説明

ウォッシャノズル

【課題】自励式の発振流路を構造の簡単な金型でもってアンダーカットすることなくノズルボデーに形成すると共に、ウォッシャノズルをノズルボデーと該ノズルボデーに組み込まれるノズルとで構成し、部品点数を少なくして構造を簡素化した樹脂製のウォッシャノズルを提供する。
【解決手段】ノズルボデー12に噴射部奥側の球面部に漸次幅広をなして開口する、高さが一定の作用室21と、作用室21の両側に対称形をなして形成され、作用室21の奥側に向かって開口する噴出孔22からなる発振流路19を形成し、中空部18及び各噴射孔22は洗浄液が通される中空部18より縦向きに立上がる流路23を介して接続され、アンダーカットを生ずることなく形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウィンドガラス等に洗浄液を噴射するウォッシャノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウィンドガラス等の洗浄を行うウォッシャノズルとして、洗浄液を車両幅方向に拡散させてウィンドガラス等に噴射する、いわゆるフルイディスク式ノズルが知られる(特許文献1)。こうしたタイプのノズルは一般に内部に自励式の発振流路を形成したノズルチップを有している。
【0003】
このノズルチップは通常樹脂の成形品で、分割して成形後、ノズルボデーに組付けられるようになっているが、自励式の発振流路を一体形成した樹脂製のノズルチップも知られる。特許文献2に開示されるものがそうで、図1に示すように、ノズルチップに相当するノズル本体1内に自励式の発振流路が一体形成されている。このノズル本体1は図2及び図3に示すように、ノズル支持体2に押込んで装着され、ノズル支持体2は外面が球状で、ノズル本体1と共にノズル3を構成し、該ノズル3はノズルボデー4の噴射部奥側に形成される球面部に圧入されて回動可能に支持されている。
【特許文献1】特公昭63−57641号
【特許文献2】特開2006−89025号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されるウォッシャノズルは、ノズル3を回動することによりノズル3の噴口3aから振動しながら噴射される洗浄液の噴射角度を調整することができること、洗浄液は、ノズル本体1とノズル支持体2との間より液漏れすることなくノズル本体1を通して噴口3aから全て噴射されること、ノズル本体1は一体成形品で、分割型に比べ部品点数も少ない利点があるが、ノズル本体1の内部に図1に示すような発振流路をアンダーカットすることなく形成するには金型に上下にスライドするスライド型を設け、各スライド型と金型を図1の矢印方向に型抜きせねばならず、金型の構造を複雑にする。
【0005】
本発明の第1の目的は、自励式の発振流路を備えた樹脂製のウォッシャノズルにおいて、発振流路を構造の簡単な金型でもってアンダーカットすることなく形成することができるようにするものであり、
第2の目的は、発振流路をノズルボデーに構造の簡単な金型でもってアンダーカットすることなく形成できるようにすると共に、特許文献2に開示されるようなノズル本体1を除き、これにより部品点数をより少なくしたウォッシャノズルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、第1の目的を達成するウォッシャノズルに関するもので、ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルは洗浄液を噴射させる噴口を備えたノズル支持体と、該ノズル支持体の凹所内に装着され、ノズル支持体の噴口から洗浄液を振動させながら拡散させる自励式の発振流路を備えたノズルチップよりなり、ノズル支持体とノズルチップのうち、少なくともノズルチップが例えばポリブチレンテレフタレートPBT等の硬質樹脂製であるウォッシャノズルにおいて、ノズルチップの発振流路は、アンダーカットすることなく形成され、上記ノズル支持体の噴口に向かって開口する作用室と、該作用室の両側に対称形をなしてアンダーカットすることなく形成され、作用室に開口する噴出孔とを有し、各噴出孔から加圧した洗浄液が作用室内に上記噴口と反対側の作用室奥側に向かって噴出されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、第2の目的を達成するウォッシャノズルに関するもので、ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着され、洗浄液を噴射させる噴口を備えたノズルよりなり、ノズルボデーとノズルのうち、少なくともノズルボデーが上記発明と同様、例えばポリブチレンテレフタレートPBT等の硬質樹樹脂製であるウォッシャノズルにおいて、ノズルボデーには、アンダーカットすることなく形成され、上記ノズルに向かって開口する作用室と、該作用室の両側に対称形をなしてアンダーカットすることなく形成され、作用室に開口する噴出孔とを有し、各噴出孔から加圧した洗浄液が作用室内に上記噴口と反対側の作用室奥側に向かって噴出される自励式の発振流路が形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、ノズルは回動可能で、洗浄液の噴射角度が調整可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、ノズルチップを成形する金型は通常、作用室をアンダーカットすることなく形成することができるスライド型が必要であるが、一対の噴出孔は同じ向きを向いて形成されるため、分割型の一方の金型により同時に形成することができ、そのため一つのスライド型を有する金型で発振流路をアンダーカットすることなく形成することができる。したがって特許文献2に開示されるノズル本体内部の発振流路をアンダーカットすることなく形成するために二つのスライド型が必要であるのに比べ、金型の構造が簡素化される。
【0010】
請求項2に係る発明によると、発振流路を形成するための金型の構造が請求項1に係る発明と同じ理由により簡素化できるほか、発振流路はノズルボデーに形成され、ウォッシャノズルはノズルボデーとノズルの二点で構成されるから、部品点数を少なくすることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、車種やウォッシャノズルの取付精度等によってノズルを回動することにより洗浄液の噴射角度や到達範囲を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態のウォッシャノズルについて図面により説明する。
図4はウォッシャノズルの全体構成を示すものであり、図5は図4のA−A線での断面、図6は図5のB−B線での断面、図7は図4のA−A線で切欠いたウォッシャノズルを示すもので、全体を符号11で示すウォッシャノズルは、例えばポリブチレンテレフタレートよりなるノズルボデー12と、該ノズルボデー12の噴射部13に圧入され、噴射部奥側に装着される同じ樹脂製のノズル14とより構成され、以下、これらノズルボデー12とノズル14について順に詳述する。
【0013】
ノズルボデー12は取付部16と該取付部上に一体形成されるヘッド17とよりなり、取付部16には流路となる中空部18が図の縦向きに形成され、ヘッド17には図5の右上がりの軸線に沿って奥側を球面部とした噴射部13と、球面部の奥側に続く自励式の発振流路19が形成されている。
【0014】
発振流路19は図5〜図7に示すように、高さが一定で長細く、噴射部13の奥側に向かって漸次幅広をなして開口し、アンダーカットすることなく形成できる作用室21と、該作用室21の両側に対称形をなして形成され、作用室21の奥側に向かって開口する噴出孔22からなり、各噴出孔22は中空部18にそれぞれ流路23により接続され、これら噴出孔22、流路23及び中空部18は同じ向きをなしており、分割型の一方の金型により中空部が、他方の金型で流路23がそれぞれアンダーカットを生ずることなく形成されるようになっている。
【0015】
ノズル14は外面が球状で、噴射部奥側の球面部に回動可能に装着され、前面に噴口25が形成され、噴口25は仕切り26で左右に仕切られている。
【0016】
本実施形態のウォッシャノズル11は以上のように構成され、発振流路19では加圧した洗浄液が中空部18から流路23を経て噴出孔22から作用室21内にその奥側に向かって噴出される。そしてノズル14から振動しながら噴射される。
【0017】
本実施形態では、発振流路19は、作用室21が図5〜図7の右方向にスライドするスライド型によりアンダーカットすることなく形成され、中空部18と流路23は分割された金型によって形成されるから、スライド型は一つですみ、特許文献2に開示されるウォッシャノズルを形成するための金型に比べ、スライド型が少ない分、金型の構造が簡単となる。
【0018】
また本実施形態では、発振流路19がノズルボデー12に形成され、ウォッシャノズルはノズルボデー1とノズル14の二部品で構成されるから、部品点数が少なく構成が簡単であり、ノズル14は工具を用い、該工具を例えば噴口25に差し込んで回動操作することによりノズル14を容易に回動することができ、これにより洗浄液の噴射角度やその到達範囲を調整することができる。
【0019】
本実施形態のウォッシャノズルでは、発振流路19は、ノズルボデー12に形成されているが、別の実施形態では図1〜図3に示されるウォッシャノズル、すなわちノズルボデー4に組み込まれるノズル3がノズル支持体2と、該ノズル支持体2に装着されるノズル本体1とよりなるウォッシャノズルにおいて、上述する構成の発振流路19がノズル本体1に形成される。この場合、部品点数は図1〜図3に示すウォッシャノズルと変わりがないが、上記実施形態と同様、ノズル本体1の発振流路19を形成するためのスライド型が一つですみ、その分、金型の構造が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】発振流路の従来例を示す断面図。
【図2】従来のウォッシャノズルの分解斜視図。
【図3】同断面図。
【図4】本発明に係るウォッシャノズルの斜視図。
【図5】図4のA−A線断面図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】図4のA−A線で切欠いたウォッシャノズルの斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1・・ノズル本体
2・・ノズル支持体
3、14・・ノズル
3a、25・・噴口
4、12・・ノズルボデー
11・・ウォッシャノズル
13・・噴射部
16・・取付部
17・・ヘッド
18・・中空部
19・・発振流路
21・・作用室
22・・噴出孔
23・・流路
26・・仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着されるノズルよりなり、該ノズルは洗浄液を噴射させる噴口を備えたノズル支持体と、該ノズル支持体の凹所内に装着され、ノズル支持体の噴口から洗浄液を振動させながら拡散させる自励式の発振流路を備えたノズルチップよりなり、ノズル支持体とノズルチップのうち、少なくともノズルチップが例えばポリブチレンテレフタレートPBT等の硬質樹脂製であるウォッシャノズルにおいて、ノズルチップの発振流路は、アンダーカットすることなく形成され、上記ノズル支持体の噴口に向かって開口する作用室と、該作用室の両側に対称形をなしてアンダーカットすることなく形成され、作用室に開口する噴出孔とを有し、各噴出孔から加圧した洗浄液が作用室内に上記噴口と反対側の作用室奥側に向かって噴出されることを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項2】
ノズルボデーと、該ノズルボデーに装着され、洗浄液を噴射させる噴口を備えたノズルよりなり、ノズルボデーとノズルのうち、少なくともノズルボデーが上記発明と同様、例えばポリブチレンテレフタレートPBT等の硬質樹樹脂製であるウォッシャノズルにおいて、ノズルボデーには、アンダーカットすることなく形成され、上記ノズルに向かって開口する作用室と、該作用室の両側に対称形をなしてアンダーカットすることなく形成され、作用室に開口する噴出孔とを有し、各噴出孔から加圧した洗浄液が作用室内に上記噴口と反対側の作用室奥側に向かって噴出される自励式の発振流路が形成されることを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項3】
ノズルは回動可能で、洗浄液の噴射角度が調整可能であることを特徴とする請求項1又は2記載ウォッシャノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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