説明

ウエブの巻き取り装置

【課題】新軸に巻かれるウエブの切断部が幅方向に沿って直線に切れ、かつ、新軸に傷を付けることがないウエブの巻き取り装置を提供する。
【解決手段】新軸28から旧軸26に向かうウエブWを吸引部40で吸引した後、走行カッター38でウエブWの幅方向に沿って直線に切断し、その後新軸28を走行方向とは反対方向に回転させて、新軸28にある接着部62にウエブWを貼り付け、その後に走行方向に回転して、新軸28にウエブWを巻き付けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの巻き取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム、箔、紙等のウエブにおいて、乾燥、コーティング等の処理を施し、そのウエブを巻き取る装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この巻き取り装置は、2個の軸を持ち、ウエブの巻き取りが終了間近の旧軸から、ウエブが巻かれていない新軸に、これら軸を回転自在に支持するアームを回転させて交換することにより、走行するウエブを連続して巻き取ることができる。
【特許文献1】特開平5−124755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような巻き取り装置においては、旧軸に巻かれたウエブを切断するために、のこぎり刃状の刃で切断していたため、新軸に巻かれるウエブの切断部がジグザグとなり、その上にウエブが巻かれるウエブに跡形を付け、ウエブのロスとなるという問題点があった。
【0005】
また、のこぎり刃状の刃で切断すると、ゴミが発生するという問題点があった。
【0006】
さらに、ウエブをのこぎり刃状の刃とは異なる走行刃で新軸の上で切る方法もあるが、この方法であると新軸に傷が入ると共に、ゴミが発生するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、新軸に巻かれるウエブの切断部が幅方向に沿って直線に切れ、かつ、新軸に傷を付けることがないウエブの巻き取り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対のアームの間にウエブを巻くための2個の軸が回転自在に取り付けられ、この2個のうちウエブの巻き取りが終了間近の旧軸から、ウエブが巻かれていない新軸に、前記アームを回転させて交換するウエブの巻き取り装置において、前記旧軸から前記新軸に交換する間に走行するウエブを収容して、前記新軸に供給するウエブの走行を停止させる収容部と、前記停止中のウエブを前記新軸に押圧する押圧ロールと、前記新軸の押圧位置から前記旧軸に向かう停止中のウエブを吸引して固定する吸引部と、前記吸引部から前記旧軸の間にある停止中のウエブを幅方向に切断する切断部と、前記切断されたウエブを前記吸引部によって吸引したまま、前記新軸をウエブの走行方向とは反対方向に回転させて、前記新軸の外周部にある接着部を前記押圧位置でウエブの先端部に貼り付ける反転制御部と、ウエブの前記先端部を前記新軸に貼り付けた後、ウエブの走行を再開すると共に、ウエブの前記収容を停止し、前記新軸を再び走行方向に回転させて、前記新軸にウエブを巻き付ける正転制御部と、を有するウエブの巻き取り装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸引部で停止中のウエブを吸引した状態で、切断部によってウエブを幅方向に切断するため、ウエブの幅方向に沿って切れ、かつ、新軸に傷が付くことがない。また、ゴミも発生することがない。
【0010】
さらに、ウエブの切断後、その切断部を吸引部で保持した状態で新軸の接着部に接着するので、ウエブを新軸に歪みなく接着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの巻き取り装置10について図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態のウエブWは、例えばフィルム、箔、紙等である。
【0012】
(1)巻き取り装置10の構成
巻き取り装置10の構成について図1及び図2に基づいて説明する。
【0013】
巻き取り装置10は、装置本体12とダンサー装置14と、アキューム装置16とより構成されている。
【0014】
装置本体12は、支持台18から立設された支持脚20に支持軸21が設けられ、4組のアーム22、24、25、27が支持軸21を中心に90度毎に取り付けられている。一対のアーム22、22には、ウエブWを巻き取るための軸26が回転自在に架設され、一対のアーム24、24には、ウエブWを巻き取るための軸28が回転自在に架設され、一対のアーム25、25には、ガイドロール30が回転自在に架設され、一対のアーム27、27には、ガイドロール32が回転自在に架設されている。以後の説明では分かり易くするために、軸26を旧軸26といい、軸28を新軸28という。
【0015】
また、装置本体12は、切断アーム34を有している。この切断アーム34は、ウエブWを旧軸26から新軸28に交換するときに、待機位置から動作位置に移動して、ウエブWを切断するものであり、ガイドロール36、走行カッター38、吸引部40、第1押圧ロール42を有している。
【0016】
また、装置本体12は、押圧アーム44を有し、押圧アーム44の先端部には第2押圧ロール46を有している。この第2押圧ロール46も、ウエブWの切断時のみに待機状態から動作位置に移動する。
【0017】
ダンサー装置14は、第1固定ロール48と移動ロール50と第2固定ロール52とから構成され、移動ロール50の位置を検出することにより、ウエブWの張力を制御する目的で旧軸26または新軸28またはアキューム装置16の速度を調整する。
【0018】
アキューム装置16は、位置が固定された4個の固定ロール54からなる固定ロール群56と、上下方向に一体に移動する3個の移動ロール58からなる移動ロール群60とからなる。このアキューム装置16は、移動ロール群60を下方に移動させることにより所定量のウエブWを収容することができる。
【0019】
(2)巻き取り装置10の動作の概要
まず、巻き取り装置10の動作の概要について図1及び図2に基づいて説明する。
【0020】
熱処理等が終了したウエブWがアキューム装置16、ダンサー装置14を経て旧軸26に巻かれている。この場合、旧軸26は所定の速度で回転してウエブWを巻き付けている。そして、この巻き付け量をセンサーで検知し、基準値を超えると満巻状態になったと判断し、アーム22、24、25、27を反時計方向に支持軸21を中心に回転させる。
【0021】
次に、切断アーム34を待機位置と押圧アーム44とをそれぞれ待機位置から動作位置に移動させる。
【0022】
次に、アキューム装置16とダンサー装置14を用いて熱処理装置から供給される走行中のウエブWを収容し、装置本体12に供給されるウエブWの走行を停止させる。この場合、アキューム装置16の移動ロール群60を下げることによりウエブWの収容量が増大し、さらに、その収容量の微調整を行う場合にはダンサー装置14の移動ロール50の位置信号により収容量を調整する。
【0023】
次に、切断アーム34において、吸引部40がウエブWを吸引した後、走行カッター38でウエブWを幅方向に切断する。
【0024】
次に、新軸28を走行方向とは反対方向に回転させ、新軸28の外周部にある接着部62にウエブWの切断部の先端を貼り付け、再び走行方向に回転させて新軸28にウエブWを巻き付けていく。このとき、アキューム装置16のウエブWを収容する作業を終了する。ダンサー装置14は、新軸28へ位置信号を出力し、新軸28の回転速度を調整する。
【0025】
以上のような動作を行うことにより、旧軸26に巻かれているウエブWを、アキューム装置16より前方のウエブWの走行を停止させることなく新軸28に巻き付けることができる。
【0026】
(3)ウエブWを切断するときの詳細な説明
次に、上記のウエブWを切断するときの詳細な説明について図3〜図7に基づいて説明する。
【0027】
第1の工程において、図3に示すように、ダンサー装置14とアキューム装置16の動作により、ウエブWの走行が停止した状態で、ウエブWは新軸28に掛け渡されている。このとき、新軸28に、ウエブWが第1押圧ロール42と第2押圧ロール46によって押圧され、新軸28から旧軸26に向かうウエブWはガイドロール36を経て旧軸26に向かっている。また、このとき新軸28は回転を停止し、その外周部に接着部62が設けられている。
【0028】
第2の工程において、ガイドロール36と第1押圧ロール42の間にある停止しているウエブWを吸引部40によって吸引して固定する。
【0029】
第3の工程において、図4に示すように、吸引部40で固定されているウエブWについて、吸引部40とガイドロール36の間にある部分を、走行カッター38によって幅方向に切断する。このとき、ウエブWが停止し、かつ、吸引部40で固定しているために幅方向に沿って直線に切断することができ、斜めになったりすることがない。また、走行路中での切断のため、従来のように新軸28を傷付けたりすることがない。
【0030】
第4の工程において、図5と図6に示すように、切断されたウエブWを走行方向とは反対方向に移動させると共に、新軸28を走行方向とは反対方向に回転させる。これによって、接着部62がウエブWの方向に回転し、第1押圧ロール42と新軸28との間に接着部62が位置したときに、ウエブWの切断部の先端に接着部62が押圧され、新軸28にウエブWの切断部の先端が固定される。また、このとき吸引部40はウエブWの切断部は吸引したまま、走行方向とは反対方向に移動させる。これによりウエブWの切断部が垂れ下がることがなく、ウエブWの切断部の先端に接着部62を貼り付けることができる。これを実現するため、吸引部40の後端部は、第1押圧ロール42と新軸28との接触部の近傍まで延設しておく。そして、ウエブWの切断部の先端が吸引部40から外れると吸引部40の吸引を停止する。なお、新軸28を反対方向に回転させるときには、接着部62を光センサーやその他の位置検出位置で検出し、この接着部62が第1押圧ロール42の位置を通過した状態まで回転させるように回転角度、または、回転時間を設定する。
【0031】
次に、第5の工程において、図7に示すように、再び新軸28を走行方向に回転させると共に、ダンサー装置14及びアキューム装置16の収容を解除し、ウエブWを通常の速度で走行させる。これにより、新軸28にウエブWが巻き付き始める。なお、このときに押圧アーム44と切断アーム34とは待機位置に移動させる。
【0032】
(4)効果
以上により本実施形態の巻き取り装置10であると、旧軸26に向かうウエブWを切断する場合に、吸引部40でウエブWを固定した後に、走行カッター38でウエブWの幅方向に沿って直線に切断するため、従来のようにジクザグ状にならず、また、幅方向に沿って直線に切断することができ、ウエブWの切断部の先端を新軸28に接着することができる。そのため、このウエブWを新軸28に皺が発生することなく巻き付けることができ、ウエブWのロスを最小にすることができる。
【0033】
また、走行路中でウエブWを切断するため、新軸28に傷が付くことがなく、ゴミが発生したりすることもない。
【0034】
さらに、ウエブWの切断後、その切断部を吸引部40で保持した状態で新軸28の接着部62に接着するので、ウエブWを新軸28に歪みなく接着することができる。
【0035】
(5)変更例
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の巻き取り装置の説明図であって、旧軸にウエブWを巻き付けている状態である。
【図2】同じく旧軸から新軸に交換している状態の説明図である。
【図3】第1の工程における新軸付近の拡大図である。
【図4】第3の工程の新軸付近の拡大図である。
【図5】第4の工程の前半部分の新軸付近の拡大図である。
【図6】第4の工程の後半部分の新軸付近の拡大図である。
【図7】第5の工程の新軸付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0037】
W ウエブ
10 巻き取り装置
12 装置本体
14 ダンサー装置
16 アキューム装置
22 アーム
26 旧軸
28 新軸
30 ガイドロール
32 ガイドロール
36 ガイドロール
38 走行カッター
40 吸引部
42 第1押圧ロール
46 第2押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームの間にウエブを巻くための2個の軸が回転自在に取り付けられ、この2個のうちウエブの巻き取りが終了間近の旧軸から、ウエブが巻かれていない新軸に、前記アームを回転させて交換するウエブの巻き取り装置において、
前記旧軸から前記新軸に交換する間に走行するウエブを収容して、前記新軸に供給するウエブの走行を停止させる収容部と、
前記停止中のウエブを前記新軸に押圧する押圧ロールと、
前記新軸の押圧位置から前記旧軸に向かう停止中のウエブを吸引して固定する吸引部と、
前記吸引部から前記旧軸の間にある停止中のウエブを幅方向に切断する切断部と、
前記切断されたウエブを前記吸引部によって吸引したまま、前記新軸をウエブの走行方向とは反対方向に回転させて、前記新軸の外周部にある接着部を前記押圧位置でウエブの先端部に貼り付ける反転制御部と、
ウエブの前記先端部を前記新軸に貼り付けた後、ウエブの走行を再開すると共に、ウエブの前記収容を停止し、前記新軸を再び走行方向に回転させて、前記新軸にウエブを巻き付ける正転制御部と、
を有するウエブの巻き取り装置。
【請求項2】
前記反転制御部は、前記新軸にある接着部の位置をセンサで検出し、
その検出位置に基づいて、前記新軸を反対方向に回転させる角度、または、時間を決定する、
請求項1記載のウエブの巻き取り装置。
【請求項3】
前記吸引部は、前記新軸の前記押圧位置の近傍まで延設されている、
請求項1記載のウエブの巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−143707(P2009−143707A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324461(P2007−324461)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】