説明

ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニット

【課題】成形されたウェハレベルレンズアレイのレンズ部に損傷を与えることなく、成形型から滑らかに剥すことができるウェハレベルレンズアレイの製造方法及び製造装置、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供する。
【解決手段】第1型と第2型で基板部1と複数のレンズ部10とを一体の成形物として成形する工程と、成形物を離型する工程と、を有し、成形物を離型する間又はその前に、第1型及び第2型のうち一方から突出部を突出させ、突出部をレンズ部10以外の基板部1のみに当接させつつ成形物を離型する側へ押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の携帯端末には、小型で薄型な撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子と、固体撮像素子上に被写体像を形成するためのレンズと、を備えている。
【0003】
携帯端末の小型化・薄型化に伴って撮像ユニットの小型化・薄型化が要請されている。また、携帯端末のコストの低下を図るため、製造工程の効率化が望まれている。
【0004】
小型且つ多数のレンズを製造する方法としては、基板部に複数のレンズを形成した構成であるウェハレベルレンズアレイを製造し、該基板部を切断して複数のレンズをそれぞれ分離させることでレンズモジュールを量産する方法が知られている。
【0005】
また、複数のレンズが形成された基板と複数の固体撮像素子が形成された半導体ウェハとを一体に組み合わせ、レンズと固体撮像素子をセットとして含むように基板とともに半導体ウェハを切断することで撮像ユニットを量産する方法が知られている。
【0006】
ウェハレベルレンズの製造方法としては、例えば下記特許文献1に示すように、基板部とレンズ部とを同じ材料を使用して成形型で一体に成形する方法が提案されている。このウェハレベルレンズは、基板部とレンズ部とを別途に製造する工程や該基板部にレンズ部を組み付ける工程を行う必要がなく、少ない工程数で製造できる利点がある。
【0007】
成形型によってウェハレベルレンズを成形物として成形した場合には、成形されたウェハレベルレンズを成形型から離すための離型工程を行う必要がある。
【0008】
下記特許文献2は、樹脂からなる成形物の離型方法に関する。特許文献2の離型方法は、キャビティを有する大気開放の注形型である成形型に、接着効果のあるエポキシ樹脂等の樹脂が注入、加熱されて硬化し、成形物が成形される。成形後、成形物に直接接触するように平板形状の振動子が配設される。振動子から成形物に直接振動が伝達され、成形型から成形物を剥すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第08/093516号パンフレット
【特許文献2】特開2004−74445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、基板部とレンズとが一体のウェハレベルレンズを成形物として成形する場合には、レンズのみを成形型によって形成する場合に比べて、成形終了後に成形型に対して基板部及びレンズが強く付着し、離型を行うことがより困難になる。この理由としては、成形された基板部が、成形型に対して広い面積で接触するとともに、該基板部の厚さが薄いため、成形されたウェハレベルレンズが成形型に付着しやすくなるためである。また、基板部が薄くて十分な剛性を確保することができないため、成形型に付着したウェハレベルレンズを剥す際に負荷を加えると、基板部やレンズ自体に変形や割れ等の損傷が生じるおそれがある。
【0011】
上記特許文献2では、振動子を直接成形物に接触させて振動を伝達する離型方法が記載されている。しかし、基板部及びレンズに直接振動子を接触させると、振動によって基板部やレンズに損傷を与えてしまうことが考えられる。
【0012】
本発明は、成形されたウェハレベルレンズアレイのレンズ部に損傷を与えることなく、成形型から滑らかに剥すことができるウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
第1型と第2型で前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形する工程と、
前記成形物を離型する工程と、を有し、
前記成形物を離型する前に、前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出部を突出させ、前記突出部を前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接させつつ前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造方法である。
【0014】
また、本発明は、基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
第1型と、
前記第1型に対して型閉じすることで、前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形するためのキャビティを形成する第2型と、
前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出する突出部を備え、前記成形物を離型する前に、前記突出部が前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接して前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造装置である。
【0015】
上記のウェハレベルレンズアレイの製造装置及び製造方法は、基板部と複数のレンズとを第1型及び第2型によって成形物として一体成形するとき、前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出部を突出させ、突出部によって成形物を離型する側へ押圧する。この押圧によって成形物を型から剥離する。その後、成形物を型から取り出す際に、既に剥離されているので、容易に取り出すことができる。ここで、突出部の突出する方向の先端部がレンズ部に直接接触しないため、レンズ部に損傷が生じることを防止できる。
特に基板部と複数のレンズ部とを一体成形する構成のウェハレベルレンズは、基板部はその厚みが薄く、型に接触する領域の面積が広いため、離型の際に、第1型又は第2型のいずれに付着して離れ難くなる傾向が顕著である。このため、ウェハレベルレンズアレイの製造においては、突出部によって型と成形物との境界を剥離させておくことで、成形物に負荷をかけることなく、成形物を取り出すことができ、有効である。
【0016】
上記のウェハレベルレンズアレイの製造方法によって得られたウェハレベルレンズアレイは、基板部及び複数のレンズに変形や割れなどの損傷がなく、良好である。
【0017】
また、上記ウェハレベルレンズを備えたレンズモジュールや撮像ユニットによれば、ウェハレベルレンズアレイの基板部及び複数のレンズに損傷がなく、好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、成形されたウェハレベルレンズアレイのレンズ部に損傷を与えることなく、成形型から滑らかに剥すことができるウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ウェハレベルレンズアレイの構成の一例を示す断面図である。
【図2】レンズモジュールの構成の一例を示す断面図である。
【図3】撮像ユニットの構成の一例を示す断面図である。
【図4】ウェハレベルレンズアレイの基板部にレンズ部を成形するための成形型の構成例を示す図である。
【図5】成形型の離型の際の動作の一例を示す図である。
【図6】ウェハレベルレンズアレイの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】成形型による成形及び離型の手順を説明する図である。
【図8】図7の成形型において成形物に対して突出部が当接する位置の一例を示す図である。
【図9】他の構成例の成形型による成形及び離型の手順を説明する図である。
【図10】図9の成形型において成形物に対して突出部が当接する位置の一例を示す図である。
【図11】成形型からウェハレベルレンズアレイを剥離する工程を説明する図である。
【図12】ウェハレベルレンズアレイをダイシングする工程を説明する図である。
【図13】レンズモジュールの製造方法の手順を示す図である。
【図14】図13とは別の構成のレンズモジュールを製造する手順を示す図である。
【図15】撮像ユニットを製造する手順を示す図である。
【図16】図15の構成とは別の撮像ユニットを製造する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュールと撮像ユニットの構成について説明する。
【0021】
図1は、ウェハレベルレンズアレイの構成の一例を示す断面図である。
ウェハレベルレンズアレイは、基板部1と、該基板部1に配列された複数のレンズ部10とを備えている。複数のレンズ部10は、基板部1に対して1次元又は2次元に配列されている。以下では、複数のレンズ部10が、基板部1に対して2次元に配列されている構成を例に説明する。レンズ部10は、基板部1と同じ材料から構成され、該基板部1に一体成形されたものである。レンズ部10の形状は、特に限定されず、用途などによって適宜変形される。
【0022】
図2は、レンズモジュールの構成の一例を示す断面図である。
レンズモジュールは、基板部1と、及び該基板部1に一体成形されたレンズ部10とを含んだ構成であり、例えば図1に示すウェハレベルレンズアレイの基板部1をダイシングし、レンズ部10ごとに分離させたものを用いる。基板部1の一方の面には、レンズ部10の周囲にスペーサ2が設けられている。スペーサ2の作用及び構成については、次に説明する撮像ユニットのものと同じである。
【0023】
図3は、撮像ユニットの構成の一例を示す断面図である。
撮像ユニットは、上述のレンズモジュールと、センサモジュールとを備える。レンズモジュールのレンズ部10は、センサモジュール側に設けられた固体撮像素子Dに被写体像を結像させる。レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとが、互いに略同一となるように平面視略矩形状に成形されている。
【0024】
センサモジュールは、半導体基板Wと、半導体基板Wに設けられた固体撮像素子Dを含んでいる。半導体基板Wは、例えばシリコンなどの半導体材料で形成されたウェハを平面視略矩形状に切り出して成形されている。固体撮像素子Dは、半導体基板Wの略中央部に設けられている。固体撮像素子Dは、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。センサモジュールは、チップ化された固体撮像素子Dを配線等が形成された半導体基板上にボンディングした構成とすることができる。または、固体撮像素子Dは、半導体基板Wに対して周知の成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、不純物添加工程等を繰り返し、該半導体基板に電極、絶縁膜、配線等を形成して構成されてもよい。
【0025】
レンズモジュールは、その基板部1がスペーサ2を介してセンサモジュールの半導体基板Wの上に重ね合わされている。レンズモジュールのスペーサ2とセンサモジュールの半導体基板Wとは、例えば接着剤などを用いて接合される。スペーサ2は、レンズモジュールのレンズ部10がセンサモジュールの固体撮像素子D上で被写体像を結像させるように設計され、レンズ部10がセンサモジュールに接触しないように、該レンズ部10と固体撮像素子Dとの間に所定の距離を隔てる厚みで形成されている。
【0026】
スペーサ2は、レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとを所定の距離を隔てた位置関係を保持することができる範囲で、その形状は特に限定されず適宜変形することができる。例えば、スペーサ2は、基板の4隅にそれぞれ設けられる柱状の部材であってもよい。また、スペーサ2は、センサモジュールの固体撮像素子Dの周囲を取り囲むような枠状の部材であってもよい。固体撮像素子Dを枠状のスペーサ2によって取り囲むことで外部から隔絶すれば、固体撮像素子Dにレンズを透過する光以外の光が入射しないように遮光することができる。また、固体撮像素子Dを外部から密封することで、固体撮像素子Dに塵埃が付着することを防止できる。
【0027】
なお、図2に示すレンズモジュールは、レンズ部10が形成された基板部1を1つ備えた構成であるが、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えた構成としてもよい。このとき、互いに重ね合わされる基板部1同士がスペーサ2を介して組み付けられる。
【0028】
また、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えたレンズモジュールの最下位置の基板部1にスペーサ2を介してセンサモジュールを接合して撮像ユニットを構成してもよい。レンズ部10が形成された基板部1を複数備えたレンズモジュール及び該レンズモジュールを備えた撮像ユニットの製造方法については後述する。
【0029】
以上のように構成された撮像ユニットは、携帯端末等に内蔵される図示しない回路基板にリフロー実装される。回路基板には、撮像ユニットが実装される位置に予めペースト状の半田が適宜印刷されており、そこに撮像ユニットが載せられ、この撮像ユニットを含む回路基板に赤外線の照射や熱風の吹付けといった加熱処理が施され、撮像ユニットが回路基板に溶着される。
【0030】
基板部1及びレンズ部10を構成する材料としては、例えばガラスを用いることができる。ガラスは種類が豊富であり、高屈折率を有するものを選択できるので、大きなパワーを持たせたいレンズの素材として適している。また、ガラスは耐熱性に優れ、上述した撮像ユニットのリフロー実装に好適である。
【0031】
また、基板部1及びレンズ部10を構成する材料として、樹脂を用いることもできる。樹脂は加工性に優れており、型等でレンズ面を簡易且つ安価に形成するのに適している。樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、上述した撮像ユニットのリフロー実装を考慮すると、軟化点が例えば200℃以上の比較的高いものが好ましく、250℃以上のものがより好ましい。
【0032】
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性シリコン樹脂、紫外線硬化性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を例示することができる。エポキシ樹脂としては、線膨張係数が40〜80[10−6/K]で、屈折率が1.50〜1.70、好ましくは1.60〜1.70のものを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、熱硬化性シリコン樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等を例示できる。例えば、シリコン樹脂としては、線膨張係数が30〜160[10−6/K]で、屈折率が1.40〜1.55のものを用いることができる。エポキシ樹脂は線膨張係数が40〜80[10−6/K]で、屈折率が1.50〜1.70、好ましくは1.60〜1.70のものを用いることができる。フェノール樹脂は、線膨張係数が30〜70[10−6/K]で、屈折率が1.50〜1.70のものを用いることができる。アクリル樹脂としては、線膨張係数が20〜60[10−6/K]で、屈折率が1.40〜1.60、好ましくは1.50〜1.60のものを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、具体的には、富士高分子工業株式会社製SMX−7852・SMX−7877、株式会社東芝製IVSM−4500、東レ・ダウコーニング社製SR−7010、等を例示することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等を例示することができる。ポリカーボネートは、線膨張係数が60〜70[10−6/K]で、屈折率が1.40〜1.70、好ましくは1.50〜1.65のものを用いることができる。ポリサルフォン樹脂は、線膨張係数が15〜60[10−6/K]で、屈折率が1.63のものを用いることができる。ポリエーテルサルフォン樹脂は、線膨張係数が20〜60[10−6/K]で、屈折率が1.65のものを用いることができる。
【0033】
一般に、光学ガラスの線膨張係数は20℃で4.9〜14.3[10−6/K]であり、屈折率は波長589.3nmで1.4〜2.1である。また、石英ガラスの線膨張係数は0.1〜0.5[10−6/K]であり、屈折率は約1.45である。
【0034】
また、無機微粒子を樹脂マトリックス中に分散させることによって得られる有機無機複合材料を使用することが好ましい。無機微粒子としては、例えば酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子が挙げられる。より具体的には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫化亜鉛等の微粒子を挙げることができる。
【0035】
無機微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、複数の成分による複合物であってもよい。また、無機微粒子には光触媒活性低減、吸水率低減などの種々の目的から、異種金属をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等の異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チナネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)または有機酸基を持つ分散剤などで表面修飾してもよい。
【0036】
無機微粒子の数平均粒子サイズは、小さすぎると物質の特性が変化する場合がある。また、樹脂マトリックスと無機微粒子の屈折率差が大きい場合には、無機微粒子の数平均粒子サイズが大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となる。このため、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmが更に好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。また、無機微粒子の粒子サイズ分布は狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば、特開2006−160992号に記載されるような数値規定範囲が好ましい粒径分布範囲に当てはまる。ここで、上述の数平均1次粒子サイズとは、例えばX線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。
【0037】
無機微粒子の屈折率としては、22℃、589.3nmの波長において、1.90〜3.00であることが好ましく、1.90〜2.70であることが更に好ましく、2.00〜2.70であることが特に好ましい。
【0038】
無機微粒子の樹脂に対する含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、5質量%以上であることが好ましく、10〜70質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0039】
有機無機複合材料に用いられる樹脂としては、公知の紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用できる。また、特開2007−93893号に記載された屈折率1.60より大きい樹脂、特開2007−211164号に記載された疎水性セグメント及び親水性セグメントで構成されるブロック共重合体、特開2007−238929号、特願2008−12645号、同2008−208427号、同2008−229629号、同2008−219952号に記載された高分子末端または側鎖に無機微粒子と任意の化学結合を形成しうる官能基を有する樹脂、特願2008−197054号、同2008−198878号に記載された熱可塑性樹脂等を挙げることができる。有機無機複合材料には、必要に応じて、可塑剤、分散剤等の添加剤を加えることができる。
【0040】
次に、ウェハレベルレンズアレイの製造方法について詳細に説明する。
図4は、ウェハレベルレンズアレイの基板部とレンズ部とを一体成形するための成形型の構成例を示す図である。図4は、成形型の型開き状態を示している。図5は、図4の成形型の動作の一例を示している。
【0041】
図4及び図5に示すように、本構成例の成形型は、上型12と下型14とを備えている。上型12と下型14とで、レンズ部10及び基板部1を構成する樹脂などの材料を挟み込むことで、所定の形状のレンズ部及び基板部を一体成形する。
【0042】
上型12において、下型14に対向する側の面には、レンズ部10の上側の形状を転写するための凹部12aと、基板部1におけるレンズ部10が成形される領域以外の領域に相当する平坦形状を転写するための平面部12bとが設けられている。
【0043】
下型14において、上型12に対向する側の面には、レンズ部10の下側の形状を転写するための凹部14aと、基板部1におけるレンズ部10が成形される領域以外の領域に相当する平坦形状を転写するための平面部14bとが設けられている。
【0044】
なお、ここでいう「上」及び「下」とは、本構成例を説明する図中の位置関係を示しているのみであり、例えばその位置関係は上下に入れ替えられてもよい。つまり、成形型は、上型12及び下型14のうち一方を第1型、他方を第2型とした場合に、第1型及び第2型を型閉じ状態、型開き状態とすることが可能であればそれらの位置関係は特に限定されない。
【0045】
上型12と下型14とはそれぞれ、型閉じ状態の位置と型開き状態の位置との間で相対的に移動させることができる。つまり、上型12及び下型14のうち少なくとも一方を他方に対して近づける方法及び遠ざける方向に移動させることができる。
【0046】
型開き状態とは、上型12と下型14とが一定の距離をおいて離間した状態である。また、型閉じ状態とは、上型12と下型14とが接近し、上型12と下型14との間に挟みこんだ成形物に所定の圧力を付与しつつ、型と成形物とが完全に密着している状態をいう。
【0047】
図4に示すように、下型14には、下型14に付着する成形物を剥離させる際に、該成形物を押圧する突出部として機能する複数のエジェクタピン18が設けられている。複数のエジェクタピン18はそれぞれ長尺円柱形状を有している。各エジェクタピン18の一方の端部が可動板16の上面に固定され、他方の端部が可動板16側の端部より小径に形成され、その先端部18aが下型14を貫通する。なお、エジェクタピン18の形状は、円柱形状に限定されない。
【0048】
可動板16は、下型14の平面部14bに対して略平行な状態で保持されている。可動板16の複数のエジェクタピン18が固定された側の面の反対側の面には、駆動軸16sが連結されている。
【0049】
図5は、複数のエジェクタピンを突出させた状態を示している。駆動軸16sがその軸方向に駆動すると、可動板16が、下型14の平面部14bに対して略平行な状態のまま該下型14に接近する。すると、複数のエジェクタピン18それぞれの先端部18aが、下型14の平面部14bの表面から上型12側へ向かって突出する。下型14から突出させる先端部18aの突出量は、各エジェクタピン18の寸法や駆動軸16sの軸方向の移動量によって設定される。
【0050】
成形型を型閉じ状態とすることで、上型12の凹部12aと下型14の凹部14aとによってレンズ部10の形状が規定される。成形されるレンズ部10の形状の変更に応じて、成形型の上型12及び下型14の種類が適宜変更されてもよい。
【0051】
図4に示すように、複数のエジェクタピン18を突出させていない状態においては、各エジェクタピン18の先端部18aが下型14の平面部14bに対して凹凸しないように面一な状態となる。こうすることで、軟化した成形物が先端部18aを貫通させている部分に入り込むことを防止することができる。
【0052】
レンズ部の材料として紫外線硬化樹脂を使用する場合には、上型12及び下型14のうち、紫外線を照射する側に位置する少なくとも一方を紫外線に対して透明体とする。また、基板部1が紫外線を透過する材質であってもよい。
【0053】
また、図4に示す構成を備えた製造装置について説明する。
この製造装置は、第1型として機能する上型12と、上型12に対して型閉じすることで、基板部1と複数のレンズ部10とを一体の成形物として成形するためのキャビティを形成するための第2型として機能する下型14と、を備えている。上型12を第2型とし、下型14を第1型としてもよい。また、製造装置は、成形物を離型する際に、第1型及び第2型のうち一方から突出する突出部を備えている。図4の構成例では、突出部が複数のエジェクタピン18を含む。
【0054】
次に、図6に基づいてウェハレベルレンズの製造方法の手順を説明する。なお、以下の説明では、図4及び図5に示すウェハレベルレンズの製造装置の構成例を適宜参照するものとする。
【0055】
最初に、上型12と下型14とを型開き状態とし、材料を注入する(ステップS1)。ここでは、材料として熱硬化性の樹脂を用いることとする。
【0056】
材料を注入した後、上型12と下型14とを型閉じ状態とすることで、材料に所定の圧力を加える(ステップS2)。
【0057】
次に、材料に所定の圧力を加えた状態を維持しつつ、材料を加熱することで硬化させる(ステップS3)。材料を加熱する手段としては、例えば、上型12及び下型14の少なくとも一方を熱伝導性の良い金属材料で構成し、ヒータなどの加熱部によって上型12及び下型14を加熱することで、材料に熱を加えてもよい。
【0058】
成形物を熱により硬化させた後、上型12及び下型14を型開き状態とする(ステップS4)。
【0059】
次に、突出部を駆動して成形物を剥離する(ステップS5)。図7(a)は、突出部を駆動させる前の状態を示し、図7(b)は、突出部を駆動させた後の状態を示している。
【0060】
図7(a)に示すように、成形の際には、複数のエジェクタピン18の先端部18aは、下型14の内部に収容された状態であり、成形されるウェハレベルレンズアレイの基板部1に圧力を加えることがないため、成形される基板部1の形状に影響を与えない。
【0061】
図7(b)に示すように、成形後、可動板16を上型12側に移動させることで、該可動板16に固定された各エジェクタピン18の先端部18aが下型14から突出し、先端部18aが成形物を押圧することで、該成形物を下型14から剥離させる。
【0062】
先端部18aが成形物を押圧するとき、各先端部18aは、ウェハレベルレンズアレイのレンズ部10に接触することなく、基板部1のみに当接する。
【0063】
図8は、成形物であるウェハレベルレンズアレイに対して接触するエジェクタピンの先端部の位置を平面視した状態で示すものである。図8に示すように、エジェクタピン18の先端部18aは、レンズ部10同士の間の基板部1に当接する。図8の例では、斜め方向に配列されたレンズ部10を列としたとき、1列ごとに同列のレンズ部10のうち隣り合うレンズ部10同士の間に先端部18aが当接する。
【0064】
ウェハレベルレンズアレイに対して接触するエジェクタピンの先端部の位置は適宜変更することができる。図8に示す例のように、複数のエジェクタピン18の先端部18aと基板部1とが当接するそれぞれの位置が、成形物の中心に対してほぼ対称となることが好ましい。こうすれば、成形物の全体をエジェクタピンによって均一に押圧することができ、成形物の一部の領域に偏った押圧力が加わることを防止することができる。ウェハレベルレンズアレイは平面視においてほぼ正円形状であるため、複数のエジェクタピン18の先端部18aと基板部1とが当接するそれぞれの位置が、成形物の中心を囲って円状に配列されていることが特に好ましい。こうすれば、ウェハレベルレンズアレイの全体をほぼ均一に押圧することができ、押圧に起因してウェハレベルレンズアレイに変形などの不具合が生じることを防止できる。
【0065】
ウェハレベルレンズアレイは、基板部1と複数のレンズ部10とを一体成形した構成であり、基板部1の厚みは小さいのに対して、上型12及び下型14には広い面積で接触する。このため、硬化後に、成形物であるウェハレベルレンズアレイが上型12及び下型14のうちいずれか一方に密着して離型させ難くなる。ウェハレベルレンズアレイに負荷を加えて離型させようとすると、基板部1に変形が生じることや基板部1やレンズ部10に割れなどの損傷が生じやすい。そこで、ウェハレベルレンズアレイを型から取り出しやすくなるようにするため、成形物を型同士の間から取り出す工程の前に、上型12及び下型14を型開きした状態で、上型12及び下型14のうち一方から突出部で成形物を押圧して、成形物を型から剥離させておく。すると、突出部からの押圧によって、成形物と型との間に剥離した部位が生じる。
【0066】
具体的には、突出部による成形物の押圧は、上型12及び下型14のうちの、ウェハレベルレンズアレイが付着しやすい側の型から行う。この構成例では、成形されたウェハレベルレンズアレイが下型14側に付着しやすいことを想定し、下型14側から突出部であるエジェクタピン18を突出させる構成とした。成形されたウェハレベルレンズアレイが上型12側に付着しやすい場合には、上型12側から同様にエジェクタピンを突出させる構成とすればよい。このとき、エジェクタピン18に押圧された成形物が完全に剥離して落下することを避けるため、上型12と下型14との上下方向の位置を予め反対となるように変更しておけばよい。
【0067】
なお、ウェハレベルレンズアレイが付着しやすい側としては、離型させる際に、成形物であるウェハレベルレンズアレイがその表面形状や材質などの影響によって付着してしまいやすい側を意味する。
【0068】
図7に示す構成例では、ウェハレベルレンズが下型14に付着しているものとして想定される。つまり、下型14はウェハレベルレンズが付着している側の型に相当し、該下型14の下面(図中下側の面)はウェハレベルレンズが付着している側の面に対して反対側の面に相当する。
【0069】
また、基板部の厚み方向とは、複数のレンズ部10が配列されている2次元の平面方向に対して垂直な方向であり、図中の上下方向に相当する。
【0070】
突出部としては、上記構成例のように、複数のエジェクタピンのみからなる構成に限定されず、レンズ部10以外の基板部1のみに当接させつつ前形物を離型する側へ押圧することが可能な構成であれば、適宜変更できる。
【0071】
図9は、ウェハレベルレンズアレイの製造装置の他の構成例を示す図である。図9(a)は、突出部を駆動させる前の状態を示し、図9(b)は、突出部を駆動させた後の状態を示している。
【0072】
この構成例では、可動板16に、複数のエジェクタピン18と可動板の周縁近傍に、エジェクタピン18の延びる方向に立設されたスリーブ22とが固定されている。スリーブ22は、円筒形状を有し、可動板16に対するエジェクタピン18の高さと等しい高さで構成されている。複数のエジェクタピン18とスリーブ22とが突出部として機能する。
【0073】
図9(b)に示すように、成形後、可動板16を上型12側に移動させることで、該可動板16に固定された各エジェクタピン18の先端部18a及びスリーブ22が下型14から突出し、先端部18a及びスリーブ22が成形物を押圧することで、該成形物を下型14から剥離させるように促す。
【0074】
先端部18a及びスリーブ22が成形物を押圧するとき、各先端部18a及びスリーブ22は、ウェハレベルレンズアレイのレンズ部10に接触することなく、基板部1のみに当接する。スリーブ22は、成形物の周縁部に沿って当接する。
【0075】
図10は、成形物であるウェハレベルレンズアレイに対して接触するエジェクタピン18の先端部18a及びスリーブ22の位置を平面視した状態で示すものである。図10に示すように、エジェクタピン18の先端部18aは、レンズ部10同士の間の基板部1に当接する。図10の例では、斜め方向に配列されたレンズ部10を列としたとき、1列ごとに同列のレンズ部10のうち隣り合うレンズ部10同士の間に先端部18aが当接する。また、スリーブ22は、ウェハレベルレンズアレイの周縁部の形状とほぼ一致し、該周縁部に沿って当接する。
なお、スリーブ22は、周方向に沿っていくつかに分断された円弧状の複数のリブで構成されてもよい。
【0076】
図6のフローチャートに戻って製造方法の手順の続きを説明する。成形物を突出部によって押圧して剥離させた後、下型14上のウェハレベルレンズを取り出す(ステップS6)。
【0077】
図11は、ウェハレベルレンズアレイを取り出す手段の一例を示している。図11の例では、ウェハレベルレンズアレイの上面に吸着部32を吸着させ、上方へ引っ張ることで、ウェハレベルレンズアレイを下型14から剥離する。このとき、エジェクタピン18の先端部18aがウェハレベルレンズアレイの吸着部32によって吸着される部位を反対側の面を支持してもよい。こうすれば、ウェハレベルレンズアレイの離型を円滑に行うことができる。
【0078】
吸着部32は、例えば、空気吸引を行って負圧を生じさせることでウェハレベルレンズの上面に密着する構成である。吸着部32は、1つのウェハレベルレンズに対して複数設けられ、各吸着部32がウェハレベルレンズにおける、レンズ部10が形成された領域以外の平坦領域に密着するように配置されている。レンズ部10に吸着部32が接触することがないため、変形などの損傷が生じることを回避できる。
【0079】
複数の吸着部32をウェハレベルレンズアレイの基板部1の上面に密着させた状態で、ウェハレベルレンズアレイを上方に持ち上げることで、下型14からウェハレベルレンズアレイを取り出すことができる。このとき、下型14とウェハレベルレンズアレイとの境界には押圧によって既に剥離しているため、ウェハレベルレンズアレイを把持する複数の吸着部32から強い張力をかけることなく、簡単に取り出すことができる。
【0080】
こうして、基板部1とレンズ部10とが一体成形されたウェハレベルレンズアレイを得ることができる。
【0081】
上記構成例では、基板部1と複数のレンズ10とを上型12及び下型14によって成形物として一体成形するとき、上型12及び下型14のうち一方から突出部を突出させ、突出部によって成形物を離型する側へ押圧する。この押圧によって成形物を型から剥離する。その後、成形物を型の間から取り出す際に、既に剥離されているので、容易に取り出すことができる。成形物を押圧する際には、突出部の突出する方向の先端部18aがレンズ部10に直接接触しないため、レンズ部10に損傷が生じることを防止できる。
【0082】
特に基板部1と複数のレンズ部10とを一体成形する構成のウェハレベルレンズは、基板部1はその厚みが薄く、型に接触する領域の面積が広いため、離型の際に、上型12又は下型14のいずれに付着して離れ難くなる傾向が顕著である。このため、ウェハレベルレンズアレイの製造においては、突出部によって型と成形物との境界を剥離させておくことで、成形物に負荷をかけることなく、成形物を取り出すことができ、有効である。
【0083】
次に、ウェハレベルレンズアレイを用いて、更に、レンズモジュール及び撮像ユニットを製造する手順を説明する。
【0084】
図12は、ウェハレベルレンズアレイをダイシングする工程を説明する図である。同図(a)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板1の一方の表面(同図では下方の面)にスペーサ2が接合される。そして、同図(b)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と、該基板部1と同様にウェハ状に形成された半導体基板Wとの位置合わせが行われる。半導体基板Wの一方の面(同図では上側の面)には、基板部1に設けられた複数のレンズ部10の配列と同じ配列で固体撮像素子Dが設けられている。そして、ウェハレベルレンズアレイの基板部1がスペーサ2を介して、該基板部1と同様にウェハ状に形成された半導体基板Wに重ね合わされ、一体に接合される。その後、一体とされたウェハレベルレンズアレイ及び半導体基板W並びにスペーサ2は、レンズ部10及び固体撮像素子Dそれぞれの配列の列間に規定される切断ラインに沿って、ブレードC等の切断手段を用いて切断され、複数の撮像ユニットに分離される。切断ラインは、例えば基板部1の平面視において格子状である。
【0085】
なお、同図では、撮像ユニットを製造する際のダイジングを例に説明している。レンズモジュールを製造する際のダイジングは、ウェハレベルレンズアレイの基板部1にスペーサ2を接合した後、半導体基板Wに接合させないで、レンズ部10の配列に応じて切断し、複数のレンズモジュールに分離する。
【0086】
図13は、レンズモジュールの製造方法の手順を示す図である。この手順では、1つの基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイをダイジングして複数のレンズモジュールに分離する例を説明する。
【0087】
先ず、同図(a)に示すように、ウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。
【0088】
次に、同図(b)に示すように、基板部1の下側の面にスペーサ2を接着剤などによって接合する。
【0089】
そして、同図(c)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数のレンズモジュールに分離する。このとき、各切断ライン上に重なり合って接合されているスペーサ2も同時に切断され、スペーサ2は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接するレンズモジュールにそれぞれ付属する。こうして、レンズモジュールが完成する。
【0090】
なお、分離されたレンズモジュールは、スペーサ2を介して図示しないセンサモジュールやその他の光学素子を備えた基板に組み付けられてもよい。
【0091】
このように、ウェハレベルレンズアレイに予めスペーサ2を接合しておき、その後に、スペーサ2ごとウェハレベルレンズアレイの基板部1をダイシング工程で切断すれば、分離されたレンズモジュールにそれぞれスペーサ2を接合する場合に比べて効率良くレンズモジュールを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0092】
図14は、図13とは別の構成のレンズモジュールを製造する手順を示す図である。この手順では、2つの基板部1と、各基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイをダイジングし、複数のレンズモジュールに分離する例を説明する。
【0093】
先ず、同図(a)に示すように、複数のウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。複数のウェハレベルレンズアレイの各基板部1の一方の面にスペーサ2を接着剤などによって接合する。そして、重ね合わせるウェハレベルレンズアレイの基板部1同士の位置合わせを行い、下方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の上面に、上方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の下面を、スペーサ2を介して接合する。ウェハレベルレンズアレイ同士を重ね合わせた状態で、各基板部1に対してスペーサ2が接合された位置が、各基板部1で同じになるようにする。
【0094】
そして、同図(b)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数のレンズモジュールに分離する。このとき、各切断ライン上に重なり合って接合されているスペーサ2も同時に切断され、各切断ラインを境界として分割されたスペーサ2が、各切断ラインに隣接するレンズモジュールにそれぞれ付属する。こうして、複数のレンズ部10を備えたレンズモジュールが完成する。この手順では、重ね合わされるそれぞれの基板部1に対するレンズ部10及びスペーサ2の位置が同じであるため、分離された複数のレンズモジュールの構成はいずれも同じになる。また、重ね合わされるそれぞれの基板部1のうち、最上部の基板部1を基準に切断ラインの位置を決定し、切断すればよい。
【0095】
なお、分離されたレンズモジュールは、スペーサ2を介して図示しないセンサモジュールやその他の光学素子を備えた基板に組み付けられてもよい。
【0096】
このように、複数のウェハレベルレンズアレイ同士をスペーサを介して重ね合わせ、その後に、ウェハレベルレンズアレイの基板部1をスペーサ2ごとダイシング工程で切断すれば、分離されたレンズモジュールを個別に重ね合わせる場合に比べて、効率よくレンズモジュールを量産することができ、生産性が向上する。
【0097】
図15は、撮像ユニットを製造する手順を示す図である。この手順では、1つの基板部1と該基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたレンズモジュールをセンサモジュールに接合してダイジングし、複数の撮像ユニットに分離する例を説明する。
【0098】
先ず、同図(a)に示すように、ウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。そして、基板部1の下側の面にスペーサ2を接着剤などによって接合する。
【0099】
次に、複数の固体撮像素子Dが配列された半導体基板Wを準備する。ウェハレベルレンズアレイの基板部1と、半導体基板Wとの位置合わせを行った後、該基板部1をスペーサ2を介して半導体基板Wの上側の面に接合する。このとき、基板部1に設けられた各レンズ部10の光軸の延長が固体撮像素子Dの中央部とそれぞれ交わるようにする。
【0100】
そして、同図(c)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と半導体基板Wとを接合した後、基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数の撮像ユニットに分離する。このとき、各切断ライン上に重なり合って接合されているスペーサ2も同時に切断され、スペーサ2は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接する撮像ユニットにそれぞれ付属する。こうして、撮像ユニットが完成する。
【0101】
このように、ウェハレベルレンズアレイに予めスペーサ2を接合しておき、その後に、ウェハレベルレンズアレイの基板と固体撮像素子Dを備えた半導体基板Wを重ね合わせて、基板部1及び半導体基板Wをダイシング工程で一緒に切断すれば、分離されたレンズモジュールにそれぞれスペーサ2を介してセンサモジュールを接合して撮像ユニットを製造する場合に比べて、効率良く撮像ユニットを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0102】
図16は、図15の構成とは別の撮像ユニットを製造する手順を示す図である。この手順では、2つの基板部1と各基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイを、固体撮像素子が設けられた半導体基板に接合してダイジングし、それぞれが2つのレンズ部10を備えた複数の撮像ユニットに分離する例を説明する。
【0103】
先ず、同図(a)に示すように、2つのウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。そして、重ね合わせる2つの基板部1それぞれの下側の面にスペーサ2を接着剤などによって接合する。そして、重ね合わせるウェハレベルレンズアレイの基板部1同士の位置合わせを行い、下方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の上面に、上方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の下面を、スペーサ2を介して接合する。ウェハレベルレンズアレイ同士を重ね合わせた状態で、各基板部1に対してスペーサ2が接合された位置が、各基板部1で同じになるようにする。
【0104】
次に、複数の固体撮像素子Dが配列された半導体基板Wを準備する。重ね合わされた状態の複数のウェハレベルレンズアレイの基板部1と、半導体基板Wとの位置合わせを行う。その後、最下部に位置する該基板部1を、スペーサ2を介して半導体基板Wの上側の面に接合する。このとき、基板部1に設けられた各レンズ部10の光軸の延長が固体撮像素子Dの中央部とそれぞれ交わるようにする。
【0105】
そして、同図(c)に示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と半導体基板Wとを接合した後、基板部1及び半導体基板Wを、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数の撮像ユニットに分離する。このとき、各切断ライン上に重なり合って接合されているスペーサ2も同時に切断され、スペーサ2は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接する撮像ユニットにそれぞれ付属する。こうして、複数のレンズ部10を備えた撮像ユニットが完成する。
【0106】
このように、複数のウェハレベルレンズアレイ同士をスペーサ2を介して接合しておき、その後に、最下部のウェハレベルレンズアレイの基板部1と固体撮像素子Dを備えた半導体基板Wを重ね合わせて、基板部1及び半導体基板Wをダイシング工程で一緒に切断している。このような手順によれば、分離されたレンズモジュール同士を重ね合わせ、更に、各レンズモジュールとセンサモジュールとを接合していくことで各撮像ユニットを製造する場合に比べて、効率良く撮像ユニットを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0107】
本明細書は以下の内容を開示する。
(1)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
第1型と第2型で前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形する工程と、
前記成形物を離型する工程と、を有し、
前記成形物を離型する工程において、前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出部を突出させ、前記突出部を前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接させつつ前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(2)上記(1)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記突出部が複数のエジェクタピンを含み、前記複数のエジェクタピンの突出する方向の先端部を、前記レンズ部を除く前記基板部のみに当接させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記突出部が円筒形状を有するスリーブを含み、前記スリーブの突出する方向の先端部を、前記基板部における周縁部のみに当接させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(4)上記(2)又は(3)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心に対してほぼ対称となるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(5)上記(2)から(4)のうちいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心を囲って円状に配列されているウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、前記基板部及び前記複数のレンズ部の材料が紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のうちいずれかであるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法によって得られたウェハレベルレンズアレイ。
(8)上記(7)に記載の前記ウェハレベルレンズアレイの前記基板部をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
(9)上記(8)に記載のレンズモジュールであって、
前記基板部の前記レンズ部の周囲にスペーサが設けられたレンズモジュール。
(10)上記(8)に記載のレンズモジュールであって、
前記レンズ部が形成された前記基板部を複数備え、複数の前記基板部同士がそれら間にスペーサを挟んで重ね合わされたレンズモジュール。
(11)上記(9)又は(10)に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、
撮像素子と、
前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、
前記基板部と前記半導体基板とが、前記スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。
(12)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
第1型と、
前記第1型に対して型閉じすることで、前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形するためのキャビティを形成する第2型と、
前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出する突出部を備え、前記成形物を離型するときに、前記突出部が前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接して前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
(13)上記(12)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記突出部が複数のエジェクタピンを含み、前記複数のエジェクタピンの突出する方向の先端部が、前記レンズ部を除く前記基板部のみに当接するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
(14)上記(12)又は(13)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記突出部が円筒形状を有するスリーブを含み、前記スリーブの突出する方向の先端部が、前記基板部における周縁部のみに当接するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
(15)上記(13)又は(14)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心に対してほぼ対称となるウェハレベルレンズアレイの製造装置。
(16)上記(13)から(15)のうちいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心を囲って円状に配列されているウェハレベルレンズアレイの製造装置。
【産業上の利用可能性】
【0108】
上記ウェハレベルレンズアレイの製造方法及び製造装置は、デジタルカメラ、内視鏡装置、携帯型電子機器等の撮像部に設けられる撮像レンズを製造する際に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 基板部
10 レンズ
12 上型
14 下型
18 エジェクタピン
22 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
第1型と第2型で前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形する工程と、
前記成形物を離型する工程と、を有し、
前記成形物を離型する工程において、前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出部を突出させ、前記突出部を前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接させつつ前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記突出部が複数のエジェクタピンを含み、前記複数のエジェクタピンの突出する方向の先端部を、前記レンズ部を除く前記基板部のみに当接させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記突出部が円筒形状を有するスリーブを含み、前記スリーブの突出する方向の先端部を、前記基板部における周縁部のみに当接させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心に対してほぼ対称となるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項5】
請求項2から4のうちいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心を囲って円状に配列されているウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、前記基板部及び前記複数のレンズ部の材料が紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のうちいずれかであるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法によって得られたウェハレベルレンズアレイ。
【請求項8】
請求項7に記載の前記ウェハレベルレンズアレイの前記基板をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズモジュールであって、
前記基板部の前記レンズ部の周囲にスペーサが設けられたレンズモジュール。
【請求項10】
請求項8に記載のレンズモジュールであって、
前記レンズ部が形成された前記基板部を複数備え、複数の前記基板部同士がそれら間にスペーサを挟んで重ね合わされたレンズモジュール。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、
撮像素子と、
前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、
前記基板部と前記半導体基板とが、前記スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。
【請求項12】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
第1型と、
前記第1型に対して型閉じすることで、前記基板部と前記複数のレンズ部とを一体の成形物として成形するためのキャビティを形成する第2型と、
前記第1型及び前記第2型のうち一方から突出する突出部を備え、前記成形物を離型するときに、前記突出部が前記レンズ部以外の前記基板部のみに当接して前記成形物を離型する側へ押圧するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記突出部が複数のエジェクタピンを含み、前記複数のエジェクタピンの突出する方向の先端部が、前記レンズ部を除く前記基板部のみに当接するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記突出部が円筒形状を有するスリーブを含み、前記スリーブの突出する方向の先端部が、前記基板部における周縁部のみに当接するウェハレベルレンズアレイの製造装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心に対してほぼ対称となるウェハレベルレンズアレイの製造装置。
【請求項16】
請求項13から15のうちいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造装置であって、
前記複数のエジェクタピンの先端部と前記基板部とが当接するそれぞれの位置が、前記成形物の中心を囲って円状に配列されているウェハレベルレンズアレイの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−266666(P2010−266666A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117591(P2009−117591)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】