説明

ウインチ及びこれを含む自律移動装置

【課題】ウインチ及びこれを含む自律移動装置を提供する。
【解決手段】本発明によるウインチは、駆動モーターと、前記駆動モーターから駆動力の伝達を受けて回転する駆動軸と、前記駆動軸により回転しながら前記駆動軸に沿って移動可能に前記駆動軸上に設けられ、その長さ方向の端部の外周面には第1ねじ部が形成されたワイヤー・ドラムと、前記駆動軸と平行に配置され、前記駆動軸と対向する側面には前記駆動軸の長さ方向に延伸され、前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部が形成されたガイド部と、を含み、前記ワイヤー・ドラムは、前記ワイヤー・ドラムの1回転当たりの巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さが等しくなるように、前記ガイド部に沿って移動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチ及びこれを含む自律移動装置に関し、より詳細には、巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さに対する精密な制御が可能に構成されたウインチ及びこれを含む自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、船体ブロック内部で溶接または切断のような作業を自動で行うために、作業ロボットが搭載された自律移動装置が使用されている。自律移動装置では、ロボットを搭載できるプラットフォームが、複数のワイヤーを使用して船体ブロック内部を移動するように動作する。
【0003】
ここでプラットフォームは、プラットフォームに設けられたウインチが、船体ブロックの内壁面に結合されているワイヤーを巻き取るか又は繰り出す動作を繰り返して行うことにより、船体ブロック内部で自由に移動することができる。さらにプラットフォームは、ウインチにより巻き取られるか又は繰り出されるワイヤーの長さを精密に制御することにより、船体ブロック内部の所望する位置へ移動することができる。
【0004】
しかし、通常使用されるウインチは、単にモーターでドラムを回転させてワイヤーを巻き取るか又は繰り出すように動作する。つまり、通常使用されているウインチは、モーターのon/off制御のみによりワイヤーを巻き取るか又は繰り出すように動作する。よって、ウインチにより巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さに対する精密な制御が困難であった。
【0005】
また、通常のワイヤー・ウインチは整列巻機能がないため、ワイヤーが重なって巻き取られることがある。このように、ワイヤーが重なって巻き取られる場合、ワイヤーをワイヤー・ウインチに一回り巻回すためのモーターの回転量が変わることになる。よって、モーターの回転量に対比させてワイヤーの巻き取られる長さを定義することができなく、精密な制御が困難であるという問題があった。
【0006】
また、通常のワイヤー・ウインチはワイヤーが重なって巻き取られることにより、ワイヤーの吐出位置が変わることになる。これにより、ワイヤー・ウインチの精密な制御のためのワイヤーの吐出位置を定義することが困難であるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、ワイヤーの長さを精密に制御可能であるように構成されたウインチ及びこれを含む自律移動装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ワイヤーがワイヤー・ドラムに巻き取られるか又はワイヤー・ドラムから繰り出される位置を一定に維持するように構成されたウインチ及びこれを含む自律移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために本発明の一側面によれば、駆動モーターと、前記駆動モーターからの駆動力の伝達を受けて回転する駆動軸と、前記駆動軸により回転しながら前記駆動軸に沿って移動可能に前記駆動軸上に設けられ、その長さ方向の端部の外周面に第1ねじ部が形成されたワイヤー・ドラムと、前記駆動軸と平行に配置され、前記駆動軸と対向する側面に前記駆動軸の長さ方向に延伸され、前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部が形成されるガイド部と、を含み、前記ワイヤー・ドラムは、前記ワイヤー・ドラムの1回転当たりの巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さが等しくなるように前記ガイド部に沿って移動することを特徴とするウインチが提供される。
【0010】
前記ワイヤー・ドラムが前記ガイド部に沿って移動するとき、前記ガイド部の長さ方向の所定位置でワイヤーが前記ワイヤー・ドラムに巻き取られるか、又は、前記ワイヤー・ドラムから繰り出され始めるようにすることができる。
【0011】
前記ウインチには、前記ガイド部の長さ方向に対して垂直の方向に向いているワイヤー吐出口が形成され、前記ワイヤー・ドラムが前記ガイド部に沿って移動するとき、前記ワイヤー吐出口の中心位置でワイヤーが前記ワイヤー・ドラムに巻き取られるか、又は、前記ワイヤー・ドラムから繰り出され始めるようにすることができる。
【0012】
前記ワイヤー・ドラム及び前記ワイヤー吐出口の間に配置され、前記ワイヤー吐出口を通るワイヤーが前記ワイヤー吐出口の中心を通るように支持する支持ローラーをさらに含むことができる。
【0013】
前記支持ローラーにより支持されるワイヤーが前記支持ローラーから外れることを防止するために、前記支持ローラーの外周縁に接して配置され、前記支持ローラーの回転軸と平行な回転軸を備えた補助ローラーをさらに含むことができる。
【0014】
前記支持ローラーにより支持されるワイヤーの張力を測定するために、前記支持ローラーに接して配置されるロード・セル(load cell)をさらに含むことができる。
【0015】
前記駆動軸はその長さ方向に溝が延長形成されたボール・スプライン軸であり、前記ワイヤー・ドラムの内側には前記溝に挿入されるボールを備えたボール・スプライン・ナットが形成されることができる。
【0016】
前記ワイヤー・ドラムの第1ねじ部は、前記ワイヤー・ドラムの長さ方向の両側端部に形成されることが可能である。
【0017】
前記駆動モーターの回転量を測定するために、前記駆動モーターに設けられる第1エンコーダと、前記ワイヤー・ドラムの回転量を測定するために、前記駆動軸の端部に設けられる第2エンコーダと、前記第1エンコーダにより測定された前記駆動モーターの回転量及び前記第2エンコーダにより測定された前記ワイヤー・ドラムの回転量を受信し、測定された前記駆動モーターの回転量に対する前記ワイヤー・ドラムの回転量の比が予め決められた値と差がある場合、さらに前記ワイヤー・ドラムを回転させてその差を補うように前記駆動モーターを回転させる制御部と、をさらに含むことができる。
【0018】
前記ワイヤー・ドラムは、前記ワイヤー・ドラムに巻き取られるワイヤーが整列巻された状態で巻き取られるように、前記ワイヤー・ドラムの外周面に螺旋状に連続するガイド溝を備えることができる。
【0019】
前記駆動軸と平行に配置され、前記ワイヤー・ドラムに巻き取られたワイヤーを前記ワイヤー・ドラムの中心側へ押すピンチ・ローラーをさらに含むことができる。
【0020】
本発明の他の側面によれば、一定の作業空間で移動可能な自律移動装置であって、前記作業空間の内部に位置する移動プラットフォームと、前記移動プラットフォームに設けられる前記ウインチと、一端が前記作業空間を規定する支持体に結合され、他端が前記ウインチに結合されるワイヤーをと、含む自律移動装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によれば、ワイヤーが整列巻された状態で順次ワイヤー・ドラムに巻き取られるか、又は、ワイヤー・ドラムから順次繰り出されるように、ワイヤー・ドラムがガイド部に沿って回転しながら移動することにより、ワイヤー・ドラムの1回転当たりの巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さが等しくなり、ワイヤーの長さに対する精密な制御が可能となる。
【0022】
また、ウインチのワイヤー・ドラムがガイド部に沿って回転しながら移動することにより、ワイヤーを巻き取るか、又は、繰り出す過程にて常にワイヤーの吐出位置が一定に維持されることができる。
【0023】
また、駆動モーターの回転量を測定する第1エンコーダとワイヤー・ドラムの回転量を測定する第2エンコーダとを用いて駆動モーターを制御することにより、ワイヤーの長さに対する精密な制御が可能となる。
【0024】
本発明の他の側面によれば、巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さに対する精密な制御が可能なウインチを含む自律移動装置は、作業空間内の所望する位置に正確に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係るウインチを含む自律移動装置を概略的に示す図面である。
【図2】本発明の一実施例に係るウインチを後方側から見た斜視図である。
【図3】図2のI−Iに沿った断面図である。
【図4】図3のII−IIに沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るウインチの平面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るウインチの動作状態を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るウインチの第1エンコーダ、第2エンコーダ、制御部及び駆動モーターの関係を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面に基づいて詳細に説明するが、添付図面に基づいて説明することにおいて、同一または対応する構成要素は同一の図面番号を付し、これについての重複説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施例に係るウインチを含む自律移動装置を概略的に示す図面である。前記自律移動装置100は、船体ブロックの内部のように一定の作業空間107内で自由に移動する。
【0028】
図1を参照すると、自律移動装置100は、移動プラットフォーム105、ウインチ110及びワイヤー92を含む。移動プラットフォーム105は、移動中に作業空間107の内部に位置する。移動プラットフォーム105の上側には、溶接、切断及び塗装のような作業を行う作業装置106を移動プラットフォーム105の長さ方向へ移動可能に搭載することができる。また、移動プラットフォーム105の下側には、ブラスティング及びグリット収去のような作業を行う作業装置を移動プラットフォーム105の長さ方向へ移動可能に搭載することができる。
【0029】
移動プラットフォーム105には、複数のウインチ110が設けられる。ウインチ110は、一端が作業空間107を規定する支持体108に結合されたワイヤー92の他端に結合される。ここで、作業空間を規定する支持体とは、例えば船体ブロックを区画する隔壁のようなものを意味し、それ以外にも様々な形態の支持体が存在可能である。
【0030】
このように構成された自律移動装置100は、ウインチ110を使用して、ウインチ110に結合されたワイヤー92を巻き取るか又は繰り出すことにより、移動プラットフォーム105が作業空間107の内部を自由に移動することができるように動作する。
【0031】
ここで、本実施例によるウインチ110は、巻き取り、又は、繰り出されるワイヤー92の長さを精密に調整することができるように構成される。これにより、自律移動装置100は、移動プラットフォーム105が作業空間107の所望する位置に精密に移動するように動作する。
【0032】
以下、本実施例によるウインチについて詳細に説明する。図2は、本発明の一実施例に係るウインチを後方側から見た斜視図であり、図3は、図2のI−Iに沿った断面図であり、図4は、図3のII−IIに沿った断面図であり、図5は、本発明の一実施例に係るウインチの平面図である。
【0033】
図2を参照すると、本実施例に係るウインチは、駆動モーター10、駆動軸30、ワイヤー・ドラム50及びガイド部70を含む。
【0034】
前記駆動モーター10は、後述する駆動軸を回転させるための駆動力を提供する。図2を参照すると、前記駆動モーター10は減速機12及びモーターブレーキ14に結合される。但し、前記駆動モーター10に結合される減速機及びモーターブレーキは選択的に適用することができる。
【0035】
前記駆動モーター10は支持フレーム20に設けられる。
本実施例において支持フレームとは、駆動モーター10のような構成を支持するための支持体であって、移動プラットフォーム105(図1参照)に設けられる。支持フレーム20には駆動モーター10から駆動力の伝達を受けて回転する駆動軸30が設けられる。
【0036】
前記駆動モーター10の駆動力を駆動軸30に伝達するために駆動モーター10の一端部にはモーターギア18が設けられ、前記駆動軸30の一端部には前記モーターギア18と噛み合うドラムギア38が設けられる。
【0037】
図2を参照すると、前記駆動軸30にワイヤー・ドラム50が設けられる。前記ワイヤー・ドラム50はワイヤーを巻き取るための構成であって、円筒形状を有する。本実施例においてワイヤー・ドラム50は、駆動軸30により回転しながら駆動軸30に沿って移動可能に駆動軸30上に設けられる。
【0038】
このために、駆動軸30は、図3及び図4に示すようにその長さ方向に溝34が延伸されるように形成されたボール・スプライン軸であり、ワイヤー・ドラム50の内側には溝34に挿入されるボール54を備えたボール・スプライン・ナット52が形成されてもよい。
【0039】
ここで、ボール54は、図4から分かるように駆動軸30が回転するとき、溝34にかかる。これにより、ボール・スプライン・ナット52を含むワイヤー・ドラム50は、駆動軸30とともに回転することができる。
【0040】
また、ボール54は、図3から分かるように、溝34に沿って駆動軸30の長さ方向へ転がり移動する。これにより、ボール・スプライン・ナット52を含むワイヤー・ドラム50は駆動軸30の長さ方向へ移動することができる。
【0041】
但し、本実施例では、ワイヤー・ドラムが駆動軸により回転しながら駆動軸に沿って移動するために、駆動軸がボール・スプライン軸であり、ワイヤー・ドラムの内側にボール・スプライン・ナットが形成されていると説明したが、これは例示に過ぎず、ワイヤー・ドラムが駆動軸により回転しながら駆動軸に沿って移動可能な様々なメカニズムを用いることができる。
【0042】
本実施例においてワイヤー・ドラム50は、その長さ方向の両側端部の外周面に第1ねじ部56が形成される。第1ねじ部56は、後述するガイド部70に形成されている第2ねじ部76と噛み合う。
【0043】
但し、第1ねじ部56が必ずしもワイヤー・ドラム50の両側端部に形成される必要はなく、ワイヤー・ドラム50の一端部に形成されてもよい。
【0044】
図3を参照すると、ワイヤー・ドラム50は、ワイヤー・ドラム50に巻き取られるワイヤー92に接する外周面上に螺旋状に連続して形成されたガイド溝58を備える。このようなガイド溝58は、ワイヤー・ドラム50がワイヤーの巻き取られる方向に回転しながら後述するガイド部に沿って移動するとき、ワイヤー・ドラム50に整列巻された状態で巻き取られるようにガイドする。
【0045】
本実施例では、駆動軸30と平行に配置されたピンチ・ローラー90をさらに含む。図5を参照すると、ピンチ・ローラー90は、支持フレーム20に設けられる。ピンチ・ローラー90は、ワイヤー・ドラム50に巻き取られたワイヤー92をワイヤー・ドラム50の中心側へ押す。
【0046】
図2及び図3を参照すると、前記駆動軸30と対向する側面には、前記駆動軸30と平行に配置されるガイド部70が形成される。前記ガイド部70は前記支持フレーム20と一体に形成されるが、別に製作して配置してもよい。
【0047】
前記ガイド部70は、駆動軸30と対向する側面に、駆動軸30の長さ方向に延伸される第2ねじ部76を備える。図3を参照すると、前記第2ねじ部76は第1ねじ部56と噛み合う。これにより、ワイヤー・ドラム50は回転しながらガイド部70に沿って移動することができる。
【0048】
この場合、前記ワイヤー・ドラム50は、ワイヤー92が整列巻された状態で順次ワイヤー・ドラム50に巻き取られるか、又は、ワイヤー・ドラム50から順次繰り出されるように、ガイド部70に沿って回転しながらねじ移動する。これにより、前記ワイヤー・ドラム50の1回転当たりの巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さは等しくなる。
【0049】
この場合、第1ねじ部56及び第2ねじ部76にそれぞれ形成されたねじ山は所定のピッチ(pitch)を有する。これは、ワイヤー・ドラム50が1回転するとき、ワイヤー・ドラム50がガイド部70に沿って移動する距離が一定に維持されるということを意味する。
【0050】
これにより、前記ワイヤー・ドラム50が前記ガイド部70に沿って移動するとき、前記ガイド部70の長さ方向の所定位置でワイヤー92が前記ワイヤー・ドラム50に巻き取られ始めるか、又は、前記ワイヤー・ドラム50から繰り出され始める。
【0051】
これに関連して、本実施例に係るウインチ110には、図2に示されたように、前記ガイド部70の長さ方向に対して垂直の方向に向いているワイヤー吐出口21が形成される。ワイヤー吐出口21は支持フレーム20の一部を加工することにより形成することができる。
【0052】
本実施例に係るウインチ110は、図3から分かるように、前記ワイヤー・ドラム50が前記ガイド部70に沿って移動するとき、ワイヤー吐出口の中心位置(M)でワイヤー92がワイヤー・ドラム50に巻き取られ始めるか、又は、ワイヤー・ドラム50から繰り出され始めるように動作する。
【0053】
ここで、ワイヤー吐出口の中心位置とは、ワイヤー吐出口の中心を通過し、ガイド部の長さ方向に対して垂直の平面とガイド部とが接する位置を意味し、図3ではMと表示される。
【0054】
本実施例においてのウインチ110は、ワイヤー吐出口21及びワイヤー・ドラム50の間に配置される支持ローラー96をさらに含む。支持ローラー96は、ワイヤー92がワイヤー吐出口21の中心を通るように支持する。支持ローラー96は、ローラー支持部95に回転可能に設けられ、ローラー支持部95の端部は支持フレーム20に設けられる。
【0055】
本実施例においてウインチ110は、支持ローラー96の回転軸と平行な回転軸を有した補助ローラー97をさらに含む。補助ローラー97は、支持ローラー96により支持されるワイヤー92が支持ローラー96から外れることを防止する。補助ローラー97は、支持ローラー96の外周縁と接するか隣接して配置され、ローラー支持部95に回転可能に設けられる。
【0056】
図5を参照すると、本実施例においてウインチ110は、支持ローラー96と接して配置されるロード・セル91をさらに含む。ロード・セル91は、支持ローラー96により支持されるワイヤー92の張力を測定するためのものであって、支持ローラー96が設けられたローラー支持部95の端部に設けられる。
【0057】
支持ローラー96により支持されるワイヤーに張力がかかると、ワイヤーにより支持ローラー96がロード・セル91側に荷重を加えることになる。この場合、ロード・セル91に加えられた荷重を介してワイヤーの張力を測定することになる。
【0058】
図6は、本発明の一実施例に係るウインチの動作状態を説明するための平面図である。以下では、上述した本発明の一実施例に係るウインチの動作過程を図2、図5及び図6を参照して説明する。
【0059】
先ず、図2及び図5を参照すると、駆動モーター10によりワイヤー・ドラム50がワイヤーを繰り出す方向に回転する場合、ワイヤー・ドラム50はワイヤー・ドラム50の両側端部に形成された第1ねじ部56がガイド部70の側面に形成された第2ねじ部76と噛み合いながら駆動軸30の右側方向へ移動することになる。
【0060】
この場合、前記ワイヤー・ドラム50が前記駆動軸30の右側方向へ移動すると同時にワイヤー・ドラム50に巻き取られたワイヤー92がワイヤー・ドラム50から順次繰り出される。
【0061】
そして、ワイヤー・ドラム50から繰り出されるワイヤー92は支持ローラー96により支持されてワイヤー吐出口21を介して外部に移送される。
【0062】
その後、ワイヤー・ドラム50が駆動軸30に沿って、図6に示す位置まで移動する。このとき、ワイヤーを継続的に繰り出す必要がある場合、駆動モーターは継続的に同じ方向に回転しながらワイヤー・ドラム50を回転させる。これにより、ワイヤー・ドラム50は継続的に右側へ移動しながらワイヤー・ドラム50に巻き取られたワイヤー92を順次繰り出すことになる。
【0063】
しかし、ワイヤーを巻き取る必要がある場合には、駆動モーターは反対方向に回転することになり、これにより、ワイヤー・ドラム50は駆動軸30の左側方向へ移動することになる。この場合、前記ワイヤー・ドラム50が前記駆動軸30の左側方向へ移動すると同時にウインチの外部に移送されたワイヤーがワイヤー・ドラム50に整列巻された形態で巻き取られる。
【0064】
ここで、本実施例に係るウインチ110は、前記ガイド部70の長さ方向の所定位置であるワイヤー吐出口21の中心位置(M)でワイヤー92が前記ワイヤー・ドラム50に巻き取られ始めるか、又は、前記ワイヤー・ドラム50から繰り出され始めるように動作する。これにより、本実施例に係るウインチはワイヤーを巻き取るか又は繰り出す過程で、常にワイヤーが吐出される位置を一定に維持することができる。
【0065】
また、本実施例においてウインチ110は、ワイヤー・ドラム50の1回転当たりのワイヤー・ドラム50に巻き取られるか、又は、ワイヤー・ドラム50から繰り出されるワイヤーの長さが等しくなるように動作する。これにより、本発明の一実施例に係るウインチは、ワイヤー・ドラム50に巻き取られるか、又は、ワイヤー・ドラム50から繰り出されるワイヤーの長さを精密に制御することができる。
【0066】
一方、本実施例において、ワイヤー・ドラム50が1回転する際に巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さは等しい。これにより、所定の長さのワイヤーを巻き取るか又は繰り出すためには、回転すべきワイヤー・ドラム50の回転量を予め決めることができる。
【0067】
これに関連して、ワイヤー・ドラム50に駆動力を伝達する駆動モーター10は、ギアを介してワイヤー・ドラムを回転させる駆動軸30に連結される。ここで、駆動モーター10と駆動軸30とを連結するギアのギア比により、駆動モーター10の1回転当たりのワイヤー・ドラム50の回転量を予め決めることができる。
【0068】
この点を考慮すると、所定長さのワイヤーを巻き取るか又は繰り出すための駆動モーター10の回転量に対するワイヤー・ドラム50の回転量の比は、ウインチの設計過程で予め決めることができる。例えば、ワイヤー5mを巻き取るためには駆動モーターが100回転し、ワイヤー・ドラムが10回転するようにウインチが設計された場合、駆動モーターの回転量に対するワイヤー・ドラムの回転量の比は、10/100(=1/10)と予め決めることができる。
【0069】
しかし、ウインチの製造過程で製造誤差が発生したり、ウインチを使用する過程で駆動モーターと駆動軸とを連結するギアに摩耗が発生したりするなど様々な原因により、駆動モーターの回転量に対するワイヤー・ドラムの回転量の比について、予め決められた値と差が発生することがある。
【0070】
これを解決するために、本発明の一実施例に係るウインチは、2つのエンコーダ及び制御部をさらに含む。図7は、本発明の一実施例に係るウインチにさらに含まれた第1エンコーダ16、第2エンコーダ86及び制御部80の関係を示す概略的な図面である。
【0071】
より詳細に、図2及び図7を参照すると、駆動モーター10には、その駆動モーター10の回転量を測定するための第1エンコーダ16が設けられ、駆動軸30の他端部には駆動軸30とともに回転するワイヤー・ドラム50の回転量を測定するための第2エンコーダ86が設けられる。
【0072】
制御部80は、支持フレーム20に設けられ、第1エンコーダ16及び第2エンコーダ86に隣接して配置することができ、また、支持フレーム20と分離して、第1エンコーダ16及び第2エンコーダ86から遠隔位置に配置することもできる。また、制御部80は、第1エンコーダ16及び第2エンコーダ86に有線あるいは無線で連結することも可能である。
【0073】
制御部80は、例えば所定の長さのワイヤーを巻き取るか又は繰り出すために駆動モーター10が動作してワイヤー・ドラム50が回転すると、第1エンコーダ16から駆動モーター10の回転量に関するデータを受信し、第2エンコーダ86からワイヤー・ドラム50の回転量に関するデータを受信する。
【0074】
その後、前記制御部80は、第1エンコーダ16による測定値に対する第2エンコーダ86による測定値の比を予め決められた値と比べる。仮に、測定値の比が予め決められた値と差がある場合、制御部80はその差を補うために駆動モーター10を回転させ、さらにワイヤー・ドラム50を回転させる。
【0075】
より詳細に、本発明の一実施例に係るウインチがワイヤーを5m巻き取るために、駆動モーター10が100回回転し、ワイヤー・ドラム50が10回回転するように設計されていると仮定する。このとき、駆動モーター10の回転量に対するワイヤー・ドラム50の回転量の比は10/100と予め決めることができる。
【0076】
ここで、ワイヤーを5m巻き取るために、駆動モーター10が100回回転すると、第1エンコーダ16により測定された値は100回となる。このとき、第2エンコーダ86により測定されたワイヤー・ドラム50の回転量が9.5回であると、第1エンコーダ16及び第2エンコーダ86により測定された値の比は9.5/100となる。
【0077】
このように測定された値の比と予め決められた値とに差がある場合には、制御部80はその差を補うためにワイヤー・ドラム50を0.5回さらに回転させるように駆動モーター10を回転させる。
【0078】
したがって、本発明の一実施例に係るワイヤー・ドラム50は、最初9.5回回転した後にさらに0.5回回転して総10回を回転することにより、元の巻き取るべき5mのワイヤーを巻き取ることができる。
【0079】
このように、本発明の一実施例に係るウインチは、所定の長さのワイヤーを巻き取るか又は繰り出すという目的に対して、最初の駆動モーターにより回転するワイヤー・ドラムの回転量が足りない場合、さらに駆動モーターを動作させてワイヤー・ドラムを追加的に回転させることにより、結果的に当初の目的とした所定の長さにワイヤーを繰り出すか又は巻き取ることができ、ワイヤーの長さの精密な制御が可能となる。
【0080】
また、このように巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さに対する精密な制御が可能なウインチを含む自律移動装置は、作業空間内部の所望する位置へ正確に移動することができる。
【0081】
上記では、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同一の思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などにより他の実施例を容易に提案することができ、これも本発明の思想範囲に入るといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モーターと、
前記駆動モーターから駆動力の伝達を受けて回転する駆動軸と、
前記駆動軸により回転しながら前記駆動軸に沿って移動可能に前記駆動軸上に設けられ、その長さ方向の端部の外周面に第1ねじ部が形成されたワイヤー・ドラムと、
前記駆動軸と平行に配置され、前記駆動軸に対向する側面には前記駆動軸の長さ方向に延伸され、前記第1ねじ部と噛み合う第2ねじ部が形成されたガイド部と、を含み、
前記ワイヤー・ドラムは、前記ワイヤー・ドラムの1回転当たりの巻き取り、又は、繰り出されるワイヤーの長さが等しくなるように、前記ガイド部に沿って移動する
ことを特徴とするウインチ。
【請求項2】
前記ワイヤー・ドラムが前記ガイド部に沿って移動するとき、前記ガイド部の長さ方向の所定位置で、ワイヤーは、前記ワイヤー・ドラムに巻き取られ始めるか、又は、前記ワイヤー・ドラムから繰り出され始める
ことを特徴とする請求項1に記載のウインチ。
【請求項3】
前記ウインチには、前記ガイド部の長さ方向に対して垂直の方向を向いているワイヤー吐出口が形成され、
前記ワイヤー・ドラムが前記ガイド部に沿って移動するとき、前記ワイヤー吐出口の中心位置で、ワイヤーが、前記ワイヤー・ドラムに巻き取られ始めるか、又は、前記ワイヤー・ドラムから繰り出され始める
ことを特徴とする請求項2に記載のウインチ。
【請求項4】
前記ワイヤー・ドラム及び前記ワイヤー吐出口の間に配置され、
前記ワイヤー吐出口を通過するワイヤーが前記ワイヤー吐出口の中心を通るように支持する支持ローラーをさらに含む
ことを特徴とする請求項3に記載のウインチ。
【請求項5】
前記支持ローラーにより支持されるワイヤーが前記支持ローラーから外れることを防止するために、前記支持ローラーの外周縁に接するかまたは隣接して配置され、前記支持ローラーの回転軸と平行な回転軸を備えた補助ローラーをさらに含む
ことを特徴とする請求項4に記載のウインチ。
【請求項6】
前記支持ローラーにより支持されるワイヤーの張力を測定するために、前記支持ローラーに接して配置されるロード・セル(load cell)をさらに含む
ことを特徴とする請求項4に記載のウインチ。
【請求項7】
前記駆動軸は、その長さ方向に溝が延伸されるように形成されたボール・スプライン軸であり、
前記ワイヤー・ドラムの内側には前記溝に挿入されるボールを備えたボール・スプライン・ナットが形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のウインチ。
【請求項8】
前記ワイヤー・ドラムの第1ねじ部は、前記ワイヤー・ドラムの長さ方向の両側端部に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のウインチ。
【請求項9】
前記駆動モーターの回転量を測定するために、前記駆動モーターに設けられる第1エンコーダと、
前記ワイヤー・ドラムの回転量を測定するために、前記駆動軸の端部に設けられる第2エンコーダと、
前記第1エンコーダにより測定された前記駆動モーターの回転量及び前記第2エンコーダにより測定された前記ワイヤー・ドラムの回転量を受信し、測定された前記駆動モーターの回転量に対する前記ワイヤー・ドラムの回転量の比が予め決められた値と差がある場合、前記ワイヤー・ドラムをさらに回転させてその差を補うように前記駆動モーターを回転させる制御部と、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のウインチ。
【請求項10】
前記ワイヤー・ドラムは、
前記ワイヤー・ドラムに巻き取られるワイヤーが整列巻された状態で巻き取られるように、前記ワイヤー・ドラムの外周面に螺旋状に連続するガイド溝を備えた
ことを特徴とする請求項9に記載のウインチ。
【請求項11】
前記駆動軸と平行に配置され、前記ワイヤー・ドラムに巻き取られたワイヤーを前記ワイヤー・ドラムの中心側へ押すピンチ・ローラーをさらに含む
ことを特徴とする請求項10に記載のウインチ。
【請求項12】
所定の作業空間で移動可能な自律移動装置であって、
前記作業空間の内部に位置する移動プラットフォームと、
前記移動プラットフォームに設けられる請求項1から8のいずれか1項に記載のウインチと、
一端が前記作業空間を規定する支持体に結合され、他端が前記ウインチに結合されるワイヤーと、
を含む
ことを特徴とする自律移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−522707(P2012−522707A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504569(P2012−504569)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002019
【国際公開番号】WO2010/117162
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507375487)サムスン ヘヴィ インダストリーズ カンパニー リミテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Heavy Industries Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】1321−15 Seocho−Dong, Seocho−Ku, Seoul, Korea