説明

ウエハー形直動式バルブ

【課題】直動式バルブの弁箱にフランジを形成せず、弁箱を管フランジに挟み込んで配管する。
【解決手段】一次側圧力又は二次側圧力を感知して動作する駆動部1と、該駆動部1に連繋して流路2を開閉する弁体3とから成る直動式バルブにおいて、該バルブの弁箱4は、ボルトB、B1…及びナットN、N1…で締結される管フランジF、F1の間に挟持され、且つ、前記流路2の出入口6、7を夫々に有する管フランジF、F1との接続端部10、11をフランジレスとし、弁箱4から上方へ延設したカバーフランジネック17を、管フランジF、F1間に架設されると共に管フランジF、F1の円周上で隣接するボルトB、B1間に挿通可能に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁などの圧力調整弁、電磁弁、定水位弁等の直動式バルブを管フランジ間に挟み込んで管フランジ間に通したボルト等にて固定するウエハー形直動式バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管フランジ間に弁箱を通してボルトとナットで管フランジ同士を締結することにより固定する構造のウエハー形バルブとしては、流体の流れが一直線になる薄型筒状の弁箱内部を薄肉円板状の弁体がスイングしたり、回転することで流路を開閉するシングルプレート逆止弁やフランジレスバタフライ弁の様に構造や操作が比較的単純であった(例えば非特許文献1参照)。
一方、直動式バルブは、一次側圧力又は二次側圧力を感知して動作する駆動部に弁棒を介して連繋される弁体が、上下にリフトして流路を開閉するものであり、その弁箱は、全閉及び流量の調整に適した入口と出口の流路がS字形に形成されると共に、管材との接続端部がフランジである形式、所謂フランジ形が低圧から高圧まで幅広く一般的に使用されている(例えば特許文献1参照)が、その構造等が上記のウエハー形バルブで代表されるシングルプレート逆止弁等に比し単純でないためか、直動式バルブではウエハー形のものは見受けられない。
【0003】
【非特許文献1】日本工業標準調査会審議、「バルブ用語 JIS B 0100−1984」、財団法人日本規格協会、昭和60年2月28日第1刷発行、p.37、番号10307、p.38、番号10705
【特許文献1】実公平6−37446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したフランジ形の直動式バルブの様に弁箱にフランジが形成されていると、そのバルブ自体が大重量となるばかりでなく、そのフランジの材料費だけでも製作コストが高騰する課題を有している。
そこで、本発明は、弁箱にフランジを形成せず、弁箱を管フランジに挟み込んでボルトとナットで管フランジ同士を締結することで配管する様にしたウエハー形直動式バルブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、一次側圧力又は二次側圧力を感知して動作する駆動部と、該駆動部に連繋して流路を開閉する弁体とから成る直動式バルブにおいて、該バルブの弁箱は、ボルト及びナットで締結される管フランジの間に挟持され、且つ、前記流路の出入口を夫々に有する管フランジとの接続端部をフランジレスとし、弁箱から上方へ延設したカバーフランジネックを、管フランジ間に架設されると共に管フランジの円周上で隣接するボルト間に挿通可能に形成する。
又、カバーフランジネックは、上記の隣接するボルトの夫々に対応する側壁のみを括れる様に形成するのがより良い。
又、各接続端部の管フランジとの接合面に、環状溝を凹設する共に、該環状溝にシール材を装填しても良い。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、直動式バルブにおいて、該バルブの弁箱は、ボルト及びナットで締結される管フランジの間に挟持され、且つ、弁箱内の流路の出入口を夫々に有する管フランジとの接続端部をフランジレスと成したので、フランジ形のバルブに比し、バルブの全重量の大幅な軽量化、面間(接続端部間)寸法の短尺化、配管に要するボルト本数の半減化が可能と成り、管材間における弁箱の介装スペースを縮小できると共に、配管時の据え付け作業を効率的に行え、配管状態での管材に対する負荷を軽減できる上に、フランジに要する材料費を削減できるので、製作コストを飛躍的に低減できる。
又、弁箱から上方へ延設したカバーフランジネックを、管フランジ間に架設されると共に管フランジの円周上で隣接するボルト間に挿通可能に形成したので、端部に管フランジを有する管材の間にバルブを挟んで配管するに際し、弁箱を管フランジ間に挟持した状態で、該管フランジの全てのボルト穴にボルトを支障なく通すことができ、該ボルトをナットで締結することにより、バルブを難なく管材間に介装する様に配管できる。
【0007】
カバーフランジネックは、上記の隣接するボルトの夫々に対応する側壁のみを括れさせた括れ部を形成して成るので、配管時において、管フランジ間に架設される前記ボルトの夫々を括れ部が避けてその架設状態を妨げず、カバーフランジネックは前記ボルト間を挿通でき、弁箱が管フランジ間に挟持される様に配管できる。
又、本発明によれば、カバーフランジネックが挿通するボルト間の間隔が狭く、括れ部間に対応するカバーフランジネックの内部が、括れ部の形成方向で狭まることになっても、ボルトの架設方向では狭める必要がないので、括れ部間に対応するカバーフランジネックの内部を流通する圧力流体の通過面積を、駆動部による弁体の操作に支障を来すことがない様に、充分に確保でき、直動式バルブとしての機能をより良好に果たすことができる。
【0008】
各接続端部の管フランジとの接合面に、環状溝を凹設する共に、該環状溝にシール材を装填したので、配管時において、接続端部と管フランジとを単に当接するだけでシール材が接続端部と管フランジ間に介在してシールできる。
従って、本発明によれば、上記の如く接続端部と管フランジとを何らの手間を要することなく、簡単に密封接合できるので、従来のウエハー形バルブの配管作業が有する不具合、即ち、この従来手法では、ガスケット等のシール材を接続端部と管フランジ間に介装させるために、管フランジに対しバルブの接続端部が同軸となる様にバルブを支持しながら、管フランジとこれより小径な接続端部の間にこれらと同軸上にシール材を宙吊り状態で位置決めして、接続端部と管フランジを接合せねばならず、その作業が非常に面倒で手間を要していた不具合を解消でき、作業効率を飛躍的に向上させられる等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態としての実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るウエハー形直動式バルブの配管状態を示す正面図、図2は図1のXーX断面図、図3は同上バルブの縦断面図、図4は図3の一部省略YーY拡大断面図を示す。
このバルブは、一次側圧力又は二次側圧力を感知して動作する駆動部1と、該駆動部1に連繋して流路2を開閉する弁体3とから成る直動式バルブであり、図示のバルブは直動式減圧弁を示している。
この直動式減圧弁は、流路2(一次側流路2aと二次側流路2b)を設けた弁箱4に、二次側流路2bの圧力変動に応じて弁体3の開度を制御する駆動部1を組み込み、二次側流路2bの圧力を検出すべく二次側流路2bに連通して設けた駆動部1の圧力検出室5を設けており、配管状態では、管材P、P1の接続端部に設けた管フランジF、F1間に弁箱4を挟み込み、管フランジF、F1に通した(長ねじ)ボルトB、B1…をナットN、N1…で締結することにより、管フランジF、F1間に介装支持される様に成している。
【0010】
弁箱4は、その左右側方に入口6及び出口7の夫々を開設すると共に、内部に入口6及び出口7の夫々に通ずる一次側流路2a及び二次側流路2bを設けている。
弁箱4内の中央には、一次側流路2aと二次側流路2bを上下に区画した隔壁8を設け、該隔壁8に弁口9を開設して両流路2a、2bを連通して成り、入口6と出口7の流路2をS字形と成している。
又、弁箱4は、管フランジF、F1の間に挟持される様に、流路2の出入口6、7を夫々に有する管フランジF、F1との接続端部10、11をフランジレスとし、従前のフランジ形の弁箱に比しフランジの肉厚分だけ面間寸法が短くなる様に設定している。
そして、接続端部10、11における管フランジF、F1との接合面の夫々には、環状溝12を凹設する共に、該環状溝12にOリング、平型パッキン等のシール材13(図示例ではOリング)を装填している。
【0011】
弁箱4上部は、ボデーカバー部フランジ(後述のボンネット15との接続用のフランジ)14を周設して成る円形皿状の凹部16を、上端に設けたカバーフランジネック17を上方へ延設している。
カバーフランジネック17は、弁箱4の接続端部10、11を管フランジF、F1に当接して、該管フランジF、F1にボルトB、B1…を通した状態で、管フランジF、F1間に架設されると共に、管フランジF、F1の円周上で隣接する(図示例では管フランジF、F1の上部間に隣接して架設される)ボルトB、B1間に挿通可能に形成している。
【0012】
ボンネット15は、略筒状にして下端を凹部16に対応する様に拡径形成すると共に、その下部開口端にフランジ15aを周設している。
そして、凹部16とボンネット15とをダイヤフラム18を介して接合して夫々のフランジ14、15aを図示しないボルトとナットにて締結し、ダイヤフラム18で区画した上方空間(ボンネット15内部)に調節ばね19を配設し、又下方(凹部16内部)空間を圧力検出室5と成して駆動部1を構成している。
調節ばね19は、圧縮コイルばね(図示例では角ばね)から成り、ダイヤフラム18上面に接合したダイヤフラム押さえと兼用のばね受け20と、ボンネット15の上端より螺挿したボルトから成る調節ねじ21で下方押圧されるばね受け22との間に圧縮介装されている。
そして、調節ねじ21を上下に移動して調節ばね19の弾性力を調整し、その下部のダイヤフラム18の変位を調整している。
尚、ボンネット15の上端には調節ねじ21に螺着したロックナット23を設けている。
【0013】
圧力検出室5(凹部16)は、カバーフランジネック17を通じて一次側流路2a及び二次側流路2bの夫々と別々に連通する様に、その下部が開口されており、一次側流路2aと連通する一方の開口部24は弁口9に対応する様に圧力検出室5の下部中央に円形状に形成され、二次側流路2bと連通する他方の開口部25は略矩形状に形成され、一方の開口部24に隣接している。
よって、カバーフランジネック17内には、開口部24、25を隣接して区画する様に、隔壁8の上端が立ち上がり形成され、該隔壁8にて一次側流路2aとの連通路26と二次側流路2bとの連通路27とに区画している。
連通路26、27の夫々は、開口部24、25と同形の円筒状及び略角筒状に形成されているが、上述した様に、カバーフランジネック17は、弁箱4の配管状態において、管フランジF、F1の上部間に隣接して架設されるボルトB、B1間に挿通可能と成すために、該ボルトB、B1の間隔より大径な連通路26のボルトB、B1との対応部位では、図2、3の如く隣接するボルトB、B1の夫々に対応するカバーフランジネック17の側壁のみを括れる様に形成し、かかる括れ部28における連通路26は図4の如く連通路27と同幅に形成されている。
尚、本実施例では、連通路26の幅方向(ボルトB、B1の架設方向に直交する方向)に対応するカバーフランジネック17の外側幅DがボルトB、B1の間隔より幅広で、連通路27の幅方向に対応するカバーフランジネック17の外側幅D1がその上下方向に渡ってボルトB、B1の間隔より幅小に形成されているため、外側幅Dを有するカバーフランジネック17の側壁におけるボルトB、B1との対応部位にその内方の連通路26が絞られる様な括れ部28を設けたが、外側幅D1もボルトB、B1の間隔より幅広の場合には、外側幅D1を有するカバーフランジネック17の側壁にも同様な括れ部28が形成されることになる。
【0014】
連通路26は、後述の弁棒29が挿通してもなお圧力流体が括れ部28を通過可能であれば、バルブ機能に支障はないが、括れ部28で圧力流体は絞られることになるので、駆動部1による弁体3の操作性をより良好とするには、括れ部28における圧力流体の通過面積をより広くするのが望ましく、この点で括れ部28をボルトB、B1の夫々に隣接対応するカバーフランジネック17の側壁のみを括れさせて設けるのがより良い。
又、管フランジF、F1は、バルブの大きさに応じ規格化されたものが使用されるので、管フランジF、F1の種類に応じボルトB、B1間の間隔が異なり、その間隔が狭く、括れ部28における連通路26がその幅方向で狭く形成されることになっても、上記の如くボルトB、B1の夫々に隣接対応するカバーフランジネック17の側壁のみを括れさせるだけであって、ボルトB、B1…の架設方向におけるカバーフランジネック17の側壁を括れさせたり狭めたりする必要がないので、括れ部28における連通路26は圧力流体の所定の通過面積の確保が可能で、駆動部1による弁体3の操作に支障を来すことはない。
【0015】
ダイヤフラム18の下面には、ダイヤフラム受け30を接合すると共に、該ダイヤフラム受け30の下部には、これより小径で連通路26の口径と同径なピストン31を一体形成している。
ピストン31は、括れ部28より上方の連通路26に摺動自在に挿嵌されており、ピストン31に周設した凹溝にUパッキン32を装着し、一次側流路2aと圧力検出室5とを水密状に区画している。
ピストン31の下部中心には連通路26及び弁口9を挿通する弁棒29を垂設し、該弁棒29の下端には弁口9を開閉する弁体3を取付け、該弁体3と駆動部1とを連繋している。
弁体3は一次側圧力を開弁方向に受ける様に、弁口9の下方開口端に設けた弁座33に着離自在に設けて成り、ダイヤフラム18の変位により開度が制御される様に成している。
そして、ダイヤフラム18が最下限に変位した状態で、ダイヤフラム受け30が連通路26の開口部24の周縁に着座し、かかる状態での弁体3のリフトを規制している。
又、弁体3の下部中心には案内棒34を垂設し、該案内棒34は弁箱4の底部に突設した筒状凹部35に摺動自在に挿嵌している。
尚、ピストン31の有効受圧面積は、弁体3の一次側の有効受圧面積より若干大きく設定している。
【0016】
上記の様に構成されたウエハー形直動式バルブは、配管に際し、弁箱4の接続端部10、11の夫々を管材P、P1に設けた管フランジF、F1に接合して、該管フランジF、F1の各ボルト穴の夫々にボルトB、B1…を通す。
かかる状態にあっては、管フランジF、F1の上部間に隣接して架設されるボルトB、B1を、これに近接対応する括れ部28が避けてその架設状態を妨げないので、カバーフランジネック17は前記ボルトB、B1間を挿通でき、管フランジF、F1の円周上に配置される多数のボルトB、B1…はナットN、N1…で均一に締結され、バルブは管材P、P1間に介装固定される。
又、ボルトB、B1…に対するナットN、N1…の締結により、各接続端部10、11に設けた環状溝12内のシール材13が弾性変形し、管フランジF、F1における接続端部10、11との接続端面に密着して接続端部10、11と管フランジF、F1とを密封する。
この様に配管されたバルブは、二次側流路2bに連通路27を介して連通する圧力検出室5の二次側圧力によるダイヤフラム18への上向き(閉弁方向)の力と、調節ばね19による下向き(開弁方向)の力がバランスすることにより、弁体3の開度が制御され、二次側圧力が一次側圧力より低いある一定の圧力に保持する。
【0017】
本実施例では、ウエハー形直動式バルブを直動式減圧弁として示したが、減圧弁に限らず、他の直動式の圧力調整弁(背圧弁、差圧弁等)、電磁弁、定水位弁や、その他の直動式バルブにおいても、上記と同様に、その弁箱の接続端部をフランジレスとし、弁箱から上方延設したカバーフランジネックを管フランジの上部間に隣接して架設されるボルト間に挿通可能に形成することで適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ウエハー形直動式バルブの配管状態を示す正面図である。
【図2】図1のXーX断面図である。
【図3】同上バルブの縦断面図である。
【図4】図3の一部省略YーY拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 駆動部
2 流路
3 弁体
4 弁箱
6 入口
7 出口
10 接続端部
11 接続端部
12 環状溝
13 シール材
17 カバーフランジネック
B、B1… ボルト
F、F1 管フランジ
N、N1… ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側圧力又は二次側圧力を感知して動作する駆動部と、該駆動部に連繋して流路を開閉する弁体とから成る直動式バルブにおいて、該バルブの弁箱は、ボルト及びナットで締結される管フランジの間に挟持され、且つ、前記流路の出入口を夫々に有する管フランジとの接続端部をフランジレスとし、弁箱から上方へ延設したカバーフランジネックを、管フランジ間に架設されると共に管フランジの円周上で隣接するボルト間に挿通可能に形成したことを特徴とするウエハー形直動式バルブ。
【請求項2】
カバーフランジネックは、上記の隣接するボルトの夫々に対応する側壁のみを括れる様に形成したことを特徴とする請求項1記載のウエハー形直動式バルブ。
【請求項3】
各接続端部の管フランジとの接合面に、環状溝を凹設する共に、該環状溝にシール材を装填したことを特徴とする請求項1又は2記載のウエハー形直動式バルブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−162767(P2007−162767A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357257(P2005−357257)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【特許番号】特許第3863550号(P3863550)
【特許公報発行日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000165295)兼工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】