞上で優先的に発現される特異的細胞表面レセプターを必要とするインターフェロン感受性ウイルスの使用を介する。シンドビスウイルスは、この型の制限の例を提供する。シンドビスウイルスは、高親和性ラミニンレセプターを用いて哺乳動物細胞に感染する(Wangら、(1992)、J.Virol.66,4992−5001)。示差的細胞傷害性アッセイにおいて、正常および腫瘍細胞がシンドビスウイルスに感染された場合、腫瘍形成性であり、そしてまた高親和性ラミニンレセプターを発現する細胞は、このウイルスによる殺傷に対して、他の細胞よりも感受性であることが見出された(実施例25)。正常なケラチノサイトは、高親和性ラミニンレセプターを発現する(Handら、(1985)Cancer Res.45、2713−2719)が、このアッセイにおいて、シンドビスによる殺傷に対して抵抗性であった。
【0105】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、腫瘍崩壊性ウイルスによる腫瘍選択性殺傷の証拠を提供する、すなわち、腫瘍細胞におけるインターフェロン応答性の先天的な欠損は、インターフェロン感受性の複製能力のあるウイルスによる殺傷に対する感受性をこれらの細胞に与える。VSVは、外因性インターフェロンの存在下で非腫瘍形成性ヒトWISH細胞および腫瘍形成性HT1080またはKB細胞に感染するために用いられた。
【0106】
以下は、天然に生じる抗インターフェロン活性を除去するように改変された場合、ウイルスガン治療に有用であるウイルスのリストである(表2を参照のこと)。破壊されるか、または減弱した内因性の抗インターフェロン活性を有した改変ウイルス(有利であって、必要性はないが、抗インターフェロン改変に加えて弱毒化される、表3を参照のこと)は、ガン治療に有用である。このリストは、以下に記載のウイルスを含むがこれに限定されない。通常のクラスのウイルスの間の類似性により、以下に列挙された各々の特定のウイルスについて同定された機構はまた、同一の、または機能的に類似の機構として、ウイルスのそのクラスの他のメンバーに存在する。ウイルスの広範な群は、括弧内に加えられる。抗インターフェロン活性の機能的な消失を有する以下のようなウイルスは(任意の手段を介して)、天然に存在する変異ならびに操作された欠失または点変異を含み、本発明の方法において有用である。
【0107】
2つ以上の機構を働かせるウイルスは、1つ、いくつか、またはすべての活性に変異を含むように必要に応じて改変される。いくつかの記載された活性についての変異は、通常の科学領域において利用可能である。
【0108】
野生型ウイルスの増殖速度と比べて、より遅い増殖をしている天然に存在するかまたは操作されたウイルスの単離は、特に有利である。なぜなら、より遅いウイルス増殖速度は、ウイルス複製が細胞または細胞集団を殺傷し得る前に、インターフェロン応答においてコンピテント細胞または細胞集団が、効率的な抗ウイルス状態を確立することを可能にするからである。
【0109】
感染した細胞においてインターフェロン反応の増大を生じるが新生物細胞においてはウイルス複製をなお可能にするウイルス特徴の特異的な変化としてウイルスの抗インターフェロン活性を無力にすることが、本発明に含まれる。
【0110】
表2は抗インターフェロン活性を除去するように操作をしたウイルスの存在を示す。
【0111】
表3はビルレンスが減弱するように操作をしたウイルスを列挙している。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

(新生物の処置)
本発明は、特にガンを有する動物における、新生物のウイルス治療に関する。有利な実施態様では、本発明は、最長部での測定サイズが1センチメートル(cm)以上である腫瘍の処置に関する。本明細書中で使用される「1cmの腫瘍」は、腫瘍の少なくとも1辺の長さが1cmであることを示す。このような腫瘍は、ウイルス治療で期待されたよりも感受性であり、サイズがより小さい腫瘍よりも感受性でないとしても、しばしばウイルスに対して少なくとも同程度感受性である。本発明のより有利な局面では、1cmより大きい腫瘍が処置される(例えば2cm以上である腫瘍、約2cmから約5cmの腫瘍、および5cmより大きい腫瘍)。
【0114】
本発明はまた、高い腫瘍荷重を有する宿主の処置のために用いられ得る。本明細書中で使用される句「腫瘍荷重(tumor burden)」は、体重のパーセントで示される体内の腫瘍の総量をいう。腫瘍荷重(例えば、総体重の約1%から約2%)を有する宿主のウイルス治療は、驚くほど有効である(例えば、全腫瘍負荷における腫瘍の後退および減少を生じる)。これは特に意外である。なぜなら、総体重のおよそ2%の腫瘍荷重(例えば、60kgのヒトでは1kgの腫瘍)は、生命が耐えるにはほぼ最大ガン量であるからである。例えば、Cotranら、Robbins Pathological Basis of Diseases、第4版、WB Saunders、1989、252頁を参照のこと。実施例では、マウス宿主における黒色腫(例えば、A375)について397mm3までの容積は、ニューカッスル病ウイルス(例えば、3プラークでの精製ウイルス)での処置に対して完全な後退を示した。組織1000mm3が1グラムと等しいと仮定すると、397mm3の容積を有する腫瘍は、20グラムのマウスにとっては全体重のおよそ2%を含むことになる。
【0115】
以下、実施例4〜9に示すように、腫瘍後退は、少なくとも1cmのサイズの腫瘍では得られ、一方、無処置の、コントロール動物は腫瘍荷重から数週間以内に死滅し始めた。したがって、このような罹患動物は、死亡の2週間内でさえ首尾よく処置された。このように、本発明にしたがって、その腫瘍荷重の終末に近い動物は、ウイルス治療で有効に処置され得る。結果的に、本発明は、従来の治療(例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシルのような化学療法、および放射線療法)に応答しない患者を処置するために用いられ得る。
【0116】
腹腔内経路を通した投与後のガンの処置のためのNDVの効力はまた、試験された。卵巣ガンの腹水予防モデルを用いて、ヒトES−2卵巣腫瘍を有しているマウスへのNDVの腹腔内注射は、生理食塩水で処置したマウスと比べて、生存を上昇させた(実施例16)。ES−2細胞が、卵巣ガン腫瘍モデルにおいて、一旦腹水が形成されると開始される処置に関して用いられた場合、腹水液産生は、生理食塩水コントロールに比べて、ウイルス処置した動物では著明に減少した(実施例17)。
【0117】
本発明の別の実施態様では、ウイルスの投与は、1)腫瘍関連症状の軽減(例えば、腹水液産生速度の減少、疼痛軽減、および閉塞性疾患の軽減であるが、これらに限定されない)ならびに2)生存の延長を生じる。
【0118】
23人の患者は、静脈内経路によって、プラーク精製NDV単離物を受けた(実施例20)。処置応答には、明白な腫瘍の後退、47%の患者における疾患の安定化および鎮痛薬の減少が挙げられる。
【0119】
(投与および処方)
本発明の1つの実施態様において、腫瘍細胞または組織は、インビトロにおいて、ウイルスに感受性である腫瘍を有する患者を決定するためにスクリーニングされる。患者から除去された腫瘍細胞(固形腫瘍では微小針吸引のような方法によって、または卵巣腹水腫瘍では穿刺によって)は、インビトロで増殖され、そしてウイルスとともにインキュベートされる。本発明のこの実施態様では、ウイルスがそれらの腫瘍細胞に対して高活性を有する場合、患者は治療のために選択される。
【0120】
本発明の有利な実施態様では、投与されたウイルスの量は、腫瘍の後退を生じる。本明細書中で使用される「後退(regression)」は、腫瘍が縮少する(例えば、サイズ、量または容積において)ことを意味する。腫瘍サイズの減少は、種々の方法により実証され、この方法には、物理的試験、胸部撮影もしくは他のX線、超音波検査、CTスキャン、MRIまたは放射線核種(radionucleotide)スキャンニング手順が挙げられる。
【0121】
ガンを含む種々のタイプの新生物は、本発明にしたがって処置可能である。本発明のウイルスは、種々のガンの処置に有用であり、このガンには、肺ガン、乳ガン、前立腺ガン、結腸腺ガン、頸部ガン、子宮内膜ガン、卵巣ガン、膀胱ガン、ウィルムス腫瘍、線維肉腫、骨肉種、黒色腫、滑膜肉腫、神経芽腫、リンパ腫、白血病、神経膠芽細胞腫を含む脳のガン、神経内分泌ガン、腎臓ガン、頭頸部ガン、胃ガン、食道ガン、弁のガン、肉腫、皮膚ガン、甲状腺、膵臓ガンおよび中皮腫が挙げられるがこれらに限定されない。本発明のウイルスはまた、種々の良性腫瘍の処置に有用であり、この良性腫瘍にはコンジローマ、パピローマ、髄膜腫およびアデノーマが挙げられるがこれに限定されない。
【0122】
ウイルスの治療的に有効な量が、新生物を有する宿主に投与される。投与されたウイルスの用量は、選択されたウイルス、新生物のタイプ、新生物細胞増殖もしくは転移、新生物の生物学部位もしくは体の部分、ウイルス株、投与の経路、投与のスケジュール、投与の様式、および任意の他の薬物の同一性もしくは哺乳動物へ投与される処置(例えば、放射線、化学療法もしくは外科処置)に依存して変わることは当業者には理解される。これらのパラメーターは、動物モデルにおける最大許容量決定を介して、および相対体表面積または体重の関数としてヒト投与量を測定することを介して規定される。特定の状況下で、ウイルスの1より多い用量が与えられることもまた理解される。ウイルスのこのような多回用量の間の至適間隔は、経験的に決定され得、そして当該分野の範囲内である。NDVは、一般にウイルスで約3×106〜約5×1012PFUを投与される。局所投与(例えば、腫瘍へ直接に)については、総量で約3×106〜約5×1010PFUのウイルスが代表的に用いられる。全身投与には、体表面積の1平方メートルあたり約1×108〜約4×1011PFUのウイルス量が用いられる。静脈投与には、1週あたり1回、1週あたり2回、および1週あたり3回の投与スケジュールが用いられる。本発明に従ってウイルスは、(必要に応じて化学療法剤と一緒に)例えば、腸内の、非経口の、経口の、経鼻の、直腸の、クモ膜下腔内の、静脈の(例えば、カテーテルを用いて)、皮下の、腫瘍内の(例えば、その腫瘍組織に直接的に、またはそれを灌流する血管に)、腫瘍周囲の、局所の、舌下の、口内の、局部の、筋肉内の、吸入による、経皮的な、膣の、動脈内の、頭蓋内の、皮内の、硬膜外の、全身的に、局部の、腹腔内の、胸膜腔内のなどの種々の経路で投与され得る。肺腫瘍では、気管支経路(例えば、気管支投与)が用いられ得る。胃腸の腫瘍の内視鏡的注射ならびに直腸の腫瘍の坐剤処置はまた、適切な場所で用いられる。
【0123】
NDVでのマウスの毒性試験は、静脈内ウイルス投与後の急性毒性が、サイトカイン媒介反応により生じるようであるということを示した。反復刺激に対するサイトカイン応答は、初回の誘導事象後に、脱感作されるか、またはダウンレギュレ−ションされることが公知である(Takahashiら(1991)Cancer Res.51、2366−2372)。ウイルスの脱感作用量を静脈内に注射されたマウスは、初回の注射でビヒクル単独を受けるマウスより、第二用量においておよそ10倍多いウイルスを寛容し得た(実施例18)。静脈内経路によるウイルス投与の速度は、毒性に有意に影響し得る。胸腺欠損マウスの2群は、緩慢に(0.2mlを4分間かけて)、または迅速に(0.2mlを30秒かけて)のいずれかで投与されたNDVの同一用量で静脈内処置された。各々の群における最大体重減少の比較は、迅速な注射に対して緩慢な注射を受けた各群では体重減少が50%少ないことを示した(実施例19)。
【0124】
臨床試験の1つのある集団では、患者は、1週のコースに渡ってプラーク精製NDV単離物の3回注射を受けた(実施例20)。これらの条件下で、初回用量の脱感作効果は、第二および第三用量に伴う毒性を減少させた。これらのデータは、動物試験で得られるデータに対応する実施例18に示される。ガンの処置における、腫瘍崩壊性ウイルスの使用に関する1つの関心事は、治療に働き得る体液性免疫応答の潜在的阻害効果である。臨床試験において、1ケ月後に安定疾患を示す患者は、次いで、NDVに対する中和抗体の存在下で投与される処置の第二のコースに適合する。にもかかわらず、第二コースの投与後7日の患者尿中に感染ウイルスが見出され得、これは高用量のウイルス投与が中和抗体の効果に打ち勝ち得、そして患者内に感染を確立し得るという証拠を提供する。
【0125】
本発明の有利な実施態様において、脱感作用量は、より高い引き続く用量の前に与えられる。脱感作のために、1×108〜2.4×1010PFU/m2のウイルス用量が用いられる。脱感作後に、3×108〜4×1012PFU/m2のさらなるウイルス用量が用いられる。用量の間の時間枠は、脱感作用量と次の用量との間に時間枠を含み、これは1〜14日であり、有利には1〜7日である。脱感作用量は、例えば、静脈内の、腸内の、非経口の、経口の、経鼻の、直腸の、クモ膜下の、静脈内の、皮下の、腫瘍内の、腫瘍周囲の、局部的な、舌下の、口内の、局所的な、筋肉内の、吸入による、経皮的な、膣の、動脈内の、頭蓋内の、皮内の、硬膜外の、全身的に、局部の、腹腔内の、胸膜腔内の、内視鏡的な、気管支内のなどの種々の経路で投与され得る。引き続く投与は同じ経路で脱感作用量としてまたは別の経路で、(例えば、静脈内の、腸内の、非経口の、経口の、経鼻の、直腸の、クモ膜腔内の、静脈の、皮下の、腫瘍内の、腫瘍周囲の、局部の、舌下の、口内の、局部的な、筋肉内の、吸入による、経皮的な、膣の、動脈内の、頭蓋内の、皮内の、硬膜外の、全身的に、局所の、腹腔内の、胸膜腔内の、内視鏡的な、気管支内のなど)投与され得る。
【0126】
必要に応じて、投与の1つ以上の経路が、連続してかまたは同時の方式で用いられ得る。同時かまたは連続的投与のための経路には、静脈内の、腸内の、非経口の、経口の、経鼻の、直腸の、クモ膜腔内の、静脈の、皮下の、腫瘍内の、腫瘍周囲の、局部の、舌下の、口内の、局部的な、筋肉内の、吸入による、経皮的な、膣の、動脈内の、頭蓋内の、皮内の、硬膜外腔の、全身的に、局部の、腹腔内の、胸膜腔内の、内視鏡的な、気管支内のなどが挙げられるがこれらに限定されない。例としては、静脈内脱感作用量の後の腹腔内用量の投与である。
【0127】
本発明の別の有利な実施態様において、ウイルスは、静脈内ポンプを用いることを含む緩慢な注入または4分から24時間までのコースにわたる緩慢な注射により投与される。
【0128】
ウイルスおよび必要に応じて1つ以上の化学療法剤は、単回注射で、多回注射で、または持続的に投与される。ウイルスは化学療法剤投与の前に、同時に、または後に投与される(例えば、以下であるが、それらに限定されない:ブスルファン、シクロフォスファミド、メトトレキセート、シタラビン、ブレオマイシン、シスプラチン、ドキソルビシン、メルファラン、メルカプトプリン、ビンブラスチン、5−フルオロウラシル、タキソールおよびレチン酸)。本発明に従うウイルス治療は、必要に応じて、他の処置と組み合わされる。この処置には、手術、放射線、化学療法(例えば、Current Medical Diagnosis and Treatment、Tierneyら編、Appleton&Lange、1997、特に78〜94頁を参照のこと)、および生物学的治療が挙げられる。このウイルスは、(1)他の腫瘍崩壊性薬剤[例えば、以下であるがそれらに限らない:前立腺細胞特異的応答エレメントの転写コントロール下のその遺伝子の1つを有するアデノウイルス(Rodriques Rら、1997、Cancer Res、57:2559−2563を参照のこと);p53に結合能のあるE1bポリペプチドをコードしないアデノウイルス(Bioschoff、J.R.ら、1996、Science 274:373−376を参照のこと);機能性γ34.5遺伝子産物を発現し得ない単純ヘルペスウイルス(Mineta、Tら、1995、Nature Medicine、1:938−943を参照のこと)];(2)サイトカイン(例えば、以下であるが、それらに限定されない:GM−CSFのようなコロニー刺激因子;腫瘍壊死因子ならびにIL−1,IL−2、IL−6およびIL−10のようなインターロイキン);(3)ウイルスベクター[例えば、以下であるがそれに限定されない:p53をコードするアデノウイルス(Zhang、WWら、1994、Cancer Gene Therapy、1:5−13を参照のこと)];および(4)ガンワクチンのような生物学的薬剤の投与の前に、同時にまたは後に投与される。本発明の1つの実施態様では、治療は、IFN機構を介して細胞傷害性および腫瘍選択性である抗原的に別のウイルスでの一連の処置からなる。この実施態様は、免疫学的干渉なしに、延長された期間にわたってウイルス治療を可能にする。
【0129】
別の実施態様は、NDV(または他のウイルス)の投与の前の、同時の、または後の、IFN(例えば、αIFN、βIFNまたはγIFN)による患者の処置を含む。IFNは、例えば、Sreevalsoun、T、1995(In:Biologic Therapy of Cancer、第二版、V.T.DeVita、Jr.S.Hellman および S.A.Rosenberg編、J.B.Lippincott Company、Ph ladelphia、347〜364頁)に議論されるような、クラスI群(α、βおよびω)およびクラスII(γ)、ならびにその組換え型およびアナログから選択される。正常細胞は、これらの細胞により大きい安全性さえ与えるウイルス感染に対する増大したIFN応答でのIFN前処置に応答する。IFNシグナル伝達経路を欠く腫瘍細胞は、ウイルスによる殺傷に感受性のままである。このことは、より高い用量のウイルス治療でさえ使用されるのを可能にする。このIFNは、ウイルス感染を処置するのに有効であることが公知の用量と方法についての標準臨床ガイドラインにしたがって投与される。本発明の別の実施態様では、IFN応答経路に影響することが公知の他の薬物はまた、腫瘍細胞の感受性を増大させるため、またはウイルス感染の細胞破壊的な効果に対する正常細胞の抵抗性を増大させるために必要に応じて用いられる。このクラスの薬物には、チロシンキナーゼインヒビター、シメチジン、およびミトコンドリアインヒビターが挙げられるがこれらに限られない。低酸素および高体温はまた、インターフェロン応答性を調節することが公知である。
【0130】
本発明の別の実施態様では、サイクロスポリンA、アザチオプリン(azathiaprime)およびレフルノミド、種々のコルチコステロイド調製物、ならびに抗CD40リガンド抗体(Foy、T.M.ら、1993、J.Exp.Med.178:1567−1575)のような免疫抑制剤がウイルスとともに投与される。あるいは、免疫刺激用化合物(例えば、リポペプチド)がウイルスとともに投与され得る。
【0131】
ウイルス感染に応答して産生されるインターフェロンの量が、1つ以上のヌクレオシドの細胞濃度を上昇させるヌクレオシド(Machida、H.1979.Microbiol.Immunol.23:643−650)、ヌクレオシド前駆体、または薬物の使用を通して上昇される独立した機構は、ウイルス治療への補助剤として、必要に応じて用いられる。
【0132】
プリンヌクレオシドアナログ(例えば、2−クロロデオキシアデノシンおよび2’デオキシコホルマイシン(deoxyconformycin、)は、インビボでインターフェロン産生を減少させる。このような化合物は、腫瘍細胞対、正常細胞のインターフェロン感受性の差にさらにもたらすために用いられ、そしてウイルス治療の補助剤として必要に応じて用いられる。
【0133】
ひとつの局面において、ウイルスの有効量は、より小さい用量単位に細分化され得、同じ腫瘍の違う場所に同時に注射され得る。持続的な投与のために、所望の薬剤は、埋めこまれたミニポンプを介して投与されるか、または所望のポリマーに浸透し、そして次いで、緩徐なまたは遅延性の放出のために、所望の位置に(例えば、腫瘍に直接に)移植される。
【0134】
本発明のウイルスは、それを、少なくとも1つの賦形剤または補助剤とともに、そして所望であれば、1つ以上のさらなる活性化合物とともに、適切な用量形態に持ち込むことにより薬学的調製物として処方される。この調製物は、ヒト医薬および獣医学医薬の両方で利用される。適切な賦形剤は、例えば、腸投与または非経口投与に適切である有機および無機物質、例えば、水、生理食塩水、組織培養培地、緩衝液、リジン、クエン酸塩、グリセロール三酢酸およびその他の脂肪酸グリセリド、ゼラチン、大豆レシチン、炭水化物(例えば、マンニトール、スクロース、ラクトースまたはスターチ)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロースもしくはタンパク質キャリア、または先の化合物の組み合わせ(例えば、マンニトール/リジン、またはマンニトール/リジン/スクロース)を含む。調製物は、殺菌されるか、および/または保存剤もしくは安定化剤のような添加剤を含む。非経口投与(例えば、全身または局所注入)には、ウイルス調製物は、例えば、水性懸濁物またはエマルジョンとして処方される。
【0135】
本発明はまた、哺乳類における疾患を処置する方法に関し、ここで疾患細胞は、インターフェロン媒介抗ウイルス応答に欠陥を有し、そしてこの方法は、哺乳類に、治療的に有効な量のインターフェロン感受性の、複製能力のある、クローンウイルスを投与する工程を包含する。例えば、インターフェロン応答を不能にするB型肝炎ウイルスのような多くのウイルスに感染した細胞が、本発明のウイルスに感受性である。ヒト免疫欠損ウイルス(HIV)がインターフェロン応答を不能するという証拠がある。本発明のインターフェロン感受性ウイルスは、このような、B型肝炎、C型肝炎、HIV、エプスタイン−バールウイルス、ヒトパピローマウイルス、およびヘルペスウイルスに起因するウイルス感染のような慢性ウイルス感染を処置することにおいて有用である。
【0136】
本明細書で他に示されなければ、本発明のウイルス治療の詳細および条件は、その開示が全て本明細書に参考として援用される、米国特許出願第08/260,536号に一致する。上記および図で引用したすべての出願、特許および刊行物の全体の開示が本明細書中に参考として援用される。
【0137】
以下の実施例は例示であり、本発明の方法および組成物を制限するものではない。当業者に明らかである、臨床治療で通常遭遇する種々の条件およびパラメーターのその他の適切な改変および適合は、本発明の思想および範囲内である。
【実施例】
【0138】
(実施例1:PPMK107(NDV株の三重プラーク精製単離株MK107)は、正常ヒト細胞と比較して多くのヒトガン細胞に対して選択的細胞傷害活性を示す。)
ヒト腫瘍細胞および正常細胞を、24ウェルの組織培養デッシュ中でほぼ80%集密まで増殖させた。増殖培地を取り除き、そしてPPMK107を、106プラーク形成単位(PFU)/ウェル〜10-1PFU/ウェルの範囲にある10倍希釈物で添加した。ウイルスを添加しないコントロールウェルは、各プレート上に含めた。ウイルスを、90分間、ロッキングプラットホーム上で37℃にて吸着させた。このインキュベーション期間の終わりに、ウイルス希釈物を除去し、そして1mlの増殖培地で置き換えた。次いで、プレートを37℃で5日間、5%CO2中でインキュベートし、次いで、細胞障害効果(CPE)の量を定性的に評価した。細胞傷害性は、比色MTT(2−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)アッセイ(Cell Titer96、カタログ番号G4000、Promega Corporation、Madison WI53711)を用いることにより、570nmでモニターして定量化した。これは、ミトコンドリアの酵素活性を検出する(Mosman、T.、1983、J.Immunol.Methods 65:55)。ウイルスで処置したウェル中の生存率は、非処置コントロールウェル中の活性の百分率として表した。このデータを、コントロールの百分率としての生存率に対するPFU/ウェルとしてグラフにプロットした。IC50は、生存細胞の量を50%減少させるPFU/ウェル中のウイルスの量として計算した。
【0139】
結果を、表4、5および6に示す。PPMMK107は、多様なセットのヒトガン細胞に対して高い程度の細胞傷害性活性を示し、39の悪性株のうち30が、正常ヒト細胞型の相対的非感受性に対して、1000より小さいIC50値を有していた。ヒトガン細胞の大多数は、大部分の正常ヒト細胞型より2〜3オーダー低い大きさのIC50値を有していた。
【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

(実施例2:無胸腺症マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片(<10mmおよび>5mm)の腫瘍内処置のためのPPMK107の使用)
無胸腺マウスに、10百万ヒト腫瘍細胞を皮内注射した。腫瘍が5〜10mmの範囲のサイズに達した後、PPMK107(3×108PFUの用量)または生理食塩水の単回注射を与えた。ほとんどすべての腫瘍型が、PPMK107で処置したマウスにおいて、50%〜100%の完全または部分的後退割合を示した(表7を参照のこと)。1つの例外は、U87MG実験の場合である(実験I):PPMK107で処置した9腫瘍の1つのみが完全に後退したが、さらに2つのウイルス処置腫瘍が32%および20%の後退を示し、そしてさらに2つのウイルス処置腫瘍が生理食塩水コントロールで処置した8つの腫瘍すべてより遅い増殖を示した。生理食塩水コントロールで処置された腫瘍では、腫瘍後退は実質的になかった:これらの実験のすべてにおいて(表7に列挙されたAからI)、73のコントロール腫瘍のうち1つのみが後退を示した。これらの結果は、多様な腫瘍型が腫瘍内PPMK107処置に対して応答を示したことを示す。
【0143】
腫瘍内ウイルス複製を調査するために、ウイルス抗原に対する免疫組織学的染色(NDVPタンパク質に対するモノクロナル抗体を用いる)を、皮下HT1080線維肉腫モデルを用いて実施した。3×108PFUのPPMK107の腫瘍内注入の30分以内では、腫瘍組織はウイルス抗原に対して陰性であった。しかし、処置後2日までに、ウイルス抗原に対する強い免疫染色が腫瘍内に見られ、腫瘍内のウイルス複製を示した。重要なことは、ウイルス複製は腫瘍組織に特異的であったことである。なぜなら、隣接する結合組織および皮膚はウイルス抗原に対して陰性であったからである。
【0144】
(実施例3:無胸腺症マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片(<8.5mmおよび>5.5mm)の腫瘍内処置のためのPPMK107の使用)
無胸腺マウスに、1000万ヒトHT1080線維肉腫細胞を皮内注射した。腫瘍が5〜8mmの範囲のサイズに達した後、PPMK107または生理食塩水の静脈内注射を行った。表8に示されるように、最も高いウイルス用量レベルで(1×109PFU)、完全な腫瘍後退が7匹のすべてのマウスで観察された。3×108および6×107の単回注射は、90%を超える後退率を生じた。3×108のIV単回注射は、55%の腫瘍後退率のみを示したが、この用量レベルの3回のIV注射は、100%の応答率を生じた。IV生理食塩水で処置したマウスは、腫瘍後退の証拠を示さなかった。これらの結果は、皮下HT1080腫瘍がPPMK107を用いたIV処置に非常に応答性であることを示す。
【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

(実施例4:無胸腺マウスにおける大A375メラノーマ異種移植片の腫瘍内処置にPPMK107を用いる第1回目の実験)
無胸腺マウスに、1000万ヒトA375ヒトメラノーマ細胞を皮内注射した。10日後、種々のサイズの腫瘍を、PPMK107(3×108、9×108、および1.5×109PFUの用量)または生理食塩水の単回注射で処置した。一つが10〜11mmの一つの最大の大きさをもつ腫瘍について、9つのすべてが、PPMK107のこれらの用量を用いた腫瘍内処置に応答して後退した。その一方、1つが8〜9.5mmの一つの最大の大きさをもつ腫瘍は、24の内12がウイルス治療に応答して完全に後退した(P<0.008;表9、セクションA)。生理食塩水で処置したマウスのいずれにも腫瘍後退は見られなかった。
【0147】
これらの同じ腫瘍は、腫瘍容積でソートされた場合にも、より大きな腫瘍容積の腫瘍において高いパーセントの完全な後退を示した。これらの用量のPPMK107に応答して、完全後退が、容量>300mm2(304〜397mm3の範囲)の17の腫瘍の内14で、そして容量<300mm2の16の腫瘍の内7で生じた(144〜295の範囲;P<0.023;表9、セクションB)。
【0148】
これらの結果は、少なくも1cm長の、または300mm3容積の腫瘍が、腫瘍内PPMK107処置に対して、より小さな腫瘍より感受性でない場合でも、少なくとも感受性であったことを示す。
【0149】
(実施例5:無胸腺マウスにおける大A375メラノーマ異種移植片の腫瘍内処置にPPMK107を用いる第2回目の実験)
腫瘍を、腫瘍細胞接種後10日目、実施例4のように確立した。処置は、種々の用量のPPMK107(3×106PFU、3×107、3×108、および1.5×109)または生理食塩水からなる。1つの最大の大きさが10〜11.5mmの腫瘍について、完全または部分的(少なくとも50%)後退が、これらの用量を用いてPPMK107で処置した28腫瘍のすべてで生じ、生理食塩水で処置したマウスのいずれにおいても後退がなかったことと対照的であった(表10、セクションA)。
【0150】
これらの同じ腫瘍を腫瘍容積でソートした場合、300mm3より大きい(範囲:309〜525mm3)26の腫瘍すべてが、PPMK107に応答して完全または部分的に(少なくとも50%)後退し、いずれも応答しなかった生理食塩水で処置したマウスと対照的であった(表10、セクションB)。
【0151】
これらの結果は、少なくとも1cm長、または300mm3容積の腫瘍が腫瘍内PPMK107処置に感受性であることを確認する。
【0152】
【表9】

【0153】
【表10】

(実施例6 無胸腺症のマウスにおける巨大A375黒色腫異種移植片の腫瘍内の処置に対してPPMK107を用いる第3の実験)
腫瘍を、実施例4のように腫瘍細胞接種後19日で確立した。腫瘍内の処置は、PPMK107の様々な投与量(3×108、3×106、3×105、3×104、3×103、3×102PFU)もしくは生理食塩水からなる。単一最大寸法が12.5〜14mmの腫瘍(体積範囲:632〜787mm3;平均体積698mm3)に関して、少なくとも50%の腫瘍の緩解は、両方の生理食塩水処置マウスでの緩解なしとは対照的に、3×108PFUで処置された3匹のマウスのうち2匹で起こった(表11)。10〜12mm(体積範囲:320〜600mm3;平均体積411mm3)の単一最大寸法の腫瘍を処置するために同一用量のPPMK107(3×108PFU)を使用して、8匹のマウスのうち7匹が少なくとも25%の緩解を示した(緩解を示さなかった生理食塩水で処置されたマウスと比較して少なくとも25%の緩解に関してP<0.001、表11)。長さ10〜12mmの腫瘍に関して少なくとも25%の緩解はまた、3×106PFU、3×105PFU、3×104PFU、および3×103PFUで処置されたマウスで見られたが、3×102PFUまたは生理食塩水で処置されたマウスでは見られなかった(表11)。
【0154】
これらの結果は、少なくとも長さ1cmまたは体積300mm3の腫瘍が、腫瘍内PPMK107処置に感応性であることを確認する。
【0155】
(実施例7 無胸腺症のマウスにおける巨大A375黒色腫異種移植片の腫瘍内の処置に対してPPMK107を用いる第4の実験)
最大寸法が10〜12mmの腫瘍を、実施例4のように腫瘍細胞接種後、13日で確立した。腫瘍内処置は、3×108PFUのPPMK107または生理食塩水の単回の注射からなる。PPMK107で処置された腫瘍の体積は、295〜600mm3(平均の腫瘍体積437mm3)の範囲であった。それぞれの処置群のマウスの群は、腫瘍組織学に関して0、2、3、4、7、および14日で安楽死させた。最小の4日で観察したこれらのマウスに関して、PPMK107で処置された12匹のマウスのうち11匹は、生理食塩水の群における8匹のうち0匹と比較して少なくとも25%の緩解を示した(P<0.0001、表12)。PPMK107での処置後2日で、2つの腫瘍はすでに、緩解の徴候を示したが、緩解の程度は、25%未満であった。
【0156】
【表11】

【0157】
【表12】

(実施例8 無胸腺症のマウスにおける巨大A375黒色腫異種移植片の腫瘍内の処置に対してPPMK107を用いる第5の実験)
最大寸法10〜12mmの腫瘍を、実施例4のように腫瘍細胞接種後12日で確立した。腫瘍内の処置は、3×108PFUのPPMK107または生理食塩水の単回の注射からなる。PPMK107で処置されたこれらの腫瘍の体積は、361〜756mm3(平均の腫瘍体積551mm3)の範囲であった。PPMK107で処置された10匹のマウスのうち9匹は、生理食塩水の群での10匹のうち0匹と比較して、少なくとも25%の緩解を示した(P<0.0001、表13)。
【0158】
(実施例9 巨大HT1080線維肉腫異種移植片の静脈内の処置に対してPPMK107を用いる第1の実験)
無胸腺症のマウスに、1000万個のHT1080ヒト線維肉腫細胞を皮下注射した。6日後、腫瘍を、PPMK107(1.5×109PFUの用量で)または生理食塩水の単回の注射で処置した。単一最大寸法10〜11mmのこれらの腫瘍に関して、6個の腫瘍のうち5個が、生理食塩水で処置された腫瘍の0個と比較してPPMK107の単回の静脈内注射への応答において完全にまたは部分的に緩解した(表14、P<0.025)。これらの結果は、少なくとも長さ1cmの腫瘍は、静脈内PPMK107処置に感応性であることを示す。
【0159】
【表13】

【0160】
【表14】

(実施例10 腫瘍細胞でなく正常細胞由来のPPMK107感染の特異的除去)
NDV株PPMK107によって殺傷される腫瘍特異性の機構を研究するために、代表的な腫瘍細胞を、以下の診断基準に基づき選択した:a)無胸腺マウスにおいて異種移植片として腫瘍を形成する能力;b)腫瘍異種移植片が、PPMK107の投与後にインビボで特異的に殺傷される;c)腫瘍細胞が、殺傷することに耐性な正常細胞の濃度よりも数log低いウイルス濃度でインビトロでPPMK107により殺傷されることを示す;およびd)共培養として存在した場合、腫瘍細胞が、正常細胞から容易に区別されなければならない。KB頭部および頚部ガン細胞を含む異種移植腫瘍は、PPMK107の単一な腫瘍内注射に対する応答における83%完全な、または部分的な緩解を示し、正常原発性皮膚繊維芽細胞(CCD922−sk)よりも、インビトロでPPMK107により殺傷されることに対して、さらに4logを超えてより感応性であり、そして共培養として存在する場合、CCD922−sk細胞から容易に識別される。
【0161】
従って、KBおよびCCD922−sk細胞の共培養を、0.0005の感染多重度(m.o.i、細胞あたりの添加されたウイルスの比)で感染し、そして感染の経過をウイルス抗原(NDV Pタンパク質)についての免疫組織化学染色により5日間追跡した。正常細胞の感染は、細胞単層の目視検査により決定されるような明白な細胞死をほとんど、もしくは全く伴わず2日でピークに達した。感染後3日目に、正常細胞におけるウイルスの発現の量は、顕著に減少したが、腫瘍細胞の感染は、明らかに明白であった。ウイルス性の抗原の量は、4日および5日目の正常細胞において実質的に消滅したが、腫瘍細胞における感染は、共培養に存在する大多数の腫瘍細胞の破壊を生じる腫瘍細胞の集団を通し、速やかに緩解した。
【0162】
従って、正常細胞は、感染され、そしてIFNの抗ウイルス効果と一致した様式で感染は容易に一掃された。腫瘍細胞は、応答において抗ウイルス状態を確立し得ず、そして正常細胞により培地中に分泌されるIFNの生理的に有効な濃度の存在にもかかわらず、衰えないウイルス増殖により殺傷された。
【0163】
(実施例11:インターフェロンは正常CCD922−sk細胞中のウイルス除去の重要な成分であることの証明)
インターフェロンは、CCD922−sk細胞がPPMK107の感染を除去する能力を仲介しているという仮説を試験した。単独でまたは組み合せにより使用されるヒトインターフェロンαまたはヒトインターフェロンβに対するポリクローナル中和抗体を毎日、PPMK107に感染したCCD922−sk細胞の培養に、0.0005のmoiで添加し、そして感染の進行は3日間続いた。この細胞中に存在するウイルス抗原の量は、中和抗体の濃度に比例して増加し、抗インターフェロンα抗体の効果よりも抗インターフェロンβ抗体の効果がより顕著であった。これは線維芽細胞はインターフェロンのβ形態を優勢に産生するという報告と一致する。
【0164】
インターフェロンに対する中和抗体の添加を介して、PPMK107の感染をより受けやすい正常な非感受性の細胞を作製する能力は、正常な細胞と腫瘍細胞との間のPPMK107による殺傷に対する感受性の重要な相違は、正常な細胞にはインターフェロン仲介抗ウイルス応答を確立する能力があるが、腫瘍細胞にはないという仮説を支持する。
【0165】
(実施例12:インターフェロンβは他の正常な細胞中のウイルス除去の重要な成分であることの証明)
本実験において、PPMK107による殺傷にかなり耐性であることが知られる別の正常細胞(NHEK、正常ヒト上皮細胞)は、感染細胞の培養へのポリクローナル抗インターフェロンβ抗体の添加を介してより感受性にされることを測定した。NHEK(正常ヒト上皮ケラチノサイト)細胞に、0.0005または0.05のいずれかのmoiで感染させ、そして5日にわたり毎日抗体を添加した。
【0166】
低moi(0.0005)で感染した培養では、ウイルス抗原発現の抗体依存増加率は感染後5日後に明確であったが、その実験においてはそれより前にはほとんど明確ではなかった。0.05のmoiでPPMK107に感染した培養への抗体添加は、感染後4および5日でウイルス抗原において顕著な増加をもたらした。感染後2および3日での中和抗体の添加は、ウイルス抗原の蓄積をあまりほとんどもたらさなかった(図1)。
【0167】
高いmoiサンプルからの培養上清液もまた、ヒトHT1080線維肉腫腫瘍細胞に関するプラークアッセイにより、存在する感染性ウイルスの量について滴定した:本発明者らの実験室における標準のアッセイ系。この分析の結果は、感染後5日で、mock処置コントロールと比較して、抗体処置培養における感染性ウイルスの量において、19倍の増加があったことを証明した(図1)。
【0168】
これらの結果は、正常細胞がインターフェロン関連メカニズムを介してPPMK107による殺傷から保護される一般的なメカニズムを示唆する。
【0169】
(実施例13:腫瘍細胞および正常細胞におけるPPMK107感染に対するインターフェロンβ効果の比較)
正常細胞(CCD922−sk)ならびに高度に(KB)または中程度に(HEp2)PPMK107感受性の腫瘍細胞の感染に対する外来的に添加したインターフェロンβの効果の比較を行った。3種の細胞の別々の培養を、0.0005のmoiで感染前1日および感染後2日、20、200、または2000ユニット/mlでインターフェロンβを用いて処置した。
【0170】
感染後3日で、正常細胞中に存在する低レベルのウイルス抗原発現は、使用した全ての用量のインターフェロンで消失した。逆に、2または200ユニット/mlの濃度で高度に感受性のKB腫瘍細胞に対するインターフェロンの添加は、ウイルス抗原発現の相対レベルを2分の1に減少し、1000ユニット/mlインターフェロンで完全に抑制した。中程度に感受性のHEp−2細胞は、使用した全てのインターフェロン用量でウイルス抗原発現を除去することによって外来インターフェロンに応答した(図2)。
【0171】
外来的に添加したインターフェロンβの抗ウイルス効果に対する、KBおよびCCD922−sk細胞における感受性のパターンは、PPMK107による殺傷に対するこれらの細胞の感受性に反比例した。インターフェロンの効果に対して応答するHEp−2の能力は、これらの細胞がこの実験中に使用したインターフェロン濃度を効率的に利用し得ることを示す。同様に、インターフェロンの高い用量に対するKB細胞の応答は、インターフェロン仲介抗ウイルス応答を確立する能力がないことは、インターフェロン経路における絶対欠損からではなく、むしろ正常細胞と比較して相対的な非感受性からもたらされることを示唆する。
【0172】
(実施例14:PPMK107による正常および腫瘍細胞の感染に対する低濃度のインターフェロンβの効果)
この実験において、正常な(CCD922−sk)および腫瘍(KB)細胞を、0.05のmoiでPPMK107による感染の1日前および2日後に、低濃度のインターフェロンβ(0.2、および20ユニット/ml)で処置した。
【0173】
これらの条件下で、この正常細胞はウイルス抗原の量の用量依存減少を経験したが、一方で腫瘍細胞において相対的なレベルのウイルス抗原は、外来的なインターフェロンの添加により影響を受けなかった(図3)。
【0174】
(実施例15:PPMK107精製)
方法A
PPMK107はトリプルプラーク精製により亜病原性ニューカッスル病ウイルス株Mass−MK107から得た。約1000PFU(プラーク形成単位)の生PPMK107を、各10日齢の胚発生したニワトリ卵の尿膜腔液腔中に接種した。36℃46時間インキュベーション後、この卵を冷却し、次いで尿膜腔液を収集した。細胞および細胞片を1750×g30分で遠心分離により尿膜腔液から除去した。次に清澄化した尿膜腔液(ウイルスを含む上清液)を20%/55%不連続ショ糖密度勾配に重層し、そして約100,000×gで30分間遠心分離した。この精製したウイルスを20%/55%界面から収集し、および生理食塩水に対して透析してショ糖を除去した。
【0175】
方法B
別の有利な実施態様において、清澄化した尿膜腔液を−70℃で凍結した。解凍後、この溶液を1〜4℃で一晩維持し、次いで汚染物質を遠心分離(1750×30分間)によってウイルス懸濁液から除去した。この物質を、上述のように超遠心分離において不連続ショ糖密度勾配を使用してさらに処置した。
【0176】
方法C
別の有利な実施態様において、不連続ショ糖密度勾配上の超遠心分離は連続フロー遠心分離により達成した。
【0177】
方法D
別の有利な実施態様において、収集した尿膜腔液を5%マンニトールおよび1.0%l−リジンを含有する緩衝液、pH8.0(ML緩衝液)で希釈し、そして0.45μの通常孔サイズを有するフィルターを通すタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によりML緩衝液により清澄化し、そして交換した。ML緩衝液中に清澄化したウイルスを含有する透過物を収集し、そしてウイルスをML緩衝液中300,000ダルトンの名目上のカットオフを有するフィルターを通してTFFにより精製した。ML緩衝液中の濃縮精製したウイルスをこの工程からの保持物(retentate)として収集し、そしてML緩衝液で平衡化したSephacryl S500(Pharmacia)ゲル透過カラムに適用する前にML緩衝液で再度希釈した。精製したウイルスを含有する画分を収集し、プールし、そして名目上のカットオフの300,000ダルトンを有するフィルターを通してTFFによりML緩衝液を用いて再濃縮し得る。
【0178】
(結果)
*クローンウイルス
プラーク精製によるPPMK107の産生後、ビリオンの集団から8個の個々の分子クローンは、NDVの融合タンパク遺伝子内に300を越える連続するヌクレオチドの同一の配列(例えば、100%の相同性)を有することが分った。PPMK107は、高い程度の遺伝的均質性を有するクローンウイルスである。
【0179】
*PFU/mg タンパク質
純度を測定する1つの定量手段はPFU/mgタンパク質の測定による。より高い値ほど、より高い純度のレベルを示す。方法Aを使用すると、少なくとも4.8×1010のPFU/mg値を達成する(表15を参照のこと)。方法Cを使用すると、少なくとも2.0×1010のPFU/mgタンパク質値を達成する。NDVの亜病原性株について、この純度測定についての文献値は見出されなかった。NDVの亜病原性株についての最善の評価は、ウイルス調製物である(NDV Mass MK107,ロットRU2、Faaberg KSおよびPeeples,ME,1988,J Virol 62:586:ならびにBratt,MA および Rubin,H.1967,Virology 33:598−608のとおりに調製した)。このRU2ロットは、1.3×109PFU/mgタンパク質のPFU/mgを有することが分った。方法Aにより達成された純度値は、Peeples法が達成した値よりも約40倍良かった(表15参照)。
【0180】
*PFUあたりの粒子の比
純度を測定する別の定量手段は、PFUあたりの粒子の比の測定による。より低い値は、より高いレベルの純度を示す。粒子の計数を標準方法を使用する電子顕微鏡により行った。方法Aまたは方法Bのいずれかを使用して、1に近いPFU値あたりの粒子が達成される(表15)。
【0181】
【表15】

方法AおよびCを使用するウイルス調製物はまた、NDVを汚染卵タンパク質が実質的にないレベルにまで精製し得た。方法Aを使用するPPMK107ロット7調製について、オボアルブミンは、(1)SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法)ゲル(1mm厚)上に流した1ウェル(3.3cm幅)あたり1.7×109PFU精製ウイルス;(2)転写用ニトロセルロース膜;および(3)ウサギ抗オボアルブミン(4mg/ml抗体濃度の1:200希釈でのCappelウサギIgG画分)を使用するウエスタンブロットで検出可能でなかった。方法Dを使用し、そしてSDS−PAGE後銀染色するPPMK107調製物について、オボアルブミンに対応するバンドは観察されなかった。
【0182】
(実施例16:無胸腺マウスにおけるES−2卵巣ガン腹水による死を予防するためのPPMK107の使用)
本実験において、全ての無胸腺マウス(雌性、NCRnu/nu、8週齢)に106ES−2細胞の腹腔内注射をした。7日後腹水が発生する前に、生理食塩水またはPPMK107(1×109PFU)を用いてそれらを腹腔内に処置した。図4に示すように、生理食塩水と比較してPPMK107で処置したマウスにおける生存は顕著に改善された。生理食塩水処置群における大多数のマウスは、処置後7日までに腹水を生じ、そして38日までにこれらの全てのマウスは死んだ。顕著な対照的に、PPMK107で処置したマウスの92%は38日までなお生存し、そしてこれらマウスの25%は長期間生存者であった(>120日生存)。
【0183】
(実施例17:腹水が存在する場合無胸腺マウスにおけるES−2卵巣ガンのPPMK107処置)
本実験において、全ての無胸腺マウス(雌性、NCRnu/nu、8週齢)に、106ES−2細胞の腹腔内注射をした。14日後、大多数のマウスが腹水を発生した時に、腹水を有さないマウスを排除し、そして腹水を有するマウスを7つの腹腔内処置群に無作為分離した(PPMK107−0日目一回処置;PPMK107 第1週にわたって2回処置;PPMK107−各週一回処置、PPMK107−各週2回処置;生理食塩水−0日目に1回処置;生理食塩水第1週にわたって2回処置;生理食塩水各週2回処置)。1×109PFU/マウスの用量を、各ウイルス処置に使用した。最初の処置および任意のさらなる処置前、全てのマウスは腹腔液を排水した。0日目とは、最初の処置日をいう。
【0184】
各マウスについて腹水の程度を定量し、そして以下の点が認められた:
【0185】
【表15A】

表16に示されるように、すべての生理食塩水処置したマウスは、7および10日目の両方において、PPMK107処置したマウスよりも、進行した腹水を有した。最初の処置後7日目に、各生理食塩水群は、3.5を超える平均腹水スコアを有した一方で、全てのPPMK107処置した群は、3.0以下の平均腹水スコアを有した。同様に、最初の処置後10日目に、各生理食塩水群は、4.5を超える平均腹水スコアを有した一方で、全てのPPMK107処置群は、4.1以下の平均腹水スコアを有した。これらの結果は、腹水液生成は生理食塩水コントロールと比較してウイルス処置マウスにおいて顕著に減少したことを示す。
【0186】
【表16】

(実施例18:PPMK107の後の投与の致死性を減少するためのPPMK107の脱感作用量の使用)
C57BL/6マウス(7週齢)に生理食塩水または脱感作用量のPPMK107(3×108PFU/マウス)のいずれかで0日目に静脈内に注射した。2日後各セットのマウスを、生理食塩水またはPPMK107での静脈内投与(1×109、2.5×109、5×109、および1×1010PFU/マウスの用量で)について群にさらに再分した。表17に示したように、生理食塩水をマウスの前処置に使用した場合、2.5×109、5×109、および1×1010PFUで続いて投与されたマウスにおいて死を記録した。5×109および1×1010PFUの用量は生理食塩水で前処置したマウスに対して100%致死性であった。対照的に、0日目に脱感作用量のPPMK107を与えた後、1×1010PFUまでの用量レベルで2日後にPPMK107を注射したマウスの任意の群において死は見られなかった。これらのデータは、PPMK107がこの薬剤を用いる引き続きの投与の致死性を予防するために使用され得ることを示す。さらに、PPMK107の最大耐容性用量は、脱感作剤としてこのウイルスを使用する場合、約1桁上昇し得る。
【0187】
【表17】

(実施例19:より遅い静脈内注射速度はPPMK107の毒性を減少する)
22の無胸腺マウス(8週齢)を、ケタミン/キシラジンの組み合せで麻酔し、そして注射プロセスの間その動きを阻害することを補助するための抑制装置に配置して、PPMK107の緩やかなまたは迅速な注射を可能にした。緩やかな注射群について、生理食塩水中0.2mLの4×109PFUのPPMK107を、4分間に渡り10〜15秒毎に0.01mLを静脈内に注射した。迅速な注射群は同じ用量および容量を受けたが、30秒間にわたってである。表18に示すように、4分間にわたりPPMK107のその容量を受けるマウスは30秒で同じ静脈内投与を受けたマウスの半分の最大重量減少を有した(投与後2日目に記録)。これらの結果は、このような緩やかな速度で注射した場合PPMK107はほとんど毒性は無く、そして静脈内投与に関してより安全であることを示す。
【0188】
【表18】

(実施例20:進行したガンを有する患者の処置におけるPPMK107の使用)
PPMK107を、米国における第1期臨床試験において静脈内経路によって試験した。進行した固形腫瘍を有する23人の患者(もはや確立した治療法を受け容れない)をPPMK107で処置した。17人のこれらの患者に初期処置過程の単回投与を与えた。6人の他の患者は、初期処置過程の1週間にわたり週に3回の投与を受けている。各患者腫瘍のサイズを、月に1度追跡調査した。少なくとも安定な疾患(任意の新たな病巣の非存在下で、全ての測定可能腫瘍の積和における25%未満の増加および50%未満の減少)を有する患者が、各月のさらなる処置過程に好適である。
【0189】
(触知可能な腫瘍の後退)
結腸ガンを有する68歳の女性は、広範な転移のなかでも触知可能な腹の腫瘍を有した。PPMK107で単回静脈内処置後、この患者は、2週間過程にわたりこの単一の腹壁腫瘍の91%後退を経験した(表19)。投与後1日の腫瘍の測定(3.75×3cm)は4×3cmのベースライン測定と類似した。しかし投与後7日までに、この腫瘍は2×2cmのサイズまで減少し、そしてPPMK107投与後14日までに1.5×1.5cmのサイズまで減少し続けた。PPMK107処置前に、この腫瘍塊はPPMK107投与前2週間で腫瘍容積において、1065%増加を伴い急速に増殖していた。この患者は、いたるところの増加する腫瘍の増殖のために本研究に踏み切った。
【0190】
【表19】

(ガンの安定化)
8人の他の患者(彼らは、すべて従来のガン治療で以前に腫瘍進行を有した)は、PPMK107投与後のそれらの進行したガンの安定化の形態において利益を経験した。安定な疾患を伴うこれらの患者は、腎臓ガン、膵臓ガン、乳ガンおよび肺ガンを含む種々の型のガンを伴う患者を代表する。PPMK107処置の3ヵ月後、進行しそして広範に転移した腎臓ガンを伴う67歳の男性は、その時点で、新たな腫瘍の成長の徴候を何も伴わず、そして腫瘍サイズの増加の徴候を伴わない安定な疾患を有した。より多い用量のPPMK107を伴う安定な疾患の利点についてのより高い速度が存在した:安定な疾患を伴う6患者のうち2患者(患者の33%)は、最初の2回の単回用量レベル(59億PFU/m2および120億PFU/m2)で、そして安定な疾患を伴う5患者のうち4患者(80%の患者)は、最高の単回用量レベル(240億PFU/m2)(表20)で。
【0191】
【表20】

(疼痛投薬の減少)
単回用量59億PFU/m2用量レベルで患者は、麻薬疼痛投薬の減少によって認められるようにガン疼痛の症候緩和の形態でPPMK107処置からの利益を受けた。
【0192】
(脱感作)
第一の用量(59億PFU/m2)からの明らかな脱感作効果が、次の用量(これもまた59億PFU/m2)で同じ週内に見られる。一般的に、第二および第三の用量から報告された副作用は、はるかにより少なかった。例えば、この多用量治療レジメン(1週間にわたって、1週間あたり3用量)において最初の4患者は、アセトアミノフェンおよびイブプロフェンでの予防的解熱治療を受けたにもかかわらず、第一の用量後に熱を出した。これらの患者の大部分は、第二および第三の用量を受けた後は、彼らが解熱剤を受けなかった場合でさえ、熱を出さなかった。これは、1週間あたり3回のスケジュールでの第一の用量の投与が第二および第三の用量についての毒性を減少させたことを示す。
【0193】
(血清における中和抗体を介した投与)
フェーズI研究における用量範囲(≧59億PFU/m2)を用いて、それらが中和抗体を産生した場合でさえ、患者へ有効にウイルスを送達し得るという明らかな示唆もまた存在する。膵臓ガンを伴う72歳の女性は、120億PFU/m2単回用量レベルで、PPMK107処置の開始から2ヶ月にわたって安定な疾患を有した。第2の単位(PPMK107の単回静脈用量からなる)を、その患者が中和抗体を患者の血清に産生した、第一の用量の1ヶ月後に投与した。この第二の単位の7日後に、患者の尿は、1mLあたり少なくとも40PFUの力価でPPMK107について陽性であった。この結果は、この患者の血清におけるPPMK107に対する中和抗体が、第二の処置単位では、そのウイルスを完全に阻害し得なかったことを示す。
【0194】
(実施例21:ニューカッスル病ウイルスPPNJROAKINでの細胞傷害性アッセイ結果のまとめ)
ヒト腫瘍細胞および正常細胞を、24ウェル組織培養ディッシュ中で約80%のコンフルエンスにまで増殖させる。増殖培地を除去し、そしてPPNJROAKIN(亜病原性ニューカッスル病ウイルス株New Jersey Roakin−1946のプラーク精製したクローン)を、107プラーク形成単位(PFU)/ウェル〜1PFU/ウェルの範囲にわたって10倍希釈で添加した。ウイルスを添加しないコントロールウェルを各プレートに含ませた。ウイルスを、37℃で揺れる台の上で90分間にわたって吸着させた。インキュベーション時間の最後に、ウイルス希釈物を除去し、そして1mlの増殖培地に置換した。次いで、プレートを37℃で5日間5%CO2中でインキュベートした。細胞傷害性を、比色MTT(2−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ(Cell Titer 96、カタログ番号G4000、Promega Corporation、Madison WI 53711)を570nmでモニターして用いて、定量した。これは、ミトコンドリア酵素活性を検出する(Mosman、T.、1983、J.Immunol.Methods 65:55)。ウイルス処置したウェルにおける生存性を、処置していないコントロールウェル中の活性の割合として表現した。データを、PFU/ウェル対生存性として、コントロールの割合としてグラフに示した。IC50を、生存細胞の量の50%減少を引き起こすPFU/ウェルにおけるウイルス量として計算した。
【0195】
【表21】

これらの結果(表21)は、PPNJROAKINが、正常の皮膚線維芽細胞と比較して、少なくとも2つの異なるヒト腫瘍細胞(HT1080およびKB)の腫瘍選択的殺傷を実証することを示す。2つの腫瘍細胞株についてのIC50値は、正常細胞についての800〜5000分の1の間の低さであった。
【0196】
(実施例22:ニューカッスル病ウイルスPPCONN70726での細胞傷害アッセイ結果のまとめ)
ヒト腫瘍細胞および正常細胞を、24ウェル組織培養ディッシュにおいて約80%のコンフルエンスにまで増殖させた。増殖培地を除去し、そしてPPCONN70726(亜病原性ニューカッスル病ウイルス株Connecticut70726−1946のプラーク精製したクローン)を、107プラーク形成単位(PFU)/ウェル〜1PFU/ウェルの範囲にわたって10倍希釈で添加した。ウイルスを添加しないコントロールウェルを各プレートに含ませた。ウイルスを、37℃で揺れる台の上で90分間にわたって吸着させた。インキュベーション時間の最後に、ウイルス希釈物を除去し、そして1mlの増殖培地に置換した。次いで、プレートを37℃で5日間5%CO2中でインキュベートした。細胞傷害性を、比色MTT(2−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ(Cell Titer 96、カタログ番号G4000、Promega Corporation、Madison WI 53711)を570nmでモニターして用いて、定量した。これは、ミトコンドリア酵素活性を検出する(Mosman、T.、1983、J.Immunol.Methods 65:55)。ウイルス処置したウェルにおける生存性を、処置していないコントロールウェル中の活性の割合として表現した。データを、PFU/ウェル対生存性として、コントロールの割合としてグラフに示した。IC50を、生存細胞の量の50%減少を引き起こすPFU/ウェルにおけるウイルス量として計算した。
【0197】
【表22】

これらの結果(表22)は、PPCONN70726が、正常の皮膚線維芽細胞と比較して、少なくとも3つの異なるヒト腫瘍細胞(KB、U87MG、およびU373MG)の腫瘍選択的殺傷を実証することを示す。2つの腫瘍細胞株についてのIC50値は、正常細胞についての80〜5000分の1の間の低さであった。
【0198】
(実施例23:PPMK107、PPNJROAKIN、またはPPCONN70726を用いた、無胸腺マウスにおけるHT1080線維芽肉腫異種移植の腫瘍内処置)
この実験において、無胸腺マウス(雌性、NCR nu/nu、5〜6週齢)に、107 HT1080腫瘍細胞の皮下注射を与えた。4日後、腫瘍が6〜8.5mmの範囲の大きさに達すると、マウスを、生理食塩水、PPMK107(1×108PFU)、PPNJROAKIN(1×108PFU)、またはPPCONN70726(1×108PFU)で腫瘍内を処置した。表23に示すように、腫瘍後退が、これらの3つのウイルス(PPMK107、PPNJROAKIN、およびPPCONN70726)で処置したマウスで認められた。12匹のマウスのPPMK107処置後、4匹は、完全な腫瘍後退を経験し、そして6匹は、部分的な後退を経験した。12匹のマウスのPPNJROAKIN処置後、1匹が完全な腫瘍後退を経験し、そして2匹が部分的な後退を経験した。12匹のマウスのPPCONN70726処置後、3匹が完全な腫瘍後退を経験し、そして2匹が部分的な後退を経験した。生理食塩水で処置した動物のいずれにおいても腫瘍後退は認められなかった。これらの結果は、NDVの3つの亜病原性株が腫瘍後退を引き起こし得ることを示す。
【0199】
【表23】

(実施例24:免疫欠損無胸腺(nu/nu)マウスおよび免疫適合性異型接合性(nu/+)マウスにおける脳内注射後のPPMK107、PPNJROAKIN、およびPPCONN70726の効果)
56匹の無胸腺マウス(nu/nu)および56匹の免疫適合性異型接合性(nu/+)マウスに、生理食塩水、PPMK107、PPNJROAKIN、またはPPCONN70726のいずれかを、定位的脳内注射した。各型の8匹のさらなるマウスを処置していないコントロールとして用いた。ウイルスを、2つの用量のレベル(2×104または3.5×106PFU/マウス)の一方で用いた。表24に示すように、2つの用量レベルでの3つのウイルスの各々で処置した異型接合性nu/+マウスのすべては、1匹のマウスが、低量PPCONN70726用量レベルで非神経的症状のために安楽死したことを除いて、39日目まで生存した。PPMK107またはPPCONN70726のいずれかで処置した無胸腺nu/nu動物は、その異型接合性よりも有意に短く生存した。これは、3.5×106PFU/マウスのウイルス用量の最高のPPMK107またはPPCONN70726について特に当てはまった。ここで、各ウイルス群の無胸腺動物の13%(8匹中1匹)のみが39日目まで生存した。対照的に、PPNJROAKIN処置した無胸腺マウスは、この同じ用量レベル(3.5×106PFU.マウス)で75%の生存が存在した。これらのデータは、PPNJROAKINが、他の2つのウイルス株よりも無胸腺マウスの脳においてより良好に寛容であることを示す。
【0200】
【表24】

*この処置群における1匹の生存しなかったマウスは、非神経学的症状のために安楽死した。
【0201】
(実施例25:シンドビスウイルスPPSINDBIS−Ar339での細胞傷害性アッセイ結果のまとめ)
ヒト腫瘍細胞および正常細胞を、24ウェル組織培養ディッシュにおいて約80%コンフルエンスにまで増殖させた。増殖培地を除去し、そしてPPSINDBIS−Ar339(Sindbis Ar−339のプラーク精製したクローン)を、107プラーク形成単位(PFU)/ウェル〜1PFU/ウェルの範囲にわたって10倍希釈で添加した。ウイルスを添加しないコントロールウェルを各プレートに含ませた。ウイルスを、37℃で揺れる台の上で90分間にわたって吸着させた。インキュベーション時間の最後に、ウイルス希釈物を除去し、そして1mlの増殖培地に置換した。次いで、プレートを37℃で5日間5%CO2中でインキュベートした。細胞傷害性を、比色MTT(2−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ(Cell Titer 96、カタログ番号G4000、Promega Corporation、Madison WI 53711)を570nmでモニターして用いて、定量した。これは、ミトコンドリア酵素活性を検出する(Mosman、T.、1983、J.Immunol.Methods 65:55)。ウイルス処置したウェルにおける生存性を、処置していないコントロールウェル中の活性の割合として表現した。データを、PFU/ウェル対生存性として、コントロールの割合としてグラフに示した。IC50を、生存細胞の量の50%減少を引き起こすPFU/ウェルにおけるウイルス量として計算した。
【0202】
【表25】

*高親和性ラミニンレセプターについてmRNAを過剰発現することが公知である細胞
哺乳動物細胞上のシンドビスウイルスについての細胞レセプターは、高親和性ラミニンレセプターであり、これは、上皮系統の細胞上に主に発現されるが、しばしば、Panc−1膵臓ガン株およびSW620結腸腺ガン細胞株のような多くの転移性ガン細胞において過剰発現される(Campoら、(1992)Am.J.Pathol.141、1073−1083;Yowら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85、6394−6398)。対照的に、直腸腺ガン細胞株SW1423は、非常に低レベルの高親和性ラミニンレセプターmRNAを発現することが公知である(Yowら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85.6394−6398)そして、SW620細胞よりも、PPSINDBIS−Ar339による殺傷に対して、4桁を超える程度でより抵抗性である。これらの結果(表25)は、腫瘍原性であり、そして高レベルの高親和性ラミニンレセプターを発現する細胞は、他の腫瘍または正常細胞よりも、シンドビスクローンPPSINDBIS−Ar339による殺傷に対してより感受性であることを示す。
【0203】
(実施例26:インターフェロンの存在下での腫瘍原性細胞および非腫瘍原性細胞のVSV殺傷)
96ウェルプレートにおいて、腫瘍原性KBおよびHT1080細胞(1ウェルあたり3×104細胞)ならびに非腫瘍原性のWISH細胞(1ウェルあたり2.5×104細胞)を、2800〜22単位/mlの範囲で連続的に希釈したインターフェロンαの存在下で播種し、そして24時間37℃でインキュベートさせた。ついで、この細胞に、水疱性口内炎ウイルス(VSV,Inidiana株)に、10のmoiで感染させた。コントロールを、インターフェロンを含まない細胞ならびにインターフェロンもウイルスも含まない細胞について含ませた。この細胞を37℃で24時間インキュベートした。細胞傷害性を、比色MTT(2−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ(Cell Titer 96、カタログ番号G4000、Promega Corporation、Madison WI 53711)を570nmでモニターして用いて、定量した。これは、ミトコンドリア酵素活性を検出する(Mosman、T.、1983、J.Immunol.Methods 65:55)。ウイルス処置したウェルにおける生存性を、ウイルスを受けていないコントロールウェル中の活性の割合として表現した。
【0204】
【表26】

これらの結果(表26)は、VSVが、インターフェロン応答性を欠損する腫瘍細胞を選択的に殺傷し得ることを実証する(実施例27を参照のこと)。WISH細胞(ヒト羊膜細胞)は、インターフェロンバイオアッセイにおける使用について、それらがインターフェロンに効率的に応答する能力のために、充分に確立された細胞株である。
【0205】
(実施例27:PPMK107による殺傷に対して感受性または抵抗性である細胞におけるインターフェロン応答)
個々の細胞株を、96ウェルマイクロタイタープレートにおいてコンフルエント付近まで増殖させ、そして5〜5000U/mlの間のIFNαAで24時間処置した。次いで、この培養物に、PPMA107を、1.0のmoiで感染させ、そしてさらに24時間培養した。化学固定後、ウイルス発現の量を、可溶性指標色素を用いて免疫組織化学によって定量した。ウイルス増殖の量を、インターフェロンで処置していないコントロール細胞に対する発現したP抗原の割合として表した(図5)。このアッセイにおいて、インターフェロン応答性細胞は、インターフェロンに対する応答においてウイルス抗原の少なくとも50%の減少を示した。PPMK107に感受性である図5における細胞を実線によって示す;あまり感受性でない細胞を、破線によって示す。
【0206】
この実験の結果は、外因性インターフェロンの抗ウイルス活性に対する細胞株の抵抗性と、PPMK107よる殺傷に対するその細胞の相対感受性(グラフの凡例において細胞株の名称の隣の括弧内に示されるIC50によって示す、図5を参照のこと)との間の強度の相関を示す。例えば、5U/mlのインターフェロンでの前処置の後、7のうち6(86%)のインターフェロンに対して非応答性の細胞株が、PPMK107による殺傷に対して感受性であった;500U/mlのインターフェロンで前処置した場合には、すべて(4のうち4)の非応答性細胞株がPPMK107による殺傷に対して感受性であった。上記のデータはまた、PPMK107または他のインターフェロン感受性ウイルスによる殺傷に対して感受性であるようである候補細胞を同定するスクリーニングアッセイの一例を示す。例えば、外因性インターフェロンで前処置した後に有意の(例えば、コントロールの50%を超える)ウイルス抗原を発現する感染した細胞は、インターフェロン欠損であり、それゆえウイルスガン分解に対して感受性であるとみなされる。
【0207】
上記は、本発明の例示として意図されるが限定は意図しない。多数の変更および改変が本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における新生物を処置するための組成物であって、該組成物は、インターフェロン感受性の複製能を有するワクシニアウイルスの治療有効量を含み、そして、該ウイルスは、K3L、E3L、B18R、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される1以上の遺伝子において1以上の変異を有する、組成物。
【請求項2】
哺乳動物における新生物を処置するための組成物であって、該組成物は、複製能を有するワクシニアウイルスの治療有効量を含み、そして、該ウイルスは、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される1以上の遺伝子において1以上の弱毒化変異を有する、組成物。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスが、インターフェロンの非存在下と比較して、インターフェロンの存在下で、少なくとも100分の1、または、少なくとも1000分の1よりも少なく複製する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ワクシニアウイルスが、インターフェロンの抗ウイルス効果の不活化についてのウイルス機構を減少または消失させることによって改変されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、全身投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物であって、静脈内投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、腫瘍内投与、動脈内投与、クモ膜下腔内投与または頭蓋内投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項8】
前記新生物がガンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ワクシニアウイルスがクローン性ウイルスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記クローン性ウイルスが、プラーク精製されるか、限界希釈により得られるか、そして/または、組換えクローン性起源である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ウイルスが、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子において1以上の変異を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ウイルスが、ワクシニア増殖因子、チミジンキナーゼ、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される1以上の遺伝子において1以上の弱毒化変異を有する、請求項1および3〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ウイルスが、K3L、E3LおよびB18Rからなる群より選択される少なくとも2つの遺伝子において1以上の変異を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ウイルスが、ワクシニア増殖因子、チミジンキナーゼ、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される少なくとも2つの遺伝子において1以上の弱毒化変異を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ウイルスが、ワクシニア増殖因子遺伝子およびチミジンキナーゼ遺伝子において1以上の弱毒化変異を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記新生物が固形腫瘍である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記新生物が、肺ガン、結腸ガン、前立腺ガン、乳ガン、腹水および脳腫瘍からなる群より選択されるガンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記新生物が神経膠芽腫である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ウイルスが、プロドラッグ活性化酵素をコードする遺伝子、または、インターフェロンのウイルス発現を可能にするインターフェロンをコードする遺伝子を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物がインターフェロンと組み合わせて投与されることを特徴とし、そして、該インターフェロンの投与が、該組成物投与の前、間または後である、組成物。
【請求項21】
前記インターフェロンが、α−インターフェロン、β−IFN、ω−インターフェロン、γ−インターフェロンおよび合成コンセンサス形態のインターフェロンからなる群より選択される、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、プリンヌクレオシドアナログ、チロシンキナーゼインヒビター、シメチジン、ミトコンドリアインヒビター、化学療法薬剤、免疫刺激用化合物、サイトカイン、GM−CSF、免疫抑制剤、コルチコステロイド、TNF、IL−2および第二のウイルスからなる群より選択される化合物の投与の前、間または後に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記新生物が、2cm〜5cm、少なくとも5cm、少なくとも2cm、少なくとも1cmの大きさ、少なくとも300mmの体積、または、前記哺乳動物の総体重の少なくとも1.5%である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記新生物が化学療法に応答しない、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記新生物の細胞が、p68プロテインキナーゼ、C−Myc、C−Myb、ISGF−3、IRF−l、インターフェロンレセプターおよびp58からなる群より選択される、タンパク質またはタンパク質をコードするmRNAについてスクリーニングされている、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物であって、1を超える用量として投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項28】
第一の用量が脱感作用量である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記第一の用量が静脈内投与、クモ膜下腔内投与、頭蓋内投与または動脈内投与されることを特徴とする、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
請求項27〜29のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物の用量が、該組成物の第一の用量に続いて、腹腔内投与、静脈内投与または動脈内投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物が、複数のコースとして投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物であって、該組成物の少なくとも1用量が、少なくとも4分のコースにわたって投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項33】
哺乳動物における疼痛の減少をもたらす、請求項1〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
哺乳動物における新生物の処置のための医薬の調製のための、インターフェロン感受性の複製能を有するワクシニアウイルスの使用であって、該ウイルスは、K3L、E3L、B18R、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される1以上の遺伝子における1以上の変異を含む、使用。
【請求項35】
哺乳動物における新生物の処置のための医薬の調製のための、複製能を有するワクシニアウイルスの使用であって、該ウイルスは、ワクシニア増殖因子、チミジレートキナーゼ、DNAリガーゼおよびdUTPアーゼからなる群より選択される1以上の遺伝子において1以上の弱毒化変異を含む、使用。
【請求項36】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−161558(P2009−161558A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95352(P2009−95352)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【分割の表示】特願2000−515443(P2000−515443)の分割
【原出願日】平成10年10月9日(1998.10.9)
【出願人】(399037025)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】