説明

ウイルス感染症の治療

本発明は、ウイルス感染症、特にウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療のための組成物、薬剤、および方法を提供する。詳細には、本発明は、様々な1-フェニル-2-アミノエタノール、エタナール、およびエタン関連誘導体を用いた急性ウイルス感染症の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染症の治療、特にウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療に関する。詳細には、本発明は、様々な1-フェニル-2-アミノエタノール、エタナール、およびエタン関連誘導体を用いた急性ウイルス感染症の治療、ならびに治療方法におけるこれらの化合物の使用に関する。本発明は、特に、既存のウイルスだけでなく、既存のウイルスから突然変異してインフルエンザの大流行を引き起こす可能性のある将来の派生ウイルス株をも包含する、インフルエンザウイルス株の感染によって引き起こされる呼吸器疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患に対する防御はすべての動物の生存にとって重要であり、この目的のために用いられる機構は動物の免疫系である。免疫系は非常に複雑であり、2つの主要な部分、(i)先天性免疫および(ii)適応免疫から成る。先天性免疫系は、非特異的に、侵入微生物による感染から宿主を防御する細胞および機構を含む。先天性免疫系に関与する白血球は、特に、マクロファージ、好中球、および樹状細胞などの食細胞を含む。先天性免疫系は、病原体が宿主に侵入する前に完全に機能し得る。
【0003】
一方、適応免疫系は、病原体が宿主に侵入した後にのみ開始され、その時点でその病原体に特異的な防御を発現させる。適応免疫系の細胞はリンパ球と呼ばれ、その2つの主要な種類はB細胞およびT細胞である。B細胞は、血漿およびリンパ液中を循環する中和抗体の産生に関与し、液性免疫反応の一部を形成する。T細胞は、液性免疫反応と細胞性免疫との両方において機能する。活性化T細胞またはエフェクターT細胞といういくつかのサブセットがあり、それらは細胞傷害性T細胞(CD8+)、ならびに1型ヘルパーT細胞(Th1)および2型ヘルパーT細胞(Th2)として知られる2つの主要な種類がある「ヘルパー」T細胞(CD4+)を含む。
【0004】
Th1細胞は細胞性適応免疫反応を促進し、それはマクロファージの活性化を伴い、抗原に応答して、IFNγ、TNF-α、およびIL-12などの様々なサイトカインの放出を促進する。これらのサイトカインは、適応免疫反応および先天性免疫反応において他の細胞の機能に影響を及ぼし、微生物の破壊を引き起こす。通常、Th1反応は、宿主細胞の内部に存在するウイルスおよび細菌などの細胞内病原体に対してより効果的である。しかしながら、Th2反応は、IL-4の放出を特徴とし、それはB細胞の活性化を引き起こして中和抗体を産生し、液性免疫を誘導する。Th2反応は、宿主細胞の外部にある寄生生物および毒素などの細胞外病原体に対してより効果的である。従って、液性反応および細胞性反応は、侵入病原体に対して全く異なる機構を提供する。
【0005】
本発明は、急性ウイルス感染症、および特に急性ウイルス感染症が引き起こす呼吸器疾患を含む、広範なウイルス感染症の治療のための新規治療法の開発に関する。急性ウイルス感染症は、疾患の急激な発症、比較的短期間の症状、および通常数日以内での消散を特徴とする。急性ウイルス感染症は通常、早期の感染性ビリオンの産生および宿主免疫系による感染の排除を伴う。急性ウイルス感染症は、通常、インフルエンザウイルスおよびライノウイルスなどの病原体で観察される。急性ウイルス感染症は、1918年のスペイン風邪大流行を引き起こしたH1N1インフルエンザウイルスのような重篤で顕著な例であり得る。
【0006】
急性感染症は潜伏期間から始まり、その間にウイルスゲノムは複製し、宿主の先天性反応が開始される。感染の初期に産生されるサイトカインは、急性感染症の典型的な症状:すなわち、鈍痛(aches)、痛み(pains)、発熱、および吐き気を引き起こす。潜伏期間が1日程度の短期間であるものもあり(インフルエンザ、ライノウイルス)、これは、症状が侵入部位付近での局所的なウイルス増殖によって生じることを示唆する。典型的な急性感染症の例は、合併症を伴わないインフルエンザである。ウイルス粒子はくしゃみまたは咳によって生じる飛沫で吸い込まれ、気道の線毛円柱上皮細胞で複製を開始する。新たな感染性ビリオンが産生されると、それらは隣接細胞に広がる。ウイルスは、感染後1日目〜7日目の咽頭スワブまたは鼻汁から分離され得る。感染後48時間以内に症状が現れ、これらは約3日間持続し、その後治まる。感染は通常、約7日間で先天性反応および適応反応によって除去される。しかし、患者は通常、感染の間に産生されたサイトカインによる気道上皮の損傷の結果、数週間体調不良を感じる。
【0007】
インフルエンザおよび麻疹などの急性ウイルス感染症は、毎年何百万の人々を巻き込む疾患の流行の原因である。ワクチンが使用できない場合には、急性感染症を制御することは困難である。これは、大集団および混み合った場所における急性感染症の制御を非常に困難にする。典型的な急性感染症であるノロウイルス胃腸炎の頻発は、この問題を浮き彫りにする。効果的であるためには感染の初期に投与されなければならないため、抗ウイルス療法は使用できない。従って、迅速診断検査が利用可能になるまで、大部分の急性ウイルス感染症の抗ウイルス薬による治療の見込みはほとんどない。しかし、大部分の一般的な急性ウイルス性疾患に対する抗ウイルス薬は、現在のところ存在しないことに注意しなければならない。従って、当技術分野において、ウイルス感染症、特に急性ウイルス感染症の治療に使用するための改良された薬剤が、明らかに必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、特定の1-フェニル-2-アミノエタン関連誘導体が、このような感染症の治療において有用であるために必要とされる特性を有することを見いだした。
【0009】
従って、本発明の第一の態様では、急性ウイルス感染症の治療における使用のために、化学式Iの化合物
【化1】

【0010】
[式中、
XはCO、CHOH、またはCH2であり;
R1はHであるか、またはR2と結合し;
R2はH、OH、ハロゲン、置換もしくは非置換のアミノ基、任意選択で1つ以上のO、OH、アミノ、および/もしくは任意選択でC 1-3アルキル置換されたフェニル基によって置換された、C1-5アルキル基もしくはアルコキシル基であるか、またはR1と結合し;
R3およびR4は、それぞれ独立に、H、OH、ハロゲン、置換もしくは非置換のアミノ基、または任意選択で1つ以上のO、OH、アミノ、および/もしくは任意選択でC 1-3アルキル置換されたフェニル基によって置換された、C1-5アルキル基もしくはアルコキシル基であり;
R5はHであり;
R6はH、C1-5アルキル基であるか、またはR8と結合し;
R7はHであるか、またはR8と結合し;
R8はR6もしくはR7と結合するか、または任意選択でその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子を含み、かつ任意選択で1つ以上のOH、および/または任意選択で1つ以上のOHもしくはC1-5アルコキシル基、もしくはアルキル基によって置換されるC5-6アリール基によって置換される直鎖、分岐鎖、もしくはシクロC1-C9アルキル基であり;
結合している場合には、R1およびR2は、結合した環炭素原子とともに、5つもしくは6つの炭素原子、または4つもしくは5つの炭素原子および1つのヘテロ原子から構成される、任意選択でO置換されたシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロへテロアルキル基、またはシクロへテロアルケニル基を形成し;
結合している場合には、R6およびR8は、窒素原子を有するR8および炭素原子を有するR6とともに、5または6員環シクロへテロアルキル基を形成し;ならびに、
結合している場合には、R7およびR8は、窒素原子を有するそれらとともに、任意選択でベンジル置換された5または6員環シクロへテロアルキル基を形成する];
あるいはその製薬上許容されうる塩または溶媒和物が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様では、急性ウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法が提供され、その方法は、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の上記に定義された化合物を投与することを含む。
【0012】
R2は、ヒドロキシアルキル基であり得、またはカルボニルオキシ基を含み、好ましくは、H、OH、HOCH2-、O=CHNH-、CH3PhCOO-、NH2COO-、もしくはハロゲン、好ましくは塩素である。R2は、より好ましくはH、OH、またはClである。R3は、好ましくはH、NH2、OH、またはCH3PhCOO-である。R3は、より好ましくはH、NH2、またはOHである。R4は、好ましくはH、OH、NH2COO-、またはハロゲン、好ましくは塩素である。R4は、より好ましくはHまたはClである。R6は、好ましくはメチル、エチル、またはHであり、より好ましくは、メチルまたはエチルであり、最も好ましくはメチルである。R7は、好ましくはHである。R8は、好ましくは、任意選択でOH、フェニル、PhOH、もしくはPhOCH3によって置換された、直鎖または分岐鎖C2-C6アルキル基である。R8は、より好ましくは、tert-ブチル、イソプロピル、-C(CH3)2OH、-CH2PhOCH3、-(CH2)2PhOH、-CH(CH3)CH2CH2Ph、または-CH(CH3)CH2CH2PhOHであり、最も好ましくは、tert-ブチル、-C(CH3)2OH、-(CH2)2PhOH、-CH(CH3)CH2CH2Ph、または-CH(CH3)CH2CH2PhOHである。R8はまた、
【化2】

【0013】
であり得る。
【0014】
結合している場合には、R1およびR2は、好ましくは下記の基:すなわち、
【化3】

【0015】
を形成する。
【0016】
R6およびR8が結合している場合には、窒素原子を有するR8および炭素原子を有するR6とともに、それらが5つの炭素原子および1つの窒素原子のシクロへテロアルキル基を形成することが好ましい。R7およびR8が結合している場合には、それらは下記の基:すなわち、
【化4】

【0017】
を形成することが好ましい。
【0018】
上記において、Phはフェニルを意味し、二置換される場合には、このようなフェニル基はいずれも1, 4-置換されることが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明は、化学式Iの化合物
[式中、
XはCO、CHOH、またはCH2であり;
R1はHであり;
R2はH、OH、またはハロゲンであり;
R3はH、OH、またはNH2であり;
R4はH、またはハロゲンであり;
R5はHであり;
R6はH、メチルもしくはエチルであるか、またはR8と結合し;
R7はHであるか、またはR8と結合し;
R8はR6もしくはR7と結合するか、またはtert-ブチル、-C(CH3)2OH、-(CH2)2PhOH、-CH(CH3)CH2CH2Ph、もしくは-CH(CH3)CH2CH2PhOHであり;
結合している場合には、R6およびR8は、窒素原子を有するR8および炭素原子を有するR6とともに、5つの炭素原子および1つの窒素原子から構成されるシクロへテロアルキル基を形成し;ならびに、
R7およびR8が結合している場合には、それらは下記の基:すなわち、
【化5】

【0020】
を形成する];
あるいはその製薬上許容されうる塩または溶媒和物を含む。
【0021】
R6がR8と結合していない本発明のすべての実施形態において、R6はメチル基またはエチル基であることが好ましく、好ましくはメチル基である。このような好ましい実施形態では、R1、R4、R5およびR7はHであり、R2はHまたはOHであり、R3はOHであることがまた好ましい。このような好ましい実施形態では、R8は-(CH2)2PhOHまたは-CH(CH3)CH2CH2PhOHであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、in vivoでのマウス攻撃試験の結果を示すグラフであり、マウスはH1N1ウイルスに感染し、その後、化学式Iで表される化合物、すなわち、ドブタミン(BC1021)で処置された。ドブタミンは、3日目での単回投与量として、ならびに3日目および4日目での2倍の投与量としてマウスに投与され、マウスの体重減少が測定された。ドブタミンは、対照マウスには与えられなかった。
【図2】図2は、図1と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験におけるマウスの生存率を示すグラフである。マウスは、ドブタミンを3日目での単回投与量として、ならびに3日目および4日目に投与され、生存率が測定された。ドブタミンは、対照マウスには与えられなかった。
【図3】図3は、図1と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験の総罹患率(死亡率ではない)を示すグラフである。罹患率(すなわち、マウスの健康状態の全般的測定)に対する、化学式Iで表される化合物、すなわちドブタミン(BC1021)およびリトドリン(BC1023)の単回投与量(3日目)ならびに2倍の投与量(3日目および4日目)の影響が測定された。折れ線A:対照(薬物投与なし);折れ線B:BC1021、3日目での1回投与;折れ線C:BC1021、3日目および4日目での2回投与;折れ線D:BC1023、3日目での1回投与;折れ線E:BC1023、3日目および4日目での2回投与。
【図4】図4は、in vivoでのマウス攻撃試験の結果を示すグラフであり、マウスはH1N1ウイルスに感染し、その後、化学式Iで表される化合物、すなわち、ブプロピオン代謝物の1つの実施形態である、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール(BC1053)で処置された。このブプロピオン代謝物は、3日目での単回投与量、ならびに3日目および4日目での2倍の投与量としてマウスに投与され、マウスの体重減少が測定された。代謝物は、対照マウスには与えられなかった。
【図5】図5は、図4と関連して記載されるin vivoでのマウス攻撃試験におけるマウスの生存率を示すグラフである。マウスは、ブプロピオン代謝物を3日目での単回投与量として、ならびに3日目および4日目に投与され、生存率が測定された。代謝物は、対照マウスには与えられなかった。
【図6】図6は、化学式Iで表される化合物の別の実施形態である1つの実施形態(例えば、BC1053として本明細書に示された、ブプロピオン代謝物)の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
インフルエンザなどの急性ウイルス感染の間、ウイルスは主に、宿主の先天性免疫系および細胞性Th1反応によって闘われ、その後、体液性の抗体主導型Th2反応によって闘われることが知られている。更に、本発明者らは、感受性の個体(すなわち、若く、元気で健康な個体)において、インフルエンザ感染に対するTh1反応は極めて強く、IFN-γおよびTNF-αなどの特定のサイトカインの濃度の著しい増加を伴う、いわゆる「サイトカインストーム」を引き起こし得ると考える。この「サイトカインストーム」は、感染した肺組織の重篤な炎症、肺への体液の漏出、および感染個体の肺への著しい損傷を引き起こし得る。その最終的な結果は、肺水腫または二次細菌感染症などの呼吸器疾患であり得、これは最終的には、ウイルス自体よりもむしろ感染個体を殺し得る。
【0024】
BaumgarthおよびKelso(J. Virol., 1996, 70, 4411-4418)は、Th1サイトカイン、IFN-γの中和が、感染後の肺組織への細胞浸潤の程度の有意な減少を引き起こし得ることを報告し、IFN-γが、炎症を起こした肺への白血球輸送の増加を調節する機構に関与しうることを示唆した。彼らはまた、IFN-γが気道における局所的な細胞性反応、ならびにインフルエンザウイルス感染に対する全身的な液性反応に影響を及ぼすと仮定した。この研究の結果に基づき、本発明者らは、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの抑制がインフルエンザを治療するために有用でありうるかどうかを検討した。
【0025】
実施例に記載されるように、本発明者らは、それらが急性ウイルス感染を反映するような方法で刺激された血液細胞に対する、2つの1-フェニル-2-アミノエタン関連誘導体(すなわちドブタミンおよびリトドリン)の影響を試験した。ウイルス感染症のモデルとして、本発明者らは、シグナル伝達経路の引き金となり、それによって血液サンプル中に存在するリンパ球を刺激して有糸分裂を開始させる化合物である、分裂促進因子(リポ多糖類またはコンカナバリンA)によって刺激された血液細胞サンプルを用いた。従ってこのモデルは、ウイルス感染によって誘導される過程を厳密に再現し、試験化合物、ドブタミンおよびリトドリンによる処置の際にリンパ球によって示される免疫反応の直接評価を可能にする。
【0026】
実施例1〜3に記載されるように、本発明者らは、このin vitroモデルを用いて、本発明者らが試験した1-フェニル-2-アミノエタン誘導体が、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの産生を効果的に強く阻害することを見いだした。従って、本発明は、IFN-γによって促進され、(例えば、若くて健康な)感受性の個体に呼吸器虚脱を引き起こす過剰免疫細胞性反応に関与する、Th1免疫反応の制御に基づく。
【0027】
これらの化合物は、共通の1-フェニル-2-アミノエタノール、エタナール、またはエタンコア構造を共有し、同様の生理活性を示すことが知られている、活性化合物群の代表である。この化合物群は、化学式(I)によって定義され、それらはすべて同じ活性提供モチーフを共有するため、それらはすべて、ウイルス感染後の「サイトカインストーム」においてIFN-γおよびTNF-αレベルの上昇を防ぐために効果的に使用され得るということになる。
【0028】
更に、実施例4に記載されるように、本発明者らはまた、in vivoマウスモデルにおいて、これらの化合物がウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患を予防、治療、または改善するために使用されうることを実証した。
【0029】
本発明者らは従って、本発明者らが最初に、他の特性を共有することに加えて、定義された1-フェニル-2-アミノエタノール、エタナール、およびエタン誘導体が、急性および慢性のウイルス感染症の治療に有用であるようにTNF-αおよびIFN-γを調節するために使用され得ることを実証したと考える。詳細には、これらの化合物は、急性ウイルス感染によって引き起こされ、ある場合(例えば、インフルエンザ感染症)には死に至り得る呼吸器疾患を治療するために使用されうる。
【0030】
化合物(I)の様々な代謝物(すなわち化学式(I)の任意の化合物)もまた、ウイルス感染症の治療のために使用されうる。本発明において使用するための化合物(I)は、キラルでありうる。従って、化合物(I)は、(I)で表される化学式の任意のジアステレオマーおよびエナンチオマーを包含しうる。(I)のジアステレオマーまたはエナンチオマーは、強力なサイトカイン調節活性を示すと考えられ、このような活性は、当業者に知られている適切なin vitroおよびin vivoアッセイの使用によって決定されうる。本発明において使用するための化合物はまた、製薬上活性な塩、例えば、塩酸塩を含みうることもまた、認識されるであろう。
【0031】
リトドリンおよびドブタミンはともに、1-フェニル-2-アミノエタン誘導体であり、この共通の構造モチーフを多くのβ-アドレナリン受容体作動薬(β-作動薬としてもまた知られる)と共有する。従って、本発明の実施形態では、化合物(I)は、β-アドレナリン受容体作動薬でありうる。その作動薬は、β1-またはβ2-作動薬でありうる。本発明に従って使用されうる、適切な既知のβ2-アドレナリン受容体作動薬の例は、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール(すなわちオルシプレナリン)、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロール、イソプレナリン、リミテロール、イフェンプロジル、ブフェニン、ドブタミン、およびリトドリンを含む。
【0032】
別の実施形態では、化学式(I)で表される化合物は、商標名ブプロピオンで知られ入手可能な薬物でありうる。ブプロピオンは、in vivoにおいて、同様に化学式(I)で表される多数の異なる代謝物に代謝されることが知られている。従って、ブプロピオンまたは任意のこれらの代謝物もまた、本発明に従って急性ウイルス感染症を治療するために使用されうる。ブプロピオンは、多数のエナンチオマーへと非立体選択的に代謝されるが、これらの化合物は、親薬物の全代謝のうち比較的小さい割合を示す。化学式(I)によって定義される化合物は、従って、ラセミ化合物として、またはトレオおよびエリトロジアステレオマーの対ならびに個々のトレオおよびエリトロエナンチオマーを含む、ジアステレオマーの対もしくは個々のエナンチオマーとして、これらの代謝物を含み得る。化学式(I)によって定義される化合物はエリトロエナンチオマー(1つまたは複数)を含むことが好ましい。
【0033】
典型的なブプロピオン代謝物は、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン、(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1S,2S)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、および(1R,2R)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールを含む。
【0034】
別の実施形態では、化合物(I)は、ヒドロブプロピオン(すなわち、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール)でありうる。ヒドロブプロピオンの一方の異性体は、(+)-トレオ-ヒドロブプロピオン、すなわち(R,R-ヒドロブプロピオン)であり、他方の異性体は、エリトロ-ヒドロブプロピオン、すなわち(R,S-ヒドロブプロピオン)でありうる。
【0035】
ブプロピオンは、HSV1およびHSV2感染症の治療のために潜在的に有用であると、以前に示唆されており、特定のブプロピオン代謝物だけが炎症性疾患の治療のために潜在的に有用であると示唆されている。従って、先行技術において総合的に、ブプロピオンおよびその代謝物、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、および(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールは、慢性ウイルス感染症、すなわちHSV1およびHSV2感染症の治療のために潜在的に有用であると、以前に示唆されている。
【0036】
従って、本発明の第三の態様では、ウイルス感染症の治療における使用のために、上記で定義されたような一般式Iで表される化合物が提供されるが、但し、その化合物はブプロピオンまたは任意の形態の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールではない。
【0037】
更に、本発明の第四の態様では、ウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法が提供され、その方法は、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の上記で定義された一般式Iで表される化合物を投与することを含むが、但し、その化合物はブプロピオンまたは任意の形態の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールではない。
【0038】
本発明の任意の態様において用いられるブプロピオン代謝物は、第一および/または第二の位置でRエナンチオマーであることが好ましい。
【0039】
本発明者らは、化学式(I)の化合物が、いくつもの急性または慢性ウイルス感染症、およびそれによって生じうる呼吸器疾患の治療に使用されうると考える。化合物(I)は、(ウイルス感染症の発症を妨げるための)予防薬として使用されてもよく、または既存のウイルス感染症を治療するために使用されてもよい。ウイルスは、いかなるウイルスであってもよく、エンベロープウイルスであってもよい。ウイルスは、RNAウイルスまたはレトロウイルスでありうる。
【0040】
例えば、治療されうるウイルス感染症は、パラミクソウイルスまたはオルトミクソウイルス感染症でありうる。感染症を引き起こすウイルスは、ポックスウイルス、イリドウイルス、トガウイルス(thogavirus)、またはトロウイルスでありうる。感染症を引き起こすウイルスは、フィロウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、またはラブドウイルスでありうる。ウイルスは、ヘパドナウイルス、コロナウイルス、またはフラビウイルスでありうることが想定される。本発明は、本明細書に記載される任意のウイルスの派生物による感染症の治療にまで及ぶ。「ウイルスの派生物」という用語は、既存のウイルス株から変異したウイルスの株を指し得る。
【0041】
ウイルスは、A型インフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス;C型インフルエンザウイルス;イサウイルス、およびトゴトウイルス、または上述のウイルスの任意の派生物からなるウイルス属の群より選択されうる。A〜C型インフルエンザウイルスは、鳥類(すなわちトリインフルエンザ)、ヒト、および他の哺乳動物を含む脊椎動物においてインフルエンザを引き起こすウイルスを包含する。A型インフルエンザウイルスは、すべてのインフルエンザ大流行の原因となり、ヒト、他の哺乳動物、および鳥類に感染する。B型インフルエンザウイルスはヒト、およびアシカ・アザラシ類に感染し、C型インフルエンザウイルスはヒトおよびブタに感染する。イサウイルスはサケに感染し、トゴトウイルスは脊椎動物(ヒトを含む)および無脊椎動物に感染する。
【0042】
従って、化合物(I)は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、もしくはC型インフルエンザウイルス、またはその派生物のいずれかによる感染症を治療するために使用されうる。化合物(I)は、A型インフルエンザ、またはその派生物による感染症を治療するために使用されうることが好ましい。A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面タンパク質である血球凝集素(HAまたはH)およびノイラミニダーゼ(NAまたはN)に基づいて分類される。A型インフルエンザウイルスの16種類のHサブタイプ(または血清型)および9種類のNサブタイプが同定されている。従って、化合物(I)は、H1N1;H1N2;H2N2;H3N1;H3N2;H3N8;H5N1;H5N2;H5N3;H5N8;H5N9;H7N1;H7N2;H7N3;H7N4;H7N7;H9N2;およびH10N7からなる血清型の群より選択される任意の血清型のA型インフルエンザウイルス、またはその派生物による感染症を治療するために使用されうる。本発明者らは、化合物(I)がH1N1ウイルス、またはその派生物によるウイルス感染症の治療のために特に有用でありうると考える。豚インフルエンザがH1N1ウイルスの株であることはよく理解されているであろう。
【0043】
本発明者らは、ウイルス感染後、IFN-γおよびTNF-αが、感染した対象の肺に体液を漏出させ、それが最終的に死に至り得る呼吸器疾患を引き起こすことを発見した。仮説に拘束されることを望まないが、本発明者らは、化合物(I)が、サイトカイン産生、詳細には、IFN-γおよびTNF-αの阻害剤として作用し得るため、ウイルス感染症を治療するために使用され得るものであり、従って、それはウイルス感染によって引き起こされる呼吸器疾患を治療するために使用され得ると考える。
【0044】
従って、化合物(I)は、ウイルス誘導性サイトカイン産生の炎症症状を改善するために使用されうる。抗炎症性化合物は、任意のサイトカインに影響を及ぼしうる。しかし、好ましくは、それはIFN-γおよび/またはTNF-αを調節する。化合物(I)は、未感作の対象の急性ウイルス感染における炎症を治療するために使用されうる。「未感作の対象」という用語は、以前にそのウイルスに感染していない個体を指し得る。個体が一度ヘルペスなどのウイルスに感染すると、その個体は常に感染を維持するであろうことは、よく理解されているであろう。
【0045】
特に、化合物(I)は、インフルエンザの末期のような、ウイルス感染症の最終段階を治療するために使用されうることを目的とする。化学式Iで表される化合物はまた、ウイルスの再燃を治療するためにも使用されうる。「ウイルスの再燃」とは、病徴の再発、またはより重篤な症状の発症のいずれかを指し得る。
【0046】
先行技術は、HSV 1もしくはHSV 2などのヘルペス科のいずれかのウイルスの治療のための、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オンなどのいかなるブプロピオン代謝物の使用も開示していない。
【0047】
従って、更なる態様では、ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症の治療における使用のために、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オンが提供される。
【0048】
また、別の態様では、ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法が提供され、その方法は、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールまたは2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オンを投与することを含む。
【0049】
ウイルス感染症は、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)、口唇ヘルペス、ヒトおよびマウスサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バールウイルス、ならびにヒトヘルペスウイルス6型および8型からなる群より選択されるヘルペスウイルスによって引き起こされうる。ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスであってもよく、HSV1またはHSV2であってもよい。
【0050】
(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1S,2S)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または(1R,2R)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールは、ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を治療するために使用されうる。
【0051】
しかし、ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を治療するために、(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールが使用されることが好ましい。化学式(I)の化合物が単独療法(すなわち、化合物(I)単独での使用)でウイルス感染症を治療するために使用されうることは、よく理解されているであろう。あるいは、化合物(I)は、抗ウイルス療法に使用される既知の治療(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル(gangcylovir)、リバビリン、インターフェロン、逆転写酵素のヌクレオチドもしくは非ヌクレオシド阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、および融合阻害剤)の補助として、またはそれと併用して使用されうる。
【0052】
化学式(I)の化合物は、特に、その組成物が用いられる方法に応じて、多数の異なる形態を有する組成物に混合されうる。従って、例えば、組成物は、散剤、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮貼布、リポソーム懸濁液の形態、または治療を必要とするヒトもしくは動物に投与されうる他の任意の適切な形態でありうる。本発明の薬剤のためのベヒクルは、それを投与される対象が良好な耐容性を示すものでなくてはならず、好ましくは、血液脳関門を通過する薬剤の送達、または肺などのウイルス感染部位への直接的な薬剤の送達を可能にすることが、よく理解されているであろう。
【0053】
化学式(I)の化合物を含有する組成物は、様々な方法で使用されうる。例えば、経口投与は、化合物が、例えば、錠剤、カプセル、または液体の形態で経口摂取されうる組成物中に含有される場合に必要とされうる。あるいは、組成物は、注射によって血流中に投与されうる。注射は、静脈内(ボーラスもしくは注入)または皮下(ボーラスもしくは注入)でありうる。あるいは、(I)を含有する組成物は、(例えば鼻腔内もしくは口からの)吸入によって投与されうる。
【0054】
組成物はまた、局所使用のために製剤化されうる。例えば、軟膏は、特定のウイルス感染症を治療するために、皮膚、口または性器の中および周囲の領域に塗布されうる。皮膚への局所適用は、皮膚のウイルス感染症の治療のために、または他の組織への経皮的送達の手段として、特に有用である。
【0055】
必要とされる化合物(I)の量は、その生物学的活性および生物学的利用能によって決定され、それは同様に、投与方法、化合物の物理化学的特性、および化合物が単独療法として用いられているか、または併用療法において用いられているかどうかに依存することが理解される。投与頻度もまた、上述の要因、および特に、治療される対象の体内での化合物(I)の半減期の影響を受ける。
【0056】
投与されるべき至適用量は、当業者によって決定されることができ、使用される特定の化合物(I)、調製物の強さ、投与方法、および病状の進行によって異なる。治療される特定の対象に応じた更なる要因は、対象の年齢、体重、性別、食生活、および投与時期を含み、用量を調整する必要性を生じる。
【0057】
当業者は、ペプチドの薬物動態に基づいて、必要とされる用量、および標的組織での化合物(I)の至適濃度を計算できるであろうことが理解される。製薬業界で通常用いられるような既知の方法(例えば、in vivo実験、臨床試験など)は、化合物(I)の特定の製剤ならびに正確な治療計画(化合物の1日用量および投与頻度など)を確立するために使用されうる。
【0058】
通常、0.001μg/kg体重〜20mg/kg体重の化合物(I)の1日用量が、どの化合物が使用されるかによって、ウイルス感染症の予防および/または治療のために使用されうる。適切には、1日用量は、0.01μg/kg体重〜10mg/kg体重であり、より適切には、0.01μg/kg体重〜1mg/kg体重または0.1μg/kg〜100μg/kg体重であり、最も適切には、約0.1μg/kg体重〜10μg/kg体重である。
【0059】
化合物(I)の1日用量は、単回投与(例えば、1日1回の注射または1回の吸入)として与えられうる。適切な1日用量は、0.07μg〜700mg(すなわち体重70kgと仮定)、または0.70μg〜500mg、または10mg〜450mgでありうる。薬剤は、ウイルス感染の前または後に投与されうる。薬剤は、感染後2、4、6、8、10、または12時間以内に投与されうる。薬剤は、感染後14、16、18、20、22、または24時間以内に投与されうる。薬剤は、感染後1、2、3、4、5、もしくは6日以内、またはそれらの間の任意の時期に投与されうる。
【0060】
インフルエンザが汎発性インフルエンザ(pandemic influenza)であるか否かとは無関係に、対象は、呼吸困難の症状が起こるか、および/またはサイトカインレベル(上述の任意のサイトカイン、しかし、通常はIFN-αもしくはTNF-γ)が呼吸困難の症状の発症時に増加する、化合物(I)を含有する薬剤によって治療される人である。より好ましくは、対象は、インフルエンザ症状の発症後、下記の時点で:すなわち、12、24、18、または36時間以上(より好ましくは、48時間以上、60時間以上、もしくは72時間以上;最も好ましくは36〜96時間、48〜96時間、60〜96時間、もしくは72〜96時間)で、呼吸困難の症状が起こるか、および/またはサイトカインレベルが増加する対象である。あるいは、インフルエンザが汎発性インフルエンザであるか否かとは無関係に、対象は、感染した肺内への適応免疫系の動員の開始時(または早期)に、呼吸困難の症状が起こるか、および/またはサイトカインレベルが増加する人である。
【0061】
実施例4のin vivoマウス試験に記載されるように、本発明者らは、2回分以上のサイトカイン阻害剤を投与されたマウスが、インフルエンザ感染症の症状の改善を示すことを明らかにした。従って、化合物(I)を含有する薬剤は、治療を必要とする対象に2回以上投与されうることが想定される。化合物は、1日のうちに2回以上の投与を必要としうる。例として、化合物(I)は、0.07μg〜700mg(すなわち体重70kgと仮定)の1日用量を2回(または治療されるウイルス感染症の重症度に応じてそれ以上)投与されうる。治療を受ける患者は、1回目の用量を起床時に摂取し、その後(2回の投与計画である場合)2回目の用量を夜に、またはその後3もしくは4時間間隔などで摂取しうる。化合物は、ウイルス感染後、毎日(必要であれば2回以上)投与されうることが想定される。
【0062】
このように、化合物(I)は、好ましくは上述のような対象への投与に適しており、好ましくはインフルエンザ症状の発症後の上記の時点での投与に適している。
【0063】
代替として、至適用量の本発明の化合物を反復投与する必要なく患者に提供するために、持続放出装置が使用されうる。
【0064】
本明細書に記載される化合物が、TNF-αおよびIFN-γなどのサイトカインのレベルを減少させるために使用されうるという発見に基づき、本発明者らは、化合物のこれらの効果が臨床的に有用な組成物の製造に活用され、使用されうると考える。
【0065】
従って、第五の態様では、ウイルス感染症の治療における使用のための、治療上有効な量の上記で定義されたような一般式Iで表される化合物、および製薬上許容されうるベヒクルを含む医薬組成物が提供される。
【0066】
感染症は、急性または慢性でありうる。
【0067】
化学式(I)で表される化合物の「治療上有効な量」は、対象に投与した場合に、TNF-αおよびIFN-γなどのサイトカインのレベルの減少を引き起こし、それによって急性ウイルス感染症の予防および/または治療をもたらす任意の量である。
【0068】
例えば、用いられる化合物(I)の治療上有効な量は、約0.07μg〜約700 mg、好ましくは約0.7μg〜約70 mgでありうる。化合物(I)の量は、約7μg〜約7mg、または約7μg〜約700μgである。
【0069】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または家畜であってもよく、好ましくはヒトである。従って、本発明の薬剤は、任意の哺乳動物、例えばヒト、家畜、ペットを治療するために使用されてもよく、または他の獣医学的用途に使用されてもよい。
【0070】
本明細書に記載される「製薬上許容されうるベヒクル」は、医薬組成物の製剤化において有用であることが当業者に知られている既知の化合物の任意の組み合わせである。
【0071】
1つの実施形態では、製薬上許容されうるベヒクルは固体であり、組成物は散剤または錠剤の形態でありうる。固体の製薬上許容されうるベヒクルは、矯味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、色素、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤(compression aids)、不活性な結合剤、甘味剤、保存剤、色素、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても機能しうる1つ以上の物質を含みうる。ベヒクルはまた、カプセル化材料でありうる。散剤では、ベヒクルは、微粉化された活性物質(すなわち、本発明の化合物(I))との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性物質は、必要な圧縮特性を有するベヒクルと適切な比率で混合され、望ましい形状および大きさに圧縮成型されうる。散剤および錠剤は、好ましくは最大99%までの活性物質を含有する。適切な固体ベヒクルは、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂を含む。
【0072】
別の実施形態では、製剤ベヒクルはゲルであってもよく、組成物はクリームなどの形態でありうる。更に別の実施形態では、製剤ベヒクルは液体であってもよく、医薬組成物は溶液の形態でありうる。液体ベヒクルは、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル、および加圧組成物の調製に使用される。活性化合物(I)は、水、有機溶媒、両方の混合物、または製薬上許容されうる油状物質もしくは脂質などの製薬上許容されうる液体ベヒクルに、溶解あるいは懸濁されうる。液体ベヒクルは、可溶化剤、乳化剤、バッファー、保存剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤、または浸透圧調節剤などの、他の適切な医薬品添加物を含有し得る。経口および非経口投与のための液体ベヒクルの適切な例は、水(部分的に上記のような添加物、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油状物質(例えばヤシ油(fractionated coconut oil)およびラッカセイ油)を含む。非経口投与のために、ベヒクルはまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。滅菌した液体ベヒクルは、非経口投与のための滅菌液状組成物に有用である。加圧組成物のための液体ベヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の製薬上許容されうる噴射剤であり得る。
【0073】
滅菌した溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内注射、くも膜下腔内注射、硬膜外注射、腹腔内注射、静脈内注射、および特に皮下注射に使用され得る。本発明の化合物(I)は、投与時に滅菌水、生理食塩水、または他の適切な滅菌した注射用媒質を用いて溶解または懸濁されうる滅菌固体組成物として調製されうる。
【0074】
化合物(I)は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするために十分な塩類もしくはブドウ糖)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合されたソルビトールおよびその無水物のオレイン酸エステル)などを含有する滅菌溶液または滅菌懸濁液の形態で経口投与されうる。化合物(I)はまた、液体または固体組成物のいずれかの形態で経口投与され得る。経口投与に適した組成物は、丸剤(pills)、カプセル、顆粒、錠剤(tablets)、および散剤などの固体形態、ならびに溶液、シロップ、エリキシル、および懸濁液などの液体形態を含む。非経口投与に有用な剤型は、滅菌した溶液、エマルション、および懸濁液を含む。
【0075】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面のいずれをも包含する)に記載されるすべての特徴、ならびに/または開示される任意の方法もしくは工程のすべてのステップは、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで任意の上記の態様と組み合わされうる。
【0076】
本発明の実施形態は下記に、単に例として、下記の実施例、および添付の図面を参照して、更に記載される。
【実施例】
【0077】
本発明者らは、サイトカイン、IFN-γおよびTNF-αの産生に対する、化学式Iで表される様々な化合物の効果を決定するために、様々なin vitroおよびin vivo実験を行った。本発明者らは、以下に記載される結果において、リトドリン、ドブタミン、ブプロピオン代謝物(2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、本明細書ではBC1053として示される)のいずれもが、驚くべきことに、IFN-γおよびTNF-αの阻害剤として作用することを実証した。更に、本発明者らは、in vivoマウスモデルにおいて、リトドリン、ドブタミン、およびブプロピオン代謝物の投与が、マウスにおいてウイルス症状の減少(すなわち、体重減少の軽減、生存率の増加、および総罹患率の減少)をもたらすことを実証した。
【0078】
材料および方法
1)末梢血単核細胞(PBMC)の分離、培養、および処理
血液を6mlのバキュテナー(商標)(緑のキャップ)に採取した。血液は採取2時間以内に処理した。使用される材料:
非凝固血液;FCS;L-GlnおよびP/Sを添加したRPMI-1640培地;PBS;滅菌チップおよびピペット;滅菌した15ml Falcon;滅菌したふた付きV底96ウェルプレート;ノイバウエル血球計算盤;トリパンブルー溶液;70% IPA溶液;Accuspin-Histopaqueチューブ(Sigma, A7054)。
【0079】
方法:
1. サンプルを滅菌したPBSで1:1に希釈する;
2. 30mlの希釈した血液をAccuspin-Histopaqueチューブ(Sigma, A7054)中に加える;
3. 800rcfで15分間、室温(RT)で遠心分離する;
4. 遠心分離後、赤血球はフリットの下の底に残る。単核細胞(PBMC)はフリットの上の層に存在し、その上に血漿がある。
【0080】
5. ピペットを用いて新しい15ml FalconチューブにPBMC層を回収し、PBSを15mlまで追加する;
6. 250rcfで1O分間、RTで遠心分離する;
7. 上清を捨て、沈殿を軽くはじいて、10mlのPBSをさらに加える;
8. 250rcfで1O分間、RTで遠心分離する;
9. ステップ7および8を繰り返す;
10. 上清を捨て、沈殿を1mlの完全培地(RPMI-1640 10% FCS)に再懸濁する;
11. 細胞を数え、完全培地で4×106細胞/mlの懸濁液を調製する。ウェルあたり100μlの細胞懸濁液をV底96ウェルプレートに加える。その後、完全培地中の刺激剤またはベヒクルを50μl添加し、完全培地中の薬物またはベヒクルを50μl添加する。細胞を24時間37℃、5% CO2で培養する;
12. 培養後、60μlの細胞上清を採取し、メーカーの使用説明書(BD Biosciences)に従って、ELISA(OptEIAヒトIFNγ、カタログ番号555142、およびヒトTNF、カタログ番号555212)によって、IFNγおよびTNFαを測定する。
【0081】
2)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の細胞播種手順
材料:
HUVEC (ECACC 200-05n);M199培地(Sigma M2154);L-グルタミン溶液 20OmM(Sigma G7513);ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma, P0781);ゲンタマイシン/アンホテリシンB(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);ヒト上皮増殖因子(hEGF)(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);塩基性線維芽細胞増殖因子(bHGF)(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);ヘパリン(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);トリプシン10×溶液(Sigma T4174);滅菌PBS(Sigma D8537);EDTA 0.02%溶液(Sigma E8008);ウシ胎仔血清(Sigma F9665)。
【0082】
HUVEC完全増殖培地:
10%ウシ胎仔血清、100 U/mlペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10μg/mlゲンタマイシン、0.25μg/mlアンホテリシンB、10ng/mlヒト上皮増殖因子(hEGF)、3ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bHGF)、および1Oμg/mlヘパリンを含有する、M199培地。
【0083】
方法:
1. 80%コンフルエントの時に、細胞をトリプシン処理によって回収する。
【0084】
a. 培地を除去する;
b. 細胞単層を0.02% EDTAで洗浄し、捨てる(T75に対して4ml);
c. PBS中の1×トリプシン溶液5mlをピペットで加え、穏やかに揺らして溶液がすべての細胞を覆うようにする;
d. 速やかに4.5mlのトリプシン溶液を除去する;
e. フラスコに再度キャップをして、顕微鏡下でトリプシン処理を観察する;
f. 細胞が丸くなった時、細胞が剥がれるまでフラスコの側面を手のひらに打ち付けることによって、それらを剥がす;
g. FCSをフラスコに加えて混合する(T75に対して2ml);
h. 細胞懸濁液を15ml Falconに回収し、その容積に10mlの無血清培地を追加する;
i. 250gで5分間遠心分離する;
j. 上清を捨て、沈殿を軽くはじいて、1mlの完全培地に再懸濁する;
k. 血球計算盤を用いて細胞を数え、2.5×lO4細胞/mlの必要な量の細胞懸濁液を調製する。
【0085】
2. 平底96ウェルプレートにウェルあたり200μlの細胞懸濁液(=5×103細胞/ウェル)を播種する。>80%コンフルエントに達するまで、可能であれば培地を1日おきに交換しながら、プレートを4〜5日間37℃、5% CO2で培養する。
【0086】
3)HUVEC刺激/処理手順
材料:
M199培地(Sigma M2154);L-グルタミン溶液 20OmM(Sigma G7513);ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma, P0781);ゲンタマイシン/アンホテリシンB(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);ヒト上皮増殖因子(hEGF)(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);塩基性線維芽細胞増殖因子(bHGF)(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);ヘパリン(Invitrogen, LSGSキット# S003Kより);滅菌PBS(Sigma D8537);ウシ胎仔血清(Sigma F9665);イブプロフェン(Sigma I110);エタノール(Fisher E/0600/17);DMSO(Sigma D4540);TNF-α、ヒト、天然型(NIBSC 88/786);ピペットおよび滅菌ピペットチップ;滅菌した一般的なチューブ(universals)またはFalconチューブ;滅菌した1.5mlスクリューキャップチューブ;70%イソプロパノール溶液;Virkon(商標)。
【0087】
HUVEC完全増殖培地:
10%ウシ胎仔血清、100 U/mlペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10μg/mlゲンタマイシン、0.25μg/mlアンホテリシンB、10ng/mlヒト上皮増殖因子(hEGF)、3ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bHGF)、および1Oμg/mlヘパリンを含有する、M199培地。
【0088】
刺激剤/処理:
TNF-α(1OOU/ml);TNF-α(1OOU/ml)を含む試験化合物(100、10、および1μM);試験化合物(100、10、および1μM)のみ;化合物ベヒクル対照(0.5% DMSOおよび0.1% エタノール);TNF-α(1OOU/ml)を含むイブプロフェン対照(1mM);イブプロフェン対照(1mM)のみ;完全培地のみ。
【0089】
方法:
1. 完全HUVEC増殖培地で100U/mlのTNF-αを調製する;
2. DMSO中2OmMの試験化合物の新しい原液を調製する;
3. TNF-αを含むか、および含まない完全HUVEC増殖培地で、試験濃度の化合物(100、10、および1μM)を調製する;
4. エタノール中1Mのイブプロフェン対照原液を調製する。TNF-αを含むか、および含まない完全HUVEC増殖培地で、1mMに希釈する;
5. 完全HUVEC増殖培地中で薬物ベヒクル(0.5% DMSOおよび0.1% エタノール)について対照を調製する;
6. ウェルから培地を除去し、150μlの試験物質および対照を三連で添加する;
7. プレートを18時間37℃、5% CO2でインキュベーションする。
【0090】
4)血管細胞接着分子-1(V-CAM-1)ELISA手順
使用されるキット:DuoSet human VCAM-I Elisa Set(R&D Systems DY809)
バッファー:
洗浄バッファー‐PBS/0.05% Tween 20(Sigma P9416)
アッセイ希釈液‐PBS/1% BSA(Sigma A30590)
基質溶液‐TMB溶液(Sigma T0440)
停止液‐2N H2SO4
捕捉抗体‐原液は360μg/ml。2μg/mlの使用濃度(1:180)に希釈する
検出抗体‐原液は36μg/ml。200ng/mlの使用濃度(1:180)に希釈する
標準‐原液は70ng/ml。最も高い標準(top standard)は1000pg/ml(1:70)
ストレプトアビジン-HRP‐1:200に希釈する。
【0091】
方法:
1. 捕捉抗体をPBSに希釈する;
2. プレートを100μl/ウェルで被覆する;
3. プレートを密閉し、室温で一晩インキュベーションする;
4. ウェルを空にして、洗浄バッファーで3回洗浄する。水分を吸い取って乾かす;
5. 180μl/ウェルのアッセイ希釈液を加えて、プレートをブロッキングする。プレートを密閉し、室温で1時間インキュベーションする;
6. ウェルを空にして、洗浄バッファーで3回洗浄する。水分を吸い取って乾かす;
7. 標準(二連)、サンプル(三連)、および対照(三連)を60μl/ウェルで加える。プレートを密閉し、室温で2時間インキュベーションする;
8. ウェルを空にして、洗浄バッファーで3回洗浄する。水分を吸い取って乾かす;
9. 検出抗体60μl/ウェルを加える。プレートを密閉し、室温で2時間インキュベーションする;
10. ウェルを空にして、各洗浄ごとに少なくとも30秒間プレートを浸したままにしながら、洗浄バッファーで5回洗浄する。水分を吸い取って乾かす;
11. ストレプトアビジン-HRP 60μl/ウェルを加える。プレートを密閉し、室温で20分間インキュベーションする;
12. ウェルを空にして、各洗浄ごとに少なくとも30秒間プレートを浸したままにしながら、洗浄バッファーで5回洗浄する。水分を吸い取って乾かす;
13. TMB基質溶液60μl/ウェルを加える。プレートを密閉し、室温で20分間インキュベーションする;
14. 30μl/ウェルの停止液を加える;
15. 450nmでの吸光度を読み取る。
【0092】
5)ドブタミンを用いたin vivoマウス試験
方法:
50匹のメスのC57BL/6マウス(6〜7週齢)を、各10匹の動物を含む4つの実験群に分けた。1日目に、動物は、ハロタン誘導性麻酔下で鼻腔内致死量(全50μl、鼻孔25μl)のインフルエンザA/PR/8/34を接種された。3日目に、動物は、試験化合物の1回の腹腔内注射(100〜150μl)を受けた。4日目または5日目に、依然として生存しているすべての動物は、試験化合物の2回目の腹腔内注射(100〜150μl)を受けた。
【0093】
1日目から少なくとも6日目までの罹患率、体重減少、および生存率について、すべての動物を毎日評価した。罹患率可変要素(すなわち、身体状態、姿勢、活動、立毛、呼吸、発声、運動失調、および眼漏/鼻漏)を、下記の重症度の基準に従って記録した:すなわち、正常(0)、軽度(1)、苦痛(2)、および重度/処分レベル(3)である。
【0094】
6)ブプロピオン代謝物を用いたin vivoマウス試験
10%エタノール中の、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール(BC1053)として知られているブプロピオン代謝物を、下記のように、インフルエンザ感染マウスに経口送達した。
【0095】
2群の、障壁で隔てて飼育されたn=12のメスのC57BLK/6マウス(6〜8週齢、体重15〜18g)に、致死量のインフルエンザ(A/PR/8/34)を鼻腔内攻撃した。接種後3日目に、動物は、下記の処置を受けた:すなわち、
・A群は、水中10%エタノールの100μlの強制経口投与を受け;
・B群は、水中10%エタノールに540μgのブプロピオン代謝物を含有する100μlの強制経口投与を受けた。
【0096】
動物を毎日、すべての動物が処分される場合には最大6日目まで、体重測定し、罹患率および死亡率について調べた。群あたりの平均体重減少および生存率を計算した。
【0097】
実施例1‐分裂促進因子、LPSおよびCon Aを用いた刺激実験
プラズマB細胞は、それらの免疫グロブリンに適合する抗原と遭遇した時、有糸分裂に入ることができる。分裂促進因子は、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼが関与するシグナル伝達経路の引き金となり、それによって細胞に細胞分裂の開始を促し、有糸分裂を引き起こす化学物質である。従って、分裂促進因子は、リンパ球を刺激し、その結果、免疫機能を評価するために、効果的に使用され得る。リンパ球を刺激することによって、分裂促進因子は、ウイルス感染の影響を再現するために使用され得る。
【0098】
本発明者らがリンパ球を刺激し、その結果、免疫機能を評価するために用いた2つの分裂促進因子は、リポ多糖類(LPS)およびコンカナバリンA(Con A)であった。LPSはB細胞には作用するがT細胞には作用しない一方、Con AはT細胞には作用するがB細胞には作用しない。化学式Iで表される化合物の2つの実施形態、すなわち、ドブタミン(表ではBC1021と示される)およびリトドリン(BC1023)の、IFN-γおよびTNF-αのレベルに対する影響を、LPSおよびCon A刺激アッセイにおいて調べた。末梢血単核細胞(PMBC)に、独立に各分裂促進因子、LPSまたはCon Aを投与し、その後、ドブタミンまたはリトドリンのいずれかで処理した。IFN-γおよびTNF-αのレベルに対する何らかの影響は、試験化合物、ドブタミンまたはリトドリンの存在に直接起因する可能性があるため、LPSもCon Aも加えない対照実験を行った。
【0099】
LPS刺激試験
LPS刺激実験の結果を表1および2に示す。表中の値は、LPSのみの対照に対するパーセント値として表される。従って、LPSのみの存在下でPMBC細胞から発現されるサイトカイン、IFN-γまたはTNF-αのいずれかの最高濃度を100%とし、(i)LPSおよび(ii)ドブタミンまたはリトドリンのいずれかの存在下でPMBC細胞から発現されるサイトカインの濃度を、LPSのみの100%対照に対するパーセントとして表す。標準偏差の値(s.d.)は、発現されたIFN-γレベルのそれぞれの値の下に示される。
【0100】
表1‐LPS刺激下でのIFN-γレベルの測定(LPS刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントで表わすIFN-γレベル)
【表1】

【0101】
表1に示されるデータに関して、本発明者らは、LPS刺激細胞において、ドブタミンまたはリトドリンのいずれかの存在下でIFN-γの濃度が減少することを観察して驚いた。
【0102】
表2‐LPS刺激下でのTNF-αレベルの測定(LPS刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントで表わすTNF-αレベル)
【表2】

【0103】
表2に示されるデータに関して、本発明者らはまた、LPS刺激細胞において、ドブタミンまたはリトドリンのいずれかの存在下でTNF-αの濃度もまた減少することを観察して驚いた。対照における負の値は、サイトカインのレベルが上昇していることを示唆する。しかし、処理の終了時のサイトカインの濃度が非常に低いため、増加はごくわずかである。
【0104】
Con A刺激試験
Con A実験の結果を表3および4に示す。
【0105】
表3‐Con A刺激下でのTNF-αレベルの測定(Con A刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントで表わすTNF-αレベル)
【表3】

【0106】
表3に示されるデータに関して、本発明者らは、TNF-αの濃度もまた、Con A刺激細胞においてドブタミンまたはリトドリンのいずれかの存在下で減少することを観察した。
【0107】
表4‐Con A刺激下でのIFN-γレベルの測定(Con A刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントで表わすIFN-γレベル)
【表4】

【0108】
表4に示されるデータに関して、本発明者らは、Con A刺激細胞において、ドブタミンまたはリトドリンのいずれかの存在下でIFN-γの濃度が減少することを観察して非常に驚いた。特に、本発明者らは、100μMドブタミンの用量がIFN-γの濃度の減少に著しい効果を有することを観察した。
【0109】
実施例2‐Con A刺激細胞でのパーセントで表わす細胞生存率の測定
本発明者らは、Con A刺激細胞の細胞生存率を測定し、結果は表5に示される。
【0110】
表5‐Con A刺激下での未処理細胞100%と比較したパーセントで表わす細胞生存率
【表5】

【0111】
表5に見られるように、すべての用量のリトドリンおよびドブタミンに関して、パーセントで表わす細胞生存率は、未処理の対照と比較して、リトドリンまたはドブタミンのいずれかの存在下においてより高かった。従って、本発明者らは、Con A刺激細胞へのいずれかの化合物の投与が、未処理の対照より高い生存率をもたらすことを実証した。
【0112】
実施例3‐Con A刺激下でジギトニンに暴露された際の細胞毒性の測定
ジギトニンは、ジギタリス(Digitalis purpurea)から得られる配糖体であり、界面活性剤として作用し、原形質膜中の脂質を効果的に水に可溶化する。従って、ジギトニンは原形質膜を透過化するために使用され得る。本発明者らは、従って、Con A刺激細胞に対するジギトニンの原形質膜透過化作用を調べることにより、リトドリンまたはドブタミンの細胞毒性を測定した。表6はその結果を示す。
【0113】
表6‐Con A刺激下でのジギトニンに対する100%と比較したパーセントで表す細胞毒性率
【表6】

【0114】
表6に関して、非常に多くの場合に、細胞毒性率は、リトドリンまたはドブタミンのいずれかで処理されたサンプルにおいてより低かった。唯一の例外は、100μM用量のドブタミンについてであったが、本発明者らは、この結果は統計的には有意ではないと考える。
【0115】
実施例4‐ドブタミンを用いたin vivoマウス試験
上述の標準的な技術を用いて、マウスを、対象のそれぞれに定着できるH1N1ウイルスに感染させた。各試験マウスをその後、ウイルスによる感染後3日目の単回投与量、または感染後3日目に1回および4日目に1回の2回投与量のいずれかによって、ドブタミン(BC1021)で処理した。対照マウスには、ドブタミンを投与しなかった。その後、処理マウスおよび未処理マウスの両方の体重減少を測定した。
【0116】
図1に示されるように、2回投与量のドブタミン(ウイルスによる感染後3日目および4日目に)を受けたマウスは、対照マウスより少なくとも10%の体重減少の軽減を示した。従って、本発明者らは仮説に拘束されることを望まないが、本発明者らは、ドブタミンに暴露されたH1N1感染マウスにおけるサイトカイン、IFN-γおよびTNF-αのレベルの減少が、マウスの体重維持をもたらすと考える。本発明者らは、ドブタミンが短い半減期を有するため、単回投与量のドブタミンは、マウスに対してほとんど効果がないと考える。
【0117】
図2を参照すると、ドブタミンで処理されたマウスについての、パーセントで表す生存率の結果が示される。図2に見られるように、3日目に1回および4日目に1回の2回投与量のドブタミンで処理されたマウスは、対照である未処理マウスより高い生存率を示した。この場合も、本発明者らは、単回投与量のこの化合物がマウスに対してほどんど効果を持たないのは、ドブタミンの短い半減期のためであると仮定する。
【0118】
本発明者らはまた、試験マウスの総罹患率に対するドブタミン(単回投与量および2回投与量)ならびにリトドリン(単回投与量および2回投与量)の効果を調べた。図3を参照すると、これらの実験のデータが示される。総罹患率の値は、マウスの全般的な「健康状態」の信頼度であり、マウスの毛皮および毛繕いの質、ならびにマウスが摂食および歩行できるか否かを考慮に入れる。罹患率の値の測定は、当業者に知られている。図3に見られるように、単回でも2回でも、ドブタミンおよびリトドリンの両方のすべての用量は、処理マウスの罹患率の値の改善をもたらし、ウイルス症状が減少したことを明らかに示した。しかし、2回分のドブタミンおよびリトドリンが与えられたマウス(すなわちC群およびE群)が最大の改善を示し、E群(3日目および4日目でのドブタミンの投与)が最も効果的であったことは、特に注目すべきことである。
【0119】
実施例5‐ブプロピオン代謝物を用いたin vivoマウス試験
上述のように、マウスを、対象のそれぞれに定着できるH1N1ウイルスに感染させた。各試験マウスをその後、ウイルスによる感染後3日目に単回投与量によって、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール(すなわち、ブプロピオン代謝物、BC1053)で処理した。対照マウスには、代謝物を投与しなかった。その後、処理マウスおよび未処理マウスの両方の体重減少を測定した。
【0120】
図4に示されるように、(ウイルスによる感染後3日目に)1回分のブプロピオン代謝物を投与されたマウスは、対照マウスより少なくとも30%の体重減少の軽減を示した。従って、本発明者らは仮説に拘束されることを望まないが、本発明者らは、ブプロピオン代謝物に暴露されたH1N1感染マウスにおけるサイトカイン、IFN-γおよびTNF-αのレベルの減少が、マウスの体重維持をもたらすと考える。
【0121】
図5を参照すると、ブプロピオン代謝物で処理されたマウスについての、パーセントで表される生存率の結果が示される。図5に見られるように、その代謝物で処理されたマウスは、対照である未処理マウスよりはるかに高い(約30%)生存率を示した。
【0122】
概要
要約すると、本発明者らは、特にこれらの2つの薬物の貧弱な薬物動態を考えると、ドブタミンおよびリトドリンの両方が、サイトカイン(すなわち、IFN-γおよびTNF-α)阻害剤として作用することを観察して驚いた。従って、本発明者らは、化学式(I)で表される任意の化合物がIFN-γおよびTNF-α阻害剤として使用され、それが、インフルエンザなどのウイルス感染症の治療に使用できると考える。実施例4に記載されるin vivoマウス試験の有望な結果は、H1N1ウイルスに感染したマウスが、単回投与量の、しかし特に2倍投与量のドブタミンまたはリトドリンの投与によって効果的に治療され得ることを実証する。従って、任意の化合物(I)がウイルス感染症を治療するために使用され得ることは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性ウイルス感染症の治療における使用のための、化学式Iの化合物
【化1】

[式中、
XはCO、CHOH、またはCH2であり;
R1はHであるか、またはR2と結合し;
R2はH、OH、ハロゲン、置換もしくは非置換のアミノ基、または任意選択で1つ以上のO、OH、アミノ、および/もしくは任意選択でC 1-3アルキル置換されたフェニル基によって置換された、C1-5アルキル基もしくはアルコキシル基であるか、またはR1と結合し;
R3およびR4は、それぞれ独立に、H、OH、ハロゲン、置換もしくは非置換のアミノ基、または任意選択で1つ以上のO、OH、アミノ、および/もしくは任意選択でC 1-3アルキル置換されたフェニル基によって置換された、C1-5アルキル基もしくはアルコキシル基であり;
R5はHであり;
R6はH、C1-5アルキル基であるか、またはR8と結合し;
R7はHであるか、またはR8と結合し;
R8はR6もしくはR7と結合するか、または任意選択でその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子を含み、かつ任意選択で1つ以上のOH、および/または任意選択で1つ以上のOHもしくはC1-5アルコキシル基もしくはアルキル基によって置換されるC5-6アリール基によって置換される、直鎖、分岐鎖、もしくはシクロC1-C9アルキル基であり;
結合している場合には、R1およびR2は、結合した環炭素原子とともに、5つもしくは6つの炭素原子、または4つもしくは5つの炭素原子および1つのヘテロ原子から構成され、任意選択でO置換されたシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロへテロアルキル基、またはシクロへテロアルケニル基を形成し;
結合している場合には、R6およびR8は、窒素原子を有するR8および炭素原子を有するR6とともに、5または6員環シクロへテロアルキル基を形成し;ならびに、
結合している場合、R7およびR8は、窒素原子を有するそれらとともに、任意選択でベンジル置換された5または6員環シクロへテロアルキル基を形成する];
あるいはその製薬上許容されうる塩または溶媒和物。
【請求項2】
R2がヒドロキシアルキル基、またはカルボニルオキシ基であり、好ましくは、H、OH、HOCH2-、O=CHNH-、CH3PhCOO-、NH2COO-、またはハロゲンであり、任意選択でR2がH、OH、またはClである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R3がH、NH2、OH、またはCH3PhCOO-である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R3がH、NH2、またはOHである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R4がH、OH、NH2COO-、またはハロゲンであり、任意選択でR4がHまたはClである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R6がメチル、エチル、またはHである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R7がHである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R8が任意選択でOH、フェニル、PhOH、もしくはPhOCH3によって置換された直鎖または分岐鎖C2-C6アルキル基であり、任意選択でR8がtert-ブチル、イソプロピル、-C(CH3)2OH、-CH2PhOCH3、-(CH2)2PhOH、-CH(CH3)CH2CH2Ph、または-CH(CH3)CH2CH2PhOHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R8
【化2】

である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
結合している場合に、R1およびR2が、下記の基:すなわち、
【化3】

を形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R6およびR8が結合している場合に、窒素原子を有するR8および炭素原子を有するR6とともに、それらが5つの炭素原子および1つの窒素原子から構成されるシクロへテロアルキル基を形成する、請求項1〜5、7、および10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R7およびR8が結合している場合に、それらが下記の基:すなわち、
【化4】

を形成する、請求項1〜6および10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
化合物(I)が、(I)で表される化学式の任意のジアステレオマーおよびエナンチオマーを包含する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
化合物(I)がβ2-アドレナリン受容体作動薬である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
β2-アドレナリン受容体作動薬が、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール(すなわちオルシプレナリン)、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロール、イソプレナリン、リミテロール、イフェンプロジル、ブフェニン、ドブタミン、またはリトドリンである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
化合物(I)がブプロピオンまたはその代謝物である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
ブプロピオン代謝物が、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン、(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、(1S,2S)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または(1R,2R)-トレオ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
治療されるウイルス感染症が、パラミクソウイルス感染症またはオルトミクソウイルス感染症である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
化合物(I)が、任意のA型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、もしくはC型インフルエンザウイルス、またはその派生物による感染症を治療するために使用される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
化合物(I)が、H1N1;H1N2;H2N2;H3N1;H3N2;H3N8;H5N1;H5N2;H5N3;H5N8;H5N9;H7N1;H7N2;H7N3;H7N4;H7N7;H9N2;およびH10N7からなる血清型の群より選択される任意の血清型のA型インフルエンザウイルス、またはその派生物による感染症を治療するために使用される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
化合物(I)が、H1N1ウイルス、またはその派生物によるウイルス感染症を治療するために使用される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
化合物(I)が、ウイルス誘導性サイトカイン産生の炎症症状を改善するために使用される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
化合物(I)が、IFN-γおよび/またはTNF-αを調節する、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
化合物(I)が、未感作の対象の急性ウイルス感染症における炎症を治療するために使用される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
化合物(I)が、ウイルスの再燃を治療するために使用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
急性ウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の請求項1〜25のいずれか1項に定義される化合物を投与することを含む方法。
【請求項27】
化合物がブプロピオンまたは任意の形態の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールではない、ウイルス感染症の治療における使用のための、請求項1〜25のいずれか1項に定義される一般式Iで表される化合物。
【請求項28】
ウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の請求項1〜24のいずれか1項に定義される一般式Iで表される化合物を投与することを含み、但しその化合物がブプロピオンまたは任意の形態の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールではない、方法。
【請求項29】
ウイルス感染症の治療における使用のための、治療上有効な量の請求項1〜24のいずれか1項に定義される一般式Iで表される化合物、および製薬上許容されうるベヒクルを含む医薬組成物。
【請求項30】
ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症の治療における使用のための、2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン。
【請求項31】
ヘルペスウイルスが、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)、口唇ヘルペス、ヒトおよびマウスのサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バールウイルス、ならびにヒトヘルペスウイルス6型および8型からなる群より選択される、請求項30に記載の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン。
【請求項32】
ヘルペスウイルスが、HSV1もしくはHSV2などの単純ヘルペスウイルスである、請求項31または請求項32のいずれかに記載の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オン。
【請求項33】
(1S,2R)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または(1R,2S)-エリトロ-2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールが、ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を治療するために使用される、請求項30〜33のいずれか1項に記載の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オール、または2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル) プロパン-l-オン。
【請求項34】
ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染症を予防、治療、および/または改善する方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療上有効な量の2-(1,1-ジメチルエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オールまたは2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ-1-(3-クロロフェニル)プロパン-1-オンを投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501770(P2013−501770A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524290(P2012−524290)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051317
【国際公開番号】WO2011/018653
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510179526)バイオコピア リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biocopea Limited
【Fターム(参考)】