説明

ウインドウ製造用ガラス組成物

【課題】本発明は、特にウインドウ製造用のガラス組成物である。
【解決手段】下記の着色剤を以下の割合:Fe(鉄の全量)=0.2〜0.45%、Se=2〜8ppm、CоO=0〜20ppm、NiO=0〜80ppmで含み、次の関係:0.7 < (200 × NiO) + (5000 × Se) + (6 × Fe3+) / (875 × CoO) + (24 × Fe2+) < 1.6を満たし、式中、各含有量はppmで表され、Fe3+はFeの形の第2鉄イオン、Fe2+はFeOの形の第1鉄イオンの含有量であり、3.85mmの厚さで測定した時、0.28〜0.5のレドックス値、光源Aにおける65%よりも大きな全光透過率及び1.25よりも大きな選択性を有するガラス組成物、およびそれから製造された板ガラスから構成されたウインドウである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色、灰色又は青銅色の色合いを有し、高い光透過率及び適度のエネルギー透過率を示す中性ガラスの製造を意図した、ソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラス組成物に関する。本発明は次のような用途に限定されるものではないけれども、自動車における使用、特に自動車のフロント部に配置される風防ガラスやサイドウインドウの形成を参照して特に詳細に記載することとする。
【背景技術】
【0002】
自動車産業用に意図されたウインドウにはいろいろな種類の要件が課されている。光学的性質に関して言えば、これらの要件は、風防ガラスの光透過率の場合におけるように規制によって管理されているか、さもなければ、例えばできる限り低いエネルギー透過率を呈示するガラスを使用することによって旅客室(パッセンジャー・コンパートメント)の内部の熱を制限するということが問題である場合、ユーザーの快適さに関係している。
【0003】
光透過率やエネルギー透過率に関する要件はさておいて、自動車のフロント部に配置されるウインドウは、とりわけ主波長や純度に関係した色に関して、自動車製造業者の審美的要望を満足させなければならない。
【0004】
青色、灰色又は青銅色のガラスを得るためには、ガラスマトリックスを製造するために溶融させることが意図されているバッチ材料に対して着色剤を添加することが知られており、また、着色剤は、例えば、鉄、セレン、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン又は希土類金属、例えばセリウムもしくはエルビウムである。
【0005】
しかしながら、波長領域や刺激純度における特定の色と特定の特性、例えば光透過率及びエネルギー透過率のごときファクターとが明確に規定された数値範囲内で組み合わさったガラスを得ることは、依然として困難である。なぜならば、着色剤を添加するかもしくはある着色剤を別のものと置換すること及び(又は)組成物中の着色剤の量もしくは相対的な比率を変更することによってガラスの色が変化させられるばかりでなく、そのような色の変化がガラスの光透過率や構造的品質に悪影響を及ぼすということが認められているからである。例えば、赤外線や紫外線の吸収を改善することを目的としてソーダ石灰ケイ酸塩組成物中の酸化鉄の含有量を増加させた場合、刺激純度の増加によって明らかになるのであるが、かなり緑色に着色されたガラスが得られることとなる。
【0006】
自動車産業の分野では、車体全体にウインドウを調和させて一体化させることを目的として、刺激純度をできる限り低くした中性の色合いをもったウインドウが現在の傾向となっている。
【0007】
酸化鉄、酸化コバルトならびにセレン及び(又は)ニッケル酸化物を含有する組成物から得た中性灰色のガラスは、すでに知られている。
【0008】
WO−A−96/04212は、0.3〜0.7%の全鉄(Fe)、3〜25ppmのコバルト(Cо)、0.5〜10ppmのセレン及び任意に酸化ニッケル及び(又は)酸化チタンを含む、自動車用の中性色のガラス組成物を開示している。得られるガラスは、6%未満の刺激純度を有している。
【0009】
EP−A−0653386には、自動車用に使用することができる灰色ガラスを得るための組成物が提案されている。このガラスは、0.3〜0.7%の酸化鉄、3〜50ppmの酸化コバルト及び1〜15ppmのセレンを含むか、さもなければ0.15〜0.6%の酸化鉄、15〜55ppmの酸化コバルト、25〜350ppmの酸化ニッケル及び任意に5ppmまでのセレンを含むことを特徴としている。
【0010】
EP−A−0677492は、光源C下において1.6%未満の純度を有する灰緑色のガラスを開示している。このガラスは、0.45〜0.95%の酸化鉄、8〜30ppmのコバルト及び1種類以上の下記の化合物:セレン(0〜10ppm)、MnO(0〜0.5%)及びNiO(0〜30ppm)を含有する組成物から得られる。
【0011】
EP−A−2738239は、0.25〜0.60%の鉄、10〜40ppmのコバルト及び5〜30ppmのセレンを含有するものであって、帯緑色から帯青色の間で色合いが変動する鮮やかな灰色のガラス組成物を開示している。このガラスは、6%を上回らないガラス刺激純度及び1.1よりも大きい選択性を有している。
【0012】
またWO−A−00/76928から、酸化鉄(0.3〜0.7%)、セレン(1〜15ppm)及び任意に酸化コバルト(0〜15ppm)を含有する組成物から中性灰色ガラスを得ることができることも知られている。このようにして製造されるガラスは、6未満の標準色シフトを呈示する。
【0013】
自動車の製造業者の場合、ウインドウについて増えつつある要求に直面している。したがって、彼らが希望していることは、着色ガラスであって、光学的及びエネルギー的性質を有することに加えて、車の外側にいる観察者が、例えば座席の布帛やダッシュボードのような車内部の構成要素についての色をそのまま修飾なしの形で視認できるような着色ガラスを入手可能となすことである。視認能力を低下させないことについてのガラスの性質は、欧州標準EN410:1938において規定されている《演色評価数》によって測定される。したがって、演色評価数が100に近い場合には、旅客室の内部にいる観察者によって視認される構成要素の色と室外にいる観察者によって視認されるその色との間において差異が存在しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第96/04212号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0653386号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0677492号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2738239号明細書
【特許文献5】国際公開第00/76928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、ソーダ石灰ケイ酸塩タイプのものであって、青色、灰色もしくは青銅色の色合いでごく中性色に着色されており、自動車のフロントウインドウ、特に風防ガラスとして使用するのに適合した光源Aにおける全光透過率(TLA)及び満足すべき全エネルギー透過率(T)を有しており、さらに高い演色評価数を有しているガラス組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、標準フロートガラスについて通常使用されているものと同様な酸化還元条件下でかつ同様なコストで、フロートガラス法を使用して金属浴の表面上でシートの形に成形することのできるガラス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的は、本発明によれば、ソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラス組成物であって、
下記の成分を以下に記載の重量限度内:
SiO 64〜75%
Al 0〜5%
0〜5%
CaO 5〜15%
MgO 0〜5%
NaO 10〜18%
O 0〜5%
で、かつ下記の着色剤を以下に記載の重量限度内:
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.45%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜20ppm
NiO 0〜80ppm
で含み、前記着色剤が、次の関係:
0.7 < (200 × NiO) + (5000 × Se) + (6 × Fe3+) / (875 × CoO) + (24 × Fe2+) < 1.6を満たし、式中、
NiO、Se、Fe3+、CоO及びFe2+の含有量は、ppmで表され、
Fe3+は、Feの形で表される第2鉄イオンの含有量であり、
Fe2+は、FeOの形で表される第1鉄イオンの含有量であり、
前記組成物が、3.85mmの厚さで測定した時、0.28〜0.5の間で変動するレドックス値、65%よりも大きな光源Aにおける全光透過率(TLA)及び1.25よりも大きな選択性(SE)を有していることを特徴とするガラス組成物によって達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の目的は、上記のガラス組成物によって達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の概念において、選択性SEは、3.85mmのガラス厚さの場合の、光源Aにおける全光透過率(TLA)とエネルギー透過率(T)の比率として規定される。
【0020】
同様に、レドックス値は、Feの形で表される合計鉄含有量に対するFeO含有量の比率として規定され、また、その際、含有量は、重量%で表されるものとする。
【0021】
以下において、R1は、次のような比率を意味する。
(200 × NiO) + (5000 × Se) + (6 × Fe2O3) / (875 × CoO) + (24 × FeO)
【0022】
本発明によるガラス組成物は、2%未満もしくはそれに等しく、好ましくは1%未満である刺激純度を有している。
【0023】
一般的に、このガラス組成物は、中性灰色であり、その色合いは、上記したような着色剤のそれぞれの含有量によってバランスされている。その主波長(λ)によって規定される色合いは、上記した限度内で着色剤を保持することによってコントロールが可能である。したがって、上記した着色剤の比率の値が、
0.8未満である時には、青色の色合い(約490〜500nmのλ)が得られ、
0.8〜1.25の間の時には、形成されるガラスは灰色であり、特定の色合いが備わっておらず、
1.25よりも大きい時には、青銅色の色合い(約540〜560nmのλ)が得られる。
【0024】
ここで強調されるべき点は、NiOの奏する役割であり、この化合物は、色合いを広範囲にわたって変更することを可能とし、しかし、その際、Se及びCоOが行い得るように、光透過率を顕著に低下させるようなことはない。さらに、使用されたNiO含有量は、低いままであり、NiOが、イオウ含有化合物、例えばガラス精錬剤として使用される硫酸塩と結合して硫化ニッケルビーズ(微小球)を形成する危険性を下げることができる。これらのビーズがガラスの内部に存在していると、強化処理工程を経た後で、ウインドウを太陽光に長期間にわったって曝露したときにそのウインドウが破損を被る傾向がある。
【0025】
本発明による第1のシリーズに属する好ましい組成物では、1%未満の純度及び少なくとも96の演色評価数を有する中性灰色のガラスを得ることが可能となる。これらの組成物は、下記の着色剤を次のような重量限度内:
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.3%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜20ppm
NiO 0〜5ppm
で含み、かつ0.4よりも大、好ましくは0.45よりも大であるレドックス値を有している。
【0026】
特に好ましいガラス組成物は、NiOを有しておらず、
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.25%
Se 4〜7ppm
CоO 10〜20ppm
を含んでいる。
【0027】
本発明による第2のシリーズに属する好ましい組成物では、1.3よりも大、有利には1.35よりも大である選択性をもったガラス組成物を得ることが可能となる。このような組成物では、旅客室内の人たちの熱的快適さと関係があり、かつ光の透過率に関係がある要求を満たす自動車用ウインドウを形成することが可能となる。これらの組成物は、下記の着色剤を次のような重量限度内:
Fe(鉄の全量) 0.35〜0.45%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜10ppm
NiO 0〜80ppm
で含み、かつ0.34よりも大きいかもしくはそれに等しいレドックス値を有している。
【0028】
特に好ましいガラス組成物は、
Fe(鉄の全量) 0.39〜0.45%
Se 3〜6ppm
CоO 0〜6ppm
NiO 0〜15ppm
を含んでいる。
【0029】
本発明によるガラス組成物では、94以上の、しばしば、96よりも大きい高い演色評価数を有しているガラスを形成することが可能である。この評価数は、EN410:1998に従って規定されるものであるが、供試ガラスのウインドウについて、参照光源(D65)によって照明された所定の色をもった対照見本からの色合いの変動を評価することが可能である。90よりも大きな評価数をもったガラスは、非常に良好な演色性を有していると考察される。
【0030】
本発明によるガラスにおいて、シリカは、次のような理由があるために、非常に狭い限度内で保持されるのが一般的である:約75%を上回ると、ガラスの粘度とそのガラスが不透明化する能力が大幅に増加するので、ガラスを溶融させ、溶融スズの浴の上で流動させることがより困難となり、一方、64%を下回ると、ガラスの耐加水分解性が迅速に低下する。
【0031】
ガラスにおけるこのような耐加水分解性の低下は、Alの導入によって少なくとも一部については埋め合わせることが可能であるけれども、この酸化物が粘度の増加に寄与し、可視部における透過率を低下させる。結果として、Alを非常に僅かな量で使用することしか想定されない。
【0032】
アルカリ金属酸化物NaO及びKOは、ガラスの溶融を促進する。KOは、約5%を上回ると組成物の高コスト化の問題が発生するので、約5%までで使用することができる。NaO及びKO含有量の合計は、重量%で表して、好ましくは13%に等しいかもしくはそれ以上である。
【0033】
アルカリ土類金属の酸化物は、本発明によるガラスの性質を得る際のキー的役割を果たす。
【0034】
酸化物MgOに関して、本発明の第1の態様に従うと、特に経済的な理由のため、その含有量は有利には2%よりも大である。
【0035】
もう1つの態様に従うと、MgOの含有量は、2%未満である。なぜなら、MgOの含有量を2%に制限した場合、FeO吸収帯における最大値をより長波長側にシフトさせる効果があるので、可視領域における透過率を損なうことなく赤外吸収性を増加させ得るということが立証されているからである。粘度において重要な役割を果たすところのMgOを完全に省略した場合には、少なくとも部分的に、NaO及び(又は)SiOの含有量を増加させることによって埋め合わせることができる。
【0036】
BaOをもって光透過率を増加させることが可能となり、また、本発明に従うと、4%未満の含有量で組成物に添加することができる。なぜなら、BaOは、ガラスの粘度に対する効果がMgO及びCaOに比較してかなり小規模であるからである。本発明の概念の中では、BaOの増加によって、アルカリ金属酸化物、MgO及び特にCaOが本質的に損なわれることとなる。そのために、BaOにおいて任意の顕著な増加が発生した場合、とりわけ低温において、ガラスの粘度の増加に寄与することが可能である。さらに加えて、高い割合でBaOを導入した場合、組成物のコストが実質的に増加する。本発明によるガラスは、BaOを含有していないことが好ましい。ガラスがBaOを含有するのであるならば、その含有量は、0.5〜3.5重量%であるのが好ましい。
【0037】
それぞれのアルカリ土類金属の含有量における変動についての上述の制限に従うことは別にして、所望とする透過特性を得るため、MgO、CaO及びBaOの重量%の合計を14%に等しいかもしくはそれ未満の数値に限定することが好ましい。
【0038】
本発明のガラス組成物は、少なくとも1種類の光学吸収剤、例えばCeO、TiO、V、WO、Laなどをさらに含むことができる。この(これらの)光学吸収剤の合計含有量は、組成物の1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満で維持するのが一般的である。
【0039】
また、本発明による組成物から得られるガラスは、ガラスの原材料中に含まれる不純物及び(又は)ガラスのバッチ中にリサイクルのカレットを導入すること及び(又は)精錬剤(SO、Cl、Sb、As)を使用することに由来するその他の構成成分を1%まで含有することができる。
【0040】
本発明による組成物から得られるガラスは、所望とする程度の酸化還元(レドックス)を達成可能となす条件下で製造することができ、しかし、レドックス値は、0.5未満で維持される。したがって、このようなガラスは、公知の精錬剤、例えば硫酸塩の存在において製造することができる。溶融を促進するため、また特に、これを機械的に有用なものとなすため、ガラスマトリックスは、有利には、logη=2であるような粘度ηに対応する温度、すなわち1500℃未満を有している。さらに好ましくは、特にフロートガラス法を使用してガラスリボンの形をしたガラスを得ることが望ましい場合、マトリックスは、ポイズで表される粘度、例えばlogη=3.5(Tlogη=3.5)に対応する温度、及び次式:
logη=3.5−Tliq>20℃、
そして好ましくは、次式:
logη=3.5−Tliq>50℃
を満足させる液相温度(Tliqで表される)を有している。
【実施例】
【0041】
本発明のいろいろな利点は、以下に記載するガラス組成物の実施例からより良好に認めることができるであろう。
【0042】
これらの実施例において、3.85mmの厚さにおいて測定した、下記の性質の数値を記載する。
・光源Aにおける全光透過率(TLA);
・ISO9050標準(Parry Moon, air mass 2)に従い295〜2100nmで積算した全エネルギー透過率(T);
・比TLA/Tによって規定される選択性(SE);
・光源D65下における主波長(λ);
・光源D65下における刺激純度(PD65);及び
・EN410:1998標準によって規定されるような全演色評価数(R)(構築に使用したガラス:窓ガラスの光及びソーラー特性の測定)。
【0043】
光透過率(TLA)、主波長(λ)及び純度(P)は、1931CIE(Commission Internationale de I'Eclairage)の熱量測定参照観察法を使用して計算した。
下記の表に記載のそれぞれの組成物を次のようなガラスマトリックスから調製した。なお、記載の含有量は、重量%で表されており、また、それぞれが、添加された着色剤の全含有量に関して調整するため、シリカでもって補正されている。
【0044】
SiO 71.00%
Al 0.70%
CaO 8.90%
MgO 3.80%
NaO 14.10%
O 0.10%
【0045】
記載したガラス組成物のすべて(同一のガラスマトリックスから製造されたもの)について、ポイズで表される粘度、例えばそれぞれlogη=2及びlogη=3.5、に対応する温度Tlogη=2及びTlogη=3.5ならびに液相温度Tliqは同じであり、下記の通りである。
logη=2 1410℃
logη=3.5 1100℃
liq 1060℃
【0046】
数字1〜40で示したガラス組成物は、本発明に従うものである。
【0047】
例41〜44の組成物は、比較例として記載したものである。例41〜43は、それぞれ実質的な量のCоO、NiO及びSeを含有し、かつしたがって本発明の組成物に比較してより低いR1比(例41)又はより高いR1比(例42及び43)を有している組成物を記載している。例44の組成物は、相対的に還元性の条件下(低いレドックス値)で調製したものである。
【0048】
本発明による例1〜40は、酸化鉄(Fe及びFeOの形)、CоO、NiO及びSe着色剤をR1比を満足させる比率で使用した場合、極く中性であり(純度≦2%)、高い演色評価数(≧94)及び高い選択性(≧1.25)を有し、かつ光学的制約を満足させるガラスを得ることができるということを示している。また、これらの例は、コバルト、ニッケル及びセレンの含有量の僅かな変動には非常に大きな影響力があり、ガラスの主波長を非常に繊細な形でコントロールすること、及び灰色の色合いを介して青色から青銅色までの範囲に及ぶ所望とする色合いを得ることを可能にするということも示している。
【0049】
例5、16、18、21、25及び34〜37は、上記した第1のシリーズの組成物に属するものであり、少なくとも96の演色評価数を有する極く中性の灰色ガラス(純度≦1%)を得ることを可能とする。
【0050】
例1、3、4、6、8〜12、15、20、22、26、28及び31〜32に記載した組成物は、上記した第2のシリーズの代表例であり、高い選択性(SE≧1.35)を有するガラスを製造することを可能とする。
【0051】
本発明による組成物から得られるガラスはどれも、板ガラスの製造に常用の技術と互換性を有している。スズ浴上で溶融ガラスをシート成形することによって得られるガラスリボンの厚さは、20mmまでであることができ、また、一般的に、この厚さは0.8〜10mmで変更することができる。
【0052】
ウインドウガラス(ガラスリボンを切断することによって得られる)は、特にそれを自動車用ウインドウとして使用する場合、引き続いて曲げ及び(又は)エナメル加工に供することが可能である。
【0053】
風防ガラスやサイドウインドウを製造する場合には、最初にガラスリボンを切断して、その厚さが一般に3〜5mmの間で変動するウインドウガラスを作製する。これらの厚さがある場合、ガラスにおいて良好な熱的快適性を保証することができる。問題の風防ガラスやサイドウインドウは、積層によって製造することができる。すなわち、それらの積層体は、複数枚の板ガラスから形成することができ、少なくとも1枚の板ガラスが本発明の組成物から得られたものである。好ましくは、これらのウインドウは、3.85mmの厚さの時、少なくとも70%の光源A下全光透過率(TLA)を有している少なくとも1枚の板ガラスを有している。
【0054】
本発明の範囲に包含されるウインドウは、前もって表面処理に供してもよく、さもなければ、例えば、有機系の被膜、例えば引裂け防止性を備えたポリウレタン系フィルムあるいはシーリングのためのフィルムを受理してもよい。
【0055】
また、これらのウインドウは、熱分解又は化学的気相成長法(CVD)又は真空蒸着法を使用して高温化学堆積によって得られる少なくとも1つの金属酸化物層が被覆されていてもよい。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドウを製造するためのソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラス組成物であって、
下記の成分を以下に記載の重量限度内:
SiO 64〜75%
Al 0〜5%
0〜5%
CaO 5〜15%
MgO 0〜5%
NaO 10〜18%
O 0〜5%
で、かつ下記の着色剤を以下に記載の重量限度内:
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.45%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜20ppm
NiO 0〜80ppm
で含み、前記着色剤が、次の関係:
0.7 < (200 × NiO) + (5000 × Se) + (6 × Fe3+) / (875 × CoO) + (24 × Fe2+) < 1.6を満たし、式中、
NiO、Se、Fe3+、CоO及びFe2+の含有量は、ppmで表され、
Fe3+は、Feの形で表される第2鉄イオンの含有量であり、
Fe2+は、FeOの形で表される第1鉄イオンの含有量であり、
前記組成物が、3.85mmの厚さで測定した時、0.28〜0.5の間で変動するレドックス値、65%よりも大きな光源Aにおける全光透過率(TLA)及び1.25よりも大きな選択性(SE)を有しており、また2%未満もしくはそれに等しい刺激純度を有していることを特徴とするガラス組成物。
【請求項2】
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.3%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜20ppm
NiO 0〜5ppm
を含み、かつ0.4よりも大であるレドックス値を有していることを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
1%未満の刺激純度を有していることを特徴とする請求項2に記載のガラス組成物。
【請求項4】
NiOを含まず、かつ
Fe(鉄の全量) 0.2〜0.25%
Se 4〜7ppm
CоO 10〜20ppm
を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス組成物。
【請求項5】
Fe(鉄の全量) 0.35〜0.45%
Se 2〜8ppm
CоO 0〜10ppm
NiO 0〜80ppm
を含み、かつ0.34よりも大きいかもしくはそれに等しいレドックス値を有していることを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項6】
Fe(鉄の全量) 0.39〜0.45%
Se 3〜6ppm
CоO 0〜6ppm
NiO 0〜15ppm
を含むことを特徴とする請求項5に記載のガラス組成物。
【請求項7】
少なくとも94の演色評価数(Ra)を有していることを特徴とする請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項8】
CeO、TiO、V、WO及びLaから選ばれた少なくとも1種類の光学吸収剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項9】
前記光学吸収剤の合計含有量が1重量%未満であることを特徴とする請求項8に記載のガラス組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラス組成物によってその化学組成が規定される少なくとも1枚の板ガラスを含むことを特徴とするウインドウ。
【請求項11】
前記板ガラスが、0.8〜10mmの範囲の厚さを有していることを特徴とする請求項10に記載のウインドウ。
【請求項12】
前記板ガラスが、3.85mmの厚さの時、少なくとも70%の、光源Aにおける全光透過率(TLA)を有していることを特徴とする請求項11に記載のウインドウ。

【公開番号】特開2010−150141(P2010−150141A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89648(P2010−89648)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2003−578291(P2003−578291)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】