説明

ウエブ巻取り方法およびウエブ巻取り装置

【課題】ロール状ウエブの巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を安価かつ効果的に防ぐ。
【解決手段】巻取りコア30のコアBにウエブAを巻取らせている間、巻取りコア30の周方向速度sを計測するエンコーダー51に絶えず、情報処理装置52へ向けて周方向速度sに対応するパルス周波数wを発信させ、情報処理装置52において、受信したパルス周波数wと、前回受信したパルス周波数wとの違いから、巻取りコア30の位置すべき位置を決定させ、上下動装置53に巻取りコア30の位置すべき位置への移動を実行させて、巻取りコア30の位置を精密に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することなく、ウエブを巻取りコアの周りに連続してロール状に巻取ることが可能なウエブ巻取り方法およびウエブ巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺なウエブをコアの周りに連続してロール状に巻取る技術では、ロールの巻太り等に伴って、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生するという問題がある。このような問題を解決するため、従来から下記特許文献1〜4に開示されるような様々なアプローチが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−53253号公報
【特許文献2】特開2004−67367号公報
【特許文献3】特開2000−44117号公報
【特許文献4】特開平5−186115号公報
【0004】
特許文献1では、巻取ローラを通常の巻取り速度で回転させるのに先立ち、一定期間だけ通常の巻取り速度よりも遅い速度で巻取ローラを回転させる制御手段を備え、巻出し初期の巻取ローラのウエブ巻取り径を算出し、この巻取り径に基づいてウエブ巻取りを通常の巻取り速度まで加速回転させることで、ウエブの破断やしわの発生、巻取り不良を抑えて、ウエブの高速巻取りを安定して行うことができるウエブ巻取装置に係る発明が提案されている。
【0005】
特許文献2では、巻取りロールの半径と外周速度から最適な押圧力を算出し、巻取ロールの外周を押さえる押さえロールに適時適切な押圧力を与え、巻取りロール内の気泡や巻ずれやしわを防止するフィルム類巻取り装置および巻取り制御方法に係る発明が提案されている。
【0006】
特許文献3では、巻取り対象がウエブではなく、ビードワイヤであるものの、搬送手段と巻取り手段との間に製品部材をストックするストック手段を設け、このストック手段にストックされる製品部材の変化率を算出し、この変化率から巻取り径を算出して巻取り回転速度を制御し、製品部材の品質に悪影響を及ぼさないようにした軸巻取り装置及び軸巻取り装置の軸巻取り制御方法に係る発明が提案されている。
【0007】
特許文献4では、ロール状長尺帯の直径を検出する検出直径情報に応じて巻取りコアを上昇させるコア上昇制動手段をマイクロプロセッサーによって制御すること、具体的には、直径の小さな巻始めの段階では、ロール状長尺帯が密になるようにドラムに押しつけ気味に、直径が大きくなった段階では、重さによってドラムとの接面が変形しないように且つ接触を保つ範囲で若干浮し気味に、それぞれコア上昇制動手段をマイクロプロセッサーによって制御するようにし、高速でも巻崩れを起こさないように巻取れるようにした低摩擦長尺帯の巻取り機に係る発明が提案されている。
【0008】
このほか、コアの周りに連続してロール状に巻取ったウエブの重さ(坪量)から、ロール状長尺帯の直径を検出し、この検出情報に応じてコアをマイクロプロセッサーによって制御して上昇させるアプローチ等も知られている。また、例えば、図4に示すように、長尺なウエブAを巻取りコア30の周りに連続してロール状に巻取る汎用性の高いアプローチとして、巻取りコア30の巻太りとともに上下動するチェーン41に噛み合うスプロケット又はチェーンホイール42にセンサー43を配置し、このスプロケット又はチェーンホイール42の動きから巻取りコア30を制御して上昇させる技術も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1〜4や、その他で提案されているようなアプローチ以外にも、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止する手段が整備されることは、品質向上の観点から好ましい。特に、上記特許文献1〜4に提案されているアプローチでは、コアを含め各構成要素にそれぞれ動力を付与する必要がある等、設備に相当の投資を要するという問題がある。さらに、所定の巻き径までのものを対象としていて、この所定の巻き径を超えると巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を抑えづらいという問題もあった。また、コアの周りに連続してロール状に巻取ったウエブの重さ(坪量)から、ロール状長尺帯の直径を検出するアプローチでは、ウエブの重さ(坪量)にある程度のバラツキがあるため、コアの位置制御を精密に行うことが困難であり、スプロケット又はチェーンホイールにセンサーを配置して制御するアプローチも、コアの位置制御の精度向上に限界があるという指摘があった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、ウエブを巻取りコアの周りに連続してロール状に巻取る際に、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止する新たなアプローチとして、特に、巻取ったロール状ウエブが大径になっても、すなわち、巻き径に制限をなくしても巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止することができ、低コストで達成することが可能なウエブ巻取り方法およびウエブ巻取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、この引出しドラムと平行に並設され、前記ウエブを送る送りドラムと、この送りドラム、前記引出しドラムの両ドラム上で前記ウエブを介して回動させられることで周囲に前記ウエブが巻付く巻取りコアとを用いて、前記ウエブを前記巻取りコアで巻取るウエブ巻取り方法であって、回動させられている前記巻取りコアの周方向速度から、前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径に基づいて、所定位置に前記巻取りコアを移動させることを特徴とする。
【0012】
上記ウエブ巻取り方法では、回動させられている巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換し、このパルス周波数から巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径から巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算し、この換算した仕事量に基づいて巻取りコアを所定位置に移動させることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、この引出しドラムと平行に並設され、前記ウエブを送る送りドラムと、この送りドラム、前記引出しドラムの両ドラム上で前記ウエブを介して回動させられることで周囲に前記ウエブが巻付く巻取りコアとから構成され、前記ウエブを前記巻取りコアで巻取るウエブ巻取り装置であって、回動させられている前記巻取りコアの周方向速度から、前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径に基づいて、所定位置に前記巻取りコアを移動させる制御機構を備えることを特徴とする。
【0014】
特に、上記制御機構は、巻取りコアに接続され、巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換して発信する計測手段と、発信されたパルス周波数を受信し、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径から巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算して発信する情報処理手段と、発信された仕事量に基づいて巻取りコアを所定位置に移動させる移動手段とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、巻取りコアへウエブを送る送りドラムと、これらの両ドラム上でウエブを介して回動させられることで周囲にウエブが巻付く巻取りコアとを用いてウエブを巻取りコアで巻取るウエブ巻取り方法である。特に、回動させられている巻取りコアの周方向速度から、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径に基づいて、所定位置に巻取りコアを移動させる仕組みで巻取りコアの位置を精密に制御している。したがって、従来のウエブ巻取り方法と比べ、新たな装置、設備等を特段用意することなく、従来法の改良によっても巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止することができる。さらに、回動させられている巻取りコアの周方向速度から、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径に基づいて、所定位置に巻取りコアを移動させるという新たなアプローチは、巻太りに伴う巻取りコアの周方向速度の減速という指標に着目し、この減速という指標からウエブの直径を算出して巻取りコアの位置制御を行うことができるので、精密な制御を実現することができ、しかも、ウエブを巻取ることができる長さ(形成されるロール状ウエブの巻き径)に制限をなくすことができる。したがって、ウエブを大径になるまで巻取る場合であっても、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、本発明に係るウエブ巻取り方法では、巻取りコアの位置制御に好ましくは、巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換し、このパルス周波数から巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径から巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算し、この換算した仕事量に基づいて巻取りコアを所定位置に移動させるといった手法を用いる。このようにパルス周波数を用いる手法は、比較的簡素かつ安価に巻取りコアの周方向速度の減速を捕らえることができるので、精密な制御が比較的簡素かつ安価に可能となる。このため、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を効果的に防ぐことが安価に達成可能となる。
【0017】
さらに、本発明は、ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、巻取りコアへウエブを送る送りドラムと、これらの両ドラム上でウエブを介して回動させられることで周囲にウエブが巻付く巻取りコアとから構成され、ウエブを巻取りコアで巻取るウエブ巻取り装置である。特に、回動させられている巻取りコアの周方向速度から、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径に基づいて、所定位置に巻取りコアを移動させる仕組みで巻取りコアの位置を制御する制御装置を備える。したがって、従来のウエブ巻取り装置と比べ、新たな装置、設備等を特段用意することなく、従来装置の改良によっても巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止することができる。さらに、回動させられている巻取りコアの周方向速度から、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径に基づいて、所定位置に巻取りコアを移動させる制御装置は、巻太りに伴う巻取りコアの周方向速度の減速という指標に着目し、この減速という指標からウエブの直径を算出して巻取りコアの位置制御を行うことができるので、精密な制御を実現することができ、しかも、ウエブを巻取ることができる長さ(形成されるロール状ウエブの巻き径)に制限をなくすことができる。したがって、ウエブを大径になるまで巻取る場合であっても、したがって、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を効果的に防ぐことができる。
【0018】
特に、上記制御機構は、好ましくは、巻取りコアに接続され、巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換して発信する計測手段と、パルス周波数を受信し、巻取りコアに巻付いたウエブの直径を算出し、この算出したウエブの直径から巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算して発信する情報処理手段と、発信された仕事量に基づいて巻取りコアを所定位置に移動させる移動手段とからなり、これにより巻取りコアの位置制御を行う。パルス周波数を利用した制御は、比較的簡素かつ安価に巻取りコアの周方向速度の減速を捕らえることができるので、精密な制御が比較的簡素かつ安価に可能となる。このため、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を効果的に防ぐことが安価に達成可能となる。
【0019】
しかも、本発明では上記構成を備えることにより、例えば、巻きだし時の急加速といった事象や、何らかの原因による急減速といった事象が発生したり、または操作されたりしても、制御機構によって絶えず巻取りコアの状況がモニタされているので、その事象や操作に伴って巻取りコアが所定位置に移動することになる。このため、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を常に防いで、歩留まりの良いウエブの巻取りが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るウエブ巻取り装置の概略全体を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るウエブ巻取り装置の要部を説明する要部説明図である。
【図3】本発明に係るウエブ巻取り装置の制御機構を説明するフロー図である。
【図4】従来のウエブ巻取り装置の概略全体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るウエブ巻取り装置および、これを用いて行うウエブ巻取り方法に関して、紙ウエブの巻取りを対象とした一実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は多数の実施形態を含み、以下に説明する実施形態は、本発明の構成を具現化した一例に過ぎない。すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載した事項を逸脱しない限り、種々の設計変更することが可能である。図4に従来例として示したウエブ巻取り装置と同一又は相当部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
本発明に係るウエブ巻取り装置は、図1および図2に示すように、ウエブAを連続的に引き出す引出しドラム10と、この引出しドラム10に平行に並設され、巻取りコア30へ、エアを吹き付ける等して巻取りしわの発生を防ぎつつウエブAを送る送りドラム20と、この送りドラム20および引出しドラム10上において、ウエブAを介して回動させられることで周囲にウエブAが巻付く巻取りコア30とから構成されている。さらに、この巻取りコア30には、伴転部材としての例えば、ゴムローラー31が、巻取りコア30の回転に伴って回転するように接続されている。このゴムローラー31の回転を計測可能な位置には、制御機構50の構成部品である計測手段としてのエンコーダー51が備えられている。本発明に係るウエブ巻取り装置1では、このエンコーダー51を含む制御機構50により、ウエブAの巻取り(巻太り)に伴って巻取りコア30の周方向速度sの減速の様子が逐次把握され、この減速の様子から巻取りコア30の位置すべき位置が精密に制御され、巻取りコア30に巻付いたウエブAに発生する巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を著しく抑制される仕組みが構築されている。
【0023】
以下、ウエブ巻取り装置1の各構成部品に関し図1および図2を参照しつつ説明する。
【0024】
まず、引出しドラム10と送りドラム20とは、モーターで入力軸が駆動される動力機60の2つの出力軸によって、V−ベルトとプーリから成る伝動機構61を介して個別に、同方向に回動させられる。なお、送りドラム20の周速を、送りドラム10より若干大きくすることが好ましい。巻取りコア30でのウエブAの巻崩れが防止されるという効果があるからである。
【0025】
引出しドラム10は、送られてくるウエブAを連続的に引き出し、送りドラム20へ向けてウエブAを送る円筒状ドラムである。この引出しドラム10は、例えば、外周面にゴム材等の高摩擦材が貼着され、外周面から内腔部へ向けて多くの吸引孔が形成され、この吸引孔に一方が接続され、他方が吸引ポンプに接続されているフレキシブル管が内腔部に設けられていることが好ましい。これにより、ウエブ巻取り装置1の運転中に吸引ポンプを駆動させれば、ウエブAが吸引孔に貼り付く、すなわち、ウエブAを引出しドラム10の外周面に吸着させることができるので、ウエブAを連続的に引き出し、送りドラム20へ向けて送ることをスムーズに行うことができる。
【0026】
送りドラム20は、引出しドラム10に平行に並設され、巻取りコア30へ向けてウエブAを送る円筒状ドラムである。巻取りコア30へ向けてウエブAを送る際には、送りドラム20の回転速度と、外部から巻取りコア30へ向けてエアが吹き付けられることとの相互作用により、巻取りしわの発生を防止しつつ、巻取りコア30にウエブAの高速巻取りを可能にさせている。なお、引出しドラム10と送りドラム20の両ドラムは、左右の支軸と軸受を介してウエブ巻取り装置1において水平に保持されている。また、送りドラム20にも、外周面から内腔部へ向けて多くの吸引孔が形成され、この吸引孔に一方が接続され、他方が吸引ポンプに接続されているフレキシブル管が内腔部に設けられていることが好ましく、これにより、ウエブ巻取り装置1の運転中に吸引ポンプを駆動させれば、ウエブAを送りドラム20の外周面に吸着させることができ、ウエブAを連続的に巻取りコア30へ向けてスムーズに送ることができる。
【0027】
巻取りコア30は、紙管等のコアBをメカニカルチャックやエアーバッグチャック等を介して固定する軸部30aと、この軸部30aに貫通され、軸部30aを中心に回転する円形本体部30bとが一体として構成され、ウエブ巻取り装置1に、コアBの軸方向両端からコアBを挟んで固定できるように一対で備えられている。巻取りコア30は、両ドラム10、20上でウエブAを介して回動させられ、具体的には、引出しドラム10と送りドラム20の両ドラムにウエブAを介して接触させられ、両ドラムに伝動された動力によって高速に回動させられる。また、巻取りコア30は、コアBにウエブAが所定径まで巻取られるまでの間、円形本体部30bが軸受ブロック32によって回転可能に支持されている。一対で備えられた巻取りコア30の少なくとも一方の円形本体部30bには、周方向端部において、巻取りコア30の回転に伴って回転するゴムローラー31が接触している。このゴムローラー31が回転する周方向速度stは、制御機構50のエンコーダー51により計測される。なお、軸受ブロック32は、後述する移動手段としての上下動装置53のチェーン531に取着されて支持されている。
【0028】
制御機構50は、回動させられている巻取りコア30の周方向速度sを、ゴムローラー31を介して計測し、パルス周波数wに変換して発信するエンコーダー51と、このエンコーダー51から発信されたパルス周波数wを受信し、巻取りコア30に巻付いたウエブAの直径(ウエブ直径d)を算出するとともに、この算出したウエブ直径dから巻取りコア30の所定位置への移動に必要な仕事量jを換算して発信する情報処理手段としての情報処理装置52と、情報処理装置52から発信された仕事量jに基づいて巻取りコア30を所定位置に移動させるチェーン531およびスプロケット又はチェーンホイール532、これらが動くための動力源としての例えば、サーボモーター533からなる上下動装置53とから構成される。これらの構成部品の機能は、図3を参照すれば、概略以下のとおりである。
【0029】
エンコーダー51は、上述したようにゴムローラー31が回転する周方向速度stを計測する。この周方向速度stに、ゴムローラー31と巻取りコア30との回転比から決まる所定の係数αを乗じることにより、巻取りコア30の周方向速度sが導かれる。周方向速度stを計測したエンコーダー51は、巻取りコア30の周方向速度sを算出し、これに対応した所定のパルス周波数wを情報処理装置52へ有線又は無線により発信する。
【0030】
情報処理装置52は、例えば、マイクロプロセッサーを備えることで、まず、エンコーダー51から受信したパルス周波数wから、巻取りコア30に巻付いたウエブ直径dを導き出し、さらに、このウエブ直径dから導き出される巻取りコア30の位置すべき位置を決定する。また、決定した巻取りコア30の位置すべき位置と、エンコーダー51から前回受信したパルス周波数wに基づいて決定した巻取りコア30の位置すべき位置との差分Δを算出し、この差分Δに基づいて巻取りコア30の決定した位置への移動に必要な仕事量jを換算し、上下動装置53の動力源であるサーボモーター533に必要な仕事量jだけ駆動するように指示する。
【0031】
サーボモーター533が情報処理装置52から必要な仕事量jだけ駆動するように指示を受けると、上下動装置53は、サーボモーター533の駆動に伴い、チェーン531およびスプロケット又はチェーンホイール532を動かして、チェーン531に取着されて支持されている軸受ブロック32を、軸受ブロック32に支持されている巻取りコア30とともに上下方向(垂直方向)に移動させる。その結果、巻取りコア30は、情報処理装置52が算出した差分Δだけ上下方向(垂直方向)に移動し、情報処理装置52が決定した位置すべき位置に移動する。これにより、ウエブAの巻太りに伴って変化する巻取りコア30の位置すべき位置が、巻取りコア30の巻太りに伴う周方向速度wの減速を指標にして精密に制御される。
【0032】
以下、本発明に係るウエブ巻取り装置を用いたウエブ巻取り方法を簡単に説明する。
【0033】
まず、巻取りコア30にコアBをセットするとともに、動力機60により、引出しドラム10と送りドラム20とを駆動させる。なお、動力機60の2つの出力軸により、引出しドラム10および送りドラム20を駆動させている速度は、常に一定である。次に、ウエブAを引出しドラム10によって連続的に引き出し、送りドラム20に送る。送りドラム20に送られたウエブAは逐次、送りドラム20の回動と、エアが吹き付けられることとにより、巻取りしわの発生が防止されながら巻取りコア30へ送られる。巻取りコア30は、ウエブAが引出しドラム10によって連続的に引き出され、送りドラム20に送られた時点からウエブAを介して回動させられ始める。ウエブAは、巻取りコア30で徐々に巻太りしていく。
【0034】
ウエブAが巻取りコア30のコアBに巻付いて巻太りしていく過程では、巻取りコア30の円形本体部30bの周方向端部に接触しているゴムローラー31が、巻取りコア30の回転とともに回転するので、このゴムローラー31が回転する周方向速度stを、制御機構50のエンコーダー51によって絶えず計測させる。なお、引出しドラム10および送りドラム20を駆動させている速度が常に一定であるので、ウエブAが巻取りコア30に巻付いて巻太りしていくにつれ、巻取りコア30の周方向速度sは減速していく。
【0035】
そうすると、エンコーダー51は、ゴムローラー31が回転する周方向速度stに所定の係数αを乗じ、巻取りコア30の周方向速度sを算出するとともに、この巻取りコア30の周方向速度sに対応するパルス周波数wを情報処理装置52へ有線又は無線により発信する。
【0036】
パルス周波数wを受信した情報処理装置52は、巻取りコア30に巻付いたウエブ直径dを算出するとともに、この算出したウエブ直径dに対応する巻取りコア30の位置すべき位置を決定し、さらに、決定した巻取りコア30の位置すべき位置と、エンコーダー51から前回受信したパルス周波数wから導き出した巻取りコア30の位置すべき位置との差分Δから、巻取りコア30の決定した位置への移動に必要な仕事量jを換算し、上下動装置53のサーボモーター533に、必要な仕事量jだけ駆動するように指示する。
【0037】
続いて、情報処理装置52の指示に基づき、上下動装置53が、チェーン531を上下方向(垂直方向)に動くように、スプロケット又はチェーンホイール532を動かし、この動きに軸受ブロック32、巻取りコア30が連動し、情報処理装置52の決定した位置すべき位置へ巻取りコア30が移動する。これにより、巻取りコア30の位置を、ウエブAの巻太りに伴って巻取りコア30の周方向速度wの減速することを指標にして精密に制御することできる。
【0038】
このように、本発明に係るウエブ巻取り方法では、エンコーダー51に絶えず、情報処理装置52へ向けて、巻取りコア30の周方向速度sに対応するパルス周波数wを発信させ、情報処理装置52において、受信したパルス周波数wと、前回受信したパルス周波数wとから、巻取りコア30の位置すべき位置を決定させ、上下動装置53に巻取りコア30の位置すべき位置への移動を実行させて、巻取りコアの位置を逐次制御している。その結果、ウエブAが巻取りコア30のコアBに巻付いて巻太りしていく過程において、絶え間のない巻取りコア30の位置制御が可能になり、精密な制御を実現することができる。なお、コアBにウエブAが所定径まで巻取られた後には、軸受ブロック32を上下動装置53のチェーン531から外すことで、巻取りコア30からウエブAが所定径巻付いたコアBを外すことができる。
【0039】
したがって、本発明に係るウエブ巻取り装置およびウエブ巻取り方法は、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等が発生することを防止する新たなアプローチとして提供することができる。特に、巻太りに伴う巻取りコア30の周方向速度sの減速という指標に着目することで、この指標からウエブ直径dを算出して巻取りコア30の位置制御を行うことができ、精密な制御を実現することができる。さらに、巻取りコア30の周方向速度sをパルス周波数wに変換し、このパルス周波数wから巻取りコア30に巻付いたウエブの直径dを算出し、この算出したウエブ直径dから巻取りコア30の位置すべき位置への移動に必要な仕事量jを換算し、この換算した仕事量jに基づいて巻取りコア30の位置すべき位置へ移動させることが、パルス周波数wという比較的簡素かつ安価な手段を利用することで絶え間なく実行することができるため、巻取りしわや気泡、巻崩れ、巻取り傷等の発生を防ぐことが効果的かつ安価に実現することができる。制御機構50によって絶えず巻取りコア30の周方向速度s、ウエブ直径d、位置すべき位置等の状況がモニタされることにより、急加速、急減速といった事象が発生したり、または操作されたりしても、その事象や操作に伴って巻取りコア30が自動的に位置すべき位置に移動するため、想定外の事象等によって製品に悪影響を与えるようなこともなくすことができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上述したように、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱しない限り、設計変更することが可能である。例えば、説明した実施形態では、ゴムローラーの周方向速度に所定の係数を乗じて巻取りコアの周方向速度を算出し、この巻取りコアの周方向速度に対応するパルス周波数をエンコーダーに発信させるようにしたが、ゴムローラーの周方向速度をそのまま巻取りコアの周方向速度に相当するものとして、ゴムローラーの周方向速度に対応するパルス周波数をエンコーダーに発信させるようにしても、巻取りコアの精密な位置制御が可能である。また、説明した実施形態では、情報処理装置において換算する仕事量を、今回決定した巻取りコアの位置すべき位置と、前回のパルス周波数の受信に基づき決定した巻取りコアの位置すべき位置との差分から導くものとしたが、今回と前回とのパルス周波数の相違から導くことも可能である。なお、本発明において巻取りコアに巻取られるウエブは、紙、フィルムといった物のほか、織物、編物等の反物等、厚みの少ない長尺物であれば適用することができる。
【0041】
このほか、制御機構を構成する各種の部品であるエンコーダー、情報処理装置、上下動装置のチェーン、スプロケット又はチェーンホイール、サーボモーター等は適宜公知の手段を用いてもよく、従来のウエブ巻取り装置の改良によって本発明を構成すれば、さらに安価に構築できるものと期待される。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ウエブ巻取り装置
10・・引出しドラム
20・・送りドラム
30・・巻取りコア
30a・軸部
30b・円形本体部
31・・ゴムローラー(伴転部材)
32・・軸受ブロック
41・・チェーン(従来)
42・・スプロケット又はチェーンホイール(従来)
43・・センサー(従来)
50・・制御機構
51・・エンコーダー(計測手段)
52・・情報処理装置(情報処理手段)
53・・上下動装置(移動手段)
531・チェーン
532・スプロケット又はチェーンホイール
533・サーボモーター(動力源)
60・・動力機
61・・伝動機構
A・・・ウエブ
B・・・コア
d・・・ウエブ直径
j・・・仕事量
s・・・周方向速度(巻取りコアの周方向速度)
st・・周方向速度(ゴムローラーの周方向速度)
w・・・パルス周波数
Δ・・・差分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、この引出しドラムと平行に並設され、前記ウエブを送る送りドラムと、この送りドラム、前記引出しドラムの両ドラム上で前記ウエブを介して回動させられることで周囲に前記ウエブが巻付く巻取りコアとを用いて、前記ウエブを前記巻取りコアで巻取るウエブ巻取り方法であって、
回動させられている前記巻取りコアの周方向速度から、前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径に基づいて、所定位置に前記巻取りコアを移動させる、
ことを特徴とするウエブ巻取り方法。
【請求項2】
回動させられている前記巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換し、このパルス周波数から前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径から前記巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算し、この換算した仕事量に基づいて前記巻取りコアを所定位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のウエブ巻取り方法。
【請求項3】
ウエブを連続的に引き出す引出しドラムと、この引出しドラムと平行に並設され、前記ウエブを送る送りドラムと、この送りドラム、前記引出しドラムの両ドラム上で前記ウエブを介して回動させられることで周囲に前記ウエブが巻付く巻取りコアとから構成され、前記ウエブを前記巻取りコアで巻取るウエブ巻取り装置であって、
回動させられている前記巻取りコアの周方向速度から、前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径に基づいて、所定位置に前記巻取りコアを移動させる制御機構を備える、
ことを特徴とするウエブ巻取り装置。
【請求項4】
前記制御機構は、前記巻取りコアに接続され、前記巻取りコアの周方向速度をパルス周波数に変換して発信する計測手段と、発信された前記パルス周波数を受信し、前記巻取りコアに巻付いた前記ウエブの直径を算出し、この算出した前記ウエブの直径から前記巻取りコアの所定位置への移動に必要な仕事量を換算して発信する情報処理手段と、発信された前記仕事量に基づいて前記巻取りコアを所定位置に移動させる移動手段と、からなる、
ことを特徴とする請求項3に記載のウエブ巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−1475(P2013−1475A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131985(P2011−131985)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(596134172)丸富製紙株式会社 (5)
【Fターム(参考)】