説明

ウイルス関連リンパ増殖性障害を処置または予防するための方法

本開示は、進行性のウイルス関連のリンパ増殖性障害、EBV関連のリンパ増殖性障害、および移植後リンパ増殖性障害を予防、処置または遅らせるための方法に関する。この方法においては、TGF−βアンタゴニスト、例えば、抗TGF−β抗体を被験体に投与する。TGF−βアンタゴニストを投与することによって、ウイルス関連のリンパ増殖性障害を処置するため、そしてウイルス関連リンパ増殖性障害に対するT細胞の応答性を強化するための方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体が参照によって本明細書に援用される、2004年10月13日出願の米国仮特許出願第60/618,458号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
リンパ増殖性障害(LPD)を含む増殖性障害は高頻度に免疫抑制を伴う。例えば、器官または組織の移植後の免疫抑制療法は、特定の新生物に関連しており、そして多くのLPDが、ウイルス感染を含む免疫不全の背景で発現する(非特許文献1に概説)。
【0003】
移植後リンパ増殖性障害(PTLD)は、固形臓器および幹細胞移植の破壊的な合併症であって、70〜80%の死亡率を有し得る(非特許文献2)。PTLDはしばしば、ほとんどの健常な成人において潜伏感染を樹立するヘルペスウイルスである、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する。PTLDの頻度は、移植された器官、ならびに免疫抑制の頻度および期間に応じて変化する。腎移植のレシピエントにおいては、PTLDは患者の1〜2%で生じるが、その頻度は、骨髄で、および肺移植のレシピエントでは20%程度の高さである(非特許文献2、前出)。以前に抗EBV免疫を樹立していない小児および移植のレシピエントは、とりわけPTLDの発症のリスクが最大である。PTLDの治療の許容された標準はなく、そして患者の疾患の進行はしばしば、現在利用可能な治療に応答性ではない。しかし、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性は、PTLDからの予防および回復に関与すると考えられる。
【0004】
免疫抑制は、潜伏感染した細胞のEBV由来形質転換の進行を正常には予防する、EBV特異的な細胞免疫を阻害すると考えられる。免疫抑制の低下はPTLD患者の全てではないが、ある程度の例を処置するのには有効である(非特許文献2、前出)が、このような治療は、移植片の損失および他の重篤な合併症を生じ得る、急性拒絶のエピソードを発症させる確率を増大する。CD−20タンパク質に関する抗ウイルス、細胞およびモノクローナル抗体療法が、ある程度のPTLD患者の処置について示され得る。しかし完全に満足なものはない(非特許文献3;非特許文献4)。
【0005】
9例のPTLD患者の予備的な臨床的観察では、低IFN−γ産生に関連する特定のIFN−γサイトカイン遺伝子型が、PTLDを発症する腎臓移植レシピエントにおいて蔓延していることが示された(非特許文献5)。IFN−γは、免疫サーベイランスに重要である細胞免疫における重要な調節性サイトカインである。IFN−γ遺伝子における1つの多形性は、チミジン(T)またはアデノシン(A)のいずれかを含む+874位置の一塩基遺伝子多型(単一ヌクレオチド多型)である。+874位置のチミジンの存在は、高サイトカイン産生に関連するマイクロサテライト反復と相関しており、そしてNF−kB結合部位を生成する(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。T/T遺伝子型はしばしば、「高プロデューサー(high producer)」と呼ばれ、そしてA/A遺伝子型は「低プロデューサー(low producer)」と呼ばれる(非特許文献8)。臨床研究では、低い産生である、A/A IFN−γ遺伝子型は、135例の非PTLD腎移植患者のうちの27%に比較して、9例のPTLD患者のうち80%で存在し(非特許文献5、前出)、そして多形性は、PTLD発症の潜在的な危険因子として同定された。
【0006】
トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)は、IFN−γに拮抗性であって、EBVの活性化、複製および形質転換の増大に関係している(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。TGF−βはまた、T細胞エフェクター機能を含む、複数のT細胞および抗原提示細胞(APC)機能を抑制する偏在性の多能性のサイトカインであり、そしてそうでなければ免疫学的監視を阻害し得る(非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15を参照のこと)。TGF−βおよびIFN−γの拮抗性および調節対抗活性(counter−regulatory activity)は、非特許文献16に概説されており、そして研究によって、IFN−γがTGF−β活性を阻害し得、逆もまた真であることが示されている。
【非特許文献1】Brusamolinoら、Haematologica 74:605〜622(1989)
【非特許文献2】Payaら、Transplantation 68:1517〜1525(1999)
【非特許文献3】Liuら、Recent Results Cancer Res.159:123〜133(2002)
【非特許文献4】Zilzら、J.Heart Lung Transplant 20:770〜772(2001)
【非特許文献5】VanBuskirkら、Transplant.Proc.33:1834(2001)
【非特許文献6】Pravicaら、Biochem.Soc.Trans.25:176S(1997)
【非特許文献7】Pravicaら、Eur.J.Immunogenetics 26:1〜3(1999)
【非特許文献8】Pravicaら、Hum.Immunol.61:863〜866(2000)
【非特許文献9】Schusterら、FEBS Lett.284:82〜86(1991)
【非特許文献10】diRenzoら,Int.J.Cancer 57:914〜919(1994)
【非特許文献11】Liangら,J.Biol Chem.277:23345〜23357(2002)
【非特許文献12】Fahmiら、J.Virol.74:5810〜5818(2000)
【非特許文献13】Letterioら、Annu.Rev.Immunol.16:137〜161(1998)
【非特許文献14】Gold,Crit Rev.Oncog.10:303〜360(1999)
【非特許文献15】Altiokら、Immunol.Lett.40:111〜115(1994)
【非特許文献16】Stroberら、Immunol.Today 18:61〜64(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の治療は、最適ではないので、PTLDを含むウイルス関連のLPDを処置または予防するための方法および組成物が必要である。低いIFN−γレベルおよび/または不十分なT細胞応答性に関連するリンパ増殖性の障害を処置する方法の必要性も存在する。特異的な治療を受けるための候補を含む、処置の候補である患者を同定する更なる手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、TGF−βアンタゴニストの投与によるTGF−β活性の阻害が、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を含む進行性のウイルス関連リンパ増殖性障害(LPD)を予防、処置または遅らせるという発見に関する。TGF−βアンタゴニストの投与は、LPDからの防御、およびヒトCD8+細胞の増殖を生じる。さらに、CD8+T細胞の増殖およびCD8+T細胞の活性化は、TGF−β活性の阻害およびLPDの阻害と相関する。
【0009】
本発明は、EBV関連LPDおよびPTLDを含む、ウイルス関連のLPDの発症のリスクを処置、予防、および軽減するための方法を提供する。この方法はさらに、例えば、ヘルペスウイルス、HHV−8、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型レトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(C型レトロウイルス)および/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV、HIV−1、HIV−2)のようなウイルス感染に対するT細胞応答性を増強するための方法を提供する。この開示された方法は、LPDのリスクがあるか、LPDに感受性であるか、またはLPDに罹患している哺乳動物被験体に対して、TGF−βアンタゴニストの治療上有効な量を投与する工程を包含する。本発明の方法によって処置される集団としては、限定はしないが、LPDに罹患しているかまたはその発生のリスクがある被験体が挙げられ、これには、例えば、免疫不全を有するか、または免疫抑制を誘導するように処置されている被験体が挙げられる。特定の実施形態では、IFN−γのレベルが低い個体でウイルス関連障害を処置するための方法が提供される。
【0010】
本発明はさらに、ウイルス関連LPDの発症の1つ以上の危険因子の存在、またはその進行もしくは処置に対する応答性を評価して、この危険因子を有する被験体に対してTGF−βアンタゴニストを投与するための方法を提供する。例えば、IFN−γレベルまたはIFN−γ遺伝子型を評価するかまたは測定する工程、および低IFN−γレベルを有するか、またはA/TもしくはA/A+874遺伝子型を有する被験体を処置する工程を包含する方法が本明細書において提供される。
【0011】
本発明の方法において用いられる投与方法および組成物が提供される。開示された方法では、TGF−βアンタゴニストとしては、限定はしないが、TGF−βの1つ以上のアイソフォームに対する抗体;TGF−βレセプターに対する抗体;可溶性TGF−βレセプターおよびそのフラグメント;ならびにTGF−β阻害性の糖およびプロテオグリカン、ならびにTGF−βの低分子インヒビターが挙げられる。
【0012】
特定の実施形態では、TGF−βアンタゴニストは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントであって、TGF−βのそのレセプターに対する結合をブロックする。非限定的な例示的な実施形態としては、非ヒトモノクローナル抗TGF−β抗体、例えば、マウスモノクローナル抗体1D11(1D11.16、ATCC寄託指定番号HB9849としても公知)、その誘導体(例えば、ヒト化抗体)および完全ヒトモノクローナル抗TGF−β1抗体(例えば、WO00/66631に記載されるCAT192)またはその誘導体が挙げられる。
【0013】
以下の要約および以下の説明は、特許請求された本発明の限定ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明は、抗TGF−β抗体のような、TGF−βアンタゴニストを用いるTGF−βの阻害または中和が、哺乳動物被験体におけるウイルス関連LPDの発症および進行を軽減させるという発見および実証に一部は基づく。このデータによって、TGF−βアンタゴニストの使用は、それで処置された被験体における低IFN−γレベルと関連する腫瘍発達の進行を予防または阻害することが示される。これらのデータはまた、TGF−βアンタゴニストの投与がCTL再刺激および増殖のTGF−β阻害を逆転することを示す。LPDのマウスモデルにおけるTGF−βの中和は、CD8+細胞の増殖を生じ、そしてLPD進行を軽減する。さらに、このデータによって、IFN−γ遺伝子型は、例えば、PTLDのリスクがより大きい移植レシピエントを同定するのに、そして予防的および治療的なストラテジーを開発するのに、有用な情報を提供することが示される。従って、本発明は、ウイルス関連の障害およびLPD、例えば、哺乳動物における、ウイルス関連LPD、EBV関連LPDおよび/または移植後リンパ増殖性障害の発症のリスクを処置、予防および軽減するための方法を提供する。
【0015】
本発明がさらに容易に理解され得るように、特定の用語を最初に規定する。さらなる定義は、詳細な説明全体にわたって示される。
【0016】
「抗体(antibody)」という用語は、本明細書において用いる場合、免疫グロブリンまたはその一部を指し、そして供給源、産生の方法および他の特徴にかかわらず抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。この用語は、限定はしないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単価抗体、多価抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、およびCDRグラフト化(接合)抗体を包含する。当業者によって認識されるように、このような分子のいずれか、例えば、「ヒト(human)」抗体は、その免疫原性を減少するか、その親和性を増大するか、その特異性を変更するか、または他の目的のために、操作され(例えば、「生殖系列にされ(germlined)」)てもよい。「抗原結合ドメイン(antigen−binding domain)」という用語は、抗原の一部または全てに対して特異的に結合するかまたは相補的である領域を含む、抗体分子の一部をいう。抗原が大きい場合、抗体は、この抗原の特定の一部にしか結合しなくてもよい。「エピトープ」または「抗原性決定基(antigenic determinant)」とは、抗体の抗原結合ドメインとの特異的な相互作用を担う抗原分子の一部である。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域(V)またはその一部を含んでもよい。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインによって提供され得る(例えば、Vドメインからなる、いわゆる、Fd抗体フラグメント、またはVドメインおよびVドメインからなる、いわゆる、Fv抗体フラグメント)。「抗TGF−β抗体(anti−TGF−β antibody)」または「TGF−βの少なくとも1つのアイソフォームに対する抗体(antibody against at least one isoform of TGF−β)」という用語は、TGF−βの少なくとも1つのエピトープに対して特異的に結合する任意の抗体をいう。「TGF−βレセプター抗体(TGF−β receptor antibody)」および「TGF−βレセプターに対する抗体(antibody against a TGF−β receptor)」という用語は、TGF−βレセプターの少なくとも1つのエピトープ(例えば、I型、II型またはIII型)に特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0017】
本明細書において用いる場合、「治療的な化合物(therapeutic compound)」という用語は、TGF−βの生物学的な活性に、直接的または間接的に影響することによって、TGF−βを調節するかまたは阻害し得る任意の化合物をいう。
【0018】
「阻害する(inhibit)」、「中和する(neutralize)」、「拮抗する(antagonize)」およびそれらの同語源の用語は、ある化合物が特定の反応または生物学的活性のアンタゴニストとして作用する能力をいう。量または生物学的活性の減少は好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上である。この用語は、目的の生物学的活性を担う少なくとも1つのタンパク質(例えば、TGF−βおよびTGF−βレセプター)の相対的な量または活性における減少をいう。さらに、この用語は、例えば、アッセイ(例えば、T細胞傷害性、活性化または増殖アッセイ)において測定されたとおり、または本明細書に記載のように、TGF−βまたはTGF−βレセプターの生物学的活性における相対的な減少をいう。
【0019】
本明細書において用いる場合、「TGF−βアンタゴニスト」およびその同語源の用語、例えば、「インヒビター(inhibitor)」、「中和剤(neutralizing agent)」および「下方制御因子(downregulating agent)」とは、TGF−βの生物学的活性のアンタゴニストとして作用する、化合物(または、必要に応じて、その特性)をいう。TGF−βアンタゴニストは、例えば、TGF−βに結合して、その活性を中和し得るか、TGF−β発現レベルを減少し得るか、安定性または活性な成熟型への前駆体分子の変換に影響し得るか、1つ以上のレセプターに対するTGF−βの結合を妨害するか、またはTGF−βレセプターの細胞内シグナル伝達を妨げ得る。「TGF−βアンタゴニストに対する(direct TGF−β antagonist)」という用語は一般に、TGF−βの生物学的活性を直接下方制御する任意の化合物をいう。ある分子は、それが、TGF−β遺伝子、TGF−β転写物、TGF−βポリペプチド、TGF−βリガンドまたはTGF−βレセプターと相互作用することによって活性を下方制御する場合、TGF−βの生物学的活性を「直接下方制御する(directly downregulates)」。TGF−βアンタゴニストの生物学的活性を中和することを評価するための方法は、当該分野で公知であり、そして例は下に記載している。
【0020】
「リンパ増殖性障害(lymphoproliferative disorder)」、「LPD」およびそれらの同語源の用語は、リンパ系組織(例えば、リンパ節、脾臓、胸腺)で生成されたリンパ球、白血球が過剰生産されるかまたは異常に作用する障害をいう。LPDは、リンパ球またはリンパ組織の異常な増殖、すなわち、例えば、「ウイルス関連リンパ増殖性障害(viral−associated lymphoproliferative disorder)」または「移植後リンパ増殖性障害(post−transplant lymphoproliferative disorder)」を包含する。リンパ球としては、胸腺由来リンパ球(T細胞)、例えば、骨髄由来のリンパ球(B細胞)およびナチュラルキラー(NK細胞)が挙げられる。リンパ球は、増殖、活性化および成熟を含む多数の異なる段階を通じて進行し、そしてリンパ腫または異常な増殖が各々の段階で発達し得る。障害は、悪性の新生物であってもよく(そして、侵襲性もしくは無痛性、または低、中もしくは高い悪性度として分類されてもよく)、これには、IFN−γに関連する障害が挙げられ、またはこの障害は、リンパ細胞の非悪性の異常な増殖に関与し得る。LPDとしては、処置なしでは解消されない、そして/または過剰な細胞増殖、例えば、増殖性、モノクローナル、ポリクローナルもしくはオリゴクローンのリンパ系腫瘍に関与する、任意のモノクローナルまたはポリクローナルのLPDが挙げられる。細胞増殖は、正常よりも急速であってもよいし、そして新規の増殖中断を開始した刺激後に継続してもよい。新生物は、構造的な組織化および正常な組織との機能的な協調の、部分的または完全な欠失を示し、そして良性(良性腫瘍)または悪性(ガン)のいずれであってもよいが組織の別個の塊を形成してもよい。リンパ系(またはその他)の細胞または組織の異常な増殖、機能または構造を検出する方法は、PTLDのようなウイルス関連LPDを診断、その進行をモニター、またはその治療因子の有効性をアッセイするために用いられ得る。特定の実施形態では、LPDとしては、ガンを含まない。他の実施形態では、ウイルス関連のLPDとしては、ガンを含まない。
【0021】
このような疾患または障害としては、限定はしないが、T細胞リンパ増殖性疾患、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、侵襲性大細胞リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、カポジ肉腫、およびエプスタイン・バーウイルス関連リンパ腫が挙げられる。「移植後リンパ増殖性障害(post−transplant lympholiferative disorder)」すなわち「PTLD」とは、器官、組織または幹細胞移植および付随する免疫抑制療法に関連する、変化した過形成および/または新生物性の障害をいう。PTLDとしては、例えば、反応性のポリクローナルB細胞過形成のようなリンパ球過形成から、ポリクローナルまたはモノクローナルのB細胞リンパ腫におよぶ障害が挙げられる。侵襲性の非ホジキンリンパ腫の例としては、限定はしないが、びまん性大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(HTLV−1+)、外套細胞リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、AIDS関連リンパ腫、真性組織球性リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫および侵襲性NK細胞白血病が挙げられる。無痛性非ホジキンリンパ腫の例としては、限定はしないが、濾胞性リンパ腫、びまん性小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病、リンパ形成性(lymphoplastic)リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、MALT(節外性辺縁帯B細胞リンパ腫)、単球様 B細胞リンパ腫(節性辺縁帯B細胞リンパ腫)、有毛リンパ球を有する脾リンパ腫(脾性辺縁帯リンパ腫)、ヘアリー細胞白血病および菌状息肉腫/セザリー症候群が挙げられる。
【0022】
「ウイルス関連(viral associated)」増殖性障害とは、ウイルスによって生じるかまたはウイルスと相関するLPDをいう。ウイルス関連LPDは、例えば、ヘルペスウイルス、HHV−8、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、C型レトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(C型レトロウイルス)および/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV、HIV−1、HIV−2)などによって生じてもよいし、またはそれらに関連してもよい。HIVまたはAIDS関連のガンとしては、HIV関連のLPDが挙げられ、そして例は、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(HTLV−1+)およびAIDS関連リンパ腫である。「EBV−関連(EBV−associated)」障害としては、例えば、単核球症、上咽頭癌、浸潤性乳癌、胃癌およびEBV関連LPDが挙げられる。「EBV−関連LPD(EBV−associated LPD)」としては、限定はしないが、原発性CNSリンパ腫、PTLD、バーキットリンパ腫、T細胞リンパ腫、X連鎖LPD、チェディアック−東症候群、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。難治性の非ホジキンリンパ腫、例えば、外套細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、およびNK/T細胞リンパ腫の約40%が、例えば、EBVに関連する。X連鎖性LPDはしばしば、EBVウイルス感染に対するT細胞媒介性応答を包含する。AIDS患者、器官移植レシピエントおよび遺伝的免疫障害におけるような免疫不全は、潜伏EBVを再活性化させ得、これは、例えば、異常なリンパ球の増殖およびEBV関連LPDを発症させる能力を生じる。LPDに関与する細胞のような、異常な細胞におけるウイルスまたはウイルス感染の存在を検出する方法は、当該分野で公知である。ウイルス核酸またはポリペプチドは、例えば、異常な細胞のような、細胞、組織または生物で検出され得る。また、ウイルスに特異的な免疫応答を検出する方法が公知である。トランス−ビボDTHアッセイのような遅延型過敏性(DTH)アッセイを用いて、例えば、制御性T細胞を検出してもよい。このようなアッセイでは、ヒトまたは他の哺乳動物末梢血単核球(PBMC)を、例えば、ウイルス抗原の存在下または非存在下でキャリアコントロールと混合して、異種のナイーブなレシピエント、例えば、ナイーブなマウスの耳介または足蹠に注射する。PBMCのドナーがチャレンジ抗原に対して以前に感作されていた場合、DTH様の膨張反応が観察される。
【0023】
低IFN−γに関連するLPD、または低IFN−γレベルに関連がある、またはないウイルス関連LPDについて「リスクがある(at risk)」被験体とは、障害を発症する確率を増大する1つ以上の危険因子を有する被験体である。ウイルス関連のLPDまたはPTLDを発症するリスクがあると被験体をみなす要因の1つは、彼または彼女が、IFN−γ遺伝子の+874位置でA/AまたはA/T遺伝子型のようなIFN−γの低プロデューサー遺伝子型についてホモ接合性であるかまたはヘテロ接合性であるかということである。低IFN−γレベルに関連するLPDまたはウイルス関連LPDのリスクがある被験体は、1つ以上の他の危険因子を有し得、これにはとりわけ、以下が挙げられる:免疫不全;免疫抑制療法;器官、組織または細胞の移植(幹細胞移植を含む);移植前のEBV血清陰性状態;EBV再活性化;潜伏性ウイルスの再活性化;免疫不全患者における原発性EBVまたは他のウイルス感染;被験体の年齢(すなわち、小児または成人);ならびに移植片拒絶を妨げるために投与される免疫抑制療法のタイプおよび期間など。リスクがある被験体は、例えば、血液および組織におけるウイルス負荷を評価する(例えば、移植後の増大したウイルス負荷を検討する)ことによって、またはリンパ球、B細胞の数もしくは総血清IgMの増大を試験することによって、同定され得る。EBV(または他のウイルス)は、必要に応じて、サザンブロットハイブリダイゼーションによって、または定量的PCRもしくは半定量的PCRを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、または被験体の血液、血清もしくは組織中の陽性のウイルス血清学(抗ウイルスカプシド抗原IgG(EBV血清学))によって、検出され得る。
【0024】
「免疫不全(immune deficiency)」は、遺伝性であっても、後天性であっても、または医原性(診断、医学的治療または外科的手順によって誘導される)であってもよい。遺伝性の免疫不全の例としては、例えば、重症複合免疫不全、自己免疫疾患、X連鎖免疫不全、X連鎖無ガンマグロブリン血症、分類不能型免疫不全、チェディアック−東症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群または毛細血管拡張性運動失調症が挙げられる。後天性免疫不全は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のような疾患または感染によって生じ得る。医原性免疫不全としては、免疫抑制療法によって生じるものが挙げられ、これには、器官または組織の移植に付随する治療が挙げられる。免疫抑制治療療法とは、免疫抑制を誘導する化合物または組成物の投与をいい、すなわち、これは免疫学的な応答の発生を予防または妨害する。治療的な免疫抑制は、シクロスポリン、アザチオプリンおよび/またはプレドニゾロン、ならびに本明細書のいずれかに列挙されるものを含む他の免疫抑制剤の投与を包含し得る。
【0025】
「処置(する)(treatment)」、「治療法(therapeutic method)」およびそれらの同語源の用語は、処置または予防/対処用の手段をいう。処置の必要な個体としては、特定の医学的障害を既に有する個体、ならびに最終的に障害に罹患し得る個体が挙げられる。処置の必要性は、例えば、障害の発生に関連する1つ以上の危険因子の存在、障害の存在もしくは進行、または障害を有する被験体の処置に対する受容度によって、評価され得る。処置としては、障害の進行を遅らせることまたは逆転することを含み得る。
【0026】
「治療的に有効な用量(therapeutically effective dose)」または「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」という用語は、被験体においてLPD、ウイルス関連LPD、EBV関連LPDおよび/または移植後LPDの症状の発現の予防もしくは遅延または寛解を、あるいは所望の生物学的転帰の獲得、例えば、異常な増殖の減少を生じる化合物の量をいう。有効な量は、当該分野で周知の、そして本明細書の引き続くセクションに記載のような方法によって決定され得る。
【0027】
「特異的な相互作用(specific interaction)」、「特異的に結合する(specifically binds)」、またはそれらの同語源の用語は、2つ以上の分子が、生理学的な条件下で比較的安定である複合体を形成することを意味する。特定の結合は、高い親和性および低〜中度の能力で特徴付けられる。非特異的な結合は通常、中度〜高度の能力で低親和性を有する。代表的には、結合は、親和性定数Kが10−1より高いか、好ましくは10−1より高い場合に特異的とみなされる。必要に応じて、非特異的な結合は、結合条件を変化することによって特異的な結合に実質的に影響することなく、軽減され得る。この条件は、当該分野で公知であり、そして慣用的な技術を用いる当業者は適切な条件を選択し得る。この条件は通常、結合タンパク質の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、無関係の分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して規定される。
【0028】
「実質的に同一である(substantially identical)」という句は、関連のアミノ酸配列が、所定の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは100%同一であることを意味する。例えば、このような配列は、種々の種由来の改変体であってもよいし、またはそれらは、所定の配列から短縮、欠失、アミノ酸置換または付加によって誘導されてもよい。例えば、TGF−βアンタゴニストの変異体、フラグメントまたは誘導体は、TGF−βアンタゴニストに比較した場合、実質的に同一のアミノ酸または核酸配列を有し得、そしてTGF−βの生物学的活性を直接阻害する能力を保持し得る。2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、標準的なアラインメントアルゴリズム、例えば、Altschulら、J.Mol.Biol.,215:403〜410(1990)に記載のBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlmanら、J.Mol.Biol.,48:444〜453(1970)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput.Appl.Biosci.4:11〜17(1988)のアルゴリズムなどによって決定され得る。このようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラム(www.ncbi.nlm.gov/BLASTを参照のこと)に組み込まれている。このようなプログラムを利用する場合、デフォールトパラメーターが用いられ得る。例えば、ヌクレオチド配列については、以下の設定を「BLAST 2 Sequences」について用いてもよい:プログラムBLASTN、マッチ2についてリウォード、ミスマッチ−2についてペナルティー、オープンギャップおよびエクステンションギャップペナルティーがそれぞれ5および2、ギャップx_ドロップオフ 50、期待値10、ワードサイズ11、フィルターON。アミノ酸配列については、以下の設定を、「BLAST 2 Sequences」について用いてもよい:プログラムBLASTP、マトリックスBLOSUM62、オープンギャップおよびエクステンションギャップペナルティーがそれぞれ11および1、ギャップx_ドロップオフ 50、期待値10、ワードサイズ3、フィルターON。本出願のアミノ酸配列および核酸配列は、参照によって援用されるものを含み、これには、ホモログ、改変体または実質的に同一な配列を挙げることができる。
【0029】
本明細書において用いる場合、「TGF−β」は、他に特に示さない限り、TGF−βの任意の1つ以上のアイソフォームをいう。同様に、「TGF−βレセプター(TGF−β receptor)」という用語は、他に示さない限り、少なくとも1つのTGF−βアイソフォームに結合する任意のレセプターをいう。現在、TGF−βの5つの公知のアイソフォームがあり(TGF−β1〜β5)、その全てがお互いに相同であり(60〜80%同一性)、約25kDaのホモ二量体を形成し、そして共通のTGF−βレセプター(TβR−I、TβR−II、TβR−IIBおよびTβR−III)に作用する。TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3は、哺乳動物に見出される。TGF−βの構造的および機能的な局面、ならびにTGF−βレセプターは、当該分野で周知である(例えば、Cytokine Reference、編、Oppenheimら、Academic Press,San Diego,CA,2001を参照のこと)。TGF−βは種の間で極めてよく保存されている。例えば、ラットおよびヒト成熟TGF−β1のアミノ酸配列はほぼ同一である。従って、TGF−βのアンタゴニストは、高い種交差反応性を有すると期待される。
【0030】
(TGF−βアンタゴニスト)
TGF−βは、成熟TGF−βを生成するために分泌の前に切断される約400アミノ酸(aa)のプレプロタンパク質として合成されるジスルフィド結合した二量体である。「潜伏関連ペプチド(latency−associated peptide)」(LAP)として公知のN末端切断フラグメントは、この二量体に対して非共有的に結合したままであってもよく、これによってTGF−βを不活性化する。インビボで単離されたTGF−βは、LAPに関連したこの不活性な「潜伏(latent)」型において主に見出される。潜伏TGF−β複合体は、いくつかの方式で、例えば、陽イオン非依存性マンノース−6−リン酸塩/インスリン様増殖因子IIレセプターと呼ばれる細胞表面レセプターに対する結合によって、活性化され得る。結合は、LAP内のグリコシル化部位に結合したマンノース−6−リン酸塩残基を通じて生じる。レセプターに対する結合の際、TGF−βは、成熟形態で放出される。次いで、成熟の活性なTGF−βはそのレセプターに対する結合が遊離されて、その生物学的機能を発揮する。II型TGF−βレセプターにおける主要なTGF−β結合ドメインは、19個のアミノ酸配列に対してマッピングされている(Dermetriouら、J.Biol.Chem.,271:12755(1996))。
【0031】
本発明の方法において用いられ得るTGF−βアンタゴニストの例としては、限定はしないが、以下が挙げられる:TGF−βの1つ以上のアイソフォームに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(米国特許第5,571,714号;WO97/13844;WO00/66631;ドミナントネガティブおよび可溶性のTGF−βレセプターまたはTGF−βレセプターに対する抗体(Flavellら、Nat.Rev.Immunol.2:46〜53(2002);米国特許第5,693,607号;米国特許第6,001,969号;米国特許第6,008,011号;米国特許第6,010,872号;WO92/00330;WO93/09228;WO95/10610号;およびWO98/48024);LAP(WO91/08291);LAP関連TGF−β(WO94/09812);TGF−β結合糖タンパク質/プロテオグリカン、例えば、フェチュイン(米国特許第5,821,227号);デコリン、ビグリカン、フィブロモジュリン、ルミカンおよびエンドグリン(米国特許第5,583,103号;米国特許第5,654,270号;米国特許第5,705,609号;米国特許第5,726,149号;米国特許第5,824,655号;米国特許第5,830,847号;米国特許第6,015,693号;WO91/04748;WO91/10727;WO93/09800およびWO94/10187);TGF−βアクセサリレセプターであって、r150タンパク質、その可溶型、誘導体または前駆体のような、TGF−β1に直接結合するレセプターを含む、レセプター(米国特許公開番号20040191860);マンノース−6−リン酸塩またはマンノース−1−リン酸塩(米国特許第5,520,926号);プロラクチン(WO97/40848);インスリン様増殖因子II(WO98/17304);植物、真菌および細菌の抽出物(EU 813875;JP 8119984;および米国特許第5,693,610号);アンチセンスオリゴヌクレオチド(米国特許第5,683,988号;米国特許第5,772,995号;米国特許第5,821,234号;米国特許第5,869,462号およびWO94/25588);低分子インヒビター、例えば、セリン/トレオニンキナーゼインヒビター(WO04/21989;WO03/87304;WO04/26871;WO04/26302;WO04/24159、米国特許第6,184,226号;WO03/97639;およびWO04/16606);SMADおよびMADを含む、TGF−βシグナル伝達に関与するタンパク質(欧州特許874046;WO97/31020;WO97/38729;WO98/03663;WO98/07735;WO98/07849;WO98/45467;WO98/53068;WO98/55512;WO98/56913;WO98/53830;WO99/50296;米国特許第5,834,248号;米国特許第5,807,708号;および米国特許第5,948,639号)、SkiおよびSno(Vogel,Science,286:665(1999);およびStroscheinら、Science,286:771〜774(1999))ならびにTGF−βの生物学的活性を直接阻害する能力を保持する上記で同定された分子の任意の変異体、フラグメントまたは誘導体。
【0032】
ある実施形態では、TGF−βアンタゴニストは、直接のTGF−βアンタゴニスト、例えば、TGF−βのそのレセプターに対する結合をブロックする抗体である。この抗体は、TGF−βの少なくとも1つのアイソフォームに対して、または少なくとも1つのTGF−βレセプターの細胞外ドメインに対して特異的に結合するような抗体である。いくつかの他の実施形態では、抗TGF−β抗体は、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3からなる群より選択されるTGF−βの少なくとも1つのアイソフォームに対して特異的に結合する。さらに他の実施形態では、抗TGF−β抗体は特異的に以下の少なくとも1つに対して結合する:(a)TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3(「汎中和抗体(pan−neutralizing antibody)」とも呼ばれる);(b)TGF−β1およびTGF−β2;(c)TGF−β1およびTGF−β3;ならびに(d)TGF−β2およびTGF−β3。種々の実施形態では、TGF−βの、それが特異的に結合する、少なくとも1つのアイソフォームについてのTGF−β抗体の親和性定数Kは好ましくは、10−1、10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1011−1、または1012−1より大きい。なおさらなる実施形態では、本発明の抗体は、ヒトTGF−β1、TGF−β2および/またはTGF−β3に対して実質的に同一であるタンパク質に特異的に結合する。またヒトでの使用について意図されるのは、引用文献に記載された任意の脊椎動物種由来の非ヒト抗体のヒト化型および誘導体である。このような改変体の産生は、当業者の通常の技術の十分に範囲内である(例えば、Antibody Engineering編、Borrebaeck、第2版、Oxford University Press、1995を参照のこと)。
【0033】
非限定的な例示的な実施形態では、抗TGF−β抗体は、ハイブリドーマ1D11.16によって生成されるマウスモノクローナル抗体1D11である(ATCC寄託指定番号(Deposit Designation No.)HB9849、米国特許第5,571,714号;同第5,772,998号;および同第5,783,185号にも記載)。1D11重鎖可変領域の配列は、アクセッション番号AAB46787として利用可能である。従って、関連の実施形態では、抗TGF−β抗体は、1D11の誘導体、例えば、AAB46787における配列と同一のCDR配列を含む抗体、例えばヒト化抗体である。なおさらなる非限定的な例示的実施例では、抗TGF−β抗体は、Lucasら、J.Immunol.145:1415〜1422(1990)に従う抗体、またはファージディスプレイによって生成される完全ヒト組み換え抗体、例えば、WO00/66631、米国特許第6,492,497号および米国特許出願第2003/0091566号および2003/0064069号に記載されるCAT192、またはそれらに開示されるCDR配列を含む抗体である。なおさらなる実施形態では、抗TGF−β抗体は、1D11、CAT192またはCAT152からガイドされた選択によって生成される抗体である。
【0034】
1D11抗体はTGF−βの3つ全ての哺乳動物アイソフォームに特異的に結合するが、CAT192はTGF−β1にのみ特異的に結合する。1D11およびCAT192についてのこの抗原親和性はそれぞれ、ほぼ1nMおよび8.4pMである。1D11のエピトープ(Daschら、J.Immunol.142:1536〜1541(1998))およびCAT192は、成熟TGF−βのC末端部分にマッピングされている。
【0035】
TGF−βおよびTGF−βアンタゴニストの中和生物学的活性を評価する方法は当該分野で公知である。インビトロのバイオアッセイにおいてさらに頻繁に用いられるいくつかの例としては以下が挙げられる:
(1)EGFの存在下における軟寒天中でのNRK細胞のコロニー形成の誘導(Robertsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5339〜5343(1981));
(2)軟骨性表現型を発現する原始的間葉細胞の分化の誘導(Seyedinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:2267〜2271(1985));
(3)Mv1Luミンク肺上皮細胞の増殖の阻害(Danielpourら、(1989)J.Cell.Physiol.,138:79〜86)およびBBC−1サル腎臓細胞(Holleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5989〜5992(1980));
(4)C3H/HeJマウス胸腺細胞の有糸分裂誘発の阻害(Wrannら、EMBO J.6:1633〜1636(1987));
(5)ラットL6筋芽細胞の分化の阻害(Floriniら、J.Biol.Chem.261:16509〜16513(1986));
(6)フィブロネクチン産生の阻害(Wranaら、Cell 71:1003〜1014(1992));
(7)ルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合されたプラスミノーゲンアクチベータインヒビターI(PAI−1)プロモーターの誘導(Abeら、Anal.Biochem.216:276〜284(1994));
(8)サンドイッチ酵素連結免疫吸着アッセイ(Danielpourら、Growth Factors 2:61〜71(1989));ならびに
(9)Singhら、Bioorg.Med.Chem.Lett.13(24):4355〜4359(2003)に記載の細胞アッセイ。
【0036】
(用途および投与の方法)
本発明の方法は、哺乳動物被験体に対してTGF−βアンタゴニストを投与して、ウイルス関連リンパ増殖性障害(LPD)の発症のリスクを処置、予防または軽減して、低IFN−γレベルに関連する増殖性傷害を処置する工程を包含する。特定の実施形態では、低IFN−γレベルを有する個体、または低IFN−γレベルに関連するIFN−γ遺伝子型を有する個体におけるウイルス関連障害を処置するための方法が提供される。
【0037】
本発明はさらに、ウイルス関連のLPDの存在もしくは発達についての1つ以上の危険因子の存在、または処置に対するその進行もしくは応答性を評価するため、そしてその危険因子を有する被験体に対してTGF−βアンタゴニストを投与するための方法を提供する。例えば、IFN−γレベルまたはIFN−γ遺伝子型を評価または測定する工程、ならびに低IFN−γレベルまたはA/TもしくはA/A+874遺伝子型を有する被験体を処置する工程を包含する方法が本明細書において提供される。
【0038】
特定の実施形態では、ウイルス関連LPDは、ヘルペスウイルス、例えばHHV−8、サイトメガロウイルス、またはエプスタイン−バーウイルス(EBV)による感染に関連する。他の実施形態では、ウイルス関連障害は、例えば、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型のようなC型レトロウイルスによる感染に関連する。他の実施形態では、ウイルス関連の障害は、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV、HIV−1、HIV−2)による感染に関連する。
【0039】
この開示された方法は、ウイルス関連LPDのリスクがあるか、それに感受性であるか、またはそれに罹患している哺乳動物被験体に対して、治療上有効な量のTGF−βアンタゴニストを投与する工程を包含する。本発明の方法によって処置される集団としては、限定はしないが、ウイルス関連LPDまたは低レベルのIFN−γに関連するLPDに罹患しているかまたはその発生のリスクがある被験体、例えば、免疫不全またはウイルス感染を有する被験体が挙げられる。
【0040】
本発明の方法に従って処置された被験体としては、限定はしないが、ヒト、ヒヒ、チンパンジーおよび他の霊長類、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、およびブタが挙げられる。好ましくは、この被験体は、哺乳動物である。他の実施形態では、この被験体は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。
【0041】
ウイルス関連のLPDの発症または進行を評価するため、そしてそのインヒビターを評価するためには多くの方法が利用可能である。LPDは、リンパ球またはリンパ組織の異常な増殖に関与する疾患または状態、すなわち、例えば、「ウイルス関連のリンパ増殖性障害(viral−associated lymphoproliferative disorder)」、「EBV関連LPD(EBV−associated LPD)」または「移植後リンパ増殖性障害(post−transplant lymphoproliferative disorder)」である。このような障害としては、限定はしないが、上記のような、任意の急性または慢性の疾患または障害が挙げられる。
【0042】
LPDの発症または進行は、アデノパシー(リンパ節の腫脹または肥大)、脾腫、または拡張するリンパのクローンによる器官浸潤に起因する症状、例えば、異常な膨満(胃腸管)、または肺の異常(肺)によって評価され得る。PTLDの症状としては、例えば、発熱、寝汗および体重減少が挙げられる。LPDの存在または進行はまた、例えば、胸部、腹部および骨盤のコンピュータ断層撮影(CT)スキャン;ガリウム−67単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)スキャン、骨髄吸引および生検;ならびに肝機能および腎機能の評価、血清腫瘍マーカー、および血清乳酸脱水素酵素(LDH)によって検出されてもよい。
【0043】
EBVまたは他のウイルスの存在(潜伏感染または活性な感染)は、限定はしないが、EBVの潜伏膜タンパク質−1についてのようなウイルスRNAまたは免疫組織化学のインサイチュハイブリダイゼーションを含む、当該分野で公知の技術によって検出されてもよい。さらに、インサイチュの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(IS−RT−PCR)は、例えば、ウイルスタンパク質のフォワードおよびリバースプライマー、例えば、EBVチミジンキナーゼプライマーを用いて、潜伏または活性なウイルス活性を検出するために用いられ得る(Porcuら、Blood 100:2341〜2348(2002))。
【0044】
LPDは、異常なリンパ球増殖によって特徴付けられる。リンパ(またはその他)の細胞または組織の異常な増殖、機能または構造を検出するための方法は、LPDの治療因子の有効性を診断するか、その進行をモニターするか、またはアッセイするために用いられてもよい。リンパ球増殖は、フローサイトメトリー、または総T細胞もしくはB細胞の数を決定するための他の手段、CD8+細胞およびT細胞増殖の細胞ベースのアッセイを用いて測定され得る。リンパ球の状態および増殖はまた、抗原チャレンジに対する応答性の細胞ベースのアッセイ、例えば、混合リンパ球反応性アッセイによって、または例えば、T細胞上でのCD25、CD69および/もしくはCD71のような活性化抗原の存在を測定することによって測定されてもよい。
【0045】
本発明の方法は、異常なリンパ球増殖または蓄積を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上まで減少させ得る。ある実施形態では、本発明は、ウイルス関連のリンパ増殖性障害を処置または寛解して、被験体のリンパ増殖性障害の1つ以上の症状を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上まで改善させる方法を提供する。処置のための他の指標としては、限定はしないが、以前に、そして下の節において考察されるものを含む、LPDまたはPTLDの1つ以上の危険因子の存在が挙げられる。障害を発症するリスクがあるかもしくはそれに感受性の被験体、またはTGF−βアンタゴニストでの処置に対して特に受容性であり得る被験体は、このような1つ以上の危険因子の有無を確認することによって同定され得る。
【0046】
(サイトカイン遺伝子型)
ある被験体は、IFN−γ遺伝子の+874位置でA/AまたはA/T遺伝子型のような、IFN−γの低プロデューサー遺伝子型についてホモ接合性であるかまたはヘテロ接合性である場合、ウイルス関連リンパ増殖性障害、LPDまたはPTLDを発症するリスクがあるか、または感受性である。種々のサイトカイン多形性の相対的なサイトカイン産生レベルを評価するための方法としては、刺激された末梢血単核球細胞(PBMC)を用いるエキソビボのサイトカイン産生アッセイが挙げられる。従って、+874におけるIFN−γ多形性のエキソビボIFN−γ産生の研究において、低プロデューサーA/A遺伝子型は、IFN−γレベルの約40%、50%、60%、70%または80%の減少を示す。IFN−γレベルは、T/T遺伝子型細胞に比較した、培地単独中において培養した細胞の上清における、IFN−γを含まないPPD刺激された細胞中で培養された細胞の上清中で測定されてもよい。
【0047】
(サイトカインレベル)
開示された方法は、被験体において、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、8、6、5または4pg/mL未満の循環しているIFN−γレベルで有用であり得る。さらに、この処置は、リンパ増殖性の障害に関連するか、またはそれによって生じるTGF−βレベルを増大する場合、被験体において、少なくとも5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100ng/mL以上の循環中のTGF−βレベルで有用であり得る。TGF−βまたはIFN−γレベル(総レベルまたは活性レベル)は、例えば、血液、血清または尿のような体液において測定され得る。ある実施形態では、特許請求された方法は、TGF−βアンタゴニストの投与であって、被験体中の循環しているTGF−βレベルの検出不能レベルへの低下を、または処置前の被験体のTGF−βレベルの1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%または70%未満への低下を可能にするための投与を包含する。同様に、特許請求された方法は、TGF−βアンタゴニストの投与であって、循環しているIFN−γレベルの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%またはそれ以上の増大を可能にするための投与を包含する。サイトカイン血清レベルは、例えば、サンドイッチELISAアッセイのような、そして本明細書に記載のような酵素イムノアッセイ技術を用いて測定される。
【0048】
当業者は、IFN−γ遺伝子または他の遺伝子内の遺伝子多形性であって、その生成物がIFN−γレベルに影響するものは、IFN−γ産生または他のサイトカインのレベルが影響され得るいくつかの機構のうちの1つであることを理解する。IFN−γレベルに影響する他の因子としては、IFN−γ遺伝子内の他の多形性、またはIFN−γ産生に影響する転写、転写後もしくは翻訳後の機構が挙げられる。
【0049】
正常なヒトIFN−γ血清レベルは、30pg/ml+/−10pg/mlであるかまたはほぼそうであるが、IFN−γレベルは、例えば、リンパ球レベルおよびIFN−γ遺伝子型で変化する。IFN−γレベルは、外傷、感染、ガンおよび自己免疫のような病的な環境下で増大する。正常なヒト体液におけるTGF−β濃度は、血漿中でTGF−β1の1mLあたり約5ng程度で、尿中では1mgのクレアチニンあたり300pgのTGF−β1である。正常なヒト血漿では、TGF−β2およびTGF−β3のレベルは、0.2ng/mL未満である。
【0050】
(免疫不全および移植)
免疫不全を有する被験体、または器官、組織もしくは細胞の移植片を有したかもしくは有している被験体は、例えば、LPDのリスクがある。PTLDの頻度は、移植された器官または組織によって変化し、そして移植片の例としては、心臓、腎臓、肺、肝臓、角膜、骨髄、幹細胞、血管および島細胞の移植片が挙げられる。移植に関連する免疫抑制療法は、被験体をLPDのリスクにおく。移植被験体におけるPTLDのようなLPDの発症のさらなる危険因子としては、絶対的および相対的なT細胞数、CD8+T細胞数、CD8+細胞のようなT細胞の経時的な変化、移植された器官のタイプ、EBV血清陰性状態、EBVウイルス負荷、被験体の年齢(すなわち、小児か成人か)、移植片拒絶を予防するために投与された免疫抑制療法のタイプおよび期間、免疫抑制の程度、ならびに主要組織適合性(MHC)不適合の程度などが挙げられる。5歳未満、10歳未満、15歳未満、または18歳未満の移植レシピエントは、PTLDのようなLPD発症のリスクが増大する。骨髄または肺移植のレシピエントは、PTLDの20%の頻度を有し、そして腎移植片レシピエントは、1〜2%のPTLD頻度を有する。器官、組織または細胞移植片の時点またはその後に生じる初代EBV感染は、被験体をLPDのリスクにさせる。詳細には、移植ドナーがEBV+であるが、レシピエントがEBV−である場合、初代ウイルス感染は、PTLDのリスクの増大を伴っている。免疫不全の被験体におけるEBVまたは他のウイルス感染は、被験体をLPDのリスクにさせる。リスクがある被験体は、例えば、血液および組織中のウイルス負荷を評価することによって(例えば、移植後のウイルス負荷の増大を調べる)、または白血球、B細胞または総血清IgMの数の増大を試験することによって、同定され得る。EBV(または他のウイルス)は、必要に応じて、サザンブロットハイブリダイゼーションによって、または定量的もしくは半定量的PCRを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、または被験体の血液、血清もしくは組織における陽性のウイルス血清学(抗ウイルスカプシド抗原IgG(EBV血清学))によって検出され得る。異なるドナーに感染するEBV株およびドナーのアトピーの状態は、LPD発症の他の潜在的な危険因子である。
【0051】
本発明の方法は、免疫不全を有する被験体において有用であり得る。例えば、本発明の方法は、免疫機能が、正常の25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%またはそれ以上まで低くなる免疫不全を有する被験体において1つ以上のLPDを処置または予防するために用いられ得る。この方法は、例えば、500、400、300、200、100,75、50、25または10細胞/μL未満というT細胞カウント、CD8+細胞カウント、CD3+/CD8+細胞カウント、またはEBV特異的なT細胞カウントを有する被験体において用いられ得る。
【0052】
(免疫抑制因子)
免疫不全は、免疫抑制因子の投与から生じ得る。「免疫抑制因子(immunosuppressive agent)」、「免疫抑制薬、免疫抑制剤(immunosuppressant)」および「免疫抑制薬、免疫抑制剤(immunodepressant)」という用語は、本明細書において用いる場合、免疫抑制を誘導する化合物または組成物をいい、すなわち、これは、免疫学的応答の発生を予防または妨害する。免疫抑制剤の例としては、限定はしないが、Sandimmune(商標)、Neoral(商標)(シクロスポリン);Prograf(商標)、Protopic(商標)(タクロリムス(tacrolimus));Rapamune(商標)(シロリムス(sirolimus));SZD−RAD、FTY720;Certican(商標)(エベロニムス(everolimus)、ラパマイシン誘導体);campath−1H(抗CD52抗体);Rituxan(商標)(リツキシマブ、抗CD20抗体);OKT4;LEA29Y(BMS−224818、CTLA41g);インドリル−ASC(タクロリムスおよびアスコマイシンの32インドールエーテル誘導体);Imuran(商標)(アザチオプリン);Atgam(商標)(抗胸腺細胞/グロブリン);Orthoclone(商標)(OKT3;ムロマナブ−CD3);Cellcept(商標)(ミコフェノレートモフェチル(mycophenolate mofetil));Thymoglobulin(登録商標);Zenapax(商標)(ダクリズマブ(daclizumab));Cytoxan(商標)(シクロホスファミド);プレドニゾン、プレドニゾロンおよび他のコルチコステロイドマロノニトリルアミド(MNA(レフルノミド、FK778、FK779));および15−デオキシスペルグアリン(DSG)が挙げられる。
【0053】
ある因子の免疫抑制活性を評価するための方法は当該分野で公知である。薬理学的な介入の存在下または非存在下におけるインビボにおける移植された器官の生存時間の長さは、免疫応答の抑制のための定量的測定値として機能する。インビトロアッセイはまた、例えば、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ(例えば、Fathmanら、J.Immunol.,118:1232〜1238(1977));CD3アッセイ(抗CD3抗体(例えば、OKT3)を介する免疫細胞の比活性)(例えば、Khannaら、Transplantation,67:882〜889(1999);Khannaら、Transplantation,67:S58(1999)を参照のこと);およびIL−2Rアッセイ(外因的に添加されたサイトカインIL−2を用いた免疫細胞の特異的な活性化)(例えば、Farrarら、J.Immunol.,126:1120〜1125(1981)を参照のこと)を用いてもよい。
【0054】
(治療的な方法)
本発明の方法に従うTGF−βアンタゴニストの投与は、任意の特定の送達系に限定されず、そして限定はしないが、非経口(皮下、静脈内、髄内、動脈内、筋肉内、または腹腔内注射)直腸、局所、経皮または経口(例えば、カプセル、懸濁物または錠剤内で)を挙げることができる。個体に対する投与は、単回投与でも、または反復投与で行われてもよく、そして任意の種々の生理学的な受容可能な塩型で、および/または受容可能な製剤的なキャリアとともに、および/または薬学的組成物(前に記載)の一部として添加物として行われてもよい。生理学的に受容可能な塩型および標準的な薬学的処方の技術および賦形剤は、当業者には周知である(例えば、Physician’s Desk Reference(PDR)2003,第57版、Medical Economics Company,2002;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy編、Gennadoら、第20版、Lippincott,Williams & Wilkins,2000を参照のこと)。
【0055】
個体に対するアンタゴニストの投与はまた、遺伝子治療の方法によって達成されてもよく、ここでこのアンタゴニストをコードする核酸配列は、インビボで患者に、またはインビトロで細胞に投与されて次いで患者に導入されてもよく、そしてこのアンタゴニスト(例えば、アンチセンスRNA、可溶性TGF−βレセプター)は、その核酸配列によってコードされる産物の発現によって生成される。TGF−βアンタゴニストを送達するための遺伝子治療の方法は、当業者に公知である(例えば、Fakhraiら、Proc.Nat.Acad.Sci,U.S.A.,93:2909〜2914(1996)を参照のこと)。
【0056】
この開示された方法では、TGF−βアンタゴニストは、単独で、同時に、または重複する間隔もしくは重複しない間隔で連続して、1つ以上のさらなる生物学的に活性な因子、例えば抗ウイルス剤とともに投与されてもよい。抗ウイルス剤の例としては、限定はしないが、アシクロビル、ガンシクロビルおよびフォスカーネットなどが挙げられる。さらなる生物学的に活性な因子としては、免疫抑制剤、抗B細胞モノクローナル抗体、およびEBV特異的な自己のCTLなどを挙げることができる。TGF−βアンタゴニストは、例えば、PTLDを有する被験体を処置するために、免疫抑制療法における減少と同時に投与されてもよい。連続的な投与では、TGF−βアンタゴニストおよびさらなる因子(単数または複数)は、任意の順序で投与されてもよい。ある実施形態では、重複する間隔の長さは、2、4、6、12、24、または48週より長い。
【0057】
アンタゴニストは、単独の活性化合物として、または別の化合物もしくは組成物とともに投与されてもよい。他に示さない限り、このアンタゴニストは、疾患の症状および進行の重篤度に依存して、約10μg/kg〜25mg/kgの用量で投与される。最も一般には、抗体は、外来患者の設定で、緩徐な静脈内(IV)注入によって約0.1〜15mg/kgの用量で毎週、1ヶ月に2回、または月1回の投与によって投与される。アンタゴニストの適切で治療的に有効な用量は、治療を行う医師によって選択され、そしておよそ10μg/kg〜20mg/kg、10μg/kg〜10mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、100μg/kg〜10mg/kg、500μg/kg〜5mg/kg、500μg/kg〜20mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、1mg/kg〜25mg/kg、5mg/kg〜50mg/kg、5mg/kg〜25mg/kg、そして10mg/kg〜25mg/kgにおよぶ。さらに、実施例に、またはPhysician’s Desk Reference(PDR)2003,第57版、Medical Economics Company,2002に示される特定の用量を用いてもよい。
【0058】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を提供する。当業者は、本発明の趣旨または範囲を変更することなく行われ得る、多数の改変および変異を認識する。このような改変および変異は、本発明の範囲内に包含される。この実施例は、決して本発明を限定しない。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
IFN−γ遺伝子型とPTLD臨床観察との関連:12PTLD患者のサイトカイン遺伝子型をさらに、以前に報告された9例のPTLD患者におけるサイトカイン遺伝子型の予備的な評価に対して分析し(VanBuskirkら、Transplant.Proc.33:1834(2001))。12例のPTLD患者のサイトカイン遺伝子型決定によって、IFN−γ遺伝子のA/A遺伝子型を有する患者の割合が、PTLD患者では、135例の非PTLD移植患者よりも、同じ移植中心で高いことが示される(58%対27%、p=0.02)。この研究では、TGF−β、IL−6、IL−10およびTNF−αの遺伝子型分布の観察では、PTLDと非PTLD患者との間の統計学的に有意な相違は示されない。この研究によってIFN−γA/A遺伝子型はPTLDにおける危険因子として特定される。
【0060】
被験体の遺伝子型およびLPDと関連する他の要因の分析:被験体またはドナーの遺伝子型を評価するために、ゲノムDNAを、Qiagen(Valencia,CA)DNA抽出キットを用いてPBLから単離した。HLA分析は、Pel−Freez Clinical Systems AB/DR PCR−SSPユニトレイ(Brown Deer,WI)を用いて行った。TGF−β、TNF−α、IL−6、IL−10およびIFN−γのサイトカイン遺伝子型決定は、One Lambda(Canoga Park,CA)からCytgenサイトカイン遺伝子型決定トレイを用いて達成した。PCR産物は、2%アガロースゲルで泳動して、臭化エチジウムで可視化した。バンド形成パターンを、製造業者のテンプレートを用いて解釈して、各々のレーンにおいて内部コントロールと比較した。
【0061】
SCIDマウスへの注射またはCTL再刺激培養物中での使用の前に、ELISA(Meridian,Cincinnati,OH)およびEBV反応性トランスビボDTHアッセイによって、被験体およびPBLドナーをEBV反応性について試験した。
【0062】
T細胞およびT細胞サブセットを評価するために、標準の3色フローサイトメトリーによって新鮮な血液サンプル上でフローサイトメトリーを用いる。EBV反応性CD8+T細胞を、潜在遺伝子EBNA−3A、または前初期溶菌遺伝子BZLF−1由来の免疫優性のEBVペプチドと複合したHLA−B8テトラマーを用いてフローサイトメトリーによって検出する。凍結された患者末梢血単核細胞(PBMC)を生存可能に解凍し、37℃で一晩インキュベートし、次いでFicoll−Hypaque密度勾配遠心分離によって精製して細片を除く。細胞を、フィコエリトリン(PE)結合体化マウス抗CD8およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合体化マウス抗CD3抗体(両方ともBD Pharmingen,San Diego,CAより)およびアロフィコシアニン(APC)結合体化HLA適合テトラマー試薬または非反応性コントロールで染色する。各々のフロー分析について約10個のリンパ球ゲート(lymphocyte−gated)(前方散乱および側方散乱に基づく)事象を収集する。
【0063】
(実施例2)
hu−PBL SCIDマウスにおけるIFN−γ遺伝子型とLPD発症との関係:健康なEBV血清陽性ドナー由来のヒト(hu)末梢血白血球(PBL)がSCIDマウスに注射されているhu PBL−SCIDマウスは、自然のEBV由来リンパ増殖性疾患(LPD)の再現性モデルである。hu PBL−SCIDマウスで生じるEBV陽性B細胞腫瘍は、表現型的にそして遺伝子型的にPTLDと極めて類似している(Picchioら、Cancer Research 52:2468〜2477(1992);Baiocchiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:5577〜5581(1994))。このモデルシステムでは、LPDの生成および発症は、ドナー(異質性が詳細に研究されていない)の間で変化する(Picchioら、前出;Mosierら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 8:735〜740(1992);Coppolaら、J.Immunol.160:2514〜2522(1998))。
【0064】
マウスNK細胞はまた、LPD発症に影響することが公知であり(Baiocchiら、前出;Lacerdaら、Transplantation 61:492〜497(1996))、マウスマクロファージも同様であり(Yoshinoら、Bone Marrow Transplant.26:1211〜1216(2000))、そしてマウスNK細胞を活性化する異なる能力は、LPD発症におけるいくつかの異質性を担い得ることが可能である。NK細胞は、このモデルをさらに厳密にするために、この研究では意図的に枯渇も無効にもされなかった。従って、サイトカイン多形性およびLPDの任意の観察された関係によって強力な関係が示される。
【0065】
LPDのhu PBL−SCIDマウスモデルは以下のとおりである:雌性Balb/cまたはCB.17scid/scid(SCID)マウスは、Charles RiverまたはTaconicから購入した。マウスは、NIHおよび施設の承認したガイドラインに従って飼育および処理した。マウスには50×10ヒトPBLを腹腔内に生理食塩水中で与えた。PBLは、American Red Crossのロイコパック(leukopacks)から、または治験審査委員会の承認したプロトコールを用いてボランティアから入手した。PBLは、標準的な方法に従ってficoll−hypaqueによって単離した。各々のドナーからのPBLを3〜5匹の別のマウスに注射した。ヒトPBL移植を、前に記載されたとおり、マウス血清に含まれるヒトIgGの存在についてELISAで週に2回モニターした(Baiocchiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:5577〜5581(1994))。この研究に含まれるマウスは、750μg/mlを超えるヒトIgGを有し、これは、腫瘍が検出された場合1mg/mlより大きくまで増大した。潜伏時間(潜時)は、注射後のマウスが瀕死になるかまたは死ぬまでの時間として規定された(Picchioら、Cancer Research.52:2468〜2477(1992))。全ての動物を、腫瘍の存在について死亡時に検査して、これらの腫瘍は、フローサイトメトリーを用いてヒトB細胞由来であることを確認した。ヒト腫瘍を確認したマウスのみを、LPDを有するとみなした。
【0066】
hu PBL−SCIDマウス研究では、各々の49個のEBV反応性ドナー由来のPBLを1ドナーあたり3〜5匹のSCIDマウスに注射した。レシピエントのマウスを、ヒト細胞による移植(血清中のヒトIgGによって証明されるとおり)およびLPDの発症(少数のCD45+CD3+細胞が浸潤したヒトCD45+CD19/CD20+腫瘍)について最大6ヶ月までモニターした。表1に示されるとおり、ドナーのうち47%(49のうち23)のPBLが20週後にLPDを生じなかったが、24%(49のうち12)がLPD腫瘍を急速に発症し(LPDへの中央時間、8週)浸透が高かった(中央値100%、範囲80〜100%)。ドナーの残り(29%、49のうち14)由来のPBLはLPDを後に生じ(中央値12週)、そしてそれより少ないマウスでは(浸透度中央値55%、範囲33〜100%)。正確なウイルコクソンの順位和検定によって決定した場合、急速性群と中間/遅発性群との間の潜時および浸透の相違は統計学的に有意である(p<0.0001)。
【0067】
【表1】

自然のEBV−LPDのPBL−SCIDマウスモデルでは、49例のドナーでのサイトカイン遺伝子型データによって、LPD発症におけるドナー由来の生存度はIFN−γ遺伝子型と相関することが実証される。この研究におけるEBV−血清陽性ドナーの53%がhu PBL−SCIDマウスで6ヶ月以内にLPDを生じた。LPDを生じるドナーのうち、12例がLPDを急速に生じ(LPDまでの中央時間、8週)、高い浸透度であった(中央値100%)。他のLPDプロデューサー表現型は、より遅くLPDを発症し(中央時間12週)、浸透度は低かった(中央値55%)。
【0068】
サイトカイン遺伝子型がLPD発症と相関するか否かを決定するために、hu PBL−SCIDマウスにおいてEBV−LPDを生じるために用いたPBLでのIFN−γ、TNF−α、IL−6、IL−10およびTGF−βのサイトカイン遺伝子型の分布を研究した。急速な高い浸透度のLPDプロデューサーを、中間/遅発性LPDプロデューサーと、そしてPBLがLPDを生じないドナーと比較した(表1に決定されるように)。表2は、IFN−γについての多形性の分布の分析が急速性LPDプロデューサーと他の2つの群との間で統計的に有意な相違を示したことを実証する。12例の急速性LPDプロデューサーのうち、T/T遺伝子型のものはなく、5例がT/A遺伝子型(41.7%)で、7例がA/A遺伝子型であった(58.3%)。対照的に、PBLが中間/遅発性LPDを生じるかまたは全く生じないドナーは、遺伝子型のさらに異種の分布を示した(14 T/T、37.8%;15 T/A、43.3%そして8A/A、18.9%)。
【0069】
【表2】

3〜5 SCIDマウスを、1匹のPBLドナーあたりに注射し、そして血清中の750μg/mlを超えるヒトIgGによって証明されるとおり全てのマウスは移植された。
A/A遺伝子型は急速性LPD群においては有意に、より広がっている、p=0.0144。
**A対立遺伝子の存在(A/A+T/A)は急速性LPD群ではより有意に広がっている、p=0.0257。
【0070】
これらのデータの統計的な分析によって、A/A遺伝子型は中間/遅発性LPDプロデューサーおよびLPDなしプロデューサーに比較して急速性LPDプロデューサーでは有意に高い頻度であったことが示される(p=0.0144)。急速性LPDプロデューサーの中のT/T遺伝子型の非存在によって、T対立遺伝子の存在が、hu PBL−SCIDマウスにおけるLPD発症がないことと相関していることが示唆される。急速性LPDプロデユーサーのうち全て(12のうち12)に少なくとも1つのA対立遺伝子が存在し、これは中間/遅発性LPDプロデューサー(14のうち8)およびLPDなしのプロデューサーと対照的であって、ここでは23のドナーのうち15に少なくとも1つのA対立遺伝子が存在した。これは3群の間で統計学的に有意な相違である(p=0.257)。TNF−α、IL−6、TGF−βおよびIL−10のサイトカイン多形性分布を分析した場合、ドナーの群の間に統計学的な相違は観察されなかった。TGF−β遺伝子型について報告された分布と同様に(Perryら、Transplant Immunology 6:193〜197(1998))、ドナーのほとんどが高いTGF−β産生の遺伝子型を示した。実際、49例のPBLドナーのうち48例、そして急速性LPDを生じるドナーの全てが、高いTGF−β産生に関連した遺伝子型を有した。
【0071】
重要な事に、これらのデータによって、+874塩基でのIFN−γについてのA(アデノシン)対立遺伝子がLPD産生と強力に関係していることが示される。急速な高浸透のLPDドナーのうち、58%がA対立遺伝子(A/A)にホモ接合性であったが、42%がヘテロ接合性(T/A)であった。急速な高頻度LPDプロデューサーのうちT対立遺伝子にホモ接合性であったものはなかった。対照的に、全ての遺伝子型が、遅発性LPDを生じるかまたは決して生じないドナーの群で示された。急速LPDプロデューサーのうちA/A遺伝子型の頻度は、中間/遅発性LPDプロデューサーおよびLPDなしドナーに比較して有意に異なった(p=0.0144)。また有意である(p=0.0257)のは、他の2つのLPD群に比較した、急速性LPDプロデューサーにおけるA対立遺伝子の存在である。これらのデータは、PTLD患者の臨床観察を映し出しており、このことはhu PBL−SCIDマウスにおけるIFN−γ遺伝子型とLPD産生との関係が危険因子または臨床的な有意差の指標であることを示唆している。
【0072】
(実施例3)
IFN−γおよびTGF−β遺伝子型のサイトカイン産生:+874塩基でのA/A、T/AおよびT/T IFN−γ遺伝子型は、それぞれ低、中および高というサイトカインインビトロ産生に相当することが報告されている(Pravicaら、Hum.Immunol.61:863〜866(2000);Hoffmannら、Transplantation 72:1444〜1450(2001);Lopez−Maderueloら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.167:970〜975(2003))。本発明者らは、同じ抗原性刺激が提供された場合、すなわち、同じEBV−LCLを用いるHLA−A、−Bマッチしたドナーの試験において、サイトカイン産生との遺伝子型のクリアカットな関係を観察した。これらの基準を満たす4つのドナーのうち、A/A遺伝子型ドナーは、最小のIFN−γを生じ(4,928+/−1,795pg/ml)、2つのA/T遺伝子型ドナーは、中間量のサイトカインを生じ(25,945+/−958pg/ml)、そして1つのT/T遺伝子型ドナーは、最高のIFN−γを生じた(41,312+/−1,811pg/ml)。これらの培養物の上清に対する10ng/mlのTGF−βの投与で、IFN−γ産生はそれぞれほぼ68%、35%および66%まで減少した。
【0073】
+874多形性遺伝子型によるIFN−γ産生の以前に公開された研究では、個体の静脈の全血(20ml)からPBMCを得て、エキソビボサイトカイン産生をアッセイした(Lopez−Maderueloら、前出)。細胞を2.0×10細胞/mlの濃度で培養して、精製されたタンパク質誘導性(purified protein derivative)(PPD)抗原(10μg/ml;Statens Seruminstitut,Copenhagen,Denmark)を用いて5%COとともに37℃で96時間、刺激した。培養上清を回収して、IFN−γのELISAキットでアッセイした(Biosource International,Camerillo,CA)。このアッセイは4pg/mlの検出限界を示した。分析と分析の間の、そしてアッセイ内の変異係数は10%未満であった。A/A+874遺伝子型は、約600pg/mLのIFN−γレベルを生じたが、TA/TT遺伝子型は約1200pg/mLというIFN−γレベルを生じ、このIFN−γレベルは、PPD刺激した細胞の上清中の濃度から培地単独で培養した細胞の上清中の濃度を引いたものとして示した(Lopez−Maderueloら、前出)。
【0074】
従って、低レベルのIFN−γ産生は、+874多形性でのA(アデノシン)に関連しており、そしてウイルス関連のLPDまたはPTLDのような増殖性障害と関連する独立した危険因子として作用し得る。低IFN−γ産生のさらなる原因は、予想されており、そして特許請求された方法によって包含される。
【0075】
同様に、高いTGF−β産生を有する遺伝子型が同定されて評価されてもよい。上記で注記したとおり、この研究におけるほとんどのPBLドナーが高い産生に関連するTGF−β遺伝子型を示し、そして急速なLPDを産生するドナーは全てが、高いTGF−β産生に関連する遺伝子型を有した(Perreyら、Transplant Immunology 6:193〜197(1998)を参照のこと)。
【0076】
(実施例4)
CTL活性のTGF−β阻害は、IFN−γ遺伝子型に関連している:IFN−γ遺伝子型とCTL機能との間の関係をさらに検討するために、本発明者らは次に、TGF−βがインビトロにおいてCTL活性の再刺激を阻害し得るか否かを試験した。PBLをTGF−β1の存在下または非存在下において、照射されたHLA適合LCL刺激因子とともに、5日間培養した。CTL活性を標準的なCTLアッセイを用いて評価した。
【0077】
EBV抗原に対するCTL活性を検出するには、5〜12日の再刺激培養を要する(Vooijsら、Scand.J.Immunol.42:591〜597(1995))。PBLを、10ng/mlのTGF−βの存在下または非存在下においてHLA−A、−BマッチしたLCLとともに5日間培養した。生きている細胞を3回洗浄して、外因性のTGF−βを除去し、そしてCTL活性を標準的な溶解アッセイを用いて、そして本明細書に記載のとおり評価した。
【0078】
細胞溶解アッセイ:標準的な非放射性細胞傷害性アッセイは、5〜7日の再刺激培養物由来のPBL、およびHLA適合または不適合のLCL株を種々のエフェクター対標的比で用いて設定し、標的細胞は5×10〜1×10細胞/mlにプレートした。全てのサンプルは3連でプレートした。アラマーブルー(alamar blue)(Biosource,Carmillo,CA)を1:10の希釈で用いた。細胞を24時間培養して、Cytoflour II蛍光マルチウェルプレートリーダー(Perspective Biosystems)において、530nmの励起波長および590nmの発光波長で読み取った。溶解パーセントは以下のように決定した:{標的単独−[(E+T)−(E単独)]/標的単独}。溶解単位(lytic unit)(LU)は、選択された溶解値(この場合30%)を得るのに必要なリンパ球の数として任意に規定する。LUを規定するために、全ての曲線は、この溶解値を通過しなければならず、そしてこれはこの曲線の直線部分でなければならない。100万個の細胞あたりのLUの数は、以下の式を用いて算出する:100万個の細胞あたりのLU=106/[(#エフェクター/溶解パーセント)×(30)]。
【0079】
データは、TGF−βの非存在下においてLCLとともに培養したPBLのコントロール溶解のパーセントとして示す。各々のドナーについては、標的の比に対して複数のエフェクターを三連で試験して、曲線の直線部分からLUを決定した。阻害パーセントは、TGF−β処理した培養物に対するコントロールからLUを用いて算出した。示された結果は、各々のドナーについての代表的な実験からの三連での平均および標準偏差である。t検定によって分析した場合、TGF−βの存在下で再刺激されたA/AおよびT/A PBLにおけるCTL活性は、TGF−βとの培養後のT/T PBLにおける、コントロールのCTL活性またはCTL活性のいずれかから有意に異なる(p=0.015)。T/T遺伝子型は、ある場合には、マウス−ヒトキメラモデルにおける「PTLD」表現型を与え得、これはこのモデルにおいてLPDの急速な発症をもたらす。さらに、TGF−βアンタゴニストは、急速および/または高浸透LPDを生じるT/TドナーPBLを用いてhu PBL SCIDマウスモデルにおける生存を増大するのに有効である。
【0080】
図1Aによって、TGF−βが再刺激培養物に添加された場合、A/AまたはA/TのIFN−γ遺伝子型を有する個体由来のPBLでは、CTL応答が障害されていたことが示される。これらのドナーについてのTGF−β処理した培養物は、コントロールの培養物に比較して細胞溶解が25〜70%阻害された。対照的に、TGF−βは、このアッセイではT/T遺伝子型PBLのCTL再刺激に対して効果を有することが検出されなかった。データは、溶解単位(LU)を用いて決定された、コントロール溶解の平均パーセントとして示される。A/A+T/A遺伝子型培養物と、T/T遺伝子型培養物との間の相違は有意であった(p=0.015)。
【0081】
この研究では、CTLをIFN−γ遺伝子型(示さず)にかかわらずインビトロで効率的に再刺激し、これによって、CTL再刺激におけるCTL前駆体の欠失または一般的な欠失が、LPD発症を有するA/A遺伝子型の関係を説明できないということが示される。これらのデータによって、TGF−βが存在する場合、CTL再刺激は、このモデルで急速および/または高浸透LPDを生じるPBLと関連した遺伝子型であるA/AまたはA/T遺伝子型PBLでは有意に減少したということが示される。
【0082】
(実施例5)
増殖阻害アッセイにおけるTGF−βアンタゴニストの活性:2週間のLCL増殖阻害アッセイを用いるCTL再刺激の阻害に対するTGF−βの効果は、Wilsonら(Wilsonら、Clin.Exp.Immunol.126:101〜110(2001))に記載されるのと同様に、次にアッセイした。増殖阻害アッセイは、あるセット数の再刺激したCTLが滴定した数のLCLを、通常のCTLアッセイよりもストリンジェントな条件下で溶解する能力を評価する。CTLによって殺傷されないLCLは、増殖し、そして代謝活性において検出可能な相違が、2週間後に示される。
【0083】
図1Bは、適合したLCL増殖をCTLが妨げる能力は、TGF−βの存在下においてCTL再刺激によって阻害されることを示す。CTLは、10ng/mlのTGF−βの存在下または非存在下において再刺激した。5日の終わりの時点で、CTL活性は、図1Aのように標準的なCTLアッセイによって評価した。さらに、再刺激された細胞の一部(10/ウェル)を、滴定した数のHLA−A−A、−Bの適合した、または不適合のLCLとともに2週間培養した。データは、アラマーブルーによって決定される、LCLのみを含むウェル中での増殖に比較した、CTLおよびLCLの両方を含むウェル中での、LCL増殖の平均パーセント±SDとして示す。データは、8:1のエフェクター対標的比で各々の遺伝子型の3つのドナーについて合わせた。黒塗りのバー:TGF−βの非存在下で再刺激されたコントロールCTL。白抜きのバー:TGF−βの存在下で再刺激されたCTL。
【0084】
これらのデータによって、CTLは、適合したLCLの増殖は長期間阻害したが、不適合のLCLは阻害しなかったこと、そしてTGF−βの存在下で再刺激されたA/AまたはA/T遺伝子型CTL(n=3ドナー)は、それらの適合したLCL標的の増殖を阻害しなかったことが示される。このアッセイでは、TGF−βの存在下で再刺激されたT/T遺伝子型CTL(n=3ドナー)は、コントロールのCTLと同様にLCL増殖を阻害した。T/T遺伝子型は疾患状態と一般的に関連が低いので、このモデルでの急速および/または高い浸透LPDを示すT/Tドナーは、最近同定された。予備的な研究によって、急速なLPDを生じるT/T細胞は、このアッセイにおいてTGF−βに感受性であることが示される。従って、上記のアッセイは、CTL再刺激のTGF−β阻害を検出した。
【0085】
(実施例6)
TGF−βアンタゴニストでの処置は、hu PBL SCIDマウスの生存を長引かせる:抗TGF−βでのインビボ処置は、hu PBL SCIDマウスの生存を改善する。一般的な集団のほとんどと同様、急速性LPDドナーの全てが、高いTGF−β産生に関連する遺伝子型を示した。TGF−βがCTL再刺激を阻害できることを示しているインビトロのデータに基づいて、hu PBL SCIDマウスの生存に対する抗TGF−βでの処置の効果を検討した。これらのデータは、hu PBL SCIDマウスにおけるTGF−βの減少が生存を延長することを示す。
【0086】
図2に実証されるとおり、抗TGF−β抗体を用いる生存トライアルでは、抗TGF−β処置したマウスにおいて80日を超える100%生存が得られた。対照的に、全てのコントロールの動物が70日以内に死んだ。これらのデータによって、LPD発症におけるTGF−βの重要な役割が示される。
【0087】
この研究では、SCIDマウスに、実施例2に記載されるように5千万個のPBLを注射した。動物にはPBS(n=3)、アイソタイプ100μgコントロール抗体(n=5)または100μgの抗TGF−β(n=5)のいずれかを、実験期間中1日おきに与えた。動物は、それらの血清中では750μg/mlを超えるヒトIgGの存在によって移植されていることが確認され、そしてLPD発症についてモニターが行われた。生存時間は、各々の群について決定した。動物が死ぬかまたは瀕死になった時、フローサイトメトリーを行ってLPDの発症を確認した。示されたとおり、全てのコントロール動物(PBSまたはアイソタイプコントロール抗体)は、70日以内に死んだが、抗TGF−β抗体で処置した動物は、80日より長く生存した。生存の相違は、極めて有意であった(PBS対抗TGF−βについてp=0.004、そしてアイソタイプコントロール対抗TGF−βについてp=0.002)。
【0088】
hu PBL−SCIDマウスに、100μgのPBS、アイソタイプコントロール抗体または市販の抗TGF−β抗体(Genzyme)を、実験の期間にわたって1週に3回、腹腔内に注射した。全ての動物は、注射後4週目で血清中において750μg/mlを超えるヒトIgGによって証明されるとおり、移植された(示さず)。図2に示されるとおり、PBSまたはアイソタイプコントロール抗体のいずれかで処置した動物は、平均生存が60日であった。対照的に、抗TGF−βで処置した動物は、80日より長く生存した。従って抗TGF−β処置は、hu PBL−SCIDマウスの生存を有意に増強した(p<0.002)。
【0089】
(実施例7)
TGF−βのインビボ中和はLPDを軽減し、CD8+の増殖および活性を生じる:抗TGF−β抗体でのインビボ処置が生存を延長する機構を検討するために、そして抗TGF−β処置の有用性を評価するために、A411抗TGF−β抗体および第二のPBLドナーを用いる第二の実験を行なった。このプロトコールでは、TGF−βレベル、LPD発症およびCD8T細胞増殖を評価した。hu PBL−SCIDマウスには最初に、抗TGF−β抗体を1週に3回注射して、ヒトIgレベル、血清TGF−βおよびLDPの発症をモニターした。全ての動物は、注射後4週目で血清中の750μg/mlを超えるヒトIgGによって証明されるように移植された(示さず)。hu PBL−SCIDマウスは通常12000pg/mlのTGF−βの循環レベルを示した。抗TGF−βでの動物の処置は、そのレベルを4000pg/ml未満まで有意に減少させた(p<0.05)。
【0090】
図3Aによって、抗TGF−βがインビボでTGF−βを中和することが示される。TGF−βレベルに対する効果を評価するために、hu PBL−SCIDマウスに、125μgの抗TGF−β抗体(A411)またはPBSを1週間に3回注射した。血清サンプルをTGF−βの存在について6週目にELISAで試験した。図3Aのデータは、1群あたり5匹のマウスでの3連の決定に由来するTGF−βの平均pg/mlとして示す。
【0091】
LDP発症を次に決定した。動物を9週目で屠殺して、その時点で100%のコントロール動物は、ヒトB細胞腫瘍を発症した。対照的に、125μgの抗TGF−βを投与された動物のうちわずか20%(5匹のうち1匹)しかLPDを発症しなかった(図3B)。図3Bは、抗TGF−βがLPDの発症率を用量依存性の様式で軽減することを示す。hu PBL−SCIDマウスを、100μgまたは125μgの抗TGF−β抗体A411またはマウスIgGを用いて、9週間の間週に3回処置した。回収時に、B細胞腫瘍の存在を視覚的に評価して、フローサイトメトリーによって確認した。
【0092】
hu PBL SCIDマウス由来の脾細胞および腫瘍細胞をフローサイトメトリーを介して分析して、実施例1に記載のようにCD8+T細胞レベルおよびT細胞活性化を評価した。全ての抗体およびアイソタイプコントロール抗体を直接結合体化して、BD Pharmingen(San Diego,CA)から得た。サンプルはFACScan(BD)上で読んで、Cell Questソフトウェアを用いて分析した。
【0093】
脾臓および腫瘍のフローサイトメトリー分析によって、ヒトCD8+細胞が抗TGF−β処置マウスにおいて劇的に増殖したことが示された。コントロールマウスは、それらの脾臓において中央値0%のCD8+細胞を有した。これらのマウスはまれに、脾臓においてヒト細胞を有し、ヒト細胞が存在する場合、それらが、ヒトB細胞であった。対照的に、125μgの抗TGF−βを投与された動物はそれらの脾臓で17.5%というCD8+細胞の中央値を有した。B細胞腫瘍を発症した1匹の処置動物は、脾臓において有意な数のB細胞(25%)、および有意な数のCD8+細胞(25%)を有した。重要なことに、CD8+T細胞はまた、1匹の腫瘍陽性抗TGF−β処置動物の腫瘍でも増殖した。
【0094】
抗TGF−βが生存を延長した機構を決定するために、異なる抗体およびさらなるPBLドナーの両方を用いて、さらなる実験を行なった。コントロール処置マウスは、浸潤するCD8+T細胞が極めて少ない(<5%)B細胞腫瘍を有した。これらの動物の脾臓は、B細胞浸潤を有したが、CD8+T細胞浸潤は有さなかった。対照的に、TGF−βの中和は、腫瘍におけるヒトCD8+細胞の劇的な増大を生じた。これらのCD8+細胞は、CD45ROおよびCD25+であって、このことは、それらが活性化された記憶細胞であったことを示している。CD45RO+、CD8+T細胞はまた、これらのマウスの脾臓に浸潤したが、CD25は発現しなかった。
【0095】
(実施例8)
抗TGF−βの効果をさらに検討するために、第三のドナーを用いるさらなる研究を行なった。hu PBL−SCIDマウスに、100μgの抗TGF−β抗体(A411)またはマウスIgGを、9週間にわたって1日おきに注射した(図4)。抗TGF−β処置は、これらの動物の血清においてTGF−βを有効に中和した(示さず)。フローサイトメトリーを用いて、腫瘍(図4A)および脾臓(図4B)におけるヒト細胞の増殖を評価した。
【0096】
図4Aは、抗TGF−βおよびコントロールで処置したhu PBL−SCIDマウスにおける腫瘍のフローサイトメトリー分析を示す。腫瘍は、ヒトB細胞およびT細胞の増殖および活性化の存在についてフローサイトメトリーによって分析した(収集時点で)。データは、各々の群における代表的な動物から示される(1群あたりn=5マウス)。
【0097】
図4Bは、抗TGF−βおよびコントロール処置したhu PBLSCIDマウスからの脾臓のサイトメトリー分析を示す。hu PBL−SCIDマウスに、100μgの抗TGF−β(A411)またはマウスIgGを9週間にわたって1日おきに注射した。収集時に、脾臓を、ヒトB細胞およびT細胞の増殖および活性化の存在についてフローサイトメトリーによって分析した。データは、各々の群における代表的な動物から示す(1群あたりn=5マウス)。
【0098】
これらのデータによって、コントロールIgG処置マウス由来の腫瘍は、ヒトB細胞および極めて少ないCD8+T細胞を含むことが示される。同様に、これらの動物由来の脾臓は、B細胞を含むが、T細胞がある場合は極めて少ない。対照的に、抗TGF−β処置マウス由来の腫瘍および脾臓は、多数のCD8+T細胞を示した。これらのCD8+細胞は、CD45ROを発現する主に記憶細胞であって、腫瘍では、CD8+細胞のほとんどがまたCD25を発現し、このことは、それらが活性化されたことを示している。脾臓におけるCD8+細胞のほとんどがCD25を発現しなかった。
【0099】
本明細書は、本明細書内に引用される参考文献の教示に照らして最も徹底的に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供しており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、多数の他の実施形態が、本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示に引用される全ての刊行物、特許および生物学的配列は、その全体が参照によって援用される。参照によって援用される物質が矛盾するか、または本明細書内で不整合である程度までは、本明細書は、任意のこのような物質に優先する。本明細書において任意の参照を引用しても、このような参照が本発明に対する先行技術であるという承認ではない。
【0100】
他に示さない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で用いられる成分、細胞培養物、処置条件などの数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約、およそ(about)」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。従って、他に逆に示されない限り、数的なパラメーターは、近似であり、かつ本発明によって得られるべく探求される所望の特性に依存して変化し得る。他に示さない限り、一連の要素に先行する「少なくとも(at least)」という用語は、そのつながりにおけるあらゆる要素を指すことが理解されるべきである。当業者は、慣用的な実験以下を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識または確定することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されるものとする。
【0101】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の仕様および実行の考慮から当業者に明白である。本明細書および実施例は、例としてのみ解釈されるものとし、本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】図1Aは、A/A、A/TまたはT/T IFN−γ遺伝子型を有する個体由来の末梢血リンパ球(PBL)を比較する細胞溶解アッセイにおけるTGF−βの効果を示す。
【図1B】図1Bは、適合したLCL増殖をCTLが防止する能力に対するTGF−βの効果は、TGF−βの存在下でのCTL再刺激によって阻害されることを示す。
【図2】図2は、抗TGF−β抗体での処置が、リンパ増殖性疾患のヒトPBL重症複合免疫不全(hu PBL−SCID)マウスモデルにおいて、LPDからの死亡を妨げることを示す。
【図3】図3Aは、抗TGF−β抗体がインビボでTGF−βを中和することを示す。図3Bは、抗TGF−β抗体がLPDの頻度をhu PBL−SCIDモデルにおいて用量依存性の様式で減少させることを実証する。
【図4A】図4Aは、抗TGF−β抗体およびコントロールで処置したhu PBL−SCIDマウスにおける腫瘍のフローサイトメトリー分析を示す。
【図4B】図4Bは、抗TGF−β抗体およびコントロールで処置したhu PBL−SCIDマウス由来の脾臓のサイトメトリー解析を示す。これらのデータによって、コントロールのIgG処置したマウス由来の腫瘍および脾臓はヒトB細胞および極めて少ないCD8+T細胞を含んだが、抗TGF−β処置したhu PBL−SCIDマウスの腫瘍および脾臓には多数のCD8+T細胞が存在することが実証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物被験体におけるウイルス関連のリンパ増殖性障害の発症のリスクを処置、予防または軽減する方法であって、治療的に有効な量のTGF−βアンタゴニストを該被験体に対して投与する工程を包含し、該被験体がウイルス関連リンパ増殖性障害を有するか、またはそのリスクがある、方法。
【請求項2】
前記ウイルス関連の増殖性障害が、ヘルペスウイルス、HHV−8、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型レトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルスから選択されるウイルスに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス関連リンパ増殖性障害がエプスタイン−バーウイルス関連のリンパ増殖性障害である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス関連リンパ増殖性障害が移植後リンパ増殖性障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体がIFN−γの低プロデューサー遺伝子型を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体がIFN−γ遺伝子の+874位置でアデノシンを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記TGF−βアンタゴニストが、抗TGF−β抗体、抗TGF−βレセプター抗体、および可溶性TGF−βレセプターから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗TGF−β抗体または抗TGF−βレセプター抗体がヒト型またはヒト化型である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗TGF−β抗体がTGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3に特異的に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗TGF−β抗体がTGF−β1およびTGF−β2に特異的に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が1D11、またはそのヒトもしくはヒト化誘導体である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がTGF−β1に特異的に結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体がCAT192またはその誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が移植に起因するリスクがある、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記移植が、心臓、腎臓、肺、肝臓、角膜、骨髄、幹細胞、血管および島細胞の移植から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体が免疫不全に起因するリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が免疫抑制療法に起因するリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物被験体におけるウイルス感染に対してT細胞応答性を増強するための方法であって、該被験体に対してTGF−βアンタゴニストの治療上有効な量を投与する工程を包含し、該被験体がウイルス関連リンパ増殖障害を有するかまたはそのリスクがある、方法。
【請求項19】
前記ウイルス関連リンパ増殖性障害が、ヘルペスウイルス、HHV−8、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、C型レトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルスから選択されるウイルスに関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルス関連リンパ増殖性障害がヘルペスウイルス関連のリンパ増殖性障害である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス関連増殖性障害がEBV関連リンパ増殖性障害である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記EBV関連リンパ増殖性障害が、原発性CNSリンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、T細胞リンパ腫、X連鎖性リンパ増殖性障害、チェディアック−東症候群およびホジキンリンパ腫から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルス関連リンパ増殖性障害がHIV関連リンパ増殖性障害である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ウイルス関連リンパ増殖性障害に対するT細胞応答性を増強するための方法であって、TGF−βアンタゴニストの治療上有効な量をそれを必要とする哺乳動物被験体に対して投与してそれによって異常な細胞増殖を軽減する工程を包含する、方法。
【請求項25】
低IFN−γレベルに関連するウイルス関連リンパ増殖性障害を処置する方法であって、治療上有効な量のTGF−βアンタゴニストをそれを必要とする哺乳動物被験体に対して投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
高TGF−βレベルに関連するウイルス関連リンパ増殖性障害を処置する方法であって、治療上有効な量のTGF−βアンタゴニストをそれを必要とする哺乳動物被験体に対して投与する工程を包含する、方法。
【請求項27】
ウイルス関連リンパ増殖性障害の発症のリスクを処置、予防または軽減するためにTGF−βアンタゴニストの投与のための候補被験体を同定する方法であって、ある被験体がIFN−γの低プロデューサー遺伝子型を有するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【請求項28】
前記被験体がIFN−γの低プロデューサー遺伝子型についてホモ接合性である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がIFN−γの低プロデューサー遺伝子型についてヘテロ接合性である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記被験体がIFN−γ遺伝子の+874位置でアデノシンを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記被験体が、ウイルス関連リンパ増殖性障害のリスクがある、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体がウイルス関連リンパ増殖性障害を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
ウイルス関連リンパ増殖性障害の発症のリスクを処置、予防または軽減するためにTGF−βアンタゴニストの投与のための候補被験体を同定する方法であって、ある被験体が低IFN−γレベルを有するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【請求項34】
ウイルス関連リンパ増殖性障害を処置するためにTGF−βアンタゴニストの投与のための候補被験体を選択する方法であって、ある被験体がIFN−γの低プロデューサー遺伝子型を有するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記被験体がIFN−γ遺伝子の+874位置でアデノシンを有するか否かを決定する工程をさらに包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ウイルス関連リンパ増殖性障害を処置するためにTGF−βアンタゴニストの投与のための候補を選択する方法であって、被験体が低IFN−γレベルを有するか否かを決定する工程を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2008−515983(P2008−515983A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536827(P2007−536827)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036613
【国際公開番号】WO2006/044433
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】