説明

ウイルス不活化剤

【課題】さらなるウイルス不活化効果を持つ薬剤を提供する。
【解決手段】アリルイソチオシアネートを有効成分とする薬剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はウイルス不活化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香料などに含まれる抗菌防カビ性を有する種々の物質により、生活環境や食品などの製造現場における衛生を維持することが行われている。
【0003】
近年、新種のウイルスによる感染症が次々と発生し、また温暖化に伴って熱帯のみ生息するウイルスの北限が上昇しており、細菌やカビだけではなく、ウイルスに対しても感染抑制効果を有する物質の必要性が高まっている。このような物質としては、例えば特許文献1に挙げられるピネン類やシネオール類などが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−306217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、細菌やカビに対して有効である物質は多く知られているが、より単純な構造であるウイルスに対しては細菌やカビと同等の効果を得ることが難しく、ウイルスに対して不活化作用を有することが見出されている物質は限られており、より広範にウイルスに対抗するために、さらなるウイルス不活化効果のある薬剤が求められていた。
【0006】
そこでこの発明は、さらなるウイルス不活化効果を有するウイルス不活化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤により上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0008】
アリルイソチオシアネートは、樹脂との混練物としても、それらを多孔質単体やシート状物に担持、積層させたものとしても、乳化剤で乳化しても、ゲル状化やエアゾール化しても、ウイルス不活化剤として作用し、様々な状況においてウイルスを不活化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤である。
【0010】
この発明にかかる、アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤の使用形態としては、例えば、樹脂との混練により得られた混練物を挙げることができる。樹脂と混練することにより、アリルイソチオシアネートの揮散速度を調整することができ、長期間に亘って、アリルイソチオシアネートを揮散させ続けることができるようになる。上記の樹脂は、アリルイソチオシアネートと混練できるものである必要があり、アリルイソチオシアネートと反応しにくいものであると望ましく、アリルイソチオシアネートを安定化させるものであるとより望ましい。
【0011】
上記のアリルイソチオシアネートと混練する上記樹脂としては、例えば、パラフィンワックス等の石油ワックス、合成ワックス、ロジンエステル樹脂等のロジン系樹脂、セラック系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、シュガーエステル、遊離脂肪酸やアルコール基を含有する天然ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、さらに、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル系樹脂等の合成高分子ポリマー等が挙げられる。これら上記の樹脂はそれぞれ単独で使用してもよいし、また、2種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
また、これらの樹脂の望ましい融点は50〜120℃であり、より望ましい融点は60〜100℃である。融点が120℃を超えると、混練する際にアリルイソチオシアネートを分解させてしまうおそれがあるからであり、50℃未満であると混練物として扱いにくくなったり、保管温度や流通温度などの上昇により一定の形状を保てなくなったりする場合があるからである。
【0013】
なお、これらの樹脂とアリルイソチオシアネートとの混合比は、特に制限されるものではなく、常温で固形状、またはペースト状となる混合比であればよい。
【0014】
上記のような樹脂とアリルイソチオシアネートとの混練物は、そのまま用いる他に、多孔質担体に担持させたり、シート状物に積層したりして用いてもよい。
【0015】
上記の多孔質担体とは、アリルイソチオシアネートとの反応性に乏しく、かつ上記混練物を担持することができる多孔質の物質をいう。この多孔質担体を構成する材質としては、例えば、セルロース、キトサン等の天然高分子及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の合成高分子、ケイ酸カルシウムや各種セラミックスなどの無機多孔性化合物等が挙げられる。また、これらの多孔質担体の形状としては、粒状、シート状等、任意の形状があげられ、具体的には、ビーズ、マット、不織布、紙等があげられる。
【0016】
上記のシート状物は、アリルイソチオシアネートを積層することが出来、表面積に比して厚みが小さいシート状の物体をいう。このようなシート状物としては、例えば、シート、フィルム、織布、不織布等が挙げられる。このシート状物は、単層であっても複層であってもよく、積層するアリルイソチオシアネートは一層のみ積層するだけではなく、例えば、シート状物の表と裏とに、複数層積層させてもよい。
【0017】
上記のようなウイルス不活化剤の混練物を担持させたり、積層させたりしたものは、例えば、空調設備、トイレ、浴室、居間、病室、病院の待合室、ダストボックスなどに設置して、アリルイソチオシアネートを徐々に揮散させることで利用できる。利用する際には、形態や含有量などを調整し、場合によっては加温や送風などによりアリルイソチオシアネートの揮散を促進させたり、又はそれを抑制したりすることで、ウイルス不活化効果を発揮するに適したアリルイソチオシアネート濃度で、かつ長期間利用できるように調整できる。
【0018】
この発明にかかる、アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤の他の使用形態としては、例えば、乳化剤で乳化したものが挙げられる。乳化することにより、水溶液として取り扱うことができる。その利用方法としては、ウイルスを含有した液中のウイルス不活化効果や、食品の洗浄液に用いてウイルス不活化効果を発揮させるといった方法等が挙げられる。
【0019】
上記の乳化剤としては、水に可溶な界面活性剤であれば特に限定はなく、ソルビタン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0020】
この発明にかかる、アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤の他の使用形態としては、例えば、ゲル状又はペースト状にしたものや、エアゾール化したものが挙げられる。このゲル状にしたものとは、寒天やカラギーナンなどのゲル化剤を用いて得られる水溶性ゲルや、ステアリン酸ナトリウム等の石けんを用いて得られた油性ゲル中に、アリルイソチオシアネートやその他の添加物を含浸させたものが挙げられる。
【0021】
また、この発明にかかるペースト状にしたものとは、例えば、医療に用いられる軟膏にアリルイソチオシアネートを配合したものが挙げられる。このようにペースト状にしたものの利用方法としては、医療器具、又は患部に直接塗布して使用するといったことが挙げられる。
【0022】
さらに、この発明にかかるエアゾール化したものとしては、例えば、スプレー缶に封入して、ウイルスが存在する、又は存在すると思われる場所に噴霧できるようにしたものが挙げられる。また、上記のアリルイソチオシアネートを乳化剤で乳化した乳液を霧吹きで吹き付けてもよい。
【0023】
この発明にかかるウイルス不活化剤は、アリルイソチオシアネートと、上記の成分の他に、アリルイソチオシアネートによる抗ウイルス効果を阻害しない範囲で、香料などの添加物が添加されていてもよい。このような香料としては、天然香料でも合成香料でもよく、上記天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、ベイ油、ボア・ド・ローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、芳樟油、テレビン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメグ油、カナンガ油、タイム油などの精油が挙げられ、合成香料としては、例えばリナリルアセテート、C〜C12の各種脂肪族アルデヒド、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメイト、バニリン、ニトロムスク類、ガラクソライド、トナリド、ペンタリド、サンタレックス、アミルサリシレート、アミルアセテート、γ−ウンデカラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、ヘリオトロピンなどが挙げられる。これらの香料はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を調合した調合香料として用いてもよい。
【0024】
また、上記以外にアリルイソチオシアネートに添加する添加剤としては、アリルイソチオシアネートを安定化させる目的で、酸化防止剤や光安定化剤等が挙げられる。このような酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。また、光安定化剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0025】
さらに、この発明にかかるウイルス不活化剤には、アリルイソチオシアネートの揮散が完了したことを示すための変色剤が添加されていてもよい。また、上記の多孔質担体やシート状物が、アリルイソチオシアネートの揮散に伴って変色するものであってもよい。アリルイソチオシアネートは特有の臭いを有するため、揮散せずに残っている場合は臭いで判別することも可能であるが、残存量や揮散状況によってはそれが不可能な場合もあるため、視覚により判断できるものであるとより望ましい。
【0026】
さらにまた、この発明にかかるウイルス不活化剤である混練物や、多孔質単体に担持させたもの、ペースト状にしたものを、袋又は容器に封入したウイルス不活化剤製剤として用いてもよい。
【0027】
上記袋の構成材料としては、具体的にはポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのフィルムが挙げられ、これらを単独、または複数をラミネートして使用することもできる。さらに、上記フィルムに不織布、紙などをラミネートしたものを使用してもよい。
【0028】
また、上記容器の種類としては、射出成型容器、ブリスター容器などが挙げられる。その材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらを単独、または複数組み合わせて使用することができる。さらに、上記容器の一部に上記袋状の構成材料を使用してもよい。
【0029】
このようなウイルス不活化剤製剤は、使用用途や有効期間に応じて、上記袋若しくは容器の大きさや構成材料、又はその厚みを適宜選択することで、アリルイソチオシアネートの揮散量を必要に応じて制御することも可能である。
【0030】
この発明にかかるウイルス不活化剤が、抗ウイルス効果を発揮するウイルスは、例えば、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を用いてこの発明を具体的に説明する。
【0032】
[マウス肝炎ウイルスに対する効果測定]
(試験ウイルス)
マウス肝炎ウイルス MHV−U株(Hirano et al., Japan. J. Exp. Med. 45,429−432,1975)
【0033】
(使用細胞)
DBT細胞 マウス脳腫瘍由来細胞 (Hirano et al., Archive gesumte. Virusforschung. 44:298−302, 1974)
【0034】
(ウイルス液の調製)
マウス肝炎ウイルス MHV−U 株:1×10 50%Tissue Culture Infective Dose (TCID50) / 0.2ml
DBT細胞にMHV−U 株を接種し、24時間後に回収した感染培養液をウイルス液として使用した。
【0035】
(感染価の測定)
3日間、ウイルス接種した細胞を観察し、細胞変性(CPE)の出現を指標に50%組織培養感染価(TCID50/0.2ml)を算出した。
【0036】
(アリルイソチオシアネート乳化溶液の調製)
アリルイソチオシアネート(日本テルペン化学(株)製:イソチオシアン酸アリル 以下「AITC」と略す。また、この薬品を単独で用いる場合「AITC原液」と表記する。)5gと、乳化剤(花王(株)製:レオドール TW−0106V)0.5gと乳化剤(花王(株)製:エマゾールスーパーL−10F)0.5gとを、水94mlに分散させて、5重量%AITC乳化溶液を調製した。
(基礎乳剤の調製)
乳化剤(花王(株)製:レオドール TW−0106V)0.5gと乳化剤(花王(株)製:エマゾールスーパーL−10F)0.5gとを、水99mlに分散させて、基礎乳化溶液を調製した。
(細胞増殖培地の調製)
・MEM;イーグルMEM培地(日水製薬(株)製)……80%
・Tsyptose phos phite broth(Difco,USA)……10%
・新生コウシ血清……10%
(細胞維持培地の調製)
・MEM;イーグルMEM培地(日水製薬(株)製)……85%
・Tsyptose phos phite broth(Difco,USA)……10%
・新生コウシ血清……5%
【0037】
(実施例1)
AITC乳化溶液0.2mlと、ウイルス液1.8mlとを混合したAITC含有ウイルス液2.0mlを原液とし、この原液を37℃で2時間加温して試験液を得た。また、この試験液を10分の1から100万分の1まで一桁ごとにMEMで希釈し、試験希釈液を得た。次に、24穴組織培養皿にDBT細胞を増殖培地に浮遊させ、1穴ごとに1mlの浮遊液を分注し、37℃の5%COインキュベーター内で培養した。単層細胞層が形成されたらDBT細胞の培養液を取り除き、MEMで1回洗浄後、試験液,または試験希釈液0.2mlを3穴のDBT細胞に接種し、37℃の5%COインキュベーター内に60分間放置し、ウイルス吸着後、細胞維持培地を1ml加え、再度5%COインキュベーター内にて3日間培養した。培養中は毎日、DBT細胞に出現する細胞変化(細胞毒性、CPE)を倒立顕微鏡下で観察した。感染価はReed and Muenchの方法でTCID50/0.2mlを測定した。その結果を表1の(1)に示す。また、AITCの細胞におよぼす影響を軽減するため、24時間後に希釈濃度が10−1の試験液を回収し、その回収液をさらに希釈した試験液を新たな培地に加え、上記同様、3日後にTCID50を測定した。その結果を表1の(2)に示す。表中「cy」は細胞が死滅した検体を示し、「+」はウイルス感染によるCPEが観測された検体を示し、「−」は細胞に変化が見られなかった検体を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(比較例1)
基礎乳剤0.2mlと、ウイルス液1.8mlとを混合して、ブランクウイルス液2.0mlを調製した。このブランクウイルス液を原液として、実施例1と同様の手順により測定を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
MEM0.2mlと、ウイルス液1.8mlとを混合して、MEMウイルス液2.0mlを調製した。このMEMウイルス液を原液として、実施例1と同様の手順により測定を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
(結果1)
AITCを含んだ実施例1においては、AITC濃度が高い場合には細胞が死滅するため、測定不可能となった。しかしながら、比較例1及び2ではウイルスの感染が観測された1000分の1希釈液において、実施例1ではウイルス感染が見られず、AITCによってウイルスが不活性化されたことがわかった。さらに、24時間後に10分の1希釈液を用いた試験液を回収し、その回収液をさらに希釈して培地交換した100分の1希釈液においては、ウイルス感染が見られず、AITCの細胞に及ぼす影響を軽減することで、より低濃度でウイルスが不活化されたことがわかった。したがってAITCは濃度が高すぎると、細胞を傷つけるため、ウイルス不活化効果が算定できないが、マウス肝炎ウイルスを不活化する効果は十分に発揮され、使用にあたっては環境に応じてふさわしい濃度を選択すればよいことが示された。
【0042】
[インフルエンザウイルスに対する効果測定]
(試験ウイルス)
インフルエンザウイルスA型(H1N1)
【0043】
(使用細胞)
MDCK(NBL−2)細胞 大日本製薬(株)製:ATCC CCL−34株
【0044】
(ウイルス液の調製)
細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。培養後、フラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウイルスを接種した。次に、細胞維持培地を加え、37℃のCOインキュベーター内で3日間培養した。培養後、顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞の形態変化(細胞変性効果)が生じていることを確認した。確認後、培養液を遠心分離(3000r/min、10分間)して得られた上澄み液をウイルス液とした。
【0045】
(使用培地)
1.細胞増殖培地
MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有、日水製薬(株)製)に新生コウシ血清10%添加品
2.細胞維持培地
以下の組成の培地を使用した。
・MEM・・・・・・・・・・・・・・・1,000ml
・10%NaHCO・・・・・・・・・18ml
・L−グルタミン(30g/l)・・・・9.8ml
・100×MEMビタミン液・・・・・・30ml
・10%アルブミン・・・・・・・・・・20ml
・0.25%トリプシン・・・・・・・・20ml
【0046】
(実施例2)
プラスチックシャーレの蓋にろ紙を置き、AITC原液10μlを滴下した。これにウイルス液15μlを室温で風乾したシャーレをかぶせ、シャーレ周囲をテープで巻きつけ、室温で保存した。保存から30分後、2時間後及び4時間後に、ウイルス液を細胞維持培地1mlで洗い出し、これを試験液とした。また、10分の1から100万分の1まで一桁ごとにMEMで希釈し、試験希釈液を得た。次に、細胞増殖培地を用い、MDCK細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。そして、試験液、及び試験希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃のCOインキュベーター内で5日間培養した。培養後、顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して試験液1mlあたりのウイルス感染価に換算した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
(比較例3)
実施例2において、シャーレの蓋にろ紙を置いた後、AITC原液10μlの滴下を行わずにシャーレをかぶせ、それ以外は実施例2と同様の方法でウイルス感染価を測定した。その結果を表2に示す。
【0049】
(結果)
実施例2では、ろ紙に含ませたAITCが揮散し、AITCガスがウイルスと接触することでウイルスが不活化されたことがわかった。この結果は、揮散性物質特有の効果であり、空気中に浮遊しているウイルスに対して、不活化作用を与えられることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリルイソチオシアネートを有効成分とするウイルス不活化剤。
【請求項2】
アリルイソチオシアネートと樹脂との混練物からなる、請求項1に記載のウイルス不活化剤。
【請求項3】
アリルイソチオシアネートと樹脂との混練物を、多孔質担体に担持させた、請求項1に記載のウイルス不活化剤。
【請求項4】
アリルイソチオシアネートと樹脂との混練物をシート状物に積層した、請求項1に記載のウイルス不活化剤。
【請求項5】
アリルイソチオシアネートを乳化剤を用いて乳化した、請求項1に記載のウイルス不活化剤。
【請求項6】
アリルイソチオシアネートをゲル化又はペースト状にした請求項1に記載のウイルス不活化剤。
【請求項7】
アリルイソチオシアネートをエアゾール化した、請求項1又は5に記載のウイルス不活化剤。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか、又は請求項6に記載のウイルス不活化剤を、袋又は容器に封入したウイルス不活化剤製剤。

【公開番号】特開2007−1939(P2007−1939A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184707(P2005−184707)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】