説明

ウォブル信号検出方法及びウォブル信号検出装置

【目的】ウォブル信号の検出処理を微細化されたデジタルLSIのみで行えるようにする。
【構成】光情報記録媒体の記録面においてスパイラル状または同心円状に形成された記録トラックに対してスポット光を照射し、記録トラックの接線方向に関して分割された分割受光素子により記録面からの反射光を受光して記録トラックの蛇行に基づくウォブル信号を検出するウォブル信号検出装置であって、各分割受光素子PDa、PDb、PDc、PDdの出力信号A、B、C、Dを加算演算部17により加算して加算信号A+B、C+Dとし、それらの差分を取りスライスレベルと比較して2値化する差分2値化部18と、差分2値化部18により得られた信号を所定の周期でサンプリングする高速サンプリング部20と、高速サンプリング部20により得られた信号を所定の周波数帯域でフィルタリングすることによりウォブル信号を検出するデジタルフィルタ部21とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CD−Rディスク、CD−RWディスク、DVD−Rディスク、DVD−RWディスク、DVD+Rディスク、DVD+RWディスク、DVD−RAMディスクなどの光情報記録媒体の記録トラックに予め形成されているウォブルからウォブル信号を検出するウォブル信号検出方法及びウォブル信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体では、ディスク製造時に各半径位置での線速度を正確に検出するために、記録トラックとなる案内溝に蛇行する形状のウォブルが形成されている。この場合、CLV(線速度一定)回転制御を行ったときにウォブルが所定の周波数で形成されるようなフォーマットが採用されている。よって、このような光情報記録媒体を使用する光情報記録装置では、この記録トラックのウォブルに対応するウォブル信号を検出して、光情報記録媒体の回転制御や、記録クロック及び記録アドレスの生成を行っている。
【0003】
そして従来では、このようなウォブル信号の検出に対して種々の方法が提案されており、例えば特許文献1には、フォーマットの異なる数種の光情報記録媒体に対して共通した1つの受光素子によりウォブル信号を検出できるようにするため、再生もしくは記録する光情報記録媒体のフォーマットに応じて検出過程にあるウォブル信号の増幅率を変更可能なゲイン切替機能を増幅アンプに備える構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、受光素子から第1電圧信号と第2電圧信号を取り出してそれぞれスペース記録期間の信号を抽出し、それらの平均電圧レベルが目標電圧に一致するように信号レベルを調整し、そのようにして得られた2つの出力信号の差をウォブル信号として出力することにより、複数種類の光記録媒体に対応可能で、少なくとも記録時にウォブル信号を精度よく安定して検出できる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−279640号公報
【特許文献2】特開2003−173540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2にも記載されているように、一般のウォブル信号の検出構成では、分割された受光素子を用いてそれらの出力信号に対し加算、減算などの演算処理を行い、それによって得られる和信号、差信号からウォブル信号を検出するようになっている。
また、種類の異なる光情報記録媒体間におけるフォーマットの相違や、再生または記録などの処理の違いによって受光素子の出力レベルが異なることから、特許文献1に記載されているようにそれぞれに対応してウォブル信号検出過程における信号の増幅率の切り替えを行う機能を有したり、あるいは特許文献2に記載されているようにオフセットレベルの切替・調整等を行う機能を有する必要もあった。
【0006】
そして、上記のような加減算処理や増幅率・オフセットレベルの切替・調整処理などといったアナログ信号処理を行う半導体においては、高い信号品質を確保できるよう扱う信号のダイナミックレンジが充分広く確保されている必要があり、またこのような信号処理回路を動作させるためには高い電源電圧を供給する必要がある。しかし一方では、デジタル信号を処理する半導体において、高速化及び省電力化を目的とした近年のパターン配線の微細化に伴い、扱える信号のダイナミックレンジが狭くなっているとともに電源電圧が低下する傾向にある。
【0007】
従って、多くの場合、ウォブル信号を検出して所定レベルに2値化(デジタル化)するまでのアナログ信号処理は半導体としてアナログフロントエンドLSIを使用し、それ以降のデジタル信号処理には別のプロセスによるデジタルLSIを使用するよう使い分けていた。このように、従来の光情報記録装置は、アナログLSIとデジタルLSIの2つのチップを有する構成となっていたため、製造コストが高くなり、また必要実装面積が大きく端子数も多くなってしまう問題があった。
この発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ウォブル信号の検出処理も含めた全ての信号処理を1チップの微細化されたデジタルLSIで行うことのできるウォブル信号検出方法及びウォブル信号検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するため、情報記録媒体の記録面に形成された記録トラックに光を照射し、その照射した光による上記記録面からの反射光を上記記録トラックの接線方向に関して複数個に分割された分割受光素子によって受光し、その受光した反射光による受光信号を出力し、その出力された受光信号に基づいて上記記録トラックの蛇行によるウォブルに基づくウォブル信号を検出するウォブル信号検出方法であって、上記各分割受光素子から出力される各信号に基づいて差分信号を求め、その求めた差分信号を所定のしきい値に基づいて2値化する差分2値化工程と、その差分2値化工程によって得られた信号を所定の周期でサンプリングするサンプリング工程と、そのサンプリング工程によって得られた信号を所定の周波数帯域でフィルタリングすることによってウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程とを有するものである。
【0009】
このようなウォブル信号検出方法において、上記差分2値化工程によって得られた信号のパルスデューティの平均値が約50%となるように上記所定のしきい値を調整するしきい値調整工程を有するとよい。
また、上記ウォブル信号検出工程によって得られた上記ウォブル信号に基づいて記録クロック信号を生成する記録クロック信号生成工程を有するとよい。
さらに、記録パターン信号を生成する記録パターン信号生成工程を有し、その記録パターン信号生成工程による記録パターン信号の生成と、上記記録クロック信号生成工程による記録クロック信号の生成とを、上記所定の周期に同期して行わせるとよい。
【0010】
またこの発明は、上記の目的を達成するため、情報記録媒体の記録面に形成された記録トラックに光を照射し、その照射した光による上記記録面からの反射光を上記記録トラックの接線方向に関して複数個に分割された分割受光素子によって受光し、その受光した反射光による受光信号を出力し、その出力された受光信号に基づいて上記記録トラックの蛇行によるウォブルに基づくウォブル信号を検出するウォブル信号検出装置であって、上記各分割受光素子から出力される各信号に基づいて差分信号を求め、その求めた差分信号を所定のしきい値に基づいて2値化する差分2値化手段と、その差分2値化手段によって得られた信号を所定の周期でサンプリングするサンプリング手段と、そのサンプリング手段によって得られた信号を所定の周波数帯域でフィルタリングすることによってウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段とを有するものである。
【0011】
このようなウォブル信号検出装置において、上記差分2値化手段によって得られた信号のパルスデューティの平均値が約50%となるように上記所定のしきい値を調整するしきい値調整手段を有するとよい。
また、上記ウォブル信号検出手段によって得られた上記ウォブル信号に基づいて記録クロック信号を生成する記録クロック信号生成手段を有するとよい。
さらに、記録パターン信号を生成する記録パターン信号生成手段を有し、その記録パターン信号生成手段による記録パターン信号の生成と、上記記録クロック信号生成手段による記録クロック信号の生成とを、上記所定の周期に同期して行わせるようにするとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のようなウォブル信号検出方法及びウォブル信号検出装置によれば、ウォブル信号の検出過程においてアナログ信号処理するのは各分割受光素子の出力信号の差分を取り所定のしきい値に基づいて2値化するまででよく、かつ信号の増幅率やオフセットレベルの切替・調整を行う必要がなくなり、微細化されたデジタルLSIでも行うことができアナログ信号処理用のLSIが不要となる。また、そのように差分2値化された信号に対し、デジタルLSIにおいて所定の周期でサンプリングを行い、さらに所定の周波数帯域でフィルタリングを行うことでデジタル信号処理に最適化されたウォブル信号を検出できる。したがって、ウォブル信号の検出処理も含めた全ての信号処理を微細化されたデジタルLSIで行えることになり、光情報記録装置における信号処理回路を1チップのデジタルLSIに集積することができるため、安価で簡易な構成のシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明によるウォブル信号検出装置の概略的構成を示すブロック図であり、図2はそのウォブル信号検出装置が備えるピックアップと信号処理部の構成を詳細に示すブロック図である。なお、以下の説明では、情報記録媒体としてウォブルが形成された記録トラックを有する光ディスク(例えば、CD−Rディスク、CD−RWディスク、DVD−Rディスク、DVD−RWディスク、DVD+Rディスク、DVD+RWディスク、DVD−RAMなど)を例に取り、ウォブル信号検出装置はこのような光ディスク(光情報記録媒体)に情報を記録する光ディスク記録装置(光情報記録装置)を例に取って説明する。
【0014】
図1において、この光ディスク記録装置100はピックアップ101と、信号処理部102と、回転駆動部103と、コントローラ104とを有して構成され、ピックアップ101は光源(LD)105と受光部106を有して構成されている。また、光ディスク107は、回転駆動部103によって回転可能に装着される。
【0015】
ピックアップ101は、例えば半導体レーザ(LD)で構成される光源105からの照射光を光ディスク107に照射して情報の記録を行ったり、または光ディスク107からの反射光を受光部106により受光して受光信号に変換するものである。また、ピックアップ101は光ディスク107の半径方向で往復動(シーク動作という)するため、一般にはピックアップ101を搭載する基板は信号処理部102を搭載する固定回路基板から分離して設けられ、可撓性プリント回路(Flexible Print Circuit:FPC)基板と呼ばれる可撓性のケーブル基板を介して接続されている。また、ピックアップ101を構成する光源105や受光部106等の部品が、このFPC基板に直接実装されることも多い。
【0016】
信号処理部102は、ピックアップ101に設けられた受光部106からの受光信号が入力され、様々な信号処理を行う回路部である。例えば、受光信号から情報を再生したり、記録すべき情報を所定の規則に従い変調し記録信号として光源105(または後述する光源駆動部)に出力するなどの光源105の出力光量制御を行う。また、光ディスク107の回転に伴う面振れやトラックの半径方向の振れなどの変動に対し常に所定の誤差内で光を照射するよう制御(フォーカスサーボ制御及びトラックサーボ制御)するため、受光信号からサーボエラー信号を生成し、このサーボエラー信号に従ってピックアップの移動を制御することも行う。
【0017】
回転駆動部103は光ディスク107を回転させるもので、信号処理部102により回転速度が制御(スピンドルサーボ制御)される。CLV回転制御(一定線速度回転制御)を行う際には、高い精度で回転制御をするために光ディスク107に形成された回転制御信号をピックアップ101を介して検出し、これに基づいて回転制御を行う。このような回転制御信号としては、例えば再生専用の光ディスクなどの場合には記録された情報に所定間隔で配置された同期信号や、記録可能な光ディスクの場合にはスパイラル状または同心円状に形成された記録トラックに所定の周波数で蛇行するよう形成したウォブルなどを用いる。
コントローラ104は、図示しないホストコンピュータとの間で記録再生情報の受け渡しやコマンド通信を行い、装置全体の制御を行うものである。
【0018】
次に図2を参照して上記のピックアップ101及び信号処理部102についてさらに詳細に説明する。
図2において、ピックアップ101は2つの光源LD1、LD2(図1の光源105に対応)と5つの受光素子PD1〜PD5(図1の受光部106に対応)を有するほかにも、LD制御部2とLD駆動部3を備える光源駆動部4と、LD変調信号生成部5を備える光源変調部6とを有して構成されている。2つの光源LD1、LD2は、例えばCDとDVDといった異なるフォーマットの光ディスクにそれぞれ対応するよう設けたものであり、それぞれのフォーマットに好適な波長で光を照射するようになっている。それに伴い、それぞれの光源LD1、LD2に対応して反射光を受光する2つの反射光受光素子PD1、PD4が設けられており、反射光受光素子PD1は光源LD1からの照射による反射光を受光し、反射光受光素子PD4は光源LD2からの照射による反射光を受光する。
【0019】
また、各光源LD1、LD2の照射光の一部をそれぞれモニタするモニタ受光素子PD2、PD5も2つ設けられており、これらの出力であるモニタ信号により各光源LD1、LD2の照射光量の変動が制御される。さらに、光ディスク107の記録面に対する照射光の傾き(「チルト」という)を検知するためのチルト検出受光素子PD3も1つ設けられている。
【0020】
そして、2つの反射光受光素子PD1、PD4と1つのチルト検出受光素子PD3については、それぞれが複数に分割された分割受光素子で構成されており、そのためそれら2つの反射光受光素子PD1、PD4とチルト検出受光素子PD3から出力される受光信号は、それぞれ複数の分割受光信号で構成されて出力されるようになっている。
また、ピックアップの種類によっては、2つの光源LD1、LD2からのそれぞれの照射光を同一のモニタ受光素子でモニタしたり、それぞれの反射光を同一の反射光受光素子で受光する場合もある。
【0021】
LD変調信号生成部5は、コントローラ104から記録データ信号Wdataが入力されると共に、後述する信号処理部102の記録クロック信号生成部から記録クロック信号WCKが入力され、それらの入力信号に基づいて光源LD1、LD2から照射する照射光を変調するためのLD変調信号を生成し、光源駆動部4のLD駆動部3に出力する。
LD制御部2は、2つのモニタ受光素子PD2、PD5からのモニタ受光信号が入力され、このモニタ受光信号に基づいて2つの光源LD1、LD2の出射光量がそれぞれ所望の値となるようLD駆動部3にLD制御信号を出力する(いわゆる自動光量制御(Automatic Power Control:APC)を行う)。
LD駆動部3は、入力されるLD変調信号及びLD制御信号に基づいて2つの光源LD1、LD2のいずれかを電流駆動し発光させる。
【0022】
次に信号処理部102について説明すると、信号処理部102は受光信号処理部7と、サーボ信号演算処理部8と、RF選択部9と、ウォブル信号生成部10と、ウォブル信号処理部11と、RF信号処理部/PLL12と、記録クロック信号生成部13と、回転制御部14と、サーボプロセッサ15と、サーボドライバ16とを有して構成されている。
【0023】
受光信号処理部7は、2つの反射光受光素子PD1、PD4および1つのチルト検出受光素子PD3からそれぞれ受光信号が入力され、各受光信号のオフセット調整及びゲイン調整などの処理を行って出力する。なお、ここでのオフセット調整及びゲイン調整などの処理は、微細化C−MOSデバイスでも十に分行える処理である。
【0024】
サーボ信号演算処理部8は、受光信号処理部7から入力される各受光信号からサーボエラー信号の生成を行うと同時に、オフセット調整、ゲイン調整などの処理も行い、生成したサーボエラー信号をサーボプロセッサ15に出力する。また、ここにおけるオフセット調整、ゲイン調整の処理も、微細化C−MOSデバイスで行える処理である。
【0025】
RF選択部9は、2つの反射光受光素子PD1、PD4からそれぞれ受光信号(複数の分割受光信号)が入力され、そこから後段の他の回路に必要な信号(再生信号など)を選択して出力し、また他方で分割受光信号の一部を加減算などの演算処理を行ってから出力する。
【0026】
ウォブル信号生成部10は、RF選択部9から演算処理された信号が入力され、記録可能な光ディスク107にプリフォーマットで形成されたウォブルに対応したウォブル信号を検出するものである。
ウォブル信号処理部11は、ウォブル信号生成部10より入力されたウォブル信号をさらに2値化処理して最適化された2値化ウォブル信号を抽出し、記録クロック信号生成部13及び回転制御部14に出力する。また、入力されたウォブル信号にはウォブルに変調されたアドレス情報が含まれており、このウォブル信号処理部11が光ディスク107の種類によって異なる所定の規則に基づいてアドレス情報を復調し、コントローラ104に出力する。以上のRF選択部9とウォブル信号生成部10とウォブル信号処理部11との連携によるウォブル信号の検出構成については後に詳述する。
【0027】
RF信号処理部/PLL12は、RF選択部9から入力された再生信号から2値化RF信号を生成し、そこから再生している光ディスク107の変調方式規則に基づいて復調したデータをコントローラ104に出力する。また、PLL回路により2値化RF信号から再生クロックを抽出する。また、2値化RF信号に所定間隔で挿入された同期信号より回転制御信号を抽出し回転制御部14に出力する。
【0028】
回転制御部14は、ウォブル信号処理部11から入力される2値化ウォブル信号、またはRF信号処理部/PLL12から入力される回転制御信号から回転制御を行うためのスピンドルエラー信号を生成し、サーボプロセッサ15に出力する。また、光ディスクを一定角速度(CAV)で回転させる場合は、不図示の回転制御駆動部から入力されるディスク回転に関する信号によりスピンドルエラー信号を生成する。
【0029】
サーボプロセッサ15はコントローラ104からの指令に基づき、入力される各種サーボエラー信号からサーボ制御信号を生成し、サーボドライバ16に出力する。サーボドライバ16は入力されるサーボ制御信号に基づいてサーボドライブ信号を生成する。そして図示しない各駆動部は供給されたサーボドライブ信号によりサーボ制御動作が行われる。この光ディスク記録装置100における具体的なサーボ制御動作としては、フォーカス制御、トラック制御、シーク制御、スピンドル制御、チルト制御である。
【0030】
記録クロック信号生成部13は、ウォブル信号処理部11より入力された2値化ウォブル信号に基づいて記録クロック信号WCKを生成し、コントローラ104やピックアップ101のLD変調信号生成部5などに出力する。記録時には、この記録クロック信号WCKを基準に記録データの生成などが行われる。
【0031】
また記録時には、コントローラ104から記録クロック信号WCKに同期して、記録データ信号Wdataがピックアップ101のLD変調信号生成部5に供給される。この記録データ信号Wdataは、記録すべき情報が所定の変調方式規則に従って変調されている。
また、コントローラ104は、装置内の各部との間で各種のデータおよび制御信号を送受している。
【0032】
次にウォブル信号を検出する構成について詳細に説明する。
まず、図3は、受光信号からウォブル信号を検出して記録クロック信号WCKを生成するまでの構成を示すブロック図であり、この図3において、ウォブル信号検出装置は4分割受光素子のそれぞれから検出された受光信号の加算演算を行う加算演算部17と、これら2つの加算値の差分を取って2値化する差分2値化手段として機能する差分2値化部18と、この差分2値化部18に入力するスライスレベル(しきい値)を調整するためのしきい値調整手段として機能するDC制御部19と、サンプリング手段として機能する高速サンプリング部20と、ウォブル信号検出手段として機能するデジタルフィルタ部21と、デジタルウォブルデテクタ部22と、記録クロック信号生成部として機能するデジタルPLL部23とを備えて構成されている。そしてこのウォブル信号検出装置を構成する各部は、図2におけるRF選択部9、ウォブル信号生成部10、ウォブル信号処理部11、記録クロック信号生成部13及びコントローラ104が連携して行う処理を、詳細な機能別に再構成して示したものである。
【0033】
また図4は、図3に示す構成における各部から出力される信号の波形を示す図であり、一番上の(a)に示す波形は記録ストラテジ波形(実際に記録する際に用いたレーザ光の記録パターン信号の変調波形)、2番目の(b)に示す波形は加算信号A+Bの波形、3番目の(c)に示す波形は加算信号C+Dの波形、4番目の(d)に示す波形は差分(A+B)−(C+D)を2値化した信号の波形、5番目の(e)に示す波形は4番目の波形の信号を3T移動平均(サンプリング信号T(n)、T(n+1)、T(n+2)とした場合のそれらの平均(T(n)+T(n+1)+T(n+2))/3)でサンプリング(多ビット化)した信号の波形、6番目の(f)に示す波形は5番目の波形の信号をローパスフィルタでフィルタリングして高周波ノイズを取り去った信号の波形である。以下において逐次これらの信号波形を参照しながら説明する。
【0034】
まず、4分割受光素子からそれぞれ検出された分割受光信号のうちAとB、CとDの組み合わせで加算演算部17により加算演算される(それぞれ図4の2番目と3番目の信号波形を参照)。ここで、分割受光信号A,B,C,Dにそれぞれ対応する4分割受光素子PDa,PDb,PDc,PDdの配置について説明すると、光記録ディスクの記録面上に照射された光スポットにおいて記録トラックの接線により分けられたものどうしの組み合わせで加算し合うようになっており、つまり4分割受光素子のPDaとPDb、PDcとPDdの組み合わせでそれぞれ接線より外周側と内周側に分けた配置に対応した受光信号となっている。なお、この配置の組み合わせで加算演算する場合には4分割受光素子のPDaとPDb、PDcとPDdがそれぞれ一体となった2分割受光素子(記録トラックの接線により2分割)を適用しても同等の演算結果が得られる。
【0035】
次に、差分2値化部18により加算信号A+Bと加算信号C+Dの差分を取り、それを所定のしきい値であるスライスレベルに基づいて2値化を行う。つまり、差分信号(A+B)−(C+D)とスライスレベルを比較し、差分がスライスレベルより小さい間は所定のローレベルを出力し続け、差分がスライスレベルより大きい間は所定のハイレベルを出力し続けてローレベルとハイレベルの2値の信号に変換する(図4の4番目の信号波形を参照)。
【0036】
ここで、この場合の差分2値化処理の性質について説明する。図5の(a)に示すように、ウォブル信号は、4分割受光部から検出して加算された加算信号A+Bと加算信号C+Dの振幅が変調を受けていることから、加算信号A+Bの方が信号振幅が大きいときには、スライスレベルに対し加算信号C+Dより速く変化し、また、加算信号A+Bの信号振幅が小さいときには加算信号C+Dの方が速くスライスレベルに対し変化する。この結果、図5の(b)に示すように加算信号A+Bの信号振幅が大きいときは、加算信号C+Dの2値化されたパルス幅より加算信号A+Bを2値化したパルス幅の方が太く(広く)なる。
【0037】
更に、加算信号A+B及び加算信号C+Dは照射光強度の平均値が一定でありウォブル信号及び記録時には、記録光強度、既記録部を読み取っている場合には記録データに応じた反射光強度の平均値は一定であるので、2値化後のパルス幅の平均値はほぼ一定となる。例えば、2値化後のパルスデューティの平均値は40〜60%の範囲内で一定の値をとる。この実施例では、2値化後のパルスデューティの平均値が50%となるように2値化スライスレベルを予め設定している。なお、図3に示す構成では、さらに2値化後のパルスデューティの平均値が常に安定して50%となるように、D/A変換回路(デジタル/アナログ変換回路)で構成されたDC制御部19が2値化スライスレベルを可変制御して差分2値化部18に入力する構成にしている。
【0038】
このようにして2値化された信号は、次に高速サンプリング部20でサンプリングされることになり、この際には高速クロック生成部26により生成された所定の周期にある高速クロックによってサンプリングされることになる(図4の5番目の信号波形を参照)。この高速クロックは、通常、リング型の発信器から位相の異なる多相クロックとして生成され、例えば100ps(100×10−12秒)程度の刻みで生成することは微細化C−MOSデバイスを使用すれば容易である。
【0039】
そして例として、光ディスク記録装置が16倍速記録を行う場合には、ウォブル信号周波数は約13MHzとなり、記録クロックは約400MHzとなるので、100psの高速クロックでサンプリングするのであれば、記録クロックに対し25倍、ウォブル周波数に対しては800倍のサンプリングになる。このようにして、ウォブル信号の周波数の数十倍から数100倍の周波数でサンプリング(多ビット化、標本化)している。
【0040】
このようにして加算信号A+B及び加算信号C+Dは、アナログ的に引き算された後に2値化され、サンプリングされた信号となる。そしてこの信号が、さらに図3に示すデジタルフィルタ部21によりディジタル的にバンドパスフィルタリングされることで、ウォブル信号がノイズを取り去ってディジタル的に整った波形で生成される(図4の6番目の信号波形を参照)。ここで、パルスデューティの平均値が50%からずれる要因は、フォーカス、トラック、隣接トラックの影響等々であるが、これらの影響はウォブル信号の周波数成分とは異なるので、上記のデジタルフィルタ部21により除去することができる。また、ディジタルフィルタ部21により所定の周波数帯をフィルタリングしているので、位相特性を直線的にした高性能なフィルタが実現できる。
【0041】
そしてウォブル信号を検出する上記までの構成において、加算信号A+Bと加算信号C+Dをアナログ的に引き算した後で2値化する部分は特に簡略化することができ、さらに最低限、高速サンプリング部をひとつのみ持つことで実現できる。
【0042】
さらに、図3に示す構成において、ディジタル的に生成できたウォブル信号はデジタルウォブルデテクタ部22により位相反転が検出される。それとともに、ウォブル信号とウォブル信号の位相反転を検出した信号とを入力されたデジタルPLL部(ウォブルPLL部)23によりディジタル的に位相周波数生成が実施され、これにより記録クロック信号WCKが生成される。このようにしてウォブル信号検出方法により得られたデジタルデータからデジタルPLLにより記録クロック信号WCKを生成しているので、アナログによるPLLを行う必要がなくなり、安定性が増加する。
【0043】
以上の信号処理を行う図3に示した構成において、アナログ信号処理する回路は差分2値化部18まででよく、さらにこれによれば増幅率及びオフセットの調整を行う回路部が不要となる。更に、そのアナログ信号処理についても、2値化するだけなので微細化C−MOSデバイスでも実施できると共に、また特に高速サンプリングは微細化C−MOSデバイスの特性上容易に実施できる処理である。従ってこの実施例に係るウォブル信号検出装置の構成は全て微細化C−MOSデバイスのようなデジタルLSIで実現でき、バイポーラプロセスのようなC−MOSプロセス以外の半導体プロセスによるLSIが不要となる。このため、ウォブル信号を検出する処理回路を1チップのデジタルLSIに集積することができ、安価で簡易な構成のシステムを構築することができる。
【0044】
またこのことは、図4における上から2番目と3番目に示すようなアナログ処理した場合の信号波形と、一番下(6番目)に示すようなデジタル処理した場合の信号波形とを比較しても一目瞭然であり、この実施例に係るウォブル信号検出装置によれば、従来技術の構成で実施してきたようなアナログ処理を行わずとも、デジタル的に適合したきれいな波形のウォブル信号を検出することができる。
【0045】
次にこの発明によるウォブル信号検出装置の他の実施例について説明する。図6は、受光信号からウォブル信号を検出して記録ストラテジ波形を出力するまでの構成を示すブロック図であり、この図6に示す第2実施形態の構成は、図3に示した第1実施形態の構成にさらに記録パターン信号生成手段として機能する記録ストラテジ波形生成部24と遅延制御部25を備えた構成となっている。
【0046】
この実施形態の構成では、デジタルPLL部23による記録クロック信号WCKと記録ストラテジ波形生成部24による記録ストラテジ波形が、高速サンプリング部20で用いられた同一の高速クロックに基づいて生成している。このようにすることにより、従来、記録クロック信号WCKを生成するデジタルPLL部と、記録ストラテジ波形を生成するために利用するデジタルPLL部は個別に構成されていたところ、ひとつの基本高速クロックから生成することによりデジタルPLL部を1つにまとめることができ、システム構成を簡略化できると同時に、2重でデジタルPLL部を利用せずにすむためジッタが生じる回路ブロックを減らすことができ、記録クロックジッタを低減できることになる。
【0047】
また記録ストラテジ波形生成部24から出力される記録ストラテジ波形は、遅延制御部25により位相調整をしてから出力されている。これは、信号の配線長及び伝送路帯域が異なる場合にスキューが生じる問題を補正する為である。このようにすることにより、スキューの影響を受けることなく信号を伝送できる。また、このようにして出力された記録ストラテジ波形がDC制御部19に参照されることで、DC制御部19はスライスレベルをより適切な値に調整することができ、ウォブル信号のパルスデューティの平均値を理想的な50%に近づけることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、ウォブルが形成された記録トラックを有する光ディスク(例えば、CD−Rディスク、CD−RWディスク、DVD−Rディスク、DVD−RWディスク、DVD+Rディスク、DVD+RWディスク、DVD−RAMなど)に情報を記録する光ディスク記録装置などに利用できる。また、ウォブル信号を検出する処理回路を1チップのデジタルLSIに集積することができるため、安価で簡易な構成のシステムを構築することができ、小型化及び低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施例のウォブル信号検出装置の概略的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したウォブル信号検出装置が備えるピックアップと信号処理部の構成を詳細に示すブロック図である。
【図3】この実施例のウォブル信号検出装置の受光信号からウォブル信号を検出して記録クロックを生成するまでの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す構成の各部から出力される信号の波形を示す図である。
【図5】図3に示す差分2値化部における処理について説明する図である。
【図6】この発明のウォブル信号検出装置の他の実施例の受光信号からウォブル信号を検出して記録ストラテジ波形を生成するまでの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
2:LD制御部 3:LD駆動部
4:光源駆動部 5:LD変調信号生成部
6:光源変調部 7:受光信号処理部
8:サーボ信号演算処理部 9:RF選択部
10:ウォブル信号生成部 11:ウォブル信号処理部
12:RF信号処理部/PLL 13:記録クロック信号生成部
14:回転制御部 15:サーボプロセッサ
16:サーボドライバ 17:加算演算部
18:差分2値化部(差分2値化手段) 19:DC制御部
20:高速サンプリング部(サンプリング手段)
21:デジタルフィルタ部(ウォブル信号検出手段)
22:デジタルウォブルデテクタ部 23:デジタルPLL部
24:記録ストラテジ波形生成部 25:遅延制御部
26:高速クロック生成部 100:光ディスク記録装置
101:ピックアップ 102:信号処理部
103:回転駆動部 104:コントローラ
105:光源 106:受光部
107:光ディスク(情報記録媒体) LD1、LD2:光源
PD1、PD2、PD3、PD4、PD5:受光素子
PDa,PDb,PDc、PDd:4分割受光素子(分割受光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体の記録面に形成された記録トラックに光を照射し、該照射した光による前記記録面からの反射光を前記記録トラックの接線方向に関して複数個に分割された分割受光素子によって受光し、その受光した反射光による受光信号を出力し、該出力された受光信号に基づいて前記記録トラックの蛇行によるウォブルに基づくウォブル信号を検出するウォブル信号検出方法であって、
前記各分割受光素子から出力される各信号に基づいて差分信号を求め、該求めた差分信号を所定のしきい値に基づいて2値化する差分2値化工程と、
該差分2値化工程によって得られた信号を所定の周期でサンプリングするサンプリング工程と、
該サンプリング工程によって得られた信号を所定の周波数帯域でフィルタリングすることによってウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程とを有することを特徴とするウォブル信号検出方法。
【請求項2】
請求項1記載のウォブル信号検出方法において、
前記差分2値化工程によって得られた信号のパルスデューティの平均値が約50%となるように前記所定のしきい値を調整するしきい値調整工程を有することを特徴とするウォブル信号検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のウォブル信号検出方法において、
前記ウォブル信号検出工程によって得られた前記ウォブル信号に基づいて記録クロック信号を生成する記録クロック信号生成工程を有することを特徴とするウォブル信号検出方法。
【請求項4】
請求項3記載のウォブル信号検出方法において、
記録パターン信号を生成する記録パターン信号生成工程を有し、該記録パターン信号生成工程による記録パターン信号の生成と、前記記録クロック信号生成工程による記録クロック信号の生成とを、前記所定の周期に同期して行わせることを特徴とするウォブル信号検出方法。
【請求項5】
情報記録媒体の記録面に形成された記録トラックに光を照射し、該照射した光による前記記録面からの反射光を前記記録トラックの接線方向に関して複数個に分割された分割受光素子によって受光し、その受光した反射光による受光信号を出力し、該出力された受光信号に基づいて前記記録トラックの蛇行によるウォブルに基づくウォブル信号を検出するウォブル信号検出装置であって、
前記各分割受光素子から出力される各信号に基づいて差分信号を求め、該求めた差分信号を所定のしきい値に基づいて2値化する差分2値化手段と、
該差分2値化手段によって得られた信号を所定の周期でサンプリングするサンプリング手段と、
該サンプリング手段によって得られた信号を所定の周波数帯域でフィルタリングすることによってウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段とを有することを特徴とするウォブル信号検出装置。
【請求項6】
請求項5記載のウォブル信号検出装置において、
前記差分2値化手段によって得られた信号のパルスデューティの平均値が約50%となるように前記所定のしきい値を調整するしきい値調整手段を有することを特徴とするウォブル信号検出装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載のウォブル信号検出装置において、
前記ウォブル信号検出手段によって得られた前記ウォブル信号に基づいて記録クロック信号を生成する記録クロック信号生成手段を有することを特徴とするウォブル信号検出装置。
【請求項8】
請求項7記載のウォブル信号検出装置において、
記録パターン信号を生成する記録パターン信号生成手段を有し、該記録パターン信号生成手段による記録パターン信号の生成と、前記記録クロック信号生成手段による記録クロック信号の生成とを、前記所定の周期に同期して行わせるようにしたことを特徴とするウォブル信号検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−48880(P2006−48880A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232210(P2004−232210)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】