ウェット飼料の製造方法
【課題】高水分の飼料材料を大きな密度で密封包装して高品質のウェット飼料を製造する。
【解決手段】高水分の飼料材料Aを圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムBを巻装し、所定日数貯蔵する。
【解決手段】高水分の飼料材料Aを圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムBを巻装し、所定日数貯蔵する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高水分を含有するウェット飼料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を含有したウエット飼料は、例えば特許文献1にて知られている。この従来のウエット飼料の製造方法としては、乾牧草類に加水し、乾牧草類が十分に吸水した後、これを密封容器に密に詰めて乳酸発酵させている。そしてこの密封容器としてはトランスバックを用いるとしているが、密封性を得るために、この容器には、ポリビニルやナイロン(登録商標)等のプラスチックフィルムからなる袋が用いられており、この袋内にホッパにて上記飼料材料を入れ密封するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−258259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のウェット飼料の製造方法では、気密性を有する袋状容器に飼料材料を投入密封するようにしているため、密封後の取り扱いが容易で、特にこれを搬送吊具内に入れて吊り下げ移動を行うことができ、搬送性、貯蔵性が良好であるという利点がある。
【0005】
しかしながら、密封容器が破れやすいプラスチックフィルムであることにより、これへの充填密度が150kg/m3とあまり高くできず、このため充填後の飼料内に多量の空気が残留してしまい、これによりカビが発生して発酵品質が安定しにくかった。そしてこの問題を解決するには、密封容器を閉じる前に、この中の空気をバキュームポンプで吸引しなければならず、このための工程が多くなってしまうという新たな問題が生じる。
【0006】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、ウェット飼料の材料を大きな密度で密封包装でき、極めて優れた品質のウェット飼料を得ることができるようにしたウェット飼料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのウェット飼料の製造方法は、高水分の飼料材料を圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムを巻装し、所定日数貯蔵する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飼料材料を圧密成形とストレッチフィルムの延伸力とにより大きな密度で包装でき、貯蔵の熟成時での飼料材料内への空気の侵入を少なくできてカビが発生することがなく、しかも乳酸、酢酸、総酸のそれぞれがともに多く生成されて優れたウェット飼料を得ることができる。また、これの製造工程においても、飼料材料を圧縮成形する工程と、圧縮成形された成形体に帯状フィルムを巻装する工程を一連の連続した作業工程で行うことができ、製造工程をライン化することができる。さらに、包装用材料にストレッチ性を有する帯状フィルムを用いたことにより、従来の1枚のプラスチックの袋を用いたものに比較して包装体としての強度を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すように、所定の形状、例えば立方体状に加圧成形した飼料材料Aを、これの周囲から帯状フィルム2を一部重ね合わせて巻き付け、さらには多層状に巻き付け、これの六面全周を帯状フィルムBにて巻装してウェット飼料Cを製造する。この帯状フィルムBはストレッチフィルムが用いられ、これを延伸しながら巻き付けることにより、上記立方体の飼料材料は帯状フィルムのストレッチ力にて加圧状態が保持される。その後所定の日数、例えば13〜40日間貯蔵してウェット飼料とする。上記飼料材料Aには、高水分のビール粕や豆腐粕等の食品副産物等に乾草や濃厚飼料を混合したものが用いられる。
【0010】
上記立方体状の飼料材料Aへの帯状フィルムBの巻装する方法の一例を図2以下に示す。
【0011】
図2から図11は荷体である上記飼料材料Aの周囲に帯状フィルムBを巻装する装置を示すもので、図中1はリング包装装置であり、このリング包装装置1は回転軸心を水平にしてフレーム2に回転自在に支持された回転リング3と、この回転リング3を回転駆動する回転駆動モータ4と、回転リング3の軸心に対して対称位置の2個所に設けられたフィルム供給機5a,5bと、回転リング3の軸心より下側で軸心方向に設けられた荷体及びフィルム用のコンベヤ機構6と、コンベヤ機構6上へ後述する加圧成形装置にて立方体状に加圧成形された飼料材料4を荷体として送り込む搬送コンベヤ8と、フィルム供給機5a,5bからコンベヤ機構6上にある飼料材料Aに対して供給されている帯状フィルムBを切断する切断装置10とから大略構成されている。
【0012】
そして回転リング3は回転駆動モータ4にてベルト11を介して回転するようになっている。またコンベヤ機構6は飼料材料Aを載置してこれを移動する荷体用ベルト6aと、この荷体用ベルト6aの両側に設けられてこれの下側に巻装された帯状フィルムBを飼料材料Aと同一方向に移動するフィルム用ベルト6b,6bとからなっている。フィルム用ベルト6b,6bの上側は荷体用ベルト6aの上面より低くなっていると共に、これの下側は荷体用ベルト6aの下側より低くなっていて、コンベヤ機構6の下側に巻装される帯状フィルムBはこの荷体用ベルト6aの下側下方に位置するフィルム用ベルト6b,6bに接触するようになっている。
【0013】
荷体用ベルト6aと2本のフィルム用ベルト6b,6bはそれぞれ図示しない駆動モータにて同一速度で走行駆動されるようになっているが、この両ベルト6aと6b,6bは互いに逆方向に走行駆動されるようになっている。これにより、荷体用ベルト6aの上側の走行方向と、フィルム用ベルト6b,6bの下側の走行方向とが常に同じで、かつ同一走行速度となっている。この両ベルト6a,6b,6bを駆動する両モータは正逆回転可能になっている。コンベヤ機構6の先端部は支持ローラ6cにて支持されている。
【0014】
フィルム供給機5a,5bはロール状の帯状フィルムBを支持するフィルム支持軸12と、2本の延伸ローラ13a,13bとからなり、フィルム支持軸12に支持されたロール状の帯状フィルムBは2本の延伸ローラ13a,13bを介して供給されるようになっている。このとき、2本の延伸ローラ13a,13bは帯状フィルムBの引き出しによって回転され、このときに両ローラ13a,13bに回転差が生じるようになっており、これにより、供給される帯状フィルムBには強い延伸力が作用されるようになっている。両延伸ローラ13a,13bは異なる径のプーリを介してベルト15にて連結されていて、同一方向に回転するようになっている。
【0015】
また上記両フィルム供給機5a,5bの少なくとも一方の出口側の延伸ローラ13bの出口の帯状フィルムBの幅方向両側に、帯状フィルムBの幅方向両側に対向する一対の絞りローラ16a,16bが、対向間隔を調整可能にして設けてある。
【0016】
切断装置10は、先端部がコンベヤ機構6の下側から回転リング3より外側へ移動するように回動可能にしたカッタアーム17と、このカッタアーム17の先端に設けたカッタ17aと、カッタ17aにて切断した帯状フィルムBの先端をチャックするチャッキング部18と、切断案内棒19とからなっている。チャッキング部18は互いに対向方向に回動するチャッキング刃18a,18bを有しており、帯状フィルムBの巻装中には左右に開いて帯状フィルムBと干渉しないようになっている。そして切断時にはこれが帯状フィルムB側へ突出動すると共に、チャッキング刃18a,18bが対向内側へ回動して図8、図11に示すように両チャッキング刃18a,18bにてチャックするようになっている。切断案内棒19は上記切断時に図8、図9、図10に示すように突出動して帯状フィルムBを切断しやすいようにこれを受けるようになっている。
【0017】
上記リング包装装置1のコンベヤ機構6の下流側には図2、図3に示すように、搬送方向に所定の間隔20をおいて設けられた搬送回転テーブル装置21が配置されている。この搬送回転テーブル装置21は搬送テーブル22と、この搬送テーブル22を垂直軸を中心にして水平方向に回転させる回転装置23とからなっている。
【0018】
搬送テーブル22は長い板部材24を搬送方向に多数無端状にしてチェンにて連結して駆動ローラ25と従動ローラ26に巻き掛けた搬送帯27と、この搬送帯27の搬送方向終端部に立設されたストッパ28とからなっている。そして上記搬送帯27の各板部材24には回転軸を搬送方向に対して45゜傾斜させて多数のコロローラ29が設けられてあり、搬送帯27にて搬送されてきた飼料材料Aがストッパ28に当接した状態で、このときの反発力がコロローラ29に伝わり、飼料材料Aを直角方向へ移動する力が作用するようになっている。ストッパ28の表面には多数のコロが設けてあり、ストッパ28に当接している飼料材料Aはストッパ28に当接された状態で、これの抵抗を受けることなく直角方向へ移動される。この構成の搬送テーブル22の部分は従来公知のもの(商品名:換太郎、東邦機械工業社製)が用いられる。30は搬送帯27を駆動する駆動モータである。
【0019】
上記搬送テーブル22は回転装置23に載置されており、リング包装装置1のコンベヤ機構6の走行方向に対して90゜にわたって回転できるようになっている。
【0020】
上記構成の帯状フィルム巻装装置の搬送コンベヤ8の上流側には、図12に示すような飼料材料Aを加圧成形する加圧成形装置31が配置されている。そしてこの加圧成形装置31は飼料材料Aを投入するホッパ32と、この飼料材料Aをホッパ32の下側に設けた成形枠33に向けて加圧板34をシリンダ装置35にて往復動させる加圧装置36とからなっている。上記成形枠33の開口端部には、この開口端を開閉する開閉板37が図示しない開閉装置にて開閉するようにして設けてある。
【0021】
上記構成の装置を用いたウェット飼料Cの製造方法を以下に説明する。
【0022】
図12において、開閉板37を閉じた状態にした加圧成形装置31のホッパ32より飼料材料Aを投入し、シリンダ装置35の伸縮動作により加圧板34を往復動してこの飼料材料Aを加圧する。
【0023】
上記飼料材料Aは、ビール粕とスーダン乾草、カカオ殻、それに豆腐粕等の食品副産物が用いられる。この実施例では、ビール粕とスーダン乾草とカカオ殻を用いた。
【0024】
上記加圧成形装置31では、ホッパ32より投入された飼料材料Aは成形枠33内に所定の密度に圧縮され、かつこの成形枠33に沿う形状、例えば立方体状に形成される。その後開閉板34を開けて、これを加圧板34により搬送コンベヤ8上に押し出す。
【0025】
搬送コンベヤ8上の飼料材料Aは、この搬送コンベヤ8にて図2から図11に示したフィルム巻装装置のリング包装装置1のコンベヤ機構6上へ搬入される。そしてこの飼料材料Aはコンベヤ機構6にて下流側へ搬送される。このとき、切断装置10は周回する帯状フィルムBと干渉しない位置へ移動しておく。そしてこの状態でリング包装装置1を作動させてコンベヤ機構6ごと飼料材料Aの周囲に帯状フィルムBを巻装する。帯状フィルムBは飼料材料Aの移動に従って延伸されながらこれにらせん状に巻装される。そしてコンベヤ機構6の下側部分に巻装された帯状フィルムBはフィルム用ベルト6b,6bの移動に従って飼料材料Aと同速で下流側へ移動していく。そしてこのコンベヤ機構6の下側部分に巻装された帯状フィルムBは、間隔20の位置で飼料材料Aがコンベヤ機構6の下流側へ外れたとき、帯状フィルムBもコンベヤ機構6から外れ、延伸された帯状フィルムBの復元力にて飼料材料Aに密に巻装される。飼料材料Aの移動に従ってこれの移動方向全長にわたって帯状フィルムBを巻装した状態で切断装置10を作動させて帯状フィルムBを切断する。このときの帯状フィルムBの先端はチャック部材18にてチャッキングされる(図8〜図11参照)。
【0026】
コンベヤ機構6から搬送された飼料材料Aは搬送回転テーブル装置21の搬送テーブル22上に移動し、搬送テーブル22の搬送帯27にてストッパ28に当接するまで搬送される。
【0027】
このとき、上記飼料材料Aがストッパ28に当接する以前に搬送テーブル22を回転装置23にて90゜回転する。この回転装置23による回転方向は、コロローラ29による移動方向がリング包装装置1のコンベヤ機構6の方へ向く方向に回転させる。
【0028】
この状態で搬送テーブル22の搬送帯27による搬送作用を続行すると、飼料材料Aはコロローラ29による反発力により移動されてリング包装装置1側へ逆走される。このとき、リング包装装置1のコンベヤ機構6を逆転させる。これにより、搬送テーブル22にて送り返された飼料材料Aは上記した順走の場合に対して水平方向に90゜回転された状態でコンベヤ機構6上を逆走され、この間にリング包装装置1を作動してこの飼料材料Aに再びらせん状に帯状フィルムBを巻装する。従って飼料材料Aの上下の両表面には図1に示すように、帯状フィルムBが上下の両面で交差して2重に巻装される。
【0029】
上記逆走による帯状フィルムBの巻装が終了した状態で帯状フィルムBを切断すると共に、コンベヤ機構6を順走させて飼料材料Aを下流側へ送る。そしてこの間に搬送テーブル22を元の姿勢に戻しておき、コンベヤ機構6からの飼料材料Aを受けてストッパ28に当接するまで搬送する。そしてさらに搬送帯27にて搬送を続行することにより飼料材料Aは側方へ払い出しされる。
【0030】
以下上記した作用を繰り返し行うことにより、コンベヤ機構6上に搬入される各飼料材料Aの上面と下面に帯状フィルムBが直行した状態で2重に巻装され、飼料材料Aの各面(六面)の全てに帯状フィルムBが巻装される。なお上記帯状フィルムBの巻装は2重に限るものではなく何重にしてもよい。
【0031】
次に、上記した本発明に係る製造方法と、背景技術にて示した従来の製造方法とを比較した試験結果を以下に示す。なお、以下において本発明方法を「ラップ方式」、従来方式を「バック方式」という。
【0032】
(1)試験方法
(イ)飼料材料:ビール粕、スーダン乾草、カカオ殻
(ロ)飼料材料の成分値:水分59.2%、ADF30.7%、NDF60.8%(乾物中)
(ハ)比較方法
バック方式:ポリエチレンの内袋に密封貯蔵
詰め込み量:350kg、見かけ比重:約0.4
ラップ方式:加圧成形機にて圧縮成形し、帯状フィルムを全周に巻装貯蔵
詰め込み量:750kg、見かけ比重:約0.55
【0033】
(2)試験結果
(イ)発酵品質の比較
【表1】
【0034】
(3)考察
ラップ方式は、バック方式に比較してウェット飼料の乳酸発酵において以下の差がみられた。
(イ)ラップ方式は、バック方式に比較して圧密度が高いため、詰め込み時の残存酸素量が少なく、また外気からの酸素の流入が少ないため乳酸発酵が促進される。上記試験では、有機酸含量に差がみられた。圧密後の有機酸含有量がバック方式より多いため、カビの発生を抑える効果が高くなると判断される。
(ロ)バック方式は、詰め込み時に袋内に炭酸ガスが発生するが、これが抜けた後は負圧になる傾向があり(ポリエチレン素材の内袋では酸素と炭酸ガスの透過性が異なるため負圧になりやすいと推定)、これにより外気からの酸素の流入が容易になり、カビの発生を促していると推定される。ラップ方式ではこのような負圧になることがなく、従って酸素の流入は少ないと判断される。上記の試験でもラップ方式の方がカビの発生はなかった。
(ハ)以上のことから、ラップ方式は、バック方式のように貯蔵中の内袋内に炭酸ガスが貯留しないため、製品の保管や運搬が容易である。
(ニ)また、品質の比較において、ラップ方式のものでは、貯蔵日数が多くなるに従って、飼料中の乳酸、酢酸、総酸の量がバック方式のものに比較して多くなり、飼料としての品質が良いことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明方法にて製造したウェット飼料を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本発明方法を実施する装置の一部を示す正面図である。
【図3】本発明方法を実施する装置の一部を示す平面図である。
【図4】図3のD−D矢視図である。
【図5】コンベヤ機構を概略的に示す斜視図である。
【図6】フィルム供給機を示す正面図である。
【図7】図6のE矢視図である。
【図8】切断装置を示す正面図である。
【図9】切断装置を示す側面図である。
【図10】チャッキング部を示す平面図である。
【図11】切断装置の作用説明図である。
【図12】本発明方法を実施する装置の他の一部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
A…飼料材料、B…帯状フィルム、1…リング包装装置、2…フレーム、3…回転リング、4…回転駆動モータ、5a,5b…フィルム供給機、6…コンベヤ機構、6a…荷体用ベルト、6b…フィルム用ベルト、6c…支持ローラ、7…荷体、8…搬送コンベヤ、9…フィルム、10…切断装置、11…ベルト、12…フィルム支持軸、13a,13b…フィルム延伸ローラ、15…ベルト、16a,16b…絞りローラ、17…カッタアーム、17a…カッタ、18…チャッキング部、20,20′…間隔、21…搬送回転テーブル装置、22…搬送テーブル、23…回転装置、24…板部材、25…駆動ローラ、26…従動ローラ、27…搬送帯、28…ストッパ、29…コロローラ、30…駆動モータ、31…加圧成形装置、32…ホッパ、33…成形枠、34…加圧板、35…シリンダ装置、36…加圧装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高水分を含有するウェット飼料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を含有したウエット飼料は、例えば特許文献1にて知られている。この従来のウエット飼料の製造方法としては、乾牧草類に加水し、乾牧草類が十分に吸水した後、これを密封容器に密に詰めて乳酸発酵させている。そしてこの密封容器としてはトランスバックを用いるとしているが、密封性を得るために、この容器には、ポリビニルやナイロン(登録商標)等のプラスチックフィルムからなる袋が用いられており、この袋内にホッパにて上記飼料材料を入れ密封するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−258259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のウェット飼料の製造方法では、気密性を有する袋状容器に飼料材料を投入密封するようにしているため、密封後の取り扱いが容易で、特にこれを搬送吊具内に入れて吊り下げ移動を行うことができ、搬送性、貯蔵性が良好であるという利点がある。
【0005】
しかしながら、密封容器が破れやすいプラスチックフィルムであることにより、これへの充填密度が150kg/m3とあまり高くできず、このため充填後の飼料内に多量の空気が残留してしまい、これによりカビが発生して発酵品質が安定しにくかった。そしてこの問題を解決するには、密封容器を閉じる前に、この中の空気をバキュームポンプで吸引しなければならず、このための工程が多くなってしまうという新たな問題が生じる。
【0006】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、ウェット飼料の材料を大きな密度で密封包装でき、極めて優れた品質のウェット飼料を得ることができるようにしたウェット飼料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのウェット飼料の製造方法は、高水分の飼料材料を圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムを巻装し、所定日数貯蔵する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飼料材料を圧密成形とストレッチフィルムの延伸力とにより大きな密度で包装でき、貯蔵の熟成時での飼料材料内への空気の侵入を少なくできてカビが発生することがなく、しかも乳酸、酢酸、総酸のそれぞれがともに多く生成されて優れたウェット飼料を得ることができる。また、これの製造工程においても、飼料材料を圧縮成形する工程と、圧縮成形された成形体に帯状フィルムを巻装する工程を一連の連続した作業工程で行うことができ、製造工程をライン化することができる。さらに、包装用材料にストレッチ性を有する帯状フィルムを用いたことにより、従来の1枚のプラスチックの袋を用いたものに比較して包装体としての強度を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すように、所定の形状、例えば立方体状に加圧成形した飼料材料Aを、これの周囲から帯状フィルム2を一部重ね合わせて巻き付け、さらには多層状に巻き付け、これの六面全周を帯状フィルムBにて巻装してウェット飼料Cを製造する。この帯状フィルムBはストレッチフィルムが用いられ、これを延伸しながら巻き付けることにより、上記立方体の飼料材料は帯状フィルムのストレッチ力にて加圧状態が保持される。その後所定の日数、例えば13〜40日間貯蔵してウェット飼料とする。上記飼料材料Aには、高水分のビール粕や豆腐粕等の食品副産物等に乾草や濃厚飼料を混合したものが用いられる。
【0010】
上記立方体状の飼料材料Aへの帯状フィルムBの巻装する方法の一例を図2以下に示す。
【0011】
図2から図11は荷体である上記飼料材料Aの周囲に帯状フィルムBを巻装する装置を示すもので、図中1はリング包装装置であり、このリング包装装置1は回転軸心を水平にしてフレーム2に回転自在に支持された回転リング3と、この回転リング3を回転駆動する回転駆動モータ4と、回転リング3の軸心に対して対称位置の2個所に設けられたフィルム供給機5a,5bと、回転リング3の軸心より下側で軸心方向に設けられた荷体及びフィルム用のコンベヤ機構6と、コンベヤ機構6上へ後述する加圧成形装置にて立方体状に加圧成形された飼料材料4を荷体として送り込む搬送コンベヤ8と、フィルム供給機5a,5bからコンベヤ機構6上にある飼料材料Aに対して供給されている帯状フィルムBを切断する切断装置10とから大略構成されている。
【0012】
そして回転リング3は回転駆動モータ4にてベルト11を介して回転するようになっている。またコンベヤ機構6は飼料材料Aを載置してこれを移動する荷体用ベルト6aと、この荷体用ベルト6aの両側に設けられてこれの下側に巻装された帯状フィルムBを飼料材料Aと同一方向に移動するフィルム用ベルト6b,6bとからなっている。フィルム用ベルト6b,6bの上側は荷体用ベルト6aの上面より低くなっていると共に、これの下側は荷体用ベルト6aの下側より低くなっていて、コンベヤ機構6の下側に巻装される帯状フィルムBはこの荷体用ベルト6aの下側下方に位置するフィルム用ベルト6b,6bに接触するようになっている。
【0013】
荷体用ベルト6aと2本のフィルム用ベルト6b,6bはそれぞれ図示しない駆動モータにて同一速度で走行駆動されるようになっているが、この両ベルト6aと6b,6bは互いに逆方向に走行駆動されるようになっている。これにより、荷体用ベルト6aの上側の走行方向と、フィルム用ベルト6b,6bの下側の走行方向とが常に同じで、かつ同一走行速度となっている。この両ベルト6a,6b,6bを駆動する両モータは正逆回転可能になっている。コンベヤ機構6の先端部は支持ローラ6cにて支持されている。
【0014】
フィルム供給機5a,5bはロール状の帯状フィルムBを支持するフィルム支持軸12と、2本の延伸ローラ13a,13bとからなり、フィルム支持軸12に支持されたロール状の帯状フィルムBは2本の延伸ローラ13a,13bを介して供給されるようになっている。このとき、2本の延伸ローラ13a,13bは帯状フィルムBの引き出しによって回転され、このときに両ローラ13a,13bに回転差が生じるようになっており、これにより、供給される帯状フィルムBには強い延伸力が作用されるようになっている。両延伸ローラ13a,13bは異なる径のプーリを介してベルト15にて連結されていて、同一方向に回転するようになっている。
【0015】
また上記両フィルム供給機5a,5bの少なくとも一方の出口側の延伸ローラ13bの出口の帯状フィルムBの幅方向両側に、帯状フィルムBの幅方向両側に対向する一対の絞りローラ16a,16bが、対向間隔を調整可能にして設けてある。
【0016】
切断装置10は、先端部がコンベヤ機構6の下側から回転リング3より外側へ移動するように回動可能にしたカッタアーム17と、このカッタアーム17の先端に設けたカッタ17aと、カッタ17aにて切断した帯状フィルムBの先端をチャックするチャッキング部18と、切断案内棒19とからなっている。チャッキング部18は互いに対向方向に回動するチャッキング刃18a,18bを有しており、帯状フィルムBの巻装中には左右に開いて帯状フィルムBと干渉しないようになっている。そして切断時にはこれが帯状フィルムB側へ突出動すると共に、チャッキング刃18a,18bが対向内側へ回動して図8、図11に示すように両チャッキング刃18a,18bにてチャックするようになっている。切断案内棒19は上記切断時に図8、図9、図10に示すように突出動して帯状フィルムBを切断しやすいようにこれを受けるようになっている。
【0017】
上記リング包装装置1のコンベヤ機構6の下流側には図2、図3に示すように、搬送方向に所定の間隔20をおいて設けられた搬送回転テーブル装置21が配置されている。この搬送回転テーブル装置21は搬送テーブル22と、この搬送テーブル22を垂直軸を中心にして水平方向に回転させる回転装置23とからなっている。
【0018】
搬送テーブル22は長い板部材24を搬送方向に多数無端状にしてチェンにて連結して駆動ローラ25と従動ローラ26に巻き掛けた搬送帯27と、この搬送帯27の搬送方向終端部に立設されたストッパ28とからなっている。そして上記搬送帯27の各板部材24には回転軸を搬送方向に対して45゜傾斜させて多数のコロローラ29が設けられてあり、搬送帯27にて搬送されてきた飼料材料Aがストッパ28に当接した状態で、このときの反発力がコロローラ29に伝わり、飼料材料Aを直角方向へ移動する力が作用するようになっている。ストッパ28の表面には多数のコロが設けてあり、ストッパ28に当接している飼料材料Aはストッパ28に当接された状態で、これの抵抗を受けることなく直角方向へ移動される。この構成の搬送テーブル22の部分は従来公知のもの(商品名:換太郎、東邦機械工業社製)が用いられる。30は搬送帯27を駆動する駆動モータである。
【0019】
上記搬送テーブル22は回転装置23に載置されており、リング包装装置1のコンベヤ機構6の走行方向に対して90゜にわたって回転できるようになっている。
【0020】
上記構成の帯状フィルム巻装装置の搬送コンベヤ8の上流側には、図12に示すような飼料材料Aを加圧成形する加圧成形装置31が配置されている。そしてこの加圧成形装置31は飼料材料Aを投入するホッパ32と、この飼料材料Aをホッパ32の下側に設けた成形枠33に向けて加圧板34をシリンダ装置35にて往復動させる加圧装置36とからなっている。上記成形枠33の開口端部には、この開口端を開閉する開閉板37が図示しない開閉装置にて開閉するようにして設けてある。
【0021】
上記構成の装置を用いたウェット飼料Cの製造方法を以下に説明する。
【0022】
図12において、開閉板37を閉じた状態にした加圧成形装置31のホッパ32より飼料材料Aを投入し、シリンダ装置35の伸縮動作により加圧板34を往復動してこの飼料材料Aを加圧する。
【0023】
上記飼料材料Aは、ビール粕とスーダン乾草、カカオ殻、それに豆腐粕等の食品副産物が用いられる。この実施例では、ビール粕とスーダン乾草とカカオ殻を用いた。
【0024】
上記加圧成形装置31では、ホッパ32より投入された飼料材料Aは成形枠33内に所定の密度に圧縮され、かつこの成形枠33に沿う形状、例えば立方体状に形成される。その後開閉板34を開けて、これを加圧板34により搬送コンベヤ8上に押し出す。
【0025】
搬送コンベヤ8上の飼料材料Aは、この搬送コンベヤ8にて図2から図11に示したフィルム巻装装置のリング包装装置1のコンベヤ機構6上へ搬入される。そしてこの飼料材料Aはコンベヤ機構6にて下流側へ搬送される。このとき、切断装置10は周回する帯状フィルムBと干渉しない位置へ移動しておく。そしてこの状態でリング包装装置1を作動させてコンベヤ機構6ごと飼料材料Aの周囲に帯状フィルムBを巻装する。帯状フィルムBは飼料材料Aの移動に従って延伸されながらこれにらせん状に巻装される。そしてコンベヤ機構6の下側部分に巻装された帯状フィルムBはフィルム用ベルト6b,6bの移動に従って飼料材料Aと同速で下流側へ移動していく。そしてこのコンベヤ機構6の下側部分に巻装された帯状フィルムBは、間隔20の位置で飼料材料Aがコンベヤ機構6の下流側へ外れたとき、帯状フィルムBもコンベヤ機構6から外れ、延伸された帯状フィルムBの復元力にて飼料材料Aに密に巻装される。飼料材料Aの移動に従ってこれの移動方向全長にわたって帯状フィルムBを巻装した状態で切断装置10を作動させて帯状フィルムBを切断する。このときの帯状フィルムBの先端はチャック部材18にてチャッキングされる(図8〜図11参照)。
【0026】
コンベヤ機構6から搬送された飼料材料Aは搬送回転テーブル装置21の搬送テーブル22上に移動し、搬送テーブル22の搬送帯27にてストッパ28に当接するまで搬送される。
【0027】
このとき、上記飼料材料Aがストッパ28に当接する以前に搬送テーブル22を回転装置23にて90゜回転する。この回転装置23による回転方向は、コロローラ29による移動方向がリング包装装置1のコンベヤ機構6の方へ向く方向に回転させる。
【0028】
この状態で搬送テーブル22の搬送帯27による搬送作用を続行すると、飼料材料Aはコロローラ29による反発力により移動されてリング包装装置1側へ逆走される。このとき、リング包装装置1のコンベヤ機構6を逆転させる。これにより、搬送テーブル22にて送り返された飼料材料Aは上記した順走の場合に対して水平方向に90゜回転された状態でコンベヤ機構6上を逆走され、この間にリング包装装置1を作動してこの飼料材料Aに再びらせん状に帯状フィルムBを巻装する。従って飼料材料Aの上下の両表面には図1に示すように、帯状フィルムBが上下の両面で交差して2重に巻装される。
【0029】
上記逆走による帯状フィルムBの巻装が終了した状態で帯状フィルムBを切断すると共に、コンベヤ機構6を順走させて飼料材料Aを下流側へ送る。そしてこの間に搬送テーブル22を元の姿勢に戻しておき、コンベヤ機構6からの飼料材料Aを受けてストッパ28に当接するまで搬送する。そしてさらに搬送帯27にて搬送を続行することにより飼料材料Aは側方へ払い出しされる。
【0030】
以下上記した作用を繰り返し行うことにより、コンベヤ機構6上に搬入される各飼料材料Aの上面と下面に帯状フィルムBが直行した状態で2重に巻装され、飼料材料Aの各面(六面)の全てに帯状フィルムBが巻装される。なお上記帯状フィルムBの巻装は2重に限るものではなく何重にしてもよい。
【0031】
次に、上記した本発明に係る製造方法と、背景技術にて示した従来の製造方法とを比較した試験結果を以下に示す。なお、以下において本発明方法を「ラップ方式」、従来方式を「バック方式」という。
【0032】
(1)試験方法
(イ)飼料材料:ビール粕、スーダン乾草、カカオ殻
(ロ)飼料材料の成分値:水分59.2%、ADF30.7%、NDF60.8%(乾物中)
(ハ)比較方法
バック方式:ポリエチレンの内袋に密封貯蔵
詰め込み量:350kg、見かけ比重:約0.4
ラップ方式:加圧成形機にて圧縮成形し、帯状フィルムを全周に巻装貯蔵
詰め込み量:750kg、見かけ比重:約0.55
【0033】
(2)試験結果
(イ)発酵品質の比較
【表1】
【0034】
(3)考察
ラップ方式は、バック方式に比較してウェット飼料の乳酸発酵において以下の差がみられた。
(イ)ラップ方式は、バック方式に比較して圧密度が高いため、詰め込み時の残存酸素量が少なく、また外気からの酸素の流入が少ないため乳酸発酵が促進される。上記試験では、有機酸含量に差がみられた。圧密後の有機酸含有量がバック方式より多いため、カビの発生を抑える効果が高くなると判断される。
(ロ)バック方式は、詰め込み時に袋内に炭酸ガスが発生するが、これが抜けた後は負圧になる傾向があり(ポリエチレン素材の内袋では酸素と炭酸ガスの透過性が異なるため負圧になりやすいと推定)、これにより外気からの酸素の流入が容易になり、カビの発生を促していると推定される。ラップ方式ではこのような負圧になることがなく、従って酸素の流入は少ないと判断される。上記の試験でもラップ方式の方がカビの発生はなかった。
(ハ)以上のことから、ラップ方式は、バック方式のように貯蔵中の内袋内に炭酸ガスが貯留しないため、製品の保管や運搬が容易である。
(ニ)また、品質の比較において、ラップ方式のものでは、貯蔵日数が多くなるに従って、飼料中の乳酸、酢酸、総酸の量がバック方式のものに比較して多くなり、飼料としての品質が良いことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明方法にて製造したウェット飼料を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本発明方法を実施する装置の一部を示す正面図である。
【図3】本発明方法を実施する装置の一部を示す平面図である。
【図4】図3のD−D矢視図である。
【図5】コンベヤ機構を概略的に示す斜視図である。
【図6】フィルム供給機を示す正面図である。
【図7】図6のE矢視図である。
【図8】切断装置を示す正面図である。
【図9】切断装置を示す側面図である。
【図10】チャッキング部を示す平面図である。
【図11】切断装置の作用説明図である。
【図12】本発明方法を実施する装置の他の一部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
A…飼料材料、B…帯状フィルム、1…リング包装装置、2…フレーム、3…回転リング、4…回転駆動モータ、5a,5b…フィルム供給機、6…コンベヤ機構、6a…荷体用ベルト、6b…フィルム用ベルト、6c…支持ローラ、7…荷体、8…搬送コンベヤ、9…フィルム、10…切断装置、11…ベルト、12…フィルム支持軸、13a,13b…フィルム延伸ローラ、15…ベルト、16a,16b…絞りローラ、17…カッタアーム、17a…カッタ、18…チャッキング部、20,20′…間隔、21…搬送回転テーブル装置、22…搬送テーブル、23…回転装置、24…板部材、25…駆動ローラ、26…従動ローラ、27…搬送帯、28…ストッパ、29…コロローラ、30…駆動モータ、31…加圧成形装置、32…ホッパ、33…成形枠、34…加圧板、35…シリンダ装置、36…加圧装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分の飼料材料を圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムを巻装し、所定日数貯蔵することを特徴とするウェット飼料の製造方法。
【請求項1】
高水分の飼料材料を圧縮成形し、この成形体の全周にストレッチ性を有する帯状フィルムを巻装し、所定日数貯蔵することを特徴とするウェット飼料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−345773(P2006−345773A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175899(P2005−175899)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(598099132)松本システムエンジニアリング株式会社 (7)
【出願人】(391009877)雪印種苗株式会社 (19)
【出願人】(000187138)昭和パックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(598099132)松本システムエンジニアリング株式会社 (7)
【出願人】(391009877)雪印種苗株式会社 (19)
【出願人】(000187138)昭和パックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]